古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。
carlosghosncaroleghosn001
 今回は、カルロス・ゴーンについての記事をご紹介する。カルロス・ゴーンは日本で訴追され、現在保釈中であるが、2019年12月30日に関西国際空港からプライベートジェットで出発、イスタンブールを経て、レバノンの首都ベイルートに到着した。ゴーンはその後、ベイルートで記者会見を開き、日本の司法制度を批判し、日産自動車のクーデターに日本政府まで関与していると述べた。
下に紹介する記事に出てくる「big in Japan」という言葉は、欧米で使われる言葉で、「アメリカなどでは全く売れていないのに、日本では売れている」バンドや小説を馬鹿にした言葉である。どのバンドだったかは失念したが、中には日本で人気になって、日本のファンが支え、そこからアメリカなどで大人気になるというパターンがあったと記憶している。
レバノンといえば、アーレント・レイプハルト(Arend Lijphart、1936年―)の提唱した「多極共存型民主政治体制(Consociational Democracy)」を思い出す。レイプハルトの著書The Politics of Accommodation: Pluralism and Democracy in the Netherlands (1968)は、オランダの政治を論じたものであるが、この中で、一国内に様々な分裂線、たとえば言語や文化、民族の違いがある場合に(多言語、多文化、多民族国家である場合に)、民主政治体制が維持しづらいと言われている中で、それぞれのグループを代表するエリートたちがうまく調整して民主政治体制を安定させてきた、ということをレイプハルトはオランダの事例から主張した。これを多極共存型民主政治体制と呼ぶ。これに当てはまるのがレバノンだ。
arendlijphart100
レバノンは多くの宗教が共存する国で大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、国会議長はイスラム教シーア派から選出されるのが慣例となっている。国会議員数も各宗派の人口に応じて定められており、マロン派34名、スンニ派とシーア派はそれぞれ27名となっている。レバノン内戦(1975―1990年)以降はそのようにして国家を安定させてきた。
元々は「同じ日に海水浴とスキーができる」と言われ、首都ベイルートは「中東のパリ」とも呼ばれるなど豊富な観光資源を持つ美しい国であるが、現在は経済状態が厳しいようだ。そうした中で、現在の成否や政治エリート層に対する抗議活動も盛んにおこなわれているようだ。
 レバノンに帰国したゴーンであるが、レバノン国内では歓迎する人々と批判する人々がいるようだ。歓迎する人たちは、ゴーンが世界有数の国際企業である日産自動車のCEOとして会社を立て直した成功者、立志伝中の人物と捉え、彼の経験をレバノン経済立て直しに活かして欲しいと考えているようだ。一方、批判する人々は、レバノンのエリート層は腐敗を極めているのに、そこあらたにお金のことで容疑をかけられている人が入ってくる、それをエリート層が暖かく迎えるのはおかしい、と批判しているようだ。
 ゴーンの逃亡劇によって、日本の司法制度について考えてみるという動きも起きている。そもそも日本では警察が逮捕した時点で容疑者とは呼ばれるが、実際には犯人として処罰されるような状態になる。長期間の拘留、人権に配慮のない取り扱いが問題になっている。そもそも推定無罪(裁判所の判決が出るまでは無罪)の原則が守られていると考えられない。私たち国民の側も「お上がお縄にした悪い奴」という前近代的な考え方を改めねばならない。そして、国家が行うことに対して厳格さを求め、制限をかけるということを考えるべきだ。
 ゴーンの逃亡は議論を始める奇貨とすることが重要だと思う。
(貼り付けはじめ)
日本では有名な「コストカッター」が帰国(Big in Japan, ‘Le Cost Killer’ Comes Home)
―カルロス・ゴーンのベイルートへの奇怪な帰還は抗議と危険の状態にある国からの複雑な反応を引き起こした
レベッカ・コラード筆
2019年1月10日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2020/01/10/carlos-ghosn-escape-lebanon-protests-nissan/
ベイルート発。水曜日に実施された2時間にわたった記者会見の中で、元日産自動車CEOカルロス・ゴーンは自身の無実を繰り返し訴えた。そして、自身の元の雇用者と日本の司法による共同謀議についての概要を説明した。
ゴーンは日本での自宅軟禁状態から脱した。しかし、100名以上のジャーナリストたちが記者会見に詰めかけた。ジャーナリストたちは、伝説のマジシャンであるフーディーニのマジックのように日本からトルコを経てレバノンに入国した詳細について聞きたがった。しかし、ジャーナリストたちの希望は失望に終わった。
その代わり、ゴーンは、自身の無実を証明すると主張する文書と2018年11月に東京の空港で突然逮捕された時の状況の説明を含む、熱心な説明を行った。2018年11月の突然の逮捕について、ゴーンは1941年の日本によるアメリカへの奇襲攻撃になぞらえた。1941年12月に日本軍はハワイのパールハーバーの海軍基地を奇襲攻撃した。
ゴーンは次のように述べた。「私に質問する人たちがいますが、私の突然の逮捕について疑いを持っているんでしょうか?パールハーバーで何が起きましたか?」。
ゴーンはレバノンの政治エリート層から快く受け入れられている。2019年12月30日にベイルートに突然入国した直後に、レバノン大統領ミシェル・アウンと会談を持ったと報じられている。しかし、一般のレバノン国民からは全面的に受け入れられてはいない。そうした人々は、既存の政治エリート層に対する抗議活動が激しくなっている国であるレバノンに数百万ドル規模の資金を盗んだ容疑で告訴されている人物を受け入れる必要があるのかという疑問を呈している。
ゴーンは最初に所得の過少申告と日産自動車からの資金の引き出しの容疑で逮捕された。その後、ベイルートには彼の顔とスローガンが掲載された大きな宣伝広告版が設置された。それには「私たちはみんなカルロス・ゴーンだ」と書かれていた。ゴーンが子供時代の大部分を過ごした国レバノンの国民の多くは、ゴーンは成功物語の主人公と見なしていた。ゴーンは世界的大企業のCEOになり、倒産の危機から利益を生み出すまでに引き上げた。
記者会見「今日、私はレバノン人であることを誇りに思っています。この人生の厳しい時期に私の傍らに寄り添ってくれる国はただ一つ、レバノンです」と述べた。ゴーンはブラジルとフランスの国籍も持っている。フランス国籍については、日本の自宅軟禁状態からレバノンへ逃れるにあたり、フランスのパスポートを使用したと考えられている。フランスのパスポート以外のパスポートは全部取り上げられており、フランスのパスポート1冊だけが鍵付きのケースに入れられて渡されていた。
ゴーンはレバノンに入国した。レバノンは経済的、エネルギー的危機に直面している。レバノン国民の中には、レバノンの状態を改善するために彼に役割を果たして欲しいと望む声が出ている。巨額な負債を抱え、通貨価値は不安定で、日常的に停電が頻発する中で、レバノンは経済破綻に向かっていると考えられている。レバノン国民の多くは。「コストカッター」と呼ばれているゴーンについてレバノン経済を立て直せる人物だと考えている。レバノン経済は非効率な官僚制と全てのレヴェルでうまく機能させられていない政府によってこのような悲惨な状態に陥っている。また、腐敗も深刻な状況になっている。
レバノンのドゥールーズ教徒の指導者ワリード・ジャンブラットはツイッターに投稿し、ゴーンを救国の手助けをしてもらおうと主張した。
ジャンブラットは次のように書いた。「私はゴーンをエネルギー担当大臣に任命すべきだと提案したい。エネルギー省はマフィアにコントロールされ、改革を拒絶し、そのために巨額の赤字を出すようになっている。カルロス・ゴーンは帝国を築いた。おそらく彼の経験から利益を得ることができるだろう」。
ゴーンのベイルートの邸宅の近くの通りで文房具店の店主ジコ・コウリーは「彼が選挙に出るなら投票しますよ。彼は素晴らしいビジネスマンです。レバノンの愛をしている。大臣になるべきです」と語った。
水曜日の記者会見の席上、レバノンが抱える諸問題を解決するために役割を果たすことができるかと質問され、ゴーンは用意周到に準備された内容を答えた。
ゴーンは「私は政治家ではありませんし、これまで政治的野心を持ったこともありません。しかし、もし私の経験をこの国のために使って欲しいと頼まれるならば、私は準備ができていると申し上げたいと思います」と述べた。
文房具店店主コウリーのようなレバノン国民の一部はゴーンに対する容疑はでっち上げだと考えている。コウリーは店に立ちながら、日常で起きている電力供給制限のために発電機をスタートさせながら、次のように語った。「大きな話については分かりません。みんなが税金についてごまかしているもんですよ。だからと言って牢獄にぶち込まれることはありません」。
レバノン内戦終結後にレバノンを支配してきた腐敗した政治的エリート層の退陣を求める反政府抗議活動が数カ月続いた。ゴーンの事件についてはインターネット上で詳細に調査された。彼が留置された際にはそのようなことは起きなかった。
あるツイッター利用者はジャンブラットのツイートに対して次のように反応した。「レバノンには腐敗した人間、国賊が既に多く存在している。そんな人間たちを更にまた外国から輸入したいと望むのか?」。
今週の初めの抗議活動で、参加者たちはゴーンについてのスローガンを使うようになった。そのスローガンはレバノンの政治家たちと中央銀行総裁に対して使われるものであった。そのスローガンとは、「泥棒、泥棒、カルロス・ゴーン、彼は泥棒だ」である。
税金だけがゴーンの問題ではない。2008年にゴーンはイスラエルを訪問した。ゴーンは同国においてイスラエル大統領で当時の首相だったエフード・オルメットと会談を持った。オルメットは2006年にイスラエルを率いてヒズボラと戦争を行った。戦争の結果、レバノン国内で約1200名の死者が出た。イスラエル訪問はレバノン国民にとっては違法行為である。首相と会談を持つこともまた然りである。複数のレバノンの弁護士たちは、ゴーンのイスラエル訪問について告訴を行った。しかし、レバノンの最高指導者たちは楽観的のように見える。ヒズボラでさえもゴーンの敵性国家イスラエルへの訪問を問題視していない。
ゴーンはレバノンへの帰還によって司法的にいくらかの安心を得ることができると考えている。木曜日、ゴーンはレバノンの検事総長に召喚され、記者会見よりも少し長い時間尋問を受けた。レバノン政府は日本政府に対してゴーンに対する告訴に関連する書類を提供するように求めている。しかし、インターポールが逮捕を模索している中でレバノン政府はゴーンを日本に引き渡す計画を持っていないことは明白だ。
レバノンは、ゴーンがフランスのパスポートを使って合法的に同国に入国したと発表した。木曜日、レバノンはゴーンに対して出国禁止を申し渡した。レバノン国内では、ゴーンに対する出国禁止措置は制限というよりも彼の安全の確証のようなものだというジョークが話されている。
ゴーンは、日本の司法ではなく、迫害から逃れてきたと述べている。独房での監禁、弁護士の同席なしの長時間にわたる取り調べ、妻キャロル・ゴーンとの会話の禁止といったことをなされていたと発言した。ベイルートでの記者会見中、ゴーンは妻キャロルを常にそばに置いていた。キャロルには日本で逮捕状が出されている。
ゴーンは自身に対して公平な聴取がなされる場所ならばどこでも裁判を受ける準備があると述べた。ゴーンは繰り返し日本の高い有罪率について言及した。「99.4%!」と。ゴーンはレバノンの司法当局への協力を約束した。
今週、レバノン・ブロードキャスティング・コーポレイション・インターナショナルとのインタヴューの中で、ゴーンは「私は、日本の司法システムとよりもレバノンの司法システムとの方がより快適に感じる」と述べた。
多くのレバノン国民は腐敗したエリートに嫌気がさしていることは問題である。司法の独立の欠如は抗議運動にとっての重要な批判点となっている。法的諸権利擁護グループは、レバノンの司法システムは政治エリート、ビジネスエリートから深刻な影響を受けている。こうした人々はゴーンを擁護する立場に立つと見られている。
レバノンの別のツイッター利用者は「もちろん、レバノンであなたはより快適でいられることだろうね、エリートたちはあなたが楽に過ごせるようにしてくれるだろうよ」とツイートした。
(貼り付け終わり)
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「なぜ中国がここまで強大になるまで気づかなかったのか」「なぜ中国を野放しにしてきたのか」ということがアメリカ国内で、特に反中国派からは声高に叫ばれている。そして、たいていの場合、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官が中国に融和的で、キッシンジャーの息のかかった人物が対中国政策を実行してきたために、このようなことになったのだ、という結論に達する。キッシンジャーが金を貰ってアメリカを中国に売り渡したという過激な主張にまで至ることになる。
henrykissingerxijingping006
ヘンリー・キッシンジャーと習近平

 米中接近は1971年からだ。共和党のリチャード・ニクソン大統領が中国との国交回復を目指した。当時のアメリカはヴェトナム戦争の泥沼に足をとられ、何とかしようとしていた。そこで目を向けたのが中国だった。国際的に孤立していた中国を国際社会に引き込み、プレイヤーとして機能させるということが目的だった。ソ連やヴェトナムに影響を与えて、ヴェトナム戦争を何とかしようというものだった。
richardnixonhenrykissinger001

リチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャー
 そこで白羽の矢を立てたのがハーヴァード大学教授だったヘンリー・キッシンジャーだった。キッシンジャーは国務長官として中国との関係回復に尽力したのは周知のとおりだ。しかし、ニクソンとキッシンジャーは同床異夢というか、中国観に違いがあった。ニクソンは中国を変革させよう、西側に対する敵対を止めさせようという考えだった。キッシンジャーは中国の考えや国内体制を変えることなしに、利益をもたらすことで国際社会に参加させようという考えだった。
maozedongrichardkissinger001

毛沢東とリチャード・ニクソン
 下の記事はキッシンジャーに対して批判的なトーンである。従って、中国は伝統文化を忌避し反西側の危険な考えを変えることなしに国際社会に参加し、強大な国になってしまった、大変危険だということになる。キッシンジャーの考えが足りなかったということになる。
maozedonghenrykissinger001

ヘンリー・キッシンジャーと毛沢東(真ん中は周恩来)
 それではニクソンが考えていたように、アメリカが手を突っ込んで中国国内の体制を変える、考えを変える、ということをやっていたらどうだっただろうか。中国国内で大きな分裂と争いが起きていた可能性は高い。そのような不安定な中国がアメリカの利益となったかどうか、疑問だ。また、日本にとって不安定な中国は利益とはならなかっただろう。

 中国の言い分を聞き、なだめすかしながら、国際社会に順応させるということをキッシンジャーはやった。これは大変な手綱さばきであったと思う。中国の経済力をここまでにしたのは、アメリカが中国産品の輸入を拡大したからだ。自業自得ということになる。

(貼り付けはじめ)

キッシンジャーの歴史的な中国政策:回顧(Kissinger’s historic China policy: A retrospective

ジョセフ・ボスコ筆

2018年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/408507-kissingers-historic-china-policy-a-retrospective

ヘンリー・キッシンジャーは今でも人々を驚かせ続けている。95歳になるキッシンジャーはリチャード・ニクソン政権で国務長官を務めた。キッシンジャーは最近、ウィルソン・センター創立50周年を記念してインタヴューを受けた。

キッシンジャーの発言を読むと、彼が現代における最も偉大な戦略思想家の1人であると評価されている理由が分かる。1960年代にハーヴァード大学で講義をしていた時代から、博識さには畏怖の念さえ持たれていた。

キッシンジャーは発言の中で、1971年にキッシンジャーとニクソンが初めて言及して以来のアメリカの対中国政策の基盤と失敗について触れている。キッシンジャーが国家安全保障学の分野におけるリアリスト学派を代表する学者ではなかったならば、何も学ばず、何も忘れていないキッシンジャーの何も変化していない中国観について語ったことだろう。そうではなく、彼は中国について悪いことばかりを学び、それらについて決して忘れなかった訳ではない。

キッシンジャーの学術と政治のキャリアの前半分で、キッシンジャーはヨーロッパ、ソヴィエト連邦、冷戦期の核兵器の諸問題に注力していた。キッシンジャーは自身でも認めているように、中国について考えたことも発言したこともほとんどなかった。

ニクソン大統領が歴史的な米中和解というプロジェクトを推進するためにキッシンジャーを政権内に入れようとした際、キッシンジャーは中国については全くの白紙のような状態であった。キッシンジャーは、自分に師匠役の人物が必要であることが分かっていた。そこで、キッシンジャーは、一人の国務省の中国専門家に白羽の矢を立てた。その人物は後に駐中国アメリカ大使を務め、キッシンジャー・インスティチュートの社長を務めることになるスタプレトン・ロイだった。そして、ロイは今回、キッシンジャーにインタヴューを行っている。キッシンジャーは「ステイプは私にとって中国に関する教師だった。従って、私にとって中国との関係構築は同時に教育を受けて、経験を積み重ねるプロセスでもあった」と述べている。

しかしながら、キッシンジャーはインタヴューの冒頭で、中国についての学びのプロセスにおける誤りを明らかにした。キッシンジャーは次のように語った。「米中両国は両国ともに政策実行における例外的な性質を持っていると確信している。アメリカは民主的立憲主義という政治システムを基盤としている。中国は少なくとも孔子とそれ以降の独特な実践にまで遡ることができる発展を基盤としている」。

キッシンジャーが公の場で常に述べているのは、彼が現在の中国は統治に関する神聖な諸原理を持つ誇大な文明の具体化されたもので、現代的な共産党独裁の具現化ではないと考えているということだ。共産党独裁の創設者(訳者註:毛沢東)はキッシンジャーが中国の行動原理と仮定している文化をことごとく非難した。毛沢東は中国の歴史と中国の人々に対して文化大革命を実行した。

実際、インタヴューの中でロイとキッシンジャー2人ともに、現在の中華人民共和国の共産主義的な源流(訳者註:文化大革命)について全く語っていない。同時に、西側の政治的、経済的価値観と諸機構の破壊についても語っていない。毛沢東にとっては西側の政治的、経済的価値観や諸機構は中国の古代文化に次ぐ敵であった。

中国が「その幻想を育て、憎悪を掻き立て、近隣諸国に脅威を与える」ような国家であったならば、キッシンジャーはニクソンの共産中国観を共有することができただろう。ニクソンは中国を国際社会に組み入れることで中国の危険な心性を変化させようとした。後に、ニクソンは自分が行った「戦略的ギャンブル」はうまくいかなかった、いまだに敵意を持っている中国をより強力にしただけだったと後悔した。

キッシンジャーは、中国の世界における見え方をどのように変化させるかを考慮する代わりに、アメリカは中国を世界に順応させるためにできることがあると考えた。キッシンジャーはロイに対して、「私たちの希望は米中両国の価値観はより近くなるだろうと私は考えた」と述べた。

キッシンジャーはニクソンの持っていた懸念について多少の心配はしていたが、全面的には共有しなかった。中国政府が持つ邪悪な世界観の根本からの穏健化なしに、数十年もニクソンが持っていた懸念は続いたままだった。

「外交政策を実施する際に必要なことは、大変化を必要とする目的に反する短期的に実現可能な目的について考慮することだ。そして、中国人は数千年にわたって自分たちの問題を解決するために政策を実行してきた」。

キッシンジャーにとって、中国共産党の国内統治のアプローチの変化は、世界規模のリアルポリティック(現実政治)とは切り離され、従属するものである。キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは責務を担っていると感じた。それは平和と安定を守ることである。中国の体制を転換させるような目的は全てを止めてしまうことになる」。

しかしながら、キッシンジャーは、米中両国が直面している「現在における重大な問題」に言及しているが、同時にこの問題について一般化をしている。

キッシンジャーは次のように述べている。「私たちは世界中にある全ての問題と世界中の国々の国内構造を解決することはできない。それでも国内に対しては、私たちはその方向に沿った目的を設定し、できるだけ目的を実現するように努力しなければならない」。

キッシンジャーにとって共産主義中国の残酷な暴政と悪意に満ちた反西洋イデオロギーを穏健化するよりもより優先順位が高いもの「全て」は何であろうか?経済発展によって政治改革が引き起こされることが予期されるか(ニクソンはそのように考えていた)という疑問をロイはキッシンジャーに問いかけたが、キッシンジャーはこの質問には直接答えなかった。キッシンジャーは初期に書いていたものとは違う発言を行った。

「私たちは中国を開国させた。それはロシア、ソ連についての計算という要素を加えるためだった。そして、ヴェトナム戦争とアメリカ国内の分断の時代にアメリカ国民に希望を与えることが目的だった。アメリカ政府はこれまで排除してきた要素(訳者註:中国)を含む世界平和を実現するという考えを持つようになった」。

「これらは2つの主要な目的だった。これらの2つの目的を達成できたが、それは中国側も同じ目的を持っていたからだ」とキッシンジャーは述べた。

ニクソン・イニシアティヴは、(A)ソヴィエトの攻撃から中国を守る、(B)台湾の孤立化をスタートさせる、(C)西洋諸国との貿易と投資を受け入れさせるために中国を開国させる、ことが特徴だとされていたが、これらは全て中国政府にとっても達成したい目的である。ニクソン・イニシアティヴによって、アメリカ政府は、(A)中国政府がアメリカ軍のヴェトナムからの秩序だった撤退を支援する、(B)中国政府の反米意識を減少させる、(C)可能であればソ連政府との緊張関係を緩和することを目的としていた。

キッシンジャーはニクソン・イニシアティヴによって実現したプラスの結果を高く評価している。中国は3つの目的を全て実現させ、アメリカ側は目的を何も実現させることができなかった。キッシンジャーの獲得した外交上の輝かしい業績(米中関係構築)ではなく、彼が実行した政策によって、「現在における重大な問題」が不可避的にもたらすことになった。

驚くべきことは、ニクソン以降のアメリカ大統領全員と毛沢東以来の中国の指導者全員に助言をしてきた人物が今でも米中関係に関わっているということだ。幸運なことは、トランプ大統領は自分自身のやり方を始めようとしている。トランプは元々ニクソンが考えていた中国のプラスの変化をもたらそうとしている。

※ジョセフ・ボスコは2005年から2006年にかけて国防総省中国部長、2009年から2010年にかけて国防総省人道援助・災害復興担当アジア・太平洋部長を務めた。ボスコは米韓研究所と台湾・アメリカ研究所の非常勤研究員、大西洋協会アジア太平洋プログラム非常勤研究員、戦略国際問題研究所東南アジアプログラム非常勤研究員を務めている。国際台湾研究所の顧問も務めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
chugokuha21seikinohashatonaruka001
中国は21世紀の覇者となるか?―世界最高の4頭脳による大激論

zentaishuginochugokugaamericawouchitaosu001
全体主義の中国がアメリカを打ち倒すーーディストピアに向かう世界

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカは中国のここまでの台頭をどうして許したのか、そして、どうして台頭を許しておいて紛争を起こすのか、ということは不思議だ。日本は高度経済成長の後、アメリカから鼻っ柱を殴りつけられヘナヘナとなってしまった。それどころか、日本の良さをことごとく消される形で、「アメリカ化」が進められている。日本の現状はアメリカの劣化版だ。ただまだ医療保険制度はアメリカよりも進んでいるが(世界の先進国並みであるというだけのことだが)、これもいつまでもつか分からない。
xijinpinghenrykissinger20191122001

 中国のここまでの台頭をアメリカ側で許容したのはヘンリー・キッシンジャー元国務長官だと言われている。そのためにアメリカでは彼に対しての恨み言も噴出している。しかし、中国の伸長を受け入れて、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを少なくするというリアリストであるキッシンジャーが両国の間をうまく取り持ってきた。

 キッシンジャーは9月に続いて今週末も中国を訪問した。96歳のキッシンジャーにとってはいくら最高級のファーストクラスでの行き来とは言え、十数時間も飛行機に乗っているのは辛いことだろう。それでも何とか耐えているのは、自分の実入りということはあるだろうが、米中の間で小競り合いは会っても前面衝突まではいかせないという信念があるからだろう。
wanquishanhenrykissinger20191123001

 キッシンジャーは訪中で習近平国家主席と王岐山副主席と会談を持った。習主席と王副主席のコンビで中国の舵取りが行われている。キッシンジャーは衝突してはいけないということを中国側に説き、アメリカに帰れば、おそらくドナルド・トランプ大統領か、ジャレッド・クシュナー上級顧問に会って訪中について話をするだろう。現在米中貿易交渉においてアメリカ側で動いているウィルバー・ロス商務長官やロバート・ライトハイザー米国通商代表よりもキッシンジャーの方が格上で、米中両国の首脳クラスに対して細かい話ではなく、大枠の話、グランドデザインを提示できる立場にある。

 米中は対等な交渉を行える関係にある。日本はそれよりも大きくランクが下がる。私たちはそのことを自覚しなければならない。そして、米中の動きを注視しながら、日本の利益はどこにあり、どのようにすれば最大化できるかということを考えねばならない。昔は新年になると、日高義樹ハドソン研究上研究員が司会として出演していたテレビ東京系の番組にキッシンジャーが出てきて、日本の位置の重要性というようなことをお世辞で言ってくれていた。しかし、今やそのような厚遇はない。日本は米中間で行われているビリヤードのボールの1つに過ぎない。両国の思惑に翻弄されるのだが、何の思慮もなく、ただキューで突かれたり、他のボールにぶつかったりするだけでは芸がない。何とか自分たちの意思で動けるようになる、これが重要だ。そのためには現状をしっかり把握する必要がある。

 米中間を取り持つ人物はキッシンジャーが死亡した後は、“チャイニーズ”・ポールソンと呼ばれる、ハンク・ポールソン元財務長官ということになるだろう。しかし、どれだけの影響力を持つのか、キッシンジャー並みに持てるのかということになるとはなはだ心もとない。キッシンジャー亡き後、米中両国は両国の関係の安定装置を組み込んだ形の構造にしなければならない。

(貼り付けはじめ)

習近平主席、キッシンジャー氏と会見 中米の戦略的意思疎通強化を強調

2019/11/23 09:10 (JST)

©新華社

https://this.kiji.is/570764839332054113?fbclid=IwAR23Bjb4CELvVrV7PfJ_ZwXsQnVIpRkEcDJP5Ayo-CLqA3-NU2DHIZjznpg

 【新華社北京1123日】中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席は22日、北京の人民大会堂で米国のキッシンジャー元国務長官と会見した。

 習近平氏は次のように指摘した。現在、中米関係は鍵となる時期を迎え、いくつかの困難と試練に直面している。双方は戦略的な問題について意思疎通を強化し、誤解や誤った判断を防ぎ、相互理解を増進すべきだ。双方は両国人民と世界人民の根本的利益を出発点として、互いに尊重し、小異を残して大同を求め、協力・ウィンウィンを図り、中米関係を正しい方向に前進させなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。この50年間、米中関係には起伏や変化があったが、全体的には一貫して前向きである。現在、時代背景が変わり、米中関係の重要性はさらに際立っている。双方は戦略的意思疎通を強化し、意見の相違を適切に解決する方法を見いだすことに努め、各分野の交流・協力を引き続き展開していく必要がある。これは両国と世界にとって極めて重要である。

=====

王岐山副主席、米国のキッシンジャー元国務長官と会見

20191124 9:44 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]

AFP通信

https://www.afpbb.com/articles/-/3256325

 【1124 Xinhua News】中国の王岐山(Wang Qishan)国家副主席は23日、北京の中南海で米国のヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger)元国務長官と会見した。

 王岐山氏は次のように述べた。中米関係は世界的な影響力を持っており、双方の共通点は相違点をはるかに上回っている。協力すれば双方に利益をもたらし、争えばともに傷つく。協力は双方の唯一の正しい選択である。中米双方は習近平(Xi Jinping)主席とドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が複数回にわたる会談で決めた方向と原則に基づき、より広い視野とより長期的な観点に立ち、両国関係における一連の重大な戦略的問題を客観的かつ理性的に考え、不動心を保ち、困難を克服し、試練に立ち向かい、協調・協力・安定を基調とする中米関係を共同で推進していかなければならない。

 キッシンジャー氏は次のように表明した。米中関係を把握、処理するには幅広い思想と歴史的・哲学的な思考が必要で、対話と意思疎通は両国関係の基礎である。双方が全力を尽くし、両国関係の発展のために創造的で前向きな成果をもたらすことを希望する。(c)Xinhua News/AFPBB News

=====

習近平中国主席:中国政府は貿易合意を望んでいるが、しかし「反撃」をすることを恐れない(Chinese President Xi: Beijing wants trade deal, but not afraid to 'fight back'

マーティー・ジョンソン筆

2019年11月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/trade/471631-chinas-xi-china-wants-trade-deal-but-not-afraid-to-fight-back

習近平中国国家主席は金曜日、中国は現在もアメリカとの貿易に関する合意のために努力を続けたいが、アメリカに対して「反撃」をすることを恐れはしないと述べた。CNBCが報じた。

習主席はアメリカの経済界代表団に対して次のように述べた。「私たちが常に述べているように、私たちは貿易戦争を始めることは望まないが、それを恐れはしない。必要となれば反撃もするが、貿易戦争にならないように努力を続けたい」。

習主席は続けて「私たちは相互尊重と公平を基にしてフェーズ・ワンの合意に至るように努力したい」と述べた。

アメリカからの代表団の中には元アメリカ政府高官が複数参加しており、代表格としては、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官とハンク・ポールソン元財務長官が挙げられる。

貿易合意をめぐる米中両国のトーンは最近になって肯定的になっているようであるが、「フェーズ・ワン」の貿易協定の詳細については現在も曖昧なままだ。

これまでの18カ月、中国とアメリカは貿易戦争に突入した。両国はそれぞれの製品に対して数十億ドル規模の関税引き上げを複数回実施してきた。.

貿易交渉は進んでいるように見えるが、トランプ大統領は翌月には中国製品1600億ドルぶんに新たな関税を課す予定となっている。

=====

キッシンジャーは「中国とアメリカは冷戦の途中にある」と懸念を表明(Kissinger warns China, US are in 'foothills of a cold war'

ジョン・バウデン筆

2019年11月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/471460-kissinger-warns-china-us-are-in-foothills-of-a-cold-war

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は木曜日、世界で1位と2位の経済大国の間で様々な紛争が起き、世界規模で緊張関係を深刻化させている中で、アメリカと中国は冷戦に向かって進んでいると懸念を表明した。

ブルームバーグ・ニュースは、北京のニュー・エコノミー・フォーラムで講演を行い、米中両国は双方の主張と立場の違いを理解するために「努力」することを合意すべきだと主張した、と報じた。

キッシンジャーは次のように述べたと報じられている。「私の考えは以下の通りだ。緊張関係が深刻化している時期には緊張関係の政治的な理由は何かを理解し、双方がその理由を解消するために努力することこそが重要だ。現状は手遅れになりつつある。それは米中両国が冷戦に向かう途中にあるからだ」。

キッシンジャーは更に、アメリカと中国との間で継続されている貿易交渉について言及し、両国経済に大きな影響を与えてきた1年以上続く貿易戦争を終了させるための合意に達するようにすべきだと主張したと報じられている。

キッシンジャーは「貿易交渉は政治に関する議論の小さな始まりに過ぎないということは誰も分かっている。私は貿易交渉が成功して欲しいし、その成功を私は支持している。また、政治に関する議論が実現することを望んでいる」と述べた。96歳になるキッシンジャーは1973年から1977年にかけて国務長官を務めた。

アメリカと中国は2018年半ばごろから知的財産権侵害をはじめとする諸問題をめぐって貿易に関して紛争を起こしている。その結果としてそれ以降の数カ月で数度の関税引き上げと報復的関税引き上げが続いている。

アメリカ政府と中国政府との間の交渉はいまだに包括的な合意に達していない。今年初めには合意に達すると見られていた。

米中両国は南シナ海の領有権争いに関して異なる立場に立っている。中国は南シナ海に人工島を建設しその領有権を主張し、アメリカは南シナ海の様々な航路のパトロールを行っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 今回は2018年の世界経済GDPについての記事をご紹介する。世界各国のGDPを大きさに比例させて、見やすくしたヴィジュアルがあり、「この国はこれくらいなのか」と興味を持ってみることが出来る。

 ここで使われているのは、購買力平価GDPと一般的なGDPだ。 

購買力平価(Purchasing Power Parity)は、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという理論だ。有名なのは、ビックマック指数だ。これは世界各国に展開しているハンバーガーのマクドナルドで売っているビックマックの値段がいくらになっているのかを基準にして計算している。購買力平価GDPは各国の物価を計算に入れた為替レートの対ドルで計算をしたものだ。

2018gdpatppp001 

 購買力平価のレートと市場でのレートで米ドルと人民元を見てみると、人民元は実際以上に安く誘導されているということになる。購買力平価GDPで計算すると、2014年以降は、中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国ということになる。しかし、実際のレートで計算すると、アメリカが最大の経済大国であることは変わらない。

2018gdp001 

 中国も経済成長をし、物価が上がり、人々の生活水準も上がっていくとなると、通貨の力も強くなるし、そうなればいつまでも安い方向を維持することは難しい。日本がそうであったように、通貨の価値は上がっていく。対ドルで元高になっていく。
2019gdpppp002 

 中国の経済成長率が鈍化していると言っても6%以上を維持している。経済規模を考えると、アメリカは4%以上の経済成長をしなければ、中国に差を縮められる。アメリカの最近の経済成長率は2%台なので、中国が差を縮めている。

 日本を見てみれば一般的なGDPでは3位(5.79%)で4兆9700億ドル(約537兆円)、購買力平価GDPでは4位(4.02%)で5兆4800億ドル(約592兆円)である。購買力平価GDPの方が高いということは、円が安く誘導されているということを示している。日本は世界第2位の経済大国(1968年に当時の西ドイツを抜いて2位に)で、アメリカを凌駕すると言われていたバブル時代はもう30年も前の話で、それから衰退が続いている。

 世界経済の全体像をつかむということで今回ご紹介する記事は役立つものになっている。

(貼り付けはじめ)

購買力を考慮しながら世界経済を可視化する(Visualizing The World Economy When Purchasing Power is Taken into Account

2019年9月12日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-ppp-2018

異なる国々の経済を比べる際に、最も一般的な方法は「購買力平価(purchasing power parity)」を使うことだ。購買力平価(PPP)は世界各国の経済を「財のバスケット」内部の様々な価格を平準化することで比較することだ。言い換えるならば、購買力平価は、国家間の生産を比較する際に、生活水準の違い(1カートンのミルクの値段の違いなど)を考慮に入れるということだ。これを一歩進め、購買力平価GDPで世界各国のGDPを可視化する。このチャートでは、国際的なドルを使用する。これはアメリカ国内のドルの購買力と同じ購買力を持っている。

・購買力平価GDPの測定は、各国の経済を比較するために、市場の為替レートではなく、世界中の生活費のコストを考慮に入れている。

・2018年の世界の購買力平価GDPは136兆4800億ドルだ。

・アジア諸国は購買力平価GDPで世界の40%以上を占めている。

・米中両国は購買力平価GDPで世界の3分の1を占めている。

・今回の可視化に使われている情報は世界銀行からのものだ。最新の数値は2018年のものだ。各国のサイズは購買力平価GDPの大きさに比例している。各国は属する大陸で色分けされている。そして、世界の生産に対してとの地域がどれくらい寄与しているかがわかる。

●購買力平価GDPから見る世界トップ10

1. 中国:25兆3600億ドル(約2739兆円)[18.58%]

2. アメリカ:20兆4900億ドル(約2213兆円)[15.02%]

3.インド:10兆5000億ドル(約1134兆円)[7.69%]

4.日本:5兆4800億ドル(約592兆円)[4.02%]

5.ドイツ:4兆5100億ドル(約488兆円)[3.30%]

6.ロシア連邦:3兆9900億ドル(約431兆円)[2.92%]

7.インドネシア:約3兆4900億ドル(約377兆円)[2.56%]

8.ブラジル:約3兆3700億ドル(約364兆円)[2.47%]

9.イギリス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

10.フランス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

先月、私たちは現在のアメリカ・ドル表示の各国のGDPをイラストと示す可視化したものを発表した。このGDPは生活にかかるコストを入れていない。また、それぞれの国家の生産高を比較するために市場における為替レート使用している。世界の名目GDP(右側)と購買力平価GDP(左側)のいくつかの違いに気づくだろう。明らかなことは、アメリカは世界の名目GDPで最大のシェアを占めているが、中国は購買力平価GDPで最大のシェアを占めている。

世界銀行のデータは、アメリカの購買力平価GDPは、大恐慌時代以来毎年成長していることを示している。しかし、ここ10年間の拡大の後、アメリカの経済成長は鈍化している。しかし、雇用の成長によって経済の安定は保たれ、GDPは拡大し続けると見る専門家たちもいる。

同様に、中国の景気後退は国際的な関心を集めている。特に輸出量の減少に人々の目が向いている。中国の中央銀行は貸出を促進し、生産を増加させるために預金準備率を低下させることで対応を行っている。世界規模の景気後退を示す兆候はより多くなっている。日本とインドのような国々の経済指標は私たちに印象を残すことに失敗している。世界経済は成長を続けているが、様々な指標の動向は変化の兆しを示している。

世界経済のGDPと購買力平価GDPの違いについて読者の皆さんは驚いただろうか?コメント欄で教えて欲しい。

=====

世界の86兆ドル経済を一つのチャートで可視化する(The World’s $86 Trillion Economy Visualized in One Chart

2019年8月15日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-2018

世界のGDPは堅調に成長し、2018年には6.9%の成長率を記録した。全体で2017年の80兆2000億ドルから85兆8000億ドルに増加した。この成長の半分は世界最大の経済大国2か国から来ている。アメリカは20兆5000億ドル(2017年に比べて5.4%増)、中国は13兆6000億ドル(10%増)となった。しかし、世界規模での景気後退の恐怖は高まっている。世界第1位と第2の経済大国同士が経済における緊張関係を深刻化させていることがその原因となっている。

・アメリカは今でも世界最大の経済大国であり、世界のGDPの23.9%を占めている。

・中国は世界第2位の経済大国であるが、最近の四半期においては約30年間で最も遅い経済成長ペースを記録した。

・最新の世論調査で、経済学者の半分が来年までにアメリカ経済は後退すると予測している。

・アメリカと中国との間の貿易摩擦は解決しておらず、投資家たちは世界経済の成長について悲観的になっている。

・私たちのデータは世界銀行の2018年版世界GDP数値から取っている。それぞれの国はGDPの大きさで示されている。それぞれの国は地域別にまとめられ、色分けされている。2017年からどのように変化死体を見る場合には、HowMuch’s 2017 analysis of world GDP.をチェックして欲しい。

GDPから見る世界のトップ10

1. アメリカ:20兆4900億ドル(約2200兆円)[23.89%]

2. 中国:13兆6100億ドル(約1470兆円)[15.86%]

3.日本:4兆9700億ドル(約537兆円)[5.79%]

4.ドイツ:4兆ドル(約432兆円)[4.66%]

5.イギリス:2兆8300億ドル(約306兆円)[3.29%]

6.フランス:2兆7800億ドル(約300兆円)[3.24%]

7.インド:2兆7300億ドル(約295兆円)[3.18%]

8.イタリア:2兆700億ドル(約224兆円)[2.42%]

9.ブラジル:1兆8700億ドル(約202兆円)[2.18%]

10.カナダ:1兆7100億ドル(約185兆円)[1.99%]

アメリカと中国両国で世界GDPの約40%を占めている。それぞれ20兆5000億ドルと13兆6000億ドルを記録し、世界経済の23.9%と15.9%をそれぞれ占めている。両国の経済力と深刻化する緊張のために、私たちのアナリストたちは両国に注意を払っている。

全米ビジネス経済学会は280名のビジネス経済学者を対象に調査を実施した。調査対象者の半数は来年末までにアメリカ経済は後退すると予測していると答えた。ゴールドマンサックスとJPモルガンに所属しているアナリストたちは2019年第二四半期の経済成長は2%以下に減速すると見ている。景気後退が予測される理由は何だろうか?経済学者たちは景気減速が予想される多くの要素を指摘している。現在のアメリカ経済において労働市場は堅調であったが、後退の兆候が見え始めている。連邦準備制度理事化による予想される金利引き上げも景気後退の兆候となっている。アメリカにおける経済格差の拡大もまた後退を示す要素となっている。1989年から2018年にかけてアメリカ国民の下半分は9000億ドルを失った。これは経済全体に大きな影響を与えている。

しかし、世界中の報道機関が報じている要素は関税が与える衝撃と中国とアメリカとの間での貿易戦争勃発の可能性である。米中両国の経済は既に影響を受けている。数字がそれを示している。中国の2019年第二四半期のGDP成長率は6.2%に鈍化した。この数字は1992年以降最も小さい成長率となった。今年7月の中国の工業生産高の成長率は、昨年に比べて4.8%に鈍化した。この数字は2002年2月以降で最も弱いペースとなった。アメリカと中国が貿易面での相違をすぐに乗り越えることが出来るか確かではない。そして、市場は長期の難局を示しているように見える。このように先行き非案の兆候はあるが、経済学者の中には景気後退が不可避だと確言できないとしている人々がいる。こういった人々は、オーストラリアとイギリスのような国々の経済は何十年単位で安定的に成長していると述べている。

各国や各地域のGDPについて読者の皆さんを驚かせたのはどんなことだろうか?アメリカもしくは中国は景気後退に向かって進んでいると考えるだろうか?景気後退は世界経済全体にどのような影響を与えるだろうか?コメント欄で考えを教えて欲しい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 日本時間の日曜日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍特殊部隊がシリア北部を急襲し、イスラミック・ステイト(ISIS)指導者アブー・バクール・アル=バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi、1971-2019年、48歳で死亡)を自爆に追い込み、死亡を確認したと発表した。
abubakral-baghdadi100
バグダディ
ISISは2014年からシリアとイラクの一部を占領・実効支配し、イスラミック・ステイトの樹立を宣言した。その創設者にして指導者のバグダディが殺害されたということは大きなニュースとなった。

 バラク・オバマ政権下の2011年にはテロ組織アルカイーダの指導者オサマ・ビンラディンがパキスタンの潜伏先で同じく米軍特殊部隊の急襲を受け殺害された。今回も米軍特殊部隊の作戦によってテロ組織の指導者が殺害されるということになった。
donaldtrumpinsituationroom20191026001
作戦の様子を見守るトランプ大統領

 アメリカをはじめ関係諸国が行方を追っていたバグダディであったが、シリア北部で米軍特殊部隊に追い詰められ、最後は洞窟の中で自分の子供3人と共に自爆をするに至った。バグダディに関しては身柄を拘束して裁判を受けさせる(国際法廷になるか、シリアやイラクの法廷になるかは分からない)ようにすべきであったが、バグダディは自爆したと発表されている。アメリカ軍特殊部隊の動きが降伏へと誘導するのではなく、自爆に誘い込むようなものであったとするならば問題である。また、バグダディに付き従った人間たちを「多数」殺害したというのも降伏や投降の意思を示した者までも殺害したとなるとこちらも問題だ。

 私はISISの肩を持たない。しかし、「正義をくだす」ためにはそれなりの手続きが重要であって、そこに瑕疵があれば正義とは言えなくなる危険性が高いということを言いたい。ただ殺害すれば済むという問題ではない。

 トランプ大統領の発表では作戦時の様子にも触れられていたが、非常に生々しい言葉遣いであった。また、バグダディと「犬」を結び付ける表演が複数回使われていた。バグダディは洞窟の中で犬に追い回された上に、「犬のように亡くなった(died like a dog)」「犬のようにクンクンと怯えて鳴いていた(whimpering)」とトランプ大統領は発言している。これは、トランプ大統領独特の言語感覚ということもあるが、バグダディは人間ではない、だから裁判なんてしちめんどくさい手続きなしで殺してもいいんだ、ということを聴衆に刷り込ませたいという意図があってのことだろう。

 トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して作戦上の協力を感謝し、クルド人勢力からは軍事上の協力はなかったが有益な情報提供があったことを認めた。ここから考えられるのは、ロシア、シリア、トルコからら軍事上の支援と情報提供があったということだ。2つの協力があったから謝意が表され、クルド人勢力に関しては情報提供があったことを認めるということになったのだと思う。

 従って、今回の作戦はアメリカ軍単独ではなく、ロシア軍、シリア軍、トルコ軍の共同作戦で、アメリカ軍に華を持たせる形でバグダディの追跡が任されたということだと思う。アメリカ(トランプ大統領)は、ロシア、シリア、トルコに対して大きな恩義、借りを作ったということになるが、これはアメリカ軍がこの地域から撤退してももう大丈夫という正当化と、この地域なロシアに任せますよという意思表示であり、最後に華を持たせてもらって出ていきやすくなったということだと考えられる。アメリカは海外のことに関わらず、国内の問題解決を優先するという「アメリカ・ファースト」にかなっているということになる。

 今回の作戦がこの時期に実施されたのはアメリカ軍の撤退を正当化するためのものであり、かつロシアがこの地域の担任となることを認めることもあり、米露の利害が一致したために実行されたと考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲によってISIS指導者が死亡と発表(Trump announces death of ISIS leader in US raid

モーガン・チャルファント筆

2019年10月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/467620-trump-isis-leader

日曜日、トランプ大統領はイスラミック・ステイト(ISIS)の指導者アブー・バクール・アル=バグダディが北部シリアにおいてアメリカ軍の急襲によって殺害されたと発表した。

トランプ大統領はホワイトハウスのイーストルームにおいて声明を発表した。声明の中で大統領は「昨晩、アメリカ合衆国は世界ナンバーワンのテロリスト指導者に正義(の鉄槌)を下した。アブー・バクール・アル=バグダディは死亡した」と述べた。

アル=バグダディの死はテロリスト集団であるISISとの戦いにおける重要な象徴的な勝利を示すものであり、捕捉が難しいISIS指導者アル=バグダディを追跡するという数年間の努力が結実したことを意味する。アル=バグダディはこれまで何度か殺害されたと報じられたことがあった。

トランプ大統領は「危険かつ大胆な」作戦の詳細を説明した。バグダディはアメリカ軍特殊部隊によってトンネル内に追い詰められた。この時3人の子供を連れていた。そして、自爆用のヴェストを爆発させた。トランプ大統領は爆発後の残骸などを調査、テストし、バグダディが殺害されたことを示す証拠が出たと発言した。

トランプ大統領は「この極悪人は大変な恐怖の中で、完全なるパニックと恐怖の中で、最後の瞬間まで何とか他人になりすまそうともがいた。アメリカ軍が彼を完全に屈服させることに恐怖し続けた」と述べ、バグダディは「クンクンと情けない鳴き声を出しながら(whimpering)」死んでいったと発言した。

トランプ大統領はホワイトハウスのシチュエイション・ルームで作戦の「大部分」を見ていたと発言した。しかし、どこを見てどこを見なかったかの詳細については明らかにしなかった。ホワイトハウスは大統領の発表の後にその時の様子を撮影した写真を公開した。土曜日のシチュエイション・ルームの様子は、大統領の傍らにはマイク・ペンス副大統領、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マーク・エスパー国防長官と軍部の最高幹部たちが座っていた。

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲は2時間ほどで終了し、アメリカ軍はISISに関連する「非常に重要な情報を含む取り扱いに注意を要する文書や物資」を押収したと発表した。トランプ大統領は作戦中にアメリカ軍に死者は出ず、アル=バグダディの追随者たちの多くが殺害されたと発表した。

トランプ大統領は今回の作戦のことを3日前から知らされていたと述べ、連邦議会の指導者たちには、「リークされる」という恐れから伝えなかったとも発言した。

トランプ大統領は「リークによって作戦に参加した米軍の人員全てが殺害されることもあるだろうと考えた」と発言した。しかし、作戦終了後の日曜日にリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリチャード・バー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)と会談を持ったとも述べた。

今回の発表はトランプ大統領にとって追い風となるだろう。ここ数週間、トランプ大統領は北部シリアからの米軍の撤退という決断に対して様々な角度から検証されてきた。批判する人々は、米軍の撤退によって、アメリカが盟友関係を築いてきたクルド人勢力に対してトルコ軍の軍事作戦が推進されると主張している。アメリカ軍の撤退によってISISが勢力を回復するのではないかと多くの専門家が懸念を表明していた。

トランプ大統領は日曜日、「昨晩はアメリカ合衆国と世界にとって素晴らしい夜となった。多くの人々の困難や死の原因となった野蛮な殺人者は荒々しく消滅させられた。バグダディは犬のように死んだ。臆病者のようにして死んだ。世界はこれまでよりもより安全な場所になった。アメリカに神のご加護がありますように」と述べた。

アル=バグダディの死はISISに対して大きな一撃を与えた。ISISは既にアメリカが主導する連合諸国によって縮小させられている。しかし、バグダディの死がISISの完全なる消滅を意味するものではない。

トランプ大統領は、アル=バグダディの死は、アメリカの「各テロリスト集団の指導者に対する飽くなき追跡とISISやそのほかのテロリスト組織の完全な敗北を確かなものとするための努力」が証明されたものだと高らかに宣言した。

「アメリカ軍が北部シリアでアル=バグダディを標的にした急襲作戦を実行した、そして武装勢力の指導者は殺害されたものと考えられる」という内容の報道が出始めたのが土曜日の夜遅くだった。トランプ大統領は内容の発表をもったいぶり、ツイッター上に「何かとてつもなく大きなことが起きた!」とだけ書いた。

トランプ大統領は日曜日にアメリカ軍の人員が安全に帰還した後でツイッター上に書き込みを行ったが、それはニュースメディアを警戒してのことだったと述べた。

トランプ大統領はロシア、トルコ、シリア、そしてイラクに対して、作戦への協力を感謝した。また、クルド人勢力が有益な情報を提供したことを認識していると述べた。トランプ大統領は、クルド人勢力は作戦において軍事的な役割を果たすことはなかったと述べた。大統領は作戦に参加したアメリカ軍と情報・諜報機関の人員に謝意を表した。

トランプはまた北部シリアからの米軍の撤退という自身の決断を擁護し続けた。とることシリアの国境地帯に米軍を駐屯させ続けることはアメリカの利益にかなうものではないと主張した。

トランプ大統領は「私たちはこれから200年もシリアとトルコの間に米軍を駐屯させたいなどとは望まない。シリアとトルコはこれまで数百年もの間戦ってきた。(だから勝手にすれば良いが)私たちは出ていったのだ」と述べた。それでも油田がISISの武装勢力の手に落ちないようにするためその地域にアメリカ軍を残しているとも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ