古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、イスラエルとハマスの紛争は半年以上が経過した。4月7日に、イスラエルはラファへの大攻勢を前にして、ガザ地区から部隊を撤収させると発表した。「勝利の一歩手前まで来ている」中で、一部部隊を撤収させた。その前には、アメリカのジョー・バイデン大統領による、イスラエルのガザ地区への攻勢による民間人の死者の増加や国際支援団体の西側諸国の国民の死亡などについて、不満の表明がなされていた。イスラエルとしては、アメリカ側の不快感を増加させないようにするため、一旦停止ということになったようだ。イスラエルは傍若無人であるが、唯一と言ってよい支援国のアメリカの機嫌を損ねたら立ち行かないことは分かっている。

 このブログでも紹介したが、アメリカ国内の世論は、昨年11月の段階での、イスラエル支援への賛成が多数という状況から変化している。イスラエル支援を求めるアメリカ国民は過半数を割っているのが現状だ。これは、アメリカのジョー・バイデン大統領にとっては、アメリカの世論の動きを背景にして、イスラエルに対して強く出られる。「戦闘を停止せよ、アメリカ世論がそのように求めている。もし停止しない場合には、支援についても再検討する」ということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に圧力をかけることができる。イスラエル側としては、アメリカからの支援が減らされてしまえば、孤立を避けられない。

 アメリカとしては、イスラエルがハマスを支援しているということで、イランに対して攻撃を加えることを迷惑に思っている。ウクライナ戦争もママらない状況で、中東で更に戦争が起きることは好ましくない。そうしている間に主敵である中国がどんどん伸びていく。現在、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃し死傷者が出て、それに対して、イランがイスラエルに報復攻撃を行った(イランの武器が旧式で効果はかなり限定的だったと言われている)。イランが抑制的であったという見方もできるが、中東が不安定化していることは間違いない。それで誰が得をするのかということを考えると、それはアメリカではない。

 アメリカ国内でのユダヤ系の人々の影響力の強さ・大きさはこれまでも語られてきた。マスコミにも多くのユダヤ系の人々がおり、世論形成にも影響を与えてきたと言われている。しかし、今回、アメリカ国内でもイスラエルに対しての批判が高まっているという状況になっている。イスラエルとしては、昨年10月のハマスによる攻撃を利用して、ガザ地区を攻撃し、ハマスの弱体化(育てたのはイスラエルなのに)とガザ地区の破壊、そして、イスラエルとパレスティナの二国共存を葬り去ろうということだったのだろうが、当てが外れている。半年が経過してもイスラエルの思い通りにはなっていない。また、世界中でイスラエルとアメリカに対する批判が高まっている。アメリカは何とかイスラエルを止めたい。そのために、アメリカ国内の世論の動向も武器として使いながら、支援条件を厳しくするなどの圧力をかけていこうとするだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカはイスラエルをどのように抑制できるか(How the U.S. Can Rein in Israel

-条件付き援助(conditional aid)を求める声が広がる中、バイデン大統領は非常に効果的な外交手段を見落としている可能性がある。

バーバラ・エリアス筆

2024年2月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/16/us-israel-gaza-conditional-aid-diplomacy/

ラファへのイスラエル軍の攻撃が迫る中、アメリカはガザで進行する人道災害に対処する上で、引き続きいくつかのディレンマに直面している。アメリカ国民や政策立案者たちの声はますます高まっており、アメリカがパレスティナの民間人を保護しながら同時にイスラエルの安全保障をどのように支援できるかを問う声が高まっている。

同盟諸国に矯正するのは難しい外交業務であり、特に国防に対する相手国のアプローチを制限する政策を推進する場合にはそうだ。更に言えば、アメリカのイスラエルに対する長年の関与により、アメリカの交渉力はさらに低下する。危機に陥ったイスラエルの意思決定者たちは、アメリカに恩義があると感じるどころか、フーシ派やイランを含む共通の大胆な敵に対して確立された戦略的パートナーシップを維持するというアメリカの利益が、アメリカ政府がイスラエルの政策立案者たちに厳しく圧力をかけることはできないだろうということに賭けている可能性が高い。

アメリカがパートナー諸国に圧力をかける手段として最も頻繁に議論されるのは、諸改革を援助の条件とすることだ。先週、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員とクリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員を含む著名な民主党議員たちからの圧力の高まりを受けて、ジョー・バイデン大統領は、アメリカの戦略的パートナー諸国全てに対し、アメリカが提供した軍事援助が国際法に従って使用されていることを証明する書面による確認書の提出を求める「歴史的」指令に署名した。しかし、これがイスラエルの政策にどのような影響を与えるのか、またバイデン政権が違反行為にどのように対応するのかは不明である。この措置がガザのパレスティナ人やアメリカとイスラエルの関係にどのような影響を与えるのかが明確でない理由の1つは、援助を改革の条件とすることに伴う複雑な問題を理解していないことにある。

アメリカの外交官たちが以前にもこのようなことを行おうとした。アメリカは自国の利益を保護しながらパートナーを幅広く支援することを目指しているが、これはイラクやアフガニスタンでの戦争で地域の同盟諸国とともにこれまで直面してきた課題である。もちろん、カブールとバグダッドはイスラエルに比べて制度的および軍事的能力がはるかに限られていたため、反乱鎮圧のための占領に関するこれらの同盟はアメリカとイスラエルのパートナーシップとは大きく異なっていた。それにもかかわらず、これらのパートナーシップの力学には大きな違いがあるにもかかわらず、アメリカ政府は、民主政治体制の促進や人権保護といったアメリカの規範や利益を維持しながら、重要な同盟国を支援する方法を見つけ出す必要があった。

歴史が示しているように、イスラエルにガザ政策の穏健化を行わせるために圧力をかける場合、条件付き援助(conditional aid)は、見落とされがちな外交手段である。しかし、アメリカの一方的な行動の脅威(the threat of unilateral U.S. action)ほどには機能しない可能性がある。

理論的には、条件付き援助の形での「厳しい措置・愛の鞭(TOUGH LOVE)」により、アメリカは影響力と物資を交換することができる。しかし実際には、そのようなアプローチの政治は、見た目よりも複雑で、アメリカにとってリスクが高い。

第一に、援助を制限することはパートナーを弱体化させるリスクがあり、それはほぼ常にアメリカの利益に反することになる。パートナーが失敗した場合、そもそものパートナーシップを動機づけた共通の脅威に対して、アメリカの立場も不安定になる。ワシントンが従えばアメリカも結果に苦しむことをパートナー諸国は理解しているため、このことはそのような脅しの信頼性を制限することになる。

2009年、当時のバラク・オバマ大統領はアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領に対し、アフガニスタンにおける汚職と麻薬取引の取り締まりを公式に求めた。なぜアメリカが上記改革を活用するために軍隊と援助を差し控えなかったのかとの質問に対し、元駐アフガニスタン米国大使は率直にその議論は「愚かだ(stupid)」と述べた。なぜなら、カルザイの弱体化はタリバンを活性化させ、アメリカの介入を延長し、アメリカが自国とアフガニスタンのパートナー国に設定した主要な国家建設の基準を後退させる危険性があるからである。

第二に、援助の削減はパートナーシップの将来に損害を与える可能性がある。パートナー諸国が、ワシントンが自国の安全を損なったと判断すれば、イスラエルの場合はロシアを含め、代替の同盟国を探すようになる可能性がある。現在のイスラエルの不安と孤立についての考え方は、並外れた技術を持って行動しない限り、進行中のイスラエル国防軍の作戦中に軍事援助を大幅に制限するというアメリカの脅しは、イスラエル当局者の怒りと抵抗に見舞われる可能性が高いことを意味している。

第三に、専門家たちとは違い、政策立案者たちは、ワシントンのハッタリを非難し、アメリカの要求に従うことを拒否する重要な同盟諸国に対処するという重い責任を負っている。反抗的な同盟諸国はアメリカにとって、双方にとって不利なシナリオを作り出す。アメリカ政府当局者たちが宣言した罰則を遵守し、戦略的パートナーを弱体化させ、場合によっては共通の敵対国を勇気づけるリスクを冒すか、コストを課すことに失敗して信頼性と将来の影響力を失うかのどちらかである。したがって、バイデン政権がイスラエルへの武器供与を遅らせる意向があるとの報道にもかかわらず、ホワイトハウスがまだ明確な計画を発表していないのは驚くべきことではない。

これらのリスクにより、援助の条件付けは、持続可能な外交アプローチとは対照的に、アメリカの外交官たちが通常は使うことを控える、露骨な戦術となっている。アメリカがパートナー諸国に依存すればするほど、援助の条件は魅力的ではなくなる。確かに、無条件援助は、たとえ恐ろしいものであっても、パートナー諸国の政策に対して少なくとも部分的に責任をアメリカに負わせることになるため、無条件援助にもリスクが伴う。たとえば、イラクでは、スンニ派の政治勢力を政府に組み込もうとするアメリカの要請に抵抗するというヌーリ・アル・マリキ元首相の決意が、2014年にイラクとシリアの一部を占拠した反乱の一因となった。幸いなことに、パートナーに圧力をかけるための別の方法がある。

その代わりに、アメリカは、パートナー諸国の参加の有無にかかわらず、それらの国々の国内政治に影響を与える政策を一方的に実施すると脅すことで、パートナー諸国の行動を変えることができる。パートナー諸国に対する強制的なメッセージは、「あなたが政策Xを実施するか、それとも私たちが実行するか、どちらかだ」というものであり、「政策Xを実施しなければ、アメリカは支援を打ち切る」という援助条件の論理とは異なる。前者のメッセージは、同盟国や同盟に広範な損害を与える可能性のある主要資源を削減するという脅しではなく、問題になっている特定の政策に焦点を当てている。

選択的一方的行動(select unilateral action)の脅威は、アメリカの大規模な介入(wide-scale U.S. intervention)を提案することを意図したものではなく、アメリカの利益にとって特に有害な地方政策に影響を与えるように調整することができる。同盟諸国はこれを自国の自治に対する強制的な脅威と認識し、このメッセージを歓迎しない可能性が高いが、目標は賭け金を高め、同盟諸国に妥協に達するよう圧力をかけることだ。

イラク、ヴェトナム、アフガニスタンでは、パートナー諸国の不作為に対して、アメリカが一方的行動を起こすと脅すことで、現地の同盟国がアメリカの要求に従うように仕向けることが多かった。例えばイラクでは、2010年にアメリカがマリキをスンニ派との関与を強めるためにこのアプローチをうまく利用できたのは、バグダッドのシーア派指導者の支持の有無にかかわらず、アメリカが従順なスンニ派指導者との関与を継続すると信頼できる脅しをかけていたからである。(しかし、2011年のアメリカ軍のイラク撤退に伴い、スンニ派民兵を一方的に支援するとの脅しがなくなったことで、アメリカはイラクにおける影響力を失った)。

アメリカが南ヴェトナムの参加の有無にかかわらず、北ヴェトナムとの妥協を進めるという確かな脅しがあったため、アメリカの撤退中にサイゴンの現地パートナーから譲歩を引き出すこともできた。 2010年、アメリカは国連当局者を招いて進捗状況を報告させることで、アフガニスタンにおける穏健な汚職撲滅改革を推進することができた。アフガニスタン政府は傍観されるのではなく、監視プロセスを監視し、途中で政策を形成するという目的もあり、妥協して監視プロセスに参加した。

一方的な行動を取ることで、アメリカの要求を満たすように重要な同盟諸国をうまく誘導してきた実績がある。しかし、それはアメリカが要求された政策を実行する唯一の能力を持っている場合にのみ適用される。例えば、パートナーに国内法の変更や攻撃的作戦からの撤退を強制するためには利用できない。これらはパートナーの参加なしにはアメリカが実施できない改革だからだ。

しかしながら、アメリカは、イスラエルがガザ地区での攻撃をより選択的に行うよう強制するために、この方法を使うことはできない。しかし、ワシントンは、たとえば、ガザ地区での標的に関する詳細な情報を一方的に公開すると脅すことで、イスラエルに活動の透明性と説明責任を高めるよう動機づけることはできる。アメリカの政策立案者たちはまた、監視とモニタリングの一形態として、ガザ地区での民間人の死亡に関する独立調査機関(independent inquiry)の設立を提案したり、紛争に対処するためにアメリカの機関を利用したりすることもできる。ヨルダン川西岸地区でパレスティナ人に対する暴力を扇動した4人のイスラエル人に対し、金融制裁(financial sanctions)を科すという最近のアメリカの決定は、この方向への一歩である。

現在のガザ地区での緊急事態に関して、イスラエルがこの重要な援助を妨害した場合、アメリカは一方的に人道援助(humanitarian aid)を提供すると脅すことができる。たとえば、USNSマーシーやUSNSコンフォートなどの、アメリカ海軍の災害対応艦艇を派遣し、この地域に配属されている空母打撃群(carrier strike groups)に参加させることで、そうすることができる。当然ながら、この措置はイスラエルの軍事作戦を弱体化させかねないと主張する批評家たちもいるだろうが、そうした立場は、パレスティナの民間人とハマスの過激派を区別できないイスラエルの失敗に安住しすぎている。アメリカは、ガザの市民が基本的なニーズと生存を確保できるよう支援することを申し出ることで、現在の攻撃に対する不快感を示すことができる。アメリカの一方的な援助をガザに送り、イスラエル側の協力があろうとなかろうと、この援助は行われると伝えれば、3つの重要なメッセージを送ることができる。

第一に、歴史的記録は、アメリカの一方的な行動に対する確かな脅しが、アメリカによる政権転覆などを避けるためにイスラエルをアメリカの立場に近づける可能性があることを示唆している。第二に、それは地域におけるアメリカの交渉の信頼性を高め、アメリカが紛争における自主的な主体であることと、イスラエルの献身的な同盟国でもあることを強化する。アメリカがイスラエルによるガザ地区占領の継続に反対し、ヨルダン、サウジアラビア、エジプトなどのアラブの主要パートナーとの関係を強化する必要がある可能性があるため、これはますます重要になる可能性がある。最後に、一方的な行動により、アメリカはパレスティナの民間人の死をただ嘆く以上のことができるようになる。アメリカが10月7日に残酷に虐殺されたイスラエルの民間人を守るために行動を開始したのと同じように、現在国連が「終末的な(apocalyptic)」状況と呼ぶ状況に直面しているパレスティナの民間人を守るために、アメリカも行動を開始する可能性がある。

あらゆる国家外交の手段と同様、これはアメリカの外交ツールキットに含まれる数多くのアプローチの1つに過ぎない。条件付援助と比較して議論されることが少ないとはいえ、戦略的パートナーに参加を強制しようとしての一方的な政策行動の威嚇は、安全保障上の同盟関係とパートナーへの物質的支援を維持しつつ、特定のパートナーの政策を問題視することができるので、より微妙でリスクも少ない。加えて、ガザ地区での一方的な政策実行を脅かすことは、アメリカが選択的な援助条件や、イスラエルの立場に異議を唱える国連行動の阻止を再考するなど、さらなる圧力経路(pathways of pressure)を検討することを妨げるものではない。

ガザ地区への攻勢を含むイスラエルの政策がアメリカの利益を侵害するものであっても、アメリカはイスラエルを支援しながら影響を与えようとするため、ワシントンは外交的アプローチにおいて機敏かつ目的意識を持つ必要がある。アメリカはもっとできることがあるし、そうすべきである。

※バーバラ・エリアス:ボードウィン・カレッジ政治学・法学准教授。著書に『同盟国が反乱を起こす理由:反乱鎮圧戦争における反抗的な地元パートナー諸国(Why Allies Rebel: Defiant Local Partners in Counterinsurgency Wars)』がある。ワシントンDCにある国家安全保障公文書館アフガニスタン、パキスタン、タリバンプロジェクト責任者を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 日本で、「もしトラ」という言葉が流行っている。このことはワシントン・ポストでも報じられている。「もしもトランプが大統領に返り咲いたらどうなるか」ということを述べる際に使われる言葉だ。昔、「経営学者ピーター・ドラッカーの経営理論を高校野球のマネージャーが学んだら、その高校野球のティームは甲子園に行けるのか」という題材の小説がアニメ化、ドラマ化され、「もしドラ」という言葉が流行ったが、その言葉を真似たものが「もしトラ」ということになる。

 「もしトラ」を心配しているのは、日本だけではないようだ。先進国首脳会議(G7)に加盟している先進諸国全体で心配しているようだ。「トランプが再び大統領になったら、自分たちにどんな要求をしてくるか分からない」ということで戦々恐々だ。トランプが訴えていた、各国の軍事費増額は、バイデン政権でも継続して要求され、先進諸国でその動きが出ている。日本も国防予算の倍増が決められ、そのための増税も行われている。トランプは各国にGDP比2%までの増額を求めていたが、その数字を上げてくるかもしれない。更に言えば、アメリカはNATOから脱退し、「お前ら、対ロシアはお前らの力だけでやれ」ということになるかもしれない。トランプがロシアのウラジーミル・プーティンとヨーロッパの頭を飛び越えて勝手に仲良くなって、「NATOは抜けるから後はよろしく」となったら、ヨーロッパ各国は恐慌状態になるだろう。そして、「やはりロシアとは仲良くしなくては」「資源を買うことで顧客になって仲良くしよう」という「新しい東方外交に舵を切る」だろう。

 問題は中国である。トランプは対中国強硬姿勢を見せるだろう。しかし、もちろん、「中国がアメリカに投資をして雇用を作り出してくれるならウエルカムだ」という交渉条件を付ける。中国はトランプを懐柔するために、投資をする。もちろん、アメリカがどんどん衰退していくことは織り込み済みだから、致命的にならない程度に、共倒れにならない程度に、「少しは延命策になるか」程度の投資をするだろう。そうなれば、中国との関係も良くなって、「ヤルタ2.0(米中露=トランプ・習近平・プーティン)三帝体制」ということになる。

 このように書くと、「もしトラ」といって怖がっているのは馬鹿らしくなる。「もしトラ」と言って怖がっているのは、ヨーロッパと日本の親米エスタブリッシュメントたち(アメリカの民主・共和両党のエスタブリッシュメント・エリートたちとつながっている売国者たち)である。トランプが大統領だった4年間に、核ミサイルは飛ばなかったし、アメリカが大規模な海外戦争を仕掛けもしなかった。そのことをよくよく考えねばならない。

(貼り付けはじめ)

G7はトランプに備えねばならない(The G-7 Must Prepare Now for Trump

-今夏のサミットは、単なる50周年記念式典以上のものにならねばならない。

ロビン・ニブレット筆

2024年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/19/g-7-trump-biden-election-prepare/

イタリアのジョルジア・メローニ首相が6月13日から15日にかけて主催するG7サミットの計画を立案している。世界をリードする民主政治体制国家のクラブであるG7の50回目のサミットということで、祝賀ムードが高まるだろう。

当然らそうなるだろう。 G7にはカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、そして、1981年以降はヨーロッパ連合(EU)が加盟しており、現在、世界のGDPの54%、世界の国防支出の55%以上を占めている。 G7加盟諸国は何十年にもわたって、民主社会(democratic societies)や開かれた市場(open markets)の保護など、共通の外交政策上の優先事項を追求するために各国の経済力を調整することで、世界の舞台での重要性を更に高めてきた。

しかし、今度のサミットの重要性は、画期的な記念回以上のところにある。G7の未来、そして世界的な民主政治体制の結束の未来が今、危機に瀕している。

共和党の大統領候補ドナルド・トランプによる最近のNATO蔑視発言は、アメリカの同盟国に対する関与の信頼性を疑問視する声につながっている。トランプのNATOに対する不満の一因は、他のNATO加盟諸国の国防費が、アメリカに比べて歴史的に低いことにある。なぜアメリカ人がヨーロッパの防衛費に、ヨーロッパ人が進んで支出する以上の支出をしなければならないのだろうか?

しかし、G7はトランプ2期目の気まぐれに対して、より脆弱であることが判明するかもしれない。トランプ大統領にとって、アメリカの外交政策を他国と調整することは、アメリカの行動の自由に対する無意味な制約である。

ここに問題がある。アメリカは現在、イギリスを除くG7の全ての相手国との間の貿易で赤字を出している。2023年には、これらの赤字は3370億ドルに達し、アメリカの対中赤字(2790億ドル)を上回る。商品の貿易赤字は、トランプにとって外交政策の赤信号だ。だからこそ、彼は、アンゲラ・メルケルのドイツをウラジーミル・プーティンのロシアよりも大きなライバルとして扱い、アメリカの保護主義(protectionism)に対抗した、2018年のG7首脳会議の成果を台無しにした。

G7首脳たちは米大統領選挙について沈黙を守っている。現職の米大統領ジョー・バイデンの2期目の実現を期待できる可能性がある。しかし、現時点では、その可能性はせいぜい五分五分だ。その代わりに、彼らは今後3カ月を利用して、2期目のトランプ大統領誕生の打撃に耐えることがで、バイデン2期目の綱領としても機能する政策課題を策定すべきだ。

バイデンの1期目におけるG7の成果は印象的だった。2022年2月にプーティンがウクライナに本格的に侵攻して以来、G7はロシアに対して前例のない制裁措置を実施してきた。ロシア中央銀行がG7諸国の通貨で保有する約3000億ドルの準備金の凍結から、ロシア産原油が1バレルあたり上限60ドルを超えて販売された場合のタンカーへの保険提供の禁止まで、多岐にわたる。このようなことができるのは、世界の外貨準備の93%以上がG7各国の通貨で保有され、世界の外航船舶の90%以上がG7に本社を置く企業によって発行された損害保険でカバーされているからである。

中国の台頭に対する共通の懸念と、北京とモスクワの緊密な連携を反映し、G7は過去3年間、緊密な同盟国である韓国とオーストラリアとも、将来の経済成長の中心となる半導体や再生可能エネルギー投入のための「フレンドシェアリング(friendshoring)」サプライチェーンを開始するための努力を一貫して行ってきた。

トランプ新政権が、フリーライダーであることを理由にして、最も親密な同盟諸国を罰することに戻れば、こうした重要な仕事も全て終わりを迎えることになりかねない。しかし、G7メンバーの対米貿易不均衡を是正することは、短期的には不可能である。だからこそ、今度のG7サミットでは、敵対的なトランプ大統領の復活の可能性に備えることを優先しなければならない。

第一に、G7加盟諸国は、ウクライナの主権を守るための支援には期限を設けないという明確なシグナルをモスクワに送る必要がある。支援をめぐる紛いは現在、どちらの側が政治的、経済的に他方を上回ることができるかを示す激しい競争の陰に隠れている。アメリカの新たな支援が現在連邦議会で阻止されている中、欧州諸国とEUは既に、キエフに対する今後の複数年間の財政・軍事支援として約750億ユーロに加えて、更に770億ユーロの供出を約束することで、決意を示す重要な一歩を踏み出している。彼らは戦争が始まって以来すでに割り当てを行っている。

G7サミットではまた、凍結されたロシアの外貨準備から得られる利益を、G7の全メンバーがどのように引き出すかを決定する必要がある。これまでの障害は、これらの外貨準備の大部分がEUの銀行によって保有されていることである。一部の政府とヨーロッパ中央銀行は、稼いだ利子(昨年は44億ユーロ)を分配するという控えめなステップでさえ、確固たる法的根拠を欠いており、また世界的な基軸通貨としてのユーロの信頼性を損ないかねないと懸念している。こうした懸念を克服することは、G7の決意を強調することになる。トランプ大統領が誕生すれば、ウクライナを支援するためにアメリカが負担した費用の一部に充足させる取り決めを反故にすることを考えるかもしれない。

第二に、G7メンバーは韓国とオーストラリアを正式にグループに招待すべきである。もしバイデン政権2期目が発足すれば、韓国とオーストラリアの加盟はハイテクと再生可能エネルギーにおけるG7の総合力を強化するだろう。もし2期目のトランプ大統領が誕生しても、G7に入っておけば、この2つの民主的同盟諸国はトランプ大統領の重商主義的脅威の前に孤立することはなくなるだろう。

第三に、バイデン政権、EU首脳、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、インドが昨年発表した、インドから湾岸諸国とイスラエルを経てヨーロッパに至る、鉄道によるエネルギー供給システムとデータの回廊を建設する計画に、G7メンバーは初期の資金を割り当てるべきである。中国の「一帯一路」構想に対抗するこの遅ればせながら重要なプロジェクトは、インドと湾岸諸国の、若く急成長する経済と、ヨーロッパの裕福だが高齢化が進む市場をつなぐものだ。

ガザでの戦争はこの計画に疑問を投げかけているが、イスラエルにとってのメリットは、ネタニヤフ後の政権がパレスチナ人と持続可能な和平を築くための重要な追加的インセンティヴとなる。同時に、トランプ大統領の外交政策上の主要な成果である、イスラエルとアラブ諸国との関係を正常化した2020年のアブラハム合意を支援することになる。

G7は、中国やロシアとの新たな冷戦が長期化しそうな状況において、貴重な地政学的経済調整機関である。バイデン大統領の成果を確固たるものにするためであれ、トランプ大統領の世界的リスクを軽減するためであれ、G7の50周年記念サミットはその名に恥じないものでなければならない。

※ロビン・ニブレット:チャタム・ハウス特別研究員・元最高経営責任者。著書に『新しい冷戦:アメリカと中国との間の争いは如何にして私たちの世紀を形作るか(The New Cold War: How the Contest Between the U.S. and China Will Shape Our Century)』である。ツイッターアカウント:@RobinNiblett

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、『タイム』誌が統一教会についての長い記事を発表した。統一教会が日本政界、特に自民党に深く浸透していたことを紹介しているが、後半は、統一教会内部の分裂や、アメリカ政界への浸透を紹介する内容になっている。安倍晋三元首相殺害から、日本では統一教会の政治からの排除まで進んだ。日本での霊感商法や莫大な献金が統一教会の主要な資金源であったことから、日本での活動が縮小することは統一教会にとっては痛手となるだろう。しかし、自民党が本当に統一教会と決別するのか、日本政界が統一教会の新党を排除し、浄化されるのかは不明だ。それほどに根深い問題である。
 今回、タイムが掲載した記事は、統一教会がアメリカ政界に浸透しているという内容だ。そして、「指桑罵槐(しそうばかい)」(ある人物を非難しているようで、実際には遠回しに別の人物を非難する手法)で、ドナルド・トランプ前大統領を非難している内容だ。ドナルド・トランプと統一教会が深い関係にあることをところどころに書いている。

 今回の記事について足りないと感じているのは、日本政界への浸透ぶりと、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三と続く血脈が、協力関係にあったアメリカのCIAと統一教会と深くかかわり、日本人と日本のお金をこれらに貢ぐことに貢献したということが書かれていないことだ。

 非常に長い論稿であるので、冒頭の紹介はこれくらいにして、中身を読んでいただきたい。この記事にもヴェクトルがかかっているので、トランプ批判のために書かれたということに注意しながらこのような統一教会と長年にわたりずぶずぶの協力関係にあった自民党は許しがたい存在であることだけはよく分かると思う。

(貼り付けはじめ)

統一教会は日本政府に浸透した。現在、その標的はアメリカに向けられている(The Unification Church Infiltrated Japan’s Government. Now Its Sights Are Set on the U.S.

チャーリー・キャンベル(東京発)筆

2024年4月4日

『タイム』誌

https://time.com/6961050/unification-church-ffwp-moonies-us-election/

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ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで演説する際に劇的な動きをする文鮮明(Sun Myung Moon)牧師。牧師の首席補佐役である朴普煕(Bo Hi Park)大佐(右)が韓国語から英語に翻訳している。

日本の西側にある奈良市の空は曇っていた。午前11時29分、安倍晋三首相にマイクが手渡された。紺のジャケットにパリッとした白いシャツを着た安倍元首相が、大和西大寺駅の小さな赤い台の上に立つと、集まった聴衆から割れんばかりの拍手が起こった。15メートルほど離れたところに山上徹也が立っていた。フェイスマスクを鼻の穴の下に下げ、両手を腰に当て、演説には全く無関心な様子だった。安倍元首相が地元選出の自民党議員を応援する演説を始めると、山上は演説場所から遠ざかり、数秒後に安倍の側近たちの真後ろに再び姿を現した。安倍がマイクを手にしてから2分25秒後、銃声が鳴り響き、現場は濃い白煙に包まれた。安倍は混乱した様子で、周囲を見回した。その3秒後、もう1発の銃声が安倍の首と胸を捉えた。安倍は倒れた。山上は警備員にタックルされ、逮捕された。路上から手製の銃器が回収された。

2022年7月8日の事件は、衝撃的であると同時に、間違いなく事実である。安倍はドクターヘリで奈良県立医科大学附属病院に搬送されたが、そこで死亡が確認された。山上被告(当時41歳)は殺人容疑で起訴され、今年末の裁判を控えている。山上は、安倍元首相が物議をかもしている統一教会(Unification Church)を支持していたことが殺害の動機だと主張している。統一教会は、山上の母親を説得して、1億円(67万ドル)以上を教団に献金させ、山上一家を破産と困窮に追い込んだ。釜山長神大学校教授で統一教会の専門家であるタルク・ジイルは、「ある意味、この青年は加害者ではなく被害者だ」と述べている。

安倍元首相が暗殺されてから数カ月後、内部調査によって自民党所属議員の約半数が統一教会と関係があることが明らかになり、日本政府の最高首脳部から辞任が続出した。しかし、「ムーニー(Moonies)」と呼ばれ、合同結婚式(mass weddings)や熱狂的な反共(anticommunist fervor)で知られる宗教的好奇心が、なぜこのような殺人的怒りを引き起こしたのだろうか? そして、当時世界第3位の経済大国であった日本の統治エリートたちに中に、粛清(purge)が必要なほど深く入り込んだのはなぜなのか?

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日本の奈良県で行っていた選挙運動の間に銃撃された後に地面に横たわる安倍元首相。2022年7月8日。

統一教会の真実は、1件の暗殺事件や日本よりもはるかに深い。統一教会はあらゆる大陸に広がる政財界の網の目のような存在であり、約200万人の会員(この数字には反対意見も多い)と10億ドル以上の資産を擁していると見られている。教団は、『ワシントン・タイムズ』紙、UPI通信、マンハッタンにあるニューヨーカー・ホテル、バレエ団、そしてアメリカの寿司業界に鮮魚を供給する最大手のトゥルー・ワールド・フーズ(True World Foods)を所有している。アメリカの諜報機関の報告によれば、第三世界のクーデターに資金援助をしている。共和党や民主党の有力者たちを招待して、保守的な大義を推進するイヴェントを開催している。リチャード・ニクソン、ロナルド・レーガン、ドナルド・トランプを含む歴代アメリカ大統領は、教団について熱心な支持を表明してきた。

統一教会は1954年に文鮮明牧師によって設立された。彼は、神の王国(God’s Kingdom)を地上に樹立し、世界平和をもたらすという任務を完遂するために、イエスから第二のメシア(second messiah)として託されたと主張した。文鮮明の神学(theology)は、エデンの園でアダムと寝る前にエヴァがサタンに誘惑されたという考え方に基づいている。信者は、文鮮明の選んだ配偶者と結婚し、塩をたっぷりまぶした部屋で文鮮明の肖像画の下で、あらかじめ決められたさまざまな体位でセックスするなどの一連の儀式を行うことで、この「原罪(original sin)」の血統を清めることができる。

このような特殊性は、神聖なふりをした、1人の指導者に焦点を当て、資金を積極的に収奪することに加えて、統一教会はカルトであるという非難を増大させてきた。文鮮明は自らを「完璧なアダム(perfect Adam)」、韓国を「アダム国家(Adam nation)」とし、「天使長(archangel)」国家アメリカの支援を得て、人類が発作前の純粋さを取り戻す手助けをするだろうと主唱した。一方、日本は、1910年から1945年の朝鮮半島植民地支配中に犯した罪の償いを求められる「イヴ国家(Eve nation)」に指定された。数多くの日本の元教会員の代理人を務める弁護士の山口隆は次のように述べている。「彼らは、日本人全ての資産は韓国に返還されるべきだと信じている。それが救いへ向かう道だ、と」。

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2022年8月10日、東京の首相公邸での写真撮影から退場する岸田文雄首相に頭を下げる閣僚たち。支持率の低迷を受け、岸田首相はこの日、政権から統一教会とのつながりを排除するために内閣を改造した。

しかし今日、統一教会は自らを苦境から救おうと奮闘している。 HBOのヒット作「サクセッション」の中に描かれたような、内紛(infighting)、悲劇(tragedy)、反社会的組織の陰謀が充満している。統一教会の資産が増加するにつれて、その資産をめぐる争いはより激しく、憎むべきものになった。文鮮明の末子ショーン(文亨進、SeanMoon Hyung-jin)は、タイム誌とのインタヴューで、安倍殺害の責任は、2012年の文鮮明の死後、統一教会の実権を奪った別居中の母親である韓鶴子(Hak Ja Han)にあると断言した。ショーンは、「これは、主である神と再来したイエスを裏切ってきた組織に対する裁きの鉄槌だ」と語っている。ショーンはペンシルヴァニア州の田舎に、分派の教会であるサンクチュアリ教会を設立した。ショーンは銃を携帯し、銃を前面に押し出している。1月6日には国会議事堂の外で親トランプ暴徒の中で催涙ガスを浴びた。ショーンは「盲目的なそして異端的な方向性がその組織(統一教会)に呪いをもたらした」と述べている。

確かに、安倍元首相の死は、統一教会にとって存在を揺るがす深刻な問題である。日本政府は10月13日、統一教会から宗教法人としての地位を剥奪するように裁判所に訴えた。宗教穂人の資格はく奪により、法人税と固定資産税が免除されなくなる。統一教会の世界的な資金源の70%は日本だと推定され、積極的な献金勧誘に加え、先祖の霊を「鎮める(appease)」とされる高値の「霊感(psychic)」人参茶や大理石の壺を販売している。全国霊感商法対策弁護団(Japan’s National Network of Lawyers Against Spiritual Sales)が実施した調査によると、1987年から2021年までに、全国の弁護士会や消費者センターに報告された統一教会の募金に関する被害件数は3万4537件に達し、被害総額は8億5000万ドルを超えている。カルト研究家のサラ・ハイタワーは「彼らは基本的に日本をATMとして利用している」と述べた。

その資金源が脅かされている今、統一教会は、積極的な資金調達戦術が憲法修正第1条によって守られている、アメリカに重点を移している。10月、ハク・ジャハンは4年ぶりにアメリカに戻り、ラスヴェガスで「真のお母様の心を理解する(understand True Mother's heart)」ための「特別ワークショップ(special workshop)」を開催した。17歳から40歳を対象としたこのイヴェントは、日本からの収入減を補うために寄付を増やす必要性に支配されていた。タイム誌が入手したリークされた電子メールには、「真のお母様に私たちがどれほど感謝しているかを伝えるために」、イリノイ州シャンバーグにある住所に100ドル札を送るようアメリカの信者たちに指示し、「文書に現金という文字を書かないように」と更に指示していた。

統一教会のアメリカ支部である世界平和統一家庭連合(Family Federation for World Peace and Unification InternationalFFWPUI)の会長、デミアン・ダンクリー牧師が主催した9月26日のZoom会議の映像がリークされた。この中では、同団体が直面している様々な危機について説明し、日本からの減少分を補うためにアメリカ人会員からの献金を3倍にするよう牧師たちに促した。「最も高い献金者から始め、徐々に下げていこう」とダンクリー牧師は述べた。今後の「主要な目的」は、「会員数の増加」と「財政的な成長」だと彼は言った。ダンクリー牧師は「もし、ネパールの食べるのに苦労している家族が、自分たちの子供たちを食べさせることができるかどうかも分からないのに、年に一度、真のお母様に真の愛の献金をすることができるのであれば、アメリカの家族にも同じことができるはずだ」と述べた。

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2020年2月7日、韓国・加平の清心平和国際センターで行われた世界平和統一家庭連合の祝福式で、新婚カップルたちの中に立つ統一教会創始者である故文鮮明の妻、韓鶴子。

会議の中でダンクリーは、「日本の人口の90%が統一教会解散に賛成している」ことを認め、友好的な「首相周辺の国会議員たち(parliamentarians around the prime minister)」(彼はこれを「私たちの仲間(our people)」と表現している)は、「おそらくこれを逃れる方法はないだろう」と述べていると語った。日本におけるこのような逆風を考慮すると、アメリカの牧師たちは「若者」の勧誘に力を入れるべきであり、また「お母様に会うように言われた億万長者や大富豪たち」を参加させれば、これらの問題を迅速に解決できるとダンクリーは指示した。

統一教会の中で育ち、現在は回復した元会員たちを助けるために「フォーリング・アウト」というポッドキャストを主催しているエルゲン・ストレイトにとって、このメッセージは非常に明確だ。そして、秋には接戦が予想される大統領選挙が近づいており、統一教会の政治的、財政的な力は、統一教会のアジェンダに最も適した人物たちに握られている。

統一教会は長い間、定義づけを拒んできた。統一教会は、1960年代から1970年代にかけて西側諸国を席巻したハレ・クリシュナ(Hare Krishna)や超越瞑想(Transcendental Meditation)などの新宗教運動の津波の一部ではあるが、その持続性と影響力の両方において際立っている。それでも今のところ、ISISやマンソン・ファミリー、ジム・ジョーンズの人民寺院(People’s Temple)のような殺人志向は見受けられない。統一教会の信者の多くは、何十年もの間、統一教会を出たり入ったりしている。統一教会が与えるいかなる害も、より陰にこもったものだ。

1920年、現在の北朝鮮北西部に生まれた文鮮明は、残忍な日本統治時代に藁葺き小屋で育った。10歳の時、彼の家族はキリスト教に改宗し、16歳の時、彼はイエス・キリストの訪問を受けたと主張した。1945年に連合軍が朝鮮半島を解放した後、彼はソ連が支配する平壌に移り住んだが、3年後に逮捕され、共産主義者が運営する収容所で5年間を過ごした。

朝鮮戦争勃発後、文鮮明は国境を越えて逃亡し、韓国の釜山に定住し、一間の掘っ立て小屋に住んでいた。彼は、キリスト教(Christianity)、儒教(Confucianism)、シャーマニズム(shamanism)、反共産主義の辛辣さ(anti-communist vitriol)を混ぜ合わせた神学的信条を土壁に走り書きし始めた。1950年代には、文鮮明の献身的な信奉者の一団が成長し、文鮮明が教会関連の財団や企業を多数設立するのを支援した。1960年、文鮮明は40歳のときに、当時まだ17歳だった2番目の妻、料理人の娘、韓鶴子と結婚した。文鮮明はまた、1963年に複合企業「統一グループ(Tongil Group)」を設立し(「統一(Tongli)」とは韓国語で「統一」を意味する)、武器、農業、高麗人参、造船、航空、観光、鉱物などの事業に進出し、急速に多角化(diversified)した。

元統一教会信者で文鮮明の非公式伝記を書いたマイク・ブリーンは、「間近で見る文鮮明は、とても謙虚な印象を受けた。とても、とても気配り上手で、向き合っているその瞬間、本当に相手に集中している人という感じがした」と述べた。

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2012年8月14日、ソウルで開催された日本の植民地支配からの解放記念行事に先立つ集会で、日本軍によって行われた戦争時の朝鮮人性奴隷に対する謝罪の行為として頭を下げる統一教会の日本人信者たち。

1973年までに、文鮮明は自分の使命をアメリカに持ち込み、ニューヨーク州タリータウンのイースト・ガーデンと呼ばれる18エーカーの森林地帯に居を構えた。そこでは、アルコールとドラッグが禁止され、結婚以外のセックスをすると罪人として燃えるような天罰を受けるという新しいコミュニティを設立した。1974年までに、アメリカの統一教会は年間800万ドルの収益を上げ、文鮮明はその2年後にニューヨーカー・ホテルと隣接するマンハッタン・センターを購入することができたと言われている。アールデコ調の建物は、統一教会のアメリカでの活動拠点となり、統一教会の信者たちの子供たちが共同保育される場所となった。前述のストレイトは3歳になるまでニューヨークで育ったが、両親が大学のキャンパスを探し回る勧誘員から「愛の爆撃(love bombed)」を受けた後だった。ストレイトは、「多くの家族があのホテルに住んでいた。そこから、人々が資金集めや布教活動に出かけた」と回想する。

統一教会は、若い男女を家族から引き離し、「洗脳(brainwashed)」されたとされる隔離されたキャンプに送り込むことで悪名高い存在となった(教会はこれを否定している)。しかし、改宗の熱意(zeal of conversions)は、心配した親族が「ディプログラミング(deprogramming)」と呼ばれる連れ出しを開始することを促し、双方に訴訟が相次いだ。文鮮明はまた、保守的な政治活動を支援し始めた。ウォーターゲート事件の最中には、全米の新聞にニクソン支持の全面広告を掲載し、連邦議事堂で「神はリチャード・ニクソンを愛している(God Loves Richard Nixon)」集会を開いた。文鮮明は魅力的な女性信者たちを派遣し、連邦上院議員たちを篭絡させ、情報を収集させた。そうした信者の1人は、カール・アルバート連邦下院議長の側近にまでなった。

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1974年、ホワイトハウスでリチャード・ニクソン米大統領と会談する文鮮明牧師。

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1981年10月22日、文鮮明牧師の巨大なポスターが経っている間にアメリカ国旗がいくつも立てられている。彼の信者たちが一団となってアメリカ連邦地方裁判所の外の公園でデモを行っ写真7た。

1976年、米連邦議会の調査により、文鮮明が、アメリカの対北朝鮮政策に揺さぶりをかけようとする韓国の諜報活動に関与していたことが明らかになった。1982年、文鮮明は脱税で有罪判決を受け、18カ月の禁固刑を言い渡された。文鮮明は自らを型破りな信仰のために迫害された殉教者に仕立て上げ、ジェリー・ファルウェルやティム・ラヘイなど、さまざまな市民的自由主義者や宗教保守派から支持を集めた。影響力を高めるため、文鮮明はワシントン・タイムズ紙を創刊し、その創刊号は文鮮明が有罪判決を受ける前日に発行され、ロナルド・レーガン大統領を含む保守派の間で必読の新聞となった。

文鮮明は信教の自由と反共の熱意を訴え、当時の冷戦の熱気の中で幅広い支持を得た。ラテンアメリカでは、米州社会統一連盟(Confederation of the Associations for the Unification of the Societies of the AmericasCAUSA)を設立した。アメリカ政府の情報筋によれば、CAUSAはコントラ反乱軍に現金と物資を送り、1980年に民主的に選出されたボリヴィア政府を転覆させた右派クーデターを画策した準軍事組織、コカインカルテル、逃亡中のナチス戦犯クラウス・バービー(「リヨンの虐殺者(Butcher of Lyon)」)といった多様な一団に資金を提供した。

冷戦が終結しても、文鮮明の並外れた政治的影響力を妨げることはなかった。1995年、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領とバーバラ夫人は韓国の統一教会で、一連の有料講演を行い、その1年後、ブッシュはブエノスアイレスを訪れ、文鮮明が設立した新しい地域日刊紙『ティエンポス・デル・ムンド』の創刊式で演説した。その他の著名な仲間には、ジェラルド・R・フォード元大統領、共和党のジャック・ケンプ連邦上院議員、ミハイル・S・ゴルバチョフ、そして現在不祥事を起こしている芸能人のビル・コスビーなどがいる。2000年、文はパラグアイにデラウェア州とほぼ同じ広さの土地を購入した。地元の警察当局は、統一教会が武器や麻薬の密輸を容易にするためにこの土地を使用していると非難している。統一教会は、その土地での違法行為を認識していると述べているが、関与は否定しており、警察当局に協力していると主張している。

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2005年7月16日、パラグアイのタクアラで、プエルト・カサドの町のパラグアイ人たちが、文鮮明の統一教会が自分たちの地域で取得した土地の一部を、自給自足農業のために自分たちに引き渡すよう政府に圧力をかけるため、自宅から首都アスンシオンまで148km(91マイル)の行進に参加した。

統一教会の政治的結びつきが強まるにつれて、そのプロパガンダも直接的になっていった。2003年、ワシントン・タイムズ紙は見開き2ページで、亡くなった36人のアメリカ大統領全員が文鮮明の卓越性を認めていたと主張した。一方、トーマス・ジェファーソンは、墓の中から「全ての人々にとっての救世主である文鮮明師の教えに従え」という個人的な推薦文を書いた。翌年、ダークセン記念連邦上院議員会館で行われた華やかな式典には、少なくとも12人の米連邦議員が出席した。式典の中で、文鮮明は「戴冠式(crowned)」を行い、自らを「人類の救世主、救世主、帰天の主、真の親」と宣言した。また、数百名のゲストを前にして、イエス、仏陀、ヒトラー、スターリンは文鮮明の教えを通じて「生まれ変わり、新しい人間となった」と報告された。共和党のロスコー・バートレット議員は文鮮明と韓鶴子の前で一礼し、民主党のダニー・デイビス議員は文鮮明の頭に金の王冠を載せた枕を差し出した。2006年、ジョー・バイデン大統領の弟のジェームズは、甥にあたるジョー・バイデンの息子ハンターとともに、文鮮明の義理の息子であるジェームス・パークが設立したヘッジファンドを購入した。

しかし、舞台裏で全てが順調だった訳ではない。

1984年、文鮮明の次男文興進(Heung Jin Moon)が自動車事故による負傷がもとで亡くなった。17歳だった。1999年、もう一人の息子文榮進(Young Jin Moon)がリノの17階建てのホテルの部屋から飛び降り自殺した。一方、文鮮明の長男で後継者と目されていた文孝進(Hyo Jin Moon)は、飲酒、麻薬、無差別暴力を好む気まぐれな人物として知られていた。1995年、妻のナンスク・ホンさんは家族と決別し、文孝進をコカインとポルノ中毒の不倫女たらしで、妊娠7カ月の時も含め定期的に暴力を振るったとして非難する本を書いた。文孝進は2008年に心臓発作で亡くなった。45歳だった。両親が指導的立場の信者で、イースト・ガーデンの近くで育ち、現在は脱会した元信者であるテディ・ホースは、「成人した大人たちが、文鮮明の子供たちに頭を下げてかしずいてきたので、文鮮明の子供たちは、人々をおもちゃのように扱っていた。彼らはまさに反社会的家族だった」と述べている。

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1986年に撮影された文鮮明の家族写真。

文鮮明地位族の偶像崇拝(idolatry)は、一般信者の経験とは対照的である。攻撃的な資金集めは日本で最も深刻であるが、山上徹也の貧しい子供時代と似たような話は、統一教会の信者がいるところならどこでも見られる。ノルウェーのオスロでリリアン・ホルドフスが「本当に、本当に貧しく」育ったのは、母親が文鮮明に対して献身的に献金していたからだと彼女は言う。

文鮮明は、全ての先祖は地獄におり、信者たちは各世代の先祖を解放するために金を払わなければならないと教えていた。「天元(Cheon Won)」として知られる統一教会の韓国本部の公式ウェブサイトには、国に応じて価格が異なる「祖先解放」計算ツール(“ancestor liberation” calculator)さえある。先祖たちがいる世界は明らかにウェストファリア的な国家概念と現代のGDP指標に固執しているようだ。父系と母系の430世代の家族全員を解放するには、ノルウェーやアメリカでは1万2420ドルが必要だが、スーダンではわずか2280ドルで済む。ちなみに、日本では同じ偉業を達成するには652万円(約4万4800ドル)が必要だ。先祖を祝福したり、流産や中絶で失われた胎児の魂を解放したり、死ぬ前に自分の魂を事前に解放する機会には追加料金がかる。 ただし、先祖全員が既に救われている場合に限られる。

ホルドフスの母親は、先祖を救うことに執着し、リリアンが8歳から15歳までの間、毎晩学校が終わると子供たちを新聞配達に行かせ、家族のために現金を稼がせた。日曜日には、礼拝の前に新聞を配達するため、ホルドフスとその兄弟は朝4時にベッドから引きずり出された。そのお金は全て統一教会に献金された。リリアンは「学校では、教科書を読むのがとても遅かったことを覚えている。働いた後だったので、疲れて宿題をする気にもなれなかった」と述べている。

攻撃的な資金集め以外に、統一教会は手配された合同結婚式で最もよく知られている。1982年、マディソン・スクエア・ガーデンで2075組のカップルが文鮮明によって結婚式を挙げられ、花嫁はレースとサテンのガウンを、花婿は同じコバルト色のスーツを身にまとった。2012年、彼女がまだ17歳だったとき、リリアンの番が回ってきた。彼女は天元に送られ、文鮮明が生前に個人的に行った最後の集団「祝福」に参加することになった。文鮮明は彼女をドイツのニュルンベルクに住む20歳のイタリア人男性と引き合わせた。一目惚れという訳にはいかなかった。リリアンは「彼はすぐに私に悪い印象を与えた。『こんな人と結婚するなんてありえない』という感じだった」と語った。

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統一教会の指導者である文鮮明とその妻韓鶴子。1982年の元旦にマディソン・スクエア・ガーデンで2075組の信者の合同結婚式を挙行した。

しかし、リリアン・ホルドフスが結婚を取り止めようとしたとき、統一教会の関係者の一人が、リリアンがサインしたイヴェント参加の意思を示す契約書を見せた。リリアンは「彼女は私に腹を立て、私はとてもプレッシャーを感じた。だから、私は結婚の儀式に参加すると言わざるを得なかった」と述懐している。今日、リリアンは何が起こったかについてはっきりと語った。「私は人身売買された(trafficked)のです。私は成人として法的に自分のことを決めることができなかった。人身売買の疑惑について尋ねられたダンクリーは、強制的な行為の責任は参加者の親にあるとし、「大多数は信じられないよう茄子払い井経験をしている」と主張している。

リリアンは高校を卒業するためにオスロに戻ったが、卒業後、母親からドイツにいる新しい夫のもとに行くよう命じられた。リリアンは、「彼は精神的な虐待をする人で、私のことを馬鹿だ、ノロマだとの常に罵声を浴びせてきた。彼はまったく協力的でも共感的でもなかった」と述べている。

結婚後もリリアンの苦労は続いた。新しい夫に言われるまま、ホルドフスは8人のティーンエイジャーと一緒にヴァンに乗ってイタリア、スロヴェニア、ドイツを3ヵ月間にわたって回り、教会の資金を稼ぐために、グリーティングカードやろうそくなどの小物を一軒一軒売り歩いた。車内で寝ることもあれば、コミュニティセンターの床で寝ることもあり、まれにホステルの一室に詰め込まれることもあった。食料は、チームリーダーがスーパーマーケットで安いパン、ハム、チーズを買ってきて作ったサンドイッチだった。

リリアンは、「北イタリアの何もない小さな村で、文章が書かれた小さな紙切れ1枚ヲ渡されて、ヴァンから降ろされたことを覚えている。言葉も分からないし、本当にパニックになってしまった」と述べた。

毎朝、参加者全員がその日の自分の目標を述べさせられた。そして毎晩、リーダーたちに渡す前に、グループの前で自分の稼いだお金を数えなければならなかった。リリアンは次のように述べている。「私はたいてい1日に200ユーロ(230ドル)ほど稼いだ。私は稼ぎが良い方ではなかった。稼ぎが少ない人はティームの前で恥をかかされた。だから、もっともっと稼がなければならないというプレッシャーがあった」。資金集めに重点を置いたこの計画について尋ねられたダンクリーは、「実際はお金のためでもなく、むしろ、教育のためだ」と主張している。

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2022年7月29日、東京の日本外国特派員協会で行われた統一教会の活動に関する記者会見で、統一教会の歴史書と教団の聖典を提示する、全国霊感商法対策弁護団の山口広弁護士(左)と川井康雄弁護士(右)。

リリアンの経験は決して特別なものではない。ストレイトやホースを含め、アメリカの統一教会で育った子供たちは、高校卒業後1、2年の間、キーホルダーや風鈴のような意味のない小物を売る、当初は特別任務部隊(Special Task Force)と呼ばれた同様の計画に参加する。これは危険な仕事だ。2002年、18歳のジン・ジュ・バーンは、教会のためにコスチューム・ジュエリーを売っている最中に、シャーロットのアパートで性的暴行を受け殺害された。数年後、特別任務部隊はジェネレーション・ピース・アカデミー(Generation Peace Academy)に改名されたが、新型コロナウイルス感染拡大による封鎖中でさえ、毎年全米だけで約200人の若者を派遣し、高値のカレンダーや立体的な猫の写真を売り続けている。このアメリカのプログラムは、年間1000万ドル以上を売り上げていると推定されている。リリアン・ホルドフスは、「彼らはこのプログラムをとても美化している。私は、これが単なる労働者人身売買(labor trafficking)だと気づいた」と述べている。タイム誌の取材に対し、ダンクリーは再び人身売買の非難を否定し、集まった資金は「プログラムに投資されるか、地域社会に還元される」と述べた。

山口弁護士は、「統一教会がこうしたプログラムを行っているのは、若者はそれほどお金を持っていないので、代わりに自分の労働力を求めているからだ。害となるのは、若者たちが最も実り豊かな年月を無駄にさせられていることだ」と述べている。

不安障害や広場恐怖症などの精神的健康状態の悪化が5年続いた後、リリアンは夫に別れを告げてオスロに戻った。しかし、母親は大いに困惑した。リリアンは「母は私に『彼とよりを戻すべきだ』と言い続けた」と述べている。しかし、しばらくすると、母親は折れた。 「しかし、私が教会に行くたびに、母は私を単なる商品であるかのように、適当な年上の人と私を結び付けようとする」とリリアンは述べている。

リリアン・ホルドフスの精神状態は悪化し続けた。「彼らは、悪霊のようなおかしなものがあなたをコントロールしようとしていると信じている」とリリアンは述べている。「アルコールを一口飲むと、それはあなたの体への悪霊の侵入を招くことになると言ってくる。もう我慢できなかった」。結局、新型コロナウイルス感染拡大が彼女を助けてくれた。ロックダウンは物理的に教会の礼拝に出席しない口実を与え、オンラインで組織について調べ始める心の余裕を彼女に与えた。リリアンは、「統一教会は、なぜメンバーからそんなにお金が欲しいのか、疑問を持った。子どもの頃は『文鮮明一族の方々に私たちのお金が必要だ!』ということしか言われなかった」と述べている。

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1976年9月18日、韓国の伝道者である文鮮明牧師と統一教会が主催する「ゴッド・ブレス・アメリカ・フェスティバル」のためにワシントン記念塔の敷地に集まる群衆。

家族間の内紛で金庫の中の資金が目減りする中、統一教会は献金に重点を置いている。1998年、文鮮明は文顕進(プレストン、Hyun Jin Moon)に愛情を注いだ。プレストンは現在生き残っている彼の長男であり、元オリンピック馬術選手で、世界平和統一家庭連合(FFWPUI)の副会長である。2006年には、教会の資産を管理するためにワシントン D.C. に設立された非営利団体である国際統一教会 (Unification Church International UCI) の会長にも指名された。後継者としてのプレストンの将来は確実視されていた。

しかし、2008年、文顕進は両親に統一教会の方向性を批判する書簡を送った。これに応じて、文鮮明は文顕進(プレストン)に代わって、文亨進(ショーン・ムーン)をFFWPUIの副会長に任命した。同年、文鮮明の三女文仁進(タチアナ、In Jin Moon)がアメリカ統一教会総会長に任命された。文顕進は主流の組織から外れ、代わりに「平和構築への革新的で価値観に基づくアプローチ(an innovative, values-based approach to peacebuilding)」を促進するという明言された使命を掲げ、世俗的な非営利団体であるグローバル平和財団(Global Peace Foundation)を設立した。しかし、彼は個人的に厳選された理事会のおかげでUCI会長に留まり、2011年には関連のないスイスの財団に約5億ドルの資産を寄付したとして母親から訴訟を起こされた。この訴訟はアメリカの法廷で続けられており、9月26日にリークされたダンクレー牧師のズーム会議では、現在の「危機(crisis)」の1つとして挙げられていた。ダンクレーは、「これは家族の問題なので、私たちは時には態度を静観していたが、これ以上は沈黙を守っていられない」と述べた。

2012年の文鮮明の死後、権力闘争はエスカレートした。三女文仁進(タチアナ)は、不倫関係で子供を産んだことが明らかになり、母親韓鶴子から辞任を強要された(中傷者は韓鶴子がスキャンダルをリークしたと非難している)。翌年、韓鶴子はまた、ペンシルヴァニア州の田舎に世界平和統一サンクチュアリ教会[World Peace and Unification Sanctuary Church](ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ[Rod of Iron Ministries]として知られる)を設立した文亨進(ショーン)の追放にも成功した。現在、サンクチュアリ教会で、文亨進(ショーン)は母親を「バビロンの売春婦(whore of Babylon)」と非難している。文顕進(プレストン)と韓鶴子は、タイム誌からの複数回のインタヴュー要請を断っている。しかし、文亨進(ショーン)は喜んでZoom通話に応じた。「父(文鮮明)は、後継者が誰であるかを明確にするためだけに、韓国で2回、アメリカで1回、計3回も私に王冠をかぶせた」と文亨進(ショーン)は憤慨する。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州グリーリーのカー・アベニューにあるカー・アームズ社のトミー・ガン倉庫で撮影のためにポーズを取るカー・アームズ社のオーナー文國進(ジャスティン・ムーン、Justin Moon)。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州マタモラスにある自宅で、金色のAR-15「鉄の棒」を持ってポーズを取る文亨進(ショーン)牧師。

韓鶴子の権力強化(consolidation of power)は友情、結婚、家族を引き裂く分裂を生み出した。信者のほとんどは、韓鶴子が率いる主流の統一教会に留まったが、文顕進(プレストンに従う者もいたし、文亨進(ショーン)の分派に加わった者もいた。文亨進(ショーン)はカール・アームズと呼ばれる小型武器会社の創始者であるもう一人の兄弟文國進(ジャスティン)と同盟を結んだ。2016年に開業したカール・アームズ社の、トミー・ガン倉庫ショールームでの開業式の主賓はエリック・トランプだった。文國進(ジャスティン)はこのイヴェントを利用して、出席者たちに「ヒラリー・クリントンは決して米大統領になるべきではないことに全員が同意できることを願っている」と語り、盛大な拍手を浴びた。

銃は、合衆国憲法修正第2条を神の祝福にまで高める、世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)において決定的な役割を果たしている。老若男女の信者たちが礼拝中に銃器(通常はAR-15)を握りしめる一方、文亨進(ショーン)は弾丸の冠をかぶるようになった。彼は、父親(文鮮明)が1960年代から韓国の武器製造に投資していたと指摘する。それでも、子供たちに「同性愛の政治的課題(the homosexual political agenda)」を教え込む公立学校を非難する文亨進(ショーン)による、良く準備された派手な内容の説教は、南部貧困法律センターのヘイトウォッチから、ヘイトスピーチ指定を受けた。文亨進(ショーン)にとって、自由に対する最大の敵は国家であり、2020年の選挙はトランプから盗まれたものだと今でも堅く信じている。文亨進(ショーン)は、「歴史上、地球上で最大の虐殺を行った最も暴虐な勢力は、実際には中央集権的な全体主義政府である」と述べている。

現在、文亨進(ショーン)の分派は、政治的影響力においてその著名な前身団体に匹敵する存在となっている。定期的にフリーダム・フェスティヴァルを開催しており、保守的な共和党員からソーシャルメディア陰謀論者の著名人まで、右翼の講演者が多数集まる。極右過激派グループ「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」がブースを出展した10月7日と8日の最新イヴェントで、文亨進(ショーン)はステージ上で小児性愛者たち(pedophiles)を「木材破砕機(the wood chipper)」に入れることについて歌ったラップを披露した。このイヴェントでは、全性愛(pansexual)のプライド旗の焼却式と、元トランプ高官セブ・ゴルカのスピーチも行われた。これまでには、トランプ大統領顧問のスティーヴ・バノン、元NRA報道官のダナ・ロエシュ、ペンシルヴァニア州上院議員のダグ・マストリアーノが登場した。世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)は最近、テキサス州ウェイコ近郊の30エーカーの土地と、テネシー州東部の山にある130エーカーの「トレーニングセンター」を購入したが、文亨進(ショーン)によると、そこが将来の本部となるということだ。1月26日、文亨進(ショーン)はトランプタワーのパーティーで、ドナルド・トランプ・ジュニアと元共和党大統領候補のヴィヴェク・ラマスワミと談笑する自分と文國進(ジャスティン)の動画をXに投稿した。

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2023年10月7日、ペンシルベヴァニア州ジーリーで毎年開催されるロッド・オブ・アイアン(鉄の棒)・フェスティバルの文國進(ジャスティン・左)と文亨進(ショーン・右)。このフェスティバルでは銃、トランプ前大統領、憲法修正第2条を祝う。

今日、統一教会の主流派とその分派は、アメリカの右派からの支持を競っている。リークされたダンクリーのズーム画像はまた、「ワシントン・タイムズの仕事を中心としたアメリカ における政治的影響力活動の活発化」を明らかにした。2022年8月12日、マイク・ポンペオ元CIA長官・元国務長官とニュート・ギングリッチ元連邦下院議長は、ソウルで開催された統一教会のフロント組織である万国平和連合(Universal Peace FederationUPF)のイヴェントで、文鮮明の没後10周年を記念して演説を行った。一方、トランプ元大統領はヴィデオメッセージを送り、文鮮明を「真のインスピレーション(true inspiration)」、韓鶴子を「驚くべき素晴らしい女性(amazing and wonderful woman)」と評した。財務記録によると、トランプは2021年から2022年にかけて、このヴィデオメッセージと他の2つのビデオ出演のために約250万ドルを受け取っており、マイク・ペンス前副大統領はUPFのイヴェントで講演するために55万ドルを受け取っていた。5月にも、トランプはUPFのイヴェントにヴィデオメッセージを送った。

ストレイトは、統一教会の指導者たちはこのようなお礼を払って受ける支持を「宣教の神性の証明(as proof of the divinity of mission)」と捻じ曲げて主張し、信者たちからより多くの献金を強要していると述べている。その効果は循環している。つまり、教会が寄付を募れば募るほど、知名度の高い後援者を集めるためにお金を費やすことができるという循環が出来上がっている。

これは日本から直接借用した戦略であり、犯罪も銃器もほとんどない日本で、統一教会のエスタブリッシュメントたちに守られた資金集めが安倍殺害に関与していると日本では言われている。現在、文鮮明一族は、世界で最も銃所有率が高く、一人当たり殺人率が日本の20倍を超えるアメリカで、同様の政治的隠れ蓑(political cover)、富、そして最も重要なことに人材の採用を進めている。ストレイトは次のように疑義を呈している。「力を行使できる人々が自分たちの人生をめちゃくちゃにしたことに子供たちが気づいたら、20年後には何が起こるだろうか? 更に大きな目標を狙った怒りの爆発が再び起こるだろうか?」

文鮮明一族の行く先々には悲劇がつきまとう。彼らの新しいアメリカでの冒険にも悲劇がつきまとうとしても、誰も驚かないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。週刊ダイヤモンド2024年3月2日号にて、佐藤優先生にご紹介いただきました。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、名越健郎(なごしけんろう)著『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書、2019年)を読んだ。この本では、外国勢力、具体的には、アメリカ、中国、ソヴィエト連邦から、日本の各政党、自民党、民社党、社会党、共産党への資金提供があったことが書かれている。アメリカや旧ソ連などの公開資料を調べ、その中に出てくる日本の各政党への資金提供の文書を詳しく分析し、資金の流れを解明している。日本の政党が外国勢力から資金提供を受けることは法律で禁止されており、違法行為である。従って、外国勢力からの資金提供は非公式、秘密に行われた。

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秘密資金の戦後政党史

 自由民主党結党時(1955年)に、民主党系から出て、初代の幹事長となった(1956年末まで)のが岸信介だった。岸信介は、戦前に商工省に入省し、次官となった。国家総動員立案の中心的人物であった。満州国の産業政策を立案し、戦争開始時の東條内閣では商工大臣・無任所大臣兼軍需時間を務めた。敗戦後は、A級戦犯として逮捕されたが、後に釈放し、政界復帰を果たした。

岸信介は、1956年の石橋湛山との自民党初の党総裁選挙で敗れたが、1957年3月には石橋の病気退陣を受けて、自民党総裁、首相に就任した。1960年の日米安保条約改定で大規模な反対運動に遭い、安保改訂成立後に退陣したが、その後も日本政界で隠然たる力を保持した。80歳を超えた1979年まで代議士を務めた。戦前から戦後まで日本政界で影響力を保持し、「昭和の妖怪」と呼ばれた。

 戦後の岸信介につきまとったのは、CIAとの密接な関係、そして韓国発祥の統一教会、創始者である文鮮明との蜜月関係であった。外国勢力との関係が取り沙汰されてきた。『秘密資金の戦後政党史』によれば、岸信介と弟の佐藤栄作元首相といった人物たちが、自民党の資金不足を言い訳にして、アメリカ大使館の外交官やCIAの要員たちに資金提供を求めている。反共のためのアメリカの手先として利用されたのが岸信介だった。岸信介・娘婿の安倍晋太郎・孫の安倍晋三と続く、アメリカのCIAと統一教会との深いつながりは、下に掲載した東京新聞の記事の通りである。

 民社党はもともと社会党右派であったが、1959年末に参議院選挙敗北の責任をめぐって、社会党を脱党し、1960年に民社党が結成された。安保については条件付き賛成という立場を取った。民社党は、民間労組(同盟)を支持基盤として、中道路線を標榜したが、自民党よりも右寄りの姿勢を持つ野党であった。民社党にもCIAからの資金が入っていた。民社党首脳部は社会党在籍時からアメリカ大使館、CIAと特別な関係を結び、民社党結成後は、資金提供を受けた。現在の国民民主党は、20世紀の民社党のような存在だと考えるのが妥当である。民社党・同盟系の研修機関として設立された富士政治大学校にはCIAの資金が出ていたという説もある。富士政治大学校では、反共教育がなされていた。ここで教育を受けた民間労組の組合員たちが民社党の活動家にもなっていった。現在の連合の会長である芳野友子は、この富士政治大学校の強い影響を受けている。

また、ここで重要なのは、富士政治大学校を設置した、富士教育センター(民社党系)の理事長に、松下正寿という学者が就任していた事実である。松下正寿は政治学者であり、立教大学教授・立教大学総長を務め、民社党所属の参議院議員を務めた。松下は、統一教会の教祖である文鮮明に傾倒し、文鮮明を褒め上げる著書も書いている。富士政治大学校がどのような教育をしていたか、推して知るべし、である。民社党・同盟にはこのような統一教会との深い関係があった。それが現在も続いていると考えることが自然である。

 さて、ここからは私の考えたことである。日本が経済成長する前に、アメリカ(CIA)は日本に資金を提供し、「反共の防波堤」として成長させた。その後、経済成長を遂げた日本は、CIAに搾取される存在になった。CIAは、冷戦下、共産主義の拡大を阻止するために、反響を掲げる宗教団体である統一教会を利用した。統一教会の勢力を南米に拡大させ、共産主義勢力と競わせた。その際に、利用したのが、統一教会の日本人信者と資金である。以前放送された、TBSの「報道特集」で、統一教会の南米での拡大が取り上げられていた。日本人信者が大金を持って大挙して南米に向かったということが報告されている。これは、統一教会がCIAの意向を受けて動いていたことを示している。

 自民党と民社党という、日本の保守勢力にCIAと統一教会は深く浸透し、利用してきた。それは今も続いていると考えることが自然だ。その中心が、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三の流れであり、安倍派(清和政策研究会)だった。日本の保守を標榜しながら、日本人と日本の資金を外国勢力に搾取されることを許してきたのがこの勢力だ。日本がアメリカの属国を止め、芯の独立を果たすためには、まずここを切開手術して明らかにして、切除しなければならない。

(貼り付けはじめ)

●「旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」スパイ防止法を巡る歴史から闇を読み解く」

2022817 0600分 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366/2

 続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。(特別報道部・木原育子、中沢佳子)

◆岸信介氏「あるときは内密に…」

 「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」

 勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987816日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた

 この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。

 57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。

◆岸氏、勝共連合、そしてCIA

 勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。

 思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝けんでん。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。

 日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。

 「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」

 信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。

◆晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」

 スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。

 856月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。

 思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。

 その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。

 「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。

◆全ては朝鮮半島との関係の中に

 青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。

 晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。

 「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」

 85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。

 「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。

 晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)

◆晋三氏の登場と「特定秘密保護法」

 晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。

 安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。

 短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌137月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。

 防衛や外交の機密情報の漏洩ろうえいを厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報ちょうほう活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。

◆「教団系は自民党のいたるところに」

 「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」

 旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。

 ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。

 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」

 共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。

 「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

◆デスクメモ

 陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。(榊)

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、2023年10月7日から始まった、イスラエルとハマスとの間の紛争は半年を超えようとしている。イスラエルはガザ地区での地上作戦を展開し、パレスティナ側の民間人に多数の死傷者が出ている。最近では西側諸国の支援者たちがイスラエル軍の攻撃で死亡するという事件も起きた。ジョー・バイデン政権はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と政府の対応に、極めて強い不満を持っていることが報じられている。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカの二大政党である共和党と民主党のそれぞれの支持者で、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争へのアメリカの支援(対ウクライナ、対イスラエル)について、姿勢が異なる。民主党支持者は、ウクライナ戦争でウクライナ支援を支持し、中東紛争でイスラエル支援には不熱心である。一方、共和党支持者は逆で、ウクライナ支援には不熱心であり、イスラエル支援には熱心である。昨年の段階で、そのような世論調査の結果が出ており、このことは拙著でも紹介した。

 昨年11月の世論調査に比べて、今年3月中旬の世論調査の数字は、イスラエルへの支援に反対が増えており、過半数が反対となったということだ。民主党支持者、無党派層では反対が大幅に増え、共和党支持者の中でも支持が減ったということである。

 イスラエルによるガザ地区での地上作戦でのパレスティナの民間人犠牲者については、世界各国で報じられ、アメリカ以外の国々では、イスラエルの行動に反対が多くなっていた。アメリカはイスラエルの強力な支援国であるが、そこでも反対が多くなっている。民主党であるバイデン政権は、この世論の動きを「利用」して、イスラエルへの支援の削減や、イスラエルのガザ地区での軍事行動に制限をかけるようとするだろう。これは、今年実施される大統領選挙を見据えた動きとなる。支持基盤である民主党支持者からの指示を固めるためにも、イスラエルに対しての何らかの動きは必要となる。大統領選挙に向けて、バイデン大統領は経済回復を実績とアピールしたい。それに加えて、外交、対外政策の面でも成功をアピールしたい。ウクライナ戦争が泥沼の状況になっている中で、中東紛争は、政権にとって対処すべき問題であり、そこで成功(停戦など)をアピールできれば、政権支持率の上昇に資することになり、大統領選挙でも有利に働く。アメリカとしてはまずイスラエルに停船を促す、圧力をかけるということになるだろう。更には、ネタニヤフ首相の「交代」「更迭」ということも視野に入っているかもしれない。

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アメリカ人の過半数が現在、ガザ地区におけるイスラエルの行動に反対だ(Majority in U.S. Now Disapprove of Israeli Action in Gaza

-昨年11月から現在までで支持が50%から36%に下落した。

ジェフリー・M・ジョーンズ筆

2024年3月27日

「ギャロップ」

https://news.gallup.com/poll/642695/majority-disapprove-israeli-action-gaza.aspx

ワシントンDC発。昨年11月の時点では、イスラエルのガザ地区での軍事行動を僅差で支持したアメリカ人が、現在、この作戦に大差をつけて反対をするようになっている。現在、55%のアメリカ人がイスラエルの行動に反対し、36%が支持を表明している。
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最新の世論調査結果は、3月1日から20日までのものだ。イスラエルとハマスの戦争は5ヶ月間続き、数万人のパレスティナ人と1000人以上のイスラエル人が亡くなっている。ガザ地区の大部分は破壊され、今もそこに住むパレスティナ市民に人道援助を届ける努力を難しくしている。国連とジョー・バイデン政権を含む国際社会は停戦(cease-fire)を呼びかけているが、イスラエルとハマスの両陣営は合意できない状況だ。

今回の世論調査は、月曜日に国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を可決する前に終了した。アメリカが拒否権を行使せず、棄権したため決議は可決された。アメリカは以前に停戦を求める他の決議には拒否権を行使した。

アメリカの成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深く見ていると回答している。これは昨年11月に測定されたギャラップ社の世論調査の結果の72%とほぼ同じである。アメリカ人の3分の1(34%)は、状況を「非常に注意深く」注視していると答えた。

イスラエルの軍事行動に対する反対は、アメリカ人がどれだけ紛争に注目しているかにかかわらず、ほぼ同様である。しかし、注目度が低い人ほど、この問題に関して意見を持たない傾向が強く、その結果、注目度が高い人よりも支持率が低くなっている。
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●共和党支持者は肯定的スタンスを維持しているが、無党派層は決定的に否定的になっている

アメリカにおける3つの主要な政治的なグループ分け全てで、イスラエルのガザ地区での行動を昨年11月時点よりも支持しなくなっている。これには、民主党支持者と無党派層の支持率が18ポイント低下したことと、共和党支持者の支持率が7ポイント低下したことが含まれる。

無党派層は、イスラエルの軍事行動に対する見方が分かれていたが、反対へとシフトした。民主党の支持者は、昨年11月の時点で既に過半数が反対していたが、現在はさらに反対を強めており、賛成が18%、反対が75%となっている。

共和党支持者は依然としてイスラエルの軍事行動を支持しているが、賛成が71%から64%に減少した。
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イスラエルの行動に対する民主党所属の連邦議員たちの間で、反対意見が拡大していることは、ジョー・バイデン大統領にとって、彼の最も忠実な支持者の間でもこの問題が困難であることを浮き彫りにしている。民主党を批判する人々の中には、バイデンは停戦を促進し、紛争地域に巻き込まれたパレスティナ市民を支援するためのより強力な行動を取らず、イスラエルに寄り添いすぎていると考えている人がいる。

バイデンの中東情勢への対応に対する支持率は27%で、今回の調査でテストされた5つの質問の中では最低の数字であった。これは、バイデンがイスラエルとパレスチティナの情勢をどのように扱っているかを支持する民主党支持者たち(47%)が、経済、環境、エネルギー政策、外交問題など幅広い分野でのバイデンの扱いを支持する民主党議員よりもはるかに少ないためである。これらの問題に関しては、民主党支持者の66%以上がバイデンを支持している。

中東情勢に関するバイデンの低評価をさらに促しているのは、無党派層のわずか21%、共和党員の16%が、この問題でのバイデンの対処を支持していることだ。

それでも、中東紛争がバイデンの政治的地位に明らかな打撃を与えている訳ではないようだ。昨年10月と11月の調査では支持率が37%であったが、今回は40%となり、これは、おそらくアメリカ国民のアメリカ経済への信頼が高まっていることが理由となるだろう。

●結論(Bottom Line

イスラエルとハマスの戦争が長引くにつれ、戦争における同盟国イスラエルの行動に対するアメリカの支持は低下している。ギャラップ社が今年2月に実施した世論調査によると、アメリカ人はイスラエルとパレスティナ自治政府の両方に対してあまり好意的でないという結果が出ている。

多くの問題でそうであるが、アメリカ国内は党派別で激しく対立している。共和党支持者の大半は、秋の調査よりは少ないものの、イスラエルの行動を支持しており、民主党支持者の大半は反対している。無党派層の意見は、民主党支持者の意見にかなり近づいている。

アメリカ人はバイデンの紛争への対応を低く評価しているが、バイデンの大統領としての仕事ぶり全般に対する支持率は紛争が始まる前より下がってはいない。中東紛争は、アメリカ人が、アメリカが直面している最重要な問題を挙げるという質問では上位にランクされていない。また、アメリカ人がアメリカの重要な利益に対する重大な脅威として、いくつかの国際問題をそれぞれ評価する際にも上位にランクされていない。しかし、中東紛争は、この問題に深い関心を持ち、バイデン大統領の対応に憤慨している、バイデンに投票するであろう民主党支持者の投票率を下げることで、大統領に打撃を与える可能性がある。

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