古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:アジア

 古村治彦です。

 

 今回は少し古くなりましたが、トランプの大統領選挙当選直後に書かれたアジアの安全保障に関する論考をご紹介します。

 

 この論文では、アジア各国は、アメリカと中国との間でどちらにも偏り過ぎない態度を取るだろうということを書いています。トランプ当選はアメリカの国際社会における衰退を示す現象、大転換であった訳ですが(オバマ大統領の時に既にそれは見えていましたが)、アジア諸国はそれを敏感に感じ取っているようです。

 

 一方、アメリカの覇権がずっと、ずーっと続かないと、それにくっついて美味しい思いをしている日本のエスタブリッシュメントは、アメリカ一択、「中国は嫌い」という感情先行で、アメリカに日本人が貯めた年金資金と新幹線を差し出すということになっています。また、軍事力を増強し、海外にも出ていけるようにして、アメリカの負担を少しでも軽減して差し上げるということもやっており、アメリカ側すれば、「勝手にいろいろとやってくれてありがとう」ということになります。が、「狡兎死して走狗烹らる」です。

 

 アメリカの忠犬を勝手に気取っていても、アメリカ自体が大転換をしたら、ただの邪魔な存在になってしまうということになります。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプ大統領の下、アジアのアメリカ同盟諸国はより自力での安全保障を考える可能性がある(Under Trump, U.S. Allies in Asia May Look to Themselves for Security

 

ベンジャミン・ソロウェイ筆

2016年11月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/11/11/under-trump-u-s-allies-in-asia-may-look-to-themselves-for-security/

 

長年にわたり、東アジアと東南アジアのアメリカ同盟諸国は密かに、地域の安定と安全保障に関してアメリカ依存から少しずつ脱却する用意をしてきた。バラク・オバマ大統領の外交政策の柱となり、民主党のヒラリー・クリントンが大統領に選ばれた継続されただろう、戦略的なアジアへの「回帰」(“pivot” to Asia)はあったが、アジア諸国の自立に向けた動きは続いた。ヒラリー・クリントンは選挙期間中、環太平洋経済協力協定には反対したが、彼女はアジアへの回帰路線を継続したことだろう。

 

ドナルド・トランプ次期大統領は番狂わせで選挙に当選した。そのために、東アジアと東南アジアのアメリカの外交政策は、ヒラリー当選の場合とは大きく異なることを意味する可能性がある。そして、アジアの同盟諸国の間で既に起きている自立の動きを加速させる可能性がある。

 

リンゼイ・フォードは2015年までオバマ政権の下で4年以上にわたり国防総省の高官たちに助言を行ってきた。リンゼイ・フォードは次のように語った。「アジア諸国は、アメリカの中東での失敗と予算を巡る争いを長年目撃し続けたために、アメリカの指導力は低下していると考え、危険や脅威を避けようと静かに行動している」。

 

アジア・ソサエティ政策研究所のアジア地域安全保障担当部長を務めるフォードは、火曜日の投開票日の後、声明を発表しその中で、「トランプ新政権がこうした恐怖心を払拭するために迅速に行動しなければ、アジア諸国の動きを加速させることになる」と述べている。

 

選挙戦期間中、トランプは、日本と韓国に対して、アメリカとの安全保障に関する協力関係にかかるコストをより多く負担するように求めると発言したり、アメリカの同盟諸国に核兵器を拡散させるというアイデアを発表したりしていた。東シナ海、南シナ海での紛争が激化し、北朝鮮が核兵器を開発し続けている状況で、オバマ大統領は大統領から退任しようとしている。本誌は、フォードに対して、東アジアと東南アジアのアメリカ同盟諸国が何を期待しているのかについて語ってもらった。

 

今回のインタヴューはEメールのやり取りを通じて行われた。要約と編集を加えている。

 

本誌:地域のアメリカの存在が薄くなっていくことに対して、アジアの同盟諸国がそれに備えていることの最も明白な具体例は何か?

 

リンゼイ・フォード:アジア諸国がアメリカ衰退の危険を回避しようとしていることの明確な証拠は、東南アジア諸国連合に参加している諸国が時に関与している、慎重なバランスを取る動きだ。これは、アメリカと中国の間で、経済的なつながりと軍事的な投資の面で、多様化を図ろうとする行動だ。最近のフィリピンのドゥテルテ大統領とマレーシアのナジブ首相の訪中はその具体例だ。私たちは南シナ海におけるバランスを取る動きも目撃している。アセアン諸国はアメリカ、中国双方にあまりにも近づき過ぎないように注意しながら行動している。

 

本誌:トランプはこうした恐怖感を和らげるためにどうするだろうか?

 

リンゼイ・フォード:トランプ次期大統領になっても、核の傘というアメリカの拡大した抑止力による関与は揺るがないであろう。日本や韓国のような国々が独自に核開発能力を持つべきだというトランプの初期の発言はアジアの同盟諸国を驚かせた。彼はこの初期の発言から後退するところを公に見せたいとは思わないだろうが、彼は核拡散が誰にとっても最善の利益とはならないこと、アメリカは核攻撃や挑発から同盟諸国を防衛するために投資することを明確にする必要がある。

 

本誌:日本やフィリピンのようなアメリカのパートナーは自国の軍事力を増大させようとしている。このような試みはどのように促進されるだろうか?

 

リンゼイ・フォード:安倍首相の下、日本は、第二次世界大戦が終結してから初めて、より「普通の」軍事大国になろうとして少しずつつま先を水の中に入れつつある。日本は慎重に「自衛」の意味の再定義を進め、軍事力に見当たった役割を果たそうとしてきている。この変化はこれからも促進されるであろうが、この変化にあたって、日本はアメリカの安全保障の傘に依存すべきではなく、自力で立つということを確信しなければならない。私たちは、日本が伝統的に堅持してきた国内総生産1%以内という制限を超えて国防費を増大させていくことを目撃していくことだろう。安倍政権が日本国憲法9条のより根本的な再解釈や変更を進めることを目撃するかもしれない。それに合わせて、自衛隊により「攻撃的な」能力を構築することも考えられる。このような事態の進展は韓国や中国といった近隣諸国に懸念を持たせることになるだろう。そして、中韓両国の軍事予算や姿勢に影響を与える可能性がある。

 

本誌:TPPの崩壊は安全保障に影響を与えるか?

 

リンゼイ・フォード:安全保障の観点から、TPPの崩壊の最大の影響は、アジア地域におけるアメリカの信頼性の喪失ということになるだろう。TPPとシリア問題の事後処理でアメリカが失敗していると同盟諸国やパートナーが見做し、アメリカは約束を守らないという結論に達したら、彼らは、アメリカの安全保障に対する関与と指導力を信頼しなくなるだろう。その結果、アジア地域の同盟諸国の間で、国際安全報賞状の問題、ISや北朝鮮の野心の抑制といった問題に対する対処で、支援のための連合をアメリカが中心となって形成することが難しくなる。

 

本誌:ここしばらくの大統領たちは北朝鮮との間にある外交に関する諸問題に対処することに失敗してきた。トランプのアプローチがどのようになるか、その手掛かりが存在するか?

 

リンゼイ・フォード:現在のアジアの安全保障において、北朝鮮の状況に対処することは最大の問題となっている。そして、次期大統領はすぐにこの問題に対する対処法を発表する必要がある。ドナルド・トランプが既に対北朝鮮計画を策定していることを示す兆候はほとんどない。また、彼自身がこれまで行われた対北朝鮮政策の失敗について理解しているとも考えられない。北朝鮮問題についての簡潔な声明の中で、トランプは中国に対して単に「北朝鮮についてはあなたたちの問題だ」と言うだろうことを示唆している。中国に任せてしまうというアプローチは失敗してしまうだろう。これからの数か月、北朝鮮問題や他の問題で、トランプが創造的な、全く新しい考えを思いつくことに期待するしかない。

 

本誌:台湾はトランプ大統領の下でリスクが増大するだろうか?

 

リンゼイ・フォード:トランプ大統領の下で、台湾がどのようになるかを予想するのには少し早すぎると思う。台湾はこれまで、アメリカ連邦議会内部で超党派の強力な支援を受けてきた。しかし、アジアの残りの地域のように、台湾も新政権について分析するための時間と、物事がどのように動くかの雰囲気を探る必要だ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 

 今回は、ヘリテージ財団のウェブサイトに掲載された文章をご紹介します。この文章によると、2015年10月にヘリテージ財団の研究員たちが訪日し、早稲田大学でのパネルディスカッションに参加し、防衛省を訪問したそうです。

 

 こうした機会にどういう話があったのかは分かりませんが、「東アジアにおける安全保障環境は悪化している。従って、日本はより大きな負担と責任を負うようにすべきだ」というこの文章の内容から、何となくどういう話があったのかは推測できます。

 

 より厳しい2016年になっていきそうです。

 

==========

 

日本におけるエネルギーと安全保障(Energy and Security in Japan

 

ライリー・ウォルターズ(Riley Walters)筆

2015年11月23日

ヘリテージ財団ウェブサイト

http://dailysignal.com/2015/11/23/energy-and-security-in-japan/

 

 今年の10月、ヘリテージ財団所属の研究者たちの代表団は日本を1週間にわたって訪問する機会を得た。同時期、日本はエネルギーの多様性を高めることとアジア地域における安全保障環境の変化と挑戦について専門家たちが知識を得ることが国益の増進につながることが明白な状況であった。

 

日本国際協力センターを通じて、研究者たちは「カケハシ・プロジェクト:ザ・ブリッジ・フォ・トモロー」に参加した。このプロジェクトに参加することで、ヘリテージ財団の研究員たちは多くの官僚や学者たちと会う機会を得た。

 

 東京にある早稲田大学で一連のパネルセッションが開催された。学者と官僚は、日本の安保法制に関する反対の考え、批判を発表した。日本政府は地域と国際的な安全保障におけるより積極的な役割を果たすことが出来るようになり、集団的自衛権を認める法律を成立させた。日本国民の中には、日本を国際的な紛争に巻き込ませてしまう立法における変化について懸念を持っている人々がいる。早稲田でのセッションでも多く表明された考えがこうした懸念を反映していた。

 

 代表団は日本の防衛省を訪問する機会を得た。この時、代表団はアジア地域における安全保障に関して日本が直面する真の懸念を知ることが出来た。中国、ロシア、北朝鮮それぞれによる軍備増強、軍事予算の拡大、戦略的な軍備配置がそうした懸念を引き起こしている。南シナ海における安全保障環境を一例として挙げたい。日本が輸入する石油と天然ガスの3分の2は南シナ海を通っている。この地域は日本の国益にとって重要である。特に2011年以降、エネルギー輸入量が増加している状況でその重要性は増している。

 

2014年、日本の航空自衛隊は東シナ海と北方領域における中国とロシアの航空機の侵犯に対応するために900回以上のスクランブル発進を行った。

 

 アメリカの政府関係者たちは、日本の安全保障政策の変化を長年待ち望み、その変化を歓迎している。そして、この変化のおかげで日米二国関係が強化されるだろうと述べている。「2016年版インデックス・オブ・USミリタリー・ストレングス」に書かれているように、アジア地域の環境は「好ましい」状況にコントロールされてはいるが、アジア地域に駐留するアメリカ軍の装備は時代遅れになりつつあり、厳しい状況になっている。中国とロシアはアメリカの国益にとってのリスクであり続ける。一方で、北朝鮮の脅威は深刻な状況だ。北朝鮮政府は核開発プログラムを継続している。こうした事態に対応して、東アジア地域のアメリカの同盟諸国は、地域の安全保障に対してより大きな責任を共有することが重要になっている。

 

 アメリカと日本は60年以上にわたり同盟関係を堅持している。そして、これからも同盟関係が堅持され続けることは疑いないところだ。アジア・太平洋地域において古くからの、そして新しい脅威が存続している状況で、脅威に対応するためにアメリカと日本がアジア地域にある他の同盟諸国と緊密に協調することが何よりも重要だ。

 

ライリー・ウォルターズ:ヘリテージ財団付属デイヴィス記念国家安全保障・外交政策研究所研究アシスタント

 

(終わり)







 
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