古村治彦です。

 

 最近のアメリカ大統領選挙に関する世論調査を見てみると、トランプが持ち直しています。党大会後の落ち込みが激しかった分、挽回してきています。これは、選対に新しく入った、ケリアン・コンウェイ選対委員長の助言によってトランプが方向転換し、黒人やヒスパニックへの態度の軟化が無党派有権者の好感を得ることに成功した結果と言えます。

 

 ヒラリーは最近の国務長官在任時のクリントン財団と国務省の不適切な関係やEメール問題がたたっています。共和党支持が強いアリゾナ州、ジョージア州、ミズーリ州での支持を伸ばしていましたが、ここにきてトランプがこれらの州で支持を回復しています。また、逆に民主党が強かったウィスコンシン州でトランプが支持率を上げ、接戦となっています。

 

 アメリカ大統領選挙では各州とワシントンDCに配分された合計538名の選挙人のうちの270名を獲得した候補者が当選となります。ほとんどの州では1票でも多くの票を獲得した候補者がその週に配分されている選挙人を全部取る、勝者総取りシステムになっています。

 

 現在の各州の情勢ですが、ヒラリー・クリントンが確実、優勢、優位な州の選挙人の合計が262、トランプが確実、優勢、優位な州の選挙人の合計が154となっています。前回のオバマ、バイデン対ミット・ロムニー、ポール・ライアンの途中経過では201対191と接戦でした。

 
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 共和党は2008年、2012年と民主党のバラク・オバマに連敗しています。2008年の時は、ジョン・マケインとサラ・ペイリンのコンビで、365対173の敗北でした。オバマとジョー・バイデンのコンビが選挙人の3分の2以上を奪う完勝でした。この時のオバマ人気のすさまじさを覚えておられる方も多いでしょう。2012年の時は、ミット・ロムニーとポール・ライアンのコンビで332対206の敗北でした。ノースカロライナ州とインディアナ州を取り返したのですが、現職の強みを活かしてオバマとバイデンが勝利しました。

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2008年大統領選挙の結果 

 
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2012年大統領選挙の結果

 今回2016年の大統領選挙では、トランプとマイク・ペンスのコンビは前回の206を基礎票としてまず固めなければなりません。前回取り戻したノースカロライナ州とインディアナ州を手放すことはできません。そこで、インディアナ州知事のマイク・ペンスが副大統領候補になりました。

 

 トランプ陣営が現在までに固めていると見られているのが154で、アリゾナ州、ミズーリ州、ノースカロライナ州、ジョージア州が激戦という状況です。まず元々共和党が強いミズーリ州とジョージア州、アリゾナ州を固め、2008年の時には民主党が取ったノースカロライナ州で引き離しにかからねばなりません。それで、「基礎票」とも言うべき、2012年の時の206になります。

 

 勝利に必要な270に届くためには、そこから更に64の積み上げが必要です。現在激戦州となっている州のうち、フロリダ州とオハイオ州を抑えることが出来れば47増やすことが出来ますので、253となります。ウィスコンシン州とアイオワ州を取れば269となります。こうなれば、269対269で、連邦下院の採決で当選者が決まるのですが、共和党が多数を占め、それが動かない状況ですので、トランプが勝利となります。しかし、ここまで8つの州で勝利を得なければなりません。そのためには資金と人材を投入しなければなりませんが、その点ではトランプ陣営がヒラリー陣営に後れを取っている状況です。

 

 しかし、これからヒラリーの健康問題、国務省時代のクリントン財団との不適切な関係、新たに公開されるEメールの内容によって状況は変わる可能性が高いです。8月中は、私は「7対3」でヒラリー勝利の可能性が高いと考えていましたが、現在はその数字を「6対4」にしたいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

2016年は選挙情勢地図に終わることになる?(Will 2016 Come Down to the Electoral Map?

 

アルバート・ハント筆

2016年8月28日

『ブルームバーグ』誌

https://www.bloomberg.com/view/articles/2016-08-28/will-2016-come-down-to-the-electoral-map

 

アメリカの政治に関わるストラティジストや記者(私は政治記者を40年以上やっている)は地図を愛している。この地図とは、4年ごとに大統領選挙の各州の勝ち負けを示す地図だ。

 

全米各州はそれぞれ連邦議会の議員数を基にして、人口にも基づいて選挙人が配分されている。たとえば、ワシントンDCには3名の選挙人が配分されている。ほぼすべての州が勝者総取りシステムを採用している。選挙人の合計は538で、270名を獲得した候補が勝利となる。

 

約3分の2の州、その中には最大のカリフォルニア州とテキサス州も含まれるが、これらの州の結果はほぼ決まっている。従って、戦いは15州の約200名弱の選挙人の争奪戦となる。

 

従って、フロリダ州の29名、オハイオ州の18名、ノースカロライナ州の15名、アイオワ州の6名を誰か取るかを知りたいと思っている選挙マネージャーにとって、この争奪戦は楽しみであり、かつ真剣なものとなる。

 

大抵の場合はドラマ性が過度に強調される。選挙情勢地図は選挙の情勢と結果をそのまま反映する。2ポイント差以内であれば接戦と言え、この接戦の時だけが問題なのだ。

 

これまで行われた14回の大統領選挙の中で、4回がそうした接戦の選挙となった。1960年、1968年、1976年、2000年だ。 2000年のアル・ゴア(民主党)対ジョージ・W・ブッシュの選挙は、1世紀以上の歴史で初めて、総得票数で勝利した候補者が選挙人の数で敗れた選挙で、その当時は論争が巻き起こった。

 

共和党員の中には、イリノイ州での不正があったから、1960年の選挙でジョン・F・ケネディが勝ったのだと今でも主張している人たちがいる。この時の全国での得票数の差は11万8000とかなりの僅差だった。しかし、もしケネディがイリノイ州を落としていたとしても、選挙人の数で勝利を収めていたことは変わらない。 そこで批判者たちはテキサスを持ち出す。テキサスは接戦だった。しかし、複数の選挙委員会、その中には共和党が過半数を占めているものもあったが、投票を見直し、選挙結果を認めた。

 

1976年のジミー・カーター(民主党)とジェラルド・フォード(共和党)の選挙と、1968年にリチャード・ニクソン(共和党)がヒューバート・ハンフリー(民主党)を破った選挙は共に接戦だった。1968年の場合は50万票だった。しかし、選挙人の数では勝敗は明白だった。民主党員の中には、2004年の選挙でジョン・ケリーがオハイオ州で勝っておけば大統領になれたと主張する人たちがいる。確かにその通りだ。しかし、彼はオハイオ州では11万8000票の差で敗れた。

 

学者と政治家たちは選挙人制度の利点について継続的に議論している。 この制度の支持者は、小さな州の役割を強めていること、細かい選挙戦が行われること、より決定的な評決を得られることを支持の理由として挙げている。反対者はほとんどの州の有権者がないがしろにされ、一般有権者の得票数で決めることの方が民主政治に関する価値観に合致していると主張している。

 

選挙ストラティジストと記者たちは今年の選挙は接戦になると予想し、選挙情勢地図を作り、報道している。

 

ヒラリー・クリントン支持のスーパーPACで活動している民主党所属の世論調査専門家ジェフリー・ポラックは、「2から3ポイントの差があればまずは安心というところです。ですが、選挙人獲得のために人材とお金を投入しなければなりません」と語っている。

 

現在のところ、ヒラリーが平均して5ポイントの差をつけているが、これが1から2ポイント差に縮まっても、ドナルド・トランプにとっては苦闘ということになる。2012年の大統領選挙から考えてみよう。この選挙ではバラク・オバマがミット・ロムニーに対して総得票数では4%の差をつけ、選挙人の数では332体206で勝利した。今回の大統領選挙では、ドナルド・トランプは勝利のために、ロムニーが勝利した州(選挙人206名)に加えて、更に64名を獲得しなければならない。

 

フロリダ州(選挙人29名)とオハイオ州(18名)は何が何でも取らねばならない、必ず勝たねばならない州だ。トランプにも勝ち目があると思われた激戦州であるヴァージニア州、コロラド州、ペンシルヴァニア州では接戦が続いているが、これらの州をトランプが獲得することはほぼ不可能だと思われる。

 

トランプは、接戦が展開されている更に小さな州であるネヴァダ州、アイオワ州、ニューハンプシャー州で勝利しなければならない。これらの州の選挙人の合計は16名となり、そうなると、ミット・ロムニーが獲得した203名と足すと、269名となり、269名対269名の同数となり、大統領選挙勝利者の指名は連邦下院が決定することになり、下院内部は大混乱を引き起こすだろう。

 

最も起こりうるシナリオは、2人の差が3ポイント以上離れることだ。そうなれば選挙はヒラリー勝利で終わり、私たちは4年後まで地図を放っておくことになる。

 

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世論調査:共和党支持の有権者の過半数がトランプ以外の候補者を選びたいと望む(Poll: Majority of GOP voters wish they chose another presidential nominee

 

リサ・へーゲン筆

2016年8月29日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/293746-poll-majority-of-gop-voters-wish-they-chose-another

 

最新の世論調査によると、共和党員の過半数がドナルド・トランプ以外を大統領選挙候補者に選びたいと答えたということだ。

 

月曜日に発表されたハフィントン・ポスト紙とYouGovの共同調査の結果によると、共和党員と共和党支持の有権者の54%が共和党の候補者としてトランプは最良の選択肢ではないと答えたということだ。一方、トランプが共和党に相応しい候補者だと答えたのは35%だった。

 

6月に行われた時の結果に比べて不満が大きく高まっていることが分かる。6月の調査では、44%がトランプが最良の候補者だと答え、そうではないと答えたのは44%だった。

 

共和党の予備選挙に出馬したのは17名で、トランプはその一人だった。予備選挙をやり直せるとして、誰に投票するかと質問に対して、29%がトランプ、15%がテッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、14%がマルコ・ルビオ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、その他の候補者たちがそれぞれ10%以下の支持を受けた。

 

On the other side of aisle, 56 percent of Democratic and Democratic-leaning voters are content with Hillary Clinton as their party’s nominee, while 32 percent believe there’s a better option. This is up by 3 percent since the same poll in June.

 

予備選挙が再び実施されてもヒラリーに投票すると答えた民主党支持の有権者は47%いたが、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)に投票すると答えた有権者は42%にのぼった。元メリーランド州知事マーティン・オマリーの支持率は3%だった。

 

今回の世論調査では2016年8月24日から25日かけて1000人の成人を対象にして面談が実施された。

 

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世論調査:ヒラリーがトランプを6ポイント差でリード(Poll: Clinton has 6-point lead over Trump

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2016年8月30日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/293759-poll-clinton-has-6-point-lead-over-trump

 

NBCニュース・サーヴェイ・モンキー・ウィークリー・エレクション・トラッキング・ポールの共同調査の最新の結果によると、民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンは共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプを6ポイントリードしているということだ。

 

世論調査の結果によると、登録有権者の48%がヒラリーを支持し、42%がトランプを支持しているという結果が出た。

 

ヒラリーのリードは先週に比べて少し小さくなった。先週、ヒラリーとトランプの差は8ポイントあった。

 

トランプ対ヒラリーの一対一の闘いに、リバータリアン党のゲイリー・ジョンソン、緑の塔のジル・スタインを加えてみると、ヒラリーはトランプに4ポイント差をつけてリードとなった(41%対37%)。ジョンソンとスタインの支持率はそれぞれ、11%、5%となった。

 

無党派の有権者の間の支持率では、ヒラリーはトランプに対して4ポイントのリードを付けている(37%対33%)。

 

この世論調査では、現在ヒラリーを支持している無党派有権者の70%が過去6か月に別の候補者を支持していたと答えた。一方、トランプを支持する無党派有権者の64%は、6か月前もトランプを支持していたと答えた。

 

この世論調査は2016年8月22日から28日にかけて、2万4104人を対象に行われた。誤差は1%となっている。

 

リアルクリア・ポリティックスの世論調査の平均によると、ヒラリーはトランプに対して5ポイントの差(46.5%対41.5%)をつけている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)