古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 

 トランプ政権のアジア外交政策が混乱している、という内容の記事をご紹介します。私に言わせれば、既得権を持つアジア各国の従米エリートたちが混乱しているという方が正確ではないかと思います。特に、日本のエリート層の混乱ぶりはより大きいものではないかと思います。

 

 トランプの政策はアイソレーショニズム(アメリカ国内問題解決優先主義)であり、世界各国の問題には基本的に関与しないというものです。そして、そうした判断は国益にかなうかどうかで行う、というリアリズムです。それらと反対なのが、グローバリズム、インターヴェンショニズムであり、アイディアリズム(理想主義)です。

 

 アメリカ国内の勢力で分けるならば、リアリズムは民主、共和両党にまたがって存在します(国内問題では意見が異なる場合が多い)。リアリズムではない場合には、共和党はネオコン派、民主党は人道的介入主義派です。ネオコン派の第一世代はもともと民主党支持者たちですから、両者は本家と分家という感じです。

 

 アメリカ国内でトランプを批判しているのは、多くの場合、ネオコン派や人道的介入主義派ということになります。しかし、彼らの批判は今一歩、届きません。なぜなら、ネオコン派はアメリカをアフガン戦争とイラク戦争に引きずり込んだ張本人たちであるということから人々から嫌われてそのために2008年の大統領選挙ではリアリズムを掲げるオバマ大統領が当選しましたし、昨年の選挙では人道的介入主義派のヒラリー・クリントンが落選しました。アメリカ国民はグローバリズム(インターヴェンショニズム)とアイディアリズムを拒否する選択をしたということになります。

 

 ここで私たちは、それでは日本はどの様に行動すべきかということを考える必要があります。アメリカの衰退が既に始まっていますが、まだ時間的に余裕があります。GDPの世界に占める割合で見ると、アメリカは約25%、中国は約14%、日本は約6%であり、アメリカ衰退は確かですが、アメリカはまだまだ世界の超大国です。中国に完全に抜かれた、となるまでは後20年から30年かかるでしょう。中華人民共和国建国100年が、2049年ですから、それまではアメリカの優位は動かないものと考えられます。

 

 その中で、日本の世界における立ち位置と国内政策で何を重点とするかということが重要になります。国内で見れば人口減少と高齢化は現実ですから、新しい箱ものや大規模開発は必要ではなく、余裕のあるコンパクトということが重要になって来るのではないかと思います。そうした中で人間一人あたりにかけるお金を増やしていくということがメインになるべきだと考えます。

 

 外交では、日本は海外での武力行使はできないという立場を堅持し、わざわざ普通の国になる必要もなく、復興の時に最大の力を発揮するという方向に向かうべきです。アメリカと一緒に壊しに行くのではなく、破壊からの再生の際に力を発揮すべきです。自分たちも敗戦時には国土の多くが瓦礫となったがそこから立ち直った、それは自国の力もあったが他国の助けもあった、だから破壊を経験した国として、再建の手助けをするということであれば大いに感謝されるでしょう。そして、アジア地域では地域大国として先頭に立たずに二番手の位置をキープするということになるのだろうと思います。

 

 現在の国土以上を求めず、軍事力を求めず、世界と仲良く交易をして生活していく、これ以上のことは望むべきではないし、これ以上何を望むというのでしょうか。

 

 ですから、現在の世界のヒエラルキーが変化していくであろうここ数十年間で、硬直的にアメリカと一緒に心中していくような方向に進むべきではありません。ですから、中国や韓国とも関係を改善し、ロシアとは改善しつつある関係を後退させないようにするということになるのだろうと思います。

 

 変化に合わせて日本も変わっていかなければならない、と思います。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプのアジア政策はこれまで以上に混乱している(Trump’s Asia Policy Is More Confused Than Ever

 

コリン・ウィレット筆

2017年6月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/12/trumps-asia-policy-is-more-confused-than-ever/?utm_content=buffer3b499&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

6月3日、ジェイムズ・マティス国防長官は、アジアの同盟諸国やパートナー国に対して、アメリカはこれまでの70年間行ってきたようにこれからも地域を安定させる役割を果たすということを再認識させるために大いなる努力を行った。マティスはアジアの安全と繁栄にアメリカがこれからも関与し続けると雄弁に述べた。また、第二次世界大戦以降のアジアの成功の基盤となってきたルールに基づいた秩序を守るためにアジア・太平洋地域各国と協力するための方法を見つける必要があるとも述べた。残念なことは、マティスの主張が説得力を持たないことで、それは、マティスが代表しているアメリカの政権がこの秩序を損なおうとしているからだ。

 

マティスの演説の数日前、大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターと国家経済会議議長ゲイリー・コーンは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説を発表し、その中で、マティスが守りたいとしている「世界共同体」を明確に否定した。この論説は、これまでの考えを否定し、「独立独歩」政策を宣言したものとなった。この政策では、諸国家はむき出しの国家の力に基づいて、有利な立場と利益を得られるように争うようになり、同盟諸国やパートナー国を混乱させるだけでなく、アメリカの国家安全保障を損なってしまう。

 

この論説が発表される2日前、アメリカ海軍は南シナ海で航行の自由を守るための作戦訓練を実施した。これは、アメリカが、国際法が許す場所であればどこでも飛行し、航行する権利を守るという決意を示すものだ。このような行動の法的根拠は何か?国際社会で同意した国連海洋法条約(しかし、アメリカは批准していない)がそれだ。国連海洋上条約では、全ての国家が国際海洋上における権利と義務を保有しているとしている。国利欲に関係なく、一連のルールを遵守することは全ての国々の利益となるとしている。世界各国が相互に合意した国際ルールには不便であっても意味があるということを受け入れないということになるならば、アメリカ海軍は航行の権利を持つと主張することは、中国政府はアメリカ海軍の航行を阻害する権利を持つという主張となんら変わらないことになってしまう。マクマスターとコーンはこのようは合意や同意に疑問を呈している。

 

マティスが演説した同じ日、国連安全保障理事会は今年に入って9回目のミサイル発射実験を行った北朝鮮に対する政策を拡大することを決定した。どうしてこのような行動を取ることが可能になるのか?それは、「北朝鮮の核開発とミサイル開発プログラムは世界のルール、規範、条約に違反している」という国連という国際共同体による同意があるからだ。各国政府が、それがたとえ実行困難であり苦痛を伴うものであっても国際条約は彼らを縛り、守る必要があるのだという考えを受け入れないとなると、国連による制裁は、各国が意図的に利用しもしくは無視することができる道具となってしまう。

 

航行の自由や制裁だけでアジアの緊急の安全保障に関する問題を解決することはできない。しかし、これら2つは重要な道具である。国際的な連合が支援する場合、これら2つは国際的な規範を破る国々に対する圧力をかけるための重要な道具となる。

 

アジア各国はアメリカの複雑なシグナルから何を見出すであろうか?マクマスターとコーンが述べたように、アメリカは自国の直接的な利益が危機にさらされる場合にのみ国際社会と協力するのだろうか?もしそうであるならば、アメリカはアジア各国がアメリカに協力する理由を与えられないということになる。

 

北朝鮮、公海上の航行の自由、軍縮といった諸問題は、アジア諸国の多くにとって、現実的な生活にとって、さほど重要な意味を持たないものとなっている。これらの諸問題への対処のために協力することはコストがかかり、技術的に難しいものであり、時間だけを浪費することになる。しかし、ほとんどの国々が努力をするだろう。それは各国が基盤となっている原理に価値を見出しているからだ。その原理とは、各国の主権と諸権利を守っている国際システムは、自国の利益が危機にさらされていない場合でも各国が責任を果たすことも求めているというものだ。

 

アジアにおける私たちの同盟関係とパートナー関係は一つの考えに基づいて構築されてきた。それは第二次世界大戦後の法と規範のシステムは私たち全員に利益を与え、このシステムを防御するために協力することは、たとえそれが困難であっても、投資をするに値するものだ、というものだ。しかし、アメリカがそのような行動をとらないとなると、他国がそのような行動を取る理由があるだろうか?マティス国防長官はこのことを明確に理解している。しかし、彼が代表しているトランプ政権がこのことに同意しているのかどうかは定かではない。そして、アメリカの友人やパートナーである各国はこの乖離に鋭く気付いていることは疑いのないところだ。

 

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 古村治彦です。

 

 アメリカのCIAが冷戦期、世界各国でスパイ活動をしていたことはよく知られています。小説や映画に題材として数多く取り上げられてきました。また、反米的(と目されるばあいも含めて)、もしくは共産主義的な国家指導者や国家体制を転覆させるために、その国の軍部やゲリラなどに資金や武器を渡して、暗殺やクーデターを起こさせていたということはよく知られていました。しかし、アメリカ政府は、公式には、そうした暗殺事件やクーデターへの関与を否定していました。

 

 1953年、イランでは民主的に選ばれたムハマンド・モサデグ首相に対するクーデターが発生しました。そして、親米的なシャーによる王政が1979年のイラン革命まで続きました。1979年、有名なホメイニ師が主導するイラン革命によって、イランの王政は倒され、イスラム共和国が誕生しました。イラン革命の際、テヘランのアメリカ大使館に大学生たちが乱入し、大使館員などを人質にして占拠する、イラン人質事件が起こりました。人質事件はカーター政権内部に解決方法を巡って亀裂を生み(ヴァンス国務長官とブレジンスキー大統領国家安全保障問題担当補佐官の対立とヴァンスの辞任)、大きなダメージを与え、カーターは次の大統領選挙でロナルド・レーガンに敗れました。イラン革命以降、アメリカとイランは国交を断絶し、アメリカはイランの隣国イラクの独裁者サダム・フセインをけしかけてイラン・イラク戦争を起こさせました。

 

 イランの歴史に置いて大きな出来事であるモサデク首相に対するクーデター事件ですが、CIAの関与はほぼ間違いないと言われながら、アメリカ政府は公式に否定してきました。しかし、バラク・オバマ大統領がCIAの関与を認め謝罪し、また、最近、機密解除文書の公開によって、残された電報などから、CIAが関与していたということが明らかになりました。

 

 CIA本部はクーデターの試みが失敗したこともあって、クーデターに参加するなとイラン支局に電報を送っていましたが、現地では命令を無視し、結局、クーデターが成功してしまいました。現地の命令無視・独断専行があったということで、このことまでは推定されていましたが、それを示す証拠が出てきたということが重要です。

 

 また、1950年代に聖職者であり、政治家でもあったカシャニ師がモサデク追い落としに関与し、また、アメリカからの資金援助を要請していたということが明らかにされました。カシャニは現在でもイラン国内で尊敬を集めている人物ですが、そのような人物がアメリカからの援助を求めていたということはイランにとっては隠しておきたい事実だろうと思います。

 

 このように何十年経っても公文書が残されていれば、いつかは事実は明らかにされます。最近の日本の政治状況を見ていると、公文書を残しておくということの重要性を軽視しているように思います。この点はアメリカを見習うべきであろうと思います。

 

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64年経過して、CIAはついにイランでのクーデターに関する詳細を公開(64 Years Later, CIA Finally Releases Details of Iranian Coup

―新たに公開された文書によって、CIAが如何にして失敗に終わりかけていたクーデターへの参加を取り消そうとしていたか、そして、最後の最後である従順ではない一人のスパイによってクーデターが成功に導かれたが明らかにされた。

 

ベンサニー・アレン=エイブラヒミアン筆

2017年6月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/20/64-years-later-cia-finally-releases-details-of-iranian-coup-iran-tehran-oil/

 

機密解除された文書が先週公開された。これによって、1953年に発生したイラン首相ムハンマド・モサデクを追い落としたクーデターにおいて、中央情報局(CIA)が中心的な役割を果たしたことが明らかになった。このクーデターは、イランのナショナリズムの火に油を注ぎ、1979年のイラン革命を生み出し、21世紀になってもアメリカ・イラン関係を損ない続けている。

 

約1000ページの文書によって初めて、CIAが如何にして失敗に終わりそうであったクーデターへの参加を取り消そうとし、イラン国内にいる従順ではない一人のスパイによって最後の最後で成功に導かれたということが明らかにされた。

 

CIAの計画はエイジャックス作戦として知られている。CIAの計画は究極的に石油確保を目的とするものであった。西側の企業は長年にわたり、中東地域の石油生産と底からの富をコントロールしていた。サウジアラビアのアラビアン・アメリカン石油会社、イランのアングロ・イラニアン石油会社(イギリス)といった石油企業がコントロールしていた。1950年末、サウジアラビアのアラビアン・アメリカ石油会社は圧力に屈し、石油からの富をサウジアラビア政府と折半することになった。この時、イラン国内のイギリスの持つ石油利権もサウジアラビアでの先例にならうようにという厳しい圧力に晒されていた。しかし、イギリス政府は断固として拒否した。

 

1951年初め、人々の熱狂的な支持の中、モサデクはイランの石油産業を国有化した。激怒したイギリス政府は、モサデクの排除とシャーによる王政の復活のために、アメリカの情報機関と共謀し、計画を練り始めた。しかし、新たに公開された電報が示すところでは、アメリカ国務省の一部には、対立に対するイギリスの非妥協的な態度を非難し、モサデクとの協力を模索する人々がいた。

 

クーデターの試みは4月15日に開始されたが、迅速に鎮圧された。モサデクは関係者を逮捕した。共謀の首謀者であるファズラウ・ザヒィーディー将軍は身を隠し、シャーは国外に逃亡した。

 

CIAはクーデターの試みは失敗すると確信しており、クーデターへの参加を取り消すことに決定した。

 

新たに公開された文書によると、1953年8月18日にCIA本部はイラン支局長に次のような内容の電報を送った。「作戦は試され、そして失敗した。私たちはモサデクに敵対するいかなる作戦にも参加すべきではない。モサデクに敵対する作戦は継続されるべきではない」。

 

ジョージ・ワシントン大学のアメリカ安全保障アーカイヴでアメリカ・イラン関係プロジェクトの責任者を務めるマルコム・バーンは、「CIAのイラン支局長カーミット・ルーズヴェルトは、この電報を無視した」と述べている。

 

バーンは本誌に次のように語った。「カーミット・ルーズヴェルトが電報を受け取った時、部屋にはもう一人の人物がいた。この時、ルーズヴェルトは、“ダメだ、俺たちはここで何もやっていない”と述べた」。ルーズヴェルトはCIA本部からのクーデターの試みを中止するようにという命令を実行しなかったことは既に知られていた。しかし、電報自体とその内容については知られていなかった。

 

ルーズヴェルトの決断の結果は重大であった。電報を受け取った翌日の1953年8月19日、クーデターは成功した。CIAの援助によって準備されたと考えられてきた、「金を支払われていた」群衆の助けがあった。イランの民族主義の英雄モサデクは投獄され、西側に友好的なシャーの下での王政が復活した。アングロ・イラニアン石油(後にブリティッシュ・ペトロレアムに改名)は油田を回復しようと努めた。しかし、この努力は実を結ばなかった。クーデターは成功したが、外国の石油のコントロールの回復に対するナショナリストからの反撃は過激となった。ブリティッシュ・ペトロレアムやその他の石油メジャーはイラン政府と石油からの利益を分け合うことになった。

 

エイジャックス作戦はイランの保守派にとっては亡霊であった。しかし、これはリベラル派にとっても同様であった。クーデターは反西洋感情の炎に風を送った。ナショナリズムの最高潮が1979年に発生したアメリカ大使館人質事件、シャーの廃位、「大悪魔」に対するイスラム共和国の創設となった。

 

クーデターによってイラン国内のリベラル派も排除された。モサデクはイラン史上、民主的な指導者というものに最も近付いた人物であった。モサデクは民主的な諸価値を明確に称揚し、イラン国内に民主政治体制を確立したいという希望を持っていた。選挙を経て構成された議会がモサデクを首相に選出した。首相という職を利用して、モサデクはシャーの力を削いだ。その結果、この時期のイランは、ヨーロッパで発展した政治的伝統に最も近付いた。しかし、更なる民主的な発展は8月19日に窮地に陥った。

 

アメリカ政府は長年にわたり、クーデターへの関与を否定してきた。国務省は1989年にクーデターに関連した文書を初めて公開した。しかし、CIAの関与を示す部分は編集していた。人々の怒りを受けて、政府はより完全な文書を公開することを約束した。そして、2013年に文書が公開された。2年後、機密解除された文書の最終的な公開の予定が発表された。バーンズは、「しかし、イランとの核開発を巡る交渉のために準備が中断され、公開予定は遅れることになった」と述べている。文書は先週、最終的に公開された。CIAの電報の原本は紛失、もしくは廃棄されたものと考えられていた。

 

バーンは、公開が大幅に遅れたのはいくつかの要素のためだと述べた。バーンは、 情報機関は常に「材料と方法」を防御することに懸念を持つものだ、と語る。「材料と方法」とは、最前線で作戦実行を可能にする秘密のスパイ技術を意味する。CIAはイギリスの情報機関との関係を守る必要にも迫られていた。イギリスの情報機関は諜報に必要な人材などを守りたいと考えていたはずだ。

 

 

スタンフォード大学のイラン学教授アッバス・ミラニは、新たに公開された文書によって、CIAの関与以上に興味深い事実が明らかにされた、と述べている。聖職者のアボル=ガセム・カシャニ師の政治における指導的役割の詳細が明らかにされた。カシャニは1950年代に聖職者であり、指導的な政治家として活動した。

 

イスラム共和国では、聖職者は常に善玉である。カシャニはこの時期におけるナショナリズムの英雄であった。今年1月、イランの最高指導者は石油の国有化におけるカシャニの役割を賞賛した。

 

カシャニが最終的にモサデクと分裂したことは広く知られている。イラン国内の宗教指導者たちは共産主義のドゥデー党の台頭に恐怖感を持っていた。そして、モサデクは社会主義勢力の脅威から国を守るには弱すぎると確信していた。

 

新たに公開された文書によると、カシャニはモサデクに反対していただけではなく、クーデターまでの時期、アメリカ側と緊密に連絡を取り合っていたことが明らかになった。カシャニはアメリカからの財政的な援助を求めていた。しかし、彼が実際に資金を得ていたことを示す記録は残っていない。カシャニの要求はこれまで知られてこなかった。

 

ミラニは次のように語っている。「クーデターの成功を左右する日となった8月19日、カシャニの存在は重要であった。カシャニの武装勢力は完全武装してモサデク打倒のために出動した」。

 

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 古村治彦です。

 

 2017年6月15日に改正組織的犯罪処罰法が成立しました。共謀罪(conspiracy)に関する法律で、277の行為がこの行為で犯罪行為として処罰されます。政府と与党(自民党と公明党)は2000年の国連のパレルモ条約批准のためには、共謀罪が必要であり、かつ、2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催のために、テロ防止のためにこの法律が必要だと主張し、最後は、参議院委員会での採決を省略し、本会議で直接採決するという方法で可決しました。

 

 今回の法律改正・共謀罪については以下の本を読むことで理解ができます。


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共謀罪の何が問題か (岩波ブックレット)

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スノーデン 日本への警告 (集英社新書)

 今回の法律改正は、①2000年の国連の組織犯罪に関する条約批准、②2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催のために必要であったということになっています。しかし、2000年の条約(パレルモ条約)は、国際的に活動する組織犯罪、具体的にはマフィアを対象としています。そして、金銭的利益、物質的利益を違法な手段で得ることを防止しようというものです。対テロリズムということは、2001年9月11日の同時多発テロ事件以降、世界的な潮流になりましたが、2000年の段階では国際的組織犯罪、具体的にはマフィアによる麻薬、武器、人身の取引とマネーロンダリングの方が問題でした。

 

 2000年のパレルモ条約は組織犯罪、具体的にはマフィアに対するものですが、日本で言えば、やはり暴力団ということになるでしょう。暴力団対策法施行後、暴力団の構成員の数は減少し、利益も落ちている、そのために最大勢力の山口組も分裂している、ということは報道されています。暴力団の実態については分かりにくいところがありますが、衰退傾向にあることは間違いありません。また、組織犯罪ということで言えば、左右の過激派も思い浮かびますが、彼らに大規模なテロ攻撃を行う力があるでしょうか。また、対テロリズムで言えば、既に多くの法律があります。1970年代以降の左右の過激派のテロリズムによって、この時代から既にテロリズムを防ぐ法律はあります。時代に合わせた改正と運用の改善で十分対処できます。暴力団と左右の過激派の力の衰退が顕著な日本では共謀罪は必要ありません。

 

 今回の巨棒材法案の成立は、国連の条約を使って、警察力を強化し、盗聴やおとり捜査、潜入捜査など捜査方法の拡大を行おうという世界的な流れの一端にあります。国連としては、自分たちを利用してプライヴァシー権などの市民的自由が制限されることについては困惑していると言えます。また、世界各国の官僚、特に治安関係者は、連帯して、捜査手法の拡大や権限の拡大、捜査対象の拡大を目指していると言えます。組織犯罪といえば、マネーロンダリングが付き物ですが、国境を超えて動き回るお金の動きを補足したい、止めたい、そうしておいて税金でがっぽり獲りたいという財務関係者の意図もあるでしょう。

 

 このような必要のない法律を作って、人々を縛る方向に進むというのは、世界的に官僚組織の連帯と強化が共通の認識として行われているということでもあります。また、日本の保守を自称する人々は、これを利用して自分たちに反対する人々を弾圧したいということも考えているでしょう。

 

 平成版の治安維持法でもある悪法は撤廃されねばなりません。

 

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日本は「暴力的な」「欠陥のある」反テロ法を可決(Japan Just Passed a ‘Brutal,’ ‘Defective’ Anti-Terror Law

 

ベンサニー・アレン=エイブラヒマン筆

2017年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/16/japan-just-passed-a-brutal-defective-anti-terror-law/

 

2001年9月11日の攻撃以降、テロリズムの恐ろしい幻影のために、アメリカ、フランス、イギリスといった民主政治体制国家において、政府による捜査、収監、その他の手段を拡大することを認める法律が可決されてきた。そして、3度の失敗の後、日本の国会議員たちは上記の国々と同じ本能に従うことになった。一方、市民的自由を求める人々や野党議員たちは非難の声をあげている。

 

国会議員たちがほとんど行われてこなかったメカニズムを用いて反テロ法案を通常の手続きを迂回して国会で可決した木曜日、多くの人々が東京で反対の声をあげていた。新しい法律は犯罪と考えられる数百の行動をリストにしている。その中には共謀が含まれている。しかし、『ガーディアン』紙によると、リストの中には、テロリズムと関係のない行動も含まれている様であり、その中には公的な場での抗議活動も含まれている。

 

法案の支持者たちは正当化のために様々な説明をしている。法案の示している様々な手段は、組織犯罪を対象にしているもので、2000年の国連条約を批准する義務を遂行するためのものであり、2020年に東京で開催されるオリンピックを安全に行うために必要なのだと主張している。

 

法案可決後、安倍晋三首相は「東京オリンピック・パラリンピックまで3年しかない。従って、私は組織犯罪に関する条約を一刻も早く批准したい。そうすることで、私たちはテロリズム防止のために国際社会としっかりと協力できる」と述べた。

 

しかし、抵抗は強力だ。野党の指導者である村田蓮舫は法律を「暴力的」だと非難している。反対する人々の中には、盗聴やそのほかの手段を拡散させるだろうと懸念を持っている人々もいる。

 

今年5月、東京の上智大学の政治学者である中野晃一は『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材に対して次のように述べた。「市民社会の動きが鈍い国において、更なる自己検閲を生み出すことになるだろう」。

 

法律は国際的な批判も受けている。プライヴァシー権に関する国連特別報告者ジョセフ・カナタチは5月に安倍首相に書簡を送り、その中で、「法律はプライヴァシー権と表現の自由の制限を助長する」ものになる可能性が高いと警告を発した。カナタチは法案を「欠陥のある法律」と批判した。

 

ボストンを拠点とする犯罪学教授ニコス・パソスは、国連の国際的組織犯罪条約の起草に貢献した人物だ。安倍首相は法律がこの条約を批准することを目的にしていると主張している。パソスは6月13日に『ジャパン・タイムズ』紙とのインタヴューに応じ、その中で、条約はテロリズムと戦うためのより締め付けの厳しい法律を必要としてはいないと述べた。パソスは、条約は「イデオロギーによって引き起こされた犯罪」を除外するという含意を持っていたと述べている。

 

東アジアの民主国家の中で言論の自由を制限しようという動きが続いており、今回のことが初めてのことではない。表現の自由に関する国連特別報告者デイヴィッド・ケイは木曜日に発表した報告書の中で、人々による開かれが議論と出版の自由が日本では制限されつつあると警告を発した。ケイは、メディアによる自主検閲と歴史教科書における日本の戦時中の犯罪行為に関する議論の欠如を例として挙げている。

 

2010年以降、安倍首相は日本の伝統的に防御に徹してきた軍事力の使命を拡大させてきた。彼はまた、日本の平和主義的憲法の改定を目指している。これは今のところ成功してはいない。

 

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市民的自由に対する懸念の中日本は「暴力的な」対テロ法を可決(Japan passes 'brutal' counter-terror law despite fears over civil liberties

 

国連の専門家を含む批判者たちがCritics including UN expert fear legislation passed by Abe government could target ordinary citizens and deter grassroots opposition to government policies

 

ジャスティン・マカリー・ロイター通信(東京発)

2017年6月15日

『ザ・ガーディアン』紙

https://www.theguardian.com/world/2017/jun/15/japan-passes-brutal-new-terror-law-which-opponents-fear-will-quash-freedoms

 

日本は議論が分かれていた法律を可決した、法律はテロリズムやそのほかの重大な犯罪のための共謀を対象とするものだ。これに対して、国連が法律は市民的自由を損なうために使用できる可能性があるという懸念を表明した。こうした中で法律は成立した。

 

与党である自民党と連立相手は、議事堂の外で多くの人々が反対する中、参議院で法案を可決した。

 

法案の採決は人々からの反対が強まる中で3度も延期された。そして、国連の専門家が「欠陥のある」法律だと述べた後に採決された。国連の専門家の発言に対して、日本の安倍晋三首相は怒りを持って対応した。

 

日本政府の高官たちは、法律が世界規模の組織犯罪2000年の国連条約の批准に必要だ、2019年のラグビーのワールドカップ、続く年のオリンピックの開催の純部のために、日本の対テロリズム対策の改善が必要だと主張している。

 

安倍首相は記者団に対して次のように述べた。「東京オリンピック・パラリンピックまで3年しかないので、組織犯罪に関する条約を速やかに批准したい。そうすることでテロリズムを防ぐために国際社会と協力できる。これが法律を成立させた理由だ」。

 

法律は共謀と277の「深刻な犯罪」を犯罪化するだろう。

 

しかし、日本弁護士会とその他の批判者たちは、法律が対象としている行為の中には、テロリズムや組織犯罪と関係がないものも含まれていると指摘している。それらにはアパートの建設に反対するための座り込みや音楽のコピーがある。

 

反対者たちはこの法律が安倍首相の国家機関の力を拡大させようというより広範な目的の一部だと考えており、政府は否定しているが、一般市民が標的とされるのではないかと恐れている。

 

野党民進党の党首である村田蓮舫は、安倍政権は「暴力的な」法律を通して思想の自由を脅かそうとしていると述べた。

 

批判者たちは、法律が合法的な盗聴の拡大と裁判所が警察の捜査力の制限を躊躇することで、政府の政策に対する草の根の反対を押さえることになると主張している。

 

法律の成立をスピードアップしようとして、連立与党はこれまでに例のない、反対の多い方法を採用した。それは参議院の委員会での採決を省略して、直接参議院本会議での採決を行うというものであった。

 

プライヴァシー権に関する国連特別報告者ジョセフ・カナタチは、先月安倍首相に書簡を送った。その中で、首相に対して、法律は「プライヴァシー権と表現の自由に対する制限をもたらす」リスクがあることを明らかにするように求めた。

 

安倍首相はカナタチの法案に対する評価を「著しくバランスを欠いた」ものと評し、カナタチの行為は「客観的な専門家のそれとは言い難い」と述べた。

 

カナタチは木曜日、日本政府は「欠陥のある法律」を可決するために、「恐怖心理」を利用したと述べた。

 

カナタチは更に次のように述べた。「日本はプライヴァシー保護を改善する必要がある。まして今回の法律が成立するならなおのことだ」。

 

共謀についての情報を集めるには、警察の捜査能力の拡大が必要であり、この法律は日本版の「思想警察」を生み出すことになると批判者たちは述べている。日本の思想警察は、第二次世界大戦前と戦時中、公共の秩序に対する脅威と見なされた政治グループを捜査するための広範な力を持っていた。

 

共同通信は先月世論調査を実施した。その結果は、法案について有権者は割れており、支持は39.9%、反対は41.4%であった。

 

国会議事堂前には推定5000名の人々が集まり、デモを行った。彼らは新しい法律を「専制的」であり、日本を「監視社会」にすることを防ごうと訴えた。

 

共同通信の取材に対して、54歳の女性ミユキ・マスヤマは次のように答えた。「平和なデモがテロリズムと見なされて禁止されてしまうかもしれません。私たちの表現の自由が脅威にさらされているのです」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 今回は、韓国が実施した、対北朝鮮の太陽政策(Sunshine Policy)についての記事をご紹介します。太陽政策とは、韓国の金大中、盧武鉉両大統領時代に、南北関係を好転させるために採られた政策で、積極的な交流を行うというものです。今回の大統領選挙で当選した文在寅(ムンジェイン)大統領は、盧武鉉大統領の側近だった人物ですので、太陽政策を行う可能性があります(ただ、韓国国内法の縛りで以前のような内容にならない可能性もあります)。

 

 リベラル派の金大中、盧武鉉両大統領時代に続けられた太陽政策ですが、その後、保守派の李明博、朴槿恵両政権では、タカ派的な政策が採られ、南北間の緊張関係が高まりました。北朝鮮では、金日成から数えて3代目となる孫の金正恩が最高指導者となりました。このブログで先日ご紹介しましたが、冷静に見てみれば、北朝鮮の金政権にとって重要なことは、生き残りです。国家最高指導者として贅沢な暮らしをしたいという極めて人間臭い欲望も含めて、生き残りを模索しています。

 

 北朝鮮に対して、北風(厳しい制裁)か、太陽(交流と関与)かのどちらが良いのか、ということは対北朝鮮では常に中心的テーマとなるものです。

 

 今回の記事を書いたのは、アメリカで法律家として活動する韓国系の人物のようで、この人は、太陽政策は一定の成果を上げた、厳しい制裁はどのような反応を引き起こすのか分からないし、最悪の場合は核戦争にまで発展する、保守派は勇ましいこと言うが核開発放棄をすれば体制保証してやるという点で弱腰なのだ、ということを述べています。

 

 この著者の主張に全て同意はできませんが、厳しい制裁では状況が好転しないだろうという点は同意します。興味深いのは、この著者が今回の記事を書いたのは、『フォーリン・アフェアーズ』誌に朝鮮半島問題の専門家たちがより厳しい制裁を主張する論稿を掲載し、それに対する反論のためです。私にとって興味深かったのは、フォーリン・アフェアーズ誌に掲載された記事の著者の一人が、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー研究員たったことです。クリングナーについては、私も以前ブログでご紹介しました。下記アドレスの「ヘリテージ財団の日本論」をお読みください。

 

http://suinikki.exblog.jp/m2012-11-01/

 

 

 クリングナーはより厳しい対北朝鮮制裁を主張していますが、こうした主張をする人々は、「北朝鮮を参らせる」ことに重きを置いて、「北朝鮮内外に大きな被害を出さないように」ということを考えていないようです。「窮鼠猫を咬む」という言葉がありますが、北朝鮮を「追い詰められた鼠」にしないことが重要です。そのためには「小鮮を烹るがごとし(小魚を煮る際に身を崩さないようにあまりかきまぜたりせずに、じっくり煮る)」という態度が必要です。

 

 よりリスクが少ない方法を採用することが重要であると考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

文大統領の秘密兵器は太陽政策だ(Moon’s Secret Weapon Is Sunshine

 

―韓国の新大統領は北朝鮮に対するタカ派的な政策を必要としない。大統領は成功した記録が残る政策だけを行うべきだ

 

ネイサン・パーク筆

2017年5月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/19/moons-secret-weapon-is-sunshine-south-korea-kim-jong-un/

 

文在寅(ムンジェイン)が韓国の新しい大統領に就任した。アメリカの勧告専門家たちは、文政権が北朝鮮に対して宥和的な姿勢を取るのではないかと懸念していると思われる。文在寅は盧武鉉大統領の首席スタッフを務めた。盧武鉉は最後のリベラル派大統領で、前任者である金大中大統領の「太陽政策」を継続した。金大中は1998年から2003年まで大統領職を務めた。イソップ童話の太陽と北風が旅人のコートを脱がせる競争をしたという寓話から、太陽政策という名前が付けられた。経済開発、観光、文化交流を通じた温かい関与が北朝鮮を更に開かせるだろうというのが太陽政策である。

 

韓国のリベラル派政権は10年続いた。この間に太陽政策は失敗であったと判定された。太陽政策を批判する人々の中には、最近の『フォーリン・アフェアーズ』誌に論稿を発表したアメリカの勧告専門家たちも含まれている。彼らにすれば、太陽政策は愚かな政策であって、「お金を与えれば、金正日(現在の指導者である金正恩の父親)率いる政権が変化する」という空想に基づいて、経済援助を促進したものであるということになる。太陽政策は校歌がなかったというだけではなく、道徳的に間違ったもので、金政権に核兵器開発のためのお金を渡し、核兵器を使って世界に対して身代金を要求できるようにしたという非難がなされている。

 

しかし、太陽政策全体を無駄だと斬り捨てることは間違いである。確かに失敗もあったが、太陽政策は、それが継続されていれば、より大きな成功を導き出したであろう重要な進歩を示してもいるのだ。

 

まず、私たちは、太陽政策が弱腰の、お金を渡して一時しのぎをしようとする政策で、結局北朝鮮が韓国に脅威を与えることを許した、という先入観を捨てる必要がある。

 

 

太陽政策の基礎となっているのは、韓国軍が北朝鮮の挑発行為を罰し、韓国民の声明を守ることができるという自信と信頼だ。

 

太陽政策の最初にポイントは、金大中元大統領が明確に示したように、韓国は、北朝鮮が軍事的な挑発行為を許さないという点だ。金大中政権、2003年から2004年にかけての盧武鉉政権はこの前提をしっかりと守った。1999年と2002年に、北朝鮮海軍は北方限界線(黄海上に引かれた事実上の国境線)を越えた。韓国軍は圧倒的な力で反撃し、北朝鮮海軍の将兵多数を殺傷した。一方、2010年に北朝鮮海軍は、韓国海軍のコルヴェット艦を一隻沈め、乗組員46名が犠牲となった。この時、保守派の李明博大統領は、泣き言で対応し、口だけの非難を発表しただけであった。

 

北朝鮮の挑発行為を罰することで、太陽政策は真の利益を生み出した。最大の利益は、朝鮮半島における戦争を引き起こす緊張関係と恐怖感を大きく減じさせたことである。太陽政策の最盛期、韓国国民約1000人が開城工業地域に常駐し、約54000人の北朝鮮の労働者を監督した。約200万人の韓国人観光客が北朝鮮の金剛山を訪問し、10万人が開城市の歴史地区を訪れた。北朝鮮と韓国に分かれた離散家族の再会が定期的に、年2回行われた。朝鮮戦争によって悲運にも引き裂かれた多くの家族が短い時間であったが再会することができた。朝鮮戦争以降初めて、韓国の航空会社の飛行機が北朝鮮の領空内を攻撃される心配なく自由に飛行することができた。 金正日は、金大中と盧武鉉と直接対面した。現在までのところ、韓国の大統領で北朝鮮の指導者と実際に面会したのはこの2人だけだ。

 

こうした定期的なやり取りによって、韓国国民の間に安心感と安定感をもたらした。ワシントンDCにいる国家安全保障専門家たちはこの安心感と安定感を正しく評価できなかった。太陽政策が始まって4年後の2000年に実施されたアンケートでは、調査対象となった韓国国民の77%が金大中政権の北朝鮮政策を支持、もしくは強く支持すると答えた。支持、強く支持と答えた人々のうち、65%は、「軍事的緊張を削減したこと」を支持理由の第一として答えた。

 

太陽政策は北朝鮮にも確かな変化をもたらした。韓国国民との継続的なやり取りを通じて、北朝鮮国民は南側の豊かさに触れ、共産主義システムに対する信念が揺らいだ。その具体例がチョコパイだ。チョコパイとは丸いパイ状の菓子だ。開城工業地域で操業する韓国の工場で勤務する北朝鮮の人々に休憩時間のおやつとして、チョコパイが配られた。チョコパイの人気が北朝鮮内で過熱した結果、北朝鮮の労働者たちは配られたチョコパイを食べずにとっておき、国中の闇市場で販売するほどになった。

 

北朝鮮の人々が韓国語の書かれた包みを破り、中の美味しいお菓子を食べる時、彼らは韓国と北朝鮮の間で繰り広げられたイデオロギー闘争は終結し、北側が敗北したことを示す明確な証拠を味わうことになったのだ。これは取るに足らない事象などではない。韓国のお菓子と韓国製品(韓国のテレビ番組が録画された海賊版DVD)の大量流入は、金政権のプロパガンダの把握力を大きく弱めることになった。金政権はそのことを認識している。2014年、北朝鮮当局は開城工業地域で操業する韓国の工場に対して、北朝鮮の労働者に韓国のお菓子などを与えないように求めた。北朝鮮国民により良い選択肢を示したことによる結果は確実であった。北朝鮮からの脱北者の数は2001年から増加し始めた。2001年には約500名であったが、翌年には2倍になり、2003年には2000名に達した。

 

太陽政策に対する反対者たちは声高に反対を表明している。ジョシュア・スタントン、サンヨン・リー、ブルース・クリングナーは、『フォーリン・アフェアーズ』誌最新号の記事の中で、太陽政策を叩いた。彼らは論稿の中で、北朝鮮に対する更なる制裁を求めた。

 

スタントンたちが主張しているように、太陽政策は、北朝鮮の金政権の態度を大きく変化させることに失敗したというのは事実だ。しかし、金大中、盧武鉉両リベラル政権の後に10年間続いたタカ派政権もまた変化をもたらすことができなかった。タカ派政権は厳しい言葉遣いをしたが、李明博、朴槿恵両政権は、リベラル派の前任者たちのように北朝鮮の挑発行為に対して対応することに失敗した。保守政権が続いている間に、金正恩は祖父が始めた政権を受け継いだ。

 

しかし、タカ派の論客たちは、「問題は、タカ派の度合いが充分ではなかった」と述べている。スタントンたちは次のように書いている。「ブッシュもオバマも北朝鮮の原爆実験のたびに厳しい言葉を発してきたが、両者ともに言葉を行動に裏付けることに失敗した」。スタントンたちは言及していないのは、より厳しい制裁による潜在的なリスクである。彼らは、「より厳しい制裁には時間がかかり、決断力が必要であり、米朝関係は改善するまでには一度悪化することを受け入れねばならない。同じ言葉米中関係にも言える」と曖昧に書いている。米朝、米中関係はどれほど悪化するだろうか?この疑問の答えは、最悪のシナリオが米中衝突もしくは核兵器による攻撃ということになる。スタントンたちは、北朝鮮が朝鮮半島やそれ以外の地域にまで黙示録的世界をもたらすことなしに屈服するためのちょうどよい制裁のレヴェルをきちんと測定できるという自信を持っているのだろうか?

 

皮肉なことに、タカ派の人々が想定する結末は金政権に対するより弱腰の将来である。スタントンたちは次のように書いている。「アメリカは北朝鮮が核兵器よりも重視しているある価値をターゲットにして圧迫をしなければならない。それは金政権の存続だ」。言い換えるならば、金正恩が核兵器開発を放棄すれば、彼の全体主義的支配は継続する、ということになる。タカ派の人々は一方で北朝鮮の犯した人道に対する罪を糾弾しているが、核兵器開発を放棄する限りにおいて、金正恩の血塗られた独裁政権から目を逸らすべきだという提案を行っている。

 

こうして見てみると、太陽政策の利点は明確になってくる。

 

更なる制裁による最大のリスクは核戦争だ。一方、太陽政策によるリスクは最大でも現状維持の継続だ。タカ派的対応がもたらすであろう最良の結果は、核兵器を放棄した形での謙譲維持であり、金政権の人道に対する罪は放置される。一方、太陽政策のもたらすであろうと考えられる結果は、自由主義的で市場原理の下での、南北の漸進的で平和的な再統一である。

 

太陽政策の成果は本物だ。太陽政策によって、朝鮮半島はより安全になり、一般の北朝鮮国民の金政権に対する疑念を生み出している。失敗もまた同様に本物だが、太陽政策全体を放棄するということにはならない。現在のところ、太陽政策、もしくは太陽政策に類似する政策を実施しようとすると、国連による対北朝鮮制裁に関連する韓国内のより厳格な法律のために制限に直面してしまうことになる。しかし、機能する政策は、一世代前の韓国人のように北朝鮮の人々もまたより良い将来のために必要な富と安全を手にする権利がある、という原理を前提にして立案されるべきなのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

 古村治彦です。

 

 トランプ政権のジャレッド・クシュナー上級顧問について、FBIが捜査を行っているという報道が出ました。トランプ政権とロシアとの関係を捜査するということで、マイケル・フリン前大統領国家安全保障問題担当補佐官やポール・マナフォート元選対委員長といった、現役ではない人々の名前が出ていましたが、政権の中枢を占める重要人物クシュナーの名前を、ワシントンのエリートたちはマスコミを使って、「出してきました」。

 

 ジェイムズ・コミーFBI長官が解任されたのは記憶に新しいところです。コミーは昨年の大統領選挙で政治に影響を与えたことを理由に、司法省のジェフ・セッションズ長官、ロッド・ローゼンスタイン副長官から激しく批判されました。このような状況下、FBIの捜査情報がマスコミに漏れるなどということが起きて良いはずがありません。このようなリークは、FBIの中の反トランプ、エリート集団が意図的に行ったと考えるのが自然でしょう。

 

 反トランプグループは懇意のマスコミ(ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙)を使って、まず政権内の内部闘争について、あることないことを書かせまくりました。トランプ政権内部に亀裂を生じさせて、内部分裂を誘うためです。これがうまくいかないと見るや、今度は、現在トランプ大統領が厚く信任しているクシュナー攻撃を始めようとしています。

 

 しかし、ここまでマスコミを使って激しく攻め立ててみても、トランプ政権内部に動揺は見られません。反トランプ側は今は勢い良く攻撃をしていますが、そのうち弾切れになって、「それじゃクリントン財団とオバマ政権時のヒラリー・クリントン国務長官の関係はどうなるんだ」「権力に近いことを利用して便宜を図ったりしなかったのか」ということになるでしょう。

 

 ただ、現在のところ、攻撃の勢いは大変に強く、不快さを増しているのは間違いのないところです。

 

(貼りつけはじめ)

 

ロシア関連捜査でジャレッド・クシュナーが捜査対象に(Jared Kushner under FBI scrutiny in Russia probe: reports

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年5月25日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/national-security/335234-jared-kushner-under-fbi-scrutiny-in-russia-probe-report

 

トランプ大統領の義理の息子で上級顧問であるジャレッド・クシュナーに対して、トランプ選対とロシアとの間の共謀に関するFBIの捜査で詳細な捜査が行われていると報じられた。

 

NBCニュースは、「FBIがクシュナーの捜査を行っているが、これは彼を犯罪の容疑者として疑っているということでも、FBIのロシア関連捜査の利害当事者と考えられているということを必ずしも意味しない」と報じた。

 

『ワシントン・ポスト』紙は、政権移行中の昨年末、クシュナーが駐米ロシア大使セルゲイ・キシリアックとロシアのある銀行幹部と会談を持ったことについて捜査が行われていると報じた。

 

ワシントン・ポスト紙は先週、FBIが、ロシアのアメリカ大統領選挙に関する介入を行った容疑の捜査で、現役のホワイトハウス幹部が、関連を持つ捜査対象者としてピックアップしていると報じた。しかし、この時は捜査対象者の名前と身分は明らかにされなかった。

 

クシュナーは現在のホワイトハウスの中で、トランプ大統領に対して最も大きな影響力を持つ側近で、トランプ政権の政策遂行の責任を任されている。

 

クシュナーがロシア関連捜査で対象者となっていることが明らかにされた。今から2週間前、トランプ大統領は、ジェイムズ・コミーFBI長官を曖昧な理由で解任した。当時、コミー長官は捜査を監督する立場にあった。

 

先週、ロッド・ローゼンスタイン司法副長官は、ロバート・ムラー元FBI長官をロシア関連捜査の監督のための特別検察官に任命した。これとは別に、ロシアに関する問題について、連邦議会には少なくとも4つの委員会が設置されている。

 

これまでFBIは、フリンやトランプ選対の委員長だったポール・マナフォートに集中して捜査していた。クシュナーは、ホワイトハウスの現役幹部の中で初めて、捜査対象となっているということが明らかになった人物だ。

 

民主党全国委員会はホワイトハウスに対して、クシュナーに与えられている機密情報取り扱い許可を停止するように求めた。昨夏、民主党全国委員会は、ロシアが関連していると考えられているコンピューター・ハッキングのターゲットとなった。

 

民主党全国委員会コミュニケーション部副部長エイドリアン・ワトソンは木曜日、声明を発表した。声明の中で、ワトソンは、「FBIによるロシア関連捜査はトランプの裏庭にまで及んでいたが、ついに家の中にまで達した。クシュナーに対する機密情報取り扱い許可は、FBIの捜査が完了するまで、停止されねばならない」と述べた。

 

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クシュナーが特別検察官に対して攻撃的な対応をするようトランプに主張(Report: Kushner urged aggressive Trump response to special counsel

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2017年5月18日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/334056-report-kushner-urged-trump-to-attack-after-special-counsel

 

トランプ大統領の義理の息子であり上級顧問であるジャレッド・クシュナーは、水曜日に召集されたホワイトハウスの会議の席上、より抑制された反応に関して、「攻撃」的な反応をするように主張したと報じられた。

 

元FBI長官ロバート・ムラーが米大統領選挙に対するロシアの介入とトランプ選対とロシアとの間の共謀に関する司法省の捜査を管轄する特別検察官に任命された後、ホワイトハウスで会議が召集された。会議の結果、ムラーの任命に対するホワイトハウスからのメッセージが矛盾する内容になった。

 

トランプはムラーの任命を知り、クシュナー、シーン・スパイサー報道官、マイケル・ドゥブキ広報部長、レインス・プリーバス大統領首席補佐官、スティーヴン・バノン首席ストラティジストといった側近たちを召集した。

 

側近のほとんどはトランプ大統領に対して司法副長官の決定を受け入れる内容の声明を発表するように促した。しかし、クシュナーはこの意見に同意しなかった、とニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して2人の政権幹部が述べた。

 

クシュナーだけは大統領に対して反撃するように促した。

 

ホワイトハウスは水曜日夜に声明を発表し、新たに任命された特別検察官が連邦捜査機関の捜査を主導し、トランプ選対とモスクワとの間に共謀は存在しないということを発見するだろうという信頼を表明した。

 

トランプ大統領は水曜日、声明を発表した。声明の中で、トランプは次のように述べた。「徹底した捜査によって、私たちが既に知っていることが正しいことが証明されるだろう。私の選対と外国との間に共謀など存在していない。私はこの問題が即座に終結することを望んでいる」。

 

木曜日、トランプ大統領は毎朝の恒例になっているツイートの中で、前日の抑制された反応とは全く違う反応を示した。

 

「これは一人の政治家に向けられた、アメリカ史上最大の魔女狩りだ!」とトランプはツイートした。

 

「クリントン選対とオバマ政権で行われた全ての違法な行為に対して、特別検察官が任命されたことはなかった」とトランプは別のツイートの中で述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)



アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22




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