古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イギリス

 古村治彦です。

 

 少し古い記事ですが、『フィナンシャル・タイムズ』紙に掲載された優れた政治分析記事をご紹介します。これは昨年のアメリカ大統領選挙以来の世界的な政治の流れを的確につかんでいる記事だと思います。

 

 昨年の大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントンの戦いとなりました。日本でも報道されましたが、トランプを支えたのは、ラストベルトと呼ばれるアメリカの工業地帯の白人労働者たちで、元は民主党を支持していた人々です。彼らは民主党の実像に失望し、民主党も含めて既存のワシントン政治を壊して欲しいということで、アウトサイダーであるトランプを応援しました。

 

 共和党は金持ちのための党、民主党は貧乏人や弱い人のための党というのがこれまでのイメージでしたが、これが崩れてしまいました。ヒラリー・クリントンは口を開けばきれいごとばかりでしたが、実際には史上最高額の政治資金を集め、しかもそれは一般国民からの少額のお金が多数集まったものではなくて、大富豪たちからのものでした。エスタブリッシュメントという言葉が日本でも報道されましたが、民主党はきれいごとを言って貧乏人や弱い人たちから票を集めながら、実際にはエリートや大富豪たちの意向が反映される党になってしまった、ということをアメリカの有権者、特に元々民主党を支持していた人々が見抜いてしまったのです。

 

 そうした人々にとっての希望はバーニー・サンダース連邦上院議員でした。サンダースは民主党員ではなく、彼もまたアウトサイダーでした。サンダース支持は広がり続けましたが、それに危機感を覚えたのがエスタブリッシュメントの意向を受けた民主党全国委員会でした。民主党全国委員長がサンダースの躍進に危機感を持って、その阻止のためにウゴていたということが民主党大会の前に暴露されました。これがヒラリー敗北の理由の1つであったと私は考えます。また、民主党の予備選の場合、特別代議員といって、連邦議員や州知事などが特別に代議員になれる制度があり、これもまた民主的ではないとして、顰蹙を買いました。

 

 民主党は敗北すべくして敗北しました。これは2012年の日本の民主党(当時)にも言えることです。「国民の生活が第一」というスローガンを掲げながら、それを裏切り、内紛ばかり起こし、結局、自民党にすり寄るような形になって、民主党政権は崩壊しました。その時の傷はいまだに回復していません。人々の期待を受け止めることができる態勢になっていません。

 

 イギリスの総選挙で労働党が社会主義者を自称するジェレミー・コービン党首の下、躍進を遂げました。サンダースもそうですが、コービンもまた若者たちから支持を集めています。トランプもサンダースもコービンもエスタブリッシュメントに反対する人々の声をうまくすくい上げています。それは、自分たちの生活を少しでも良くしてほしいというものです。彼らは別に国家の威光を高めるとか、外国と戦争をするとかそんなことを望んでいません。そんなことに使う金があったら、自分たちに回して欲しい、そのようになるように既存の政治を変更して欲しいと望んでいます。日本でもそのような声が高まるでしょう。

 

安倍首相に対する逆風が大きくなっていますが、これは森友学園と加計学園の問題や、閣僚たちの相次ぐ不祥事だけでなく、アベノミクスになっても自分たちの生活が良くならないのはどうしてなのか、社会保障の負担だけは上がっていくのに、という不満が根底にあるように思います。

 

 そうした中で、民進党は「国民の生活が第一」路線に戻して、もう一度再分配見直しを主張すべきです。そこで、自民党との違いを打ち出すべきです。そこで参考になるのは、イギリスやアメリカで成功したケースです。

 

 トランプのスローガンで有名になった「アメリカ・ファースト」ですが、これは、「アメリカ国内にある多くの問題の解決を第一にしよう、最優先にしよう。アメリカ国民の生活を第一に考えよう」という意味です。ですから、2009年の民主党はこのことを先取りしていたのです、そして、途中で内部の無能な政治家たちにこのことを放棄させられたのですから、もう一度これを復活させるようにすべきです。そのために、古い革袋に新しい酒を入れるのではなく、新しい革袋に古い酒を入れる、つまり古くからいる執行部の面々の交代が必要だと考えます。

 昨日、民進党の蓮舫代表が辞任を表明しました。野田佳彦幹事長も既に辞任を表明しています。2人の決断に敬意を表したいと思います。民進党が新規まき直しで、自民党を追い込み、自民党に対抗できる受け皿となることを期待しています。野党共闘も含め、これからあらゆる戦術、戦略を駆使して、自公維新と対峙し、憲法改定阻止、そして将来的には政権の座を目指していただきたいと思います。


(貼りつけはじめ)

 

民主党のポピュリスト左派への旅路(The Democratic journey to the populist left

―サンダースが優勢に立ち、クリントン流の漸進主義は死んだ

 

エドワード・ルース筆

2017年6月21日

『フィナンシャル・タイムズ』紙

https://www.ft.com/content/f69b4b68-55d0-11e7-9fed-c19e2700005f#myft:saved-articles:page

 

バーニー・サンダースが再び中心に戻っている。中道派の民主党員であるジョン・オソフが火曜日に開票されたジョージア州の連邦下院議員補欠選挙で勝利していたら、民主党のクリントン派(Clintonite)が本当の勝利者ということになったであろう。オソフは、「トランプをイライラさせてやる」と公約していた。しかし、結果はトランプを喜ばせることになった。民主党はドナルド・トランプに対して道徳的な勝利を得ようと躍起になっている。しかし、民主党はこれまで勝利を収められないでいる。補欠選挙の結果によって、混乱し、指導者不在の民主党をコントロールするための戦いに民主党が敗れたということが失望感を蔓延させている。t

 

民主党にとって最大の痛手となった攻撃はもちろん昨年11月のヒラリー・クリントンの敗北だ。彼女を支援した人々は今回のジョージアの補選に大量の資金を投入した。投入された資金量はアメリカ史上最高額となった。しかし、資金が情熱の代りをすることはできなかった。オソフが勝利をしていれば、民主党内部の、エマニュエル・マクロン流の実践的な派閥が勝利を得ることができたということになっただろう。そうすれば共和党の議員たちはトランプ大統領から離れる勇気を持つことができたことだろう。オソフが勝利していたら、トランプの健康保険改革は葬り去られていたことだろう。選挙の結果を受けて、健康保険改革法案は可決される可能性が高まった。こうした状況の中で、トランプ大統領は勝利を収め続けている。

 

それでは誰がトランプを止められるか?マクロン流の民主党員たちでないならば、ジェレミー・コービンのようなタイプの民主党員たちであろう。彼らの進む道にある障害物は取り除かれつつある。彼らの主要な協力者はトランプ自身だ。トランプ大統領は民主党に大打撃を与えたが、それと同じくらい共和党を破壊しつつある。トランプは自身の支持基盤からの熱烈な忠誠心と同じくらいのエネルギーを反対者たちからもたらされている。民主党のエスタブリッシュメントは機能不全に陥ったままで、崩壊に瀕している。エスタブリッシュメントの敗北は、トランプによるアメリカ政治の再構築の中で次に起きる重要な出来事ということになるだろう。

 

最近のイギリスの総選挙の結果は、アメリカ国内のコービンと似た人々にとって有益な示唆を与えている。専門家たちは、コービンが労働党にとって最終兵器になるということを理解できていなかった。専門家たちはこの現象を誤解していたようにも思える。アメリカにおけるコービンに匹敵する人物であるサンダースのように、労働党党首コービンは人々を熱狂させる。これは専門家たちの持つ知識や経験を超えるほどのものであった。彼らはその凄まじさを理解できなかった。 私は、強力な労働党が示しているのは、有権者たちが鉄道を再び国有化して欲しいと願っているということだとは思わない。民主党についても同様だ。しかし、私が分かっているのは、コービン重要な選挙で投票率を大幅に上昇させたということだ。対照的に、マクロン率いる政党はフランス史上最低の投票率の選挙で議会の過半数を握った。史上最高額の政治資金を受けたオソフ候補の応援のためにヒラリー・クリントンがジョージア州第六区を訪問しても、彼は勝利できなかった。

 

サンダースは若い人々を元気づけ、動員している。サンダースの存在の素晴らしさを知るためには、2020年の民主党の大統領選挙候補者となり得ると考えられている人々を見ることだ。その多くが若い連邦上院議員たちだ。ニューヨーク州選出のクリスティン・ジルブランドやカリフォルニア州選出のカマラ・ハリスといった人々だ。彼らはまだまだ経験不足であり、大統領選挙の予備選挙に出たことすらない。彼らは政治家であるから、人々の前で演説し、人々を盛り上げようとして腕を振り上げることはある。しかし、これはサンダースのやり方そのものだ。彼らの姿勢はこうしたものの真似だ。大学の学費無償化と国民皆保険は草の根運動の人々の要求だ。クリントン流の漸進主義は敗北したのだ。

 

アメリカのポピュリスト左派の台頭には1つの大きな問題が残っている。サンダースは次の選挙で79歳となる。彼は次の大統領選挙にも再び出馬したいと意欲を見せている。79歳と出馬となると、アメリカ史上最高齢の大統領、二期目終盤のロナルド・レーガンよりも高齢となってしまう。サンダースは彼の支持者の中にいる時と同じく、民主党エスタブリッシュメント1%の大富豪たちの中にいても、自分の持つ情熱を示し続ける。

 

サンダースが民主党の大統領選挙候補者に指名されるような状況ならば、第三党からの出馬ということも起こり得るだろう。前ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグは2020年にはサンダースよりも少し若い78歳となっている。トランプは74歳で彼らに比べて若い。この三つ巴の戦いとなったら、トランプの再選は固いだろう。

 

現在の政治は気まぐれで移り変わりの激しい状況にある。民主党のエスタブリッシュメントは崩壊に瀕しているのなら、どうしてサンダースを止めようとしないのだろうか。多くの大富豪たちが夢見ていることが、トランプの勝利で現実のものとなった。プロバスケットボールNBAのダラス・マーヴェリックスのオーナー、マーク・キューバンについて考えてみよう。フェイスブックの共同設立者マーク・ザッカーバーグはどうだろう。オプラ・ウィンフリーについてはどうだろう。ゲームのルールがこのような速度で変化し続けている状況で、木の葉がどこに落ちるかなんてことを予測することは無駄なことだ。

 

しかし、これは大変に興味深いことだ。現代は注意欠陥・多動性障害(流動性の大きい)の時代だ。そうした時代にアメリカは人々を楽しませることができる大統領を戴いている。民主党はトランプのそっくりさんを見つけることができるだろうか?当面の間、その人物はサンダースということになる。コービン同様、サンダースは真摯な態度を崩さない。屋根裏部屋に閉じこもっている奇矯なおじさんがそうであるように、彼は聴衆によって話す内容を変えるようなことはしないし、できない。サンダースの経済に関する考えは幼稚で危険なもののように見られるかもしれない。しかし、人々は彼が何のために戦っているのかを知っている。彼が話しているのを聞き始めたら、途中で止めることは難しい。もし読者であるあなたがお若い方なら、彼の理想主義に感銘を受けるだろう。

 

ここでの疑問はアメリカのポピュリスト左派が台頭しているのかどうかではない。誰がそれを主導するのだろうかというものだ。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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 古村治彦です。

 

 イギリス首相テレーザ・メイが総選挙実施を発表した時、野党に対して責任のある行動を取るように求めました。この選挙であなた方は罰を受けるのよ、という感じでした。しかし、実際に罰を受けてしまったのはテレーザ・メイ率いる保守党でした。総選挙実施発表直後は、保守党が大勝するという予想が出ていましたが、その後、過半数は維持するだろうとなり、更には過半数確保は難しいとなっていきました。選挙結果では保守党が勝利し、連立政権を組むことでメイ政権は続くことになりますが、勝利者はイギリス労働党と、時代遅れの社会主義者として冷遇されてきたジェレミー・コービン党首でした。

 

 アメリカではジョージ・W・ブッシュ、日本では小泉純一郎がリーダーであった時代、イギリスではニューレイバー(新しい労働党)を掲げたトニー・ブレアが首相でした。伝統的な労働党の路線を棄て、より中道的な政策へと転換しました。それが新しいものだと考えられてきました。古臭い社会主義の臭いのする政策は失敗だったとヘイリの如く捨てられました。

 

 日本でも新しいリベラル勢力として、一部保守的な政治家も取り込んで、民主党が生まれました。民主党は若い政党としてあっちにぶつかり、こっちにぶつかりしながらもなんとか野党として存在感を出し、参議院では自民党を追い越す議席を獲得することができるようになりました。そして、「国民の生活が第一」を掲げて、総選挙に大勝して、鳩山由紀夫政権が誕生しました。

 

 しかし、民主党内部、そして官僚、自民党からの攻撃の前に、鳩山政権は1年で瓦解し、その後は、自民党とどこが違うのか分からない、中途半端な菅直人政権、野田佳彦政権と続き、財務省の言いなりになり、増税一本槍となり、民主党は政権を失いました。また、国民からの支持も失い、この状況は現在も続いています。

 

 安倍政権がどれほどの失敗やスキャンダルを起こしても、「民進党よりもまし」と思われているというのは、民進党が国民に貢献していないということであって、このことは厳しく糾弾されるべきです。政権獲得から喪失までを分析し、反省しなければなりませんが、この時期に中心的役割を果たした人々が無反省に指導部に居座っているようでは話になりません。

 

 今回のイギリス労働党の躍進は民進党のお手本になるものです。緊縮財政に反対し、対外強硬、排外主義に反対し、「国民の生活が第一」の旗をもう一度掲げるべきです。

 

 また、イギリス労働党の再生(resurrection)は、党内の「異分子」と言われ、冷遇されてきた勢力が中心となったという点は自民党にもお手本になるものと思います。現在、自民党は安倍一強時代と言われています。安倍氏に代わって指導者になれる人材がいない(あれだけ国会議員の数がいるのに)という状況にあり、かつ官邸が力を持ち、異論を許さない状況にあります。そういった意味では、恐怖で支配する「一枚岩」という状況ですが、「一枚岩」は、状況の大きな変化に対応できません。イギリス労働党がブレア路線の人々ばかりであったなら、保守党との差異を打ち出すことができずに、潰れていたことでしょう。それと一緒で、安倍路線で一枚岩では、大きな変化の際に対応できる人材がいないということになります。

 

 ですから、少数派や異論を述べる人々は組織の中で必要とされます。今の自民党では、そのような多様性がないように見えますが、それでも、ジェレミー・コービンのように異論を堂々と語り続けることができる人が出てこなければ、自民党は変化に対応できないということになるでしょう。わが世の春はいつまでもは続かないということは歴史が証明しています。

 

 アメリカやイギリスで起きた動きは、やがて遅れて日本にもやってくるでしょう。日本の有権者や国民は愚かだという言説には私は与しません。変化を感じ取ってそれを行動で示すことができるものと確信しています。

 

(貼り付けはじめ)

 

労働党はジェレミー・コービンのものとなった(The Labour Party now belongs to Jeremy Corbyn)―ブレア時代は6月8日に本当の終焉を迎えた

 

『エコノミスト』誌

2017年6月10日

http://www.economist.com/news/britain/21723193-blair-era-truly-ended-june-8th-labour-party-now-belongs-jeremy-corbyn

 

テレーザ・メイは8週間前に総選挙の実施を発表した時、ジェレミー・コービンは、1983年のマイケル・フット以降、もしくは1935年のジョージ・ランズブリー以来、最弱の指導者であると多くの人々が考えていたコービン氏は番狂わせを演じ、復活した。イギリス議会におけるキングメイカーとなる可能性を持ち、労働党の強力な指導者となっている。

 

コービン氏が連立政権を組むことができる可能性は低い。イギリス国民は保守党に過半数に少し足りない議席を与えた。常識で考えれば、現在の与党が政権に就く第一のチャンスを持つ。しかし、スコットランド民族党と自由民主党といった野党勢力の多くが保守党よりも労働党と条件交渉をして連立政権を作る可能性も存在する。保守党が連立政権を構築できる場合、コービン氏は強力な野党勢力の強力な指導者となるだろう。コービン氏は過半数を少し超えただけの議席しか持たない連立政権率いる首相に圧力をかけ続けることができるだろう。

 

コービン氏はイギリスの左派を革命的に変化させている。1980年代中盤以降、労働党は、中道に進むことが政権獲得のための唯一の方法だと確信してきた。左翼的な政策である産業の国有化や「国家規模での解放の闘争」の支援を取り下げ、市場と西側の同盟諸国を重視する政策を掲げるようになった。コービン氏はこのような主張に反対する少数の議員の一人であった。トニー・ブレアと側近たちはコービン氏を、人々をイラつかせるような、過激な人物として処遇してきた。

 

労働党の国会議員たちの大多数はついこの間までブレアの採用した方法を支持してきた。2015年、コービン氏は労働党党首に選ばれたが、彼が勝つなど誰も考えていなかった。2016年、労働の国会議員の4分の3はコービン氏の留任に反対票を投じたが、このクーデターは失敗した。多くの議員たちにとって、コービン氏は占領軍のようであった。そして、少数の信念を持つ強硬左派の人々によってコービン氏は支えられていると考えられていた。コービン氏の首席ストラティジストである有名なセウマス・ミルンと労働組合連合(UNITE)の指導者レン・マクラスキーがコービン氏を支えてきている。また、最近まで労働党以外に所属していた活動家たちが作る草の根の圧力団体もコービン支援に参加し、勢いが出た。

 

労働党の国会議員たちは根本的に考え直すことになるだろう。コービン氏は可能性の限界を再構築し、可能性を拡大することに成功した。コービン氏は労働党が中道に進むよりも、労働党が真に信じているものを主張することで、選挙でうまくやることができるということを示している。労働党の前党首エド・ミリバンドは2015年の総選挙で敗北した。その理由の一つはミリバンドが弁解や謝罪ばかりしているように見えたからだ。

 

対照的に、コービン氏は常に社会主義者であり続けてきたことに誇りを持ってきた。彼はまた、タブロイド紙が、労働党が恐れるロットワイラー犬ではないということを示した。コービン氏とアイルランド共和国軍との関係についての記事が多く出され、その多くが真実であったが、有権者の多く、特に若い人たちにとってそれは気にするべきことではなかった。 ブレア時代は6月8日に本当に終焉したのだ。

 

コービン氏はこれから厳しい挑戦を受けることになる。労働党が連立政権を構築する場合、コービン氏は連立相手に対して妥協しなければならないだろう。野党である立場を選択する場合、党内から厳しい批判を受けることになる。労働党内部からは、コービン氏以外の指導者であれば選挙に勝てていただろうという声が上がっている。結局のところ、経済は弱いままで、人々は耐乏生活を強いられている。全国健康サーヴィスは繰り返し危機的状況に陥っている。 それにもってきて、テレーザ・メイは最近の歴史の中で、最悪の選挙戦を展開した。

 

こうした条件が揃っていたのだが、それでも労働党の躍進を予測することは難しかった。コービン氏は全ての予測を覆す強力な選挙戦を展開した。彼は選挙に勝てなかったが、保守党の指導者とは異なり、勝利者のオーラを身にまとっている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






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 古村治彦です。

 

 今回は、Unionという言葉の意味について考えてみたいと思います。Unionを辞書で調べてみれば、結合、団結、連合といった意味が書かれています。

 

 私たちが知っている使い方では、労働組合はlabor unionがあります。これは労働者が団結して、労働に関する権利を守り、団体交渉を行うためのものです。最近、イギリスで国民投票が行われ、イギリスが脱退することが決まったのが、ヨーロッパ連合ですが、これはEuropean UnionEU)です。

 

Unionの動詞がUniteです。団結する、連合するという意味になります。50ある州(state)が連合している国です。イギリスは、United KingdomUK)です。イギリスの正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。ブリテン島にあるイングランド、ウェールズ、スコットランド、そして、アイルランド島の北部が連合して王国を形成しています。私はラグビーが好きですが、古くはファイヴ・ネイションズ、今はシックス・ネイションズという、ラグビーの6カ国対抗戦があります。これに「イギリス」ティームは参加していません。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリアが参加して、ホームアンドアウェイ方式で戦います。

 

イギリスの国民投票で興味深かったのは、投票の結果に地域差があって、スコットランド、北アイルランド、大都市ロンドンではEU残留が大勢を占め、ロンドンを除くイングランドとウェールズはEU脱退が大勢を占めたことです。そして、スコットランドでは、スコットランドだけはEUに残留できるようにしたいという動きになっています。「イギリスって昔連合王国って習ったけど、実際にそうなんだなぁ」と改めて思いました。

 

 国際連合はUnited Nationsです。これは中国では「聯合國」となります。第二次世界大戦時に、枢軸国(Axis)と戦った連合国(Allied Powers)が戦後の枠組みとして、自分たちを常任理事国として作った組織ですから、「連合国」と訳すべきですが、今は世界のほとんどの国々が参加していますから、諸国連合ということになります。

 

 アメリカ合衆国はUnited States of AmericaUSA)です。これは全米50州(state)が連合した国ということです。独立した時は13州でしたが、それがどんどん拡大していきました。Stateという言葉は、国家を意味することもあります。全米各州には外交権と通貨発行権はありませんが、州兵(national guard)はいますし、ほぼ国のような機能があります。カリフォルニア州の州旗には、「Republic of California」と書かれています。

 

 アメリカ合衆国のUnionが崩れそうになったことがあります。それが1861年から1865年にかけて起きた南北戦争です。南北戦争といいますが、英語では、The Civil Warで、「内戦」という意味になります。Theがつきますので、特別な、これからもないであろうというくらいのことになります。アメリカが、北部各州のアメリカ合衆国と南部各州のアメリカ連邦(Confederate States of America)に分かれて戦いました。

 

 アメリカ史上最高の大統領は誰か、という質問があると、いつも一番になるのが、エイブラハム・リンカーンです。日本でも奴隷解放を行い、「人民の、人民による、人民のための政府」という言葉を残した人物として有名です。しかし、彼がアメリカ史上最高の大統領と言われているのは、アメリカの分裂を阻止することが出来たからです。これは、故小室直樹博士の著作に繰り返し書かれていたことです。

 

 アメリカで毎年1月に大統領がアメリカ連邦議会で演説を行いますが、これを一般教書演説と言いますが、英語では、State of the Union Addressと言います。State of the Unionというのは、「連邦国家(United States)であるアメリカの現状(state)」を述べるものであり、The Unionとはアメリカを示す言葉です。元々は大統領が演説をするということはありませんでした。アメリカ大統領は連邦議会への出席は認められていません。ですから、教書(message)を議会に送付して、アメリカの現状を報告するということになっていました。それが20世紀になって連邦上院と下院の議員たちと行政府、立法府の最高幹部たちが集まって、その前で演説するという一大イヴェントになっています。この時は、全米のテレビやラジオはほぼ全て生中継します。

 

 私がなぜこんなにUnionという言葉にこだわって文章を始めたかというと、United KingdomEuropean UnionUnited Statesで、Unionが崩れていく状況になっているからです。簡単に言うと、分離や反目、亀裂に敵対が蔓延する状況になっています。EUは、「20世紀前半に2度もヨーロッパを破壊し尽くした戦争を再び起こさないためにも、ヨーロッパが1つになるべき」という理念のもとに20世紀後半をかけて作られたものです。

 理念と裏腹にある現実は、「何かあれば対外膨張主義に陥りやすいドイツを抑える」というものでしたが、今や
EUはドイツを中心に回っています。イギリスはEUの主要なメンバーですが、ドイツやフランスほどの存在感がありません。そうした中で、「EUなんかにいてもいいことないし、かえっておカネを取られて、嫌なこと(移民の流入)はやらされる」という感情がイギリス国内にあり、大接戦ではありましたが、イギリスはEuropean Unionから脱退することになりました。


 もっと言えば、ナチス時代に既にドイツは「ひとつのヨーロッパ」という構想を立てていました。EUはその現代版ですが、ナチスの考えたヨーロッパ連合は、ヨーロッパ諸国がドイツに奉仕するための構造(日本の大東亜共栄圏とよく似ています)ですが、今は、名目上はそうではありませんが、現実はドイツを盟主にしている構造になっています。
 

 先ほども書きましたが、興味深いことに、イギリスの国民投票では、地域差がはっきり出ました。スコットランド、北アイルランド、ロンドン大都市部ではEU残留が多く、ウェールズとロンドンを除くイングランドはEU脱退が多くなりました。そして、スコットランドはEU残留を求めて独自に動こうという動きが出ています。ここでUnionが崩れそうな動きになっています。スコットランドでは以前に、連合王国から脱退するかどうかで住民投票があって僅差で否決されていますが、こうした動きも再び活発化するでしょう。連合王国の一部が脱落するということになります。Unionが壊れるかもしれないということです。

 

 アメリカではこのように州で分離独立の動きはありませんが、以前、このブログでもご紹介しましたが、カリフォルニア州南部、ロサンゼルスからさらに50キロほど南にあり、ディズニーワールドがあるアナハイムを中心とした地域で、「カリフォルニア州から離れて、アリゾナ州に入りたい」という動きが起きて、住民投票がありました。カリフォルニア州から離れたいと主張した人々の理由は、「カリフォルニア州はリベラルな政策ばかりだ。そのために税金が高い。自分たちは保守的な考えを持っている。年収も高い分、税金をたくさん取られて嫌だ。だから、保守的なアリゾナ州に入りたい」というものでした。

 

 アメリカでは、共和党と民主党が強い、レッド・ステイトとブルー・ステイトと呼ばれる州に分かれています。レッド・ステイトは共和党(イメージカラーが赤)、ブルー・ステイトは民主党(イメージカラーが青)が強いです。これが顕著に出るのが大統領選挙です。アメリカ南部から中西部にかけてはレッド・ステイト、西海岸、東海岸の大都市がある州はブルー・ステイトとなっています。もちろんそれぞれには反対の考えを持つ人々も多く住んでいますが、大勢ではこのようになっており、「アメリカの(イデオロギー上の)分裂」が語られます。ですから、2000年以降のアメリカの大統領選挙では、勝者も敗者も「分裂ではなく、団結を」という演説を行っています。また、オバマ大統領が無名の存在から飛び出してきたのは、「アメリカは、アフリカ系、アジア系、などに分裂しているのではなく、United States of Americaなのだ」という演説をして注目されるようになってからです。

 

 しかし、アメリカの政治家たちがアメリカ国民のUnionを強調するのは、現実では様々な亀裂が入っていることを示しています。著名な政治学者であった故サミュエル・ハンティントンは、最後の著書『分断されるアメリカ』の中で、「アメリカはホワイト・アングロサクソン・プロテスタント(White Anglo-Saxon Protestant)の国なのだ」ということを書きました。そして、文化相対主義(移民してきた人々の元々の文化や伝統を尊重する)を批判しました。それは、「アメリカがアメリカではなくなる」という危機感でした。アメリカで人口が増えているのは、ヒスパニック系やアジア系です。白人(白人の中でも区別があって、イタリア系やアイルランド系、ポーランド系はカトリック教徒が多いということあって非WASPということで差別されました)の人口に占める割合はどんどん小さくなっています。恐らく過半数を割っているでしょう。

 

 私が小さい頃は、アメリカは「人種のるつぼ(melting pot)だ」と習いました。これは、どんな人種の人でも、アメリカ人になるのだということでしたが、今は、アメリカは「サラダボウル(salad bowl)だ」ということになっています。レタス、トマト、きゅうりとそれぞれ違う野菜が一つのサラダを形成するので、それらが溶け合って姿を消してスープになるのではなく、個性を主張するのだということになっています。

 

非白人の人たちが身体的に肌の色を変えることはできませんし、そんなことは全くもって何も要求しないが、アングロサクソン・プロテスタントの文化やそれを基礎にした制度(今のアメリカの政治や経済、社会制度)を受け入れることを、アメリカ白人は求めています。ですが、良く考えてみると、非白人の人たちは何もアメリカの政治、経済、社会制度を乱そうとしている人などほとんどいません。それどころか、デモクラシーや三権分立は素晴らしいし、世界に誇れることだと思っています。

 

 だから、「制度や文化を身に着けてほしいだけ」という綺麗ごとをはぎ取ると、「自分たちの分からない言葉で書かれた看板が街中にあることや、自分たちの分からない言葉で、大声で会話することを止めて欲しい、それはとても恐いことだから」ということになります。フランス語やドイツ語、スペイン語であればまだアルファベットですし、同じ単語を使っていたり、類推できる言葉があったりで、まだ許容できるが、アラビア語や漢字、ハングルで書かれたものが街中にあるのは怖いことです。自分たちが理解できないものが身近にあることで誰でも違和感を持ちます。それは当然のことです。

 

 そして、そういう自分たちの分からない言葉を使い、身近ではない文化を持っていて、それを手放そうとしない人たち、に対する反感が出てきます。それがアメリカとイギリスで起きていることの原因です。「分かり合いましょう」といくら口で言っても、あまり意味はありません。怖いと思っている方がわざわざ近づこうとはしませんし、思われている方は、思われている方同士で固まってしまいます。そして、敵対してしまう、分裂してしまうということになります。

 

 国家という枠組みが近代から現代にかけて出来ました。国家は国民がいて、国境線があって(国土があって)、政府があって成立します。そうした国家同士が戦争をしないようということで、20世紀には国際連盟(League of Nations)が作られ、戦後は国際連合が作られました。また、地域的な結合で言えば、ヨーロッパ連合ということになります。

 

 近代は、ナショナリズム(Nationalism)を基盤とした国民国家を生み出しました。そして、国家を超えるためのグローバリズム(Globalism)を基礎にして国際機関を生み出し、かつ人間や資本の移動の自由を追求しました。EUはその中間にあるリージョナリズム(Regionalism)の産物と言えるでしょう。

 

 ナショナリズムは加熱すすると他国との摩擦を生み出し、それが戦争にまで結びつくという考えから、国家を超える機関の存在が考えられるようになりました。

 

 現在、アメリカとイギリスで起きていることは、国民国家に大きな亀裂を生み出しています。保守とリベラルというイデオロギー上の亀裂はこれまでもありましたが、ナショナリズムと排外主義・差別主義が結びつくことで、ナショナリズムが変質してしまい、攻撃的・後ろ向きの面が強調されることで、それを支持する人とそうではない人で国が分裂しかねない状況になっています。アメリカで言えば、レッド・ステイトとブルー・ステイトの存在、イギリスで言えば、連合王国からの脱退を考えるスコットランドといった存在です。

 

 そして、こうしたナショナリズムの変質をもたらしたのは、グローバリズムとリージョナリズムの深化です。グローバリズムとリージョナリズムによって、人の資本の移動は自由になり、活発になることで利益を得られる人とそうではない人が出てきます。パナマ文書事件が起き、「大金持ちは支払うべき税金を逃れる手段を色々と持っており、それを利用してずるい、不公平だ」ということになりました。また、移民がやってきて、安い賃金できつい労働をやることで、自分たちに仕事が回ってこないという不満も高まりました。

 

 このような社会・経済・政治不安から、既存の枠組みに対する不信が出てくる、そういう時に、歯切れの良い言葉で自分たちの「敵」を教えてくれる人を指導者に仰ぎたくなる、その人に任せて自分たちの不安を解消したいという思いが出てきます。それを掴んだのがヒトラー(彼はユダヤ人が元凶だと言いました)であり、イギリスのEU脱退派のリーダーたち(彼らはEUと移民が悪いと言いました)であり、トランプ(不法移民とイスラム過激派とヒラリーこそが彼の言う敵です)です。

 自由主義の考えからすると、国家とは構成する個人の利益を追求するためのものですが、同時に、相互扶助ということも重要な要素となります。人間社会においては、どうしても能力の差(いわゆる頭がいいとか悪いとか、体の機能の差)が出ます。それを全て埋めて平等にすることはできません。しかし、最低限の生存(日本国憲法にある「健康で文化的な最低限度の生活」)は保障することが近代の成果です。そして、そのための機能として国家がリヴァイアサンではあるが、その必要悪として受け入れて、出来るだけ悪いことをさせずに構成する個人の利益に資するようにすることが政治家の役目です。その枠組みが崩れそうになっているのが世界各地で見られる現象から分かる現状であると思います。

 強いリーダーたちに任せてみたい、そして大きな変革をして欲しいというのはこれまでも起きたことですし、これからも起きるでしょう。しかし、実際には、何も大きな変革、革命などは起きません。革命が起きれば新たな抑圧と不満が出てくるだけです。ですから、今ある枠組みを、まるで古ぼけた、故障がちのエンジンを修理しながら車をのろのろと走らせながら、道を進んでいくことしかありません。毎日、ぶつぶつと愚痴を言いながら進んでいくしかありません。その最低限の枠組みが、現在は国家であり、民主的な政治制度ということになります。そして、これらを担保するunionを何とか保っていけるようにするしかありません。 

 

(終わり)





 
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