古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 世界経済

 古村治彦です。

 

 今回は2018年の世界経済GDPについての記事をご紹介する。世界各国のGDPを大きさに比例させて、見やすくしたヴィジュアルがあり、「この国はこれくらいなのか」と興味を持ってみることが出来る。

 ここで使われているのは、購買力平価GDPと一般的なGDPだ。 

購買力平価(Purchasing Power Parity)は、為替レートは自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという理論だ。有名なのは、ビックマック指数だ。これは世界各国に展開しているハンバーガーのマクドナルドで売っているビックマックの値段がいくらになっているのかを基準にして計算している。購買力平価GDPは各国の物価を計算に入れた為替レートの対ドルで計算をしたものだ。

2018gdpatppp001 

 購買力平価のレートと市場でのレートで米ドルと人民元を見てみると、人民元は実際以上に安く誘導されているということになる。購買力平価GDPで計算すると、2014年以降は、中国がアメリカを抜いて世界最大の経済大国ということになる。しかし、実際のレートで計算すると、アメリカが最大の経済大国であることは変わらない。

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 中国も経済成長をし、物価が上がり、人々の生活水準も上がっていくとなると、通貨の力も強くなるし、そうなればいつまでも安い方向を維持することは難しい。日本がそうであったように、通貨の価値は上がっていく。対ドルで元高になっていく。
2019gdpppp002 

 中国の経済成長率が鈍化していると言っても6%以上を維持している。経済規模を考えると、アメリカは4%以上の経済成長をしなければ、中国に差を縮められる。アメリカの最近の経済成長率は2%台なので、中国が差を縮めている。

 日本を見てみれば一般的なGDPでは3位(5.79%)で4兆9700億ドル(約537兆円)、購買力平価GDPでは4位(4.02%)で5兆4800億ドル(約592兆円)である。購買力平価GDPの方が高いということは、円が安く誘導されているということを示している。日本は世界第2位の経済大国(1968年に当時の西ドイツを抜いて2位に)で、アメリカを凌駕すると言われていたバブル時代はもう30年も前の話で、それから衰退が続いている。

 世界経済の全体像をつかむということで今回ご紹介する記事は役立つものになっている。

(貼り付けはじめ)

購買力を考慮しながら世界経済を可視化する(Visualizing The World Economy When Purchasing Power is Taken into Account

2019年9月12日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-ppp-2018

異なる国々の経済を比べる際に、最も一般的な方法は「購買力平価(purchasing power parity)」を使うことだ。購買力平価(PPP)は世界各国の経済を「財のバスケット」内部の様々な価格を平準化することで比較することだ。言い換えるならば、購買力平価は、国家間の生産を比較する際に、生活水準の違い(1カートンのミルクの値段の違いなど)を考慮に入れるということだ。これを一歩進め、購買力平価GDPで世界各国のGDPを可視化する。このチャートでは、国際的なドルを使用する。これはアメリカ国内のドルの購買力と同じ購買力を持っている。

・購買力平価GDPの測定は、各国の経済を比較するために、市場の為替レートではなく、世界中の生活費のコストを考慮に入れている。

・2018年の世界の購買力平価GDPは136兆4800億ドルだ。

・アジア諸国は購買力平価GDPで世界の40%以上を占めている。

・米中両国は購買力平価GDPで世界の3分の1を占めている。

・今回の可視化に使われている情報は世界銀行からのものだ。最新の数値は2018年のものだ。各国のサイズは購買力平価GDPの大きさに比例している。各国は属する大陸で色分けされている。そして、世界の生産に対してとの地域がどれくらい寄与しているかがわかる。

●購買力平価GDPから見る世界トップ10

1. 中国:25兆3600億ドル(約2739兆円)[18.58%]

2. アメリカ:20兆4900億ドル(約2213兆円)[15.02%]

3.インド:10兆5000億ドル(約1134兆円)[7.69%]

4.日本:5兆4800億ドル(約592兆円)[4.02%]

5.ドイツ:4兆5100億ドル(約488兆円)[3.30%]

6.ロシア連邦:3兆9900億ドル(約431兆円)[2.92%]

7.インドネシア:約3兆4900億ドル(約377兆円)[2.56%]

8.ブラジル:約3兆3700億ドル(約364兆円)[2.47%]

9.イギリス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

10.フランス:約3兆700億ドル(約332兆円)[2.25%]

先月、私たちは現在のアメリカ・ドル表示の各国のGDPをイラストと示す可視化したものを発表した。このGDPは生活にかかるコストを入れていない。また、それぞれの国家の生産高を比較するために市場における為替レート使用している。世界の名目GDP(右側)と購買力平価GDP(左側)のいくつかの違いに気づくだろう。明らかなことは、アメリカは世界の名目GDPで最大のシェアを占めているが、中国は購買力平価GDPで最大のシェアを占めている。

世界銀行のデータは、アメリカの購買力平価GDPは、大恐慌時代以来毎年成長していることを示している。しかし、ここ10年間の拡大の後、アメリカの経済成長は鈍化している。しかし、雇用の成長によって経済の安定は保たれ、GDPは拡大し続けると見る専門家たちもいる。

同様に、中国の景気後退は国際的な関心を集めている。特に輸出量の減少に人々の目が向いている。中国の中央銀行は貸出を促進し、生産を増加させるために預金準備率を低下させることで対応を行っている。世界規模の景気後退を示す兆候はより多くなっている。日本とインドのような国々の経済指標は私たちに印象を残すことに失敗している。世界経済は成長を続けているが、様々な指標の動向は変化の兆しを示している。

世界経済のGDPと購買力平価GDPの違いについて読者の皆さんは驚いただろうか?コメント欄で教えて欲しい。

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世界の86兆ドル経済を一つのチャートで可視化する(The World’s $86 Trillion Economy Visualized in One Chart

2019年8月15日

https://howmuch.net/articles/the-world-economy-2018

世界のGDPは堅調に成長し、2018年には6.9%の成長率を記録した。全体で2017年の80兆2000億ドルから85兆8000億ドルに増加した。この成長の半分は世界最大の経済大国2か国から来ている。アメリカは20兆5000億ドル(2017年に比べて5.4%増)、中国は13兆6000億ドル(10%増)となった。しかし、世界規模での景気後退の恐怖は高まっている。世界第1位と第2の経済大国同士が経済における緊張関係を深刻化させていることがその原因となっている。

・アメリカは今でも世界最大の経済大国であり、世界のGDPの23.9%を占めている。

・中国は世界第2位の経済大国であるが、最近の四半期においては約30年間で最も遅い経済成長ペースを記録した。

・最新の世論調査で、経済学者の半分が来年までにアメリカ経済は後退すると予測している。

・アメリカと中国との間の貿易摩擦は解決しておらず、投資家たちは世界経済の成長について悲観的になっている。

・私たちのデータは世界銀行の2018年版世界GDP数値から取っている。それぞれの国はGDPの大きさで示されている。それぞれの国は地域別にまとめられ、色分けされている。2017年からどのように変化死体を見る場合には、HowMuch’s 2017 analysis of world GDP.をチェックして欲しい。

GDPから見る世界のトップ10

1. アメリカ:20兆4900億ドル(約2200兆円)[23.89%]

2. 中国:13兆6100億ドル(約1470兆円)[15.86%]

3.日本:4兆9700億ドル(約537兆円)[5.79%]

4.ドイツ:4兆ドル(約432兆円)[4.66%]

5.イギリス:2兆8300億ドル(約306兆円)[3.29%]

6.フランス:2兆7800億ドル(約300兆円)[3.24%]

7.インド:2兆7300億ドル(約295兆円)[3.18%]

8.イタリア:2兆700億ドル(約224兆円)[2.42%]

9.ブラジル:1兆8700億ドル(約202兆円)[2.18%]

10.カナダ:1兆7100億ドル(約185兆円)[1.99%]

アメリカと中国両国で世界GDPの約40%を占めている。それぞれ20兆5000億ドルと13兆6000億ドルを記録し、世界経済の23.9%と15.9%をそれぞれ占めている。両国の経済力と深刻化する緊張のために、私たちのアナリストたちは両国に注意を払っている。

全米ビジネス経済学会は280名のビジネス経済学者を対象に調査を実施した。調査対象者の半数は来年末までにアメリカ経済は後退すると予測していると答えた。ゴールドマンサックスとJPモルガンに所属しているアナリストたちは2019年第二四半期の経済成長は2%以下に減速すると見ている。景気後退が予測される理由は何だろうか?経済学者たちは景気減速が予想される多くの要素を指摘している。現在のアメリカ経済において労働市場は堅調であったが、後退の兆候が見え始めている。連邦準備制度理事化による予想される金利引き上げも景気後退の兆候となっている。アメリカにおける経済格差の拡大もまた後退を示す要素となっている。1989年から2018年にかけてアメリカ国民の下半分は9000億ドルを失った。これは経済全体に大きな影響を与えている。

しかし、世界中の報道機関が報じている要素は関税が与える衝撃と中国とアメリカとの間での貿易戦争勃発の可能性である。米中両国の経済は既に影響を受けている。数字がそれを示している。中国の2019年第二四半期のGDP成長率は6.2%に鈍化した。この数字は1992年以降最も小さい成長率となった。今年7月の中国の工業生産高の成長率は、昨年に比べて4.8%に鈍化した。この数字は2002年2月以降で最も弱いペースとなった。アメリカと中国が貿易面での相違をすぐに乗り越えることが出来るか確かではない。そして、市場は長期の難局を示しているように見える。このように先行き非案の兆候はあるが、経済学者の中には景気後退が不可避だと確言できないとしている人々がいる。こういった人々は、オーストラリアとイギリスのような国々の経済は何十年単位で安定的に成長していると述べている。

各国や各地域のGDPについて読者の皆さんを驚かせたのはどんなことだろうか?アメリカもしくは中国は景気後退に向かって進んでいると考えるだろうか?景気後退は世界経済全体にどのような影響を与えるだろうか?コメント欄で考えを教えて欲しい。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカでは共和党提出の税制改革法案が可決し、トランプ大統領が署名して法律となります。企業に対する大幅減税となり、トランプ大統領の、減税によって国内投資や雇用を増やして経済を成長させる、という公約実現へ一歩進んだ形になります。国債発行高は増えてしまうということもありますが、経済が伸びれば税収も上がるのでそれで賄えるということになります。そこまでうまくいくかは分かりませんが。

 

 共和党の税制改革が実現したことで、2018年の中間選挙はどうなるのかということも注目されますが、現在のところ、共和党の指示は伸びておらず、もし近々で中間選挙があれば、民主党が勝利するであろうという予測が出ています。北朝鮮情勢の推移、具体的には、米軍の攻撃があるかどうかで中間選挙の予測は変わってきますので、目が離せないところです。

 

 アメリカの税制改革の影響を受けそうだと判断した中国政府は、外国企業に対する優遇税制を発表したそうです。中国国内であげた収益に税金をかけない、その代わり、その収益は中国国内に投資せよ、というものです。これは中国への海外投資が減り、アメリカへの投資が増えることを見越しての対抗措置ということになります。外国企業の収益に税金をかけることで逃げられてしまうよりも、その収益を全部中国に置いていけ、という見方によってはより厳しいやり方ということも言えます。

 

 多国籍企業が稼ぎ出すお金を税金でとるか、投資を誘引してとるか、ということになりますが、どちらがより互恵的なのかということになると、投資を誘引させる方がより賢いということになるでしょう。投資によって生み出された雇用と消費によって税収は増えるのですから。しかし、このような思い切った方策は中国以外では難しいでしょう。アメリカはトランプ大統領の政策への期待から株高が続き、これを目当ての資金も還流しているでしょうから、中国政府の誘引もどれほどの効果があるか、ということになります。

 

 こうして見ると、経済面では今年もまた中国が伸び、アメリカがイラつきながら株高で対抗という感じになるでしょうか。日本もマイナス金利とGPIFの株式投資で、なんだか奇妙な経済成長をしているのに、皆が心に中で「2020年まで、オリンピックまで」と心の中で唱えながら、その時に貧乏くじを引きたくないと考えて、景気が実感できないというなんだか変なパラレルワールドで生活するという感じになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

共和党の税制改革法案の可決の後に中国が外国企業にたいする優遇税制を発表(China to offer tax breaks to foreign companies after GOP tax bill

 

ジャクリーン・トムセン筆

2017年12月29日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/international/china/366752-china-to-offer-tax-breaks-to-foreign-companies-after-gop-tax-bill

 

中国は外国企業に対して優遇税制措置を行うと発表した。これは、共和党の税制改革計画によってアメリカ国内により投資をし、ビジネスを展開する誘因が出てくる中で、外国企業日して中国にとどまるように求めるものである。

 

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、中国政府は一時的に外国企業が中国で出した収益に対する税金を支払わないことを許可するだろうと報じた。

 

中国財務省は木曜日に発表した声明の中で、優遇税制によって、「外国からの投資の増加を促進し、外国からの投資の質を上げ、海外の投資家たちからの中国への投資をこれからも拡大を奨励する」ことになるだろうと述べた。

 

しかし、外国企業は最先端技術や鉱山といった中国政府が投資を促している分野に収益を投資しなければならない。優遇税制は2017年1月1日に訴求して適用される。

 

今回の中国政府の発表は、トランプ大統領が共和党提出の税制改革計画に署名をして法律化するとなって数日後に行われた。共和党の計画では、製造業者をアメリカに惹きつけるための法人税のより低い税率も含まれている。

 

今回の発表はまた、中国の高い税率とビジネスに対する制限に関して外国企業が懸念を持っている中で行われた。欧米の各企業は複雑な法律と中国の消費者へのアクセスが制限されている中では、中国国内でビジネスを行うことは難しいと主張している、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 

トランプ大統領は、中国について、貿易の面でアメリカはより競争力を持つ必要がある国だと強調している。

 

トランプは11月の訪中において、中国の貿易慣習の使用について次のように述べた。「私は中国を非難しているのではない。だいたい、自国民のために他国を利用する国を責めることを誰ができようか。私は中国を大いに称賛する」。

 

=====

 

●「ゴールドマン利益5600億円減…米税制改正で」

 

読売新聞 20171230 2214

http://sp.yomiuri.co.jp/economy/20171230-OYT1T50071.html

 

 【ニューヨーク=有光裕】米金融大手ゴールドマン・サックスは29日、米国の税制改正法の成立で、2017年10~12月期の利益が約50億ドル(約5600億円)減少する見通しとなったと発表した。

 

 米国外で保有している利益を米国に還流する際にかかる税金が、約3分の2を占めるという。米国のトランプ政権は、自国内での設備投資や研究開発などを拡大し、経済成長につなげるため、海外に滞留する米企業の利益を国内に還流させる際の税率を引き下げた。

 

 市場では、ゴールドマンが還流させた資金を自社株買いや株主配当の増加にあてるとの見方が出ている。

 

 残りの約3分の1については、連邦法人税率の引き下げで繰り延べ税金資産を取り崩すことなどを理由に挙げた。従来の想定よりも将来払う税金が減ることから、損失として計上する。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 11月に入って、パラダイス文書(Paradise Papers)と名付けられた文書が流出し、その内容が報道されるようになりました。これはICIJという世界各国の報道機関が加盟している国際組織が文書を入手し、加盟報道機関が世界各国で同時に報じるという形になっています。日本では朝日新聞が加盟し、報じています。ICIJには世界各国のクォリティ・ペーパーが加盟しているようです。

 

 パラダイス文書にはイギリスのエリザベス女王、世界的な人気ロックバンドU2のヴォーカルであるボノ、マドンナと言った人たちの名前が出ています。日本からは鳩山由紀夫元首相の名前も出ました。ウィルバー・ロス商務長官やゲイリー・コーン国家経済会議議長といったトランプ政権の最高幹部たちの名前も出ています。

 

 これはリベラル系の報道機関によるトランプ政権攻撃ということがまず考えられます。しかし、もっと深読みをすると、これはトランプ政権と共和党が進める税制改革を補強する動きであるとも考えられます。

 

 租税回避地に会社を作って自分が住んでいる、国籍(市民権)を持っている国の税金を回避する、という動きは世界各国の富裕層なら誰でもやっていることです。税金逃れという批判はできますが、違法ではありません。しかし、ここ最近、世界各国政府、特に高度経済成長が見込めない先進諸国の政府は懐具合が厳しくなっている中で、貧困層や中間層からこれ以上搾り取れないということで、富裕層への課税、徴税を何とかしたいと考えるようになっています。資源に恵まれている国々や経済成長が著しい国々ではこうした動きは起きていません。

 

 そうした中で世界各国政府の徴税部門は富裕層の財産の把握と徴税を何とかしたい、ということで足並みをそろえています。そして、彼らの考えることは、富裕層の財産を自国に戻させよう、そして、これまでのような累進性の高い課税を少し緩めて、彼らにより多くの税金を払ってもらおうということです。

 

 アメリカの連邦議会では現在、税制改革の議論が進んでいます。富裕層に対する減税案だという批判も出ていますが、財産を海外に持ち出されて、まったく納税されないという現状を変えるためには、現状を緩くしてアメリカに資金を戻してもらって、課税に応じてもらう、納税してもらうということが重要です。そのための株高でもある訳です。

 

 今回のパラダイス文書暴露はトランプ政権攻撃でありながら、同時に富裕層に自国に戻ってもらって、資金を戻してもらって、納税をしてもらうための動きでもあると思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

リークされた文書によってトランプ政権の最高幹部たちのオフショア取引が暴露される(Leaked documents reveal offshore dealings of top Trump officials

 

ジュリア・マンチェスター筆

2017年11月5日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/358865-leaked-documents-reveal-offshore-dealings-of-top-trump

 

報道機関の国際機関が報じた一連の大量の文書に、トランプ大統領につながっている複数の人物の名前が出ている。彼らは自分たちのビジネス投資を法的に守ったり、彼らの顧客と企業の資金を租税回避地(タックス・ヘイヴン)に逃避させる政策に影響を与えたりできる立場にある。

 

1300万点の文書は「パラダイス文書」と名付けられた。これらはバミューダを拠点とする法律事務所アップルビーをはじめとする様々な企業から流出した文書だ。パラダイス文書について最初に報じたのはドイツの新聞『南ドイツ新聞』紙だった。そして、調査報道ジャーナリスト国際連合(ICIJ)の加盟各社が報じ始めた。ICIJには、『ザ・ガーディアン』紙、BBC、『ニューヨーク・タイムズ』紙などが加盟している。パナマ文書暴露の際にもバックにいたのはICIJであった。

 

パナマ文書の時と同様、パラダイス文書もまた世界のエリート層の人々によって作られたオフショア金融の問題を炙りだしている。

 

NBCニュースは、パラダイス文書には世界各国の120名以上の政治家と王家のメンバーの名前が出ていると報じた。彼らはオフショア金融に関係していると報じられた。

 

パラダイス文書にはトランプ政権の最高幹部たちの名前が出ている。

 

ウィルバー・ロス商務長官は政権入りした後も、ロシアのウラジミール・プーティン大統領のインナーサークルとビジネス上のつながりと利益を維持していた、とニューヨーク・タイムズ紙が入手した文書によって明らかにされた。ニューヨーク・タイムズは、彼らはプーティン大統領の義理の息子が共同所有者になっている企業の生産する天然ガスを運送する、多額の利益を生み出す海運業に投資していた。

 

商務省報道官はパラダイス文書を入手したNBCの取材に対して、大西洋上の海運に関連する諸問題にロス長官自身は関与していない、「最高の倫理基準を確保する」ために倫理に関する商務省の部局と連絡を取り合っている、と語った。

 

報道官は更にロス長官がロシアに対する経済制裁に「概ね」賛成していると述べたが、声明の中では、NBCニュースが報じたロシアとロス長官との関連については言及がなかった。

 

ガーディアン紙は、トランプ政権の国家経済会議議長で経済担当補佐官を務めるゲイリー・コーンは、2002年から2006年にかけてバミューダにおけるゴールドマンサックスの関連22社の最高幹部を務め、レックス・ティラーソン国務長官は1997年にバミューダのある企業の経営責任者を務めていた、と報じた。

 

ガーディアン紙によると、レックス・ティラーソン国務長官はまた、1997年にバミューダに拠点を置いていたマリブ・アップストリーム・カンパニー社の経営責任者を務めていた。

 

ティラーソンは1997年にエクソンモービル社のイエメン支社の責任者を務めていた。パラダイス文書によると、エクソンモービル社イエメン支社はマリブと深い関係にあった。

 

「シティズンズ・フォ・タックス・ジャスティス」は昨年、エクソンモービル社は、ケイマン諸島、バミューダ、バハマといった複数の場所に35の子会社を所有していた。

 

スティーヴン・ミュニーシン財務長官はパラダイス文書に名前が出ていない。しかし、彼が副会長を務めた銀行ゴールドマンサックスは、上客に対してプライヴェートジェットの経費を支払うということを行っていた、とガーディアン紙は報じている。

 

パラダイス文書には駐ロシア米大使ジョン・ハンツマンはパラダイス文書に掲載された企業の共同所有者であったと報じられている。また、住宅都市開発長官ベン・カーソンが経営していた(現在は引退)あるバイオ技術企業はオフショアで複数の企業を設立していたということも報じられている。

 

大統領のインナーサークルには大富豪の実業家カール・アイカーンとトム・バラックが含まれているが、2人ともパラダイス文書に名前が出ていると報じられている。

 

本誌はホワイトハウスにコメントを求めている。

 

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●「パラダイス文書って何? 鳥山明さん、鳩山由紀夫・元首相の名前も タックスヘイブンなどでの経済活動を暴露」

 

20171106 1323 JST | 更新 29分前

安藤健二

ハフポスト日本版ニュースエディター 「知られざる世界」担当

http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/05/paradise-papers_a_23267613/?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

 

タックスヘイブン(租税回避地)が絡む経済活動に多くの著名人が関わっていることが、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が入手した「パラダイス文書」で明らかになった。

 

■パラダイスの由来は?

 

産経ニュースによるとタックスヘイブンは美しい島国に多いほか、フランス語などで「税の楽園」と表現することからICIJは「パラダイス文書」と名付けた。パナマ文書と同様に、ヨーロッパの有力紙「南ドイツ新聞」が入手し、ICIJと共有した。情報源を一切明らかにされていない。

 

文書数は1340万件で、データ量は1.4テラバイト。「史上最大のリーク」と呼ばれた2016年のパナマ文書と比べデータ量では少ない一方、資料数は190万件多いという。

 

朝日新聞デジタルによると、パラダイス文書の内訳は、バミューダ諸島などにある大手法律事務所アップルビーの内部文書683万件と、シンガポールの法人設立サービス会社「アジアシティ」の内部文書566000件、マルタなど19の国・地域の登記文書604万件だ。

 

パラダイス文書に掲載された各国の政治家・君主らの名前は、47カ国127人。カナダのトルドー首相やイギリスのエリザベス女王らが掲載されていた。芸能人では歌手マドンナさんや、ロックバンド「U2」のボノさんの名前もあった。

 

日本からも「ドラゴンボール」で知られる漫画家の鳥山明さんや、鳩山由紀夫元首相の名前が掲載されていた。各社の報道を元に情報を整理すると以下のようになった。

 

■鳥山明さん、アメリカの不動産に出資

 

共同通信によると鳥山明さんを含む日本人12人が2000年、アメリカに設立された不動産リースの投資事業組合に出資していた。

 

鳥山さんは同社に「日々多忙のため、税務面はおまかせにしていますのでお話しできることはありません」と書面で回答したという。

 

■鳩山元首相、バミューダ諸島に設立された資源会社の役員に

 

産経ニュースによると、鳩山由紀夫元首相はタックスヘイブンに設立された法人の役員に就任していた。

 

バミューダ諸島に設立され香港を拠点にする資源会社「ホイフー・エナジーグループ」の名誉会長を政界引退後の2013年から務めている。

 

鳩山元首相は「名前だけでも連ねてくれと要請された。名誉会長で実質何も意味はない」と経営への関与を否定した。

 

■「U2」のボノさん、マルタの会社に出資

 

英紙ガーディアンによると、ロックバンド「U2」でボーカルを務めるボノさんは、タックス・ヘイブンとして知られるマルタ共和国に拠点を置くヌード・エステートという会社に投資していた。この会社が、リトアニアのショッピングモールを580万ユーロ(約77000万円)で買収していた。

 

ボノさんの広報担当者は「ボノは主要な投資家ではなく、積極的に関わってない。2015年に解散するまで、会社は合法的に登記されていた」とコメントした。

 

■マドンナさん、ポール・アレンさんらの名前も

 

ICIJによると、マドンナさんはカリブ海のバミューダ諸島の医薬品関連会社の株を保有していた。

 

起業家も多く、ネット競売大手イーベイを設立したピエール・オミディア氏はケイマンの金融商品に投資。マイクロソフト共同創業者のポール・アレンさんは、豪華ヨットや潜水艇を租税回避地に登記していたという。

 

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●「「パラダイス文書」にエリザベス女王やマドンナ、ボノの名前も ローマ・カトリック教会の聖職者がバミューダ諸島に会社を持っていたことも判明」

 

20171106 1147 JST | 更新 2時間前

http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/05/the-paradise-papers-elizabeth_a_23267575/

 

 

英女王・マドンナ・中東の王妃... 「税の楽園」集う大物

 

 大手法律事務所「アップルビー」などから流出した膨大な「パラダイス文書」には、英国のエリザベス女王といった数々の著名人や、米アップル社など世界的に事業を展開する多国籍企業の名が載っていた。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)の取材で、タックスヘイブン(租税回避地)での経済活動の一端が明らかになった。(疋田多揚、軽部理人)

 

 パラダイス文書の一つに、こう題された文書があった。日付は2008年6月12日。本文はこう続く。「みなさまに3千万ドル(約34億円)の分配金をお知らせいたします」

 

 受益者の中には、エリザベス英女王の個人資産を表す名称があった。

 

 それによると、女王は05年、タックスヘイブンで有名な英領ケイマン諸島のファンドに750万ドル(約8億6千万円)の個人資産を投資。3年後に36万ドル(約4100万円)の分配金の知らせを受け取った。

 

 女王のお金はこのファンドを通じ、別の会社へ投資された。英国の家具レンタル・販売会社「ブライトハウス」を支配下に置く会社だ。ブライト社は、一括払いができない客に年率99・9%の高利を求める手法が、英国議会や消費者団体から批判を浴びていた。

 

 女王の資産は、英国内での運用は一部が明らかになっているが、英国外での運用は知られてこなかった。女王の広報担当はICIJに「ブライト社へ投資されたことは知らなかった。女王は個人資産やその運用で得た所得税を納めている」とコメントした。

 

 ローマ・カトリック教会の聖職者がバミューダ諸島に会社を持っていたことも文書でわかった。メキシコ出身の故マルシアル・マシエル神父。「キリスト軍団」という修道会を創設し、「カトリック最大の資金貢献者」と称される一方で、神学生への性的虐待容疑で告発された人物だ。カトリック教会は、その資産を運用する団体がマネーロンダリング(資金洗浄)などの不正に長年かかわってきたと指摘されている。

 

 またヨルダン前国王の妻ヌール王妃は、英王室属領のジャージー島にある二つの信託会社から利益を得ていた。ブラジルの中央銀行総裁も務めたメイレレス財務相は、「慈善目的」でバミューダ諸島に財団を設立していた。約30年の独裁体制を強いたインドネシアのスハルト元大統領の2人の子どもも、アップルビーの顧客リストに載っていた。

 

 文書からは「セレブ」の資産運用も垣間見える。米歌手のマドンナ氏は医療用品販売会社の株を持っているほか、ロック歌手ボノ氏は、マルタに登録された会社の株を所有していた。

 

 米投資家で、ICIJに慈善団体を通じて寄付しているジョージ・ソロス氏もタックスヘイブンに置いた組織の運営に関し、アップルビーを利用していた。

 

 世界最大規模の米ネットオークションサイト「eBay(イーベイ)」創設者のピエール・オミディア氏がケイマン諸島の金融商品を所有していることもわかった。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

古村治彦です。

 

 今回は中国とロシアの経済協力関係に関する記事をご紹介します。上海協力機構は2001年に作られました。一時期低調でしたが、最近、この枠組みでユーラシア統合が進められようとしています。上海協力機構、ユーラシア経済連合、シルクロード経済ベルト、そしてAIIBが接着剤となれば、EUまでつながります。このうちのどれともつながらない日本は「負け組」にされていくことでしょう。


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中国は全般的な経済協力のための基礎を築いた(China and Russia Lay Foundation for Massive Economic Cooperation

 

リード・スタンディッシュ筆

2015年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/10/china-russia-sco-ufa-summit-putin-xi-jinping-eurasian-union-silk-road/

 

過去10年、中国政府とロシア政府はパートナーと言うよりも競争相手であった。しかし、ロシアと中国の指導者たちは2か国の地域経済プロジェクトを統合することを考えている。その結果、中国とロシアの関係は変化しつつある。それぞれが考えている地域経済プロジェクトは、ロシア側がユーラシア経済連合(Eurasian Economic Union)、中国側がシルクロード経済ベルト(Silk Road Economic Belt)である。

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 ロシアの都市ウファで上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)の首脳会談が2日にわたって行われた。ロシアのウラジミール・プーティン大統領と中国の習近平国家主席は、中国が計画している中央アジア地域に建設する数十億ドル規模の道路、鉄道、パイプラインのネットワークと、旧ソ連ブロックであるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシアで形成しているユーラシア連合を統合するための枠組みを話し合ったと報道されている。インフラのネットワークとユーラシア連合の合同は、上海協力機構の支援の下で行われることになるだろう。この計画が完成すると、上海からサンクトペテルブルグまでを網羅する支配的な経済主体となる不透明な組織が出現することになるだろう。

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 カーネギー・モスクワ・センターのアジア太平洋プログラムロシア部長で上級研究員のアレクサンダー・ガブエフは、『フォーリン・ポリシー』誌の取材に対して次のように語った。「経済統合について初めてワーキング・グループが作られた。ユーラシア経済連合とシルクロード経済ベルトの統合は現在のところ実現可能である」。この経済統合計画は、ロシア主導のブロックの規制と中国の大きな経済力を統合することである。中国は中央アジアに既に500億ドル以上を投資している。ユーラシア連合は関税同盟を形成している。これによって中国からヨーロッパまでの製品輸出にかかる輸送費を劇的に削減することが出来るのだ。これは、中国から輸出された製品が1つの統合された関税ゾーンを越えるだけで済むからだ。ガブエフは「この計画には、地政学的と言うよりも、商業的に強力な論理が存在している。」と述べている。

 

上海協力機構は2001年に中国、ロシア、中央アジア4カ国で創設された。上海協力機構は元々、メンバー諸国の間の広範な争いを解決するために創設されたものだ。この目的は達成された。それ以降、上海協力機構は、経済開発から対テロリズム対策まで、多くの面で協力関係を構築するようになっている。しかし、上海協力機構はある1つの問題について決定的な役割を果たそうと苦闘してきた。

 

 金曜日、ウファに集まった各国の指導者たちはインドとパキスタンから出されていた上海協力機構の正規メンバー申請を受理した。ロシアは、イランに対する国連の経済制裁が解除された後、イランを正規メンバーとしたいとする希望を表明した。グラスゴー大学の中央アジア専門家のルカ・アンセスキは「上海協力機構は中国とロシアのパートナーシップによって再び活力を取り戻している。そして、上海協力機構は急激に重要性を増している」と語っている。

 

 中国とロシアの国営メディアは経済協力計画と上海協力機構を大々的に宣伝し始めている。中国国営の新華社通信はこの経済統合計画を「全ユーラシア大陸の協調と繁栄」の青写真と呼んでいる。ロシアと中国は中央アジアにおける影響力を巡る綱引きを行っていたが、その状況から変化しつつある。

 

 プーティンは自分たちが西洋諸国から孤立していると考えている。そして、ロシア経済は経済制裁と石油価格の下落によって弱体化していると考えている。その結果、ロシアは中国との関係を強化しようとしている。ロシアの東への軸足の移動は、エネルギー取引の形で現れている。昨年、ロシアは中国との間に4兆ドル規模の天然ガス取引合意を取り付けた。今年、ロシアは中国主導のアジアインフラストラクチャ投資銀行(AIIB)に参加した。そして、ロシアはウファでの首脳会談で上海協力機構の下で新しい開発銀行の創設を巡る話をスタートさせた。ロシアは自国の影響力圏における中国の台頭を恐れてこうした提案を以前は拒絶していたが、態度を変更させている。

 

 しかし、こうした新しい状況の下で、ロシアは中央アジアとその他の旧ソ連地域における自国の位置づけを考え直している。アンセスキは「ユーラシア連合はロシアが望んだような成功の姿ではない」と述べている。ユーラシア連合は2015年1月に成立したが、ベラルーシ、カザフスタン、ロシアとの間で貿易に関する争いが発生したことで協力関係は傷つけられた。そして、ロシアはメンバー諸国に対して説明した経済刺激策を実行できないでいる。アンセスキは「ロシア政府は中国からの投資と競い合うことは不可能だし、追いつくことすらできないと分かっている」とも語っている。

 

 ロシアは中央アジア地域における安全保障の提供者としての影響力を維持することを目的としている。ロシアは、軍事基地の設置、軍事同盟、2002年に締結された旧ソ連地域の安全保障ブロックである集団安全保障条約地域(Collective Security Treaty Organization)を通じて地域における影響力を維持している。この形は、中国と中央アジア諸国両方を満足させている。中国は国外に軍隊を駐留させることに懸念を持っているし、中央アジア諸国はロシアの軍事力の存在に慣れている。ガブエフは、「この経済統合の形では、中国が銀行の役割を果たし、ロシアは軍事力を提供することになるだろう」と述べている。

 

 ウファで計画の概要が描かれたようであるが、経済統合合意の実現までにはいくつもの大きな障害が待ち受けている。ロシアの指導者たちの間には中国に対する姿勢に関して分裂があると専門家たちは指摘している。1つのグループは、ロシア政府内の現実主義的なテクノクラートたちだ。彼らは、西洋諸国と仲違いしているロシア経済にとって中国は必要な存在であり、ロシアが中国の経済力に対抗することは不可能であり、中国からの投資を必要としていると考えている。しかし、ロシアの安全保障に関する諸機関は、拡大し続ける中国はロシアの影響力を弱めると懸念を持ち続けている。現在までのところ、現実主義的な人々が論争に勝利しつつあるようだ。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23









 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 2015年7月5日の日曜日、ギリシアで国民投票が行われました。EUなどの債権者側がギリシアに緊縮財政(年金のカットと増税、国防費の削減)を求め、これに対して、債務者側のギリシアのツィプラス首相が交渉を打ち切り、この債権者側の要求に「イエス」か、「ノー」かを国民に選んでもらうことになりました。結果は「ノー」が多数を占めました。ギリシア国民は債権者側からの要求を拒否しました。ツィプラス首相はこの民意を後ろ盾にして、再交渉をする意向です。

 

 この国民投票の結果を受けて、ギリシアの各銀行に対する支援が打ち切られて経済が麻痺してしまうという懸念から、ギリシアのユーロからの離脱、更にはEUの崩壊という話まで飛び出しています。ツィプラス首相はギリシアがユーロからもEUからも離脱することはなく、債務に関する交渉とそういった問題とは全く別だとしています。

 

 個人と国家とは違うと言われるかもしれませんが、個人が借金をして返せなくなったら、裁判所に行って自己破産をします。債権者側と話し合いをして、「ここまでなら返せる」とか「こんな仕事をしてどれだけの収入を得るので、返済にはこれだけ回せる」という話をして、何とか重たい借金から逃れることになります。その代り、信用はないのですから、新たに借金をすることはできませんし、他にも制限がかかることがあります。信用を失うことは個人として最大のペナルティとなります。

 

 ギリシア側の言い分は、「ドイツは調子が良い時はホイホイとギリシアの身の丈に合わないほどの金額を貸したではないか」「ギリシアがオリンピックの準備で財政を拡大(借金を重ねた)した時、ドイツの製品を色々と買ってやって、それでドイツは潤ったではないか」ということです。ドイツ人たちは「ギリシア人は働きもせずに苦労もせず、借金をしてもあっけらかんとしている」と馬鹿にしつつ非難しています。

 

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピック、その前年の2019年には同じく東京でラグビーのワールドカップを開催する日本としては、新国立競技場やスポーツ施設のその後の使われ方と管理費が心配です。ギリシアのようにはならないと思いますが、一時の好景気の後に来る不況でそうした負担が重くのしかかってくることは、今から気分を重くさせる課題です。

 

 ギリシアは人口1000万程度(首都アテネに300万人が住んでいる)で、大した産業(製造業)はありません。輸入が輸出よりも多く、その足りない分は、観光と出稼ぎに行ったギリシア人の送金で埋めているという感じです。お金になりそうな海運と石油・化学製品の輸出も世界的な景気後退でそこまで儲からないようです。ですから、「ギリシア人は昼寝ばかりしている」といくら言ってみても、もともと産業と呼べるようなものはなく、海運と観光で食べていくだけの小さな国であったのに、身の丈に合わない借金を「してしまった」いや、「させられてしまった」と言うことが出来るでしょう。

 

 現在、EUでは頭文字でPIGSと呼ばれる国々が債務危機に陥る危険性を持っていると言われています。ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペインです。これにアイルランド(Ireland)を入れる場合もあります。これらの国々はまた、「ヨーロッパ周縁諸国(European Periphery)」とも呼ばれています。このperipheryは、「周縁」とか「辺境」などと訳されます。これに対置する言葉がcoreで「中心」とか「中核」と訳されます。こうした言葉づかいを見ると、私はイマニュエル・ウォーラスティンの「世界システム論」を思い出します。ウォーラスティンについては拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、世界経済の分析では今でも有効性を持っていると思います。もちろん、西洋中心主義的であり、現在のグローバル・ヒストリー(世界史)の流れからは批判は多いと思いますが。

 

 EU(ヨーロッパ連合)はヨーロッパを1つにまとめ、ヨーロッパ人を生み出すことを理想としました。しかし、現実は経済力(工業生産力や資本力)が高い国々がそうではない国々に国内の資本を「輸出」し、実は支配・被支配関係、従属関係になっているのではないかと思います。今回のギリシア危機はそうした矛盾が露わになったのではないかと思います。こうした観点からみると、ウラジミール・レーニンの『帝国主義』もまた分析の一助になるのではないかと思います。

 

 ギリシア国民の債権者からの提案に対する「ノー」は、EU中核であるドイツの「帝国主義」に対する大きな反発だったのだろうと思います。

 

 EUの目的は1つのヨーロッパを作ることで、その根幹にあるのは「ヨーロッパ全土を焦土とする大戦争は二度と起こさせない」という考えであり、「ドイツ問題(近代のヨーロッパの大戦争はドイツの膨張に伴って起きた)を解決しなければならない」という考えでもあります。この根幹があるために、EU運動の中心となったフランスなどの国々は、EUを崩す訳にはいきません。ですから、こうした国々は、ギリシアに対しても、ドイツに比べて温和な態度を取ることになります。

 

 ギリシアがユーロから離脱し、EUが崩れていくという予想もあるとは思いますが、「お金で解決できることはお金で解決」というのが世間の知恵です。市場の動きなどを見ていても、そこまで大事にはならないで、ある程度の所で収まるのだろうと思われているようです。EUもユーロも何とかこのまま続いていくのでしょう。しかし、今のままではどん詰まりのジリ貧です。そこで、ユーラシア連合でユーラシアの端にある中国とアジアにつながって経済成長の恩恵、おこぼれをあずかろうとするでしょう。昔であればアメリカが助けたでしょうが、アメリカ自身もアジアのおこぼれにあずかろうとし、太平洋をブロック化しようとしています。何か大きな変動が起きている、そのように感じています。

 

(終わり)








野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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