古村治彦です。

 連邦下院は2021年7月1日付で、2021年1月6日に連邦議事堂で起きた襲撃事件について調査を行う特別委員会を設置した。英語では「United States House Select Committee on the January 6 Attack」、決まった訳語はないが、「アメリカ連邦議会1月6日襲撃事件特別委員会」と私は訳す。

 2021年1月6日に連邦上院で、大統領選挙の選挙人による投票結果の承認過程中に、議事堂前に集まっていた人々が進入してきた事件であり、複数の死傷者が出た。私はこの事件は誘導されて起きた事件だと考えている。数日前から人々が集まって騒動が起きるということは明白であり、そのことをFBIなどは掴んでいたが、地元警察や議事堂の警備に伝えていなかった。そのために進入前に阻止できなかった。911事件や真珠湾攻撃と同じ構図だ。

 事件後、連邦議会で調査のための特別委員会の設置を求める声が民主党側から上がった。連邦上院と連邦下院で共同の特別委員会設置が望まれたが、連邦上院ではフィリバスター(filibuster)で設置はできなかった。フィリバスターとは、連邦上院の慣習で、ある法案について審議をしていて、打ち切って採決をしようとする際に、6割以上の議員の賛成が必要となる。連保上院は現在50対50の同数であり、6割の賛成で採決に至ることができなかった。

 一方、6月末に連邦下院では委員会設置についての採決が行われ、民主党議員全員と共和党議員2名の賛成、共和党議員16名の棄権、共和党議員190名の反対で、222対190(定数は435)となり、設置が決定した。

 委員の定数は多数党である民主党が7名、少数党である共和党が6名であるが、共和党側で委員になっているのは、リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)とアダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出、共和党)の、委員会設置に賛成した2名だけであり、その他の委員は空席となっている。リズ・チェイニーが副委員長(共和党側のトップ)を務めている。2名ともにトランプに対する攻撃姿勢を明確にしている。

 この異常な事態は、連邦下院少数党(共和党)院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が共和党所属の各議員に対して、委員の使命を断るようにと求めたこと、2022年の中間選挙で、トランプ派から対抗馬が出て、選挙で落選させられるのを恐れてのことである。

 このように極めて偏った委員会の構成になっている中で、トランプの側近と元側近たちに対して、委員会に出席し、証言を行うように求める召喚状が出された。これは、トランプ派に対する攻撃である。9月2日にリズ・チェイニーが副委員長に就任してからの動きであることから、このことは明白だ。召喚状を受け取った4名は病気などの理由がない限り、出席しなければならない。しかし、この特別委員会の設立の経緯や構成から、「超党派で正当性を持つものではない」ということを理由にして、出席を拒むことも考えられる。トランプ派と反トランプ派の戦いの一つの前線として、これからの動きが注目される。

(貼り付けはじめ)

1月6日事件調査委員会がトランプの補佐官だったバノンやメドウズに召喚状を送付(Jan. 6 panel subpoenas four ex-Trump aides Bannon, Meadows

レベッカ・ベイッツ筆

2021年9月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/573743-jan-6-panel-subpoenas-four-ex-trump-aides-bannon-meadows

2021年1月6日の連邦議事堂攻撃を調査する特別委員会は木曜日、トランプ大統領の補佐官だった4名に召喚状を送った。その中にはマーク・メドウズ(Mark Meadows)首席補佐官(Chief of Staff)と戦略担当スティーヴン・バノンが含まれている。

召喚状は、彼ら以外にも、ダン・スカヴィーノ(Dan Scavino)コミュニケーション担当首席補佐官代理(deputy chief of staff for communications)と、クリストファー・ミラー国防長官代理の首席補佐官(chief of staff to then-acting Secretary of Defense)のカッシュ・パテル(Kashyap Patel)に召喚状が送られた。

4名は10月中旬の公聴会での宣誓供述に出席するように求められている。

それぞれの召喚状には、特別委員会がそれぞれの人物に対して、攻撃発生前の出来事への関与を疑ったり、攻撃発生後の対応への関与を疑ったりする根拠が書かれている。

特別委員会はバノンへの召喚状の中で次のように書いている。「貴殿は2021年15日にウィラード・ホテルにおり、連邦議会議員たちに対して翌日の大統領選挙結果承認を阻止するように説得していたこと、1月6日の出来事にも関連していることが確認されている」。

召喚状にはまた次のように書かれている。「貴殿はまた、2020年12月30日に当時のトランプ大統領と連絡を取ったとも言われている。また。その他の日時にも連絡を取った可能性がある。そして、その際に、1月6日の選挙結果承認阻止に向けて、努力をするように促したとされている」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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