古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ウクライナ

ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

ヌーランドとホワイトハウスとの間で考えは一致していないが、民主、共和両党に属する連邦議員たちは、ヌーランドの言っていることは正しいと確信を持っている。

 

 連邦下院外交委員会で民主党側を率いる議員でミュンヘン安全保障会議にも出席したエリオット・エンゲルは次のように発言している。「彼女の話を聞くと元気が出る。私たちはウクライナに対して防衛を目的とした武器を供与すべきなのだ。ロシアがいつもウクライナを打ち破るという主張に私は与しない。それは敗北主義的態度だと思う」。

 

 エンゲルのタカ派的態度は彼だけのものではなく、連邦議会上下両院の議員たちの多くの態度でもある。

 

 2014年12月、連邦議会は多くの議員の賛成により、大統領に対してウクライナに、弾薬、兵士が操縦する調査用のドローン(無人飛行機)、対戦車兵器を含む最終的な支援を与える権限を与える法律を可決した。オバマ大統領も可決された法案に署名することに同意した。それはこの法律は大統領にウクライナへの支援を強制する内容ではなかったからだ。連邦上院は今週、新しい戦術を試すために、法律の改正を行おうとしている。この改正は、対ウクライナ支援のための予算のうちの20%までが使われるまでの間、ウクライナの安全保障支援のための3億ドルの半分の執行を停止するという内容だ。この法律改正についてはホワイトハウスが反対している。それは、アメリカが最終的な支援を行うことでウクライナにおける流血の惨事がエスカレートし、プーティンには更なる暴力的な侵攻を行うための口実を与えることになるとホワイトハウスは恐れているのだ。

 

 アメリカ連邦議会とホワイトハウスの政策の違いが、ヌーランドと彼女に応対するヨーロッパ諸国の外交官たちの間の不和の原因だという説明もなされているが、彼女の厳しい姿勢もまた原因だと主張する人々もいる。

 

ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究所(SAIS)の上級研究員フェデリガ・ビンディは「ヌーランドの攻撃的な姿勢は、少なくともヨーロッパの外交界においては行き過ぎのように感じられている」と述べている。

 

 ヌーランドを擁護する人々は、ヌーランドの「厳しい愛情」という特徴こそ、昨年のロシアによるクリミア併合後のロシアに対するアメリカ政府の対応に必要であったと述べている。

 

 ホワイトハウスの戦略は、厳しいが非軍事的な方法を混合させた形の対ロシア政策を実施し、それによってヨーロッパの団結を図るというものである。この政策に含まれるのは、昨年9月に開始されたアメリカとEUによるロシアのエネルギー国営企業、武器製造企業、金融部門を標的とした経済制裁、G8からのロシアの除外、同盟諸国に対してプーティンをそれぞれの首都に招かないこと、もしくはロシアを国賓待遇で訪問をしないように求めることだ。

 

ヨーロッパの団結を維持するのは易しい仕事ではない。

 

 ロシアを軍事的に抑止する問題について、ヨーロッパは混乱している。バルト海沿岸諸国はより攻撃的な対応を求めているが、イタリアとギリシアは外交による対応を求めている。EUの中で最も力を持つドイツとフランスはこの2つの解決策の中間的な解決を求めている。

 

 制裁については、ヨーロッパ諸国の首脳はアメリカよりも腰が引けている。それは、ヨーロッパ諸国はロシアの各企業との間で長年にわたり、友好的な関係を築いているからだ。禁輸政策の結果、フランスの農産物輸出とイタリアの観光業は大きな痛手を蒙っている。

 

 ヨーロッパ諸国が対ロシア制裁から離脱する場合、ヌーランドに対してそれを伝えねばならない。これはなかなか荷厄介で一筋縄ではいかない。

 

 2015年3月中旬、ヌーランドはローマを訪問した。この時、イタリア首相マッテオ・レンツィは、ロシアがクリミアを併合して以来、ヨーロッパ諸国の首脳としてモスクワを初訪問し、プーティンと会談してイタリアに帰国したばかりであった。

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マッテオ・レンツィ 

 

 イタリアはプーティンを孤立させることを目指す西側の政策に批判的であった。ヌーランドはレンツィがロシア訪問を行った後初めてイタリアを訪れたアメリカ政府高官であり、レンツィに圧力をかけるという困難な仕事を行った。ある外交関係者によると、ヌーランドはレンツィに対して激しい言葉遣いで非難を行い、レンツィは侮辱されたと感じ、怒り狂ったということである。

 

 あるオバマ政権高官は、このメッセージはレンツィに届ける必要があるものだったと協調している。この高官は次のように述べている。「オバマ政権の政策は、同盟諸国がプーティンを首都に招かない、またプーティンから国賓待遇で招待されてもそれを受けないように求めることだ。アメリカ政府の高官たちは、イタリア政府に対して、レンツィ首相の訪露に対して懸念を持っていると伝えてきた」。

 

 ヨーロッパ諸国からの不信感があることは認めながらも、この高官は、ヌーランドのメッセージは「怒りではなく、失望をヨーロッパ諸国に与えた」と述べた。

 

 この厳しい姿勢を理由にして、アメリカ政府や連邦議会の人々はヌーランドを賞賛しているのである。

 

エンゲルは、「彼女は率直にあるがままに話す。何か守ろうとかごまかそうとかしない」と語った。

 

* * *

 

 ヌーランドはフランス語とロシア語を不自由なく操る。20代の頃、ロシア語を学ぶために数カ月にわたり、ソ連のトロール漁船に乗船したのだが、この時にソ連(ロシア)に対する激しい憎しみを抱いたと言われている。

 

ヴィクトリア・ヌーランドの父シャーウィン・ヌーランドは既に亡くなっているが、イェール大学教授として有名であった。ヴィクトリアの夫ロバート・ケーガンはネオコンに属する有名な評論家である。彼女の人生は力を持った、人々の心を動かす表現者たちに囲まれていると言える。

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 ロバート・ケーガン

 

 ケーガンは、新アメリカ世紀プロプロジェクト(PNAC)の創設者の1人であり、悲惨な結果に終わったアメリカ軍のイラク侵攻を最も強力に主張した人物である。枯れもまたヨーロッパの人々を苛立たせた人物として有名である。彼は外交政策分野におけるアメリカとヨーロッパの分裂について論稿を書いた。この中で、軍事力の使用について、「アメリカ人は火星から、ヨーロッパ人は金星から生まれたくらいに違いがある」と書いた。

 

 ヌーランドは宣誓式において、自分の結婚生活について、夫ケーガンの論稿に言及しながら次のように述べた。「彼は私の火星であり、金星であり、そして地球です」。

 

 昨年、ヌーランドとケーガンは、『ポリティコ』誌の取材に対して、最初の数回のデートで民主政治と世界におけるアメリカの役割について話したことで意気投合し、恋に落ちたと語った。

 

 ヌーランドがケーガンと結婚しているため、ヨーロッパ人の殆どは、彼女が共和党員だと思っている。しかし、彼女のロシアに対するタカ派的なアプローチはオバマ政権内部で彼女だけが採っているものではない。

 

 複数のアメリカ政府関係者によると、アメリカ政府の最高首脳たちも私的な場ではウクライナへの武器供与を支持しているということだ。その中には、ケリー国務長官、アシュトン・カーター国防長官、ジョー・バイデン副大統領、ミュンヘン安全保障会議でヌーランドと共にブリーフィングを行ったブリードラヴ空軍大将も含まれている。カーターは自分の考えを公然と話し、それが放送された。カーターは2015年2月の上院軍事委員会に出席し、「私はウクライナへの武器供与を支持する。それは、ウクライナが自国防衛をすることをアメリカが支援しなくてはならないと考えているからだ」と述べた。

 

 オバマ政権内でヌーランド以外にもウクライナ問題について発言している人物が2人いる。1人は国家安全保障会議ヨーロッパ問題担当上級部長チャールズ・カプチャンであり、もう1人はロシア・ユーラシア担当上級部長セルスティ・ワーランダーである。カプチャンとワーランダーの考えは、彼らの学問研究の成果から生み出されたものだ。カプチャンは長年にわたり、NATOに対して疑義を持っていた。彼は危機的状況の軍事力による解決に疑念を持ってきた。彼の存在と疑念によって、よりタカ派的な解決策が国家安全保障会議を通過することはなく、まさに知的な防波堤と言うことが出来る。

 

 ヌーランドは、国務省の人々の多くが持つウクライナ危機に関する主流の考えから逸脱してはいない。しかし、ヨーロッパの人々のヌーランドが大変なタカ派であるとい印象を和らげることはすぐにはできないだろう。それは彼女が取り返しのつかないことで有名になってしまったからだ。ウクライナ国内の反対勢力とウクライナ元大統領のヴィクトール・ヤヌコヴィッチとの間の政治的対立が大きくなっていた2014年、彼女の私的な電話での会話が録音され、何者かによって漏洩されたのである。

 

 皮肉なことに、この会話録音の漏洩によってヌーランドは有名になったが、彼女が国務次官補としてやってきた仕事を誰も理解しようとはしなかった。

 

 アメリカ、ヨーロッパの外交筋からの情報だと、その当時にさんざん報道された内容とは異なり、ヌーランドの余計なひと言は、EUのヤヌコヴィッチ政権に対する姿勢に対する不満、またはEUに対するヌーランドの日ごろの考えから出たものではないということだ。

 

 F爆弾(fuckという言葉を使ったこと)が世界を駆け巡ったのだが、これは2014年1月初頭まで遡る技術的な不同意の結果として生まれたことなのである。当時、数多くの人々がキエフの独立広場での抗議活動に参加し、ヤヌコヴィッチ大統領の辞任を求めた。ヤヌコヴィッチは親露的な人物で、多くの公約違反を犯したが、EUとの政治・貿易協定への署名を見送った。

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ウクライナ反対派(ネオナチ勢力)と仲の良いヌーランドとマケイン

 

 アメリカ政府高官たちは、ヤヌコヴィッチに対してその当時の政権を放棄して、反対勢力の指導者たちを参加させるテクノクラート政府の樹立を行うように求めた。数週間の抵抗の後、ヤヌコヴィッチは態度を軟化させ、反対勢力に対して新政府で2つの地位を与えると提案した。これは外交上大きな転換点となった。ずる賢い政治家ヤヌコヴィッチにしてやられることを恐れた反対勢力は、話し合いに第三者、理想的にはEUが加わることを求めた。EUが話し合いへの参加を拒絶したことで、ヌーランドは怒り、そして後に後悔することになった激しい言葉遣いとなってしまったのだ。彼女はヨーロッパ諸国を遠ざけ、国連に肩代わりをさせるとことを考えたのだ。

 

 ヌーランドは次のように語った。「これは良いアイディアなのよ。状況を改善し、国連にその手助けをさせるというのは。ああそうそう、その点ではEUはダメね、クソ喰らえだわ」。

 

ドイツのアンゲラ・メルケル首相はヌーランドの電話での会話内容を「全く持って容認しがたい」ものだと述べた。ジョン・ケリー国務長官はEUの首脳たちに対してヌーランドの発言内容について謝罪した。

 

 人々の殆どは、電話の録音はロシアの諜報機関が漏洩させたもので、その目的はEUとアメリカとの間の溝を大きくすることだと考えている。

 

 しかし、ここまでのところ、この戦略はうまくいっていない。アメリカとヨーロッパは禁輸政策で多少混乱はしたが、一致した行動を取っている。2015年6月17日、EUは対ロシア禁輸を更に6カ月延長することに合意した。ロシア政府は延長をしないように激しく働きかけを行ったが失敗に終わった。しかし、ロシアの諜報機関は、ヌーランドとヨーロッパ諸国の交渉相手との関係は悪化しているという鵜沢を流し続けている。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回から2回に分けて、アメリカの恐ろしい外交官であるヴィクトリア・ヌーランドについての記事をご紹介したいと思います。

 

 ヌーランドについては、これまでにもこのブログでもご紹介しましたし、彼女の夫であるロバート・ケーガン(ネオコンに属する評論家)の本を私は訳しました。

 

 ヌーランド女史が怖いのは、民主、共和党のリベラル派(人道主義的介入派)、ネオコンそれぞれと良好な関係を持っており、2016年の米大統領選挙でどちらが勝とうがますますその重要性を増していく可能性が高い点です。

 

 それでは記事をお読みください。

 

==========

 

外交官らしくない外交官(The Undiplomatic Diplomat

 

アメリカ連邦議会内の対ロシア強硬派は、米国務省内の対ウクライナ政策の重要人物ヴィクトリア・ヌーランドを愛している。ヨーロッパ諸国の外交官たちの多くは彼女を嫌っている

 

ジョン・ハドソン(John Hudson)筆

2015年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/18/the-undiplomatic-diplomat/

 

6月のある暑い火曜日の午後、ジョン・マケイン連邦上院議員は、オバマ政権のウクライナ危機に対する対応について激しく苛立っていた。

 

 アリゾナ州選出のマケイン議員はホワイトハウスが犯したと考えられる間違いのリストを指さしながら、「余りにも恥ずかしく、情けない。怒りを何とか抑えている」と発言した。

 

 ある記者がマケインに「ウクライナ危機への対処を命じるべきアメリカの高級外交官について貴方はどう考えるか?」と質問した時、彼はバラク・オバマ大統領とイギリスのネヴィル・チェンバレン元首相を比較したばかりであった。

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ジョン・マケイン

 

 マケインは一瞬黙り、それから彼の態度は驚くほどに変わった。

 

 マケインは落ち着いた態度になり、「私は彼女の業績を高く評価している。彼女はとても頭が良い」と述べた。マケインは、アメリカのヨーロッパ担当外交官で最も高い地位にあるヴィクトリア・ヌーランドについて語ったのだ。

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ヴィクトリア・ヌーランド

 

 マケインはヌーランドを手放しで賞賛したが、彼以外にも連邦議員の中に彼女を評価する人々は数多くいる。その中には多くの民主党所属の議員たちも含まれる。しかし、世界で一カ所だけ彼女が賞賛されない場所がある。それはヨーロッパだ。ヌーランドの仕事はヨーロッパ諸国と協力で信頼に基づいた関係を築くことであるのだが、そうなっていないのが現状だ。

 

 『フォーリン・ポリシー』誌は、ヨーロッパ諸国の外交官たちに対して数多くのインタヴューを行ってきた。彼らはヌーランドについて、「軽率」「直接的」「強制してくる」「率直」「残忍」更には「外交官らしくない」という言葉を使った。しかし、純粋な外交政策の違いが彼女に対する不満の原因だとも強調した。ヌーランドは、ロシアが支援した反乱を鎮圧するためにウクライナに武器を送ることを支持したが、ホワイトハウスはこれを支持しなかった。

 

 あるヨーロッパの国の外交官は次のように述べた。「彼女は外交官の殆どが使う手法を使わない。彼女はよりイデオロギーを優先して物事に対処する」。

 

 現在、大西洋を挟んでアメリカとヨーロッパ諸国との間の関係は悪化しつつある。ヴィクトリア・ヌーランドはワシントンではスーパースターとして扱われている。一方、ヨーロッパではアメリカで彼女がスーパースターとして扱われるのと同じ理由で批判を受けている。これは大きな皮肉だ。

 

 ヌーランドは米国務省に外交官として入り、キャリアを重ねてきた専門の外交官である。そして、現在、ウクライナ危機に対処する重要なポジションにおり、更にはヨーロッパとユーラシアにある50のアメリカ大使館を統括している。東ウクライナで武力衝突が発生した結果6400名以上が死亡し、冷戦終結以来、米ロ関係が最も不透明になった時期、ロシアの侵攻に対する西側の一致した対応を形成し、それを維持するために、ヌーランドは数カ月の間、大西洋を何度も横断した。

 

 ワシントンにおけるヌーランドの人気の理由は、彼女がロシアを激しく非難し、ヨーロッパ諸国に対してより強硬な姿勢を取るように求める際に使う、攻撃的な激しい言葉遣いにある。

 

 2015年3月、ヌーランドはロシア政府がクリミアと東ウクライナで「恐怖支配」を実行していると糾弾した。その少し前、彼女はアメリカの政府高官では初めて公にロシアによるウクライナに対する攻撃を「侵略」と表現した。彼女は、「ロシアとロシアに操られた分離主義者の操り人形たち」が「言葉にできないほどの酷い暴力」を行使しているので、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に対してこれ以上の事態の悪化を招かないように行動するように要求した。連邦議会における証言で、ヌーランドはヨーロッパ諸国との交渉過程を「猫を集めている」ようだと表現した。昨年、駐ウクライナ米大使との電話でのやり取りの録音が暴露され、ヌーランドが「EUのくそったれ(fuck the EU)」と言ったことは広く報道された。

 

 クリス・マーフィー連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は「彼女は攻撃の手を緩めない。私はヴィクトリアのファンだね」と述べた。彼自身は進歩的な外交政策を標榜している人物である。

 

 ヌーランドの地位は「ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補」という控え目なものだが、ここ数年、ヌーランドはアメリカの外交政策分野において重要人物として大きな役割を果たしてきた。彼女は、共和党のネオコンサヴァティヴ、そして民主党リベラル派と共に仕事をしてきた。ジョージ・W・ブッシュ前大統領の政権では、ディック・チェイニー副大統領の筆頭国家安全保障問題担当次席補佐官を務めた。現在のポジションに就く前は、ヒラリー・クリントン国務長官の下、米国務省報道官を務めた。

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ヒラリー・クリントン


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ヌーランドとディック・チェイニー 

 

 2013年9月に行われたヌーランドの宣誓式においてジョン・ケリー国務長官は次のように発言した。「独特な、いやこれまでにないグループと言える、ディック・チェイニー=ヒラリー・クリントン学校卒業生同窓会の最も重要な卒業生として、彼女は民主党側、そして共和党側両方から信頼を得ている」。

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ヌーランドとジョン・ケリー 


 彼女はヒラリー・クリントンと共和党の有力政治家たちと深いつながりを持っているので、専門家たちの多くは、2016年の米大統領選挙で民主、共和どちらの政党が勝利しても、ヌーランドは更に重要なポジションにつくだろうと予想している。彼女は更に目を離せない重要な外交官になる、という訳だ。

 

* * *

 

 ヴィクトリア・ヌーランドは現在のヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補になって様々な難しい仕事に直面している。

 

 ヌーランドの外交のやり方についてヨーロッパ諸国は不満を持っている。これは明らかであり、どの国も同じ程度不満を感じている。一方で、彼女は大変に難しい課題をこなしている。

 

 ヌーランドは自分よりも地位の高いヨーロッパ諸国の首脳たちと頻繁に会談し、彼らにとって聞きたくないことを平気で口にする。

 

今回くらいの規模の危機の場合、非常に微妙で複雑な仕事が多くなり、それらはヌーランドの上司である、政治問題担当国務次官ウェンディ・シャーマンのところにあげられるのがこれまでの常識であった。しかし、シャーマン自身はイランの核開発を巡る交渉に参加する交渉ティームを率いるという重大な仕事に忙殺されていたために、ヌーランドには通常、次官補では持ちえない影響力が与えられることになった。

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ウェンディ・シャーマン

 

 ヌーランドには大きな自律性が与えられた。その結果、これは公平なことかどうか確かなことは言えないが、彼女はオバマ政権内部のタカ派の人々を動かす原動力になっているという印象を人々に与えることになった。

 

 ヨーロッパに詳しいある議会スタッフは次のように語っている。「ヨーロッパ諸国の政府の多く、そしてロシア政府はヌーランドを嫌っている。しかし、それが理由となって、アメリカ連邦議会の議員たちは彼女を賞賛しているのだ」。

 

 ヨーロッパでは、ウクライナ政府に武器を供与せよと訴えた人物の第一がヌーランドだと見なされている。この主張にはドイツ、ハンガリー、イタリア、ギリシアが反対した。これらの国々は、ウクライナに武器を供与することでロシアとの衝突が拡大することを恐れたのだ。

 

 ホワイトハウスもまたウクライナに武器供与を行うことに反対であった。それは、アメリカがどんな形でウクライナに援助を与えても、ロシアはウクライナ軍を圧倒する能力を持つ、「エスカレーション支配」と呼ばれる力を持っているからだ。

 

 オバマ政権内部でウクライナへの武器供与を支持したのはヌーランドだけではなかった。しかし、ヨーロッパにおいては、ヌーランドはこの政策の顔的な存在となっている。それは、2月に開かれたミュンヘン安全保障会議で起きたある重要な出来事が原因である。

 

 会議の冒頭、ヌーランドとフィリップ・ブリードラヴ米空軍対象はアメリカ代表団に非公式の、記録に残されないことを前提にしたブリーフィングを行った。代表団には、12名の米連邦議会上下両院の議員たちも参加していた。ヌーランドとブリードラヴは知らなかったのだが、ブリーフィングが行われた部屋には、ドイツの新聞『ビルト』紙の記者が入り込んでおり、内容を記事にした。この記事はドイツ国内では大きな反響を呼んだが、英語メディアはこの記事を取り上げなかった。

 

 記事によると、ヌーランドとブリードラヴは議員たちに対して、ウクライナに防衛のための武器を供与することを支持するように圧力をかけ、ドイツ首相アンゲラ・メルケルとフランス大統領フランシス・オランドがロシアに対して行っていた外交努力をバカにした、ということである。

 

 ブリードラヴは次のように発言したと伝えられている。「私たちはウクライナに対して、ロシアを打ち破れるほど多くの武器を与えることが出来る立場にはありませんし、私たちの目的もウクライナによるロシアの撃破ではありません。しかし、戦場においてプーティンの負担を増大させる必要があります」。

 

 この時の通訳によると、ヌーランドは次のように発言したと言われている。「私たちがプーティンの攻撃システムに対抗するためにウクライナに供与しようとしているものは、“防衛システム”と呼んでいただきたいものですわ」。

 

 あるオバマ政権幹部は、このブリーフィングの報道について疑義を呈したが、実際に部屋にいてブリーフィングを受けた議員の1人、マイク・ポンぺオ連邦下院議員(カンザス州選出、共和党)は、フォーリン・ポリシー誌とのインタヴューで、ビルと紙の記事の内容が正しいと認めた。ポンペオは次のように述べた。「ミュンヘン安全保障会議に出席したのだが、この時、オバマ政権の高官たちは、アメリカ代表団に向かって、ウクライナに対する防衛のための武器供与を明確に主張したのである」。

 

 アメリカ政府高官はフォーリン・ポリシー誌の取材に対して、ミュンヘン安全保障会議の目的は、対ロシア政策について「ヨーロッパを落ち着かせる」以上のものではなかったと述べている。この高官は、ブリーフィングを行った人々は「最終決定は何もなされていない」ことを明らかにしたのであり、「アメリカはウクライナに地上軍を送る可能性があるという、ヨーロッパ諸国で広がっていた噂を打ち消」そうとしたのだと語った。

 

 ニュアンスはどうあれ、ミュンヘン安全保障会議の後、ヨーロッパ諸国は、ヌーランドが彼らの持つ対ロシアにおいてエスカレートしていくのではないかと言う懸念を軽くあしらい、オバマ大統領の考えとは違うことを述べているという印象を強く持つことになった。

 

ドイツの雑誌「ディア・シュピーゲル」誌に掲載されたある記事には次のように書かれていた。「ヌーランドは強硬派で、武器供与を支持した。彼女の上司にあたるオバマ大統領とは違い、彼女自身は何をなすべきかについて明確な考えを持っている」。

 

 ホワイトハスはこの記事に関してコメントすることを拒否した。

 

 ヌーランドが早い段階からウクライナに武器を送るように主張したことについて質問したところ、国務省のジョン・カービー報道官はこれまでにない調子で彼女を擁護した。彼はフォーリン・ポリシー誌の質問に対して次のように答えた。「ケリー国務長官はヌーランド国務次官補に対して大きな敬意を払っている。またアメリカとヨーロッパ諸国との関係における重要な時期、特にウクライナに対する支援が必要になった時、彼女からの助言と彼女の考えを必要とした」。

 

(続く)









 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、最近起きたマレーシア航空機撃墜事件を軸に世界情勢、アメリカの外交政策について書いてみたいと思います。大風呂敷を広げてしまいましたが、まぁやってみたいなと思っています。

 

 2014年7月17日、ウクライナ東部でマレーシア航空機(マレーシア航空17便)が撃墜され、乗員乗客298名が死亡しました。この飛行機はオランダのアムステルダムからマレーシアのクアラルンプールに向かっている途中でした。犠牲となられた乗客乗員とご親族や関係者の皆さんに心から哀悼の意を表します。

 

↓この事件についての「ヤフー」のニュース一覧ページのアドレスは以下になります。

http://news.yahoo.co.jp/list/?t=russia

 

 飛行機が撃墜された場所がウクライナから独立を宣言した「ドネツク共和国」であったことから、犯人は新ロシア勢力か、ウクライナかで批判合戦が起きています。また、日にちが経つにつれて、様々な情報や分析が出されて、かえって状況が分かりにくくなっています。

 

 私はこれまで全ての報道を見た訳ではありませんが、どうもロシアと飛行機を撃墜されたマレーシアは自制的な態度を取り、ウクライナとアメリカ(の一部)が攻撃的な態度を取り、ヨーロッパ諸国はボーっとしてしまっていると見ています。ウクライナとアメリカの一部の勢力が、事件発生当初からロシアを名指しで激しく非難しているのに対し、ロシア、新ロシア勢力、マレーシアは事件の解明の推移を見守る、そして解明に協力するという態度を取っています。

 

 私は、ロシア、ウクライナ両方の専門家ではありませんが、これまでの両国の動きを見ていて、これは、「アメリカがこの事件を使ってロシアを攻撃しているのだ」と考えるようになりました。

 

 この構図は日本と中国との関係と同じです。日本をウクライナ、中国をロシアに置き換えてみれば、ついでに現在のウクライナの国家指導者たちは、決して高潔な人々ではありません。ネオナチであったり、マフィアと関係があったりする人々です。彼らはアメリカから利用されて、ロシアに噛み付くようにけしかけられているのです。これは、現在の日本の状況ともよく似ています。と言うか、全く同じであると言ってよいでしょう。

 

 考えてみれば、ロシアや新ロシア派が民間航空機を撃墜する理由はありません。そんなことをすれば自分たちが不利な立場に追い込まれてしまうことは明らかです。また、現在はアメリカが偵察衛星を飛ばして(搭載されているカメラの精度は地上の人間を判別できるほどだそうです)、地上を監視しているのですから、それに残っている映像を解析してみたらよいのです。そういう作業もなしにロシアを犯人にしよう(ロシア領内で起きた事件でもないのに)という動きが見られます。

 

 ロシア国内では、自国の関与を認め、謝罪を行う集会が開かれたり、新聞に謝罪記事が掲載されたりしているようです。だからと言って、ロシアが事件に関与したという証拠にはなりません。ロシア国内にも親米勢力がおり、彼らが側面的にこうした動きをしている可能性はあります。

 

 ロシアを犯人してウクライナを使って、ロシアを攻撃し、暴発させようという動きがアメリカ国内にもあるようです。私は、ネオコンと人道的介入主義派について、デビュー作『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所 2012年)で明らかにしました。ネオコンというのはジョージ・W・ブッシュ政権の外交政策を牛耳った人々のことで、ネオコンについては日本でも知られています。

 

 人道的介入主義派(humanitarian interventionists)と呼ばれる人々は、民主党系で、リベラルなんですが、理想主義が高じて、「世界中の悲惨な問題を解決するためにアメリカが積極的に介入すべきだ」と考えるようになった人たちのことです。ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton  1947年)前国務長官はその親玉みたいな人です。

 

 ここで、2014年7月18日にアメリカの公共放送PBSで放送された「ザ・チャーリー・ローズ・ショー」に出演したヒラリー・クリントン前国務長官のインタビューをご覧いただきたいと思います。チャーリー・ローズ・ショーは、ジャーナリストのチャーリー・ローズが幅広い人々(政治家から実業家、俳優、スポーツ選手まで)を迎えて、インタビューする番組で、アメリカで長く続いている番組です。

 

 ヒラリーは、このインタビューの中で、「ウクライナでのマレーシア機撃墜を起こした犯人について知りたい」としながらも、「その犯人はウクライナによると新ロシア派勢力であるようだ」と語っています。事件がまだ日にちも経っていない、状況も分からない、分析も進んでいない状況で、このような発言をするというのは不可解なことです。自分が大物であり、2016年の大統領選挙の有力候補であるという自覚があれば、中立的な発言を行うはずです。しかし、私はかなり踏み込んだ発言のように感じました。

 


 

 人道的介入主義派とネオコンは党派こそ民主党と共和党で分かれていて、国内政策ではリベラルと保守で争っていますが、対外政策で言えば、アメリカ至上主義であり、アメリカが積極的に世界各国に介入すべきだという点で一致しています。「アメリカが帝国として世界を支配する」という本音のために、建前として、「世界平和と発展のためにアメリカが積極的に介入する」と考えているのです。ヒラリーの顧問をしていた人物にロバート・ケーガンという人物がいますが、彼はネオコンの理論家です。奥様は国務省報道官をしているヴィクトリア・ヌーランドです。このように、ネオコンと人道的介入主義派は人脈的につながりを持っているのです。

 こうした人々から見れば、
BRICSと呼ばれる国々(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は少しずつ邪魔になりつつあります。特に中国とロシアは邪魔で、この両国を抑え込めれば、BRICSは怖い存在ではなくなります。

 

ロシアと中国を押さえる為にアメリカ自身が動ければよいのですが、アメリカもお金が無いので、それぞれウクライナと日本を使っている訳です。

 

今回の事件は綱引きの上で、「新ロシア勢力が間違って撃墜してしまった」ということで決着するのでしょう。実行した人たちが処罰され、ロシアは武器を渡したことを認めて謝罪で幕引きということになるでしょう。

 

私は日中関係について考えてしまいます。日中の間には尖閣諸島の領有権を巡る問題が存在します。いや、最近になって急速に問題化されてきました。その一因となったのが、石原慎太郎元東京都知事による尖閣諸島購入提案でした。この尖閣諸島問題をめぐり何か事件が起きた場合に、今回のマレーシア機撃墜事件のようなことになるのではないかと考えています。

 アメリカの対外介入主義を標榜する凶暴な人々がアメリカの外交政策が牛耳る限り、アメリカの衰退は止まらないし、世界各国からの支持は減少していきます。そして何より、世界を壊していくのだと私は考えています。このいびつな国際関係と終わらない紛争はここに原因があると私は考えています。 

 
 そして、もっと怖いのは、人道的介入主義派のヒラリー・クリントンが2016年の米大統領選挙の最有力候補であり、大統領になってしまうかもしれないということです。そうなってしまえば、世界はもっと破壊の方向に進むことになるでしょう。
 

(終わり)







 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回は、ウクライナ情勢についての論文を一つご紹介いたします。「民主化」勢力の中身についての情報も含まれています。

 

 こういう情報も必要だと思います。

 

=========

 

「確かに、ウクライナ政府には悪い奴らがいる(Yes, There Are Bad Guys in the Ukrainian Government)」

 

キエフにいる評判が芳しくない人々について正直に話す時だ

 

アンドリュー・フォクソール、オレン・ケスラー筆

2014年3月18日

フォーリン・ポリシー誌

http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/03/18/yes_there_are_bad_guys_in_the_ukrainian_government

 

 ウラジミール・プーチンは、「ロシアは、ウクライナ南部の国境地帯に住むロシア民族を守るためにクリミアに侵攻した」と主張している。ロシア大統領プーチンが主張しているように、ウクライナは、「ネオナチ、ナチス、反ユダヤ主義者たち」の支配下にある。そして、ウクライナに住むロシア人たちは脅威に晒されている。プーチンの言辞を非難することはたやすい。「プーチンは嘘を突き通しで、同性愛者と小児性愛者を混同し、コサックがパンクロッカーたちに昼日中、公衆の面前で催涙ガスを浴びせ、鞭で打つような国家の元首である」。しかし、西洋諸国の政府と学識経験者たちは、プーチンのウクライナ侵攻のポーズを非難したのは正確であったが、ウクライナ国内のプーチンの敵たちは正しいと推定したのは間違いだ。不都合な真実、それは、キエフの現政府を構成する人々の多くと彼らを権力の座に就けた講義に参加した人々の多くがファシストであるということだ。モスクワとキエフの両方にいる好ましくない人々の影響からウクライナを脱出させたいと西洋諸国の政府が望みなら、2方面の外交的攻勢をかける必要がある。一つはプーチンのプロパガンダに対する攻勢、もう一つはウクライナで勢力を復活させている極右勢力に対する攻勢だ。

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ウラジミール・プーチン
 

ウクライナは、全ウクライナ連合「自由」(スヴォボーダ)の本拠である。スヴォボーダは、現在のヨーロッパで最も影響力を持つ極右運動組織である。党の指導者であるオレーフ・チャフニボークは、「ウクライナは、“モスクワ=ユダヤ・マフィア”によってコントロールされている」と発言したことがある。また、チャフにボークの側近はウクライナ生まれの映画スターであるミラ・キュニスを「薄汚れたユダヤ女」と呼んだ。スヴォボーダの観点からすると、同性愛者は変質者であり、黒人がユーロヴィジョンコンサートでウクライナを代表することはおかしいということになる。スヴォボーダは「ウクライナがウガンダのような国だと視聴者に思われたくない」ので黒人は不適格だと主張した。

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オレーフ・チャフニボーク

 

 スヴォボーダは1990年代に社会国家主義政党として誕生した。これはナチスとして知られる国家社会主義政党の影響を表しているものだ。スヴォボーダのロゴマークは、ファシストが良く使う狼狩り用の道具だった。2004年、党は誰にも反対されない新しい名前「スヴォボーダ(自由)」に改名し、ナチス的なイメージを封印した。それから10年、スヴォボーダはウクライナ政治において躍進してきた。

 

 今日、スヴォボーダは国家機関に多くの人員を送り込んでいる。その中には軍隊も含まれている。その割合は全体の25%であり、ヨーロッパの他国の極右政党に比べてその割は断然大きいものとなっている。ウクライナの副首相、検事総長、議会の副議長はスヴォボーダから送り込まれている。スヴォボーダよりも小さくて、より過激な「右派セクター(Right Sector)」は、国家安全保障会議の副議長にメンバーを送り込んでいる。スヴォボーダは議会では第四党の地位を占めている。そして、スヴォボーダの新鮮な表面は、古い姿とあまり変わらなかった。スヴォボーダ公認で国会に初当選した人の一人は、「ヨーゼフ・ゲッベルス政治研究センター」の創設者であり、ホロコーストを「人類史における最も輝かしい時期」と呼んだ。

 

 2013年11月に最初にウクライナ危機が発生した時、西洋諸国の政府関係者たちは、ウクライナについて何も知らない状況にあった。冷戦終結によって、ソ連を構成していた国々に対する関心が急激に薄れてしまった。ロシア学者で元駐ロシア米大使を務めたマイケル・マクフォールは、ティーム・アメリカには「選手が不足している」と述べている。

 

ウクライナ危機によって、アメリカ側の情報の欠如が露わになった。2013年12月、新ロシア派のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ大統領に対する抗議運動が始まった。その直後、アメリカの上院議員ジョン・マケインは、スヴォボーダの綱領に賛意を示し、オレーフ・チャフニボークを支持し、キエフに集まった人々に対して次のようなメッセージを送った。「自由世界は貴方たちと共にある。アメリカは貴方たちともにある」2014年2月、フランスとドイツは、オレーフ・チャフニボーク、その他2人の野党指導者、そしてヤヌコヴィッチとの間で和平協定を結ぶことを監督していた。その直後、ヤヌコヴィッチは抗議運動の圧力のために、ロシアに亡命した。そして、2014年3月初め、アメリカ国務省は、プーチンはウクライナについての誤った主張を行っており、ウクライナ議会には極勢力は存在しないとアメリカ人に向けて発表した。

 

 西洋諸国のマスコミ関係者も同じようなものであった。ロシア政府が資金を提供しているテレビ局であるRTアメリカのキャスターであったリズ・ウォールは、3月5日の生放送中にキャスターを自任すると発表した。彼女は勇敢さを賞賛された。CNNのアンダーソン・クーパーとのインタビューで、ウォールは、自分自身の決断について、「RTアメリカでは、ウクライナの反対勢力にネオナチがいるということを繰り返し放送せねばならず、嫌気がさしていた。そして、私は、このことは非常に危険だと考えた」

 

 それ以降、2014年3月16日にクリミアのロシア併合に関する住民投票が行われるまで、スヴォボーダは忙しさを極めた。スヴォボーダの主要な要求の一つは、全ての政府の業務をウクライナ語のみで行うことを法制化するというものであった。これが実施されると、ロシア語を話すウクライナの人口の3分の1、クリミア地方の人口の60%が排除されてしまうことになる。更には、スヴォボーダは「ファシズムを実施する」行為に刑罰を加えるという法律を廃棄するように求める動きにも出ている。

 

 ウクライナでナチスによる突然の反乱が起きるのだろうか?肯定的なニュースとしては、世論調査の結果が出て、オレーフ・チャフニボークの支持率は5%しかなく、ビタリ・クリチコ(体の大きい、親西洋の元ボクシングチャンピン)と中道右派の元首相ユリア・ティモシェンコにかなり後れを取っている。フランス、ドイツが進めようとした和平協定は、スヴォボーダに対してその力以上の政府の役職を与える結果となってしまったのだ。

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ビタリ・クリチコ

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ユリア・ティモシェンコ

 

 西洋諸国の政府は、少なくとも、スヴォボーダの台頭の共犯となった。短期的に見れば、ウクライナの指導者たちはどのような人たちかについてきちんと調べ、民族的優越ではなく人権の擁護を掲げている人たちだけを支援するようにすべきだ。中長期的に見れば、政府、大学、そしてシンクタンクはロシアとその周辺地域に関する研究に予算を再投入するようにすべきだ。

 

ウラジミール・プーチンのクリミア侵攻は強く非難されねばならない。その正当化の言辞は、4年前のグルジアのアブハジアと南オセチア地方の事実上の併合の時と同じだ。しかし、健全な政策とは、関与しているプレイヤーたちについての健全な分析によってこそ成立する。ロシア政府によって指摘され、西洋諸国も渋々でも認めねばならないポイントは、ヤヌコヴィッチを政権の座から追い出した抗議者たちとキエフの新しい指導者たちの多くがファシストであるということだ。

 

(終わり)



 


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