古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:アメリカ大統領選挙

 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙は選挙人団(Electoral College)による投票が終了した。残るは連邦議会におけるこの投票結果に対する承認である。連邦議会で承認されて結果が確定する。

 現在、20名ほどの共和党所属の連邦下院議員たちが選挙人団による投票結果の承認に反対する動きを見せている。連邦上院では共和党側幹部のミッチ・マコーネルが反対の動きに同調しないように呼び掛けているが、今回の連邦上院議員選挙でジョージア州において当選した、トミー・トゥーバーヴィルが同調することを示唆している。

 大統領選挙でトランプ大統領が勝利を収めた南部や地方の州選出の連邦議員たちは、自分たちの選挙のことを考えても、反対の動きに同調しなければならない。彼らに投票した有権者たちはトランプ大統領に投票したということが考えられ(共和党の下院議員に投票しながらバイデンに投票したという人はほとんどいないだろう)、そうした有権者たちは、連邦議員たちがどのように動くかを注意深く見ており、次の選挙での参考にするだろう。

 大統領選挙に対する動きは越年する。そして、アメリカの分断はどんどん深刻化していく。

(貼り付けはじめ)

共和党所属の連邦議員たちで選挙人団の投票結果に挑戦する人たちの数が増えている(Growing number of GOP lawmakers back Electoral College challenge

ジョーダン・ウィリアムズ筆

2020年12月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/531315-number-of-house-republicans-back-effort-to-object-to-election-certification

共和党所属の連邦下院議員たちの中で、2021年1月6日に連邦議員が選挙人団(Electoral College)の投票結果を承認するために連邦議会に集結する際、2020年大統領選挙の結果に挑戦することになるだろうと述べる議員たちの数は増え続けている。

最近になって挑戦することになるだろうと述べたのは、連邦下院議員選挙当選者マディソン・コウソーン(Madison Cawthorn、ノースカロライナ州選出)である。コウソンは1月初旬に議会が招集されて初めて連邦議員となる。

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マディソン・コウソーン(1995年-)

ヴィデオメッセージの中で、コウソンは、他の共和党所属の政治家たちに挑戦するように呼び掛けた。

コウソンは次のように述べた。「私は全国の共和党所属の政治家の皆さんに対してメッセージを送ります。もし皆さんが公正で、自由で、正義の選挙を、今そして未来に、求めなければ、私は皆さんの選挙区に行き、皆さんに対抗する予備選挙の候補者を見つける活動をします」。

2020年の選挙では、勝利者のジョー・バイデンがトランプ大統領に対して、選挙人数で70名以上、得票数で700万票以上の差をつけて勝利をしたという結果が不公正なものであることを示す証拠は存在しない。そして、トランプ大統領と協力者たちが選挙結果を覆す試みは法廷では成功しなかった。

連邦下院での試みは失敗する運命にある。連邦下院では民主党が過半数を握っている中で、トランプ支持者たちが過半数の投票を確保することは不可能である。共和党所属の連邦下院議員たちの多くが参加する選挙結果に反対する試みを最初に始めたのはモー・ブルックス連邦下院議員(アラバマ州選出)である。

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モー・ブルックス(1954年-)とトランプ大統領

しかし、トランプ大統領は挑戦の試みを促している。そして、連邦下院議員の多くはブルックスの試みに参加すると述べている。こうした議員たちは全米でも屈指の強力な共和党員たちからの注目を集めている。

ブルックスが率いている20名近くの連邦下院議員たちは月曜日、トランプ大統領と快打を持ち、バイデンの勝利を承認することに反対することについて議論した。

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ジョディ・ハイス(1960年-)

この議員たちの中には、ジョディ・ハイス(Jody Hice、ジョージア州選出)はツイッター上に、ジョージア州の選挙人たちへの反対を主導するだろうと投稿した。

ブライアン・バビン(Brian Babin、テキサス州選出)は月曜日、連邦議会が2021年1月6日までに不正選挙について調査をしないのならば、選挙結果に対して自分は反対すると述べた。そして、連邦下院共和党指導部に対して書簡を送り、行動を起こすように促した。

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ブライアン・バビン(1948年-)

約20名の共和党所属の政治家たちがバビンの書簡に署名した。

一方、テッド・バッド連邦下院議員(ノースカロライナ州選出)は火曜日、“#WethePeople will keep fighting for @realDonaldTrump.”#WethePeople@realDonaldTrumpのために戦い続ける)と述べ、選挙結果に反対する計画を持っているとツイートした。

連邦上院多数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル(Mitch McConnell、ケンタッキー州選出)は連邦上院議員たちに対して、ブルックスの試みに参加しないように求めている。連邦上院多数党(共和党)幹事ジョン・スーン(サウスダコタ州選出)は月曜日、「選挙結果に反対する試みはうち棄てられた犬のように惨めな結果に終わる」だろうと述べた。

ブルックスの動きに参加する連邦上院議員が出てこなければ、連邦上下両院で採決も議論も行われないことになる。しかし、ブルックスは彼自身の試みを支持してくれる連邦上院議員1人を確保できるかどうかは明確になっている。

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トミー・トゥーバーヴィル(1954年-)

(全米屈指の強豪オーバーン大学フットボールティームのヘッドコーチ時代)

連邦上院選挙当選者トミー・トゥーバーヴィル(Tommy Tuberville、アラバマ州選出)は、選挙結果反対を支持するだろうと示唆している。

(貼り付け終わり)
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馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンには金銭スキャンダルが付きまとう。ウクライナや中国でのビジネスに関してのものだ。しかも父ジョーがアメリカ合衆国副大統領に在任していた時期だ。そもそも父ジョーは30年以上連邦上院議員を務めたのだが、その時期にワシントンでロビイストをしていたということもいまから考えれば、「親の七光り、親の威光を使って仕事をしていた」ということになる。アメリカにだって「忖度」はある。「忖度」という言葉の英訳についてはこのブログでも紹介している。

※「「忖度(そんたく、SONTAKU)」、英語にしにくい日本語(2017年3月24日)」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/69823078.html

 さて、この息子ハンターの疑惑、スキャンダルについて大手メディアは「黙殺」だった。また、ツイッターなどSNSではこのスキャンダルについて貼り付けたり、記事を紹介したりすることを禁止した。これは、アメリカ国民の「知る権利」を大いに侵害する行為だった。大手メディアがトランプ大統領や彼の家族に関する記事は何でもかんでも掲載し放題だったにもかかわらずだ。

 ある世論調査の結果では、「ジョー・バイデンのバカ息子ハンターのスキャンダル、疑惑について知っていたらジョーには投票しなかった」という有権者が結構な数いるのではないかと推測できる数字が出た。バイデンに投票した有権者の4.6%が、スキャンダルを知らなかったし、知っていればジョーに入れなかったと答えているのだ。

 今回の選挙の結果は総得票数でも、激戦各州の得票数でも僅差だった。従って、バカ息子ハンターの疑惑が知れ渡っていれば、結果は全く違ったものとなっていただろう。ジョー・バイデンが大統領になっても、ハンターのことは父親ジョーにとってアキレス腱、弱点として残り続ける。民主党内で「早くハリスが昇格しないかな」と考えている幹部たちがハンターのことをメディアにリークして、大手メディアが選挙期間中とは異なり、大いに報じることになったら、ジョーは不名誉な辞任も考えられる。生殺与奪の権を他人に握られる。

 ジョー・バイデンにとっては前途多難なことだし、何よりも選挙結果に影響を与えたメディアとSNSの罪は万死に値するということになる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:ハンター・バイデンのスキャンダルをメディアが隠蔽したことはトランプの明確な勝利を盗んだ(Media's hiding of Hunter Biden scandal robbed Trump of clear win: Poll

ポール・ベダード筆

2020年11月13日

『ワシントン・イグザミナー』紙

https://www.washingtonexaminer.com/washington-secrets/medias-hiding-of-hunter-biden-scandal-robbed-trump-of-clear-win-poll

ジョー・バイデンに投票した有権者たちの中で十分な数の人々は彼の息子ハンターの金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンに投票しなかったし、それはトランプが明確な勝利を得るのに十分な数だった。

新しい調査によると、バイデンに投票した有権者のうち4.6%が、バイデンの息子の中国に関する金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンには投票しなかっただろうと答えた、ということだ。

「マクローリン・アンド・アソシエイツ」社がメディア・リサーチ・センター(MRC)のために行った世論調査の結果によると、バイデンに投票した有権者のうち36%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知らなかった。その内の13%がもしスキャンダルを知っていたらバイデンに投票しなかっただろうと答えた。

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MRCは「バイデンからのそのような有権者の移動は、トランプ大統領が選挙人289名を獲得して勝利していたということを意味する」と指摘している。MRCは2016年と2020年の大統領選挙においてトランプ選対のために働いた。

ハンター・バイデンのスキャンダルに関しては、保守的ではないメディアのほとんどが報じなかった。ツイッターとその他のSNSはスキャンダルに関しての報告の多くを禁止とした。

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リンゼー・グラハム連邦上院議員は、バイデンが副大統領在任中にハンター・バイデンが海外で締結したビジネスに関する合意についての新たな発見は選挙結果を左右するだろうと予見していた。

MRC社の会長ブレント・ボゼルは次のように述べている。「隠蔽の影響について私たちは今良く認識している。バイデンに投票した有権者のうち4.6%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知っていればバイデンには投票しなかったと答えている。ハンター・バイデンのスキャンダルは選挙の結果を変える可能性があったのである。メディアとシリコンヴァレーはこのことをよく分かっていたのだ。だから、彼らはハンター・バイデンのスキャンダルがアメリカ国民に届かないようにと積極的に行動したのだ。アメリカ国民は真実を知る価値を持つ人々だった。しかし、もはや時遅し、となってしまった」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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 古村治彦です。

 バラク・オバマ前大統領が回顧録『約束された地(A Promised Land)』を出版した。日本のメディアが日本関連の記述をキーワード検索したのだろう、鳩山由紀夫元首相に関連する記述を見つけて次のように報じた。

(貼り付けはじめ)

●「鳩山氏は「感じ良いが厄介」 オバマ前米大統領回顧録」

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https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111700728&g=int

 【ワシントン時事】オバマ前米大統領は17日発売の回顧録で、2009年11月に鳩山由紀夫首相(当時)と初会談したことに関し、「感じは良いが厄介な同僚だった」と指摘した。その上で、「3年弱で4人目の首相であり、日本を苦しめてきた硬直化し、目標の定まらない政治の症状だ」と酷評した。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、鳩山氏が首脳会談で「トラスト・ミー(わたしを信じて)」と発言したにもかかわらず、移設先見直しの検討を決めたことなどにオバマ氏は不信感を持ったとされる。

(貼り付け終わり)

 鳩山元首相に対して、オバマ前大統領は不信感を持ち、「厄介な奴」という印象を持った、と報じた。日本の主要メディアは横並びで鳩山元首相に対して否定的な内容だったと報じた。

 これに対して、「誤訳が酷い」という反撃が出てきた。原文にあたった人々から、「感じは良いが厄介な同僚」という部分は「pleasant if awkward fellow」という表現であって、これは「楽しい人物だが交渉相手にすると厄介な人」と訳すべきだという批判が続出した。以下に記事を貼り付ける。ここから私の解釈、考えを述べる。全く英語ができない人たちばかりが総理大臣になる稀有な国である日本の中で、鳩山氏はスタンフォード大学で博士号を取得している。当時のジョン・ルース駐日大使が鳩山氏と会った時に、スタンフォード大学のアメリカンフットボールティームのヘルメットを持参しプレゼントした様子は今でも記憶がある。通訳を間に挟むまどろっこしいことをしなくても済むが、同時に交渉となると英語ができるだけに厄介ということになる。

(貼り付けはじめ)

●「NHK、オバマ氏回顧録を誤訳? 鳩山氏巡る部分に指摘」

守真弓 朝日新聞

20201118 2040

https://www.asahi.com/articles/ASNCL6KGMNCLUCVL00D.html

 NHKのニュースが17日、オバマ前米大統領が回顧録で、鳩山由紀夫元首相を「迷走した日本政治の象徴」などと評したと報じた。これについてネットなどで「誤訳だ」との指摘が上がっている。

 ニュースは17日午前10時放送で、同日に出版されたオバマ前大統領の回顧録を紹介。「当時の鳩山総理大臣について、『硬直化し、迷走した日本政治の象徴だ』と記すなど、当時の日本政治に厳しい評価を下しています」と報じた。

 だが、原文の該当箇所では、「鳩山は3年足らずの間に4人目、私が就任してから2人目となる日本の首相だった。(首相が短期間で代わるのは)この10年間、日本政治が硬直化し、迷走したことの表れであり、彼も7カ月後にはいなくなっていた」と記されている。

 ネット上では「『硬直化し、迷走した日本政治の象徴』というのは首相が頻繁に交代することを指していて、鳩山さん個人についてではない」などと誤訳を指摘する声が相次ぎ、該当記事はNHKのホームページの「ソーシャルランキング」でも上位に上がるなど話題になった。

 これについてNHKは朝日新聞に対し、「ネット上に様々なご意見があることは承知しております。今後とも正確で分かりやすい表現に努めてまいります」とコメントした。

 また、時事通信などは、回顧録が鳩山氏を「感じは良いが厄介な同僚だった」と評したと報じたが、原文は「A pleasant if awkward fellow(不器用だが感じの良い男)」といった内容で、これについても翻訳のずれを指摘する声が上がった。

 鳩山元首相も自身の公式ツイッターで、「『不器用だが陽気な』との表現はあるが痛烈な批判はなかった。メディアはなぜ今も私を叩(たた)くのか」と投稿した。(守真弓)

(貼り付け終わり)

 今回の出来事で思い出すのは、終戦末期の「subject to」の翻訳問題だ。1945年に8月10日に日本政府は「国体護持」を条件にポツダム宣言受諾を米英中国ソ連に回答した。それに対して、8月12日に国務長官ジェームス・バーンズの書簡(バーンズ回答)がもたらされた。その中に、「the authority of the Emperor and the Japanese Government shall be subject to the Supreme Commander for the Allied Powers」とあった。外務省は「天皇と日本政府は連合国最高司令官の制限の下に置かれる」と訳し、陸軍は「従属する」と訳した。「従属する」を正式な訳としてしまうと、ポツダム宣言受諾反対が勢いづいてしまうので、「制限の下に置かれる」がこの当時は適切な訳だったと私は考える。しかし、日米関係の現状は「従属」そのものである。

 アメリカ国内では日本の元首相のことなど全くニュースになっていない。当たり前のことだ。ニュースになっているのは、「バラク・オバマが妻ミシェルに大統領選挙に出たいと言った時に激しく反対された」ということだ。これをどう解釈するか、だが、2つの解釈が成り立つと思う。一つは、「ミシェルは元々自分(夫バラク)が大統領選挙に出ることに激しく反対した。だから大統領になろうなんて毛頭思っていません。だから、民主党員や支持者の皆さん、2024年大統領選挙にミシェルにどうか出て欲しいなんて考えないでください」というものだ。

 もう一つは、「ミシェルは大統領になろうなんて野心はこれっぽっちも持っていません(どなたかとは違って)。皆さん、どうですか、“出たい人より出したい人”じゃないですか?こんな無欲なミシェルこそ大統領選挙に“出したい”ですよね?」というものだ。さて、バラクの真意、そしてミシェルの真意はどうなのだろうか。

 政権樹立当初からレームダック(死に体)状態のジョー・バイデン大統領(仮)にとって、最大のそして緊急の課題は新型コロナウイルス感染拡大対策だ。これで「大統領選挙に通った(仮)」ようなものだ。ワクチン開発に関して「朗報(のようなもの)」も出ている中で、ここで対策に失敗したら、「なんだよ」ということになって支持率は下がる。経済対策についても恐らく思い通りにはできないだろう。最悪の想定は、これから今まで以上に会議やら行事やらで人前に出たり、人々と交流したりする機会が増える。そうした中で大統領就任直前、もしくは直後に、対策の陣頭指揮をとらねばならない時に、新型コロナウイルスに感染してしまうことである。

今回の大統領選挙と同時に実施された連邦議員選挙では連邦上院では共和党が過半数維持の見込み、連邦下院では民主党が過半数を維持したが、共和党との議席差はこれまでになく小さくなっている(民主党退潮のためなのか民主党所属のナンシー・ペロシ下院議長はこの2年間の議員の任期が議長として最後の任期となる、2022年に議長から退くと表明した)。連邦議会対策は難しい。

 通常は副大統領が連邦議会対策、根回しを行うことが多い。カマラ・ハリスは現職の連邦上院議員からの転身なのでその点は有利である。しかし、上院議員としての任期はまだ1期目であったことを考えると、連邦議員たちと深い話や腹を割った話ができるかと言えばそうではない。まだまだ新参者なのだ。

 2022年には連邦上院議員の一部と連邦下院議員全員の選挙、大統領選挙と大統領選挙の間に実施されるので、中間選挙(mid-term election)と言われる。学校の中間試験もmid -term exams と呼ばれているが、これはバイデン政権にとっての中間試験である。この2年間で成果が上がらなければ、民主党所属の現職連邦議員たちにとっては厳しい選挙となる。ここで、共和党が躍進して連邦上下両院で過半数を取るようなことになれば、2024年にバイデンが出馬することはほぼ不可能となる。元々2024年に出ることを期待されていないし、「選挙の顔」としても使えないのなら、表向き年齢や健康のことを理由にして、1期限りで引退ということになるだろう(再選に失敗した大統領は恥ずかしいというような風潮も一部にあるが自分からの引退ならばそこまで傷つかない)。

 しかし、こんなことをぐちゃぐちゃ考えなくても、そもそもジョー・バイデンの仕事は大統領選挙終了時点で終わっていた。既にレームダック状態だ。バイデンの最重要の仕事は選挙でドナルド・トランプを倒すことであり、それ以外は全く期待されていなかった。お笑い芸能の世界で使われる言葉で言えば、「出オチ(登場した時が最も面白くそれ以降は面白くない)」である。

 民主党員や民主党支持の有権者たちはもうバイデンに期待していない。「早くバイデンが辞めて副大統領のカマラ・ハリスが大統領に昇格して女性初の大統領にならないかな」「ミシェル・オバマにこそ次の選挙に出て欲しいな」と考えている。ある世論調査の結果では、2024年の大統領選挙の民主党候補になって欲しい人という質問では、第1位がミシェル・オバマ、第2位はカマラ・ハリスという結果だった。バイデンはもう2024年には出ることができないと皆が考えている。史上初めて、初当選した大統領が既に「レームダック(死に体)」状態になっている。

 だいぶ話が脱線してしまったが、要は2024年にミシェルが大統領選挙に出馬するかどうかだ。私は昔日本の政治家に対して使われた言葉、「絹のハンカチを雑巾にして使うな」という言葉を使いたい。また、このブログでも紹介したことがあるが、ミシェルはそもそも政治家には向かない。周りにいる人の多くが馬鹿だと感じられ、そう感じた相手とは口を利かないという話を聞いたことがある。できる人、切れ者は概してそうだ。そういう人が数年間も自分を押し殺して、楽しげに振舞うというのは精神に大きな負担を与えることになる。それならば、民主党員や支持者たちは「ミシェルは最後の切り札、最終兵器」と「お守り」のように考えておくべきだ。最後の切り札、最終兵器は使われないことでこそ最大の効果を発揮する。ミシェルの存在はまさにそうなのだ。

(貼り付けはじめ)

オバマは妻ミシェㇽが彼の大統領になりたいという野心に対して抵抗したと述べた(Obama describes wife Michelle's resistance to presidential ambitions

ジョン・バウデン筆

2020年11月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/in-the-know/in-the-know/526087-obama-explains-wife-michelles-resistance-to-presidential

オバマ前大統領は、彼と彼の妻である前ファーストレイディーのミシェル・オバマがいかにして、大統領選選挙出馬に対しての彼女の抵抗をいかにして乗り越えたかについて語った。オバマは日曜日夜に放送されたCBSの「60ミニッツ」に出演し、幅広い話題でインタヴューを受けた。

CBSのスコット・ペリーはオバマの回顧録の一節についてオバマに質問した。この一節の内容とは、将来ファーストレイディーとなったミシェルが、バラクの大統領になりたいという野心をすげなく否定したということである。ミシェルはバラクに対して次のように述べたということだ。「私はあなたに大統領選挙に出て欲しくない。いいこと、バラク、そんな簡単に行くと思っているわけ?」。

ペリーは「そして彼女は部屋を出ていったとあります。彼女が反対した訳ですが、それでもあなたが大統領選挙に出馬することを諦めなかったのはどうしてですか?」と質問した。

オバマ前大統領は次のように答えた。「それは至極もっともな疑問ですね。分かっていただきたいのは、このやり取りが行われたのは、私がアメリカ連邦上院議員選挙に出るちょうど2年前のことだったということです。この時の選挙は通常とは異なる選挙となりました。私が連邦議会選挙に出る2年前の話しなんですよ」。

「私が連邦上院議員選挙に出る数年前の話しなんですよ。幼い子供が2人いました。ミシェルはまだ仕事をしていました。私はその時に次のように自問しました。“大統領選挙に出るなんてどれだけ誇大妄想なことなんだろうか?どれだけ悪いことなんだろうか?自分自身に対して何かを証明しようとどれだけ本気なのだろうか?”」。

オバマは妻ミシェルが徐々に「“私は邪魔をするべきではないのだ”という結論に至る」ようになったと述べた。

オバマは更に「もちろん彼女の納得は不承不承でしたよ。選挙に勝っても彼女の不満を和らげることはできなかったという事実もあります。何故なら大統領になることで大統領の家族にかかる大きな負担があるからです」とも述べた。

ペリーは、「あなたが全身全霊を傾けねばならない職責から退いて初めて、あなたが大切にしていたことは、あなたが愛する人に対する感謝だったということを認識されたと思うのですが」と指摘した。

オバマは次のように答えた。「私が大統領在任中に既にそのことを認識していたと思いますね。彼女は我慢をしてくれて、そして私のやったことを許してくれました。このことは私が今でも心から感謝している崇高な行いでしたし、私自身が彼女の崇高な行いに値するとはとても言えません」。

オバマ前大統領のCBSとのインタヴューは、彼の回想録『約束された地(A Promised Land)』の発売日(火曜日)の直前である日曜日に放送された。インタヴューの中で、オバマは彼の次のトランプ大統領に対して厳しい批判を行った。2020年の大統領選挙での敗北とトランプが結果を受け入れることを拒絶していることを受け、オバマはトランプを激しく批判した。

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は大統領選挙の結果に対して法廷闘争を展開している。弁護士のシドニー・パウエルが代理人となって、弁護士ティームを率いて戦っている。その中で、新たな疑惑が浮上した。電子選挙システムソフトウェア企業「スマートマティック」社の取締役会会長ピーター・ネッフェンガーがバイデン政権以降ティームに参加していることが明らかになった。
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ピーター・ネッフェンガー
 選挙集計システムソフトウェア企業「ドミニオン・ヴォ―ティング・システムズ」社と「スマートマティック」社については以下の記事に詳しく説明されている。是非お読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

●「米大統領選、不正は実際に行われたのか…脆弱なセキュリティとトランプ排除を狙う人物」

文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト

2020年11月18日 ビジネス・ジャーナル

https://biz-journal.jp/2020/11/post_191360.html

https://biz-journal.jp/2020/11/post_191360_2.html

 米大統領選でドナルド・トランプ大統領は不正選挙を主張し、それに伴ってインターネット上では、事実かどうか疑わしい噂も流れ始めていた。

「米国土安全保障省が投票用紙にブロックチェーンを仕込んだ」「特殊インクによる仕掛けを行っている」などという噂があまりにも広まり、米国土安全保障省は配下のCISA(サイバーセキュリティ・インフラストラクチャーセキュリティ庁)を通じて、「投票用紙は州の当局が設計印刷しており、国土安全保障省が投票用紙を設計印刷することはない」と否定するまでとなった。

 実際に、投票用紙は州ごとに管理され、投票用紙が本物かどうかの認証方法も異なるうえに、票の集計システムまで異なっているため、米国土安全保障省が投票用紙に何かを仕掛けるというのは難しい。

 なかには、米軍がドイツのフランクフルトで集計システムに接続されたサーバーを差し押さえたという噂も出ていたが、これも米軍によって否定されたとの報道が出た。確かに、ドイツ国内にある企業の所有物を差し押さえるには法的手続きを経ないといけないので、難しいのではないかと思われる。

 そういった真偽不明の噂が飛び交うなかで、IT産業に従事する筆者でも「これなら可能である」と考える票の改ざん手口が、いくつか指摘されているので紹介する。

不正な開票システムが世界トレンド

 トランプ陣営の主張は、票の集計システムがインターネットに接続されており、票が改ざんされたというものだ。

 このネットにつながる必要性のない投票集計システムがネット接続されて、中国傀儡政治家に票が流れる不正選挙が行われるというのは、冗談でもなんでもなく世界各国で論争の原因となった「グローバル・トレンド」である。

 728日付当サイト記事『中国の世界支配ビジネス、脱却のカギはインドと韓国?トランプ大統領はなぜ台湾を外したのか』でも言及したが、2020年韓国総選挙で利用された開票システムはイラク、ボリビア、ケニアで不正が指摘されたものである。それらのシステムは、集計システムがネットに接続することを禁止する国でも、中国ファーウェイ製通信機能が内蔵されており、ネットに接続されていたという。

 米大統領選挙は州によって導入される開票システムは異なるが、不正の可能性を指摘された州におけるドミニオン社の票集計システムは、フィリピンやベネズエラの選挙で不正が指摘され訴訟となった企業のシステムで、テキサス州では「基本的なセキュリティ基準を満たしていない」として利用を却下されている。

 サイバーセキュリティ企業のAllied Security Operations Groupの共同創始者であるルス・ラムスランドは、以下のように指摘している。

「大統領選挙前に各カウンティで利用されている集計システムのソフトウェアにはセキュリティに関する基準がなく、簡単に票を改ざんすることが可能であり、ソフトウェアの質は悪く、監査も改ざんできるのに、犯罪捜査でトレースして元の票の確認ができないようになっている」

「どこの州で集計されようと、データはドイツのフランクフルトにあるサーバーに送られ、そのサーバーはスペインにある多国籍企業によって管理され、有権者の票も管理されている」

「そのうえ、マルウェア(悪意のあるソフトウェア)が常に票と資格情報を収集しており、フランクフルトで改ざんするだけでなく、こちらのローカルでも改ざんが可能である。多少のハッキングの知識がある人物なら誰でも改ざんできる」

 そのソフトウェアはドミニオン関連会社のスマートマティック社が開発したもので、フィリピンの選挙でソフトウェアの不具合のために不正行為があった可能性により訴訟を起こされ、ソースコードは信頼性に疑問があると指摘された。

 2019年、ドミニオンの集計システムを利用したケンタッキーの州知事選で、共和党候補知事の票が560票減り、民主党候補にそのまま560票が付け替えられる様子などもリアルタイムに報道され、共和党の牙城で民主党候補が勝利したことで有権者の間では不信が広がっている。

 それにもかかわらず、激戦州であるネバダ、アリゾナ、ミネソタ、ミシガン、ウィスコンシン、ジョージア、ペンシルベニアで同社のシステムが利用され、トランプへの票が数百万票削除されたといわれている。

ドミニオン社の影に民主党とソロス

 このドミニオンの株主が民主党議員ダイアン・ファインスタインの夫、リチャード・ブラムであり、主要幹部はナンシー・ペロシの顧問ナデアム・エルシャミである。そして、フィリピンやベネズエラでドミニオンの投票システムが導入されるようになった背景に、ドミニオンがクリントン財団へ寄付を行い、その後、クリントン財団が途上国に向けて「投票システム技術を提供する」と言って、ドミニオン製のシステムを提供したことにあるようだ。

 ドミニオンは政治家との関係構築が得意なようで、投票システムを各州や郡に導入させるためにロビイ活動を行っていたからこそ、民主党の州だけでなく共和党知事の州でも導入がなされていたようである。ドミニオンの政治力は米国内にとどまらず、関連会社スマートマティックの会長を通じて投資家のジョージ・ソロスともつながっている。

 ソロス自身はこの会社への投資は否定しているが、彼の投資手法を見ると、反体制派に資金を提供して政府転覆を狙うことが多い。彼は価格が低く抑えられた社会主義国の企業や資源に投資し、民主活動家に資金を提供して、安い投資が市場価格に修正されることで利益を上げてきた。最近では、中国が推進するグローバル・スーパーグリッド関連投資で利益を上げるために、民主主義国を全体主義国化させようとしている。

 グローバル・スーパーグリッドとは、世界を送電網でつなぎ、世界中に設置した太陽光パネルなどの自然エネルギーを推進し、各国に二酸化炭素排出規制を課してEV(電気自動車)を導入させるという、エコでもなんでもないエネルギー利権である。ソロスや投資家のウォーレン・バフェットは、リチウムイオン電池に用いられるレアメタルやEVのバッテリー技術などに投資してきた。そんななか、トランプ大統領がパリ協定から脱退し、米国送電網から中国製品を排除するという非常事態宣言を行ったことは、ソロスらのビジネスにとって邪魔なのである。

 ソロスには、なんとしてでもパリ協定から脱退したトランプ大統領を落選させ、ジョー・バイデン候補のグリーン・ニューディール政策によってグローバル・スーパーグリッドを完成させたいという「ビジネス上の動機」があるわけだ。

(文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト)

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 ドミニオン・ヴォ―ティング・システムズ社とスマートマティック社が開発した選挙集計システムを、「デモクラシーの本家本元」のアメリカが世界中の国々使わせているが、数々の問題を引き起こしている。紹介した記事では、その裏にジョージ・ソロスがいるということだが、下に掲載した『ニューズウィーク』誌の記事にはそうした記述はない。下の記事は非常にあっさりしたもので、世界的な報道雑誌にしては取材が全くなされていない。その不在がなされていないことが、実はこの問題の深刻さを表している。

 スマートマティック社の会長ピーター・ネッフェンガーが沿岸警備隊の退役中将で、オバマ政権で運輸保安庁長官を務めたという事実は重要だ。アメリカ沿岸警備隊はアメリカ五軍を構成しているが(栄誉礼では陸軍、海軍、空軍、海兵隊と並ぶ)、国防総省ではなく、国土安全保障省に所属しているが、その前は運輸省に所属していた。ネッフィンガーはそのどちらにも影響力を持つ人物ということになる。

 選挙不正については国土安全保障省がなかったという立場を取っているが、その国土安全保障省に関する調査検証をバイデン・ハリス政権以降ティームに入って行うのがネッフィンガーなのだ。このネッフィンガーがこれからのトランプ側の法廷闘争において重要になるかもしれない。

 それにしても、このように堂々と疑惑を持たれる人物を政権以降ティームに入れてしまうバイデンとハリスは脇が甘いのか、開き直っているのか、どちらにしても全くもって「なっていない」し傲慢だ。「李下に冠を正さず」「瓜田に履を納れず」という東洋のことわざを拳々服膺すべし、だ。

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ピーター・ネッフェンガーとは誰か?バイデンの政権以降ティームのメンバーとなったネッフェンガーはトランプの裁判提起のターゲットとなるだろう(Who Is Peter Neffenger? Biden Transition Team Member May Be Target of Trump Lawsuit

エミリー・ツァコール筆

2020年11月16日

『ニューズウィーク』誌

https://www.newsweek.com/who-peter-neffenger-biden-transition-team-member-may-target-trump-lawsuit-1547777

ピーター・ネッフェンガーはアメリカ沿岸警備隊の退役中将であり、経験豊富な国家安全保障官僚だ。ネッフィンガーは、大統領選挙当選者ジョー・バイデンと副大統領内定者カマラ・ハリスが政権に就くにあたり、その支援を行うことを使命とする人々の名簿に名前を連ねた。ネッフィンガーはバラク・オバマ大統領の下、2015年から2017年にかけて運輸保安庁Transportation Security Administration TSA)長官を務めた。ネッフィンガーはアメリカ沿岸警備隊在職中に二度、国土安全保障省から功労賞を授けられている。

バイデン・ハリス政権以降ティームのメンバーとなったネッフィンガーは、この週末、ドナルド・トランプ大統領の法律に関する代理人が提起するだろう新たな訴訟の対象となる可能性が高い。バイデンに敗れた大統領選挙の後、現職の大統領であるトランプは敗北を受け入れておらず、法廷での活動を追求することを継続している。トランプ大統領は法廷での活動を通じて、各州での選挙結果を「覆す」ことができるのではないかという希望を持っている、と日曜日にある弁護士は述べた。

トランプの代理人の弁護士シドニー・パウエルは、日曜日にフォックス・ニュースに出演し、マリア・バーティロモとのインタヴューの中で、投票用紙の分別と記録のために使われた機械に関して提起するであろう訴訟にネッフィンガーも含まれるであろうと説明した。トランプはバイデンに勝利をもたらした投票について無効になるように様々な試みを行っている。

パウエルは、「ドミニオン・ヴォ―ティング・システムズ」社によって運営されている電子記録ソフトウェアによって、元々トランプに投票された用紙がバイデンに投票したものと不正に操作されたのだと示唆した。この非難は先週トランプがツイッター上でシェアしたものだ。SNSはトランプのツイートに対して、この主張は議論の中にあるという表示をつけた。トランプ大統領が証拠によって裏付けられていない選挙不正についてのコメントをシェアするたびにこのような処置がなされる。

日曜日、パウエルはネッフィンガーの名前に言及した。それは、弁護士ティームのドミニオン・ヴォ―ティング・システムズ社に対する告発について議論している時だった。ネッフィンガーの名前が出たのは、彼が「スマートマティック」社の取締役会会長を務めているからだ。スマートマティック社は電子投票システムをデザインしているもう一つの企業である。スマートマティック社は声明を発表し、その中で同社がドミニオン・ヴォ―ティング・システムズ社とは関係がないと明確に否定した。そして、「両社は市場において競争相手である」という事実を指摘した。

ネッフィンガーはバイデン・ハリスの政権移行ティームにヴォランティアとして参加した。他の20名以上の人々と共に、次のバイデン政権の各省庁調査検証ティームの仕事、特に国土安全保障省の調査検証を支援することになる。調査検証ティームは指定された省庁の現在の仕事について詳しく調べ、バイデンとハリスに収集した情報を渡す。各省庁調査検証ティームは全ての主要な政府省庁を取り扱う。各省庁調査検証ティームは次期政権で各省庁を担当する責任を負う準備をし、より一般的には、ホワイトハウスのリーダーシップの抗体をスムーズに行うことを支援する。

今回のテーマについてバイデン・ハリス政権移行ティームは本誌にコメントを出すことを拒絶した。

本誌はスマートマティック社とドミニオン・ヴォ―ティング・システムズにコメントを求めたが、本記事が掲載される本体刊行までに返答はなかった。

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amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 チャールズとデイヴィッドのコーク兄弟と言えば、一時期はアメリカ政治を陰で操る大実業家というイメージだった。バラク・オバマ政権成立後に始まった保守派の草の根運動ティーパーティー運動に全面的な資金提供を行ったのがコーク兄弟だった。ドナルド・トランプ政権のマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンぺオ国務長官などは連邦議員時代にコーク兄弟から政治資金提供を受けていたこともあり、このブログでも紹介したが、「コーク兄弟のための国務長官だ」とまで言われるほどだった。
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デイヴィッド(左)とチャールズ
 コーク兄弟も弟デイヴィッドが2019年に79歳で死去してしまい、85歳になる兄チャールズが残された。コーク家には4名の男性兄弟がおり、長男はフレデリック(2020年に86歳で死去)、次男がチャールズ(85歳)、その次が双子でデイヴィッド(2019年に79歳で死去)、ビル(80歳)という構成になっていた。兄弟たちの父フレッドが創設したコーク・インダストリーズを従業員13万人の大企業に育てたのは、チャールズとデイヴィッドの力が大きい。長男は芸術家肌で事業には全くの不向き、末っ子のビルはコーク・インダストリーズに入っていたが、兄たちと喧嘩別れし、自身でオックスバウという会社を立ち上げ成功させた。また、ヨットの世界的な大会アメリカズ・カップでも優勝している。

 コーク兄弟はリバータリアニズムを信奉していることでも知られていた。リバータにリアニズムについて簡単に言うと、反税金、反福祉、反規制、反大規模政府ということで、徹底的に規制や制限を嫌い、無政府主義にまでつながる思想である。コーク・インダストリーズの主要ビジネスが石油採掘や精製で、政府の既成と常に戦ってきたということもある。そのため、現実政治では、民主党ではなく、共和党と共和党所属の政治家たちを応援してきた。

 コーク兄弟は自分たちが政治献金をするだけではなく、政治献金をする大金持ちたちのネットワーク作りも行い、成功した。コーク兄弟に誘われて政治献金をするようになった大金持ちたちも多い。

 こうしたことは拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン、講談社、2016年)に詳しく述べられている。

 チャールズが今になって後悔している、というのが下の記事だ。コーク兄弟はさんざん当時のオバマ政権と民主党を攻撃した形になっている。それが今になって「分断を招いた」として「間違っていた」と後悔しているというのだ。そして、貧困問題やホームレス、麻薬中毒といった社会的な問題について取り組みたいなどと殊勝なことを述べている。

 コーク兄弟はトランプ大統領が嫌いで、2016年の段階では対抗馬を支援していたし、トランプが共和党の大統領選挙候補者に指名されても全く動かなかった。質実剛健を旨とする中西部に生まれ育ち、実業(コーク・インダストリーズの主要なビジネスは石油採掘と精製、更に父親以来の牧場経営もある)の世界で生きていたチャールズ(兄や弟たちはフロリダ州や東海岸で贅沢な暮らしをしてきた)と、トランプでは肌合いが全く異なるということはあるだろうし、チャールズからすれば、「お前はずっと民主党員だったし、保護貿易主義者ではないか」という反感が強いと思われる。

 チャールズは前回紹介した「トランプ現象、トランプ主義」に恐れおののいたのだろう。チャールズもまた名門中の名門大学マサチューセッツ工科大学を卒業して会社経営を行っているエリート側の人間だ。そして、リバータリアニズムを信奉し、関連著書を読み漁ってきた研究者タイプの人間でもある(書斎は本で埋め尽くされている)。しかし、現実は厳しい。チャールズは、トランプ現象、トランプ主義をアメリカの衰退の始まりともとらえて、高尚な思想運動や政治運動ではなく、足元の共同体や社会が抱える諸問題に取り組むという決心をしたのだろう。しかし、それはもう手遅れだ。アメリカの分断は分裂に向かう

 バイデン・ハリスという新政権誕生に何の高揚感もないのは、トランプ現象で本の表紙が開かれた、アメリカの衰退のページが新たにめくられたと人々が感じているからだろう。世界中の人々が、「デモクラシーの本家本元だと威張り腐って、俺たちに散々説教してきたが、お前らの選挙制度一つ、うまくやっていないじゃないか。もっと効率的で公正で、疑義を挟まれない形でできる選挙のやり方を教えてやろうか」と思うようになっている。

 チャールズの言葉は何かとても物悲しく、アメリカの終わりを印象付けるものだ

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チャールズ・コークは自身の党派性について後悔:「やれやれ、私たちは間違ったのか!」(Charles Koch regrets his partisanship: 'Boy, did we screw up!'

カエラン・デシー筆

2020年11月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/news/525878-charles-koch-regrets-his-partisanship-boy-did-we-screw-up

共和党への大口献金者チャールズ・コークは、党派性を持ち続けた数十年を後悔し、政治的な分裂の間をつなぐことに注力したいと望んでいると発言した。『ウォールストリート・ジャーナル』紙が金曜日に報じた。

大統領選挙直前に行ったインタヴューの中で、85歳になるリバータリアニズムを信奉しているビジネス界の大立者は、ウォールストリート・ジャーナル紙に対して、これまで保守的な大義のために多額の資金を投じてきたが、今の関心は貧困、麻薬中毒、ギャングによる暴力、ホームレス、累犯といった諸問題に関心が移りつつあると述べた。

長年にわたり、チャールズとデイヴィッドのコーク兄弟は保守的な大義と候補者たちに資金を投入するための影響力を持つネットワークを構築した。チャールズ・コークはコーク・インダストリーズの最高責任者の地位にとどまり続けている。コーク・インダストリーズは13万人の従業員を抱える数十億ドルを稼ぎ出すコングロマリットである。

コークが共著として木曜日に発売開始した最新刊『人々を信じる:トップダウンの世界のためのボトムアップの解決法』の中で、自身の党派性の強い政治がもたらす分断と呼ぶものについて考察している。

チャールズは本の中で「やわやれ、私たちは間違ったのか!」と書いた。そして、「なんてことだ」とも書いた。

コークは統合を呼びかけているが、2020年の選挙において共和党所属の候補者たちへ多額の資金のほとんどを投じた。280万ドルを共和党に寄付し、民主党の候補者には22万1000ドルを寄付した、とウォールストリート・ジャーナル紙は報じている。

コークは、大統領選挙候補者ジョー・バイデンと副大統領候補者カマラ・ハリスの選挙の勝利に対して祝意を表した。そして、「私たちは選挙後の時間を使ってより良い前進の方法を見つけたい」と述べた。

トランプ大統領と共和党所属の連邦議員たちのほとんどはバイデンを大統領選挙勝利者と言及することを拒絶している。連邦議員たちは選挙結果についてトランプ陣営が行っている法律的な争いを支持している。

コークは、「私たちは党派争いのために、政治について過剰に期待し、私たち自身とお互いについて過小に期待するようになってしまっている」と述べた。

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