古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ウクライナ

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑について、今回はバイデン家とウクライナとの関係についての記事をご紹介する。今回のウクライナ疑惑のうち、トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省を通さずにウクライナ政府、検察当局と会談を持ち、バイデン家(ジョー・バイデン前副大統領と次男のハンター・バイデン)についての疑惑を調査しようとしたというものがある。

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次男ハンター(左)とジョー・バイデン

 ジョー・バイデン(Joe Biden、1942年―、76歳)はオバマ政権(2009年1月―2017年1月)の副大統領時代に、ウクライナ国内の汚職根絶のために様々な働きかけを行っていた。ウクライナ国内のことにアメリカの副大統領が働きかけを行うということは内政干渉であるが、今回は置いておく。「バイデンは副大統領時代にウクライナ国内の汚職根絶のために働きかけを行った」という事実がある。
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ウクライナ訪問中のバイデン
 ジョー・バイデンの次男ハンター・バイデン(Hunter Biden、1970年―、49歳)は投資会社の共同経営者やワシントンでロビイストをしていた。父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、具体的には2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス社の取締役に就任し、2018年に退任した。ここでの事実は「アメリカ副大統領の次男ハンター・バイデンが2014年から2019年までウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の取締役を務めた」ということだ。

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マイコラ・ズロチェフスキー

 ブリスマ社の創設者でありオーナーのマイコラ・ズロチェフスキー(Mykola Vladislavovich Zlochevsky、1966年―、53歳)は、ウクライナ政府でエネルギー担当の大臣(環境保護・天然資源担当大臣と称する)を2度務めた実力者だ。この大臣時代を含め、権力濫用や荒っぽい手段でブリスマ社を巨大企業に育て上げたために、すろちぇふスキーには常に捜査の手が伸びていた。2014年のウクライナの政変で、新露派のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych、1950年ー、69歳)大統領が失脚し、側近たちとロシアに逃亡した。ヤヌコヴィッチ政権で環境保護・天然資源担当大臣を務めていたズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近ではなく、行動を共にしなかった。政変直後は、前政権に関わった高官たちへの激しい追及が起き、ズロチェフスキーも捜査対象となった。また、イギリス国内で資金洗浄の疑いが持ち上がり、ブリスマ社の口座が凍結処分となった(後に解除)。
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ヤヌコヴィッチ(左)とプーティン
 こうした中、捜査を回避し、欧米からの印象を良くするために、ズロチェフスキーとブリスマ社は、欧米の著名人や受けの良い人々を取締役に招聘し、「欧米基準の素晴らしい会社ですよ」というアピールをする作戦を取った。また、「ウクライナでの天然ガス増産に寄与するブリスマ社は、ウクライナのロシアからの経済的独立に大きく寄与する」というキャンペーンも行った。そうした中で、アメリカ副大統領ジョー・バイデン(当時)の次男ハンター・バイデンの名前は光り輝いていた。ブリスマ社はハンターの投資会社の共同経営者をまず取締役に迎え、それからバイデンを招聘した。また、元ポーランド大統領も取締役に迎え、対ロシア独立派を印象付けた。この元ポーランド大統領はハンターの招聘に一役買った。ハンターは2014年から2019年の間に、年に2回の取締役会に出席し、月に5万ドルの報酬を受け取った。

2014年の政変後に大統領になったペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko、1965年―、54歳)も親露派で、ウクライナ国内の改革は進まなかった。また、汚職に関する捜査も停止状態になった。せっかく政変で親露派政権を打倒したのにまた同じような政権が出来て、国内改革が進まない状況となったことに、欧米諸国は多額の援助を行う約束していたこともあり、不満を募らせた。
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ペトロ・ポロシェンコ

 アメリカのバラク・オバマ政権は副大統領であるジョー・バイデンをウクライナに派遣し、その不満を伝達させることにした。バイデンはウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領に対して国内改革、特にヴィクトール・ショーキン検事総長の更迭を求め、それが実現しない場合には支援を停止すると圧力をかけた。その後、ショーキンは解任された。

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ショーキン

 これでウクライナ国内の汚職事件に関する捜査が進むと見られていたが、ズロチェフスキーとブリスマ社に対する捜査はあまり進展しなかった。ウクライナ国内の改革派は、「ズロチェフスキーとブリスマ社には欧米諸国との強いコネがある、アメリカ副大統領の次男が取締役を務めているくらいだから」という「忖度」がウクライナ検察当局に働いている可能性があると指摘している。

また、「ショーキンの解任は、ショーキンがズロチェフスキーとブリスマ社の捜査を進める中で、ハンターにも追及の手が伸びることを恐れたジョー・バイデンが副大統領の地位を使ってウクライナ政府に圧力を使ってショーキンを解任させた」という話も出ている。当のショーキンがそのように話しているが、この話は馬鹿げているとウクライナ国内の改革派は切って捨てている。

 ハンター・バイデンのブリスマ社の取締役就任については、周囲の人物で懸念を持っていた人物も多く、ウクライナ国内の政局に巻き込まれる、名前を利用される、といったことを心配して止めるように忠告する人もいた。ここからは推測だが、年に2度の取締役会出席で月5万ドルの報酬は、ハンター・バイデンにとって魅力的だったのだろう。彼はそれまでにも薬物乱用問題や借金問題を抱えていた。逆に言えば、ハンターの苦境をブリスマ社は分かった上で利用したのだろう。

 ジョー・バイデンが副大統領としてウクライナ国内の改革を求める立場にあり、一方、次男ハンター・バイデンは、改革の影響を受けないようにしたいズロチェフスキーとブリスマ社に取締役として利利用されることに関しては、利益相反になるという主張は当時からあった。この点は、父ジョーと次男ハンターはウクライナについて具体的に話をしていない、と両者ともに述べている。トランプ政権側としてはここを弱点として突くということになる。

 ウクライナは親露派政権と親欧米派政権が政変で入れ替わる形で政情は不安定だ。また、政治家たちが大企業家としての顔を持ち、権力を濫用して自分がオーナーの会社に利益をもたらすということをやっている。欧米の基準から見れば大変に送れている。ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役就任の理由を「会社のそれまでのやり方を変革するため」と語っている。しかし、年に2度の取締役会出席だけで変革することなどできない。それで毎月5万ドルの報酬を受け取っていたということは、彼自身が「お飾り」であることを認識し、それを受け入れていたということだ。

 父親は改革を進めようとし、次男はその改革の影響を避けようとする勢力に利用された、ということになる。「アメリカ副大統領」「バイデン」という言葉の輝きと効力の前に、ウクライナ政府はひれ伏すと、ズロチェフスキーは考えたし、実際にそのような側面もあった。そうなると、これはまさに日本でもあった「忖度」ということである。

 大国の狭間で生きる小国というのは、常に神経を尖らせ、大国の意向を「先回りして理解し、それに沿う形でご機嫌を取る」ということをやり尽くしてきている。それが国内でも国外でも行動原理になっている。日本も全く同じだ。

(貼り付けはじめ) 

天然ガス産業の巨頭と副大統領の息子:ハンター・バイデンのウクライナへの(The gas tycoon and the vice president’s son: The story of Hunter Biden’s foray into Ukraine

ポール・ソンネ、マイケル・クラニシュ、マット・ヴァイサー筆

2019年9月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/the-gas-tycoon-and-the-vice-presidents-son-the-story-of-hunter-bidens-foray-in-ukraine/2019/09/28/1aadff70-dfd9-11e9-8fd3-d943b4ed57e0_story.html

5年前、当時のジョー・バイデン副大統領の息子がウクライナの無名の天然ガス会社の取締役に就任した。バイデン副大統領の息子が取締役になることは、この天然ガス会社のオーナーである元ウクライナの大臣にとっては大成功と言えるものだった。この当時、オーナーはマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いが捜査を受けており、会社のイメージを一新しようと苦労していた。

ハンター・バイデンにとって、取締役就任という決断にはリスクが伴った。ウクライナはその当時政治的な動乱が頻発し、莫大な利益をもたらす天然ガス産業から元政府高官たちが大きな利益を得ていることに対して調査が行われていた。バイデンの父親はオバマ政権によるウクライナ政府による汚職の処罰を求める努力の中心人物であった。

ウクライナがある地域はこの当時不安定を極めていた。そのため、ハンター・バイデンが経営する投資会社のパートナーはハンターが「ブリスマ・ホールディングス」社の取締役に就任することは間違っていると考え、バイデンともう一人のパートナーとのビジネス関係を解消した、とこの人物の報道担当は本紙の取材に答えた。この人物はジョン・ケリー元国務長官の義理の息子である。

それから5年が過ぎ、父ジョー・バイデンは大統領選挙に出馬している。ハンター・バイデンのウクライナの会社の取締役に就任するという決断は、重大なトランプ大統領に対する内部告発者の告発の背景となっている。この内部告発は2020年の米大統領選挙をめぐる状況を変えつつある。

トランプ大統領が個人弁護士であるルディ・W・ジュリアーニ元ニューヨーク市長と一緒になってウクライナ政府に圧力をかけて「ブリスマ」社を捜査させようとし、バイデン家の役割について調査させようとしたということが暴露された。これに対して、連邦下院では弾劾に向けた調査が開始されることになった。嫌疑はトランプ大統領がウクライナ向けの援助を停止して、来年の大統領選挙での強力なライヴァルとなるであろうバイデンについてウクライナ政府に捜査をさせようとした、というものだ。

バイデン家によって刑法上の罪を犯したことを示す証拠は出ていない。ジュリアーニが主に疑っている嫌疑は、ジョー・バイデンが副大統領として、元大臣でブリスマ社のオーナーであるマイコラ・ズロチェフスキーに対する捜査を止めせせるためにウクライナの検事総長を更迭させるために圧力をかけたというものだ。この嫌疑については証拠がでていない。この嫌疑については元アメリカ政府高官たちとウクライナの反汚職グループによっても提起されている。

ハンター・バイデンの取締役就任という決断によって、バイデン陣営は不愉快な質問に対して説明を迫られるということが起きている。ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナ国内の汚職の根絶のために努力した。一方、息子ハンター・バイデンは政府高官としての地位を濫用したとして捜査を受けていた天然ガス産業の巨頭の会社の取締役となった。ジョー・バイデンは利益相反と見られることを避けるために何らかの行動を取らなかったのはどうしてか?

イギリス人ジャーナリストでウクライナの反汚職非営利団体「反汚職行動センター」の理事を務めるオリバー・ブローは次のように語っている。「ジョー・バイデンはどうしてハンターに向かって“取締役から退きなさい、自分が何をやっているか分かっているのか?”と言わなかったのだろう?」

ウクライナ国民の中には、ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役になったことで、父バイデンのウクライナにおける汚職の根絶の訴えが台無しになったと見ている人たちがいる。

また、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーがアメリカの最高レヴェルとのつながりを持っていることを恐れて犯罪行為に対する捜査を避けたのではないかという疑惑もある。アメリカはこの当時のウクライナの政権と政府にとって最重要の支援者であった。

バイデン前副大統領の補佐官とスタッフだった人物たちは匿名を条件に証言したが、副大統領執務室の中で、ハンターが取締役であることが利益に相反にあたるかどうか議論が私的な会話という形ではあったが起きたと述べた。

ある元補佐官は利益相反である可能性が高いと副大統領に述べた、と語っている。しかし、この会話自体が短いもので、他の補佐官やスタッフたちはこれを問題視したくない、もしくはする必要はないと語っていたと述懐している。

バイデンと一緒に働いたアメリカ政府高官だった人物たちは口をそろえて、息子ハンターの行動がバイデンの副大統領としてのウクライナに対する行動に影響を与えたことは無かったと語っている。

元補佐官は次のように述べている。「何か明確な問題になっているだろうか?確かに問題にはなっている。しかし、実際に何か悪いことが起きただろうか?その答えはノーだ」。

この当時、ホワイトハウスは、ハンター・バイデンは民間人であり、副大統領はウクライナのどの会社にも支持を与えない、と発表していた。副大統領在任中、ジョー・バイデンはブリスマ社での息子の役割についてコメントしなかった。

ブリスマ社でのハンター・バイデンの責務については完全に分かっていない。ハンター・バイデンの顧問弁護士ジョージ・R・メシレスは、ブリスマ社がハンターに報酬をいくら支払っていたのか、ハンターが取締役になった時に会社のオーナーがウクライナ政界の実力者であり、疑惑の中心にいたことを知っていたのかという質問に対して回答を拒否した。

メシレスは声明の中で次のように述べている。「ハンター・バイデンのウクライナにおける行動についての疑問は、トランプ大統領とジュリアーニの犯罪行為から関心をそらすためのものだ。ハンターの行動について精査した人々全てが既に回答を得て満足している疑問を蒸し返している」。

メシレスは続けて次のように述べている。「簡潔に述べれば、ハンターによる犯罪行為はこれまでもなかったし、これから発見される可能性もない」。

バイデン選対は、「ジョー・バイデンはどうして、息子ハンターに対して、利益相反と見られるので、ブリスマ社の取締役から退くように言わなかったのはどうしてか?」という質問に回答することを拒絶している。

バイデン選対の報道担当アンドリュー・ベイツは声明の中で次のように語っている。「ジョー・バイデンはウクライナ国内の革命のために誇り高く戦った。アメリカ、EU、IMF、ウクライナの反汚職グループ全てが支持したゴールを彼は達成した。その結果、ウクライナ政府が素晴らしいものとなった」。

ベイツは続けて次のように語っている。「オバマ・バイデン政権はアメリカ史上、最も強力な倫理政策を作り、実行した政権である。ドナルド・トランプがウクライナ問題を選挙戦に入れ込もうとし、酷い言葉での中傷を行っているが、彼の発言と行動は全く信用されない」。

●変転し続ける政治潮流(Changing political tide

ハンター・バイデンがウクライナに関わるようになった当時、元ソ連を構成したウクライナの政治状況は混乱していた。2014年初め、キエフの独立広場で暴動が起きた。これはマイダンとして知られている。暴動によって、政変が起き、最終的に親露派の大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ率いる政権は崩壊し、ヨーロッパとアメリカとの緊密な関係を志向するウクライナの政治家たちが権力を握った。

追い落とされたヤヌコヴィッチと「ファミリー」と呼ばれた側近グループは、キエフの新政権によって訴追されることを恐れてロシアに逃亡した。新政権は諸外国に対してヤヌコヴィッチの同盟者たちの財産を凍結するように通知を出した。ヤヌコヴィッチ政権の徴税担当の大臣と検事総長は熱狂の中の追及に恐れをなし、ロシアに逃亡する際に空港の金属探知機を押し倒して飛行機に殺到するほどであった。

この政変によってズロチェフスキーは問題に直面することになった。ズロチェフスキーは、親露派の政治家に長年属していたが、彼はヤヌコヴィッチの同盟者ではなかったが、同時にキエフで権力を掌握したばかりの親欧米の政治家という訳でもなかった。

ズロチェフスキーは2度にわたり、ウクライナ政府のエネルギー部門のトップを務めた。一度目はレオニード・クシュマ大統領時代、そして、二度目はヤヌコヴィッチ時代で環境保護担当大臣を務めた。ブリスマ社の子会社エスコ・2度の大臣を務めた時期、後にブリスマ社の一部門となる複数の石油会社と天然ガス会社に対して事業にとって重要な許可や免許が多く出されていた。ウクライナ政府の許認可担当部局の記録によると、ブリスマ社の子会社であるエスコ・ピヴニッチ社とパリ社には多くの許認可が出された。

その後、ズロチェフスキーはウクライナ最大の天然ガス生産会社のオーナーになり、ウクライナ屈指の大富豪となった。

ブリスマ社は、同社が獲得した許可は全て合法的に発せられたものだと主張している。ブリスマ社は2015年に『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対して、「ズロチェフスキーは公僕として法律の文字と精神に従っている。彼はいつでも公正さと政策決定において最高度の道徳と倫理の基準を守ってきた」と答えた。

2014年、ズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近グループから脱落し、大臣から副大臣に降格された。

2014年3月、ヤヌコヴィッチがロシアに逃亡してから数週間後、キエフでは前政権の政府高官たちの汚職への追及が過熱していた。イギリスの裁判所の記録によると、この時期イギリスでは、イギリス当局がズロチェフスキーに対する資金洗浄疑惑で捜査を開始し、ブリスマ社のイギリス国内の銀行口座が凍結された。口座には数百万ドルが入っていた。イギリス当局による捜査は、BNPパリバ銀行から疑わしい行動の報告を受けてのことだった。

裁判所の記録によると、口座に入っていた資金のうち、2000万ドルがセルゲイ・クルチェンコに提供された。クルチェンコはヤヌコヴィッチに近い同盟者でウクライナ財界の大物であった。この取引の数週間前にヨーロッパ連合によって取引禁止処分を受けていた。ズロチェフスキーの代理人は、この資金は合法的な売買の代金として送金されたものだと主張した。

ズロチェフスキーにとって、資産凍結はそれから司法上のトラブルが続く年月の始まりを告げる出来事となった。これが後々にはウクライナの検事総長と反汚職部局による刑法上の犯罪捜査にまで拡大していった。イギリスでは、結局ズロチェフスキーの犯罪行為で訴追されることはなく、資産凍結は最終的に解除となった。

ズロチェフスキーとブリスマ社は本紙からの繰り返しのコメント依頼を拒絶した。

2017年、ブリスマ社は、同社とズロチェフスキーに対する全ての訴訟手続きは取り下げられたと発表した。2017年2月、同社のアメリカ人弁護士ジョン・ブレッタは、ズロチェフスキーは全ての捜査に真摯に協力し、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーが自身の立場を濫用したことを示す「証拠はなかった」と発表したと述べた。

しかしながら、ウクライナ政府国家反汚職局は金曜日、ズロチェフスキーが環境保護担当大臣時代にブリスマ社に出された免許に関し捜査を行っていると発表した。ズロチェフスキーが大臣だった期間、ハンター・バイデンはブリスマ社と関係を持っていなかった。

●欧米の人物や組織を使った改造(A Western makeover

イギリス当局が資金洗浄についての捜査を開始してから2か月もしないうちに、ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役になった。この当時ハンターが、イギリス当局がイギリスで捜査を進めていたことを知っていたかどうかは明確になっていない。当時、ズロチェフスキーがブリスマ社を所有していることはあまり知られていなかった。

2014年の政変が起きる前、アメリカ副大統領の息子を取締役に迎え入れることは、ブリスマ社にとって信頼性を高めるための努力であった。ブリスマ社はアメリカとヨーロッパで投資銀行家をしているアラン・アプターを取締役会長に迎え入れた。また、元ポーランド大統領が取締役に就任した。ブリスマ社は経営陣を刷新し、国際的に業務を行っている会計事務所を起用し、財政状態を監査させることにした。

キエフでの政変によって政権が変わって数週間も立たないうちに、著名なアメリカ人とヨーロッパ人を会社の取締役会に迎え入れることは、ウクライナ国内に対して「ズロチェフスキーには欧米の有力者との強力なコネがある」というメッセージを送ることになった、とイギリス人ジャーナリストのブローは述べている。ブローはタックスヘイヴンとペーパーカンパニーについて『マネーランド』という本を出版し、その中でズロチェフスキーについて書いている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは次のように述べている。「有名な家族に連なる人々を取締役会に迎えることで、ブリスマ社は西洋の、正当な企業のように見せることが出来るようになった。ブリスマ社はウクライナ国内での天然ガス採掘の許認可を大変に疑いの多い手段で得た」。カレニクは更にこのような「表面上の飾りつけ」は、疑いの多い方法で集めた原資を合法なものに見せようとする実力者たちや政府高官たちにとって、一般的な手段となっている。

現在でも取締役会長を務めているアプターにコメントを求めたが回答がなかった。ブリスマ社は、許認可は合法的に取得したものだと主張している。

ブリスマ社はまた同社の天然ガス生産はエネルギー面でのウクライナのロシア依存の度合いを低下させるものだと強調し始めた。この主張はワシントンにアピールした。ブリスマ社はワシントンにあるシンクタンクであるアトランティック・カウンシルに寄付をし始めた。

ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役に就任する1か月前、父ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナを訪問し、ウクライナがエネルギー生産を増加させるための支援パッケージの提供を発表した。

バイデンは次のように述べた。「もし今日ここでロシアに対して“あなた方の天然ガスなどいらない”と言えたらどうだろうと想像して見て欲しい。現在とは全く違う世界になるだろう」。

ブリスマ社を立て直した時、ズロチェフスキーはウクライナ当局の捜査を受けている途中だった。2015年、検察当局は2つの嫌疑で元環境保護担当大臣について捜査した。この当時に『ウォールストリート・ジャーナル』紙が閲覧した検事総長事務局の発表した書類によると、1つは違法な手段での蓄財、もう1つは権力濫用、文書偽造、横領についてであった。ズロチェフスキーはこれらの嫌疑について犯罪行為を行ったことを否定した。

●父親たちと息子たち(Fathers and sons

ジョー・バイデンと長年一緒に働いた人々は異口同音に、ハンター・バイデンのビジネスについては長年にわたり、ジョー・バイデンと議論することは難しかったと述べている。ジョー・バイデンが連邦上院を務めていた当時、ハンターはワシントンのKストリートでロビイストを務めていたこともあった。

バイデンの家族は数々の悲劇に見舞われた。ハンター・バイデンは1972年に自動車事故に遭い、彼は生き残ったが母親と妹は亡くなってしまった。長兄のボウはこの時の自動車事故では生き残ったが、2015年に脳腫瘍のために亡くなった。2017年に離婚の際の書類によれば、ここ数年、ハンター・バイデンはアルコール中毒と借金に苦しんだということだ。

2014年のウクライナでの政変が起きた時期、イェール法科大学院の卒業生であるハンターは、「ワールド・フード・プログラム・USA」は無給の会長、投資会社「ローズモント・セネカ」社のパートナー(共同経営者)、ニューヨークの法律事務所「ボイス・シラー・フレクスナー」の顧問を務めいていた。

ハンターの投資会社のパートナーだったデヴォン・アーチャーはブリスマ社の取締役に就任した。それからすぐにハンター・バイデンにもブリスマ社から取締役就任以来の書簡が届いた。

別のパートナーたちは取締役就任に対して深刻な懸念を持っていた。

ジョン・ケリー元国務長官の義理の息子クリス・ハインツはアーチャーに対して、ブリスマ社の取締役に就任することは良くないと伝えた、とハインツの報道担当は語っている。ハインツはウクライナ国内の汚職事件多発の記事、地政学上のリスク、情勢についての疑問について懸念を持っていた。

ハインツの報道担当クリス・バスタルディは本紙の取材に対して次のように述べた。「ハインツ氏はアーチャー氏に対してブリスマ社と仕事をすることは受け入れられないと強く警告を発した。アーチャー氏は、自分とハンター・バイデンは、会社のパートナーとしてではなく個人として機会を掴みたいのだと述べた」。

投資会社は結局分裂した。

バスタルディは「この問題についての判断力の欠如は、ハインツ氏がアーチャー氏とバイデン氏とのビジネス関係を解消するための主要な理由となった」と述べた。バスタルディは更にハインツとハインツの投資会社はブリスマ社と関係していないと付け加えた。

アーチャーにコメントを求めるための連絡はできなかった。アーチャーの弁護士はコメント依頼に回答しなかった。

ハンター・バイデンの弁護士メシレスは、ハンター・バイデンがハインツの警告について知っていたかという質問に回答しなかった。

ハンター・バイデンは今年初めに本紙の取材に対して、ブリスマ社の取締役に就任したのは既にブリスマ社の取締役を務めていたアレクサンデル・クファシニェフスキ元ポーランド大統領の積極的な働きかけがあったからだと答えた。ハンター・バイデンは声明の中で、ウクライナのエネルギー面での独立はロシア大統領ウラジミール・プーティンからの狡猾な援助の申し出を断るために重要だという考えをクファシニェフスキと共有していたと述べている。

アレクサンデル・クファシニェフスキはインタヴューの中で、「ハンター・バイデンは国際政治に関する知識を取締役会にもたらした、取締役会は年に2度開催されていた」と述べている。クファシニェフスキはハンターに「この会社はウクライナの独立にとって大変重要な存在であると思う」と語ったと述べている。

投資銀行家で現在もブリスマ社の取締役会長を務めているアプターは、当時のアメリカ副大統領の息子を取締役に選任したことについて、「彼の父親ではなく、完全に実力に基づいて」行われたと述べている。

バイデン選対は、ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社の取締役就任を知ったのはマスコミの報道からであったと主張している。

今年初め、ハンター・バイデンは本紙に対して声明を出した。その中で次のように述べている。「私は父と会社のビジネスや取締役としての仕事について話したことはない」。ジョー・バイデンは最近、アイオワでの演説の中で同様のことを述べた。ジョー・バイデンは「私は息子の海外でのビジネス取引について話したことはない」と述べた。

ハンター・バイデンは『ニューヨーカー』誌の取材に対して、父ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社での仕事について一度だけ言及したことがあることを示唆した。

ハンターは「父は、“お前が自分自身何をやっているか分かっていると思っているよ”と言ったので、“分かっているさ”と答えました」と述べている。

ハンターが取締役に就任した時、ブリスマ社幹部たちは、ハンターが法律問題を監督することになるだろうと述べた。しかし、ハンターの役割は法律関係にはとどまらなかった。本紙に対する声明の中で、ハンター・バイデンは「ブリスマ社の取締役に就任したのは、同社の透明性、コーポレイト・ガヴァナンス、責任に関するこれまでのやり方を改革することを助けるため」だったと述べている。同時に声明の中でハンター・バイデンは彼の仕事の具体的な中身については説明しなかった。 

「トランスペレンシー・インターナショナル」はウクライナを世界で最も汚職が蔓延している国の一つと認定している。ウクライナでは財界人たちが自分たちの経済的利益を増やすために、検察官を選任し、裁判所を利用する。ハンター・バイデンは結果的にそのような国に関わってしまい、いろいろなことに巻き込まれてしまうことになる決断をしてしまった。

●更迭された検察官(A fired prosecutor

2015年のキエフでは不満が高まっていた。親欧米の大統領ペトロ・ポロシェンコによる汚職根絶の試みは遅々として進んでいなかった。

ウクライナのジャーナリストたちはズロチェフスキーのような元政府高官たちが莫大な富を築いていることを次々と記事やテレビニュースとして発表していた。ある時には、ドローンを使って、キエフ郊外にある2つの並んでいる大豪邸を撮影することもあった。この2つの大豪邸はズロチェフスキーの家族と協力者の所有となっている。ズロチェフスキーの娘は、「ズロッチ」という名前の高級店を新たに開店させた。店名は苗字をもじったものだ。この高級店ではわに革やオーストリッチの靴が販売されていた。この当時、ウクライナは厳しい経済不況に苦しんでいた。

人々の汚職に対する怒りの矛先は検事総長ヴィクトール・ショーキンに向かった。アメリカ政府やEU諸国の政府の高官たちはショーキンが積極的に動いていないと見ていた。

2015年9月の演説で、この当時の駐ウクライナ米国大使ジョフリー・ピヤットは、政府高官関係の汚職事件を追及していないとして、ショーキンが率いる検察当局を表立って批判した。

ピヤットは「私たちは、検察当局が汚職に対する捜査を支持しないだけでなく、検察官たちが明確な汚職事件について捜査することも妨害していることをたびたび目にしてきた」と語っている。

ピヤットは特にウクライナの検察当局がイギリス当局に対して、ズロチェフスキーの資産凍結を正当化するための十分な情報を提供しなかったことを取り上げ批判した。十分な情報がなかったために、イギリスの裁判所はズロチェフスキーを自由にさせることになった。

ピヤットは次のように述べた。「ウクライナ検察当局はイギリス当局ではなく、ズロチェフスキーを弁護していた彼の弁護団に複数回にわたり書簡を通じて情報を提供した」。

ピヤットは、ズロチェフスキーの弁護団に書簡を通じて情報を提供した検察官や政府高官たちについて捜査し、ズロチェフスキーの嫌疑を「なかったことに」した責任がある者たちは更迭すべきだと訴えた。

このような批判はアメリカとEU諸国の政府高官たちは共通して持っているものだった。反汚職の動きが遅々として進まないのはショーキンが検事総長であるからだ、という考えが広く共有されていた。改革を進めることを条件にして欧米諸国から多額の援助がウクライナに提供されていた。

アメリカ政府は、オバマ政権のウクライナ政策の伝達者としてバイデン副大統領を選んだ。副大統領をウクライナに向かわせることで、アメリカがいかにウクライナに不満を持っているかを示すことになった。

ジョー・バイデンは2015年にウクライナ議会で演説を行った。その中でバイデンはウクライナに対して汚職の根絶を求めた。そして、「検事総長局には徹底的な改革が必要だ」と述べた。

バイデンは後に、ポロシェンコ大統領との会談の時にはより率直に、ショーキンに対する行動がなければアメリカは1億ドル規模の借款を停止すると述べたと述懐している。

バイデンは2018年に外交評議会で行った演説の中で次のように語った。「私はポロシェンコや高官たちを見ながら次のように言った。“私は6時間以内にこの国から出る。もし検事総長を更迭しないなら、あなたたちは金を手にすることはできない”と。“いいかな、ショーキンは更迭される、そしてしっかりした人物を後任に据えるんだ”とね」。

ショーキンはバイデンについての情報をジュリアーニに提供した。ショーキンは今年初めに本紙の取材に応じ、その中で、自分が2016年3月に検事総長を更迭されたのはこの当時ブリスマ社について捜査をしていたからだと語った。ショーキンは、検事総長を続けることが出来ていれば、ハンター・バイデンの取締役としての適格性について疑義を提示していただろうとも述べている。ショーキンは「ハンター・バイデンはウクライナでの仕事の経験もなく、またエネルギー部門での仕事もしたことがなかった」と指摘した。

しかし、元ウクライナ政府高官、元アメリカ政府高官たちは、この当時ズロチェフスキーへの捜査は停止状態だったと述べている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは、ウクライナ国内で反汚職活動をしている自分たちはショーキンが検事総長として汚職について捜査を進めていなかったことを批判し、汚職事件の捜査を進めるためにも彼の更迭がなされることを望んでいたと述懐している。

イギリス人ジャーナリストのブローは、ジュリアーニがバイデンに関して持ち出した嫌疑である「ズロチェフスキーとブリスマ社を守るためにショーキンを更迭させたというのは、意味不明で馬鹿げている」と述べた。ショーキンの検事総長時代、検察庁自体、幹部たちがダイアモンドや数千ドルの現金を賄賂として受け取っていたというスキャンダルに見舞われていたとブローは指摘している。 

ブローは「しかし、ショーキンの件とは別の事実については疑問が残る。それは、ジョー・バイデンは自分の息子がバイデンの名前を使ってお金を得ることを阻止すべきだったのでは、というものだ。その答えはそうすべきだっただろう、というものだ」と語っている。 

ショーキンの後任ユーリ・ルツェンコは本紙の取材に対して、ハンター・バイデンはウクライナの法律を破っていないと確信していると述べた。しかし、ある時点ではルツェンコの様々な発言によって、ジュリアーニはバイデンに対する捜査について疑義があると考えるようになったことも事実だ。

ルツェンコは「ウクライナの法律に照らして、ハンター・バイデンは法律を破るようなことはしていない」と語っている。

今年5月にジョー・バイデンは大統領選挙出馬を表明した。ハンター・バイデンはその前にブリスマ社の取締役として次の任期も務めないという決断を下した。

ハンター・バイデンは今年7月の『ニューヨーカー』誌の取材記事の中で、これまでの人生における苦難と薬物乱用について赤裸々に語った。その中で彼は次のように述べている。「ドナルド・トランプが、彼を大統領選挙で破ることが出来ると考えている人物に対する攻撃材料として私を選び出すことなど全く予想できないことでした」。
ハンターは記事の中で自分のために父ジョー・バイデンを騒動に巻き込んでしまったことについて父に謝罪したと語った。

ハンターは次のように語っている。「父は“私もまた残念に思っている人の一人だよ”と言い、それから2人でより悲しい思いをしている人について長い時間話しました。私たち2人はこのようなことを払しょくするための唯一の解決策は勝つことだという認識で一致しました。父は“いいかい、これからやらねばならないんだ”と言いました。より高い目的があり、そこに向かっていかねばなりません」。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 今回はウクライナ疑惑について、より短い記事をご紹介する。前回は長い記事を何本もご紹介したので読みにくいものとなってしまった。

  今回アメリカで大きな議論となっているウクライナ疑惑について、簡単に言うと、「今年の7月25日にトランプ大統領がウクライナ大統領に電話をして、自分の大統領選挙での再選にとって強敵となるジョー・バイデンと息子についての振りとなる情報を見つけるために捜査をして欲しいと述べた。そして、捜査をさせるための圧力として、アメリカがウクライナに与える国家安全保障援助を停止してみせた。これには大統領周辺の人物も絡んでおり、個人弁護士のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長もウクライナに働きかけを行った。7月25日の通話記録は国家機密など含まれていなかったが、外に漏れることがないように、より厳しい管理をするようにホワイトハウス高官たちが働きかけた」というものだ。簡単に書いてもこのように長くなってしまう。

  ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナに関わり、バイデンの次男ハンター・バイデンはウクライナの天然ガス会社ブリズマの取締役となった(2014―2018年)。これら「バイデン家」とウクライナとのかかわりの中で、ジョー・バイデンの選挙戦にとってマイナスの情報がないかをトランプ大統領がウクライナ政府に探させようとした、ということになる。これが事実ならば権力濫用であり、内政干渉であり、極めて重大な問題だ。

 内部告発者からの告発の書簡の公開をトランプ政権が拒否したことで、連邦下院民主党は弾劾に向けた調査を正式に開始すると発表した。その後、告発書と通話記録の要約が公開された。既に書いたように、弾劾が成立する可能性は今のところ低い。それでも民主党としては今回の話が筋の良いものであると考えているようだ。また、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っているバイデンを狙ったものということで、受けて立つということにもなったのだろう。

  トランプ大統領陣営がバイデンを大統領選挙で脅威に感じているということはあるだろうが、スキャンダル探しを外国政府に圧力をかけてまでやらせようとするだろうかということは前回も書いたが今でも疑問に思っている。

 バイデンの名前が出たことはバイデンにとっては痛手となる。日本のことわざで言えば「火のない所に煙は立たぬ」なのか「痛くもない腹を探られる」ということなのかは分からない。しかし、バイデンを支持しない人々(共和党支持者と民主党支持者で他の候補者を支持している人たち)には何かしらのイメージを与えることになる。

 バイデンのマイナスは民主党の他の候補者、特に三強を形成しているエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースにとってはプラスとなる。トランプ大統領にとって誰が与(くみ)しやすしとなるかと言えば、ウォーレンかサンダースとなる。全く根拠のない想像での話でしかないが、トランプ自身がこのスキャンダルを仕掛けたのではないかとさえ思えてしまう。

 そして、私は、バイデン家とウクライナの関係の具体的内容について関心を持っている。このことについては近いうちに調べたことをご紹介できればと思う。

(貼り付けはじめ)

バイデンの2020年大統領選挙に対する家族の問題(Biden's 2020 family problem

マイク・アレン、マーガレット・タレヴ、アレクセイ・マクカマンドアップ筆

2019年9月27日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/joe-biden-family-hunter-ukraine-donald-trump-2020-93dec9f4-cd1b-4235-b538-7d902a81ba89.html

ジョー・バイデンの出馬を押しとどめていたのはジョー・バイデンの家族だった。現在、バイデンの家族がバイデンの足を引っ張る可能性が出ている。

何が問題か:エリザベス・ウォーレンが各種世論調査の支持率で追いつている中で、ジョー・バイデン前副大統領は家族に関する疑惑と論争について答えている。

父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、次男ハンター・バイデンはウクライナのガス会社の有給の取締役を務めた(現在は退任)。

民主党最高幹部たちはウクライナをめぐるスキャンダルがバイデンにとっての大きな妨げになることを懸念している。なぜならばバイデンが人々の間で不人気な問題とプロセスに関係することになり、ハンター・バイデンに関する質問も避けることはできないからだ。

事実確認記事や「確かな話」を掲載する記事が出ても、巻き添えで負ってしまう損害(collateral damage)を避けることはできないだろう。

今回大統領選挙には関係していないある民主党系ストラティジストは、ハンター・バイデンをめぐる問題は、ウクライナでの彼のビジネス活動に限定されているだけではなく、彼の全ての個人的、ビジネス上の問題に及んでいる、としている。

ハンター・バイデンに関しては全て7月に発行された『ニューヨーカー』誌に掲載されたアダム・エントスの記事で詳述されている。エントスはハンター・バイデンとバイデン選対から多大な協力を得ていた。エントスは記事の中で次のように書いている。「ハンター・バイデンは父の選挙運動を危機に晒すことになるのか?ジョー・バイデンの息子ハンターのビジネス上の取引と騒がしい個人生活について様々な調査がなされている」。

民主党系のストラティジストたちは口を揃えて、「トランプは冷酷に、ハンターに関するスキャンダルを歪めながら利用するだろう」と指摘している。

トランプの計算は心理学上の効果を狙ってのものだ。トランプ大統領はバイデンが彼の息子に関して懸念していることを分かっている。

バイデンにとってプラス面となるのは、トランプ大統領がこのように挑発的な言動をしているのは、トランプ大統領にとってバイデンが最も強大な脅威となっていることを裏付けているというものだ。

ヒラリー側からの視点:ヒラリー・クリントンの長年の側近フィリップ・レインズは本誌に対して、この光景は以前にも見たことがあると述べた。

レインズは次のように述べた。「これは経験、人生、過去の現実とは何も関係していない。人々は自分たちが望む形でイメージを作るものだ。これは誇張などを超えたものだ」。

バイデン選対の思惑:バイデンは何も悪いことをしていない。

バイデンの顧問の一人は私に対して、ウクライナスキャンダルからの巻き添えによる損害は小さいものとなるだろうと述べた。この人物はその理由として、バイデンは副大統領だったので、何も悪いことをしていなくてもこのようなスキャンダルに巻き込まれやすいものだ、と人々は考えるからだとしている。

バイデン選対は資金集めに関して、選挙運動開始2週間目以来最高の資金を今週集めたと発表した。

バイデンはこれからも医療制度、気候変動、銃規制について主張し続ける予定だが、トランプ大統領について無視することはない。

結論:弾劾に関する調査から最大の政治的利益を得るのはエリザベス・ウォーレンということになる。

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内部告発者は、トランプ大統領が権力を濫用して、外国への介入を強要したと告発した(Whistleblower alleges Trump abused power to solicit foreign interference

ザカリー・バス筆

2019年9月26日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/trump-ukraine-whistleblower-complaint-released-e2524316-fb2f-

418e-ae57-51892e709a4c.html

トランプ大統領とウクライナに関する論争の中心には内部告発者からの告発がある。内部告発者はトランプ大統領が「2020年の大統領選挙について外国からの介入を誘うために大統領としての権力を利用」したとし、ルディ・ジュリアーニとビル・バー司法長官もこの行為に関与しているようだと指摘している。

何故問題なのか:トランプ政権は最初告発書を後悔することを拒否した。その結果、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は火曜日に正式に弾劾に向けての調査を開始するという決定を行うことになった。ペロシ議長の決定の発表からの圧力を受けて、トランプ政権は告発書とその前にトランプ大統領とウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーとの間の7月の通話記録の要約を公開した。

要点:内部告発者は告発した行動を分類している。この行動について、政府高官たちは、「アメリカの国家安全保障に関しリスクを高め、アメリカの国政選挙に対する外国からの介入を防ぐためのアメリカ政府の努力を台無しにする」ものだと考えていると内部告発者に述べた。内部告発者は行動を4つに分類している。

1. 7月25日の大統領による電話:複数のホワイトハウス高官が内部告発者に語ったところによると、彼らはウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとトランプ大統領との間の電話の内容を知り、「大いにショックを受けた」ということだ。通話の中で、トランプは「ウクライナ大統領が2020年の大統領選挙で再選を助けるような行動をとるように圧力をかけようと」した。

2.この通話の記録へのアクセスを制限する行動:内部告発者は次のように述べている。7月25日の電話の後、ホワイトハウス高官たちは「この通話に関する全記録、特に逐語的に文字起こしされたデータを“厳重に保管”するように介入した」。ホワイトハウスの弁護士たちは、ホワイトハウスのスタッフに対して電子データにした通話記録を、機密情報を含むデータを保管するために使われる別のシステムに移すように指示した。通話記録には国家安全保障に関連する内容は含まれていなかった。

告発書の脚注で言及されているところでは、「トランプ政権が“国家安全保障上微妙な情報を守るからではなく、政治的に微妙な情報を守ることを目的として”、別のシステムを利用しており、今回が初めてのことではない」ということであった。

3.継続される懸念:この通話がなされた後、駐ウクライナ米公使カート・ヴォルカーとEU駐在米大使ゴードン・ソンドランドはウクライナ政府高官たちと会談し、彼らに対してトランプ大統領からの要求にいかにして「対処」すべきかに関し助言を与えた。トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニはマドリッドに飛びゼレンスキー大統領の補佐官と面会し、その他のウクライナ政府高官たちと接触し、7月25日の通話に関する「直接的な補足」を行った。

4.7月25日の大統領の通話に至るまでの状況:内部告発所の中で内部告発者が最も多く言及しているのは、ウクライナの検事総長ユーリー・ルツェンコ(2019年8月29日に退任)が2019年3月にジョー・バイデンを含むアメリカ政府高官たちに対する汚職事件の捜査をどのように遂行していたかの詳細だった。この告発が出た後に、ジュリアーニがルツェンコに2度面談し、2020年の大統領選挙でのトランプの再選に関連して捜査を求めるために5月にはウクライナを訪問する計画を立てていた、というニュースが出た。

複数のアメリカ政府高官たちは内部告発者に対して、ジュリアーニの国家安全保障政策決定プロセスを迂回していることに対して「深く憂慮」していると語ったと述べている。

複数のアメリカ政府高官たちはまた内部告発者に対して次のように語ったと述べている。「ウクライナ政府の高官たちは、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との間で電話か会談が行われるかどうかは、ルツェンコとジュリアーニによって話し合われた諸問題について“協力”姿勢を見せるかどうかにかかっているということを信じるようになっていった」。

7月中旬、内部告発者はトランプ大統領が行政管理予算局に対してウクライナ向けの国家安全保障援助を全て一時停止するように命令した。行政管理予算局の高官たちはその命令の根拠については分かっていなかった。

明記すべきこと:内部告発者は今回の告発内容について自分で直接目撃していない。しかし、内部告発者に語った政府高官たちの言葉は正確だ、「それは、ほぼ全てのケースで、複数の高官たちが個別で話す内容はそれぞれ一貫していた」からだとも述べている。

情報機関の監察官マイケル・アトキンソンもまた内部告発の内容は信頼性があると述べている。

内部告発から新しい詳細が出ることでこの話は更新されている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がった。アメリカ政府のある情報機関の内部告発者(whistle blower)が国家情報長官代行や連邦上下両院の情報・諜報委員会委員長に宛てた書簡の中で、トランプ大統領のウクライナ疑惑を告発した。この書簡の内容が機密指定解除され、公表された。その内容に批判が集まり、大統領擁護の主張もあり、議論が白熱している。民主党側はロシア疑惑では弾劾に対して腰が重かったが、今回、弾劾に向けて調査を始めるということになった。
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毎日新聞の記事から

 内部告発者の告発内容をまとめると、2019年7月25日にドナルド・トランプ大統領はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。その中で、トランプ大統領は、ウクライナの石油関連企業の役員だった、ジョー・バイデン前副大統領の次男ハンター、更にはバイデン自身のウクライナとのかかわりを捜査してもらいたい、と発言したということだ。
 ゼレンスキー大統領が「協力する(play ball)」するかどうかでアメリカからの国家安全保障に対する援助4億ドルを停止するかどうか決めるという交換条件を持ちしたとも告発されている。これは不当な圧力をかけたということになる。内政干渉(intervention)ということにもなる。実際に議会で承認されたウクライナ向け援助の実行がトランプ政権によって遅延させられたことは事実で、トランプ大統領はこのことについて、他のウクライナの同盟諸国に援助を真剣に考慮、実行させようと望んでのことだったと釈明している。

  バイデンは現在、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っており、2020年大統領選挙本選挙でのトランプ大統領にとっての強力な競争相手となる可能性が高い。そのために、「大統領が大統領執務室で公務を行う中で、自分の私利私欲のために立場を利用した」という批判が出ている。

 アメリカ大統領が大統領執務室(オーヴァルオフィス)で使った電話の通話記録はその内容が一言一句記録される。それは文字情報となるが、現在はデータ化され、コンピューターシステムに保管される。国家機密が含まれる場合にはより安全度が高い別のシステムに保管される。7月25日のゼレンスキー大統領との会話には国家機密は含まれていなかったが、機密が含まれる通話記録と同じ扱いとなった。この通常とは異なる取り扱いを行ったのはトランプ大統領の周辺のホワイトハウス高官たちで、その理由として、「国家安全保障上の懸念ではなく、この通話記録が漏れると政治的に大きな打撃となるから」というものであった。また、その他の通話記録も同様の取り扱いをしているとも言われている。

 大統領の個人的な弁護士をしているルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省抜きでウクライナとのやり取りを行っていたことも告発された。国務省を迂回して、ウクライナ政府高官とやり取りをし、大統領のメッセージを届けたという疑惑だ。ジュリアーニは圧力があったことを認めている。

 ロシア疑惑と同様、今回の疑惑も大きな柱は「アメリカ大統領選挙と外国のかかわり」ということになる。ロシア疑惑の際には、トランプ候補(当時)の陣営がロシア政府に対して、ヒラリー・クリントンにとって不利な情報の提供を求めたという疑惑であったが、これは嫌疑不十分となっている。今回の場合はウクライナ政府にバイデン家の情報の提供を求めたという形になっている。 

 私が疑問なのは、トランプ側がバイデンにとっての不利な情報が欲しいというのは理解できるが、トランプ大統領自らが記録に残る大統領執務室からの電話を使ってこのようなことを頼むだろうかということだ。こういう汚れ仕事は側近のうちのそれにふさわしい人物にやらせるはずだ。ばれてしまっては意味がない訳で、今回ばれてしまったのでは失敗ということになる。 

 大統領が大統領選挙について側近たちと話をして、バイデンが脅威だと感じたら、それ相応の対策をするようにと言えば、それで事足りるはずだ。トランプ大統領は何でも自分でやらねば気が済まないからだ、軽率な人物だからだという評価もある。しかし、そもそも今回の疑惑は、匿名の内部告発者による情報提供から端を発している。その信頼性について100%と言うことはできない。「トランプ大統領ならやりそうなことだ」ということだけでは弾劾(辞めさせること)まではいかない。

 大統領弾劾の手続きは連邦下院で審理して弾劾相当ということになれば過半数の賛成で訴追することになる。訴追先は連邦上院だ。連邦上院が弾劾裁判所となって審理される。ここで3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立する。現状では民主党が連邦下院の過半数を握っており、訴追は可能だ。連邦上院は共和党が過半数を握っている。また、3分の2の賛成という条件も高いハードルになっている。音声録音が出るとか内部告発者が名乗り出て宣誓証言をする(証言だけでは難しいが)などのことがあれば弾劾まで進む可能性はあるが、今のところは厳しい。

 連邦議会民主党執行部としてはロシア疑惑よりは筋が良い話ということで弾劾に乗ったのかもしれないが、先行きは楽観視できない。 

(貼り付けはじめ)

 

●「米民主、もろ刃の弾劾攻勢 ウクライナ疑惑で」

トランプ政権 北米

2019/9/25 18:29

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50186700V20C19A9EA2000/

【ニューヨーク=永沢毅】トランプ米大統領がウクライナに野党・民主党のバイデン前副大統領に関する調査を要求したとされる疑惑は、トランプ氏と民主の全面対決に発展した。民主執行部はこれまでの慎重姿勢を転換し、トランプ氏の弾劾に向けてカジを切った。対立の先鋭化は、2020年大統領選で最有力候補の一人であるバイデン氏に跳ね返るリスクもはらむ。

「大統領職の宣誓や国家安全保障、選挙の清廉さへの裏切りだ」。民主のペロシ下院議長は24日の声明でトランプ氏の行動をこう断じた。

16年の大統領選でトランプ氏がロシアと共謀した疑惑では、民主は弾劾を見送った。国家の分断を懸念して慎重な姿勢を維持してきた民主だが、今回大きく転換した。「現職の大統領」の不正疑惑を追及しなければ、国民の不信の目が自らに向かうとの判断があったからとみられる。

民主が問題視しているのは主に2点ある。1点目はトランプ氏が725日のゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話協議で、同国への軍事支援を実施する条件として、バイデン氏の息子が役員をしていたウクライナのガス企業に関する調査をするよう繰り返し圧力をかけた疑惑だ。

米憲法は大統領が「反逆罪、収賄罪またはその他の重犯罪や軽罪」を犯せば弾劾訴追されると定める。トランプ氏が再選をめざす20年大統領選でバイデン氏は最も警戒する相手だ。同氏を追い落とすため外交を政治利用したと議会が認定すれば、弾劾の要件にあてはまる可能性がある。米連邦法は選挙活動に「価値あるもの」を外国人に求めることを禁じており、民主はこうした法令に違反する疑いがあるとみる。

もう1つは、問題の表面化につながった内部告発の中身を政権側が議会に報告するのを阻んだ点だ。電話協議の内容を問題視した米情報当局者は、8月中旬に監察官に内部告発したとされる。

 米連邦法では監察官が告発を「緊急の懸念」などと判断した場合、7日以内に議会に報告する義務があるとされる。しかし、国家情報長官代行は内部告発の報告を拒否し、ペロシ氏は「報告阻止は法令違反だ」と非難した。

強硬策を繰り出した民主に対し、トランプ氏は徹底抗戦の構えをみせる。「大統領への嫌がらせだ!」。24日にはツイッターでこう訴えた。

25日にはゼレンスキー氏との電話協議の内容を公表する方針だ。複数の米メディアによると、ホワイトハウスは内部告発の議会報告も認める方向で調整しているという。いずれも潔白を証明する狙いがあるとみられる。

民主にとって悩ましいのは、今回の疑惑にバイデン氏が関わっている点だ。バイデン氏はオバマ前政権の副大統領だった2016年にウクライナの検事総長の解任を要求したことがある。バイデン氏は解任に応じなければウクライナへの10億ドルの債務保証を保留すると圧力をかけたとされる。

検事総長はバイデン氏の息子ハンター氏が役員を務めていたガス企業の捜査を統括する立場にあった。ハンター氏はこの企業から月5万ドル(約550万円)の報酬を受け取っていたという。民主がウクライナ疑惑への追及を強めれば、バイデン氏にも矛先が向かうのは避けられない。

「問題があるのはバイデンとその息子だ」。トランプ氏はかねてウクライナ問題の調査を訴えていた。20年大統領選の民主候補の指名争いで首位のバイデン氏が失速すれば、2位のウォーレン、3位のサンダース両上院議員には追い風になる。

弾劾には世論の支持や共和の協力が欠かせない。だが共和はトランプ氏擁護の意見が多く、現時点で世論の支持も見通せない。疑惑捜査の進展しだいでは政局優先との批判を浴びる恐れもある。

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●「ホワイトハウスはトランプ氏の通話内容を隠そうとした=内部告発者」
BBC

2019年9月27日

https://www.bbc.com/japanese/49848138

ドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談について、ホワイトハウスの法務顧問たちは、内容に国家機密を含まないにもかかわらず、国家機密専用のデータベースに保存するという異例の対応をとっていた――。大統領の通話内容について情報当局者が書いた書簡には、こうした内容が含まれていたことが明らかになった。米連邦議会が26日、情報当局者が国家情報長官代行や上下両院の情報委員長に送った手紙を公表した。

トランプ氏が今年7月の電話会談でウクライナの大統領に話した内容について、情報機関の内部告発者が監察総監や国家情報長官代行などにあてた手紙には、トランプ氏が「大統領権限を利用し、2020年米大統領選で外国の介入を得ようとしている」ことを、複数の政府担当者が懸念していると書かれている。その上でこの内部告発者は、大統領の行動が「深刻もしくは甚だしい問題」で、「法律に抵触もしくは違反した」と指摘している。

機密扱いを解除して議会が公表したこの書簡によると、ホワイトハウスの法務顧問たちは、通話内容に国家機密が含まれていなかったにもかかわらず、特にデリケートな国家機密を保管するためにある通常とは異なる電子データベースに、この電話の通話記録を保存するよう、ホワイトハウス職員に指示した。また、こういう対応は過去にも何度か行われていたという。

さらに手紙を書いた情報当局者によると、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と直接あるいは電話で会談するかどうかは、ウクライナ側に自分たちの要求に「協力するつもりがある」か、ウクライナ大統領が「どう行動するか」次第だと、複数の米政府関係者が認識していた。また、725日にウクライナの大統領と電話会談する以前に、ウクライナへの軍事援助を停止するよう、大統領が自ら行政管理予算局に指示したという。

26日には民主党が多数を占める下院の情報委員会で公聴会が開かれ、ジョーセフ・マグワイヤ国家情報長官代行が宣誓証言。その中で長官代行は、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べた。今回のウクライナ疑惑が浮上して以来、トランプ氏をはじめホワイトハウスは、内部告発者は党利党略のために動く民主党支持者だと反論していた。

この電話会談を理由に、トランプ氏に対する正式な弾劾調査の開始を発表した民主党幹部のナンシー・ペロシ議長は、トランプ氏が2020年大統領選で戦うことになる可能性のある民主党のジョー・バイデン前副大統領の評判を汚そうとして外国の手助けを求め、その交渉材料として軍事援助を利用したと非難している。

トランプ氏は、確かにゼレンスキー大統領と電話で話す数日前に、4億ドル分の軍事援助を自ら停止したと認めたものの、バイデン親子への捜査をウクライナに働きかけるための圧力ではなかったと説明している。

内部告発者の手紙公表と下院情報委公聴会の後、ホワイトハウスで記者団を前にしたトランプ氏は、弾劾手続きは「またしてもでたらめな魔女狩り」で、「許されてはならない」と反発した。

「民主党がこの国にしていることはみっともない話で、許されてはならない(中略)裁判所で法的手段を使うなどして、阻止する方法があるべきだ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏が国連総会のため訪れているニューヨークのアメリカ代表部で25日に、内部告発者に情報提供した者は「ほとんどスパイに等しい」と職員に話す録音音声が、浮上している。

トランプ氏は「この国では以前は、みんな頭がよかったころには、どうしたか知ってるだろう? そうだろう? スパイとか国家反逆罪とか、昔は今とは違う対応をしたものだ」と述べている。この発言は、米政府が過去にスパイに対して死刑を適用したことへの言及とみられている。

内部告発者は手紙で何と

情報当局者は725日の電話会談について、複数の政府関係者から聞いた話として、逐語の通話記録をはじめとする内容の記録を一切外部に漏らさないよう、ホワイトハウス幹部が対応したと書いている。

「このことから、ホワイトハウス関係者は電話の内容がいかに深刻なものか理解していたと、私は強く感じた」と、告発した情報当局者は書いた。

ホワイトハウスの法律顧問たちは通話の記録を、「秘密作戦など暗号で保護されるレベルの重要機密を保管するためにある、他のネットワークにつながっていないコンピューター」に保存するという異例の措置を、職員に指示したという。

告発者によると、トランプ政権では国家安全保障に関わる機密ではない内容でも、政治的にデリケートな内容の記録を、こうして機密用のデータベースに保存することが、以前から行われていたという。

告発者は手紙の冒頭で、自分は一連の出来事を「直接目撃したわけではない」と明記しつつ、複数の政府職員が話す内容は「ほとんど常に一致していた」ため、自分が聞いた話は信頼できると判断したと書いている。

議会公聴会では何が

下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、この日の公聴会冒頭で、トランプ大統領がウクライナの大統領相手に「まさに組織犯罪に典型的な、ゆすりをかけた」と非難した。

これに対してトランプ氏を支持する共和党のデヴィン・ヌネス筆頭委員はこれに反発し、「大統領に対してまたしも情報戦争を仕掛けけて、またしても主要メディアの協力を獲得するに至った見事な才能について、民主党におめでとうと言いたい」と皮肉った。

公聴会に出席したマグワイヤ国家情報長官代行に対してシフ委員長は、内部告発者の手紙を公表する前になぜホワイトハウスの助言を求めたのか問いただした。

これに対してマグワイヤ氏は、告発内容に大統領特権で保護されるべき内容はあるか確認したかったのだと説明。さらに、「本件に関する何もかも、まったく前例がないことだと思う」と述べた。

バイデン氏については

告発者の手紙によると、就任間もないゼレンスキー大統領との電話でトランプ氏は、2016年にウクライナのヴィクトル・ショーキン検事総長が解任された件について話し合った。

トランプ氏は、バイデン前副大統領の息子でウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について触れ、副大統領だったバイデン氏がショーキン氏の解任をウクライナに働きかけることで、ハンター氏の訴追を回避したのではないかと述べた。

トランプ氏はさらにゼレンスキー大統領に、ウィリアム・バー米司法長官や自分個人の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と連携しながら、この件を調べるよう働きかけた。

ウクライナのショーキン前検事総長は、ブリスマの所有者ミコラ・ズロチェフスキー氏による不正取引や資金洗浄の疑いを捜査していた。

バイデン氏は副大統領として、複数の欧州首脳と共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任はその後、10カ月にわたりブリスマ社を調べたが、捜査はそこで終わった。

ハンター・バイデン氏のブリスマ役員としての任期は、今年4月に満了している。

バイデン氏側に不正行為があったという証拠は明らかになっていない。

米司法省は25日、トランプ氏はバー司法長官に対して、ウクライナ政府にバイデン親子を捜査させるという内容を話していないし、バー長官はウクライナ政府と接触していないとコメントした。

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内部告発者の告発における5つの重大な嫌疑(The five most serious charges in the whistleblower's complaint

ナイオール・ストレンジ筆

2019年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/463236-the-five-most-serious-charges-in-the-whistleblowers-complaint

トランプ大統領のトラブルは木曜日朝により深刻なそしてより暗いものとなった。それは内部告発者の告発が明らかになったからだ。

トランプ大統領はウクライナとウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとの間のやり取りについて弾劾を受ける脅威に直面している。連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)はこれまで弾劾に消極的だったが姿勢を変えて、弾劾の先頭に立った。

トランプ大統領と彼の味方たちはこの嫌疑に対して反論をしている。トランプ大統領はこの問題全部が「でっち上げ(hoax)」であり、私は誤った行為を全くしていないと主張している。
ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は木曜日朝に発表した声明の中で、「出来事に関して間接的に又聞きの説明を集めたもので、報道の断片を切り貼りしたものに過ぎず、何も不適切なものを提示しているものではない」と述べた。

しかし、こうした声明が次々に出されても、現在までのところ、嵐は収まっていない。

これから重大な嫌疑についてまとめる。

●ホワイトハウスはトランプ大統領の電話の詳細を隠そうとした(The White House sought to hide details of Trump’s phone call

今回の論争の中心的なエピソードはトランプ大統領の7月25日のゼレンスキーとの電話で、その中で、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対して、実証されていない嫌疑でジョー・バイデン前副大統領とバイデンの次男ハンターについて捜査するように圧力をかけたということだ。

内部告発者の告発の中で暴露された重大な内容は、ホワイトハウスがこの電話の逐語記録を隠そうとしたというものだ。

ホワイトハウスの高官たちによって隠蔽がなされたのは、この電話の内容を知っている人々は「トランプ大統領が個人の利益のために自身の大統領執務室を濫用したことを目撃してしまった」という思いからだと内部告発者は述べている。

内部告発者は続けて「ホワイトハウスの高官たちは「ウクライナ大統領との電話記録の全ての記録を封鎖する」ために介入してきたと述べた。

この介入は コンピューターシステムから「電子データになっている逐語の通話記録」を削除するという形を取ったと内部告発者は述べている。電子データになった通話記録は通常はコンピューターシステムに保管される。しかし、ゼレンスキー大統領との通話記録は機密の内容は入っていないのに通常のシステムとは切り離された、より安全性が確保された、そしてアクセスが制限された別のシステムに移動された。

嫌疑の中心が何かは明らかだ。それは「ホワイトハウスが隠蔽に関与した」ということだ。

ニクソン元大統領が体験したように、このような告発は他の重大な攻撃と同じく政治的に危険をはらむものとなる。

●トランプの協力者たちはウクライナに「協力させる」ために影響力を行使した(Trump allies used leverage to get Ukraine to ‘play ball’

トランプの擁護者たちは、ゼレンスキー大統領に対して交換条件は提示されていないと主張している。

内部告発者はそれとは逆のことを述べている。もっとも、協力させるための交換条件を提案したのはトランプ大統領自身ではなく、大統領の周辺人物たちだとも示唆している。

内部告発者は、「複数のアメリカ政府高官たち」は内部告発者に対して、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との電話や会談が行われるのは、「ゼレンスキー大統領が進んで“協力(play ball)”する姿勢を見せるかどうか」にかかっていると発言した、と述べている。

内部告発者は「協力する(play ball)」という言葉を2度使っている。2度目の「協力する」のところでは、次のようなことが述べられている。今年5月のゼレンスキー大統領の就任式にペンス副大統領が出席予定でウクライナを訪問することになっていたが、トランプ大統領がペンスに行かないように「指示」した後にキャンセルとなった。名代としてリック・ペリーエネルギー省長官が出席した。

内部告発者は、名前を明らかにしていないが複数のアメリカ政府高官たちが、ウクライナ政府高官たちに対して、トランプ大統領はゼレンスキー大統領が「大統領の権限を使ってどのような行動を取るかを選択する」ことを見せるまで、ゼレンスキー大統領に会いたいとは望まないということを「明確に」示した、と述べている。

内部告発者は、自分が「協力する」ということについてのより広範な疑問とこの行動が関連しているかは分からないとしている。しかし、「協力」と「交換条件」に付いての疑問は、トランプ大統領、そしてペンス副大統領にとって取り扱いにくい疑問である。

●ホワイトハウスはそれ以外の複数の電話の詳細を隠していた(The White House has hidden the details of other phone calls

内部告発者はトランプ大統領の他の通話記録は安全なシステムに入れられていると述べている。これは正当な国家安全保障の懸念からではなく、政治的な理由からである。

内部告発者は、ホワイトハウスの高官たちはトランプ大統領の通話記録がこの「符号レヴェル」システムに入れられたのは「初めてのことではない」と述べたと発言している。そして、こうしたことが行われたのは、「国家安全保障上神経質にならざるを得ない情報だからという理由ではなく、政治的に神経質とならざるを得ない情報だから」だとアメリカ政府高官たちが認めたと内部告発者と述べている。

こうしたことの詳細は不明確だ。しかし、民主党にしてみれば大統領弾劾の調査を継続するための更なる材料となる。

●政府高官たちはジュリアーニの様々な行動に対して「深い懸念」を持っていた(Officials were ‘deeply concerned’ by Giuliani’s activities

トランプ大統領の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニは、ウクライナに対してバイデン家について捜査をするように圧力をかけていることを認めた。

ここ数日、ジュリアーニは彼の役割に関する論争が激化する中で、数多くのメディアに出演しインタヴューを受けている。そこで激しく議論されているのは、ジュリアーニの行動が国務省の幹部たちの承認、もしくは少なくとも同意を得ていたのかどうかということだ。

内部告発者の告発内容はトランプ政権内部の分裂について更なる懸念を募らせるものである。内部告発者は「ジュリアーニ氏が国家安全保障決定政策プロセスを避けて、ウクライナ政府高官と関わろうとし、ウクライナ政府とトランプ大統領との間でメッセージをやり取りができるようにした。これを見て複数のアメリカ政府高官は大きな懸念を持った」と告発している。

ジュリアーニは木曜日CNNに出演し、内部告発の「クソみたいな内容について何も知らない」と述べた。

●ウクライナ政府高官たちはアメリカらの援助が停止される危険に晒されるだろうと分かっていた(Ukrainian officials knew U.S. aid could be in jeopardy

アメリカ連邦議会が提供を可決したウクライナ向けの援助4億ドルがトランプ政権によって援助提供が遅延させられていたことについてはその事実性について誰も反対していない。

疑問として残るのは、この遅延がトランプ大統領のウクライナによるバイデン家についての詳細な捜査を行って欲しいという希望と明確な形でつながっていのかどうかということだ。

内部告発者はこの疑問についてはっきりとは答えていない。

しかし、メディアの報道が出る前に、内部告発者はトランプ大統領がある時点でアメリカのウクライナに対する「国家安全保障援助」を一時停止するように命じたと認めた。

内部告発者は7月23日と7月26日という2つの日付を挙げた。この2日にアメリカ行政管理予算局の高官たちが「ウクライナ向けの援助の一時停止という命令はトランプ大統領から直接出されたものだと明確に述べたが、この命令の根拠について分かっていなかった」と述べた。

内部告発者は8月上旬に「アメリカ政府高官たち」が内部告発者に対して、ウクライナ政府高官はアメリカからの援助が停止される危機に瀕していることを認識していると述べたと語ったが、ウクライナに対する圧力の度合いという観点からこの告発内容は重要だ。

トランプ大統領は、援助供与を遅らせたのは、ウクライナの他の同盟諸国にも援助をさせたいと望んでいたからだと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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決定版 属国 日本論
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

ヌーランドとホワイトハウスとの間で考えは一致していないが、民主、共和両党に属する連邦議員たちは、ヌーランドの言っていることは正しいと確信を持っている。

 

 連邦下院外交委員会で民主党側を率いる議員でミュンヘン安全保障会議にも出席したエリオット・エンゲルは次のように発言している。「彼女の話を聞くと元気が出る。私たちはウクライナに対して防衛を目的とした武器を供与すべきなのだ。ロシアがいつもウクライナを打ち破るという主張に私は与しない。それは敗北主義的態度だと思う」。

 

 エンゲルのタカ派的態度は彼だけのものではなく、連邦議会上下両院の議員たちの多くの態度でもある。

 

 2014年12月、連邦議会は多くの議員の賛成により、大統領に対してウクライナに、弾薬、兵士が操縦する調査用のドローン(無人飛行機)、対戦車兵器を含む最終的な支援を与える権限を与える法律を可決した。オバマ大統領も可決された法案に署名することに同意した。それはこの法律は大統領にウクライナへの支援を強制する内容ではなかったからだ。連邦上院は今週、新しい戦術を試すために、法律の改正を行おうとしている。この改正は、対ウクライナ支援のための予算のうちの20%までが使われるまでの間、ウクライナの安全保障支援のための3億ドルの半分の執行を停止するという内容だ。この法律改正についてはホワイトハウスが反対している。それは、アメリカが最終的な支援を行うことでウクライナにおける流血の惨事がエスカレートし、プーティンには更なる暴力的な侵攻を行うための口実を与えることになるとホワイトハウスは恐れているのだ。

 

 アメリカ連邦議会とホワイトハウスの政策の違いが、ヌーランドと彼女に応対するヨーロッパ諸国の外交官たちの間の不和の原因だという説明もなされているが、彼女の厳しい姿勢もまた原因だと主張する人々もいる。

 

ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究所(SAIS)の上級研究員フェデリガ・ビンディは「ヌーランドの攻撃的な姿勢は、少なくともヨーロッパの外交界においては行き過ぎのように感じられている」と述べている。

 

 ヌーランドを擁護する人々は、ヌーランドの「厳しい愛情」という特徴こそ、昨年のロシアによるクリミア併合後のロシアに対するアメリカ政府の対応に必要であったと述べている。

 

 ホワイトハウスの戦略は、厳しいが非軍事的な方法を混合させた形の対ロシア政策を実施し、それによってヨーロッパの団結を図るというものである。この政策に含まれるのは、昨年9月に開始されたアメリカとEUによるロシアのエネルギー国営企業、武器製造企業、金融部門を標的とした経済制裁、G8からのロシアの除外、同盟諸国に対してプーティンをそれぞれの首都に招かないこと、もしくはロシアを国賓待遇で訪問をしないように求めることだ。

 

ヨーロッパの団結を維持するのは易しい仕事ではない。

 

 ロシアを軍事的に抑止する問題について、ヨーロッパは混乱している。バルト海沿岸諸国はより攻撃的な対応を求めているが、イタリアとギリシアは外交による対応を求めている。EUの中で最も力を持つドイツとフランスはこの2つの解決策の中間的な解決を求めている。

 

 制裁については、ヨーロッパ諸国の首脳はアメリカよりも腰が引けている。それは、ヨーロッパ諸国はロシアの各企業との間で長年にわたり、友好的な関係を築いているからだ。禁輸政策の結果、フランスの農産物輸出とイタリアの観光業は大きな痛手を蒙っている。

 

 ヨーロッパ諸国が対ロシア制裁から離脱する場合、ヌーランドに対してそれを伝えねばならない。これはなかなか荷厄介で一筋縄ではいかない。

 

 2015年3月中旬、ヌーランドはローマを訪問した。この時、イタリア首相マッテオ・レンツィは、ロシアがクリミアを併合して以来、ヨーロッパ諸国の首脳としてモスクワを初訪問し、プーティンと会談してイタリアに帰国したばかりであった。

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マッテオ・レンツィ 

 

 イタリアはプーティンを孤立させることを目指す西側の政策に批判的であった。ヌーランドはレンツィがロシア訪問を行った後初めてイタリアを訪れたアメリカ政府高官であり、レンツィに圧力をかけるという困難な仕事を行った。ある外交関係者によると、ヌーランドはレンツィに対して激しい言葉遣いで非難を行い、レンツィは侮辱されたと感じ、怒り狂ったということである。

 

 あるオバマ政権高官は、このメッセージはレンツィに届ける必要があるものだったと協調している。この高官は次のように述べている。「オバマ政権の政策は、同盟諸国がプーティンを首都に招かない、またプーティンから国賓待遇で招待されてもそれを受けないように求めることだ。アメリカ政府の高官たちは、イタリア政府に対して、レンツィ首相の訪露に対して懸念を持っていると伝えてきた」。

 

 ヨーロッパ諸国からの不信感があることは認めながらも、この高官は、ヌーランドのメッセージは「怒りではなく、失望をヨーロッパ諸国に与えた」と述べた。

 

 この厳しい姿勢を理由にして、アメリカ政府や連邦議会の人々はヌーランドを賞賛しているのである。

 

エンゲルは、「彼女は率直にあるがままに話す。何か守ろうとかごまかそうとかしない」と語った。

 

* * *

 

 ヌーランドはフランス語とロシア語を不自由なく操る。20代の頃、ロシア語を学ぶために数カ月にわたり、ソ連のトロール漁船に乗船したのだが、この時にソ連(ロシア)に対する激しい憎しみを抱いたと言われている。

 

ヴィクトリア・ヌーランドの父シャーウィン・ヌーランドは既に亡くなっているが、イェール大学教授として有名であった。ヴィクトリアの夫ロバート・ケーガンはネオコンに属する有名な評論家である。彼女の人生は力を持った、人々の心を動かす表現者たちに囲まれていると言える。

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 ロバート・ケーガン

 

 ケーガンは、新アメリカ世紀プロプロジェクト(PNAC)の創設者の1人であり、悲惨な結果に終わったアメリカ軍のイラク侵攻を最も強力に主張した人物である。枯れもまたヨーロッパの人々を苛立たせた人物として有名である。彼は外交政策分野におけるアメリカとヨーロッパの分裂について論稿を書いた。この中で、軍事力の使用について、「アメリカ人は火星から、ヨーロッパ人は金星から生まれたくらいに違いがある」と書いた。

 

 ヌーランドは宣誓式において、自分の結婚生活について、夫ケーガンの論稿に言及しながら次のように述べた。「彼は私の火星であり、金星であり、そして地球です」。

 

 昨年、ヌーランドとケーガンは、『ポリティコ』誌の取材に対して、最初の数回のデートで民主政治と世界におけるアメリカの役割について話したことで意気投合し、恋に落ちたと語った。

 

 ヌーランドがケーガンと結婚しているため、ヨーロッパ人の殆どは、彼女が共和党員だと思っている。しかし、彼女のロシアに対するタカ派的なアプローチはオバマ政権内部で彼女だけが採っているものではない。

 

 複数のアメリカ政府関係者によると、アメリカ政府の最高首脳たちも私的な場ではウクライナへの武器供与を支持しているということだ。その中には、ケリー国務長官、アシュトン・カーター国防長官、ジョー・バイデン副大統領、ミュンヘン安全保障会議でヌーランドと共にブリーフィングを行ったブリードラヴ空軍大将も含まれている。カーターは自分の考えを公然と話し、それが放送された。カーターは2015年2月の上院軍事委員会に出席し、「私はウクライナへの武器供与を支持する。それは、ウクライナが自国防衛をすることをアメリカが支援しなくてはならないと考えているからだ」と述べた。

 

 オバマ政権内でヌーランド以外にもウクライナ問題について発言している人物が2人いる。1人は国家安全保障会議ヨーロッパ問題担当上級部長チャールズ・カプチャンであり、もう1人はロシア・ユーラシア担当上級部長セルスティ・ワーランダーである。カプチャンとワーランダーの考えは、彼らの学問研究の成果から生み出されたものだ。カプチャンは長年にわたり、NATOに対して疑義を持っていた。彼は危機的状況の軍事力による解決に疑念を持ってきた。彼の存在と疑念によって、よりタカ派的な解決策が国家安全保障会議を通過することはなく、まさに知的な防波堤と言うことが出来る。

 

 ヌーランドは、国務省の人々の多くが持つウクライナ危機に関する主流の考えから逸脱してはいない。しかし、ヨーロッパの人々のヌーランドが大変なタカ派であるとい印象を和らげることはすぐにはできないだろう。それは彼女が取り返しのつかないことで有名になってしまったからだ。ウクライナ国内の反対勢力とウクライナ元大統領のヴィクトール・ヤヌコヴィッチとの間の政治的対立が大きくなっていた2014年、彼女の私的な電話での会話が録音され、何者かによって漏洩されたのである。

 

 皮肉なことに、この会話録音の漏洩によってヌーランドは有名になったが、彼女が国務次官補としてやってきた仕事を誰も理解しようとはしなかった。

 

 アメリカ、ヨーロッパの外交筋からの情報だと、その当時にさんざん報道された内容とは異なり、ヌーランドの余計なひと言は、EUのヤヌコヴィッチ政権に対する姿勢に対する不満、またはEUに対するヌーランドの日ごろの考えから出たものではないということだ。

 

 F爆弾(fuckという言葉を使ったこと)が世界を駆け巡ったのだが、これは2014年1月初頭まで遡る技術的な不同意の結果として生まれたことなのである。当時、数多くの人々がキエフの独立広場での抗議活動に参加し、ヤヌコヴィッチ大統領の辞任を求めた。ヤヌコヴィッチは親露的な人物で、多くの公約違反を犯したが、EUとの政治・貿易協定への署名を見送った。

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ウクライナ反対派(ネオナチ勢力)と仲の良いヌーランドとマケイン

 

 アメリカ政府高官たちは、ヤヌコヴィッチに対してその当時の政権を放棄して、反対勢力の指導者たちを参加させるテクノクラート政府の樹立を行うように求めた。数週間の抵抗の後、ヤヌコヴィッチは態度を軟化させ、反対勢力に対して新政府で2つの地位を与えると提案した。これは外交上大きな転換点となった。ずる賢い政治家ヤヌコヴィッチにしてやられることを恐れた反対勢力は、話し合いに第三者、理想的にはEUが加わることを求めた。EUが話し合いへの参加を拒絶したことで、ヌーランドは怒り、そして後に後悔することになった激しい言葉遣いとなってしまったのだ。彼女はヨーロッパ諸国を遠ざけ、国連に肩代わりをさせるとことを考えたのだ。

 

 ヌーランドは次のように語った。「これは良いアイディアなのよ。状況を改善し、国連にその手助けをさせるというのは。ああそうそう、その点ではEUはダメね、クソ喰らえだわ」。

 

ドイツのアンゲラ・メルケル首相はヌーランドの電話での会話内容を「全く持って容認しがたい」ものだと述べた。ジョン・ケリー国務長官はEUの首脳たちに対してヌーランドの発言内容について謝罪した。

 

 人々の殆どは、電話の録音はロシアの諜報機関が漏洩させたもので、その目的はEUとアメリカとの間の溝を大きくすることだと考えている。

 

 しかし、ここまでのところ、この戦略はうまくいっていない。アメリカとヨーロッパは禁輸政策で多少混乱はしたが、一致した行動を取っている。2015年6月17日、EUは対ロシア禁輸を更に6カ月延長することに合意した。ロシア政府は延長をしないように激しく働きかけを行ったが失敗に終わった。しかし、ロシアの諜報機関は、ヌーランドとヨーロッパ諸国の交渉相手との関係は悪化しているという鵜沢を流し続けている。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回から2回に分けて、アメリカの恐ろしい外交官であるヴィクトリア・ヌーランドについての記事をご紹介したいと思います。

 

 ヌーランドについては、これまでにもこのブログでもご紹介しましたし、彼女の夫であるロバート・ケーガン(ネオコンに属する評論家)の本を私は訳しました。

 

 ヌーランド女史が怖いのは、民主、共和党のリベラル派(人道主義的介入派)、ネオコンそれぞれと良好な関係を持っており、2016年の米大統領選挙でどちらが勝とうがますますその重要性を増していく可能性が高い点です。

 

 それでは記事をお読みください。

 

==========

 

外交官らしくない外交官(The Undiplomatic Diplomat

 

アメリカ連邦議会内の対ロシア強硬派は、米国務省内の対ウクライナ政策の重要人物ヴィクトリア・ヌーランドを愛している。ヨーロッパ諸国の外交官たちの多くは彼女を嫌っている

 

ジョン・ハドソン(John Hudson)筆

2015年6月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/18/the-undiplomatic-diplomat/

 

6月のある暑い火曜日の午後、ジョン・マケイン連邦上院議員は、オバマ政権のウクライナ危機に対する対応について激しく苛立っていた。

 

 アリゾナ州選出のマケイン議員はホワイトハウスが犯したと考えられる間違いのリストを指さしながら、「余りにも恥ずかしく、情けない。怒りを何とか抑えている」と発言した。

 

 ある記者がマケインに「ウクライナ危機への対処を命じるべきアメリカの高級外交官について貴方はどう考えるか?」と質問した時、彼はバラク・オバマ大統領とイギリスのネヴィル・チェンバレン元首相を比較したばかりであった。

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ジョン・マケイン

 

 マケインは一瞬黙り、それから彼の態度は驚くほどに変わった。

 

 マケインは落ち着いた態度になり、「私は彼女の業績を高く評価している。彼女はとても頭が良い」と述べた。マケインは、アメリカのヨーロッパ担当外交官で最も高い地位にあるヴィクトリア・ヌーランドについて語ったのだ。

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ヴィクトリア・ヌーランド

 

 マケインはヌーランドを手放しで賞賛したが、彼以外にも連邦議員の中に彼女を評価する人々は数多くいる。その中には多くの民主党所属の議員たちも含まれる。しかし、世界で一カ所だけ彼女が賞賛されない場所がある。それはヨーロッパだ。ヌーランドの仕事はヨーロッパ諸国と協力で信頼に基づいた関係を築くことであるのだが、そうなっていないのが現状だ。

 

 『フォーリン・ポリシー』誌は、ヨーロッパ諸国の外交官たちに対して数多くのインタヴューを行ってきた。彼らはヌーランドについて、「軽率」「直接的」「強制してくる」「率直」「残忍」更には「外交官らしくない」という言葉を使った。しかし、純粋な外交政策の違いが彼女に対する不満の原因だとも強調した。ヌーランドは、ロシアが支援した反乱を鎮圧するためにウクライナに武器を送ることを支持したが、ホワイトハウスはこれを支持しなかった。

 

 あるヨーロッパの国の外交官は次のように述べた。「彼女は外交官の殆どが使う手法を使わない。彼女はよりイデオロギーを優先して物事に対処する」。

 

 現在、大西洋を挟んでアメリカとヨーロッパ諸国との間の関係は悪化しつつある。ヴィクトリア・ヌーランドはワシントンではスーパースターとして扱われている。一方、ヨーロッパではアメリカで彼女がスーパースターとして扱われるのと同じ理由で批判を受けている。これは大きな皮肉だ。

 

 ヌーランドは米国務省に外交官として入り、キャリアを重ねてきた専門の外交官である。そして、現在、ウクライナ危機に対処する重要なポジションにおり、更にはヨーロッパとユーラシアにある50のアメリカ大使館を統括している。東ウクライナで武力衝突が発生した結果6400名以上が死亡し、冷戦終結以来、米ロ関係が最も不透明になった時期、ロシアの侵攻に対する西側の一致した対応を形成し、それを維持するために、ヌーランドは数カ月の間、大西洋を何度も横断した。

 

 ワシントンにおけるヌーランドの人気の理由は、彼女がロシアを激しく非難し、ヨーロッパ諸国に対してより強硬な姿勢を取るように求める際に使う、攻撃的な激しい言葉遣いにある。

 

 2015年3月、ヌーランドはロシア政府がクリミアと東ウクライナで「恐怖支配」を実行していると糾弾した。その少し前、彼女はアメリカの政府高官では初めて公にロシアによるウクライナに対する攻撃を「侵略」と表現した。彼女は、「ロシアとロシアに操られた分離主義者の操り人形たち」が「言葉にできないほどの酷い暴力」を行使しているので、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に対してこれ以上の事態の悪化を招かないように行動するように要求した。連邦議会における証言で、ヌーランドはヨーロッパ諸国との交渉過程を「猫を集めている」ようだと表現した。昨年、駐ウクライナ米大使との電話でのやり取りの録音が暴露され、ヌーランドが「EUのくそったれ(fuck the EU)」と言ったことは広く報道された。

 

 クリス・マーフィー連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)は「彼女は攻撃の手を緩めない。私はヴィクトリアのファンだね」と述べた。彼自身は進歩的な外交政策を標榜している人物である。

 

 ヌーランドの地位は「ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補」という控え目なものだが、ここ数年、ヌーランドはアメリカの外交政策分野において重要人物として大きな役割を果たしてきた。彼女は、共和党のネオコンサヴァティヴ、そして民主党リベラル派と共に仕事をしてきた。ジョージ・W・ブッシュ前大統領の政権では、ディック・チェイニー副大統領の筆頭国家安全保障問題担当次席補佐官を務めた。現在のポジションに就く前は、ヒラリー・クリントン国務長官の下、米国務省報道官を務めた。

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ヒラリー・クリントン


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ヌーランドとディック・チェイニー 

 

 2013年9月に行われたヌーランドの宣誓式においてジョン・ケリー国務長官は次のように発言した。「独特な、いやこれまでにないグループと言える、ディック・チェイニー=ヒラリー・クリントン学校卒業生同窓会の最も重要な卒業生として、彼女は民主党側、そして共和党側両方から信頼を得ている」。

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ヌーランドとジョン・ケリー 


 彼女はヒラリー・クリントンと共和党の有力政治家たちと深いつながりを持っているので、専門家たちの多くは、2016年の米大統領選挙で民主、共和どちらの政党が勝利しても、ヌーランドは更に重要なポジションにつくだろうと予想している。彼女は更に目を離せない重要な外交官になる、という訳だ。

 

* * *

 

 ヴィクトリア・ヌーランドは現在のヨーロッパ・ユーラシア担当国務次官補になって様々な難しい仕事に直面している。

 

 ヌーランドの外交のやり方についてヨーロッパ諸国は不満を持っている。これは明らかであり、どの国も同じ程度不満を感じている。一方で、彼女は大変に難しい課題をこなしている。

 

 ヌーランドは自分よりも地位の高いヨーロッパ諸国の首脳たちと頻繁に会談し、彼らにとって聞きたくないことを平気で口にする。

 

今回くらいの規模の危機の場合、非常に微妙で複雑な仕事が多くなり、それらはヌーランドの上司である、政治問題担当国務次官ウェンディ・シャーマンのところにあげられるのがこれまでの常識であった。しかし、シャーマン自身はイランの核開発を巡る交渉に参加する交渉ティームを率いるという重大な仕事に忙殺されていたために、ヌーランドには通常、次官補では持ちえない影響力が与えられることになった。

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ウェンディ・シャーマン

 

 ヌーランドには大きな自律性が与えられた。その結果、これは公平なことかどうか確かなことは言えないが、彼女はオバマ政権内部のタカ派の人々を動かす原動力になっているという印象を人々に与えることになった。

 

 ヨーロッパに詳しいある議会スタッフは次のように語っている。「ヨーロッパ諸国の政府の多く、そしてロシア政府はヌーランドを嫌っている。しかし、それが理由となって、アメリカ連邦議会の議員たちは彼女を賞賛しているのだ」。

 

 ヨーロッパでは、ウクライナ政府に武器を供与せよと訴えた人物の第一がヌーランドだと見なされている。この主張にはドイツ、ハンガリー、イタリア、ギリシアが反対した。これらの国々は、ウクライナに武器を供与することでロシアとの衝突が拡大することを恐れたのだ。

 

 ホワイトハウスもまたウクライナに武器供与を行うことに反対であった。それは、アメリカがどんな形でウクライナに援助を与えても、ロシアはウクライナ軍を圧倒する能力を持つ、「エスカレーション支配」と呼ばれる力を持っているからだ。

 

 オバマ政権内部でウクライナへの武器供与を支持したのはヌーランドだけではなかった。しかし、ヨーロッパにおいては、ヌーランドはこの政策の顔的な存在となっている。それは、2月に開かれたミュンヘン安全保障会議で起きたある重要な出来事が原因である。

 

 会議の冒頭、ヌーランドとフィリップ・ブリードラヴ米空軍対象はアメリカ代表団に非公式の、記録に残されないことを前提にしたブリーフィングを行った。代表団には、12名の米連邦議会上下両院の議員たちも参加していた。ヌーランドとブリードラヴは知らなかったのだが、ブリーフィングが行われた部屋には、ドイツの新聞『ビルト』紙の記者が入り込んでおり、内容を記事にした。この記事はドイツ国内では大きな反響を呼んだが、英語メディアはこの記事を取り上げなかった。

 

 記事によると、ヌーランドとブリードラヴは議員たちに対して、ウクライナに防衛のための武器を供与することを支持するように圧力をかけ、ドイツ首相アンゲラ・メルケルとフランス大統領フランシス・オランドがロシアに対して行っていた外交努力をバカにした、ということである。

 

 ブリードラヴは次のように発言したと伝えられている。「私たちはウクライナに対して、ロシアを打ち破れるほど多くの武器を与えることが出来る立場にはありませんし、私たちの目的もウクライナによるロシアの撃破ではありません。しかし、戦場においてプーティンの負担を増大させる必要があります」。

 

 この時の通訳によると、ヌーランドは次のように発言したと言われている。「私たちがプーティンの攻撃システムに対抗するためにウクライナに供与しようとしているものは、“防衛システム”と呼んでいただきたいものですわ」。

 

 あるオバマ政権幹部は、このブリーフィングの報道について疑義を呈したが、実際に部屋にいてブリーフィングを受けた議員の1人、マイク・ポンぺオ連邦下院議員(カンザス州選出、共和党)は、フォーリン・ポリシー誌とのインタヴューで、ビルと紙の記事の内容が正しいと認めた。ポンペオは次のように述べた。「ミュンヘン安全保障会議に出席したのだが、この時、オバマ政権の高官たちは、アメリカ代表団に向かって、ウクライナに対する防衛のための武器供与を明確に主張したのである」。

 

 アメリカ政府高官はフォーリン・ポリシー誌の取材に対して、ミュンヘン安全保障会議の目的は、対ロシア政策について「ヨーロッパを落ち着かせる」以上のものではなかったと述べている。この高官は、ブリーフィングを行った人々は「最終決定は何もなされていない」ことを明らかにしたのであり、「アメリカはウクライナに地上軍を送る可能性があるという、ヨーロッパ諸国で広がっていた噂を打ち消」そうとしたのだと語った。

 

 ニュアンスはどうあれ、ミュンヘン安全保障会議の後、ヨーロッパ諸国は、ヌーランドが彼らの持つ対ロシアにおいてエスカレートしていくのではないかと言う懸念を軽くあしらい、オバマ大統領の考えとは違うことを述べているという印象を強く持つことになった。

 

ドイツの雑誌「ディア・シュピーゲル」誌に掲載されたある記事には次のように書かれていた。「ヌーランドは強硬派で、武器供与を支持した。彼女の上司にあたるオバマ大統領とは違い、彼女自身は何をなすべきかについて明確な考えを持っている」。

 

 ホワイトハスはこの記事に関してコメントすることを拒否した。

 

 ヌーランドが早い段階からウクライナに武器を送るように主張したことについて質問したところ、国務省のジョン・カービー報道官はこれまでにない調子で彼女を擁護した。彼はフォーリン・ポリシー誌の質問に対して次のように答えた。「ケリー国務長官はヌーランド国務次官補に対して大きな敬意を払っている。またアメリカとヨーロッパ諸国との関係における重要な時期、特にウクライナに対する支援が必要になった時、彼女からの助言と彼女の考えを必要とした」。

 

(続く)









 
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