古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 東南アジア政治

 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。BRICS(ブリックス)を中心とする非西洋諸国(the Rest、ザ・レスト)の台頭と重要性について書きました。是非手に取ってお読みください。

 世界規模で電気自動車の需要が高まる中(電気自動車の有効性については疑問がある)、電気自動車の肝となる電池(バッテリー)に使われるニッケルでは、世界最大の埋蔵量(約23%)を占め、鉱石生産量の約半分(約48%)を占めるのがインドネシアだ。

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 インドネシア成否はニッケルの重要性を理解しており、精製していないニッケルの輸出を禁じている。国内に精製工場を建設し、精製済みのニッケルの輸出が必要となっている。世界の電気自動車競争において、電池(バッテリー)が重要だ。インドネシアは電池を製造するところまではいっていないが、精製する段階までは来ている。そのために、電気自動車分野で世界をけん引する中国企業がインドネシアに投資を行っている。インドネシア国内への産業投資の約3分の1は金属部門に流れているが、その多くはニッケル分野だ。

インドネシア政府はこれから電池製造に進もうとしているが、まずはニッケル精製を行っている。これは、2000年代のユドヨノ政権から始まり、2010年代のジョコ政権と続き、今年の選挙で当選したプラヴウォ政権でもこの動きは続く。

 日本ではパナソニックが電気自動車用の電池(バッテリー)を製造している。日本にとって重要なのは、テスラだけではなく、中国電気自動車企業BYDにも電気自動車用の電池(バッテリー)を供給することである。そのために、インドネシアとの友好関係をしっかりと固めることである。日本からも積極的に投資を行うべきだ。それこそは日本の経済だけではなく、安全保障にとっても重要である。

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インドネシアはニッケル産業に大きな野望を抱いている(Indonesia Has Grand Ambitions for Its Nickel Industry

-同国が今週投票に向かう中、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。

クリスティナ・ルー筆

2024年2月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/13/indonesia-election-nickel-economy-energy-jokowi-prabawo/

世界中でエネルギー転換の機運が高まるずっと以前から、ニッケル大国(powerhouse)インドネシアは、豊富な鉱物資源を活用して自国の経済を変革し、国際市場においてより大きな影響力を行使することを夢見てきた。

化石燃料からの世界規模での脱却と、グリーン・テクノロジーの原動力となる重要鉱物の需要の高まりが、ジャカルタの野心を加速させている。ニッケルは電気自動車用バッテリーの主要部品に使用される。インドネシアは世界最大級のニッケル埋蔵量を誇り、2022年には世界供給量の半分を採掘したインドネシアほど、世界のニッケル分野で大きな権益を主張できる国はない。

現在、水曜日には1億人以上の有権者たちが10年ぶりのインドネシアの新しい大統領を選出するために投票所に向かうことが予想されており、ジャカルタの大統領府の将来により焦点が当てられることになる。現在のジョコ・ウィドド大統領(通称ジョコウィ)は、許容される最長任期である10年間権力を握った後、2024年10月に退任する予定であり、彼の後継者が国の急成長するセクターを具体的にどのように形成し続けるのかについて疑問が生じている。

ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社の政策アナリストであるアレックス・ベッカーは、「インドネシアが、世界の他の地域でより価値の高い原料を生産することを望んでいる訳ではないことは明らかだ。本格的な電池とまではいかなくても、少なくとも精製ニッケルを生産することで、自分たちの世界での価値を高めたいのだろう」と述べた。

こうした野望は、ジョコ政権下で具体化され、ジョコウィは世界的な投資を呼び込み、インドネシアを地域の電池製造大国に作り変える努力を強め、一時はOPECと同様の、ニッケルカルテルの設立を提案したこともあった。より付加価値の高い製造能力(川下化[downstreaming]として知られるプロセス)を構築することに熱心なジョコウィは、2020年に未加工ニッケルの輸出を禁止した。この動きは、主に中国企業など、関心を持つ投資家たちに対して、代わりにインドネシアで製錬所を開発し、国内で鉱物を加工するよう促した。ジョコウィは大統領在任中、ジャカルタはボーキサイト、パーム油、石炭の輸出を様々な時点で制限してきた。5月には銅鉱石の輸出の禁止が実効化される予定だ。

ジョコウィの後継者をめぐる競争は始まっている。 3人の候補者が大統領の地位を争っている。その3人は、残忍な独裁者スハルトの親族であり、人権侵害を行ったとして告発されている現国防大臣プラヴウォ・スビアント、元中部ジャワ知事ガンジャール・プラノウォ、元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンだ。

プラヴウォは、ジョコウィの実の息子であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補としているが、最近の世論調査では、水曜日に50%以上の票を獲得すると予測されており、現在のところ最有力視されている。どの候補者も50%以上の得票を得られなかった場合、選挙は6月の決選投票に持ち越される。2人はジョコウィの政策の継続を誓い、経済的繁栄への道を歓迎しており、ギブランはライヴァルたちを「反ニッケル(anti-nickel)」だと非難している。

プラヴウォは投票を前の声明で次のように宣言した。「この粘り強さこそ、私たちが維持しなければならないものだ。私たちは電気自動車のバッテリーや電気自動車を輸出した方がいいのであって、他国に加工してもらうために生のニッケルを輸出した方がいいということはない」。

オーストラリア国立大学インドネシア研究所所長で『インドネシアの資源ナショナリズム』の著者イヴ・ウォーバートンは、「彼らの主張は、私たちは鉱物の下流部門で多くのことを達成しており、プラヴウォ・ギブラン政権の任期中も同じ道を歩み続けるだろう、ということだ。この特定の政策介入に関して、他の候補者たちがプラヴウォやギブランと差別化を図るのは困難なことだった。なぜなら、政府および政府の数字によれば、それは大成功だったからである」と述べた。

例えば、2014年にジョコウィ政権が誕生した当時、インドネシアのフェロニッケル(ニッケルの加工品)の輸出額は8300万ドルだったが、2022年には58億ドルにまで膨れ上がった。輸出だけでなく、インドネシアでは現在、外国直接投資(foreign direct investment)が記録的な水準に達しており、その約3分の1が同国の金属・鉱業部門に注ぎ込まれている。

インドネシアのニッケル産業育成への取り組みは、ジョコウィの在任期間よりも10年以上前に遡る。当時のスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は2009年、企業に国内の鉱山労働者たちを雇用するよう命じる法律を導入し、全ての鉱山への取り組みは国益の増進に焦点を当てるべきだと強調した。外国からの投資を誘致するために、ユドヨノ大統領は2014年にインドネシア初のニッケル未加工品の輸出禁止も課したが、その制限は2017年に緩和された。

ウォーバートンは、「インドネシアのニッケル部門に対する野望は、ユドヨノ時代と2009年の鉱山法にまでさかのぼる。それ以来、インドネシアは鉱物からより多くの価値を引き出すべきだと法律で定められている」と述べた。

しかし、その後数年間、この業界は多くの課題に直面し、特に製錬所の爆発やその他の死亡事故の報告を受けて業界の汚染、環境への被害、安全上の問題に対する懸念が高まっている。最も致命的な事件の1つとして、12月に中国のニッケル工場で爆発があり、21人が死亡、数十人が負傷した。

インドネシアの政治リスク分析コンサルタント会社リフォルマシ・インフォメーション・サーヴィス代表ケヴィン・オルークは、「ニッケル川下政策の本当の問題は、セーフガードが全くないように見えることだ」と言う。

ニッケル部門の将来には、他の課題も立ちはだかる。中国の大手投資家たちやBYDを含むEVメーカーが数十億ドルの投資をインドネシアに集めている一方で、ジャカルタのアプローチは他の有望なパートナーたちやアメリカを含む国際市場からインドネシアを遠ざける危険性がある。

ジャカルタはワシントンとともに、インドネシア企業がインフレ抑制法を通じて多額の税額控除を利用できる限定的重要鉱物貿易協定の締結を推進していた。しかし、この入札はワシントンで激しい反発を引き起こし、昨年10月には9名のアメリカ連邦上院議員がそのような協定に反対する書簡を書いた。

アメリカ連邦上院議員たちは書簡の中で、「私たちは、インドネシアの労働権、環境保護、安全性、人権に関する基準に懸念を抱いている」と書いている。また、中国企業のインドネシアへの投資やジャカルタのニッケル鉱石輸出禁止に対する懸念も書簡の中で挙げられていた。結局、貿易協定は実現しなかった。

エネルギー転換の需要が新型EVバッテリーの開発を後押しする中、専門家たちによると、技術状況の変化もジャカルタの将来計画を複雑にする可能性があるという。ニッケルは、現在普及している強力なニッケル・マンガン・コバルト(NMC)電池の重要な構成要素だが、企業の一部はニッケルを使用しない新型電池に目を向けている。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローであるカレン・ヘンドリックスは昨年11月、「インドネシアのニッケル埋蔵量と産業への野心は、電池化学の変化によって価値が低下する恐れがある。NMCバッテリーの優位性はつかの間かもしれない」と書いている。

その一例がテスラだ。ジャカルタは数年にわたりテスラからの投資誘致に努めてきたが、テスラはインドネシアへの投資に難色を示し、代わりにインドネシアの豊富な鉱物資源を必要としないバッテリーを採用している。

オーストラリア国立大学のウォーバートンは次のように述べている。「その多くは、技術の進化の早さにかかっている。当初の計画では、ニッケルがこの産業を本格的に立ち上げるために必要な主成分であるという考えに長い間基づいていた。市場は、それが転換する可能性を示唆しているようだ」。

※クリスティナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌特派員。ツイッターアカウント:@christinafei
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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2020年の新型コロナウイルス感染拡大で経済はスローダウンし、その後、経済が少しずつ回復する中で、2022年のウクライナ戦争が勃発し、エネルギー価格や食料価格の高騰により、経済が減速する可能性も出てきている。

 そうした中で、アジア地域の経済成長は続いているようだ。特に東南アジアは世界の成長エンジンと言われている。東南アジア諸国は体制の違いを脇に置いて東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asia NationsASEAN)を結成し、地域の安定を促進し、経済成長に邁進している。東南アジア諸国の経済成長率(予測も含む)は以下のグラフにある通りだ。

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ASEANの地図

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世界各地域の経済成長率(予測を含む)

 東南アジア諸国の中で経済的な大国はインドネシアである。インドネシアは世界で17番目の経済力を持つまでになっている。まだまだ世界的にはひよっこであるが、そのうちに順位をどんどんと上げていくだろう。資源やエネルギー価格の高騰もあり、税収も伸びているようだ。

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GDPのランキング

 ウクライナ戦争を受け、世界は西側諸国(the West)対それ以外の国々(the Rest)の対立構造になっている。西側諸国は先進国ばかりであるが、先進国は少子高齢化と国内の分断状況に苦しんでいる。そうした中で明るい未来への展望は開けない。それ以外の国々は新興諸国であり、これから伸びていくぞという希望が溢れている。

 このような世界構造を理解し、日本は衰退する西側にいるのだということを理解し、それを前提にして世界を見ていくことが肝心だ。このような魅力のない国を誰が攻めようと思うだろうか。占領してみたところで何の意味があるだろうか。日本などよそから見れば勝手に自滅していく国である。そのまま放っておいてもっと弱ってから何かすれば済む話だ。防衛力強化などは恐怖心を煽られて、お金をアメリカに貢ぐための口実に過ぎない。

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アジア新興諸国の成長率が30年ぶりに中国を上回る(Emerging Asia growing faster than China for 1st time in 30 years

-アジア開発銀行は、インドネシアとフィリピンが明るい場所にいるが、インドとパキスタンは失速していると述べた

クリフ・ヴェゾン(日経スタッフライター)筆

2022年9月21日

『日経アジア』誌

https://asia.nikkei.com/Economy/Emerging-Asia-growing-faster-than-China-for-1st-time-in-30-years?utm_campaign=GL_asia_daily&utm_medium=email&utm_source=NA_newsletter&utm_content=article_link&del_type=1&pub_date=20220921123000&seq_num=2&si=d3f405dd-1c11-4b5c-a514-610716136630#

マニラ発。中国の新型コロナウイルス感染対策のロックダウンにより中国の経済成長は、30年以上ぶりに他のアジア新興諸国よりも鈍化した、とアジア開発銀行が新しい報告書の中で述べた。

水曜日に発表されたアジア開発銀行の最新レポートでは、中国の2022年の成長率予測が4月段階での5.0%から3.3%に引き下げられた。また、来年の予測も4.8%から4.5%に引き下げた。

ゼロ・新型コロナウイルス感染戦略のもと、他の国々が経済再開のために規制を緩めたにもかかわらず、地域最大の経済大国である中国は感染症対策としてロックダウンを実施した。

アジア開発銀行は、これらのロックダウンは、アジア地域が直面している他の経済的課題に拍車をかけていると述べている。その主な原因は、ロシアのウクライナ侵攻が長引き、世界の食料および燃料価格を押し上げ、先進国の金利引き上げを招いたことにある。

アジアの新興諸国全体の2022年の成長率は4.3%と、4月の予測値(5.2%)を下回る見込みだ。中国を除いたアジア地域の成長率は5.3%と予測されるとアジア開発銀行は発表している。

2023年については、アジア新興国地域の成長率は5.3%ではなく、4.9%と予測されている。

アジア開発銀行のチーフエコノミストであるアルバート・パーク氏は声明の中で、「アジアの新興諸国は回復を続けているが、リスクは大きく立ちはだかっている」と述べている。

パークは次のように述べている。「世界経済が大幅に悪化すれば、アジア地域の輸出需要は大きく損なわれる。先進諸国での予想以上の金融引き締めは、金融不安につながる可能性がある。また、中国の成長は、度重なるロックダウンと弱い不動産部門による課題に直面している」。

アジア開発銀行は、今年の域内インフレ率が、前回予想の3.7%から4.5%に加速すると予想している。来年の物価上昇率は4.0%で安定すると予想されるが、それでも前回予想の3.1%より高くなる。

アジア開発銀行によると、インフレ率の上昇は南アジアの回復を阻害し、今年の成長率は7.0%から6.5%になると予測されている。南アジア最大の経済大国であるインドの成長率予測は7.5%から7.0%に引き下げられ、来年は7.2%と予測されている。

危機的状況にあるスリランカ経済は、今年8.8%縮小し、2023年には3.3%に縮小が緩和されると予測されている。パキスタンは、6月に終了した2022年の会計年度に6.0%成長したが、国際通貨基金が支援する同国の財政赤字を修正するための努力が経済活動を抑制するため、2023年には3.5%と遅いペースで拡大すると予測されている、とアジア開発銀行は述べている。

それでも、アジア地域の他の地域には明るい兆しがある。

東南アジアの今年の成長率予測は4.9%から5.1%に引き上げられ、2023年には5.0%の拡大が予測されている。

これは、東南アジア最大の経済大国であるインドネシアの内需が拡大し、5.0%から5.4%に成長すると予測されたことによる。フィリピンは6.0%から6.5%に拡大する見込みだ。

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インドネシアは2023年に経済成長率5.3%を目しており、財政赤字削減も視野に入っている(Indonesia eyes 5.3% growth, cuts to fiscal deficit in 2023

-来年度の予算計画では選挙と首都移転が優先事項になっている。

エルウィダ・マウリア(日経スタッフライター)筆

2022年8月16日

『日経アジア』誌

https://asia.nikkei.com/Economy/Indonesia-eyes-5.3-growth-cuts-to-fiscal-deficit-in-2023

ジャカルタ発。インドネシアは、火曜日に発表された2023年度予算案で、地政学的に厳しい状況にもかかわらず、政府は来年の国内総生産(GDP)成長率を5.3%と予測し、財政赤字を新型コロナウイルス大流行前の水準に戻すことを目指しており、経済の見通しには明るい兆しがある。

ジョコ・ウィドド大統領は、国会での国民演説で予算案を発表し、総支出は3041兆7000億ルピア(約2059億ドル)となっている。これは2022年の数字より2%低い。政府は、主に燃料補助金の急増により、今年は合計502兆ルピアになると発表した補助金支出の膨張を反映し、5月に引き上げられた数字である。

政府は来年の税収を大幅に増やし、今年より13%多い2016兆9000億ルピアを目標にしている。インドネシアは、ロシアのウクライナ侵攻により、パーム油や石炭など主要輸出品目の価格が高騰している。インドネシア財務省は先週、7月の時点で税収が1213兆ルピアに達し、2022年全体の目標のほぼ7割を達成したと発表した。これは、新型コロナウイルスの大流行以前から、同省が何年も収入目標を逃してきたことに続くものだ。

商品価格の高騰による歳入の押し上げは来年まで続かないと予想されるが、ウィドド大統領は、政府は引き続き、県レヴェルの課税ベースを広げ、法令遵守を向上させるための税制改革を推進すると述べた。

ウィドド大統領は「2023年の財政赤字は、GDPの2.85%、すなわち598兆2000億ルピアと計画されている」と述べた。

新型コロナウイルス感染拡大と経済の減速に対処するため、2020年にインドネシア議会は、国内総生産の3%と定められているインドネシアの財政赤字の法的上限を3年間停止することを承認した。上限の停止は来年までとなる。

今年の財政赤字はGDPの4.5%と予測されていたが、輸出と税収の高さにより、7月時点でインドネシアはGDPの0.57%に相当する黒字となった。

ウィドドは、2024年の大統領選挙、連邦議会議員選挙、地方選挙の準備に加え、ジャカルタからボルネオ島のヌサンタラへの首都移転計画を含む人的資本とインフラ整備が来年の政権の優先事項であることに変わりはないと述べた。

ウィドド大統領は次のように語った。「世界経済が不安定な中、インドネシア経済のファンダメンタルズは依然として強固である。一方で、私たちは警戒を怠らず、慎重に行動しなければならない。一方で、先進的なインドネシアを実現するために、国家の大きな課題への対応を継続しなければならない」。

来年の支出計画には、教育に608兆ルピア、社会的セーフティネットに479兆ルピア、インフラに392兆ルピア、保健医療に169兆8000億ルピアが含まれている。

来年の経済成長目標は、今年の政府目標である5.2%より若干高くなっている。東南アジア最大の経済大国であるインドネシアは、個人消費の改善と輸出の増加により、4月から6月にかけて5.44%成長し、アナリストの予測を上回り、今年1~3月の5.01%成長よりも高い伸びを示した。

来年のインフレイションは3.3%と予測されており、これは今年のインドネシア政府の3%目標よりも少し高いものだ。インドネシアの最近7年間における最高のインフレイションは今年7月の4.94%であった。

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 古村治彦です。

 今回は、タイ南部に建設計画があるタイ運河に関する論考を紹介する。タイ南部半島部の一番狭い地峡(ちきょう)に2本の運河を建設するというものだ。これで、現在、マラッカ海峡に集中している海運が分散されることになる。また、日本や朝鮮半島、中国に向かう航路がだいぶ短縮されることになる。

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タイ運河の計画地図

 このタイ運河を中国の戦略から見れば、「真珠の首飾り(String of Pearls)」と呼ばれる、「インド包囲網」計画と海上の「一対一路」計画において重要な役割を果たすことになる。中国は東南アジア地域に勢力を伸ばしつつあり、インドはそれを警戒している。中国はインド洋にも進出しようとしている。アフリカ東部地域には既に中国から多額の資金が投じられており影響下に入っている。「真珠の首飾り」計画の地図を見ると、インド包囲網計画は進んでいるようである。

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「真珠の首飾り」

 真珠の首飾りの拠点となるのが、カンボジアのシアヌークヴィルとミャンマーのチャウピューだ。タイ運河が完成すれば、この2地点を結ぶことは容易になる。また、タイ運河に関して言えば、シンガポールやマレーシアに封鎖されてしまえば、マラッカ海峡で身動きが取れない(チョークポイントと呼ばれる)ことになり、現在この航路が主要航路であるため、中国にとっては不安材料ということになる。タイ運河計画が決まれば中国は資金と技術を惜しみなく注ぎ込み、すぐに完成させるだろう。インドもただただ黙っている訳ではない。アンダマン・ニコバル諸島のインド空軍と海軍の能力を増強して、中国の進出に対抗しようとしている。

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シアヌークヴィルとチャウピューの地図

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アンダマン・ニコバル諸島の地図

 タイの動きが重要となってくるが、下の論稿ではタイはアメリカの同盟国であるが、ここのところだいぶ中国寄りの姿勢を強めているということだ。それであるならば、タイ運河建設計画も進む可能性がある。もちろん、タイ国内の親米派はそれに反対するだろう。実際に、「運河ではなく、鉄道と高速道路を建設して代替にしてはどうか」ということを、運輸大臣が述べている。

 タイは新中国と親米、2つの姿勢を使い分けて自分たちにとって最良の利益を引き出すことだろう。これこそが強国ではない国が生き残る術だ。日本もタイに学ぶということをやるべきだ。アメリカにばかり賭けるというのは大変危険で、愚かしいことなのだ。

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インドと中国との争いの次の最前線はタイ運河となるだろう(The Next Front in the India-China Conflict Could Be a Thai Canal

-中国政府がインド洋へより早く着くルートを求めている中でインドは島嶼部防衛を増強しつつある。

サルヴァトーレ・バボーンズ筆

2020年9月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/01/china-india-conflict-thai-kra-canal/

アメリカと中国との間の太平洋での新たな冷戦について忘れよう。現在、インドと中国との間のより熱い戦争が起きている。ヒマラヤ山脈地域の高地地域において国境争いがあり、既に少なくとも20名が死亡している。海洋地域では、中国は、同盟諸国と海軍基地でインドを包囲しようとしている。同盟諸国と海軍基地のつながりは刺激的な言葉「真珠の首飾り(string of pearls)」として知られている。中国の、インドを支配するための、対インド洋・インド戦略における最大の脆弱性は、マラッカ海峡にある。マラッカ海峡はシンガポールとスマトラを分ける狭い海洋航路である。この航路を海運のほとんどが通過しなければならず、中国の海運貿易にとっての命綱であり、中国海軍が南アジア、さらに西側に向かう際の主要航路である。中国とインドのライヴァル関係を考慮し、かつ中国のアフリカ、中東、地中海地域などに対する戦略的な野心も考慮すると、敵意を持つ超大国間にある狭いチョークポイントへの依存を削減するものは何であっても、中国にとっては極めて重要である。

中国政府の、賛否両論のある社会資本プロジェクトの一対一路の中で最も野心的なものがある。それはタイ南部のクラ地峡に運河を通すという計画で、長年議論が続けられてきた。クラ地峡はマレー半島の中で最も狭い場所になっている。この運河が開設されると、中国からインド洋につながる2つ目の海上ルートとなるだろう。その結果、中国海軍は、マレーシアを遠回りする700マイルの航路をショートカットして、南シナ海とインド洋に新たに建設した各基地の間で艦船をすばやく移動させることができるようになるだろう。そのため、タイ運河は中国にとって重要な戦略的財産となるだろう。そして、タイの狭い南部半島地域を取り巻く引き縄となる可能性もある。タイが中国に対して運河建設のために300億ドルの投資を認めるならば、中国に関係する弧が永続的に接続されることになるだろう。

長年議論が続いたが、タイ運河は対国内の政治エリートの間で支持が拡大しているように見える。今月に入り、議会の委員会はタイ運河プロジェクトについての勧告を行った。歴史的に政府に対して批判的な『バンコク・ポスト』紙でさえもタイ運河プロジェクトに好意的な論説を発表した。タイ国内における中国の影響力浸透計画は世論形成に大きに寄与している。タイは名目上アメリカと同盟関係を結んでいるが、2014年にアメリカがタイ国軍のクーデターによる政権掌握を承認することを拒絶して以降、タイ政府は中国寄りに大きく傾いている。

タイ運河プロジェクトは「インドを包囲する」という中国政府の計画に適するものとなる。中国海軍はベンガル湾とインド洋に勢力を拡大しようとしている。アフリカ東部にジブチに物資基地を開設し、ミャンマー、バングラデシュ、パキスタン、イラン、そしてロシアの各海軍と同地域で共同軍事演習を行っている。同地域の中国が資金を出している港湾整備計画はインド包囲網を印象付けている。インドは将来の中国との海上での衝突の可能性に備えて海軍を増強している。今年8月、『ヒンドゥスタン・タイムズ』紙は、インド軍は、中国と対抗するために、アンダマン・ニコバル諸島(Andaman Nicobar Islands)にある空軍基地と海軍基地の能力を増強する計画を持っていると報じた。これらのインド領の人口は50万以下であるが、これらの島々はマラッカ海峡とインド洋の航路を結んでいる。また、これらのインド領の島々は、「タイ運河は脅威とはならない」という主張を行う際の根拠となるものだ。

マラッカ海峡は数千年とは言わないが何世紀にもわたり国際商業にとって重要な回廊であった。イタリアの冒険家マルコ・ポーロはフビライ・ハーンの宮廷から帰国する途中でマラッカ海峡を通った。1292年のことだった。1400年代初頭、中国の明王朝の提督であった鄭和はインド、アフリカ、中東に向かう航海でマラッカ海峡を通過した。現在、年間に8万隻以上の船舶がマラッカ海峡を通過している。マラッカ海峡は東アジアにオイルを運び、工業製品を輸出するための重要な回廊となっている。現在のシンガポールの繁栄は戦略的な位置の上に作り出されたものだ。シンガポールは間が狭いマラッカ海峡の東南部の出入り口に位置している。

タイ運河協会(Thai Canal Association)は政治的に有力なタイ国軍と緊密な関係にある。タイ運河協会はタイの発展のために、タイ運河の両端に工業団地と物流拠点の建設することで、アジア地域の物流の大動脈となることができると主張している。確かにその主張には一理ある。工業関係の専門家たちの試算によると、現在の海運のレートと燃料コストを考えるとタイ運河は不経済(儲からない)ものとなるが、現在の航路となっているマラッカ海峡は海運量の点からその対処機能は限界に近付いている。マラッカ海峡に代わる現在の航路としてはインドネシアのスンダ海峡があるが、東側と西側を結ぶ海運にとっては大きな遠回りを強いられることになる。

現在のタイ運河計画は、「9Aルート」計画と呼ばれている。この計画では2つの運河の建設が提案されている。それぞれが30メートルの深さを持ち、幅は180メートルであり、全長は75マイルとなっている。タイ湾のソンクラー(Songkhla)からアンダマン海のクラビー(Krabi)を結ぶ計画となっている。

この提案された計画を進めることで、タイは2つに分裂するリスクを抱えることになる。タイ国内では現在、南部の3つの州で活発な反乱に直面している。これらの地域の人口の過半数はイスラム教徒であり、民族的にはマレー人である。タイ運河は北部のタイ「本土」と南部の分離運動との間の象徴的な境目となるだろう。タイ国軍の反乱に対する攻勢を止めることはできないだろうが、タイ運河はタイを数世紀にわたり分断することになるだろう。ひとたび運河が完成したら、そこには海水が流れ込む。そうなればタイは2つに分断され、タイ運河はタイ政府にとって大いなる失敗ということになるだろう。

これは、コロンビアがかつてパナマと呼ばれる北西部の地峡を掌握していたことを思い出させるだろう。パナマの独立論者たち(分離主義者たち)が1903年に反乱を起こした際、アメリカ海軍は新国家の独立を確保するために介入した。アメリカのパナマ運河地帯委員会(Isthmian Canal Commission)がその1年後にパナマに介入した。そして、1914年にパナマ運河は最終的にビジネスのために開放された。パナマはこれ以降、アメリカの実質的な保護国となっている。スエズ運河は1869年に開業した。1956年までイギリスとフランスの軍事介入の標的となった。スエズ運河は1975年まで地政学的なゲームの対象となった。そして、今日においても、エジプト政府はスエズ運河の対岸のシナイ半島でのイスラム原理主義者の反乱に直面している。

今日、タイの領土保全は比較的安定している。しかし、タイ運河プロジェクトが成功すると、東南アジアの政治的地理を再設定することになるだろう。それによって、中国は永続的な安全保障に関するパートナーとして迎えられることになるだろう。そうなれば、中国を追い出すことは容易なことではなくなる。このことはパナマの事例を見れば明らかだ。カンボジアのシアヌークヴィル(Sihanoukville)とミャンマーのチャウピュー(Kyaukphyu)のような港湾開発への投資計画とまとめて、中国はタイ運河を、「真珠の首飾り」をつなぐための戦略的な運河と考えるだろうタイ政府が中国に対して敵対する姿勢を取るならば、この繁栄の弧を切断する脅威となる。中国が国益を守る必要性を正当化の理由として、対国内に介入し、タイ南部の独立運動を支援し、タイ運河のコントロール権を掌握するという話は全く荒唐無稽ということではない。繰り返しになるが、パナマ建国の事例が教訓になる。

タイ運河が持つ危険性を嗅ぎ取ったのだろうか、タイの運輸大臣サックサヤーム・シットチョーブは最近になって、運河に代わって、地峡に鉄道と高速道路を建設する方が良いと発言するようになった。シットチョーブは、地峡の2つの面に建設する2つの港湾に関する研究のためにタイ政府は資金を提供すると発言した。そして、「大地の橋梁」で2つを結んで物資を運ぶとした。

タイ運河はアメリカ、アメリカの同盟諸国、インドにとってさえも大きな脅威にならないだろう。インドはアンダマン・ニコバル諸島の前進基地の機能を強化することで、中国の拡張主義に効果的に(しかしかなりの予算が必要となるが)対抗することが可能である。本当の懸念は、ミャンマーやカンボジアのような貧しい東南アジア諸国の独立を更に損なうことになるだろうというものだ。これらの国々は国内の市民社会が弱体であり、中国の介入に対して脆弱である。そして、これは究極的にタイにとって大きな危険となる。マラッカ海峡はシンガポールにとって恩恵となってきた。それは、シンガポールが外国からの影響から比較的自由である開放経済体制を持っているからである。タイは、中国に近づいて敢えて危険を冒す前に、これまでの教訓について熟慮すべきなのだ。

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amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 3月25日から28日にかけて北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長が中国・北京を非公式訪問し、中国の習近平国家主席と会談を行いました。

 

 ジョン・ボルトンが大統領国家安全保障問題担当補佐官になったことで北朝鮮側、そして中国側に焦りが出ているように感じました。今回の訪問は習近平国家主席の招待を受けてということになっていますが、これは中国が北朝鮮問題はあくまで中国の問題であるということを示したかったのだろうと考えられます。

 

金正恩は中国と関係の深かった叔父である張成沢を粛清して中国との関係を悪化させましたが、背に腹は代えられぬということで、訪中したということでしょう。指導者として初めての外国訪問の訪問先を中国にしたということも中国のメンツを立てるという意味もあるでしょう。

 

 新華社通信では会談の内容について詳細に報じていますが、中朝の親善関係の称賛と確認、更なる発展を目指す、ということが何度も話されています。また、金正恩はアメリカと韓国が北朝鮮の努力に対して適切に対応したら、朝鮮半島の非核化を進めることが出来ると述べています。習近平国家主席は政治的安定と平和ということをひたすら述べています。

 

 私が注目したいのは、今回の金正恩の訪中に際して、同行した人々、アテンドした人々です。中国側は政治局常務委員ではなく、習近平の側近たちと外交関係の責任者がアテンドしたようです。同時期にアメリカ連邦議会の議員訪問団が訪中しており、こちらには李克強国務院総理が対応したようです。

 

 北朝鮮側では金正恩の側近たちが随行したようです。金正恩の妹金与正朝鮮労働党副部長の名前は新華社通信の報道にはありませんでした。配偶者である李雪柱氏は同行していたのは写真で確認できます。以下にそれぞれの名前を挙げます。肩書以外の説明は私が付けました。

 

=====

 

■中国側

 

・丁薛祥(Ding Xuexiang、ていせつしょう、1962年):中国共産党第19期中央政治局委員、党中央弁公庁主任、党総書記弁公室主任。習近平の側近(浦江旧部[ほこうきゅうぶ]・上海時代からの側近たち)で第六世代の実力者。

 

・楊潔篪(Yang Jiechi、ようけっち、1950年):中国共産党第19期中央政治局委員、過去に外交部長(外相)を務め、現在は国務委員(外交)を務めている。

 

・郭声琨(Guo Shengkun、かくせいこん、1954年-):中国共産党第19期中央政治局委員、中国共産党中央弁公庁委員、中国共産党中央政法委員会書記。公安畑。

 

・黄坤明(Huang Kunming、おうしんめい、1956年):中国共産党第19期中央政治局委員、中国共産党中央弁公庁委員, 中国共産党中央委員会中央宣伝部長。習近平の浙江省、福建省勤務以来の側近(浙江省以来の側近を示す之江新軍[しこうしんぐん]・福建省以来の側近を示す閩江旧部[びんこうきゅうぶ])。

 

・蔡奇(Cai Qi、さいき、1955年-):中国共産党第19期中央政治局委員、北京市中国共産党委員会書記、国務委員。習近平の浙江省、福建省勤務以来の側近(浙江省以来の側近を示す之江新軍[しこうしんぐん]・福建省以来の側近を示す閩江旧部[びんこうきゅうぶ])。

 

・王毅(Wang Yi、おうき、1953年):中国共産党第19期中央政治局委員、国務委員。外交部長(外相)。

 

 

■北朝鮮側

 

・崔竜海(Choe Ryong Hae、1950年):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党組織指導部部長、朝鮮人民軍次帥、序列3位、金正恩の妹金与正と同じく実質的ナンバー2。

 

・朴光浩(Pak Kwang Ho、?):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党宣伝扇動部副部長、序列第6位、金正恩の側近。

 

・李洙墉(Ri Su Yong、1940年);朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党国際部長、外交官、金正恩の側近。

 

・金英哲(Kim Yong Chol、1940年):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党統一戦線部長、平昌オリンピック閉会式に出席、朝鮮人民軍上将、朝鮮人民軍のエース。

 

・李容浩(Ri Yong Ho、1956年):外相、朝鮮労働党中央委員会政治局員、外交官。

 

=====

 

 アメリカ政府は「最大限の圧力」を賭けることで対話ムードを醸成できていると述べています。アメリカが言うのは分かりますが、日本でも安倍首相が同様のことを国会で発言していますが、中朝両首脳は日本についての言及をしなかったようです。日本は主要なアクターではないのに、国内向けの発言として、いかにも主要なアクターであるかのように発言しているというのは悲しいことです。インターネットが発達して情報がすぐに手に入るようになっている今、そのような態度はかえって哀れを誘うものとなります。

 

 今回の中朝首脳会談についてアメリカが、トランプ大統領がどのように反応するのか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

ホワイトハウス:北朝鮮に対する「最大限の圧力」キャンペーンが機能している(White House: 'Maximum pressure' campaign on North Korea is working

 

ルイス・サンチェス筆

2018年3月27日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/380585-white-house-maximum-pressure-campaign-on-north-korea-is-working

 

ホワイトハウスは火曜日夜、金正恩が習近平国家主席と北京で会談を行った直後、北朝鮮に対する「最大限の圧力」キャンペーンが効果的に機能している、と発表した。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官によると、中国政府はアメリカ政府に対して、習近平と北朝鮮の最高指導者金正恩との会談について報告を行ったということだ。

 

サンダースは次のように語った。「アメリカは同盟国である韓国と日本と緊密に連携を取り続ける。今回の動きは、私たちの最大限の圧力をかけるというキャンペーンが北朝鮮との対話に向けての適切な環境を作りつつあるということを示している」。

 

金は火曜日から中国に滞在している。今回の訪中は2011年に最高指導者になって以来、金正恩にとって初めて北朝鮮国外に出たということになる。

 

中国国営新華社通信は、金正恩が習近平と複数回にわたり会談を持ったと伝えている。

 

北朝鮮の最高指導者金正恩は、アメリカと韓国と提携して非核化を進めたいという希望を持っていると語ったと伝えられている。

 

今月初め、トランプ大統領は金ジョンウンと会談しても良いと述べ、5月の会談に関していくつか計画が存在する。

 

トランプと金正恩はこれまでけなし合ってきたが、首脳会談の発表があってからは、金正恩はミサイル実験を停止したいと述べた。

 

来月、北朝鮮と韓国との間でいくつかのレヴェルで対話が行われる予定になっており、今回の訪中はその前に実行された。

 

=====

Xi Jinping, Kim Jong Un hold talks in Beijing

 

Source: Xinhua| 2018-03-28 07:43:07|Editor: Xiang Bo

http://xinhuanet.com/english/2018-03/28/c_137070598.htm

 

BEIJING, March 28 (Xinhua) -- At the invitation of Xi Jinping, general secretary of the Central Committee of the Communist Party of China (CPC) and Chinese president, Kim Jong Un, chairman of the Workers' Party of Korea (WPK) and chairman of the State Affairs Commission of the Democratic People's Republic of Korea (DPRK), paid an unofficial visit to China from Sunday to Wednesday.

 

During the visit, Xi held talks with Kim at the Great Hall of the People in Beijing. Xi and his wife Peng Liyuan held a welcoming banquet for Kim and his wife Ri Sol Ju and watched an art performance together.

 

Li Keqiang, Chinese premier and member of the Standing Committee of the Political Bureau of the CPC Central Committee, Wang Huning, member of the Standing Committee of the Political Bureau of the CPC Central Committee and member of the Secretariat of the CPC Central Committee, and Chinese Vice President Wang Qishan attended related activities, respectively.

 

During the talks, Xi expressed warm welcome on behalf of the CPC Central Committee to Kim for his first visit to China.

 

Xi said he appreciated that Kim sent him a congratulatory message after the 19th CPC National Congress on his re-election as general secretary of the CPC Central Committee and the assumption of office of chairman of the CPC Central Military Commission (CMC).

 

Xi was also grateful to Kim for congratulating him again several days ago immediately after he was re-elected China's president and chairman of the CMC of the country.

 

Xi said Kim's current visit to China, which came at a special time and was of great significance, fully embodied the great importance that Comrade Chairman and the WPK Central Committee have attached to the relations between the two countries and the two parties.

 

"We speak highly of this visit," Xi told Kim.

 

For his part, Kim said a series of major and happy events have taken place consecutively in China recently, as the 19th CPC National Congress was held victoriously last year, and the annual sessions of the National People's Congress and the National Committee of the Chinese People's Political Consultative Conference were successfully held not long ago.

 

Kim said Comrade Xi Jinping enjoyed the support of the CPC and the people of the whole country, became the core of the leadership and was re-elected Chinese president and CMC chairman. He said it is his obligation to come to congratulate Xi in person, in line with the DPRK-China friendly tradition.

 

At present, the Korean Peninsula situation is developing rapidly and many important changes have taken place, Kim said, adding that he felt he should come in time to inform Comrade General Secretary Xi Jinping in person the situation out of comradeship and moral responsibility.

 

Xi said the China-DPRK traditional friendship, established and cultivated meticulously by the elder generations of leaders of both parties and both countries, was the precious wealth of both sides.

 

Sharing common ideals and beliefs as well as profound revolutionary friendship, the elder generations of leaders of the two countries trusted and supported each other, and wrote a fine story in the history of international relations, said Xi.

 

He said several generations of the leaders of China and the DPRK have maintained close exchanges and paid frequent calls on each other like relatives.

 

The two parties and countries have supported each other and coordinated with each other during long-term practices, making great contributions to the development of the socialist cause.

 

"Both Comrade Chairman and I have personally experienced and witnessed the development of China-DPRK relationship," said Xi, adding that both sides have stated repeatedly that traditional China-DPRK friendship should be passed on continuously and developed better.

 

"This is a strategic choice and the only right choice both sides have made based on history and reality, the international and regional structure and the general situation of China-DPRK ties. This should not and will not change because of any single event at a particular time," Xi said.

 

The CPC and the Chinese government highly value China-DPRK friendly cooperative ties, Xi stressed. It is an unswerving principle of the CPC and the Chinese government to maintain, consolidate and develop good relations with the DPRK, he said.

 

"We are willing to work together with DPRK comrades, remain true to our original aspiration and jointly move forward, to promote long-term healthy and stable development of China-DPRK relations, benefit the two countries and two peoples, and make new contribution to regional peace, stability and development," Xi said.

 

Xi made four proposals concerning the development of China-DPRK relations.

 

Firstly, continue giving play to the guiding role of high-level exchanges. High-level exchanges have always played the most important guiding and promoting role in the history of China-DPRK relations. Under the new circumstances, I am willing to keep frequent contacts with Comrade Chairman through various forms such as exchange of visits, and sending special envoys and letters to each other.

 

Secondly, make full play of the time-tested valuable practices of strategic communication. It is the splendid tradition of the two parties to have frequent in-depth exchange of views on major issues. Both sides should maximize the important role of party-to-party exchanges, promote exchanges and cooperation between the two countries in various areas, and strengthen communication and mutual trust.

 

Thirdly, actively advance peaceful development. Socialism with Chinese characteristics has entered a new era, and the DPRK's socialist construction has also ushered in a new historical period. We are ready to make joint efforts with the DPRK side, conform to the trend of the times, hold high the banner of peace, development, cooperation and mutual benefit, continuously improve the wellbeing of the two peoples, and make positive contribution to regional peace, stability and development.

 

Fourthly, cement the popular will foundation for China-DPRK friendship. The two sides should, through various forms, enhance people-to-people exchanges, consolidate the foundation of popular will for bilateral friendly relations, especially enhance youth exchanges, inherit and carry forward the fine tradition of China-DPRK friendship.

 

Kim said he was greatly encouraged and inspired by General Secretary Xi's important views on DPRK-China friendship and the development of relations between the two parties and countries.

 

The DPRK-China friendship, which was founded and nurtured by the elder generations of leaders of both countries, is unshakable, he said. It is a strategic choice of the DPRK to pass on and develop friendship with China under the new situation, and it will remain unchanged under any circumstances.

 

Kim said his current visit aims to meet Chinese comrades, enhance strategic communication, and deepen traditional friendship, hoping to have opportunities to meet with Comrade General Secretary Xi Jinping often, and keep close contacts through such forms as sending special envoys and personal letters to each other, so as to promote to a new level the guidance of high-level meetings to the relations between the two parties and countries.

 

The two sides informed each other of their respective domestic situation. Xi said the 19th CPC National Congress had drawn a grand blueprint for building China into a great modern socialist country in all respects -- building a moderately prosperous society in all respects by 2020, having basically achieved modernization by 2035 and building a great modern socialist country that is prosperous, strong, democratic, culturally advanced, harmonious, and beautiful by the middle of the century.

 

The CPC will lead the Chinese people of all ethnic groups in keeping on working with great determination and continuously striving for the realization of the Chinese Dream of national rejuvenation, Xi said.

 

"We have noticed that Comrade Chairman has led the WPK and the people of the DPRK in taking a series of active measures and scoring achievements in developing economy and improving people's wellbeing in recent years," Xi said.

 

The Chinese side expects political stability, economic development and people's happiness in the DPRK, and supports the WPK, led by Comrade Chairman, in leading the people of the DPRK to advance along the path of socialism, as well as the endeavors by comrades of the DPRK in developing economy and improving people's livelihood, Xi said.

 

Kim said, since the 18th CPC National Congress, the CPC Central Committee with Comrade Xi Jinping at the core has, with tremendous political courage and a strong sense of responsibility, developed new thinking and new ideas, put them into action, and solved many tough problems that were never resolved and accomplished many big things that were long on the agenda but never got done. These achievements fully proved that the lines of the CPC are correct lines that accord with the national conditions. In particular, Comrade General Secretary has put forward the requirements that the Party should exercise effective self-supervision and practice strict self-governance in every respect, which has contributed greatly to Party building and realized the overall Party leadership over all work. At present, the WPK is also intensifying its efforts in fighting against arrogance, bureaucracy and corruption.

 

Kim said he sincerely hoped that China will continuously make new great achievements in the course of building a moderately prosperous society in all respects and a great modern socialist country.

 

The two leaders thoroughly exchanged views on the situation of the world and the Korean Peninsula.

 

Xi said that positive changes had taken place on the Korean Peninsula since this year, and China appreciates the important efforts made by the DPRK.

 

On the Korean Peninsula issue, Xi said that China sticks to the goal of denuclearization of the peninsula, safeguarding peace and stability on the peninsula and solving problems through dialogue and consultation.

 

China calls on all parties to support the improvement of inter-Korean ties, and take concrete efforts to facilitate peace talks, said Xi, noting that China will continue to play constructive role on the issue and work with all parties, including the DPRK, toward the thaw of the situation on the peninsula.

 

Kim said that the situation on the Korean Peninsula is starting to get better, as the DPRK has taken the initiative to ease tensions and put forward proposals for peace talks.

 

"It is our consistent stand to be committed to denuclearization on the peninsula, in accordance with the will of late President Kim Il Sung and late General Secretary Kim Jong Il," he said.

 

Kim said that the DPRK is determined to transform the inter-Korean ties into a relationship of reconciliation and cooperation and hold summit between the heads of the two sides.

 

The DPRK is willing to have dialogue with the United States and hold a summit of the two countries, he said.

 

"The issue of denuclearization of the Korean Peninsula can be resolved, if south Korea and the United States respond to our efforts with goodwill, create an atmosphere of peace and stability while taking progressive and synchronous measures for the realization of peace," said Kim.

 

The DPRK hopes to enhance strategic communication with China during the process, jointly safeguard the trend of consultation and dialogue as well as peace and stability on the peninsula, said Kim.

 

Before the talks, Xi held a welcoming ceremony for Kim at the North Hall of the Great Hall of the People.

 

After the talks, Xi and Peng held a welcoming banquet for Kim and Ri. While delivering an address, Xi said that in the beautiful season of spring when everything is coming back to life, the unofficial visit of Comrade Kim Jong Un and Lady Ri Sol Ju to China is of great significance for the two countries to deepen communication, strengthen coordination and promote cooperation, and will push the relations between the two parties and the two countries to a new high in the new historical phase, as well as make important contributions to pushing forward the peace, stability and development in the region.

 

Xi said he had candid and friendly talks with Chairman Kim Jong Un. "We agreed that carrying forward the traditional friendship between China and the DPRK accords with the common interests of both sides, and is the common strategic choice of both sides."

 

"No matter how the international and regional situation changes, we will both firmly grasp the global development trend and the overall situation of the China-DPRK relationship, strengthen our high-level exchanges, deepen our strategic communication, expand our exchanges and cooperation, and benefit the people of both countries and the people of all countries," he said.

 

While addressing the banquet, Kim said that as the situation of the Korean Peninsula is undergoing unprecedented changes, he paid a swift visit to China, out of good wishes for promoting peace and stability on the peninsula, and carrying on and developing the DPRK-China friendship.

 

He said the fact that he chose China as the destination of his first overseas visit showed his will to carry forward the tradition of DPRK-China friendship, and how he valued the friendship between the two countries.

 

"I have had successful talks with General Secretary Xi Jinping on developing relations between the two parties and the two countries, our respective domestic situation, maintaining peace and stability on the Korean Peninsula, and other issues," he said.

 

"In this spring full of happiness and hopes, I believe my first meeting with General Secretary Xi Jinping will yield abundant fruits of DPRK-China friendship, and facilitate peace and stability on the Korean Peninsula," he said.

 

During the visit, Xi and Peng held a luncheon for Kim and Ri in the Yangyuanzhai Room of the Diaoyutai State Guesthouse. Xi said that the Diaoyutai State Guesthouse has witnessed the development of the traditional friendship between the two countries, and the close relations between leaders of the elder generations of the two parties and two countries "have set an example for us."

 

"We welcome Chairman Kim Jong Un and Lady Ri Sol Ju to visit China now and again," Xi said.

 

Kim said that the DPRK-China friendship is especially precious, adding he would like to join hands with Xi to follow the noble will of leaders of the elder generations, carry on and develop the DPRK-China friendship that remains unchanged despite winds and rains, and elevate it to a new high under new circumstances.

 

Kim also visited an exhibition showcasing the innovation achievements of the Chinese Academy of Sciences since the 18th CPC National Congress. Kim showed his admiration for China's accomplishments in the development and innovation of science and technology, and wrote an inscription to mark the visit.

 

Ding Xuexiang, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and director of the General Office of the CPC Central Committee; Yang Jiechi, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee; Guo Shengkun, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and head of the Commission for Political and Legal Affairs of the CPC Central Committee; Huang Kunming, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and head of the Publicity Department of the CPC Central Committee; Cai Qi, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee and secretary of the CPC Beijing Municipal Committee; and State Councilor and Foreign Minister Wang Yi attended the activities.

 

Choe Ryong Hae, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the Organization and Guidance Department; Pak Kwang Ho, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the Propaganda and Agitation Department; Ri Su Yong, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the International Department; Kim Yong Chol, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the United Front Department and Foreign Minister Ri Yong Ho, accompanied Kim Jong Un on his China tour and attended related activities.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 2015年3月23日、シンガポールの建国の父であるリー・クアンユー元首相が91歳で亡くなりました。謹んでご冥福をお祈りします。


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 今回記事を書いている、パラグ・カンナについてですが、私は『ネクスト・ルネサンス』(講談社、2011年)という本を翻訳しました。若手の国際政治学者です。

 


 リー・クアンユーについて、そしてシンガポールについて、この論文を通じて学んでいきたいと思います。

 

==========

 

リー・クアンユーのライオン・シティーよ、永遠なれ(Long Live Lee Kuan Yew’s Lion City

―シンガポールを長年にわたって率いた指導者が亡くなった。しかし、彼の考えは彼が作り上げた国でこれからも生き続けることだろう

 

パラグ・カンナ筆

2015年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/03/22/long-live-lee-kuan-yew-s-lion-city-singapore/

 

 ヘンリー・キッシンジャーは彼を「歴史上の非対称」と呼んだ。マーガレット・サッチャーは「彼は決して間違わなかった」と言った。バラク・オバマは彼を「アジアにおける伝説的な人物の一人」と呼んだ。トニー・ブレアは「私がこれまで出会った中で最も優秀な指導者」だと語った。サミュエル・ハンチントンは、彼は20世紀の「優秀な建設者」の一人だと述べた。

 

 シンガポールの建国の父リー・クアンユーが2015年3月22日に亡くなった。彼について言えることは単純なことである。それは、21世紀において彼は最も称賛される指導者の一人だということだ。

 

 リーはこの8月に迎えるシンガポール建国50周年まで数カ月を残して亡くなったことを残念に思っていることだろう。しかし、彼が1959年から1990年まで率いた国シンガポールが植民地から独立した国々の中で最も成功を収めた国であることを知りながら安らかに眠りについたかもしれない。ペルシア湾岸地域の諸王国はうわべだけ立派だが、戦争、クーデター、石油価格の低落に苦しんでいる。アフリカは植民地時代の傷を癒すのに半世紀を要している。インドはようやく力を結集して経済成長を始めたばかりだ。更に言えば、シンガポールは経済成長を遂げた。1965年の一人あたりのGDPは516ドルであったが、現在では5万5000ドルにまでなっている。

 

 シンガポールは元植民地の国々と自国を比較することを止めて久しい。シンガポールは、競争力、住みやすさ、義塾革新、その他の指標で世界のトップグループに入っている。シンガポールはサウジアラビアよりもスイスに近い。最近、ある西洋人のジャーナリストがシンガポールに仕事で赴任した。彼はシンガポールの切れ目のない効率性、伝説的な清潔さ、超高層ビルと浜辺の適切な混合に魅了されていった。彼と私がお酒を飲んでいる時、彼は「近代性は今や東から始まり、西に流れている」と呟いた。私も2年前に事実上のアジアの首都シンガポールに居を移したが、同じことを感じている。シンガポールは驚くほど住みやすい都市だ。飛行機で4時間の範囲に40億人が住んでいるのである。(情報公開:私はこれまでいくつかのシンガポール政府の各部署と企業の有給の顧問を務めている)

 

シンガポールは、1963年にイギリスから、1965年にはマレーシアから独立した。独立当時、リーが参考にすべき国家建設モデルはほぼ存在しなかった。1950年代と60年代、リーはスリランカからジャマイカまで各国を訪問し、イギリスの元植民地の国具で真似ることが出来る国を探した。幸運なことに、リーは全く別のモデルを選んだ。彼はオランダの都市計画と埋め立て、石油・天然ガス会社最大手のロイヤル・ダッチ・シェルの経営構造、シナリオを中心とした戦略作成を学ぶ決心をした。「シンガポールは世界で最もうまく経営されている会社だ」とよく冗談のネタにされている。こんな冗談がうまれるのもリー・クアンユーがいたからだ。

 

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 アジア的な方式は借りることと改善することで成り立っていると考えられている。リーはそれをかなりうまくやってのけたのだ。その一つがイスラエルの徴兵制である。しかし、彼はまたシンガポールで生み出し世界で真似られているオリジナルのそして革新的な政策を実行した。交通渋滞を緩和するための電子道路課金システムはロンドンとストックホルムで利用されている。一方、エストニアと韓国では個人特定パスワードであるシングパスの自国版を利用している。これはデジタル身分認証システムで、政府のデータとサーヴィスをインターネットで利用できる。

 

 シンガポールは人口当たりの大富豪の割合が最も高い国の一つである。収入格差は大きいままだ。しかし、シンガポールで最低の収入層で生まれ、トップの収入層にまで上昇する人々の数はアメリカの2倍になる。コロンビア大学経済学教授ジョセフ・スティグリッツは、2013年に有名な記事を発表した。この中で、アメリカはシンガポール様式の効果的な公共住宅と年金システムの必要性を強調した。


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 リーはシンガポールを東京に次いで世界第2位(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット調べ)の安全な大都市に作り上げた。「法と秩序」の順番は逆だとリーは主張した。秩序が最初に来て、法は次だというのだ。もちろん、リーにとって秩序は公共の安全と政治の予測性が高いことを意味していた。リーはイギリスのケンブリッジ大学で法律家としての訓練を受けた。リーは政治の世界に入って来て自分のライヴァルになりそうな人物たちを躊躇なく排除した。作家、大学教授、ジャーナリスト、法律家、批評家といった人々が排除された。彼らは破産させられたり、投獄されたりした。もっと酷い場合には破産させられた上に投獄された。西洋諸国のマスコミがチューインガムと落書きに対する厳しい罰則に目を向けている間に、リーは政治的なライヴァル、チー・スウンジュアンとJB・ジェイアレトナムを排除した。

 

リーは頑固であったが、それまでのやり方を変化させることを恐れなかった。社会主義からリバータリアニズムまで、彼は、シンガポールにとって適切なモデルを見つけるまで、実践的に思想の良い部分を取り入れた。このモデルが、自由奔放に動き回る乳母国家(freewheeling nanny state)である。彼はこの複雑な世界において矛盾を恐れてはならないと考えた。彼が残した有名な言葉に「私は常に正しくあろうとしたが、それは政治的な正しさという意味ではない」がある。

 

リーは権力の継承者を探すのに苦労した。まず、1990年から2004年まで首相を務めたゴー・チョクトンに権力を譲った。その次にリーの息子であるリー・シェンロンが首相になった。リー・クアンユーは、彼個人ではなく、シンガポールのシステムに対して世界が注目することを望むだろう。リー・クアンユーが存命中であれば、彼が力強い実力者であるか、目立つ人物であるかについて考えることも良いだろうが、今では、基準となっているのは、個人や個性ではなく、機構なのである。リー・クアンユー主義はリー・クアンユー個人ではない。これこそは、リー・クアンユーが21世紀を象徴する人物である理由であり、西洋民主政治体制の象徴的人物であるトーマス・ジェファーソンやヨーロッパ連合の創設の父ジャン・モネが21世紀を象徴する人物ではないことの理由でもある。

 

 20世紀、超大国がブロック化し、それぞれが争っていた。21世紀は自治都市国家と州(省)が数多く共存する時代である。約150の国々は人口1000万人以下である。こうした国々の指導者たちは、ワシントン(アメリカの首都)、ブリュッセル(EUの中心)、北京(中国の首都)ではなく、シリコンヴァレー、ドバイ、シンガポールに目を向け、インスピレーションを受けている。

 

 当時の中国の最高指導者鄧小平は、1978年、シンガポールを訪問した後に深圳経済特区を創設した。30年に及ぶ前代未聞の中国の近代化がここから始まった。これ以降、シンガポールは、中国全土に工業化された都市を建設し、統治する際に参考となってきた。インドの政府高官たちはインド首相ナレンドラ・モディが選挙期間中に100の「スマート都市」建設を公約に挙げるのを手伝った。21世紀は都市化の世紀であるが、世界第1位、第2位の国家がそれぞれ、シンガポールのような繁栄した都市の集合体として主権国家になろうとしているのだ。

 

 シンガポールには統治がある。シンガポールのスタイルは、西洋諸国の政府が行っているようなひどい行き当たりばったりの対処は言うまでもなく、テクノクラートをうまく使い、現代の民主政治体制の欠点を少なくすることは明らかだ。シンガポールのスタイルが持つ解決法、それは、データ主導の統治であり、実力主義の公務員システムである。

 

シンガポールの公務員システムは螺旋階段のようなものだ。各段階で公務員たちは、全く別の省庁でキャリアを積み、幅広い知識と実戦的な経験を積む。対照的に、アメリカ政治はエレベーターみたいなものだ。ある人がシステムの一番下に入って、そこから一気にトップにまで行くことが可能なのだ。その間で学ぶべきことをスキップすることが出来るのだ。選挙前、選挙期間中、選挙後、国民に対して常に問いかけ、主要な指標で進歩を測定することがシンガポールの特徴なのである。そこにあるのは政策であって、政治ではない。

 

現在、シンガポールの最高指導部は、「情報国家(info state)」と私が呼ぶ適応力の高いモデルを構築中である。このモデルでは、データと民主政治体制を混合した形での統治が行われる。データは、シンガポールの「スマート国家」戦略において具体化されている。この戦略では、全ての国民が年金から納税までをそれぞれの持つモヴァイル装置で行えるようにするというものだ。

 

 民主政治体制の構築は進行中である。2011年、与党人民行動党は得票で過半数を得られなかったが、何とか議会で過半数を維持した。2016年、有権者たちは政治的な多様性をより推し進めていくだろう。政治的な多様性の欠如のために、シンガポール国民の「幸福度」調査の結果はいつも低いものとなっている。本当のところは、シンガポール国民は他の国々の人々同じく位に幸せではあるが、決して満足している訳ではない。建国の父と同じくらいに、若いシンガポール国民は矛盾を抱えている。彼らは不平不満を漏らす完璧主義者でありながら、野心的な怠け者である。リーは、複雑になり続ける世界における創造的な問題快活者である。シンガポール国民の次世代は、リー・クアンユーのようにならねばならない。これからのシンガポールはリー・クアンユーと同じくらいに時代を象徴する存在となっていくのだから。

 

(終わり)














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