古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 日米関係

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治と世界政治について俯瞰し、分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 本日(2024年1月19日)、東京地検特捜部は、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者たちを起訴し、立件した。既に逮捕された国会議員、起訴されている議員たちもいるが、これ以上の事件の拡大はないということになりそうだ。会計責任者たちが起訴された、3つの派閥の幹部たちが起訴されないということで、国民感情としては「ふざけるな」ということになっている。
 ここでより俯瞰的な見方をしてみたいと思う。特捜検察はどうして重要な国会議員たちを逮捕しないのかということであるが、特捜検察の目的は法律に基づいて、正義を行うということではない。特捜検察は、簡単に言えば、権力者にとって都合の良い、切れ味鋭い「刀」である。権力者の刀だというのなら、どうして岸田首相の派閥である岸田派が立件されたのか、ということであるが、それは、究極的には、日本の首相は日本の権力者ではないということだ。それでは、日本の権力者は誰であるが。それはアメリカだ。特捜地検はアメリカにとっての刀である。

 アメリカの日本支配を強めるため、より効率的、直接的に行うために、アメリカは日本政治と自民党の整理を行おうとしている。派閥という、アメリカからすれば訳の分からない機関が自民党を動かすのではなく、アメリカが育てた、教育した、息のかかった議員たちが主流派になり、当選回数や経験などに関係なく、指導的な立場に就けるようにする、そのために、派閥を解消するということがアメリカの意向であり、特捜検察はそのために動いた。政治家の逮捕など大きなことではないのだ。

 特捜検察の源流は、戦後直後の混乱期に、旧日本軍や官庁が個別に物資を隠匿していた事件(隠退蔵物資事件)を摘発する捜査部隊(隠匿退蔵物資事件捜査部)であり、この捜査部隊を作らせたのは、連合国軍最高司令官総司令部(General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied PowersGHQ/SCAP)の民政局(Government SectionGS)次長を務めたチャールズ・L・ケーディスである。それ以来、特捜検察はアメリカの刀であった。田中角栄や小沢一郎といった、アメリカに唯々諾々と従うことをしなかった政治家たちは、特捜検察に襲い掛かられた。私たちは日本の戦後の属国としての歴史について知り、その現実を改善するための方策を国民的な議論の中で見出していかねばならない。

 アメリカは、中国の台頭という脅威に直面している。アメリカは中国に対峙するにあたり、日本を最前線だと考えている。その点で、日本の重要性は増している。アメリカが直接中国と戦うという訳にはいかない。そこで、日本を中国にぶつけて様子を見る、いざとなれば、日本を切って、中国との関係改善のために、共通の敵とするということまでやりかねない。日本にとって極めて重要なのは、中国と絶対に武力衝突を起こさないことだ。そのための人材として二階俊博元幹事長がいた訳だが、派閥解消で力を失う。アメリカにとっては狙い通りの動きである。

 アメリカの日本政治、自民党の整理は、安倍晋三元首相の暗殺が契機となった。安倍晋三元首相はアメリカにとって単純に称賛できない存在だった。アメリカにべったり、アメリカ従属の政治家であるが、同時に、太平洋戦争に関して修正主義、靖国神社参拝を行う、アメリカに反対する立場の政治家でもあった。安倍元首相の後ろ盾はマイケル・グリーンであったが、グリーンがワシントンDCからシドニーに都落ちをして、アメリカの対日管理の空気感が変わってきた。これが行きつく先が、安倍派にばかりスポットが当たった裏金問題である。

こうしたことは自民党所属の国会議員たちの大多数には知らされていない。最高幹部層だけの話だ。普通の自民党議員たちは、あれっと思っているうちに、裏金問題が大きくなり(マスコミを使って大ごとのように宣伝された)、選挙区に帰って有力な支持者たちとどうしてこうなったのかなどと話しているうちに、派閥解消まで話が進んで呆然としているという状態だ。これは「ショック・ドクトリン」の応用だ。災害などが起きて、人々が呆然としているうちに、新しい制度などが素早く導入されるというものだ。自民党議員たちは気づいたらこのようなことになっていた。金曜日なので選挙区に帰る議員たちがほとんどだろうが、皆、説明する言葉もなく、有権者たちと同様に呆然とするしかない。

 アメリカとしては、派閥という訳の分からないもので人事が決まるのではなく、親米派の議員たちが主流派を形成して、そこから指導者が出てくることが望ましい。派閥があることで物事がスムーズに進まないということがないようにしたい。こうしたことから、特捜検察を使って、自民党の整理の仕上げとして、派閥解消を実現させた。特捜検察は忠実にその目的のために動いた。自民党の派閥がなくなって嬉しい、と単純に喜べない状況にあると私は考えている。

(貼り付けはじめ)

●「安倍派幹部7人、立件断念 パー券問題で東京地検特捜部」

毎日新聞 1/19() 15:40配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/cb08c3775adc3c475e55c9734fe3faa20611a482

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、東京地検特捜部は19日、清和政策研究会(安倍派)の幹部議員7人について政治資金規正法違反容疑での立件を断念した。パーティー券収入のノルマ超過分を派閥や自身の政治団体の政治資金収支報告書に記載していない疑いが持たれていたが、いずれも会計責任者との共謀が立証できないと判断したとみられる。

 松野、西村、高木、世耕、萩生田の5氏は安倍派の「5人衆」と称され、座長の塩谷氏とともに派閥の集団指導体制をとるメンバー。下村、松野、西村、高木の4氏は公訴時効にかからない2018年以降に派閥の事務を取り仕切る事務総長を務めた。

 一方、特捜部は、安倍派と、志帥会(二階派)の会計責任者ら2人を同法違反で在宅起訴し、宏池会(岸田派)の元会計責任者を略式起訴した。一連の事件では、自民の主要5派閥が同法違反容疑で刑事告発されたが、うち3派閥が立件される形となった。

【井口慎太郎、北村秀徳、岩本桜、山田豊】

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●「安倍、二階、岸田3派閥の会計責任者らを立件 政治資金規正法違反」

毎日新聞 1/19() 14:22配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/30040cadf66ce588899df6217a5cdcfc23af5a18

 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、パーティー券収入のノルマ超過分に関する収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、東京地検特捜部は19日、清和政策研究会(安倍派)と、志帥会(二階派)の会計責任者ら2人を政治資金規正法違反(虚偽記載)で在宅起訴し、宏池会(岸田派)の元会計責任者を略式起訴した。

 一連の事件では、自民の主要5派閥が同法違反容疑で刑事告発されたが、うち3派閥が立件される形となった。

 在宅起訴されたのは、安倍派の会計責任者の松本淳一郎被告(76)と、二階派の元会計責任者の永井等被告(69)。略式起訴されたのは、岸田派の元会計責任者の佐々木和男元職員(80)。3派閥とも幹部議員は刑事訴追されなかった。

 起訴状によると、安倍派では2018年からの5年間でパーティー券に関する収入約67500万円、支出約67600万円が記載されず、二階派では18年からの5年間で収入約26400万円、支出約11600万円が不記載になっていたとされる。岸田派では18年からの3年間で収入約3000万円が不記載になっていたとしている。

 3派閥ではパーティー券収入のノルマ超過分を議員側にキックバック(還流)する運用が続けられていたとされる。安倍派では還流資金に関する収支が派閥側と議員側の両方の収支報告書に記載されておらず、二階、岸田両派では議員側への支出は記載されているものの、パーティー券収入の総額が過少記載されていた疑いが持たれていた。

 安倍、二階両派ではノルマ超過分を派閥に報告せず、事務所でプールしていた議員が複数いるとされていた。【井口慎太郎、北村秀徳、岩本桜、山田豊】

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●「岸田派解散検討 首相他派閥の対応 言及する立場にない

NHK 2024119 1406

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240119/k10014326701000.html

自民党岸田派の解散の検討を表明したことをめぐり、岸田総理大臣は19日午前、ほかの派閥の対応に言及する立場にないとした上で党としては、国民の信頼回復に向けた派閥のルールの議論を続ける考えを示しました。

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受け、岸田総理大臣が、18日夜、みずからが会長を務めていた「宏池会」=岸田派の解散を検討していることを明らかにしたのを受け、今後は、ほかの派閥に同様の動きが広がるかが焦点となる見通しです。

岸田総理大臣は19日午前、総理大臣官邸で記者団に対し「政治の信頼回復のために『宏池会』を解散するということを申し上げた。ただ他の派閥のありようについて何か申し上げる立場にない」と述べました。

また、自民党の政治刷新本部で議論の焦点となっている派閥のあり方について、どう道筋をつけていくのか問われ「国民から派閥がカネやポストを求める場になっているのではないかとの疑念の目が注がれている。こうした疑念を払拭して、信頼を回復するため、政策集団のルールについては考えていかなければならない」と述べました。

一方、一連の政治資金をめぐる問題の実態解明などへの対応について「現在、検察の捜査が続けられている。その結果を見た上で適切なタイミングで対応を考えていきたい」と述べました。

林官房長官「総理の判断 重く受け止めた」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で「きのう、岸田総理大臣から『宏池会』の解散を検討していると伝えられ、私としても総理の判断を尊重したいと申し上げた」と述べました。

そのうえで「岸田総理大臣とは日頃より密に意思疎通を行っていて、『宏池会』への思いの強さはじゅうじゅう承知している。そのうえでの判断ということで重く受け止めた」と述べました。

一方、記者団から自民党のほかの派閥はどうあるべきか問われ「それぞれの政策集団のありようについて申し上げる立場にないが、自民党の政治刷新本部で政策集団の在り方に関するルール作りを含めて議論が深められるものと考えている」と述べました。

また、派閥を離脱した岸田総理大臣が今回の判断に関わったプロセスを問われたのに対し「現在『宏池会』の会長が不在な中で、直近まで会長を務めていた岸田総理大臣が、私を含む派閥のメンバーに考えを述べ、その考えで一致したということだ」と説明しました。

木原防衛相「政治資金の透明性高めることが必要」

自民党茂木派に所属する木原防衛大臣は閣議の後の記者会見で「一部の政策グループの政治資金パーティーの収支で不適切な会計処理が行われたことが発端だと理解している。政策グループの存在自体に問題があるのか、政策グループの不適切な行為に問題があるのか、私の所属するグループが対象ではないので判断がつかないが、政治資金の透明性を高めることが必要で、不適切な行為に対しては厳格な責任体制を確立することも必要だ」と述べました。

松本総務相「信頼回復へ強い決意で発言したのでは」

自民党麻生派に所属する松本総務大臣は閣議のあとの記者会見で「私も国民の政治不信には強い危機感を抱いている。岸田総理大臣も何としても信頼を回復しなければならないという強い決意を持って、自民党総裁として発言したのではないか」と述べました。

そのうえで「具体的な信頼回復の道筋については、自民党の政治刷新本部で議論が重ねられている。方向が定まれば所属議員として従っていく」と述べました。

齋藤経産相「大変重い発言 深い感慨で受け止め」

岸田総理大臣が自民党岸田派の解散の検討を表明したことについて、齋藤経済産業大臣は、19日の閣議のあとの会見で「長い伝統ある宏池会を解散することを検討しているという昨晩の発言については、大変重い発言であったと、自民党の一国会議員としてある種の深い感慨を持って受け止めている」と述べました。

そのうえで「政策集団の在り方についても党の政治刷新本部において議論が深められていくということで、期待しながら見守っていきたい」と述べました。

盛山文科相「派閥の解散 信頼を得るために必要かも」

自民党岸田派に所属する盛山文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「大臣の立場でコメントすることはない」としたうえで「きのうの岸田総理大臣の発言を夜のニュースで見たが、『とうとうここまで言ったのか』と思った。一議員として、国民の政治に対する信頼を取り戻していくことは不可欠で、実効性のある対策を講じることが重要だと考える」と述べました。

また、派閥の解散が実効性のある対策なのかと記者団から問われ「派閥はあっておかしくないと私は思う。ただ国民からすると、派閥があるからこういう事態が起こっているという批判もあると思う。いったん派閥を解消して活動していくというのも、国民の信頼を得るために必要なやり方かもしれない」と述べました。

高市経済安保相「改革への強い思いで述べたのでは」

かつて安倍派の前身の派閥に所属し、今は無派閥の高市経済安全保障担当大臣は、閣議のあとの記者会見で「岸田総理大臣は自民党総裁の立場にもあり、改革への強い思いとして述べたのではないか。国民の信頼を得られるよう党の政治刷新本部で議論が行われており、私の立場としては、閣僚として一つでも成果を挙げ、岸田内閣の実績を作れるようコツコツと働いていきたい」と述べました。

公明 石井幹事長「潔い判断」

公明党の石井幹事長は記者会見で「岸田総理大臣は宏池会に強い思い入れがあると思うので、そういう意味では潔い判断だ。岸田総理大臣の判断がほかの派閥にどれだけ影響を及ぼすか見守っていきたい。派閥の問題は自民党自身が考えることで今回の再発防止策のすべてではなく、あわせて政治資金規正法の改正が必要になる」と述べました。

立民 泉代表「指導力も責任感もない」

立憲民主党の泉代表は記者会見で「岸田総理大臣は自分の派閥のことしか言っておらず、他の派閥のことを言わないなら自民党総裁としての責任を全く果たしていない。各派閥で億円単位の裏金が発覚しても、とりつぶしをしようとせず、指導力も責任感もない」と述べました。

また「岸田総理大臣は派閥を離脱していたのではないか。離脱はフェイクであり、実際の運営権は岸田総理にあったことが今回の『岸田派解散宣言』で明らかになった」と述べました。

一方、東京地検特捜部が、安倍派や二階派の幹部について立件しない見通しとなっていることに関連して「東京地検には捜査権限があり、国民が納得する結果を出してもらいたい。収支報告書に記載されていない金額が4000万円や5000万円だったら立件され、1000万円だったら大丈夫という理屈があるのか。納得できないという人がほとんどではないか」と述べました。

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●「【速報】志帥会・二階元幹事長「派閥を解消したい」派閥の政治資金事件受け議員総会で言及」

TBS NEWS DIG 1/19() 15:54配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/a826d7ec7fe6cc1ae8c23c0b4db3871ceddfce3c

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受け、二階派の会長を務める二階俊博元幹事長は議員総会で「派閥を解消したい」と話したことが分かりました。議員総会に出席した議員が明らかにしました。

二階派の政治資金パーティーをめぐっては、おととしまでの5年間でおよそ2億円が裏金となり、政治資金収支報告書に記載されていなかった疑いがもたれています。

東京地検特捜部は二階派の元会計責任者を政治資金規正法違反の罪で在宅起訴したほか、二階氏の事務所では派閥に納めていない「中抜き」とよばれる不記載の資金が3000万円以上あったとして秘書が略式起訴されています。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 日本の原子力政策は日本政府が独自に、単独で行っているというのは幻想だ。原子力エネルギー利用は、アメリカで、当時の若手議員だった中曽根康弘が習ってきて、日本でスタートさせることになった。2011年に東日本大震災が発生し、福島第一原発で爆発事故が起きた。その際も、首相官邸にはアメリカ政府関係者が詰めていた。日本が何かを行う場合に、アメリカに相談しなければならない。この表現はまだ甘いもので、実際にはアメリカが命令し、日本はそれに従う、ちょっとした意見具申ができるというのが実態だ。第二次世界大戦後、アメリカの世界支配が確立したが、日本はアメリカにとっての「優等生的属国」「モデル属国」である。そうやって70年以上が過ぎた。属国根性は代を継いで日本国民の中に根を下ろしている。

 事故が起きた福島第一原発の原子炉を冷却するために、膨大な量の水が必要である。原子力燃料に直接触れて、直接冷却する。燃料に触れた水をそのまま川に流したり、海に流したり、地面に流したりできない。それは様々な核物質が入っており、汚染してしまうからだ。そのために、ALPS処理を施して、薄めて海に放出するということを日本政府は決定した。冷却に使った水が大量に保存されて、それが大きな負担になっているからだ。

 薄められた水の海洋放出を受けて、韓国や中国では反対の動きが起きた。日本産の海産物の買い控えということが起きている。韓国政府は冷静な対応、中国政府は批判を行っているが、過剰な反応というところまでは至っていない。
 処理水(汚染水)の海洋放出を日本政府に命じたのはアメリカだ。中国が嫌がることは進んでやるというのが今のアメリカだ。日本の福島第一原発の汚染水の放出は、日本政府がそこまで強硬に進める必要がないものだったし、他にも方法があったと考えられる。近隣のアジア諸国との関係を考えても、海洋放出はあまり上策ではなかった。それでも、アメリカに命令されればそれに従うしかない。

 日本の国益にならない政策を近隣諸国に十分な説明もせずに行ったことは外交の失敗である。しかし、日本政府だけを責めることはできない。日本政府に外交において自主的な判断や決定を行うことはできない。アメリカの意向にあくまで従うしかできない。それがもう80年近く続き、属国根性がもう「習い性になっている」。親子どころか、三代、四代にわたって属国を続けてしまった日本。世界の大きな構造転換の時期に直面し、アメリカと一緒に没落していくしかできないのだろうかと思えば、何とも悲しくなってくる。

(貼り付けはじめ)

●「東大准教授、処理水の風評被害500億円補正予算「ナショナリズムに話をスライド」中国の反応は「外交の失敗」」

9/17() 13:51配信 デイリースポーツ

https://news.yahoo.co.jp/articles/ddd3f52ad805f4d04edf390160ced9f37e92edfe

 拓殖大学の富坂聰教授が17日、テレビ朝日系「ビートたけしのTVタックル」に出演し、福島第1原発の処理水の海洋放出について中国のスタンスを解説した。

 処理水に含まれるトリチウムは中国の原発が排出するものよりも少ないというデータが示されている。MCのビートたけしが一般的な中国人は自国の原発については「分かってないの?」と質問。東国原英夫が「分かってないでしょうね」と語ったが、富坂氏は「分かってますよ。上の方のいろんなことを理解してる人たちとか、都会の人とかそういう人たちは知ってるけど、いいかげんに騒いでる人も多い」と知識のある人もいると反論した。

 「上の方の人」の見解は「冷却水と今回の処理水は違うものだ」と解説。中国では「冷却水はゆで卵をゆでた水、処理水は途中で卵がはじけた水を」と説明されているとした。

 東京電力は処理水の放射性物質の含有量などのデータを公表しているが、富坂氏は「東電に対する信用がないわけですよ」とした。元衆院議員の宮崎謙介氏は東電は中国にも何度も説明しているとした上で、ALPSで放射性物質の多くは取り除かれているとした。富坂氏は「ALPSで本当に取りきれているのかという証明を中国の専門家を入れてやればいい」と返した。

 東京大学の斎藤幸平准教授は「中国とかが反対するっていうことを日本政府も分かってたわけですよね。それを説得できないまま流しちゃってるっていうのが外交の失敗」と科学ではなく外交の問題だと分析。富坂氏も「仰るとおり」と同意した。

 斎藤氏は国が漁業者支援に500億円の補正予算を付ける方針であることに「わたしたちの税金なわけであって、最終的には『食べて応援しよう』みたいな、外交のツケをナショナリズムで話をスライドさせて」と指摘。富坂氏は「本当に仰るとおり」と再度同意した。

 さらに東電の説明についても「放出するという前提でやられたら、そういう場所に行って『話を聞いたからあなたOKね』って言われても困るから『行きたくない』って言ったんですよね」と解説。「ALPSで本当に取りきれているのかという証明を中国の専門家を入れてやる」には中国側のハードルがあることも語った。

(貼り付け終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権成立前から、アメリカ、インド、オーストラリア、日本の戦略対話枠組である日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad、クアッド)が大きく報道されるようになった。バイデン政権の国家安全保障会議アジア・太平洋調整官(National Security Council Coordinator for the Indo-Pacific)であるカート・キャンベルが責任者の、対中封じ込め枠組である。日本の一部極右、単純なバカ右翼は「これでアメリカと一緒に中国征伐だ!」と喜んでいるようだが(自分たちだけで切り込むぞという考えがないところが奴隷根性そのものである)、事はそう単純ではない。

この枠組に入れられた、インドもオーストラリアも表面上は勇ましく、アメリカの意向に沿うように動いているように見せかけて、面従腹背、裏では「アメリカも中国も迷惑だなぁ」「勝手にやってろよ、馬鹿どもが」と言わんばかりの態度である。日本も、特に経済界は中国と全面的に衝突することは望んでいない。

アメリカは単独では中国を抑える力を持ってはいない。皮肉なことに中国をここまで成長させたのはアメリカの国内市場の旺盛な消費の結果であるが、今頃になって、インドとオーストラリア、日本を巻き込んでいざとなったら、けしかけさせようというところまで来ている。インドは中国と国境を接しているが、中国との全面的な衝突は望んでいない。オーストラリアは二面作戦である。アメリカにも中国にも両属という形を取る。これは非常に賢いやり方だ。以前にもご紹介したハーヴァード大学のスティーヴン・ウォルト教授の論稿では、ドイツが米中露の間をうまく泳いでいるとして高い評価であったが、オーストラリアは米中の間をうまく泳いでいくことになるだろう。

問題は日本だ。日本も面従腹背、二面作戦で行くしかない。どことも喧嘩せず、が基本だが、日本の場合にはアメリカの属国という「立場」がある。非常に利用されやすい。国内の単純な右翼、反中反韓の人々が焚きつけられて、中国と韓国へ吠えかかる役割を果たされるだろう。エマニュエル大使のSNSへの投稿は非常に危険だ。アメリカが前面に立たず、日本が代理で中国にけしかけられる、気づいたら一緒にやっていたはずのインドとオーストラリアがいない、屋根に上ったが良いがはしごを外されてどうしようもないという状況に陥ることが懸念される。のらりくらり、どことも喧嘩しない、というのが長生きの秘訣だ。

(貼り付けはじめ)

ティーム・バイデンは外交を「アジアへのピヴォット2.0」から始める(Team Biden Should Start With an Asia Pivot 2.0

-中国を封じ込めるというアメリカの政策には、バイデンの支援者たちが認めるであろう寄りもトランプ政権からの継続性がより必要となる。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2020年10月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/10/19/biden-trump-china-india-asia-pivot/

日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad、クアッド)の最新の会合が東京で開催された。この場で、アメリカが中国を封じ込めようとしている中で、多くのディレンマに直面していることが明らかになった。誰が今回の選挙でホワイトハウスへのレースに勝利するかは、このディレンマには関係がない。インドは伝統的に中国と対立することを避けようとしてきているが、そうした中でオーストラリア、インド、日本、そしてアメリカの外交担当大臣と長官が会合を持ったことが重要である。しかし、外相会談それ自体は4か国の新たな協力体制構築の明確な証拠を示すものではなかった。外相会談は、アジアにおける中国の台頭に対する懸念を共有する同盟国やパートナーとの間でさえ、ワシントンが行動を調整するのがいかに難しいかを浮き彫りにしている。

民主党大統領選挙候補のジョー・バイデンが勝利した場合、より伝統的な多国間外交政策を重視する彼にとって、この未熟なパートナーシップを更に発展させることは重要な課題となる。同時に、習近平国家主席がここ数カ月、より積極的な国際姿勢を取っている中国に対してより厳しいアプローチを約束した。このことは、アジア地域におけるアメリカの政策は、民主党所属連邦議員の多くが認めたがっている以上に、ドナルド・トランプ米大統領のアプローチとの連続性が必要であることを意味している。しかし、ワシントンのアジア政策の多くが混乱状態にあることは否定できない。より広範な見直しが必要だ。2011年に当時のバラク・オバマ大統領が発表した「ピヴォット(pivot)」戦略に類似した、より広範な見直しがが必要なのである。

中国の王毅外交部長は、4か国の戦略対話は少なくとも中国を苛立たせる能力は有していることを認めた。マレーシア訪問中、王毅は戦略対話のメンバー国が「インド太平洋版NATOan Indo-Pacific NATO)」を作ろうとしている、その目的は「地政学的な競争の火に油を注ぐ」ことだと非難した。この発言の内容は非現実的だ。アメリカは第二次世界大戦後にアジア地域にはNATOのような組織はふさわしくないと認識していた。アジア地域では、アメリカのパートナー諸国と同盟諸国は広く拡散し、個別の利益は多種多様である。新しい同盟のような関係を設立しようとした以前の失敗を経て、2017年に再生して以来、日米豪印戦略対話(Quad、クアッド)は、テロ対策、サイバーセキュリティ、沿岸警備サーヴィスといった、あまり攻撃的ではない分野を議論する低レベルの会合に限定されている。しかし、これは役に立たないという意味ではない。実際、サルヴァトーレ・バボネスが、『フォーリン・ポリシー』誌上で論じたように、戦略対話は廃止されるべきものでもない。実際、スタートは遅かったが、このグループは徐々に大きな意味を持つようになるだろう。

戦略対話の根底には、インドの考え方の変化がある。最近のヒマラヤ地域での中国との衝突を経て、ニューデリーは米中間のバランスを取る政策をほぼ放棄し、より強固に反中陣営に参加するようになっている。かつては中国への挑発的な行動を避けていたインドの政策担当者たちが、今では挑発的、積極的な行動を取るようになっている。地政学的緊張が高まっている時期に東京で日米豪印戦略対話会議を開催したのはその明らかな具体例だ。また、インド、日本、アメリカの3か国がこれまで参加し実施してきたマラバール海軍演習に、オーストラリアが参加することを発表したこともその一例である。アメリカとインドは、中国の軍事力の増強懸念し、対潜水艦戦などの分野でも軍事協力を深めている。

しかし、日米豪印戦略対話を強力に支持する人々でさえも、このグループの限界は認識している。最近の会議では、偽情報(disinformation)や新型コロナウイルスの管理など、中国に傾斜した幅広い議題が扱われたことが外交文書から読み取れる。しかし、4か国は正式な共同声明に合意することができなかった。おそらく、そうしようとさえしなかったのだろう。そう考えると、NATOのような組織を作る計画を進めるというのは、特にあり得ないことのように考えられる。北京から見ると、日米豪印戦略対話は中国を封じ込めるための攻撃的な計画のように見える。しかし、実際には慎重かつ消極的な姿勢にとどまっている。今のところ、中国の侵略という認識だけが、4か国を協力に向かわせている。今後とも、中国の行動が協力に拍車をかける可能性は高い。

ここから、アメリカの政策に関するディレンマが始まる。スティーヴン・ビーガン米国務副長官は2020年8月、日米豪印戦略対話の主な問題点を言い当てた。「中国の脅威に対応すること自体、あるいは中国からの潜在的な挑戦に対応すること自体、十分な推進力になるとは思えない。また、対話で話される内容はポジティブな議題でなければならない」とビーガンは述べた。しかし、ビーガンの上司であるマイク・ポンペオ国務長官は、北京に対してはるかに対決的な姿勢を取っている。これまでのところ、ポンペオは他の日米豪印戦略対話のパートナー諸国を怯えさせることなく、この姿勢を貫いている。しかし、他の3か国が何らかの形で中国との協力を求めていることを考えると、このアプローチには限界がある。

日米豪印戦略対話参加諸国は、中国とその行動に対して共通の懸念を抱いている。中国がインド太平洋地域の支配的な存在になるような事態は避けたいと考えている。しかし、何をすべきかについての処方箋を共有しているわけではない。ニューデリーの最近の変化を見ても、インドもオーストラリアも日本も、正当な理由なく中国を困らせたくはないのである。いずれも中国の強圧的な外交のリスクを懸念している。特にオーストラリアと日本には、維持すべき重要な経済的結びつきがある。東南アジアの国々の多くは、内心では中国の役割を懸念しているが、北京に対抗するための公的な行動を支持することには慎重で、こうした状況は各国の二枚腰の姿勢を生み出している。シンガポール出身の元外交官ビラハリ・カウシカン氏は最近、『ジ・オーストラリアン』紙とのインタビューで、「ポンペオのようなハードな封じ込めを口にすれば誰も参加しない。日本やオーストラリアであってもそうだ」と述べている。

これら全てにおいて、ワシントンにとって真の危険は、アジアへの取り組みが実際よりもうまくいっていると考えることだ。元アメリカ通商代表のロバート・ゼーリックは最近、トランプの中国政策が特に貿易面で「完全な失敗」だったと主張する、辛辣な論文を書いている。この先も、問題点のリストは長い。他のクアッド3か国との関係は改善しつつあるが、韓国やフィリピンといった伝統的なパートナー諸国との関係は破綻している。アメリカは、狭義の安全保障上の問題を超えて、より広範なアジア諸国とより深い関係を築くための経済的政策を欠いている。「中国を恐れるあまり、トランプ政権は北京の真似をし、アメリカの最大の強みである法の支配に基づく公正で革新的で競争力のある市場を破壊している」とゼーリックは『ワシントン・ポスト』紙上に書いている。

残るのは、軍事的な競争に頼った、バランスを失したアプローチである。2020年10月初旬、マーク・エスパー米国防長官は、アメリカは今世紀半ばまでに海軍の艦船を有人・無人合わせて500隻以上に拡大する計画であると述べた。国防総省の最近の調査によると、これは現在350隻の艦船を有する中国に対して海上での優位性を維持するための積極的な試みとなる。軍備拡張は、超党派のコンセンサスでもある。バイデンが勝利した場合のエスパーの後任として有力視されているミシェル・フロノイは最近、「南シナ海にいる中国の軍艦、潜水艦、商船を72間以内に全て沈める」ことができる能力をアメリカが開発すべきであると考えている。

次のアメリカ大統領が誰になるにせよ、アジアにおけるアメリカの軍事力を強化することが必要となる。中国の海軍の近代化は、アメリカの単独行動では追いつけないペースで進むと考えられる。しかし、これまで中東やヨーロッパからアジアへアメリカ軍をシフトさせる試みは、遅々として進まなかった。新型コロナウイルス感染拡大の後では、余分な資源を見つけるのは難しいだろう。どのような現実的なシナリオであっても、米国はパートナー諸国とこれまでと異なる種類の軍事関係を築かなければならないだろう。そうなるにしても、日米豪印戦略対話がこの強化された軍事協力の主要な手段になるとは考えにくい。

軍事力と反中国外交政策に傾くことで、アメリカの対アジア政策はバランスを欠くものとなっている。アメリカの元外交官エヴァン・フィーゲンバウムは、アメリカが「アジアにおけるヘッセン傭兵(Hessians of Asia)」になってしまうと警告を発している。ヘッセン傭兵とは、アメリカ独立戦争においてイギリス側が雇ったドイツ人傭兵部隊のことである。フィーゲンバウムの言葉が意味するところは、アメリカの同盟諸国とパートナー諸国はアメリカを中国に対する軍事上の釣り合いを取るための装置と考えるだろうが、アジア地域の政治上、経済上の諸問題を解決するための方策にはならないとも考えるだろう、というものだ。このようなアプローチは、ビーガンが述べた「前向きな課題」を追加しうる多くの差し迫った懸念を考慮すると、特に近視眼的であるといえるだろう。アメリカがアジアにおいて、ヨーロッパにおけるNATOのような効果的な集団安全保障システム(collective security system)を構築しようとするならば、非軍事的な関係、目標、価値の共有を反映したパートナーシップによってそれを実現しなければならない。

新型コロナウイルス感染拡大からの回復を加速させるための様々な方法は、各国の協調を進めることである。それによって各国間の関係が深化し団結する。国際貿易システムの修復はもう一つの方法である。国際貿易分野において、アメリカは環太平洋経済協力協定から脱退して以降、主導することに苦闘している。トランプ大統領の破壊的で一貫性のない政策に阻まれてきたのだ。サイバーセキュリティから人工知能と電気自動車のような出現しつつある部門を監督するルールまで、非軍事的な協調のための大きな根拠になる。しかし、繰り返しになるが、日米豪印戦略対話がそのための最適な場となるとは考えにくい。その代わり、アメリカはより広範なアプローチを必要としている。2011年のオバマ大統領のピヴォット(軸足転換)政策は、多くの批判を受けながらも、少なくとも、現在のアメリカの外交政策に欠けている目標の多くを達成しようとするものであった。それは、アジアにおけるアメリカの軍事力を強化する一方で、伝統的な同盟関係を修復し、より深い経済協力関係を構築することを目指したものである。その実行力は乏しかったかもしれないが、基本的な考え方は健全であった。バイデンが大統領になった場合、「アジア・ピヴォット2.0(Asia Pivot 2.0)」を構築することは、素晴らしい出発点となるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 昨年の大統領選挙前、「アジア諸国はバイデンの対アジア外交に疑念を持っている」という内容の論稿が発表された。ここでは備忘録の意味もあって、それを紹介する。

 内容はいたって簡単で、「オバマ大統領は中国に対して融和的で関与しよう、させようとしてきたために中国を強化させた。一方、トランプ大統領は中国には対決的な姿勢で臨んだ。バイデンが大統領になったら、融和的で関与政策に戻ってしまう。こうしたことをアジア諸国は憂慮している」というものだ。

 バイデン政権のアジア政策に関しては、中国に対して対決姿勢(クアッド)を取る派のカート・キャンベルNSCインド・太平洋調整官(「アジア政策のツァーリ」と呼ばれている)と「中国とは破滅的な結果にならないに様に競争する」派のジェイク・サリヴァン大統領国家安全保障担当補佐官がいる。この2つの流れの中で、後者の流れを主にしながら、前者の対決的な姿勢があることも意識させるという構図になっている。しかし、大きな流れとしてアメリカはアジアから少しずつ引いていく。

 昨日以下のような記事が出た。

(貼り付けはじめ)

●「キャロライン・ケネディ氏、駐豪大使に…岸田氏とも交流」

2021/12/16 10:16

https://www.yomiuri.co.jp/world/20211216-OYT1T50126/

 【ワシントン=田島大志】バイデン米大統領は15日、駐オーストラリア大使にキャロライン・ケネディ元駐日大使(64)を指名すると発表した。

 ケネディ氏はジョン・F・ケネディ元大統領の長女で、オバマ政権下の2013~17年、女性初の駐日大使を務めた。オバマ大統領の広島訪問や安倍首相の米ハワイ・真珠湾訪問の実現に貢献し、当時外相だった岸田首相とも交流を重ねた。

 バイデン政権は中国への対抗を念頭に、米英豪の安全保障協力の枠組み「オーカス」を創設するなど、豪州を重視しており、ケネディ氏にさらなる関係強化を託すとみられる。

 バイデン氏は、フィギュアスケート元世界女王のミシェル・クワン氏(41)を駐ベリーズ大使に充てることも明らかにした。

(貼り付け終わり)

 キャロライン・ケネディは民主党の超名門であるボストン・ケネディ王朝のプリンセスであり、「使い勝手」の良い人物だ。キャロラインの駐豪大使指名は、「オーストラリアをしっかりアメリカ側で確保する」という意思表示であるが、ここに重要な手駒であるキャロラインを持ってこなければならないというのは、その確保が最重要でありながら、とても難しいということを意味している。そして、アメリカはオーストラリアまで「引く」ということを示している。

 上の記事にあるが、民主党のフィギアスケートの元人気選手で世界女王にもなった中国系のミッシェル・クワンは大統領選挙でバイデンを熱心に応援しており、その論功行賞ということもあるが、現在中国が影響力を増しているアフリカに対する攻めの一手の手駒ということになるだろう。政治的な動きができるかは未知数だが、クワンの将来の政界転身に向けた箔つけのための準備ということもあるのかもしれない。

 アジア諸国の意向としては「米中が本格的に対決して、自分たちに迷惑が掛かるのはごめんだ。アメリカが衰退するなら自分たちに迷惑が掛からない形で、引いていって欲しい。中国との関係は自分たちで折り合いをつけるから」ということになる。「中国怖い、アメリカがいなくなるのは嫌だよー」というのはあまりに小児病的で単純過ぎる考えだが、日本はそれが主流になっているというのが、日本外交の弱点ということになる。しかし、その裏では「中国ともきちんとつながらなくては」という「本音」も存在し、それが機能している。

(貼り付けはじめ)

アジア地域においてバイデンは信頼に対して疑問を持たれている(Biden Has a Serious Credibility Problem in Asia

-アメリカの同盟諸国はトランプ大統領とうまくやっており、彼の中国に対する強硬な姿勢に好感を持っている。そして、バイデンの勝利について懸念を持っている。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2020年9月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/10/trump-biden-asia-credibility-problem/

ビラヒリ・カウシカンはシンガポールの幹部クラスの外交官を務めた。彼は物事をはっきり述べることで知られている。しかし、オバマ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスーザン・ライスに対するカウシカンが最近発したコメントは通常よりもかなりきついものとなった。今年8月、カウシカンはフェイスブックに「ライスが災いの種になるだろう」と書き込んだ。この時に民主党の大統領選挙候補者ジョー・バイデンがスーザン・ライスを副大統領候補者に選ぶことを考慮しているという報道が出ていた。カウシカンは、バイデンが当選して政権を担う場合に国務長官と国防長官に就任する可能性があるライスについて、中国に対して弱腰になるだろうと述べている。カウシカンは「アメリカは、気候変動における中国との協力を得るために競争を強調すべきではない、と考える人々の中に、ライスは含まれている。このような考えは国際関係の本質についての根本的な誤解である」と書いている。カウシカンはバイデンの勝利後の予測を次のように述べている。「私たちはトランプ時代について郷愁をもって振り返ることになるだろう」。

カウシカンの厳しい見方はアジア地域において知的な人々の間では例外だと考えられるだろうが、バイデン政権の外交に関しては例外ではない。アメリカのアジア地域における友人たちは、バイデンの勝利を静かに心配しており、日本やインドなどの重要な同盟諸国にとってはなおさらだ、という事実はワシントンにいる多くの人々を驚かせている。米国では、左派と右派からトランプ大統領を不快に思い、彼の政治に絶望している人々が出ている。そうした人々は、心ある外国人なら誰でもそのように考えるはずだと確信している。ヨーロッパの多くの地域ではそうかもしれない。しかし、アジアの多くの地域ではそうではない。東京、台北、ニューデリー、シンガポールなどの各国の首都の政府高官たちは、トランプ大統領の中国に対する厳しいアプローチに比較的慣れている。一方、バイデン大統領誕生の可能性が高まる中、アジアの有力者の多くは、北京に対して焦点が合わず、甘い態度をとっていたオバマ時代の不快な記憶を思い出していることだろう。その記憶が正しいかどうかはひとまず置いておいて、バイデンにはアジア地域における信用にかかわる問題があり、それを解決するのは難しいかもしれない。

民主党全国大会における演説の中で、バイデンは自身の政権の重要課題を4点挙げている。それらには新型コロナウイルス感染拡大対策や人種間の正義の促進が含まれている。中国への対処はアジア諸国の外交政策関連エリートたちの重大な懸念となっている。しかし、中国への対処はバイデンの挙げた重要課題の中に入っていなかった。今回バイデンが中国について言及しなかったことについては、東京でも注目されている。例えば4月の『アメリカン・インタレスト』誌の論説記事では、トランプに対する日本の見解がうまくまとめられていた。論説記事のタイトルは「対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy)」であり、日本外務省の官僚が匿名で書いたものだ。論説の中で著者の外務官僚は、オバマ時代の中国政策について、「優先的な使命は常に中国との競争ではなく、中国との関わり合いを持つことだった」と痛烈に批判している。トランプの諸政策は不完全だが、北京に対するより強硬なアプローチは歓迎されると著者は主張している。この官僚は「もし可能だとしても、トランプ大統領出現以前の世界に戻りたいと私は望むだろうか?」と問いかけている。この人物は次のように続けている。「東京にいる意思決定者の多くにとって、その答えはおそらく“ノー”だろう。なぜなら、トランプ政権下で実行が不十分でも基本的には正しい戦略を採用されている方が、オバマ政権下で実行は十分でも曖昧な戦略を採っていたことよりも良いからだ」。

公平に見て、この匿名の著者による論稿記事は日本政府の考えの一つを示している。しかし、論稿の発表には外務省の正式な承認が必要だったことは間違いなく、多くの高官の意見が反映されていると考えられる。また、2019年末に日本を訪問した際に私が聞いた話では、政府高官や外交アナリストたちは、トランプが再選されることについて、驚くほど楽観的な見方をしていた。対照的に、バイデンが当選すると、中国のパワーを管理し、抑制するための政治的意志が欠如していると多くの人が指摘するアプローチが復活するリスクがあると考えていた。

同様の思考はインド政府でも表面化している。インド外相で知性の高さで知られるスブラマニヤム・ジャイシャンカルは昨年、トランプ大統領が米印関係を損なったと考えておる人たちに反撃している。彼は「この23年の間にトランプに見られたのは、伝統的なアメリカのシステムとはまったく違うものだった。実際に、多くの分野で大胆な断固たる措置が実行された」と述べている。急速に悪化する中印関係の中で、インド政府は、トランプ大統領の混沌とした、しかし強引な反中政策を評価するようになっている。少なくとも、バイデンの登場は、インドの戦略的立場を複雑にする可能性がある。外交問題のコメンテーターであるラジャ・モハンは最近、バイデンは中国との対立を減らす一方で、トランプ大統領のロシアへの甘いアプローチを終わらせるだろうと予測している。モハンは「米露関係の新たな緊張とバイデン政権下での米中和解は、インドの諸大国との関係を確実に複雑にする」と書いている。

同様の懸念は台湾にもある。台湾の外交関係の高官たちはアメリカの対中政策の変化に敏感になっているのは当然のことだ。アメリカ合衆国保健福祉省長官アレックス・アザールが最近台湾を訪問したことはアメリカ政府との関係を深化させることになる。ワシントンに本拠を置く政策グループであるグローバル・タイワン・インスティテュートの副所長チィティン・イエは「台湾はトランプ政権第一期で利益を得た」と述べている。彼は台湾の多くの人々は「未検証の選挙公約よりも現在のコース」を支持するだろうとも述べている。

バイデン選対は、トランプの再選に安心感を持っているように見えるアジアの人々と意見が合わないだろう。多くの意味でそうするのが正しいことだ。二期目のトランプ政権は、既存の米国との同盟関係を無視した取引的なアプローチから、小さいながらも中国との軍事衝突のリスクの高まりまで、アジア地域に大きな損害を与える可能性が高い。また、バイデンへの疑念が普遍的なものではないことも事実だ。アジア地域の多くの人々は、米国の外交が対決的でなくなることを歓迎し、新たに融和(accommodation)の時代が到来することを期待している。シンガポールのリー・シェンロン首相は最近、トランプ政権ではなくバイデン政権の下で起きる可能性について次のように書いている。「米中2つの大国は、ある分野では競争をしながら、他の分野では対立が協力を妨げることのないような、共存の道を探らなければならない」と書いている。

更に言えば、バイデンは現在までのところ、オバマに比べてより強硬な対中国政策を主張してきている。今年初めの民主党予備選挙の討論会の席上、バイデンは中国の習近平国家主席を「犯罪者(thug)」と呼んだ。別の討論会では、中国を「権威主義的独裁政治(authoritarian dictatorship)」と形容した。アメリカの政治指導者たちの大多数と同様、バイデンは「中国は改革可能だ」という考えを放棄し、アメリカは、アジアに出現した競争相手である中国を打ち負かさねばならないと主張している。バイデン選対はより微かなシグナルをアジア各国に送っている。バイデンは、東南アジア諸国連合(ASEAN)への働きかけや、トランプが欠席しがちだったアジア地域の会合にバイデンが積極的に出席することを示唆している。バイデンの上級顧問の一人アンソニー・ブリンケンはツイッターに次のように投稿した。「東南アジア諸国連合は、気候変動と世界の医療レヴェルのような重要な諸問題に対処するためには必要不可欠な要素である。バイデン大統領は、重要は諸問題について、東南アジア諸国連合に出席し、関与することになるだろう」。

しかし、バイデンと彼のティームがよりタカ派的な対中国姿勢を推進する一方で、ジレンマに直面している。一つ目は人権に関してである。バイデンは、新疆ウイグル自治区に住む数百万人のイスラム教徒のウイグル族の窮状をしばしば取り上げ、この問題を北京に対する厳しいアプローチの中心に据えている。今月、チベットにも焦点を当てた厳しい言葉で、「私はアメリカの外交政策の中心に価値観を戻すことになる」と述べた。これは米国の進歩主義者にとっては魅力的なことかもしれない。アジア地域では、米国が友人に説教をしたり、民主的な改革を求めたりするという、オバマ時代の幸運とは程遠い色合いを帯びている。

さらに、気候変動問題に代表されるような第二の問題もある。バイデンは最近次のように書いている。「アメリカは中国に対して厳しい姿勢を取る必要がある。この課題に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナー諸国が一丸となって、中国の虐待や人権侵害に立ち向かうことである。それでも、気候変動など利害が一致する問題では、中国政府との協力を模索する」。トランプが気候問題に関心を持たないことを考えると、この緊張感がトランプを悩ませることはなかった。バイデンは気候変動問題の中国との協力を望んでおらず、民主党内からも進展を求める大きな圧力を受けています。しかし、それを実現するためには、世界最大の炭素排出国である中国への関与が必要だ。カウシカンのような批判者たちにとって、しかし、このような諸問題のリバランスがあるからこそ、バイデンは、オバマ大統領のように優先順位がバラバラになってしまうのではないかということになる。

究極的には、アジア諸国はどちらの候補者がホワイトハウスに入ろうがそれに適応するだろう。バイデンが勝利すれば、バイデンに疑問を持つ人々の懸念をすぐに和らげることができるだろう。トランプ時代の予測不可能性に郷愁を持つことはほぼないだろう。しかしながら、現在のところ、アジア諸国がバイデンに抱いている疑念は本物である。バイデンにとって最も大事なことはアメリカの有権者たちからの支持を得ることである。しかし、バイデンが今後の外交政策の中心にアジアの米国との同盟諸国との協力を据えていることを考えると、もう少し安心感を与えるべきではないか。

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対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy

YA

2020年4月10日

『ジ・アメリカン・インタレスト』誌

https://www.the-american-interest.com/2020/04/10/the-virtues-of-a-confrontational-china-strategy/

ある日本の外交官僚は、トランプ政権の中国に対する対決的な(confrontational)アプローチの一部を批判しているが、バランス的に見て、オバマ大統領の関与と融和(engagement and accommodation)に比べて、ほぼ全ての面で好ましいと考えている。

日本の政策立案と実行に関わるエリートたちの間にある、ドナルド・トランプ大統領に対する見方は複雑だ。外交政策の専門家たちに現在のホワイトハウスの主ジョー・バイデンについて質問すれば、批判すべき多くの点を見つけるだろう。しかし、「オバマ大統領時代が懐かしいか」と質問すれば、同じ人たちのほとんどが否定的な回答をするだろう。いや、それ以上かもしれない。

日本の政策担当者たちは、オバマ大統領のいわゆる「21世紀型アプローチ」と比較して、19世紀型の、中国の「生のパワーで地域の全ての国々を威嚇し、自分たちの勢力範囲を拡大する」というやり方と対比して、絶望した。オバマ大統領が、ライバルではなく責任あるステークホルダー(共通の利害を持つ者)として、国際問題で中国と協力する可能性について話している間、中国政府は尖閣諸島に軍艦を派遣し、スカボロー礁からフィリピンを追い出し、南シナ海に人工島を作ることに邁進した。冷戦終結後、日本はアメリカに対して中国に対する警告を発し続けてきた。トランプ大統領には様々な欠点があるが、日本はついにホワイトハウスに、この課題を正しく認識し、評価してくれる人を得たようになった。

日本はこれまでアメリカの楽観的な中国に対する関与政策に公然と反対したことはないが(最初に関与政策が始まったのはクリントン政権下だった)、日本の中国研究者たちは、それによって中国が自由主義的な民主政治体制国家になるなどとは考えていなかった。日本の中国専門家の多くは、2000年の経験に基づいて、「中国はその文化や性質を変えることはない」と主張している。中国は昔も今も将来も中国なのだ。紀元前5世紀の孔子(Confucius)の時代から、中国人にとって世界には一つの天(heaven)と一つの支配者(ruler)、すなわち中国の皇帝(Emperor of China)しかいない。中国人以外の「野蛮人(barbarians)」は、中国の優位性を認めなければならない。

日本はこのような考え方に従ったことはない。日本のインド太平洋に対する歴史的なアプローチは、自国の主権を維持しつつ、近隣諸国との経済的、文化的、そして政治的な交流を維持することであった。近年の中国の台頭に直面しても、日本は主権と繁栄を維持する決意を変えていない。それを可能にしているのは、日米同盟を中心とした現在の国際秩序と地域のバランス・オブ・パワー(力の均衡)関係だ。日本はこの現状を維持したいと考えている。

中国は、少なくとも1992年に領土法(Territorial Legislation)を制定し、尖閣諸島や南シナ海の島々を「中華人民共和国の陸上の国土」とすることを一方的に宣言して以来、一貫して現状に異議を唱えてきた。クリントン政権下での融和の試みが実施された後、ブッシュは中国からの挑戦を真剣に受け止める覚悟を持って大統領に就任した。2001年9月に発表されたブッシュ政権初の「四年ごとの国防計画見直し(Quadrennial Defense Review)」では、初めて中国の挑戦に言及し、「アジア地域に強大な資源基盤を持つ軍事的競争相手が出現する可能性がある」と述べている。911同時多発テロ事件が発生した2001年9月、日本とアメリカは、国連総会期間中に毎年行われている両国の外相・国務長官と防衛相・国防長官の会談で中国について議論する計画を立てていた。中国はすぐにアメリカの国際規模の反テロリズム活動を支援することに同意し、アメリカが他の場所に集中している間、北京は少なくとも10年間は近代化(modernization)の努力を続けることができた。中国は、老朽化した軍隊の更新と近代的なパワープロジェクション能力の開発に多額の投資を始め、近代の中国では初めてとなる大規模なブルーウォーター・ネイビーを構築した。中国は、時代遅れの軍隊の刷新と近代的な戦力投射(power projection、戦力の準備、輸送、展開)能力の開発に多額の投資を始めた。近代の中国では初めてとなる大規模な外洋海軍(blue water navy、世界的に展開できる海軍)を構築した。そして、中国はその新しい能力を活用することに躊躇しなかった。南シナ海の前哨基地は徐々に建設され、機能が高められ、2008年からは尖閣諸島周辺の日本の領海に巡視船(patrol vessels)を送り込むようになった。

政権の座に就いたオバマ大統領は、ブッシュ大統領と異なり、より強硬な姿勢を取ることはなかった。オバマ政権は、リベラル派の知識人たちが主張していたことをそのまま実行していた。それは、世界規模の諸問題での協力を重視し、中国のいわゆる核心的利益[core interests](台湾、チベットや新疆での人権侵害など)には配慮するというもので、中国をよりリベラルなアクターに育て、既存の国際秩序を支えるアメリカの負担を分かち合うことを期待した。政権最後の日まで、オバマ政権は中国が「変更可能(shapeable)」であると信じていた。

オバマ政権期、政策のコンセンサスは一枚岩ではなかった。ワシントンの中国専門家たちの中には、関与の有効性に警告を発する人たちもいた。例えば、ジェイムズ・マンの2007年の著作『中国ファンタジー:資本主義が中国に民主政治体制をもたらさない理由』では、「関与」の概念から導き出される中心的な問題は次のような疑問だ。「誰が誰に関与するのか?」というものだ。我々は本当に中国と関わっているのか、それとも中国が自らの利益のために国際システムと関わっているのか?また、誰が誰を変えているのか?私たちが中国を変えているのか、それとも中国の行動に合わせて国際システムが変わっているのか?アメリカは、中国が立ち直ることに賭けて、かなりの「防御(ヘッジ、hedge)」を行ったと言える。オバマ政権は、日米同盟を強化し、オーストラリアやフィリピンとの軍事協力を強化し、インドやベトナムを緊密なパートナーとして迎え入れた。これらの取り組みは、東京をはじめとするアジアの首都では歓迎された。

しかし、優先されたのは常に中国への関与だった。2016年のオバマ大統領の中国訪問がその具体例だ。2016年7月、中国政府は、南シナ海におけるフィリピンの主張を圧倒的に支持したハーグの国際法廷の判決を、"単なる紙切れ(just a piece of paper "と述べて無視した。その1カ月後の8月には、中国は尖閣諸島に200300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、グローバルヘルスなど、米国が北京との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国の強圧的で不安定な行動を検閲することについては言及されなかった。その1カ月後の2021年8月には、中国は尖閣諸島に200から300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、国際的な医療など、アメリカが中国との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国が強圧的で不安定な行動についての文言を検閲していることについては言及されなかった。

これが、トランプ大統領当選の地域戦略上の背景となった。日本はもちろん、トランプ当選という結果に誰よりも驚いた。しかし、日本政府はすぐに行動を起こした。安倍晋三首相はすぐにニューヨークに飛び、トランプタワーのオフィスでトランプ次期大統領に会った。これは前例のないリスクの高い行動だった。安倍首相は国際問題についてトランプへの対策を講じ、将来のカウンターパートとの関係を構築し、地域の重要性と中国がもたらす課題について明確なメッセージを伝えることができ、日本にとってこの賭けは成功した。2017年2月、大統領就任直後のトランプと会った安倍首相は、その範囲と野心において前例のない共同宣言(joint declaration)に合意しました。そのインパクトは2点あった。

第一に、この共同宣言は中国に対して強力な警告シグナルを発した。両首脳は、日本政府が考えていた、アジア地域の平和と安定の基盤となる基本原則全てを確認した。米国は、インド太平洋地域への新たな深い関与、領土侵略に対する核抑止力(nuclear deterrence)、そして朝鮮半島の非核化(denuclearization of the Korean Peninsula)の追求に再び取り組むことを表明した。両首脳が発表したコミュニケ(communiqué)の中には、「アメリカはアジア地域でのアメリカ軍の存在を強化し、日本は日米同盟におけるより大きな役割と責任を担うことになる」と書かれており、さらに両国の外務大臣・国務長官、防衛大臣。国防長官に「両国のそれぞれの役割、任務、能力を見直す」よう指示した。大きな構図では、トランプ自身が合意し、それ以外の「詳細」はすべて上級閣僚が担当することになった。この最初の宣言は、日本だけでなく、アジア地域全体の同盟国やパートナーを安心させた。

第二に、二国間同盟の運営に関する意思決定を変えたことだ。宣言は共同で作成されたが、その内容は日本側が同等かそれ以上に貢献した。北朝鮮への最大限の圧力、自由で開かれたインド太平洋、東南アジアの重要性など、これらの概念は全て、ある程度日本側からの提案であった。アメリカ人の中には、日本にとってのこの転換期の意義を見落としがちな人もいるかもしれない。第二次世界大戦終結以降、日本の外交政策は多かれ少なかれ米国の意向と影響力に左右されてきた。日本の官僚や政治家たちは、日本の意思決定に国際的な圧力を利用することに慣れており、「外圧(Gai-atsu)」という言葉が存在する。今回の転換は心理的にも重要な突破口となった。日本の政府関係者は、これまでのように意見を求めたり批判したりするのではなく、インド太平洋における地政学的課題に対する戦略的方向性やアプローチを、アメリカの政府関係者たちと共同で策定するという初めての試みを行ったということになる。

それ以来、トランプは、習近平との会談の前後や、北朝鮮への対話を開くことを計画する際など、重要な場面で安倍に電話をかけている。メディアの報道によると、2019年5月時点で、安倍首相とトランプ大統領は、10回会談を持ち、30回電話で話し、4回ゴルフをしているということだ。電話での会話を基に測定した、両者の関係の量は、安倍首相がオバマ大統領との関係の数の4倍になっている。これは、トランプ大統領が外国の指導者の間で築いた最も親密な関係であることは間違いない。

しかし、トランプ政権による対中対決政策の実施は、多くのアメリカ人の中で大きな混乱を引き起こしている。ジョー・バイデン元副大統領が最近の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載した論稿の中で主張したように、「その課題(中国)に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナーと共に団結して統一戦線(united front)を構築して、中国の人権を無視し、攻撃的な行動に対峙することだ」ということになる。トランプ大統領は、中国に対してだけでなく、同盟諸国やパートナーに対しても経済的な影響力を行使したことで、アメリカの安全保障の保証や約束の信頼性について、アジア地域全体の多くの人々の間で疑念が生じた。日本も例外ではない。2020年1月に実施された日本経済新聞の最新の世論調査では、日本人の72%が、まさにこの不確実性のために、トランプ大統領の再選を望んでいないことが明らかになった。

それでは、可能ならば、トランプ出現以前の世界に私たちは戻りたいのか?東京の多くの政府関係者にとって、その答えはおそらく「ノー」だろう。その理由は、実行されていないが基本的に正しい戦略は、実行されているが曖昧な戦略よりも優れているからだ。私たちは、アメリカが再び融和政策に戻ることを望んでいない。アメリカの融和政策は疑いなく、日本や他のアジア諸国の犠牲の上に成り立つものだ。

私たちは、日米同盟が取引の上に成り立っているものだとは考えていない。つまり、私たちは、日米の国益によりよく応えると同時に、米国のより広い利益にも資するような同盟関係を望んでいる。より平易な言葉を使えば、中国に明確に焦点を当てた同盟は、曖昧で焦点の定まらない同盟よりも、あるいは最悪の場合、最大の課題に立ち向かうことを恐れている同盟よりも、優れている。その負担をどう分担するかは、同目に関するマネジメントの問題だ。言い換えれば、プロセスの問題ということになる。同盟は、共通の国益を実現するための手段であり、目的ではないことを再確認することが重要だ。

特に西ヨーロッパ諸国は、このような計算に戸惑うかもしれないが、これはヨーロッパが中国との関係において、経済的な取引を優先させ、中国が近隣に力を行使しても指導者が見て見ぬふりをしてきた結果に過ぎない。中国の威圧を受ける側の国にとって、アメリカの対中強硬路線は、米国の政策のどの側面よりも重要だ。台北、マニラ、ハノイ、ニューデリーなどにいるアジア各国のエリートたちは、トランプ大統領の予測不可能な取引を重視する方法は、米国が「責任あるステークホルダー(responsible stakeholder)」になるように中国をおだてることに戻る危険性に比べれば、より小さな悪であると計算している。ある高名な研究者は、「アジア各国のエリートたちは、奇妙なことに、トランプの2期目について悲観的になっている(トランプが当選できないと考えて残念がっている)」と主張している。

実際には、中国からの継続的な圧力に直面しているアジア諸国は、この地域における米国の深い関与とアメリカ軍の存在の継続を切望しており、日米同盟はその重要な構成要素となっている。トランプ大統領が同盟国からどれだけ搾り取れるかを自慢することについては、静かな憤りを感じつつも、ほとんどの国は、米国の深い関与が堅固であることを条件に、負担の分担の見直しを検討する用意があるとしている。ここには、何世代にもわたって安定性を保証できるような、アジア地域の健全な新しい活力を生み出すための真のチャンスが存在している。

もちろん、中国に対してバランスを取りながら対峙する戦略のより洗練された実行は大いに歓迎されるべきだ。それは日本のような考えを同じくする同盟諸国それぞれの強みと支援を活用することだ。2021年1月に誰がホワイトハウスの主になろうとも、日本政府はアメリカと対等な立場で二国間の戦略的議論を継続し、インド太平洋における米国の優位性とアメリカ軍の存在を維持し、我々全員が大きな恩恵を受けている既存のルールを基盤とする国際システムを支持するという現在の戦略目標を賢明に実行することに、共通の努力を傾けることができるように期待している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 日本でのカジノ開発と運営を目指していたシェルドン・アデルソン率いるラスヴェガス・サンズ社が日本進出を断念したというニュースが飛び込んできた。シェルドン・アデルソンはドナルド・トランプ大統領とは長年にわたり盟友関係にあり、大統領選挙では大口献金を行った。トランプ大統領誕生に大きく貢献した人物である。
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トランプ大統領(右)とアデルソン(真ん中)
 日本では統合リゾート(
IR)法が可決されて、カジノをどこに作るかを検討する段階に入っている。東京のお台場、横浜の山下ふ頭、大阪沿岸部などが候補地となっている。カジノ開発をめぐっては自民党所属(当時)の秋元司代議士(元IR担当副大臣)が汚職で逮捕されている。カジノをめぐっては治安の悪化やギャンブル依存症の問題もあり、反対の声も大きい。そうした中で、トランプの盟友アデルソンは日本進出を目指し、トランプ大統領も後押しをしてきた。

 コロナウイルスの世界的な感染拡大によって、大きなダメージを受けているのは旅行業であり、カジノ産業だ。アデルソンはフォーブス誌の長者番付でトップ50に入るほどの世界規模の大富豪であるが、昨年11月の段階では約4兆5000億円あった資産を現在では2兆9000億円にまで減らしている。旅行業の悪化と株式市場の急落がダブルパンチとなったようだ。

 今回の日本進出断念の発表の中で、アデルソンは「既存の施設から利益を生み出すことに力を注ぐ」「マカオとシンガポールの施設から利益を生み出す」と述べている。コロナウイルスの影響もある中で、日本にまで進出する余裕はなくなってしまったということになる。

 日本のカジノ開発はコロナウイルス感染拡大と旅行業の停滞の中では進まないだろう。しかし、コロナウイルス感染拡大収束後には、「インバウンド、観光事業の目玉」として、積極的に推進される可能性がある。アデルソンは諦めたが、日本の市場を狙っている勢力はまだいるだろう。

●「横浜注力」の米ラスベガス・サンズ、日本進出を断念」

神奈川新聞  20200513 13:30

https://www.kanaloco.jp/article/entry-352906.html

 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を運営する米ラスベガス・サンズが日本へのIR進出を断念したことが13日、分かった。同社がホームページ上で発表した。

 同社は、横浜市でのIR開発に注力する方針を示していた。また市は目指すIRの具体的な姿の一つとして、同社がシンガポールで運営する「マリーナベイ・サンズ」を挙げていた。

 会長兼CEOシェルドン・アデルソン氏は「日本におけるIR開発の枠組みでは私たちの目標達成は困難である。私たちは今後、日本以外での成長機会に注力する予定」とのコメントを出した。

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●ラスヴェガス・サンズ社は日本での開発の可能性の追求を終了:会長で最高経営責任者のシェルドン・G・アデルソンは会社の成長見込みに自信を持っている(Las Vegas Sands ends pursuit of potential Japanese development; Chairman and CEO Sheldon G. Adelson remains bullish on company's growth prospects

2020年5月12日

ラスヴェガス・サンズ社のウェブサイトから

https://investor.sands.com/press-releases/press-release-details/2020/Las-Vegas-Sands-ends-pursuit-of-potential-Japanese-development-Chairman-and-CEO-Sheldon-G-Adelson-remains-bullish-on-companys-growth-prospects/default.aspx

ラスヴェガス発。2020年5月12日。ラスヴェガス・サンズ社は本日、サンズ社が日本における統合リゾート(Integrated ResortIR)の開発を継続しないと発表した。サンズ社の会長・最高経営責任者シェルドン・G・アデルソンは次のように述べた。「日本文化への私の愛好と旅行目的先としての日本の強みへの称賛は30年以上前に始まっている。その当時、私はCOMDEXショーを日本で実施し、それ以降、私は私たちの会社が日本で開発を行う機会が持てることを常に願ってきた。日本に対する私の肯定的な気持ちは全く損なわれていない。また、日本は統合リゾートによって生み出されるであろうレジャーと観光から利益を得ることができるだろうと考えている。IR開発を巡る枠組みの中で、私たちの目標は達成不可能となってしまった。 私たちは全ての友情や友人関係に感謝の意を表する。私たちは日本において強力な関係を築いてきた。しかし、現在は私たちの持つエネルギーを他の機会に集中するべき時なのである」。

「私は私たちの会社の未来と成長の見込みについて極めて強気の考え(bullish)を保っている。私たちは、私たちの産業における主導的な市場において最高級の施設を運営している。私たちは現在マカオとシンガポールの両方で重要な投資プログラムを実行している。それは私たちの既存の施設から重要な新しい成長を生み出すためである。MICEmeetings, incentives, conventions, exhibitions)を基盤とする統合リゾートモデル(Integrated Resort model)の成功を確信している。このモデルは私たちがラスヴェガス、マカオ、そしてシンガポールでスタートさせて、発展させたものだ。こうした統合リゾートモデルについては日本以外のアジア諸国でも導入が検討されることになるだろう。特に、各国政府がレジャーと観光を経済成長の動力として増加させたいと考える場合にはそうなるだろう」。

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アでルソンはCOVID-19のために純資産の29%を失ったが、カジノ業界の長者番付では1位を保った(Adelson loses 29% of net worth to COVID-19 but still tops global gaming rich list

ベン・ブラスキ筆

2020年4月12日

ウェブサイト『インサイド・エイジアン・ゲーミング』

https://www.asgam.com/index.php/2020/04/12/adelson-loses-29-of-net-worth-to-covid-19-but-still-tops-global-gaming-rich-list/

ラスヴェガス・サンズ社会長兼最高経営責任者シェルドン・アデルソンは再び世界のカジノ産業の中で最も富裕な人物となった。『フォーブス』誌の2020年の億万長者番付では28位に入り、純資産は268億米ドル(約2兆9000億円)だった。

アでルソンと共にフォーブス誌の2020年版億万長者番付に入ったのは他に投資家のカール・アイカーンだ。アイカーンはシーザース・エンターテインメント社のエルドラド・リゾートの173億米ドル(約1兆9000億円)での買収の裏にいて取り仕切った人物だ。アイカーンは78位に入り、純資産は138億米ドル(約1兆5000億円)だった。ギャラクシー・エンターテインメント・グループの呂志和(ルイチェウー)は106位に入り、純資産は117億米ドル(約1兆2600億円)だった。

しかし、ラスヴェガス・サンズ社のトップはCOVID-19の感染拡大の中で資産を減少させた。2019年11月の段階では24位で純資産は377億米ドル(約4兆500億円)だった。109億米ドル(約1兆1600億円)もの純資産の減少は割合にすると28.9%の減少ということになり、世界的なコロナウイルスの流行によってそれだけの資産を減らしたということを意味する。

コロナウイルスの影響はフォーブス誌の長者番付の中では共通する流れとなっている。フォーブス誌は2020年版の番付を発表したがその中で、「地球上でもっとも豊かな人々もコロナウイルスの影響から逃れることはできない。感染拡大がヨーロッパとアメリカで続く中で、世界中の株式市場が急落し、多くの富が失われている」と述べている。

「私たちがこのリストの最終版を完成させた2020年3月18日の段階で、フォーブス誌は2095名の億万長者(billionaire、訳者註:10億米ドル[約1100億円]以上の資産を持つ人)を集計していた。私たちが最初にこれらの人々の純資産を集計した時の2095名という数字について言うと、1年前に比べて58名少なく、12日前に比べて226名少ない数字となった。」

「億万長者の地位を保った人々の内、51%が昨年に比べて資産額を減らしている。生の数字で言えば、世界の億万長者たちの純資産の合計は8兆米ドル(約864兆円)となったが、2019年に比べて、7000億米ドル(約75兆円)の減少となった。」

アマゾンのジェフ・ベソスは3年連続で首位となった。純資産は1130億米ドル(約12兆円)だ。2位には僅差でビル・ゲイツが入った。純資産は980億米ドル(約10兆5000億円)だ。

ノヴォマティック・グループのオーナーであるヨハン・グラフは純資産65億米ドル(約7000億円)で230位に入り、ポーカースターズの共同創設者マーク・シェインバーグは49億米ドル(約5200億円)で345位に入った。

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