古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 国際関係論

 古村治彦です。

 

 アメリカでは共和党提出の税制改革法案が可決し、トランプ大統領が署名して法律となります。企業に対する大幅減税となり、トランプ大統領の、減税によって国内投資や雇用を増やして経済を成長させる、という公約実現へ一歩進んだ形になります。国債発行高は増えてしまうということもありますが、経済が伸びれば税収も上がるのでそれで賄えるということになります。そこまでうまくいくかは分かりませんが。

 

 共和党の税制改革が実現したことで、2018年の中間選挙はどうなるのかということも注目されますが、現在のところ、共和党の指示は伸びておらず、もし近々で中間選挙があれば、民主党が勝利するであろうという予測が出ています。北朝鮮情勢の推移、具体的には、米軍の攻撃があるかどうかで中間選挙の予測は変わってきますので、目が離せないところです。

 

 アメリカの税制改革の影響を受けそうだと判断した中国政府は、外国企業に対する優遇税制を発表したそうです。中国国内であげた収益に税金をかけない、その代わり、その収益は中国国内に投資せよ、というものです。これは中国への海外投資が減り、アメリカへの投資が増えることを見越しての対抗措置ということになります。外国企業の収益に税金をかけることで逃げられてしまうよりも、その収益を全部中国に置いていけ、という見方によってはより厳しいやり方ということも言えます。

 

 多国籍企業が稼ぎ出すお金を税金でとるか、投資を誘引してとるか、ということになりますが、どちらがより互恵的なのかということになると、投資を誘引させる方がより賢いということになるでしょう。投資によって生み出された雇用と消費によって税収は増えるのですから。しかし、このような思い切った方策は中国以外では難しいでしょう。アメリカはトランプ大統領の政策への期待から株高が続き、これを目当ての資金も還流しているでしょうから、中国政府の誘引もどれほどの効果があるか、ということになります。

 

 こうして見ると、経済面では今年もまた中国が伸び、アメリカがイラつきながら株高で対抗という感じになるでしょうか。日本もマイナス金利とGPIFの株式投資で、なんだか奇妙な経済成長をしているのに、皆が心に中で「2020年まで、オリンピックまで」と心の中で唱えながら、その時に貧乏くじを引きたくないと考えて、景気が実感できないというなんだか変なパラレルワールドで生活するという感じになるでしょう。

 

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共和党の税制改革法案の可決の後に中国が外国企業にたいする優遇税制を発表(China to offer tax breaks to foreign companies after GOP tax bill

 

ジャクリーン・トムセン筆

2017年12月29日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/international/china/366752-china-to-offer-tax-breaks-to-foreign-companies-after-gop-tax-bill

 

中国は外国企業に対して優遇税制措置を行うと発表した。これは、共和党の税制改革計画によってアメリカ国内により投資をし、ビジネスを展開する誘因が出てくる中で、外国企業日して中国にとどまるように求めるものである。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、中国政府は一時的に外国企業が中国で出した収益に対する税金を支払わないことを許可するだろうと報じた。

 

中国財務省は木曜日に発表した声明の中で、優遇税制によって、「外国からの投資の増加を促進し、外国からの投資の質を上げ、海外の投資家たちからの中国への投資をこれからも拡大を奨励する」ことになるだろうと述べた。

 

しかし、外国企業は最先端技術や鉱山といった中国政府が投資を促している分野に収益を投資しなければならない。優遇税制は2017年1月1日に訴求して適用される。

 

今回の中国政府の発表は、トランプ大統領が共和党提出の税制改革計画に署名をして法律化するとなって数日後に行われた。共和党の計画では、製造業者をアメリカに惹きつけるための法人税のより低い税率も含まれている。

 

今回の発表はまた、中国の高い税率とビジネスに対する制限に関して外国企業が懸念を持っている中で行われた。欧米の各企業は複雑な法律と中国の消費者へのアクセスが制限されている中では、中国国内でビジネスを行うことは難しいと主張している、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 

トランプ大統領は、中国について、貿易の面でアメリカはより競争力を持つ必要がある国だと強調している。

 

トランプは11月の訪中において、中国の貿易慣習の使用について次のように述べた。「私は中国を非難しているのではない。だいたい、自国民のために他国を利用する国を責めることを誰ができようか。私は中国を大いに称賛する」。

 

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●「ゴールドマン利益5600億円減…米税制改正で」

 

読売新聞 20171230 2214

http://sp.yomiuri.co.jp/economy/20171230-OYT1T50071.html

 

 【ニューヨーク=有光裕】米金融大手ゴールドマン・サックスは29日、米国の税制改正法の成立で、2017年10~12月期の利益が約50億ドル(約5600億円)減少する見通しとなったと発表した。

 

 米国外で保有している利益を米国に還流する際にかかる税金が、約3分の2を占めるという。米国のトランプ政権は、自国内での設備投資や研究開発などを拡大し、経済成長につなげるため、海外に滞留する米企業の利益を国内に還流させる際の税率を引き下げた。

 

 市場では、ゴールドマンが還流させた資金を自社株買いや株主配当の増加にあてるとの見方が出ている。

 

 残りの約3分の1については、連邦法人税率の引き下げで繰り延べ税金資産を取り崩すことなどを理由に挙げた。従来の想定よりも将来払う税金が減ることから、損失として計上する。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 北朝鮮については、なかなか渡航できず、情報も制限されており、実態がつかみにくい国です。たまにテレビや雑誌で隠し撮りされた写真や映像が流れたり、脱北者の証言が報道されたりで、そういうものから私たちはそれぞれに北朝鮮のイメージを作っています。YouTubeにアメリカ人が観光で北朝鮮を訪れた際に隠し撮りした映像があり、私にとっては興味深いものでした。

 

 韓国の統計庁という政府機関が北朝鮮の統計指標を毎年発表しているそうです。2017年度版が昨年12月に発表になっているそうです。『東洋経済』誌の福田恵介記者が統計数字を日韓と比較しながら、分析記事を書いています。

 

 経済規模も小さく、国民一人当たりの所得も大変低いわけで、日本や韓国の数十分の1、百分の1という数字が並んでいるのですが、北朝鮮が3.9パーセントの経済成長をしている、出生率が1.93で韓国や日本よりも高いという数字は私にとって驚きでした。

 

 鉱業生産、石炭や鉄鉱石の生産は韓国よりも優位に立っているというのは当然ですが(日本統治時代に北部は工業、南部は農業に適しているのでそのように開発された)、石炭の生産によって火力発電に使う石油の代替が出来ているとなると、石油の禁輸の効果も薄れてしまうと思われます。

 

 国連や日本による経済制裁を受けているのに、貿易が数千億円規模あって、経済成長率が3.9パーセントというのは私たちのイメージ外の北朝鮮の姿です。そして、食糧生産高は韓国と変わらない量であること(韓国は日本と同じく農産物を輸入している、できているということではありますが)、北朝鮮の人口が韓国の半分ですから、輸入が足りない、不足気味ではあっても一応食べていけているのだろうと推測されます。そうでなければ出生率が1.93で、人口増加もしているという数字は出てきません。

 

 そして、ご飯が食べることが出来て、出生率も高いということになると、これは、金正恩政権は安定していると言うことが出来ます。国民が金正恩の支配の正統性を認めているということになるでしょう。ご飯が食べられて、家族を形成できるとなると、北朝鮮国内で金体制を転覆させる勢力が力を持ちにくいということになります。

 

 このような状況では、金正恩政権を倒すこと、北朝鮮の統治システムを根本から作り直すことは難しいということになります。特に外国勢力がそのようなことをすれば、反感を生むだけということになるでしょう。ですから、アメリカは北朝鮮の体制転換までは考えていないと思われます。核兵器とミサイル開発を止めさえすれば、あの国がどうなろうが知ったことか、そこは中国とロシアが面倒を見ろよ、ということになります。

 

 中国とロシアにしてみれば、お荷物であることは事実ですが、北朝鮮があることで、米軍と国境で対峙しなくて済むというメリットもあります。ですから、中露両国はなんとかして北朝鮮情勢を軟着陸させたいと考えているでしょう。しかし、北朝鮮が中国に対して舐めた態度を取るようならば、膺懲ということがあるでしょう。その時にアメリカが中国に協力して地上軍の投入なしで、空爆、ミサイル攻撃で支援するということはあるのだろうと思います。

 

 しかし、北朝鮮を徹底的に破壊するという選択肢は米中露には存在しません。うまく北朝鮮を軟着陸させるという選択肢の実現のために、苦労しているということになるのでしょう。

 

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●「経済統計で見える「北朝鮮」の知られざる実像」

人口は韓国の半分、1人当たりGNI22分の1

 

2018年1月2日

福田 恵介 : 東洋経済 記者

『東洋経済』誌

http://toyokeizai.net/articles/-/203023

http://toyokeizai.net/articles/-/203023?page=2

http://toyokeizai.net/articles/-/203023?page=3

 

人口は韓国の半分、1人当たり国民総所得(GNI)22分の1――。韓国統計庁は201712月、「2017北朝鮮の主要統計指標」を発表した。

 

毎年12月、韓国政府は収集・推測したデータを基に、韓国と比較しながら前年の北朝鮮の経済分野などの統計を発表する。核実験とミサイル発射で日米など東アジア情勢をかきまわす北朝鮮。北朝鮮と言えば軍事面ばかり強調されるが、北朝鮮の経済・社会的姿がうかがえる統計だ。

 

今回発表された統計によると、2016年の人口は北朝鮮が2490万人(前年比12万人増)、韓国が5125万人(同23万人増)と、北朝鮮の人口は韓国のほぼ半分の規模だ。また、北朝鮮の出生率は1.94と、1.33の韓国を上回っている。

 

2016年の経済成長率は3.9%増

 

経済規模はどうか。2016年の北朝鮮の国民総所得(GNI、名目)は363730億ウォン(約3.8兆円)、1人当たりGNI146万ウォン(約15万円)で、前年比でそれぞれ1兆ウォン、7万ウォン増となっている。

 

韓国はそれぞれ16390665億ウォン(約172兆円)、3198万ウォン(約336万円)で、韓国と比べると北朝鮮の規模は45分の122分の1となる。日本の1人当たりGNIは約415万円(2015年)だ。また、経済成長率は北朝鮮は3.9%で、前2015年のマイナス1.1%から、一気にプラスへと回復したようだ。

 

核・ミサイル開発で北朝鮮に対する経済制裁が強化され、対外的な経済活動に制約を受けている北朝鮮だが、2016年の貿易総額(輸出額と輸入額の合計)は65億ドル(約7360億円)となっている。韓国は9016億ドル(約102兆円)で、北朝鮮の139倍の規模だ。北朝鮮の貿易総額のうち、輸出額は28億ドル(約3171億円)、輸入額は37億ドル(約4190億円)。ちなみに2016年の日本の貿易総額は約136兆円だった。

 

日本では食糧不足のイメージが続く北朝鮮の農業生産はどうか。2016年の食糧作物生産量は482万トン(前年比31万トン増)、韓国は471万トンとほぼ同レベルだ。そのうち、北朝鮮のコメ生産量は222万トン、トウモロコシは170万トンだ。北朝鮮が自給できる食糧作物生産量は550万~600万トンと言われている。食糧作物生産量のうち韓国はコメがほぼ9割を占めるが、北朝鮮ではトウモロコシも主食の一つとされている。

 

2017年秋から山形県や秋田県、石川県などの海岸に漂着する北朝鮮漁船が相次いでいる。北朝鮮の漁獲量をみると、2016年は101万トンで前年の93万トンより増えている。だが、韓国は325万トンで、3分の1の規模だ。日本は465万トン(2015年)水準である。

 

鉱工業統計では北朝鮮が優位に

 

北朝鮮が韓国を上回る数少ない経済データは、鉱工業関連統計だ。たとえば石炭生産量は北朝鮮が3106万トン(前年比357万トン増)、鉄鉱石は53万トン(同3.4万トン増)と、韓国の173万トン、4.5万トンよりはるかに多い。

 

朝鮮半島はもともと現在の北朝鮮である北部地方に地下資源が多く眠っている。また、1990年代後半からの経済難や自然災害で鉱山の生産活動が萎縮していたが、2010年以降、緩やかな経済回復を追い風に掘削など生産設備の更新も進んで生産活動が徐々に正常化したことが、増産の背景となっている。

 

だが、経済活動の基本となる電力生産量がふるわない。北朝鮮の発電設備容量は766万キロワットで韓国の14分の1。発電量も239億キロワット時で、韓国の23分の1水準だ。前2015年はそれぞれ743万キロワット、190億キロワット時で増加傾向にはあるが、十分な経済活動を行うには足りないことは、北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も認めている事実だ。

 

20171012月に平壌を訪れた中国人や在日コリアンらに話を聞くと、「停電もほとんどなく、電力事情は悪くはなかった」と口をそろえる。最も簡単に入手できる石炭を燃料とする火力発電所を増やし、電力供給量を増やしていることもある。最近では、「石炭から原油を生産する石炭液化を積極的に進めている」という話も出てきた。しかし、経済制裁で原油やガソリンなどの石油関連製品の輸入が強く制限され始めており、2018年以降、発電事情がより厳しくなるとの見方が多い。

 

ユニークな統計も発表されている。携帯電話加入者数だ。北朝鮮での携帯電話加入者数は361万人で、10人に1.4台となり、まだ11台という状況ではない。北朝鮮では200812月ごろから移動通信事業が本格化したが、2009年の加入者は7万人だった。

 

その後、金党委員長政権が本格化した2012年以降、加入者数は増加。170万人から翌2013年は242万人に、2015年には324万人と300万台を突破した。平壌など都市部では携帯電話で通話する市民の光景は日常茶飯事となって久しい。

 

平壌市内には、日本のような携帯電話販売店も出現。北朝鮮で製造されているとされる「平壌」「アリラン」「チンダルレ(日本語でツツジ)」といったブランド名が付けられた携帯端末が販売されている。どのブランドも、現在はいわゆるガラケーとスマートフォンともに製造・販売されている。同時に、さまざまな携帯電話向けアプリも開発され、通信教育にも使用されているという。

 

韓国政府の意向が働く場合も

 

だが、韓国側が発表する北朝鮮統計には、注意も必要だ。その理由はまず、あくまでも韓国側の推計であることだ。北朝鮮は「敵国である米国に自国の状況を知らせるわけにはいかない」(朝鮮社会科学院経済研究所)という理由で、自国の統計を発表していない事情もあるが、韓国の情報機関などが情報分析などを土台に、これら統計を推計しているに過ぎない。韓国のある統一相経験者も「おおよそのトレンドがわかる統計」と述べるなど、その正確性については口を濁すほどだ。

 

さらに、韓国の時の政権における北朝鮮政策のスタンスによって、数字に手を加えられることもある。たとえば前述した経済成長率の場合、2015年のそれはマイナス成長と発表された。だが、2012年以降は平壌だけでなく全体的に北朝鮮経済が改善していることが実感できる状況だったのも事実で、けっしてマイナス成長とされるような要因を探すことは難しかった。

 

朴槿恵(パク・クネ)前政権は北朝鮮に対して厳しい政策スタンスを取っていたため、あえて低めの数字が発表された可能性もある。一方、20175月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権は前政権よりも北朝鮮との対話を重視する方針であり、より温和な対北朝鮮政策を掲げている。そのような背景もあり、3.9%と前年比で大幅なプラス成長として発表されたのではないかとの見方もある。

 

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 北朝鮮の最高指導者金正恩朝鮮労働党委員長が新年の挨拶を行い、その様子がテレビで放映されたということです。その中身は、「自分の机の上には核兵器発射のボタンがある」と述べながら、韓国での冬季オリンピックの成功を祈り、北朝鮮からの選手団が参加する用意があるということを表明するものでした。日本の報道では、核兵器発射のボタンの話ばかりが報道されているような印象がありますが、韓国との対話についての言及はとても重要であると思います。

 

 北朝鮮が核兵器とミサイル開発(共に旧ソ連、ロシアの支援を受けてのことでしょう)を推進し、現在、どの程度の実力を有するようになっているのかは未知数です。アメリカ領土を正確に狙い撃ちできるICBMを持っているのか、それに搭載できるだけの小型化された核兵器を所有しているのか、ということは分かりません。この分からなさが北朝鮮の力となり、交渉力となります。本来であれば、この分からなさをできるだけ高く売りつけて、何らかの約束、妥協、条件を引き出そうとするはずです。

 

 アメリカは北朝鮮がアメリカ領土を攻撃できる大量破壊兵器を製造するならば、武力行使もあり得るという立場を取りつつ、レックス・ティラーソン国務長官は交渉を優先するという立場を堅持しています。アメリカは明確な圧倒的な軍事力を背景に条件、譲歩を引き出そうとしています。

 

 金正恩は韓国に対して、対話の用意がある、オリンピックの成功を祈る、北朝鮮選手団が参加する用意があるという発言を行いました。これまでにない柔らかな内容の発言です。韓国側も早速対話の用意があり、オリンピックで北朝鮮選手団を歓迎するというシグナルを送っています。

 

 これはオリンピックが終わるまでは、朝鮮半島の緊張を高めることはないというメッセージであり、国際社会に対する宣言でもあります。このような発言があった以上、アメリカとしてもオリンピックまでは緊張を高めるわけにはいきません。

 

 昨年、米朝間で指導者同士が激しい言葉遣いの応酬をしたために、緊張が高まりすぎてしまったという反省もあっての今回の新年の挨拶になったと思います。

 

 激しい言葉遣いで相手をけん制しながら、自分の持っているカードを高く見せて、取引をするということになる訳ですが、激しい言葉遣いばかりをしていると、その言葉尻を相手にとらえられて、身動きが出来なくなります。

 

 太平洋戦争直前の日本を考えてみるとよくわかります。軍部も政府もアメリカと戦争するつもりなんか全くなく、日中戦争も終わらせたいと思っていました。しかし、意図しない方向、裏目裏目に事態は進んでいきました。メンツにこだわったこと、激しい言葉遣いで挑発的な言辞を繰り返したことで、自分たちを追い詰めていきました。

 

 そうして考えると、北朝鮮は戦前の日本よりもしたたかで、柔軟であると思われます。細い塀の上を落ちないように歩いている、そんな感じです。私はぎりぎりのジェンガを崩さないように慎重にかつ大胆に抜いている、という譬えを使っています。

 

 しかし、そうした状況下で怖いのは突発的な事故で、それを意図的に起こすという人たちもいます。そうなった場合には予想もつかないことが起きる、そうなったら人間ではコントロールできない状況ということも生まれてしまいます。最悪のシナリオは、北朝鮮が暴発して、死なばもろともで核兵器やミサイルを打ちまくるということですが、これはあまりにも可能性が低いシナリオではないかと考えます。

 

 アメリカも北朝鮮も人間のコントロールできる範囲内で何とかしようと動いている、そのように見えます。

 

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●「核のボタンは自分の机の上に 金正恩氏、オリーブの枝も」

 

2018年1月1日 BBCニュース日本語版

http://www.bbc.com/japanese/42532301

 

北朝鮮の最高指導者・金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は1日午前9時(日本時間同9時半)、テレビ放映された新年のあいさつで、米国が「戦争を決して始められないよう」に、自分の机には常に核兵器発射のボタンがあると述べた。

 

朝鮮中央テレビが放送した新年のあいさつで、金委員長は、米国全土がすでに北朝鮮の核兵器の射程圏内にあり、「これは脅しではなく、現実だ」と強調した。委員長はさらに、「核弾頭や弾道ミサイルを大量生産し、製造スピードを速めなくてはならない」と述べ、核・ミサイル開発事業の推進に意欲を示した。

 

しかしその一方で、自分には韓国と「対話の用意がある」とも述べ、韓国に対する友好の「オリーブの枝」ともとれる表現をした。

 

委員長は「2018年は北と南の双方にとって、大事な年になる。北は建国70周年を迎え、南は冬季五輪を開催する」と指摘。この表現は、過去1年間の敵対的な姿勢から大きく逸脱したものと受け止められている。

 

金氏はその上で、今年29日から韓国・平昌で予定される冬季五輪に選手団を送る可能性もあると、さらに友好姿勢を示唆した。韓国は以前から、北朝鮮選手団の出場を歓迎すると表明している。

 

「冬季大会に参加すれば、民族の団結を示す良い機会になる。大会の成功を願っている」と委員長は述べ、「両国の担当者が喫緊に会談し、その可能性を協議するかもしれない」と五輪出場に前向きな姿勢を示した。

 

金委員長の警告について記者団に聞かれたドナルド・トランプ米大統領は、「どうなるかこれから分かる」と答えた。トランプ氏は、フロリダ州の私邸リゾート「マール・ア・ラーゴ」で新年を迎えた。

 

北朝鮮が1129日に試射したミサイル「火星15」は、高度4475キロに達し、53分をかけて960キロ飛行した後、日本海に落下した。国際宇宙ステーションの10倍以上の高度で、通常の軌道で発射していれば13000キロ以上飛行した可能性がある。この場合、米本土全土が到達可能だったことになる。ただし、核弾頭をそれだけの距離にわたり運べるかは不明。

 

北朝鮮は、完全に実戦配備可能な核兵器を開発したと主張しているが、専門家の間ではまだ疑問視する声もある。

 

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●「韓国側、正恩氏の新年辞を歓迎 南北協議に応じる考え」

 

1/1() 17:15配信 朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180101-00000037-asahi-int

 

 韓国大統領府報道官は1日午後の記者会見で、平昌冬季五輪への北朝鮮代表団派遣を巡る南北協議に応じる考えを示した。報道官は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の新年辞について「南北当局間の面会提案を歓迎する」と述べた。

 

 また、「北核(北朝鮮の核)問題を平和的に解決する」と強調。「半島問題の直接の当事者として南北が相対し、緊張緩和と平和定着の解決方法を見つけることを望む」と述べ、五輪問題だけでなく安全保障問題でも主導権を握りたい考えを示した。(ソウル=牧野愛博)

 

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 古村治彦です。

 

 2017年もあと少しで終わり、2018年を迎えます。2018年における重大な関心事はやはり北朝鮮問題ということになるでしょう。北朝鮮はこれからも核兵器とミサイル開発プログラムを推進するのか(これは間違いなく進めるでしょう)、アメリカはこうした動きにどのように対処するのか、北朝鮮と関係が深い中露はどのように対処するのか、ということが焦点になります。より簡潔に述べるならば、「アメリカは北朝鮮を攻めるのか」ということが最大の関心事ということになるでしょう。

 

 ドナルド・トランプ米大統領は激しい言葉遣いですので、米軍の北朝鮮侵攻があると考える人も多いと思います。しかし、トランプ大統領は激しい言葉遣いをしながらも、行動は慎重である場合が多いです。そもそもアメリカが海外の問題に首を突っ込みすぎると言って当選した人ですから、アメリカの安全に大きな脅威がなければ外国のことはほっておけ、もしくは近くの大国が責任を負うべきだと考える人です。ですから、北朝鮮に関しては、ロシアと中国が責任をもって何とかすべきだと考える人です。

 

 北朝鮮がアメリカに到達するミサイルを開発しようとしているのだから、これを止めるということはトランプもやるでしょう。そのやり方をめぐって、話し合いか、そうでなければ軍事行動かということになります。下にご紹介するのは、軍事行動は良くないとする論稿ですが、これは非常にナイーヴというか、「戦争になったら大変なことが起きる」ということを強調しています。ですから、封じ込めと話し合いで何とかすべき、ということを述べています。

 

 北朝鮮は、ぎりぎりのジェンガをプレーしているかのように、慎重にかつ大胆に行動します。ジェンガが崩れてしまわないように、しかし、アメリカに舐められないようにという行動のように見えます。トランプ大統領の首席ストラティジストを務めたスティーヴ・バノンが「北朝鮮は賢い、レッドラインは超えない」と発言しているのも分かります。

 

 しかし、北朝鮮を封じ込めることはできず、より厳しい完全封鎖のような経済制裁を行えば暴発するかもしれず、しかし、中途半端な制裁ではミサイル開発を進めてしまうということになると、ミサイル開発を放棄させるにはより強制力の伴った方策が必要になります。

 

 米軍が陸海空の各軍を動員しての大規模な作戦を展開するかと言うと、これは難しいように思います。北朝鮮は中国とロシアに隣接していますので、中露両国は反対するでしょう。そうなれば、中露両国も巻き込んでの強制的な方策ということになります。中露が強制的な関与を行うとなると、北朝鮮の中ロ国境を封鎖し、米軍が空爆、その後に中露軍で侵攻、治安回復、治安維持、新体制樹立、中露軍の撤退ということになるでしょう。そして、北朝鮮は米中露韓日に囲まれた緩衝地帯、国全体が非武装地帯とされ、中国型の社会主義市場経済を採用、海外からの投資を積極的に受け入れるという形で経済発展を行うということになるのではないかと思います。

 

 金正恩については中国かロシアへの亡命と海外資産の一部を金一族に与える、現在の北朝鮮のエリート層に対する取り扱いは、ごく少数を犯罪者として裁判にかけ、それ以外は国家再建に当たらせる(戦後の日本のように)となるのではないかと思います。

 

 大規模戦争による完全な破壊ではなく、できれば金正恩と最高幹部たちだけを追い落として、緩やかな体制変更を行い、国家再建を行うというシナリオが望ましい、そのためには、限定的な軍事力行使が良いのだろうと思いますが、限定的というシナリオがうまく運ぶ保証がない、偶発的なことが起きて、結局、周辺諸国にも被害が出て、北朝鮮が完全破壊という結末になってしまうということが怖いということになります。

 

 そうしたことにならないためには、アメリカや中国が今のうちから北朝鮮人民軍の中に協力者を多く仕立てておくことが必要でしょう。米中による介入に対して、大規模な報復や反撃がないようにするには、北朝鮮人民軍の中に協力者を作って、金正恩からの命令に対してサボタージュをしてもらわねばなりません。わざと負けるように動いてもらわねばなりません。そのための準備が今行われ、来年に北朝鮮情勢に関して大きな変化が起こるのではないかと私はそんな風に感じています。

 

 2017年にはいろいろとお世話になりました。ありがとうございます。2018年もどうぞよろしくお願い申し上げます。2018年が皆様にとりましてより良い1年となりますように祈念申し上げます。

 

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トランプの対北朝鮮戦略そのものが大いなる脅迫的言辞でしかない(Trump’s entire North Korea strategy could be a giant bluff

 

ハリー・J・カジアニス筆

2017年12月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/opinion/national-security/366498-trumps-entire-north-korea-strategy-could-be-a-giant-bluff

 

北朝鮮が彼らにとっての古典的な策略に戻っているという報道がなされている。ミサイルの試験発射を「衛星」と言い換えている。これはミサイル発射テストをより恐怖感を与えない名称にしているのだ。一つのことは確実に言える。北朝鮮危機は終わっていない。

 

実際、トランプ政権の高官たちと彼らの代弁者たちは毎日「軍事的オプション」を支持する発言を行っている。彼らの発言は曖昧で、金政権の行っている核兵器とミサイル開発に対する、予防、先制攻撃、衝撃と恐怖を与える攻撃といった内容が混ざっている。しかし、はっきりしていることは、トラブルは少しずつ大きくなっているということだ。ワシントンを拠点とする専門家たちの多くは、北朝鮮が核兵器とミサイルを放棄しない、もしくは武器の実用テストをすぐに止めて交渉の席に戻らない、ということが続くだろうという懸念を持っている。

 

本当にそうだろうか?トランプ政権は、「」「」One of the possible policy options is that the Trump administration, with its talk of “fire and fury,” that the regime would be “will be utterly destroyed” in a war or that “we will have no choice but to totally destroy North Korea” if forced to defend our allies” might not be ready poised to strike at all.これ以外の政策は可能ではないということになる。

 

実際、私は専門家たちの多くとは異なる考えを持っている。激しい言葉遣いは脅し文句であって、北朝鮮に対する軍事行動の脅威はこの脅し文句の効果を高めるためのものだ、と私は考えている。

 

現在の東アジアの軍事的な状況を見るだけでも、このような脅し文句で相手を屈服させるという戦略があるということを示す明確な証拠は見つかる。トランプ政権が真剣に北朝鮮に対する軍事行動を考慮しているとするならば、北東アジアにおいて大規模な米軍の編成がなされていなければならないが、そんなものはどこにあるだろうか? トランプ政権が金正恩政権の核兵器とミサイル開発プログラムをストップさせる、もしくは完全に放棄させるために軍事行動を考慮しているのならば、北東アジア地域における大規模な軍の編成替えが見られるはずなのだ。

 

もし攻撃が決定されていれば、空母を中心とした戦闘群をはじめとする各種艦艇が北東アジア地域に向かっているはずだ。B1爆撃機、B2爆撃機に多数のF22、F35ステルス戦闘機が同行するだろう。北朝鮮が報復として韓国への侵攻を決定すれば、地上軍の編成も行われるだろう。しかし、実際には極めて標準的な訓練と行動以上のものは見られない。

 

攻撃力に加え、北朝鮮による反撃からアメリカの同盟諸国と北東地域にいるアメリカ市民を守るための行動を取っているはずだ。たとえば、アメリカ国民は日本と韓国から退去することになるだろう。アメリカ政府は韓国政府と日本政府に対して、パトリオットミサイルとTHAAD(サード)ミサイルの防衛システムの増強を受け入れるように圧力をかけるだろう。防衛システムは、北朝鮮による核兵器、化学兵器、生物兵器を搭載したミサイルによる反撃を避けるためのものだ。繰り返しになるが、アメリカ政府がこのような準備を進めている兆候は全く見当たらないのだ。

 

公平に見ると、戦争のタイミングについては、春までの発生の可能性については疑問符が付く。来年は韓国で冬季オリンピック大会が開催される。この場所は非武装地帯と北朝鮮の砲撃陣地とミサイル基地からわずか60マイル(約100キロ)しか離れていない。実際のところ、トランプ政権はオリンピックが終わることを待っているというのは戦争が起きる場合にはありそうなことではある。

 

アメリカが北朝鮮国内から大量破壊兵器を一掃するために軍事攻撃を行うと決断する場合に、何が起きるのかを研究する人たちにとっては、世界規模での危機を生み出しながら、北朝鮮の大量破壊兵器を一掃することに失敗することが懸念の対象になっている。北朝鮮は核兵器とミサイル開発プログラムに対する攻撃はいかなるものであっても存在を脅かす脅威ととらえ、核兵器の一部を地中深くに秘匿する動きを加速するだろう。北朝鮮は残存しているあらゆる武器を使って反撃に出る可能性が高い。ソウルや東京のような巨大都市に対する核攻撃の可能性もある。ソウルの都市圏には2500万人が暮らし、東京の都市圏には3500万人が暮らしている。

 

戦争終了後、この場合北朝鮮は戦争に敗れているのは間違いないところだが、数百万の人々が遺体として安置されているだろう。何兆ドルもの資金は北東アジアの広い地域の再建のために必要となる。北朝鮮は悲惨な状況に置かれ、巨額の財政的支援を必要とする。2人の学者は、敗戦直後の北朝鮮は世界史史上最大規模の国家建設の最初のページとなるだろうと述べている。

 

北朝鮮との戦争を選択することは深刻な誤りとなるであろう。数百万の人々の生命が失われるだろう。従って、金政権による核兵器とミサイル開発プログラムについては、封じ込めと抑止政策が最も現実味を持つ。トランプ政権が脅し文句を多用する口先だけの強硬姿勢を止め、真剣に対処するのは今だ。

 

ハリー・J・カジアニス:「センター・フォ・ザ・ナショナル・インタレスト」防衛研究部長。「センター・フォ・ザ・ナショナル・インタレスト」は1994年にリチャード・M・ニクソン元大統領によって創設された。カジアニスはセンターの出版部門である『ナショナル・インタレスト』誌の上級部長でもある。 カジアニスは2016年の大統領選挙でテッド・クルーズ連邦上院議員の外交政策ティームに参加した。また、ヘリテージ財団外交政策コミュニケーションマネジャー、『ザ・ディプロマット』誌編集長、戦略国際問題研究センター(CSIS)研究員を歴任した。本稿の主張はカジアニス自身のものである。

 

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夏にも空爆か 軍事オプションしかなくなる対北朝鮮Xデー

 20171230>> バックナンバー

 

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/220482/1

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/220482/2

 

 金正恩に振り回された2017年。18年は、北朝鮮問題にケリをつける一年になる可能性が高い。アメリカにとって残された時間がわずかになっているからだ。

 

 北朝鮮は、1年以内にアメリカ全土を射程圏内に入れる“核ミサイル”を実戦配備する可能性が高いとみられている。実際、6回の核実験と、年間15回のミサイル発射によって北朝鮮の技術力は急速に上がっている。北朝鮮が核ミサイルを完成させたら手遅れになる。トランプ大統領が、その前に北朝鮮を攻撃しようとするのは間違いない。

 

「2018年、アメリカが軍事オプションに動く可能性はかなり高いと思う。もはや、話し合いでは北朝鮮が核を放棄しそうにないからです。アメリカは北朝鮮と水面下で接触し、外交交渉を重ねてきた。国連のフェルトマン事務次長も訪朝しています。それでも効果がなかった。時間だけが費やされ、その間に北朝鮮の核・ミサイル技術が向上しているのが実態です。北朝鮮が7度目の核実験に踏み切るか、再度ICBMを発射したら、トランプ大統領は容赦しないのではないか」(元韓国国防省分析官で拓大研究員の高永テツ氏)

 

米朝開戦のXデーは、3月20日以降だ。2月9日~3月18日は「平昌オリンピック・パラリンピック」が開かれる。さすがに、アメリカも「平和の祭典」の真っ最中に戦争はやらないだろう。さらに、3月18日にはロシアの大統領選が行われる。北朝鮮を攻撃したら、“外交的解決”を訴えているプーチン大統領のメンツを潰し、大統領選にも影響を与えかねない。ロシアゲートを抱えるトランプ大統領が、プーチン大統領を怒らせるはずがない。

 

「2018年、アメリカの最大の政治スケジュールは11月に行われる中間選挙です。トランプ大統領は中間選挙で勝利し、2年後の大統領選で再選されることを考えているはず。北朝鮮への空爆が中間選挙に有利となると判断したら、夏に空爆する可能性もあるでしょう」(高永テツ氏)

 

 米朝の軍事衝突が勃発したら、日本も大打撃を受けることは避けられない。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)






 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルの首都をイェルサレムであると承認したことに関する記事をご紹介します。著者はダグラス・フェイスという人物で、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権時代に国防次官を務めた人物で、ネオコン派、イスラエル・ロビーに属する人物です。

 

 フェイスの主張は、アメリカがイスラエルの首都をイェルサレムだと承認することで、イスラエルはなくならない、永続的なものだ、という明確なメッセージをパレスチナ、そしてアラブ諸国に伝えることで、彼らに「イスラエルをせん滅する」という考えを放棄させ、交渉のテーブルに着かせることができ、最終的に和平に到達するというものです。

 

 アラブ諸国もイスラエルの存在を公式には認められませんが、実際に戦争を仕掛けてイスラエルを滅ぼすことはもはやできないと考えているでしょう。イスラエルは人口800万の小さな国で、国内に抱えるパレスチナ人と呼ばれるイスラム教徒の数も多く、彼らに国籍を認めて選挙権を認めたら、ユダヤ人の国であり続けることはできないでしょう。ユダヤ教徒の割合は75パーセント、イスラム教徒が16パーセント、キリスト教徒が2パーセントですが、イスラム教徒の人口増加率の高さは脅威となっています。

 

 パレスチナという土地にはもともとユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が混在して住み、近世以降はオスマントルコ帝国の領土内で、平和に暮らしてきました。イギリスの進出と国民国家という概念、更にシオニズムのために、深刻な紛争状態となりましたが、混在して平和共存してきた時代に比べればまだ短いものです。

 

 イェルサレム東イェルサレムが旧市街でキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の歴史的な建造物が密集しており、1967年の第三次中東戦争まではシリアが管理していましたが、これ以降は新興の土地西イェルサレムと一緒になってイェルサレムとなりました。イェルサレム市はイスラエルの管理下に入り、イスラエルの首都とされた訳ですが、イスラム教やキリスト教の聖地が破壊されたり、出入りが禁止されたりしている訳ではありません。そんなことをすれば、イスラエルは近代的な国家として信教の自由を認めない国として糾弾されるでしょう。

 

 今回のアメリカの措置に対して、批判や非難の声明は中東やヨーロッパの国々から出ましたが、大きな事件は今のところ起きていません。現状追認ということで、あまり問題になっていないようです。

 

 アメリカがイェルサレムを首都として承認したことは現状を追認しただけのことで、それでイェルサレム市内のキリスト教やイスラム教の信者や施設が弾圧を受けるということはありません。ですから、テロのようなことは起きる可能性は低いでしょう。

 

 パレスチナとイスラエルとの関係は「二国共存」での和平に関しては一応話がついている訳で、問題はどのような形にするかということになります。1967年以前にイスラエルが支配していなかった場所についてどうするかということでしょうが、現状を追認するしかないでしょう。中東諸国はイスラエルという国家の存在を認められないのが建前でしょうが、本音では現状で満足して和平をしてもらいたい、ということになると思います。しかし、それを表明することは難しいでしょう。

 

 ただこれからも憎しみは続いていくでしょうが、それはまた長い時間のスパンで考えると、どこかで解決するだろうという大陸的な時間感覚で解決されるものかもしれません。日本人は概してせっかちで、早く早く、なんとかしなきゃ、自分の代で解決したい、させたいという感じですが、世界的にはもっと長い時間感覚があるように思います。

 ダグラス・フェイスはネオ͡コンでイスラエル・ロビーですから、イスラエル寄りの言論になりますが、これは親イスラエル派の考えの一つとして参考になります。ただ、彼が考えるように進むとも思えませんが。

 

(貼り付けはじめ)

 

イェサレムを首都に認定することが和平にとって良い理由(Why Recognizing Jerusalem Is Good for Peace

―パレスチナ人たちがイスラエルはここにいてこれからも続くということを認識し、真摯に話し合いを開始するまでは、アメリカ政府にとっての責務は、パレスチナ人たちに対して譲歩するようにシグナルを送り続けることだ。

 

ダグラス・J・フェイス筆

2017年12月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/12/12/why-recognizing-jerusalem-is-good-for-peace/

 

アメリカは正式にイェルサレムをイスラエルの首都と承認した。アラブ諸国やイスラム教国では激しい暴力が発生すると一般に予測されていたが、そんなことは実際には起きていない。しかし、ドナルド・トランプ大統領に対する批判者たちが述べているように、アメリカの承認のために、平和に向けた見込みを大きく後退させ、アメリカの「誠意ある仲介者」としての地位を傷つけるのだろうか、という疑問は残っている。トランプは選挙公約を実行し、変えようのない現実を認めただけでなく、平和の達成の可能性をより高めるのだと宣言した。

 

誰が平和についてより良い主張を行っているのか?トランプ大統領がそうだ。ただ、彼の主張は説得力を持っていないのであるが。

 

イェルサレムに対するイスラエルの主権を認めたことはどのみち平和の実現に対して大きなインパクトを持つものではない。まず、これまで長い間、平和の実現に向けて真剣な外交が行われていない。第二に、紛争はイェサレム以外の問題をめぐって行われているのだ。

 

多くのコメンテイターたちは、当事者たちがどうして今でも戦っているのかということについて全く理解していないのに、どのようにして平和を促進するかということについて自分の考えを述べているのは驚くべきだ。さあ、パレスチナをめぐるアラブとユダヤとの間の理由をはっきりさせよう。そして、この争いがどうして1世紀以上も続いている理由も明らかにしよう。

 

問題の中心にあるのは、「パレスチナ全土がパレスチナを除く中東地域全体と同様に、アラブ人のみが所有できるのであって、アラブ人の土地にユダヤ人が主権を有することは耐えられない、大京の余地がない不正義だ」という確信である。

 

パレスチナ自治区の学校では、アラブの土地全てをアラブ人がコントロールするという最終目的は、受け入れがたい名誉の侵害があろうとも、放棄などできない、と教えている。こうした環境の中で、例えば、ベツレヘムのアイーダ難民キャンプにある、アローワッドというきれいなコミュニティーセンターの建物の壁には全面に次のような文言が書かれた横断幕が掲げられている。このセンターはヨーロッパの進歩派の人々の資金で建てられた。「帰還の権利に交渉の余地はなく、いかなる妥協にも従うことはない」。言い換えると、戦術的に有効な和平協定はまだ許されるが、イスラエルとの恒久的な和平は現状では許されないということになる。これは、パレスチナの共同体で神聖不可侵として受け入れられている宗教とナショナリズムの諸原理を基盤とする哲学的に重要な点なのである。

 

このような思考の一部や要素として、イスラエルは地域に対する外国からの侵略なのだというものがある。イスラエルは「十字軍国家」と呼ばれ、フランス領アルジェリアのようなヨーロッパの植民地主義の出先なのだというたとえがなされている。重要な点は、イスラエル国民に対しては、十字軍や半世紀前のフランス人に対してと同じく、 際限のない暴力的な抵抗によって士気を低下させ、土地を本当の所有者に残して引き上げることにつながる、というものだ。この場合の土地の秦の所有者はアブ人ということになる。フランスがアルジェリアから出ていくまでに130年かかり、聖なる土地から十字軍を追い出すのに200年かかった。この期間中、同じ言葉が繰り返された。また同じ言葉が繰り返されている。「イスラエルを追い出すのに同じくらいの時間がかかるだろうが、その時はやってくるだろう」。

 

紛争を永続的なものとしているのはこうした考え方である。

 

長年にわたって常識とされてきたのは、アラブ・イスラエル問題の核心は1967年にイスラエルが手に入れ、現在入植地となっている領域である、というものだ。しかし、これは明らかに間違っている。エジプト、シリア、ヨルダンはイスラエル側を刺激して1967年の中東戦争を始めたのはどうしてか?実際には、紛争の起源は1967年よりも前にさかのぼることができる。1948年にイスラエルが独立国となった時よりも更にさかのぼることが出来る。

 

アメリカ政府がパレスチナ・イスラエル紛争の終結に貢献できるのは、アメリカ政府が紛争の中身をきちんと把握した時だけだ。現在の常識をそのまま持ち続けるならば、外交上の失敗をこれからも数十年単位で続けることになる。新しい、そしてより根拠に基づいたアプローチを採用するのは今だ。

 

各種世論調査の結果では、イスラエル国民の大部分が、現在イスラエルが支配している土地を分割することを基礎としてパレスチナ人たちと和平を達成したいと望んでいる。パレスチナ側の指導者たちが土地と平和を交換する形で合意を結びたいと望んだら、平和が達成される。2つの大きな障害は概念上のものだ。パレスチナ側の指導者たちは、イスラエルは一時的な存在でいつの日か消滅させることが出来るという確信を放棄しなければならない。そして、パレスチナ側にとって実現可能な最高の合意をもたらすために正義に関する抽象的な概念をとりあえず棚上げすべきだ。

 

1897年に創出されて以降の政治的なシオニズムの歴史の中で、シオニズム運動の指導者たちは正義を主張したことはなかった。彼らはまたユダヤ人たちが持つ権利を持つもの100パーセントを手に入れることは期待していなかった。彼らが権力を握っても妥協を不名誉なものだとはしなかった。彼らは最善の合意を結んだ。彼らは手にできるものを手にした、そして、自由で、繁栄した、平和的な国家を建設した。パレスチナ側の指導者たちもまたパレスチナ人たちに対して同様のことを行うべきだ。

 

この分析が正しい場合、イェルサレムに対するイスラエルの主権をアメリカが承認したことは、平和に貢献することになるだろう。アメリカの承認は有効なメッセージを補強するものだ。そのメッセージとは、「イスラエルはこれからもこの場所に存在する」というものだ。ユダヤ人は歴史的にこの土地と深くつながっている。彼らは外国人でもなく、十字軍でもない。アメリカとイスラエルのつながりは緊密なもので、イスラエルの敵国からの工作によって傷つくものではない。そして、アメリカは、第三者ではなく、イスラエルの友人として、アラブ・イスラエル外交において重要な役割を果たしている。紛争が永続化することで支払わねばならない代償がある。人生は続く、そしてイスラエル国民は新たな現実を生み出し、世界はこの新しい現実に合わせていく。パレスチナ人たちは平和を拒否することで、彼らの地位を向上させていないし、地位を保ってもいない。

 

※ダグラス・J・フェイス:ハドソン研究所上級研究員。2001年から2005年にかけて米国防次官(政策担当)。現在、アラブ・イスラエル紛争の歴史に関する著作を執筆中。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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