古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 2020年8月13日、イスラエルとアラブ首相国連邦(UAE)が外交関係樹立に向けて動くことに合意したということをアメリカのドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスの大統領執務室で発表した。トランプ大統領の後ろには、ジャレッド・クシュナー(トランプ大統領の娘イヴァンカの夫)上級補佐官、スティーヴン・ミュニーシン財務長官が並んで立っていた。このことから、今回の合意を主導したのは、トランプ政権内の関与政策派(現実主義派、穏健派)だということが分かる。
donaldtrumpuaeisraeldiplomaticrelations001

 今回の合意で、中東地域に「対話」の必要性が認識されるということが述べられている。中東地域では、2つの大国、サウジアラビアとイランが軸となり、そこにイスラエルが絡んで複雑な様相を呈している。加えて、歴史的な経緯から対話など望むべくもない状況であるが、そこにUAEとイスラエルの外交関係樹立というニュースが飛び込んできた。「イスラエルの存在を認めるのか」「イスラエルとの共存を認めるのか」という根本的な問題はある。しかし、現実的に見て、イスラエルを地上から消し去ることはできない。だが、イスラエルがあまりに傲慢に、かつ自己中心的過ぎるほどの行動を続けていくならば、そのことが存在を危うくしてしまうことは考えられる。

 イスラエルによるヨルダン川西岸地区の一部併合は、今回の合意の中では触れられていない。この併合計画はイスラエルの現実主義的なイスラエル労働党の流れではなく、中道から右派、現在のベンヤミン・ネタニヤフ政権による強行的過ぎる計画で、凍結することになるのではないかと私は考える。ジャレッド・クシュナー上級補佐官は、イスラエルの存立のために強硬な計画を凍結させ、その代償でUAEとの関係樹立を進めたということになるのだろうと思う。

 アメリカ大統領選挙に関連しては、今回の合意はあまり大きな影響は与えないだろう。アメリカ国民の関心は完全に内向きになっており、国際関係で言えば、対中脅威論に同調するという程度のことだろう。それでも、今回の合意は大統領選挙で争う、民主党のジョー・バイデンも賛意を示したことでも分かる通り、一歩前進ということになる。

(貼り付けはじめ)

イスラエルとアラブ首長国連邦の外交関係樹立についての5つの論点(5 takeaways from Israel and UAE opening diplomatic ties

ロウラ・ケリー筆

2020年8月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/511944-5-takeaways-from-israel-and-uae-opening-diplomatic-ties

トランプ大統領は、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が正式な国交を樹立すると発表した。これは歴史的な外交上の前進である。

しかし、専門家の間では中東地域の変動に対する影響について意見が分かれている。一部の専門家は、これはイランに対抗するための試みの一環として現実を承認した動きだと主張し、別の専門家たちは長期的な戦略というよりも短期的な政治的目標の反映だと述べている。

一方、批判的な人々は、イスラエルがヨルダン川西岸地区の一部の併合計画を凍結することをアメリカが支持していることについて、トランプ大統領のイスラエルとパレスチナとの間の和平プランの重要な部分を損なうものだとして重大な関心を持っている。

これから中東の外交における今回の新しい進展に関する5つの論点を見ていく。

(1)トランプ大統領は外交政策面からの再選に向けた促進材料を獲得(Trump gets pre-election foreign policy boost

トランプ大統領は大統領選挙まで3カ月を切った段階で、外交政策上の勝利を売り込むことができるようになっている。イスラエルとUAEの関係正常化に向けた動きは、イスラエル・パレスチナ紛争の解決のための、トランプ政権の掲げる「繁栄のための平和(Peace to Prosperity)」枠組みの重要は要素となる。

右派、左派両派に属する多くの人々がこの動きを称賛した。その中には大統領選挙でトランプ大統領と戦う民主党の大統領候補者ジョー・バイデンも含まれている。バイデンは声明の中で、今回の合意は、オバマ政権を含む「これまでの複数の政権の努力」の積み重ねの結果だと主張している。バイデンは、合意の発表を受けて「喜ばしい」と述べた。更に、彼自身と副大統領候補であるカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は今年の11月に当選した暁には、「この前進の上に更に成果を築き上げるために努力する」と述べた。

イスラエル・パレスチナの和平計画はトランプ大統領の外交政策公約の礎石であり、義理の息子で上級補佐官のジャレッド・クシュナーの2年間の努力の成果である。

UAEは今年1月に和平計画が初めて明らかにされた時に、国際社会とアラブ世界の多くの国々が拒絶を表明する中で、積極的に支持を表明した国の一つだった。

しかし、その支持も、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相が今年6月にヨルダン川西岸地区を併合しようとした際に、ほぼ取り消される事態となった。これはトランプ大統領による計画に基づいたものであった。

木曜日のアメリカ、イスラエル、UAEの間での発表では、併合については議論をしていないと特に言及された。

ワシントンDCにあるシンクタンク「ファウンデーション・フォ・ディフェンス・オブ・デモクラシーズ(FDD)」の研究担当の副所長を務めるジョナサン・シャンザー「今回の発表は、クシュナー・アプローチにとっての決定的な勝利だと考えられます。地域の利益と地域の平和はヨルダン川西岸地区の一部の併合よりも優先されたということなのです」と述べた。

しかし、ワシントンDCにあるシンクタンク「アラブ・センター」の上級部長ハリリ・ジャウシャンは、今回の合意は、アブダビ(UAE政府)からの強力なプッシュによるもので、それはUAE自身がトランプ大統領への支持を促進することで利益を得ようとする動きの一環であると述べている。

「公開の合意はUAEによる公の試みということが言えるでしょう。UAEはトランプ大統領が危機に瀕していると考えており、それを何とかしようと考えたのでしょう。UAEはトランプに大統領の地位にとどまって欲しいと考えているのです」。

(2)UAEによる前進は他のペルシア湾岸諸国とアラブ諸国についての疑問を持たせることになった(A step forward by the UAE raises questions for other Gulf and Arab states

イスラエルと実効的な平和条約を結んでいるのはエジプトとヨルダンだけだ。その他の全てのアラブ諸国は2002年に、パレスチナ紛争と主権を持つパレスチナ国家樹立の話し合いによる解決が実現するまでイスラエルを承認しないことで合意した。

ジャウシャンは、今回の合意は、UAEによるイスラエル不承認という考えを損なうものだと述べている。

ジャウシャンは次のように述べている。「二国共存による解決という死体を埋葬してくれる人を探してきたようなものなのです。誰もそんなことをしてくれそうにありませんでした。これはもう一つの機能不全に陥った考えにも同様なことなのです。そのもう一つの考えとはアラブ諸国がイニシアティヴを取るというものです」。

「ワシントン・インスティテュート・フォ・ニア―・イースト・ポリシー」の上級研究員ガイス・アル=オマリは、UAEによる大胆なステップはしかしながら、他の湾岸諸国とアラブ諸国からすぐに追随者が出ることはないだろうと述べている。

オマリは次のように述べた。「この種の新たな展開は広範囲の準備と裏での根回しを必要とします。UAEはペルシア湾岸諸国の中で最も活発な外交を展開している国でしょう。そして、リスクを取ることを厭いません」。

オマリは続けて次のように述べている。「今回の動きはリスクがあります。パレスチナ人の多く、カタール、トルコ、そしてイランからの攻撃に晒されることもあるでしょう。その他の湾岸諸国は事態がどのように進展するかを様子見するでしょう。より長期で見れば、追随する2国が出るでしょう。それはバーレーンとオマーンでしょう」。

(3)中東地域の政治的なダイナミクスが変化(A shifting political dynamic in Middle East

オマリは、イスラエルとの関係を樹立するというUAEの決定は、アラブ諸国間に存在する緊張関係を深めることになるだろうが、新しい関係を作り出すことはないだろうと述べた。

オマリは次のように述べている。「実質的にイランの影響を受けた国々(シリアとレバノン)、カタール、アフリカ北部の国々を含む一部のアラブ諸国は、アラブ連合におけるUAEの会員資格をはく奪、もしくは凍結することを目指す可能性があります。しかし、UAEはサウジアラビア、エジプト、ヨルダンなどのアラブの大国グループの一部です。これらの国々は同盟関係が崩れることを望まないでしょう。パレスチナ自治政府は、UAEの動きに対する怒りに任せて動くのではなく、UAEのアラブ諸国中の同盟国に反感を持たせないようにすることが重要です」。

FDDのシャンザーは、UAEの動きは、イスラエルとヨルダンの関係を強める可能性があると述べている。ヨルダンはヨルダン川西岸地区の併合が進められれば大きな圧力を感じている。

シャンザーは「UAEがイスラエル国内でのヨルダン川西岸地区の併合についての議論を明確に止めたという事実は、ヨルダンとイスラエルの緊張関係を取りぞくことを意味します」とも述べている。

(4)イランはトランプ大統領、アメリカの同盟諸国の動きによって決断する方向に向かう(Iran drives decisions for Trump, allies

イスラエルとUAEの正式な関係樹立はトランプ政権がイランに対する圧力を強める中で起きた。トランプ政権はオバマ政権下でのイランとの核開発をめぐる合意の最後の部分を破壊しようと圧力をかけている。これはイラン政府に対してアメリカが圧力を強めていることを示すシグナルである。

ワシントン・インスティテュートのオマリは「イランは、イスラエルとUAEの間の利益の転換の真ん中にいます。両国はイランを自国の存在に関わる根本的な脅威と見なしています。今回の動きは対イラン枢軸の形成を促すことになるでしょう」と述べている。

大西洋協議会の「フューチャー・オブ・イラン・イニシアティヴ」のディレクターを務めるバーバラ・スラヴィンは、新たな正式な関係は、外交と対話の力を示すものであり、イラン政府はそのことを認識すべきだと述べている。

スラヴィンは次のように述べている。「イランは今回の合理について非難するでしょう。しかし、テヘランにいるイランの最高指導者層は、イスラエルを承認しないことがいかに時代遅れで、非生産的なことかを考えさせられることになるでしょう。中東地域に存在する全ての国々は、すぐに対話を持つ必要があります。特に長年にわたり敵対してきた国々の間での対話は必要です。つまり、今回のUAEとイスラエルの動きを単に“反イラン的”と形容するのは、地域の和解を更に困難にするでしょう」。

(5)しかし今回の合意は有権者の共感と支持を得られるだろうか?(But will it resonate with voters?

木曜日の発表は、ワシントンの外交政策エスタブリッシュメントから興奮をもって受け入れられた。しかし、大統領選挙に対する影響は最小限度のものとなるだろう。

エモリー大学政治学教授アラン・アブラモビッツは「外交政策は現状ではほぼ注目されていません」と述べた。

有権者たちの関心は新型コロナウイルス感染拡大、経済の危機的状況、ジョージ・フロイド殺害事件から人々の意識が高まった人種に関する正義問題に集まっている。

アブラモビッツは「今回の大統領選挙に関しては、外交政策問題は関心リストのかなり下に位置することになります」と述べた。

UAEとイスラエルの関係強化はトランプ大統領の支持基盤を強めることになるだろう。支持基盤の有権者にとって、トランプ大統領はイスラエルにとって最良の米大統領ということになる。しかし、新型コロナウイルス感染拡大と経済状態について関心を持っている、様子見の有権者たちを動かすことはほとんどないだろう。

共和党系の世論調査専門家であるウィット・アイレスは次のように述べている。「イスラエルと近隣諸国との関係についての問題はそれらに関心を持っている人々にとっては重要なのです。しかし、より多くの人々にとって、本当に関心を持っている問題は新型コロナウイルス感染拡大とその結果としての景気後退なのです。それらに加えて、人種をめぐる不正義と都市部での暴動なのです」。

トランプに対する反対者たちにとって、ヨルダン川西岸地域の併合の凍結は歓迎すべき動きだと考えられるが、トランプ大統領が独自のもしくは卓越した外交技術を持つことを示すものではない。更に言えば、進歩主義派は、併合の凍結は、併合という政策自体が破綻していることをトランプ大統領が認めたということになると考えるだろう。進歩主義派は長年にわたり、併合はパレスチナ側との交渉とアラブ諸国との関係改善いう希望を葬り去るものだと主張してきた。

「イスラエル・ポリシー・フォーラム」の政策部長マイケル・コプロウは次のように述べている。「トランプ政権とネタニヤフ首相は併合を推進してきました。しかし、徐々にではあるが、併合はイスラエルと近隣諸国との間の関係正常化を妨げる障害物だということを認識しつつあります。併合を政策から外すことこそがやらねばならないことなのです」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 日本は「戦前」と「戦後」の区別ははっきりとしている。太平洋戦争における敗北がその分岐点だ。日本は敗戦を受け入れ、アメリカ軍を中心とした連合諸国の占領(ほぼアメリカ軍だが)を経験した。1945年の敗戦からは日本にとっては「戦後」だ。一方、アメリカではそのような区別はない、なぜならばそれ以降も幾度も戦争を繰り返しているからだ、という話を聞いた。

確かに冷戦期においては朝鮮戦争とヴェトナム戦争で大きな犠牲を払っている。また、湾岸戦争も2回実施された(1991年と2003年)。日本の「戦後」である75年の間に10年以上は戦争をしているということになる。

 今回ご紹介する論考は、この75年間にアメリカが戦った戦争は、日本との戦争とは大きく異なり、完全勝利もその後の敗戦国の体制転換ももたらさなかった、ということから、マッカーサーが使った「偉大な勝利」はなかった、ということを論じている。アメリカ国民には受け入れがたいほどのコストがのしかかりながら、完全勝利を得ることはできなかった、その子で国民は苦しみ、不満を持ってきたということだ。
unconditonalsurrenderofjapan1945001

 1945年9月2日に東京湾のアメリカ戦艦「ミズーリ号」(現在はパールハーバーに展示されている)の艦上での降伏文書調印式が実施された。この時の写真や映像は残っており、今でもテレビで放映されたり、雑誌に掲載されていたりする。しかし、これ以降、このような完全な勝利による、敗戦国側がおずおずと儀式に出てきて降伏文書に調印するというような戦争をアメリカは経験していない。言われてみれば、アメリカ側が得意の絶頂になって、勝利を見せつけるということができたのは、太平洋戦争が最後だ。

 このような完全勝利(日本の無条件降伏)ならば、アメリカ国民もある程度の犠牲やコストを甘受しただろう。しかし、その後はこのような完全勝利を得られるどころか、コストに結果が伴わないということが続いている。しかし、無敵アメリカ軍、という印象や日本の降伏と民主化という「幻影」に縛られている。イラク戦争が一応の終結を見た後に、ポール・ブレマー連合国暫定当局(CPA)代表をダグラス・マッカーサーと比べる記事や日本の民主化についての記事がアメリカでも多く出たが、とても成功したとは言えない。

 大成功を収めた後ほど怖い、という処世訓がある。アメリカの場合はこの庶民の私たちが持つ処世訓通りの75年間を過ごしてきたことになる。

(貼り付けはじめ)

日本の無条件降伏がもたらした危険な幻想(The Dangerous Illusion of Japan’s Unconditional Surrender

-これまでの数十年間、アメリカの外交政策は第二次世界大戦を終わらせた方法によって、かえってよくない方向に捻じ曲げられてきた

マーク・ガリッキオ筆

2020年8月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/08/13/vj-day-the-dangerous-illusion-of-japans-unconditional-surrender/

1945年8月15日の夜明けを迎える少し前、国営放送は日本国民に対してその日のうちに天皇からのメッセージがあるので注意するように求める放送を行った。日本全国で、人々は不安の中で、初めて耳にする「玉音(the jeweled voice)」を待った。ほとんどの国民は、天皇が最後まで戦い抜くことを求めるメッセージを発するものと考えていた。国民が耳にしたのは、甲高い、早口の古い日本語で書かれたメッセージであって、国民の多くには理解できなかった。玉音放送の後に解説者が出てきて、天皇は降伏に同意したと説明し、そこでやっと国民は戦争が確かに終わったことを知った。

このニュースがワシントンに達した時、すぐにお祝いが始まった。しかし、戦争を終結させるための正式な儀式は9月2日の日曜日まで待たねばならなかった。日本の正式な敗北はアメリカ海軍戦艦ミズーリ号の艦上で発効した。降伏文書は連合国と日本の代表者によって署名された。この文書は大日本帝国大本営と日本の管理下にある全ての武装勢力が無条件降伏(unconditional surrender)することを宣言した。降伏文書には、天皇と日本政府の権威はアメリカのダグラス・マッカーサー大将の指揮下に入り、全ての文官と軍人はマッカーサーに従うように命じた。調印式の最後に、マッカーサーはマイクの前に立ち、世界中の聴衆に向かって来示を通じ得ての演説を始めた。現在では有名になっている演説は次のように始まった。「本日、銃は静まった。大規模な悲劇は終わった。大きな勝利が勝ち取られた(A great victory has been won)」。

日本の降伏後、日本の非武装化、経済、政治、社会のそれぞれの機構の改革、新憲法の制定、中国と東南アジアに展開していた戦闘では敗れていなかった日本軍の降伏と言ったことが続いた。これらすべては天皇に対するアメリカの影響力によって実行されたものだ。天皇は日本軍に無条件降伏を命令した。飛行機が上空を飛び交い、米第三艦隊所属の200以上の艦船が東京湾を埋め尽くす中で、アメリカの力が全ての場所で誇示された。アメリカ人が戦争における完全な勝利の中にいて、征服した敵に対して自分たちの意思を押し付けることができるということがこの時をもって最後になるなど、この時に参加していた人々は誰も知らなかった。東京湾における軍事力の誇示は日本国民を畏怖させる意図で実施された。しかし、それだけではなく、軍事力によって達成できるものについての誤った印象を増進させることにもなった。

19世紀以降、社会的な発達と技術的な発達によって、戦争は高いコストがつくものとなった。軍事力を通じて国家目的を達成することは政治的に受け入れがたいほどのコストが発生するリスクが大きくなった。近代戦争において国民が総動員されることは、交戦諸国に対して大きなプレッシャーとなり、勝利国であっても極限での犠牲が大きくなってしまうことになった。アメリカが日本と戦争状態に入った時、アメリカの戦略家たちは、日本本土を孤立させ、幸福を促すために、主に海軍力を使うことでそうした運命に陥らないようにすることを望んだ。この目的のために最初に必要なことは日本帝国海軍の艦隊を壊滅することだった。1945年春までに、アメリカ空軍による日本の諸都市への繰り返しの爆撃によって日本の絶望状態が進んだ。それにもかかわらず、日本政府はアメリカ側が受け入れられる条件を出すことを拒絶した。戦争は継続した。

1945年8月までに、アメリカ陸軍は、太平洋戦争において最も厳しい戦いを経験の少ない新兵が補充された、疲れ切った師団で戦うための準備を行っていた。苛立ちを募らせた国民と批判的な政治指導者たちは、日本の無条件降伏と同義とされた勝利が受け入れ可能なコストで達成されるのかどうか疑問を持った。2発の原子爆弾とソヴィエトの対日参戦はそのような議論を終わらせ、誰も想像しなかった素早い決定がなされた。運命の突然の逆転は、後の世代が、日本の抵抗とアメリカ国内の分裂のためにアメリカの戦略がどれほど混乱したかが分からなくなってしまった。また東京湾上での降伏文書調印儀式は、後の世代に、「戦争の終わりはこうであらねばならない」、そして「これは再現できることなのだ」という考えを植え付けた。

アメリカの次なる戦争は、時期と場所だけが太平洋戦争のパターンにそっくりなものとして出てきた。朝鮮戦争は奇襲攻撃から始まった。この奇襲攻撃によって、アメリカと同盟軍は後退を余儀なくされ、国連による攻勢によって体勢を立て直すに至った。仁川(インチョン)の二正面による上陸作戦の成功は、マッカーサーが第二次世界大戦において行ったニューギニア北部で行った飛び石作戦を思い出させるものとなった。この成功によって、北朝鮮への侵攻と完全勝利への期待が高まった。中国人民解放軍の介入によってこれらの希望は打ち砕かれた。そして、国連は長期にわたる、徐々に人々からの支持を失っていった戦争を戦うことになった。そして、戦争目的は限定的なものとなった。朝鮮戦争においては、アメリカの戦艦の艦上で敵の降伏を受け入れるということもできないものとなった。戦争は板門店のテントの中で、厳しい停戦交渉の末に実現した。

アメリカがヴェトナムに直接介入する時までに、戦闘における核兵器の使用は不可能だという戦略的分析が既になされていた。特にアジアにおいてはそうだとされていた。広島で核兵器が使用されてからの10年間、アメリカの戦略家たちは、アジア地域における核兵器の使用について、使用してしまうと、地域に住む人々に対して「地域の人々の声明についてアメリカ人は無関心なのだ」という認識を与えてしまうという結論を出した。核抑止力の短所を埋めるために、アメリカの軍事思想家たちは、許容できるコストで勝利を生み出すための最善の方法として、機動性と戦術的な空軍力使用を強調する制限戦争という戦略を主張した。アメリカは限定的な目的を設定した。それは非共産主義のヴェトナムの防衛であった。朝鮮半島における中国の介入がまた繰り返されることを恐れて、政府高官たちは、北ヴェトナムに対する地上戦を排除したが、敵の戦争継続能力を破壊することを究極の戦争目的とする軍事戦略を採用した。アメリカは個々の戦闘では常に勝利したが、戦争の勝利は朝鮮戦争の時よりも曖昧なものとなった。

結果は異なっているが、日本との戦争、朝鮮戦争、そしてヴェトナム戦争の間には共通点も見られる。その一つは、アメリカ軍に対して多大な死傷者を強いる一方で、敵は想像を絶する損失に苦しむことを自ら進んで行ったというものだ。もう一つは、アメリカ国民、特にビジネス界と政界の指導者たちが長期戦に伴う犠牲を受け入れ難く考えていたことだ。

歴史的に見て戦争は優柔不断の方向に引きずられてしまうということの証拠としてこれらの共通点を見ることができる。その代わりに、軍事専門家たちは、朝鮮戦争とヴェトナム戦争は、アメリカ人が限定戦争には向いていないことだけを証明したと結論付けた。その救済策はパウエル・ドクトリン(Powell Doctrine)だった。これは1990年代初めのアメリカ軍統合参謀本部議長の名前にちなんでつけられた。この新しい考え方は、二度とヴェトナム戦争のようなことが起きないためとするものだった。その内容は、アメリカはこれから勝てる戦争しか戦わないというものだった。コリン・パウエルはこの考えを1991年に実行に移した。1991年、アメリカと同盟諸国はイラク軍からクウェートを解放した。「砂漠の嵐」作戦は、サダム・フセインをイラクに押し戻すことに成功した。しかし、その目的が達成された後、パウエルはそのままイラクに侵攻すれば、ヴェトナム戦争の時同じ泥沼にはまるのではないかという恐怖感を持った。そこで、攻撃を停止した。軍事上の成功に対する祝意は、失望に変わった。それはサダム・フセインが権力の地位にとどまったことで、アメリカ人には不完全な勝利ということになり、不満が残った。

それから10年後、デジタル革命とそれに付随する武器の進歩によって、新しい世代のアメリカの政治指導者たちは、軍事面での革命を実現したのだと考えるようになった。戦争の新方式の主導者たちは、いわゆる「戦場の全方位における優越(full-spectrum dominance of the battlefield)」を確信しており、これによってアメリカはより低いコストで大きな勝利を得ることができると考えた。軍事に関する革命についての最初のテストは、パールハーバー奇襲攻撃を思い出させることになる911事件のテロリスト攻撃の後に実行された。

911事件の首謀者たちを標的とする限定的な攻撃によって対応する代わりに、アメリカは拡大されたテロリズムに対する世界規模の戦争に乗り出した。第一段階は2001年10月に「不朽の自由」作戦として、アフガニスタンへの侵攻で始まった。第二段階は、「イラクの自由」作戦として2003年3月に始まった。両作戦は共に、中東地域への民主政治体制の拡散のためのより大規模な戦役の計画が実現されたものだった。

2002年10月、ジョージ・W・ブッシュ政権はイラク侵攻を真剣に検討した。軍事面の計画立案者たちは日本占領をイラク侵攻についてのガイドと考えていた。ドイツとは逆に、日本は最も望ましいモデルであった。それは、日本は占領期間中に分裂することなく、統一を保ち、アメリカが非西洋国に民主政治体制を植え付け育てることができることを証明したということが理由であった。しかし、イラクは日本のようにはいかなかった。少なくともブッシュ政権が想像したようにはいかなかった。

2003年4月1日、アメリカのイラク侵攻が始まって2週間後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官はイラクの政権の無条件降伏を求めると宣言した。2007年8月、アメリカ軍はイラクでまだ戦闘を続けていた。戦闘が長引くようになり、ブッシュ大統領は、自分の父親たちの世代が獲得した勝利と同様の勝利で「テロとの戦争」は勝利するだろうと語りかけた。対外戦争従軍復員軍人会の会合に出席し、ブッシュはたとえ話から演説を始めた。ブッシュは演説を次のように始めた。「ある良く晴れた日の朝、数千のアメリカ人が奇襲攻撃で殺害され、私たちを世界中に進出させることになる、戦争に私たちの国は入ることになりました」。

ブッシュは続けて次のように述べた。「私が述べている敵とはアルカイーダのことではありません。奇襲攻撃は911事件のことではありません。帝国はオサマ・ビン・ラディンが夢想する急進的なカリフが統治する帝国のことではありません。私が述べているのは、1940年代の日本帝国による戦争マシーン、日本帝国によるパールハーバーへの奇襲、日本帝国による東アジア地域への帝国の拡大、ということです。」中東地域での民主政治体制の拡散という試みと努力を無駄だとする批判者たちを非難するために、ブッシュは、聴衆たちに対して、日本の民主化については当時の専門家たちも疑念を持っていたことに注意するようにと述べた。

ブッシュ大統領が演説をした時までに、アメリカ国民は既に中東での十字軍遠征に対する熱意を失っていた。1945年夏のアメリカ国民と同様、アメリカ国民は怒りに任せて始めた戦争についてすでに過去のこととして関心を失い、国内問題に関心を集めるようになっていた。ほとんどのアメリカ国民にとって、中東での完全勝利の代償はその価値を超えるものとなっていた。

アメリカ人が日本との戦争終結75周年を記念する際、2発の原子爆弾とソヴィエトの参戦によって日本の無条件降伏は促されたということを思い起こすことになるだろう。偉大な勝利が勝ち取られた。短い間、ほんの短い間、アメリカは歴史の法則から自由になった。そして、国民が受け入れられるコストで勝利を得ようと苦闘する他の国々の運命からも免れた。そのような瞬間は二度と戻ってこない。また、そのようなことが実現できると期待すべきではないのである。

※マーク・ガリッキオ:ヴィラノヴァ大学歴史学教授。『無条件:第二次世界大戦における日本の降伏(Unconditional: The Japanese Surrender in World War II)』著者

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 少し前にアメリカのドナルド・トランプ大統領が世界初の核実験75周年で、ロシアと中国に軍縮を呼びかけたというニュースを見た。「アメリカが偉大である」ためには「核兵器の優位」が必要だとでも言うのかと思ったが、核兵器に関しては軍拡競争はしたくないという姿勢を見せた。

 太平洋戦争の最終盤で日本の広島と長崎にそれぞれ原子爆弾が投下されてから、実際の戦争で核兵器が使用されたことはない。アメリカ一国のみが核兵器を保有しているという状態は長くは続かず、1949年にソ連が核実験に成功し、核保有国となった。1964年には中国も核実験を成功させた。世界の核保有国は10か国程度である。第二次世界大戦後の冷戦時代、核兵器の使用はなかったが、キューバ危機では核戦争の危機が高まった。

 核不拡散条約(Non-Proliferation Treaty)は、1968年に締結された。この条約はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国以外の国々の核兵器保有を禁止するというもので、国連常任理事国以外には核兵器を持たせないぞ、というものだ。戦後国際体制を作った戦勝国が世界を支配し、それら以外は従えというものだ。インド、パキスタン、イスラエルはこの条約には加盟していない。また、北朝鮮は1993年に条約から脱退した。そのために、五大国の思惑とは異なり、核兵器は拡散している。

アメリカとロシアはそれぞれ6450発、6490発の核弾頭を保有し、1600発を実戦配備している。イギリス、フランス、中国はそれぞれ200発から300発の核弾頭を保有している。NPTに批准していないインド、パキスタンは100発以上の核弾頭を保有していない。また北朝鮮も100発以内の核弾頭を保有している。イスラエルは正式な核兵器保有を認めていないが、保有が確実視されている。イランは核開発の疑いを持たれている。

 アメリカもロシアも世界を何度も全滅させることができるほどの核弾頭を保有しているが、核兵器軍縮について、「囚人のジレンマ(prisoner’s dilemma)」という考えから見ていこう。

ジレンマとは「板挟み状態」のことだ。2人の犯罪者ABが捕まり、別の場所で取り調べを受ける。ABが両者ともに完全に黙秘をすれば、2人とも懲役2年となる。どちらか一方が自白をすれば、自白をした人間は懲役がなく、もう一方は10年の懲役となる。どちらともに自白をすれば2人とも懲役5年となる。この条件はそれぞれに伝えられているが、ABとも相手が自白をしたかどうかは分からない。

 この場合、Aの置かれている立場を考えてみる。Bが黙秘する場合、Aが黙秘したら懲役2年、Aが自白をしたら懲役0年」となる。これだとAは自白したほうが得となる。Bが自白する場合、「Aも自白をしたら懲役5年、Aが黙秘をしたら懲役10年」となる。この場合もAは自白したほうが懲役が短くなるので得となる。従って、Aは自白をするという選択肢になる。Bにとっても同じことになる。お互いを信じて黙っていたら2年で済むものが結局お互いに自白をして5年の懲役となるが、これが「合理的な」選択となる。懲役なしという最善の結果を得ることはできなくても、自分だけ10年の懲役を喰らうという最悪の事態を避けることができるからだ。ここで黙秘を「協調」、自白を「裏切り」と規定すると、裏切ることがABお互いにとって一番合理的な選択ということになる。

 囚人のジレンマで考えて見ると、一番良い結果は、お互いが協調することだ。しかし、それを阻むのはABが別の場所で取り調べを受けていて、全く連絡が取れないことだ。そのために結局裏切った方が得ということになり、お互いが最善の結果を得ることができないということになる。それならば、お互いが連絡を取り合えれば、「黙秘をした方が得」という合意ができることになる。これを応用すると、核保有諸国は、お互いに他国の意思が分からなければ軍拡競争を続けざるを得ない。使いもしない、使えもしない核弾道を数千発も保有して大きな負担だと嘆いてしまうという不合理な結果になってしまう。しかし、軍縮のためには「協調」が必要ということになる。そのためには「交渉」の枠組みが必要だ。

 アメリカとロシアは6000発以上の核弾頭を保有しているが、冷戦期の馬鹿げた軍拡競争の果ての負の遺産ということになるだろう。管理にかかる予算だけでも膨大なものとなり、かなり負担になるはずだ。米露は年間数十発ずつ減らすことを続けているが、今のペースでは数百年かかるだろう。それなら中国が求めているように、数百発にまで減らしてから何か言ってこい、ということになる。まずは米露で数百発単位の削減を数年間続けて見せてから、本気なのだということを示してから何か言えよ、ということだ。そうでなければ対等に話し合いなどできないということだ。

 新しい冷戦を迎えるためにはまずは古い冷戦の負の遺産を清算してからということだと思う。

(貼り付けはじめ)

核実験75 “ロシアと中国は核軍縮協力を” トランプ大統領

2020717 1022

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200717/k10012519961000.html

アメリカが人類史上初の核実験を行ってから75年となったのにあわせ、トランプ大統領は声明を発表し、核戦力の強化を進めて抑止力を高めると強調する一方、ロシアと中国に対して核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

アメリカは75年前の1945716日に西部ニューメキシコ州で人類史上初めてとなる原爆の実験を行いました。

トランプ大統領は16日、声明を出し「実験は第2次世界大戦の終結につながり、世界に前例のない安定をもたらしたすばらしい偉業だ」と称賛しました。そのうえで「強固で多様な核の能力があれば核の拡散を防ぎ、敵を抑止できる」として、核戦力の強化を進め、抑止力を高める方針を強調しました。

その一方で、トランプ大統領はロシアが爆発を伴う核実験を行い中国も実験を行ったおそれがあると指摘し「ロシアと中国には世界を安全にし、軍拡競争を防ぐため、改めて協力を求める」として、核軍縮に向けた協力を呼びかけました。

トランプ政権は、核弾頭の数などを制限したロシアとの核軍縮条約「新START」の有効期限が来年2月に迫る中、条約への参加を拒否している中国に参加を求めるねらいがあるものとみられます。

一方、声明については国務省で軍縮を担当した元高官がツイッターに「このようなつらい日にアメリカが軍拡競争で勝っていると強調するのはこの政権だけだ」と投稿するなど、批判も出ています。

=====

中国は米露との核兵器削減交渉への参加を拒否(China turns down nuclear arms control talks with US and Russia

マーティー・ジョンソン筆

2020年7月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/506792-china-turns-down-nuclear-arms-control-talks-with-us-and-russia

中国はこの問題についての自分たちの姿勢は「明確だ」と繰り返し、中国は米露との核兵器をめぐる交渉に参加しないという姿勢を改めて強調した。

中国外務省のツァオ・リージアン報道官は金曜日、アメリカからのロシアとの交渉に中国も参加してはどうかという提案について「真剣なものでもないし、誠実なものでもない」と述べた。

AP通信によると、ツァオ報道官は記者団に対して次のように述べた。「いわゆる三カ国による兵器削減交渉に対する中国の反対は明確なものです。アメリカ側もそのことをしっかりと認識しています。しかしながら、アメリカは中国の交渉への参加にこだわり、中国の地位を落とそうとしています」。

米露は冷戦期には敵同士で、現在でも世界の中で最大の核兵器を保有する大国同士でもある。両国は先月末ウィーンに集まり、「新スタート(New Start)条約」の延長について動き始めた。新スタート条約は2010年に合意され、来年2月に期限を迎える。

新しいスタート条約にはいくつかの条項が含まれている。その中には、配備済み核弾頭の数を少なくとも1550発までに制限するという条項、そして核弾頭を装備できる武器の配備を規制するという条項がある。条約ではまた、年間18か所の核兵器関連基地の査察を実施するプログラムも創設されている。

トランプ政権は米露に続き世界第3位の核弾頭保有国である中国に対して条約への参加を強く求めているが、中国政府は条約参加への反対を強硬に示している。

=====

中国がアメリカへ保有核兵器の削減を求める(China urges US to reduce nuclear arsenal

ジョン・バウデン筆

2020年7月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/china/506353-china-urges-us-to-reduce-nuclear-arsenal

水曜日、中国の複数の政府高官は、アメリカが進んで中国のレヴェルにまで保有核兵器を削減するならば、米露との三カ国による核兵器に関する交渉に喜んで参加するだろうがそれは実際には無理な話だと述べた。

新戦略兵器削減条約(New Strategic Arms Reduction TreatySTART)に関する、新たな核兵器に関する交渉を先月から開始した。先月、トランプ政権の軍縮担当の責任者は次のようにツィートした。「中国もまた会議に招待された。中国の代表団は姿を現し、誠意を持って交渉に参加するだろうか?」

ロイター通信は次のように報じている。中国外務省の報道官は、トランプ政権とロシアとの核兵器をめぐる交渉に参加するようにアメリカから招待を受けた件について、アメリカがロシアとの新たな核兵器をめぐる交渉から離脱するという目的のために「関心を別に向けるための謀略以外のものではない」と述べた。

ロイター通信によると、中国外務省の兵器削減部門の責任者であるフー・ツォンは次のように述べた。「私は皆さんに明言しますが、アメリカが中国の核兵器保有レヴェルまで下がってくる用意があると言うならば、中国は明日にでも喜んで話し合いに応じます。しかし、現実には、そんなことは起きないことを私たちは分かっています」。

ツォンは「アメリカの真の目的は、全ての制限を撤廃して、現実のもしくは仮想の敵に対して軍事上の優位を追求するためのフリーハンドを持つことです」とも述べた。

新しいスタート条約はオバマ政権下で交渉されたもので、米露両国で配備できる核弾頭の数を1550に制限するというものだ。条約の有効期限は来年の2月だ。

スタート条約に関する中国側からのコメントがなされたのは、トランプ政権が世界保健機関(WHO)によってアメリカが正式に脱退した次の日のことだった。トランプ大統領は、世界保健機関が中国寄りだと繰り返し非難してきた。そして、コロナウイルス感染拡大への対処が遅すぎたと攻撃している。

世界保健機関と中国を批判する人々は、国際的なコロナウイルス感染拡大への対応が妨害されたのは、感染拡大の初期段階で中国の透明性の欠如が原因だと主張している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ラッパーのカニエ・ウエストが何度目かの大統領選挙出馬表明をツイッター上で行った。「vision2020」というハッシュタグが付いていたので、出るならば今年の大統領選挙に出るということになるという推測が成り立つ。

 出馬できればバイデンからアフリカ系アメリカ人票を削り取ることができるが、これからでは各州での立候補に必要な手続きに間に合わず、立候補できても数が少なくなるということだ。人々の注目を集めるということが今回のツイートの意図だということになる。

 そもそもカニエ・ウエストは妻のキム・カンダーシアンと共にドナルド・トランプ大統領を熱心に支持してきた。今回の出馬が本気だとしても、トランプ大統領の邪魔をするのではなく、各種世論調査でトランプ大統領をリードしているバイデンの票を削りたいという意図があるだろう。

 ウエストの出馬宣言に対して、テスラ社CEOのイーロン・マスクが即座に反応し、支持を表明した。また、この数日前には、マスクとウエストが一緒に写った写真を、ウエストがツイッター上に投稿している。イーロン・マスクは中国で厚遇されている。テスラは中国で業績を伸ばしている。

(貼り付けはじめ)

●「テスラCEO、中国の重要性を強調 トランプ氏に一線」

2019/8/29 13:52

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49143660Z20C19A8FFE000/

【上海=松田直樹、多部田俊輔】中国上海市で29日開幕した世界人工知能(AI)大会に米電気自動車(EV)大手、テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が登壇し、「中国は大きな進歩を遂げた。環境面でも世界をリードしている」と中国市場の重要性を強調した。トランプ米大統領の「米国内への生産移管も含めて中国の代替先を探し始めるよう命じる」との呼びかけに一線を画した格好だ。

マスクCEOは中国ネット大手、アリババ集団の馬雲(ジャック・マー)会長との対談で、中国市場などに関する自らの考えを明らかにした。上海市で建設中の新工場について「ギガファクトリーを上海に建設することに興奮している」と語った。中国の自動車市場については「世界のEVの製造の半分を中国が占めている」と評価した。

AI大会ではマスク氏のほか、米マイクロソフト幹部も登壇して演説した。米アマゾン・ドット・コム傘下のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が参加してAIを使ったクラウドサービスなどを展示したほか、IBMAIなどの新技術を出展。米中摩擦が激化する中でも、米国の主要企業が中国を重要市場と位置づけていることが浮き彫りとなった。

テスラは上海市郊外の新工場を年内にも本格稼働させる。外資企業としては初めて、単独出資による国内生産が始まる。既に新工場のオフィスでは同社の従業員が勤務を開始している。

まずは既存車種に比べて安価な主力の小型セダン「モデル3」を量産し、2020年に発売を予定している小型の多目的スポーツ車(SUV)「モデルY」を追加する。モデルYは既存の高級SUV「モデルX」の半値程度で、中国市場を開拓する戦略車として位置づける。

テスラの足元の中国での販売は好調だ。1916月の販売台数は約21千台で前年同期の2倍超に増えた。

(貼り付け終わり)

 マスクはトランプ大統領と対立しているように見えるが、二人はビジネスマンであり、「カネを儲けることが正しいこと」という信念は共通している。世界中どこででも金儲けができるならそれは正しいこと、ということになる。マスクにとって、トランプ大統領とバイデンを比べた場合、中国に対して激しい言葉遣いはするが決定的な対立はしないトランプ大統領の方が望ましいということになる。バイデンの場合、対外政策が不透明で、民主党の人道的介入主義派、ヒラリー派が対外政策を乗っ取る可能性が高い。バイデンの副大統領候補にスーザン・ライスの名前が急に出てきたのもその危険性を示す兆候だ。

 マスクはそもそもカニエ・ウエストの友人であるが、トランプ大統領が望ましいという点でも共通している。だから、ウエストの大統領選挙出馬に即座に支持を表明した。荒唐無稽と切って捨てるのは感嘆だが、その裏にある意図も考えてみるのは重要だ。

(貼り付けはじめ)

カニエが大統領選挙出馬とツイート(Kanye tweets he's running for president

ブルック・シーペル筆

2020年7月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/in-the-know/in-the-know/505893-kanye-tweets-hes-running-for-president

土曜日、カニエ・ウエスト大統領とファースト・レディのキム・カンダーシアンという将来の可能性が少し実現に近づいた。ラッパーのカニエ・ウエストは今年の大統領選挙に出馬するとツイートした。

7月4日に独立記念日のツイートで、43歳になるミュージシャンでありファッションデザイナーであるウエストは大統領選挙に出馬すると述べ、ハッシュタグ「2020 vision」を使用した。このハッシュタグを使うことは、今年の秋の選挙に参戦するということを彼が計画していることを示していることが明らかだ。

ウエストは「神を信頼し、私たちのヴィジョンをまとめ、私たちの未来を構築することで、アメリカの前提を認識しなければならない。私はアメリカ合衆国大統領選挙に出馬する」と書いた。

「スペースX」創始者イーロン・マスクはこのウエストのツイートに即座に反応した。「私は全幅の支持を君に与える!」。

20200704kanyewestelonmusttweets001

ウエストは過去にも大統領選挙に出馬すると表明した。ウエストはマスクと彼自身の写真を最近アップした。写真のキャプションは、「友達の家に行った時、お互いオレンジ色の服を着る」というものだった。

20200702kanyewestealonmusktweets002

ウエストはこれまで何度もトランプ大統領への支持を表明し、今年4月には今年の秋の選挙ではトランプ大統領に投票すると示唆した。

ウエストは次のように語った。「みんな俺が誰に投票しようとしているか分かっている。俺の周りの奴らのいうことなんて聞かないさ。奴らは俺のキャリアが終わると言っている。だけど、いいか、俺は言うことは聞かない。なぜなら、俺は今ここにいてキャリアが終わっていないからだ」。

ウエストは2018年10月に大統領執務室を訪問したことで知られている。この時、赤い「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」帽子をかぶり、トランプ大統領とポーズを取りながら、「俺はここにいるこの人が大好きなんだ」と述べた。

ウエストの妻であるリアリティTVのスター、キム・カンダーシアンは刑法司法改革を推進する活動家としてホワイトハウスを訪問した。

もしウエストが出馬するとなると、ゲームに遅れて参加ということになる。共和党、民主党の両党の全国大会の開催は翌月に迫っている。全国大会で両党は大統領選挙本選挙の候補者をそれぞれ正式に発表することになる。

今年の選挙にウエストが真剣に出馬する計画を持っているのか、そして必要な公式の書類を提出しているのかどうかは明確になっていない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大という事態を受け、米中関係は非難合戦の様相を五呈している。ドナルド・トランプ大統領をはじめとする政権幹部たちはウイルス感染拡大を中国の対応のまずさのせいにしている。世界各国で約1000万人が感染し、約50万人が死亡した。感染者数における死亡率は約5%である。今年1月から3月にかけて中国の武漢市を中心に感染が広がった。中国国内の深刻な様子が報道されていたが、現在のところ、中国国内の感染者は約8万3500名、死亡者は4634名だ。アメリカの感染者は約267万名、死亡者は12万名となっている。日本は感染者約18900名、死亡者は971名だ。

 アメリカは新型コロナウイルス感染拡大への対応が遅かったということになるだろう。都市部の人口密度や経済活動などの理由はあるだろうが、中国には人口1000万人を超える大都市が5つもある。日本にも東京、大阪、名古屋、横浜など大都市圏が存在する。

 下の記事は、新型コロナウイルス感染拡大の中で、大統領選挙の選挙運動が勧められており、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領、民主党の内定候補者ジョー・バイデン前副大統領が共に相手を「中国に対して弱腰だ」という批判を行っている。こうした状況では、中国との協力は難しいが、それでも、様々な分野で競争相手となる米中両国であるが、疾病の世界的感染拡大、感染爆発という事態には協力して対処しなければならないと主張している。下の記事の著者であるアルバート・ハントはケネディ・大統領の言葉を引用している。その言葉とは、「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」だ。

 冷戦期、アメリカとソ連は東西両陣営に分かれて鎬を削ったが、徹底的な対決は回避した。これをアメリカの歴史家ジョン・ルイス・ギャディスは「長い平和(Long Peace)」と呼んだ。代理戦争を戦わされた朝鮮半島、ヴェトナム、アフガニスタンの人々にとってはどこが長い平和なのかと怒りを持つであろうが、世界大戦がなかったという意味である。

 21世紀の米中関係に関しても新冷戦という言葉が使われ始めている。下の記事でも取り上げられているが、シンクタンクであるブルッキングス研究所所長を務めるジョン・アレン(退役海兵隊大将)は、アメリカは「自由主義的資本主義」のモデルを提示し、中国は「権威主義的資本主義」のモデルを提示して世界にアピールしている、と述べている。これが新しい冷戦の軸ということになるだろう。

 ソ連は自国の経済を崩壊させ、消滅した。一方、中国は経済力を急速に伸ばし、それにつれて政治力と軍事力を増強している。経済力での米中逆転は視野に入っている。こうした状況になり、冷たい戦争が覇権交代をめぐる熱い戦争にならないためにも、ライヴァル同士のパートナーシップとアメリカの軟着陸が21世紀中盤の重要な要素となるだろう。

(貼り付けはじめ)

パンデミック下の政治と中国との協力(Pandemic politics and cooperation with China

アルバート・ハント筆

2020年5月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/496354-pandemic-politics-and-cooperation-with-china

アメリカ政治で70年前に激しかった議論が形を少し変えて再び復活している。それは、誰に責任があるのか、もっと端的には「中国を失ったのは誰だ?」というものだ。

それが今では「誰が中国に対してより宥和的か?」だ。

トランプ大統領と、今年の秋にトランプ大統領と戦うことになるジョー・バイデン前副大統領は、お互いに相手が中国の支配者たちに対して下手に出ていると非難する攻撃的なテレビCMを流している。

中国はもう一つの世界の超大国として、経済、政治、軍事の分野での成長もあり、アメリカにとって既に政治上の重大な問題となっている。中国から始まった新型コロナウイルス感染拡大は、中国側の1月にわたる隠蔽もあったが、アメリカ国内では党派性を持った批判合戦のテーマとなっている。

トランプ大統領は数週間にわたり中国の新型コロナウイルス対策を評価し、アメリカの対策の遅れを誰の責任にするのかを探していた。それがここにきて新型コロナウイルスを「中国のウイルス」とレッテル張りをし始めた。ホワイトハウスにいる政権幹部の中には、トランプ大統領を見習って、「カン・フルー(Kung Flu)」と呼んでいる(訳者註:Fluはインフルエンザのこと、カンフー[Kung Fu]にかけている)。トランプ大統領は、アメリカ国内で感染拡大が激しくなるにつれて、攻撃を激化させている。そして、選挙での対抗馬であるバイデンを弱腰だと攻撃している。

民主党の候補者に内定しているバイデンは、アメリカ国内で感染が拡大したのは初期段階でのトランプ大統領の無関心のせいだと非難し、自分が大統領であればより早い段階でより厳しい措置を取ったと主張している。

グラハム・アリソンはハーヴァード大学の学者で、国防総省に勤務した経験を持ち、米中対決の可能性と危険性についての著作を持っている。アリソンは新型コロナウイルス感染拡大への対処のために、米中両国は両国関係を変化させるべきだと述べている。アリソンは、米中両国は貿易、民主的な価値観、サイバー上と国家の安全保障に関しては、「厳しいライヴァル関係」となるだろうが、同時に、気候変動、テロリズム、そしてとくに感染症対策ではパートナーとなるべきだと主張している。

米中が協力することは現時点では、政治的に無理な状況だ。トランプ陣営、バイデン陣営ともに来るべき大統領選挙本選挙に向けて、これからの6カ月間は中国に対して宥和的な姿勢を取ることはできない。

バイデン前副大統領は、トランプ大統領が中国側の新型コロナウイルスに関する発表を鵜呑みにして「中国に丸め込まれた」と攻撃している。トランプ大統領は3月中旬まで危険性を否定していた。対照的に世界各国は中国がやっと1月中旬になって危険性を認識し、発表した段階で素早く対応した。

トランプ大統領は3月13日の時点までは中国の習近平国家主席は状況に対してうまく対応していると一貫して称賛してきた。また、危険を示す証拠を信用しなかった。

トランプ大統領陣営は現在、反中国攻撃を大統領選挙本選挙の中心的な要素にしていることは明らかだ。トランプ大統領は、バイデンが中国に「強い態度で臨む」ことに失敗し、オバマ政権の対中国融和政策の策定に関わったと攻撃している。

トランプ大統領に対する中国への攻撃は日々激しくなっている。関税引き上げや不手際に対する裁判提起、更に負債の支払いを拒絶などをと脅している。いつものトランプ大統領のように、この一部はブラフである。しかし、中国攻撃はトランプ大統領の選挙に影響を与えるが、失敗に終わる可能性もある。トランプ大統領は危ない橋を渡っている。

トランプ政権は、全ての選択肢を留保している。マイク・ポンぺオ国務長官が対中政策を主導している。ポンぺオ国務長官は中国に対しては、外交官というよりも党派性の強いガンマンのように振舞っている。

アメリカ連邦議会においては、共和党側の対中国攻撃の急先鋒はアーカンソー州選出のトム・コットン連邦上院議員だ。コットン議員は1月末にウイルスの脅威と中国の隠蔽に対して警告を発した。コットン議員は攻撃を止めていない。そして、ウイルスの発生源は武漢の食肉マーケットではなく、中国のある実験ラボから広がって感染拡大を招いたという理論を支持し、中国を批判している。コットン議員はまた、中国に対する法的手段を取ることを許可する法律の制定や中国人学生がアメリカの大学で科学を学ぶことを禁止する措置を提案している。

しかし、コットン議員は感染拡大ではなく、党派性の強い中国叩きに興味を持っているように見える。彼は中国が感染拡大について1カ月にわたり嘘をつき続けてきたと攻撃していた。しかし、2月25日の時点で、コットン議員はトランプ大統領がウイルスへの対処を「最重要事項」としていると発言した。これは極めて間違っている主張だ。

中国国民はアメリカとの争いを恐れていない。中国は、トランプ大統領が自身の失敗に対する言い訳として、「他の人々を非難している」と批判している。中国国内のSNSでの人々の書き込みを見て見ると、歪曲された内容もあるが、明白にアメリカを非難している。中国は感染拡大に見舞われている国々に医療や医療品の提供を行っている。初期段階ではアメリカに対しても支援を行った。

米中関係の悪化が危険を伴う理由は、世界の超大国2か国は感染拡大への対処のようないくつかの極めて重要な分野でお互いに協力しなければならないがそれができなくなる、というものだ。

ブルッキングス研究所所長で退役アメリカ海兵隊大将(four star general)であるジョン・アレンは米中間の緊張関係の深刻化は避けられないと評価している。アレンは次のように述べている。「中国はアメリカとは別のモデルに沿っている。それは、権威主義的資本主義(authoritarian capitalism)である。これは中国の成功もあり、世界のいくつかの国々にアピールしている。私たちは、私たちのより素晴らしいモデルを使って対抗することになるだろう」。しかし、今回の危機において継続的に中傷を続け、対立することは「世界にとっての最大の危機を解決する為のエネルギーの多くを無駄遣いすることだ」とアレンは述べている。

アレンは別の機会では、「中国を解決に向けて要素に入れなければ、今回のコロナウイルスとの戦いで勝利することはできない」とも述べている。医療分野と科学分野でのつながりを断絶することはったくもって合理的ではない。

アレンはまた次のようにも述べている。新型コロナウイルス対処によって米中両国のライヴァル関係や緊張が和らぐことはないが、冷戦期にジョン・F・ケネディ大統領が述べた「ライヴァル同士のパートナーシップ(rival partnership)」という考えを両国は持つべきだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ