古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アメリカ

 古村治彦です。

 日本の外交官の最高の出世は外務事務次官になって駐米大使になることだと聞いたことがある。世界各国の大使(ambassador)になるだけでも大変なことで、また、その手当なども大変な額で、数カ国の大使を務めれば都内の一等地に豪邸が建つということだそうだ。
 大使というのは海外で自分が属する国を代表する存在であり、特命全権大使(ambassador extraordinary and plenipotentiary)と正式には呼ばれるが、この大使の判断で戦争も始めることができる。西側の先進諸国ではほとんどの場合、職業外交官が昇進して大使に週にすることになるが、アメリカでは政治任用(political appointment)で大使になることが多い。

 駐日本アメリカ大使について見てみれば、職業外交官出身ではなく、古くは副大統領、連邦下院議長などを経験した大物政治家が就任しているし、エドィン・O・ライシャワーのような学者も登用された。現在のラーム・エマニュエル大使はバラク・オバマの側近で、2008年の米大統領選挙でオバマ陣営を取りまとめ、オバマ政権1期目前半では大統領首席補佐官を務め、それからオバマの本拠地シカゴの市長を務めた。

 下の記事では、ジョー・バイデン政権における政治任用の大使たちがどれくらいの献金を民主党とバイデンにしてきたかということをテーマにして記事にしている。これはバイデン政権だけではないのだが、歴代政権では、大口の献金者たちがアメリカ大使に登用されてきた。その割合はドナルド・トランプ政権では4割以上、オバマ政権で3割以上だったということだ。バイデン政権も同様に3割が政治任用だ。

 猟官制度(spoils system)とは公職の登用を政治的な理由でおこなうことだ。選挙で政権が変わると公務員が交代するということを意味する。アメリカでは民主、共和両党で政権交代(大統領の交代)が頻繁に起きるが、その度に公務員(幹部クラス)が交代になる。それはアメリカ大使にも及ぶ。その際に、選ばれる人物は各党に多大な「貢献」をした人物ということになる。その貢献とは具体的には政治献金ということになる。「spoils(スポイルズ)」とは英語で「獲物」という意味である。献金の「獲物」が大使職ということになる。

(貼り付けはじめ)

それで、あなたは大使職を買いたいのですね(So You Want to Buy an Ambassadorship

-アメリカ合衆国政府は西洋諸国の政府で唯一、最高の外交官職位で巨額の献金者たちを報いる政府である。

ロビー・グラマー筆

2023年1月24日

『フォーリン・ポリシー』誌.

https://foreignpolicy.com/2023/01/24/campaign-donor-ambassadors-biden-diplomacy/

それで、あなたはアメリカの大使職を買いたいのですね?大きく言って、そのためには2つの方法がある。

1つ目は、政策や外交の分野でキャリアを積み、外交に関わる経験をたくさん積むことだ。2つ目は、お金を持つことだ。多くの資金を保有することだ。

大統領選挙に出馬して戦うためには実に巨額の費用がかかる。両党の大統領選挙候補は、選挙運動を支えるために大規模な資金調達マシーンを必要とするが、その必要性はより高まっている。共和党政権でも民主党政権でも、大統領選挙候補に直接寄付をしたり、当選した大統領候補のために何十万ドル、何百万ドルもの資金を集める手助けをしたりする、「取りまとめ役(bundlers)」と呼ばれる懐の温かい選挙資金提供者たちを利用し、その見返りとして大使のポストを提供するというパターンが最近になってできている。

歴代政権は、これらの巨額の寄付をして大使職を手にした人々について、外交政策の分野以外の、慈善事業、金融、ビジネス、政治、その他のキャリアを通じて必要なスキルや経験を持っていると主張してきた。

元外交官を含むこの慣行に対する批判は、「薄っぺらな」汚職の一形態であると考えられている。

ジョー・バイデン米大統領は、ドナルド・トランプ前大統領ほどではないにせよ、巨額の政治資金寄付者たちを大使のポストに起用する傾向を続けている。2020年の選挙期間中において、大統領選挙民主党予備選挙に出馬した、ある候補者はこの慣習を完全に禁止するよう求めた。

トランプ時代の大使の約44%は政治任用者(political appointees)であり、その多くは懐の温かい選挙資金提供者たちであるのに対し、バラク・オバマ前米大統領時代は約31%、ジョージ・W・ブッシュ前米大統領時代は32%だった。バイデンは、政治任用大使の数を全体の30%程度に抑えると述べている。この慣行は、米国務省内でしばしば摩擦や怒りの種となっている。何十年も外交政策に携わってきたキャリアある外交官が、ハンドバッグの企業家や昼のメロドラマのプロデューサー、自動車ディーラーのオーナー、あるいは超富裕層の選挙資金提供者とたまたま結婚したコンサルタントなどに道を譲られ、大使としての重要な任務に就くことがある。

政治任用の献金者大使とキャリア外交官大使のどちらが優秀かについては、最も不満のあるキャリア外交官でさえもそのように述べているが、明確な答えはない。政治献金者大使の中には、ホワイトハウスとの密接な関係や、国務省のキャリア外交官大使にはほとんどない政治的コネクションを持ち、結果的に非常に有能で、外国政府から求められている人さえいる。それに比べ、キャリア外交官の中には、何十年も経験を積んで、最も人気のある上級職に就いたにもかかわらず、大使のポストで苦労している人もいる。

しかし、巨大な資金提供者に大使のポストを与えるというのは、他の西側諸国の政府にはない慣習であり、中国の台頭によりアメリカが紛れもないグローバルリーダーとしての役割から脱落するにつれ、より厳しく問われている。寄付者たちは通常、西ヨーロッパ、南アメリカ、カリブ海諸国の国々で知名度の高い重要な大使の任に就くが、キャリア外交官はサハラ以南のアフリカ、中東、中央アジアでそれほど重要でない任に就くことが多い。

ワシントンの最も近い同盟国は、この話の対照的な部分を提供している。最も重要な外交ポストである駐ワシントン大使あるカレン・ピアスは、40年以上にわたってイギリスの外交官を務め、過去には国連大使やアフガニスタンとパキスタンの特使を務めた。アメリカの駐英大使ポストには、投資銀行家、石油会社幹部、元提督、自動車ディーラーのオーナー、大統領の側近、億万長者の相続人などが就任してきた。アメリカはこれまで、外交官として本格的に駐英大使を務めたのは1人だけである。それは、レイモンド・サイツで、1991年から1994年まで在英大使を務めた。

『フォーリン・ポリシー』誌は、バイデンへの主要な寄付者が大使に任命された5カ国を調べるために、非営利の透明性専門団体「OpenSecrets.org」を通じた情報公開と選挙寄付の書類を精査し、彼らが寄付した既知の金額を合計したものである。

簡略化のため、2017年から2020年の選挙期間中において、各大使が民主党またはバイデンの選挙運動に直接寄付した確認金額のみを取り上げた。可能な限り、また情報が入手可能な場合に、本誌は過去20年間の民主党や選挙運動に寄付された、政治活動委員会(PAC)を通じて送られた、または取りまとめられた資金に関する情報を含め、さらなる内容を追加した。

注意点:アメリカの政治制度における選挙寄付は複雑なため、個人がいくら寄付したかを評価することが難しいケースがある。寄付者は、個人として候補者の選挙運動に直接寄付したり(法律で厳しく制限されている)、大統領の選挙運動を支援するPAC、無制限の政治支出を行えるいわゆるスーパーPAC、地方や国レベルの大統領の政党、あるいは大統領の就任初日に行われる豪華なイベントのための大統領就任資金にさえ寄付したりする。また、これらの寄付は大使の配偶者の名前で行われたり、個人として関連団体を通じて行われたりすることもある。

それでもバイデン政権は、他の政権と同様、大使のポストを「売り込む」のではなく、海外の適材適所をマッチングさせると主張している。バイデンは選挙期間中に「私は可能な限り最高の人材を任命する。誰も、実際には、彼らが貢献したものに基づいて、任命することになるだろう」と約束した。

ホワイトハウスの報道官は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、バイデンは「世界中で私たちの外交政策課題を遂行する大使を選ぶことを非常に真剣に受け止めている」と述べ、以下の人物を含め、彼の選んだ全ての大使たちは「彼(バイデン)が長年共に働き、信頼してきた経験豊かな人物」であると特徴づけた。

ホワイトハウス報道官はまた、バイデンが大使に任命したキャリア外交官以外の大使の例として、トルコ大使には元米連邦上院議員のジェフ・フレーク、NATO大使には大西洋横断安全保障の専門家であるジュリアン・スミスを任命したことを挙げた。

それでも、バイデンが大使に選んだ他の20人近くは、「偶然にも」民主党に多額の資金を集めたり寄付をしたりした人々である。バイデン時代の大使のポストに値札をつけるとしたら、以下のようになる。

●スイス:41万9200ドル

バイデン政権のスイス大使であるスコット・ミラーとその夫は、2020年のバイデン当選を支援するファンドに36万5000ドルを寄付し、ミラー自身も2017年から2020年にかけて、民主党とバイデンの選挙運動に合計5万4200ドルを直接寄付していることが、各種報道と「OpenSecrets.org」の選挙寄付データから判明した。しかし、ミラーと夫の合計では、2010年以降、民主党の候補者や活動に対して約360万ドルを寄付している。ミラーは、デンヴァーに本拠を置くUBSウェルス・マネジメント会社の元副社長である。また、夫のティム・ギルは、LGBTQの権利に関する主要な活動家であり、慈善家でもある。2016年には、当時の民主党大統領候補ヒラリー・クリントンの選挙を支援するために、約110万ドルを寄付している。ミラーは2021年12月にバイデン政権のスイス大使に就任することが決定した。ホワイトハウスの報道官は、大使に指名された理由として、ミラーの「LGBTQ擁護活動や慈善活動のキャリア」を挙げている。

●イギリス:65万6980ドル

バイデンは、長年の民主党献金者で元駐フランス米大使のジェーン・ハートリーを駐イギリス米大使に起用した。「OpenSecrets.org」の選挙寄付データによると、ハートリーは2017年から2020年の選挙期間中において、民主党に64万5780ドルを寄付し、同時期にバイデンに特に1万1200ドル寄付した。しかし、この数字は、ハートリーが全体としてどれだけの資金を民主党に送金したり、取りまとめたりしたかを完全に網羅している訳ではない。バイデンが副大統領を務めていた2007年から2012年の間に、彼女はオバマの選挙運動のために約220万ドルを集めたと報じられた。ハートリーはバイデン政権では数少ない上級外交官の経験を持つ政治任用大使であり、ホワイトハウス報道官は彼女をロンドンでのポストに指名したバイデンの決定を擁護するためにこの点を挙げた。キャリアを通じて民主党、企業放送会社、コンサルティング会社で働いたハートリーは、2014年から2017年までオバマ大統領の駐フランス・駐モナコ大使を務めた。

●カナダ:51万4378ドル

コムキャストの元トップ幹部でロビイストのデイヴィッド・コーエンは、フィラデルフィアの政治と慈善活動で長年活躍していた。「OpenSecrets.org」のデータによると、2017年から2020年の選挙期間中で、コーエンは民主党とバイデンに51万4378ドルを寄付した。

ただし、この数字は上限ではなく下限であり、コーエンはバイデンの2020年の選挙運動のために、大統領選挙のために少なくとも10万ドルの資金調達に協力した個人のリスト、トップ「取りまとめ役」800人の1人としてリストアップされているが、彼がバイデンのためにどれだけの追加資金を取りまとめたかは明らかではない。

●ケニア:91万7599ドル

メグ・ホイットマンは、かつて『フォーブス誌』の「世界で最もパワフルな女性100人」に選ばれたこともある元企業トップで、現在、アフリカで最も経済力があり外交的に重要な国の1つとされるケニアにおいてバイデン政権下で大使を務めている。「eBay」とヒューレット・パッカードの元CEOであるホイットマンは、かつて共和党の献金者であり、2010年にカリフォルニア州知事選に共和党から立候補したが、トランプと大統領選挙の共和党候補者決定を否定し民主党への支援に切り替えた。2020年のホイットマンは、共同募金委員会である「バイデン勝利基金」に50万ドルを寄付し、それとは別に2017年から2020年の選挙期間中に民主党とバイデンに直接41万7599ドルを寄付した。

ホワイトハウスの報道官は、カナダのコーエン、ケニアのホイットマンの両氏について、「ビジネスにおける優れたキャリアと、海外でのアメリカの経済利益を促進する能力を持ち、それが大使職への抜擢に大きく影響した」と述べている。

●アルゼンチン:14万8630ドル

バイデンは、ダラスの著名な弁護士であるマーク・スタンレーをブエノスアイレスの大使に選んだ。『ダラス・モーニング・ニューズ』紙によると、スタンレーとその妻ウェンディは過去20年間に少なくとも150万ドルを民主党に寄付し、募金活動や選挙寄付の肝いりを通じてバイデンや他の民主党候補の主要な肝いりとして活動してきた。スタンレーはまた、バイデンの2020年大統領選挙の「バイデンのために働く法律家たち(Lawyers for Biden)」という部門を率いて、弁護士の組織化を支援し、大統領の選挙運動のために法的サーヴィスを担当した。2017年から2020年の選挙運動の期間中、スタンレーは民主党に14万8630ドルを直接寄付している。ホワイトハウスの報道官は、スタンレーがバイデンのアルゼンチン大使に選ばれたことについて、「40年にわたる一流の弁護士およびユダヤ人擁護者としてのキャリアを評価した」と説明している。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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古村治彦です。

2月上旬、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はイギリスをサプライズ訪問した。イギリスではリシ・スーナク首相、リンジー・ホイル下院議長、更にはチャールズ国王と会談を持った。ウクライナ戦争が始まって以来、ウクライナを離れる機会がほぼなかったゼレンスキー大統領がイギリスを直接訪問し、これまでの支援を感謝し、更なる支援、特に戦闘機の支援を求めたことには重大な意味がある。それは、「ウクライナ戦争の停戦が困難なのはイギリスがいるからではないか」「日露戦争をアナロジーとして考えると、ウクライナを利用してロシアを消耗させようとしているのはイギリスではないか」ということが考えられるからだ。
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ウクライナ支援について見ていくと、アメリカが圧倒的な割合を占めている。イギリスは2番目だと威張っても、その割合は小さなものだ。NATO分で出しているという主張もあるだろうが、大英帝国だと威張っている割にはその額は少ない。しかし、戦争が始まって以来、イギリス政府関係者は声高に対ロシア憎悪を言葉にしている。
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 西洋諸国はウクライナ支援を行っているが、ウクライナが求めているジェット戦闘機の供与だけは行っていない。また、飛行禁止区域設定も行っていない。これはそのようなことをすれば、供与を行う国々が戦争当事国となり、ロシアから宣戦布告されて、戦争に巻き込まれ、ロシアからのミサイル攻撃(核兵器使用を含む)を受けるという懸念があるためだ。アメリカ国内ではウクライナ戦争の停戦を求める声、ウクライナへの支援を減額するように求める声、ロシアからの天然資源輸入を再開するように求める声が出ている。アメリカとイギリスの間にはウクライナ戦争をめぐる態度で温度差がある。
 戦争を継続してウクライナ領土の再獲得を目指しているヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は今の状態で停戦すれば、国民からの批判に晒されることが考えられる。クリミア半島を含む1991年に独立した際の領土を全て再獲得するまでは戦争を止めることはできない。戦争を止めれば自身の政権も危うい。そうなると、頼るのはイギリスということになる。アメリカはいつ手の平を返すか分からない。イギリスは北海油田の産油を西ヨーロッパに売りつけたいという意向もある。戦争継続はイギリスとゼレンスキー政権の共通の「利益」である。

 戦争では誰が儲かるのか、利益を得るのかという視点から事態を見ていくことも大事だ。そうすれば戦争の別の側面も見えてくる。

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ゼレンスキー大統領が訪英、英首相や国王と会談 議会で演説し戦闘機求める

202328

更新 202329

https://www.bbc.com/japanese/64567813

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が8日、イギリスを訪れ、首相官邸でスーナク首相と会談した。昨年2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ゼレンスキー氏の訪英は初めて。その後、議会で演説し、イギリスの支援に感謝するとともに、戦闘機の供与を求めた。

ゼレンスキー氏の訪英は、イギリス軍がウクライナ兵に実施してきた訓練を、ウクライナの戦闘機パイロットや海軍歩兵にも拡大するとの見方が出ているタイミングで行われた。

ウクライナのパイロットが将来的に北大西洋条約機構(NATO)水準の戦闘機を操縦できるようにする計画は、以前から発表されていた。ウクライナはかねて、これを主要な要請として掲げていた。

首相官邸は、スーナク氏がゼレンスキー氏に対し、ウクライナの重要な国家インフラを標的にするロシアの能力を削ぐ「長距離能力」の提供を申し出るとしていた。

また、イギリスによるウクライナ兵の訓練を拡大し、さらに2万人を対象とする見込みだとした。

イギリスの支援に感謝

ゼレンスキー氏はスーナク氏との会談後、議事堂のウェストミンスター・ホールに移動し、上下両院の議員らを前に英語で演説。「塹壕(ざんごう)の中にいて、ウクライナを敵のミサイルから守ってくれている、戦争の英雄たちの代理として」自分はやって来たのだと述べ、イギリスがウクライナ兵に装備と訓練を提供していることに感謝した。

また、ロシアが侵攻した「初日から」イギリスはウクライナを支援していると強調。ボリス・ジョンソン元首相を名指しし、「ボリス、あなたは絶対に、絶対に無理だと思われていた時に、諸外国を団結させた。ありがとう」と語りかけると、聴衆からは大きな拍手が湧いた。

ゼレンスキー氏はさらに、ウクライナとイギリスの国民は共に、第2次世界大戦で自由を守り抜いたと指摘。「私たちの国民は危機に見舞われた」ものの、粘り強さを発揮したとした。

その上で、「自由は勝利する」、「ロシアが負けるのは明らかだ」と強調し、拍手を浴びた。

戦闘機を求める

ゼレンスキー氏は演説で、戦闘機を「自由のための翼」と表現。ウクライナへの供与を、英議員らと世界に対して要望した。

ロシアが今月後半にも新たな攻勢をかける見通しの中、西側諸国はウクライナへの支援をどう増強するか検討している。

イギリスは戦闘機の供与について、「現実的ではない」としている。スーナク氏の報道官は先週、英軍の戦闘機は「極めて高度で、操縦を覚えるのに何カ月もかかる」と述べた。

一方でイギリスはすでに、主力戦車「チャレンジャー2」を14台供与すると発表している。ウクライナ軍に操作の訓練も提供する予定だ。

これを踏まえてゼレンスキー氏は、演説の中で戦車の供与に言及。「防衛面でのこの強力な一歩について、感謝しています、リシ」とスーナク氏に語りかけた。そして、「世界は本当に自由を守る勇者を助け、新たな歴史を作っていく」と述べた。

ゼレンスキー氏はまた、演説の途中で、リンジー・ホイル下院議長にウクライナの戦闘機パイロットのヘルメットを贈った。

ヘルメットには「私たちには自由がある。それを守るための翼を与えてください」と書かれていた。

英政府はこの日、ロシアへの新たな制裁を発表。IT企業や、ドローンやヘリコプターの部品などの軍事機器を製造する企業などを対象にした。

ゼレンスキー氏は演説で、「ロシアが戦争資金を調達する可能性がなくなるまで」制裁を続けるよう、イギリスと西側諸国に求めた。

英国王と会見

ゼレンスキー氏は議会での演説後、バッキンガム宮殿でチャールズ国王と会見した。

国王がゼレンスキー氏に会うのはこれが初めて。

ゼレンスキー氏は議会での演説で、国王はまだ皇太子だったころからウクライナを支援してくれたとし、全国民の感謝の気持ちを伝えるつもりだと述べていた。

フランス大統領府の報道官によると、ゼレンスキー氏はこの後、パリ・エリゼ宮に移動し、エマニュエル・マクロン大統領と、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談する予定だという。

ゼレンスキー氏は9日には、欧州連合(EU)首脳会合に参加する見込みとなっている。

ゼレンスキー氏は昨年3月、英下院でビデオ演説した

ゼレンスキー氏は昨年3月に、英議会にビデオリンクで参加。英下院で演説した初の外国人首脳となった。

同氏がロシアによる侵攻以降で外国を訪問するのは、昨年12月のアメリカとポーランドに続いて3カ国目となる。

昨年の訪米では議会で演説。「ウクライナは決して降参しない」と述べ、何回かスタンディングオベーションを受けた。

ジョー・バイデン大統領もその際、「パトリオット」ミサイル防衛システムの供与など、ウクライナへの支援拡大を約束した。

ゼレンスキー大統領をめぐっては、今週ベルギーのブリュッセルを訪問するとのうわさが流れていた。9日に欧州議会で演説し、欧州連合(EU)の首脳会談にも参加するとみられている。

ただ、この情報が今週初めに流出したため、セキュリティー上の懸念からブリュッセル訪問は中止になるとの見方も出ている。

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ウクライナでのロシアの戦争が1年近く経過した中で、ゼレンスキーはイギリスを訪問した理由(Why Zelenskyy visited the U.K. nearly 1 year into Russia's war on Ukraine

ウィレム・マルクス筆

2022年2月8日

NPR

https://www.npr.org/2023/02/08/1155360051/zelenskyy-russia-ukraine

ロンドン発。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、約1年前にロシアがウクライナに侵攻して以来、ほぼ行ってこなかった国外訪問の1つとして、イギリスを訪問し、人々を驚かせた。

ゼレンスキー大統領は、予想されるロシアの攻勢と領土を取り戻すためのウクライナの反撃を準備するために、ウクライナの強力な国際的支援者からより高度な武器をウクライナ軍に供与するように求めている。

ウクライナの指導者はリシ・スーナク首相と会談し、イギリス議会で演説を行い、イギリスの支援と兵器に感謝した後、すぐに更なる支援(特に戦闘機)を要求した。また、チャールズ3世とも会談した。

フランス政府は、水曜日にゼレンスキーがパリを訪れ、エマニュエル・マクロン仏大統領とオラフ・ショルツ独首相と夕食を共にすることを確認したばかりで、今回の外遊はゼレンスキーの予告なしのヨーロッパツアーの最初の足取りとなる。木曜日には、EU理事会のシャルル・ミシェル議長が彼を招待したため、他のEU首脳との会談のためにブリュッセルに移動する可能性もある。

ゼレンスキー大統領がイギリスを訪問した理由は以下の通りだ。

●規模第2位のウクライナ支援者(Ukraine's second-biggest backer

イギリス議会によれば、イギリスはアメリカに次いでウクライナにとって2番目に大きな支援国であり、2022年2月以降、27億ドル相当の軍事支援を約束しており、今年もそれに匹敵する支援を約束するとしている。イギリスは、ロシアの侵攻に対して経済制裁を加える上で重要な役割を担っている。そしてスーナク首相もまた、前任者と同様にキエフを訪問している。

また、スーナク首相は先月、ウクライナにチャレンジャー2戦車を贈ることを約束したが、これは米国とドイツが戦車供与を発表する2週間前のことだった。ウクライナ軍の要因たちが1月29日にイギリスに到着し、イギリスの戦車で訓練を受けた。

しかし、ウクライナは更に一歩踏み込んで、戦闘機の提供を求めている。

ウクライナの防空は、ロシアがウクライナ領土の広い範囲を支配することをほぼ防いできた。しかし、自国の格納庫には、ソ連時代のスペアパーツに頼らない運用可能な航空機がほとんど残っていないと英国のシンクタンク「英国王立防衛安全保障研究所(Royal United Services Institute)」の国際安全保障担当部長ニール・メルビンは指摘している。メルビンによれば、西側の航空機システムの採用を拡大しなければ、ウクライナ軍は長期的に、陸上部隊の攻撃力に見合うだけの空戦力を身につけるのに苦労することになると主張した。

●イギリスは戦闘機の訓練を約束したが、今のところジェット機の提供はない(Britain promised warplane training, but so far no jets

ゼレンスキー大統領は、12月のアメリカのように、国防費を決定するイギリス議会から承認を求めるという他の国々で使ってきた戦術を継続した。

水曜日にウェストミンスター・ホールで行われた演説で、彼はリンゼイ・ホイル下院議長に象徴的な贈り物をした。その贈り物とは「我々は自由を持っている、それを守るために翼を与えよ」と書かれた戦闘機パイロットのヘルメットだった。

イギリス政府は、ウクライナ軍に対する軍事訓練を、戦闘機のパイロットまで拡大すると発表した。「この訓練によって、パイロットは将来的にNATO標準の高性能戦闘機を操縦できるようになる」とイギリス政府は声明の中で述べた。

この誓約には戦闘機の提供を約束するとまでは書かれていない。

しかし、ロイター通信は、イギリス政府報道官は記者団に対し、「スーナク首相は国防相に、どのようなジェット機を提供できるかを調査するよう命じたが、はっきり言って、これはウクライナが今最も必要としている短期の能力ではなく、長期の解決策である」と述べたと報じた。

●イギリス国民の支持を維持する(Maintaining public support

何世紀もの歴史を持つイギリス議会の衣装や儀式用ローブの中で、いつものアーミーグリーンのスウェットシャツを着たこの戦時大統領の姿は、イギリス国民にウクライナの軍事的必要性を思い起こさせるものとなるだろう。

ロシアと戦うウクライナに対するイギリス国民の支持は依然として高い。戦争が始まって数カ月、ウクライナ人の家族を家に迎え入れた何万人もの英国人に代表されるように、ウクライナの人々に対する関心も高いのである。

1月24日に発表されたイプソス社の世論調査の結果では、イギリス人はウクライナ人を助け、ロシアを孤立させる努力を続けることに、調査対象の他の国よりも強い支持を表明しているということになった。

ゼレンスキーは、この支持を当然とは考えていないようだ。今回の訪問は、政治家だけでなく、イギリス国民にも戦争がまだ終わっていないことを思い知らせるためのものなのかもしれない。

アレックス・レフがワシントンからこの記事の作成に貢献した。
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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 今回はシーモア・ハーシュの論稿の真ん中の3分の1をご紹介する。ノルドストリーム破壊の計画のためのタスクフォース・ティームは2021年12月に国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンによって組織された。ウクライナ戦争は2022年2月24日に勃発した。その前から既に計画されていたのだ。問題はこの計画が漏れる、もしくは計画が成功後にアメリカの仕業であるということが分かれば極めて重大な結果を招くということであった。アメリカはウクライナに支援を行っているが、ロシアとの直接の対決を避けてきた。それなのに、ロシアのガスプロムと西ヨーロッパ各国の企業が出資して建造した施設を爆破破壊するということはロシアや同盟国である西ヨーロッパ諸国に対する犯罪行為であり、戦争行為である。だからどうしてもばれてはいけなかった(動機を考えればアメリカ以外には考えられないのであるが)

 CIAがこれまでの実績からノルドストリーム爆破を提案したが、もちろん批判も多かった。失敗する可能性もあり、露見すればアメリカとバイデン政権は無傷では済まない。バイデンの再選は絶望的となったことだろう。それでも、CIAにはこれまでにも犯罪行為を秘密裏に成功させてきたという実績があった。私の個人的な見解を言えば、CIAとアメリカ軍の中の悪さを考えると、アメリカ海軍が潜水士達を派遣してCIAの作戦に協力させたというのは驚きである。ノルドストリーム破壊がアメリカにとって重要な「国策」だったことは明らかだ。

 計画中にバイデン大統領とヌーランド国務次官はちらちらと破壊計画をにおわせるような発言を行っていた。これらの発言に計画に関与した人々がじりじりしていたというのは自然な対応であろう。

 ノルドストリーム爆破作戦にとって重要なパートナーとなったのがノルウェー海軍だった。ノルウェー海軍はバルト海での経験が豊富であり、能力も高い。NATOの最高司令官はイェンス・ストルテンベルグであるが、ストルテンベルグはノルウェーの首相を務めた人物であり、アメリカの忠実な手先だ。ノルウェーは日本同様にアメリカの忠実な属国である。しかし、問題は爆破に最適の地点がデンマーク領内のボーンホルム島周辺海域であったことだ。スウェーデンやデンマークの海軍が怪しい動きを感知すれば計画漏洩の危険があるのだ。
(貼り付けはじめ)

●計画立案(PLANNING

2021年12月、ロシアの戦車が初めてウクライナに進入する2カ月前、ジェイク・サリヴァンは、米統合参謀本部、CIA、国務省、財務省の関係者で新たに結成したタスクフォースの会議を招集し、プーティンの侵攻が迫る中でどう対応するか、提言を求めた。

ホワイトハウスに隣接し、大統領対外情報諮問委員会(President’s Foreign Intelligence Advisory BoardPFIAB)が置かれている旧行政府ビル(Old Executive Office Building)の最上階にある盗聴などの危険が排除された部屋で、極秘会議の第1回目が開かれた。そこでは、いつものように雑談が交わされ、やがて重要な事前質問へとつながっていった。その質問とは以下のようなものだ。つまり、このグループが大統領に提出する勧告は、制裁措置や通貨規制の強化といった「可逆的(訳者註:いつでも元の状態に戻せること)」なものなのか、それとも「不可逆的」なものなのか、つまり、元に戻すことができない「武力行動(kinetic action)」なのか、ということだ。

このプロセスを直接知るある情報源によれば、サリヴァンは、グループがノルドストリーム・パイプラインの破壊計画を打ち出すことを意図し、大統領の要望を実現しようとしていたことが、参加者の間では明らかであったということだ。

その後の数回の会合では、攻撃方法の選択肢を議論した。海軍は、新しく就役した潜水艦でパイプラインを直接攻撃することを提案した。空軍は、遠隔操作で爆発させることができる遅延信管付きの爆弾を投下することを提案した。CIAは、「何をするにしても、秘密裏に行わなければならない」と主張した。関係者の誰もが、その利害関係を理解していた。「これは子供の遊び(kiddie stuff)ではない」とその関係者は言った。もし、その攻撃がアメリカにつながるものとなれば、「それは戦争行為なのだ(It’s an act of war)」。

当時、温厚な元駐ロシア大使で、バラク・オバマ政権で国務副長官を務めたウィリアム・バーンズがCIAの指揮を執っていた。バーンズ長官はすぐに、パナマシティにいる海軍の深海潜水士に詳しい人物を特別メンバーに含む(これは偶然のことだったのだが)、CIAのワーキンググループを承認した。それから数週間、CIAのワーキンググループのメンバーたちは、深海潜水士を使ってパイプラインを爆発させるという秘密作戦の計画を練り始めた。

このような事例は以前にもあった。1971年、アメリカの情報機関は、ロシア(ソ連)海軍の2つの重要な部隊が、ロシア極東オホーツク海に埋設された海底ケーブルを介して通信していることを、未公表の情報ソースから知った。このケーブルは、海軍のある地方司令部とウラジオストクにある本土の司令部を結んでいた。

中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)と国家安全保障局(National Security AgencyNSA)から選抜された諜報員ティームが、ワシントン地域のある場所に極秘裏に集められ、海軍の潜水士達、改造潜水艦、深海救助艇を使って、試行錯誤の末にロシアのケーブルの位置を特定する計画を実行し成功させた。潜水士達はケーブルに高性能の盗聴器を仕掛け、ロシアの通信を傍受し、録音システムに記録することに成功した。

NSAは、ロシア海軍の幹部たちが通信回線の安全性を確信し、暗号化せずに同僚と普通のおしゃべりしていることを知った。しかし、ロシア語が堪能なロナルド・ペルトンという44歳のNSAの技術者によって、このプロジェクトは台無しにされてしまった。ペルトンは、1985年にロシアの亡命者に裏切られ、刑務所に送られた。ペルトンがロシアから受け取った報酬は、作戦を暴露した際の5000ドルと、公開されなかった他のロシアの作戦データに対する3万5000ドルだけだった。

コードネーム「アイビー・ベルズ(Ivy Bells)」と呼ばれたその海中での成功は、革新的で危険なものであり、ロシア海軍の意図と計画について貴重な情報をもたらした。

しかし、CIAの深海諜報活動に対する熱意には、当初、省庁間グループも懐疑的であった。未解決の問題が多すぎたのだ。バルト海の海域はロシア海軍の警備が厳しく、潜水作戦に使える石油掘削施設はない。ロシアの天然ガス積み出し基地と国境を接するエストニアまで行って、潜水訓練をしなければならないのか? CIAに対しては、「混乱状況で失敗するだろう(It would be a goat fuck)」と批判された。

この「計画中」に、「CIAと国務省の何人かは、こんなことはするなと言った。バカバカしいし、公になれば政治的な悪夢になる」と上述の情報源は述べた。

それでも、2022年初頭、CIAのワーキンググループはサリヴァンの省庁間グループに報告した。その内容は「パイプラインを爆破する方法がある」というものだった。

その後に起こったことは、驚くべきことだった。ロシアのウクライナ侵攻が避けられないと考えられていた、戦争勃発の3週間前の2月7日、バイデンはホワイトハウスのオフィスでドイツのオラフ・ショルツ首相と会談した。ショルツは一時はぐらついたが、その時にはしっかりとアメリカ側についていた。その後の記者会見でバイデンは、「もしロシアが侵攻してきたら、ノルドストリーム2はもう存在しない。私たちはパイプラインを終わらせる」と述べた。
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ジョー・バイデンとオラフ・ショルツ
その20日前、ヌーランド国務次官は国務省のブリーフィングで、ほとんど報道されることなく、基本的に同じメッセージを発していた。ヌーランドは記者団からの質問に対して、「今日、はっきりさせておきたいことがある。もしロシアがウクライナに侵攻すれば、いずれにせよノルドストリーム2は前進しないだろう」と述べた。

パイプライン・ミッションの計画に携わった何人かは、攻撃への間接的な言及と見られるバイデンとヌーランドの発言に狼狽した。

上述の情報源は「東京の街中に原爆を置いて、それを爆発させると日本人に言っているようなものだった。計画では、オプションは侵攻後に実行されることになっており、公には宣伝されないことになっていた。バイデンは単にそれを理解しなかったか、無視したのだ」と述べた。

バイデンとヌーランドの軽率な行動は、それが何であったとしても、計画立案の参加者うちの何人かを苛立たせたかもしれない。しかし、それはチャンスでもあった。この情報源によると、CIAの高官の何人かは、パイプラインの爆破は「大統領がその方法を知っていると発表したため、もはや秘密のオプションとは見なされない」と判断したという。

ノルドストリーム1と2を爆破する計画は、突然、連邦議会に報告する必要のある極秘作戦から、アメリカ軍の支援を受ける極秘の情報作戦とみなされるものに格下げされた。この徐法源は次のように説明した。「法律上では、連邦議会に報告する法的義務がなくなった。しかし、それでも秘密でなければならない。ロシアはバルト海の監視に長けている」。

CIAのワーキンググループのメンバーたちは、ホワイトハウスと直接のコンタクトがなかったので、大統領が言ったことが本心かどうか、つまり、この作戦が実行に移されるのかどうかを確かめようと躍起になっていた。上述の情報源は、「ビル・バーンズがCIA長官として戻ってきて、実行せよと言った」と回想している。

この人物は「ノルウェー海軍は、デンマークのボーンホルム島から数マイル沖の浅瀬にある適切な場所をすぐに見つけた」と述べた。

●作戦遂行(THE OPERATION

ノルウェーはノルドストリーム爆破任務の拠点として最適な場所だった。

東西危機の過去数年間、アメリカ軍はノルウェー国内でその存在を大幅に拡大してきた。西側の国境は北大西洋に沿って1400マイル(約2240キロ)も走り、北極圏の上でロシアと合流している。国防総省は、地元では賛否両論あるものの、数億ドルを投じてノルウェーの米海軍と空軍の施設を改修・拡張し、高級の雇用と高額の契約を創出したのである。この新しい施設には、最も重要なこととして、ロシアを深く探知することができる高度な合成開口レーダー(advanced synthetic aperture radar)が含まれており、ちょうどアメリカの情報機関が中国国内の一連の長距離監視サイトへのアクセスを失った時に稼働したのである。

何年も前から建設が進められていたアメリカの潜水艦基地が新たに改修され、運用が開始された。更に多くのアメリカの潜水艦が、ノルウェーの僚艦と緊密に協力して、250マイル(約400キロ)東のコラ半島にあるロシアの主要核要塞の監視と諜報に当たることができるようになった。アメリカはまた、北部にあるノルウェーの空軍基地を大幅に拡張し、ボーイング社製のP8ポセイドン型哨戒機の編隊をノルウェー空軍に提供し、ロシア全般の長距離監視を強化した。

その見返りとして、ノルウェー政府は昨年11月、補足的防衛協力協定(Supplementary Defense Cooperation AgreementSDCA)を可決し、議会のリベラル派と一部の穏健派を怒らせた。この新協定では、北部の特定の「合意地域」において、基地外で犯罪行為を行ったとして訴えられたアメリカ軍兵士と、基地での作業を妨害したことで訴えられたり疑われたりしたノルウェー国民については、アメリカの法制度が司法権を持つことになる。

ノルウェーは、冷戦初期の1949年にNATO条約に最初に署名した国の1つだ。現在、NATOの事務総長(最高責任者)はイェンス・ストルテンベルグだが、彼は熱心な反共主義者で、ノルウェーの首相を8年間務めた後、2014年にアメリカの後ろ盾でNATOの高官に就任した。彼はヴェトナム戦争以来、アメリカの情報機関と協力関係にあり、プーティンやロシアに関するあらゆることに強硬な態度を取ってきた。ヴェトナム戦争以来、彼はアメリカから完全に信頼されている人物なのである。前述の情報源は「彼(ストルテンベルグ)はアメリカの手にぴったりとフィットする手袋だ」と評した。
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ストルテンベルグ

ワシントンに話を戻すと、作戦の計画立案者たちは、ノルウェーに行くしかないと考えた。「彼らはロシアを嫌っていたし、ノルウェーの海軍は優秀な水兵や潜水士揃いであり、収益性の高い深海石油・ガス探査に何世代にもわたって携わってきた実績もある。また、この作戦を秘密にしておくことも可能であった。(ノルウェー側には他の利益もあったかもしれない。もしアメリカ側がノルドストリームを破壊することができれば、ノルウェーは自国の天然ガスをヨーロッパに大量に販売することができるようになる。)

3月のある時期、複数の計画立案者たちがノルウェーに向かい、ノルウェーのシークレットサーヴィスや海軍の関係者たちと面会した。バルト海のどこに爆薬を仕掛けるのが最適か、というのが重要な問題だった。ノルトストリーム1と2は、それぞれ2本のパイプラインで構成され、ドイツ北東部のグライフスワルト港に向かう途中、1マイル(約1.6キロ)余りの距離で隔てられていたのである。

ノルウェー海軍は、デンマークのボーンホルム島から数マイル離れたバルト海の浅瀬にある適切な場所をいち早く探し出した。パイプラインは、水深260フィート(約78メートル)の海底を1マイル以上離れて走っている。潜水士たちはノルウェーのアルタ級機雷掃討艇(mine hunter)から、酸素、窒素、ヘリウムの混合ガスをタンクに注入して、パイプラインの上にC4爆薬を設置し、コンクリートの保護カバーで覆った。ボーンホルム沖は、潜水作業を困難にする大きな潮流がないことも利点であった。
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C4爆薬
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ノルウェーの掃海艇

数回の調査を経て、アメリカ側はすっかり乗り気になっていった。
(貼り付け終わり)

(つづく)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

昨年9月にロシアからドイツへ天然ガスを送る海底パイプライン施設「ノルドストリーム1、2(Nord Stream Pipeline1,2)」でガス漏れ爆発「事故」が起き、操業停止となった。ロシアからの安価な天然ガスに頼っていたドイツと西ヨーロッパ諸国はエネルギー源をアメリカに頼らざるを得なくなり、価格の高騰もあり、厳しい冬に耐えながら人々は暮らしている。
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 ノルドストリームの「事故」についてはタイミングや内容から、「どうしてああいう事故が起きたのか」「タイミングが良すぎるのではないか」といった多くの疑問が出ていた。タイミングというのは、ウクライナ戦争が勃発して半年以上が経過し、アメリカやヨーロッパ諸国がウクライナ支援を行いながらも、同時にロシアからの天然ガス輸入を行っていたということである。ウクライナ戦争勃発後、西側諸国は対ロシア経済制裁を行い、ロシアを経済的に締め上げて一気にギヴアップさせようと狙っていた。しかし、その試みは失敗した。加えて、「急にエネルギー源を止められない」としてロシアからの天然ガス輸入を続けていた。ノルドストリームが壊れて操業停止になってしまえば物理的に輸入が不可能ということになった。

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ロシアを間接的に支援することになる天然ガス輸入を止め、アメリカからの天然資源を輸入させるということで、誰が利益を得るのかということは、誰が考えてもアメリカということになる。しかし、アメリカ政府やアメリカメディアはロシア犯人説を流布した。このロシア犯人説ほど馬鹿げたことはない。ロシアは天然ガス輸出で資金を獲得することができるし、あまりにも敵対的な態度を西ヨーロッパが取るならば、供給を削減、もしくはストップすることで懲罰を与えることができる。そうした手段を自分から破壊するのは自滅的な行為でしかない。そうしたことから、ノルドストリーム事故直後から、アメリカの仕業ではないかという説は根強くあった。私もこのブログでアメリカ犯人説を取り上げた。

今回、アメリカの有名は調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュが重要な論稿を発表した。ハーシュについてまず述べると、ヴェトナム戦争時代から活躍を続けるジャーナリストであり、ソンミ村虐殺事件の調査衝動でピューリッツア賞を受賞した。その後も、イスラエルの核武装やアブグレイブ収容所での拷問事件などをスクープした。

ハーシュが今回発表した論稿の内容はずばり「ノルドストリーム爆破はアメリカが行った」という衝撃の内容だ。アメリカがNATO加盟のノルウェーと協力して、ノルドストリームの爆破地点を特定し、優秀な潜水士たちを使って爆薬を仕掛け、時間差で爆発させたということである。アメリカはかねがね、ノルドストリームを通じてのロシアからの安価な天然ガスにヨーロッパが依存することを憎悪しており、ノルドストリームを「始末」することで、ロシア側に打撃を与え、ヨーロッパをアメリカ依存に引き戻すという一挙両得の秘密作戦を実行した。その内容は、「アメリカはこんなことまでするのか」と日本の親米派の人々にもショックを与えるものだ。これくらいのことは日本にもされているのである。アメリカはこれくらいのことを世界中でやっているのだ。これで嫌われないと考えるのは全く理解不能だ。

下にハーシュの渾身の論稿の内容の前3分の1を掲載した。ここでは、作戦立案から実行までの経緯がまとめられている。計画立案には、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンが、ジョー・バイデン大統領の命を受けて、官庁間の垣根を超えたグループが作戦の内容の立案にあたり、CIA(ウィリアム・バーンズ長官)が具体的な内容を提案して実行されることになったことが書かれている。バイデン大統領のノルドストリーム破壊の意向を受けて、作戦を計画し進めていった責任者たちとして、ハーシュはジェイク・サリヴァン、アンソニー・ブリンケン国務長官、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官の名前を挙げている。私はここに、アヴリル・ヘインズ国家情報長官(アメリカの情報・諜報機関の統括であり、バーンズの上司にあたる)も入っていたと思う。拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』をお読みいただいた皆さんにとってはどのような関係になっているのかなど分かりやすいと思う。
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アメリカ海軍には潜水・サルヴェーション学校があり、そこを卒業した優秀な潜水士たちが作戦実行部隊となった。彼らがパイプラインに爆薬を設置した。私の講釈はここらあたりにして下の論稿を是非読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

アメリカはどのようにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したか?(How America Took Out The Nord Stream Pipeline

-『ニューヨーク・タイムズ』紙は「ミステリー」と呼んだ。しかし、アメリカは海上作戦を実行した。その秘密は守られてきた。それもこれまでだ。

セイモア・ハーシュ(Seymour Hersh)筆

2023年2月8日

シーモア・ハーシュのウェブサイト

https://seymourhersh.substack.com/p/how-america-took-out-the-nord-stream

フロリダ州南西部の回廊地帯(panhandle)、アラバマ州との州境から南へ約70マイル(約112キロ)、かつては片田舎だったが今やリゾート町として成長しているパナマシティに、アメリカ海軍のダイヴィング・アンド・サルヴェージ・センターがある(センターの面している道路は昔単線だった)。第二次世界大戦後に建てられたコンクリート造りの無骨な建物は、シカゴ西部にある職業高校のような外観をしている。何の特徴もない建物群だ。コインランドリーやダンススクールが、現在4車線の道路を挟んで向かい側にある。

このセンターは何十年もの間、高度な技術を持つ深海潜水士(deep-water divers)を養成してきた。潜水士たちは、世界中のアメリカ軍部隊に配属され、C4爆薬を使用して港や海岸の瓦礫や不発弾を除去するという素晴らしい仕事も、そして、外国の石油掘削施設を爆破する、海底発電所の吸気バルブを汚染する、重要な輸送管の鍵を破壊するなどの破壊工作を行う技術潜水も成功させてきた。パナマシティにあるこのセンターは、アメリカで2番目に大きい屋内プールを誇る。昨年の夏、バルト海の水面下260フィート(約78メートル)で任務を遂行した潜水学校の優秀で最も寡黙な卒業生たちを輩出するには最適の場所だ。

作戦計画を直接知るある情報源によれば、昨年6月、海軍の潜水士たちは、「バルト海作戦22(BALTOPS 22)」として広く知られた真夏のNATO演習に隠れて、遠隔操作による爆発物を仕掛け、3カ月後に4本のノルドストリーム・パイプラインのうち3本を破壊した。

そのうちのパイプライン2本は、ノルドストリーム1と総称され、10年以上にわたってドイツと西ヨーロッパ諸国の多くに安価なロシアの天然ガスを供給していた。もう1本のパイプラインはノルドストリーム2(Nord Stream 2)と呼ばれ、建設はされていたが、まだ稼働していなかった。ロシア軍がウクライナ国境に集結し、1945年以降のヨーロッパで最も血生臭い戦争が行われている現在、ジョー・バイデン大統領は、パイプラインはウラジミール・プーティンが自らの政治的・領土的野心のために天然ガスを武器化する(weaponize)ための手段だと見ているのだ。

私はホワイトハウスのエイドリアン・ワトソン報道官に対してコメントを求めた。ワトソン報道官は電子メールで、「これは虚偽であり、完全なフィクションだ」と述べた。中央情報局(CIA)のタミー・ソープ報道官も同様に「この主張は完全にそして完璧に虚偽である」という返事を寄こした。

バイデンがパイプラインの破壊を決定したのは、その目標を達成する最善の方法について、ワシントンの国家安全保障コミュニティの内部で9ヶ月以上にわたって極秘に行われた議論の後であった。その期間の大半で、任務を遂行するかどうかを議論されたことはなかった。誰に責任がるのかについてあからさまな手掛かりを残すことなしに、いかにして任務を遂行するかが議題とされた。

パナマシティにある米海軍潜水学校の卒業生たちに任務遂行を頼ったのは、官僚的な理由からだった。潜水士たちは海軍所属者だけで構成されている。彼らは、秘密作戦について連邦議会にあらかじめ報告し、連邦上下両院の指導部、いわゆるギャング・オブ・エイト(訳者註、連邦上下両院情報・諜報委員会委員長2名、反対党側幹部委員2名、連邦上院多数党院内総務、少数党院内総務、連邦下院議長、連邦下院少数党院内総務の計8名)に事前に説明しなければならないアメリカの特殊作戦司令部の所属ではない。2021年の終わりから2022年の最初の数カ月にかけて計画が立案されたが、バイデン政権は計画がリークされないようにあらゆる手段を講じていた。

バイデン大統領とその外交ティーム(国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァン、国務長官トニー・ブリンケン、国務次官ヴィクトリア・ヌーランド)は、ロシア北東部のエストニア国境に近い2つの港からバルト海下750マイル(約1200キロ)を並走し、デンマーク領のボーンホルム島近くを経てドイツ北部に至る2基のパイプラインに対して、一貫して敵意を抱いていた。そしてそれを明らかに示していた。

ウクライナを経由しないこの直通ルートは、ドイツ経済にとって好材料となった。工場や家庭の暖房に十分な量の安いロシア産の天然ガスが豊富にあり、ドイツの流通業者は余ったガスを西ヨーロッパ中に売って利益を得ていた。パイプラインの破壊は、ロシアとの直接対決を最小限に抑えるというアメリカの公約を破るような行動であり、その公約を定めたバイデン政権がそうした行動を進めた。そのため、秘密裏の作戦遂行が必要不可欠となった。

のルドストリーム1は、その初期段階から、ワシントンと反ロシアのNATOパートナーによって、西側の支配に対する脅威と見なされていた。ガスプロムは、プーティン大統領に従うことで知られるオリガルヒが支配し、株主に莫大な利益をもたらすロシアの株式公開企業だ。ガスプロムが51%、フランスのエネルギー企業4社、オランダのエネルギー企業1社、ドイツのエネルギー企業2社が残りの49%の株式を共有し、安価な天然ガスをドイツや西ヨーロッパの地元流通業者たちに販売する下流工程をコントロールする権利を持っていた。ガスプロムの利益はロシア政府と共有され、国家のガス・石油収入はロシアの年間予算の45%にも上ると推定された年もある。

アメリカの政治的な恐怖感は現実のものとなった。プーティンは必要な収入源を手に入れ、ドイツをはじめとする西ヨーロッパはロシアから供給される安価な天然ガスに依存するようになり、ヨーロッパのアメリカへの依存度は低下することになるのではという恐怖感をアメリカは持っていた。実際、その通りになった。戦後のドイツは、第二次世界大戦で破壊された自国と他のヨーロッパ諸国を、ロシアの安価なガスを利用して豊かな西ヨーロッパ市場と貿易経済の燃料として復興させるという、ウィリー・ブラント元首相の有名な東方外交理論(オストポリティーク理論、Ostpolitik theory)が一部現実化されたものだと多くのドイツ人がノルトストリーム1について捉えていたのである。

NATOとワシントンの考えでは、ノルトストリーム1はそれだけで十分に危険なものだったが、2021年9月に建設が完了したノルトストリーム2は、ドイツの規制当局が承認すれば、ドイツと西ヨーロッパが利用できる安価なガスの量が2倍に増やすことになるはずだった。また、このパイプラインはドイツの年間消費量の50%以上を賄うことができる。バイデン政権の積極的な外交政策を背景に、ロシアとNATOの緊張は常に高まっていた。

2021年1月のバイデンの大統領就任式前夜、ブリンケンの国務長官就任承認公聴会で、テキサス州選出のテッド・クルーズ連邦上院議員率いる連邦上院共和党が、安価なロシアの天然ガスという政治的脅威を繰り返し提起し、ノルドストリーム2への反対運動を燃え上がらせた。同時期、連邦上院は一致して、クルーズがブリンケンに語ったように、「パイプラインの進路を停止させる」法律を成立させることに成功していた。当時、アンゲラ・メルケル首相が率いていたドイツ政府からは、2本目のパイプラインを稼働させるために、政治的、経済的に大きな圧力がかかっていたと考えられる。

バイデンはドイツに立ち向かうことができるだろうか? ブリンケンは「イエス」と答えたが、「次期大統領の見解の詳細について議論していない」と付け加えた。ブリンケンは更に次のように述べた。「私は、ノルトストリーム2が悪い考えであるというバイデン大統領の強い信念を知っている。次期大統領は、ドイツを含む私たちの友人やパートナーに対して、あらゆる説得手段を用いて、これを進めないよう説得してくれるはずだ」。

数ヵ月後、2本目のパイプラインの建設が完了に近づくと、バイデンは見て見ぬふりをした。その年の5月には、国務省の高官が、制裁と外交でパイプラインを止めようとするのは「常に長丁場となる」と認め、驚くべき方向転換で、政権はノルドストリームAGに対する制裁を免除した。その裏では、当時ロシアの侵略の脅威にさらされていたウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に、この動きを批判しないようにと複数のバイデン政権幹部が働きかけていたとも言われている。

すぐに結果が出た。クルーズ率いる連邦上院共和党は、バイデンの外交政策候補者全員の即時承認秘訣を発表し、年間国防予算の成立を数ヶ月間遅らせた。そして、秋も深まった頃にようやく成立した。『ポリティコ』誌は後に、ロシアの2本目のパイプラインに関するバイデンの転向を、「バイデンの政権公約を危うくした1つの決断だった。間違いなくアフガニスタンからの無秩序な軍事撤退以上に議論を呼ぶものとなった」と評している。

11月中旬にドイツのエネルギー規制当局が2本目のノルドストリーム・パイプラインの認可を停止したことで、危機の猶予を得たものの、バイデン政権は混乱した態度を取った。このパイプラインの停止と、ロシアとウクライナの戦争の可能性が高まっていることから、ドイツやヨーロッパでは、望まぬ寒い冬がやってくるのではないかという懸念が高まり、天然ガスの価格は数日のうちに8%も急上昇した。ドイツの新首相に就任したオラフ・ショルツの立場は、ワシントンでは明確ではなかった。その数カ月前、アフガニスタン崩壊後、ショルツはプラハでの演説で、エマニュエル・マクロン仏大統領の「より自主自律的なヨーロッパ外交政策」を公式に支持し、明らかにワシントンやその気まぐれな行動への依存度を下げることを示唆していた。

この期間中、ロシア軍はウクライナ国境で着々としかも不気味に増強され、2021年12月末には10万人以上の兵士がベラルーシとクリミアからウクライナを攻撃できる態勢にあった。ワシントンでは、この兵力数について「短期間に倍増する」というブリンケン国務長官の分析もあり、警戒感が高まっていた。

このような状況下で、再び注目されたのがノルドストリームだった。ヨーロッパが安価な天然ガスパイプラインに依存する限り、ドイツなどの国々は、ウクライナにロシアに対抗するための資金や武器を供給するのを躊躇するだろうと考えられた。

バイデンがジェイク・サリヴァンに対して省庁間の垣根を超えたグループを結成し、計画を練ることを許可したのはこうした不安定な時期のことだった。

全ての選択肢がテーブルの上に置かれることになった。しかし、実際に出てくるのは1つだけだった。
(貼り付け終わり)
(つづく)

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 古村治彦です。

 アメリカではインフレもあり、住宅価格が高騰しているということは日本でも報道されている。日本の芸能人や有名人がアメリカ旅行をして、レストランでの食事代やホテルの宿泊代が日本では考えられないほどに高かった(現在円安傾向の日本円で換算して)、ということをテレビなどで発言しているので、私たちも何となく実感できているところがある。「それならば住宅価格も上がっているだろうし、日本と同じく電気代や燃料代も高騰しているだろう」ということは容易に想像できる。実際に、1戸建ての毎月の住宅ローンの全米平均は1969ドルであり、日本円に換算すると約25万6000円となる。日本でも都市部と地方ではだいぶ違うだろうが、平均すれば10万円強ということになるのではないかと思う。

 住宅価格が下落している地域もあるが、同時に急上昇している地域もあるというのは常識的な結果ということになるだろう。興味深いのは上昇率トップ10のうち、9つがアメリカ南部ノースカロライナ州、テキサス州、フロリダ州に集中しており、特にフロリダ州に多いということだ。アメリカ南部の方が「暮らしやすく」、引っ越してくる、住宅を求める人が多いということになるのだろう。

 アメリカ北部の降雪地帯は燃料費や物価のことを考えると暮らしにくいということになるだろう。雪が降る、降らないはやはり重要な要素になると思う。以前から物価安や環境面から、特に若い人々がアメリカ南部、テキサス州に移動しているということは言われていた。

 これを政治的に見れば、アメリカ南部は共和党が勢力を持つ、レッドステイト(赤い州)ばかりである。共和党が強い保守的な地域ということになる。こうした地域では税金も安いということになる。また、農業生産力も高いので食料価格も低く抑えられるということになるのだろう。

更に言えば、このような現象はアメリカの分断を示す兆候であると言えるだろう。北部や東海岸、西海岸のリベラルな雰囲気に嫌気がさして、南部に引っ越したいという動きであることが想像される。更に言えば、2016年と2020年の大統領選挙ではトランプが勝利を収めた各州である。反エリート(反エスタブリッシュメント)対ポピュリズム、民主党対共和党、リベラル対保守という対立が深まっており、「もう一緒には住めない」ということになっているのだろうと考えられる。アメリカ国内の分断も癒されないままに深化しているようである。

(貼り付けはじめ)

これらのアメリカ国内の各都市では住宅価格が最も急速に上昇している(These US cities have fastest-growing home prices

-フロリダ州、ノースカロライナ州、そしてサウスカロライナ州の各都市では前の四半期で、住宅価格が2桁の上昇を記録している。

アレハンドラ・オコーネル=ドメネク筆

2023年2月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/changing-america/respect/poverty/3856173-these-us-cities-have-fastest-growing-home-prices/

●記事の要約

・全米不動産協会(National Association of Realtors)が発表した最新の四半期報告書によると、全都市圏の約90%が前の四半期(2022年10月から12月)に住宅価格を上昇させたことが明らかになった。

・最も住宅価格が上昇したのはニューメキシコ州ファーミントン市では、前年同期比で20.3%の上昇を記録した。

・フロリダ州のネープルズ、デイトナビーチ、ノースポートなどの各都市でも住宅価格が急上昇した。

全米不動産協会(National Association of Realtors)が全米の住宅価格を調査した新しい報告書によると、ニューメキシコ州ファーミントンは、アメリカで最も住宅コストが上昇している地域である。

フロリダ州とノースカロライナ州の地域は、住宅価格が最も急速に上昇した上位10都市圏(metro areas)のうち7都市を占め、ノースポート・サラソタ・ブラデントン地域が2位となった。

報告書によると、一戸建て住宅の価格は全都市圏のほぼ90%で上昇し、中央値は昨年同時期から4%上昇し37万8700ドルとなった。この報告書は、全米186の都市圏の住宅価格の変化を調べたものだ。

頭金20%の中古一戸建て住宅の月々の住宅ローン支払額は58%増加して、1969ドルにまで跳ね上がったという。

この数字は、一般的な一戸建て住宅の月間住宅ローン支払い額が1838ドルだった昨年の第3四半期から7%増加したことを意味する。

昨年の第3四半期から2021年の同時期にかけて、毎月の住宅ローン支払額は急増しており、58%、つまり毎月720ドル増加して1838ドルとなった。

一方、都市圏の住宅市場の11%が昨年第4四半期に住宅価格の下落を経験し、この傾向は今年に入っても続く可能性がある。

全米不動産協会チーフエコノミストのローレンス・ユンは、「特に物価の高い地域では、雇用が低迷し、住民が他の地域に移り住むケースが多く、2桁の価格下落が見られる市場もあるかもしれない」と述べている。

しかし、住宅価格は上昇しているが、もっと悪くなる(低下する)可能性もあると報告書は強調している。

住宅価格が2桁上昇した都市圏はわずか18%で、46%の都市圏が2桁の価格上昇を記録した昨年の第3四半期から急転直下で低下している。

以下は、住宅価格が最も上昇した10の都市圏である。

(1)ニューメキシコ州ファーミントン:20.3%

(2)フロリダ州ノースポート・サラソタ・ブラデントン:19.5%

(3)フロリダ州ネープルズ・インモカリー・マルコアイランド:17.2%

(4)ノースカロライナ州グリーンズボロ・ハイポイント

(5)ノースカロライナ州ミトロビーチ・コンウェイ・ノースミトロビーチ:16.2%

(6)ウィスコンシン州オシュコシュ・ニーナー:16.0%

(7)ノースカロライナ州ウィストン・セーラム:15.7%

(8)テキサス州エルパソ:15.2%

(9)フロリダ州プンタゴルダ:15.2%

(10)デルトナ・デイトナビーチ・おル・モンド・ビーチ:14.5%

(貼り付け終わり)

(終わり)

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