古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 

 今回は、ヘンリー・キッシンジャーによる北朝鮮問題の分析記事をご紹介します。北朝鮮は金正恩委員長の指導の下、ICBMを開発し、アメリカの領土を射程に捉えたという報道がなされています。ICBMは第二次世界大戦中にドイツが開発したV(報復)1ロケット(イギリス国内を攻撃した)がその原型と言われています。世界大戦から72年も経過し、その当時、最先端技術であった原子爆弾も長距離攻撃ミサイルも作ろうと思えばどの国でも作ることが可能なものとなりました。

 

 北朝鮮はアメリカとの交渉を求めています。6か国協議という枠組みはありますが、北朝鮮は多国間協議の枠組みには何も決める力がないのだから、アメリカとの直接交渉しかないと考えています。韓国や日本、ロシアや中国を無視している状況です。一方、アメリカはトランプ大統領が激しい言葉遣いをしていますが、ティラーソン国務長官は交渉最優先という立場を取っています。

 

 北朝鮮とアメリカは両国ともに交渉を求めていますが、北朝鮮はアメリカとの直接交渉、アメリカは中国に北朝鮮への対応を求めつつ交渉は6か国協議で、とそれぞれ異なる主張を行っています。

 

 ヘンリー・キッシンジャーがトランプ政権の外交指南役であることはすでにこのブログでも数度にわたってご紹介しました。キッシンジャーの考えはトランプ政権の外交に反映されるのですから、彼の考えを知っておくことは重要です。

 

キッシンジャーは北朝鮮の「非核化(denuclearization)」を目的としています。そのためには武力行使という選択肢を完全に排除しないとしながらも、交渉を優先するという立場を取っています。そして、キッシンジャーは北朝鮮の体制転換を求めず、核兵器を放棄した場合に、その機に乗じて北朝鮮を攻撃しないということを国際社会が約束することを条件にすべきだと述べています。

 

キッシンジャーは中国の存在と思惑を考慮しながら、アメリカと中国が衝突することなく、非核化(北朝鮮だけでなくアジア地域全体)という共通の目的を達成すべきだとしています。

 

私は北朝鮮という国家は、力の空白の中に存在する稀有な国であると考えています。野球で打球が野手の間に落ちてしまうということがありますが、野手の一人が無理をすれば打球をキャッチできるのに、誰も怖くて無理をしないために結局キャッチできない、ということになります。北朝鮮はまさにこのような打球であると考えます。

 

北朝鮮が存在することで、中国はアメリカと直接陸上で対峙しなくて済むという状況にあります。ロシアも同様です。長年中国の圧力を受けるという歴史を経験してきた朝鮮半島の国家である韓国からすれば、逆のことが言えます。そうした中で、どの国も「北朝鮮は存続して欲しいが、核兵器は持ってほしくない」と考えることになります。

 

私は最近、韓国の大学教員の方と話をしました。北朝鮮について質問すると、「韓国と北朝鮮は、言葉は同じだが、全く異質の国同士となってしまった。これを急に統一することはかえって危険である。韓国には急激な統一に耐えられるほどの経済力もない。また、国民の中にも北朝鮮と統一したいと考える人はそう多くない」と答えました。

 

私の中には、朝鮮半島の分断状態は良くないことなので出来るだけ早く統一すべきだという考えが前提にありましたが、「二国共存状態(two-state solution)」ということも考慮しなければならないのだと考えを改めました。

 

北朝鮮としてはアメリカに対して、体制保障と不可侵を求めています。そのための交渉のカードとして核兵器やICBMを開発しています。朝鮮半島問題について考える場合に、「朝鮮半島は統一されるべきだ、それも韓国に吸収される形でというのが望ましいし、それ以外は無理だ」という考えが前提となりますが、統一ではなく、まずは二国共存で、北朝鮮をより開放された、中国のような国にすると考えると選択肢が広がり、短期的には危機が回避されるではないかと思います。

 

(貼りつけはじめ)

 

「北朝鮮危機をどのように解決するか」

―アメリカ政府と中国政府との間の理解が不可欠の前提条件である。日本政府と韓国政府もまた重要な役割を果たすことになる

 

ヘンリー・A・キッシンジャー筆

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

2017年8月11日

https://www.wsj.com/articles/how-to-resolve-the-north-korea-crisis-1502489292

 

30年以上にわたり、国際社会は北朝鮮の核開発プログラムに対して、非難と有罪判決宣告の引き伸ばしという矛盾した対応を取ってきた。

 

北朝鮮政府の無謀な行為は強く非難されている。核兵器開発に向けた動きは受け入れられないという警告が国際社会から発せられている。しかし、北朝鮮の核開発プログラムは加速される一方だ。

 

2017年8月5日に国連安全保障理事会によって北朝鮮に対する制裁決議が満場一致で可決された。これは大きな前進を意味する。もっとも、合意されるべき決議はまだ議論されたままで残っている。しかし、大きな一歩は踏み出された。

 

しかし、北朝鮮は大陸間弾道ミサイルの発射実験を成功させた。これによって、更なるごまかしを行う余地が失われることになった。

 

金正恩が中国とアメリカによる反対と国連安保理の満場一致の制裁決議があるにもかかわらずに核開発プログラムを推進するならば、重要なプレイヤーである諸大国間の地政学的な関係を変化させることになるだろう。

 

国際社会が困惑している間に北朝鮮が全面的な核攻撃能力の開発を完成させてしまったら、アジア地域、特にアメリカの同盟国である日本と韓国におけるアメリカの核の傘の信頼性を一気に失わせるという深刻な事態を招来することになるだろう。

 

北朝鮮は長年にわたり核開発を行ってきた。そして、北朝鮮による核の脅威がアメリカの領土に到達するということになり、北朝鮮の核兵器が存在することによる無秩序が生み出される可能性も出てきている。北朝鮮が実用に耐えるICBMを持つには、弾頭の小型化、ミサイルへの弾頭の設置、複数のICBMの製造が必要であり、これにはしばらく時間がかかる。

 

しかし、アジア諸国は、北朝鮮が既に開発している短距離、中距離のミサイルによる攻撃という脅威に直面している。

 

この脅威が増していくと、ヴェトナム、韓国、そして日本といった国々において自国の防衛のために核兵器を開発するという動機が急速に大きくなっていくだろう。これは、アジア地域や世界全体にとって良くない転換点ということになる。

 

北朝鮮が既に開発した核技術から後退させることは、更なる開発を防ぐことと同じく重要になる。

 

アメリカ単独、もしくは複数の国による対北朝鮮外交はこれまで成功していない。それは主要諸国の目的を一本化させることができないためだ。特に中国とアメリカとの間で北朝鮮の核兵器開発を実際にどのように阻止するかという点で合意が形成されていないためだ。

 

アメリカは北朝鮮に対して核開発プログラムを終了することも求めている。しかし、アメリカからの要求は何らその効果を示していない。軍部を含むアメリカの指導者たちは、軍事力の行使には消極的だ。ジム・マティス国防長官は朝鮮半島における戦争は「破滅的なものとなる」という見通しを述べた。

 

北朝鮮では数千本の大砲が韓国に向けて据えられている。それらは韓国の首都ソウルを射程内に捉えている。これは、ソウルと周辺地域に住む3000万人の人々を人質にとるという北朝鮮の戦略を反映している。

 

アメリカ単独による先制軍事行動は中国との衝突を引き起こすという大きなリスクをはらんでいる。中国は一時的にはアメリカの軍事行動を許容するだろうが、それでも中国の鼻先でアメリカが決定的な結果をもたらそうとする戦略を実行することを我慢して受け入れることはないであろう。1950年代の朝鮮戦争において中国は戦争に介入したという事実は中国がアメリカと衝突する可能性があることを示している。

 

軍事力の使用は注意深く分析されねばならない。そして、軍事力使用に関する言葉遣いもまた抑制的でなければならない。しかし、軍事力の行使の可能性を排除することはできない。

 

これまで述べたような考えを前提にして、トランプ政権は中国に対して、北朝鮮の非核化を実現するための外交的な努力を行わせようと試みている。こうした努力はこれまでのところ、部分的にしか成功していない。

 

中国はアメリカが持つ核兵器の拡散に関する懸念を共有している。実際のところは、中国こそは北朝鮮の核兵器によって最も影響を受ける国なのである。しかし、アメリカは北朝鮮の非核化という目的を明確に示しているのに対して、中国は北朝鮮の非核化がもたらす政治的な結果に直面することを嫌がっている。

 

北朝鮮は核兵器開発プログラムに国の資源の多くの部分を投入している。その割合は国力に釣り合わないものだ。そうした中で、核兵器開発プログラムの放棄、もしくは実質的な削減や後退は北朝鮮国内で政治的な混乱を引き起こし、更には体制転換にまで至る可能性がある。

 

中国はこのことをよく理解している。従って、最近の外交上の大きな成果としては、中国が原則として北朝鮮の非核化を支持しているということを中国が明確に示したことだ。しかし、同時に、北朝鮮国内の分裂や無秩序状態が起きることは、中国にとっての2つの大きな懸念を引き起こす。

 

一つ目の懸念は北朝鮮国内の危機が、中国の政治と社会に与える影響である。中国の1000年に及ぶ歴史で繰り返された出来事が再び繰り返されるのではないかという懸念である。

 

二つ目の懸念は北東アジア地域の安全保障に関するものだ。中国は北朝鮮の非核化に貢献する誘因が存在する。そして、中国としては北朝鮮の非核化から朝鮮半島全体の非核化を行いたいと考えている。現実には韓国には現在のところ、核兵器開発プログラムは存在しない。計画の発表すらない。しかし、国際的な核兵器開発禁止は別の問題となる。

 

中国は非核化につつく北朝鮮の政治的な発展についてもある程度の利害関係を持っている。それは、朝鮮半島において二国共存状態を維持するか、統一を行うか、といことであり、北朝鮮地域における軍事力の展開に制限をするかどうか、ということでもある。

 

これまでのところ、トランプ政権は中国に対して北朝鮮へ圧力をかけるように求めてきた。アメリカは自国の目的のために中国を下請け業者のように扱ってきた。より良い、唯一実現可能なアプローチはアメリカと中国両国の努力と試みを一本化し、共通の立場に立ち、他の国々の参加を求めていくということだ。

 

「我々の目的は北朝鮮を利害関係諸国が参加する会議に出席させることだ」とアメリカ政府は何度も発表している。こうした発表は、交渉こそがアメリカの目的だという前提の存在を反映している。交渉は自国の都合の良いタイミングで行われ、交渉に相手を引きずり出す圧力とは関係なく、交渉は最終的な合意まで続けられるべきだとアメリカは考えている。

 

しかし、アメリカの外交は、過程ではなく、結果によって最終的に判断される。アジア地域の安全保障構造は危機に瀕していると考える国々とって、アメリカが「我々は自国のみの利益を求めない」と繰り返し主張するだけでは不十分なのだ。

 

どの国が、何について交渉すべきなのか?朝鮮半島の非核化にとってアメリカと中国との間の理解と同意は必要不可欠な条件となる。皮肉な展開なのは、現時点の中国がアジア諸国の会兵器開発を阻止することについて、アメリカよりもより大きな関心を持っているかもしれないということだ。

 

中国は「北朝鮮に対する圧力が不十分だ」と非難されてアメリカとの関係を悪化させてしまうという危険に直面している。北朝鮮の非核化には持続した協力が必要である。経済的な圧力だけで非核化を実現することは不可能だ。米中間の非核化以後の事態、特に北朝鮮の政治的な発展と北朝鮮領土内の軍事力展開の制限に対する共通理解と対策が必要だ。このような共通理解がなされても、既存の日本や韓国との間の同盟関係を変化させてはならない。

 

半世紀に及ぶ歴史に照らしてみると逆説的に見えるかもしれないが、このような理解こそが朝鮮半島における行き詰まりを打開する最良の方法なのである。

 

米中が目的を明確とする共同声明を発表し、暗黙の裡の行動を行うことで、北朝鮮は孤立を痛感し、非核化という結果を守るために必要な国際的な保証の基礎が確立することになる。

 

韓国と日本はこの過程において重要な役割を果たさねばならない。韓国以上に北朝鮮の核開発に最初から関与してきている国は存在しない。韓国はその置かれている地理的な位置とアメリカとの同盟関係によって、政治的な結果に対して大きな発言力を持っている。

 

韓国は外交における解決によって最も直接的な影響を受けることになるだろう。また、軍事的な不測の事態が起きた際には最も危険な状態に陥ることになるだろう。アメリカとその他の国々の指導者たちが、北朝鮮の非核化を利用することはないと宣言することは重要だ(訳者註:核兵器を放棄した北朝鮮を攻撃しないという宣言を行うこと)。韓国はより包括的で正式な考えを表明することになるだろう。

 

同様に、日本は歴史的に朝鮮半島とは1000年以上のかかわりを持っている。日本の安全保障に関する基本的な概念に照らすと、日本が自国で核兵器を所有する状態にない中で、核兵器を持つ国家が朝鮮半島に存在することを許容することはないだろう。アメリカとの同盟関係に対する日本による評価は、アメリカの危機管理において日本の懸念をどの程度考慮してくれるかということにかかっている。

 

アメリカと北朝鮮の直接交渉という代替案も魅力的ではある。しかし、アメリカの直接交渉の相手である北朝鮮は、非核化の実行について最も利益を持たず、米中間を離反させることに最大の関心を持つ。

 

アメリカが中国との間で理解を共有するためには、最大限の圧力と実行可能な保証が必要となる。そして、北朝鮮は最終的な国際会議に出席することができるようになる。

 

核兵器の実験の凍結によって最終的な非核化に向かうための一時的な解決が出来ると主張する人々がいる。この主張の通りに行うことは、アメリカとイランとの間で結ばれた核開発を巡る合意という過ちを繰り返すことになるだろう。アメリカとイランの合意は、技術的な側面のみに限定して地政学的な戦略における問題を解決しようというものだ。これが間違いだったのだ。両国の合意は、「凍結」の定義がなされ、調査手続きが確立されたが、核開発放棄の引き伸ばしに対する口実を与えることになる。同じことが米朝間の合意でも起きるだろう。

 

「北朝鮮は手続きに時間をかけて、彼らの真の目的を隠す戦術を取っている。それは、言い逃れや引き延ばし工作をして長年の悲願を達成しようとしている」という印象を持っている人も多いだろう。北朝鮮はこのような印象を人々に持たせるのは得策ではない。段階的なプロセスを踏むということは考慮するに値するアイディアかもしれないが、それはあくまで北朝鮮の核兵器能力と研究プログラムを短期間のうちに実質的に削減することにつながるものである場合に限られる。

 

北朝鮮が一時的にも核兵器能力を保持することは、永続的な危険性を構造化してしまうことになる。その危険性は次のようなものだ。

 

・貧しい状態にある北朝鮮が核技術を他国に販売することになるかもしれない。

 

・アメリカの北朝鮮の非核化に向けた努力が自国の領土を守ることにばかり集中し、実際に北朝鮮の核の脅威に直面しているアジア地域をほったらかしにしているという印象を与えてしまうことになる。

 

・他国も北朝鮮、相互、そしてアメリカに対抗し、抑止するために核兵器開発を行う可能性も出てくる。

 

・非核化交渉が進まないことに対する不満が中国との間に争いを激化させることになる。

 

・核兵器の拡散はその他の諸地域で加速するだろう。

 

・アメリカ国内で行われる議論はより対立的なものとなるだろう。

 

非核化に向けた実効性のある進歩、それも短期間での非核化こそが最もよく考えられた慎重な望ましい方向ということになる。

 

※キッシンジャー氏はニクソン政権とフォード政権で国務長官と大統領国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。

 

 今年の4月頃から、北朝鮮によるミサイル発射の危険性が連日報道され、大騒ぎとなりました。5月には北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射すると断言する有名知識人や、ミサイルが飛んできて自分の家族が被害を受けたら、日本国内でリベラルとされる人々や企業に報復活動をしてやると宣言する有名作家が出ました。

 

 また、7月に入って北朝鮮が発射したミサイルが大陸間弾道弾(ICBM)で、航続距離が伸び、アメリカ本土を射程内に収めるほどのものだという報道も出ました。アメリカ政府はこのミサイルをICBMだと認めましたが、実際に核弾頭を積んでアメリカ本土を攻撃する能力があるのかどうかについては明言していません。北朝鮮はICBMであって、実験は成功したと大々的に報じました。

 

 こうした中で、日本政府は、ミサイルが飛んできた場合に備えて国民に避難方法や退避方法を広報し、実際に避難訓練を実施する自治体もありました。姿勢を低くして、耳を覆う形をした人々の写真を見た方も多いと思います。この写真を見て、北朝鮮は危険だ、という思いを強くした人も多いと思います。

 

北朝鮮の存在を許してきたのはアメリカであり、中国です。アメリカにしてみれば、統一された朝鮮半島が出現すれば、韓国からの撤退を求められる可能性もあり、そうした動きが日本にまで波及する可能性があります。また、日中韓のブロック化ということになれば、この3カ国でアメリカ、EUに匹敵する経済力となりますから、アジアの統合が進むということも考えられます。アメリカにすれば、北朝鮮というくさびを東アジアに打ち込んでおくということが有効でした。

 

中国にしてみれば、北朝鮮がクッションになって、韓国にいる米軍と直接対峙しなくてすみます。朝鮮半島が統一される場合に、米軍の撤退が出来ればよいのですが、もうそうではない場合には、最悪の場合、国境線近くにまで米軍の駐留が行われることになれば、国家安全保障上の問題、コストも含めて負担が大きくなるので、今のように北朝鮮がだらだらと存在していくれた方が良いということになります。ロシアは旧ソヴィエト連邦時代に北朝鮮を建国させ、その後支援してきて、現在でも関係を維持しています。中国と同じように、アメリカに直接国境近くに基地を置かれたらたまらない、ということで中国と同じ利害関係を持っているが、中国よりも責任は軽いということになります。

 

 北朝鮮はそうした大国間の思惑の間に生まれたエアポケットの中に奇妙な形で存在しています。そして、現在どの国も手を出せない、野球で野手と野手の間にボールが落ちてしまう、野手同士がお見合いをしてしまってボールが落ちてしまうという状況によく似ています。北朝鮮はこうした状況を理解し、自分たちに有利になるように最大限利用しようとしています。

 

 私は北朝鮮のミサイル発射と避難訓練の様子を見ながら、桐生悠々(きりゅうゆうゆう、1873~1941年)のことを思い出していました。桐生悠々と菊竹六鼓(きくたけろっこ、1880~1937年)は戦前のジャーナリストで、冷静な目で当時の状況を見て、批判していた人物たちです。私が彼らの名前を知ったのは、山本夏彦(1915~2002年)の著作からでした。山本夏彦は繰り返し、桐生と菊竹の名前を紹介していました。

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畜生道の地球 (中公文庫)

 

 桐生悠々は、信濃毎日新聞主筆時代、1933年8月11日付の記事「関東防空大演習を嗤う」を執筆しました。この記事は、『畜生道の地球』(中公文庫、1989年、初版は1952年)の17ページから20ページに掲載されています。

 

1933年8月11日付の「信濃毎日新聞」に掲載された「関東防空大演習を嗤う」では、敵爆撃機の空襲にあえば木造家屋の多い東京は焦土と化し(その前に敵爆撃機の迎撃を行わねばならない)、灯火管制などをしても意味がなく、暗闇の中で人々がパニックを起こす、といったことが指摘されました。そして、空襲を受けないように、防備を固めねばならず、東京に空襲を受けるようになったら、どうしようもない、負けなのだということを桐生悠々は指摘しました。

 

この記事に対して、地元・長野県の在郷軍人会(軍務経験者の団体)が怒り、信濃毎日新聞の不買運動を展開すると通告し、主筆の桐生悠々の辞職を強要しました。信濃毎日新聞の社主である小坂家は圧力に屈しました。桐生は退社し、愛知県に居を移し、『他山の石』という個人雑誌を発行し続け、1941年に世を去りました。「他山の石」は時に発行禁止処分を受けることがあり、桐生が亡くなった時、最後の「他山の石」の発禁処分を伝えるために憲兵隊が訪問したという話が残っています。

 

 ミサイルが飛来してきた場合の避難訓練を見ながら、桐生悠々の論稿を思い出したのは、「ミサイルが飛んできた時点で既にダメだ、負けなのだ」ということを考えたからです。つまり、桐生悠々が述べたように、攻撃を受けた時点で負けなのだということを私も思ったからです。

 

私は副島隆彦先生から昔、「自衛隊は国民を守るための組織ではない」ということを聞いたことがありました。そんなバカな、と思ったのですが、副島先生がその根拠として挙げたのが以下の本です。

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日本国防軍を創設せよ (小学館文庫)

 

栗栖弘臣著『日本国防軍を創設せよ』(小学館文庫、2000年)という本があります。著者の栗栖弘臣(くりす ひろおみ、1920~2004年)は、統合幕僚会議議長(自衛隊制服組のトップ)を務めた人物です。戦前に東京帝国大学法学部を卒業し、内務省に入省しましたが、海軍の短期現役士官(短現、中曽根康弘元首相も経験、後に短現経験者たちが政治や経済の中枢を占め、短現マフィアと呼ばれた)で、海軍法務大尉となりました。復員後、弁護士を開業した後、警察予備隊に入隊し、保安隊、自衛隊となる中で、幹部自衛官として勤務し、最後は制服組トップとなった人物です。

 

著者の栗栖氏は自衛隊の役割について次のように書いています。

 

(貼り付けはじめ)

 

 今でも自衛隊は国民の生命、財産を守るものだと誤解している人が多い。政治家やマスコミも往々この言葉を使う。しかし、国民の生命、財産を守るのは警察の使命であって、武装集団たる自衛隊の任務ではない。自衛隊は国の独立と平和を守るのである。警察法と自衛隊法に書いてある。この場合の国とは、我が国の歴史、伝統に基づく固有の文化、長い年月の間に醸成された国が、天皇制を中心とする一体感を共有する民族家族意識である。決して個々の国民を意味しない。もし個々の国民を指すとすると、自衛官も守られるべき国民であるから、生命を犠牲にすることは大きな矛盾である。(78-79ページ)

 

(貼り付け終わり)

 

 自衛隊のイメージは災害発生時に一生懸命に被災した人々を助けているというものです。しかし、このイメージは自衛隊の本当の仕事の姿ではない、と栗栖氏は述べています。自衛隊は国民の生命や財産を守るのを使命にしているのではなく、国家の独立と平和を守ることを使命にしていると栗栖氏は主張しています。私たちが持つ自衛隊のイメージは実は余技であるということです。もちろん、災害発生時に自衛隊の出動はしてもらいたいし、これまでのように一生懸命に人々を助けてもらいたいと思いますが、これは余技なのだということが法律に書いてあるということも私たちは知っておくべきなのでしょう。「国を守る=国民を守る」という等式が成り立たないことがあり、その場合には、自衛隊は国の独立を守ることを使命とする、ということを私たちは知っておくべきでしょう。軍隊の本質とはそういうものなのかもしれません。ですから、最善の状況は、軍隊が国の独立を守るために出動するような状況を作らせないことです。

 

日本にとって重要な事は北朝鮮からミサイルを発射させないことです。中国や韓国は既に国際社会に参加し、国際的な枠組みに参加している以上、北朝鮮のような無謀な行動はしません。東アジアで見てみると、安倍首相のような考えのない、お勇ましいだけの人物が率いる日本と日本の変化の方が脅威を与えているとさえ思います。

 

 2011年3月11日に東日本大震災とそれに伴う福島第一原発の事故に関して、当時野党であった自民党は民主党を激しく責め立てました。福島第一原発の事故を防げたかもしれない電源装置の撤去は自民党の第一次安倍晋三内閣で行われていたにもかかわらずです。しかし、これは野党としては当然のことで、その時の与党は野党から責められるのは当然のことです。それであるならば、北朝鮮からミサイルが飛んでくるかもしれないという状況を生み出した現在の与党もまた責められてしかるべきです。

 

 本ブログでもご紹介しましたが、ロシアは北朝鮮に対して注意深く観察し、北朝鮮は合理的に行動するので、アメリカが軍事力を使って体制転換をしないという安全保障を与えれば、核開発とミサイル開発を放棄するだろうと見ています。ロシアは冷静に、自国の安全を最優先に考えて行動し、自国の利益とアメリカの行動が反する場合には、批判し、サボタージュをしています。

 

 日本の外交もこれくらいの冷静さと豪胆さとしたたかさが必要であると思います。今すぐにアメリカの傘の下から出ろとは言いませんが、何でもアメリカの言うとおりにしていればよいということでもありません。そのためにミサイルが飛んでくるようであれば、アメリカに従っていることに意味がないということになります。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今年に入ってから、北朝鮮のミサイル発射が大きな問題になっています。最近では、大陸間弾道弾(ICBM)の開発に成功したのではないか、これでアメリカ本土も攻撃圏内に入ったのではないかと言われています。

 

 北朝鮮に関しては、直接的な利害を持つ国として、韓国、中国、ロシア、日本、アメリカが挙げられます。これらに加えて北朝鮮も参加しての6カ国協議も行われたことがありましたが、現在はその機能を停止しています。北朝鮮は中露には多少の遠慮がありつつ(それもこの頃ではだいぶ薄れているようです)、「アメリカとだけ交渉する」という態度を取っています。日韓に関してはアメリカに追従するしかないと見ているようで、それはまさにその通りです。

 

 アメリカは中国に対して、「北朝鮮を何とかしてくれ」と再三にわたって要請していますが、中国としては、北朝鮮に潰れてもらっては困りますし(朝鮮半島が韓国だけになってしまうと、北朝鮮地域に米軍基地が置かれてしまう心配がある)、急に貿易を止めてしまって北朝鮮を自暴自棄にしてしまうと迷惑を蒙るのは自分たちだと分かっていますから、あまり積極的(アメリカ側の視点からの積極的)には動こうとしません。

 

 ロシアも北朝鮮と国境を接し、旧ソヴィエト連邦時代からの関係もあります。ロシアは北朝鮮に対しては、アメリカとは異なったアプローチを考えているようです。「北朝鮮がハリネズミのようにミサイルと核開発を行っているのは、アメリカによる軍事的脅威がなくなっていないからだ、それなら、体制転換や軍事介入などの荒療治はしないとアメリカが保証すれば北朝鮮はミサイルや核兵器の開発を止めるだろう」というのがロシアの考え方です。

 

 このような考えに対して、ロシアは無責任だ、という批判もできるでしょう。しかし、北朝鮮と国境を接しているロシアは、北朝鮮で動乱が起きた場合には無傷では済まない可能性がある国です。実際に、日本海側にミサイルが発射されると、日本では日本に向けて発射されたかのように報道されますが、実際にはロシアの領土や領海により近い場所に落ちている場合もあります。ウラジオストックというロシアにとって重要な港湾都市の近くに落ちたこともあります。北朝鮮のミサイルがロシアに向けて発射される可能性もゼロではありません。

 

 しかし、ロシアの対応は非常に冷静です。それは北朝鮮建国以来、北朝鮮をずっと観察してきた情報と知識の蓄積があるからだと思います。そして、金正恩と北朝鮮は合理的な選択ができると考えています。ですから、ミサイルを発射させないうちに取引ができると冷静に見切っているようです。

 

 こうしたロシアの態度と考えを見ていると、アメリカ側がやや慌てて対応しているように見えてしまいます。そして、アメリカの内部に北朝鮮に対して軍事的に介入して押しつぶしてしまいたい、そのためには大変なことが起きても構わないと考えている人々がいるのだろうということが推察されます。ですから、決して、アメリカの攻撃的な言辞だけが北朝鮮に対応する際に正しいものだと考えずに、冷静になってみることも重要であると考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

なぜロシアは金正恩の核兵器について懸念を持っていないのか?(Why Isn’t Russia Worried About Kim Jong Un’s Nukes?

―トランプ政権が北朝鮮との対決の方向へと進む中、ウラジミール・プーティンは戦略的な優位を獲得しようと考えている

 

クリス・ミラー筆

2017年7月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/07/17/why-isnt-russia-worried-about-kim-jong-uns-nukes/?utm_content=buffer09f90&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

7月4日はアメリカの北朝鮮政策にとって良くない日となった。それは、北朝鮮が大陸間弾道弾の発射を成功させたからではなかった。この日、ロシア大統領ウラジミール・プーティンと中国国家主席習近平がモスクワで首脳会談を行ったのだ。2人は共同で朝鮮半島の緊張を激化させないように支援するという声明を発表した。声明によって、北朝鮮の核兵器とミサイル開発の凍結と米韓両軍による大規模な軍事演習の中止が結び付けられることになった。

 

アメリカ政府は中露両国とは異なるアプローチを主張し続けている。アメリカ政府はこれまでの数カ月、北朝鮮の核開発プログラムとミサイル開発プログラムを停止させるように中国に対して、プレッシャーをかけるような声明を次々と発表してきている。先週、ドナルド・トランプ政権が、中国の行動が北朝鮮の核問題を解決できないようであれば、アメリカ政府は北朝鮮とビジネス関係を持っているという疑いのある中国の個人や企業に対して経済制裁を科すと主張し始めた。

 

しかしながら、トランプ政権は問題解決のためロシアも参加させようと努力している。今年5月、北朝鮮がロシアの太平洋岸の港湾都市ウラジオストック方面にミサイルを発射した後、トランプ政権は声明を発表し、その中で次のように述べた。「ロシアの領土の間近にミサイルが発射された。実際のところ、日本よりもロシアの領土に近いところにミサイルは落ちた。米国大統領はロシア政府がこのことを喜んで受け入れることを創造することができない」。

 

実際のところ、ロシア政府は北朝鮮のミサイルについてそこまで懸念を持っていない。もちろん、ロシアは朝鮮半島の非核化を望むであろう。ロシアは、朝鮮半島の緊張状態を解決する唯一の手段は北朝鮮と交渉し、金正恩体制に対して安全保障上の保証を与えることだと確信を持っている。ロシア政府は北朝鮮の核開発プログラムに制限を設けることを支持している。しかし、経済制裁については懸念を持ち、体制転換については明確に反対している。このロシアの態度はアメリカの考えとは一致していない。そして、国際的な努力に対する大きな障害となっている。

 

ロシアが北朝鮮に対してより懐柔的な政策を望む理由としてはまず自己利益が挙げられる。今年5月、北朝鮮がウラジオストック方面にミサイルを発射したのと同じ週、北朝鮮はウラジオストック向けの新しいフェリーを就航させた。

 

北朝鮮はイデオロギー的に自立圏を必要としているが、北朝鮮とロシアとの間の経済関係は驚くべき程に深い。両国は石炭や石油といった産品を交易しており、これはエネルギー不足に悩む北朝鮮にとって価値のある貿易となっている。統計上の数字は明らかになっていないが、ロシアには北朝鮮からの留学生が数多く学んでいるし、ロシア極東地方では北朝鮮出身の非熟練労働者たちが働いている。 ロシアと北朝鮮の経済関係の規模は限定的なものとなっているが、アメリカの制裁が解除され、北朝鮮政府が経済の開放を決定すれば、貿易額は増加すると考える専門家たちもいる。

 

ロシアが北朝鮮に対してより懐柔的な姿勢を取っている主要な理由は、ロシア政府の最高幹部たちが、北朝鮮の行動について、アメリカやアメリカの同盟諸国とは大きく異なる解釈をしているからである。ロシアはアメリカに比べて、より長い期間にわたり、北朝鮮を支配する金王朝について楽観的な見方を保持してきた。ロシアもまた短い距離ではあるが、北朝鮮と国境を接している。冷戦初期、北朝鮮とロシアは共産主義という信念を共有していた。しかし、イデオロギー上の連帯は遠い昔に既に消え去ってしまっている。

 

ロシア政府首脳たちは、金王朝は奇妙ではあるが、合理的でもあるということを確信している。しかし、ロシアの北朝鮮専門家たちは、「金正恩はミサイルや核兵器を攻撃的に使えば、アメリカによって核兵器による反撃を受け、自分は殺され、北朝鮮は亡ぼされることを知っている」と考えている。ロシアから見れば、 相互確証破壊の論理は冷戦期において核兵器の使用を思いとどまらせたが、これは現在でも北朝鮮からの攻撃を防ぐためには有効である、ということになる。従って、ロシアの専門家の多くが、北朝鮮の核開発プログラムは、北朝鮮が安全保障化に関してより自信を持たせ、アメリカが北朝鮮に対して軍事攻撃を行うことを差し控えさせるので、状況を安定させることに貢献すると主張している。

 

ロシア政府は北朝鮮問題についてアメリカ政府とは異なる立場をとるいくつかの理由が存在する。中国と同様、ロシアも北朝鮮政府がアメリカと同盟関係にある統一された朝鮮(韓国)に取って代わられることが利益とはならない。ロシア政府は中国政府と一緒になって、アメリカによる韓国国内のミサイル防衛システム配備を批判している。アメリカが東アジアに集中する限り、アメリカは旧ソヴィエト連邦地域の争いに注意を向けなくなる。旧ソヴィエト連邦地域は現在でもロシア政府にとって最重要地域である。こうした点から、北朝鮮に対して、ロシアはアメリカとは全く異なる立場をとることが容易いのである。なぜなら、金王朝の非妥協的な態度に対するアメリカ側の不満の多くは、中国に向けられるからだ。

 

ロシアからすれば、アメリカは朝鮮半島の緊張状態に関して、少なくとも北朝鮮と同程度の責任があるということになる。この考えからすると、金王朝の兵器開発プログラムは自己防衛が主たる理由ということになる。 ロシアの外交政策の著名な専門家であるフョードル・ルキアノフは「北朝鮮はたいていの場合、率先した行動よりも対応的な行動を行う。サダム・フセインとムアンマール・カダフィに何が起きたか、そして、脅しは決して賢いやり方ではないということを彼らの運命が示していることを北朝鮮は理解している。そこで彼らは核開発プログラムとミサイル開発プログラムを進めている。核とミサイルの存在によって、北朝鮮に対する外国からの介入は受け入れがたいほどに高い代償を支払うことになる」。ロシアの専門家たちの多くは、アメリカが体制転換という脅威を与えなければ、北朝鮮は何をおいても核兵器の開発をしなくてはならないと考えなかっただろうと主張している。

 

北朝鮮の核開発プログラムが存在する以上、トランプが発した北朝鮮に対する米軍の軍事攻撃という脅しは、北朝鮮からの脅威と同じほどに危険なものだとロシアは考えている。あまり言及されていないが、北朝鮮の持つ通常兵器の多くは韓国の首都ソウルを射程内に入れている。ロシアからすれば、軍事行動ではない経済制裁でも、北朝鮮が核兵器取得を目指す論理を変えることはないということになる。ただ、経済制裁によって実験や更なる開発は凍結できるかもしれないとは見ている。北朝鮮は既に、大規模飢饉と経済破綻があっても生き残ることができることを示した。ロシアの専門家たちは次のように問いかける。「アメリカは、より厳しい経済制裁を科すことで北朝鮮が核開発プログラムを放棄すると説得できると考えている。核兵器は北朝鮮がアメリカからの攻撃に対して唯一対抗できる防御策であるのに。アメリカはどうしてこんな考えをするのだろうか?」。

 

核開発プログラムをまず放棄させるという考えはアメリカの行動における重荷となってしまっている。ロシアの専門家たちは、アメリカが朝鮮戦争を最終的に終結させる平和条約に署名しておらず、現在も北朝鮮に軍事的脅威を与えている、と指摘している。今週、北朝鮮がミサイル実験を行った後、プーティンは北朝鮮を非難することを差し控え、中国が北朝鮮とアメリカ双方にこれまでの流れを変えるように訴えたことを支持した。

 

アメリカ政府は、中国が北朝鮮に対して圧力をかけてこれまでの流れを変えようとしないことやその能力に欠けていることに対して、不満を募らせている。そして、その他の選択肢に方向転換しつつある。北朝鮮にアメリカを攻撃できる可能性を持つミサイルの開発とテスト継続させることは訴える力を持たない選択肢である。特に、トランプ大統領が、北朝鮮の核兵器がアメリカに到達することは「起こらない!」と述べた後では、そうだ。北朝鮮の核兵器を除去するために軍事面から圧力をかけることは、韓国や日本を巻き込むより広範囲な戦争を引き起こすリスクを持っている。

 

アメリカ政府が朝鮮半島における目的を軟化させ、北朝鮮の核開発プログラムを受け入れ、北朝鮮に対して安全保障上の保証を与えるならば、ロシア政府は北朝鮮が武器の実験とミサイル開発を止めるように圧力をかけることに参加するかもしれない。しかし、アメリカ政府が軍事力による解決や体制転換を選択肢として残す限り、ロシア政府は批判の矛先を金正恩ではなく、ドナルド・トランプに向けるだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)






 古村治彦です。

 

 トランプ政権のアジア外交政策が混乱している、という内容の記事をご紹介します。私に言わせれば、既得権を持つアジア各国の従米エリートたちが混乱しているという方が正確ではないかと思います。特に、日本のエリート層の混乱ぶりはより大きいものではないかと思います。

 

 トランプの政策はアイソレーショニズム(アメリカ国内問題解決優先主義)であり、世界各国の問題には基本的に関与しないというものです。そして、そうした判断は国益にかなうかどうかで行う、というリアリズムです。それらと反対なのが、グローバリズム、インターヴェンショニズムであり、アイディアリズム(理想主義)です。

 

 アメリカ国内の勢力で分けるならば、リアリズムは民主、共和両党にまたがって存在します(国内問題では意見が異なる場合が多い)。リアリズムではない場合には、共和党はネオコン派、民主党は人道的介入主義派です。ネオコン派の第一世代はもともと民主党支持者たちですから、両者は本家と分家という感じです。

 

 アメリカ国内でトランプを批判しているのは、多くの場合、ネオコン派や人道的介入主義派ということになります。しかし、彼らの批判は今一歩、届きません。なぜなら、ネオコン派はアメリカをアフガン戦争とイラク戦争に引きずり込んだ張本人たちであるということから人々から嫌われてそのために2008年の大統領選挙ではリアリズムを掲げるオバマ大統領が当選しましたし、昨年の選挙では人道的介入主義派のヒラリー・クリントンが落選しました。アメリカ国民はグローバリズム(インターヴェンショニズム)とアイディアリズムを拒否する選択をしたということになります。

 

 ここで私たちは、それでは日本はどの様に行動すべきかということを考える必要があります。アメリカの衰退が既に始まっていますが、まだ時間的に余裕があります。GDPの世界に占める割合で見ると、アメリカは約25%、中国は約14%、日本は約6%であり、アメリカ衰退は確かですが、アメリカはまだまだ世界の超大国です。中国に完全に抜かれた、となるまでは後20年から30年かかるでしょう。中華人民共和国建国100年が、2049年ですから、それまではアメリカの優位は動かないものと考えられます。

 

 その中で、日本の世界における立ち位置と国内政策で何を重点とするかということが重要になります。国内で見れば人口減少と高齢化は現実ですから、新しい箱ものや大規模開発は必要ではなく、余裕のあるコンパクトということが重要になって来るのではないかと思います。そうした中で人間一人あたりにかけるお金を増やしていくということがメインになるべきだと考えます。

 

 外交では、日本は海外での武力行使はできないという立場を堅持し、わざわざ普通の国になる必要もなく、復興の時に最大の力を発揮するという方向に向かうべきです。アメリカと一緒に壊しに行くのではなく、破壊からの再生の際に力を発揮すべきです。自分たちも敗戦時には国土の多くが瓦礫となったがそこから立ち直った、それは自国の力もあったが他国の助けもあった、だから破壊を経験した国として、再建の手助けをするということであれば大いに感謝されるでしょう。そして、アジア地域では地域大国として先頭に立たずに二番手の位置をキープするということになるのだろうと思います。

 

 現在の国土以上を求めず、軍事力を求めず、世界と仲良く交易をして生活していく、これ以上のことは望むべきではないし、これ以上何を望むというのでしょうか。

 

 ですから、現在の世界のヒエラルキーが変化していくであろうここ数十年間で、硬直的にアメリカと一緒に心中していくような方向に進むべきではありません。ですから、中国や韓国とも関係を改善し、ロシアとは改善しつつある関係を後退させないようにするということになるのだろうと思います。

 

 変化に合わせて日本も変わっていかなければならない、と思います。

 

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トランプのアジア政策はこれまで以上に混乱している(Trump’s Asia Policy Is More Confused Than Ever

 

コリン・ウィレット筆

2017年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/12/trumps-asia-policy-is-more-confused-than-ever/?utm_content=buffer3b499&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

6月3日、ジェイムズ・マティス国防長官は、アジアの同盟諸国やパートナー国に対して、アメリカはこれまでの70年間行ってきたようにこれからも地域を安定させる役割を果たすということを再認識させるために大いなる努力を行った。マティスはアジアの安全と繁栄にアメリカがこれからも関与し続けると雄弁に述べた。また、第二次世界大戦以降のアジアの成功の基盤となってきたルールに基づいた秩序を守るためにアジア・太平洋地域各国と協力するための方法を見つける必要があるとも述べた。残念なことは、マティスの主張が説得力を持たないことで、それは、マティスが代表しているアメリカの政権がこの秩序を損なおうとしているからだ。

 

マティスの演説の数日前、大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターと国家経済会議議長ゲイリー・コーンは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説を発表し、その中で、マティスが守りたいとしている「世界共同体」を明確に否定した。この論説は、これまでの考えを否定し、「独立独歩」政策を宣言したものとなった。この政策では、諸国家はむき出しの国家の力に基づいて、有利な立場と利益を得られるように争うようになり、同盟諸国やパートナー国を混乱させるだけでなく、アメリカの国家安全保障を損なってしまう。

 

この論説が発表される2日前、アメリカ海軍は南シナ海で航行の自由を守るための作戦訓練を実施した。これは、アメリカが、国際法が許す場所であればどこでも飛行し、航行する権利を守るという決意を示すものだ。このような行動の法的根拠は何か?国際社会で同意した国連海洋法条約(しかし、アメリカは批准していない)がそれだ。国連海洋上条約では、全ての国家が国際海洋上における権利と義務を保有しているとしている。国利欲に関係なく、一連のルールを遵守することは全ての国々の利益となるとしている。世界各国が相互に合意した国際ルールには不便であっても意味があるということを受け入れないということになるならば、アメリカ海軍は航行の権利を持つと主張することは、中国政府はアメリカ海軍の航行を阻害する権利を持つという主張となんら変わらないことになってしまう。マクマスターとコーンはこのようは合意や同意に疑問を呈している。

 

マティスが演説した同じ日、国連安全保障理事会は今年に入って9回目のミサイル発射実験を行った北朝鮮に対する政策を拡大することを決定した。どうしてこのような行動を取ることが可能になるのか?それは、「北朝鮮の核開発とミサイル開発プログラムは世界のルール、規範、条約に違反している」という国連という国際共同体による同意があるからだ。各国政府が、それがたとえ実行困難であり苦痛を伴うものであっても国際条約は彼らを縛り、守る必要があるのだという考えを受け入れないとなると、国連による制裁は、各国が意図的に利用しもしくは無視することができる道具となってしまう。

 

航行の自由や制裁だけでアジアの緊急の安全保障に関する問題を解決することはできない。しかし、これら2つは重要な道具である。国際的な連合が支援する場合、これら2つは国際的な規範を破る国々に対する圧力をかけるための重要な道具となる。

 

アジア各国はアメリカの複雑なシグナルから何を見出すであろうか?マクマスターとコーンが述べたように、アメリカは自国の直接的な利益が危機にさらされる場合にのみ国際社会と協力するのだろうか?もしそうであるならば、アメリカはアジア各国がアメリカに協力する理由を与えられないということになる。

 

北朝鮮、公海上の航行の自由、軍縮といった諸問題は、アジア諸国の多くにとって、現実的な生活にとって、さほど重要な意味を持たないものとなっている。これらの諸問題への対処のために協力することはコストがかかり、技術的に難しいものであり、時間だけを浪費することになる。しかし、ほとんどの国々が努力をするだろう。それは各国が基盤となっている原理に価値を見出しているからだ。その原理とは、各国の主権と諸権利を守っている国際システムは、自国の利益が危機にさらされていない場合でも各国が責任を果たすことも求めているというものだ。

 

アジアにおける私たちの同盟関係とパートナー関係は一つの考えに基づいて構築されてきた。それは第二次世界大戦後の法と規範のシステムは私たち全員に利益を与え、このシステムを防御するために協力することは、たとえそれが困難であっても、投資をするに値するものだ、というものだ。しかし、アメリカがそのような行動をとらないとなると、他国がそのような行動を取る理由があるだろうか?マティス国防長官はこのことを明確に理解している。しかし、彼が代表しているトランプ政権がこのことに同意しているのかどうかは定かではない。そして、アメリカの友人やパートナーである各国はこの乖離に鋭く気付いていることは疑いのないところだ。

 

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 古村治彦です。

 

 アメリカのCIAが冷戦期、世界各国でスパイ活動をしていたことはよく知られています。小説や映画に題材として数多く取り上げられてきました。また、反米的(と目されるばあいも含めて)、もしくは共産主義的な国家指導者や国家体制を転覆させるために、その国の軍部やゲリラなどに資金や武器を渡して、暗殺やクーデターを起こさせていたということはよく知られていました。しかし、アメリカ政府は、公式には、そうした暗殺事件やクーデターへの関与を否定していました。

 

 1953年、イランでは民主的に選ばれたムハマンド・モサデグ首相に対するクーデターが発生しました。そして、親米的なシャーによる王政が1979年のイラン革命まで続きました。1979年、有名なホメイニ師が主導するイラン革命によって、イランの王政は倒され、イスラム共和国が誕生しました。イラン革命の際、テヘランのアメリカ大使館に大学生たちが乱入し、大使館員などを人質にして占拠する、イラン人質事件が起こりました。人質事件はカーター政権内部に解決方法を巡って亀裂を生み(ヴァンス国務長官とブレジンスキー大統領国家安全保障問題担当補佐官の対立とヴァンスの辞任)、大きなダメージを与え、カーターは次の大統領選挙でロナルド・レーガンに敗れました。イラン革命以降、アメリカとイランは国交を断絶し、アメリカはイランの隣国イラクの独裁者サダム・フセインをけしかけてイラン・イラク戦争を起こさせました。

 

 イランの歴史に置いて大きな出来事であるモサデク首相に対するクーデター事件ですが、CIAの関与はほぼ間違いないと言われながら、アメリカ政府は公式に否定してきました。しかし、バラク・オバマ大統領がCIAの関与を認め謝罪し、また、最近、機密解除文書の公開によって、残された電報などから、CIAが関与していたということが明らかになりました。

 

 CIA本部はクーデターの試みが失敗したこともあって、クーデターに参加するなとイラン支局に電報を送っていましたが、現地では命令を無視し、結局、クーデターが成功してしまいました。現地の命令無視・独断専行があったということで、このことまでは推定されていましたが、それを示す証拠が出てきたということが重要です。

 

 また、1950年代に聖職者であり、政治家でもあったカシャニ師がモサデク追い落としに関与し、また、アメリカからの資金援助を要請していたということが明らかにされました。カシャニは現在でもイラン国内で尊敬を集めている人物ですが、そのような人物がアメリカからの援助を求めていたということはイランにとっては隠しておきたい事実だろうと思います。

 

 このように何十年経っても公文書が残されていれば、いつかは事実は明らかにされます。最近の日本の政治状況を見ていると、公文書を残しておくということの重要性を軽視しているように思います。この点はアメリカを見習うべきであろうと思います。

 

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64年経過して、CIAはついにイランでのクーデターに関する詳細を公開(64 Years Later, CIA Finally Releases Details of Iranian Coup

―新たに公開された文書によって、CIAが如何にして失敗に終わりかけていたクーデターへの参加を取り消そうとしていたか、そして、最後の最後である従順ではない一人のスパイによってクーデターが成功に導かれたが明らかにされた。

 

ベンサニー・アレン=エイブラヒミアン筆

2017年6月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/20/64-years-later-cia-finally-releases-details-of-iranian-coup-iran-tehran-oil/

 

機密解除された文書が先週公開された。これによって、1953年に発生したイラン首相ムハンマド・モサデクを追い落としたクーデターにおいて、中央情報局(CIA)が中心的な役割を果たしたことが明らかになった。このクーデターは、イランのナショナリズムの火に油を注ぎ、1979年のイラン革命を生み出し、21世紀になってもアメリカ・イラン関係を損ない続けている。

 

約1000ページの文書によって初めて、CIAが如何にして失敗に終わりそうであったクーデターへの参加を取り消そうとし、イラン国内にいる従順ではない一人のスパイによって最後の最後で成功に導かれたということが明らかにされた。

 

CIAの計画はエイジャックス作戦として知られている。CIAの計画は究極的に石油確保を目的とするものであった。西側の企業は長年にわたり、中東地域の石油生産と底からの富をコントロールしていた。サウジアラビアのアラビアン・アメリカン石油会社、イランのアングロ・イラニアン石油会社(イギリス)といった石油企業がコントロールしていた。1950年末、サウジアラビアのアラビアン・アメリカ石油会社は圧力に屈し、石油からの富をサウジアラビア政府と折半することになった。この時、イラン国内のイギリスの持つ石油利権もサウジアラビアでの先例にならうようにという厳しい圧力に晒されていた。しかし、イギリス政府は断固として拒否した。

 

1951年初め、人々の熱狂的な支持の中、モサデクはイランの石油産業を国有化した。激怒したイギリス政府は、モサデクの排除とシャーによる王政の復活のために、アメリカの情報機関と共謀し、計画を練り始めた。しかし、新たに公開された電報が示すところでは、アメリカ国務省の一部には、対立に対するイギリスの非妥協的な態度を非難し、モサデクとの協力を模索する人々がいた。

 

クーデターの試みは4月15日に開始されたが、迅速に鎮圧された。モサデクは関係者を逮捕した。共謀の首謀者であるファズラウ・ザヒィーディー将軍は身を隠し、シャーは国外に逃亡した。

 

CIAはクーデターの試みは失敗すると確信しており、クーデターへの参加を取り消すことに決定した。

 

新たに公開された文書によると、1953年8月18日にCIA本部はイラン支局長に次のような内容の電報を送った。「作戦は試され、そして失敗した。私たちはモサデクに敵対するいかなる作戦にも参加すべきではない。モサデクに敵対する作戦は継続されるべきではない」。

 

ジョージ・ワシントン大学のアメリカ安全保障アーカイヴでアメリカ・イラン関係プロジェクトの責任者を務めるマルコム・バーンは、「CIAのイラン支局長カーミット・ルーズヴェルトは、この電報を無視した」と述べている。

 

バーンは本誌に次のように語った。「カーミット・ルーズヴェルトが電報を受け取った時、部屋にはもう一人の人物がいた。この時、ルーズヴェルトは、“ダメだ、俺たちはここで何もやっていない”と述べた」。ルーズヴェルトはCIA本部からのクーデターの試みを中止するようにという命令を実行しなかったことは既に知られていた。しかし、電報自体とその内容については知られていなかった。

 

ルーズヴェルトの決断の結果は重大であった。電報を受け取った翌日の1953年8月19日、クーデターは成功した。CIAの援助によって準備されたと考えられてきた、「金を支払われていた」群衆の助けがあった。イランの民族主義の英雄モサデクは投獄され、西側に友好的なシャーの下での王政が復活した。アングロ・イラニアン石油(後にブリティッシュ・ペトロレアムに改名)は油田を回復しようと努めた。しかし、この努力は実を結ばなかった。クーデターは成功したが、外国の石油のコントロールの回復に対するナショナリストからの反撃は過激となった。ブリティッシュ・ペトロレアムやその他の石油メジャーはイラン政府と石油からの利益を分け合うことになった。

 

エイジャックス作戦はイランの保守派にとっては亡霊であった。しかし、これはリベラル派にとっても同様であった。クーデターは反西洋感情の炎に風を送った。ナショナリズムの最高潮が1979年に発生したアメリカ大使館人質事件、シャーの廃位、「大悪魔」に対するイスラム共和国の創設となった。

 

クーデターによってイラン国内のリベラル派も排除された。モサデクはイラン史上、民主的な指導者というものに最も近付いた人物であった。モサデクは民主的な諸価値を明確に称揚し、イラン国内に民主政治体制を確立したいという希望を持っていた。選挙を経て構成された議会がモサデクを首相に選出した。首相という職を利用して、モサデクはシャーの力を削いだ。その結果、この時期のイランは、ヨーロッパで発展した政治的伝統に最も近付いた。しかし、更なる民主的な発展は8月19日に窮地に陥った。

 

アメリカ政府は長年にわたり、クーデターへの関与を否定してきた。国務省は1989年にクーデターに関連した文書を初めて公開した。しかし、CIAの関与を示す部分は編集していた。人々の怒りを受けて、政府はより完全な文書を公開することを約束した。そして、2013年に文書が公開された。2年後、機密解除された文書の最終的な公開の予定が発表された。バーンズは、「しかし、イランとの核開発を巡る交渉のために準備が中断され、公開予定は遅れることになった」と述べている。文書は先週、最終的に公開された。CIAの電報の原本は紛失、もしくは廃棄されたものと考えられていた。

 

バーンは、公開が大幅に遅れたのはいくつかの要素のためだと述べた。バーンは、 情報機関は常に「材料と方法」を防御することに懸念を持つものだ、と語る。「材料と方法」とは、最前線で作戦実行を可能にする秘密のスパイ技術を意味する。CIAはイギリスの情報機関との関係を守る必要にも迫られていた。イギリスの情報機関は諜報に必要な人材などを守りたいと考えていたはずだ。

 

 

スタンフォード大学のイラン学教授アッバス・ミラニは、新たに公開された文書によって、CIAの関与以上に興味深い事実が明らかにされた、と述べている。聖職者のアボル=ガセム・カシャニ師の政治における指導的役割の詳細が明らかにされた。カシャニは1950年代に聖職者であり、指導的な政治家として活動した。

 

イスラム共和国では、聖職者は常に善玉である。カシャニはこの時期におけるナショナリズムの英雄であった。今年1月、イランの最高指導者は石油の国有化におけるカシャニの役割を賞賛した。

 

カシャニが最終的にモサデクと分裂したことは広く知られている。イラン国内の宗教指導者たちは共産主義のドゥデー党の台頭に恐怖感を持っていた。そして、モサデクは社会主義勢力の脅威から国を守るには弱すぎると確信していた。

 

新たに公開された文書によると、カシャニはモサデクに反対していただけではなく、クーデターまでの時期、アメリカ側と緊密に連絡を取り合っていたことが明らかになった。カシャニはアメリカからの財政的な援助を求めていた。しかし、彼が実際に資金を得ていたことを示す記録は残っていない。カシャニの要求はこれまで知られてこなかった。

 

ミラニは次のように語っている。「クーデターの成功を左右する日となった8月19日、カシャニの存在は重要であった。カシャニの武装勢力は完全武装してモサデク打倒のために出動した」。

 

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(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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