古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

人類は歴史上経験のない「高齢化社会」に突入している。もちろん、この高齢化に貢献しているのは、先進諸国だ。その中でも日本は既に「高齢化」の段階を過ぎて、「高齢社会」に突入している。そこに少子化という現象もくっついている。あからさまに言えば、日本は加齢臭と老醜と死臭に満ちた国ということになる。

 「今のお年寄りは元気ですよ」という言葉も聞かれる。確かにそうかもしれないが、それでも高齢となれば死亡するリスクは高まる。また、脳の働きが衰え、感情のコントロールができなくなる、判断力が衰えるということは起きる。

 政治の世界に目を転じてみれば、日本でも80歳に近い政治家たちがいまだに権力の座にしがみついて惨めで醜い姿を晒している。しかし、アメリカでもそれは同じだ。世界唯一の超大国の大統領に選挙で当選したとされるジョー・バイデンがそうだ。彼は現在78歳、大統領の任期の4年間で80歳を超える。先日は犬と戯れていて足を骨折したなどという、なんとも締まらないニュースも報道された。

 アメリカの一部では、「バイデンはとても4年間持たない。そうなれば、副大統領のカマラ・ハリスが大統領に昇格する。そうなればアメリカ初の女性大統領だ。早くそうならないかな、そうなって欲しい」という声がある。副大統領の大統領への昇格の可能性は、これまでの歴代政権に比べて、バイデン政権はダントツに高い。
kamalaharrisjoebiden001

 副大統領から大統領に昇格となれば、多くのスタッフはそのまま留任させることになるだろうが、彼女の側近たちはそのまま重要ポストに入る可能性がある。今から、ハリスがどんな人物を自分に近いポジションに登用しているのかを見ることは、これまで以上に重要だ。

 全体的に見て、ハリスは自分の周辺を女性で固めた。しかも非白人のマイノリティを多く登用している。これは女性やマイノリティを大事にする、リベラルな民主党らしい布陣だということになるだろう。しかし、大事なのはこの人たちが何をするかだ。女性やマイノリティだから失敗をしない、世界に厄災をもたらさないなどと言うことはできない。

 また、ハリスを含めて、アメリカ東部の名門大学8校で構成するアイヴィーリーグの出身者はほとんどいない。ここまでアイヴィーリーガー(アイヴィーリーグの大学の卒業生)がいないというのも珍しい。彼女たちは揃って民主党エスタブリッシュメント派に属し、きれいごと大好きの現代風のリベラルの人々だ。
hartinaflournoy001
ハーティナ・フロノイ

副大統領首席補佐官にはハーティナ・フロノイ(Hartina Flournoy)が選ばれた。フロノイは64歳のアフリカ系アメリカ人女性。直前までビル・クリントン元大統領の首席スタッフを務めている。ジョージタウン大学で学士号と法務博士号を取得し弁護士となった。ビル・クリントン元大統領の後輩ということになる。

 全米教員組合委員長公共政策担当アドヴァイザーなどを務め、その後民主党全国委員会入りした。1992年には民主党全国党大会の事務局長を務め、クリントン・ゴアの政権以降ティームに入り、クリントン政権下のホワイトハウスに入った。2000年の大統領選挙ではアル・ゴア陣営の財務担当部長を務めた。

 2004年、民主党全国委員長に選ばれたハワード・ディーン(元ヴァーモント州知事、2004年の大統領選挙で民主党予備選挙に出馬し一時は支持率トップとなった)の委員長就任時の引継ぎに貢献した。

 フロノイは民主党全国委員会に長く参加していたこと、クリントン政権にも参画していたことから、エスタブリッシュメント、ヒラリー派に属する人物である。

国内政策担当補佐官にはロヒーニ・コソグル(Rohini Kosoglu)が起用される。スリランカ系アメリカ人である。父親は医師で、スリランカでの大学生時代にはクリケットの有力選手として知られていた。父親が1980年代にアメリカに移住して、ロヒーニが誕生した。コソグルはミシガン大学で学士号を、ワシントンDCにあるジョージ・ワシントン大学で修士号を取得した。その後は、政治の世界に入り、マイケル・ベネット連邦上院議員やデビー・スティーブナウ連邦上院議員など、連邦議員たちの選挙などで組織運営の仕事を行っていた。また、オバマケア成立にも尽力した。

2017年からは連邦上院議員に当選したばかりのカマラ・ハリスの上級補佐官となった。2020年の大統領選挙民主党予備選挙では、首席スタッフとなった、ハリスは早々に撤退を余儀なくされた。コソグルは300名のスタッフがいた選対全体を統括し、討論会、政策、予算などを一手に管理した。政権移行ティームではハリスの上級補佐官と連邦上院議員首席補佐官を務めている。ハリスの大統領選挙対策委員会では国内政策アドヴァイザーを務めた。コソグルはハリスの側近中の側近だ。

 ハリスがインド系であり、コソグルがスリランカ系ということで、南アジアにルーツを持つ2人ということになる。スリランカではコソグルのホワイトハウス入りが大きく報じられた。コソグルはアメリカ国内政策担当であるが、彼女の存在は対外的に意味を持つ。対中国、対ロシアの戦略において、インドとスリランカはアメリカにとって重要になってくる。「自由なインド太平洋」を守るという概念を持ち出し、Quad(クアッド、アメリカ、日本、オーストラリア、インド)という協力関係を構築している。これは、中国の「真珠の首飾り」戦略に対抗するものだ。そうした中で、スリランカの重要性は高まる。そうしたこともあり、コソグルの登用は意味を持つ。
nancymceldowney001
ナンシー・マクエルダウニー

 国家安全保障担当副大統領補佐官にはナンシー・マクエルダウニー(Nancy McEldowney)が就任する。マクエルダウニーは、ジョージ・W・ブッシュ政権下では駐ブルガリア米国大使を務めた。フロリダ州のニュー・カレッジ卒業後、コロンビア大学国際公共政策大学院(School of International and Public AffairsSIPA)とアメリカ国防大学(National Defense University)でそれぞれ修士号を取得後、1986年に国務省に入り、外交官となった。

2001年から2004年にかけては駐アゼルバイジャン米国大使館首席公使(Deputy Chief of Mission)、2005年から2008年にかけては駐トルコ米国大使館首席公使を務めた。

マクエルダウニーは2009年から2011年にかけてヨーロッパ問題担当筆頭国務次官補代理を務めた。そして、2011年から2013年にかけては国防大学の学長代理と上級副学長を務めた。その後、フォーリン・サーヴィス・インスティテュート(FSI)の部長を務めた。FSIは国務省に採用された若手職員たちに、外国語や指導力など外交官としての訓練を施す機関だ。2017年からはジョージタウン大学ウォルシュ外交大学院の外交官養成系修士号プログラムの責任者に就任した。2010年以降は現場の第一線から外れて、教育畑に移った印象だ。ジョージタウン大学外交学部は外交官を多く輩出している機関であり、国務省ともつながりが深い。また、繰り返しになるが、ビル・クリントン元大統領の母校でもある。

 国務省のキャリア外交官であり、人脈的にヒラリー派ということになる。専門は、トルコとアゼルバイジャンということになる。対イラン戦略でどういう役割を果たすのか、注目される。
symonesanders001
シモンヌ・サンダース

 シモンヌ・サンダース(Symone Sanders、1989年-)は上級補佐官と首席報道官を務めることになる。1989年にネブラスカ州で生まれた。まだ31歳だ。ネブラスカ州にあるイエズス会系の学校であるクレイトン大学を卒業後、ネブラスカ州オマハ市長の広報担当からキャリアをスタートさせた。2015年には大統領選挙民主党予備選挙候補者バーニー・サンダースの選対に入り、広報を務めた。2016年には選対から離れ、CNNのコメンテイターとなった。2019年、バイデン陣営に上級顧問として入った。

 サンダースはハリスと直接関係があったのかどうか不明だ。サンダース陣営の広報担当を務めたという経歴があるが、今回の大統領選挙では、バーニー・サンダースが再び出馬したというのに、バイデン陣営に入った。2016年の大統領選挙でサンダース陣営の広報として脚光を浴び、その後CNNでコメンテイターとなったということを考えると、エスタブリッシュメント派に取り込まれたということが考えられる。
ashleyetienne001
kamalaharrisjoebiden001

アシュリー・エティエンヌ(Ashley Etienne、1978年-)は42歳の若さで広報担当副大統領補佐官を務める。エティエンヌは30代で、バラク・オバマ政権で特別補佐官を務め、その後はナンシー・ペロシ連邦下院議長の報道担当と上級補佐官を務めた。広報担当として大変有能な人物のようだ。

 エティエンヌはテキサス州のサム・ヒューストン州立大学を卒業し、その後、ジョンズ・ホプキンズ大学で政治コミュニケーションの修士号を取得した。その後は、政治コミュニケーションの分野で活動した。2001年から2013年までアメリカ連邦下院監視・政府改革委員会のコミュニケーション担当を務め、そこで、イライジャ・カミングス連邦下院議員(メリーランド州選出、2019年に没)と知り合った。

 2008年にはバラク・オバマの大統領選挙の選対に入り、広報担当を務めた。オバマ政権では広報担当部長と特別補佐官を務めた。その後、ナンシー・ペロシ連邦下院議長の広報部長と上級補佐官を務めた。2020年の大統領選挙ではバイデン選対に入り、戦略立案担当の上級顧問を務めた。

 ハリスの周囲は女性とマイノリティで固められている。こうしたこれまでワシントンで男社会の壁に阻まれてきた人たちが活動する機会が与えられるのは結構なことだが、あまりに偏り過ぎているようにも感じられる。これまで男社会で男ばかりに偏っていたではないか、という批判はその通りであるが、「偏り」という悪習を男社会から踏襲するのもおかしい。

 バイデンがいつまでもつだろうか、ということがアメリカ国民の一部の関心事だ。「早く女性大統領が誕生して欲しい」という声がある。その声の通りに、ハリスが大統領に「昇格」ということになれば、ハリス副大統領の周囲を固めている女性たちも一緒により重要なポジションに昇格する可能性が高い。これまでよりも「副大統領のスタッフ」に対して注目する必要がある。そして、この必要性こそがバイデン自身とバイデン政権が内包する「瓦解の芽」である。

(貼り付けはじめ)

Harris assembles staff as she builds her vice presidential portfolio

Jasmine Wright

By Jasmine Wright, CNN

https://edition.cnn.com/2020/12/03/politics/kamala-harris-staff/index.html?utm_content=2020-12-03T14%3A05%3A07&utm_source=twCNNp&utm_term=image&utm_medium=social

(CNN)Vice President-elect Kamala Harris is constructing the key team of senior staffers who will accompany her to the White House, announcing Thursday the hiring of three top roles including chief of staff.

The staffers, all of whom are women and two of whom are people of color -- highlight the incoming administration's commitment to diversity.

Harris tapped Hartina Flournoy, a Black woman, as her incoming chief of staff. She currently serves as chief of staff to former President Bill Clinton.

"Tina brings a strong commitment to serving the American people, and her leadership will be critical as we work to overcome the unprecedented challenges facing our nation," Harris said in a statement.

News of Flournoy's hiring was first reported by journalist Yashar Ali late Monday night, and confirmed by CNN shortly after.

Rohini Kosoglu, a longtime Harris aide who currently serves as senior adviser to Harris on the transition team and held chief of staff titles in both the incoming vice president's Senate office and past presidential campaign, will be her domestic policy adviser. And Ambassador Nancy McEldowney will be Harris' national security adviser. McEldowney has an extensive career in foreign service including serving as the US ambassador to Bulgaria during the George W. Bush administration.

"Together with the rest of my team, today's appointees will work to get this virus under control, open our economy responsibly and make sure it lifts up all Americans, and restore and advance our country's leadership around the world," Harris said.

The all-women, majority of color trio will join at least two other women of color holding senior roles in Harris' office, in the latest high-profile appointments for an administration that has pledged to have its ranks reflect the diversity in America. That includes Symone Sanders, an incoming senior adviser and chief spokesperson for the vice president-elect, and Ashley Etienne, who will serve as communications director for Harris.

The official announcement, first shared with CNN, is an early look at who Harris is surrounding herself with at the start of her new role, as she begins to build out her portfolio.

Building out her team

Harris has known Flournoy for a number of months, but it is a relatively new relationship, a source close to Harris told CNN. The vice president-elect spoke to Flournoy soon after she was selected by President-elect Joe Biden in August, during a series of phone calls to various leaders and Democratic operatives.

At the time, Harris, 56, leaned on her for advice, telling Flournoy, "I hope that you will help me find good staff people, including yourself," according to the source.

Harris interviewed numerous leaders virtually, both men and women, in what those familiar called a "rigorous process." She both identified individuals who she wanted to interview for the job and interviewed some provided to her by the transition team.

"She did not start out saying, 'I want a Black woman.' She started out saying, 'I want the best person qualified for this job. And that person just happens to be Black," Minyon Moore, a veteran political operative and current transition adviser tapped to help build out the vice president-elect's staff, told CNN in an interview.

And in the end, Harris chose Flournoy, a well-respected Black woman and Democratic operative with decades of experience in Washington, DC, and an aligning vision that reflected the priorities of the administration and values Harris is looking to bring to her office.

Flournoy is part of the "Colored Girls," a crew that stormed presidential politics in the late 1980's, that includes Donna Brazile, Moore, Leah Daughtry and Yolanda Caraway.

"When they start speaking, everybody shuts the hell up," said a source close to the campaign told CNN earlier this year.

Before her current role with Clinton, Flournoy, a graduate of Georgetown Law, served in several roles in the Democratic Party, including senior adviser to then-Democratic National Convention Chairman Howard Dean in 2005. She was the traveling chief of staff to 2000 Democratic vice presidential nominee Sen. Joseph Lieberman, finance director for then-Vice President Al Gore's 2000 presidential campaign and deputy campaign manager in the 1992 Clinton and Gore Presidential Transition Office and served in the White House Office of Presidential Personnel, according to her Georgetown University biography.

Kosoglu, who will be Harris' domestic policy adviser, has played a crucial part in her national political career, serving as a senior adviser since 2017 and sowing deep connections with her boss. A Sri Lankan-American, she became the first South Asian American woman to serve as chief of staff in the US Senate -- working for Harris, the first South Asian-American senator. Kosolglu was a spring 2020 Harvard University Institute of Politics fellow and before joining Harris' campaign, held senior leadership positions with Sens. Michael Bennet of Colorado and Debbie Stabenow of Michigan.

As the primary campaign's chief of staff, Kosoglu was instrumental in filling the team so it intentionally included a diverse group and shaped policy, a source familiar with campaign matters told CNN. During the general election, Kosoglu often traveled with the then-vice presidential nominee.

In her statement, Harris nodded to Kosoglu's vital role calling her, "an expert on some of the most important issues facing the American people, but also one of my closest and most trusted aides from the Senate and presidential campaign."

The third member of the team that Harris announced Thursday, McEldowney has served more than 30 years as a career foreign service servant and was also the chargé d'affaires and deputy chief of mission in Turkey and Azerbaijan as well as the State Department's director of the Foreign Service Institute, where she led the foreign affairs training facility for the US government, according to her Georgetown biography.

Building her portfolio

While no official policy designations have been set, sources say Harris wants to be a part of the administration's rebuilding of small and medium businesses stripped by the pandemic, in part because they disproportionately affect women and people of color.

The vice president-elect is also eyeing a role in the administration's education platform -- as many children without proper access to broadband during the pandemic have fallen behind.

Harris has long focused on the welfare of children throughout her prosecutorial career, in the Senate and during her own presidential campaign. Her first major policy proposal last year during the campaign pledged to boost teacher pay.

Over time, she'll look to solidify her foreign policy and national security accolades, leaning on her four years of experience as a member of the Senate Intelligence Committee, a source adds.

That is in addition to Harris' possible role in any criminal justice and climate justice reform, drawing on her years as California's attorney general and San Francisco district attorney.

The arsenal of key staff that Harris is surrounding herself with will be essential in securing the work that rounds out her record.

For her part, Flournoy has prior relationships with many top Biden advisers, having worked with them in her different capacities in Washington.

McEldowney, a veteran in the foreign policy arena, has deep ties to the community as well. Kosgoulu, who spent many years on Capitol Hill, could serve as an emissary for Harris who, once inaugurated, will become the president of the Senate.

But the most important relationship of them all, is the one Harris builds with the President-elect.

"The first obligation is to do what is asked by the President of the United States," Moore, who served as director of White House political affairs to Bill Clinton and watched his relationship to Gore flourish, said.

Harris has often called Biden a "model" for how she would shape her own vice presidency, calling his leadership on significant issues to support then-President Barack Obama an inspiration for how she will do her job.

Moore said from what she's witnessed, the pair have been open and trusting.

"Her voice is heard. She has a complete seat at the table, not a half seat. A complete seat. Shirley Chisholm said if you don't have a seat, bring a folding chair. Well, she has a hard chair," Moore said.

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
 ジョー・バイデンは国務長官に側近のアントニー・ブリンケンを指名した。ブリンケンはどんな人物か。
joebidenanthonyblinken101

アントニー・ブリンケン(右)とバイデン
 ブリンケンの父ドナルドは1944年に米陸軍に入隊し、その後、1948年にハーヴァード大学を卒業した。投資会社ウォーバーグ・ピンカス・カンパニーの創設者の一人だ。ブリンケンは民主党の大口献金者であり、1988年の大統領選挙では民主党候補のマイケル・デュカキスの資金集めを担当した(息子のアントニーも参加した)。そして、民主党のビル・クリントン政権下の1994年から97年にかけて駐ハンガリー米国大使を務めた。

 父ドナルドと母ジュディスが離婚し、ジュディスはパリで弁護士をしていたサミュエル・ピカールと再婚した。それでアントニーもパリに移り、高校時代を過ごした。そのために、アントニーはフランス語に堪能だ。その後、アントニー・ブリンケンはハーヴァード大学を卒業し、コロンビア大学法科大学院を卒業した。

 1993年からは国務省に勤務し、2002年からは上院外交委員会の民主党側スタッフとなった。この時に上院外交委員長を務めていたジョー・バイデンと知り合い、その後、側近となった。2009年からはジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。2013年から2015年までは国家安全保障担当大統領次席補佐官を務めた。更に2015年から2017年にかけては国務副長官も務めた。オバマ政権時代には「副」「次席」の立場で外交政策や国家安全保障政策を担った。

 ジョー・バイデン政権ができれば、ブリンケンは初めて「副」や「次席」という言葉が付かない形で外交政策の中心人物となる。

 ブリンケンは「人道的介入主義派(Humanitarian Interventionists)」の一員である。彼の経歴を見ても、連邦上院時代にバイデン委員長の下で、イラク戦争賛成の下準備を行った。また、オバマ政権下ではリリアやリビアへの介入を主導したと言われている。トランプ大統領の外交姿勢を徹底的に批判してきた。彼はヒラリー派の一員である。しかし、同時にバイデンの側近ということを考えると、バイデンが途中で辞任となれば一緒に辞める(辞めさせられる)ということもあるだろう。

 このバイデン政権=ヒラリー・チェイニー政権の外交政策を担うという点では、アントニー・ブリンケンは適任であろう。それが世界にとってどんな厄災をもたらすかは想像すらできないが。「グレイト・リセット」を行い、アメリカと世界はディストピアに陥る。その時に平然と人々を抑圧する側の人間ということになる。

(貼り付けはじめ)

バイデンが国務長官に選んだアントニー・ブリンケンについて知るべき5つのこと(Five things to know about Antony Blinken, Biden's pick for State

オリヴィア・ビーヴァーズ、ロウラ・ケリー筆

2020年11月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/527650-five-things-to-know-about-antony-blinken-bidens-pick-for-state

大統領選挙当選者バイデンは今週アントニー・ブリンケンを国務長官に起用すると発表した。ブリンケンはバイデンにとって長年の側近であり、バイデンに近い外交政策アドヴァイザーである。

ブリンケンは外交政策分野で広範な経験を持っている。そして、連邦議会で人事が承認されれば、ブリンケンは複数の発生中のそして永続的な諸問題に直面している。その中には危険な新型コロナウイルス感染拡大も含まれている。

ブリンケンについての5つの知るべきことを述べていく。

(1)バイデンは数十年に渡りバイデンと一緒に仕事をしてきた(Blinken has a years-long working relationship with Biden

ブリンケンとバイデンとの間の関係は数十年前までさかのぼることができる。

バイデンが連邦上院外交委員会の委員長と幹部委員を務めた時、ブリンケンは民主党側スタッフ部長を6年間にわたり務めた。バイデンが副大統領に選ばれた際、ブリンケンはバイデンの後を追ってホワイトハウスに入った。ブリンケンはバイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

ブリンケンは後にオバマ政権内で様々なポジションを経験した。その中にはバラク・オバマ大統領のアシスタントとオバマ大統領の国家安全保障問題担当筆頭次席大統領補佐官が含まれていた。

バイデンが選挙運動を始めた後、ブリンケンは再びバイデンの側近となった。ブリンケンはバイデン選対の外交政策アドヴァイザーに就任した。

ブリンケンは火曜日、国務長官就任を受諾すると述べ、その中で、大統領選挙当選者バイデンとの関係は自分の職業人としての人生の中のハイライトだと述べた。

「大統領選挙当選者であるバイデン氏のために働くこと、そして、あなたを師と友人として仰ぎ見ることができることは、私の職業人としての人生において最大の栄誉です」と述べた。

バイデンは、ブリンケンを国務長官に指名すると発表し、その中で、ブリンケンは「自分に最も近く、最も信頼できるアドヴァイザー」であると発言した。

(2)ブリンケンは中東に過集中している(Blinken has had hyperfocus on Middle East

ブリンケンは、911のテロリストによる攻撃とイラクへのアメリカ軍の侵攻の後に、対中東の外交政策に過剰に集中していることで知られている。

バイデンが連邦上院議員を務めていた機関、ブリンケンはイラクの分割計画を発表する手助けをした。ブリンケンは、イラクを人種や宗教的なアイデンティティを元にして3つのゾーンに分割することを強く主張した。そうすることで、それぞれのゾーンで自治が可能になると主張した。しかし、この考えは、多くの人々の反対に遭った。当時のイラクの主将からも強く反対された。

ブリンケンは対中東のアメリカの外交政策を形作った。

オバマ政権下、ブリンケンは、中東地域でISISに対抗するために十数カ国の連合形成を主導した。ブリンケンは政権内の外交政策の決定を主導した。特にアフガニスタン政策とイラクの核開発プログラムについて政策を主導した。

(3)ブリンケンは国務省の士気を上げたいと考えている(Blinken wants to raise State’s morale

ブリンケンはオバマ政権で国務副長官を務めた。ブリンケンの最後のそしてより記憶に残る瞬間としては、国務省のホリデーパーティーでの姿であった。ブリンケンはギターを手に取り、国務省職員で結成されているバンドに参加して、ボブ・ディランの曲を弾きながら、歌詞を国務省の職員に捧げるものに変えて歌った。

ブリンケン副長官の下、国務省に勤務したハイリー・ソイファーは「ブリンケンは政府において同僚たちと協力しながら仕事を進めました」と述べた。

ブリンケンと親しい人物として、トム・マリノウスキー連邦下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)が挙げられる。マリノウスキーは民主政治体制・人権・労働担当国務次官補を務めた。

火曜日、ブリンケンはデラウエア州で国務長官就任を受諾した。その際、オバマ政権とクリントン政権、連邦上院、国務省で一緒に働いた「バンド仲間」に感謝の言葉を述べた。

ソイファーは次のように語っている。「これがまさにブリンケンを象徴しているものです。国務副長官時代、ブリンケンはただのリーダーではなかった。トップダウンでの判断をするのではなく、国務省全体を支援しながら仕事をするリーダーでした」。

ルー・ルーケンズは2018年まで、オバマ政権において、ロンドンの米国大使館で首席公使(deputy chief of mission to the U.S. embassy in London)を務めた。ルーケンズは「穏やかで謙虚」な人物だと評しているが、同時に、国務省に対する深い理解と評価をもたらすだろうとも述べた。更に、ブリンケンは「バイデンが優先政策ついて知識を持っており、深井考えを持っている」とも語った。

ルーケンズは次のように語った。「ブリンケン率いる外交ティームは、国際的な脅威に対処する同盟諸国とパートナー諸国の協力の重要性を認識するであろうことは明らかです。“アメリカ・ファースト、アメリカ・あローン”アプローチを推進する代わりに、志を同じくする諸国と協働することで、テロリズム、感染症拡大、気候変動などの脅威に対処することができるということを彼らは理解しています」。

(4)ブリンケンはホロコースト帰還者の継子だ(Blinken is stepson of a Holocaust survivor

ブリンケンは、自身のアメリカに対する考え方は、第二次世界大戦中に空軍兵士として従軍し、その後駐ハンガリー米国大使となった父親と、ホロコーストを生き抜いた継父の両者によって形成されたと認めている。彼の継父はアメリカを自由の烽火だと考えていた。

ブリンケンは、火曜日に国務長官受諾の演説の中で、父と継父の2つの物語を語った。ブリンケンは父ドナルド・ブリンケンこそが自分にとってロールモデルであり英雄だと述べた。

ブリンケンは更に、彼の継父サミュエル・ピサールの米国に来るまでの物語について語った。ピサールの親族はホロコーストでそのほとんどが殺害された。ピサールはバイエルン州の森の中で隠れ、第二次世界大戦末期の最後の死の行進から逃走した。その時、彼は白い5つの星がペイントされた戦車を目撃した。

ブリンケンは次のように述べた。「彼は戦車に駆け寄りました。戦車のハッチが開きました。アフリカ系アメリカ人兵士が彼を見下ろしました。私の父は膝をついて、彼の母親が教えてくれた3つの英単語を叫びました。それは、“God Bless America(神よ、アメリカに祝福を)”でした。兵士は彼を戦車に引き上げてくれて中に入れてくれました。父はアメリカに、そして自由に入ったのです」。

大使を務め、外交分野で長く勤務したダン・フライドは数十年にわたりブリンケンと新興を持ってきた。フライドは、ブリンケンの継父の物語はブリンケンの外交政策に関する考え方を表現していると考えていると述べた。

フライドは「アトランティック・カウンシル」とのインタヴューの中で次のように語っている。「外交政策についての基本的な考えについて、ブリンケンと話したことはないです。しかし、彼の外交政策についての基本的な考えは、価値観を持つ国としてのアメリカのアイデンティティから出ているということは感じられています。アメリカは、難民であった彼の継父をアメリカに招き入れてくれた国なのです。そして、アメリカは、自国の価値観と国益の増進はリンクしているということを分かっている国なのです」。

(5)ブリンケンには二人の幼い子供たちがいる(Blinken has two young children

ブリンケンは多忙を極める国防長官の職に就くが、彼と彼の妻は現在二人の幼い子供たちを育てている真っ最中だ。ブリンケンは20世紀以降の国務長官の中で、幼児を育てながら職責を果たすことになる最初の長官となる。

ブリンケンは、こちらもアメリカ政界で働いているエヴァン・モウリーン・ライアンと結婚した。二人はクリントン政権で働いている時に知り合った。

政府で仕事をしている間、ブリンケンは幼児教育に対しての関心を示した。2016年9月、ブリンケンは、有名な子供番組「セサミストリート」に出演した。彼は番組の中で、難民の流入と国連の役割について説明した。

オバマ政権で国連大使を務め、ブリンケンと同僚だったサマンサ・パワーは次のようにツイートした。「アメリカのトップ外交官が二人の幼児を育てながら職責を果たす姿を見せることは、働く親御さんたちにとって、元気をもらえることになるだろう。トニーと素晴らしいエヴァン・ライアンが家族を犠牲にして職責を果たしていることに感謝します」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 新型コロナウイルス感染拡大によってもたらされるもの、それは国家の力の増大であり、おそらく私権の制限であろう。既にそのような恐ろしい状況に向かって進んでいる。しかもそれを進めているのは、リベラルと呼ばれる人々だ。リベラル(liberal)とは、「自由な」という意味の英単語であったはずだが、それと逆行する動きを進めようとしている。

 世界経済フォーラム(World Economic ForumWEF)が言い始めた「グレイト・リセット」。新型コロナウイルス感染拡大という事態を受け、これまでのやり方を「リセット」するということらしい。「国家の力を劇的に強める」ということのようだ。国家の力を劇的に強めて、諸問題を一気に解決するということになると、これは大変に危険なことだ。
joebidenjohnkerry101

ジョーバイデンとジョン・ケリーの耄碌し尽くした老醜コンビ
 そして、大統領選挙に当選したというジョー・バイデンはこのグレイト・リセットに酷くご執心だということを、バイデンが気候変動対策の大統領特使に任命すると見られる、ジョン・ケリー元国務長官(連邦上院議員時代はバイデンと同僚)が暴露したのだ。
greatresetbookcover001

グレート・リセット ダボス会議で語られるアフターコロナの世界

 世界の諸問題を一気に解決するために、国家の力を劇的に強める。そのようなことになれば、個人の抑圧、私権の制限といったことがどうしても起きてくる。新型コロナウイルス感染拡大を契機に、これを利用して、このような危険なことをやろうというのは、まさに「ショック・ドクトリン」だ。また、デモクラシーの濫用だ。「俺が選挙で勝ったんだ、だから俺の言うことを聞け」「反対する奴は非民主的だ」ということになる。

 私が恐れているのは、ジョー・バイデンが大統領に就任したということになって、「戒厳令を布告して、マスク着用を全国民に強制して、反対する人間やマスクをしない人間を“人民の敵”認定して逮捕・投獄する」ということが起きるのではないかということだ。

 このグレイト・リセットという、およそアメリカの憲法の精神に全くそぐわない考え方にバイデンやバイデンの側近たちが熱心だということは、それだけで恐ろしいことであるし、アメリカがアメリカではなくなる、アメリカを破壊する行為であると私は考える。

(貼り付けはじめ)

ジョン・ケリーがジョー・バイデンの急進的「グレイト・リセット・ムーヴメント」への傾倒を明らかにした(John Kerry reveals Biden's devotion to radical 'Great Reset' movement

ジャスティン・ハスキンス筆

2020年12月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/energy-environment/528482-john-kerry-reveals-bidens-devotion-to-radical-great-reset-movement

今年6月、世界経済フォーラム(World Economic ForumWEF)と国際連合(United NationsUN)のような重要な国際機関に属するエリートたちは、世界経済を「リセットする」ための遠大な計画とキャンペーンを始めた。

この計画には、グリーン・ニューディールのような新しい社会的プログラムの拡大、左派が主張している諸テーマを支援することを各企業に強制する巨大な規制と政府のプログラムを通じて、政府の力を劇的に増大させることが含まれている。

この計画の正当化には2つのポイントがある。支持者たちによって「グレイト・リセット(Great Reset)」と名付けた計画を正当化する理由として、新型コロナウイルス感染拡大(短期的な正当化の理由)と世界規模の温暖化による、いわゆる「気候変動危機」(長期的な正当化の理由)が存在する。

「グレイト・リセット」の支持者たちが主張しているところでは、この計画によって、社会の大きな部分が根本的に形を変えることになるだろうということだ。世界経済フォーラムの代表クラウス・シュワブは6月、次のように書いている。「世界は社会と経済の全ての側面を刷新するために一致団結してかつ陣族に行動しなければならない。それらは例えば、教育、社会契約、労働環境といった側面である。アメリカや中国をはじめとする全ての国家が参加しなければならない。そして、石油産業から天然ガス産業からハイテク産業など全ての産業が変化しなければならない。簡潔に述べると、私たちには資本主義の“グレイト・リセット”が必要なのだ」。

国際的に見て、「グレイト・リセット」は既に影響力を持つ指導者たち、活動家たち、学者たち、そして諸機関に支持されている。世界経済フォーラムと国連に加えて、グレイト・リセット・ムーヴメントは、国際通貨基金(International Monetary Fund)、国家元首たち、グリーンピース、マイクロソフトやマスターカードのような大企業や金融機関のCEOと会長たちの間でも支持を得ている。

しかし、アメリカにおいては、大統領選挙当選者ジョー・バイデンを含むほとんどの省察立案者や決定者たちが、グレイト・リセットについて比較的沈黙を待っている。多くの人々は、バイデン政権が、この急進的な計画であるグレイト・リセットに支持を表明するのか、反対するのか、知りたいと考え、そのヒントだけでも手に入れようとしている。

バイデンと彼の側近たちがグレイト・リセットを支持し、アメリカにそれを導入しようとするだろうことを示す証拠がいくつも存在する。しかし、バイデンと側近たちは、今のところ、アメリカにグレイト・リセットを導入するということを明確には述べていない。

11月中旬に世界経済フォーラムが主催した、グレイト・リセットに関するパネルディスカッションにおいて、バイデン政権で気候変動問題担当大統領特使を務めるであろうジョン・ケリー元国務長官は、バイデン政権がグレイト・リセットを支持し、「グレイト・リセットは、多くの人々が想像しているよりも、より急速にかつより大きな強度を持ってアメリカで実現されるだろう」と力強く宣言した。

パネルとして出席したボルゲ・ブレンデは、「世界経済フォーラムとその他のグレイト・リセットの支持者たちは、新しい大統領に期待するのが大き過ぎるし、急ぎ過ぎているのでしょうか?それとも新大統領は就任第一日目からグレイト・リセットを実行するのでしょうか?」とケリーに質問した。ケリーは「あなたのご質問に対する答えは、“いいえ、あなたは期待し過ぎてなどいなません”というものです」と答えた。

ケリーは続けて次のように語った。「そして確かに、グレイト・リセットは実現するでしょう。グレイト・リセットは、多くの人々が想像するよりも、急速にかつ強力に起きることでしょう。実際には、アメリカ市民はグレイト・リセットを遂行しつつあります。私たちはグレイト・リセットを実行しています。それは記録的な投票率のことを指します」。

ケリーは更に、「気候変動危機」のスピードを遅らせるためにグレイト・リセットが必要だと述べた。そして、「ジョー・バイデンは、アメリカにとってパリ(気候協定)に復帰することは十分ではないと考えていると私は知っています。パリ(気候協定)が必要としている最低限のことを行うだけでは十分ではないのです」と語った。

ケリーはまた、グレイト・リセット・ムーヴメントのために、「私たちはとても興奮する時代の幕開けに立ち会っている」と考えており、「気候変動危機に対処するために、社会的、そして経済的な諸問題を明確にするための最大の機会を手にしている」と述べた。

世界経済フォーラムのイヴェントでのケリーのこれらの発言は、世界経済フォーラムや国連など気候変動についてグレイト・リセットを支持ししている国際機関や組織とケリーがバイデン政権に参加して協同することになるという事実によって、より重要性を増す。

ケリーがグレイト・リセットを支持することを表明したのは今回が初めてではない。6月に世界経済フォーラムが開いたヴァーチャルのイヴェントで、ケリーは、新型コロナウイルス感染拡大は、グレイト・リセットにドアを開く「大きな瞬間」だと述べた。更に、「世界経済フォーラムは世界のCEO的な役割を果たせる能力を持っています。そして、気候変動と経済格差に対処するためにグレイト・リセットを洗練させるための最前線のそして中心的な役割を果たすことになるでしょう。これらの問題は新型コロナウイルス感染拡大によって露わにされたのです」。

バイデンとグレイト・リセットとのつながりには明確な証拠があることは明らかだ。ジョー・バイデン、ジョン・ケリーとバイデン政権の高官たちはアメリカにグレイト・リセットを導入することを計画している。もし彼らのその試みが成功すれば、アメリカは以前とは同じ国ではなくなるだろう。

(貼り付け終わり)
bakabusubingounawatashitachiwomatsufujimori001

馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 11月下旬、クリストファー・ミラー国防長官代理はジブチ、バーレーン、カタール、ソマリアを訪問し、駐屯する米軍将官たちと会談を行った。ソマリア訪問については事前発表がなされず、突然の訪問となった。米国防長官のソマリア訪問は初めてのことだった。

 ドナルド・トランプ大統領はイラクとアフガニスタンに駐留する米軍将兵の削減を命令し、更にソマリアに派遣されている約700名の米軍将兵の再配置も命令した。ソマリアではアルカイーダやISISの関連組織が活動を行っており、米軍はソマリアの軍隊ウや警察の支援を10年以上行っている。その中には空爆も含まれている。

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」と「アイソレーショニズム(Isolationism)」は、海外に展開する米軍の削減も含まれていた。これらのことを簡単に言うと、「海外の問題に構っている場合か、自分たちの国の中が大変なのに」ということだ。トランプや実はバーニー・サンダースを若い人たちが応援するのは、「自分たちには職がない、良い仕事に就ける学歴もない、結局軍隊に入って使い捨ての兵士をやるしかない」という中で、無駄に死にたくないという気持ちがあるからだ。

 死の危険が少ない、前線に出ることが少ない将官たちは出世のことしか考えないから、何か大規模作戦があったり、海外駐在が長かったりすれば、昇進スピードも上がるということで、兵士たちとは異なった考えをするだろう。もちろん、将官たちも下級将校で自分たちが兵士を率いて前線に出ている時は、兵士たちと同じ境遇であっただろうが、偉くなって、勲章の数が増えていくと官僚的になっていくものだ。

 ミラー国防長官代理は米軍の東アフリカからの撤退ということを進めようとしている。これは、以前に紹介した、中国の「真珠の首飾り計画」にも関連することだ。簡単に言えば、「もうアメリカは東アフリカになんて関与したくない、中国はやりたいらしいね、それならあんたたちが代わりにやんなさいよ」ということだ。衰退するアメリカ帝国の縮小と新興の(以前のことを考えると復活の)中華帝国の拡大が交差している。

 しかし、バイデンが大統領になって政権を掌握すれば、このような米軍撤退計画はご破算になるだろう。そして、何の成果も出ない米軍の駐留がずっと続き、金が垂れ流され続けるだろう。衰退のアメリカ帝国がいつまで耐えられるか、見ものだ。

(貼り付けはじめ)

トランプはソマリアから将兵のほぼ全員を撤退させるように国防総省に命令を出した(Trump orders Pentagon to pull nearly all troops from Somalia

エレン・ミッチェル筆

2020年12月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/528842-trump-orders-pentagon-to-pull-nearly-all-troops-from-somalia

トランプ大統領は国防総省に対して、来年早々までにソマリア駐留の米軍将兵700名のほぼ全員を撤退させるよう命令を出した、と国防総省は金曜日発表した。

トランプ大統領は「国防総省と米アフリカ中央軍司令部に対して、2021年初旬までに米軍将兵の大多数と物資のほとんどを再配置し直し、ソマリア国外に出す」ことを命じたと、国防総省は声明の中で述べている。

現在、約700名の米軍将兵がソマリアに派遣されている。ソマリアでは10年以上にわたり、アメリカ軍が、ソマリア国内のアルカイーダ関連組織アル・シャバブと、そして最近ではISISの地方組織との戦いを支援している。アメリカ軍はソマリアの安全保障部隊が武装組織と闘うために訓練を行い、支援を行っている。また、空爆も実施している。

今回の国防総省の発表は、クリストファー・ミラー国防長官代理の突然のソマリア訪問の後になされた。ミラーのソマリア訪問は感謝祭の後に実施された。米軍の撤退が実施されるのではないかという噂が持ちきりの中で、ミラーはソマリアを訪問し、その中で、アメリカ軍のパートナーはテロリスト組織との戦いに貢献していると述べた。

国防総省は金曜日、アメリカは「アフリカらから撤退もせず、関与を止めることもしない」と強調した。また、「幹部職員はアフリカのパートナー諸国との関係を維持し、政府のあらゆるレヴェルでの支援を継続する」とも述べた。

国防総省はソマリアから撤退する将兵の数やどこに駐屯している将兵が撤退するのかについて発表してはいない。しかし、「将兵の一部は東部アフリカ外に派遣し直されるだろう」と発表している。「残りの将兵はソマリアから出て、ソマリアの近隣諸国に配置し直される。これは、アメリカとパートナー諸国がソマリアの国境を越えて作戦を実行するためだ。その目的はソマリア国内で活動している暴力的過激主義集団に圧力をかけるためだ」としている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、ソマリア国内の米軍はケニアとジブチの基地に移動させられ、ソマリア国内の対テロリズムの目的が達成されないことになるだろうと報じた。

今回の発表は、トランプ大統領が来年1月に大統領の座から退く前に海外の戦闘から米軍の将兵を撤退させようという動きを反映している。

2020年11月、トランプ大統領は来年1月中旬までにアフガニスタンから2000名、イラクから500名の米軍将兵を撤退させるように命じた。彼の命令は米軍と安全保障関係の指導者たちからの助言に反するものである。

ソマリアからの米軍の撤退は、最近解任されたマーク・エスパー国防長官の計画に反するものである。エスパーはサヘル地域のアフリカ北部の国々からの将兵を撤退させつつ、アフリカにおいてより少ない将兵を駐屯させるべきだと主張していた。

国防総省監察官総監室、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁は、ソマリアからの米軍の撤退という決断に反対する助言を行ってきた。先月、これらの省庁は、ソマリアの軍隊と警察は、アメリカ軍の支援なしに、ソマリア国内でテロリストの脅威に抵抗することはできないと発表している。

国防総省、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁は共同報告書の中で、「ソマリア軍と警察には大規模な国際的支援なしに、アル・シャバブとISISソマリアからの脅威を封じ込めることは不可能だ。ISISソマリアはアル・シャバブに比べて規模は小さいが脅威となる可能性を秘めている」と書いている。

=====

国防長官代理がソマリアへ驚きの訪問(Acting Defense secretary makes surprise trip to Somalia

セリーヌ・カストロヌヴォオ筆

2020年11月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/527741-acting-defense-secretary-makes-unannounced-trip-to-somalia

クリストファー・ミラー国防長官代理は金曜日、ソマリアを突然訪問した。米国防長官として初の東部アフリカにある国ソマリアへの訪問となった。

金曜日に国防総省によって記者発表がなされた。今回のソマリアはミラー国防著感代理による4カ国訪問の最後の訪問地となった。ソマリアの前に、ミラー国防長官代理は事前に発表を行わずに、ソマリアの近隣諸国であるジブチ、バーレーン、カタールにある米軍基地を訪問した。

CNNの報道によると、ミラーはソマリアの首都モガディシュに数時間滞在した。ジブチにあるアメリカ軍のレモニエール基地を訪問後に、ミラーはモガディシュに到着し、アメリカ軍関係者と会談を行った。

ミラー国防長官代理の外国訪問中の記者発表で、国防総省は、「ミラー国防長官代理が、アメリカの国益、アフリカにおけるパートナー諸国と同盟諸国、国際社会の対テロ活動の継続的な活動の重要性に脅威を与えている各暴力的過激主義組織の縮小に向かうアメリカの努力を再確認した」と述べている。

今回のミラーのソマリア訪問は、トランプ大統領がソマリアに派遣されている米軍将兵から約700名を撤退させる命令を出す計画を持っているという報道が出ている中で、実行された。現在、米軍は、アルカイーダの関連団体で最大のアル・シャバブとISIS組織と対抗するための対テロリズム活動のために将兵を派遣している。

国防総省は現在までソマリアからの米軍撤退を正式に発表していないが、国防総省の幹部職員がCNNの取材に応じ、ソマリアからの撤退は数日中に実行される見込みだと述べた、と報じられている。

ミラーは国防長官代理に就任して初めての海外訪問を行った。今月、トランプ大統領は今月初めにマーク・エスパー国防長官を解任し、ミラーは国防長官代理に就任した。

ミラーが国防長官代理となって以降、国防総省は、トランプ大統領からの命令により、2021年1月15日までに、アフガニスタンの駐留米軍将兵の数を4500名から2500名に、イラク駐留の米軍将兵の数を3000名から2500名にそれぞれ削減すると発表している。1月15日はトランプが大統領の座から退く直前の日時である。

アフガニスタンからの米軍の撤退に対しては、専門家、連邦議員、米政府の幹部職員だった人々から反対の声が挙がっている。アフガニスタンでは、アメリカが駐留米軍の規模を縮小することで、タリバンとの和平交渉におけるアメリカ側の立場羽弱くなると指摘する人々が多く出ている。

連邦上院多数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は今月、アフガニスタン駐留の米軍の急激な削減を支持するのは連邦議会内でも「ごく少数」になるだろうと発言した。マコーネルは「米軍の削減は私たちの同盟諸国に損害を与え、私たちが損害を被ることを願っている人々を大変に喜ばせることになるだろう」と述べた。

国防総省監察官総監室、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が水曜日に発表した共同報告書は、ソマリア軍と警察はアメリカ軍の支援なしにはソマリア国内におけるテロリストの脅威に抵抗することは不可能だとしている。

報告書には次のように書かれている。「長年にわたり、ソマリア政府、アメリカ政府、そして国際社会からの反テロリズムの圧力を受けながらも、東部アフリカにおけるテロリストの脅威は減少していない。アル・シャバブは南部ソマリアの多くの地域で行動の自由を保持している。そして、アメリカの国益を含むソマリア国外での攻撃の能力と意図を示している」。

「ソマリア軍と警察には大規模な国際的支援なしに、アル・シャバブとISISソマリアからの脅威を封じ込めることは不可能だ。ISISソマリアはアル・シャバブに比べて規模は小さいが脅威となる可能性を秘めている」。

(貼り付け終わり)

(終わり)


amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今回は、タイ南部に建設計画があるタイ運河に関する論考を紹介する。タイ南部半島部の一番狭い地峡(ちきょう)に2本の運河を建設するというものだ。これで、現在、マラッカ海峡に集中している海運が分散されることになる。また、日本や朝鮮半島、中国に向かう航路がだいぶ短縮されることになる。

thaicanalmap001 

タイ運河の計画地図

 このタイ運河を中国の戦略から見れば、「真珠の首飾り(String of Pearls)」と呼ばれる、「インド包囲網」計画と海上の「一対一路」計画において重要な役割を果たすことになる。中国は東南アジア地域に勢力を伸ばしつつあり、インドはそれを警戒している。中国はインド洋にも進出しようとしている。アフリカ東部地域には既に中国から多額の資金が投じられており影響下に入っている。「真珠の首飾り」計画の地図を見ると、インド包囲網計画は進んでいるようである。

stringofpearlschinamap001 

「真珠の首飾り」

 真珠の首飾りの拠点となるのが、カンボジアのシアヌークヴィルとミャンマーのチャウピューだ。タイ運河が完成すれば、この2地点を結ぶことは容易になる。また、タイ運河に関して言えば、シンガポールやマレーシアに封鎖されてしまえば、マラッカ海峡で身動きが取れない(チョークポイントと呼ばれる)ことになり、現在この航路が主要航路であるため、中国にとっては不安材料ということになる。タイ運河計画が決まれば中国は資金と技術を惜しみなく注ぎ込み、すぐに完成させるだろう。インドもただただ黙っている訳ではない。アンダマン・ニコバル諸島のインド空軍と海軍の能力を増強して、中国の進出に対抗しようとしている。

sihanoukvillekyauphyumap001 

シアヌークヴィルとチャウピューの地図

andamannicobarislandsmap001 

アンダマン・ニコバル諸島の地図

 タイの動きが重要となってくるが、下の論稿ではタイはアメリカの同盟国であるが、ここのところだいぶ中国寄りの姿勢を強めているということだ。それであるならば、タイ運河建設計画も進む可能性がある。もちろん、タイ国内の親米派はそれに反対するだろう。実際に、「運河ではなく、鉄道と高速道路を建設して代替にしてはどうか」ということを、運輸大臣が述べている。

 タイは新中国と親米、2つの姿勢を使い分けて自分たちにとって最良の利益を引き出すことだろう。これこそが強国ではない国が生き残る術だ。日本もタイに学ぶということをやるべきだ。アメリカにばかり賭けるというのは大変危険で、愚かしいことなのだ。

(貼り付けはじめ)

インドと中国との争いの次の最前線はタイ運河となるだろう(The Next Front in the India-China Conflict Could Be a Thai Canal

-中国政府がインド洋へより早く着くルートを求めている中でインドは島嶼部防衛を増強しつつある。

サルヴァトーレ・バボーンズ筆

2020年9月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/01/china-india-conflict-thai-kra-canal/

アメリカと中国との間の太平洋での新たな冷戦について忘れよう。現在、インドと中国との間のより熱い戦争が起きている。ヒマラヤ山脈地域の高地地域において国境争いがあり、既に少なくとも20名が死亡している。海洋地域では、中国は、同盟諸国と海軍基地でインドを包囲しようとしている。同盟諸国と海軍基地のつながりは刺激的な言葉「真珠の首飾り(string of pearls)」として知られている。中国の、インドを支配するための、対インド洋・インド戦略における最大の脆弱性は、マラッカ海峡にある。マラッカ海峡はシンガポールとスマトラを分ける狭い海洋航路である。この航路を海運のほとんどが通過しなければならず、中国の海運貿易にとっての命綱であり、中国海軍が南アジア、さらに西側に向かう際の主要航路である。中国とインドのライヴァル関係を考慮し、かつ中国のアフリカ、中東、地中海地域などに対する戦略的な野心も考慮すると、敵意を持つ超大国間にある狭いチョークポイントへの依存を削減するものは何であっても、中国にとっては極めて重要である。

中国政府の、賛否両論のある社会資本プロジェクトの一対一路の中で最も野心的なものがある。それはタイ南部のクラ地峡に運河を通すという計画で、長年議論が続けられてきた。クラ地峡はマレー半島の中で最も狭い場所になっている。この運河が開設されると、中国からインド洋につながる2つ目の海上ルートとなるだろう。その結果、中国海軍は、マレーシアを遠回りする700マイルの航路をショートカットして、南シナ海とインド洋に新たに建設した各基地の間で艦船をすばやく移動させることができるようになるだろう。そのため、タイ運河は中国にとって重要な戦略的財産となるだろう。そして、タイの狭い南部半島地域を取り巻く引き縄となる可能性もある。タイが中国に対して運河建設のために300億ドルの投資を認めるならば、中国に関係する弧が永続的に接続されることになるだろう。

長年議論が続いたが、タイ運河は対国内の政治エリートの間で支持が拡大しているように見える。今月に入り、議会の委員会はタイ運河プロジェクトについての勧告を行った。歴史的に政府に対して批判的な『バンコク・ポスト』紙でさえもタイ運河プロジェクトに好意的な論説を発表した。タイ国内における中国の影響力浸透計画は世論形成に大きに寄与している。タイは名目上アメリカと同盟関係を結んでいるが、2014年にアメリカがタイ国軍のクーデターによる政権掌握を承認することを拒絶して以降、タイ政府は中国寄りに大きく傾いている。

タイ運河プロジェクトは「インドを包囲する」という中国政府の計画に適するものとなる。中国海軍はベンガル湾とインド洋に勢力を拡大しようとしている。アフリカ東部にジブチに物資基地を開設し、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、イラン、そしてロシアの各海軍と同地域で共同軍事演習を行っている。同地域の中国が資金を出している港湾整備計画はインド包囲網を印象付けている。インドは将来の中国との海上での衝突の可能性に備えて海軍を増強している。今年8月、『ヒンドゥスタン・タイムズ』紙は、インド軍は、中国と対抗するために、アンダマン・ニコバル諸島(Andaman Nicobar Islands)にある空軍基地と海軍基地の能力を増強する計画を持っていると報じた。これらのインド領の人口は50万以下であるが、これらの島々はマラッカ海峡とインド洋の航路を結んでいる。また、これらのインド領の島々は、「タイ運河は脅威とはならない」という主張を行う際の根拠となるものだ。

マラッカ海峡は数千年とは言わないが何世紀にもわたり国際商業にとって重要な回廊であった。イタリアの冒険家マルコ・ポーロはフビライ・ハーンの宮廷から帰国する途中でマラッカ海峡を通った。1292年のことだった。1400年代初頭、中国の明王朝の提督であった鄭和はインド、アフリカ、中東に向かう航海でマラッカ海峡を通過した。現在、年間に8万隻以上の船舶がマラッカ海峡を通過している。マラッカ海峡は東アジアにオイルを運び、工業製品を輸出するための重要な回廊となっている。現在のシンガポールの繁栄は戦略的な位置の上に作り出されたものだ。シンガポールは間が狭いマラッカ海峡の東南部の出入り口に位置している。

タイ運河協会(Thai Canal Association)は政治的に有力なタイ国軍と緊密な関係にある。タイ運河協会はタイの発展のために、タイ運河の両端に工業団地と物流拠点の建設することで、アジア地域の物流の大動脈となることができると主張している。確かにその主張には一理ある。工業関係の専門家たちの試算によると、現在の海運のレートと燃料コストを考えるとタイ運河は不経済(儲からない)ものとなるが、現在の航路となっているマラッカ海峡は海運量の点からその対処機能は限界に近付いている。マラッカ海峡に代わる現在の航路としてはインドネシアのスンダ海峡があるが、東側と西側を結ぶ海運にとっては大きな遠回りを強いられることになる。

現在のタイ運河計画は、「9Aルート」計画と呼ばれている。この計画では2つの運河の建設が提案されている。それぞれが30メートルの深さを持ち、幅は180メートルであり、全長は75マイルとなっている。タイ湾のソンクラー(Songkhla)からアンダマン海のクラビー(Krabi)を結ぶ計画となっている。

この提案された計画を進めることで、タイは2つに分裂するリスクを抱えることになる。タイ国内では現在、南部の3つの州で活発な反乱に直面している。これらの地域の人口の過半数はイスラム教徒であり、民族的にはマレー人である。タイ運河は北部のタイ「本土」と南部の分離運動との間の象徴的な境目となるだろう。タイ国軍の反乱に対する攻勢を止めることはできないだろうが、タイ運河はタイを数世紀にわたり分断することになるだろう。ひとたび運河が完成したら、そこには海水が流れ込む。そうなればタイは2つに分断され、タイ運河はタイ政府にとって大いなる失敗ということになるだろう。

これは、コロンビアがかつてパナマと呼ばれる北西部の地峡を掌握していたことを思い出させるだろう。パナマの独立論者たち(分離主義者たち)が1903年に反乱を起こした際、アメリカ海軍は新国家の独立を確保するために介入した。アメリカのパナマ運河地帯委員会(Isthmian Canal Commission)がその1年後にパナマに介入した。そして、1914年にパナマ運河は最終的にビジネスのために開放された。パナマはこれ以降、アメリカの実質的な保護国となっている。スエズ運河は1869年に開業した。1956年までイギリスとフランスの軍事介入の標的となった。スエズ運河は1975年まで地政学的なゲームの対象となった。そして、今日においても、エジプト政府はスエズ運河の対岸のシナイ半島でのイスラム原理主義者の反乱に直面している。

今日、タイの領土保全は比較的安定している。しかし、タイ運河プロジェクトが成功すると、東南アジアの政治的地理を再設定することになるだろう。それによって、中国は永続的な安全保障に関するパートナーとして迎えられることになるだろう。そうなれば、中国を追い出すことは容易なことではなくなる。このことはパナマの事例を見れば明らかだ。カンボジアのシアヌークヴィル(Sihanoukville)とミャンマーのチャウピュー(Kyaukphyu)のような港湾開発への投資計画とまとめて、中国はタイ運河を、「真珠の首飾り」をつなぐための戦略的な運河と考えるだろうタイ政府が中国に対して敵対する姿勢を取るならば、この繁栄の弧を切断する脅威となる。中国が国益を守る必要性を正当化の理由として、対国内に介入し、タイ南部の独立運動を支援し、タイ運河のコントロール権を掌握するという話は全く荒唐無稽ということではない。繰り返しになるが、パナマ建国の事例が教訓になる。

タイ運河が持つ危険性を嗅ぎ取ったのだろうか、タイの運輸大臣サックサヤーム・シットチョーブは最近になって、運河に代わって、地峡に鉄道と高速道路を建設する方が良いと発言するようになった。シットチョーブは、地峡の2つの面に建設する2つの港湾に関する研究のためにタイ政府は資金を提供すると発言した。そして、「大地の橋梁」で2つを結んで物資を運ぶとした。

タイ運河はアメリカ、アメリカの同盟諸国、インドにとってさえも大きな脅威にならないだろう。インドはアンダマン・ニコバル諸島の前進基地の機能を強化することで、中国の拡張主義に効果的に(しかしかなりの予算が必要となるが)対抗することが可能である。本当の懸念は、ミャンマーやカンボジアのような貧しい東南アジア諸国の独立を更に損なうことになるだろうというものだ。これらの国々は国内の市民社会が弱体であり、中国の介入に対して脆弱である。そして、これは究極的にタイにとって大きな危険となる。マラッカ海峡はシンガポールにとって恩恵となってきた。それは、シンガポールが外国からの影響から比較的自由である開放経済体制を持っているからである。タイは、中国に近づいて敢えて危険を冒す前に、これまでの教訓について熟慮すべきなのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ