古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 アメリカは中国のここまでの台頭をどうして許したのか、そして、どうして台頭を許しておいて紛争を起こすのか、ということは不思議だ。日本は高度経済成長の後、アメリカから鼻っ柱を殴りつけられヘナヘナとなってしまった。それどころか、日本の良さをことごとく消される形で、「アメリカ化」が進められている。日本の現状はアメリカの劣化版だ。ただまだ医療保険制度はアメリカよりも進んでいるが(世界の先進国並みであるというだけのことだが)、これもいつまでもつか分からない。
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 中国のここまでの台頭をアメリカ側で許容したのはヘンリー・キッシンジャー元国務長官だと言われている。そのためにアメリカでは彼に対しての恨み言も噴出している。しかし、中国の伸長を受け入れて、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを少なくするというリアリストであるキッシンジャーが両国の間をうまく取り持ってきた。

 キッシンジャーは9月に続いて今週末も中国を訪問した。96歳のキッシンジャーにとってはいくら最高級のファーストクラスでの行き来とは言え、十数時間も飛行機に乗っているのは辛いことだろう。それでも何とか耐えているのは、自分の実入りということはあるだろうが、米中の間で小競り合いは会っても前面衝突まではいかせないという信念があるからだろう。
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 キッシンジャーは訪中で習近平国家主席と王岐山副主席と会談を持った。習主席と王副主席のコンビで中国の舵取りが行われている。キッシンジャーは衝突してはいけないということを中国側に説き、アメリカに帰れば、おそらくドナルド・トランプ大統領か、ジャレッド・クシュナー上級顧問に会って訪中について話をするだろう。現在米中貿易交渉においてアメリカ側で動いているウィルバー・ロス商務長官やロバート・ライトハイザー米国通商代表よりもキッシンジャーの方が格上で、米中両国の首脳クラスに対して細かい話ではなく、大枠の話、グランドデザインを提示できる立場にある。

 米中は対等な交渉を行える関係にある。日本はそれよりも大きくランクが下がる。私たちはそのことを自覚しなければならない。そして、米中の動きを注視しながら、日本の利益はどこにあり、どのようにすれば最大化できるかということを考えねばならない。昔は新年になると、日高義樹ハドソン研究上研究員が司会として出演していたテレビ東京系の番組にキッシンジャーが出てきて、日本の位置の重要性というようなことをお世辞で言ってくれていた。しかし、今やそのような厚遇はない。日本は米中間で行われているビリヤードのボールの1つに過ぎない。両国の思惑に翻弄されるのだが、何の思慮もなく、ただキューで突かれたり、他のボールにぶつかったりするだけでは芸がない。何とか自分たちの意思で動けるようになる、これが重要だ。そのためには現状をしっかり把握する必要がある。

 米中間を取り持つ人物はキッシンジャーが死亡した後は、“チャイニーズ”・ポールソンと呼ばれる、ハンク・ポールソン元財務長官ということになるだろう。しかし、どれだけの影響力を持つのか、キッシンジャー並みに持てるのかということになるとはなはだ心もとない。キッシンジャー亡き後、米中両国は両国の関係の安定装置を組み込んだ形の構造にしなければならない。

(貼り付けはじめ)

習近平主席、キッシンジャー氏と会見 中米の戦略的意思疎通強化を強調

2019/11/23 09:10 (JST)

©新華社

https://this.kiji.is/570764839332054113?fbclid=IwAR23Bjb4CELvVrV7PfJ_ZwXsQnVIpRkEcDJP5Ayo-CLqA3-NU2DHIZjznpg

 【新華社北京1123日】中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は22日、北京の人民大会堂で米国のキッシンジャー元国務長官と会見した。

 習近平氏は次のように指摘した。現在、中米関係は鍵となる時期を迎え、いくつかの困難と試練に直面している。双方は戦略的な問題について意思疎通を強化し、誤解や誤った判断を防ぎ、相互理解を増進すべきだ。双方は両国人民と世界人民の根本的利益を出発点として、互いに尊重し、小異を残して大同を求め、協力・ウィンウィンを図り、中米関係を正しい方向に前進させなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。この50年間、米中関係には起伏や変化があったが、全体的には一貫して前向きである。現在、時代背景が変わり、米中関係の重要性はさらに際立っている。双方は戦略的意思疎通を強化し、意見の相違を適切に解決する方法を見いだすことに努め、各分野の交流・協力を引き続き展開していく必要がある。これは両国と世界にとって極めて重要である。

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王岐山副主席、米国のキッシンジャー元国務長官と会見

20191124 9:44 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]

AFP通信

https://www.afpbb.com/articles/-/3256325

 【1124 Xinhua News】中国の王岐山(Wang Qishan)国家副主席は23日、北京の中南海で米国のヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)元国務長官と会見した。

 王岐山氏は次のように述べた。中米関係は世界的な影響力を持っており、双方の共通点は相違点をはるかに上回っている。協力すれば双方に利益をもたらし、争えばともに傷つく。協力は双方の唯一の正しい選択である。中米双方は習近平(Xi Jinping)主席とドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が複数回にわたる会談で決めた方向と原則に基づき、より広い視野とより長期的な観点に立ち、両国関係における一連の重大な戦略的問題を客観的かつ理性的に考え、不動心を保ち、困難を克服し、試練に立ち向かい、協調・協力・安定を基調とする中米関係を共同で推進していかなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。米中関係を把握、処理するには幅広い思想と歴史的・哲学的な思考が必要で、対話と意思疎通は両国関係の基礎である。双方が全力を尽くし、両国関係の発展のために創造的で前向きな成果をもたらすことを希望する。(c)Xinhua News/AFPBB News

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習近平中国主席:中国政府は貿易合意を望んでいるが、しかし「反撃」をすることを恐れない(Chinese President Xi: Beijing wants trade deal, but not afraid to 'fight back'

マーティー・ジョンソン筆

2019年11月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/trade/471631-chinas-xi-china-wants-trade-deal-but-not-afraid-to-fight-back

習近平中国国家主席は金曜日、中国は現在もアメリカとの貿易に関する合意のために努力を続けたいが、アメリカに対して「反撃」をすることを恐れはしないと述べた。CNBCが報じた。

習主席はアメリカの経済界代表団に対して次のように述べた。「私たちが常に述べているように、私たちは貿易戦争を始めることは望まないが、それを恐れはしない。必要となれば反撃もするが、貿易戦争にならないように努力を続けたい」。

習主席は続けて「私たちは相互尊重と公平を基にしてフェーズ・ワンの合意に至るように努力したい」と述べた。

アメリカからの代表団の中には元アメリカ政府高官が複数参加しており、代表格としては、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官とハンク・ポールソン元財務長官が挙げられる。

貿易合意をめぐる米中両国のトーンは最近になって肯定的になっているようであるが、「フェーズ・ワン」の貿易協定の詳細については現在も曖昧なままだ。

これまでの18カ月、中国とアメリカは貿易戦争に突入した。両国はそれぞれの製品に対して数十億ドル規模の関税引き上げを複数回実施してきた。.

貿易交渉は進んでいるように見えるが、トランプ大統領は翌月には中国製品1600億ドルぶんに新たな関税を課す予定となっている。

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キッシンジャーは「中国とアメリカは冷戦の途中にある」と懸念を表明(Kissinger warns China, US are in 'foothills of a cold war'

ジョン・バウデン筆

2019年11月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/471460-kissinger-warns-china-us-are-in-foothills-of-a-cold-war

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は木曜日、世界で1位と2位の経済大国の間で様々な紛争が起き、世界規模で緊張関係を深刻化させている中で、アメリカと中国は冷戦に向かって進んでいると懸念を表明した。

ブルームバーグ・ニュースは、北京のニュー・エコノミー・フォーラムで講演を行い、米中両国は双方の主張と立場の違いを理解するために「努力」することを合意すべきだと主張した、と報じた。

キッシンジャーは次のように述べたと報じられている。「私の考えは以下の通りだ。緊張関係が深刻化している時期には緊張関係の政治的な理由は何かを理解し、双方がその理由を解消するために努力することこそが重要だ。現状は手遅れになりつつある。それは米中両国が冷戦に向かう途中にあるからだ」。

キッシンジャーは更に、アメリカと中国との間で継続されている貿易交渉について言及し、両国経済に大きな影響を与えてきた1年以上続く貿易戦争を終了させるための合意に達するようにすべきだと主張したと報じられている。

キッシンジャーは「貿易交渉は政治に関する議論の小さな始まりに過ぎないということは誰も分かっている。私は貿易交渉が成功して欲しいし、その成功を私は支持している。また、政治に関する議論が実現することを望んでいる」と述べた。96歳になるキッシンジャーは1973年から1977年にかけて国務長官を務めた。

アメリカと中国は2018年半ばごろから知的財産権侵害をはじめとする諸問題をめぐって貿易に関して紛争を起こしている。その結果としてそれ以降の数カ月で数度の関税引き上げと報復的関税引き上げが続いている。

アメリカ政府と中国政府との間の交渉はいまだに包括的な合意に達していない。今年初めには合意に達すると見られていた。

米中両国は南シナ海の領有権争いに関して異なる立場に立っている。中国は南シナ海に人工島を建設しその領有権を主張し、アメリカは南シナ海の様々な航路のパトロールを行っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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 古村治彦です。

 

 今回は2018年の世界経済GDPについての記事をご紹介する。世界各国のGDPを大きさに比例させて、見やすくしたヴィジュアルがあり、「この国はこれくらいなのか」と興味を持ってみることが出来る。

 ここで使われているのは、購買力平価GDPと一般的なGDPだ。 

購買力平価(Purchasing Power Parity)は、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという理論だ。有名なのは、ビックマック指数だ。これは世界各国に展開しているハンバーガーのマクドナルドで売っているビックマックの値段がいくらになっているのかを基準にして計算している。購買力平価GDPは各国の物価を計算に入れた為替レートの対ドルで計算をしたものだ。

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 購買力平価のレートと市場でのレートで米ドルと人民元を見てみると、人民元は実際以上に安く誘導されているということになる。購買力平価GDPで計算すると、2014年以降は、中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国ということになる。しかし、実際のレートで計算すると、アメリカが最大の経済大国であることは変わらない。

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 中国も経済成長をし、物価が上がり、人々の生活水準も上がっていくとなると、通貨の力も強くなるし、そうなればいつまでも安い方向を維持することは難しい。日本がそうであったように、通貨の価値は上がっていく。対ドルで元高になっていく。
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 中国の経済成長率が鈍化していると言っても6%以上を維持している。経済規模を考えると、アメリカは4%以上の経済成長をしなければ、中国に差を縮められる。アメリカの最近の経済成長率は2%台なので、中国が差を縮めている。

 日本を見てみれば一般的なGDPでは3位(5.79%)で4兆9700億ドル(約537兆円)、購買力平価GDPでは4位(4.02%)で5兆4800億ドル(約592兆円)である。購買力平価GDPの方が高いということは、円が安く誘導されているということを示している。日本は世界第2位の経済大国(1968年に当時の西ドイツを抜いて2位に)で、アメリカを凌駕すると言われていたバブル時代はもう30年も前の話で、それから衰退が続いている。

 世界経済の全体像をつかむということで今回ご紹介する記事は役立つものになっている。

(貼り付けはじめ)

購買力を考慮しながら世界経済を可視化する(Visualizing The World Economy When Purchasing Power is Taken into Account

2019年9月12日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-ppp-2018

異なる国々の経済を比べる際に、最も一般的な方法は「購買力平価(purchasing power parity)」を使うことだ。購買力平価(PPP)は世界各国の経済を「財のバスケット」内部の様々な価格を平準化することで比較することだ。言い換えるならば、購買力平価は、国家間の生産を比較する際に、生活水準の違い(1カートンのミルクの値段の違いなど)を考慮に入れるということだ。これを一歩進め、購買力平価GDPで世界各国のGDPを可視化する。このチャートでは、国際的なドルを使用する。これはアメリカ国内のドルの購買力と同じ購買力を持っている。

・購買力平価GDPの測定は、各国の経済を比較するために、市場の為替レートではなく、世界中の生活費のコストを考慮に入れている。

・2018年の世界の購買力平価GDPは136兆4800億ドルだ。

・アジア諸国は購買力平価GDPで世界の40%以上を占めている。

・米中両国は購買力平価GDPで世界の3分の1を占めている。

・今回の可視化に使われている情報は世界銀行からのものだ。最新の数値は2018年のものだ。各国のサイズは購買力平価GDPの大きさに比例している。各国は属する大陸で色分けされている。そして、世界の生産に対してとの地域がどれくらい寄与しているかがわかる。

●購買力平価GDPから見る世界トップ10

1. 中国:25兆3600億ドル(約2739兆円)[18.58%]

2. アメリカ:20兆4900億ドル(約2213兆円)[15.02%]

3.インド:10兆5000億ドル(約1134兆円)[7.69%]

4.日本:5兆4800億ドル(約592兆円)[4.02%]

5.ドイツ:4兆5100億ドル(約488兆円)[3.30%]

6.ロシア連邦:3兆9900億ドル(約431兆円)[2.92%]

7.インドネシア:約3兆4900億ドル(約377兆円)[2.56%]

8.ブラジル:約3兆3700億ドル(約364兆円)[2.47%]

9.イギリス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

10.フランス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

先月、私たちは現在のアメリカ・ドル表示の各国のGDPをイラストと示す可視化したものを発表した。このGDPは生活にかかるコストを入れていない。また、それぞれの国家の生産高を比較するために市場における為替レート使用している。世界の名目GDP(右側)と購買力平価GDP(左側)のいくつかの違いに気づくだろう。明らかなことは、アメリカは世界の名目GDPで最大のシェアを占めているが、中国は購買力平価GDPで最大のシェアを占めている。

世界銀行のデータは、アメリカの購買力平価GDPは、大恐慌時代以来毎年成長していることを示している。しかし、ここ10年間の拡大の後、アメリカの経済成長は鈍化している。しかし、雇用の成長によって経済の安定は保たれ、GDPは拡大し続けると見る専門家たちもいる。

同様に、中国の景気後退は国際的な関心を集めている。特に輸出量の減少に人々の目が向いている。中国の中央銀行は貸出を促進し、生産を増加させるために預金準備率を低下させることで対応を行っている。世界規模の景気後退を示す兆候はより多くなっている。日本とインドのような国々の経済指標は私たちに印象を残すことに失敗している。世界経済は成長を続けているが、様々な指標の動向は変化の兆しを示している。

世界経済のGDPと購買力平価GDPの違いについて読者の皆さんは驚いただろうか?コメント欄で教えて欲しい。

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世界の86兆ドル経済を一つのチャートで可視化する(The World’s $86 Trillion Economy Visualized in One Chart

2019年8月15日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-2018

世界のGDPは堅調に成長し、2018年には6.9%の成長率を記録した。全体で2017年の80兆2000億ドルから85兆8000億ドルに増加した。この成長の半分は世界最大の経済大国2か国から来ている。アメリカは20兆5000億ドル(2017年に比べて5.4%増)、中国は13兆6000億ドル(10%増)となった。しかし、世界規模での景気後退の恐怖は高まっている。世界第1位と第2の経済大国同士が経済における緊張関係を深刻化させていることがその原因となっている。

・アメリカは今でも世界最大の経済大国であり、世界のGDPの23.9%を占めている。

・中国は世界第2位の経済大国であるが、最近の四半期においては約30年間で最も遅い経済成長ペースを記録した。

・最新の世論調査で、経済学者の半分が来年までにアメリカ経済は後退すると予測している。

・アメリカと中国との間の貿易摩擦は解決しておらず、投資家たちは世界経済の成長について悲観的になっている。

・私たちのデータは世界銀行の2018年版世界GDP数値から取っている。それぞれの国はGDPの大きさで示されている。それぞれの国は地域別にまとめられ、色分けされている。2017年からどのように変化死体を見る場合には、HowMuch’s 2017 analysis of world GDP.をチェックして欲しい。

GDPから見る世界のトップ10

1. アメリカ:20兆4900億ドル(約2200兆円)[23.89%]

2. 中国:13兆6100億ドル(約1470兆円)[15.86%]

3.日本:4兆9700億ドル(約537兆円)[5.79%]

4.ドイツ:4兆ドル(約432兆円)[4.66%]

5.イギリス:2兆8300億ドル(約306兆円)[3.29%]

6.フランス:2兆7800億ドル(約300兆円)[3.24%]

7.インド:2兆7300億ドル(約295兆円)[3.18%]

8.イタリア:2兆700億ドル(約224兆円)[2.42%]

9.ブラジル:1兆8700億ドル(約202兆円)[2.18%]

10.カナダ:1兆7100億ドル(約185兆円)[1.99%]

アメリカと中国両国で世界GDPの約40%を占めている。それぞれ20兆5000億ドルと13兆6000億ドルを記録し、世界経済の23.9%と15.9%をそれぞれ占めている。両国の経済力と深刻化する緊張のために、私たちのアナリストたちは両国に注意を払っている。

全米ビジネス経済学会は280名のビジネス経済学者を対象に調査を実施した。調査対象者の半数は来年末までにアメリカ経済は後退すると予測していると答えた。ゴールドマンサックスとJPモルガンに所属しているアナリストたちは2019年第二四半期の経済成長は2%以下に減速すると見ている。景気後退が予測される理由は何だろうか?経済学者たちは景気減速が予想される多くの要素を指摘している。現在のアメリカ経済において労働市場は堅調であったが、後退の兆候が見え始めている。連邦準備制度理事化による予想される金利引き上げも景気後退の兆候となっている。アメリカにおける経済格差の拡大もまた後退を示す要素となっている。1989年から2018年にかけてアメリカ国民の下半分は9000億ドルを失った。これは経済全体に大きな影響を与えている。

しかし、世界中の報道機関が報じている要素は関税が与える衝撃と中国とアメリカとの間での貿易戦争勃発の可能性である。米中両国の経済は既に影響を受けている。数字がそれを示している。中国の2019年第二四半期のGDP成長率は6.2%に鈍化した。この数字は1992年以降最も小さい成長率となった。今年7月の中国の工業生産高の成長率は、昨年に比べて4.8%に鈍化した。この数字は2002年2月以降で最も弱いペースとなった。アメリカと中国が貿易面での相違をすぐに乗り越えることが出来るか確かではない。そして、市場は長期の難局を示しているように見える。このように先行き非案の兆候はあるが、経済学者の中には景気後退が不可避だと確言できないとしている人々がいる。こういった人々は、オーストラリアとイギリスのような国々の経済は何十年単位で安定的に成長していると述べている。

各国や各地域のGDPについて読者の皆さんを驚かせたのはどんなことだろうか?アメリカもしくは中国は景気後退に向かって進んでいると考えるだろうか?景気後退は世界経済全体にどのような影響を与えるだろうか?コメント欄で考えを教えて欲しい。

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 古村治彦です。

 日本時間の日曜日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍特殊部隊がシリア北部を急襲し、イスラミック・ステイト(ISIS)指導者アブー・バクール・アル=バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi、1971-2019年、48歳で死亡)を自爆に追い込み、死亡を確認したと発表した。
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バグダディ
ISISは2014年からシリアとイラクの一部を占領・実効支配し、イスラミック・ステイトの樹立を宣言した。その創設者にして指導者のバグダディが殺害されたということは大きなニュースとなった。

 バラク・オバマ政権下の2011年にはテロ組織アルカイーダの指導者オサマ・ビンラディンがパキスタンの潜伏先で同じく米軍特殊部隊の急襲を受け殺害された。今回も米軍特殊部隊の作戦によってテロ組織の指導者が殺害されるということになった。
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作戦の様子を見守るトランプ大統領

 アメリカをはじめ関係諸国が行方を追っていたバグダディであったが、シリア北部で米軍特殊部隊に追い詰められ、最後は洞窟の中で自分の子供3人と共に自爆をするに至った。バグダディに関しては身柄を拘束して裁判を受けさせる(国際法廷になるか、シリアやイラクの法廷になるかは分からない)ようにすべきであったが、バグダディは自爆したと発表されている。アメリカ軍特殊部隊の動きが降伏へと誘導するのではなく、自爆に誘い込むようなものであったとするならば問題である。また、バグダディに付き従った人間たちを「多数」殺害したというのも降伏や投降の意思を示した者までも殺害したとなるとこちらも問題だ。

 私はISISの肩を持たない。しかし、「正義をくだす」ためにはそれなりの手続きが重要であって、そこに瑕疵があれば正義とは言えなくなる危険性が高いということを言いたい。ただ殺害すれば済むという問題ではない。

 トランプ大統領の発表では作戦時の様子にも触れられていたが、非常に生々しい言葉遣いであった。また、バグダディと「犬」を結び付ける表演が複数回使われていた。バグダディは洞窟の中で犬に追い回された上に、「犬のように亡くなった(died like a dog)」「犬のようにクンクンと怯えて鳴いていた(whimpering)」とトランプ大統領は発言している。これは、トランプ大統領独特の言語感覚ということもあるが、バグダディは人間ではない、だから裁判なんてしちめんどくさい手続きなしで殺してもいいんだ、ということを聴衆に刷り込ませたいという意図があってのことだろう。

 トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して作戦上の協力を感謝し、クルド人勢力からは軍事上の協力はなかったが有益な情報提供があったことを認めた。ここから考えられるのは、ロシア、シリア、トルコからら軍事上の支援と情報提供があったということだ。2つの協力があったから謝意が表され、クルド人勢力に関しては情報提供があったことを認めるということになったのだと思う。

 従って、今回の作戦はアメリカ軍単独ではなく、ロシア軍、シリア軍、トルコ軍の共同作戦で、アメリカ軍に華を持たせる形でバグダディの追跡が任されたということだと思う。アメリカ(トランプ大統領)は、ロシア、シリア、トルコに対して大きな恩義、借りを作ったということになるが、これはアメリカ軍がこの地域から撤退してももう大丈夫という正当化と、この地域なロシアに任せますよという意思表示であり、最後に華を持たせてもらって出ていきやすくなったということだと考えられる。アメリカは海外のことに関わらず、国内の問題解決を優先するという「アメリカ・ファースト」にかなっているということになる。

 今回の作戦がこの時期に実施されたのはアメリカ軍の撤退を正当化するためのものであり、かつロシアがこの地域の担任となることを認めることもあり、米露の利害が一致したために実行されたと考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲によってISIS指導者が死亡と発表(Trump announces death of ISIS leader in US raid

モーガン・チャルファント筆

2019年10月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/467620-trump-isis-leader

日曜日、トランプ大統領はイスラミック・ステイト(ISIS)の指導者アブー・バクール・アル=バグダディが北部シリアにおいてアメリカ軍の急襲によって殺害されたと発表した。

トランプ大統領はホワイトハウスのイーストルームにおいて声明を発表した。声明の中で大統領は「昨晩、アメリカ合衆国は世界ナンバーワンのテロリスト指導者に正義(の鉄槌)を下した。アブー・バクール・アル=バグダディは死亡した」と述べた。

アル=バグダディの死はテロリスト集団であるISISとの戦いにおける重要な象徴的な勝利を示すものであり、捕捉が難しいISIS指導者アル=バグダディを追跡するという数年間の努力が結実したことを意味する。アル=バグダディはこれまで何度か殺害されたと報じられたことがあった。

トランプ大統領は「危険かつ大胆な」作戦の詳細を説明した。バグダディはアメリカ軍特殊部隊によってトンネル内に追い詰められた。この時3人の子供を連れていた。そして、自爆用のヴェストを爆発させた。トランプ大統領は爆発後の残骸などを調査、テストし、バグダディが殺害されたことを示す証拠が出たと発言した。

トランプ大統領は「この極悪人は大変な恐怖の中で、完全なるパニックと恐怖の中で、最後の瞬間まで何とか他人になりすまそうともがいた。アメリカ軍が彼を完全に屈服させることに恐怖し続けた」と述べ、バグダディは「クンクンと情けない鳴き声を出しながら(whimpering)」死んでいったと発言した。

トランプ大統領はホワイトハウスのシチュエイション・ルームで作戦の「大部分」を見ていたと発言した。しかし、どこを見てどこを見なかったかの詳細については明らかにしなかった。ホワイトハウスは大統領の発表の後にその時の様子を撮影した写真を公開した。土曜日のシチュエイション・ルームの様子は、大統領の傍らにはマイク・ペンス副大統領、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マーク・エスパー国防長官と軍部の最高幹部たちが座っていた。

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲は2時間ほどで終了し、アメリカ軍はISISに関連する「非常に重要な情報を含む取り扱いに注意を要する文書や物資」を押収したと発表した。トランプ大統領は作戦中にアメリカ軍に死者は出ず、アル=バグダディの追随者たちの多くが殺害されたと発表した。

トランプ大統領は今回の作戦のことを3日前から知らされていたと述べ、連邦議会の指導者たちには、「リークされる」という恐れから伝えなかったとも発言した。

トランプ大統領は「リークによって作戦に参加した米軍の人員全てが殺害されることもあるだろうと考えた」と発言した。しかし、作戦終了後の日曜日にリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリチャード・バー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)と会談を持ったとも述べた。

今回の発表はトランプ大統領にとって追い風となるだろう。ここ数週間、トランプ大統領は北部シリアからの米軍の撤退という決断に対して様々な角度から検証されてきた。批判する人々は、米軍の撤退によって、アメリカが盟友関係を築いてきたクルド人勢力に対してトルコ軍の軍事作戦が推進されると主張している。アメリカ軍の撤退によってISISが勢力を回復するのではないかと多くの専門家が懸念を表明していた。

トランプ大統領は日曜日、「昨晩はアメリカ合衆国と世界にとって素晴らしい夜となった。多くの人々の困難や死の原因となった野蛮な殺人者は荒々しく消滅させられた。バグダディは犬のように死んだ。臆病者のようにして死んだ。世界はこれまでよりもより安全な場所になった。アメリカに神のご加護がありますように」と述べた。

アル=バグダディの死はISISに対して大きな一撃を与えた。ISISは既にアメリカが主導する連合諸国によって縮小させられている。しかし、バグダディの死がISISの完全なる消滅を意味するものではない。

トランプ大統領は、アル=バグダディの死は、アメリカの「各テロリスト集団の指導者に対する飽くなき追跡とISISやそのほかのテロリスト組織の完全な敗北を確かなものとするための努力」が証明されたものだと高らかに宣言した。

「アメリカ軍が北部シリアでアル=バグダディを標的にした急襲作戦を実行した、そして武装勢力の指導者は殺害されたものと考えられる」という内容の報道が出始めたのが土曜日の夜遅くだった。トランプ大統領は内容の発表をもったいぶり、ツイッター上に「何かとてつもなく大きなことが起きた!」とだけ書いた。

トランプ大統領は日曜日にアメリカ軍の人員が安全に帰還した後でツイッター上に書き込みを行ったが、それはニュースメディアを警戒してのことだったと述べた。

トランプ大統領はロシア、トルコ、シリア、そしてイラクに対して、作戦への協力を感謝した。また、クルド人勢力が有益な情報を提供したことを認識していると述べた。トランプ大統領は、クルド人勢力は作戦において軍事的な役割を果たすことはなかったと述べた。大統領は作戦に参加したアメリカ軍と情報・諜報機関の人員に謝意を表した。

トランプはまた北部シリアからの米軍の撤退という自身の決断を擁護し続けた。とることシリアの国境地帯に米軍を駐屯させ続けることはアメリカの利益にかなうものではないと主張した。

トランプ大統領は「私たちはこれから200年もシリアとトルコの間に米軍を駐屯させたいなどとは望まない。シリアとトルコはこれまで数百年もの間戦ってきた。(だから勝手にすれば良いが)私たちは出ていったのだ」と述べた。それでも油田がISISの武装勢力の手に落ちないようにするためその地域にアメリカ軍を残しているとも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

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 古村治彦です。 

 ドナルド・トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がっている。トランプ大統領が今年7月25日にウクライナ大統領と電話会談を行い、その中で、ジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター・バイデンについて捜査を行うように求めた。更には、これに合わせてウクライナ向けの援助を一時停止した。これは大統領選挙当選のため、つまり私的な利益のために権力を濫用したということになる。この疑惑は内部告発者からの告発で明らかになり、連邦下院で過半数を握る民主党は弾劾訴追のための調査を始めた。

 これまでこのブログでもご紹介してきたが、弾劾が成立する可能性は低い。弾劾を訴追するのは連邦下院であるが、弾劾が成立するかどうかの裁判を行うのは連邦上院で、しかも3分の2以上の賛成が必要だ。よほどの決定的な証拠が出なければ、弾劾は成立しない。

この疑惑が大統領選挙に与える影響はトランプ大統領側には限定的であり、民主党側に与える影響は大きいと考えられる。トランプ大統領の支持者はこれくらいのことで支持を止めるようなことはない。各種世論調査では共和党支持者で連邦下院による弾劾調査を支持しているのは多くても2割台にとどまる。民主党支持者の場合は9割に迫る勢いだ。

 下の記事にあるように、トランプ大統領弾劾の話ばかりになると、民主党予備選挙の話題は少なくなる。マスコミでも報じられなくなる。上位3名の候補者たちについてはまだ報じられるだろうが、詳細に報道する時間はない。他の候補者となると、報道されることがなくなる。そうなると、支持率や政治資金の面でますます苦しくなる。11月の討論会の参加基準が引き上げられたので、選挙戦から撤退する候補者も複数出てくるだろう。

 民主党側は、ロシア疑惑よりも「筋が良い話」として、ウクライナ疑惑に関して弾劾に乗り出した。しかし、ここに落とし穴がある。それは、このウクライナ疑惑にはジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター・バイデンが出てくることだ。

 2014年にマイダン革命と呼ばれる政変によって、親露派のヴィクトール・ヤヌコヴィチ政権が打倒された。しかし、その後のペトロ・ポロシェンコ政権はどっちつかずの政権だった。当時のバラク・オバマ政権はウクライナ国内の汚職体質の改善を求めていた。これはロシアとの関係を切ろうとするものであったと考えられる。しかし、ポロシェンコ政権下でも汚職の一掃は進まなかった。そこで業を煮やしたオバマ政権は、ジョー・バイデン副大統領をウクライナに派遣し、汚職捜査の指揮を執る検事総長の更迭を求めた。これがなされない限りウクライナへの支援パッケージは実行しないとまで発言した。

 2014年の政変で失脚したヤヌコヴィッチ政権の高官だった人物にマイコラ・ズロチェフスキーがいた。ズロチェフスキーはウクライナの天然ガス会社ブリスマ社のオーナーであり、エネルギー関係の大臣を務めていた際に、子会社へ許認可を出していた。また、イギリス当局からは資金洗浄の疑いをかけられていた。

 ズロチェフスキーはロシアに逃亡したヤヌコヴィッチとは行動を共にしなかった。そして、ブリスマ社と自分を守るために、「ブリスマ社は西洋型の立派な会社です」という「飾り付け」を行うことにした。そのために利用されたのがハンター・バイデンだった。バイデンは、アメリカで投資会社を経営していたのだが、共同経営者がブリスマ社の取締役に就任し、その直後にハンターにも取締役就任の話が来た。周囲は、ウクライナは政情不安定であるし、止めておいたらと忠告したが、ハンターは周囲の忠告を無視して取締役に就任した。

 ハンターは年2回の取締役会出席だけで、月5万ドルの報酬を受け取ることになった。年間60万ドルとなる。日本円では6500万円だ。ブリスマ社とオーナーのズロチェフスキーは、ハンター・バイデンを取り込むことで、「ブリスマ社は西洋型の立派な会社です」というアピールに成功した。また、ウクライナ国内向けには、「ウクライナに圧力をかけているジョー・バイデン副大統領の息子が取締役だぞ、自分はアメリカ側と太いパイプがあるのだ」という無言の圧力、アピールをすることができ、結果として、汚職事件などの捜査を免れた。

 トランプ大統領の弾劾調査のためにウクライナ疑惑を調べるとなると、どうしてもバイデン家とウクライナとのかかわりを調べることになる。そうなれば、オバマ政権のウクライナへの内政干渉やハンターがほぼ勤務実態がないのに年60万ドルを受け取っていたということが民主党側によって明らかにされる。これは現在、大統領選挙民主党予備選挙で支持率トップを走っているバイデンにとっては痛手となる。

 バイデンの支持率が落ちて、2位のエリザベス・ウォーレン、3位のバーニー・サンダースが相対的に上昇ということになれば、民主党内部は混乱する。各候補の批判合戦はエスカレートする。そうなると、民主党内部の団結はほころびが出る、2016年の大統領選挙でも、ヒラリー・クリントンを応援する民主党主流派と、バーニー・サンダースを応援する反主流派の亀裂は修復できず、結局、トランプを勝利させることになった。

 もっと大きく見れば、今回の件はホワイトハウス側からの仕掛けではないかとすら思えてくる。トランプ大統領側にも不利益が出てくるが、それ以上に民主党側にとっては痛手となる。「肉を切らせて骨を断つ」ということになる。ジョー・バイデンが身内に甘いという批判に晒されれば、支持率が下がる可能性もある。民主党支持者は大統領選挙に勝つよりも弾劾成立の方を望んでいるという世論調査の結果が出ているが、これは、現在の状況では民主党の候補者ではトランプ大統領を倒すことはできないと民主党支持者でさえも考えているということを示している。

 ウクライナ疑惑は民主党側にとって藪蛇ということになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

弾劾は大統領選挙民主党予備選挙の状況を変化させる(Impeachment shakes up Democratic White House race

エイミー・パーンズ筆

2019年9月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/463447-impeachment-shakes-up-democratic-white-house-raceドナルド・トランプ大統領への弾劾調査は大統領選挙民主党予備選挙の状況を変化させている。

民主党系のコンサルタントと戦略家たちは、弾劾に関する調査がエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)をはじめ候補者たちを助けることになる。複数の候補者たちはウクライナ疑惑が出てからすぐに弾劾を求め、そうした人たちは世論調査の支持率を伸ばしている。 

弾劾手続きはジョー・バイデン前副大統領を勢いづかせる可能性が高い。バイデンはウクライナ疑惑の重要な登場人物となっている。ウクライナ疑惑から弾劾調査はスタートする。バイデンは、大統領選挙の本選挙においてトランプ候補が最も恐れる候補者は自分バイデンなので、トランプは自分をスキャンダルに巻き込んだのだと強調している。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は火曜日のアイオワ州での記者会見で「政治的に見て複雑な問題だ」と述べた。サンダースはバイデンとウォーレンと民主党指名を争っている。

弾劾は、大統領選挙民主党予備選挙に影響を与えることになった。選挙戦が報道の中心的テーマから突然外れてしまうことになった。

疑惑と弾劾をめぐるニュースが駆け巡る中で、候補者たちは選挙運動に注意を払ってもらおうとして記者会見を開こうとする。このような状況は支持率中位の候補者たちにとっては絶好の機会であり同時に困難な状況となる。

選挙戦に残るか撤退するかの瀬戸際にいる候補者たちにとっては、弾劾調査開始のニュースは自分たちにとって都合の悪いものとなり、人々の注意関心を惹くことはほぼ不可能な事態になってしまう可能性が高い。

「2020年大統領選挙の候補者たちにとっての政治的な大地震について話そう」と言った。

子のストラティジストは次のように語った。「今週、弾劾をめぐる激論がメディアの酸素をほとんど消費してしまい、民主党予備選挙の候補者の中で報道されたのはほんの2、3名だった。ウクライナ疑惑をめぐりバイデンについても賛否両論があった。それはウクライナ疑惑の中心に彼がいるからだ。だから彼についての報道があった。しかし、ウォーレン、バーニー・サンダース、カマラ・ハリスについてはほとんど報道がなかった。これが全てだ」。

民主党系ストラティジストのダグ・ソーネルは弾劾手続きは報道を独占してしまっており、「民主党予備選挙をしばらくの間停滞させることになる」と語った。

ソーネルは「これはバイデンと恐らくウォーレンにとって良いことだ」と述べた。この2人は各種世論調査で支持率トップ2を占めている。

バイデンは今年の春に選挙戦に出馬して以降、支持率トップをひた走ってきた。しかし、今月アイオワ州とニューハンプシャー州で実施された世論調査でウォーレンがバイデンを初めて抜き去った。

しかし、報道の内容は完全に変わった。

ソーネルは次のように語っている。「マサチューセッツ州選出の連邦上院議員ウォーレンは支持率を上げている。しかし、ウクライナ疑惑と弾劾調査の開始によってウォーレンに関する報道はなくなる。メディアの関心を集めることが重要だということを考えると、これでウォーレンの勢いは減退するのではないかという疑問が出てくる」。

他のストラティジストたちは、ウォーレンはこの局面を自分に有利に利用できる、それは民主党が過半数を占める連邦下院が動き出す数か月前からウォーレンは弾劾を強く主張していたことを有権者に思い出させることが出来るからだ、と述べている。

民主党系ストラティジストであるエディー・ヴェイルは次のように語っている。「ウォーレンは弾劾を進めることに貢献したことをアピールできる。しかし、当時のエルヴィスのように、ウォーレンは弾劾について人々の関心を喚起させ続ける必要がある。

バイデンに関しては、今回のウクライナ疑惑と弾劾はトランプ大統領と対決する機会となる。トランプ大統領との対決という構図はバイデン選対の幹部たちが最初から描いているシナリオだ。

ニューヨーク州民主党の幹事長を務めた経験を持つバジル・スミクルは次のように述べている。「今回の事態がどれほどバイデンにとって有利に働くかはバイデン次第だ。バイデンは選挙を始めた時からトランプ大統領と一対一の戦いをしたいと望んでいて、それが実現している」。

スミクルは続けて次のように述べている。「バイデンは、民主党の候補者たちとやり合う際にこの一対一で戦ってやるという強さを見せつける必要がある。そのために候補者たちから投げかけられる批判の矢をかわし、時には自分から積極的に批判の矢を飛ばすべきだ」。

バイデン支持の有権者の間では、トランプ大統領と共和党が、前回の選挙でヒラリー・クリントンのEメール問題でやったように、物語を自分たちに都合よく作り上げて、それがバイデンの痛手になるのではないか、という懸念もある。

トランプ陣営は金曜日、バイデンを攻撃する新しいテレビコマーシャルの放映を始めた。

バイデンの側近の一人は次のように述べている。「これは考え過ぎの心配ではない。トランプ政権が成立して以来、いやそれ以前の選挙運動の時から、共和党はこの種の歪曲や捏造をうまく使ってきた。そのために私たちは現在のような状況に陥っているのであり、私たちはこのような状況が2020年以降も繰り返されないにしなければならない」。

ヴェイルは、「バイデン選対はトランプ大統領に仕掛けて、バイデンに対する攻撃に対する反撃を行っている。選対は素晴らしい仕事をしている。バイデン自身がより熱心さを出してくると、選対にとっては追い風となるだろう」と述べている。

サンダースはここ最近トランプ大統領に対する攻撃的言辞のレヴェルを上げている。サンダースは民主党予備選挙の上位候補者たちの中で「もっとも厳しい立場」に立つことになる、それは、サンダース選対は支持率下落を止めようとし、早期に予備選挙が実施される各州での支持拡大に努めているが、マスコミは現在、サンダースの動きを報道する時間がない、とヴェイルは発言している。

そして、他の候補者たちも同様の困難を抱えているが、サンダースはより「強くなっている」とヴェイルは結論付けている。

スティーヴ・イスラエル元連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は以前民主党連邦議会選挙委員会委員長を務めていた。イスラエルは弾劾調査からどの候補者が利益を得るかを予測することは難しいと述べている。

イスラエルは次のように述べている。「正確なことを言うには時期が早過ぎる。はっきりと言えることは、弾劾調査によって民主党支持の有権者たちはトランプ大統領を倒せるという意欲を高めるということだ。各種世論調査が示しているところでは、民主党支持の有権者たちは、自分たちのイデオロギーを共有していなくても、大統領を倒せる候補者を現実的に好むことを示している」。

アイオワ州での党員集会(訳者註:予備選挙の一種)開催まで100日以上残っている現段階で、弾劾調査が始まることは、ハリスのような候補者たちにとってのチャンスにもなり得る。ハリスは民主党支持の有権者たちにアピールするために自分の強さと厳しさを示すことが出来る。

ソーネルは次のように述べている。「ハリスは弾劾について司法に携わっていた背景を前面に押し出すことが出来る。トランプが大統領でいる限り、2020年の大統領選挙でトランプを追及するには最高の候補者と言える」。

しかし、バイデンの側近の一人は、弾劾調査がこれから大統領選挙本選挙までの14カ月で何が起こるかを示す前兆になっていると述べた。この人物は、「何が起きてもおかしくない」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑について、今回はバイデン家とウクライナとの関係についての記事をご紹介する。今回のウクライナ疑惑のうち、トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省を通さずにウクライナ政府、検察当局と会談を持ち、バイデン家(ジョー・バイデン前副大統領と次男のハンター・バイデン)についての疑惑を調査しようとしたというものがある。

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次男ハンター(左)とジョー・バイデン

 ジョー・バイデン(Joe Biden、1942年―、76歳)はオバマ政権(2009年1月―2017年1月)の副大統領時代に、ウクライナ国内の汚職根絶のために様々な働きかけを行っていた。ウクライナ国内のことにアメリカの副大統領が働きかけを行うということは内政干渉であるが、今回は置いておく。「バイデンは副大統領時代にウクライナ国内の汚職根絶のために働きかけを行った」という事実がある。
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ウクライナ訪問中のバイデン
 ジョー・バイデンの次男ハンター・バイデン(Hunter Biden、1970年―、49歳)は投資会社の共同経営者やワシントンでロビイストをしていた。父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、具体的には2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス社の取締役に就任し、2018年に退任した。ここでの事実は「アメリカ副大統領の次男ハンター・バイデンが2014年から2019年までウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の取締役を務めた」ということだ。

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マイコラ・ズロチェフスキー

 ブリスマ社の創設者でありオーナーのマイコラ・ズロチェフスキー(Mykola Vladislavovich Zlochevsky、1966年―、53歳)は、ウクライナ政府でエネルギー担当の大臣(環境保護・天然資源担当大臣と称する)を2度務めた実力者だ。この大臣時代を含め、権力濫用や荒っぽい手段でブリスマ社を巨大企業に育て上げたために、すろちぇふスキーには常に捜査の手が伸びていた。2014年のウクライナの政変で、新露派のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych、1950年ー、69歳)大統領が失脚し、側近たちとロシアに逃亡した。ヤヌコヴィッチ政権で環境保護・天然資源担当大臣を務めていたズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近ではなく、行動を共にしなかった。政変直後は、前政権に関わった高官たちへの激しい追及が起き、ズロチェフスキーも捜査対象となった。また、イギリス国内で資金洗浄の疑いが持ち上がり、ブリスマ社の口座が凍結処分となった(後に解除)。
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ヤヌコヴィッチ(左)とプーティン
 こうした中、捜査を回避し、欧米からの印象を良くするために、ズロチェフスキーとブリスマ社は、欧米の著名人や受けの良い人々を取締役に招聘し、「欧米基準の素晴らしい会社ですよ」というアピールをする作戦を取った。また、「ウクライナでの天然ガス増産に寄与するブリスマ社は、ウクライナのロシアからの経済的独立に大きく寄与する」というキャンペーンも行った。そうした中で、アメリカ副大統領ジョー・バイデン(当時)の次男ハンター・バイデンの名前は光り輝いていた。ブリスマ社はハンターの投資会社の共同経営者をまず取締役に迎え、それからバイデンを招聘した。また、元ポーランド大統領も取締役に迎え、対ロシア独立派を印象付けた。この元ポーランド大統領はハンターの招聘に一役買った。ハンターは2014年から2019年の間に、年に2回の取締役会に出席し、月に5万ドルの報酬を受け取った。

2014年の政変後に大統領になったペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko、1965年―、54歳)も親露派で、ウクライナ国内の改革は進まなかった。また、汚職に関する捜査も停止状態になった。せっかく政変で親露派政権を打倒したのにまた同じような政権が出来て、国内改革が進まない状況となったことに、欧米諸国は多額の援助を行う約束していたこともあり、不満を募らせた。
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ペトロ・ポロシェンコ

 アメリカのバラク・オバマ政権は副大統領であるジョー・バイデンをウクライナに派遣し、その不満を伝達させることにした。バイデンはウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領に対して国内改革、特にヴィクトール・ショーキン検事総長の更迭を求め、それが実現しない場合には支援を停止すると圧力をかけた。その後、ショーキンは解任された。

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ショーキン

 これでウクライナ国内の汚職事件に関する捜査が進むと見られていたが、ズロチェフスキーとブリスマ社に対する捜査はあまり進展しなかった。ウクライナ国内の改革派は、「ズロチェフスキーとブリスマ社には欧米諸国との強いコネがある、アメリカ副大統領の次男が取締役を務めているくらいだから」という「忖度」がウクライナ検察当局に働いている可能性があると指摘している。

また、「ショーキンの解任は、ショーキンがズロチェフスキーとブリスマ社の捜査を進める中で、ハンターにも追及の手が伸びることを恐れたジョー・バイデンが副大統領の地位を使ってウクライナ政府に圧力を使ってショーキンを解任させた」という話も出ている。当のショーキンがそのように話しているが、この話は馬鹿げているとウクライナ国内の改革派は切って捨てている。

 ハンター・バイデンのブリスマ社の取締役就任については、周囲の人物で懸念を持っていた人物も多く、ウクライナ国内の政局に巻き込まれる、名前を利用される、といったことを心配して止めるように忠告する人もいた。ここからは推測だが、年に2度の取締役会出席で月5万ドルの報酬は、ハンター・バイデンにとって魅力的だったのだろう。彼はそれまでにも薬物乱用問題や借金問題を抱えていた。逆に言えば、ハンターの苦境をブリスマ社は分かった上で利用したのだろう。

 ジョー・バイデンが副大統領としてウクライナ国内の改革を求める立場にあり、一方、次男ハンター・バイデンは、改革の影響を受けないようにしたいズロチェフスキーとブリスマ社に取締役として利利用されることに関しては、利益相反になるという主張は当時からあった。この点は、父ジョーと次男ハンターはウクライナについて具体的に話をしていない、と両者ともに述べている。トランプ政権側としてはここを弱点として突くということになる。

 ウクライナは親露派政権と親欧米派政権が政変で入れ替わる形で政情は不安定だ。また、政治家たちが大企業家としての顔を持ち、権力を濫用して自分がオーナーの会社に利益をもたらすということをやっている。欧米の基準から見れば大変に送れている。ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役就任の理由を「会社のそれまでのやり方を変革するため」と語っている。しかし、年に2度の取締役会出席だけで変革することなどできない。それで毎月5万ドルの報酬を受け取っていたということは、彼自身が「お飾り」であることを認識し、それを受け入れていたということだ。

 父親は改革を進めようとし、次男はその改革の影響を避けようとする勢力に利用された、ということになる。「アメリカ副大統領」「バイデン」という言葉の輝きと効力の前に、ウクライナ政府はひれ伏すと、ズロチェフスキーは考えたし、実際にそのような側面もあった。そうなると、これはまさに日本でもあった「忖度」ということである。

 大国の狭間で生きる小国というのは、常に神経を尖らせ、大国の意向を「先回りして理解し、それに沿う形でご機嫌を取る」ということをやり尽くしてきている。それが国内でも国外でも行動原理になっている。日本も全く同じだ。

(貼り付けはじめ) 

天然ガス産業の巨頭と副大統領の息子:ハンター・バイデンのウクライナへの(The gas tycoon and the vice president’s son: The story of Hunter Biden’s foray into Ukraine

ポール・ソンネ、マイケル・クラニシュ、マット・ヴァイサー筆

2019年9月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/the-gas-tycoon-and-the-vice-presidents-son-the-story-of-hunter-bidens-foray-in-ukraine/2019/09/28/1aadff70-dfd9-11e9-8fd3-d943b4ed57e0_story.html

5年前、当時のジョー・バイデン副大統領の息子がウクライナの無名の天然ガス会社の取締役に就任した。バイデン副大統領の息子が取締役になることは、この天然ガス会社のオーナーである元ウクライナの大臣にとっては大成功と言えるものだった。この当時、オーナーはマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いが捜査を受けており、会社のイメージを一新しようと苦労していた。

ハンター・バイデンにとって、取締役就任という決断にはリスクが伴った。ウクライナはその当時政治的な動乱が頻発し、莫大な利益をもたらす天然ガス産業から元政府高官たちが大きな利益を得ていることに対して調査が行われていた。バイデンの父親はオバマ政権によるウクライナ政府による汚職の処罰を求める努力の中心人物であった。

ウクライナがある地域はこの当時不安定を極めていた。そのため、ハンター・バイデンが経営する投資会社のパートナーはハンターが「ブリスマ・ホールディングス」社の取締役に就任することは間違っていると考え、バイデンともう一人のパートナーとのビジネス関係を解消した、とこの人物の報道担当は本紙の取材に答えた。この人物はジョン・ケリー元国務長官の義理の息子である。

それから5年が過ぎ、父ジョー・バイデンは大統領選挙に出馬している。ハンター・バイデンのウクライナの会社の取締役に就任するという決断は、重大なトランプ大統領に対する内部告発者の告発の背景となっている。この内部告発は2020年の米大統領選挙をめぐる状況を変えつつある。

トランプ大統領が個人弁護士であるルディ・W・ジュリアーニ元ニューヨーク市長と一緒になってウクライナ政府に圧力をかけて「ブリスマ」社を捜査させようとし、バイデン家の役割について調査させようとしたということが暴露された。これに対して、連邦下院では弾劾に向けた調査が開始されることになった。嫌疑はトランプ大統領がウクライナ向けの援助を停止して、来年の大統領選挙での強力なライヴァルとなるであろうバイデンについてウクライナ政府に捜査をさせようとした、というものだ。

バイデン家によって刑法上の罪を犯したことを示す証拠は出ていない。ジュリアーニが主に疑っている嫌疑は、ジョー・バイデンが副大統領として、元大臣でブリスマ社のオーナーであるマイコラ・ズロチェフスキーに対する捜査を止めせせるためにウクライナの検事総長を更迭させるために圧力をかけたというものだ。この嫌疑については証拠がでていない。この嫌疑については元アメリカ政府高官たちとウクライナの反汚職グループによっても提起されている。

ハンター・バイデンの取締役就任という決断によって、バイデン陣営は不愉快な質問に対して説明を迫られるということが起きている。ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナ国内の汚職の根絶のために努力した。一方、息子ハンター・バイデンは政府高官としての地位を濫用したとして捜査を受けていた天然ガス産業の巨頭の会社の取締役となった。ジョー・バイデンは利益相反と見られることを避けるために何らかの行動を取らなかったのはどうしてか?

イギリス人ジャーナリストでウクライナの反汚職非営利団体「反汚職行動センター」の理事を務めるオリバー・ブローは次のように語っている。「ジョー・バイデンはどうしてハンターに向かって“取締役から退きなさい、自分が何をやっているか分かっているのか?”と言わなかったのだろう?」

ウクライナ国民の中には、ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役になったことで、父バイデンのウクライナにおける汚職の根絶の訴えが台無しになったと見ている人たちがいる。

また、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーがアメリカの最高レヴェルとのつながりを持っていることを恐れて犯罪行為に対する捜査を避けたのではないかという疑惑もある。アメリカはこの当時のウクライナの政権と政府にとって最重要の支援者であった。

バイデン前副大統領の補佐官とスタッフだった人物たちは匿名を条件に証言したが、副大統領執務室の中で、ハンターが取締役であることが利益に相反にあたるかどうか議論が私的な会話という形ではあったが起きたと述べた。

ある元補佐官は利益相反である可能性が高いと副大統領に述べた、と語っている。しかし、この会話自体が短いもので、他の補佐官やスタッフたちはこれを問題視したくない、もしくはする必要はないと語っていたと述懐している。

バイデンと一緒に働いたアメリカ政府高官だった人物たちは口をそろえて、息子ハンターの行動がバイデンの副大統領としてのウクライナに対する行動に影響を与えたことは無かったと語っている。

元補佐官は次のように述べている。「何か明確な問題になっているだろうか?確かに問題にはなっている。しかし、実際に何か悪いことが起きただろうか?その答えはノーだ」。

この当時、ホワイトハウスは、ハンター・バイデンは民間人であり、副大統領はウクライナのどの会社にも支持を与えない、と発表していた。副大統領在任中、ジョー・バイデンはブリスマ社での息子の役割についてコメントしなかった。

ブリスマ社でのハンター・バイデンの責務については完全に分かっていない。ハンター・バイデンの顧問弁護士ジョージ・R・メシレスは、ブリスマ社がハンターに報酬をいくら支払っていたのか、ハンターが取締役になった時に会社のオーナーがウクライナ政界の実力者であり、疑惑の中心にいたことを知っていたのかという質問に対して回答を拒否した。

メシレスは声明の中で次のように述べている。「ハンター・バイデンのウクライナにおける行動についての疑問は、トランプ大統領とジュリアーニの犯罪行為から関心をそらすためのものだ。ハンターの行動について精査した人々全てが既に回答を得て満足している疑問を蒸し返している」。

メシレスは続けて次のように述べている。「簡潔に述べれば、ハンターによる犯罪行為はこれまでもなかったし、これから発見される可能性もない」。

バイデン選対は、「ジョー・バイデンはどうして、息子ハンターに対して、利益相反と見られるので、ブリスマ社の取締役から退くように言わなかったのはどうしてか?」という質問に回答することを拒絶している。

バイデン選対の報道担当アンドリュー・ベイツは声明の中で次のように語っている。「ジョー・バイデンはウクライナ国内の革命のために誇り高く戦った。アメリカ、EU、IMF、ウクライナの反汚職グループ全てが支持したゴールを彼は達成した。その結果、ウクライナ政府が素晴らしいものとなった」。

ベイツは続けて次のように語っている。「オバマ・バイデン政権はアメリカ史上、最も強力な倫理政策を作り、実行した政権である。ドナルド・トランプがウクライナ問題を選挙戦に入れ込もうとし、酷い言葉での中傷を行っているが、彼の発言と行動は全く信用されない」。

●変転し続ける政治潮流(Changing political tide

ハンター・バイデンがウクライナに関わるようになった当時、元ソ連を構成したウクライナの政治状況は混乱していた。2014年初め、キエフの独立広場で暴動が起きた。これはマイダンとして知られている。暴動によって、政変が起き、最終的に親露派の大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ率いる政権は崩壊し、ヨーロッパとアメリカとの緊密な関係を志向するウクライナの政治家たちが権力を握った。

追い落とされたヤヌコヴィッチと「ファミリー」と呼ばれた側近グループは、キエフの新政権によって訴追されることを恐れてロシアに逃亡した。新政権は諸外国に対してヤヌコヴィッチの同盟者たちの財産を凍結するように通知を出した。ヤヌコヴィッチ政権の徴税担当の大臣と検事総長は熱狂の中の追及に恐れをなし、ロシアに逃亡する際に空港の金属探知機を押し倒して飛行機に殺到するほどであった。

この政変によってズロチェフスキーは問題に直面することになった。ズロチェフスキーは、親露派の政治家に長年属していたが、彼はヤヌコヴィッチの同盟者ではなかったが、同時にキエフで権力を掌握したばかりの親欧米の政治家という訳でもなかった。

ズロチェフスキーは2度にわたり、ウクライナ政府のエネルギー部門のトップを務めた。一度目はレオニード・クシュマ大統領時代、そして、二度目はヤヌコヴィッチ時代で環境保護担当大臣を務めた。ブリスマ社の子会社エスコ・2度の大臣を務めた時期、後にブリスマ社の一部門となる複数の石油会社と天然ガス会社に対して事業にとって重要な許可や免許が多く出されていた。ウクライナ政府の許認可担当部局の記録によると、ブリスマ社の子会社であるエスコ・ピヴニッチ社とパリ社には多くの許認可が出された。

その後、ズロチェフスキーはウクライナ最大の天然ガス生産会社のオーナーになり、ウクライナ屈指の大富豪となった。

ブリスマ社は、同社が獲得した許可は全て合法的に発せられたものだと主張している。ブリスマ社は2015年に『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対して、「ズロチェフスキーは公僕として法律の文字と精神に従っている。彼はいつでも公正さと政策決定において最高度の道徳と倫理の基準を守ってきた」と答えた。

2014年、ズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近グループから脱落し、大臣から副大臣に降格された。

2014年3月、ヤヌコヴィッチがロシアに逃亡してから数週間後、キエフでは前政権の政府高官たちの汚職への追及が過熱していた。イギリスの裁判所の記録によると、この時期イギリスでは、イギリス当局がズロチェフスキーに対する資金洗浄疑惑で捜査を開始し、ブリスマ社のイギリス国内の銀行口座が凍結された。口座には数百万ドルが入っていた。イギリス当局による捜査は、BNPパリバ銀行から疑わしい行動の報告を受けてのことだった。

裁判所の記録によると、口座に入っていた資金のうち、2000万ドルがセルゲイ・クルチェンコに提供された。クルチェンコはヤヌコヴィッチに近い同盟者でウクライナ財界の大物であった。この取引の数週間前にヨーロッパ連合によって取引禁止処分を受けていた。ズロチェフスキーの代理人は、この資金は合法的な売買の代金として送金されたものだと主張した。

ズロチェフスキーにとって、資産凍結はそれから司法上のトラブルが続く年月の始まりを告げる出来事となった。これが後々にはウクライナの検事総長と反汚職部局による刑法上の犯罪捜査にまで拡大していった。イギリスでは、結局ズロチェフスキーの犯罪行為で訴追されることはなく、資産凍結は最終的に解除となった。

ズロチェフスキーとブリスマ社は本紙からの繰り返しのコメント依頼を拒絶した。

2017年、ブリスマ社は、同社とズロチェフスキーに対する全ての訴訟手続きは取り下げられたと発表した。2017年2月、同社のアメリカ人弁護士ジョン・ブレッタは、ズロチェフスキーは全ての捜査に真摯に協力し、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーが自身の立場を濫用したことを示す「証拠はなかった」と発表したと述べた。

しかしながら、ウクライナ政府国家反汚職局は金曜日、ズロチェフスキーが環境保護担当大臣時代にブリスマ社に出された免許に関し捜査を行っていると発表した。ズロチェフスキーが大臣だった期間、ハンター・バイデンはブリスマ社と関係を持っていなかった。

●欧米の人物や組織を使った改造(A Western makeover

イギリス当局が資金洗浄についての捜査を開始してから2か月もしないうちに、ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役になった。この当時ハンターが、イギリス当局がイギリスで捜査を進めていたことを知っていたかどうかは明確になっていない。当時、ズロチェフスキーがブリスマ社を所有していることはあまり知られていなかった。

2014年の政変が起きる前、アメリカ副大統領の息子を取締役に迎え入れることは、ブリスマ社にとって信頼性を高めるための努力であった。ブリスマ社はアメリカとヨーロッパで投資銀行家をしているアラン・アプターを取締役会長に迎え入れた。また、元ポーランド大統領が取締役に就任した。ブリスマ社は経営陣を刷新し、国際的に業務を行っている会計事務所を起用し、財政状態を監査させることにした。

キエフでの政変によって政権が変わって数週間も立たないうちに、著名なアメリカ人とヨーロッパ人を会社の取締役会に迎え入れることは、ウクライナ国内に対して「ズロチェフスキーには欧米の有力者との強力なコネがある」というメッセージを送ることになった、とイギリス人ジャーナリストのブローは述べている。ブローはタックスヘイヴンとペーパーカンパニーについて『マネーランド』という本を出版し、その中でズロチェフスキーについて書いている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは次のように述べている。「有名な家族に連なる人々を取締役会に迎えることで、ブリスマ社は西洋の、正当な企業のように見せることが出来るようになった。ブリスマ社はウクライナ国内での天然ガス採掘の許認可を大変に疑いの多い手段で得た」。カレニクは更にこのような「表面上の飾りつけ」は、疑いの多い方法で集めた原資を合法なものに見せようとする実力者たちや政府高官たちにとって、一般的な手段となっている。

現在でも取締役会長を務めているアプターにコメントを求めたが回答がなかった。ブリスマ社は、許認可は合法的に取得したものだと主張している。

ブリスマ社はまた同社の天然ガス生産はエネルギー面でのウクライナのロシア依存の度合いを低下させるものだと強調し始めた。この主張はワシントンにアピールした。ブリスマ社はワシントンにあるシンクタンクであるアトランティック・カウンシルに寄付をし始めた。

ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役に就任する1か月前、父ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナを訪問し、ウクライナがエネルギー生産を増加させるための支援パッケージの提供を発表した。

バイデンは次のように述べた。「もし今日ここでロシアに対して“あなた方の天然ガスなどいらない”と言えたらどうだろうと想像して見て欲しい。現在とは全く違う世界になるだろう」。

ブリスマ社を立て直した時、ズロチェフスキーはウクライナ当局の捜査を受けている途中だった。2015年、検察当局は2つの嫌疑で元環境保護担当大臣について捜査した。この当時に『ウォールストリート・ジャーナル』紙が閲覧した検事総長事務局の発表した書類によると、1つは違法な手段での蓄財、もう1つは権力濫用、文書偽造、横領についてであった。ズロチェフスキーはこれらの嫌疑について犯罪行為を行ったことを否定した。

●父親たちと息子たち(Fathers and sons

ジョー・バイデンと長年一緒に働いた人々は異口同音に、ハンター・バイデンのビジネスについては長年にわたり、ジョー・バイデンと議論することは難しかったと述べている。ジョー・バイデンが連邦上院を務めていた当時、ハンターはワシントンのKストリートでロビイストを務めていたこともあった。

バイデンの家族は数々の悲劇に見舞われた。ハンター・バイデンは1972年に自動車事故に遭い、彼は生き残ったが母親と妹は亡くなってしまった。長兄のボウはこの時の自動車事故では生き残ったが、2015年に脳腫瘍のために亡くなった。2017年に離婚の際の書類によれば、ここ数年、ハンター・バイデンはアルコール中毒と借金に苦しんだということだ。

2014年のウクライナでの政変が起きた時期、イェール法科大学院の卒業生であるハンターは、「ワールド・フード・プログラム・USA」は無給の会長、投資会社「ローズモント・セネカ」社のパートナー(共同経営者)、ニューヨークの法律事務所「ボイス・シラー・フレクスナー」の顧問を務めいていた。

ハンターの投資会社のパートナーだったデヴォン・アーチャーはブリスマ社の取締役に就任した。それからすぐにハンター・バイデンにもブリスマ社から取締役就任以来の書簡が届いた。

別のパートナーたちは取締役就任に対して深刻な懸念を持っていた。

ジョン・ケリー元国務長官の義理の息子クリス・ハインツはアーチャーに対して、ブリスマ社の取締役に就任することは良くないと伝えた、とハインツの報道担当は語っている。ハインツはウクライナ国内の汚職事件多発の記事、地政学上のリスク、情勢についての疑問について懸念を持っていた。

ハインツの報道担当クリス・バスタルディは本紙の取材に対して次のように述べた。「ハインツ氏はアーチャー氏に対してブリスマ社と仕事をすることは受け入れられないと強く警告を発した。アーチャー氏は、自分とハンター・バイデンは、会社のパートナーとしてではなく個人として機会を掴みたいのだと述べた」。

投資会社は結局分裂した。

バスタルディは「この問題についての判断力の欠如は、ハインツ氏がアーチャー氏とバイデン氏とのビジネス関係を解消するための主要な理由となった」と述べた。バスタルディは更にハインツとハインツの投資会社はブリスマ社と関係していないと付け加えた。

アーチャーにコメントを求めるための連絡はできなかった。アーチャーの弁護士はコメント依頼に回答しなかった。

ハンター・バイデンの弁護士メシレスは、ハンター・バイデンがハインツの警告について知っていたかという質問に回答しなかった。

ハンター・バイデンは今年初めに本紙の取材に対して、ブリスマ社の取締役に就任したのは既にブリスマ社の取締役を務めていたアレクサンデル・クファシニェフスキ元ポーランド大統領の積極的な働きかけがあったからだと答えた。ハンター・バイデンは声明の中で、ウクライナのエネルギー面での独立はロシア大統領ウラジミール・プーティンからの狡猾な援助の申し出を断るために重要だという考えをクファシニェフスキと共有していたと述べている。

アレクサンデル・クファシニェフスキはインタヴューの中で、「ハンター・バイデンは国際政治に関する知識を取締役会にもたらした、取締役会は年に2度開催されていた」と述べている。クファシニェフスキはハンターに「この会社はウクライナの独立にとって大変重要な存在であると思う」と語ったと述べている。

投資銀行家で現在もブリスマ社の取締役会長を務めているアプターは、当時のアメリカ副大統領の息子を取締役に選任したことについて、「彼の父親ではなく、完全に実力に基づいて」行われたと述べている。

バイデン選対は、ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社の取締役就任を知ったのはマスコミの報道からであったと主張している。

今年初め、ハンター・バイデンは本紙に対して声明を出した。その中で次のように述べている。「私は父と会社のビジネスや取締役としての仕事について話したことはない」。ジョー・バイデンは最近、アイオワでの演説の中で同様のことを述べた。ジョー・バイデンは「私は息子の海外でのビジネス取引について話したことはない」と述べた。

ハンター・バイデンは『ニューヨーカー』誌の取材に対して、父ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社での仕事について一度だけ言及したことがあることを示唆した。

ハンターは「父は、“お前が自分自身何をやっているか分かっていると思っているよ”と言ったので、“分かっているさ”と答えました」と述べている。

ハンターが取締役に就任した時、ブリスマ社幹部たちは、ハンターが法律問題を監督することになるだろうと述べた。しかし、ハンターの役割は法律関係にはとどまらなかった。本紙に対する声明の中で、ハンター・バイデンは「ブリスマ社の取締役に就任したのは、同社の透明性、コーポレイト・ガヴァナンス、責任に関するこれまでのやり方を改革することを助けるため」だったと述べている。同時に声明の中でハンター・バイデンは彼の仕事の具体的な中身については説明しなかった。 

「トランスペレンシー・インターナショナル」はウクライナを世界で最も汚職が蔓延している国の一つと認定している。ウクライナでは財界人たちが自分たちの経済的利益を増やすために、検察官を選任し、裁判所を利用する。ハンター・バイデンは結果的にそのような国に関わってしまい、いろいろなことに巻き込まれてしまうことになる決断をしてしまった。

●更迭された検察官(A fired prosecutor

2015年のキエフでは不満が高まっていた。親欧米の大統領ペトロ・ポロシェンコによる汚職根絶の試みは遅々として進んでいなかった。

ウクライナのジャーナリストたちはズロチェフスキーのような元政府高官たちが莫大な富を築いていることを次々と記事やテレビニュースとして発表していた。ある時には、ドローンを使って、キエフ郊外にある2つの並んでいる大豪邸を撮影することもあった。この2つの大豪邸はズロチェフスキーの家族と協力者の所有となっている。ズロチェフスキーの娘は、「ズロッチ」という名前の高級店を新たに開店させた。店名は苗字をもじったものだ。この高級店ではわに革やオーストリッチの靴が販売されていた。この当時、ウクライナは厳しい経済不況に苦しんでいた。

人々の汚職に対する怒りの矛先は検事総長ヴィクトール・ショーキンに向かった。アメリカ政府やEU諸国の政府の高官たちはショーキンが積極的に動いていないと見ていた。

2015年9月の演説で、この当時の駐ウクライナ米国大使ジョフリー・ピヤットは、政府高官関係の汚職事件を追及していないとして、ショーキンが率いる検察当局を表立って批判した。

ピヤットは「私たちは、検察当局が汚職に対する捜査を支持しないだけでなく、検察官たちが明確な汚職事件について捜査することも妨害していることをたびたび目にしてきた」と語っている。

ピヤットは特にウクライナの検察当局がイギリス当局に対して、ズロチェフスキーの資産凍結を正当化するための十分な情報を提供しなかったことを取り上げ批判した。十分な情報がなかったために、イギリスの裁判所はズロチェフスキーを自由にさせることになった。

ピヤットは次のように述べた。「ウクライナ検察当局はイギリス当局ではなく、ズロチェフスキーを弁護していた彼の弁護団に複数回にわたり書簡を通じて情報を提供した」。

ピヤットは、ズロチェフスキーの弁護団に書簡を通じて情報を提供した検察官や政府高官たちについて捜査し、ズロチェフスキーの嫌疑を「なかったことに」した責任がある者たちは更迭すべきだと訴えた。

このような批判はアメリカとEU諸国の政府高官たちは共通して持っているものだった。反汚職の動きが遅々として進まないのはショーキンが検事総長であるからだ、という考えが広く共有されていた。改革を進めることを条件にして欧米諸国から多額の援助がウクライナに提供されていた。

アメリカ政府は、オバマ政権のウクライナ政策の伝達者としてバイデン副大統領を選んだ。副大統領をウクライナに向かわせることで、アメリカがいかにウクライナに不満を持っているかを示すことになった。

ジョー・バイデンは2015年にウクライナ議会で演説を行った。その中でバイデンはウクライナに対して汚職の根絶を求めた。そして、「検事総長局には徹底的な改革が必要だ」と述べた。

バイデンは後に、ポロシェンコ大統領との会談の時にはより率直に、ショーキンに対する行動がなければアメリカは1億ドル規模の借款を停止すると述べたと述懐している。

バイデンは2018年に外交評議会で行った演説の中で次のように語った。「私はポロシェンコや高官たちを見ながら次のように言った。“私は6時間以内にこの国から出る。もし検事総長を更迭しないなら、あなたたちは金を手にすることはできない”と。“いいかな、ショーキンは更迭される、そしてしっかりした人物を後任に据えるんだ”とね」。

ショーキンはバイデンについての情報をジュリアーニに提供した。ショーキンは今年初めに本紙の取材に応じ、その中で、自分が2016年3月に検事総長を更迭されたのはこの当時ブリスマ社について捜査をしていたからだと語った。ショーキンは、検事総長を続けることが出来ていれば、ハンター・バイデンの取締役としての適格性について疑義を提示していただろうとも述べている。ショーキンは「ハンター・バイデンはウクライナでの仕事の経験もなく、またエネルギー部門での仕事もしたことがなかった」と指摘した。

しかし、元ウクライナ政府高官、元アメリカ政府高官たちは、この当時ズロチェフスキーへの捜査は停止状態だったと述べている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは、ウクライナ国内で反汚職活動をしている自分たちはショーキンが検事総長として汚職について捜査を進めていなかったことを批判し、汚職事件の捜査を進めるためにも彼の更迭がなされることを望んでいたと述懐している。

イギリス人ジャーナリストのブローは、ジュリアーニがバイデンに関して持ち出した嫌疑である「ズロチェフスキーとブリスマ社を守るためにショーキンを更迭させたというのは、意味不明で馬鹿げている」と述べた。ショーキンの検事総長時代、検察庁自体、幹部たちがダイアモンドや数千ドルの現金を賄賂として受け取っていたというスキャンダルに見舞われていたとブローは指摘している。 

ブローは「しかし、ショーキンの件とは別の事実については疑問が残る。それは、ジョー・バイデンは自分の息子がバイデンの名前を使ってお金を得ることを阻止すべきだったのでは、というものだ。その答えはそうすべきだっただろう、というものだ」と語っている。 

ショーキンの後任ユーリ・ルツェンコは本紙の取材に対して、ハンター・バイデンはウクライナの法律を破っていないと確信していると述べた。しかし、ある時点ではルツェンコの様々な発言によって、ジュリアーニはバイデンに対する捜査について疑義があると考えるようになったことも事実だ。

ルツェンコは「ウクライナの法律に照らして、ハンター・バイデンは法律を破るようなことはしていない」と語っている。

今年5月にジョー・バイデンは大統領選挙出馬を表明した。ハンター・バイデンはその前にブリスマ社の取締役として次の任期も務めないという決断を下した。

ハンター・バイデンは今年7月の『ニューヨーカー』誌の取材記事の中で、これまでの人生における苦難と薬物乱用について赤裸々に語った。その中で彼は次のように述べている。「ドナルド・トランプが、彼を大統領選挙で破ることが出来ると考えている人物に対する攻撃材料として私を選び出すことなど全く予想できないことでした」。
ハンターは記事の中で自分のために父ジョー・バイデンを騒動に巻き込んでしまったことについて父に謝罪したと語った。

ハンターは次のように語っている。「父は“私もまた残念に思っている人の一人だよ”と言い、それから2人でより悲しい思いをしている人について長い時間話しました。私たち2人はこのようなことを払しょくするための唯一の解決策は勝つことだという認識で一致しました。父は“いいかい、これからやらねばならないんだ”と言いました。より高い目的があり、そこに向かっていかねばなりません」。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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決定版 属国 日本論
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