古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:イヴァンカ・トランプ

 古村治彦です。

 

 安倍晋三首相は2019年4月26日にメラニア・トランプ大統領夫人のバースディーパーティーに出席し(おそらく昭恵夫人も)、翌日(2019年4月27日)にはドナルド・トランプ大統領とゴルフを行うという計画だそうです。もちろん首脳会談は行われるでしょうが、その時間はどれくらいあるのか、と疑問を持ってしまいます。1万キロを往復して、いったい何時間首脳会談が行われ、有益な話が出来るのだろうか、疑問です。


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 安倍晋三首相は、外国首脳との個人的な友情関係を外交の一つの重要な要素と位置付けているようですが、トランプ大統領には偏愛的なまでの努力を傾注しているようです。しかし、それがうまく機能しているのだろうかというと、そうではないというのが答えです。

 

 そもそも最高首脳の鶴の一声で外交方針が大転換するというのは、民主政治体制に即した動きではありませんし、個人的な関係で成果を得るというのはもちろん存在する方法ではありますが、それが常道、王道になってはいけません。個人の友情で国歌の方針がぶれるなどということはあってはならないことですし、民主国家同士なら尚更です。

 

 わざわざ喧嘩をする必要はありませんが、へいこらして、「仲良くしてください、何かあったらご憐憫の沙汰をお願いします」とやることは外交ではありません。トランプ大統領も世界各国の指導者たちと会って値踏みをしているでしょうが、安倍晋三という人物には「使い勝手の良い捨て駒」以上の評価はしていないでしょう。「ちょっと脅せば、何でも買うし、金も出す」というのは友人同士でもありません。

 

 そもそもが2016年の米大統領選挙で民主党のヒラリー・クリントンが勝利すると見越して、そちらの方ばかりに注意を向けていたために、番狂わせでトランプ大統領が当選してしまったことで、安倍首相と日本政府は大分慌てたようです。アメリカ国内、世界中でトランプ当選を予想していた人たちは少ないのですから、それ自体は責められませんが、その後の慌てぶりは酷いものでした。

 

 結果として、その慌てぶりをトランプ大統領側に利用されるような形になっています。やらなくても良いことをわざわざやって、自ら墓穴を掘っているようです。


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 それにしてもトランプ大統領に何とか取り入ろうとしている姿は見苦しい限りです。孫娘が日本大使館に来ると分かったら、慌てて、その女の子がお気に入りのピコ太郎を呼ぼうとして失敗したり、ほぼ成果がないのに北朝鮮との外交を理由にしてノーベル平和賞にトランプ大統領だけを推薦したり、そんなに阿諛追従をしなければならないのかと情けなくなるばかりです。


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 個人的な友情関係を外交に展開するということは、一歩間違えば、相手の侮蔑を買い、かえって舐められて終わりということになります。安倍首相が身をもって教えてくれるこの事実を日本はこれから教訓として活かしていかねばなりません。

 

(貼り付けはじめ)

 

最高級ゴルフクラブと誕生日の豪華なパーティー:安倍首相のトランプ大統領の機嫌の取り方(Gold-plated golf clubs and birthday bashes: How Abe courts Trump

―他の世界の指導者よりも、その結果は複雑なものではあるが、日本の首相はドナルド・トランプ大統領との関係を近づけようと努めている。

 

エリアナ・ジョンソン筆

2019年4月17日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/story/2019/04/17/trump-shinzo-abe-melania-birthday-japan-1278635

 

日本では2019年5月1日に新しい新天皇が即位する。この時、日本の安倍晋三首相は少し時差ボケを感じているかもしれない。

 

現代の日本にとって最も重要な儀式の一つのわずか4日前、安倍首相は世界中ジェット飛行機で飛び回り、重要な使命のために日本に戻る計画になっている。天皇の即位はローマでの新法王の選挙と同じである。彼の旅の目的は、ドナルド・トランプ大統領との関係を維持するということだ。

 

安倍首相の36時間、6700マイルを越える旅の内容について、計画に詳しい2人の取材源は次のように語っている。2019年4月26日の金曜日にメラニア・トランプ大統領夫人の49回目の誕生日のお祝いに出席し、翌日には大統領とゴルフをプレーする。これは安倍首相がアメリカ合衆国大統領との関係を構築しようとしてきた長年の努力を象徴するものである。

 

安倍首相は2012年に首相に就任し、米日同盟関係を強化することを決意し、アメリカ大統領との個人的な友情関係を構築することが外交上の妥協を得るための方法だという確信を得た。2年以上にわたるご機嫌伺いの中で、安倍首相はトランプタワーで大統領選挙当選直後のトランプに面会した際に最高級のゴルフクラブを贈った。また最近では、トランプ大統領のツイッター上の投稿での情報でしかないが、安倍首相は北朝鮮との核兵器をめぐる外交交渉を理由にして大統領をノーベル平和賞に推薦したということだ。

 

これらの動きは、安倍首相とトランプとの関係において、安倍首相の方に大きな利害があることが反映している。彼が率いる島国である日本は台頭する中国からの防衛をアメリカに依存している。トランプが導入すると主張している自動車輸入への関税に恐怖し、鉄鋼とアルミニウムに既に課されている関税を撤回させようと努力している。

 

日本はアメリカとの貿易交渉を開始している。日本の代表団はワシントンに到着し、月曜日と火曜日にトランプ政権の通商代表ロバート・ライトハウザーと会談を持った。安倍首相はトランプからの関心を維持しようと努力を増大させている。トランプ大統領は5月と6月に続けて日本を訪問することで日本側の恩義に報いようという計画を立てている。日本政府の関係者たちは、気まぐれな大統領がどういった人々に依存しているのかということを理解し、接触しようと試みている。

 

東アジア専門家で政治学者でもあるワシントン・カレッジのアンドリュー・L・オロスは次のように語っている。「安倍首相の政策ティームは長い時間を割いてトランプ大統領の発言、ツイートも含めて言葉遣いを詳細に調べ上げている。政策ティームは、安倍首相と日本の代表団に対して話す際のポイントをトランプ大統領の言葉遣いを真似て指南している。これは、交渉の準備をする際に政策にかかわる問題のニュアンスや詳細について指南する従来のやり方は対照的なものである」。

 

安倍首相の目的の一部は経済的厄災を避けることだ。貿易に関する交渉、そして大統領が日本に自働車に関税をかけてダメージを与えるかどうかを決断することは、お友達関係を維持するか、壊すかの重要な問題となる。

 

戦略国際問題研究所(CSIS)のアジア担当上級副所長で日本部長であるマイケル・グリーンは次のように語っている。「安倍首相の周辺が私に語っているのは、トランプ大統領が自動車関税を導入するなら、安倍首相は必ず反撃をするということだ。これについては日本側を非難できない。これまでトランプ大統領が日本にやってきたこととは異なり、これは日本に対する侮辱であり、日本にダメージを与えることである」。

 

日本にダメージを与える決断が行われることを防ぐ、加えてその他の政策目的を達成するために、安倍首相と安倍首相周辺は非公式のトランプ専門学者(Trumpologists)となっている。日本政府高官たちに実際に接触のあった学者たちによると、彼らはアメリカの学者たちに対して、トランプ大統領を喜ばせる最善の方法は何かを教えてくれるように依頼している、ということだ。学者たちから得た助言には以下のようなものがあった。トランプ大統領に最も近いアドヴァイザー陣の中にいる大統領の家族に接触する。

 

グリーンは、日本政府は当初、トランプ大統領の娘婿で上級顧問のジャレッド・クシュナーが中国の大富豪たちとクシュナー家の不動産ビジネスを通じて緊密な関係を持っていることで、地域のライヴァル国である中国がトランプ政権と緊密な関係を築くことを懸念していたと述べている。グリーンは次のように述べている。「日本政府関係者たちはニューヨークに在住する中国人の大富豪たちと不動産ビジネスを通じて大変に緊密になっていることを懸念していた。アメリカへの偏愛と戦略的な関心は、中国がトランプ政権にとって最大の関心を勝ち取ることを阻止するということにつながった」。あるホワイトハウス関係者は「ジャレッドは中国の大富豪たちと同様に多くの日本の大富豪たちとも親しい。彼との関係で彼の政府で行う仕事に何かしら影響を与えることが出来ると考えるのは馬鹿げている」と述べている。

 

トランプ大統領の周囲を喜ばせようとして、日本政府は、2017年にワシントンの日本大使館で催された桜まつりのお祝いに、エンターテイナーの「ピコ太郎」をわざわざ招待した。ピコ太郎はトランプの孫娘アラベラ・クシュナーのお気に入りであった。この催しにはイヴァンカと2人の子供も出席した。その中にはアラベラも含まれていた。ピコ太郎は渡米が出来ず、ヒットした歌をその場で披露することが出来なかったが、イヴァンカ・トランプとあるアラベラのために撮影したヴィデオ映像が流された。

 

日本の外交官たちは、トランプ大統領が2019年5月末に訪日し即位したばかりの新天皇と会見することになっているが、この時にホワイトハウスの高官たちとアメリカの学者たちにどうすれば大統領の印象に残るかということを問い合わせている。ちなみに天皇の即位は1989年以来のことだ。アイディアには以下のようなものがある。トランプ大統領夫妻を東京の中心部にある皇居でのお茶会に招待する、そして、天皇の神聖な邸宅である皇居に立ち入ることを許されている人はほぼいないが、トランプ大統領夫妻に対して、特別に内部を見学するツアーを行う。

 

6月末にG20先進国サミット年次総会が、安倍首相がホストとして大阪で開催される予定で、トランプはこの時に日本に戻る予定だ。

 

安倍首相の個人的な外交関係のモデルは、アジア、中東、ヨーロッパ各国の指導者たちの外交姿勢を反映している。指導者たちはトランプ大統領を追いかけ、深い個人的なつながりを構築し、それを外交につなげようとしている。このようにしてトランプ時代に形が変わった政治のやり方をやっていこうとしている。,個人的な関係と大袈裟な甘言が国益をめぐる戦略に組み込まれている。

 

これらの国々の間には競争心が存在する。トランプ大統領が日本を訪問する際、安倍首相と側近たちは地域のライヴァルである中国に勝ちたいと願っている。中国はトランプ大統領が大統領就任後初の外遊先として2017年に訪問した国だ。この時、習近平主席はトランプ大統領夫妻に紫禁城内部を案内した。その後、夫妻は一流の中国のオペラとアクロバットを鑑賞した。

 

ホワイトハウスに勤務していたある人物によると、中国訪問後にトランプ大統領は「私たちは中国を警戒する必要があるようだ」と述べたということだ。余り感動することがないトランプ大統領は中国で見た、中国の子供たちと中国の伝統衣装を着たパフォーマーたちによるオペラとパフォーマンスを見て驚いたようだ。アメリカにも同じくらいのものがあるはずだと大統領は考え、「そうだ、アメリカのロケッツ(Rockettes、訳者註;ニューヨークを拠点とするダンスティーム)みたいだ・・」とつぶやいた。

 

ここで出てくる疑問は、日本側はその努力に見合った見返りを得ているかどうか、ということだ。安倍首相を批判する人々は、安倍首相の阿諛追従は成果を生み出していないとこき下ろしている。トランプ大統領は2018年3月に数か国に対して鉄鋼とアルミニウムの輸出に関税をかける際に、日本を除外することを拒絶した。安倍首相と周辺の人々は、トランプ大統領が北朝鮮の指導者金正恩委員長との外交で手のひら返しに恐怖感を持っている。トランプ大統領は金委員著を「リトル・ロケットマン」と酷評していたのに「大変に頭の切れる」指導者と称賛するようになった。安倍首相率いる日本政府は、日本上空を通過するミサイルテストを複数回にわたって実行した金委員長に対して信頼感を持っていない。そして、金委員長が核兵器開発プログラムを放棄することを望んでいる。そして、日本の要求とは見合わない内容の合意をトランプ大統領が北朝鮮側と結ぶのではないかという恐怖心を持っている。

 

そのため、トランプ大統領が2019年2月に、安倍首相が金委員長との核兵器をめぐる外交を行ったことを理由にしてトランプ大統領をノーベル平和賞に推薦したことを発表した後、安倍首相はそのこと自体を否定しなかった。安倍首相は疑念を持った国会議員たちに対して、「トランプ大統領とは緊密に協力している」が、「そのことは事実ではない、とは言わない」と発言した。

 

安倍首相を擁護する人々は、トランプ大統領が行っていない行為について指摘している。2016年の大統領選挙期間中、トランプは日本が自国の防衛力の構築に失敗していると非難し、日本と韓国は核兵器の開発を考慮すべきだと提案した。

 

トランプは2016年3月に『ニューヨーク・タイムズ』紙とのインタヴューで次のように語った。「北朝鮮が頭を上げるたびに、日本からの救助要請を受ける。その他のあらゆる場所からも要請を受ける。そして、何かして下さいと言われる。しかし、いつか私たちには何もできない日が来るだろう」。

 

トランプ大統領は左派である韓国の文在寅大統領とはより冷たい関係になっている。トランプ大統領はオーヴァルオフィス(大統領執務室)から韓国を批判している。一方、日本に対しては国防費の増額の要求を止めている。

 

現代アジアを専門とするスタンフォード大学フーヴァー研究所研究員マイケル・オースリンは次のように語っている。「トランプ大統領は日本との同盟関係で日本側に対して更に予算を出すように求めたことはない。韓国との同盟に関してはそのように述べたことはあるが、日本に関してはない。従って、日本政府はトランプ大統領を伝統的な日米関係の枠組みの中に入れ込むことに成功しているのだ」。

 

オースリンは、2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンが勝利して大統領になると予想してそのための準備をしており、クリントンのアドヴァイザーたちとの関係を構築しながら、トランプのティームは無視したために、トランプ勝利後は、最大限の両手を挙げての最大限の暖かい抱擁を行うしかなかった、と述べている。オースリンは、トランプが勝利したので、安倍首相は「行き着くところまで登るしか選択肢がなくなった」と述べている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領の娘で大統領補佐官(無給)であるイヴァンカ・トランプ(Ivanka Trump、1981年―)とこのブログでも再三ご紹介している、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortex、1989年―)連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)との共通点、それはニューヨーク市で生まれ育ったことです。両者とも学校時代はニューヨークではないですが、学校卒業後はニューヨークに戻っています。

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しかし、2人は対照的な生まれ育ちをしています。イヴァンカは大富豪の娘で、マンハッタン在住、その美貌から若い時からモデルをするなど、華やかなニューヨークの中で生活していました。アレクサンドリアは労働者階級の両親のもとに生まれ、ボストン大学にも奨学金を得て進学する(家族で初めての大学進学者)するといった苦労もありました。大学在学中に父親が亡くなるという不運もありました。また、大学卒業後には家族を支えるために、出版社などの仕事とバーテンダーの仕事を掛け持ちし、1日に18時間も働く日もあったということです。

 

 アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは、「グリーン・ニューティール」計画を提唱しています。これは、温室効果ガスの全廃を目指すもので、環境分野での雇用を創出することも狙っています。この計画には、失業している人たちにも最低限の生活費を保証するという内容も含まれているという報道もなされたために、この点でも大きな批判を浴びましたが、法案として連邦議会に提出された際には、この部分は含まれませんでした。

 

 イヴァンカ・トランプは保守系のフォックスニュースに出演し、その中で、この失業者にも最低限の生活費を保証するという内容を批判しました。そして、「人間はお金のために働いているのではない」ということを発言しました。これに対して、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは、「人間は生活することが出来るだけのお金を稼ぐために働いているのだ」ということを言い返しました。

 

 イヴァンカは生活の不安を感じることなくこれまで生きていたということが言えるでしょう。ドナルド・トランプが父親ということで大変な面もあったと思いますし、トランプが破産したこともあったのですから、その点では大変だったと思います。しかし、明日の食べ物を買うお金がないというようなことは経験していないでしょう。

 

 一方、アレクサンドリアは、子供の頃から両親の苦労を見てきたことは間違いありません。今でも自分は労働者階級の出身だということを誇りを持って強調しています。家族で初めての大学進学者となったのも、奨学金を得てのことですし、大学卒業後も働き詰めで苦労しました。連邦下院議員に当選したのが昨年11月ですが、貯めていたお金を使ってしまったために、連邦下院議員になって住むための部屋をワシントンで借りることが出来ず(アメリカの大都市の家賃は異常なほどに高いです)、しばらくバーテンダーの仕事をしながらお金を貯めていたということで、直近までお金で苦労しています。

 

 ニューヨークで生まれ育った2人の働くことの意味に対する対照的な考えは興味深いものがあります。

 

(貼り付けはじめ)

 

イヴァンカ・トランプが、オカシオ=コルテスの雇用「保証」計画を批判:アメリカ人のほとんどは「何かを与えられる」ことは望まない(Ivanka Trump rips Ocasio-Cortez for plan to 'guarantee' jobs: Most Americans don't 'want to be given something'

 

エイリス・フォーリー筆

2019年2月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/431624-ivanka-rips-ocasio-cortez-for-plan-to-guarantee-jobs-most-americans

 

イヴァンカ・トランプはニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(民主党)が主導する「グリーン・ニューディール」の一部を拒否すると表明した。細心のインタヴューの中で、イヴァンカは、アメリカ人の大部分は「自分自身の力で手に入れられるもの、達成できるもののために働きたい」はずだと考えると述べた。

 

フォックスニュースのキャスターであるスティーヴ・ヒルトンは日曜日に放送予定となっている番組の中で、イヴァンカにインタヴューを行った。その中で次のように質問した。「民主党、進歩主義派の民主党、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスからの提案があります。それは、これがグリーン・ニューディールです、雇用の保証があります、というものです。これに対して、良いね、単純だけど私が望んでいるものだ、と考える人たちがいます。こうした人々についてどう考えますか?」。

 

大統領の長女にして補佐官も務めるイヴァンカは、「アメリカ人のほとんどは何かを与えられたいと望んでいないと思いますね。私はこれまで4年間この国を飛び回ってきました。人々は自分自身の力で手にできるもの、達成できるもののために働くものですよ」と答えた。

 

イヴァンカは続けて「だから、最低限を保証するという考えは、ほとんどの人々が望んでいません。皆、仕事をやり続けられる能力を手にしたいと望んでいます。皆、上昇できる可能性がある国に住みたいと考えているのです」と述べた。

 

保守派の人々からの批判の大部分は、オカシオ=コルテスとエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)がグリーン・ニューディール計画を発表してから出てくるようになった。グリーン・ニューディール計画は2030年までにアメリカ国内での炭素ガス全廃という野心的な目標を設定しているもので、有権者登録をしている民主、共和両党の支持者の多くが支持している。

 

イェール大学クライメット・コミュニケーション・プログラムとジョージメイソン大学クライメット・チェンジ・コミュニケーション・センターが2018年12月に実施した世論調査では、民主党支持者の92%と共和党支持者の64%がグリーン・ニューディール計画を支持している、という結果が出た。グリーン・ニューディール計画の目的は、アメリカの電力を100%再生可能電力に転換し、失業者の雇用を保証するというものだ。

 

イヴァンカは、2020年の大統領選挙について突っ込まれて質問され、父親の政策は「アメリカを反映させ続けさせる」ものであり、次の大統領選挙では優位に立つことになると述べた。

 

イヴァンカはヒルトンに次のように述べた。「“私たちは昨日、もしくは2年前よりも今日の方が良い生活をしているか?”と考えてみたら、その答えは“イエス”ということになると思うんです。一人のアメリカ人として、1か月前もしくは1年前の家計の状況を考えてみれば、分かると思います。アメリカの状況はうまくいっていますし、他の国々に比べてその好調さは際立っています」。

 

イヴァンカは更に「私たち自身はうまくいています。成長のスピードという点では、アメリカを除く世界全体では落ちているという現状です」と述べた。

 

=====

 

オカシオ=コルテスがイヴァンカ・トランプに反論:「私はティップと時給のために働いた」(Ocasio-Cortez responds to Ivanka Trump: 'I actually worked for tips and hourly wages'

 

マイケル・バーク筆

2019年2月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/431716-ocasio-cortez-responds-to-ivanka-trump-a-living-wage-isnt-a-gift-its-a-right

 

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は火曜日、イヴァンカ・トランプを批判した。オカシオ=コルテスは、トランプの娘は「テリップや時給を稼ぐために働く」ことについて又聞きでしか知らないのだろうと述べた。

 

オカシオ=コルテスはツイッター上で、イヴァンカ・トランプがオカシオ=コルテスを批判したというニュースのリンクを貼り付けて、「私は人生の中でティップや時給を稼ぐために実際に働いた。そういったことを又聞きでしか学ぶしかなかった人もいる。私は自分の実際の経験から、人々のほとんどは、生活ができるだけのお金を稼ぎたいと思っている、と言うことができる」と書いた。

 

オカシオ=コルテスは更に「生活ができるだけの賃金は誰からの贈り物ではない。権利だ。労働者は多くの場合、生み出す価値よりも少ないものを支払われている」と書いた。

 

オカシオ=コルテスとエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、2月上旬に「グリーン・ニューディール」法案を議会に提出した。この法案は、温室効果ガスの全廃を目指し、雇用を創出することを目指すものだ。法案には全国民の雇用保障を含むものになっている。

 

イヴァンカ・トランプはグリーン・ニューディール法案について、日曜日に放送される予定になっているフォックスニュースとのインタヴューの中で次のように述べている。「アメリカ人のほとんどは何かを与えられたいと望んではいない。人々は自分自身の力で手にできるもののために働きたいと考えているはずだと私は確信している」。

 

イヴァンカは更に「最低限を保証するという考えは、ほとんどの人たちが望んでいないことであると思う。人々は自分の仕事を確実にすることが出来る能力を手にしたいと望んでいる。人々は、社会的に上昇する可能性を持つ国で生きていきたいと望んでいる」 と述べた。

 

イヴァンカ・トランプは火曜日に発表した書簡の中で、自分は最低賃金制度を支持しているが、「働きたくない」人々に「最低限の保証」をすることは支持しないと表明した。

 

働きたくない人たちに対して最低限の支払いを保証するという事項がオカシオ=コルテスの事務所から発表されたファクトシートに入っていたが、これは間違いで出てしまったもので、連邦下院に提出されたグリーン・ニューディール法案には入っていない。

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 リベラル派メディアの代表格『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙で、それぞれ、ドナルド・トランプ大統領とトランプ大統領の長女で補佐官を務めているイヴァンカ・トランプについてスキャンダルが報じられました。

 

 トランプ大統領に関しては、2016年の大統領選挙で民主党候補者としてトランプ大統領と争ったヒラリー・クリントン元国務長官とジェイムズ・コミー前FBI長官を訴追して欲しいという希望を表明し、それに対して、大統領の法律顧問だったドン・マガーンが反対したという内容です。アメリカの各省のトップは、「Secretary」で、日本語では長官となります。国務長官は、Secretary of Stateとなります。それでは、司法長官はSecretary of Justiceになるかと言うと、そうではなくて、United States Attorney Generalとなります。連邦政府の法律家トップであり、司法省のトップを務めるのが職務となります。法律問題に対して、アメリカ連邦政府を代表して意見を述べたり、大統領に助言をしたりするということになります。また、Attorney General という言葉は、日本語では「検事総長」という訳語も当てられますが、検事のような役割を果たすこともあります。

 

 トランプ大統領がヒラリー・クリントンを訴追したいと望んだのは、ヒラリーが抱えている私的Eメールアカウントを国務長官の業務内容、機密事項を含むやり取りで使用した問題のためだと思います。ヒラリーのこの問題が出てから、FBIの捜査が行われ、訴追が行われるのかどうかが大統領選挙でも焦点となりました。その時のFBI長官がジェイムズ・コミーで、コミーの差配で一度は訴追なしになったのに、選挙の投票日直前に再び捜査を始めるということになって、ヒラリー側には大きな痛手となりました。

 

 国家機密を含む内容のEメールを公開することはできないでしょうが、トランプとしては、ヒラリーは国家を危険に晒したとして、ヒラリーの再起の芽を摘みたいと思っていたのでしょう。しかし、中間選挙も終わり、民主党では既にヒラリー以外の名前が大統領選挙の候補者として名前が出ており、かつそこにヒラリーが出るという話も出て、民主党が分裂状態になるようであれば、ヒラリーも出てくれたら、楽だな、民主党は自滅するだけだしなと考えていることでしょう。ですから、ヒラリーに再出馬をさせて、民主党を混乱させて、その上で、ヒラリーのスキャンダルを出して、当選の芽を摘むということを考えているでしょう。

 

 ジェイムズ・コミーに関しては、FBI長官を退任後にトランプ大統領を非難していることもあって、カッと来て訴追したいと述べたものと思われますが、その他に、コミーの怪しい動きの裏に誰がいたのかということを知りたいということもあったのでしょう。FBI長官は、エドガー・J・フーヴァーのように、あらゆる情報を集め、政治家たちを脅しあげて、言うことを聞かせることも可能なほどに力があり、かつ危険なポジションです。それに対して、牽制を加えたいということは歴代の大統領が望んだことでしょう。トランプ大統領もその例外ではないということになります。

 

 トランプ大統領の記事が出た翌日、長女で補佐官を務めるイヴァンカ・トランプのスキャンダルが『ワシントン・ポスト』紙によって報じられました。イヴァンカが政府の業務内容を私的なEメールでやり取りしていたという内容です。これは、外見上は、前述のヒラリーのスキャンダルとよく似た内容で、「ヒラリーを訴追したいと言ったあなたは、娘もまた訴追したいと言うのか」というトランプ大統領に対して喧嘩を売る内容です。

 

 リベラル派のメディアであるニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙が協力して、トランプ大統領をおちょくる、喧嘩を売る内容を報道したという感じを受けます。「ヒラリーのEメール問題で訴追すると言っていたあなたの娘さんで補佐官が同じことをしていましたがどうするんですか」というような感じのおちょくりです。トランプは、ヒラリーの場合とは異なる、とイヴァンカのことを擁護しましたが、ここまで計算に入っての報道でしょう。

 

 来年の1月から連邦議会も新しい議員を迎えて始まります。連邦下院民主党は過半数を奪取したということで鼻息荒く、トランプ大統領を攻撃するとしています。今回のその材料を与えたということになります。「トランプ包囲網」を形成しているつもりでしょうが、ヒラリーの話が蒸し返されると、民主党にとっては大きな弱点となります。ヒラリーが表に出ない、引退するということであればこの弱点は大きなものとはなりませんが、まだ野心があるということになると、この弱点を突かれてしまうことになるでしょう。「諸刃の剣」ということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ大統領は、司法省がヒラリー・クリントンとコミーを訴追することを希望した(Trump wanted DOJ to prosecute Clinton, Comey: report

 

ミーガン・ケラー筆

2018年11月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/417729-trump-wanted-doj-to-prosecute-clinton-comey-report

 

トランプ大統領は司法省に対して、2016年の大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンとFBI前長官ジェイムズ・コミーを訴追するように希望した、と『ニューヨーク・タイムズ』紙は報じた。

 

トランプ大統領は今年春、当時の法律顧問ドン・マガーンに対して、ヒラリーとコミーを訴追したいという希望を述べ、これに驚いたマガーンはトランプを翻意させようとして、大統領にはそのような権限はないと発言した。

 

マガーンは後に、大統領はそのような権限を持ってはいるが、そのような依頼をすれば権力の乱用という非難を受けるだろうとトランプ大統領に対して述べた、とニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

 

この時、マガーンは、ホワイトハウスの法律家たちが作成した、大統領の権限についてまとめたメモを後で送ることを大統領に約束した。メモの中で、法律家たちは、訴追を要求することで、トランプ大統領自身への弾劾やその他のマイナスの反応を引き出す可能背が高いと警告を発した。

 

ホワイトハウスに対してコメントを求めたが返答はなかった。

 

マガーンは、就任から21か月後の今年10月にホワイトハウスの法律顧問を辞任した。トランプ大統領はマガーンの後任に商務が専門の弁護士パット・シポローンを起用した。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領が私的にヒラリー・クリントンとジェイムズ・コミーの訴追の可能性についてこれまで話し合いを行ってきたという、この問題について実際にトランプ大統領と話した2人の人物の証言を掲載している。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領がどのような容疑で訴追を行うように望んでいるのかは具体的にはなっていないとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 

訴追の希望についてトランプ大統領と話したある人物は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、トランプ大統領はクリストファー・レイFBI長官が積極的にヒラリー・クリントンについて調査を行わないことにいつも失望を表明していると語った。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は更に、オバマ政権がロシアの原子力省によるウラニウム採掘企業の買収に対してオバマ政権が許可を出すにあたってヒラリー・クリントンが果たした役割についてレイが調査しないことについて、トランプは不満を募らせているとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

昨年、トランプの弁護団は秘密裏に、司法省に対してコミーに関して政府の秘密情報を不適切に扱ったこととヒラリー・クリントンのEメール問題の調査について調査を行うように依頼したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。この依頼は拒絶されたということだ。

 

マガーンの法律顧問ウィリアム・バークは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、マガーンは「彼が大統領に対して行った法律に関する助言について以下なることもコメントしない」と述べた。

 

バークは次のように述べた。「他のいかなる依頼人と同様に、大統領に対しても秘密が守られる権利が保障されている。マガーン氏はおそらく、彼の知っている限りにおいて、大統領が誰かに対してヒラリー・クリントンもしくはジェイムズ・コミーを訴追するように命じたことはないと述べるはずだ」。

 

=====

 

イヴァンカ・トランプは個人Eメールアカウントから政府の業務に関するEメールを数百通送った(Ivanka Trump sent hundreds of emails about government business on personal account: report

 

ジャスティン・ワイズ筆

2018年11月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/417532-ivanka-trump-sent-hundreds-of-emails-about-government-business-on

 

イヴァンカは連邦政府の記録に関する規則に違反し、自身の個人アカウントから政府高官たちにEメールを送っていた、と『ワシントン・ポスト』紙が報じた。

 

大統領補佐官であり、大統領の長女でもあるイヴァンカ・トランプは、ホワイトハウスに関わる作業と彼女自身のスケジュールを政権の職員、高官、彼女自身のアシスタントたちに数百通のEメールを送っていたと報じている。

 

ホワイトハウスの倫理担当職員が5つの行政機関が昨年秋に収集したEメールを精査した際に、このことを発見した。5つの行政機関は公的な記録を巡る訴訟に対処するために準備を行う一環として、Eメールを収集した。

 

ホワイトハウスの倫理担当職員は精査の過程で、イヴァンカ・トランプがホワイトハウスにおける業務に関する議論を私的なEメールアカウントを使って行っていた、とワシントン・ポスト紙が報じた。

 

本誌はホワイトハウスにコメントを求めたが返答はいまだにない。

 

今回のスクープは、ヒラリー・クリントンの国務長官在任中に私的Eメールサーヴァー使用を思い出させるものだ。

 

ヒラリーが私的なサーヴァーを使用したことは、2016年のアメリカ大統領選挙における重要な問題となり、ジェイムズ・コミー前FBI長官は投票日のわずか1週間前に、この問題についての捜査を再開することを決定した。この決定はトランプとの選挙戦におけるターニングポイントとなった。

 

トランプ大統領はヒラリー・クリントンの私的Eメール使用を非難の材料として多用した。トランプ支持の集会に集まった群衆は、私的なEメールサーヴァー使用問題に対して、「彼女を逮捕せよ」と叫び続けた。

 

ワシントン・ポスト紙は、イヴァンカ・トランプが今回の問題発覚に対して政府の記録に関するルールの詳細な点について知らなかったと答えた、とこの問題について知っているある人物の証言を掲載している。

 

イヴァンカ・トランプの弁護士兼倫理担当補佐官アビー・ローウェルの報道担当ピーター・ミリジャニアンは、ワシントン・ポスト紙に対して、イヴァンカ・トランプはルールについての教えられる前に、私的なEメールを使って政府の業務を議論したと語った。

 

ミリジャニアンは声明の中で次のように述べた。「政権以降期において、公的なEメールアカウントが与えられたが、他の人々に対して与えられた使用ガイダンスを、業務開始前までに与えられなかった。トランプ氏は時に私的なEメールアカウントを使用したが、そのほとんどは家事のことやスケジュールについての連絡だった」。

 

ミリジャニアンは更に、イヴァンカ・トランプは数カ月前に政府の業務に関するEメールを公的なEメールに引き継いだと述べた。ミリジャニアンは、イヴァンカ・トランプの私的Eメール使用はクリントンの場合とは異なるとも語った。

 

ミリジャニアンは次のように語った。「トランプ氏は自宅や事務所に私的なサーヴァーを設置していない。機密情報はやり取りしたEメールには含まれていない。Eメールアカウントはトランプ・オーガナイゼーションから移されていないし、どのEメールも削除されていない」。

 

イヴァンカの反応は、ワシントン・ポスト紙は、ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァーの使用が暴露された時と似た反応だと論評している。しかし、ヒラリーの私的Eメール使用とイヴァンカの場合が違うのは、ヒラリー・クリントンがオバマ政権の国務長官在任中に、業務に関する公的なEメールを私的Eメールシステムだけを使ってやり取りしていた点だ。

 

ワシントン・ポスト紙は、イヴァンカ・トランプは私的なサーヴァーを使って政府の業務に関してやり取りしたのは100通以下であった、その他のEメールでは彼女のアシスタントとの旅行計画とホワイト蓮のスケジュールをやり取りしたものであった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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 古村治彦です。

 

 今回は『世界権力者図鑑2018』(副島隆彦、中田安彦著、ビジネス社、2017年)を皆様にご紹介いたします。発売は2017年11月21日です。

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世界権力者図鑑2018

 

本作は、『世界権力者 人物図鑑 世界と日本を動かす本当の支配者たち』(副島隆彦著、日本文芸社、2010年)、『ヨーロッパ超富豪 権力者図鑑』(中田安彦著、副島隆彦編集、日本軍米社2010年)、『新興大国 権力者図鑑』(副島隆彦責任編集、中田安彦著、日本文芸社、2011年)、『アメリカ権力者図鑑―崩壊する世界覇権国の今を読み解く』(副島隆彦、中田安彦著、日本文芸社、2011年)、『最新版 世界権力者 人物図鑑』(副島隆彦著、日本文芸社、2013年)と続いたシリーズの最新版です。出版社は変わりましたが、副島隆彦と中田安彦のコンビで、現在の世界を人物から分析する好著です。

 

 今月初め、ドナルド・トランプ米大統領とメラニア夫人がアジア歴訪とAPEC参加の第一歩として日本を訪問しました。その前には娘のイヴァンカ・トランプ大統領補佐官が日本を訪問しました。トランプ大統領には娘婿であるジャレッド・クシュナー補佐官が同行しました。こうした人々については本書で写真付きで紹介し、日本では紹介されていないレア情報を書いています。

 

私たちは「これまでとは違う世界に向かう」世界の中に生きています。そうした中で、世界を理解するためには、「世界を動かしているのはどういう人間たちなのか」ということを知ることは、現状を分析し、未来を予測するために大変有益なことです。

 

 ぜひ本書を手に取ってお読みください。よろしくお願い申し上げます。

 

(貼りつけはじめ)

 

はじめに

 

世界政治というと、なにか難しいことのように思える。だが国家も企業も、あらゆる組織・団体も結局はキーパーソンによって動かされている。その時代の精神を最も体現する人物が世界の最高権力者になるのだ。

 

2017年末現在で、世界の中心人物は、やはりアメリカ合衆国大統領のドナルド・J・トランプだろう。このド汚い大規模土建屋あがりの経営者で、テレビスターでもあったが、政治家の経験のない男が、世界最大の軍事国家でもある大国の指導者にのし上がった。このことで世界政治にとてつもない影響を現在進行の形で日々与えている。

 

2次世界大戦後に成立した秩序に対抗して延々と積み重なった、アメリカの草の根大衆の「怒り」をうまく体現した人物が大統領になったのだ。トランプが出馬表明した2015616日、あるいは彼が当選した2016119日は、世界政治の大きな転換点であるだろう。

 

この変化に呼応して、世界中の指導者たちも、立ち位置を変えざるを得ない。世界のあと二つの中心は疑いもなく「中国」と「ロシア」だ。アメリカが世界単独覇権(はけん)を唱える時代は終わった。この三大国(G3)が世界を動かしていく。どこの国でも権力者というのは大衆や庶民からの支持や賞賛、あるいは嫉妬や嫌悪や激しい憎しみの対象である。これからは、娘のイヴァンカたちトランプ一族が大衆の嫉妬の視線に晒される。

 

前作までと同様に世界の大きな枠組みの「再編成(リアラインメント)」の主役たち122人を、グラビア写真集として、的確な説明文と真実を伝える生々しい人物写真のインパクトで伝える。これらの政治家たちは決して「闇の権力」などではない。権力ドラマを日々生きている生身の人間たちである。

 

201711月 中田安彦

 

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おわりに

 

 この「世界権力者 人物図鑑」シリーズは、2010年から始まった。前作(2013年)から4年が経過し、世界権力者の顔ぶれもだいぶ替わった。私は、このシリーズを出版する意義として、「日本人は、世界の主要な指導者たちの考えや行動を大きく理解することで、世界の全体像を摑まえるべきだ」とした。ところが、日本人は世界情勢に興味を持たなくなっている。1年前のトランプ当選で日本人もアメリカという大国に関心を向けた。だがトランプ大統領がどういう思想の持ち主でどういう政治勢力を代表しているのかについて知ろうとしない。「北朝鮮の金正恩と同じような乱暴者」という程度の認識力しかない。アメリカに現れた最新型の政治勢力のことが理解できないのだ。日本のメディアもトランプ大統領が登場しても、全く報道姿勢は変わっていない。「この人本当に大丈夫なの」程度である。

 

 世界は変動のさ中にある。先ごろ行われた中国共産党の5年に一度の党大会「19大(たい)」で、習近平が新しい陣容で自分の権力基盤を強固にした。ロシアでも来年、プーチンがまた大統領選挙に勝利するだろう。日本人はこの激流に飲み込まれないために、世界基準(world values ワールドヴァリューズ)の政治思想を勉強すべきだ。私は、「世界は、米中露の〝第2次ヤルタ会議体制〞に向っている」と考えている。

 

 東アジア(かつて極東[ファーイースト]と言った)の一国である日本国の国民が、感性を研ぎ澄まして、この本に居並ぶ権力者たちの表情を凝視することで、これからの世界はどのような思想によって動かされていくのかを、大まかでいいから知るべきだ。本書が皆さんの政治知識の学習のお役に立つことを強く希望する。

 

201711月 副島隆彦

 

(貼りつけ終わり)

 

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世界権力者図鑑2018

(終わり)






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 古村治彦です。

 

 今回は、『タイム』誌が発表する今年の100人(小池百合子都知事も選ばれました)の中に選ばれたトランプ政権関係者6名についての分を抜粋してお伝えします。イヴァンカ・トランプ、ジャレッド・クシュナー上級顧問、ドナルド・トランプ大統領、レインス・プリーバス大統領首席補佐官、スティーヴン・バノン首席ストラティジスト、レベカ・マーサーです。面白いのは、それぞれの紹介文を書いているのが大物であり、味方、敵(元敵)である点です。

 

 興味深いには、ジャレッド・クシュナーを紹介しているのが、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官です。キッシンジャーは、共和党から民主党、民主党から共和党、とホワイトハウスの主が変わるときの大変さを指摘し、クシュナーは大統領の補佐役としてうまくやっていくだろうと書いています。昨年のトランプとキッシンジャーの会談をセットしたのがジャレッド・クシュナーですが、クシュナーとキッシンジャーが初めて会ったのが2015年であるとも書かれています。キッシンジャーはクシュナーがハーヴァード大学出身であることも書いており、そこにも信頼を置いているという感じです。

 

 トランプ政権内部で内部闘争が起きており、一方の旗頭がスティーヴン・バノンで、もう一方の旗頭がジャレッド・クシュナーと言われています。そして、バノンとクシュナーが激しく衝突したという報道もなされています。この2人を仲裁したのが、プリーバスです。この3人について紹介されています。

 

 レベカ・マーサーは共和党への大口献金者として知られている人物ですが、トランプ勝利のために、資金を提供し、バノンをトランプ選対に送り込んだ人物です。この人物についてはあまり知られていないと思われますので、この紹介記事は重要であると思います。

 

 5月28日に副島隆彦の学問道場主催の定例会で、同僚の中田安彦研究員がトランプ政権について講演を行いますが、それとも関連する記事ですので、出席される方は是非お読みください。

 

(貼り付けはじめ)

 

『タイム(TIME)』誌 2017年4月20日

 

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イヴァンカ・トランプ(Ivanka Trump

 

ウェンディ・マードック筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4742699/ivanka-trump/

 

 

世界はイヴァンカ・トランプをアメリカのファースト・ドーター、実業家、家族を大事にする妻であり母であることを知りつつある。私は彼女を親しい友人と呼べることを誇るに思っている。私と彼女が友人関係になって12年が経つ。私はニューヨークに住む隣人同士として知り合った。そしてすぐに親しくなっていった。お互い現代的な働く母親として、私たちは多くの挑戦と喜びを共有してきた。イヴァンカは私の人生において助言を与えてくれる信頼できる相談者である。

 

私はイヴァンカを尊敬し、賞賛の気持ちを持っている。それは、彼女が新しい役割の持つ影響力を如何に使うかを分かっているからだ。彼女は長年にわたり女性と少女の地位向上を訴えてきた。また、現在は教育の改善を訴え、人身売買のごく滅のために活動している。彼女は人身売買の悲惨さを知り、平穏な生活を捨てて、幼い家族とともにワシントンに移り、世界に良い変化をもたらそうとしている。

 

私の娘たちはイヴァンカに憧れつづけている。世界中の女性と少女たちもまた彼女に憧れを抱くことができると私は考えている。

 

※マードックは、映画プロデューサー、実業家、「アーツィー」社の共同創設者である。(訳者註:ルパート・マードックの元妻。中国系。気が強いことでも有名)

 

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ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner

 

ヘンリー・キッシンジャー筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4742700/jared-kushner/

 

アメリカ大統領が1つの政党からもう1つの政党へ交代することは、アメリカ政治におけるもっとも複雑な出来事の1つだ。このような変化が起きると、ワシントンを動かしている目に見えないメカニズムの中に大きな変化と不安定が生まれる。 新しくワシントンにやってくる大統領は既存の型式の構造について無知であり、その無知の程度が大きいほど、それを埋めることを期待されているアドヴァイザーたちの責任は重くなっていく

 

ここ4カ月、新大統領とワシントンのメカニズムの間をうまくつないでいるのがジャレッド・クシュナーだ。私がクシュナーと初めて会ったのは18カ月前のことであった。私が外交政策について講演を行ったその後に、彼は私に自己紹介をした。それが最初の出会いであった。私たちはそれ以降、率直に意見交換するようになった。トランプの親族の一員の中で、ジャレッドはトランプ大統領が何を考えているかも分かる人物だ。ジャレッドはハーヴァード大学とニューヨーク大学の卒業生であり、幅広い教育を受けている。実業家して、組織の運営についてもよく知っている。こうした長所によって、彼は太陽の近くを飛び回るという危険な任務を成功させることができるだろう。

 

※キッシンジャーは米国務長官を務めた

 

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ドナルド・トランプ(Donald Trump

 

ポール・ライアン筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4736323/donald-trump/

 

彼は常に物事を達成するための方法を見つける。私を含む多くの人々が、彼はどうやって成功できるんだろうかと首をひねっていたが、ドナルド・トランプは歴史的な勝利を収めたのだ。トランプは第45代アメリカ合衆国大統領に就任し、政治のルールを書き換え、アメリカの方向性を設定し直した。実業家とは常に常識や現状に挑戦したいと考えているものだ。トランプはワシントンに激震をもたらし、これまでにない政策目標を掲げている。彼は決して戦いを恐れない。彼は自分など忘れ去られた存在だと感じている人々のために戦うことを自分に課している。他の人々が態度を変えるような場所でも、彼は自分が何者であるかという点を明らかにして態度を変えることはない。他の人なら退くところで、彼は一歩前に踏み出す。私は、トランプがアメリカをがらりと変えてしまうかもしれない、私たちを導く力を持つ指導者であると認識している。トランプは再び困難を乗り越え、目的を達成する方法を見つけるだろうと私は確信している。

 

※ライアンはアメリカ連邦下院議長を務めている。

 

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レインス・プリーバス(Reince Priebus

 

ラーム・エマニュエル筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4736339/reince-priebus/

 

レインス・プリーバスと私の共通点は、中西部の生まれである点と変わった名前である点、そして政治を愛している点くらいだ。しかし、私たちは大統領首席補佐官として大統領の要望に応えてきた数少ない人物たちの仲間である。 私たちは、激しい選挙戦と一つの党から別の党への政権交代の後の新政権発足で、大統領首席補佐官を務めることになったという共通点がある。私たちは傷だらけの状態から仕事を始めた。

 

首席補佐官はホワイトハウスの職務の中で2つのタイトルを示している。首席とスタッフだ。首席が意味するのは、構造と説明責任だ。補佐官が意味するのは、大統領はアメリカ国民の投票で選ばれた人物だということを肝に銘じ、大統領執務室のドアを開ける前に自分のエゴが出ないようにチェックし、自分は大統領のために働くためにそこにいるということを理解し、彼の考えを実現するのだということを確かめるということだ。

 

私は大統領首席補佐官だったとき、金曜日のたびに次のようなジョークを言っていた。「やれやれ、月曜日まであと2日間だけ働けばいいんだ」。大統領首席補佐官は消耗するし、感謝されない仕事だ。1日の始まりから終わりまで、様々なことが起き、経験する。それがどんなに朝早く、夜遅く起きるにしても、私たちは神経を張りつめておかねばならない。 過ぎていく1日は、私たちが挑戦を始める1日となる。

 

※エマニュエルは、バラクオバマ大統領の大東翔首席補佐官を務めた。現在はシカゴ市長を務めている。

 

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スティーヴン・バノン(Stephen Bannon

 

マイケル・ダフィー筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4736342/stephen-bannon/

 

スティーヴン・バノンは第45代大統領の大統領首席ストラティジストとして機能しないかもしれない。しかし、バノンほど、ドナルド・トランプの大統領選挙と就任後2カ月で影響力を発揮してきた人物は存在しない。アメリカ海軍とゴールドマンサックスに勤務した経験を持つ。彼は現在、トランプ政権の方向性を決める最高幹部となっている。彼は、既存の民主、共和両党に対して、怒りに満ちた、ナショナリスティックな、アメリカ第一主義の炎を向けている。バノンは政府機関、ビジネス界、マスコミのエリートを攻撃してきた。そして、トランプを支持した高齢の白人で、現状に不満を持つ人々を徹底して喜ばせてきた。バノンの語る内容は、これまでブライトバート社の会長として主張してきたもので、これは、トランプ政権発足後の75日間の明確な目標となった。しかし、これに対して激しい反対も引き起こした。しかし、トランプ自身は、バノンが連邦議会に対しての勝利を収めることよりも、トランプ支持者たちを離れさせるようなことをしていると認識している。トランプにとって、これは大変に危険で、彼を破滅させることになると考えている。

 

ダフィーは、『タイム』誌の副編集長である。

 

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レベカ・マーサー(Rebekah Mercer

 

テッド・クルーズ筆

http://time.com/collection/2017-time-100/4742759/rebekah-mercer/

 

レベカ・マーサーは戦士であり愛国者だ。彼女は卓越した数学者で、大成功を収めた投資家の娘として生まれた。レベカは素晴らしい知識と直観力に恵まれている。彼女はそのまま恵まれた、安楽な暮らしをすることは簡単なはずだった。しかし、レベカは自由とわが国について深く考える人間だ。

 

レベカと彼女の父ボブは、これまで政治革命を推進するために莫大な資金を投じてきた。2人のアプローチは複合的だ。シンクタンク、公共政策研究組織、インターネット・メディア、データ分析会社への援助を通じて、レベカは政治の世界に変革をもたらしてきた。彼女は、ワシントンにおける民主、共和両党の腐敗に対する人々の不満を理解している。彼女は汚れた沼の水を抜くことを強力に主張している。

 

レベカは、新人や勝利の可能性が低い候補者たちの資金や選挙運動を支援してきた。その中には私の上院議員選挙や大党選挙が含まれる。ドナルド・トランプが共和党の大統領選挙候補者に指名された時、レベカは、トランプの選挙対策ティームに人員を集め、11月に世界に衝撃を与えた戦略を採用する際に重要な役割を果たした。

 

※クルズは、テキサス州選出のアメリカ連邦上院議員である。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



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