古村治彦です。
2014年に入ってからの日本政治における大きなニュースの一つが、みんなの党代表である渡辺喜美代議士(栃木三区、当選6回)のDHC社会長からの8億円の借り入れ問題です。この借りたお金がみんなの党の選挙資金として、政治資金として使われたのに、政治資金収支報告書に記載されていなかったということが問題視されています。最新のニュースでは、渡辺氏は、違法性はなく、国会議員やみんなの党の代表を辞任する考えはないと主張しています。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「「法的に問題なし」渡辺氏、説明文を役員会で配布 本人は欠席」
2014年4月1日 MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140401/stt14040112470002-n1.htm
化粧品販売会社会長からの8億円借入金問題を抱えるみんなの党の渡辺喜美代表は1日、定例の党役員会を体調不良を理由に欠席した。代わりに「あくまで個人的に借りたものだ」と従来の主張を繰り返す説明文を配布した。党幹部から代表辞任論が出る中、「法的には何の問題もない」とも記し、理解を求めた。
渡辺氏は説明文で「借入分を含む私の個人財産から党にお貸しし、選挙費用を含む党の活動費用とした分は、党の収支報告書にきちんと出ている」として、党を経由することで一部を選挙費用に充てたことを認めた。残りは個人の政治活動や議員活動の費用で、「公職選挙法及び政治資金規正法に報告の制度はない」と違法性を否定した。具体的な使途については言及しなかった。
一方、8億円の借入問題が会長による週刊誌での「告発」で発覚した経緯について、結いの党の江田憲司代表の名前を挙げ、野党再編を目指す勢力による「馴染みの週刊誌を利用した策略」と指摘し、徹底抗戦の姿勢を明確にした。
●「8億円、渡辺氏「法的問題ない」 党役員会に文書、続投意欲」
2014年4月1日 47ニュース
http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014040101001673.html
みんなの党の渡辺喜美代表は1日午前、国会内で開かれた党役員会を欠席し、その代わりに8億円借り入れ問題をめぐり「法的には何の問題もない」とする文書を提出し続投に意欲を示した。文書を託された浅尾慶一郎幹事長が各役員に配布し、欠席理由について「声が出ないため欠席すると電話で連絡があった」と述べた。
渡辺氏は文書で、8億円を個人的な借金と重ねて説明。「借り入れ分を含む財産を個人の政治活動に支出しても報告の制度はない。法律違反のような報道は大変遺憾だ」と主張。「ここで負けたら国を動かすムーブメントはついえる。今後も党の主張を展開し政策の実現に努める」と表明した。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
渡辺氏は今回の事件について、みんなの党から分裂した、結の党の代表である江田憲司氏を名指しで批判し、また、日本維新の会に対しても批判的な厳を述べているということです。「野党再編に慎重な自分がいなくなれば、みんなの党も含めて野党再編が進むから、そういう動きを進めたい結の党や日本維新の会が仕掛けた謀略だ」というのが渡辺氏の主張です。
事件の当事者である渡辺氏の感触はそれを尊重するとして、外部から見ているとそれとは違った考えもまた起こります。事件の当事者は以外と事件の全貌は見えないものです。そこで差し出がましいとは思いますが、私の考えをここで述べたいと思います。
私は、渡辺氏は身内に刺されたのだろうと思います。身内というのは、みんなの党に残っている議員たちです。具体的に誰がということは分かりません。これは一種のクーデターだと思います。
そして、それはどうして起きたかというと、安倍晋三首相がみんなの党に対して使った「責任野党」という言葉がヒントになると思います。渡辺氏は安倍晋三首相が前回首相を務めた時に、金融担当、規制改革担当の国務大臣を務めています。頑迷な官僚組織に立ち向かう改革者というイメージもあって、大変な人気でした。しかし、その後、離党しました。
安倍晋三首相が再登板となった昨年以降、みんなの党の立場は、安倍晋三首相が「責任野党」という言葉で表現するものとなりました。審議に応じ、最後には自民党や内閣の意向に沿う形で賛成する、というのが彼らの立場でした。「閣外協力」に近い立場と言えるでしょう。
しかし、この「責任野党」という言葉は曲者です。なぜなら、「責任」を果たしても何の「報酬」も得られないからです。公明党のように与党となれば、大臣や副大臣、大臣政務官のポストや国会での委員会のポスト、予算における自党の主張の反映といったことが期待できます。
しかし、「責任」だけは背負わされて、野党の立場ということになると、そういった旨味はありません。実態は与党と同じなのに、建前は野党となれば、与党としての旨味はなく、野党としては、反自民勢力の受け皿になることもできません。言ってみれば、「埋没」するしかないのです。
それでは、みんなの党が自民党と連立を組めるのか、最終的には自民党と合流できるのかということになると、その最大の障害は渡辺喜美氏ということになるでしょう。渡辺氏としては、自民党、特に安倍首相にすり寄っておこうということだったと思いますが、安倍氏や自民党側は、連立を組んでいる訳ではないのですから利用するだけのことです。
私は、昨年(2013年)12月にみんなの党と結の党の分裂の時に、みんなの党に残った人々は、おそらく「連立与党入り」、もしくは「自民党との合流」を希望として持っていたのだろうと思います。しかし、渡辺氏が代表でいて世話になる限り、そうした希望がいつ叶うか分かりません。
そこえ、身内からのクーデターが起きたのだと思います。これは私の建てた仮説ですから間違っているかもしれませんし、また当たっているかもしれません。こうした考えもできますよということで書きました。「信じるか、信じないか、貴方次第です」。
(終わり)