古村治彦です。
ロシアによるウクライナ侵攻によって世界は戦時管理体制に入っていく。戦時管理体制とは物資の配給も含めた統制経済ということだ。これは先進諸国では起きないだろうが、アフリカ諸国や中東諸国では食料を国民に行きわたらせるために、配給ということにもなりかねない。戦時中の日本やイギリスなどと同じような状況になっていく。戦争当事国であるロシアやウクライナでもそのようになっていくだろう。このような状況では食料を含む実物資産を生産している国々が相対的に強くなるが、そうした国々の多くは対ロシア制裁に慎重であり、この点で非常に懸命な動きをしていると考える。先進諸国は対ロシア制裁を主導しているが、そのためにそれぞれの国内に住む人々に物価高らスタグフレーションへというリスクを負わせることになっている。
これまでこのブログでもご紹介したように、ロシアはカナダと並んで安価な肥料の輸出大国であり、ロシアに対する制裁は世界規模での農業生産にも影響を与える。そもそも食料不足が予想されるからと言って、食料生産を急に倍増させるということはできない。耕作地には限界があるし、肥料が足りないとなれば収穫予想はそこまで増えない。そうなれば食料不足は世界規模で申告は問題になる。日本では食料品の価格が上昇していくことは確実で、これに石油の価格上昇も加われば、その上昇幅はより大きくなる。生活に困窮する人の割合が更に大きくなっていくだろう。
対ロシア制裁に慎重な国々が多く存在するのは当然のことだ。今はウクライナ国民支援で寄付金や義捐金が日本国内でもどんどん集まっているが、日本国民でそのような義捐金を上げたくても上げられないそんな人の数がこれからどんどん増えていく。そして自分たちが寄付金や義捐金を貰わねばならないという人たちも多くなっていく。更に言えば、石油価格の高騰によって全ての財の価格が上がっていく。全ての財には物流コストが含まれる。それを抑えようとすれば結局人件費を抑制するしかなくなる。そうなれば物価は上がっていくが賃金は上昇しないというスタグフレーションということになる。これまでは、賃金は上がらないが物価も上がらないというデフレーションの状況が平成時代から30年近く続いた。しかし、これからはコストプッシュ型インフレーションによるスタグフレーションの懸念が高まる。
私たちはウクライナ戦争から遠く数千キロ離れた日本に暮らしている。しかし、既に戦争に巻き込まれている。戦時体制に組み込まれている。寄付や義捐金を直接払わなくても戦争によるコストを負担している状況だ。私たちはいつまでこの状況に耐えられるかだが、スタグフレーションに陥ってしまえば耐乏生活も長くは続けられない。
(貼り付けはじめ)
●「最大1300万人栄養失調の恐れ 小麦などの価格高騰、供給不足で」
3/25(金) 15:53配信 共同通信
https://news.yahoo.co.jp/articles/dff9e81fb5643869147b9c01bd0fb5e865ba970b
ロシアのウクライナ侵攻による混乱で小麦などが供給不足に陥り、2022~26年に世界で最大1300万人が栄養失調になる恐れがあることが国連食糧農業機関(FAO)の試算で25日までに明らかになった。小麦価格は2割超上昇する可能性があり、FAOは「一刻も早く農民が平和に働けるように助けてほしい」と戦闘の終結を訴えている。
先進7カ国(G7)は24日、ベルギーで開いた首脳会合で、世界的な食料危機の予防・対応のために行動することを盛り込んだ声明を採択。FAOに対し、臨時理事会の開催を要請することを決めた。
ロシアとウクライナ両国は、農業大国として知られる。
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ロシアによるウクライナ侵攻に伴う食糧不足の「真の」リスクをバイデンが警告(Biden
warns of 'real' food shortage risk over Russia's invasion into Ukraine)
アレックス・ガンギターノ筆
2022年3月24日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/administration/599678-biden-warns-of-food-shortage-from-russias-invasion-into-ukraine
ジョー・バイデン大統領は木曜日、ロシアによるウクライナ侵攻を理由とする世界規模での食糧不足に警告を発し、潜在的な危機を防ぐための措置を発表した。
バイデン大統領は現在NATO諸国の指導者たちと会談を続けているブリュッセルにおいて記者会見を開き、「私たちは食料不足について話をした。そしてそれは現実に起こるだろう。ロシアに対する制裁の代償は、ロシアだけでなく、ヨーロッパ諸国や我が国を含む非常に多くの国々にも科せられている」と述べた。
例えば、ロシアとウクライナは共に小麦の供給国であるが、バイデン大統領は、アメリカとカナダも主要な小麦生産国であることを指摘した。
バイデン大統領は3月24日、ヨーロッパ連合(EU)のウルスラ・フォン・デア・ライエン大統領との共同声明で、食料危機を防ぐため、世界の食料安全保障を高め、必要な場合には直接食料援助を行うために、ヨーロッパ連合と協力し、努力を強化する意向を表明した。
バイデン大統領は、NATOの指導者たちが、ヨーロッパ諸国をはじめとする全ての人々に、「食料を海外に送る際の制限に関する貿易制限を終わらせるよう」促すことについて話し合ったと述べた。
バイデン大統領は、「アメリカと同盟諸国は、インフレーションの上昇と長引くサプライチェインの問題の中で、食糧不足の懸念を軽減する方法を模索している最中だ」と述べた。
バイデン政権高官たちは、ロシアの侵攻が特に中東とアフリカの食料安全保障を危うくする恐れがあると警告した。
政権高官たちは木曜日朝、「ロシアによる侵略戦争は、黒海地域からの重要な農産物の供給を中断させる恐れがあり、世界の食料安全保障、特に中東とアフリカの脆弱な人々のための食糧安全保障を危うくする」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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