古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アメリカ

 古村治彦です。

 

 今年も残り2カ月半というところになってきました。今年6月にシンガポールで、初の米朝首脳会談が開催され、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が握手をし、直接話をするという歴史的な出来事がありました。その後、共同宣言が発表され、朝鮮半島の非核化が進むかと思われましたが、その後、米朝交渉は停滞気味のようです。

 

 先月、アメリカ政府は、スティーヴン・ビーガンという人物を国務省の対北朝鮮特別代表に任命しました。米朝交渉を実質的に取り仕切ることになりました。ビーガンについては、本ブログでいち早くご紹介しました。ビーガンについては、共和党系の外交政策分野の人材であり、ヨーロッパとロシアを専門としている人物であることをご紹介し、ビーガンの説く米代表就任は、北朝鮮問題に関して、アメリカがロシアを巻き込むことを意図しているとブログの記事で私は書きました。

stephenbiegun001
スティーヴン・ビーガン


 実際、ビーガンは2018年10月16日にロシアの首都モスクワを訪問し、ロシア政府関係者と北朝鮮問題について協議しています。以下に記事を貼り付けます。

 

(貼り付けはじめ)

 

米の特別代表がロシア訪問 北朝鮮への働きかけ協議か

20181016 2057

 

2回目の米朝首脳会談に向けてアメリカ政府で実務レベルの協議を担うビーガン特別代表がロシアのモスクワを訪れ、16日、モルグロフ外務次官と協議しました。北朝鮮の非核化をめぐって働きかけを強めるようロシアに求めたとみられます。

 

アメリカ政府で北朝鮮問題を担当するビーガン特別代表は16日、モスクワを訪れて、ロシア外務省のモルグロフ次官と協議し、ロシア外務省は協議のあと、「核を含めた問題の政治的、外交的な解決に向けて努力していくことで一致した」と発表しました。

 

ビーガン特別代表は、今月、アメリカのポンペイオ国務長官とともに北朝鮮を訪問し、2回目の米朝首脳会談の早期開催に向けて実務レベルの協議を進めることでキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長との間で合意しました。

 

ただ、朝鮮戦争の終戦宣言を要求する北朝鮮と、非核化に向けた北朝鮮の具体的な措置が先だとするアメリカとの立場の隔たりは埋まっておらず、実務レベルの協議を担うビーガン特別代表としてはモルグロフ次官に対し、非核化をめぐって北朝鮮への働きかけを強めるよう求めたとみられます。

 

ビーガン特別代表は、このあとフランスのパリ、ベルギーのブリュッセルを訪れ北朝鮮問題について関係者と協議する見通しです。

 

(貼り付け終わり)

 

※2018年9月4日付記事「米朝交渉は停滞気味のようだ」でご紹介しております。↓

http://suinikki.blog.jp/archives/76831743.htmlからどうぞ。


 米朝直接交渉はあまり進展が見られません。北朝鮮はこれまでもアメリカとの交渉ではあの手この手で中身を骨抜きにしたり、思い切って合意を破ったりで、アメリカ側を翻弄してきました。そのために経済制裁を科されることにもなりましたが、中国とロシアという後ろ盾があり、これまである意味ではうまく生き残ってきました。そのために、国民に大きな被害が出ていることをかんがえると、うまくという言葉は適切ではありませんが。

 

 そうした中で、北朝鮮に一定程度影響力を持つロシアを巻き込んでの問題解決ということになり、ビーガンに白羽の矢が立ったということになるのでしょう。以下に紹介する記事は、ビーガンの特別代表就任について書かれたものです。その中で、ビーガンはヴェテランで、特別代表に適任だが、北朝鮮との交渉の経験がないこと、そして、トランプ大統領が移り気で首尾一貫していないので、トランプ大統領に振り回されるであろうことを不安材料に挙げています。

 

 今後、北朝鮮問題がどのように動いていくか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

ポンぺオの新しい対北朝鮮特別代表は外交上の地雷原に勇躍攻撃を仕掛ける(Pompeo’s New North Korea Envoy Wades Into Diplomatic Minefield

―スティーヴン・ビーガンは対北朝鮮特別代表に適任だと多くの人が考えている。しかし、Stephen Biegun is widely considered a great pick for the job. But it may be an impossible task in the first place.

 

ロビー・グラマー筆

2018年9月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/09/25/north-korea-mike-pompeo-stephen-steve-biegun-state-department-trump-kim-jong-un-diplomacy-nuclear-negotiations-united-nations-general-assembly/

 

就任してから1カ月、トランプ政権における対北朝鮮政策におけるキーマンであるスティーヴン・ビーガンは、北朝鮮の指導者金正恩委員長とアメリカのドナルド・トランプ大統領との間の2度目の首脳会談実現に向けた、彼にとっての最初の試練に直面している。

 

マイク・ポンぺオ国務長官は今週の国連総会において、トランプ大統領と金委員長との間の2度目の首脳会談の地ならしを行っていると明言した。

 

ビーガンは国務省の北朝鮮に対する特別代表に新たに就任した。第2回目の米朝首脳会談が実現する場合、ビーガンはこの動きの中心的役割を果たすことになるだろう。ビーガンは、ジョージ・W・ブッシュ政権で働いた経験を持つ。この時に世界で最も手ごわい、経験と知識を持つ交渉者を相手に交渉をしていた。北朝鮮はこれまで数十年間にわたり、アメリカの平和と核を巡る交渉の邪魔をしてきた。そうした北朝鮮の現体制を維持することを至上命題にしている高官たちに対してはビーガンの対北朝鮮特別代表就任は大きな負担となるだろう。

 

同時に、ビーガンは、北朝鮮問題に取り組みたいと考えているトランプ大統領の矛盾したメッセージやころころと変更される目標をうまく誘導しなければならない。今週ニューヨークで開催された国連総会において、トランプは金委員長の「勇気」に感謝し、米朝両首脳が近々再び会談を行うと示唆しつつ、北朝鮮は非核化に向けて「大きな進歩」を遂げていると発言した。しかし、多くの専門家たちは、金委員長はこれまでに重要なことは何も放棄していないということに同意している。

 

これら2つの挑戦はビーガンの任命が抱えるパラドックスを浮き彫りにしている。ビーガンは適格だと多くの人々は評価しているが、ビーガンの任務の遂行は不可能ではないかという懸念も出ている。

 

ポンぺオは、先月、ビーガンをフォード社から引き抜いた。そして、アメリカの外交政策において最も厳しい挑戦に対する責任を与えることになった。この挑戦は大統領が個人的に重視しているものだ。ビーガンは、フォード社に入社する前に、連邦議会のスタッフとして15年間、外交政策に関して専門性を涵養していた。ビーガンの任命に対して、共和党の外交政策専門家たちの間からは、適任だという好意的評価が出ている。

 

しかし、ビーガンを称賛している専門家や元政権幹部たちは、ビーガンの任務は最初からつまずくだろうとも述べている。トランプは6月にシンガポールで行われた金委員長との首脳会談において、何も具体的なことは決まっていない段階においてツイッター上で勝利宣言をしてしまった。この後では特別代表の任務は難しいものになると専門家たちは述べている。「北朝鮮からの核の脅威はもはや存在しない」とトランプはツイッター上で明言した。

 

ジョージタウン大学所属のアジア専門家ヴィクター・チャは、次のように語っている。ちなみにチャはトランプ政権の駐韓米国大使になると目された人物だ。「トランプ政権において北朝鮮との交渉者になることは困難なことである。交渉者はトランプ大統領が既に獲得したと宣言したものを獲得するために交渉を行わねばならない立場に追い込まれる。このような立場に追い込まれるのは喜ばしいことではない」。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)に勤務したピーター・フィーヴァーは次のように述べた。「北朝鮮に対しては民主党も共和党も25年にわたって失敗を重ねてきた。従って、誰がやっても北朝鮮との交渉を妥結させることはできないのではないかと考えている。しかし、私は同時に、ビーガンは少なくとも北朝鮮に騙されることはないと断言できる」。

 

今回の記事を書くにあたり、ビーガンへのインタヴューを国務省に申請したが、却下された。報道担当官はまた、今秋国連において、ポンぺオとビーガンが北朝鮮の担当者と面会するのかどうかについてコメントを拒否した。「国務省には発表すべき新たな会談の予定はない」とだけ発表した。

 

本紙では10名を超える現職、元職の外交政策に関係する政権関係者に取材を行った。彼らは、ビーガンについて、複雑な外交政策の様々な問題に対処してきた経験を持つと称賛している。1990年代、ビーガンはジェシー・ヘルムズ連邦上院議員の上級顧問を務めた。当時、ヘルムズ議員は連邦上院外交委員会委員長を務めていた。この時、ビーガンは裏方として、冷戦期にワルシャワ条約機構に加盟し、西側と敵対していた東欧諸国をNATOに加盟させてNATOの規模を拡大させるという計画を立案し、成功させた。この作業には、保守的なタカ派の人々をクリントン政権に協力させることが必要不可欠であった。また、NATOの加盟国増大に関してはアメリカ連邦上院の承認が必要であった。

 

ブッシュ政権において国防総省に勤務し、連邦上院に属するビーガンと一緒に仕事をした経験を持つイアン・ブレジンスキーは「ビーガンがNATOの拡大において極めて重要な役割を果たした」と語っている。ブレジンスキーは更に、ビーガンは当時の連邦議会のタカ派的な考えを、具体的な、実現可能な法律にするために役割を果たしたと述べた。この法律によって、NATOの地図は書き換えられることになった。

 

それから数年後、ビーガンは、国家安全保障会議(NSC)の上級秘書としてホワイトハウスに勤務し、2002年にブッシュ政権が発表した「国家安全保障戦略(NSS)」の策定において中心的な役割を担った。国家安全保障戦略の策定は数カ月にも及ぶ苦行であった。それぞれ異なった目的を持つ官僚や政府機関を説得し、最終的に、大統領の考えを反映させた一つの文書に落とし込み、それに同意させるということは困難な任務であった。

 

ブッシュ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスティーヴン・ハドリーは、ビーガンはこれまでの経験を対北朝鮮特別代表という新たな任務に活かすことが出来ると述べた。

 

ハドリーは本紙の電話取材に対して次のように述べた。「ビーガンのこれまでの経験と知識は対北朝鮮特別代表という任務にとって適したものだと考えている。アジア地域の政治、核拡散問題、北朝鮮問題についても理解している。ビーガンはポンぺオ国務長官とトランプ大統領を助けて、対北朝鮮政策全体をうまく構築することが出来るだろう」。

 

それでも、ビーガンはヨーロッパとロシアの専門家であって、北朝鮮との交渉では経験したことのない言葉遣いや複雑さにぶつかることだろう。北朝鮮との交渉では進展や成果は幻のように消え去ってしまう可能性もある。北朝鮮の交渉者たち、特にヴェテランの交渉者たちは、交渉の文書の中の一つの単語、一つの文を動かして、妥協を台無しにしてきた。

 

CIAに勤務した経験を持ち、現在はブルッキングス研究所上級研究員を務めるジュン・パクは、ビーガンの北朝鮮に関する知識や経験不足は「諸刃の剣」となると指摘する。パクは、次のように指摘する。「北朝鮮問題にかかわってこなかった人々は、北朝鮮問題解決のための“斬新な”考えを持つことができる。彼らは歴史を振り返ることで苦境に陥るというようなこともないだろう。また、北朝鮮との交渉で苦渋を飲まされてきたという経験に束縛されることもないだろう」。

 

パクは続けて、「しかし、こうした長所に、彼らの短所も潜んでいる。深い歴史的な背景が必要な場面が出てくるが、経験がない人々にはそれがない」とも述べている。

 

ビーガンは外交上の二正面作戦を行わなければならないだろう。一方は対北朝鮮、一方は対ワシントン(トランプ政権)である。

 

トランプ大統領は米朝首脳会談直後に北朝鮮が核兵器放棄を約束したと喧伝したが、北朝鮮政府は核兵器保有にこだわり、交渉を長引かせようとしている。ジーナ・ハスペルCIA長官は月曜日、珍しく公の場で発言し、その中で、北朝鮮が核兵器を放棄するのかどうか疑念を持っていると述べた。しかし同時に、米朝関係は、トランプ大統領による金委員長に対する働きかけによって、1年前に比べて格段に改善していると持述べた。

 

ポンぺオ自身は、今年6月に訪朝して、北朝鮮の高官たちがどれほど掴みどころもなく、予測不可能な動きをするのかを実感したはずだ。この時の訪朝では、金正恩はポンぺオと会談を持つことを拒絶することで、ポンぺオを鼻であしらった。そして、その直後に発表した声明では、ポンぺオが行った様々な要求は「ギャングが行うような」内容であったと批判したのだ。

 

ここでビーガンの経験と才能が必要となる。ビーガンはワシントンにおいては尊敬を集めているが、大統領から権限を与えられた特別代表として北朝鮮がきちんと対応するのか、アメリカ側からのこれまでは別の邪魔が出てくるのかということは明確になっていない。こうした障害のために、北朝鮮側はトランプ自身と意思を確認するために苦闘することになる。

 

CIA朝鮮半島担当部門の次長を務め、ワシントンに本部を置くシンクタンクであるヘリテージ財団に在籍するブルース・クリングナーは次のように述べている。「ポンぺオが金正恩と会談を持つことや交渉の進展をもたらすことに苦労しているのなら、それよりも低い地位の官僚たちが大統領の意向を受けて交渉に行って、何か成果を上げることが出来るのだろうか?」

 

北朝鮮の指導者として初めてアメリカ大統領と一対一の首脳会談を行った金正恩は、トランプとだけしか話したくないのだ。北朝鮮政府は巧妙にトランプを批判することを避けている。ワシントンの国家安全保障問題の専門家たちを攻撃しながら、トランプ大統領を称賛するような発表を行っている。

 

ビーガンはトランプ大統領の気まぐれな政策と格闘しなければならなくなるだろう。トランプは北朝鮮政府を戦争で脅迫していたが、それが金正恩を称賛するようになり、それからも戦争と称賛の間の複雑なメッセージを次々と発してきた。

 

シンガポールでの首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に、米軍の韓国軍との共同軍事演習を延期すると発表し、共同宣言を発表したが、専門家たちは中身が曖昧過ぎて本当の進展を明確にすることはできないと評価する内容であった。ビーガンが特別代表に任命された後の今年8月、トランプ大統領は突然、ポンぺオとビーガンによる包丁を中止すると発表した。その理由として、交渉での進展がなかったことが挙げられた。

 

一方、ポンぺオ国務長官は先週、北朝鮮と韓国との対話を取り上げながら、非核化に向けた交渉はトランプ政権の第一期目の任期が終わるまでには終了することになるだろうと述べた。しかし、ポンぺオは月曜日には、自身の発言内容から後退する発言を行った。ニューヨークで開催された国連総会の記者会見で、交渉に期限を区切るというのは「馬鹿げた」ことだと発言した。

 

ブルッキングス研究所のパクは、「トランプ政権からは複雑で事実が歪曲されたメッセージが多数発信されている」と述べている。

 

このような批判に対して、国務省の報道担当官はEメールで次のように発言している。「私たちは完全に証明される非核化を望んでいる。大統領は北朝鮮が最終的に完全に非核化され、核兵器が再び問題にならないようにしたいと望んでいる」。

 

トランプと金正恩が再び会談を持ち、別の合意に達することがある場合、トランプ大統領は合意内容を具体化できる有能な高官を必要とし、ビーガンはその任務にふさわしいと複数の専門家たちが口を揃えている。しかし、トランプと側近たちが最終的なものだと発表する合意内容は多くの北朝鮮専門家たちを苛立たせるものとなるだろう。

 

ジョージタウン大学のヴィクター・チャは次のように述べている。「トランプと金正恩は合意に達することはできると思う。しかし、問題は、その合意が素晴らしい合意か、悪い合意か、嘘の合意か、ということだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、中国が文化外交の一環として、中国への留学生増加を図っている、一方で、アメリカは留学生のための予算を削減しているという内容の記事をご紹介します。

 

 戦後、冷戦期、自由主義国ではアメリカ留学、共産主義国ではソ連留学がエリートへの近道でした。アメリカやソ連で最新の学問を学び、同時に人脈を作り、価値観や思想を習得して、母国に帰り、政治、経済、学術などの分野で偉くなる、と言うのがどこの国にもあった出世物語です。

 

 日本でも戦後、フルブライト奨学金を得て、アメリカに留学することはエリートへの近道でした。日本は皆が貧しくて御飯を食べるのが精一杯、という時代に、毎日ステーキを食べ、蛇口をひねればお湯が出るという夢の国アメリカに優秀な若者たちが渡っていきました。日本からのアメリカへの留学生は1990年代後半には3万人を超えましたが、現在までに数を減らし、現在は1万5000人程度にまでなってしまっています。

 

 冷戦期、アメリカは各国の優秀な学生たちを生活費まで保証する奨学金付きでアメリカの大学で学ばせました。そうすることで、親米的なエリート層を形成するという目的がありました。その当時、ソ連の成功で光り輝いていた社会主義計画経済に対抗するための、「近代化理論」の実践のための人材として活用しようと考えていました。アメリカからの資金や技術の援助、そして人材育成によって、発展途上国を近代化し、経済成長させようとしました。

 

しかし、その試みは多くの場合、それぞれの国の事情を無視して行われ、アメリカからの資金援助は有効に使われず、アメリカで博士号を取得したような人材も母国に帰っても働き口がなく、タクシー運転手になるしかないというような状況を生み出しました。

 

 アメリカでは留学生に対する奨学金の予算を削減しています。それに対して、中国はアジアやアフリカの発展途上国、また、一帯一路計画の参加国からの留学生を増やそうと様々な試みを行っています。その成果として中国への留学生が増加しています。今なら、中国に留学して学問を学び、人脈などを広げておけば、母国に帰った時に中国関係の仕事に就くことができるということもあり、その数はどんどん増えているようです。

 

 昔から遅れた国は進んだ国に若者を送り、学問や技術を学ばせてきました。日本でも、遣唐使と一緒に留学生や留学僧を派遣し、勉強させていました。帝国には最新の知識や情報、思想が生まれ、集まります。中国も1970年代末に改革開放を打ち出してから、アメリカに多くの優秀な若者を送り、勉強させてきました。そして、その成果を利用して、現在のように経済発展を遂げてきました。そして、中国がアメリカに追いつき追い越し、世界の中心、世界帝国になるという話が現実味を帯びるまでになってきました。

 

 アメリカの留学生に対する奨学金削減と中国の留学生誘致という現象は、帝国の交代ということを印象付けるものとなっています。

 

(貼り付けはじめ)

 

スタンフォードのことは忘れて、清華に招かれる(Forget Stanford, Tsinghua Beckons

―アメリカは、アフリカとアジア諸国からの留学生を中国に取られている

 

チェン・リー、シャーロット・ヤン筆

2018年10月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/10/02/forget-stanford-tsinghua-beckons/

 

 

最近中国で放映されたあるテレビ番組の中で、ケニア人の学生たちが中国語で書かれた指示が掲示されている教室の中で、教授の話を聞いている様子が流された。この学生たちはナイロビではなく、中国の最高峰の大学である北京大学で勉強している。ケニア人の学生たちは、自分たちが母国では得られない教育の機会を中国が生活費まで含めた奨学金を支給することで与えてくれたこと、彼らは母国に帰って母国を豊かにするための技術の習得を行うつもりだということを話していた。

 

中国は留学生に対する恩恵をもたらす動きを加速させている。太平洋の反対側に位置する国アメリカは、長年にわたり、世界中で最も賢く、好奇心溢れる学生たちを惹きつけ、留学させてきた。そのアメリカでは中国とは反対の動きが起きている。様々な政策や行動を通じて、トランプ政権は外国の学生たちがアメリカを敬遠するように仕向けている。トランプ政権のスティーヴン・ミラーが進めた留学生数の制限によって、中国からアメリカへの留学生も減少している。中国はこのアメリカで加速している動きを、アメリカとの間にある差を埋める機会だと捉えている。アフリカとアジアの国々において、この変化は既に影響を及ぼしている。外国人学生がアメリカではなく、中国の大学を留学先に選ぶようになっており、これはアメリカのソフトパワーを構成する重要な要素が消え去る危機に瀕していることを示している。

 

高等教育ということになれば、アメリカは今でも世界の中心ということになる。2016年、100万人以上の留学生がアメリカの大学に在籍していた。一方、中国の大学には50万人弱であった。

 

しかし、中国はアフリカとアジア諸国の学生たちにアプローチをしている。特に発展途上の国々で、中国との経済関係を深めている国々へのアプローチを強め、それに成功している。2016年の段階で、60以上のアフリカとアジアの国々がアメリカに向けてよりも中国に向けてより多くの学生を送っていた。その具体例としてラオスを挙げる。ラオスは、中国に9907名の学生を送り出し、アメリカにはわずか91名であった。米中間の大きな差は次の国々でも起きている。アルジェリア、モンゴル、カザフスタン、ザンビアは中国に送り出した学生数がアメリカへの学生数の5倍以上となっている。2014年以降、中国に留学したあふふぃか諸国の学生数の総数はアメリカに向かった学生数の総数を超えた。2016年、中国で6万人以上のアフリカからの留学生が勉強していたが、2000年の時と比べてその数は44倍となっている。

 

同時に、中国は、国際的な高等教育システムの拡大を図っている。一方、アメリカ政府は国際的な高等教育システムへの財政的関与を縮小している。フルブライト奨学金プログラムは1946年以降、アメリカの文化外交の象徴となってきたが、オバマ政権下から、予算削減に直面している。アメリカ政府が資金を出しているこのプログラムの参加者たちは、後に世界中の国々の学術、政治、シンクタンク、ジャーナリズム、芸術、ビジネスの分野で重要な地位を占めるようになっている。このような輝かしい歴史と成果があるにもかかわらず、トランプ政権は、2019年度の予算計画では71%の予算削減を求めている。

 

アメリカ各地の公立大学は政府からの財政支援削減に直面している。そのために学費の値上がりと教育の質の低下を招いている。2005年から2015年の間に、公立の教育機関での学部教育の学費は34%も値上がりし、私立の教育機関でも26%も値上がりしている。

 

アメリカ人学生のための学費を低い水準に維持するために、多くの大学ではより高い学費を支払える留学生の獲得を目指している。留学生の入学者数の合計は増加しているが、留学生は上流、中流階級出身者に集中するようになっている。これは、中国がターゲットにしているより貧しい国々を見落とすようになっている。2016年から2017年の学事暦において、アメリカの大学に留学している100万の学生のうちほぼ半数は中国とインドからの学生であった。これら2か国を除くと、韓国とサウジアラビアからの学生が多いが、アメリカへの留学生の総数に占める割合が3%以上を占める国はどこにもない。

 

●中国とアメリカのアフリカ・アジア諸国の大学在籍者数

 

STUDENT COUNTRY OF ORIGIN            CHINA    UNITED STATES

Algeria                   992         192

Cambodia                         2,250        512

Indonesia             1           4,714      8,776

Kazakhstan                    13,996         1,792

Kyrgyzstan                     3,247           216

Laos                       9,907           91

Mongolia                         8,508          1,410

Tajikistan                        2,606           204

Tanzania                                                       3,520            811

Thailand                                                 23,044           6,893

Zambia                                                3,428          469

Source: Open Doors 2017, Institute of International Education; International Students in China, 2011-2016, China Power Project, Center for Strategic & International Studies.

 

アメリカにおける学費のコストは上昇し、留学生に対する奨学金の枠が制限されるようになっている。そのために、アメリカの教育システムは、世界の多くの国々の学生たちにとって利用不可能なものとなっている。カナダとオーストラリアは労働ヴィザの制限を緩和し、学費も低く抑えている。しかし、低所得、中間レヴェルの所得の国々からの学生たちにとってはこれら2か国への留学も難しい。対照的に、中国は、アジアとアフリカ諸国からの留学生を惹きつけるための政策と財政援助策を拡大している。

 

中国は高等教育における機会の提供を拡大するための様々な政策を採用している。特に、中国が貿易関係や外交関係を深めつつある地域からの留学生を惹きつけることに注力している。2003年から2016年にかけて、タイ、ラオス、パキスタン、ロシアからの留学生数は10倍以上になっている。中国の一帯一路計画の重要な対象国であるカザフスタンからの高等教育への留学生は65倍に急増している。

 

過去10年、中国は高等教育システムの質を改善することに注力してきた。当時に、留学生に対する政府資金による奨学金を拡大してきた。2017年、留学生の9人に1人は中国政府からの奨学金を得ていた。2000年から2017年にかけて、助成金・補助金の受給者数の総数はほぼ11倍に増えている。英語で授業を行う大学の数は拡大しているし、教育と研究の質を改善するために努力を続けている。中国は、アフリカとアジア諸国に対する貿易とインフラ整備プロジェクトを拡大させている。中国の教育の価値はこれらの国々で上昇している。学生たちは中国に留学し、帰国後に中国に関連した仕事に就くことを求めている。

 

●中国政への留学生の資金種別

internationalstudentsenrollmentinchina001
 
 

ここ数年、中国政府は一帯一路計画に参加している国々からの学生たち向けの政府が資金を出す奨学金プログラムを拡大させている。2016年に中国政府の奨学金プログラムを受けた留学生の出身国10か国のうち、8か国は一帯一路計画の参加国である。中国政府は、一帯一路計画の参加国だけに向けた様々な教育プロジェクトを実施している。中国政府は名門大学である中国人民大学に付属の「シルクロード・スクール」を発足させた。この学校には一帯一路計画の参加国の学生たちが今年の9月に入学した。この学校の中国政治、経済、文化を学ぶ修士課程に入学する学生たちすべてに学費と生活費をカヴァーできる奨学金を支給することになる。

 

奨学金を得て中国の大学で学位を得ることよりも、自由主義的価値観と政治的な開放性を持つアメリカの大学に行くことの方に魅力を感じる学生がいるのは当然のことだ。ここ数年、中国の大学で、学問の自由が制限されるケースも出ている。しかし、多くの学生たちにとっては、アメリカの価値観や理想は、中国における高等教育よりも魅力的という訳にはいかない。奨学金が充実しているということもあるし、帰国後に中国関連の職に就けるということも大きな魅力になっている。

 

文化外交の一形態として、教育が外交関係に果たす役割について、中国政府の幹部たちは楽観的な考えを持っている。ある程度、中国はアメリカが撤退しつつある道を進もうとしている。これまでの数十年、特に冷戦期、アメリカの指導者たちは留学生に対する教育、特に将来の指導者に対する教育は、アメリカの価値観を拡散し、革命を伴わない平和的な進化を促進し、他国の発展に対して影響を与えるための有効な手段だと考えていた。しかし、アメリカで学んだ留学生たちが必ずしもアメリカの価値観や理想に対して忠実ではないということが分かり、アメリカの教育における関与は成功とも失敗とも言えないということになり、留学生を通じて世界に影響を与えるという政策に対する信頼は消えつつある。アメリカにおいてポピュリズムが勃興しているが、指導者たちは文化外交よりも国内政策を重視するようになっている。

 

教育に影響を与えるということはゆっくりとしたプロセスであり、教育システムは特にゆっくりとしか変化しない。これからしばらくは、アメリカは高等教育における国際的な基準となり続けるだろう。自由な学問研究と独立した思考、革新的な研究、最新の技術がアメリカの高等教育の長所であり、世界中の羨望の的だ。しかし、アメリカのソフトパワーのレヴェルはアフリカとアジアの発展途上国にどれほど基盤を持てるか、特にそれらの国々に対して、アメリカが教育面で支援をできるかにかかっている。アメリカが外国の学生たちに教育の機会を与える力を失いつつあり、そのために、アメリカが彼らに影響を与える機会もなくなるであろう。経済成長が著しい中国が教育の機会を与えることで、アメリカと張り合っている中で、それに負ければ、アメリカの影響力は減退するだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカの中間選挙(Midterm Elections)まで残り約1カ月となりました。現在のところ、連邦上院では、共和党の改選議員が少ないこともあり、共和党が過半数(共和党:51議席、民主党:49議席)、連邦下院では、民主党が過半数(218)を超える勢いです。

 

 アメリカ政界に大きな影響力を持つコーク・インダストリーズ会長チャールズ・コークが率いる政治運動ネットワークが今年の中間選挙に向けて動きを活発化させています。チャールズは弟デイヴィッドと共にコーク兄弟として、共和党の大口献金者として活動していましたが、今年6月にデイヴィッドが健康上の理由で会社経営や政治活動からの引退を発表しましたので、「コーク兄弟」という枠組みは解消となりました。

 

 今回、コーク・ネットワークは無条件で共和党の候補者を応援しないと決めています。トランプ大統領の推進した財政支出や関税政策について賛成した現職議員は応援しない場合があるとしているようです。また、刑法改革や移民政策で、子供の頃に親に連れられてアメリカにやってきて不法移民となった人々に対する市民権付与を主張する民主党議員でも応援を検討しているということです。

 

 チャールズ・コークが信奉しているリバータリアニズムは政府による規制、経済や社会への介入を嫌うので、外国からの輸入品へ関税をかけることには反対です。この点で、政府が財政出動することにも反対となります。また、人々の自由権利を最大限擁護するので、親に連れられて不法移民状態になった人々への市民権付与にも賛成です。

 

 こうして見ると、チャールズ・コークは共和党というよりは、ドナルド・トランプ大統領と相容れず、かえって民主党の一部の政策と近いということになります。

 

 2016年の米大統領選挙では、オバマ政権の副大統領であったジョー・バイデンに対する待望論がありました。ヒラリー・クリントンが大統領になれば、積極的に外国への介入を行って、アメリカが泥沼にはまってしまうという危機感がありました。そうした中で、リベラル派とリバータリアン派が協力して、リベラル・リバータリアン連合を形成して、バイデンを推して、ヒラリーを追い落とすべきだという主張もありました。

 

 今回の中間選挙では、チャールズ・コーク率いるコーク・ネットワークは反トランプの姿勢を打ち出しています。コークにしてみれば自分たちは長年共和党員であったが、トランプなんてついこの間まで長く民主党員をやってヒラリーと親密だったではないかという気持ちもあるのでしょう。そして、共和党の議員でトランプ寄りの姿勢を取る議員を応援せずに、民主党の議員を応援する場合もある、検討するとまで打ち出しています。トランプの高関税政策などは民主党が本来主張してきた政策ですから、民主党にしてみても、トランプ政権に対しては是々非々ということになるでしょう。

 

 トランプ大統領がこれまでにない動きを見せているために、アメリカ政治もしばらく奇妙な連合と分裂が起こることになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

コーク・ネットワークが中間選挙に向けてスーパーPACを発足させる(Koch network launches super PAC ahead of midterm elections

 

ジョナサン・イースリー筆

2018年9月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/405820-koch-network-launches-super-pac-ahead-of-midterm-elections

 

大富豪の活動家チャールズ・コークの支援を受けている政治運動ネットワークは月曜日、新たなスーパーPAC(政治活動委員会)を発足させた。設立の目的は、ネットワークの保守的なそしてリバータリアニズムの価値観を共有する候補者を当選させることだ。

 

コーク・ネットワークの政治部門である運動組織「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ(Americans for ProsperityAFP)」は、「AFPアクション」という組織を新たに創設した。AFPアクションは、ヒスパニック系の創設したスーパーPACである「リブレ・アクション」、「コンサーンド・ヴェテランズ・フォ・アメリカ(アメリカの現状を憂うる退役軍人たち)」と協力して、「人々の秘めている可能性の実現を妨げる国内、対外関係の両方における障壁を壊すという私たちの目標を共有する候補者たちを支援する」ことを目的としている。

 

新たなスーパーPACであるAFPアクションは、保守的、もしくはリバータリアン的考えを持つ大富豪たちから巨額の資金を集めることが出来るだろう。しかし、スーパーPACの役員たちは、2018年の中間選挙でどれくらいの資金を投入するのかという質問に対して、回答を拒否した。

 

今回の中間選挙で、コーク・ネットワークは総額で4億ドル(約440億円)以上を投入すると見られている。

 

AFPアクションの広報担当ビル・リッグスは次のように語った。「AFPはこれまで、接戦となる選挙において、私たちの支持する政策の実現に協力する候補者を応援することで、政治に新たな力を送り込んできた。AFPアクションは、こうした私たちの努力の幅を広げるための新しい道具となり、より大きな影響力を与えることになる」。

 

コーク・ネットワークは、トランプ大統領と共和党が過半数を占める連邦議会に対する不満を高め、戦略を練り直している。そうした中でスーパーPACであるAFPアクションが創設された。

 

コーク・ネットワークはトランプの関税政策に反対を表明し、コーク・ネットワークの幹部たちはトランプ大統領の言動を批判し続けている。彼らは、今年の3月に連邦議会が1兆3000億ドル(約140兆円)の公的支出計画を承認し、トランプ大統領が署名して法制化したことにも怒りを募らせている。

 

今年初めに開催された大口献金者たちの集まりにおいて、コーク・ネットワークは支援する候補者をより厳しく選択していくと発表した。共和党が連邦上院で何とか51議席(全100議席)を確保し、連邦下院では民主党が過半数を獲得するという厳しい見通しではあるが、共和党所属でも支援しない候補者も出てくると発表したことになる。

 

AFPはノースダコタ州の連邦上院議員選挙で、現職のハイディ・ハイトカンプ連邦上院議員(ノースダコタ州選出、民主党)に挑戦する共和党のケヴィン・クラマー連邦下院議員(ノースダコタ州選出、共和党)を支援しないと決定した。ノースダコタ州は2016年の大統領選挙でトランプが圧勝した州である。AFPは、財政支出法案、農業関連法案、輸出入銀行創設に賛成したクラマーを支援しないと発表した。

 

コーク・ネットワークは今回の中間選挙で財政支出に賛成した共和党議員を懲らしめ、刑法改革と実験的な麻薬解禁法など重要な分野で自分たちの考えに沿った投票を行った民主党議員を支援するために、広告や手紙などに多額の資金を投入している。

 

コーク・ネットワークはまた、「ドリーマーズ(訳者註:子供時代に親に連れられてアメリカにやってきて成長した不法移民)」への市民権付与を進めるために民主党の候補者への支援も検討している。

 

現在でも、コーク・ネットワークの資金のほとんどは、共和党の候補者や保守的な主張に提供されている。ネットワークは、トランプ大統領によって指名されたアメリカ連邦最高裁判所判事候補ブレット・カヴァナウの承認を訴えるテレビ広告に数百万ドルを投じている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカで創業された、インターネット通販最大手のアマゾン社に対しては、アメリカ国内でも様々な批判がなされています。税金を不当に逃れている、従業員の待遇が劣悪だ、というのが批判の内容です。インターネット通販は私たちの生活に浸透し、いまやなくてはならないものとなりました。より正確に言えば、物流・宅配サーヴィスが充実し、それに私たち消費者とアマゾンをはじめとする業者側が依存しており、物流・宅配サーヴィスが滞れば、私たちの生活もまた停滞を起こすということになります。

 

 アマゾン社は書籍だけではなく、様々な商品を販売しています。書籍を安売りはできませんが(その代わりにポイントを付けて販売しています)、その他の商品は店頭小売よりも安く販売し、シェアを拡大しています。生鮮食料品はまださすがに近くの商店やスーパーで買っている方がほとんどだと思いますが、そのうちに、アマゾン社が私たちの生活に必要な物資の流通を「支配」するまでに大きくなることも考えられます。自由市場、競争経済ということであれば、安く物品を提供できるとなれば消費者から選ばれることになります。その結果、他の競争相手を淘汰して巨大な怪獣のように1つだけ残ってしまう、独占が生まれてしまうということも可能性として考えられます。

 

 アメリカ国内でアマゾン社を批判しているのは、ドナルド・トランプ大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員です。共に2016年の米大統領選挙に出馬しました。バーニー・サンダースはヒラリー・クリントンを苦しめ、トランプは共和党体制派を破り、最後にはヒラリーに勝利し大統領になりました。どちらも民主、共和両党の体制派を攻撃し、指示を集めました。その2人がアマゾン社を攻撃しているということが重要なポイントとなります。

 

 トランプとトランプ政権を攻撃している『ワシントン・ポスト』紙のオーナーがアマゾン社の創業者でCEOのジェフ・ベソスです。ジェフ・ベソスはバラク・オバマ前大統領を支持していたこともあり、トランプはベソスとアマゾン社を攻撃しています。バーニー・サンダースは、アマゾン社の労働条件が悪いこと(儲かっているのに従業員を最低賃金で酷使している)や租税回避ということで攻撃しています。また、格差社会という点からもベソスを批判しています。日本でも税務当局がアマゾン社が租税を回避していると指摘しています。

 

 私たちが便利に使っている存在がやがて巨大になり、私たちをコントロールする、などということがあり得ます。市場至上主義(市場がなんでも最適に配分できるとする考え)を基盤とする資本主義において、競争の中から巨大な企業が生まれ、それが独占企業にまで成長するということは、アメリカにおいても19世紀後半から20世紀にかけて、石油業界で実際に発生しました。ジョン・D・ロックフェラー一世が創設したスタンダード石油が石油の採掘、精製から輸送までを独占するという事態が起きました。アマゾン社が流通の分野において、21世紀版のスタンダード石油になるかもしれないと私は危惧しています。

 

(貼り付けはじめ)

 

バーニー・サンダースはアマゾン社に対して、「ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語」を使っていると批判するヴィデオをシェアすることで新たな攻撃を行った(Bernie Sanders renews attacks on Amazon, shares video accusing company of 'Orwellian language'

 

マイケル・バーク筆

2018年9月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/405894-sanders-renews-attacks-on-amazon-shares-video-accusing-company

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)は今週月曜日、新たに「アマゾン」社に対して攻撃を行った。サンダースは、自身のツイッター上に、アマゾン社に対して「ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語」を使っていると批判するヴィデオをシェアした。

 

サンダースはヴィデオの1つをシェアする際に次のようにツイートした。「億万長者のアマゾン社CEOジェフ・ベソスと最低賃金で雇われている平均的なアマゾン社の従業員との違いをぼやかすために符牒を使っている。このことをジャーナリストのジェイムズ・ブラッドワースのヴィデオで見てみよう」。

 

ヴィデオの中の1つで、アマゾン社の労働環境についての著書を持つジェイムズ・ブラッドワースは次のように語っている。「アマゾン社が使っている符牒は、ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語のようなものだ。そして、符牒を使って、みているあなたのような普通の労働者と経営陣の違いをぼやかしているのだ」。

 

ブラッドワースは次のように語った。「アマゾン社では倉庫を倉庫と呼ぶことは許されない。フルフィルメント・センターと呼ばなければならない。アマゾン社では働いている人間を労働者や上司と呼ぶことは許されない。同僚と呼ばなければならない。こうしたことが行われるのは、年間数億ポンドを稼ぐジェフ・ベソスと最低賃金しか稼げないパッケージ要員の大きな違いをぼやかすためだ」。

 

サンダースは先週、巨大企業に対して、低賃金の労働者に対する連邦政府の福祉プログラムへの課税を行うための法案を提案した。サンダースはこの法案とは別にベソスについてのツイートを行った。

 

サンダースは、先週「補助金を停止することで悪い雇用者を止める」法案を提案した。この際、発表した声明の中で次のように述べた。「アメリカ国民は大富豪たちに補助金を出していることに飽き飽きしている」。

 

サンダースは次のように述べている。「収入と財産の格差が増大している。アメリカで最も富裕な人物3名の財産の合計はアメリカ国民の下半分の財産の合計よりも多い。アメリカ国民の収入の合計の52%を上位1%が取っている。こうした状況の中、アメリカ国民は、アメリカ国内の巨大なそして大きな利益を出している各企業を所有している億万長者たちに補助金を出していることに呆れ返っている」。

 

今年8月、アマゾン社はサンダースからの「従業員を不当に扱っている」という攻撃に対して、反論を行った。

 

アマゾン社は声明の中で、「他の企業と競争しても負けない賃金、コントロール下にある労働環境、安全な職場に加え、アマゾン社は従業員に対して、健康保険、障害保険、退職貯蓄制度、自社株持ち株制度を含む包括的な福祉制度を完備している」と述べている。

 

=====

 

ベソスは幼稚園・保育園のネットワークを創設:「子供たちは消費者ということになる」(Bezos to launch network of preschools: 'The child will be the customer'

 

ハーパー・ニーディグ筆

2018年9月13日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/technology/406514-bezos-to-launch-network-of-preschools-the-child-will-be-the-customer

 

アマゾン社のCEOジェフ・ベソスは今週水曜日、20億円を投じて慈善事業基金を設立すると発表した。この基金の目的は、幼稚園・保育園の新たなネットワークに資金を出し、ホームレスの家族を支援している非営利団体を支援することである。

 

ベソスはツイッターを通じて、行政サーヴィスが十分に提供されない地域に幼稚園・保育園に設置され、新たに創設される「ベソス・デイ・ワン基金」によって運営されると述べた。

 

ベソスは声明の中で次のように述べている。「私たちはアマゾン社を躍進させているものと同じ諸原理を使う。その中で最も重要な原理は、本物の激しい消費者の欲望ということである。子供たちは消費者、なのだ」

 

『フォーブス』誌の推定では、ジェフ・ベソスの資産は1630億ドル(約18兆円)に達し、近代史上最も富裕な人物となる。アマゾン社の創業者ベソスは、木曜日に「エコノミック・クラブ・オブ・ワシントン」で講演を行う予定でワシントンに滞在中であり、その中で今回の発表がなされた。

 

ジェフ・ベソスと妻マッキンジーは最近になって初めて大きな政治献金を行った。2人は1000万ドル(約11億円)を提供してスーパーPACを創設した。このスーパーPACの目的は、民主、共和両党の連邦議会議員選挙候補者で、退役軍人たちを支援する人たちを当選させることである。

 

木曜日の声明の中で、ベソスは新しい基金は、ホームレスとなった家族を支援する民間団体を毎年表彰するリーダーシップ表彰を行うことも併せて発表した。

 

アマゾン社の報道担当者は新しいプロジェクトについての更なる詳細については何も述べなかった。

 

(貼り付け終わり)

 

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 古村治彦です。

 

 2018年9月18日から韓国の文在寅大統領が北朝鮮を訪問し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談を行っています。本日、平壌共同宣言に両首脳が署名しました。南北の間で武力を使用しないこと、北朝鮮北部のミサイル施設を廃棄すること、寧辺の各施設も米国の出方次第で廃棄すること、年内に金正恩委員長が韓国・ソウルを訪問することが南北間で合意されました。今回の共同宣言によって、「朝鮮戦争は実質的に終結した」と韓国政府高官は強調しています。

 

 今回の共同宣言と南北の軍事分野での合意によって朝鮮戦争は「実質的に」終結した、という点は重要です。朝鮮戦争の休戦協定に署名したのは、中国人民志願軍司令員の彭徳懐と朝鮮人民軍司令官の金日成、国連軍総司令官のマーク・W・クラーク米陸軍大将です。韓国は署名の当事者ではありません。ですから、休戦協定と今回の共同宣言は全く別のものと考えるべきです。中国と国連軍(実質はアメリカ軍)が関係していないのですから。

 

 韓国が北朝鮮に対して武力を使用しない、北朝鮮も韓国には武力を使用しないということが今回合意された訳ですから、アメリカがもし北朝鮮に武力攻撃を行う際には、韓国は米軍と共同歩調を取らないということになります。そうなると、米韓両軍で行われる共同軍事演習も行われるのかどうか微妙ということになります。ですから、今回の共同宣言は韓国がアメリカ離れを進めていることの証左となります。

 

 アメリカが韓国内にある米軍基地を使って北朝鮮を攻撃することが出来るのか、ということも議論となってくるでしょう。韓国の最大の敵は北朝鮮ということでこれまでやってきたわけですが、お互いで武力行使をしないと決めた以上、米軍が韓国内にいる必要はありません。

 

 6月には米朝首脳会談が行われ、その際に米朝共同宣言が発表されました。その内容は曖昧でした。そのために、その後、米朝間の交渉はうまくいかないということになりました。アメリカは北朝鮮に安全の保証を与え、それで北朝鮮は核兵器とミサイルを放棄するということが大筋の合意内容ですが、米朝はその後、交渉を行っていますが、うまくいっていません。これは、アメリカが北朝鮮に騙された、出し抜かれた、ということになります。

 

 また、北朝鮮北西部にあるミサイル施設を廃棄するというのは、中国に対する配慮ということになります北朝鮮がアメリカを攻撃するならば、北朝鮮北東部にミサイル発射施設を建設するはずです。北西部ということは、その標的は中国ということになります。このミサイル施設が廃棄されるということは中国にとっては喜ばしいことです。

 

 こうして見てくると、北朝鮮と韓国、中国がひと塊となって、朝鮮半島での戦争が出来ない状況を作り出しています。今この状況でアメリカが北朝鮮に対して軍事力を行使するならば、アメリカは国際的に厳しい立場に置かれてしまいます。中朝韓が一緒になって、アメリカを封じ込めることに成功しました。トランプ政権は本質的に外国のことに関わりたくない、アメリカ・ファースト(アメリカ国内の問題を優先する、最初に解決する)ですから、そこを見切られての動きでしょう。

 

 アメリカのアジアからの撤退ということも視野に入ってきました。こうなってくると、日本の立場はどうなるかということになります。トランプ政権は日本に対して敵対的な姿勢を見せるようになっています。日本もアメリカ一辺倒に依存する状態から脱する方策を考える必要があるようです。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「北朝鮮、核施設廃棄の用意=南北が実質「終戦」宣言―正恩氏、ソウル訪問へ」

 

9/19() 16:41配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00000076-jij-kr

 

 【ソウル時事】韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は19日、平壌の百花園迎賓館で2日目の会談を行い、合意文書「平壌共同宣言」に署名した。

 

 宣言は「朝鮮半島での戦争の危険除去や敵対関係解消」をうたい、北朝鮮が北西部・東倉里のミサイル施設を廃棄することを明記、米国の対応次第では、寧辺の核施設も廃棄する用意を表明した。正恩氏が近く、ソウルを訪問することも盛り込まれた。また、韓国の宋永武国防相と北朝鮮の努光鉄人民武力相は、宣言の付属文書となる軍事分野の合意書に署名した。

 

 正恩氏は共同記者会見で「朝鮮半島を核兵器、核脅威のない平和の地にするため積極的に努力することを確約した」と明言。文氏は正恩氏のソウル訪問について「特別な事情がなければ、年内という意味だ」と語った。北朝鮮最高指導者のソウル訪問が実現すれば分断後初めてで、南北関係や北東アジア情勢の重大な転機となる。

 

 韓国大統領府の尹永燦国民疎通首席秘書官は、宣言署名で「実質的に(朝鮮戦争の)終戦を宣言した」と強調。北朝鮮が核施設の廃棄の用意を表明した点には「核の無能力化の実践的段階に入った」という見方を示した。

 

 尹氏によると、文氏は23日から国連総会出席のため米国を訪問し、現地時間の24日にトランプ大統領と会談する予定。尹氏は「(南北首脳会談での)公開されていない話も(トランプ氏に)伝達するだろう」と語り、正恩氏の対米メッセージを伝えるという見通しを明らかにした。

 

 宣言はこのほか、条件が整えば、北朝鮮南東部・金剛山の観光や南西部・開城の工業団地を正常化させることも盛り込み、離散家族問題の解決のための協力強化も確認。さらに、2020年東京五輪などでの共同出場を積極的に進め、32年五輪の南北共催に向けた誘致活動も検討することを定めた。

 

 文氏は20日、正恩氏とともに北朝鮮北部の白頭山を訪れた後、ソウルに戻る予定。文氏はかねて、白頭山訪問に意欲を見せており、正恩氏が提案したという。 

 

=====

 

●「正恩氏、年内ソウルへ 寧辺核施設の廃棄用意 南北会談」

 

9/19() 12:19配信 朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00000036-asahi-int

 

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は19日、平壌で前日に続いて首脳会談を行い、米国の対応次第で、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄などの追加措置を取ることなどを盛り込んだ「9月平壌共同宣言合意書」に署名した。正恩氏が年内にソウルを訪れることでも合意した。

 

 合意書は、北朝鮮が東倉里の弾道ミサイル発射台とエンジン実験場を、関係国の専門家の立ち会いのもとで永久廃棄するとした。北朝鮮は、米国が「米朝共同声明の精神に従った相応の措置」を取った場合、寧辺核施設の永久廃棄などの追加措置を引き続き取る用意があるとした。

 

 南北関係筋によれば、文氏は18日の会談で、「未来の核だけではなく、過去に生産した核を廃棄しなければ米朝対話は進まない」と指摘。米国の求める非核化対象リストや行程表の提出と検証に応じるよう、正恩氏の説得を続けたようだ。正恩氏は、豊渓里(プンゲリ)核実験場の爆破などを評価しない米政府の姿勢に不満を表明したという。

 

 トランプ米大統領は19日未明、「金正恩氏が核査察や、専門家同席のもとでの核実験施設やミサイル発射場の永久廃棄に合意した。とても素晴らしい」とツイートした。ただ米側は、リストの提出などを引き続き求めており、北朝鮮の非核化が直ちに進展するかは予断を許さない。

 

 合意書は、正恩氏が近い時期にソウルを訪れるとした。文氏は会見で、「特別な事情がない限り、年内という意味が込められている」と述べた。北朝鮮の最高指導者がソウルを訪れるのは初めてとなる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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