古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 世界経済

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

古村治彦です。

 

 今回は中国とロシアの経済協力関係に関する記事をご紹介します。上海協力機構は2001年に作られました。一時期低調でしたが、最近、この枠組みでユーラシア統合が進められようとしています。上海協力機構、ユーラシア経済連合、シルクロード経済ベルト、そしてAIIBが接着剤となれば、EUまでつながります。このうちのどれともつながらない日本は「負け組」にされていくことでしょう。


==========

 

中国は全般的な経済協力のための基礎を築いた(China and Russia Lay Foundation for Massive Economic Cooperation

 

リード・スタンディッシュ筆

2015年7月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/07/10/china-russia-sco-ufa-summit-putin-xi-jinping-eurasian-union-silk-road/

 

過去10年、中国政府とロシア政府はパートナーと言うよりも競争相手であった。しかし、ロシアと中国の指導者たちは2か国の地域経済プロジェクトを統合することを考えている。その結果、中国とロシアの関係は変化しつつある。それぞれが考えている地域経済プロジェクトは、ロシア側がユーラシア経済連合(Eurasian Economic Union)、中国側がシルクロード経済ベルト(Silk Road Economic Belt)である。

shanghaicooperartionorganization001
 

 

 ロシアの都市ウファで上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)の首脳会談が2日にわたって行われた。ロシアのウラジミール・プーティン大統領と中国の習近平国家主席は、中国が計画している中央アジア地域に建設する数十億ドル規模の道路、鉄道、パイプラインのネットワークと、旧ソ連ブロックであるアルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシアで形成しているユーラシア連合を統合するための枠組みを話し合ったと報道されている。インフラのネットワークとユーラシア連合の合同は、上海協力機構の支援の下で行われることになるだろう。この計画が完成すると、上海からサンクトペテルブルグまでを網羅する支配的な経済主体となる不透明な組織が出現することになるだろう。

 shanghaicooperationorganization002

 

 カーネギー・モスクワ・センターのアジア太平洋プログラムロシア部長で上級研究員のアレクサンダー・ガブエフは、『フォーリン・ポリシー』誌の取材に対して次のように語った。「経済統合について初めてワーキング・グループが作られた。ユーラシア経済連合とシルクロード経済ベルトの統合は現在のところ実現可能である」。この経済統合計画は、ロシア主導のブロックの規制と中国の大きな経済力を統合することである。中国は中央アジアに既に500億ドル以上を投資している。ユーラシア連合は関税同盟を形成している。これによって中国からヨーロッパまでの製品輸出にかかる輸送費を劇的に削減することが出来るのだ。これは、中国から輸出された製品が1つの統合された関税ゾーンを越えるだけで済むからだ。ガブエフは「この計画には、地政学的と言うよりも、商業的に強力な論理が存在している。」と述べている。

 

上海協力機構は2001年に中国、ロシア、中央アジア4カ国で創設された。上海協力機構は元々、メンバー諸国の間の広範な争いを解決するために創設されたものだ。この目的は達成された。それ以降、上海協力機構は、経済開発から対テロリズム対策まで、多くの面で協力関係を構築するようになっている。しかし、上海協力機構はある1つの問題について決定的な役割を果たそうと苦闘してきた。

 

 金曜日、ウファに集まった各国の指導者たちはインドとパキスタンから出されていた上海協力機構の正規メンバー申請を受理した。ロシアは、イランに対する国連の経済制裁が解除された後、イランを正規メンバーとしたいとする希望を表明した。グラスゴー大学の中央アジア専門家のルカ・アンセスキは「上海協力機構は中国とロシアのパートナーシップによって再び活力を取り戻している。そして、上海協力機構は急激に重要性を増している」と語っている。

 

 中国とロシアの国営メディアは経済協力計画と上海協力機構を大々的に宣伝し始めている。中国国営の新華社通信はこの経済統合計画を「全ユーラシア大陸の協調と繁栄」の青写真と呼んでいる。ロシアと中国は中央アジアにおける影響力を巡る綱引きを行っていたが、その状況から変化しつつある。

 

 プーティンは自分たちが西洋諸国から孤立していると考えている。そして、ロシア経済は経済制裁と石油価格の下落によって弱体化していると考えている。その結果、ロシアは中国との関係を強化しようとしている。ロシアの東への軸足の移動は、エネルギー取引の形で現れている。昨年、ロシアは中国との間に4兆ドル規模の天然ガス取引合意を取り付けた。今年、ロシアは中国主導のアジアインフラストラクチャ投資銀行(AIIB)に参加した。そして、ロシアはウファでの首脳会談で上海協力機構の下で新しい開発銀行の創設を巡る話をスタートさせた。ロシアは自国の影響力圏における中国の台頭を恐れてこうした提案を以前は拒絶していたが、態度を変更させている。

 

 しかし、こうした新しい状況の下で、ロシアは中央アジアとその他の旧ソ連地域における自国の位置づけを考え直している。アンセスキは「ユーラシア連合はロシアが望んだような成功の姿ではない」と述べている。ユーラシア連合は2015年1月に成立したが、ベラルーシ、カザフスタン、ロシアとの間で貿易に関する争いが発生したことで協力関係は傷つけられた。そして、ロシアはメンバー諸国に対して説明した経済刺激策を実行できないでいる。アンセスキは「ロシア政府は中国からの投資と競い合うことは不可能だし、追いつくことすらできないと分かっている」とも語っている。

 

 ロシアは中央アジア地域における安全保障の提供者としての影響力を維持することを目的としている。ロシアは、軍事基地の設置、軍事同盟、2002年に締結された旧ソ連地域の安全保障ブロックである集団安全保障条約地域(Collective Security Treaty Organization)を通じて地域における影響力を維持している。この形は、中国と中央アジア諸国両方を満足させている。中国は国外に軍隊を駐留させることに懸念を持っているし、中央アジア諸国はロシアの軍事力の存在に慣れている。ガブエフは、「この経済統合の形では、中国が銀行の役割を果たし、ロシアは軍事力を提供することになるだろう」と述べている。

 

 ウファで計画の概要が描かれたようであるが、経済統合合意の実現までにはいくつもの大きな障害が待ち受けている。ロシアの指導者たちの間には中国に対する姿勢に関して分裂があると専門家たちは指摘している。1つのグループは、ロシア政府内の現実主義的なテクノクラートたちだ。彼らは、西洋諸国と仲違いしているロシア経済にとって中国は必要な存在であり、ロシアが中国の経済力に対抗することは不可能であり、中国からの投資を必要としていると考えている。しかし、ロシアの安全保障に関する諸機関は、拡大し続ける中国はロシアの影響力を弱めると懸念を持ち続けている。現在までのところ、現実主義的な人々が論争に勝利しつつあるようだ。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23









 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

 古村治彦です。

 

 2015年7月5日の日曜日、ギリシアで国民投票が行われました。EUなどの債権者側がギリシアに緊縮財政(年金のカットと増税、国防費の削減)を求め、これに対して、債務者側のギリシアのツィプラス首相が交渉を打ち切り、この債権者側の要求に「イエス」か、「ノー」かを国民に選んでもらうことになりました。結果は「ノー」が多数を占めました。ギリシア国民は債権者側からの要求を拒否しました。ツィプラス首相はこの民意を後ろ盾にして、再交渉をする意向です。

 

 この国民投票の結果を受けて、ギリシアの各銀行に対する支援が打ち切られて経済が麻痺してしまうという懸念から、ギリシアのユーロからの離脱、更にはEUの崩壊という話まで飛び出しています。ツィプラス首相はギリシアがユーロからもEUからも離脱することはなく、債務に関する交渉とそういった問題とは全く別だとしています。

 

 個人と国家とは違うと言われるかもしれませんが、個人が借金をして返せなくなったら、裁判所に行って自己破産をします。債権者側と話し合いをして、「ここまでなら返せる」とか「こんな仕事をしてどれだけの収入を得るので、返済にはこれだけ回せる」という話をして、何とか重たい借金から逃れることになります。その代り、信用はないのですから、新たに借金をすることはできませんし、他にも制限がかかることがあります。信用を失うことは個人として最大のペナルティとなります。

 

 ギリシア側の言い分は、「ドイツは調子が良い時はホイホイとギリシアの身の丈に合わないほどの金額を貸したではないか」「ギリシアがオリンピックの準備で財政を拡大(借金を重ねた)した時、ドイツの製品を色々と買ってやって、それでドイツは潤ったではないか」ということです。ドイツ人たちは「ギリシア人は働きもせずに苦労もせず、借金をしてもあっけらかんとしている」と馬鹿にしつつ非難しています。

 

 2020年に東京でオリンピック・パラリンピック、その前年の2019年には同じく東京でラグビーのワールドカップを開催する日本としては、新国立競技場やスポーツ施設のその後の使われ方と管理費が心配です。ギリシアのようにはならないと思いますが、一時の好景気の後に来る不況でそうした負担が重くのしかかってくることは、今から気分を重くさせる課題です。

 

 ギリシアは人口1000万程度(首都アテネに300万人が住んでいる)で、大した産業(製造業)はありません。輸入が輸出よりも多く、その足りない分は、観光と出稼ぎに行ったギリシア人の送金で埋めているという感じです。お金になりそうな海運と石油・化学製品の輸出も世界的な景気後退でそこまで儲からないようです。ですから、「ギリシア人は昼寝ばかりしている」といくら言ってみても、もともと産業と呼べるようなものはなく、海運と観光で食べていくだけの小さな国であったのに、身の丈に合わない借金を「してしまった」いや、「させられてしまった」と言うことが出来るでしょう。

 

 現在、EUでは頭文字でPIGSと呼ばれる国々が債務危機に陥る危険性を持っていると言われています。ポルトガル、イタリア、ギリシア、スペインです。これにアイルランド(Ireland)を入れる場合もあります。これらの国々はまた、「ヨーロッパ周縁諸国(European Periphery)」とも呼ばれています。このperipheryは、「周縁」とか「辺境」などと訳されます。これに対置する言葉がcoreで「中心」とか「中核」と訳されます。こうした言葉づかいを見ると、私はイマニュエル・ウォーラスティンの「世界システム論」を思い出します。ウォーラスティンについては拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、世界経済の分析では今でも有効性を持っていると思います。もちろん、西洋中心主義的であり、現在のグローバル・ヒストリー(世界史)の流れからは批判は多いと思いますが。

 

 EU(ヨーロッパ連合)はヨーロッパを1つにまとめ、ヨーロッパ人を生み出すことを理想としました。しかし、現実は経済力(工業生産力や資本力)が高い国々がそうではない国々に国内の資本を「輸出」し、実は支配・被支配関係、従属関係になっているのではないかと思います。今回のギリシア危機はそうした矛盾が露わになったのではないかと思います。こうした観点からみると、ウラジミール・レーニンの『帝国主義』もまた分析の一助になるのではないかと思います。

 

 ギリシア国民の債権者からの提案に対する「ノー」は、EU中核であるドイツの「帝国主義」に対する大きな反発だったのだろうと思います。

 

 EUの目的は1つのヨーロッパを作ることで、その根幹にあるのは「ヨーロッパ全土を焦土とする大戦争は二度と起こさせない」という考えであり、「ドイツ問題(近代のヨーロッパの大戦争はドイツの膨張に伴って起きた)を解決しなければならない」という考えでもあります。この根幹があるために、EU運動の中心となったフランスなどの国々は、EUを崩す訳にはいきません。ですから、こうした国々は、ギリシアに対しても、ドイツに比べて温和な態度を取ることになります。

 

 ギリシアがユーロから離脱し、EUが崩れていくという予想もあるとは思いますが、「お金で解決できることはお金で解決」というのが世間の知恵です。市場の動きなどを見ていても、そこまで大事にはならないで、ある程度の所で収まるのだろうと思われているようです。EUもユーロも何とかこのまま続いていくのでしょう。しかし、今のままではどん詰まりのジリ貧です。そこで、ユーラシア連合でユーラシアの端にある中国とアジアにつながって経済成長の恩恵、おこぼれをあずかろうとするでしょう。昔であればアメリカが助けたでしょうが、アメリカ自身もアジアのおこぼれにあずかろうとし、太平洋をブロック化しようとしています。何か大きな変動が起きている、そのように感じています。

 

(終わり)








野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




ギリシアの国民投票に対する投資家のためのガイド(An Investor’s Guide to the Greek Referendum

―ギリシア救済

 

アシュリー・キンダーガン筆

2015年6月30日

『ザ・ファイナンシャリスト』誌

https://www.thefinancialist.com/an-investors-guide-to-the-greek-referendum/?utm_source=taboola&utm_term=foreignpolicy&utm_campaign=Global

 

 ギリシアとヨーロッパ通貨連合の未来について知りたい人たちにとって、2015年7月5日のギリシアの国民投票が最も明確なヒントとなる。7月5日の日曜日、ギリシアの有権者たちは、ギリシア救済プログラムの延長のためにヨーロッパ各国のそして世界中の債権者たちが示した最新の提案について賛成もしくは反対の投票をすることになる。クレディ・スイス銀行の複数のアナリストたちの分析によると、国民投票は、ギリシアがユーロ圏に留まるかどうかを決める投票となる、ということだ。

 

 ギリシア首相アレクシス・ツィプラスは、年金の削減と増税を含む最新の提案を拒絶した。その結果、ギリシアとヨーロッパ各国政府の幹部たちの交渉はここ数週間開かれないことになった。ギリシア議会はツィプラスの提案を受け入れて、債権者たちからの提案についての国民投票を行うことを認めた。ギリシア政府は、有権者たちに対して「ノー」に投票するように訴えている。

 

 ヨーロッパ中央銀行は、現在ギリシアの各銀行に行っている1日900億ユーロの緊急融資に対して制限をかけると発表した。この資本注入によって、ギリシアの各銀行はここ数週間の間に預金者たちが預金の引き出しに殺到してきても何とか対応し、業務を続けることができた。預金引き出しの要求が高まっていく中で、ギリシアの各銀行は6月29日に業務を停止し、国民投票が終わるまで閉店するということになった。

 

 金融市場は、市場参加者たちがギリシアは2015年6月30日の国債通貨基金(IMF)からの借り入れ15億ユーロの償還期限までに支払いをできないだろうと考えて行動しているこの動きを反映している。月曜日、ユーロ・ストックス・50・エクイティ・インデックスは約4.3%の下落を記録した。確定利付き債券投資を行っている投資家たちは安全な投資先へ殺到した。10年物のドイツ国債の金利は0.09%下落して0.92%になり、10年物のアメリカ国債の金利は0.16%下落して2.33%になった。スペイン国債の金利は0.24%上昇して2.35%になった。ギリシア問題がヨーロッパの別の辺境に広がることを投資家たちは懸念している。

 

 ギリシア政府の訴えにもかかわらず、国民投票の結果は「イエス」となるだろう、とクレディ・スイス銀行プライヴェートバンキング・アンド・ウェルスマネイジメント部門は分析している。その1つの証拠として世論調査の結果がある。国民投票が行われると正式発表が行われる前に実施されたある世論調査では、57%のギリシア人が救済計画提案を支持していた。クレディ・スイス銀行のアナリストたちは、1日60ユーロの引き出しのために長い列を作っている人々は、何が自分たちの利益となるかを良く分かっていると見ている。

 

 しかし、2015年7月5日まではギリシアに対する救済計画は有効であって、これが意味するところは、それ以降はギリシアは債権者たちと全く新しい合意を結ばねばならないということだ。ツィプラスは国民投票で救済計画に対してイエスが多数を占めた場合は辞任すると明言している。クレディ・スイス銀行のアナリストたちは、ユーロ圏維持派が連立を組んで、政権を握ることになると見ている。そして、彼らがヨーロッパ各国の高官たちとIMFと新たに交渉を始め、救済計画の2年から3年の延長に合意し、ツィプラスが拒絶した諸改革を実行することになるだろうと見ている。

 

 しかし、ギリシアの有権者たちが、自分たちが選挙で選んだ指導者たちの言うことを聞いて、「ノー」と答えたらどうなるだろうか?そうなると、ギリシアがヨーロッパ中央銀行に対して債務の借り替えを行うことも再交渉を行うことも大変困難になる。2015年7月20日が、ヨーロッパ中央銀行が持つ35億ユーロ分のギリシア国債の償還期限だ。この国債が支払い不履行に陥ると、ヨーロッパ中央銀行はギリシアの各銀行に行ってきた緊急支援を全て打ち切ることになり、ギリシアは債務超過状態になる。ギリシアを何とか動かしていたヨーロッパからの支援と国際債券市場から切り離された場合、ギリシアは自国で通過を発行しなくてはならなくなり、それはユーロからの離脱の決定的な一歩となる。

 

 ギリシアの経済規模はユーロ圏の2%を占めるほどの小ささではある。しかし、通貨連合からの離脱によってヨーロッパは長期にわたるリスクを抱え込むことになるとクレディ・スイス銀行のアナリストは見ている。「一国のユーロから離脱を“終わりの始まり”だと市場は受け取るだろう」とクレディ・スイス銀行のアナリストたちは2015年6月28日に発表した報告書の中で書いている。しかし、彼らはまた、ヨーロッパ中央銀行が追加的な量的緩和か各銀行に対する低金利の貸付を行うことで、イタリアやスペインのような辺境国家に十分な流動性を保証する手段を取るだろうとも述べている。

 

 決定が先送りされることで、市場はリスクから脱した雰囲気になる。クレディ・スイス銀行は、確定利付き債券投資を行っている投資家たちは政府債券、国債、スイス政府債券に群れを成して向かい、通貨に投資している人々は、米ドル、英ポンド、日本円に向かうだろうと見ている。ドイツ債券とヨーロッパ辺境各国の債券との間の差はこれまでになく大きくなる。

 

 何はともあれ、アナリストたちは、投資家たちはヨーロッパ各国の株価は下落するものと考えているだろうと見ている。ギリシアの国民投票で救済プランへの支持が多数を占めた場合、ギリシア各国の株価、特にギリシアとヨーロッパ辺境各国の株価は急上昇するとクレディ・スイス銀行は見ている。もし「ノー」となっても、ヨーロッパ中央銀行がその影響が拡大しないように素早く動いたら株価が暴落することはないとクレディ・スイス銀行は見ている。ユーロは弱くなり、それによってドイツの輸出業者たちは利益を得る。投資家たちはギリシアの動向を注視している。彼らは心配をしながらも、機会をうまく利用して利益を出すようにする必要がある。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-09-09



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回はプエルトリコのデフォルト(債務返済不能)についての短い記事をご紹介します。プエルトリコはアメリカの州ではなく、自治領です。ギリシアのデフォルトの話がマスコミで騒がれる中、こちらも約8兆円の債務を抱えて債務不履行の危機に陥っていると報じられました。今のところ、債権者側と話し合いが行われ、一部が返済猶予となりましたが、大変な状況は変わりません。

 

 この記事にもあるように、「借金で大変な奴らのくせに、借金を返すお金を生み出すための改革を嫌がり、痛みから逃げようなんてのは、ふてぇ野郎たちだ」という考えがあるようです。お金を貸した人は確かにそうでしょう。落語の『掛取り漫才』『言い訳座頭』の枕に使われる狂歌には“「大晦日首でも取ってくる気なり」「大晦日首でよければやる気なり」”というものがあります。

 

 ギリシアは国民の多くの割合が公務員で、年金や社会福祉制度で放漫なところはあったということは分かりますが、そこまで放置した各国にも問題があるし、本気で助けたいならばそこは話し合いと支援は必要になってくるでしょう。

 

 プエルトリコでは、最低賃金を引き下げて経済成長をという話になっているようです。最低賃金で国民の3分の1が暮らしている国でそんなことをしても大丈夫だとは思えません。購買力がかえって下がってしまうのではないかと思います。そもそも福祉や最低賃金のような生命維持に直接かかわる部分を大ナタで切り刻むことは国民生活の破綻を招きます。

 

 そして、最低賃金を引き下げることで経済成長につながるという理論がアジアの東の端の島国のアホな政治家たちに知られてそれを追求されてしまうことは怖いなと思っています。

 

==========

 

プエルトリコはギリシアと同じ問題を抱えている:人々は改革を望んでいない(Puerto Rico Has the Same Problem as Greece: Its People Don’t Want Reform

 

デイヴィッド・フランシス筆

2015年7月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2015/07/02/puerto-rico-has-the-same-problem-as-greece-its-people-dont-want-reform/

 

 プエルトリコ水曜日、デフォルトを避けることが出来た。

Puerto Rico staved off default Wednesday, scrounging together a little more than a billion dollars to pay off some due debt. しかし、But this is only delaying default on $72 billion in additional loans, something Puerto Rican Gov. Alejandro García Padilla says is inevitable without outside help.

 

 アメリカ自治領プエルトリコと破綻の危機に瀕しているギリシアを多くの人々が比べている。この2つの間には明確な違いがある。ギリシアのデフォルトと破綻は世界経済に大きな影響を与えるが、プエルトリコの財政破綻の影響は限定的である。しかし、プエルトリコとギリシアの間には1つの共通点がある。双方の人々こそが潜在的な問題なのである。

 

 ギリシアはヨーロッパ諸国がギリシアの年金システムの変更を求めていることに憤慨している。ギリシアの退職年齢は67才であるが、ギリシアの国内法では、多くの労働者たちがそれよりも若い年齢で退職することを認めている。ドイツの退職年齢はきっちり69歳と決められている。ドイツ政府は、ギリシアの年金システムを濫用する国民を厳しく取り締まることを求めている。しかし、ギリシア首相アレクシス・ツィプラスは年金システムの変更を拒絶している。イタリア、スペイン、ポルトガルと同様、ギリシアにおいても、寛大な福祉システムと早期退職制度が特徴となっている。

 

 最低賃金の問題は別であるが、同じことがプエルトリコでも起きている。プエルトリコはアメリカと同じ最低賃金となっている。その金額は時給で7.25ドルである。しかし、アメリカ全体とは異なり、プエルトリコで最低賃金を稼ぐ人々は、1人当たりの平均収入2万3840ドルの77%分を稼ぐことが出来るが、アメリカでは平均収入4万9803ドルの23%分しか稼ぐことが出来ない。

 

 プエルトリコではより多くの労働者たちが最低賃金で働いている。ニューヨーク連邦準備銀行は2012年に出した報告書では、2010年の段階で、アメリカ国民の16%が最低賃金で生活しているが、プエルトリコでは3分の1がそうであった。

 

 ガルシア・パンディラ知事が債務委員会を立ち上げるのに合わせて、プエルトリコの経済的苦難に関する報告書が出された。その中にはいくつかの提案がなされていた。そのうちの1つが、アメリカ連邦議会に対してプエルトリコの最低賃金を引き下げることを推奨するものであった。理論的には、それによって雇用主はより多くの人を雇用できるようになり、それによって経済成長を促進することになる。サンフアンにあるニューエコノミー・センターの政策部長セルジオ・マシュアクは、最低賃金の引き下げはプエルトリコに政治的に有害なことが起きると主張している。

 

 マシュアクは『フォーリン・ポリシー』誌とのインタヴューで次のように語った。「最低賃金を引き下げても経済が上がる訳ではない。報告書の提案は実現可能だとは思わない」。

 

 しかしながら、マシュアクはプエルトリコ経済を救うことが出来るのはこのような人気のない提案だけだとも主張している。

 

マシュアクは次のように語っている。「私たちはIMFや世界銀行のような国際機関からの救済を得ることが出来ない。それなのに、アメリカ連邦政府はプエルトリコに対して緊急融資をして救済する意図を持っていない。連邦議会もそうだ。経済政策の点で言うと、私たちは苦しい立場に立たされている」。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23





 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回は人民元の世界通貨への道筋に関する記事をご紹介します。世界の主要通貨は米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円だそうで、それに中国人民元が加わるかどうかがこれから数年の動きだそうです。そのためには為替市場による決定とIMFの特別引出権を構成する通貨となることが重要で、中国はそれに向けて努力しているので、それを認めていくことが全員の利益になるということです。

 

 中国の平和台頭と協調社会への動きはこれからも進んでいくでしょうから、それを日本も自国の利益とするように動いて行かねばなりません。「キライキライ」と言っているだけで済んだ時代はもう終わりました。それが現実的な大人の態度と言うものでしょう。

 

=========

 

人民元の世界通貨への道筋をつけるべきだ(Make Way for the RMB

―IMFが中国を自陣営に留めたいと望むなら、中国の通貨・人民元をより自由市場による為替決定システムに委ねようとしている中国政府に対して報酬を与えるべきで、そのタイミングは今だ

 

パオラ・サバッチ(Paola Subacchi)筆

2015年6月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/16/make-way-for-the-rmb-china-reserve-currency-imf-sdr-dollar/?utm_content=buffer42919&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

人民元は国際通貨基金(IMF)の特別引出権(Special Drawing Rights)の価値を決定する世界の主要通貨のバスケットに参加するだろうか?中国の通貨・人民元を含むかどうかの決定は、G7諸国にかかっている。これらの国々はIMFにおいて強い影響力を保持している。彼ら自身が自分たちにとって利益になることが分かっているならば、人民元を含むことに賛成するだろう。

 

 これは深い政治的な意図をもった技術的な決定である。人民元がドル、ユーロ、ポンド、円と並んで国際的な主要準備通貨になるための道筋を開くことになる。IMFのクリスティーン・ラガルド専務理事は今年3月、「人民元が国際的な準備通貨になるのは可能性の問題ではなく、その時期の問題になっている」と発言した。今年、もしくは2020年、IMFは特別引出権バスケットの構成を見直す予定である。

 

 現在のところ、人民元をこのバスケットに含むことをためらう理由は存在しない。今年、もしくは少なくとも2016年に人民元をバスケットに含むことで、中国に対して、国際的な通貨・金融共同体において中国が歓迎され、信頼されているのだというメッセージを送ることになる。このメッセージは全ての国々に利益をもたらす。

 

 G7蔵相会議が今月初めにドレスデンで開催された。この時、特別引出権バスケットへの人民元の包含が政治的な理由からどれほど望ましいことであっても、人民元の技術的な評価は、最終決定においてきわめて重要であるという見解を示した。「自由な使用性」のような技術的な基準が評価の基礎になる場合、人民元は含まれない可能性もある。「自由な使用性」とはIMFの専門用語で、ある通貨が世界中のどこでも使えて、両替できるかということである。ドルと違い、中国の通貨・人民元は完全に両替可能な通貨ではない。中国の銀行においては使用者が望むだけの両替ができない通貨なのである。従って、国際的な市場では使いにくい通貨となってしまっている。

 

 IMFは、より有効なアプローチは「国際的な通貨システムにおいてより広範な役割を果たす可能性」を評価し、最近の状況と共に将来に発展について考慮することだと述べている。2010年にIMFは最新の特別引出権の評価を行った。それ以降、中国はいくつかの政策手段を通じて、人民元の国際化を推進した。それらの政策手段の1つとして、中国は香港、ロンドン、シンガポールにおいて人民元決済銀行を設立した。

 

結果として、中国の総貿易の20%以上が人民元で決済されている。5年前にはこの数字はゼロであった。更に言えば、人民元は、ドル、ユーロ、円、英ポンドに続いて現在世界で5番目に国際的な支払いにおいて使用されている通貨である。準備通貨として人民元を保有する中央銀行と公的機関の数もまた拡大している。投資銀行の総保有資産の0.5から1%は人民元で構成されていると推定されている。非中国・人民元建て建債券の発行高は2010年から2014年までの間に1200億ドルにまで増加したと推定されている。それでも人民元建て債券の発行額は主要通貨建てよりも少ない。

 

 中国の中央銀行である中国人民銀行の周小川総裁は4月にワシントンを訪問した。この時、周総裁は「人民元の世界での使用を促進する更なる手段は計画中である」と発言した。より大きな為替率の柔軟性が達成されつつあるが、より大きな柔軟性は、中国当局が経済をより国内需要に集中するという再編を行うことで達成されるだろう。その結果、為替率は管理システムから市場が決定するシステムへと移行するだろう。

 

 今年5月、IMFは人民元が安値ではないと発表し、中国の通貨当局が為替率管理のための介入を減らしていると認めた。対照的に、2010年の段階では、IMFは人民元が安値であると評価し、アメリカ連邦議会は中国の通貨捜査について懸念を持っていた。

 

 IMFは人民元を巡る数々の進歩を認めてはいるが、特別引出権バスケットから人民元を排除するかどうかははっきりしない。議論が続いている分野は資本勘定自由化だ。中国当局は資本の流れは促進されるべきだが、予想外の望ましくないそして過剰な出来事を抑えるためにも、しっかりと監視されるべきだという姿勢を崩していない。これは中国式の資本勘定自由化であり、これを周総裁は「管理された自由化」と表現した。IMFの理事会が「管理された自由化」は、通貨の「完全な使用性」を制限することだと決定するならば、「管理された自由化」は人民元の世界通貨への道筋における障害物となる可能性はある。

 

 両替のしにくさがネックになって人民元が特別引出権バスケットに含まれない可能性があるにしても、最終決定は政治判断によるものと思われる。中国は人民元の承認と特別引出権バスケットへの包含が行われると期待している。そして、これによって中国の通貨は、国際通貨としての承認を得ることになる。ここで重要なのは、人民元が国際金融において力と影響力を持つということだ。人民元の国債通貨としての承認は中国の経済と政治の発展、多国間の通貨と金融システムの活動的なメンバーになるための中国の努力の認識において重要なステップとなるだろう。ノーベル賞受賞者ロバート・マンデルは「偉大な国家は偉大な通貨を持っている」と述べたが、これを敷衍するならば、人民元が国際通貨にならなければ中国の台頭は不完全であるということになる。

 

 幸運なことに、中国と中国を支援する国々にとって、過去の例外事例が重要になってくる。例えば、1981年の特別引出権への包含を検討した際、日本円は「完全な使用性」は持っていたが、完全な両替性を持ってはいなかった。人民元に対しても同じことをすることが良い政治であり、より良く経済を動かすことになる。金融セクターにおける開放に向けた中国の努力、金融改革の進み具合、市場が決定する為替への意向をテストする最良の方法は、中国が行っている人民元を「成長した」通貨にするための努力を支援することだ。

 

 従って、問題は、中国が準備通貨の地位に伴う責務を完全に受け入れることを示す証拠を求めることではない。問題は、中国以外の国々が中国が行っているよき世界市民になるための努力を信頼し、その継続を促進するかどうかということだ。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-3

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

このページのトップヘ