古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:アメリカ政治

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権1期目(任期4年)も後半に入った。アメリカ政治は2024年11月の大統領選挙(と連邦議会選挙:連邦下院は全議席、連邦上院は一部議席、更には州知事選挙)に向けて動き出す。民主党は現職大統領を抱える側であり、共和党は挑戦者の立場だ。

ジョー・バイデンが2期目を目指して選挙に出馬するかどうかがまず現在の関心事だ。バイデンは現在80歳(1942年生まれ)、2024年の大統領選挙投開票日あたりには82歳になっている。現在でも現職としては史上最高齢であり、2年後に当選すればこれまで史上最高齢となる。人間の寿命は確実に伸びている。先進諸国は多少の違いはあるものの高齢化社会(日本は高齢社会)である。80歳で現役は良いじゃないか、という主張もあるだろうが、判断力や健康の面で不安があるというのが正直なところだ。民主党の中から挑戦者が出る様子は今のところない。バイデンが病気やスキャンダルで2期目に出られないとなれば、カマラ・ハリス副大統領が候補者として出ることになるだろう。

 興味深いには、民主党が大統領選挙の民主党予備選挙(民主党の大統領選挙本選挙候補者決める選挙)で、各州で実施される予備選挙や党員集会の日程を変更して、アフリカ系アメリカ人有権者が選挙の結果を左右する州が早めに予備選挙や党員集会を実施できるようにしようとしていることだ。これは民主党エスタブリッシュメント派が、進歩主義派を抑え込もうとする動きである。

アフリカ系アメリカ人有権者は民主党エスタブリッシュメント派の支持基盤である。バイデンが2020年の大統領選挙民主党予備選挙で、勝利を決定づけたのはアフリカ系アメリカ人有権者の多いアメリカ南部サウスカロライナ州の予備選挙だった。早めに民主党エスタブリッシュメント派の候補者が勝利を印象付けられるようにするための日程変更である。2016年の民主党予備選挙ではバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)がヒラリー・クリントンに対して東部などで善戦し、戦いが長引き、批判合戦が激しくなり、結果としてヒラリーにマイナスに働いた。日程変更はそのようなことが起きないようにしようという動きだ。

 共和党側では、エスタブリッシュメント派はトランプを排除したい、トランプ支持勢力の力を削ぎたいということになる。そのために、トランプ支持の有力者である、共和党全国委員長ロナ・マクダニエルの再任を阻止しようという動きに出ている。また、保守派の大口献金者であるコーク・インダストリーズの総帥チャールズ・コークの意を受けたフリーダム議連が、トランプの協力者であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)の連邦下院議長選出をことごとく妨害し続けたことは記憶に新しい。トランプが共和党の大統領選挙候補者になるかならないか、ここはアメリカ政治においての大きな焦点ということになるだろう。共和党エスタブリッシュメント派はアメリカ主流派マスコミと組んで、フロリダ州知事ロン・デサンティスの待望論を醸成してくことだろう。

 2022年の中間選挙では事前の予想に反して、民主党がそこまで負けなかった。2024年に向けて、共和党としては挑戦者として民主党に戦いを挑む形になる。今年に行われる州規模の選挙(州議会議員や州知事の選挙)は注目を集めることになる。ここで共和党が勝利を収めることになれば、2024年の大統領選挙の序盤の流れがそれによって形成されることになる。これからアメリカは少しずつではあるが、激しい政治の季節に入っていく。

(貼り付けはじめ)

2024年の政治状況を形作るであろう今年の政治的イヴェント5選(Five political events this year that will shape 2024

マックス・グリーンウッド筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3812434-five-political-events-this-year-that-will-shape-2024/

大統領選挙での予備選挙や党員集会が始まるまでに1年以上ある。今後数カ月は、2024年にほぼ間違いなく重要な意味を持つ、アメリカ政治における重要な出来事が次々と起きることになる。

共和党と民主党の両党は、今後数週間のうちに政党のために大きな決定を下す予定で、今年11月にはいくつかの州で選挙が行われ、来年の状況がどのように見えるかについて政治ウォッチャーたちに早い段階でのプレヴューを提示する。

この論稿では、2024年について何らかのヒントを与えてくれる、今年起きる5つの政治的な出来事を紹介する。

(1)バイデンの再選表明(Biden’s reelection announcement)(日付は未定)

この2年間、民主党にとって最大の問題の1つは、ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスの2期目を目指すかどうかということだった。そして、バイデン大統領がその意思を持っていることが明らかになりつつある。

バイデン大統領は今後数週間のうちに大統領選挙再出馬の計画を明らかにすると予想され、2月の一般教書演説の前後に発表することが有力視されている。

もしバイデン大統領が最終的に再選の選挙戦を進めるのであれば、ホワイトハウスへの野心を持つ他の民主党の政治家の動きが封じられる可能性がある。その結果、民主党は、2024年の大統領選挙で、激しい戦いとなりうる予備選挙シーズンを免れ、バイデンは、2期目の大統領就任に向けた説得にのみ集中することができるようになるかもしれない。

バイデンは、それでもなお、いくつかの疑問を抱えて再選キャンペーンに臨むことになる。80歳という年齢は、既に大統領執務室の主としては史上最高齢者である。2024年11月に2期目を勝ち取れば、大統領2期目の宣誓をする頃には82歳になっている。

もちろん、ドナルド・トランプ前大統領が再びホワイトハウスに挑戦するために選挙への立候補を表明しているが、彼はバイデンに比べてそれほど若いという訳ではない。バイデンの存在が、現職大統領と明確な対比を描ける可能性がある若い候補者選出に共和党を誘導する可能性があるかどうかが、1つの疑問点として残っている。

(2)共和党冬季ミーティング(The GOP’s winter meeting)(1月25-27日)

共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)は2023年1月末、カリフォルニア州ダナポイントで開催される会合において、次期全国委員長を選ぶことになっている。そして、現在のリーダーであるロナ・マクダニエルは、共和党の組織上の最高ポストをもう1期務めようとしているが、彼女と協力者たちが期待したほどには、彼女の再選は安泰とは言えない。

6年近く全国委員長を務めてきたマクダニエルは、2016年の大統領選挙でトランプがサプライズでの勝利を収めた後、全国委員長に抜擢された。

しかし、2022年の中間選挙で共和党が連邦上院の主導権を取り戻すチャンスを逸し、連邦下院では僅差の過半数にとどまったことから、マクダニエルに対しては共和党内部からのプレッシャーが強まっている。

月曜日には、アラバマ州共和党の運営委員会はマクダニエルに対する不信任声明を発表し、共和党全国委員会委員長としてマクダニエルがもう1期務めることを支持しないと表明した。

また、マクダニエルは共和党内でトランプ前大統領の最も熱心な擁護者の1人という評価を得ているが、彼女は他の2人のトランプ支持者、共和党全国委員会のハルミート・ディロンと枕製造で大成功を収めたマイク・リンデルからの挑戦を受けることになった。ディロンは、「2020年の大統領選挙では自分に対して不正に行われた」というトランプの虚言の最も大きな後ろ盾を務める1人になってしまった。

このコンテストで全国委員長に選ばれる人物は、2024年の大統領選挙を通じて協和党全国委員会を率いる任務を負うことになる。しかし、トランプ前大統領の忠実な支持者の存在は、前大統領を党の現在の課題の少なくとも部分的な責任とみなす共和党内の人々にとって、事態を複雑にする可能性がある。

(3)民主党冬季ミーティング(The Democrats’ winter meeting)(2月初頭)

民主党の幹部たちは、民主党の伝統的な大統領予備選の日程を大幅に変更する計画を進めており、人種的に多様な各州が指名プロセスにおいてより大きな発言力を持つことを望んでいる。

この計画は、来月初旬にフィラデルフィアで開催される民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の冬季ミーティングで主要な投票が行われる予定だ。

この新提案では、2024年2月3日の予備選は、数十年にわたって大統領予備選の集会を開催してきたアイオワ州に代わって、サウスカロライナ州が先頭に立つことになる。その次は、2月6日にニューハンプシャー州とネヴァダ州、2月13日にジョージア州、2月27日にミシガン州という順番になる。

もし、民主党全国委員会がこの新提案を採用すれば、従来の投票日程だけでなく、大統領候補の選挙戦への取り組み方も根本的に変わることになる。

もちろん、まだ障害は残っている。早期予備選の提案に該当する5州のうち、ジョージア州とニューハンプシャー州の2州は、早期に予備選を実施するための委員会の要件を満たそうと、民主党全国委員会に延長を要請している。

更に言えば、共和党は既に、アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州の伝統的な順番を維持した予備選カレンダーを採用している。このことも、民主党が日程を組み替えることを難しくしている。

(4)保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)(3月1-4日)

毎年恒例の保守政治行動会議(CPAC)は、過去2年間、フロリダ州とテキサス州で開催されたが、今年3月にワシントンDCに戻ることが決まっている。

フロリダ在住のトランプが再び大統領選に出馬し、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)が2024年の選挙戦を考慮する中、保守派の活動家と共和党関係者の有名な集会が中立地帯に戻ることになる。

過去数年間、CPACはトランプと共和党の彼のグループの決起集会のようなものであった。しかし、今年のCPACをめぐる大きな疑問は、これまでとは異なるトーンで開催されるかどうかということだ。

一つには、トランプがもはや共和党の大統領候補として有望視されていないことがある。最近の世論調査では、仮に予備選で対決した場合、デサンティスが前大統領を引き離すという結果が出ている。更には、共和党は2022年の中間選挙の影響と、トランプが共和党を次の選挙サイクルで党を率いるのに最適な人物であるかどうかを決めかねている状況だ。

(5)2023年選挙投開票日(Election Day 2023)(11月7日)

ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州の3州が今年州レヴェルの選挙を予定している。しかし、最大の関心はヴァージニア州に集まりつつある。ヴァージニア州の有権者は今年11月に州議会でどちらの党が過半数を握るかを決定することになる。

ヴァージニア州では近年、左派が確実に支持を拡大し続けていた。しかし、2021年にグレン・ヤングキン知事(共和党)がテリー・マコーリフ前知事を破り、共和党が州下院において僅差で過半数を占めると、状況が一変した。

今年は、共和党が州下院の過半数を維持するだけでなく、民主党が僅差で握っている州上院の過半数を獲得しようと試みるだろう。これらの州議会選挙がどのように展開されるかは、2024年に向けての政治環境を占う上で、何らかのヒントになる可能性がある。

同時に、ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事(民主党)が知事2期目を目指しており、既に共和党側の対抗馬と競い合っている。

ベシアは2019年、現職だったマット・ベヴィン知事(共和党)を僅差で破り、知事職に就任した。しかし、当時の政治情勢は民主党に有利なものであったが、今年はより厳し選挙戦が待っていると予想されている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカは民主党と共和党の二大政党制(two-party system)ということは広く知られている。しかし、連邦議会のほぼ全議席を占めているのが民主、共和両党であるので二大政党とも言えるのだが、この2つの政党以外にも数多くの政党が存在する。しかし、選挙制度が二大政党に有利になっていることもあって、第三党の勢力はなかなか拡大しない。リバータリアン党や緑の党といった政党は大統領選挙で数%の得票率を記録するがそれ以上のことはない。

 そうした中で、アメリカ国内では第三党待望論、第三党があっても良いのではないか、今の二大政党では自分たちの考えを正しく反映できていないという考えが出てきているようだ。それは下の記事の中で紹介されている。最新の世論調査の結果では二大政党制でうまくいっていると答えたのは4分の1程度だったということだ。
 2020年のアメリカ大統領選挙、2021年のニューヨーク市長選挙で民主党予備選挙(本選挙で民主党の候補者となるための選挙)に出馬したアンドリュー・ヤンは昨年、所属していた民主党を離党し、前進党(フォワード党、Forward Party)を結成した。極端な主張に与するのではなく、穏健な主張を行うということのようだ。今年に入り、民主党や共和党で連邦議員や知事を務めた経験を持つ出身者たちが作った諸団体と前進党が合同した。第三党を求める人々の声に応えるという動きでもあるようだ。

 アンドリュー・ヤンの掲げる政策は中道的であるが、注目を集めるのは「ベイシック・インカム」である。ベイシック・インカムとは簡単に言うと、国民全員に毎月一律の金額を配布するというものだ。

 前回もご紹介したが、直線的な政治スペクトラムでの右と左の二項対立という構図は変化しつつある。民主、共和両党はそれぞれアレクサンドリア・オカシオ・コルテスらの左派、トランプを支持する右派が力を持ち、それぞれ左と右に引っ張っている状況だ。これは既成の民主、共和両党内部のエスタブリッシュメント派やエリートたちに対する反発の動きでもある。ヤンたちの行動は既成の民主、共和両党から飛び出した外での行動ということになる。

 二大政党制がすぐに崩れるということはないだろうが、二大政党制に対する不信感や無力感がアメリカ国民の間で広がっているのは確かなようだ。それはアメリカ政治全体に対する不満ということを基にしている。このまま続けば、アメリカ政治は変容を余儀なくされることだろう。

(貼り付けはじめ)

ヤン率いる前進党(フォワード党)と元共和党幹部たちが率いるグループと合併(Yang’s Forward party merges with groups led by former GOP officials

サラ・ポラス筆

2022年7月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/3577267-yangs-forward-party-merges-with-groups-led-by-former-gop-officials/

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬した経験を持つアンドリュー・ヤンが、元共和党、民主党、無党派の人々と共同して「前進党(フォワード党、Forward Party)」として政党を結成した。水曜日にヤン自身が発表した。

前進党は昨年10月に結成されたが、現在は3つのグループが合併し構成されている。ヤン自身が結党した前進党、トランプ政権下でホワイトハウス職員を務めたマイルズ・テイラーが率いる元共和党員たちが結成した「リニュー・アメリカ・ムーヴメント(Renew America Movement)」、民主党出身者、無党派、共和党出身者が結成し、元連邦下院議員のデイヴィッド・ジョリー(フロリダ州選出、共和党)が代表を務める「サーヴ・アメリカ・ムーヴメント(Serve America Movement)」である。

ヤンは本誌への声明の中で、「積極的な統一された第三党運動(third party movement)を構築することは困難な事業である。しかし、何百万人ものアメリカ人が待ち望んでいたことでもあるのだ。だからこそ、私たちは成功を収めることになるだろう」と述べた。

前進党のリーダーたちは、政治における極端な考えや主張を排除し、共通点を追求すると述べ、アメリカ国内最大の第三政党になると主張している。

前進党のウェブサイトに掲げられているスローガンは「左派でもなく、右でもない。右でもない。前進だ」となっている。

2021年10月に民主党を離党する際、ヤンは離党発表声明の中で同様の思いを語っている。

声明の中でヤンは「この国には、政治を再編成し、国を引き裂く二極化を逆転させるための新しいタイプの政党が必要だと考えた」と書いている。

ヤン、ジョリー、クリスティン・トッド・ホイットマン元ニュージャージー州知事(共和党)は、ワシントンポスト紙に寄稿した水曜日の論説の中で、「前進党はアメリカ国民を団結させるだろう」と述べている。

彼らは「アメリカは新しい政党を本当に必要としている。穏健で常識的な多数派を反映する政党が必要なのだ」と書いている。

ヤンの声明によると、前進党は現在、既にいくつかの州で投票用紙に候補者の名前を記載している。

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Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

世論調査:アメリカ国民の政治的見解を代表する政党は2つで十分と答えた人は4人に1人(Just 1 in 4 say two parties good enough to represent Americans’ political views: poll

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新の共同全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第三政党は必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

シリン・アリ筆

2022年728

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/changing-america/respect/diversity-inclusion/3578382-just-1-in-4-say-two-parties-good-enough-to-represent-americans-political-views-poll/

要約:

USAトゥディ』紙とサフォーク大学による最新の世論調査によると、アメリカ人の約4分の1が、政党の選択肢に満足していないことがわかった。

・約26%は第三政党が必要だと考えていると答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党)」という新しい政党の血統を発表した。彼の願いは叶うかもしれない。

アメリカ人は現在の政党の選択肢に満足していないようで、最新の全米規模の世論調査で登録済有権者の4分の1は第三極が必要だと考えていることが明らかになった。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の最新全国世論調査によると、調査対象者の約26%が第3の政党が必要だと考えており、約33%が3つ以上の複数の政党が必要だと回答していることが明らかになった。

現在の民主・共和両党による二大政党制で十分だと答えたのは約24%に過ぎない。

ジョー・バイデン大統領の経済的支持率が30%を記録し、4月時点より5ポイント低下した。また、ドナルド・トランプ前大統領を11ポイントも下回っている。そうした中でこのような結果が出た。

USAトゥディ』紙とサフォーク大学の世論調査は、全米の登録済有権者1000人を対象に行われ、回答者の約76%が、この国は間違った方向に進んでいると考えていることが明らかになった。

「連邦議会選挙が今日行われるとしたら」という質問には、約44%が民主党の候補者に投票すると答え、約40%が共和党の候補者を選ぶと答えた。

しかし、47%近くが「バイデンにほとんど歯向かう新しい連邦議会を見たい」と答え、約42%が「大統領に協力的な議会を見たい」と答えた。

ニューヨーク市長選挙と大統領選挙の民主党予備選挙に出馬したアンドリュー・ヤンが「前進党(フォワード党、Forward Party)」と呼ばれる新党を発表した直後に、この厳しい内容の新しい調査データが発表された。

これは、ヤン氏の前進党(フォワード党)、「リニュー・アメリカ・ムーヴメント」、「サーヴィス・アメリカ・ムーヴメント」という3つの別々の政党の合同を意味する。3つとも、民主党出身者、共和党出身者、無党派層で構成されている。

前進党(フォワード党)のウェブサイトによると、極端な政治を否定し、アメリカ政治に代表されない大多数の人々のための問題に取り組む意向であるとしている。

「前進党は、党派的な極端さを捨て、この国をより良くするための実際的な方法を見つけようとする全ての人のための政治的な拠点を作る。民主党か共和党か、あるいは無党派かどうか、ID(指示や立場)をチェックするようなことはしない」と、前進党のウェブサイトは述べている。

前進党は、今度の中間選挙の投票用紙に独自の候補者を立てないが、厳選された候補者への支持を提供する予定だ。この新政党は、今年末までに15の州で、2024年末までにアメリカのほぼ全ての州で法的承認を得ることを望んでいる。

データによると、新しい政党を導入するには良い時期かもしれないが、前進党がアメリカ国民に受け入れられるかどうかはまだ分からない。

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ヤンの新党は「前進党(フォーワード党)」と呼ばれる(Yang’s new party will be called ‘The Forward Party’

モニク・ビールズ筆

2021年923

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/573653-yangs-new-party-will-be-called-the-forward-party/

大統領選挙に立候補したアンドリュー・ヤンの新しい第三党の名称は「前進党(フォワード党)」になる。ヤンが最新刊の中で明らかになった。

『ビジネス・インサイダー』誌は、この名前が明らかになったのは、ヤンの『前進:私たちの民主政治体制の未来に関する覚書(Forward: Notes on the Future of Our Democracy)』と題された本の最後の部分にその名前が明らかになったと報じた。

この著書には、ヤンの新しい政党の指針となる理念も詳しく書かれている。「優先順位付投票制と開かれた予備選挙(ranked-choice voting and open primaries)」、「事実に基づく統治(fact-based governance)」、「人間中心の資本主義(human-centered capitalism)」などが挙げられている。また、2020年の大統領予備選で彼が一定の支持を得たアイデアである「ユニバーサル・ベイシック・インカム(universal basic income)」を推進するとも書かれている。

ヤンはまた、アメリカの二大政党制(two-party system)の「複占(duopoly、訳者註:ある市場に2つしか企業が存在しない状態)」を批判しており、これはアメリカが最近耐えている「危機の連鎖(cascade of crisis)」に対応するために作られたものではないと主張している。『ビジネス・インサイダー』誌が報じた。

『ビジネス・インサイダー』誌によると、ヤンは著書の中で、「機能不全は私たちを殺すだろう(The dysfunction is going to kill us)」と述べている。「更に悪いことに、それが変わると考えられる理由はない。民主、共和の既成政党が勝つ戦争に私たちははめ込まれてしまうだろう。彼らは依然として、国内で最も裕福な地域の一つで権力を売買してうろつくだけであろうし、国民は敗北してしまうだろう」。

2020年の大統領選挙民主党予備選挙から撤退した後、ヤンはニューヨーク市長の座を狙っていたが、より実績のある候補者たちよりも長く選挙戦にとどまった。

彼の著書は10月5日に発売予定だ。

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(終わり)

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 古村治彦です。

 日本でもアメリカでも政治に関する意見は多種多様だ。それぞれの立場を大きく分類すれば右と左、保守と革新、中道とか、穏健と過激といった言葉にまとめられる。日本で言えば自民党や維新は右、共産党や社民党は左ということになる。アメリカで言えば、共和党が右、民主党が左ということになる。右から左までの分類については以下の図が参考になる。こうした図は政治スペクトラム(political spectrum)と言う。
politicalspectrumstraight511

 右と左は激しく対立し合うということはこれまでの定番の考え方だ。しかし、ドナルド・トランプ大統領誕生以降、こうした単純な、直線的な政治スペクトラムでは分析ができないことが数多く起きている。まず、ドナルド・トランプ大統領誕生からして右と左という枠組みでは分析できない事件だった。

トランプ大統領を支持したのは白人の貧しい労働者たちであったが、彼らは民主党支持であるはずだった。しかし、民主党の強固な基盤であった、アメリカの工業地帯(元・工業地帯と述べた方が正確か)であるラストベルト(Rust Belt)でトランプ大統領は勝利した。トランプは民主党と共和党の主流派に喧嘩を売った。規制の政治や主流派エスタブリッシュメント派やエリートたちに対する一般の人々による怒りが政治を動かした。これをポピュリズム(Populism)と言う。

 民主党側でもポピュリズムの勃興によって生み出されたのが、民主党左派であり、その代表格がアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)だ。彼女もまたエスタブリッシュメント派やエリートたちに対する人々の不満を掬い上げ、連邦下院議員にまで駆け上がった。

 トランプはと言うべき共和党極右派と、社会主義者と揶揄される民主党極左派は同じような行動を取る。ウクライナ戦争勃発直後から戦闘の停止と停戦交渉、ロシアに対する制裁の反対、ロシアからの石油の禁輸反対を訴えている。連邦議会での投票行動でも同様の行動を取っている。こうした状況を説明するのが「蹄鉄理論(horseshoe theory)」だ。下の図を参考にして欲しい。

politicalspectrumhorseshoemodel511

 直線的ではなく、馬の蹄(ひづめ)につける蹄鉄のような形になっている。極左と極右が近づく形で直線ではなく、ぐにゃんと曲がっている。勅撰的なスペクトラムを針金に例えるならば、針金に力を加えてひしゃげた形になる。この加えられた力こそがポピュリズムである。ポピュリズム勃興時代の政治を理解するためには、この蹄鉄理論が有効ということになる。是非、掲載した図を見比べて考えてみて欲しい。

(貼り付けはじめ)

アメリカの極右と極左がウクライナ支援に反対する理由(Why America’s Far Right and Far Left Have Aligned Against Helping Ukraine

-ロシアのウクライナ戦争をめぐる言説は奇妙な仲間を生み出している。

ジャン・ダトキウィックス、ドミニク・ステキュラ筆

2022年7月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/04/us-politics-ukraine-russia-far-right-left-progressive-horseshoe-theory/

2022年2月24日にロシアがウクライナを無差別に攻撃して以来、アメリカ国内で生まれたこの戦争をめぐる言説は奇妙な政治的同志たちを作り出している。ジョー・バイデン米大統領を筆頭にアメリカ国民の大多数がウクライナに支持と支援を提供しているが、左右を問わず、ロシアのウラジミール・プーティン大統領政権を擁護したり、少なくともアメリカがウクライナ防衛に介入しないよう求めたりしている人が少なくない。

フォックス・ニューズの顔であり、アメリカのケーブルニュースで最も人気のある番組の司会者であるタッカー・カールソンは、数カ月にわたってクレムリン寄りの論調を拡散してきた(ロシア国営テレビで頻繁に再放送されている)。他の右派の人物も定期的に反ウクライナの偽情報を主張し、ウクライナへの重火器の提供に異議を唱えている。

一方、アメリカの左翼知識人の大御所であるノーム・チョムスキーは、ドナルド・トランプ前米大統領がウクライナの武装に反対していることを、冷静な地政学的政治家としてのモデルとして持ち出している。『ジャコバン』誌、『ニューレフト・レヴュー』誌、『デモクラシー・ナウ』などの左派は、ロシアの侵略についてNATOの膨張を理由とし、ウクライナへの軍事援助に反対するという党派的な路線に忠実だった。

ネット上では、左翼と右翼の多くのアカウントがウクライナの政治、政策、大統領を批判している。連邦議会では、最も熱烈な保守的トランプ支持者のうち7名の議員たちが、進歩主義派のイルハン・オマル連邦下院議員とコリ・ブッシュ連邦下院議員とともに、ロシアの化石燃料の輸入禁止に反対票を投じた。更に驚くべきことには、オマルとブッシュは、いわゆる「スクアッド」のメンバーであるアレクサンドリア・オカシオ・コルテス、ラシダ・トライブ両議員や共和党の極右派とともに、アメリカ政府がロシアのオリガルヒの資産を差し押さえることに反対したのである。

これらの動きは全て、政治スペクトルの両端が奇妙な同盟関係を結んでいることを浮き彫りにしている。問題は、その理由であり、「何故」なのか?ということになる。

極左と極右が奇妙に一致する、現代版「蹄鉄理論horseshoe theory」のような政治が展開されているようだ。歴史的には悪名高い理論だが、ロシア・ウクライナ戦争をめぐるアメリカの世論を見ると、この理論は驚くほどよく成り立っているように見える。しかし、これはイデオロギーの対称性とはあまり関係がなく、またロシアやウクライナとも関係がない。むしろ、「左翼」「右翼」、「保守主義」「進歩主義」といった単純な概念では、もはや政治の展開を理解するための有用な試行錯誤とはなり得ない、アメリカ政治の脆弱な現状と関係がある。

フランスの哲学者ジャン=ピエール・フェイは、政治的イデオロギーのスペクトルは、従来、社会主義や民主的集団主義からブルジョア・リベラルの中心を経て、全体主義やファシズムに至る直線的なものと考えられてきたが、より離れた政治的立場を結ぶ直線ではなく、むしろ馬蹄形に近く、両極はほとんど磁力を受けて曲がって互いに連動していると考えていたのである。

1930年代初頭のドイツ国内政治においてはファシスト政党と共産党の連携、そしてモロトフ・リッベントロップ協定に代表される国際政治におけるナチス・ソ連の連携が実現した。これらの観察に基づいて、フェイは、政治スペクトラムの従来の解釈が示唆する以上に、両極端に共通点があると信じていた。

政治面での蹄鉄という考えは、その知的厳密性の欠如と、中道派が反対派(主に、表向き反対している保守派と比較されうる左派)の信用を落とすために武器として用いることの両方から、長い間批判を浴びてきた。この理論を批判する人々は「極左と極右の間の政治的立場の収束のように見えるもの、たとえば、自由民主政治体制、グローバライゼイション、社会問題に対する市場ベースの解決策への批判は表面的なもので、はるかに深く乖離した思想や政策の好みを隠している」と指摘する傾向がある。むしろ、極左と極右を結びつけているのは、リベラルな中道に対する反発であり、だからこそ、リベラルな中道は馬蹄を極左と極右を攻撃する棍棒として使うことが多いのだと評論家は主張している。

しかし、この理論は再浮上し続ける。それは、極左と極右が思想と政策の両面で一致し続けるように見えるからである。

その理由の一つは、伝統的な一次元の左派・右派スペクトラムが、アメリカ政治における他の政治的分裂の軸、例えば、進歩主義や保守主義といった伝統的に知的な概念ではなく、「体制派・エスタブリッシュメント(the establishment)」に対する否定的態度や広義のポピュリズムに支配されている軸を説明できないことであろう。以前、私たちの一人が指摘したように、アメリカにおけるポピュリズムは、右派の「アメリカを再び偉大にする(Make America Great AgainMAGA)」と叫ぶトランプ支持者たちに限定されるものではない。むしろ政治的なスペクトラムに分布しており、政治的な左派(例えばバーニー・サンダース連邦上院議員の支持者たち)にも右派(トランプ支持者たち)にもポピュリストがいるのである。

フェイの比喩に従えば、馬蹄の両端を結合しているように見えるのは、保守主義や進歩主義といった高尚な概念ではなく、エリートたち、民主、共和両党のエスタブリッシュメント派、主流派報道機関という伝統的な体制を守る門番たちに対する反対である。ロシアのウクライナ侵攻に関して言えば、蹄鉄理論への支持だけでなく、それを超えるもの、つまり単純な左右のパラダイムではアメリカ政治を理解する上で特に役立たないという考え方もある。

ロシアが今年に入ってウクライナに侵攻して以来、民主、共和両党を支持するアメリカ人の大多数はアメリカ政府の立場を支持している。ウクライナへの軍事・人道支援を支持し、驚くべきことに、ウクライナ難民のアメリカへの受け入れにさえも、かなりの超党派の支持がある。しかし、ロシアにも声が大きい支持者たちがいる。

ヨーロッパ各国の極右政党の多くがクレムリンとイデオロギー的にも金銭的にも密接な関係にあり、プーティンの大量虐殺キャンペーンを支持していることはほとんど知られていない。しかし、共和党所属の連邦議員の一部を含むアメリカの右派のかなりの部分は、侵攻以来、公然とロシア側に立っている。

共和党は歴史的に反ソ連(1989年以前)・反ロシア(1989年以降)の立場を政治的に大きな効果を上げるために行使してきた。何しろ、「ゴルバチョフ氏よ、この壁を取り壊せ!(Mr. Gorbachev, tear down this wall!)」と主張した政党である。2012年、当時の共和党大統領候補ミット・ロムニーは、ロシアをアメリカにとっての地政学上の主要な敵であり、「世界の最悪の行為者のために常に立ち上がる」国であると呼んだ。2022年になると、ドナルド・トランプ前大統領、長男のドナルド・トランプ・ジュニア、マディソン・コーソーン連邦下院議員(まもなく元議員となる)、オハイオ州の連邦上院議員候補のJD・ヴァンス、ローラ・イングラハムなどのフォックス・ニューズのパーソナリティたち、キャンディス・オーエンスなどの保守派有力者たちが、党派を超えてウクライナとそれを支援するアメリカの努力を酷評するようになった。

このような右派から批判の中には、NATOの拡大がプーティンを追い詰め、侵略につながったという主張や、ウクライナへの軍事援助に使う金は国内問題に使った方がよいという主張が繰り返し登場する。たとえ、ミズーリ州選出のジョシュ・ホウリー連邦上院議員のように、アメリカ・メキシコ国境の軍事化の継続を継続すべき国内問題だと主張している人々もいる。

一方、アメリカ民主社会党(Democratic Socialists of AmericaDSA)のメンバーや彼らが支持する政治家たち、左翼の学者やエッセイスト、ネット上で「反帝国主義者(anti-imperialists)」を自称する人々を含む進歩主義的左派の多くは、最近の記憶に残る植民地侵略の明確な例の一つであるロシアに味方する(あるいは少なくとも被害者のウクライナに味方しない)傾向にある。彼らの主要な主張は右派のものと同様だ。戦争の引き金となったのはNATOの拡張とロシアの正当な安全保障上の懸念、そして国内問題の解決に使われるはずの資金の不正使用だが、彼らは戦争全面反対を表明し、時にはロシアを全面的に支持する。その全ては、しばしば「アメリカ帝国主義(U.S. Imperialism)」と解釈されるアメリカの海外介入(U.S. intervention abroad)への反対という言葉に含まれている。

極左には常に、侮蔑的に「タンキーズ(tankies、訳者註:欧米諸国において旧ソ連や現在の中国の政策や行動を称賛する人々)」と呼ばれる少数派の声が存在する。マルクス・レーニン主義者を自認する彼らは、ソ連や中国のような権威主義的な共産主義政府の抑圧的な行動を擁護することが多い。この侮蔑語はもともと、1956年にハンガリーで起きた反ソ連蜂起を弾圧するためにソ連がブダペストに戦車を送り込んだ際に、西側諸国の共産主義者たちが喝采したことに対して、仲間である左翼が投げかけた言葉が始まりである。今日、この言葉は主にネット界で使われ、抑圧的な政権の支持者たちを指し、不透明な資金で運営されるオルタナティブ・ニュースソースで働く、シリアのバシャール・アサド大統領のような独裁者を賞賛する少数派のジャーナリストたちが持つ意見に適用されている。

ウクライナに関して言えば、タンキーズの多くが親モスクワの立場を取り、クレムリンの話法をオウム返しにし、おそらく権威主義的資本主義・寡頭政治国家(authoritarian capitalist-oligarchic state)であるロシアとその前身である権威主義的共産主義国家(authoritarian communist state)であるソヴィエト連邦との区別をつけることに失敗している。こうした立場には、ウクライナの2014年のユーロ・マイダン抗議運動はアメリカが支援したクーデターであるという誤った主張も含まれ、これはアメリカ民主社会党に支持されたニューヨーク市議会議員のクリスティン・リチャードソン・ジョーダンなどの選出議員によって、オンラインのタンキーによる偽情報へのリンクという形で直接共有されてきた。しかし、同様の主張はQアノンを後押しする共和党のマジョ―リー・テイラー・グリーン連邦議員や、ノーム・チョムスキーやシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授など、一見真面目そうな一流の学者たちによってもなされてきた。

実際、ウクライナに関して馬蹄の両端を引き寄せているのは、単に紛争への反対やロシアへの応援ではなく、これらの立場に合った政治的スペクトルを超えた考えをすぐに受け入れていることだ。つまり、馬蹄理論の批判者たちが主張するのとは逆に、ウクライナに関しては、表面的な政治的類似性だけでなく、ご都合主義とはいえ、はるかに深いイデオロギーの一致が見られるのである。

ここで参考になるのが、ミアシャイマーの研究である。ミアシャイマーは国際関係論に大きな影響力を持つ学者で、世界情勢分析における「攻撃的リアリズム(offensive realism)」学派の主要な提唱者の一人として知られている。この学派は、各国家は、特に大国は無秩序な世界システムの中で自国の軍事力を最大化するために合理的に行動する、つまり自国の安全に対する脅威が認識されると暴力的に反応する可能性が高いと主張するものだ。

ミアシャイマーのウクライナに関する議論への最も大きな貢献は、2014年のユーロ・マイダンをアメリカの支援をクーデターと見なしたこと以外に、ロシアのウクライナ侵攻は、NATOが東ヨーロッパやバルト地域でのロシアの勢力圏を拡大し、ウクライナに接近したことが直接的原因であるとするものである。攻撃的リアリストの分析によれば、ロシアの攻撃は、このアメリカ主導の拡張を食い止めるものである。この説は、紛争の初日から広く異議を唱えられたにもかかわらず、ミアシャイマーの説明は広く伝わっている。

ミアシャイマーは『エコノミスト』誌のコラムや『ニューヨーカー』誌のインタヴューでその考えを披露している。ミアシャイマーの各論稿は、億万長者ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団(Open Society Foundation)とコーク財団(Koch Foundation)を資金源とするクインシー記念責任ある国家戦略研究所、コーク財団とランド・ポール連邦上院議員の支援を受けるディフェンス・プライオリティーズなどのシンクタンクに所属する識者たちによって言及されている。同様に、公然と社会主義を掲げる『マンスリー・レヴュー』誌、センスの良い雑誌である『カレント・アフェアーズ』誌、信頼すべき社会民主主義の雑誌『ネイション』などの左派出版社からアメリカのウクライナ政策を批評した人たちにその仕事が紹介されてきた。ミアシャイマーはまた、ロシア外務省にリツイートされている。

通常、ウクライナに関するミアシャイマーの考えは、攻撃的リアリズムに関する彼の広範な理論とは別に議論されることが多い。歴史的な例を挙げれば、1961年にキューバをアメリカの勢力圏内にあるソ連の中継基地として侵略しようとした時、アメリカの進歩主義的なエリートたちがソ連を支持したことは想像に難くない。しかし、この「歯も爪も真っ赤な(red in tooth and claw)」リアリズムは、まさに攻撃的リアリズムが意味するところである。

アメリカの外交政策と残忍な国際介入主義(international intervention)を激しく批判するチョムスキーと、その外交政策と残忍な国際介入主義の多くを構築したヘンリー・キッシンジャー元米国国務長官には、同様の引用の運命が訪れている。ウクライナ紛争の終結をめぐるこの2人の理論が重なると、馬蹄の両端が事実上キスすることになる。最近、この2人は欧米諸国とウクライナに対し、ロシアとの紛争をエスカレートさせず、「和平(peace)」を模索するよう呼びかけた。

そして、彼らは両方とも、しばしば並行して、ウクライナに関する彼らの主張を支持するために左派と右派の両方の批評家たちよって引用されてきた。最新の『ニューヨーク』誌の記事において、左派党派は一緒になって、アメリカには紛争に介入する権利などないが、プーティン大統領とウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を交渉のテーブルに連れて行く力と権利の両方を持っていると主張している。

もちろん、多様な政治的傾向を持つ人々が同じ専門家の政治分析を参考にしてはならないという理由はないが、自分の受け入れやすい考えを共有しているというだけで学者や政治家を無闇に受け入れるのは、極左も極右も同様に、真の政治分析の欠如を示すものである。両者ともウクライナについては意見が一致しているので、自分たちの立場を確認する専門家(ほとんどがアングロサクソンの大物で、ウクライナの専門家はほとんどいない)を引き合いに出しているのである。

左派がキッシンジャーの主張を認め、共和党がチョムスキーに賛成するというのは、非常に興味深いことだ。しかし、チョムスキーとキッシンジャー(そしてミアシャイマー)が同意しているのなら、彼らが正しいに違いない、という議論になる。しかし、彼らはそうではない。プーティンは最近、自らをピョートル大帝(Peter the Great)になぞらえ、ロシアが以前の植民地に進出する権利を主張し、ウクライナ侵攻の決定に西側からの挑発が大きく関係しているというふりを止めた時、自らそう言ったのである。そして、馬蹄の両端にある最も強い主張、つまり、これはアメリカが主導する西側のせいだという主張が消えた。実は、ウクライナに関する馬蹄の説明は、結局のところ、ウクライナとはあまり関係がない、ということなのかもしれない。

極左と極右の政治的目標や動機はそれぞれ異なるが、両者を結びつけているのは、アメリカ政治との関係である。両者が認識している現状維持の欠点(faults of status quo)に反対し、体制とエスタブリッシュメント派に不信感を抱き、粗野な反米主義を主張している。

政治的右派では、グリーン、コーソーン、ポール・ゴーサー連邦下院議員、マット・ゲーツ連邦下院議員など、アメリカの対ウクライナ支援に反対する議員たちの行動は、民族的・人種的に多様な民主国家であり、2015年に最高裁が下した同性婚合法化判決「オベルゲフェル対ホッジス」が(少なくとも現時点では)実際的な法律(the law of the land)となっているアメリカへの深い嫌悪感によってもたらされているように思える。

極右の多くはその現実を軽視し、ロシアのLGBTQコミュニティの生活を極めて困難にするなど、プーティンの業績と見られるものと自分たちの政治目標がイデオロギー的に近いと認識している。プーティンの一般的な主張は、元トランプ顧問で現在MAGAのインフルエンサーであるスティーヴ・バノンによって賞賛されている。ロシアのプロパガンダ・マシーンは、アメリカの文化戦争(U.S. culture wars)の言語に著しく精通しており、プーティンとロシアはその文化戦争戦線において共和党のMAGAグループと同盟関係にあるという認識が広まっている。

もう一つは、アメリカ政治の二極化の中で、党派性が国益に優先してしまっており、バイデンに対して何らかの支援をすることは単純に容認できないという事実である。バイデンと民主党がある一つの立場を取れば(どんな立場でも)、それは単に間違っていて、悪意を持って反対されなければならないということになる。そのダイナミズムは、2018年のトランプ大統領の集会で、2人の男性が「民主党員であるよりもロシア人でいた方がまし(I’d rather be a Russian than a Democrat)」と書かれたTシャツを誇らしげに着ている有名な写真によって表現されている。残念ながら、私たちが強調してきたように、多くのMAGAを主張する政治家たちは口先だけでなく、その面で実際に行動しているのだ。

進歩主義的な左派の人々は、プーティンの政策に賛同しているというよりも、アメリカの外交政策に対する不信感を抱いている。こうした政治分野にいる多くのアメリカ人は、アメリカは様々な戦争(特にアフガニスタン、イラク、ヴェトナム)を通じて海外に多くの痛みを与えた悪い国際的な行為者であるという物語に非常に深く関与している。その結果、外国の紛争に対するアメリカの政策が何であれ、それは利己的であるか、あるいは帝国主義的であるに違いないという視点が、反射的にデフォルトになってしまっている。このため、多くの左翼は、NATOの拡張をアメリカの一方的な帝国主義であるとするクレムリン寄りの主張を繰り返し、更に奇妙なことに、ミアシャイマーのような人物、加えてキッシンジャーというアメリカ左翼の伝統的敵の名前を引用して、その主張を支持することになる。

もちろん、このような枠組みは、ポーランドなどの国がNATOに加盟するために行った長年のロビー活動や、これらの国々がこの政治方針を追求した理由を見逃しており、これらの国々が自らの未来を切り開くための主体性を暗黙のうちに奪ってしまっている。ソ連崩壊後のスラブ諸国を対象とした単なる文化的優越主義(cultural chauvinism)ではなく、冷戦の分析的な後遺症や明白な人種差別によって説明される可能性がある。同様の一連の議論がスウェーデンとフィンランドに対して展開されている。この両国はどちらもNATOに参加する予定となっている。

どちらかといえば、このアプローチは、進歩主義的な人々がそうでないと公言していることと全く同じであることを導く(あるいは、明らかにする)ものだ。それはアメリカ中心主義である。アメリカを事実上のグローバル・パワーとして扱うことで、たとえ自分たちが反対する大国であっても、アメリカはウクライナで停戦を実現し、その条件をロシアとウクライナの両方に指示すべき(できる)という大国主義を不用意に繰り返してしまう。これには、アメリカはウクライナの領土とそこに住む人々をロシアに譲り渡すよう説得すべきだという考えも含まれている。

ヤルタ会談の考え方を復活させた、しかし左派の、表向きは進歩主義者である者たちは、ウクライナ人の代理人であることを拒否し、アメリカの武力関与(U.S. armed involvement)に反対している。そして、アメリカにはウクライナの平和と引き換えにウクライナの土地を分割する力と権利があると信じている。この倒錯した左翼的反帝国主義(leftist anti-imperialism)の中心には、帝国主義的権力を行使する非帝国主義的衝動がある。しかし、表向きは平和の名においてのみ、現地の人々の意思に関係なく、帝国主義的力を行使するのだ。

アメリカの極右と極左が統一的な外交政策ヴィジョンを共有しているものではないが、ウクライナに対するヴィジョンとして素朴な反介入主義(anti-interventionism)を共有している。しかし、このような奇妙な組み合わせの存在は、馬蹄理論を裏付けるというよりも、政治スペクトラムを左右一体型の政治空間として単純化することに疑問を投げかけるべきかもしれない。

サンダースをはじめとする国際主義(internationalism)、社会正義(social justice)、再分配政策(redistributive policies)などを支持する左派の中には、アメリカの海外軍事展開に反対するなど、彼らの政治観と一致する理由からウクライナを支持する者も少なくない。また、自由市場を信奉し、一般に保守的な社会政治的立場をとる右派の人々も、世界政治における米国の強力な役割のヴィジョンなど、彼らの政治と一致する理由からウクライナの武装化を支持している。広義の中道派もまた、実際の政策では比較的コンセンサスが得られている。

それでは、馬蹄の端が互いに磁気的に引き付けられ、スペクトルの残りの部分から引き離される理由は何だろうか?

その磁力は、スペクトルの両側の政治的内容から来るものではない。政治学者のフィリップ・コンヴァースが1964年に示したように、そしてその後、他の学者も示したように、圧倒的多数のアメリカ人は一貫したイデオロギー的見解を持っていない。そして、そのような人たちは、多くの意味で「はみ出し者(outliers)」である。つまり、馬蹄の背後にある力は、政治の別の側面である。この側面がなければ、チョムスキーとキッシンジャーが、他の多くの点では決して両者に同意しない人々によって受け入れられる理由を、とりわけ理解することは不可能であろう。それはアメリカ政治のポピュリズム、反体制的な側面である。

ポピュリズムという言葉は空疎な記号(signifier)のようなもので、多くの人にとって侮蔑的な言葉になっている。ブラジルのジャイール・ボルソナーロ大統領、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相、ポーランドの政治家ヤロスワフ・カジンスキー、そしてトランプといった土着的な右翼指導者たちと結びついているが、サンダースの大統領選挙キャンペーンともまた結びついている。どちらかというと、アメリカ国内においては、ポピュリズムは歴史的に見て、ポピュリスト党(Populist party)の平等主義的な政治とその後の左翼的な進歩主義的な運動と結びついている。

しかし、ここでいうポピュリズムとは、簡単に言えば、ポピュリストが腐敗しているとみなす「エリートたち(the elites)」に対して、平均的な市民である「民衆(the people)」を対峙させる世界観のことである。このことは、保守的なポピュリストと進歩的なポピュリストとでは、異なる意味を持つ。

例えば、右派では、「アメリカ・ファースト(America First)」のナショナリズム、孤立主義(isolationism)、専門家たちやニューズメディアへの不信感として現れる。一方、左派の場合は、伝統的な政党のエスタブリッシュメント派、ビジネス関係者、主流派のコメンテーターたちに対する不信感という形で現れている。そのため、馬蹄の両側のポピュリストたちは一般に、従来の主流報道機関やそのエリート論客たちに不信感を抱き、より表向きは独立した、明らかにイデオロギー的に整合した情報源から情報を得ようとすることが多くなる。また、アメリカが海外に関与する場合、それは自国の政界や財界のエリートの利益のために行われるという信念に根ざした孤立主義が人々を内向きに押しやっている。

どちらの場合も、ウクライナ支援のような国民的コンセンサスが希薄な問題で、おそらく最も顕著に見られる逆張り主義(contrarianism)を助長している。この場合、左右のポピュリストの動機が対照的であることから、両者は同じ立場に達する。つまり、ウクライナ戦争を「両成敗(both-sides)」し、ウクライナ人の代理権を否定し、プーティンの手にかかるような立場に立つのである。そして、極右思想にも極左思想にも、ロシア支持やウクライナ人の苦境への反発につながるようなものは内在していないにもかかわらず、このようになるのである。

そこで、フェイが概念化した馬蹄理論は、完全には正しくないのかもしれない。政治的スペクトルの両端は、本質的に互いに曲がっている訳ではない、つまり、共産主義者とファシストが本質的に一致しているものではない。どちらかといえば、政治的スペクトルの両端は、意見において幅広い異質性を持つ傾向がある。むしろ、両端にあるポピュリストや反体制の衝動が、イデオロギーが違っても一致する信奉者の細部を切り離してしまうのだ。

もちろん、伝統的で一次元的な政治的スペクトル自体が、人々の政治的コミットメントの全体を理解するための試行錯誤を通じて欠陥があることは、特にアメリカのような国では助けにはならない。経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)の基準は、ある人を左派としてマークし、民主的な選挙の結果を否定することは、その人をかなり主流の右翼と見なすことになる。

しかし、ある種のポピュリズムが右にも左にも蔓延し、それがオンラインやメディアにおける議論を形成し、民主党や共和党の所属政治家たちの政治メッセージや政策の優先順位をも形成していることは、政治状況だけでなく政治言説(political discourse)の性質が深く分裂していることを示す。これは単に両極化(polarization)という問題ではなく、政治的現実に対する理解の共有がますます不可能になっているという、より深い問題なのである。ウクライナはこの流れの主人公というよりは、来るべき事態の前兆に過ぎない。

※ジャン・ダトキウィックス:ハーヴァード大学法科大学院ブルックス・マコーミック・ジュニア動物関連法・政策プログラム政策研究員。ツイッターアカウント:@jan_dutkiewicz

※ドミニク・ステキュラ:コロラド州立大学政治学助教授。ツイッターアカウント:@decustecu
(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)が発売になりました。5月29日に新宿にある紀伊國屋書店に行きましたところ、3階の政治・社会のアメリカ関係の棚に平積みして置いてありました。他の地域や書店では棚への配置が若干遅れてしまうことがあります。できましたら、6月1日以降に書店にお出かけいただき、手に取ってお読みいただください。
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 アマゾンでは昨晩、全体で600位台、アメリカのエリアスタディ部門で2位を記録しました。好調なスタートとなりました。電子書籍版も発売スタートとなりました。私の友人、知人数名から「電子書籍版で早速手に入れた」という連絡を貰い、電子書籍が結構普及しているものだと認識することができました。
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 アマゾンで「一時的に在庫切れ」という表示が出て慌てました。出版社やアマゾンは何をやっているんだと頭に来ましたが、すぐに「在庫あり」となりました。アマゾンは完全にコンピュータ管理になっていて、アマゾンの倉庫に在庫がなくなり、取次会社の倉庫に注文が入り届けられるまでに表示される定型のフレーズだとそうです。

 全国の書店やアマゾンで「一時的に在庫切れ」となって注文が舞い込む形になればと密かに願っています。是非、手に取ってお読みください。

(終わり)

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古村治彦です。
2021年3月27日に、副島先生の最新刊『裏切られたトランプ革命 ―― 新アメリカ共和国へ』(秀和システム)が発売となります。
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以下にまえがき、目次、あとがきを貼り付けます。是非手に取ってお読みください。
(貼り付けはじめ)
まえがき

 私は堅い決意でこの本を書く。こんなのはウソだ、有り得ない、と言いたいなら言え。私はそのお前たちと戦う。自分の命を賭けて、真実(トルース)を日本社会に広める。

 この本は、アメリカで昨年(2020年)11月4日から始まったトランプ革命についての本である。
トランプ政権を、何が何でも転覆させようという勢力による〝選挙犯罪クーデター〟が起きた。この日から、アメリカ合衆国は騒乱状態に入った。そして4ヶ月が過ぎた(3月4日)。だがトランプ革命はまだまだ続く。このまま終わらない。たった数ヶ月で決着はつかない。歴史上のほとんどの戦争と革命は、3年から4年間続く。
 私は、トランプ打倒クーデターと対決する。私はトランプ革命勢力の、日本における支持勢力の代表のひとり、司令官(コマンダー)を勝手に名乗って、この本を書いてゆく。
 まず、みなさん、安心してください。指導者のドナルド・トランプを、家族も含めて米軍がしっかり守っている。彼はフロリダのパーム・ビーチの「マール・ア・ラーゴ」の邸宅で今もどっしり構えている。米軍の8割は今もトランプ大統領に忠誠を誓っている。
 米国で大規模な不正選挙 massive voter fraud(マッシヴ・ヴォウター・フロード)が起きた。「郵便投票8010万票」という途方もないインチキ偽造投票用紙。それからドミニオンという票の違法集計ソフトと外国から軍事衛星まで使った遠隔操作で、票の移し替え(スイッチ・アンド・フリップ)が行われた。それらはアメリカ本国で、暴露され、たくさんの証拠と証言が挙がった。それで大騒ぎになった。
 このあと、12月に入って、さらに別の凶悪事が公表された。アメリカの支配層の一番上の者たちが、幼児性愛( pedophilia ペドフィリア)犯罪に関わっていた。さらには大勢の子供の幼児殺害( infanticide インファンティサイド)と生贄(いけにえ)( sacrifice サクリファイス)の儀式殺人( ritual murder リチュアル・マーダー)に参加していた。このことが、世界中にドカーンと世界中に露見、発覚した。この者たちを「ディープ・ステイト」the Deep State〔ザ ディープ ステイト〕 と言う。彼らは悪魔崇拝の悪魔教( cult カルト)の者たちである。日本でもこの事実が広くSNSで広まった。それはアメリカの政、財、官界1万人の他に、ハリウッド・セレブリティーズ、すなわち一流芸能人300人を含む。
 そして、何と1月6日には、ついに、その元凶(げんきょう)がローマ・カトリック教会(ヴァチカン)であることが判明した。この事実をこの本で詳述する。それとイギリス王室を筆頭とするヨーロッパの主要な王家である。
 この大量の幼児殺し、生贄供犠(いけにえきょうぎ)の儀式に加わった者たちは、もう逃げることはできない。凶悪な幼児殺しの殺人鬼たちは、もう許されない。人道に対する罪、人類への凶悪犯罪として、裁判にかけられ処刑されなければならないこともあろうに、幼児や少年、少女たちを殺害し自分たちの異常嗜好(しこう)の対象にするとは。今もアメリカ軍による世界各地での彼らへの逮捕、拘束、連行が秘かに実行されている。彼ら世界の頂点にいる最高権力者の凶悪犯罪は、すでに多くの人間に知られてしまった。世界中で10億人ぐらいの人々が知った。お前たちは、もう逃げられない。
 ドナルド・トランプと正義の人々がこれと、今も戦っている。アメリカ国民のトランプ勢力を上から抑えつけて、黙らせれば、何事もなかったことにできると考えている。自分たちディープ・ステイト the Deep State(陰に隠れた深奥の政府)が、これからも人類を支配し続け統制できる、と考えている。もうそんな考えは成り立たない。今や世界(史)が大きくひっくり返ったのである。
 お前たちは、不正選挙でトランプを無理やり引きすり降ろして退任させることで(1月20日)、自分たちの勝利だ、と考えている。そうは問屋が卸さない。お前たちが常習化した人類と人道(人倫、人の道)に外れた凶悪行為は、もう隠し遂(おお)すことはできない。覚悟せよ。この中には日本人の権力者たち200人ぐらいも含まれている。すでに、米軍からその人名リストが流出している。
 この極悪を通り越した、まさしく悪魔たちは、トランプ政権を不正選挙の謀略でまんまと打ち倒した、と思っている。だが、お前たちが完全勝利したわけではない。それは完全犯罪( perfect crime パーフェクト・クライム。小説家アガサ・クリスティの作品の業績)になっていない。真実はボロボロとこぼれ落ちて、もう覆い隠すことはできない。

 今のアメリカを統治しているのは、奇妙で複雑な顔をした軍事政権である。
バイデン政権(ディープ・ステイトがこの男を上から操る)は、実体のない空虚な政府である。ホログラム(レーザー光線による映像)で出来ているような、ボヤッとしたヴァーチャルの政権である。ジョー・バイデンはホワイトハウスの中にはいない。
 米軍人たちの本拠である国防総省(ペンタゴン)の中は、トランプ派と反トランプ派の将軍たちが真っ二つに分かれて、一触即発の睨(にら)み合いを続けている。
1月20日(大統領就任式)に首を切られたはずのクリストファー・ミラー前国防長官は、今、“Shadow Shogun”「シャドウ・ショウガン」「影の将軍」と呼ばれている。このクリストファー・ミラー中将がトランプ派軍人のトップ(総帥[そうすい])として、今も隠然としてペンタゴン(統合参謀本部〔ジョイント・チーフ・オブ・スタッフ〕)の中で米軍の実権を握っている。米軍人(軍曹から上)と兵士の8割はトランプ派である。今もトランプに忠誠を誓っている。
 もうひとり、ピーター・ゲイナー(中将)が強固なトランプ派である。彼がNSA(米軍の国家情報局)と、DHS(国土安全保障省)と、FEMA(緊急事態管理庁)という米軍の神経細胞を今も統括して押さえている。トランプ派は米空軍(エアフォース)と宇宙軍(スペイス・コマンド)と、特殊部隊(スペシャル・フォーシズ。SOCOM[ソーコム]と言う)が中心である。それに対して、陸軍と海軍は総じてディープ・ステイト側である。
 今、米軍の中枢は、両者が伯仲して鍔迫(つばぜ)り合いをやっている。激しく睨み合っている。おそらく、このまま、ずるずると、この状態がまだまだ続くだろう。世界政治の一番頂点を握っているはずのディープ・ステイトの力が軍に及んでいないのだ。幸いなことに、ディープ・ステイトは、独自の自前の軍事力(突撃隊)を持っていなかった。このことを私は11月に知って「やった。これでトランプは勝てる」と確信した。この考えは今も変わらない。そして米軍の中の最強の組織がトランプをしっかり防衛している。だからトランプを殺害、抹殺することができないのだ。
 このようにアメリカの民衆(国民)と、軍の両方が今も強くトランプを支えている。
 アメリカ国民3億人のうち、有権者は2億人だ。トランプに投票した人々がそのうちの67パーセントだ。だからこの1億人の支援が今もある。この人々はトランプと共に、これからも戦う気である。そして残りの1億人が「我関せず」、「私は争いには関わりたくない。政治問題に関わって、職を失ったり、家に石を投げられたり、イヤな思いをするのはイヤだ」という人たちである。これを〝ハンス・シュルツ軍曹(サージャント)〟と言う。このハンス・シュルツ軍曹(ぐんそう)、即ち「とにかく自分は争いや危険なこととは無関係、無関心」を表明するコトバは、アメリカの高校生でも知っている。とにかく、” I know nothing.(アイ ノウ ナッシング) “「私は何も知らない。関係ない」と言い通す。
「大統領選挙は、100パーセント巨大なインチキだった」と皆、知っている。それこそ誰でも知っている。コワイからそう言わない。アメリカ人も臆病者がたくさんいる国なのだ。自分は関わりたくない、だ。バイデンを支持している者たち、すなわち、ディープ・ステイト側)は、反(はん)トランプ派である民主党の2500万人ぐらいだ。たったの2500万人だ。圧倒的に多数のトランプ派国民と比べて、敵どもを支える大衆はこんなにも少ない。それなのに、ディープ・ステイトは、何故か強大である。その謎を私はなんとか解明しなければいけない。私にとっての大きな課題だ。
 このようにして、トランプ革命は続く。
 1月11日に、米軍の中の反トランプの勢力の動きが有って、クーデターが起きて、トランプは、戒厳令(マーシャル・ラー)を敷く(発動する)ことができなかった。だから、トランプは一旦後ろに引いた。このことを本書で詳しく説明する。トランプたちは、そしてバイデン政権(ディープ・ステイト)が行き詰まるのを待つ。そして2年後の、2022年11月の中間選挙でトランプ勢が巻き返して勝利するだろう。

2021年3月2日
副島隆彦

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『裏切られたトランプ革命 ―― 新アメリカ共和国へ』◆ 目 次
まえがき

第1章 裏切られたトランプ革命
トランプは先の先を考えて動く(2021年1月31日)
  トランプには1億人のアメリカ国民と米軍がついている
  バイデン〝空虚〟政権にアメリカ破産の責任を取らせる
  トランプを裏切った軍人トップたち
  軍事強行路線の中止が決まったのは1月11日
  ビッグ・テックによる言論弾圧
  大腐敗していたアメリカの法曹界
  人類の歴史がひっくり返る
  人類の〝諸悪の根源〟であることが満天下に判明したローマ教会
  日本のメディアを情報管理している男
  ペンスは二重スパイ
  世界民衆を本気で怒らせたディープ・ステイト。覚悟せよ

第2章 ペドフィリアという人類への大罪
  不正選挙を超える人類史上の大事件
  ディープ・ステイトによる人身売買と児童虐待の事実は2015年に告発された
  J・F・K・ジュニアは生きているらしい
  エプスタイン問題とローマン・カソリックの小児性愛問題がつながった
  生贄の儀式、悪魔の儀式に一度でも参加した者は死ぬまで逃れられない
〝エプスタイン〟オールスターズだったバイデンの大統領就任式

第3章 いかにしてトランプ票は不正に強奪されたか
「緊急事態である。米大統領選挙は、不正選挙が行われている」(2020年11月4日)
  トランプが、愚劣な不正選挙を乗り越えて、強力に大統領に再選される。悪事は露見し打倒される(2020年11月7日)
  トランプの勝利に向かって。米大統領選挙での不正・犯罪者勢力との闘いは、激しく続く(2020年11月17日)
  トランプの勝ちだ。副島隆彦が、勝利宣言を出します(2020年11月27日)
  トランプは戒厳令(マーシャル・ラー)を発令するだろう(2020年12月8日)
  軍のトップたちがトランプを裏切った
  日付けのない命令書
  両軍の睨み合い
  トランプは一旦退く戦略に出た
  戒厳令一歩手前まで行っていた

 あとがき
 
資料人身売買を禁止するトランプ大統領の宣言文(2020年12月31日付大統領令)
年表2020年アメリカ大統領選後に起きたこと

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あとがき

 この本は昨年11月4日から起きた、トランプ政権打倒クーデターの激闘の3ヶ月間を記録した本である。一体アメリカで何が起きていたのか、その記録として後世に残すために書かれた。
 この本の書名、「裏切られたトランプ革命」は、今も激しく続いているドナルド・トランプたちの戦いを支持、支援する立場から書かれている。
 それなのに、わざと「敗北した革命」のような書名にしたのは、敵たちの目を欺〔あざむ〕くためである。
「ほらね。やっぱりバイデン政権になったでしょ。選挙に不正が有ったなんて、テレビ・新聞は報道しなかったし。✖陰謀論なんか信じたらダメだよ」という程度の、生来、頭の軽い人たちまでも、書店で手にとってもらってなんとかお客(読者)に取り込むつもりで編集者と決めた書名である。それでもこう書いている私自身が不愉快極まりない。だが、勝ったと思っているバイデン=ヒラリー派、即ちディープ・ステイト側だって、私と同じように極度に不愉快なままのはずなのだ。何故なら、お前たちは犯罪者だからだ。
この本の書名は、レオン・トロツキー著『裏切られた革命〔レヴォルーション・ビトレイド〕』(1937年刊)の真似をした。あるいは、ジョン・リード著『世界を震撼させた10日間』(1919年刊)のつもりで書いた。
 今や私は、日本に於けるトランプ革命の支援勢力の代表者、司令官である。と自任し豪語する。こんなことを書く人間は他にいない。誰に遠慮する気もない。私の敵たちは、不正で違法なことを平気でする犯罪者たちだからである。あるいはそれに同調する臆病者(カウアード)たちである。トランプ派は負けない。徹底抗戦をすることも、戦略家〔ストラテジスト〕(軍師)に必要な資質である。「トランプはもう終わった人だ」は、今や人類の敵として、ヌーッとその正体を、私たちの前についに現したディープ・ステイト the Deep State(裏に隠れた蔭の政府)の側の捨てゼリフだ。こいつらは、世界中にコロナ・ウイルスまで作って撒き散らして(ところが効き目はあまりなかった)、人類を苦しめている。自分たち自身がやってしまったことに自信がなくなって、発狂状態になっている。

 トランプは今もアメリカ国民の多数派と、そして何よりも軍(ミリタリー)に支持されている。
 私が、トランプ革命は勝利する、と確信したのは、11月7日である。その根拠は、250年前のアメリカ独立革命戦争(インデペンデント・レヴォルーション・ウォー)(1775‐1813)が勝利した革命だからだ。
 その14年後に起きたフランス大革命(グラン・レヴォルシオン)(1789)も、その128年後のロシア革命(ボリシェビキ革命)も、それから中国革命も血塗られた、失敗した革命だった。それに対してアメリカ独立革命は、優れた指導者と豊かな国土に恵まれた、成功した革命である。
このことを語ってアメリカ知識人たちを激励したのは、女性思想家のハンナ・アーレントである。だから私、副島隆彦は、今回の第2次アメリカ独立戦争であるトランプ革命は勝利する、と判断した。ヨーロッパの王族と大貴族そしてローマ教会(これらがディープ・ステイトの総本部で最高司令部である)を、今度こそ打ち倒す、と。彼らは遂にその正体を露(あら)わにした。だから世界人民によって打倒される。
人類史上、初めてデモクラシー(民衆代表制の政治体制)の国家を打ち立てたのは、まさしくアメリカ合衆国である。だから再度の独立革命戦争にアメリカ(トランプ勢力)は勝つ、と私は予言した。
 トランプに、2015年に、「あなたに大統領になって欲しい。私たちが決死の覚悟で支える。恐るべき腐敗と残虐(大量の幼児虐待、殺害)が今この国を支配している」と、トランプに大統領選に出ることを要請したのは、米軍なのである。この事実が判明した。
 今も軍隊が首都ワシントンに駐留して、アメリカは奇妙な軍事政権になっている。国防総省(ペンタゴン)の中は、トランプ派(こっちが優勢)と、反トランプ派(ディープ・ステイト側)の将軍〔ジェネラル〕たちが激しく睨み合っている。一触即発の状態である。
こういう極度の緊急状態の時には、先に手を出さないほうがいい。クーデターを仕掛けて来たのは向こうである。よっぽど追い詰められていたのだろう。「負けるが勝ち」という戦法がある。「負け惜しみ」で言うのではない。一旦、後方に退(ひ)いて、撤退して、態勢を立て直す、ことが大事だ。これを、トランプは今やっている。彼には今もアメリカ国民の多数派と、軍が付いている。「バイデン大統領は、影が薄いなあ。大丈夫かな」と、日本の生来の弱虫の、長いものに巻かれろ、で生き方上手の人間たちが言い出している。〝お山の大将〟になったディープ・ステイトには、周りからパンパンと鉄砲の玉が飛んで来る。
 あと2年間(2022年11月の中間選挙〔ミッド・ターム・エレクション〕まで)は、トランプは動かない。着々と準備する。違法と犯罪の限りを尽くして、表の政治権力をなり振り構わず奪い取ったディープ・ステイトに、アメリカ合衆国の巨額の累積の負債(大借金)である、総額280兆ドル(約3京円)の責任を取らせて国家破産させるべきだ。その時、米ドルと米国債は大暴落して、世界大恐慌に突入する。そして、アメリカは新生のアメリカ共和国 The America Republic(リパブリーク) になる。それは2024年に起きるだろう。ニューヨークなどの東海岸(ザ・イースト・コースト)は分裂して、ヨーロッパに付くだろう。

 最後に。この本を書き上げるのに秀和システムの小笠原豊樹氏のひとかたならぬお世話になった。私たちは激しい重圧に耐えるしかない。記して感謝します。

2021年3月4日
副島隆彦
(貼り付け終わり)
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