古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アベノミクス

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 昨日、安倍晋三総理大臣が無投票で自由民主党の総裁に再選されました。2018年までの任期となります。その後、安倍首相は記者会見を開き、これからは経済に注力するとしながらも、来年の参議院選挙では憲法改正を公約に掲げると発表しました。安倍氏ファンクラブ以外の良識ある自民党保守本流支持者の皆さん、来年の選挙ではよく考えて行動を決めていただきたいと思います。

 

 安倍首相は、アベノミクスの成果を強調しつつ、これからアベノミクス第二段階だと述べ、「新三本の矢」なるものを発表しました。朝日新聞によると、

 

「これまでの「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3点を掲」げ、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍できる『1億総活躍社会』をつくる」

 

と安倍首相は述べたということです。更には名目GDP490兆円から600兆円の増加を目指す(そのためには名目3%、実質2%の経済成長率が必要)とも述べました。更には2017年4月の消費税率10%への引き上げも変わらずに実施も強調しました。

 

 私は外出先で安倍首相の会見を見たのですが、「強い経済」とか「安心につながる社会保障」と言われて、それでは何か大きな目玉政策があるんだろうと思っていましたが、全くなくて、狐に包まれたようにポカンとしてしまいました。経済が「強い」とはそもそもどういうことなのか、というところから分かりません。強いお相撲さんなら分かります。どんな取り組みでも相手に勝つお相撲さんのことです。しかし、経済が強いとはどういうことなのか、分かりません。

 

以前からアベノミクスの「三本の矢」と呼ばれてきた、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、というのはどういうことでしょうか。これらは一定の成果を収めたからということを言いたいのかもしれませんが、2%の物価上昇も実質賃金の上昇も達成されておらず、株価が下落している中で、これらの政策の成果を実感せよ、というのは無理な話です。しかも「新三本の矢」には全く具体性がなく、それなのに、名目GDPを490兆円から600兆円にするということは言っていますが、目標が大きいことは認めますが、その手段を明示しなければ全く意味がありません。

 

 同日、自民党はNHKの受信料の「義務化」提言を発表しました。NHKはご存じの通り、受信料を徴収しています。下の記事にあるように、24パーセントの人は不払いだそうです。受信契約しておいて不払いというのは、支払っていない人の方が分が悪いと思いますが、問題は、受像機を持っていない、受信契約をしていない人たちからも受信料を徴収することを提言している点が問題だと思います。

 

 受信もしていないのに受信料を徴収されるというのは全くもって理不尽な話です。「お前の家の上にも電波は飛んでいる、だから金を払え」というのは押し売り以下のゆすりたかりです。私的な話で恐縮ですが、私は引っ越しを機会にテレビを備え付けずに、受信契約を解除することにしました。NHKは家にテレビがないことを証明しろということで、NHKの職員でもないいたく会社の人間が家に上り込み、寝室まで覗いていくという行動を取りました。私はその時、家のテーブルにその人間を座らせ、1時間近くにわたり抗議をしました。それでも相手はそういうことには慣れているらしく、「馬耳東風」でした。NHKの職員たちはそういう「汚れ仕事」はしないで、貴族様になっているんだなぁとその時に痛感しました。

 

そして、受信料の「税金化」によってNHKは国営放送同然ということになります。そして、国家に奉仕する実質国営放送となったNHKに貴族様然とした職員たちを養うことになります。とてもやりきれない話です。

 

 私は昨日に起きたこれらの出来事を受け、「今の日本は戦前どころではない、戦中と同じではないか」と思いました。私は清沢冽の『暗黒日記』や徳川夢声の『夢声戦中日記』『夢声戦争日記』を読みました。そして、こうした着想を得ました。

 


 議会(国会)は大政翼賛会のようになり、憲法を壊す動きをしています。政府は抽象的な話に大仰な形容詞や俗事に入りやすい「日本一億総活躍社会」(現在)、「進め一億火の玉だ」「欲しがりません、勝つまでは」(戦中)話を振りまきながら、実態とは違うことを述べています。アベノミクスの成果があったので新三本の矢をやるという安倍首相の会見と、ガダルカナル島では初期の目的を達したので転進するという大本営発表のどこが違うでしょうか。

  安倍首相と周辺の人々の姿は、国民に嘘をつき続け、それに自縄自縛状態になり、やがて希望的観測を述べながら、「自分たちがそう言えばそうなるのだ」という主観と「精神力が足りない」という精神至上主義の中に逃げ込むしかなかった戦中の指導者たちの姿によく似ています。

 

 政府が国民には嘘の「戦果」「成果」を発表しながら、国民の負担を増やすことには具体的な施策を打ち出しているという点でも同じだと思います。増税感は人々の気持ちを荒ませます。そして、給料の上昇よりも物価上昇が先に来るという状況も併せて、戦中のような人心の荒廃が進んでいると私は思います。先ほどのNHKの受信料義務化が進めば、NHKの徴収員たちは居丈高に正義を振りかざして、私たちの家のドアを傍若無人に叩き続けるでしょう、戦中に配給や防火訓練などで威張り散らした隣組の組長のように。

 

 このように考えていくと、今の日本は戦中のようになっていると言えます。これにもしインフレが加わり、また防衛費の増加と社会保障費の削減、加えて中国との軍事衝突が起きれば、私たちの生活がどれほどに破壊されるか、全く予想がつきませんと書きたいのですが、簡単に予想がつきます。戦中そのものになるのです。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「<NHK受信料>自民小委が「義務化」を提言」

毎日新聞 924()1653分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150924-00000062-mai-pol

 

 自民党情報通信戦略調査会放送法の改正に関する小委員会(委員長=佐藤勉・衆院国対委員長)は24日、NHKや総務省に対し、NHKの受信契約の有無に関わらず受信料を徴収する「支払い義務化」を求める提言をまとめた。

 

 受信料の徴収コストは、受信料収入の10.7%に当たる735億円(2015年度予算ベース)に上り、支払率は76%(14年度末現在)にとどまる。また、インターネットでの放送番組の同時配信の本格実施に向けて、ネット視聴者の負担のあり方がNHK内でも検討課題になっている。

 

 そのため委員会は、不払い者に罰則を科す英国や、テレビの有無に関わらず世帯ごとに徴収するドイツの公共放送の例に言及。これらを参考にしつつ、マイナンバー制度の活用などを含めて制度を検討するよう求めた。

 

 また、支払い義務化で支払率が上がった場合、どの程度の値下げが可能かの試算も求めた。佐藤委員長は委員会後、記者団に「未払いの24%が納めれば、今より割引できる。総務省とNHKはしっかり考えて提言に応えてほしい」と述べた。

 

 これに対し、NHK広報局は、NHK内でも受信料制度の「研究」に着手しているとした上で「視聴者・国民の理解を得られることが何より重要で不可欠」との見解を示した。

 

 義務化の実現には放送法の改正が必要で、「事実上の税金化」などの批判もある。また籾井勝人(もみいかつと)会長は国会答弁で義務化を歓迎するも、値下げについては、放送センター建て替えなどを理由に慎重な姿勢を示している。【丸山進、須藤唯哉】

 

 

●「安倍首相「1億総活躍社会めざす」 新3本の矢を提唱」

 

朝日新聞デジタル 925()310分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150925-00000006-asahi-pol

 

 自民党は24日、党本部で両院議員総会を開き、安倍晋三首相(党総裁)の無投票再選を正式に決めた。首相はその後の記者会見で、「アベノミクスは第2ステージへ移る。『1億総活躍社会』を目指す」と語り、強い経済など新たな「3本の矢」を提唱。2014年度に約490兆円だった国内総生産(GDP)について「GDP600兆円の達成を明確な目標に掲げたい」と宣言し、経済や社会保障に焦点を当てる姿勢を鮮明にした。

 

 安倍政権は、安全保障関連法を成立させた影響などで内閣支持率が低下するなか、再び経済を「最優先」に掲げることで支持率回復のシナリオを描く。来夏の参院選に向けて、安全保障のような国論を二分する政策テーマは避け、経済や少子高齢化対策など国民の支持が得やすい政策テーマに力を注ぐ方針だ。

 

 総裁任期は18年9月末まで。首相は党本部で記者会見を開き、これまでの「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」に代わり、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」の3点を掲げた。その上で、「誰もが家庭で職場で地域で、もっと活躍できる『1億総活躍社会』をつくる」などと述べた。

 

 

●「「1億総活躍」担当相を設置…首相が表明へ」

 

20150925 0848分 読売新聞

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20150925-OYT1T50001.html?from=tw

 

 安倍首相は来月行う内閣改造で、政権の新たな看板政策として掲げる「1億総活躍」の担当相を置く方針を固めた。

 

 25日の記者会見で表明する。

 

 首相は、50年後に人口1億人を維持する「1億総活躍社会」を実現するため、2020年までの道筋を定めた「日本1億総活躍プラン」を作成する考え。経済、介護、子育てなどテーマが多岐にわたるため、省庁間の調整を担う担当相が必要だと判断した。閣僚枠は増やさず、兼務とする方向だ。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2015年4月25日に副島隆彦先生の最新刊『「熱狂なき株高」で踊らされる日本』(徳間書店、2015年)が発売されます。待望の経済に関する新刊です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

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 また、2015年5月31日(日)に副島隆彦を囲む会主催の講演会が開催されます。こちらもどうぞよろしくお願い申し上げます。

  

※講演会の申し込みはこちらからどうぞ。


==========

 

「熱狂なき株高」で踊らされる日本──目次

 

まえがき─3

 

1    金と現金以外は信用するな!

 

国家が相場操縦して株価を吊り上げる動きは止まらない─12

金投資は初めての人は今すぐ買いなさい。もう買っている人はまだ待ちなさい─17

 

2    国家は株も土地も吊り上げる

今年1年は政府主導の強気の相場が続く─26

日本政府が「5頭のクジラ」を使って株の爆買いを始めた─28

株を買うのはGPIFだけではない─37

台湾人が日本の不動産を爆買いしているが、2020年までには売り払う─50

戦争の危機が迫る日本で東京オリンピックの中止もありうる─54

日本の不動産で値段が上がっているのは「3A1R」だけだ─58

富裕層が資産の再評価をやっている─62

政治と経済は貸借を取り合って、バランスする─66

日経平均株価は2万2000円まではいくだろう─72

 

3    世界から金利がなくなった

アメリカは金利を上げると一気に逆回転するから上げられない─84

黒田日銀総裁が「国債暴落」の不規則発言をした─87

世界中の金利が低下する異常事態になっている─93

ユーロはデフレに陥って衰退に向かう─104

アメリカの金融・財政は舵取り能力を失っている─108

ドル円の相場は120円がしばらく続く─112

NY金は1200ドルが抵抗線である─114

中国が金の値決めに参加することが決まった─116

イギリスが中国と組むと決めた─126

AIIB(アジアインフラ投資銀行)は大きな世界覇権移行の始まりだ─131

 

4    日本はますます貧乏国家にさせられる

名だたるヘッジファンドがどんどん潰れている─154

売り仕掛けのヘッジファンドが次々に潰れ、日本から撤退を始めた─155

1億円の投資信託が9割方まで回復している─161

またしても日本の米国債買いが始まった─166

コーポレートガバナンス・コードで日本企業の内部留保を吐き出させる─170

社外取締役に入る会計士たちが企業財務を丸裸にする─174

ROEを高くさせて日本企業のキャッシュを流出させる─176

ゴールドマンのキャシー松井がROEを言い出した─177

日本奪い取りの第三段階までもう来ている─181

日本はマイナス成長の衰退国家にさせられている─184

今の円安は日本の通貨の暴落だとなぜ言わないのか─188

 

5    経済学はケインズに戻らなければならない

日本の経済政策の最高指導者はGPIFを牛耳る伊藤隆敏だ─192

インフレ・ターゲット論は方程式を逆転させる論理でできている─201

アメリカの意思に沿う政策理論をやりながらその自覚がない─218

通貨量と株価上昇だけで市場がコントロールできるのか─220

今こそケインズ、ヴォルテールに学ぶべきだ─222

古典派とケインジアンの戦いが今も続いている─229

合理的期待学派は狂信者たちである─234

現金や金を信じることをケインズから学んだ─241

「情報の非対称性」とは、始めから結果を知っている人間がいるということ─252

銀行の不良債権問題に蓋をし続けていることが致命傷になる─254

本当は、金融市場でクラウディング・アウトが起きている─260

 

6    ピケティの『21世紀の資本』はアパート経営の話だった

収入の20倍が資産価格になるという「副島隆彦の法則」─264

ピケティの資本主義の第一基本法則からあらゆる経済問題が解ける─281

経済学は数学と物理学から発生した学問である─285

「資産は所得(年収)の6倍だ」と言い切ったところがピケティのすごさ─295

労働所得と資本所得は7対3で決まっている─298

ピケティが結論で提案している富裕層課税は間違っている─304

 

 

あとがき─308

巻末付録 吊り上げ相場の注目株32銘柄─311

 

 

 

あとがき

 

 この本を書き上げる段になって、私はようやくはっきり分かった。

 

 アベノミクス(安倍首相の経済政策)というのは、株バブル(および国債バブル)と土地バブルの両方を起こすことだ。この資産バブルを人為的に作って、無理やりでも国民心理にインフレ期待の人工の波を起こして、人々がどんどん消費して贅沢品を買うように仕向ける。そうすることで、景気回復を達成するという計画である。すべてはアメリカの指図、命令のままに行われている。

 

 こんな当り前のことを私は今頃、遅れて分かった。だがここに到達するまでに私は激しく辛吟した。

 

 資産バブルが全国(いや世界中)に波及し、景気(経済)は必ず回復すると狂信して、政府自ら株の吊り上げと都心の土地の値段(地価)の吊り上げに狂奔している。

 

 しかし「2%のインフレ(にする)目標」は丸2年たったが達成しなかった。責任者たちの責任が問われている。

 

 私は、この本でアベ(ABE)ノミクス(Asset Bubble Economy)を創作して日本に押しつけたアメリカの経済学の理論家たちのおかしさを追跡してなんとか解明できた。

 

 それは、小室直樹先生の遺作となった4冊の経済学の本を、本気で読み直したからである。先生は大事なことをすべて書き遺してくれていた。先生の霊が私を導いた(第5章)。

 

 今の安倍政権の金融政策の何が間違っているかを、この本で大きく解明することができた。私の方も土壇場まで追いつめられたが、なんとか大きな謎解きをすることができた、と思っている。

 

 評判を取ったトマ(ス)・ピケティの大著『21世紀の資本(論)』からも私は巨大な真実を学んだ(第6章)。やはりこの本は大変な本である。ピケティ本は、今や幻想と虚栄の神殿と化したアメリカ経済学を根底から掘り崩す核爆弾級の破壊力を持つ本である。おそらく日本では、今のところ私だけがこのことに気づいている。今はもう多くは書けない。一点だけ書く。

 

 ストック(資産)とフロー(所得)において、フロー面(消費者物価、インフレ率、GDPギャップ、失業率などの指標)ばかりに囚われてきたアメリカ経済学界のオカシさを、フランス人のピケティは、正しく大きくストック面(土地住宅価格。即ち不動産資本)の重要性からはっきりとつかみ出した。おそらくピケティ本からの根源的攻撃を受けてアメリカ理論経済学は自滅に向かうだろう。それはアメリカ帝国の崩壊と軌を一にするものだ。

 

 この本を書くに当たって、共に難行苦行と言うか、延々と果てしなく議論してくれた徳間書店の力石幸一編集委員に深くお礼を申し上げる。

 

2015年4月

 

副島隆彦 

(終わり)










 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は経済のお話を書きたいと思います。私は経済学が苦手です。大学の経済学の授業でも半分寝ていたような人間です。ですから、経済の話は避けていたのですが、今回挑戦してみたいと思います。まずは思い出話から始めたいと思います。

 

 私が小中高時代を過ごしたのは、1980年代から1990年代にかけてです。私は九州の地方都市で育ちました。大人たちとは全く別の子供の世界、大人たちの顔を曇らせたり、笑顔にしたりするものと言えば、テレビのニュースでした。私が小学校時代に、久米宏司会の「ニュースステーション」が始まりました。それまでのニュース番組とは何か違うな、面白いなと思って大人たちと一緒に見ていました。フィリピンの民主化や第二次天安門事件など固唾を飲んで見守っていたことを思い出します。

 

 そんな中で、大人たちがいつも話をしているのが景気の話でした。バブルが始まる前兆があったのでしょう。地方都市の公務員の家でも株の話が出るようになりました。「●●さんはNTTの株を買って大儲けしたらしい」なんてことを聞いていました。

 

 ニュース番組の最後には、東京証券取引所の平均株価、そして円ドルの為替レートがいつも流されていました。株価が上がれば大人たちは喜んでいました。それでも子供ながらに不思議なことがありました。「円安、円高」という言葉でした。「238円から237円になったのに、“円高”になったと言って大騒ぎする」大人たち。数字が小さくなっているのに「円高」ってなんなのだろうか?と思って親に聞いても、子供に分かるように説明してくれませんでした。

 

 それでも小学校の高学年になって少し知恵がつくと、「価値」というものが少しわかるようになり、そして、日本という国が「加工貿易」で世界の中でも豊かな国となっていると習うようになりました。時代は、日米貿易戦争で、日本製の自動車やラジオがハンマーで壊されていました。

 

 「日本は原材料を輸入して、それをテレビ、ラジオ、自動車、船、鉄鋼などに加工して、それを輸出してお金を稼いでいる」ということを習いました。そして、「円安だと輸出した先の国で製品が安く売れる」ということも分かりました。だから、円が少しでも高くなると、自分たちのせいではなくて製品の値段が上がるから円安が良いのだ、ということを理解できるようになりました。そして、得意げに友達にこのことを説明していました。今から考えると、汗顔の至りです。

 

 私たちの世代くらいまでは、「日本は加工貿易の国で、円安は良くて、円高は悪い」ということをある意味刷り込まれてきたと言えると思います。「日本は世界中に工業製品を輸出してお金を稼いでいる。輸出あってこその日本なのだ」ということを私たちは教えられてきました。確かに世界各国に行って日本人と分かれば、その国の人たちから「ソニーの製品は素晴らしいね」「トヨタの車は故障がなくて良く走るよ」と賛辞を寄せられることが多いです。自分は全く関係ないのだけれど、それは別にして嬉しくなることは事実です。

 

 しかし、日本はどうも「輸出主導型経済」ではなくなっているようです。1960年代からの奇跡の高度経済成長の幻影はあるのですが、日本は先進国となり、製造業ではなく、サーヴィス業がその割合をどんどん増やしているようです。

 

※厚生労働省の報告書のアドレス↓

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-4_02.pdf

 

※2013年10月7日付東洋経済オンライン 野口 悠紀雄(早稲田大学 ファイナンス総合研究所顧問)「輸出主導型ではなくなった日本経済 リーマンショックから5年、世界はどう変わったか」のアドレス↓

http://toyokeizai.net/articles/-/20873

 

 もちろん、日本の製造業がこれからも頑張ってもらいたい、海外で売れる製品を作ってもらいたい、外貨を稼いできてもらいたい、というのはそうなのですが、新興諸国の追い上げということも考えていかねばなりません。

 

 そうなると、「輸出(外需)主導」ではなく「内需主導」型経済ということになりそうです。ただ、内需主導経済で経済の規模が大きくなるのかということは分かりません。ですから、外需に偏っていたものを内需にしていくということなのだと思います。また、内需主導経済というのはよく分からないものです。

 

 それでも現在の日本は、アベノミクスで株価は上がっています。そして、円安によって企業の売り上げは良くなっていると言われています。しかし、円安によって輸入品の値段が上がり、物価はどんどん上昇しており、給料の伸びが追いついていない状況です。株価が上がっても、株式を頻繁に取引する人たち以外にはまず関係のない話です。日本国民の8割以上は株式取引をしたことがないのです。

 

 「円安にして輸出を増やす」ということも、今の日本では難しいです。なぜなら、1980年代から円高基調になって、各メーカーは生産拠点を海外に移しているからです。日本国内にも製造工場がありますが、日本列島全体が生産工場ということはありません。円安で輸出を増やすということはできるはずがありません。

 

 また、日本人の人件費も高度経済成長のおかげで伸びていきました。どんどん豊かになりました。簡単に言えば、昔は日本人の給料は世界に比べても安くて、その上高品質の製品を作ることができたので、低価格で良いものを世界中に売りまくることができました。しかし、今は人件費が上昇し、円安をいくら進めてもそこまで低価格にはできないのです。

 

 それでは、円安で輸出を増やすということをやるためには何が必要になるかというと、低賃金で働く人々です。アメリカにおける移民の立場はまさにそうです。しかし、日本ではなかなか移民受け入れは難しいのが現状です。そうなると低賃金層は日本国民の中に作らねばなりません。

 

 現在のアベノミクスがやろうとしていることは、低賃金層を生み出そうということです。お金持ちがいきなり低賃金層になることはありませんから、中間層から脱落していく人たちが増えていきます。低賃金で働かざるを得なくなる人たちが増えていきます。

 

 私がこの部録の記事で指摘したように、中間層は民主政治体制(デモクラシー)にとって重要な要素となります。中間層がいなくなれば、民主政治体制は脆弱になります。

 

 若者の非正規雇用やマイルドヤンキーといった現象はこうした中間層がいなくことを示しています。お金持ちと貧困層の二極化が進みます。そして、貧困層は政治になど関心を持たなくなります。そうなれば支配者層とつながるお金持ちたちに都合の良い支配体制となります。それが自民党の一強多弱時代です。

 マルクスの理論では、資本主義がどんどん発展していくと、格差が拡がり、労働者(プロレタリアート)階級がブルジョア階級を倒す階級闘争(クラス・ストラグル)にまでいくということになります。しかし、現在の日本では、そうした自分の状況に関心を払うことも、政治に関心を払うこともできない状況になっています。また、低賃金層の団結も妨げられ、孤立化も進んでいます。

  
私は、財政の再配分機能を利用して、つまり、人々の家計にお金が直接入るような政策を行うことを支持します。 

 

 今回の総選挙で自民党の一強時代はしばらく続きそうです。そうなれば、日本はますますお金持ちと低賃金層の二極化、中間層の脱落が進んでいくことになります。そうした状況を変えるためにも、野党勢力にはしっかりとしていただきたいと思います。

  

(週刊誌記事転載貼り付けはじめ)

 

安倍自民大勝もアベノミクスが落とし穴

 

(週刊朝日 20141226日号掲載) 20141219()配信

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/1.htm

http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20141219-2014121700087/2.htm

 

 選挙で予想通りに大勝した自民党は、来週にも新内閣を発足させ、向こう4年間の長期政権をスタートさせる。

 

 憲法改正まで見据え、着々と足場を固めていく安倍首相。だが、今後の政権運営には、多くの落とし穴が待ち構えている。まずは年明けにも想定される原発再稼働だ。

 

 今回の衆院選で首相はあまり触れなかったが、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)は早ければ2月にも、再稼働する。他の原発も原子力規制委員会の基準を満たせば再稼働していく。

 

 今年7月の集団的自衛権行使を認めた閣議決定に沿った安全保障関連法案も来年の通常国会に提出される。自民党の高村正彦副総裁は「すぐに安保法制の大枠を作る作業に入りたい」と話しており、作業を加速させる考えだ。

 

 関連法案の審議の時期は統一地方選後になりそうだが、自衛隊がこれまでより危険にさらされるだけに、国会の内外で再び大きな反発が起こることも予想される。

 

 安倍首相が政権公約集の表紙に掲げた「景気回復」も足元は心もとない。

 

 選挙期間中、今年7月から9月までのGDPの改定値が発表されたが、速報値の年率マイナス1.6%からマイナス1.9%に下方修正。4月の消費税8%への増税は、結果として内需を冷え込ませ、予想以上に深刻になっている。

 

 自民党ベテラン議員は言う。

 

「アベノミクス3本目の矢の成長戦略も妙案がなく、みな困り果てています。すでに掲げた医療・雇用の規制緩和や農業改革などは、自民党の支持団体の抵抗にあってスムーズに進んでいない。

 

1月以降に景気回復が進まなければ、国民の期待は一気に怒りに変わるでしょう。統一地方選にも打撃となります」

 

 同志社大学大学院の浜矩子教授は「来年1月以降の経済はさらに厳しくなる」と予測する。

 

「消費や設備投資は低調で、どの指標を見ても景気上昇のきっかけが見られない。物価上昇の影響で実質所得もマイナスになっている。円安で輸入製品の価格が上がり、生活コストも上昇しています。これでは消費が伸びるはずがありません。実際に痛みを感じている中低所得者層に直接、働きかけることをしないと、経済はなかなか回復しない」

 

※週刊朝日  20141226日号より抜粋

 

(週刊誌記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)








 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 明日、2014年12月2日に総選挙が公示されます。投開票は2014年12月14日となります。現在までのところ、定数435に対して、約1130名の方々が立候補を予定しているそうです。立候補者数は前回よりも少なくなるということです。

 

 朝日新聞と毎日新聞が世論調査の結果を発表し、記事にしています。どちらも共通しているのは、「自公政権に対しては批判的な人たちの数は多いが、野党に対しても批判的で、信頼が持てないので、結局のところ、自民党や公明党に投票する人が多い」ということです。

 

 「アベノミクスがうまくいっているのか、うまくいくのか実感のところで分からない、中国や韓国には腹が立つけど争ってばかりでも良くない」というのが多くの方々持っておられるところだと思います。それでは野党に任せるのかとなると、2009年の時の期待感と昂揚感が2012年には絶望感から怒りに発展してしまったことを経験しているので、そこまで投票したい政党もないし、野党にも不満があるんだよな、というところだと思います。

 
 特に民主党政権に期待した人々は大きく裏切られました。菅直人、野田佳彦と2人の総理大臣がやったことは結局、自民党と変わらないではないか、そして、民主党政権でしかできないことをやろうとした鳩山由紀夫と小沢一郎両氏は党を追われてしまいました。菅、野田、岡田、前原、枝野、長島といった民主党の政治家たちは、民主党による政権交代を「あらかじめ裏切られた」政権交代にしてしまった張本人たちで、竹下登が言ったように「罪、万死に値す」なのに、野党転落後には何もしないで、その後、チャンスが来ると美味しい場面にはのこのこと出てくる、恥知らずな面々です。それだからこそ政治家として生き残ってこれたと言える訳ですが。
 

 2012年の選挙について言えば、日本の野党は、穏当ではない表現をすると「殺されてしまった」のです。2012年12月13日付の雑誌『東洋経済』のウェブサイトに「総選挙が「左派」に最後のとどめを刺す マイケル・グリーン氏が語る日本政治」(http://toyokeizai.net/articles/-/12101)と題する記事が掲載されました。マイケル・グリーンと言えば、本ブログや拙著をお読みの方々であればよくお分かりのように、「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる、アメリカの日本操り人材の主要メンバーです。

 

 マイケル・グリーンをはじめとする「ジャパン・ハンドラーズ」の凶暴派は、ブッシュ前政権以来、日本の右傾化を進めていました。そして、2012年12月の総選挙で安倍氏率いる自民党が勝利することが総仕上げとなりました。そして、秘密保護法と集団的自衛権の容認が実現しました。

 

 しかし、アメリカが困ってしまったのは、薬が効き過ぎたと言うべきか、安倍政権が中韓との関係を悪化させ、歴史の見直しに踏み込もうとしたことでした。マイケル・グリーンが記事の中で言っているように、「中道右派への回帰」ではなく、「戦前の国家主義の亡霊の復活」が起きてしまったのです。集団的自衛権の容認や秘密保護法はアメリカにとって利益になることですから、「安倍氏は中道右派だ」とか強弁もできますが、歴史の見直しは、アメリカが戦後に築いた世界システムに対する公然たる挑戦ですから、アメリカにとっては容認できません。

 

 そして、現在のオバマ政権では、ヒラリー派が勢力を伸ばしていると言っても、オバマ大統領が最高責任者ですから、「安倍を追い落とせ」と命令を下したのだろうと思います。そして、自分が大統領になるにあたり、最後のダメ押しとも言うべき支持表明をしてくれた、ケネディ家の現当主であるキャロライン・ケネディを日本に大使として送り込んであり、ケネディ大使が今回の総選挙に絡んでいるのだろうと私は考えます。

 

 安倍晋三首相はどうも解散などする気はなかったのだと思いますが。周囲にお膳立てされ、「今のままでは参議院で自民党が過半数を取っている訳ではないし、憲法改正はできないのだから、まぁ270議席くらいにはなるから解散をしたらよいですよ」と乗せられたのだろうと思います。

 

 安倍首相が衆議院解散を表明した記者会見で、「代表なくして課税なし」と言う言葉を使った時に、私は奇妙だなと思いました。消費税増税について信を問う、ということと、このアメリカ独立革命の発端となった言葉との間に何の関係があるのかといぶかしく思いました。

 

 しかし、官邸の演説原稿ライターごときがこのようなことを書くとは思いません。私は、この言葉の使用に、アメリカの意図と言うか、関与があるような気がして仕方がありません。安倍晋三首相はこの言葉を意図的に「使わされた」のだろうと思います。

 

 しかし、2012年に殺されてしまった野党はまだまだ勢いを回復していません。「分裂していては共倒れだ」ということで共闘を進めていますが。これでは選挙後がどうなるのか分かりません。私は「共闘→再編→再建→奪取」というフェーズをしっかりと踏んでいくことが重要であり、今回の選挙で野党は、「共闘」によって「成功体験」を獲得し、「再編」のフェーズに進んでいくべきだと考えます。

 

 今の状況では、自公が過半数(238)は確保するでしょうから、2016年の参議院議員選挙に向けて「再建」、そして次の総選挙で政権の「奪取」を目指して欲しいと思います。これは短兵急ではできませんし、その間に事態がもっと悪くなるかもしれません。そのためにも今回の選挙では「与野党伯仲」状況が作り出されることを願っています。

 

 デモクラシーの良いところは、私たち有権者に数年に1度ですが反省し、それを活かす機会が与えられているところです。それを活かそうではありませんか、そのために選挙に行き、投票しましょうと訴えたいと思います。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「<本社世論調査>「政権維持を」52% 「思わない」40%」

 

毎日新聞  121()235分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141201-00000003-mai-pol

 

 毎日新聞が29、30両日に行った世論調査で、安倍晋三首相が衆院選の勝敗ラインとして言及した「自民、公明両党で過半数」について聞いたところ、自公の与党で過半数をとって政権を維持した方がよいと「思う」と答えた人が52%と半数を超えた。一方で「思わない」も40%に上り、2年間の政権運営に対する有権者の不満ものぞかせた。【松尾良】

 

 自公が政権を維持したほうがよいと思わない層のうち、衆院選比例代表で野党に投票すると答えた人は計51%どまり。内訳は民主党26%、共産党11%、維新の党10%などで、「無回答」が18%いた。自公政権の維持を望まない層が、対抗勢力としての既成野党に必ずしも期待していない、という実態が浮かぶ。

 

 逆に、自公過半数を望む層の中で「自民党に投票する」は66%、公明党は10%で計76%に上る。無回答は4%と1ケタで、態度を決めかねている人は少ない。

 

 衆院選で最も重視する争点は「年金・医療・介護・子育て」が36%で最多。アベノミクスに関連する「景気対策」が24%で続き、九州電力川内原発の再稼働問題で揺れる「原発・エネルギー政策」は6%だった。また「外交・安全保障」と「憲法改正」はそれぞれ5%。第2次安倍政権は集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法の制定などで世論の批判を浴びた。有権者は、より当面の生活に密着した政策を重視していると言える。

 

 衆院選の投票に行くかを尋ねたところ、「必ず行く」が62%で、「たぶん行く」の28%と合わせると90%が行くと答えた。

 

 2017年4月の消費税率10%への引き上げと同時に、生活必需品の税率を軽くする「軽減税率」の導入を目指すとした自民、公明両党の合意については「評価する」が70%と大勢だった。

 

==========

 

●「投票で重視する政策「景気・雇用」47% 朝日連続調査」

 

朝日新聞デジタル 121()57分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141201-00000006-asahi-pol

 

 朝日新聞社は29、30日、衆院選に向けた連続世論調査(電話)の2回目を実施した。与野党が公約に掲げている政策から、投票先を決める際に重視する政策を二つまで選んでもらったところ、「景気・雇用対策」が47%で最も多く、「国会議員の定数削減」33%、「子育て支援・女性の活躍」30%、「消費税の引き上げ延期」29%、「地方の活性化」19%が続いた。「原発再稼働」は15%、「集団的自衛権の行使容認」は12%だった。

 

 比例区投票先を政党名を挙げて聞くと、自民が34%(22、23日実施の連続調査1回目は37%)で、民主13%(同11%)、維新8%(同6%)、共産8%(同5%)、公明7%(同5%)などを依然として引き離している。

 

 さらに、「原発再稼働」をのぞく六つの選択肢を選んだ人の比例区の投票先では、自民が最も多かった。「景気・雇用対策」と答えた人の比例区投票先は自民が43%で、12%の民主などを引き離した。「原発再稼働」と答えた人で最も多かったのは共産の22%で、自民の21%が続いた。

 

 安倍内閣の支持率は40%(連続調査1回目は39%)、不支持率は39%(同40%)だった。

 

 安倍政権が憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認したことを「評価しない」は50%で、「評価する」の32%を上回った。原発再稼働も「反対」が「賛成」を上回っている。しかし、行使容認を「評価しない」とした人や再稼働に「反対」の人でも、比例区投票先は「自民」が最も多かった。

 

 集団的自衛権の行使容認は、安倍内閣支持層や自民支持層の5割超が「評価する」と答えたが、無党派層は5割超が「評価しない」と答えた。原発再稼働については、内閣支持層でも「賛成」「反対」がほぼ並んでいる。

 

 しかし、野党がこうした批判票の受け皿になっているわけではない。集団的自衛権の行使容認を「評価しない」人や再稼働に「反対」の人でも、比例区の投票先は「自民」がともに2割を超え、最も多かった。

 

 批判票が与野党に分散している背景には、集団的自衛権の行使容認や原発再稼働に批判的な人でも、投票先を決める際に「景気・雇用対策」を重視する人が多いことがある。集団的自衛権の行使容認を「評価しない」人や原発再稼働に「反対」の人でも、ともに4割が投票先を決める際に重視する政策では「景気・雇用対策」を挙げた。

 

 安倍首相の経済政策(アベノミクス)については「成功だ」が37%で、「失敗だ」の30%より多かった。11月19、20日の緊急世論調査では「成功だ」30%、「失敗だ」39%で、「成功だ」が増えた。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)









 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 今回は、2014年11月2日に発売となります、副島隆彦先生の最新刊『官製相場の暴落が始まる――相場操縦しか脳がない米、欧、日 経済』(祥伝社)を皆様にいち早くご紹介したいと思います。

kanseisoubanobourakugahajimaru001今の日本政府がやっていることは相場操縦(そうばそうじゅう)である。すなわち、政府による市場の価格操作(マーケット・マニピュレーション market manipulation )である。こんなことを一体いつまで続けられるのか。

 法律違反である相場操縦を、金融市場で政府、国家自身がやっている。先進国、すなわち今のアメリカ、ヨーロッパ、そして日本の3つがそろってやっている。① 株式と、② 債券(金利)と、③ 為替(円・ドル相場、ドル・ユーロ相場)の政府自身による価格操作と統制が行なわれている。明らかに統制経済( controlled economy  コントロールド・エコノミー)である。

 今のところは、この先進国3つの地域の思うがままである。だからこのあとも円安(1ドル=116円ぐらいまで)が進み、株高(日経平均1万7000円台


 アメリカのジェイコブ・ルー財務長官の行き過ぎた円安の是正を求める発言を受け円高が進み、期待外れのアメリカの経済指標によるアメリカの株式市場の下落の影響を受けた株安が起きています。

 2012年12月に成立した第二次安倍晋三内閣は、「アベノミクス」を掲げ景気対策を行ってきました。その効果もあって株式市場が持ち直し、景気は良くなりつつあるということになっていました。しかし、その実態は、全く別ものであったということが暴露されつつあります。

 大きくは世界経済や日本経済、小さくは家庭の経済状況に関心のある多くの方々にとって、本書は導きの書となります。是非、お読みください。

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kanseisoubanobourakugahajimaru001


まえがき

 

 今の日本政府がやっていることは相場操縦(そうばそうじゅう)である。すなわち、政府による市場の価格操作(マーケット・マニピュレーション market manipulation )である。こんなことを一体いつまで続けられるのか。


 法律違反である相場操縦を、金融市場で政府、国家自身がやっている。先進国、すなわち今のアメリカ、ヨーロッパ、そして日本の3つがそろってやっている。①
株式と、② 債券(金利)と、③ 為替(円・ドル相場、ドル・ユーロ相場)の政府自身による価格操作と統制が行なわれている。明らかに統制経済( controlled economy  コントロールド・エコノミー)である。


 今のところは、この先進国3つの地域の思うがままである。だからこのあとも円安(1ドル=116円ぐらいまで)が進み、株高(日経平均1万7000円台まで)が演出される。しかし、はたして金利(国債の値段)までを操
(あやつ)ることはできるだろうか。

来年に入ったら、ニューヨークで株式の暴落が起きるだろう。無理やり作ったNYダウ平均株価1万7000ドル台は、1万5000ドル台まで落ちるだろう。


 アメリカのFRB(米連銀準備
(リザーブ)制度理事会)のジャネット・イエレン議長は、金融政策における〝タカ派〟の本性をついに露(あら)わにした。金融緩和(クオンテイテイテイブ・イージング)をこの10月でやめる、と終了宣言した(7月9日)。世界的に強いドル、すなわちドル高、株高演出の政策を強行しつつある。同時に「金利を徐々に上げる」と言う。はたしてそんなことができるのか。

「量的緩和をやめることなんか、できるものか。イエレンを痛めつけてやれ」という動きがニューヨークで起きている。アメリカにも、企業経営者たちが本業ではない〝金融バクチ〟で会社の利益を捻(ねん)(しゆつ)している者たちがたくさんいる。経営者たちは金利が少しでも上がると資金繰()りに響く。
 

実は、アメリカの経済政策(財政政策(フイスカル・ポリシー)と金融政策(マネタリー・ポリシー)の2つで経済政策(エコノミツク・ポリシー))の本当の主役はイエレンではなくて、米財務長官(トレジヤリー・セクレタリー)のジェイコブ・ルーだ。真犯人は、こっちなのだ。私たちは騙(だま)されている。いつもいつも、白髪の老婆のイエレン議長の、顔と声明文だけをニューズで見せられて、囮(おとり)作戦(レッド・へリング red herring )に引っかかっているのである。
 

ジェイコブ・ルー率いるアメリカの財務省にしてみれば、絶対に金利を上げることはできない。金利が少しでも上がると、巨額の米財政赤字(ファイナンシャル・デフィシット)を返済することができなくなる。利子分の支払いができなくなる。予算が組めなくなる。だからイエレンが言う「アメリカ経済を正常化させるために金融市場に金利を付ける」とは、ウソである。金利を上げれば企業経営者たちが嫌がる。資金が株式市場から逃げる。すると株式の暴落が起きるはずなのだ。

 

日本では8月20日から急に円安・ドル高が起きて、1ドルは=110円になった。2003年4月のブッシュ・小()(いずみ)の時とそっくりだ。イエレンは10月末で金融緩和策(じゃぶじゃぶマネー)を全面停止(終了)して、「政策金利(短期金利、FFレート)を来年中には(相当の時期に)上げる」と言い出した。米、欧、日の先進国3つは、もがき苦しむように今のデフレ経済から脱出しようとしている。が、できるはずがない。財政赤字の額が巨大すぎる。イエレンの判断はどう考えても筋が悪い。慎重に慎重に、そろりそろりと「金利が上がっても株式が暴落しない」ようにしている。真犯人の米財務省は金利が上がると困る。日本財務省も同じだ。相(あい)()(じゆん)した愚(おろ)かな政策に突っ走っている。


 アベノミクスの安倍晋三(あべしんぞう)首相が、いくら「デフレ経済からの脱却」と言っても、できるわけがない。今年いっぱい年末までは、〝官製(かんせい)株バブル〟で株高にして投資家や経営者たちを浮かれ騒がせる。それで
12月中旬に消費税の追加増税(10%へ)を決める。だから来年は株が暴落する。どれだけGPIF(ジーピーアイエフ)の弾(たま)が保つかである。


 アメリカは、アメリカ市場に、ヨーロッパからの資金と新興国や日本の資金も吸い上げて、掻
()き集めることで自分だけ生き残ろうとする。イエレン(アメリカ)は異常な金融緩和策をやめて、形(かたち)(じよう)だけ正常な経済に戻ろうとする。しかし内心はビクビクものである。今のような超低金利(ゼロ金利)で、やっとのことで経済を回している仕組みが、いつまでも続くわけがない。彼ら自身が死ぬほど分かっている。それでもデフレ(不況)と低金利は続く。
 

だから年末までは、日本でも低金利(ゼロ金利)を原因とする株式値上がりの浮かれ騒ぎが続く。それを安倍政権自身が〝相場操縦〟で、価格操作して吊り上げる。


 私は、資産家と投資家の皆さんに、暴落が来るので利益が出ている今のうちに、ガラが来るまえに上手に売り逃げてください、と助言する。

 

 金融・経済の本が、書店の棚にトンと並ばなくなった。金融本の書き手たちが読者の信用を失()くして全滅したのだ。私はただひとり、金融予測本を書いて世に問い続ける。

 

 2014年10


副島隆彦

 

 

あとがき

 

 今年はゆうちょ・かんぽの資金を30兆円ぐらいアメリカに送った。今やボロクズ債である米国債を買った形にして、だ。だから円安が起きたのだ。私以外の言論人は、誰もこのことを書かない。


 私はこの本で、米、欧、日の3つの先進国の政府自身による、違法な市場操作の実態を暴き立てるように書いた。彼らのやりたい放題の悪
(あつ)(こう)を徹底的に説明した。日本政府(安倍政権)が喧伝(けんでん)する「景気回復」はなかった。私たちの暮らしは苦しいままだ。日本はますます貧乏になっている。
 

この本の英文タイトルは、 Governments(ガヴアメンツ) Market(マーケツト) Manipulation(マニピユレーシヨン) である。マニピュレーションとは、①機械や飛行機を巧(たく)みに操縦すること。② 事件、問題をうまく処理すること。③ 人々や世論を操(あやつ)ること。④ 株式や通過を人為的に操作すること。⑤ 帳簿や報告をごまかすこと。⑥ 医学用語としては、患者を触診すること、だ。このように)修館『ジーニアス英和辞典』にも書いてある。
 

米、欧、日の政府による金融市場の価格操作、すなわち相場操縦は、すでに限界に達しつつある。


 市場
(マーケツト)を支配(コントロール)しようとする者たちは、必ず市場から復讐される。どんな権力者でも、独裁者でも、ローマ皇帝でも、市場を支配しつくすことはできなかった。日本の徳川(とくがわ)八代将軍吉宗(よしむね)は、米(こめ)相場を管理しようとして「米将軍(こめしょうぐん)」と呼ばれたが、大失敗した。

 

 最後に。この本も祥伝社の岡部康彦編集長と二人三脚で作った。夜を日に継いで書き続けて、18日間で書き上げた。記して感謝します。

 

副島隆彦


(終わり)

 












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