古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イスラエル

 古村治彦です。

 

 2019年9月10日にドナルド・トランプ大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンの退任(解任)を発表しました。「これ以上ホワイトハウスで働いてもらう必要はない」(トランプ大統領のツイッターから)ということで、相当に関係がこじれていたことが推察されます。これに対して、ボルトンはやはりツイッター上で、「自分から辞任を申し出て、トランプ大統領は明日話そうと言った」と書いています。自分から辞めてやったんだと言っています。自発的な辞任でも解任でも結果は変わらない訳ですが。

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ボルトン
 

 ネオコンの代表格であるジョン・ボルトンがトランプ政権入りというのは、2017年の政権発足前後にもそうした噂話があり、後には実際にその話が進んでいたということが明らかになったことは、このブログでもご紹介しました。「アメリカ・ファースト(アメリカ国内問題解決優先)」「アイソレーショニズム(自国優先主義)」のトランプ大統領が、ボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用するとなった時には、どうしてそんな人事なんだろうか、トランプ大統領のイスラエル重視姿勢のためだろうかと不思議でした。

 

 ボルトンは対イラン強硬姿勢ではトランプ大統領と合意して順調だったようですが、その後は衝突が多かったそうです。また、マイク・ポンぺオ国務長官とも多くの機会で衝突したそうで、そのことはポンぺオ長官も認めています。普通、記者会見という公の場で、国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官が衝突したなどということを国務長官が認めるということはないのですが、ポンぺオとしてはトランプの寵愛は俺の方にあった、という勝利宣言だったのでしょう。


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ポンぺオ
 

 ボルトンが属するネオコンは、世界の非民主国家に対して介入して、国家体制を転覆させ、民主政治体制にする、そして世界の全ての国家が民主国家になれば戦争はなくなるという、世界革命論的な主張をしています。この主張と姿勢は世界各国を共産主義国にするとした旧ソ連と同じです。民主政治体制を至高の存在と考えるという点では宗教的と言えるでしょう。しかし、ネオコンはアメリカにとって便利な存在である中東産油国や中央アジア諸国の王国や独裁国家を転覆させようとはしません。この点でダブルスタンダードであり、二枚舌なのです。

 

 ボルトン解任前、2019年9月7日にトランプ大統領はタリバンの代表者をアメリカに招き、キャンプ・デイヴィッドで会談を持つという計画の中止を発表しました。この中止の数日後の11日にはボルトン解任が起きました。そして、14日には、イエメンの反政府勢力ホーシー派(フーシ派)がサウジアラビアの石油製造施設2か所を10機のドローンで攻撃し、石油生産量が半減する事態となりました。ホーシー派はイランが支援しているということです。「イランの方向から飛んできた」という報道もありますが、サウジアラビアの東側から物体が飛んでくればイランのある方角から飛んできたということになりますから、これはイランが関連しているテロ攻撃だということを印象付けたいということなのでしょう。南側から飛んでくればイエメンからということになりますが、攻撃機はどこから飛んできたのかということもはっきりしません。

 

 中東の地図を見ると、イランとサウジアラビアはかなり離れており、イランからドローンが10期も出撃したとは考えられません。イエメンであれば紅海を超えるだけですから、攻撃は可能でしょう。しかし、今のところ、どこからドローンが出撃したかということは分かっていません。また、イランが絡んでいるということはアメリカやサウジの主張であって決定的な証拠がある訳ではありません。

 

 いくつかのシナリオが考えられます。ボルトン解任を軸に考えると、親イスラエル・サウジアラビアのボルトンが政権から去ることで、両国の存在感が低下し、アメリカの中東からの撤退が進むという懸念があり、そのために両国が自作自演をやったということが考えられます。また、トランプ大統領がボルトンを解任したということは、アメリカは世界で警察官をやるつもりはない、軍事行動をとる元気はないと判断して、イランがホーシー派に支援してやらせた、もしくはイランの背後にいる中国がやらせた、ということも考えられます。

 

 イエメンの対岸にあるアフリカの角、紅海とアデン湾をつなぐ位置にジブチがあり、昔から要衝となっています。ここには中国人民解放軍の海外基地があることもあって、いろいろなシナリオが考えられます(ここからホーシー派にドローン攻撃機が供給されたなど)。もちろん確たる証拠が出るまではシナリオを考えるだけにして、決めつけや自分勝手な思い込みは慎まねばなりませんが。

 

 話があちこちに飛んでしまって申し訳ありません。ボルトン解任は状況に対して影響を与えるということはあると考えているうちに、話が飛んでしまいました。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプによるジョン・ボルトン解任についての5つのポイント(Five takeaways on Trump's ouster of John Bolton

 

ブレット・サミュエルズ、オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2019年9月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/460815-five-takeaways-on-trumps-ouster-of-john-bolton

 

火曜日、トランプ大統領はジョン・ボルトンが国家安全保障問題担当大統領補佐官から退任すると発表した。外交政策分野における重要な諸問題にどのように対処すべきかについてトランプ大統領とボルトンとの間で不同意があったとトランプ大統領は述べた。

 

トランプ大統領はツイッター上でボルトンの退任を大々的に発表した。その後、衝撃がワシントン全体に広がった。

 

これからボルトンの退任についての5つのポイントについて述べる。

 

(1)トランプ政権内の混乱(カオス)状態は新たな展開を見せる(Trump chaos takes another turn

 

ボルトンが解任されたことにより、トランプは3年間で4人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官を探すことになった。これによって、トランプ大統領が重大な国家安全保障上の諸問題に対処する際に、大統領の上級顧問たちの間で不安定さが出てくるのではないかという懸念が再び大きくなっている。

 

ボルトンの退任は、トランプ大統領がキャンプ・デイヴィッドでタリバンと会談を持つ予定だったが中止にしたという衝撃的なニュースが報じられた後に起きた。タリバンはオサマ・ビン・ラディンを匿ったアフガニスタンのテログループだ。

 

トランプ大統領はアフガニスタンからの米軍撤退を行おうとし、タリバンの代表とアメリカ国内で会談を持つことにボルトンは反対したということは明確だ。ペンス副大統領は明確に大統領を支持しているが、ボルトンはそうではなかった。

 

トランプ政権の幹部たちは、タカ派のボルトンの退任は大きな出来事である、もしくは無秩序を増大させる、という考えを完全に否定した。

 

火曜日の記者会見で、スティーヴン・ミュニーシン財務長官は「そんなことは全くない。そんなバカな質問はこれまで聞いたことがない」と述べた。

 

しかし、ここ数か月の間、トランプ大統領は国土安全保障長官、国家情報長官、ボルトンを解任した。現在の国防長官は就任してからまだ数週間しか経っていない。

 

民主党は、政権内の人事の頻繁な交代と争いはこれからどうなるか分からないとし、トランプ大統領の政敵たちは大統領を攻撃するためにボルトン隊員のニュースを利用するだろうと強調している。

 

(2)ポンぺオの力が大きくなる(Pompeo's strength grows

 

ボルトンの退任はマイク・ポンぺオ国務長官のトランプ大統領に対する影響力を更に強めることになる。

 

ポンぺオとボルトンは数々の問題で衝突した。火曜日、国務長官は記者会見で記者たちに対して衝突があったことを認めた。

 

トランプ政権が発足してすぐからトランプ大統領に仕えた閣僚は数が少なくなっているが、ポンぺオはその中の一人だ(訳者註:CIA長官から国務長官へ横滑り)。ポンぺオはトランプ大統領に忠実な代理人で、イラン、北朝鮮、アフガニスタン、中央アメリカに関連した諸問題についての大統領のメッセージを伝えてきた。

 

ボルトンはイランと北朝鮮との交渉を複雑化させた。イラン外相ムハマンド・ジャヴァド・ザリフはボルトンをトランプ政権の「Bティーム」のメンバーだと揶揄し、北朝鮮政府幹部たちは数度の非核化交渉の中で彼を「好戦的な戦争屋」を非難した。

 

火曜日の午後の記者会見に同席する予定であったボルトンの退任に驚いたかと質問され、ポンぺオはニヤリとした。

 

ポンぺオ国務長官は「大変に驚いた。この問題だけのことではないが」と述べた。

 

(3)奇妙な結婚関係が終焉(Strange marriage ends

 

トランプ大統領は2018年3月にボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用した。前任のH・R・マクマスターよりもタカ派の人物としての起用となった。

 

ボルトンはテレビ出演時にトランプ大統領の考えを強力に擁護してきた。そして、大統領のイランとの核開発をめぐる合意からの離脱という希望に賛成していたようだ。

 

トランプ大統領とボルトンは重要ないくつかの問題、特にイラン問題について合意していたようだ。ボルトンを起用してから6週間後にトランプ大統領はオバマ政権下で結ばれた核開発をめぐる合意から離脱した。そして、トランプ政権は離脱直後からイランに対する経済制裁を科してイラン政府を攻撃した。

 

しかし、おかしくみえることもあった。トランプ大統領は元々ボルトンを起用することにためらっていた、それは彼が口ひげを生やしていたこと、そしてボルトンはジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ両政権下で働いたことが理由であった。トランプ大統領は自身の幹部となるアドヴァイザーを起用する際にそのような前歴があると怒りをぶちまけていた。

 

ここ数か月でボルトンのトランプ大統領に対する影響力は消えていた。そして、公の場での大統領からの叱責が続いた。

 

この数か月、トランプ大統領はボルトンのイランに対する強硬姿勢から少しずつ離れていった。トランプ大統領はイランの指導者たちと前提条件なしで直接話をしたいと述べ、イランと軍事上で関与することに躊躇している。

 

ボルトン退任の決定打となったのは恐らく、911事件の記念日の前にタリバンをキャンプ・デイヴィッドに招いて交渉を行うというトランプの考えに反対したと報じられたが、このことがきっかけであっただろう。

 

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官はフォックスニュースに出演し、「トランプ大統領は周囲の人々に自分の考えに反対してもらいたい、それで自分の前で議論をして欲しいと望んでいる。しかし、最終的に政策を決定するのは大統領だ」と述べた。

 

(4)共和党は再び説明を放棄した(GOP left explaining once again

 

トランプ大統領が人々を驚かせることをやる度に、連邦議会共和党はそれに対する反応を求められる。火曜日の発表もその例外ではない。

 

複数の共和党の連邦議員たちは、レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ各政権で働いたボルトンがトランプ政権から去ることを残念だと述べた。

 

連邦上院外交委員会の委員ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)は次のように述べた。「ボルトンは天邪鬼であることは事実だが、それは彼にとってプラスであっても、マイナスではない。彼が政権から去るという報に接し、大変残念だ。私は彼の退任は政権と国家にとって大きな損失である」。

 

しかし、他の人々はタカ派のボルトンの退任を歓迎した。こうした人々は、ボルトンがアメリカを更なる戦争に導くだろうという恐怖感を持っていた。

 

連邦下院の中でトランプ大統領の盟友となっているマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)は本誌の取材に対して次のように答えた。「私はボルトンの退任を歓迎したい。それは、ボルトンの世界観が反映されにくくなることで、世界における平和のチャンスが大きくなるだろうと考えるからだ」。

 

共和党の政治家のほとんどは当たらず触らずの態度で、トランプ大統領は自分自身で適切な人物を補佐官に選ぶべきだと述べるにとどまった。

 

(5)ボルトンは口を閉ざしたままではないだろう(Bolton may not go quietly

 

トランプ大統領がボルトン解任を発表してから数分後に、ボルトン自身が衝撃を与えた。彼はトランプ大統領の説明に対して反論を行い、人々を驚かせた。

 

トランプ大統領はツイッター上で、「私は昨晩、ジョン・ボルトンに対してホワイトハウスで働いてもらうことはこれ以上必要ではないと通知した。火曜日の朝にボルトンの辞任を受け入れた」と書いた。

 

ボルトンはトランプ大統領の発表から10分後にツイートをし、「私は昨晩辞任を申し出て、トランプ大統領は“そのことについては明日話そう”と言った」と書いた。

 

ボルトンは複数の記者たちに対して、退任はボルトン自身の決断だったと伝えている。

 

ホワイトハウスの幹部職員たちは記者たちに対して火曜日の朝にボルトンが辞任したことを認めるだろうが、ボルトン退任の詳細について記者たちと話すことはないだろう。

 

ボルトンは自分の主張を明らかにする場所と立場を維持している。彼は以前にはフォックスニュースでコメンテイターをしていた。彼は政界で信頼を得られるだけの経歴を持ち、自身の退任について自己弁護する連絡を記者たちに行ったことで明らかなように、ワシントンのメディアに幅広い人脈を持つ。

 

トランプ大統領がこれからの数日もしくは数週間の間に、ボルトンに対する批判を続けると、ボルトンはトランプ大統領の話と自分の話の食い違いについて批判や説明を行うことで反撃することになるだろう。ボルトンが自身の主張を続けることがホワイトハウスにとっては頭痛の種となるであろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルの首都をイェルサレムであると承認したことに関する記事をご紹介します。著者はダグラス・フェイスという人物で、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権時代に国防次官を務めた人物で、ネオコン派、イスラエル・ロビーに属する人物です。

 

 フェイスの主張は、アメリカがイスラエルの首都をイェルサレムだと承認することで、イスラエルはなくならない、永続的なものだ、という明確なメッセージをパレスチナ、そしてアラブ諸国に伝えることで、彼らに「イスラエルをせん滅する」という考えを放棄させ、交渉のテーブルに着かせることができ、最終的に和平に到達するというものです。

 

 アラブ諸国もイスラエルの存在を公式には認められませんが、実際に戦争を仕掛けてイスラエルを滅ぼすことはもはやできないと考えているでしょう。イスラエルは人口800万の小さな国で、国内に抱えるパレスチナ人と呼ばれるイスラム教徒の数も多く、彼らに国籍を認めて選挙権を認めたら、ユダヤ人の国であり続けることはできないでしょう。ユダヤ教徒の割合は75パーセント、イスラム教徒が16パーセント、キリスト教徒が2パーセントですが、イスラム教徒の人口増加率の高さは脅威となっています。

 

 パレスチナという土地にはもともとユダヤ教徒、イスラム教徒、キリスト教徒が混在して住み、近世以降はオスマントルコ帝国の領土内で、平和に暮らしてきました。イギリスの進出と国民国家という概念、更にシオニズムのために、深刻な紛争状態となりましたが、混在して平和共存してきた時代に比べればまだ短いものです。

 

 イェルサレム東イェルサレムが旧市街でキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の歴史的な建造物が密集しており、1967年の第三次中東戦争まではシリアが管理していましたが、これ以降は新興の土地西イェルサレムと一緒になってイェルサレムとなりました。イェルサレム市はイスラエルの管理下に入り、イスラエルの首都とされた訳ですが、イスラム教やキリスト教の聖地が破壊されたり、出入りが禁止されたりしている訳ではありません。そんなことをすれば、イスラエルは近代的な国家として信教の自由を認めない国として糾弾されるでしょう。

 

 今回のアメリカの措置に対して、批判や非難の声明は中東やヨーロッパの国々から出ましたが、大きな事件は今のところ起きていません。現状追認ということで、あまり問題になっていないようです。

 

 アメリカがイェルサレムを首都として承認したことは現状を追認しただけのことで、それでイェルサレム市内のキリスト教やイスラム教の信者や施設が弾圧を受けるということはありません。ですから、テロのようなことは起きる可能性は低いでしょう。

 

 パレスチナとイスラエルとの関係は「二国共存」での和平に関しては一応話がついている訳で、問題はどのような形にするかということになります。1967年以前にイスラエルが支配していなかった場所についてどうするかということでしょうが、現状を追認するしかないでしょう。中東諸国はイスラエルという国家の存在を認められないのが建前でしょうが、本音では現状で満足して和平をしてもらいたい、ということになると思います。しかし、それを表明することは難しいでしょう。

 

 ただこれからも憎しみは続いていくでしょうが、それはまた長い時間のスパンで考えると、どこかで解決するだろうという大陸的な時間感覚で解決されるものかもしれません。日本人は概してせっかちで、早く早く、なんとかしなきゃ、自分の代で解決したい、させたいという感じですが、世界的にはもっと長い時間感覚があるように思います。

 ダグラス・フェイスはネオ͡コンでイスラエル・ロビーですから、イスラエル寄りの言論になりますが、これは親イスラエル派の考えの一つとして参考になります。ただ、彼が考えるように進むとも思えませんが。

 

(貼り付けはじめ)

 

イェサレムを首都に認定することが和平にとって良い理由(Why Recognizing Jerusalem Is Good for Peace

―パレスチナ人たちがイスラエルはここにいてこれからも続くということを認識し、真摯に話し合いを開始するまでは、アメリカ政府にとっての責務は、パレスチナ人たちに対して譲歩するようにシグナルを送り続けることだ。

 

ダグラス・J・フェイス筆

2017年12月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/12/12/why-recognizing-jerusalem-is-good-for-peace/

 

アメリカは正式にイェルサレムをイスラエルの首都と承認した。アラブ諸国やイスラム教国では激しい暴力が発生すると一般に予測されていたが、そんなことは実際には起きていない。しかし、ドナルド・トランプ大統領に対する批判者たちが述べているように、アメリカの承認のために、平和に向けた見込みを大きく後退させ、アメリカの「誠意ある仲介者」としての地位を傷つけるのだろうか、という疑問は残っている。トランプは選挙公約を実行し、変えようのない現実を認めただけでなく、平和の達成の可能性をより高めるのだと宣言した。

 

誰が平和についてより良い主張を行っているのか?トランプ大統領がそうだ。ただ、彼の主張は説得力を持っていないのであるが。

 

イェルサレムに対するイスラエルの主権を認めたことはどのみち平和の実現に対して大きなインパクトを持つものではない。まず、これまで長い間、平和の実現に向けて真剣な外交が行われていない。第二に、紛争はイェサレム以外の問題をめぐって行われているのだ。

 

多くのコメンテイターたちは、当事者たちがどうして今でも戦っているのかということについて全く理解していないのに、どのようにして平和を促進するかということについて自分の考えを述べているのは驚くべきだ。さあ、パレスチナをめぐるアラブとユダヤとの間の理由をはっきりさせよう。そして、この争いがどうして1世紀以上も続いている理由も明らかにしよう。

 

問題の中心にあるのは、「パレスチナ全土がパレスチナを除く中東地域全体と同様に、アラブ人のみが所有できるのであって、アラブ人の土地にユダヤ人が主権を有することは耐えられない、大京の余地がない不正義だ」という確信である。

 

パレスチナ自治区の学校では、アラブの土地全てをアラブ人がコントロールするという最終目的は、受け入れがたい名誉の侵害があろうとも、放棄などできない、と教えている。こうした環境の中で、例えば、ベツレヘムのアイーダ難民キャンプにある、アローワッドというきれいなコミュニティーセンターの建物の壁には全面に次のような文言が書かれた横断幕が掲げられている。このセンターはヨーロッパの進歩派の人々の資金で建てられた。「帰還の権利に交渉の余地はなく、いかなる妥協にも従うことはない」。言い換えると、戦術的に有効な和平協定はまだ許されるが、イスラエルとの恒久的な和平は現状では許されないということになる。これは、パレスチナの共同体で神聖不可侵として受け入れられている宗教とナショナリズムの諸原理を基盤とする哲学的に重要な点なのである。

 

このような思考の一部や要素として、イスラエルは地域に対する外国からの侵略なのだというものがある。イスラエルは「十字軍国家」と呼ばれ、フランス領アルジェリアのようなヨーロッパの植民地主義の出先なのだというたとえがなされている。重要な点は、イスラエル国民に対しては、十字軍や半世紀前のフランス人に対してと同じく、 際限のない暴力的な抵抗によって士気を低下させ、土地を本当の所有者に残して引き上げることにつながる、というものだ。この場合の土地の秦の所有者はアブ人ということになる。フランスがアルジェリアから出ていくまでに130年かかり、聖なる土地から十字軍を追い出すのに200年かかった。この期間中、同じ言葉が繰り返された。また同じ言葉が繰り返されている。「イスラエルを追い出すのに同じくらいの時間がかかるだろうが、その時はやってくるだろう」。

 

紛争を永続的なものとしているのはこうした考え方である。

 

長年にわたって常識とされてきたのは、アラブ・イスラエル問題の核心は1967年にイスラエルが手に入れ、現在入植地となっている領域である、というものだ。しかし、これは明らかに間違っている。エジプト、シリア、ヨルダンはイスラエル側を刺激して1967年の中東戦争を始めたのはどうしてか?実際には、紛争の起源は1967年よりも前にさかのぼることができる。1948年にイスラエルが独立国となった時よりも更にさかのぼることが出来る。

 

アメリカ政府がパレスチナ・イスラエル紛争の終結に貢献できるのは、アメリカ政府が紛争の中身をきちんと把握した時だけだ。現在の常識をそのまま持ち続けるならば、外交上の失敗をこれからも数十年単位で続けることになる。新しい、そしてより根拠に基づいたアプローチを採用するのは今だ。

 

各種世論調査の結果では、イスラエル国民の大部分が、現在イスラエルが支配している土地を分割することを基礎としてパレスチナ人たちと和平を達成したいと望んでいる。パレスチナ側の指導者たちが土地と平和を交換する形で合意を結びたいと望んだら、平和が達成される。2つの大きな障害は概念上のものだ。パレスチナ側の指導者たちは、イスラエルは一時的な存在でいつの日か消滅させることが出来るという確信を放棄しなければならない。そして、パレスチナ側にとって実現可能な最高の合意をもたらすために正義に関する抽象的な概念をとりあえず棚上げすべきだ。

 

1897年に創出されて以降の政治的なシオニズムの歴史の中で、シオニズム運動の指導者たちは正義を主張したことはなかった。彼らはまたユダヤ人たちが持つ権利を持つもの100パーセントを手に入れることは期待していなかった。彼らが権力を握っても妥協を不名誉なものだとはしなかった。彼らは最善の合意を結んだ。彼らは手にできるものを手にした、そして、自由で、繁栄した、平和的な国家を建設した。パレスチナ側の指導者たちもまたパレスチナ人たちに対して同様のことを行うべきだ。

 

この分析が正しい場合、イェルサレムに対するイスラエルの主権をアメリカが承認したことは、平和に貢献することになるだろう。アメリカの承認は有効なメッセージを補強するものだ。そのメッセージとは、「イスラエルはこれからもこの場所に存在する」というものだ。ユダヤ人は歴史的にこの土地と深くつながっている。彼らは外国人でもなく、十字軍でもない。アメリカとイスラエルのつながりは緊密なもので、イスラエルの敵国からの工作によって傷つくものではない。そして、アメリカは、第三者ではなく、イスラエルの友人として、アラブ・イスラエル外交において重要な役割を果たしている。紛争が永続化することで支払わねばならない代償がある。人生は続く、そしてイスラエル国民は新たな現実を生み出し、世界はこの新しい現実に合わせていく。パレスチナ人たちは平和を拒否することで、彼らの地位を向上させていないし、地位を保ってもいない。

 

※ダグラス・J・フェイス:ハドソン研究所上級研究員。2001年から2005年にかけて米国防次官(政策担当)。現在、アラブ・イスラエル紛争の歴史に関する著作を執筆中。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 イランの大統領選挙は、強硬派が候補者を一本化したことでどうなるかと思っていましたが、ロウハニ大統領が再選されました。イランの大統領は二期までなので、ロウハニ氏はこれから4年間が最後の任期となります。

 

 ロウハニ大統領は、アメリカとの核開発をめぐる合意を前提にしての経済成長、そのための経済改革を主張しています。イランでは、諜報機関が経済部門にまで浸透しており、下に掲載した毎日新聞の記事では、「モンスター」とまで呼ばれているそうです。ロウハニは、そうした部分を改革していこうとしています。革命防衛隊、諜報機関はそれを防ぐために、最高指導者を引き込んで、ロウハニ氏を追い落とす、もしくは得票数を削ろうとしました。しかし、イランの人々はロウハニ大統領の路線を支持しました。

 

 アメリカでは、トランプ大統領がイランとの核開発合意に反対しているという報道がなされていますが、トランプ政権は核開発をめぐる合意を維持するということを既に表明しています。イランとの核開発をめぐる合意にアメリカ国内で反対しているのは、共和党ではネオコン、民主党では表立ってはいませんが(自党のバラク・オバマ前大統領が結んだ合意ですから)、人道的介入主義派です。

 

 トランプ大統領が初めての外遊で中東のサウジアラビアとイスラエルを訪問しますが、両国は宗教は違いますが、アメリカの同盟国という点では一緒です。サウジアラビアはアラブの盟主ですが、現状中東の和平と問題解決に何もしていません。オバマ政権時代は、イスラエルとアメリカの関係は悪化しました。トランプ政権ではトランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーが上級顧問として力を持っていますから、イスラエルとの関係は改善すると思われますが、機密情報の取り扱いをめぐり、イスラエル側が激怒しているという報道もなされていますので、イスラエル側に、ネオコンや人道的介入主義派と気脈を通じている人々がいると思われます。

 

 トランプ政権とすれば、傲慢になりがちな中東の同盟諸国に活を入れるために、イランを利用するでしょう。イランを利用して中東の問題を解決しようとするでしょう。国益のためならば、敵と呼んだ相手とでも手を組むのがリアリズムですから、トランプは表だってイランを賞賛はしないでしょうが、一方的に敵視することはないでしょう。

 

 ロウハニ大統領が再選されたことで、アメリカとイランの関係が大きく変化することはないということになり、これは慶賀すべきことです。

 

(貼りつけはじめ)

 

<イラン>残る制裁、正念場 ロウハニ師再選、経済回復急務

 

毎日新聞 5/21() 8:15配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170521-00000007-mai-m_est

 

 【テヘラン篠田航一】イラン大統領選で対外融和の継続を掲げる保守穏健派のロウハニ大統領(68)が20日、再選を決めた。だがイランを敵視してきた米国はトランプ政権になり、より強硬な姿勢を示している。イランは経済回復を軌道に乗せて内政を安定させるためにも、米国などが今も科す制裁の軽減に向けた外交努力を続けると見られるが、事態の打開は容易ではない。

 

 「今後4年で全ての制裁解除に全力を挙げ、イランの威厳を取り戻す」。ロウハニ師が掲げた公約だ。イランは2015年に米欧などと核合意に達し、主要な経済制裁は解除された。だが、ミサイル開発や「テロ支援」を巡る制裁は残っている。

 

 トランプ米大統領は、イスラム教シーア派国家イランの覇権拡大を警戒するスンニ派の大国サウジアラビアを初の外遊先に選び、イラン大統領選の結果が固まった20日に現地に降り立った。湾岸のアラブ諸国と連携した包囲網の強化を目指している。米国とイランは、シリアやイエメンの内戦でも対立する勢力をそれぞれ支援しており、早期に歩み寄る可能性は低い。

 

 ただ、トランプ政権はシリアでは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を優先している。イラン国連代表部で勤務経験を持つ元外交官の政治評論家ヘルミダス・ババンド氏は「シリア内戦が沈静化すれば、イランと米国の関係は改善に向かう」と分析。ロウハニ大統領が、米国と近いアラブの主要国エジプトへの働きかけを強めると見ている。

 

 内政では経済回復を進める上で、膨大な権益を持つ革命防衛隊との関係が焦点の一つになりそうだ。ロウハニ大統領は選挙戦で「経済発展を望むなら、(革命防衛隊などの)治安・政治組織を経済に関与させるべきではない」といら立ちを隠さなかった。

 

 約12万人の兵員を擁する革命防衛隊は、1979年のイスラム革命の理念防衛のため創設されたが、多くの系列企業を抱えて経済分野にも進出し、肥大ぶりは「モンスター」と称される。ロウハニ政権が今後、外資導入や経済開放を進めようとした場合、防衛隊関連企業の抵抗が予想される。

 

 内政の安定には、若年層の雇用創出も急務だ。失業率は若年層で3割近いと言われる。経済的不満から保守強硬派への傾倒を強めることを抑止するためにも経済成長の加速は不可欠だ。

 

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イランの大統領選挙で何が重要なのか?(What’s at Stake in Iran’s Elections?

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/19/whats-at-stake-in-irans-elections-rouhani-raisi/

 

イラン国民は金曜日、次期大統領を誰にするかを決める投票を行う。大統領選挙には複数の候補者が立候補しているが、主要な選択肢としては、中道改革派で2期目を目指す現職大統領ハサン・ロウハニと、保守派強硬路線のイブラヒム・ライシの2人に絞られている。最も人気があったモハンマド・バーゲル・ガリバフが選挙戦から撤退し、ライシ支持を表明したためにこのような状況になった。

 

誰が大統領になるだろうか?そして、選挙結果がイランの国際関係においてどのような意味を持つであろうか?

 

コロンビア大学教授リチャード・ネヒューは本誌の取材に対して、「ロウハニが当選すると考えます」と述べた。

 

読者の皆さんがご存知のように、最高指導者と諜報機関がライシを大統領にしたいと後押しをしているという疑いがあるし、人々の間には、国際関係を改善して好景気をもたらすというロウハニの公約が果たされていないという不満が高まっている。しかし、ネヒューは、投票率が期待通りに髙ければ、ロウハニが2期目に向けた当選に困難に直面することはないだろうと述べた。

 

ロウハニが勝てば、人々の信任を示す票差での勝利であれば、イランの対西側各国への政策は大きくはそのままであろう。イランはアメリカとの間で、イラン核開発合意として知られる包括的共同行動計画を堅持するだろう。ドナルド・トランプは自身の大統領選挙期間中、合意の破棄を主張したが、現在のところトランプは合意の維持を表明している。

 

ロウハニは、更なる経済改革を進めるだろう。ロウハニは、アメリカとの合意から経済的利益を得ることができるとロウハニは主張しているが、そのためには経済改革が必要となる。そして、ロウハニは経済分野における諜報機関の存在を排除しようとするだろう。ロウハニが地滑り的勝利をした場合に不都合なことがあるのだろうか?ロウハニが圧倒的な勝利を収めた場合、最高指導者とその周辺は、ロウハニの羽を縛ろうとするだろう。

 

それではライシが勝利した場合はどうなるだろうか?ライシは他の候補者と同様に、包括的共同行動計画の維持を主張しているが、この合意からイランが利益を得るために必要な経済改革を進めることはないだろう。そうなると、イラン国民は、経済が良くならないのに、合意を維持する必要はあるのかと考えるようになるだろう。

 

しかし、ライシの勝利は状況を悪化させるだろう。特にアメリカとの関係に悪影響を与える。ネヒューは、トランプ政権がライシ勝利をイラン国内における強硬派の台頭の徴候と捉え、イラン政府との協力は望めないと捉えるならば、「強硬派同士である、トランプとライシ同士の競争が起き、良くない状態になる」と述べている。

 

投票日の金曜日、トランプは大統領としての初めての外遊をサウジアラビアから始める。大統領選挙の結果によっては、中東の情勢は更に爆発しやすくなるだろう。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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 古村治彦です。

 

 先日、国連安保理でイスラエルの、ヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区における入植地拡大に対する非難決議が採択されました。この種のイスラエル非難決議に対しては、アメリカが拒否権を発動して採択にまで至らないのが通常なのですが、今回は、アメリカは賛成、反対を表明しない棄権を選択し、賛成14、棄権1で採択されました。

 

 アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国は国連安全保障理事会(U.N. Security Council)の常任理事国(permanent members)で、決議案などを可決できないようにする拒否権(veto)を持っています。残り10カ国は非常任理事国(non-permanent members)で任期付の持ち回りで、私の記憶では、日本は最多の回数と年数理事を務めていると思います。

 

 今回、オバマ政権のサマンサ・パワー米国連大使(サマンサ-・パワーについては、拙著『アメリカ政治の秘密』をご参照ください)は拒否権を発動せず、ホワイトハウスもそれを支持したことで、オバマ政権になって初めて、イスラエル非難決議が採択されました。イスラエルはこれに対して非難を行っていますが、オバマ大統領とネタニヤフ首相との間が冷え切っているために、イスラエル側は、ドナルド・トランプ次期大統領の政権移行ティームに働きかけて、オバマ政権に拒否権発動をさせようとしたということです。

 

 トランプ自身もツイッターを使って、拒否権発動を求めましたが、オバマ政権はこれを拒絶することを意味する棄権を選択しました。トランプは自分が大統領になったら国連自体も変えてやるとツイートしています。

 

 トランプの女婿ジャレッド・クシュナーはユダヤ系アメリカ人で、クシュナーと結婚したトランプの娘イヴァンカはユダヤ教に改宗しています。トランプはイスラエル大使として、自身の弁護士も務めたデイヴィッド・フリードマンを指名し、現在、テルアヴィヴにある駐イスラエル米国大使館をエルサレムに移転させると述べています。

 

 イスラエルとすれば、任期が残り1カ月を切ったオバマ政権に最後に大きな置き土産を残された形になりますが、もうすでにトランプ大統領就任、始動に向けて、政権移行ティームに接触して、トランプを通じてアメリカ政治を動かそうとしています。『アトランティック』誌のある記事では、「2人の大統領がいる」と書いていました。

 

 トランプ政権は、対イスラエル政策ではオバマ政権とは全く別の方向性を取ることになりそうです。これが、中東和平を遠のかせ、イスラエルとパレスチナの二国共存という解決を遠のかせてしまうことになるでしょう。しかし、歴代の各政権が二国共存を進めることはできず、イスラエルとの関係が冷え切ったオバマ政権は全く動かすことすらできませんでした。そう考えると別のアプローチから何か新しいものが生まれることを期待するべきでしょう。

 

 

(貼り付けはじめ)

 

国連安保理でのイスラエル入植非難の決議採決でアメリカが棄権(U.S. Abstains From U.N. Vote Condemning Israeli Settlements

 

コラム・リンチ、ロビー・グラマー、エミリー・タムキン

2016年12月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/12/23/u-s-abstains-from-u-n-vote-condemning-israeli-settlements/

 

金曜日、国連安保理はヨルダン川西岸地区、ガザ地区、東エルサレム地区におけるイスラエルの入植活動を不法と宣言し、拡大を停止するように求める決議を採択したが、オバマ政権はそれに対して傍観(黙認)する姿勢を取った。これは、ドナルド・トランプ次期大統領が決議案に反対票を投じるようにと求めたツイッターを通じたアピールに対するオバマ政権からの手厳しい拒絶となった。

 

決議案の採決は賛成票が14票で、棄権したのはアメリカだけであった。この採決の前、アメリカの次期大統領が、現職の大統領を揺さぶって決定を変化させようと外交上の争いに直接関わろうとした。これはアメリカの外交にとって異例の日となった。トランプは採決の後に国連とオバマ政権を激しく非難した。トランプは金曜日に行われた採決の後、ツイッター上で、「2017年1月20日以降、全く別のことが起きるだろう。これは国連に対しても同様だ」と発言した。

 

今回の棄権は、オバマ政権が阻止に動かず、安保理がイスラエルを非難するに任せた初めてのケースとなった。採決の後にサマンサ・パワー米国連大使は、棄権の正当性を主張し、レーガン政権まで遡り歴代の共和党、民主党の政権の諸政策と今回の棄権を同一のラインにあると主張した。

 

パワーは採決の後、安保理の場で次のように発言した。「1967年にイスラエルが占領した領域におけるイスラエルの入植活動はイスラエルの安全保障を損なう行為であり、高尚による二国共存という解決の可能性を著しく低下させ、平和と安全の見込みを失わせるものだ」。

 

オバマ大統領のホワイトハウスは、入植によって二国共存という解決の可能性が低下する危険があると強調した。戦略的コミュニケーション担当国家安全保障担当大統領副補佐官ベン・ローズは、記者たちとの電話による質疑応答の中で、「イスラエルによる入植活動が促進されることで、二国共存という解決の可能性は危険に晒される。良心に基づいた判断に従い、決議案に拒否権を発動できなかった」と発言した。

 

決議案はパレスチナ国家が起草し、エジプトによって「提案」され、共同提案者としてマレーシア、ニュージーランド、セネガル、ヴェネズエラが名前を連ねた。決議案では、イスラエルに対して、「パレスチナの土地における全ての入植を即座にかつ完全に停止する」ことを求めていた。そして、「入植行為は二国共存による和平の可能性を著しく損なう」とも述べている。決議は更に「東エルサレムを含むイスラエル入植地の建設は、法的な正当性を持たず、国際法に対する紛れもない違反である」とも述べている。

 

決議はイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相に対する厳しい一撃となった。ネタニヤフは安保理内の唯一のアラブ世界からのメンバーであるエジプトに大きな圧力をかけて決議案採決の日程を木曜日にまで遅らせようとした。そして、ネタニヤフの側近がトランプの政権移行ティームに接触し、オバマ政権に拒否権発動をさせるように求めた。

 

イスラエルの国連大使ダニー・ダノンは「今日は安保理にとって暗黒の日となった。採決が行われた決議は偽善の最たるものだ」と発言した。ダノンは更に、決議案に賛成することは、安保理が進歩と故障に反対票を投じすることだとも主張した。また、今回の決議は、「国連の反イスラエル決議の長くそして恥ずべきリストに新たな1つが加えられたことになる」とも主張した。

 

ダノンは次のように発言した。「あなた方はユダヤ人がイスラエルの土地に、そして私たちの歴史的な首都エルサレムに故郷を建設することを非難する投票を行った。エルサレムは、ユダヤ人の心であり、魂なのだ。あなた方はパリにおいてフランス人が建設を行うことを禁止するのか?モスクワでロシア人が建設することを禁止するのか?ワシントンでアメリカ人が建設することも?」ダノンは安保理においてイスラエルはこれからも民主国家であり、ユダヤ人国家であり続けると断言した。

 

パレスチナ国家派遣国連常任オヴザーバーであるリヤド・マンスールは、今回のことが、パレスチナ・イスラエル、アラブ・イスラエルの和平に向けたプロセスのスタートとなることを希望すると述べた。マンスールは安保理に出席し、「法律と歴史の正しい側面によって、事態が進行することを望む」と述べた。

 

トランプはアメリカ政府に対して決議案に拒否権を発動するように求めた。これは、彼が来年1月に大統領に就任してから対イスラエル政策を劇的に変化させるという公約の一環である。トランプはアメリカ大使館をテルアヴィヴからエルサレムに移転すると述べ、イスラエル大使に、批判の多い強硬派デイヴィッド・フリードマンを指名した。

 

トランプは木曜日、「アメリカがこれまで長年にわたり主張してきたとおり、イスラエルとパレスチナとの間の和平は両者の直接交渉によってのみもたらされることになるだろう。国連による条件の強制では決して達成されない」と発言した。

 

2011年2月、オバマ政権は国連安保理で、イスラエルの入植政策が中東地域の和平努力を不法に阻害するものであるいう非難決議の採択を防ぐために初めて拒否権を発動した。当時の米国連大使スーザン・ライスは、アメリカの拒否権発動は、「正当な行為」ではないと考えられているイスラエルの入植を擁護するものと認識されるべきではないと発言した。 しかし同時に、ライスは、安保理理事国15のうち14が支持した決議案について、「両者の立場を硬化」させ、パレスチナ国家建国の可能性を損なう危険を伴うとも発言した。

 

それから5年が経過して、任期を終えようとしているオバマ政権は計算を明確に変えている。もしくは、イスラエルとの冷え切った関係のためにこれまでの態度を変えることになったとも言えるかもしれない。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



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 民間市場からスパイウェアを購入した政府はパナマ政府だけではない。イギリスを拠点とする監視団体プライヴァシー・インターナショナルが発表した2015年の報告書によると、アメリカが所有するイスラエル企業ヴェリント(Verint)は、コロンビアの治安当局に先進的な調査システムを供給した、ということだ。報告書には、「2005年以降、ヴェリントは、コロンビアの大量盗聴能力の発展において中心的な役割を果たした」と書かれている。2015年2月、コロンビアの元治安責任者は、2002年から2010年にかけてのアルヴァロ・ウリベ大統領の在任時に違法な盗聴に関わったとして訴追された。

 

 ヴェリントとイスラエルの技術企業ナイス・システムズは、カザフスタンとウズベキスタンに対してスパイ手段のハードウェアとソフトウェアを売却した、とプライヴァシー・インターナショナルと報告している。これによって両国の抑圧的な政府は、電話線、携帯電話、インターネットに対してスパイ活動が行えるようになり、政治的反対者たちに対しての弾圧が行えるようになった。報告書の共同執筆者エディン・オマノヴィッチは、2014年に『ヴァイス』誌のインタビューで次のように語った。「権威主義的諸国の野蛮で冷酷な秘密警察は、全ての国民の私生活を対象とでいる監視能力を手に入れることで、力を増している。スパイ手段産業が規制のないままに無責任な活動を続けているために、これは避けようのない悪夢のシナリオなのだ」。

 

 プライヴァシー・インターナショナルは、ヴェリントがカリフォルニアを拠点とする企業ネトロノーム(Netronome)に接触した、と指摘した。ヴェリントはネトロノームが持っている、フェイスブック、Gmail、その他のウェブサイトの暗号化を無効化できる技術をウズベキスタン政府に提供しようとした。この試みが成功したかどうかははっきりしない。この報告書が出された後、ネトロノームは声明を発表した。その中で、「我が社は人権や個人のプライヴァシーに対するいかなる侵害行為にも加担していない」と述べ、事業を展開している各国の法律を遵守していると発表した。

 

* * *

 

しかし、ここに問題がある。監視手段の大衆化と私有化は、脆弱な輸出管理と侵入的なスパイ手段に関しての自発的な国際合意の結果である。スパイシステムを規制する唯一のメカニズムは、ヴァッセナール合意である。この合意によって参加国は、通常兵器と軍民共用の道具と技術の移動に関しての情報を定期的に交換できるようになった。しかし、アメリカを含む締約国41か国を法的に拘束するものではないし、イスラエルはこの合意に参加していない。

 

 ワシントンでは、クリス・スミス連邦下院議員(ニュージャージ州選出、共和党選出)は、2013年に「アメリカ企業が、人々を弾圧する外国政府がインターネットを検閲と監視の道具に変えてしまうようなことに協力することを防ぐ」ことを意図した法案を提出した。この法案は小委員会で否決されてしまった。スパイ手段の規制に関して共和党全体の関心は低いままであるがこれは驚くに値しない。

 

 昔は、技術は市民の側に立っていた。アナログコミュニケーションが主流だった時代、大量監視は労働力投入を必要とするものだった。多くの人々と多くの電話線が対象となって捌ききれなかった。盗聴や監視をするための人員はあまりにも少なかった。しかしながら今日、進んだデジタル技術は抑圧者の側に立っている。 時計の針を基に戻すことはできない。しかし、スパイ手段に関しての厳格な規制を実施するのに遅すぎることはない。実際に実施している例が2つある。2012年、アメリカとEUは、シリアとイランに対してのスパイ手段の売却、供給、輸送、輸出を禁止した。

 

 より多くの国々が大量監視手段システムを大量破壊兵器の一つだということに合意しない限り、ジョージ・オーウェルの『1984年』の内容が現実のものとなるだろう。「あなた方は、あなた方が起こす全ての音が聞かれ、暗闇を除き、全ての動きを精査される習慣がやがて本能とまで昇華する中で生きてきた」。

 

(終わり)



野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

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