古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アベノミクス

 古村治彦です。

 

 今回は、おなじみのマイケル・グリーンCSIS上級副所長兼アジア・日本部長の参院選総括を皆様にご紹介します。以下のCSISのアドレスにあるものを抜粋したものです。

 

 今回はマイケル・グリーンと彼の下にいるニコラス・シェンシェーニが総括を書いたようです。シェンシェーニは経済に強い人物です。CSISに入る前には、ワシントンで、日本のフジテレビのプロデューサーをしていたという人物です。

 

 総括についてまとめると、安倍首相の経済政策(アベノミクス)と国防政策が支持された、憲法の見直しについては、可能性はあるが、まずは経済だ、ということになっています。あまり独自色のある総括ではありません。

 

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Japan's Upper House Election

July 11, 2016

https://www.csis.org/analysis/japans-upper-house-election

 

 

Michael J. Green

Senior Vice President for Asia and Japan Chair

 

Nicholas Szechenyi 

Deputy Director and Senior Fellow, Japan Chair; Asia Program

 

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●今回の選挙の概説

 

・7月10日の参院選挙で連立与党は圧勝を収めた。安倍晋三首相の政治的な力は固められた。彼は経済の再生と国防政策に重点を置いた政策を推進する。

・選挙前の世論調査によると、有権者の最大の関心事(懸念)は経済であった。しかし、大差を付けての勝利で、国会が開会された時、安倍首相はその他の重点事項である憲法の見直しに注力するのではないかという懸念も高まっている。

・選挙後のインタヴューで、安倍首相は今秋、憲法の見直しを国会の憲法審査会で議論することになると述べた。しかし、彼は経済と人々の成長への期待を高めるために努力すると重ねて強調した。

 

●問1:今回の選挙での重要なテーマは何だったか?

 

・金融緩和、財政刺激策、構造改革で構成される「アベノミクス」と呼ばれる安倍首相の経済政策への国民投票であった。

・2012年12月に第二次政権が発足して以来、安倍首相はデフレーションと戦うことを公約としてきた。しかし、積極的な金融緩和を行ってもインフレーション目標には遠く及ばない状況である。史上最大規模の国家予算といくつかの財政刺激策が行われたが、経済成長は緩慢なものにとどまっている。財政緊縮派の批判者たちは、公的債務の規模に懸念を持っている。公的債務の規模は現在、GDPの240%にまで膨れ上がっている。

・2016年第一四半期の日本の成長率は年間換算で1.9%であったが、安倍首相は、経済の失速を恐れて、2度目の消費税増税を延期した。

・構造改革に関する政策は、過去3年間で明らかにされ、貿易の自由化、企業のガヴァナンス、女性の地位向上を含む様々な施策となって出現した。それは大きな衝撃ではなかったが、確実な成長を支援することになった。

・民進党をはじめとする野党は、アベノミクスを失敗だとし、安倍首相の経済刺激策を批判し、経済格差を縮小するために社会福祉を増進させるべきだとした。

・野党側は、集団的自衛を含む自衛隊の活動制限を拡大し、攻撃されている同盟諸国の支援を行うことが出来るようにした、昨年の秋に可決した防衛改革法案を批判した。

・安倍首相はすぐに日本国憲法の戦争放棄条項を見直し、日本の平和杉を放棄すると主張する人々がいる。しかし、このような恐怖を掻き立てる戦術を用いても、連立与党の国会コントロールを弱めることはできなかった。

 

●問2:安倍首相はどの程度政治的な力を固めたのか?

 

・安倍首相率いる自由民主党は、参院の過半数にほんの少し足りないほどの議席を獲得した。連立与党のパートナー公明党と一緒だと、過半数を大きく超える。

・自公の連立与党はより力のある衆議院ではすでに3分の2の議席を獲得している。これで、参院が衆院と異なった可決を行っても覆せるだけの力を得ている。

・今回の選挙の結果は、安倍首相の議会コントロールの力を再び強めたということになる。これでしばらく国政選挙はないということになるだろう。

・次の参院選挙は2019年だし、衆議院議員の任期は2018年までだ。自民党内に安倍首相に挑戦する人はいない。安倍首相の自民党総裁の任期は2018年までだ。しかし、自民党は阿部総裁の任期を最大2期延長できるようにルールを変更することはできる。野党の力は弱い。

・民進党は、2009年から2012年まで与党であった内部がバラバラのグループだ。当時の民主党は2011年の東日本大震災以降、人々の信任を失った。民進党は、共産党を含むより小さい野党と一緒になって、安倍氏の政策を阻止しようと絶望的な試みを行ったが、安倍氏の脅威にはならなかった。

・有権者たちは毛財政帳について厳しい目で監視していたが、こうした要素のため、安倍首相の指導力が維持された。

 

●問3:安倍首相はこれからも経済問題に集中するだろうか?

 

・安倍首相はマスコミに対して、成長戦略を進めると述べた。今秋、安倍首相は、経済刺激のために900億ドル(約9兆円)の補正予算を提案する予定である。TPP批准も行う可能性もある。TPPに関しては、自民党の中核的な支持基盤である農業従事者から激しく非難している。しかし、安倍首相は、TPPは日本の経済競争力を高め、アメリカやその他の価値観を共有する国々と共に地域の経済問題に指導力を発揮するためには必要な手段だと主張した。

・今回の選挙の勝利を利用して、経済から憲法の見直しのような他の問題に力点を移す可能性が高いという疑念が高まっている。改憲には衆議院と参議院両方で3分の2の賛成と国民投票で過半数の賛成が必要だ。

・安倍首相率いる連立与党は、小規模の中道・右派の諸政党と一緒になって参院の3分の2を超えている。しかし、安倍首相は経済政策を犠牲にして、政治的資本を憲法に関する議論のために使うことないであろう。2006年から2007年までの第一次安倍政権下、安倍首相は憲法にばかり注力し、経済問題に関心を払っていないと批判された。

・安倍首相は、彼が優先しているもう一つの政策である安全保障分野において、日本が指導的な役割を拡大させるためには、経済力が根本になると理解している。そのためには成長戦略を維持する必要がある。

・憲法を議論する余地があるのは確かだ。しかし、憲法だけがリストに掲載されている訳ではない。

 

●問4:アメリカにとっての戦略上の意義はあるか?

 

・米日同盟は日本の外交政策の礎石だ。安倍首相は両国間の経済と安全保障の結びつきを教誨しようとしている。彼は既にTPP締結に向けての交渉を始めており、国防政策を改め、安全保障同盟関係を発展させるため、アメリカとの間で新しい防衛ガイドラインを作成した。

・先日のG7では議長を務め、世界共通のルールと規範を支持した。

・安倍首相はアメリカの利益と日本の政治的安定を支える政策を実行している。今回の選挙の結果で、日本の政治的安定は確保された。そして、安倍首相は日米両国間の戦略的な関係を維持することを支持している。

 

(終わり)





 

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 古村治彦です。

 

 昨日、参議院議員選挙の投票開票が行われました。結果は、自民党と公明党の政権与党が勝利を収めました。また、改憲に賛成・反対のくくりになると、今回の選挙の結果、改憲賛成ブロックが164(おおさか維新・日本のこころを大切にする会の非改選、無所属を含む)となり、改憲の発議に必要な参議院議員の3分の2を2議席超える結果になりました。

 

 民進党はほんの少しですが、無党派からの支持を獲得することに成功し、改選時は下回りましたが、前回よりは挽回しました。共産党は、例の「人殺し予算発言」が響いてそこまで党勢を拡大することはできませんでした。

 

 自公は設定した勝敗ライン61議席を超えたので、まずは勝利と言えます。皆で「アベノミクス選挙だ」と言っていたのですから、とりあえず「アベノミクスは民意の賛意を得た」と言うことが出来ます。”Japanese voters have bought Abenomics.”となりました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

参院選

●「全121議席が確定」

 

毎日新聞2016711日 0613分(最終更新 711日 0646分)

 

 参院選は11日早朝に全121議席が確定した。自民党は56議席、公明党は14議席を獲得し、安倍晋三首相が勝敗ラインに設定した与党の改選過半数(61議席)を大きく上回った。憲法改正に前向きなおおさか維新の会は7議席を獲得し、同党などを加えた「改憲勢力」で参院(定数242)の3分の2を上回った。

 

 自民、公明、おおさか維新の3党など改憲勢力の非改選議席は88議席。参院で憲法改正の発議ができる3分の2(162議席)に達するには74議席が必要で、3党の議席はこれを上回る77議席に達した。これで衆参両院で改憲発議が可能となった。

 

 自民党は32ある1人区(改選数1)の21選挙区で勝利。比例代表でも2013年参院選を1上回る19議席を獲得したが、27年ぶりの単独過半数回復をかけた57議席には届かなかった。現職閣僚では岩城光英法相(福島選挙区)と島尻安伊子沖縄・北方担当相(沖縄選挙区)の2人が落選した。

 

 公明党は選挙区に過去最多の7人を擁立。全員を当選させるなど、改選9議席を大きく上回る14議席を獲得した。

 

 民進党は13年参院選(当時は民主党)の17議席を上回る32議席を獲得したが、改選46議席は割り込んだ。ただ、1人区は野党統一候補が11選挙区で勝利する健闘をみせた。

 

 おおさか維新の会は改選2議席を大きく上回る7議席を獲得。共産党は13年参院選に続いて東京選挙区で議席を得て、改選数から倍増の6議席を獲得した。社民党は比例代表で1議席を獲得したものの、吉田忠智党首は落選した。生活の党も比例代表1議席を獲得した。

 

(新聞記事点差貼り付け終わり)

 

 今回の参院選挙の争点は、公式的(自民党が設定しようとしたもの)には「アベノミクス、これをそのまま続けるか」ということですが、野党やメディアは「改憲が可能となる参院での改憲勢力が議席数の3分の2を占めるかどうか」という観点で報道しました。

 

 そもそも今回の参議院議員選挙では当初、衆議院の解散に伴う総選挙と同日選挙(ダブル選挙)になる可能性もありました。ところが、安倍首相は衆院解散を断念しました。この時点で、改憲に関しては及び腰である、と言うことが出来ます。2014年の総選挙と今回の参院選の争点は、アベノミクスでした。もちろん、2014年の選挙の後、安保法制を成立させましたので、争点でないことを平気でやるのは安倍政権の得意技です(「新しい判断」という言葉を安倍首相は使ってきました)。

 

 しかし、彼らの悲願の本丸である改憲に関しては衆議院、参議院それぞれの院で100名、50名の議員の賛成で発議が行われ、本会議で3分の2の議員の賛成で可決となり、国民投票にかけられます。この手続きについては、慎重さを期さなければなりません。いささかの瑕疵もあってはなりません。

 

 そうなると、まずは改憲の発議を行う前に、衆院解散を行って、直近の民意を問うことが憲政の常道です。今回はそのチャンスでした。しかし、安倍首相は衆院解散をしての同日選挙に踏み切れませんでした。それは、同日選挙にするとそれは「改憲」を大きく打ち出すことになり、そうなれば、いくらふがいない野党勢力と言ってもまとまる口実を与えてしまい、また選挙が盛り上がってしまい、衆院で改憲勢力で3分の2を取れない、自民党が解散前の議席を割り込むなんてことになってしまったら、安倍首相の責任問題に発展して、辞任ということになります。そうなれば、おじいちゃんを乗り越えるチャンスを失うことになります。

 

 私は今回の選挙結果は、「日本人の絶妙のバランス感覚が発揮されたもの」と考えます。野党がまとまって行動したことに評価を与えつつ、3分の2をほんの少し超える程度の議席(現在流行りの週刊文春のスクープで減らされることだってあり得ます)を与え、「ほれ、これで改憲ができるものならやってみろ」という態度を示したものと思います。

 

 私は、今回自民党と公明党を中心とする改憲ブロックが参議院で3分の2を少し超える議席を獲得したと言っても、改憲はかなり困難である、安倍首相が考えているような改憲はほぼ不可能であると考えます。それは国民投票で賛否を決めるまでの高いハードルがいくつもあるからです。

 

国民投票については総務省のウェブサイトが便利です。

 

※以下が総務省のウェブサイトのアドレスです↓

http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/

 

 憲法改正の発議が衆議院では100名以上、参議院では50名以上の賛成で行われます。そして、両院の憲法審査会でそれぞれ審議が行われます。合同の審査会も可能です。そして、両院の本会議で採決が行われます。それぞれ3分の2以上の賛成で可決となります。これで国会が国民に対して憲法改正の発議を行ったということになります。

 

 この可決された日から60日から180日以内の日に国民投票が実施されます。国民投票の投票率によって効果が無効になるということはなく、単純に過半数で賛成、反対が決まります。その後、賛成となった場合には、内閣総理大臣は直ちに改正の手続きを行うということになっています。

 

 国民投票では、単純に「日本国憲法を改正することに賛成ですか?反対ですか?」という設問ではありません。改正する部分、部分それぞれに設問があって、「賛成・反対」に○をするという形になります。

 

 こうして見てくると、国民投票は単純な話ではありません。憲法改正の発議はまぁできます。その時に、どのように改正するかという案を出さねばなりません。日本国憲法は前文から第96条まであります。理論的には全部を変える・修正することは可能でしょうが、実際には無理な話です。設問の数や順番のこともあります。設問が50問などとなってしまったら、いつもの選挙のように立って丸を付けていくだけでも大変な苦痛になります。ですから、設問はできるだけ絞るということになるでしょう。自民党の憲法改正草案にはいろいろなことが書かれていますが、あれを全部1回でやるということは無理です。「この部分は良いけど、これは嫌」という人が大多数になるでしょう。

 

 そうなると、自民党の内部でまずどの変更や修正を優先するかで意見が分かれるでしょう。自民党は総裁一任ということにはなるでしょうが、その議論の過程で、様々な意見や批判が党内から出るでしょう。これは大きな痛手です。

 

 更には、公明党とも調整しなければなりません。公明党は今や看板だけになっているかもしれませんが、「平和の党・福祉の党」と謳っています。「加憲」ということを言って、ある意味で「逃げ」を打っている状況ですが、そこまできたら、肚をくくり、自党の運命を決めねばなりません。自民党の陰にいて補完勢力になって、批判の弾は自民党に受けさせるというオイシイ立場は終わりになります。公明党は、自民党に同調するのか、しないのかの踏み絵を踏まされます。そして、全国に約800万世帯にある創価学会の皆さんを説得しなくてはなりません。ここも大きな関門です。また、野党でも与党でもない「ゆ」党路線のおおさか維新や日本のこころを大切にする会の意向も問わねばなりません。これらは少数ですが、彼らが抜けてしまえば3分の2に響くのですから、かなりの要求を飲まねばなりません。政治家の最大の指名は選挙に勝つことですから、選挙協力という話も出るでしょうが、実際におおさか維新と争う自公の政治家たちからは不満が出るでしょう。衆議院では自公で3分の2ですが、参議院ではこれらを含んで3分の2から2議席出ただけのことです。

 

 自民党や公明党、その他の勢力から造反が出る可能性も高くなります。それに備えて、自公側は民主党の内部に手を突っ込むことになるでしょう。アクターが複雑に入り組んでいますから、そう簡単に、スムーズに憲法改正の発議が進むとは思いません。もちろん、野党は激しく抵抗するでしょうし、院外の街頭では、抗議活動が行われるでしょう。

 

 憲法改正の発議が両院の憲法審査会で通り、本会議で審議・可決されて国民投票になります。それから60日から180日以内に国民投票が実施されます。現在の世論調査の数字では、反対が上回っています。憲法に関する議論がメディアなどを通じても盛んになるでしょう。国民投票になった場合に、通常の選挙と同じ手法が使えるのかどうかが疑問です。自公は組織票固めに走るでしょう。この組織というのは利益団体であって、単純に言えば、国の予算を分け与えてもらう見返りに投票をする、選挙運動をするということになります。自公が「国民投票で自分たちの発議に賛成の票が多かった都道府県や市町村に予算を手厚く配分する」なんてことを言えば、「・公務員等及び教育者は、その地位を利用した国民投票運動をすることができません。・組織的に多数の者を対象に、投票に影響を与えるような利益を供与したり、利害関係を利用して誘導することは罰則の対象となります」という国民投票の規定に引っかかってしまいます。

 

 また、組織の中でも色々な考えがあるでしょうから、「自民党がやることは何でもいいんだ」という人から「今回は従えないな」という人まで出ます。これは労組でもそうです。

 

 こうして見てくると、改憲の道のりは長く険しいということになります。「3分の2を取れば明日にも改憲だ!」ということにはなりません。今回の選挙の後でも改憲勢力は揃って死んだふりをしています。しかし、油断はできません。改憲勢力にとっては、今が最後のチャンスかもしれないのですから。衆議院議員の任期が2018年、次の参議院議員選挙は2019年です。それまでは確実に3分の2が確保されているのですから、このことは安倍首相にとっては大変魅力的でしょう。次の選挙ではどうなるかは分からないのですから。

 

両院で改憲勢力が3分の2を取ったという事実を踏まえて、まず私たちができることは、自民党の憲法草案を読む、その解説書(賛成・反対それぞれの立場)を読む、国民投票について知る、という極めて単純な話です。そして、改憲ブロックの中心である自民党と公明党があらゆる手段を用いてきても良いように準備をしておくことです。ですから、今回の選挙で「あいつが出たからダメだった」とか「頑張りが足りなかった」という批判はある程度までにして、反省するところはしっかり反省して、改憲ブロックに反対する、議会に議席を持つ人々と結び附き、また彼らをしっかり結び付けておかねばなりません。

 

(終わり)










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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 昨日、安倍晋三総理大臣が無投票で自由民主党の総裁に再選されました。2018年までの任期となります。その後、安倍首相は記者会見を開き、これからは経済に注力するとしながらも、来年の参議院選挙では憲法改正を公約に掲げると発表しました。安倍氏ファンクラブ以外の良識ある自民党保守本流支持者の皆さん、来年の選挙ではよく考えて行動を決めていただきたいと思います。

 

 安倍首相は、アベノミクスの成果を強調しつつ、これからアベノミクス第二段階だと述べ、「新三本の矢」なるものを発表しました。朝日新聞によると、

 

「これまでの「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3点を掲」げ、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍できる『1億総活躍社会』をつくる」

 

と安倍首相は述べたということです。更には名目GDP490兆円から600兆円の増加を目指す(そのためには名目3%、実質2%の経済成長率が必要)とも述べました。更には2017年4月の消費税率10%への引き上げも変わらずに実施も強調しました。

 

 私は外出先で安倍首相の会見を見たのですが、「強い経済」とか「安心につながる社会保障」と言われて、それでは何か大きな目玉政策があるんだろうと思っていましたが、全くなくて、狐に包まれたようにポカンとしてしまいました。経済が「強い」とはそもそもどういうことなのか、というところから分かりません。強いお相撲さんなら分かります。どんな取り組みでも相手に勝つお相撲さんのことです。しかし、経済が強いとはどういうことなのか、分かりません。

 

以前からアベノミクスの「三本の矢」と呼ばれてきた、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、というのはどういうことでしょうか。これらは一定の成果を収めたからということを言いたいのかもしれませんが、2%の物価上昇も実質賃金の上昇も達成されておらず、株価が下落している中で、これらの政策の成果を実感せよ、というのは無理な話です。しかも「新三本の矢」には全く具体性がなく、それなのに、名目GDPを490兆円から600兆円にするということは言っていますが、目標が大きいことは認めますが、その手段を明示しなければ全く意味がありません。

 

 同日、自民党はNHKの受信料の「義務化」提言を発表しました。NHKはご存じの通り、受信料を徴収しています。下の記事にあるように、24パーセントの人は不払いだそうです。受信契約しておいて不払いというのは、支払っていない人の方が分が悪いと思いますが、問題は、受像機を持っていない、受信契約をしていない人たちからも受信料を徴収することを提言している点が問題だと思います。

 

 受信もしていないのに受信料を徴収されるというのは全くもって理不尽な話です。「お前の家の上にも電波は飛んでいる、だから金を払え」というのは押し売り以下のゆすりたかりです。私的な話で恐縮ですが、私は引っ越しを機会にテレビを備え付けずに、受信契約を解除することにしました。NHKは家にテレビがないことを証明しろということで、NHKの職員でもないいたく会社の人間が家に上り込み、寝室まで覗いていくという行動を取りました。私はその時、家のテーブルにその人間を座らせ、1時間近くにわたり抗議をしました。それでも相手はそういうことには慣れているらしく、「馬耳東風」でした。NHKの職員たちはそういう「汚れ仕事」はしないで、貴族様になっているんだなぁとその時に痛感しました。

 

そして、受信料の「税金化」によってNHKは国営放送同然ということになります。そして、国家に奉仕する実質国営放送となったNHKに貴族様然とした職員たちを養うことになります。とてもやりきれない話です。

 

 私は昨日に起きたこれらの出来事を受け、「今の日本は戦前どころではない、戦中と同じではないか」と思いました。私は清沢冽の『暗黒日記』や徳川夢声の『夢声戦中日記』『夢声戦争日記』を読みました。そして、こうした着想を得ました。

 


 議会(国会)は大政翼賛会のようになり、憲法を壊す動きをしています。政府は抽象的な話に大仰な形容詞や俗事に入りやすい「日本一億総活躍社会」(現在)、「進め一億火の玉だ」「欲しがりません、勝つまでは」(戦中)話を振りまきながら、実態とは違うことを述べています。アベノミクスの成果があったので新三本の矢をやるという安倍首相の会見と、ガダルカナル島では初期の目的を達したので転進するという大本営発表のどこが違うでしょうか。

  安倍首相と周辺の人々の姿は、国民に嘘をつき続け、それに自縄自縛状態になり、やがて希望的観測を述べながら、「自分たちがそう言えばそうなるのだ」という主観と「精神力が足りない」という精神至上主義の中に逃げ込むしかなかった戦中の指導者たちの姿によく似ています。

 

 政府が国民には嘘の「戦果」「成果」を発表しながら、国民の負担を増やすことには具体的な施策を打ち出しているという点でも同じだと思います。増税感は人々の気持ちを荒ませます。そして、給料の上昇よりも物価上昇が先に来るという状況も併せて、戦中のような人心の荒廃が進んでいると私は思います。先ほどのNHKの受信料義務化が進めば、NHKの徴収員たちは居丈高に正義を振りかざして、私たちの家のドアを傍若無人に叩き続けるでしょう、戦中に配給や防火訓練などで威張り散らした隣組の組長のように。

 

 このように考えていくと、今の日本は戦中のようになっていると言えます。これにもしインフレが加わり、また防衛費の増加と社会保障費の削減、加えて中国との軍事衝突が起きれば、私たちの生活がどれほどに破壊されるか、全く予想がつきませんと書きたいのですが、簡単に予想がつきます。戦中そのものになるのです。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「<NHK受信料>自民小委が「義務化」を提言」

毎日新聞 924()1653分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150924-00000062-mai-pol

 

 自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関する小委員会(委員長=佐藤勉・衆院国対委員長)は24日、NHKや総務省に対し、NHKの受信契約の有無に関わらず受信料を徴収する「支払い義務化」を求める提言をまとめた。

 

 受信料の徴収コストは、受信料収入の10.7%に当たる735億円(2015年度予算ベース)に上り、支払率は76%(14年度末現在)にとどまる。また、インターネットでの放送番組の同時配信の本格実施に向けて、ネット視聴者の負担のあり方がNHK内でも検討課題になっている。

 

 そのため委員会は、不払い者に罰則を科す英国や、テレビの有無に関わらず世帯ごとに徴収するドイツの公共放送の例に言及。これらを参考にしつつ、マイナンバー制度の活用などを含めて制度を検討するよう求めた。

 

 また、支払い義務化で支払率が上がった場合、どの程度の値下げが可能かの試算も求めた。佐藤委員長は委員会後、記者団に「未払いの24%が納めれば、今より割引できる。総務省とNHKはしっかり考えて提言に応えてほしい」と述べた。

 

 これに対し、NHK広報局は、NHK内でも受信料制度の「研究」に着手しているとした上で「視聴者・国民の理解を得られることが何より重要で不可欠」との見解を示した。

 

 義務化の実現には放送法の改正が必要で、「事実上の税金化」などの批判もある。また籾井勝人(もみいかつと)会長は国会答弁で義務化を歓迎するも、値下げについては、放送センター建て替えなどを理由に慎重な姿勢を示している。【丸山進、須藤唯哉】

 

 

●「安倍首相「1億総活躍社会めざす」 新3本の矢を提唱」

 

朝日新聞デジタル 925()310分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150925-00000006-asahi-pol

 

 自民党は24日、党本部で両院議員総会を開き、安倍晋三首相(党総裁)の無投票再選を正式に決めた。首相はその後の記者会見で、「アベノミクスは第2ステージへ移る。『1億総活躍社会』を目指す」と語り、強い経済など新たな「3本の矢」を提唱。2014年度に約490兆円だった国内総生産(GDP)について「GDP600兆円の達成を明確な目標に掲げたい」と宣言し、経済や社会保障に焦点を当てる姿勢を鮮明にした。

 

 安倍政権は、安全保障関連法を成立させた影響などで内閣支持率が低下するなか、再び経済を「最優先」に掲げることで支持率回復のシナリオを描く。来夏の参院選に向けて、安全保障のような国論を二分する政策テーマは避け、経済や少子高齢化対策など国民の支持が得やすい政策テーマに力を注ぐ方針だ。

 

 総裁任期は18年9月末まで。首相は党本部で記者会見を開き、これまでの「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3点を掲げた。その上で、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍できる『1億総活躍社会』をつくる」などと述べた。

 

 

●「「1億総活躍」担当相を設置…首相が表明へ」

 

20150925 0848分 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150925-OYT1T50001.html?from=tw

 

 安倍首相は来月行う内閣改造で、政権の新たな看板政策として掲げる「1億総活躍」の担当相を置く方針を固めた。

 

 25日の記者会見で表明する。

 

 首相は、50年後に人口1億人を維持する「1億総活躍社会」を実現するため、2020年までの道筋を定めた「日本1億総活躍プラン」を作成する考え。経済、介護、子育てなどテーマが多岐にわたるため、省庁間の調整を担う担当相が必要だと判断した。閣僚枠は増やさず、兼務とする方向だ。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年4月25日に副島隆彦先生の最新刊『「熱狂なき株高」で踊らされる日本』(徳間書店、2015年)が発売されます。待望の経済に関する新刊です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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 また、2015年5月31日(日)に副島隆彦を囲む会主催の講演会が開催されます。こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます。

  

※講演会の申し込みはこちらからどうぞ。


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「熱狂なき株高」で踊らされる日本──目次

 

まえがき─3

 

1    金と現金以外は信用するな!

 

国家が相場操縦して株価を吊り上げる動きは止まらない─12

金投資は初めての人は今すぐ買いなさい。もう買っている人はまだ待ちなさい─17

 

2    国家は株も土地も吊り上げる

今年1年は政府主導の強気の相場が続く─26

日本政府が「5頭のクジラ」を使って株の爆買いを始めた─28

株を買うのはGPIFだけではない─37

台湾人が日本の不動産を爆買いしているが、2020年までには売り払う─50

戦争の危機が迫る日本で東京オリンピックの中止もありうる─54

日本の不動産で値段が上がっているのは「3A1R」だけだ─58

富裕層が資産の再評価をやっている─62

政治と経済は貸借を取り合って、バランスする─66

日経平均株価は2万2000円まではいくだろう─72

 

3    世界から金利がなくなった

アメリカは金利を上げると一気に逆回転するから上げられない─84

黒田日銀総裁が「国債暴落」の不規則発言をした─87

世界中の金利が低下する異常事態になっている─93

ユーロはデフレに陥って衰退に向かう─104

アメリカの金融・財政は舵取り能力を失っている─108

ドル円の相場は120円がしばらく続く─112

NY金は1200ドルが抵抗線である─114

中国が金の値決めに参加することが決まった─116

イギリスが中国と組むと決めた─126

AIIB(アジアインフラ投資銀行)は大きな世界覇権移行の始まりだ─131

 

4    日本はますます貧乏国家にさせられる

名だたるヘッジファンドがどんどん潰れている─154

売り仕掛けのヘッジファンドが次々に潰れ、日本から撤退を始めた─155

1億円の投資信託が9割方まで回復している─161

またしても日本の米国債買いが始まった─166

コーポレートガバナンス・コードで日本企業の内部留保を吐き出させる─170

社外取締役に入る会計士たちが企業財務を丸裸にする─174

ROEを高くさせて日本企業のキャッシュを流出させる─176

ゴールドマンのキャシー松井がROEを言い出した─177

日本奪い取りの第三段階までもう来ている─181

日本はマイナス成長の衰退国家にさせられている─184

今の円安は日本の通貨の暴落だとなぜ言わないのか─188

 

5    経済学はケインズに戻らなければならない

日本の経済政策の最高指導者はGPIFを牛耳る伊藤隆敏だ─192

インフレ・ターゲット論は方程式を逆転させる論理でできている─201

アメリカの意思に沿う政策理論をやりながらその自覚がない─218

通貨量と株価上昇だけで市場がコントロールできるのか─220

今こそケインズ、ヴォルテールに学ぶべきだ─222

古典派とケインジアンの戦いが今も続いている─229

合理的期待学派は狂信者たちである─234

現金や金を信じることをケインズから学んだ─241

「情報の非対称性」とは、始めから結果を知っている人間がいるということ─252

銀行の不良債権問題に蓋をし続けていることが致命傷になる─254

本当は、金融市場でクラウディング・アウトが起きている─260

 

6    ピケティの『21世紀の資本』はアパート経営の話だった

収入の20倍が資産価格になるという「副島隆彦の法則」─264

ピケティの資本主義の第一基本法則からあらゆる経済問題が解ける─281

経済学は数学と物理学から発生した学問である─285

「資産は所得(年収)の6倍だ」と言い切ったところがピケティのすごさ─295

労働所得と資本所得は7対3で決まっている─298

ピケティが結論で提案している富裕層課税は間違っている─304

 

 

あとがき─308

巻末付録 吊り上げ相場の注目株32銘柄─311

 

 

 

あとがき

 

 この本を書き上げる段になって、私はようやくはっきり分かった。

 

 アベノミクス(安倍首相の経済政策)というのは、株バブル(および国債バブル)と土地バブルの両方を起こすことだ。この資産バブルを人為的に作って、無理やりでも国民心理にインフレ期待の人工の波を起こして、人々がどんどん消費して贅沢品を買うように仕向ける。そうすることで、景気回復を達成するという計画である。すべてはアメリカの指図、命令のままに行われている。

 

 こんな当り前のことを私は今頃、遅れて分かった。だがここに到達するまでに私は激しく辛吟した。

 

 資産バブルが全国(いや世界中)に波及し、景気(経済)は必ず回復すると狂信して、政府自ら株の吊り上げと都心の土地の値段(地価)の吊り上げに狂奔している。

 

 しかし「2%のインフレ(にする)目標」は丸2年たったが達成しなかった。責任者たちの責任が問われている。

 

 私は、この本でアベ(ABE)ノミクス(Asset Bubble Economy)を創作して日本に押しつけたアメリカの経済学の理論家たちのおかしさを追跡してなんとか解明できた。

 

 それは、小室直樹先生の遺作となった4冊の経済学の本を、本気で読み直したからである。先生は大事なことをすべて書き遺してくれていた。先生の霊が私を導いた(第5章)。

 

 今の安倍政権の金融政策の何が間違っているかを、この本で大きく解明することができた。私の方も土壇場まで追いつめられたが、なんとか大きな謎解きをすることができた、と思っている。

 

 評判を取ったトマ(ス)・ピケティの大著『21世紀の資本(論)』からも私は巨大な真実を学んだ(第6章)。やはりこの本は大変な本である。ピケティ本は、今や幻想と虚栄の神殿と化したアメリカ経済学を根底から掘り崩す核爆弾級の破壊力を持つ本である。おそらく日本では、今のところ私だけがこのことに気づいている。今はもう多くは書けない。一点だけ書く。

 

 ストック(資産)とフロー(所得)において、フロー面(消費者物価、インフレ率、GDPギャップ、失業率などの指標)ばかりに囚われてきたアメリカ経済学界のオカシさを、フランス人のピケティは、正しく大きくストック面(土地住宅価格。即ち不動産資本)の重要性からはっきりとつかみ出した。おそらくピケティ本からの根源的攻撃を受けてアメリカ理論経済学は自滅に向かうだろう。それはアメリカ帝国の崩壊と軌を一にするものだ。

 

 この本を書くに当たって、共に難行苦行と言うか、延々と果てしなく議論してくれた徳間書店の力石幸一編集委員に深くお礼を申し上げる。

 

2015年4月

 

副島隆彦 

(終わり)










 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は経済のお話を書きたいと思います。私は経済学が苦手です。大学の経済学の授業でも半分寝ていたような人間です。ですから、経済の話は避けていたのですが、今回挑戦してみたいと思います。まずは思い出話から始めたいと思います。

 

 私が小中高時代を過ごしたのは、1980年代から1990年代にかけてです。私は九州の地方都市で育ちました。大人たちとは全く別の子供の世界、大人たちの顔を曇らせたり、笑顔にしたりするものと言えば、テレビのニュースでした。私が小学校時代に、久米宏司会の「ニュースステーション」が始まりました。それまでのニュース番組とは何か違うな、面白いなと思って大人たちと一緒に見ていました。フィリピンの民主化や第二次天安門事件など固唾を飲んで見守っていたことを思い出します。

 

 そんな中で、大人たちがいつも話をしているのが景気の話でした。バブルが始まる前兆があったのでしょう。地方都市の公務員の家でも株の話が出るようになりました。「●●さんはNTTの株を買って大儲けしたらしい」なんてことを聞いていました。

 

 ニュース番組の最後には、東京証券取引所の平均株価、そして円ドルの為替レートがいつも流されていました。株価が上がれば大人たちは喜んでいました。それでも子供ながらに不思議なことがありました。「円安、円高」という言葉でした。「238円から237円になったのに、“円高”になったと言って大騒ぎする」大人たち。数字が小さくなっているのに「円高」ってなんなのだろうか?と思って親に聞いても、子供に分かるように説明してくれませんでした。

 

 それでも小学校の高学年になって少し知恵がつくと、「価値」というものが少しわかるようになり、そして、日本という国が「加工貿易」で世界の中でも豊かな国となっていると習うようになりました。時代は、日米貿易戦争で、日本製の自動車やラジオがハンマーで壊されていました。

 

 「日本は原材料を輸入して、それをテレビ、ラジオ、自動車、船、鉄鋼などに加工して、それを輸出してお金を稼いでいる」ということを習いました。そして、「円安だと輸出した先の国で製品が安く売れる」ということも分かりました。だから、円が少しでも高くなると、自分たちのせいではなくて製品の値段が上がるから円安が良いのだ、ということを理解できるようになりました。そして、得意げに友達にこのことを説明していました。今から考えると、汗顔の至りです。

 

 私たちの世代くらいまでは、「日本は加工貿易の国で、円安は良くて、円高は悪い」ということをある意味刷り込まれてきたと言えると思います。「日本は世界中に工業製品を輸出してお金を稼いでいる。輸出あってこその日本なのだ」ということを私たちは教えられてきました。確かに世界各国に行って日本人と分かれば、その国の人たちから「ソニーの製品は素晴らしいね」「トヨタの車は故障がなくて良く走るよ」と賛辞を寄せられることが多いです。自分は全く関係ないのだけれど、それは別にして嬉しくなることは事実です。

 

 しかし、日本はどうも「輸出主導型経済」ではなくなっているようです。1960年代からの奇跡の高度経済成長の幻影はあるのですが、日本は先進国となり、製造業ではなく、サーヴィス業がその割合をどんどん増やしているようです。

 

※厚生労働省の報告書のアドレス↓

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-4_02.pdf

 

※2013年10月7日付東洋経済オンライン 野口 悠紀雄(早稲田大学 ファイナンス総合研究所顧問)「輸出主導型ではなくなった日本経済 リーマンショックから5年、世界はどう変わったか」のアドレス↓

http://toyokeizai.net/articles/-/20873

 

 もちろん、日本の製造業がこれからも頑張ってもらいたい、海外で売れる製品を作ってもらいたい、外貨を稼いできてもらいたい、というのはそうなのですが、新興諸国の追い上げということも考えていかねばなりません。

 

 そうなると、「輸出(外需)主導」ではなく「内需主導」型経済ということになりそうです。ただ、内需主導経済で経済の規模が大きくなるのかということは分かりません。ですから、外需に偏っていたものを内需にしていくということなのだと思います。また、内需主導経済というのはよく分からないものです。

 

 それでも現在の日本は、アベノミクスで株価は上がっています。そして、円安によって企業の売り上げは良くなっていると言われています。しかし、円安によって輸入品の値段が上がり、物価はどんどん上昇しており、給料の伸びが追いついていない状況です。株価が上がっても、株式を頻繁に取引する人たち以外にはまず関係のない話です。日本国民の8割以上は株式取引をしたことがないのです。

 

 「円安にして輸出を増やす」ということも、今の日本では難しいです。なぜなら、1980年代から円高基調になって、各メーカーは生産拠点を海外に移しているからです。日本国内にも製造工場がありますが、日本列島全体が生産工場ということはありません。円安で輸出を増やすということはできるはずがありません。

 

 また、日本人の人件費も高度経済成長のおかげで伸びていきました。どんどん豊かになりました。簡単に言えば、昔は日本人の給料は世界に比べても安くて、その上高品質の製品を作ることができたので、低価格で良いものを世界中に売りまくることができました。しかし、今は人件費が上昇し、円安をいくら進めてもそこまで低価格にはできないのです。

 

 それでは、円安で輸出を増やすということをやるためには何が必要になるかというと、低賃金で働く人々です。アメリカにおける移民の立場はまさにそうです。しかし、日本ではなかなか移民受け入れは難しいのが現状です。そうなると低賃金層は日本国民の中に作らねばなりません。

 

 現在のアベノミクスがやろうとしていることは、低賃金層を生み出そうということです。お金持ちがいきなり低賃金層になることはありませんから、中間層から脱落していく人たちが増えていきます。低賃金で働かざるを得なくなる人たちが増えていきます。

 

 私がこの部録の記事で指摘したように、中間層は民主政治体制(デモクラシー)にとって重要な要素となります。中間層がいなくなれば、民主政治体制は脆弱になります。

 

 若者の非正規雇用やマイルドヤンキーといった現象はこうした中間層がいなくことを示しています。お金持ちと貧困層の二極化が進みます。そして、貧困層は政治になど関心を持たなくなります。そうなれば支配者層とつながるお金持ちたちに都合の良い支配体制となります。それが自民党の一強多弱時代です。

 マルクスの理論では、資本主義がどんどん発展していくと、格差が拡がり、労働者(プロレタリアート)階級がブルジョア階級を倒す階級闘争(クラス・ストラグル)にまでいくということになります。しかし、現在の日本では、そうした自分の状況に関心を払うことも、政治に関心を払うこともできない状況になっています。また、低賃金層の団結も妨げられ、孤立化も進んでいます。

  
私は、財政の再配分機能を利用して、つまり、人々の家計にお金が直接入るような政策を行うことを支持します。 

 

 今回の総選挙で自民党の一強時代はしばらく続きそうです。そうなれば、日本はますますお金持ちと低賃金層の二極化、中間層の脱落が進んでいくことになります。そうした状況を変えるためにも、野党勢力にはしっかりとしていただきたいと思います。

  

(週刊誌記事転載貼り付けはじめ)

 

安倍自民大勝もアベノミクスが落とし穴

 

(週刊朝日 20141226日号掲載) 20141219()配信

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/1.htm

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/2.htm

 

 選挙で予想通りに大勝した自民党は、来週にも新内閣を発足させ、向こう4年間の長期政権をスタートさせる。

 

 憲法改正まで見据え、着々と足場を固めていく安倍首相。だが、今後の政権運営には、多くの落とし穴が待ち構えている。まずは年明けにも想定される原発再稼働だ。

 

 今回の衆院選で首相はあまり触れなかったが、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は早ければ2月にも、再稼働する。他の原発も原子力規制委員会の基準を満たせば再稼働していく。

 

 今年7月の集団的自衛権行使を認めた閣議決定に沿った安全保障関連法案も来年の通常国会に提出される。自民党の高村正彦副総裁は「すぐに安保法制の大枠を作る作業に入りたい」と話しており、作業を加速させる考えだ。

 

 関連法案の審議の時期は統一地方選後になりそうだが、自衛隊がこれまでより危険にさらされるだけに、国会の内外で再び大きな反発が起こることも予想される。

 

 安倍首相が政権公約集の表紙に掲げた「景気回復」も足元は心もとない。

 

 選挙期間中、今年7月から9月までのGDPの改定値が発表されたが、速報値の年率マイナス1.6%からマイナス1.9%に下方修正。4月の消費税8%への増税は、結果として内需を冷え込ませ、予想以上に深刻になっている。

 

 自民党ベテラン議員は言う。

 

「アベノミクス3本目の矢の成長戦略も妙案がなく、みな困り果てています。すでに掲げた医療・雇用の規制緩和や農業改革などは、自民党の支持団体の抵抗にあってスムーズに進んでいない。

 

1月以降に景気回復が進まなければ、国民の期待は一気に怒りに変わるでしょう。統一地方選にも打撃となります」

 

 同志社大学大学院の浜矩子教授は「来年1月以降の経済はさらに厳しくなる」と予測する。

 

「消費や設備投資は低調で、どの指標を見ても景気上昇のきっかけが見られない。物価上昇の影響で実質所得もマイナスになっている。円安で輸入製品の価格が上がり、生活コストも上昇しています。これでは消費が伸びるはずがありません。実際に痛みを感じている中低所得者層に直接、働きかけることをしないと、経済はなかなか回復しない」

 

※週刊朝日  20141226日号より抜粋

 

(週刊誌記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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