古村治彦です。
2016年4月28日に副島隆彦先生の最新刊『マイナス金利「税」で凍りつく日本経済』(徳間書店)が発売になります。連休中の読書計画に是非お加え下さい。宜しくお願い申し上げます。
『マイナス金利「税」で凍りつく日本経済』
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まえがき
2016年に入って急にマイナス金利「税」の時代になった。
マイナス金利とは新種の特殊な税金のことなのである。
一体これからの世界は、そして日本はどういうことになるのか。
この3月末までは日経平均株式相場は何とか1万7000円台を保っていた。為替(円ドル相場)も114円ぐらいで踏ん張っていた。大企業の決算の数字をよくするために、(とくに400社の輸出大企業の期末の決算を)どうしても株価を上げておかなければいけなかった。それが終わったので、4月に入ってから崩れ出した。もう1万5000円台(4月5日)に落ちた。これを5月末の伊勢志摩サミット(G7)まで引きずって、そのあと安倍首相が、「景気対策として消費税の上げ(増税。8%から10%へ)はやりません」と発表するだろう。それを合図にまたスルスルと株価の吊り上げをやる。そして1万8000円台ぐらいまで上げて、それで7月中旬の「衆参同日選挙」を自民党の勝ち、で乗り切るつもりだ。筋書きが透けて見える。
国民生活は疲弊しきって、ヒドい景気の悪さ(デフレ不況)のまま続いている。日本はますます貧乏国家だ。立派そうなのは東京の都心に建ち続ける高層のタワー・レジデンス群だけで、それ以外は全国どこに行っても駅前さえシャッター通りで20年前、いや40年前のボロビルが建ったままである。
私たち日本国民は怒らなければいけない。だが、その怒り方が分からない。「仕方がないなあ」で今日も過ぎてゆく。
黒田日銀総裁が打ち出した(1月29日)、新手の金融緩和策であるマイナス金利政策(negativeinterestratepolicy)とは一体何なのか。
それは、「もう景気回復(インフレ経済)なんかなくていい」だ。「もっともっと金利を下げて(え? ゼロより下)、日本を氷漬けの冷凍状態にする。日本国債さえ守れればいい」という政策である。黒田日銀と財務省官僚と自民党は、国民生活を犠牲にして、マイナス金利という焦土作戦で自分たち(国家)さえ生き残れればいいという肚なのである。自国を焼け野原にすることでそれ以上、敵に攻め込まれなくする焦土作戦 scorchedearthpolicy を決断したのだ。
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マイナス金利「税」で凍りつく日本経済──目次
まえがき─3
第1章 フリーフォール(底なしの下降)に陥った金融市場
世界の株式市場はフリーフォールに陥った─14
日銀のマイナス金利導入が逆噴射した─18
もう日本政府には株を吊り上げる資金がない─28
円安・株高のはずがなぜ円高・株安になったのか─29
世界中から日本国債買いに集中している─38
第2章 ユーロから金融崩れが起きそうだ
ドイツ銀行株価下落でユーロの銀行問題が浮き彫りになった─46
世界的な連鎖暴落はまだまだ起きる─60
マイナス金利とは新税のことである─62
いますぐ金のインゴットを買いに走りなさい─75
金の反撃がこれから始まる─84
産金コストが下がっている─86
第3章 マイナス金利の正体は新種の税金である
マイナス金利の黒田サプライズの波紋─90
マイナス金利で日銀は国債だけを守る─92
10年物国債までがマイナス金利に落ち込んだ─95
北欧を見ればマイナス金利が分かる─99
マイナス金利とは日本国債と抱きつき心中をしますということだ─105
元日銀副総裁の岩田一政が「マイナス金利」を推奨した─109
黒田の本当の狙いはフィナンシャル・リプレッション(金融抑圧)だ─121
日銀の出口戦略など不可能になった─127
黒田日銀総裁は山本五十六だ─130
「ゼウス・エクス・マキーナ」が世界で起きている─132
第4章 緩和マネーの罠に堕ちた世界
米FRBの利上げから緩和マネーの爆縮が起こった─136
イエレンFRB議長が「追い込まれ利上げ」をやった─146
利上げしたら世界の株式市場は暴落する─152
「緩和の罠」に嵌まった世界─153
緩和バブルが終われば世界はリーマン・ショックに戻される─155
これはマネタリストと合理的予測派の大敗北である─157
リーマン・ショックの何倍もの悲劇がこの世界で起きる─165
第5章 今の金融市場で何が起きているか
黒田日銀はついにマイナス金利という禁じ手まで動員した─168
地銀がマイナス金利の影響を一番受けている─171
GPIFがマイナス金利でふらふらになっている─175
MMFはなくなり、銀行が預金を取らなくなった─177
マイナス金利とは政府による税金徴収だ─179
日銀黒田のマイナス金利が逆噴射した─180
金融市場から流動性が蒸発している─184
金融相場でありながら金融相場的な上昇はもう起きない─186
GPIFの損失はどうやって消されているのか─189
国債がなくなってしまう─191
ネイキッド・ショート・セリングをしたくても資金が出てこない─193
ヨーロッパが撤退して中国系が日本に入ってくる─197
一番危ないのは国債─200
国債暴落のシナリオはどうなる─202
黒田総裁が恐れているのは国債のデフォールト─205
第6章 中国のIMF体制(アメリカ支配)への挑戦が始まった
イギリスが中国と組むと決めた─234
中国とアメリカの殴り合いが始まった─210
中国主導のAIIBがアメリカを怒らせた─214
ヨーロッパはアメリカを見限った─218
人民元のIMFのSDR(特別引出権)通貨入り─219
人民元による国際決済システムが始まった。CIPSの衝撃─222
第7章 アメリカ大統領選はどうなる
どうやらヒラリーを大統領にするとロックフェラーが決めた─258
トランプの人気が沸騰しているが、最後に引導を渡されるだろう─247
北朝鮮の核実験(4回目)は何を意味するのか─253
ヒラリー「戦争の軸足をアジアへ移す」─256
ヒラリーのアジア・ピボットが意味するもの─258
迫り来る世界恐慌をアメリカは軍事力でコントロール下において覇権を握る─259
あとがき─277
巻末付録 地獄から這い上がる株38銘柄─263
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あとがき
この本は、今年の1月、2月の異様な株崩れ、金融市場の混乱をずっと追いかけて、一体、この間に世界で何が起きていたのか、を謎解きした本である。それは、これから先どうなるか、の予測のための貴重な知恵となる。
去年の8月に続く世界連鎖暴落の第2ラウンドは、ジョージ・ソロスと中国(習近平)の〝金融殴り合い〟であった。1月21日に、ダボス会議で中国株と人民元の暴落宣言を出したソロス(アメリカ)に対して、中国とサウジアラビアが組んで、ニューヨークで株と米国債売りの逆襲に出た。
このあと2月8日に、ドイツ銀行のCoCo債という金融デリバティブが暴落した。これがヨーロッパの全銀行の信用不安につながった。その4日後の2月12日に世界連鎖暴落が起きた。日本株も1200円の暴落を起こした。そして日経平均は1万4000円台に突っ込んだ。この時、「ノックイン債」というデリバティブ(劣後債、CBO)がノックインして破裂して、銀行の顧客たち(金持ち、富裕層)に大損をさせた。こういうことをこの本で詳しく種明しした。
「ミネルバの梟は夜飛び立つ」というヘーゲルの有名な言葉がある。1806年10月、ナポレオンはイエナ会戦で、全ドイツ人の連合軍を打ち破った。そのイエナの町の郊外のまだ死体が散乱している戦場で、焼け残った木にとまっていた梟は夕闇の中に飛び立った。
戦いが終わったあと、悲惨な戦争の目撃者は冷酷に事件を書き遺す、己れの運命を知る、という意味である。
この本も苦労した。ずっと付き合ってくれた徳間書店の力石幸一編集委員に感謝します。
2016年4月
副島隆彦
(終わり)