古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

タグ:ウラジミール・プーティン

 古村治彦です。

 

 今年に入ってから、北朝鮮のミサイル発射が大きな問題になっています。最近では、大陸間弾道弾(ICBM)の開発に成功したのではないか、これでアメリカ本土も攻撃圏内に入ったのではないかと言われています。

 

 北朝鮮に関しては、直接的な利害を持つ国として、韓国、中国、ロシア、日本、アメリカが挙げられます。これらに加えて北朝鮮も参加しての6カ国協議も行われたことがありましたが、現在はその機能を停止しています。北朝鮮は中露には多少の遠慮がありつつ(それもこの頃ではだいぶ薄れているようです)、「アメリカとだけ交渉する」という態度を取っています。日韓に関してはアメリカに追従するしかないと見ているようで、それはまさにその通りです。

 

 アメリカは中国に対して、「北朝鮮を何とかしてくれ」と再三にわたって要請していますが、中国としては、北朝鮮に潰れてもらっては困りますし(朝鮮半島が韓国だけになってしまうと、北朝鮮地域に米軍基地が置かれてしまう心配がある)、急に貿易を止めてしまって北朝鮮を自暴自棄にしてしまうと迷惑を蒙るのは自分たちだと分かっていますから、あまり積極的(アメリカ側の視点からの積極的)には動こうとしません。

 

 ロシアも北朝鮮と国境を接し、旧ソヴィエト連邦時代からの関係もあります。ロシアは北朝鮮に対しては、アメリカとは異なったアプローチを考えているようです。「北朝鮮がハリネズミのようにミサイルと核開発を行っているのは、アメリカによる軍事的脅威がなくなっていないからだ、それなら、体制転換や軍事介入などの荒療治はしないとアメリカが保証すれば北朝鮮はミサイルや核兵器の開発を止めるだろう」というのがロシアの考え方です。

 

 このような考えに対して、ロシアは無責任だ、という批判もできるでしょう。しかし、北朝鮮と国境を接しているロシアは、北朝鮮で動乱が起きた場合には無傷では済まない可能性がある国です。実際に、日本海側にミサイルが発射されると、日本では日本に向けて発射されたかのように報道されますが、実際にはロシアの領土や領海により近い場所に落ちている場合もあります。ウラジオストックというロシアにとって重要な港湾都市の近くに落ちたこともあります。北朝鮮のミサイルがロシアに向けて発射される可能性もゼロではありません。

 

 しかし、ロシアの対応は非常に冷静です。それは北朝鮮建国以来、北朝鮮をずっと観察してきた情報と知識の蓄積があるからだと思います。そして、金正恩と北朝鮮は合理的な選択ができると考えています。ですから、ミサイルを発射させないうちに取引ができると冷静に見切っているようです。

 

 こうしたロシアの態度と考えを見ていると、アメリカ側がやや慌てて対応しているように見えてしまいます。そして、アメリカの内部に北朝鮮に対して軍事的に介入して押しつぶしてしまいたい、そのためには大変なことが起きても構わないと考えている人々がいるのだろうということが推察されます。ですから、決して、アメリカの攻撃的な言辞だけが北朝鮮に対応する際に正しいものだと考えずに、冷静になってみることも重要であると考えます。

 

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なぜロシアは金正恩の核兵器について懸念を持っていないのか?(Why Isn’t Russia Worried About Kim Jong Un’s Nukes?

―トランプ政権が北朝鮮との対決の方向へと進む中、ウラジミール・プーティンは戦略的な優位を獲得しようと考えている

 

クリス・ミラー筆

2017年7月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/07/17/why-isnt-russia-worried-about-kim-jong-uns-nukes/?utm_content=buffer09f90&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

7月4日はアメリカの北朝鮮政策にとって良くない日となった。それは、北朝鮮が大陸間弾道弾の発射を成功させたからではなかった。この日、ロシア大統領ウラジミール・プーティンと中国国家主席習近平がモスクワで首脳会談を行ったのだ。2人は共同で朝鮮半島の緊張を激化させないように支援するという声明を発表した。声明によって、北朝鮮の核兵器とミサイル開発の凍結と米韓両軍による大規模な軍事演習の中止が結び付けられることになった。

 

アメリカ政府は中露両国とは異なるアプローチを主張し続けている。アメリカ政府はこれまでの数カ月、北朝鮮の核開発プログラムとミサイル開発プログラムを停止させるように中国に対して、プレッシャーをかけるような声明を次々と発表してきている。先週、ドナルド・トランプ政権が、中国の行動が北朝鮮の核問題を解決できないようであれば、アメリカ政府は北朝鮮とビジネス関係を持っているという疑いのある中国の個人や企業に対して経済制裁を科すと主張し始めた。

 

しかしながら、トランプ政権は問題解決のためロシアも参加させようと努力している。今年5月、北朝鮮がロシアの太平洋岸の港湾都市ウラジオストック方面にミサイルを発射した後、トランプ政権は声明を発表し、その中で次のように述べた。「ロシアの領土の間近にミサイルが発射された。実際のところ、日本よりもロシアの領土に近いところにミサイルは落ちた。米国大統領はロシア政府がこのことを喜んで受け入れることを創造することができない」。

 

実際のところ、ロシア政府は北朝鮮のミサイルについてそこまで懸念を持っていない。もちろん、ロシアは朝鮮半島の非核化を望むであろう。ロシアは、朝鮮半島の緊張状態を解決する唯一の手段は北朝鮮と交渉し、金正恩体制に対して安全保障上の保証を与えることだと確信を持っている。ロシア政府は北朝鮮の核開発プログラムに制限を設けることを支持している。しかし、経済制裁については懸念を持ち、体制転換については明確に反対している。このロシアの態度はアメリカの考えとは一致していない。そして、国際的な努力に対する大きな障害となっている。

 

ロシアが北朝鮮に対してより懐柔的な政策を望む理由としてはまず自己利益が挙げられる。今年5月、北朝鮮がウラジオストック方面にミサイルを発射したのと同じ週、北朝鮮はウラジオストック向けの新しいフェリーを就航させた。

 

北朝鮮はイデオロギー的に自立圏を必要としているが、北朝鮮とロシアとの間の経済関係は驚くべき程に深い。両国は石炭や石油といった産品を交易しており、これはエネルギー不足に悩む北朝鮮にとって価値のある貿易となっている。統計上の数字は明らかになっていないが、ロシアには北朝鮮からの留学生が数多く学んでいるし、ロシア極東地方では北朝鮮出身の非熟練労働者たちが働いている。 ロシアと北朝鮮の経済関係の規模は限定的なものとなっているが、アメリカの制裁が解除され、北朝鮮政府が経済の開放を決定すれば、貿易額は増加すると考える専門家たちもいる。

 

ロシアが北朝鮮に対してより懐柔的な姿勢を取っている主要な理由は、ロシア政府の最高幹部たちが、北朝鮮の行動について、アメリカやアメリカの同盟諸国とは大きく異なる解釈をしているからである。ロシアはアメリカに比べて、より長い期間にわたり、北朝鮮を支配する金王朝について楽観的な見方を保持してきた。ロシアもまた短い距離ではあるが、北朝鮮と国境を接している。冷戦初期、北朝鮮とロシアは共産主義という信念を共有していた。しかし、イデオロギー上の連帯は遠い昔に既に消え去ってしまっている。

 

ロシア政府首脳たちは、金王朝は奇妙ではあるが、合理的でもあるということを確信している。しかし、ロシアの北朝鮮専門家たちは、「金正恩はミサイルや核兵器を攻撃的に使えば、アメリカによって核兵器による反撃を受け、自分は殺され、北朝鮮は亡ぼされることを知っている」と考えている。ロシアから見れば、 相互確証破壊の論理は冷戦期において核兵器の使用を思いとどまらせたが、これは現在でも北朝鮮からの攻撃を防ぐためには有効である、ということになる。従って、ロシアの専門家の多くが、北朝鮮の核開発プログラムは、北朝鮮が安全保障化に関してより自信を持たせ、アメリカが北朝鮮に対して軍事攻撃を行うことを差し控えさせるので、状況を安定させることに貢献すると主張している。

 

ロシア政府は北朝鮮問題についてアメリカ政府とは異なる立場をとるいくつかの理由が存在する。中国と同様、ロシアも北朝鮮政府がアメリカと同盟関係にある統一された朝鮮(韓国)に取って代わられることが利益とはならない。ロシア政府は中国政府と一緒になって、アメリカによる韓国国内のミサイル防衛システム配備を批判している。アメリカが東アジアに集中する限り、アメリカは旧ソヴィエト連邦地域の争いに注意を向けなくなる。旧ソヴィエト連邦地域は現在でもロシア政府にとって最重要地域である。こうした点から、北朝鮮に対して、ロシアはアメリカとは全く異なる立場をとることが容易いのである。なぜなら、金王朝の非妥協的な態度に対するアメリカ側の不満の多くは、中国に向けられるからだ。

 

ロシアからすれば、アメリカは朝鮮半島の緊張状態に関して、少なくとも北朝鮮と同程度の責任があるということになる。この考えからすると、金王朝の兵器開発プログラムは自己防衛が主たる理由ということになる。 ロシアの外交政策の著名な専門家であるフョードル・ルキアノフは「北朝鮮はたいていの場合、率先した行動よりも対応的な行動を行う。サダム・フセインとムアンマール・カダフィに何が起きたか、そして、脅しは決して賢いやり方ではないということを彼らの運命が示していることを北朝鮮は理解している。そこで彼らは核開発プログラムとミサイル開発プログラムを進めている。核とミサイルの存在によって、北朝鮮に対する外国からの介入は受け入れがたいほどに高い代償を支払うことになる」。ロシアの専門家たちの多くは、アメリカが体制転換という脅威を与えなければ、北朝鮮は何をおいても核兵器の開発をしなくてはならないと考えなかっただろうと主張している。

 

北朝鮮の核開発プログラムが存在する以上、トランプが発した北朝鮮に対する米軍の軍事攻撃という脅しは、北朝鮮からの脅威と同じほどに危険なものだとロシアは考えている。あまり言及されていないが、北朝鮮の持つ通常兵器の多くは韓国の首都ソウルを射程内に入れている。ロシアからすれば、軍事行動ではない経済制裁でも、北朝鮮が核兵器取得を目指す論理を変えることはないということになる。ただ、経済制裁によって実験や更なる開発は凍結できるかもしれないとは見ている。北朝鮮は既に、大規模飢饉と経済破綻があっても生き残ることができることを示した。ロシアの専門家たちは次のように問いかける。「アメリカは、より厳しい経済制裁を科すことで北朝鮮が核開発プログラムを放棄すると説得できると考えている。核兵器は北朝鮮がアメリカからの攻撃に対して唯一対抗できる防御策であるのに。アメリカはどうしてこんな考えをするのだろうか?」。

 

核開発プログラムをまず放棄させるという考えはアメリカの行動における重荷となってしまっている。ロシアの専門家たちは、アメリカが朝鮮戦争を最終的に終結させる平和条約に署名しておらず、現在も北朝鮮に軍事的脅威を与えている、と指摘している。今週、北朝鮮がミサイル実験を行った後、プーティンは北朝鮮を非難することを差し控え、中国が北朝鮮とアメリカ双方にこれまでの流れを変えるように訴えたことを支持した。

 

アメリカ政府は、中国が北朝鮮に対して圧力をかけてこれまでの流れを変えようとしないことやその能力に欠けていることに対して、不満を募らせている。そして、その他の選択肢に方向転換しつつある。北朝鮮にアメリカを攻撃できる可能性を持つミサイルの開発とテスト継続させることは訴える力を持たない選択肢である。特に、トランプ大統領が、北朝鮮の核兵器がアメリカに到達することは「起こらない!」と述べた後では、そうだ。北朝鮮の核兵器を除去するために軍事面から圧力をかけることは、韓国や日本を巻き込むより広範囲な戦争を引き起こすリスクを持っている。

 

アメリカ政府が朝鮮半島における目的を軟化させ、北朝鮮の核開発プログラムを受け入れ、北朝鮮に対して安全保障上の保証を与えるならば、ロシア政府は北朝鮮が武器の実験とミサイル開発を止めるように圧力をかけることに参加するかもしれない。しかし、アメリカ政府が軍事力による解決や体制転換を選択肢として残す限り、ロシア政府は批判の矛先を金正恩ではなく、ドナルド・トランプに向けるだろう。

 

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 古村治彦です。

 

 今回は1956年の日ソ共同宣言調印までの動きをまとめた本『日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実』(松本俊一著、佐藤優解説、朝日選書、2012年)を読んで学んだことや感じたこと、更に昨日から考えたことを書きたいと思います

 

 本書は、1966年に朝日新聞社から出版された『モスクワにかける虹 日ソ国交回復秘録』を新たなタイトルにし、更に元外交官の佐藤優(さとうまさる、1960年~)氏の解説を付けて出版されたものです。

 


 本書の主題は、日ソ国交回復に向けた交渉と1956年の日ソ共同宣言調印までの動きです。1955年1月に動き出した日ソ国交回復の動きは、ロンドンとモスクワでの交渉を経て、1956年10月の日ソ共同宣言の調印で終わります。この2年間の動きを、当事者である松本俊一が克明に描き出しています。

 

 私が今回この本を読もうと思った理由は、今年の12月15日に安倍晋三首相がロシアのウラジミール・プーティン大統領を地元の山口県に招待し、下関にある有名な料亭旅館である春帆楼(しゅんぱんろう、日清戦争後に、日本側代表・伊藤博文、清国側代表・李鴻章が下関条約について話し合った場所)で、日露間にとって、なかなか取れない棘のようになっている領土問題を解決する意向であるということを受けて、60年前にはどのような交渉が行われたのかを知りたいと思ったことです。

 

 今回の日ロ交渉では、安倍首相の参謀役となっている鈴木宗男元議員は、歯舞、色丹の返還と+アルファで日ロ平和条約締結まで行きたいと考えているようです。この鈴木氏の懐刀となっているのが今回ご紹介する本の解説をしている佐藤優氏です。

 

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2島+アルファ」で解決を=北方領土交渉で鈴木宗男氏

 

時事通信 10/29() 14:57配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161029-00000051-jij-pol

 

 ロシア外交に詳しい鈴木宗男元北海道・沖縄開発庁長官は時事通信のインタビューに応じ、北方領土交渉について、歯舞群島と色丹島の返還に加え、国後島の共同統治などで合意する「2島プラスアルファ」の解決策が現実的だとの考えを明らかにした。

 

 

 鈴木氏はプーチン政権要人らとパイプがあり、安倍晋三首相と北方領土問題をめぐり意見交換を重ねている。

 

 平和条約締結後の歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した1956年の日ソ共同宣言について、鈴木氏は「プーチン大統領も認めている。ここがスタートラインだ」と指摘。その上で「何がプラスアルファで出てくるかで判断すべきだ」と述べ、国後島の共同統治のほか、同島への経済特区導入や元島民の自由往来、周辺海域の漁業権獲得などをロシア側が受け入れれば、平和条約締結に踏み切るべきだと主張した。

 

 鈴木氏は、国後、択捉両島について「その2島を返せ、と声高に唱えることは現実的ではない」との認識を表明。「ロシアの世論調査で8割が(北方領土を)返す必要がないと言っている。全部返すなら、プーチン氏は大変なリスクを負う」と語った。 

 

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 2つ目は、2016年11月20日に私が所属する「副島隆彦を囲む会」が主催いたしました第36回定例会で、鳩山由紀夫元首相をお迎えしての講演会を開催したことです。鳩山元首相の祖父にあたる鳩山一郎元首相が熱意を持って進めた日ソ交渉について知りたい、そして、鳩山由紀夫元首相は、普天間基地の移設問題で最終的に辞任に追い込まれましたが、「祖父・鳩山一郎元首相の日ソ国交回復の時にはどんな好条件と悪条件があったのか、そして、普天間基地移設問題で孫の鳩山由紀夫元首相が退陣することになったのが、それはどんな条件が足りなかったせいなのか」について考えたいと思ったことです。

 

 本書の著者、松本俊一(まつもとしゅんいち、1897~1987年)は、生粋の外交官です。1921年に東京帝国大学法学部卒業後に外務省に入省しました(24歳)。本書の解説をしている佐藤優氏によると、松本俊一は、当時の主流派である「ABC外交官(アメリカ[America]、イギリス[Britain]、中国[China]を主な勤務地とする外交官)」ではなく、フランス語圏を勤務地とする外交官でした。在ベルギー外交官補、アントワープ領次官補、在フランス大使館などフランス語圏を勤務地としています。現在の言い方で言うと、フレンチ・スクールに属していたということになります。

 

戦時下の1942年には、東條英機内閣で外務大臣となった重光葵の下で、外務次官を務めます(45歳)。また、終戦を決めた鈴木貫太郎内閣では外相の東郷茂徳の下で再び外務次官となります(48歳)。

 

 その後、公職追放となりますが、1952年に解除となり、外務省顧問に就任し、続いて、戦後初の駐英国日本大使に就任します。1955年の総選挙では、鳩山一郎(1883~1959年)率いる日本民主党から立候補して当選、代議士となります(58歳)。代議士になった直後、鳩山首相(鳩山内閣は1954年12月10日に成立)から、日ソ国交回復交渉の全権に起用されました。その後、1956年の日ソ共同宣言まで、日ソ交渉に関わり続けました。

 

 松本俊一は、1958年に岸信介内閣で内閣官房副長官に就任しますが、1963年の総選挙で落選してしまいます(66歳、3期連続当選でストップ)。その後、再び、外務省顧問となり、1965年にはヴェトナム戦争の調査団として、ヴェトナムを訪問し、報告書を提出、その中に、「アメリカの敗北は避けられない」と書き、物議をかもしました。また、この年から1969年まで日本アラブ協会会長も務めました。対米従属を第一とする戦後の主流外交官とは一線を画す存在であったと言えます。それは、彼が今でいうところのフレンチ・スクールに属していたからであろうと思います。ヴェトナム戦争の調査団に抜擢され、アメリカの敗北を予想できたのも、フランス語が堪能であったので、アメリカ側からの情報だけではなく、地元ヴェトナム人の声を理解できたからだと思います。

 

 日ソ共同宣言調印に至る過程にはいくつかの段階があります。

 

1.はじまり(ソ連側からの接触と日本側の交渉開始決定):1954年12月―1955年5月

2.ロンドン交渉(松本俊一全権とヤコフ・マリク全権との間の交渉):1955年6月―1956年3月

3.漁業交渉(河野一郎全権[農水相]とニコライ・ブルガーニン首相との間の話し合い):1956年3月―1956年5月

4.モスクワ交渉(重光葵全権とドミトリー・シェピーロフ全権との間の交渉):1956年7月―9月

5.モスクワ交渉(鳩山一郎首相とブルガーニン首相、ニキータ・フルシチョフソ連共産党第一書記との間の交渉):1956年9月―10月

 

 日ソ国交回復は1954年12月に鳩山一郎内閣が発足してから動き出すことになります。日ソ国交回復はソ連側からの打診で始まりますが、日本側としても、シベリアに抑留されている日本人の帰還を実現させるためにソ連への接触が必要でした。しかし、鳩山政権成立まで、日ソがコンタクトを取るという雰囲気にはありませんでした。太平洋戦争の最終盤にソ連がまだ効力を持っていた日ソ不可侵条約を無視して満州と樺太、千島列島に侵攻し、日本人を多数連行してシベリアに抑留して強制労働させていたことに反感がありましたし(これについては今でも日本側には残っていると言えます)、冷戦が始まり、アメリカ率いる西側自由主義陣営に属することになった日本が軽々にソ連と交渉することは難しいという事情がありました。また、上記のような理由から、吉田茂や重光葵といった外務省出身の政治指導者たちにはソ連に対しての不信感もありました。

 

 鳩山一郎は日ソの国交回復(日ソ平和条約[戦争状態を止める条約]締結)と抑留された日本人の帰還、国連加盟を主張していました。ソ連側は鳩山政権成立が日ソ交渉を始めるタイミングだということで、鳩山一郎に話を持ちかけました。そして、鳩山一郎は代議士に当選したばかりの、外交官出身(米英系ではないフレンチスクール)の松本俊一を交渉全権に抜擢しました。

 

 1955年から松本俊一全権とヤコブ・マリク全権による交渉がロンドンで開始されました。焦点は日本人抑留者の早期帰還、国連加盟と北方領土問題でした。抑留者の期間に関しては、双方ともに異論はなかったわけですが、北方領土(国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島)の返還問題では日ソ双方の意見は平行線をたどりました。歴史的経緯から見れば、これらの島々は日本に帰属すべきものですが、実質的にはソ連が占領している状態です。

 

 ソ連側としては、歯舞群島と色丹島の返還(国後島、択捉島はソ連に)で手を打って、それで日ソ平和友好条約を締結するつもりでした。松本全権も、「この条件での交渉妥結、平和条約締結が妥当」という判断を下しました。しかし、国内の反鳩山である吉田茂をはじめとする人々はこのような条件には絶対反対でした。

 

 その後、1956年7月に重光葵外相(松本俊一の外務省・代議士を通じての先輩)が全権としてモスクワに乗り込んでのドミトリー・シェピーロフ(外相)全権との交渉が開始されました。重光葵は四島返還を強硬に主張し、松本と対立していました。しかし、モスクワ交渉を通じて態度を豹変させ、「二島返還を可とする」という内容の電報を日本に送ることになります。この時、重光は首相の座を狙っており、日ソ交渉妥結、日ソ平和条約締結を自分の手柄にしようとし、強い態度で交渉に臨み、しかし、最後まで頑張ったが最後は妥協せざるを得なかったが成果は得たという演出をしようとしたのではないか、と松本は推測しています。しかし、日本に残っていた鳩山首相や側近の河野一郎農相は、重光の態度豹変を受け入れられない(二島返還に反対ではないが)、もっと頑張るようにと返事を送りました。

 

 このモスクワ交渉が行われている1956年8月19日、重光外相はロンドンの米国大使館を訪問し、ジョン・フォスター・ダレス国務長官と会談しました。この時、ダレス長官は、「日本が国後島と択捉島を放棄するのなら、サンフランシスコ講和条約第26条に基づいて、沖縄をアメリカに併合する」と述べました。これは「ダレスの恫喝」と呼ばれるものです。サンフランシスコ講和条約第26条では、日本がある外国と戦後処理で講和条約締結内容以上の利益を与える場合には、講和条約締結国にもそれと同程度の利益を与えられねばならない、というもので、貿易協定における最恵国待遇と同じような内容であると言えます。

 

 沖縄をアメリカに併合されてはたまりません。また、これはアメリカが二島返還で妥協しての日ソ平和条約締結を望んでいないことのシグナルであるということになり、日ソ平和条約締結を諦め、共同宣言方式で、領土問題は残っていることを確認しながら、国交回復ということになりました。

 

 日本の日ソ平和条約締結を阻止する形になった、ジョン・フォスター・ダレスは、日弁安保体制の「設計者」とも言える人物です。ダレスは、日米安保体制の根幹を「アメリカが、日本国内の好きな場所に、必要な規模で、いつでも、そして必要な期間に基地を置くことが出来る」ことに設定しました。そして、この状況は残念ながら全く変わっていません。この戦後の日本の「対米従属」「植民地化」の枠組みを決めたダレスが、日本の独自外交である日ソ交渉を阻害したのは、「日ソ間で大きな懸案を残すことで、日本がアメリカから離れないようにする」という目的もあったと思われます。

 

 昨日、沖縄に配備されていたオスプレイが墜落大破するという事件が起きました。翌日から安倍晋三首相とウラジミール・プーティン大統領との間で北方領土問題に関して「新しいアプローチ」づくりによる問題解決を目指す交渉が行われるというタイミングで事件は起きてしまいました。

 

また、日露首脳会談の前に、既に北方領土返還はほぼ不可能であるという内容の報道もなされています。それは、ロシア側が北方領土を返還した場合に、そこに米軍基地を置くのかという問いをし、それに対して、日本側は「その可能性を排除できない」と答えたことで、ロシア側が態度を硬化させたというものであり、「ロシア側は日本が独自に決定できない」ことに懸念を持っているというものでした。

 

 ロシアにしてみれば、自分が持っている限りは絶対に米軍基地など作らせない需要な地域を日本に引き渡して、そこに米軍基地が作られてしまえば、歴史に残るほどの大失態になります。ですから、返還をする場合には慎重の上にも慎重を期して、米軍基地を作らせないという確約が欲しいですし、それがないなら、わざわざ返還する必要はないということになります。現実的には米軍基地が作られる可能性はかなり低い、ほぼないと言っても、そこをうやむやにしたままにはできません。

 

 日本側にしてみれば、北方領土返還と日露平和友好条約締結は、戦後処理の大きなパートということになります。しかし、「米軍基地を作らせない」ということを日本が独自に決めることはできません。それは、日米安保体制の根幹は、その設計者であり、日ソ交渉の妥協を阻害したダレスが設定したように、「日本国内の好きな場所に米軍基地を作ることが出来る」ということだからです。北方領土をその例外にしてしまうと、つまり、日本国内に米軍基地を作ることが出来ない場所が出現すると、その「例外」が「前例」となってしまい、日米安保体制の根幹を崩すアリの一穴になってしまう可能性が出てきます。

 

 日米両国内の日米安保体制維持によって利益を得ている人々、既得権を持っている人々にしてみれば、これは大変危険なことです。

 

 このように考えていくと、二島返還+アルファか、四島返還かということ以前に、「日本の領土となることは、米軍基地建設がされる場所になること」ということになり、これは、領土交渉や国境画定交渉において大きな障害となります。

 

 近代国家を構成する三要素は、国民、国土、国境であり、その中で主権が存在します。主権とは、国家を構成する枠組みや形を決める権利ですが、日本にはそれを独自に決められないということであり、この点では残念ながら、近代国家の要件を実質的に一部書いている半主権国家と言うことができ、これは属国、従属国と言い換えることができると思います。

 

 日本は、経済規模は世界有数の大きさであるが、半主権国家である、という前提から物事を見ていくということの重要性を改めて認識しています。

 

(終わり)














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 古村治彦です。

 

 トランプとプーティンが電話会談をし、その中で、米ロ関係の改善に協力していくことで合意したということが報じられました。トランプは、選挙期間中に北朝鮮の金正恩委員長とも話し合っても良いと発言していましたから、民主国家ではないという理由で、一概に悪いくにだと決めつける(それなのに、アメリカに役立つ非民主国家である中東の産油国や中央アジアの独裁国家を悪とは決めつけない)人道的介入主義派やネオコンとは全く異なる外交姿勢を取ることになるでしょう。

 

 しかし、問題は国務長官の人選であり、その下の副長官、国務次官、国務次官補くらいまでの人選です。国務長官には、ルディ・ジュリアーニの名前が出ていますが、ジョージ・W・ブッシュ政権のネオコンのジョン・ボルトン、ヘンリー・ポールソン財務長官、日本人にもなじみ深いリチャード・アーミテージ国務副長官の名前が出ています。

 

 トランプの現実主義的な外交姿勢を政策と実行するためには、ネオコンという訳にはいきません。そもそもネオコンの人々は、トランプに反対していました。ネオコンの代表的な論客ロバート・ケーガンはヒラリーのために資金集めパーティーまで計画していたほどです。

 

 トランプが結局、ワシントンのエスタブリッシュメントに絡め取られてしまうかどうか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプはプーティンと話をし、「永続的な」関係構築を楽しみにしていると述べる(Trump talks to Putin, looks forward to 'enduring' relationship

 

クリスティーナ・ウォン筆

2016年11月14日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/business-a-lobbying/305929-putin-tells-trump-he-wants-dialogue-based-on-non-interference

 

ドナルド・トランプ次期大統領は月曜日、ウラジミール・プーティンからの大統領選挙勝利に対する祝福を受け入れ、ロシア大統領に対して、「私はロシアとロシア国民との間で強力なそして永続的な関係を築くことを楽しみにしている」と述べた。

 

トランプの政権移行ティームは声明を発表し、トランプとプーティンは「アメリカとロシアが直面している脅威と挑戦、戦略的な経済諸問題、過去200年以上の米ロ関係の歴史」について議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で、指導者2人が「現在の米ロ関係の冷え切った状態を評価することに同意し、関係正常化に向けた協力関係に向けた話し合いを行った。話し合いは諸問題について建設的な協力を行う方向性を持って行われた」。

 

クレムリンは声明の中で、「両指導者は、米ロ間の貿易と経済協力の発展を通じて両国間の堅固な基礎を構築する重要性を強調した」と述べた。

 

トランプは選挙期間中、プーティンを強力な指導者として賞讃してきたことはよく知られている。それに対して、共和党と民主党から批判が出ていた。トランプはテロリストとの他戦いでロシアとの協力が必要だと述べ、NATOとの再交渉ついてのトランプのコメントはロシア政府から評価された。

 

アメリカとロシアとの関係はここ10年間、冷え切っている。オバマ政権は、2014年にロシアがウクライナ領であったクリミア半島を併合したことを厳しく非難した。

 

トランプの政権移行ティームの論調は全体として協力的なトーンであった。一方、オバマ大統領とプーティン大統領との会談の論調は、全体として米ロ間の同意できない点を強調するものであった。

 

クレムリンは声明の中で、プーティンとトランプはこれからも電話を通じて対話を続け、会談実現に向けて協力していくと述べた。声明は、両指導者がテロリズムと過激主義との戦いのために協力して対処していくことに必要性とシリアにおける危機を終結させることについて議論したと述べた。

 

クレムリンは声明の中で更に、「プーティン大統領は、トランプ次期大統領との電話の中で、平等、相互尊重、内政不干渉といった諸原則に基づいて、新政権と対話を築きたいと語った」とも述べた。

 

プーティンは更に、「実践的な、相互利益をもたらす協力(両国の利益に適う)、世界の安定性と安全」への復帰することも止めた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)









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 古村治彦です。

 

 私は本ブログの20160726日の記事「波乱の民主党全国大会開会:ヒラリーはどこまでも「Eメール」(とロシア)に祟られる」の中で、次のように書きました。

 

(貼り付けはじめ)

 

民主党とヒラリーは防戦として、「差別主義者で生まれながらの金持ちであるトランプをあなたは支持するのですか」「女性を侮辱し続けてきたトランプを選ぶのか、女性でも大統領になれることを証明することに参加するのか、どちらですか」といった主張を行うでしょう。また、「人権抑圧国で、周辺国への侵略を行っているロシアに対してトランプは友好的だ。ヒラリーは厳しい態度で臨むと言っているので、このような謀略を仕掛けられたのだ。あなたは外国による選挙への介入を許しますか」という訴えも行うでしょう。

 

(貼り付け終わり)

 

 私は、ヒラリーがこのような訴えをする時は、①トランプを最終的に突き離せると判断した時か(これはあまり必要がない選択肢です)、②自分がトランプに追い詰められている時か(トランプと自分を突け狙うジュリアン・アサンジも含まれます)、のいずれかだと考えていました。現在は、Eメール問題に、国務省とクリントン財団の不適切な関係、更には健康問題まで出て、ヒラリーは追い詰められています。ですから、私が考えた②のケースが出てきているということになります。

 

 ヒラリーが余りマスコミとの会見を行わず、民主党の連邦議員選挙候補者たちのための資金集め活動をしている間に、ヒラリーの支持率が急落しています。そこで、今回、ヒラリーは、「今回のアメリカ大統領選挙に外国が、しかもロシアが介入している」という主張を20分以上にわたって記者たちに語ったということです。

 

 問題は、ヒラリーが「ロシアが大統領選に関与していることを示す「信頼できる報告」があるとして懸念を表明した」というところです。ここに出てくる「信頼できる報告」があるということをヒラリーがマスコミの前で明言したということは、その報告なるものがどんなものであり、実際にアメリカ国民や世界の人々が読めるようにしなければなりません。つまり、この報告なるものが存在することを証明する証拠をヒラリーが出す義務を負ったということになります。そして、そもそもどうしてヒラリーがこの報告なるものの存在を知ったのか、もし読んでいるとすると、どうして読むことが出来たのかを説明しなくてはなりません。

 

 もし、この報告なるものを実際に表に出すか、少なくとも存在する証拠を出せなければ、ヒラリーは、デマを流して世論を誘導しようとしたということになります。もし報告そのものがなくて、ただのハッタリだとすると、彼女は最低のカードを切って、自滅することになります。もし存在すると、その内容の程度にもよりますが、トランプに対しては一定のマイナス効果となるでしょう。

 

 FBIは、先週、トランプ、ヒラリー両陣営の一般スタッフ向けに、外国のスパイ対策のためのブリーフィングを別々に行ったということです。発表の内容から見て、「怪しい人物が近づいて来たら上司に報告する」「うまい儲け話には乗らない」といった当たり前の内容の講習会のようなものだっただろうと私は判断します。

 

 FBIとしては、民主党側からの「外国のスパイが絡んでいるに違いない、なんとかせよ」というあまり真実味のない話を受けて、アリバイ程度に講習会をやったものと思われます。もし本当に外国、ロシアの介入があるとすれば、もっと真剣に対策を練っているでしょう。ただ、表面上はのんびりと見せておいて、水面下では暗闘が行われている可能性も捨てきれません。


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 ロシアのプーティン大統領は、トランプ、ヒラリー双方がロシアを使ってお互いを攻撃し合っている姿を悲しんでいるように見せつつ、裏ではほくそえんでいることでしょう。ロシアがアメリカ国内で諜報活動を行っていることは事実でしょうが、大統領選挙に介入しようとしているかは分かりません。しかし、ハッキング事件が起きた後に、「あれはロシアの仕業だ」という話が出ることは、ロシアが国際政治において影響力を持ちつつある、アメリカでもロシアを無視できないということになり、ソ連時代のことを考えれば、影響力を回復しつつあるということを示しています。

 

 アメリカが対ロシアのヒステリー状態になったのは戦後すぐで、ジョセフ・マッカーシー連邦上院議員による、非米活動委員会を舞台にした赤狩り、マッカーシズム旋風が吹き荒れた時でした。この時はソ連は戦後復興と原子爆弾開発、東側ブロックの盟主としてアメリカを脅かしていきました。それは1960年代くらいまで続きますが、その後は、「張子の虎」となってしまいました。

 

 プーティンは「偉大なロシアの復活」を自分の目標として掲げています。しかし、その道のりは厳しく、ソ連崩壊後のロシアは見向きもされない国になりました。先進国首脳会議のメンバーにも入れてもらいましたが、やがて追い出されました。

 

 しかし、天然資源を武器にして、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という新興大国の一角として存在感を増していきました。そして、20世紀の歴史的遺産を武器にして、「アメリカのライヴァル」「アメリカの恐れる相手」になりました。

 

 今回のこのロシアをだしにしたトランプ、ヒラリー双方の戦いは、いみじくもロシアの存在感が増していることを示す結果になりました。トランプは、「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国に)」というスローガンを掲げていますが、彼は「Make Russia Great Again(ロシアを再び偉大な国に)」にも貢献したことになりますし、脇役のヒラリーも貢献したということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「クリントン氏、米大統領選へのロシア関与を懸念」

 

ロイター通信 2016年9月6日

http://jp.reuters.com/article/usa-election-clinton-idJPKCN11C0PP

 

 9月5日、米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏は、ロシアが大統領選に関与していることを示す「信頼できる報告」があるとして懸念を表明した。写真はイリノイ州モリーンで5日撮影(2016年 ロイター/Brian Snyder

 

[ハンプトン(米イリノイ州)5日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補ヒラリー・クリントン氏は5日、ロシアが大統領選に関与していることを示す「信頼できる報告」があるとして懸念を表明した。

 

クリントン氏は遊説用の飛行機内で20分超にわたって記者団の質問に応じ、民主党も共和党もロシアの行動に関心を持つべきだと指摘した。「われわれの情報専門家たちがこの問題を検証し、深刻に受け止めているという事実は、ロシアが我が国の選挙過程に関与している可能性について、重大な問題を提起している」と述べた。

 

同氏は「われわれは極めて重大な懸念に直面している。これまでに、外国の敵対勢力がわれわれの選挙過程に関与した例もなければ、主要政党の候補がロシアにハッキングを促した例もない」と述べた。

 

共和党のドナルド・トランプ候補はプーチン大統領を賞賛。ロシアに対し、クリントン氏の国務長官時代の「行方不明の」電子メール数万通を探し出すよう求めた。トランプ氏は後に、皮肉のつもりだったと釈明している。

 

クリントン氏は、米民主党全国委員会(DNC)のコンピューターがサイバー攻撃を受けたことについて、ロシアの情報機関が関与したと断言している。

 

ロシア政府がトランプ氏を支援しようとしていると思うかとの質問に、クリントン氏は「私はしばしば、アーカンソー州に長年暮らして学んだ偉大な格言を引用する。支柱の上にカメがいたら、独力で上ったわけではない、というものだ。トランプ氏が指名候補となった時期と前後してこの現象が起きたことは実に興味深いと思う」と語った。

 

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プーティンは、クリントン、トランプによる「ショックを与える攻撃」を悲しむ(Putin bemoans 'shock tactics' used by Clinton, Trump

 

ジェシー・ヘルマン筆

2016年9月2日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/294238-putin-bemoans-shock-tactics-used-by-clinton-trump

 

ロシアの指導者ウラジミール・プーティンは、大統領選挙でドナルド・トランプとヒラリー・クリントン双方が「ショックを与える戦術」を使っていると切って捨てたが、どちらを支持するかについては発言を拒否した。

 

プーティンは『ブルームバーグ』誌とのインタヴューの中で、「双方がショックを与える戦術を使っている、それぞれが独自の方法で」と述べた。

 

プーティンは続けて、「素晴らしい模範となっているとは思わない」とも述べた。

 

プーティンは、共和党の大統領選挙候補者トランプに肩入れしている、そして、大統領選挙に介入していると非難されている。プーティンは、トランプ、ヒラリー双方がロシアを使ってお互いを攻撃していることを悲しんだ。

 

プーティンは、ヒラリーとトランプ両方ともに「大変賢い人物」で、「どのボタンを押せば支持を得られるかを理解している。これはアメリカの政治文化の一部だ」と述べた。

 

ロシアはこれまでにない形で人々の注目を集めている。2016年7月、トランプは、ロシアに対して、ヒラリーが国務長官時代に使用していた私的なEメールサーヴァーが問題になっており、そこから消去された3万通のEメールを見つけ出すように頼んだ。

 

トランプは更に、ヒラリーが長官時代の国務省が、アメリカ国内のウラニウム関連資産のロシアによる取得を承認したことを非難した。この決定は、投資家たちがクリントン財団に1億4500万ドルの献金を行うという合意を取り付けた後に、行われた。

 

プーティンは、「私たちがクリントン家をコントロールしているとでも言うのだろうか?それは全くもって馬鹿げている」とプーティンは述べた。

 

プーティンは、責任を持って決定ができる人物であればその人が誰であろうとも協力したいとし、「その人物の苗字が何であろうとも関係ない」と述べた。

 

「その人物がアメリカ国民の信頼を享受することが必要不可欠だ」とプーティンは述べた。

 

「だから、私たちは絶対に介入しないのだ。介入しないし、アメリカ国内の政治過程に介入しないように努力しているのだ」とも述べた。

 

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FBIが選対の一般スタッフに対して、スパイからの働きかけを避けるための訓練を行う(FBI trains campaign staffs to avoid spies

 

ジョー・ユーチル筆

2016年9月1日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/294096-fbi-trains-pres-campaigns-to-avoid-spies

 

FBIは8月31日、トランプ、ヒラリー・クリントン両選対の一般スタッフに対して、外国のスパイに関する「自発的な参加による注意喚起のブリーフィング」を別々に行った、とABCニュースが報じた。

 

FBIは、これらのブリーフィングは、「個別の外国からの脅威が差し迫っているから行われたものではない」とし、「標準的な行動」の再確認を行ったと発表した。

 

 

今回のブリーフィングは、今年の大統領選挙に外国の諜報機関が不正に関与しているのではないかという疑惑が大きくなっている中で行われた。

 

トランプ、ヒラリー両選対は、外国の諜報機関からの攻撃を防御するためにいくつかの企業と契約している。両陣営ともとロシアの標的になっていると考えられているが、今のところ、両陣営の選挙運動が妨害されたことを示す証拠は存在しない。

 

アメリカ政府の諜報特別委員会のメンバーの多くは、民主党全国委員会と民主党議会選挙委員会に対するハッキングはロシアによって行われたという確信を持っている。

 

イリノイ州選挙管理委員会に対するSQLインジェクション攻撃(SQLデータベースのプロトコールに対する攻撃)と、アリゾナ州の選挙失効システムへの攻撃(失敗に終わった)は、ロシア政府がやらせたという非難の声が上がっている。

 

8月末、連邦上院民主党院内総務のハリー・リード連邦上院議員(ネヴァダ州選出、民主党)は、FBIに対して、今回の大統領選挙に関してロシアの影響力が及んでいないかを監視するように求め、民主党所属の連邦下院議員4名は、トランプ選対とロシアとの関係について捜査するように求めた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

ヌーランドとホワイトハウスとの間で考えは一致していないが、民主、共和両党に属する連邦議員たちは、ヌーランドの言っていることは正しいと確信を持っている。

 

 連邦下院外交委員会で民主党側を率いる議員でミュンヘン安全保障会議にも出席したエリオット・エンゲルは次のように発言している。「彼女の話を聞くと元気が出る。私たちはウクライナに対して防衛を目的とした武器を供与すべきなのだ。ロシアがいつもウクライナを打ち破るという主張に私は与しない。それは敗北主義的態度だと思う」。

 

 エンゲルのタカ派的態度は彼だけのものではなく、連邦議会上下両院の議員たちの多くの態度でもある。

 

 2014年12月、連邦議会は多くの議員の賛成により、大統領に対してウクライナに、弾薬、兵士が操縦する調査用のドローン(無人飛行機)、対戦車兵器を含む最終的な支援を与える権限を与える法律を可決した。オバマ大統領も可決された法案に署名することに同意した。それはこの法律は大統領にウクライナへの支援を強制する内容ではなかったからだ。連邦上院は今週、新しい戦術を試すために、法律の改正を行おうとしている。この改正は、対ウクライナ支援のための予算のうちの20%までが使われるまでの間、ウクライナの安全保障支援のための3億ドルの半分の執行を停止するという内容だ。この法律改正についてはホワイトハウスが反対している。それは、アメリカが最終的な支援を行うことでウクライナにおける流血の惨事がエスカレートし、プーティンには更なる暴力的な侵攻を行うための口実を与えることになるとホワイトハウスは恐れているのだ。

 

 アメリカ連邦議会とホワイトハウスの政策の違いが、ヌーランドと彼女に応対するヨーロッパ諸国の外交官たちの間の不和の原因だという説明もなされているが、彼女の厳しい姿勢もまた原因だと主張する人々もいる。

 

ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究所(SAIS)の上級研究員フェデリガ・ビンディは「ヌーランドの攻撃的な姿勢は、少なくともヨーロッパの外交界においては行き過ぎのように感じられている」と述べている。

 

 ヌーランドを擁護する人々は、ヌーランドの「厳しい愛情」という特徴こそ、昨年のロシアによるクリミア併合後のロシアに対するアメリカ政府の対応に必要であったと述べている。

 

 ホワイトハウスの戦略は、厳しいが非軍事的な方法を混合させた形の対ロシア政策を実施し、それによってヨーロッパの団結を図るというものである。この政策に含まれるのは、昨年9月に開始されたアメリカとEUによるロシアのエネルギー国営企業、武器製造企業、金融部門を標的とした経済制裁、G8からのロシアの除外、同盟諸国に対してプーティンをそれぞれの首都に招かないこと、もしくはロシアを国賓待遇で訪問をしないように求めることだ。

 

ヨーロッパの団結を維持するのは易しい仕事ではない。

 

 ロシアを軍事的に抑止する問題について、ヨーロッパは混乱している。バルト海沿岸諸国はより攻撃的な対応を求めているが、イタリアとギリシアは外交による対応を求めている。EUの中で最も力を持つドイツとフランスはこの2つの解決策の中間的な解決を求めている。

 

 制裁については、ヨーロッパ諸国の首脳はアメリカよりも腰が引けている。それは、ヨーロッパ諸国はロシアの各企業との間で長年にわたり、友好的な関係を築いているからだ。禁輸政策の結果、フランスの農産物輸出とイタリアの観光業は大きな痛手を蒙っている。

 

 ヨーロッパ諸国が対ロシア制裁から離脱する場合、ヌーランドに対してそれを伝えねばならない。これはなかなか荷厄介で一筋縄ではいかない。

 

 2015年3月中旬、ヌーランドはローマを訪問した。この時、イタリア首相マッテオ・レンツィは、ロシアがクリミアを併合して以来、ヨーロッパ諸国の首脳としてモスクワを初訪問し、プーティンと会談してイタリアに帰国したばかりであった。

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マッテオ・レンツィ 

 

 イタリアはプーティンを孤立させることを目指す西側の政策に批判的であった。ヌーランドはレンツィがロシア訪問を行った後初めてイタリアを訪れたアメリカ政府高官であり、レンツィに圧力をかけるという困難な仕事を行った。ある外交関係者によると、ヌーランドはレンツィに対して激しい言葉遣いで非難を行い、レンツィは侮辱されたと感じ、怒り狂ったということである。

 

 あるオバマ政権高官は、このメッセージはレンツィに届ける必要があるものだったと協調している。この高官は次のように述べている。「オバマ政権の政策は、同盟諸国がプーティンを首都に招かない、またプーティンから国賓待遇で招待されてもそれを受けないように求めることだ。アメリカ政府の高官たちは、イタリア政府に対して、レンツィ首相の訪露に対して懸念を持っていると伝えてきた」。

 

 ヨーロッパ諸国からの不信感があることは認めながらも、この高官は、ヌーランドのメッセージは「怒りではなく、失望をヨーロッパ諸国に与えた」と述べた。

 

 この厳しい姿勢を理由にして、アメリカ政府や連邦議会の人々はヌーランドを賞賛しているのである。

 

エンゲルは、「彼女は率直にあるがままに話す。何か守ろうとかごまかそうとかしない」と語った。

 

* * *

 

 ヌーランドはフランス語とロシア語を不自由なく操る。20代の頃、ロシア語を学ぶために数カ月にわたり、ソ連のトロール漁船に乗船したのだが、この時にソ連(ロシア)に対する激しい憎しみを抱いたと言われている。

 

ヴィクトリア・ヌーランドの父シャーウィン・ヌーランドは既に亡くなっているが、イェール大学教授として有名であった。ヴィクトリアの夫ロバート・ケーガンはネオコンに属する有名な評論家である。彼女の人生は力を持った、人々の心を動かす表現者たちに囲まれていると言える。

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 ロバート・ケーガン

 

 ケーガンは、新アメリカ世紀プロプロジェクト(PNAC)の創設者の1人であり、悲惨な結果に終わったアメリカ軍のイラク侵攻を最も強力に主張した人物である。枯れもまたヨーロッパの人々を苛立たせた人物として有名である。彼は外交政策分野におけるアメリカとヨーロッパの分裂について論稿を書いた。この中で、軍事力の使用について、「アメリカ人は火星から、ヨーロッパ人は金星から生まれたくらいに違いがある」と書いた。

 

 ヌーランドは宣誓式において、自分の結婚生活について、夫ケーガンの論稿に言及しながら次のように述べた。「彼は私の火星であり、金星であり、そして地球です」。

 

 昨年、ヌーランドとケーガンは、『ポリティコ』誌の取材に対して、最初の数回のデートで民主政治と世界におけるアメリカの役割について話したことで意気投合し、恋に落ちたと語った。

 

 ヌーランドがケーガンと結婚しているため、ヨーロッパ人の殆どは、彼女が共和党員だと思っている。しかし、彼女のロシアに対するタカ派的なアプローチはオバマ政権内部で彼女だけが採っているものではない。

 

 複数のアメリカ政府関係者によると、アメリカ政府の最高首脳たちも私的な場ではウクライナへの武器供与を支持しているということだ。その中には、ケリー国務長官、アシュトン・カーター国防長官、ジョー・バイデン副大統領、ミュンヘン安全保障会議でヌーランドと共にブリーフィングを行ったブリードラヴ空軍大将も含まれている。カーターは自分の考えを公然と話し、それが放送された。カーターは2015年2月の上院軍事委員会に出席し、「私はウクライナへの武器供与を支持する。それは、ウクライナが自国防衛をすることをアメリカが支援しなくてはならないと考えているからだ」と述べた。

 

 オバマ政権内でヌーランド以外にもウクライナ問題について発言している人物が2人いる。1人は国家安全保障会議ヨーロッパ問題担当上級部長チャールズ・カプチャンであり、もう1人はロシア・ユーラシア担当上級部長セルスティ・ワーランダーである。カプチャンとワーランダーの考えは、彼らの学問研究の成果から生み出されたものだ。カプチャンは長年にわたり、NATOに対して疑義を持っていた。彼は危機的状況の軍事力による解決に疑念を持ってきた。彼の存在と疑念によって、よりタカ派的な解決策が国家安全保障会議を通過することはなく、まさに知的な防波堤と言うことが出来る。

 

 ヌーランドは、国務省の人々の多くが持つウクライナ危機に関する主流の考えから逸脱してはいない。しかし、ヨーロッパの人々のヌーランドが大変なタカ派であるとい印象を和らげることはすぐにはできないだろう。それは彼女が取り返しのつかないことで有名になってしまったからだ。ウクライナ国内の反対勢力とウクライナ元大統領のヴィクトール・ヤヌコヴィッチとの間の政治的対立が大きくなっていた2014年、彼女の私的な電話での会話が録音され、何者かによって漏洩されたのである。

 

 皮肉なことに、この会話録音の漏洩によってヌーランドは有名になったが、彼女が国務次官補としてやってきた仕事を誰も理解しようとはしなかった。

 

 アメリカ、ヨーロッパの外交筋からの情報だと、その当時にさんざん報道された内容とは異なり、ヌーランドの余計なひと言は、EUのヤヌコヴィッチ政権に対する姿勢に対する不満、またはEUに対するヌーランドの日ごろの考えから出たものではないということだ。

 

 F爆弾(fuckという言葉を使ったこと)が世界を駆け巡ったのだが、これは2014年1月初頭まで遡る技術的な不同意の結果として生まれたことなのである。当時、数多くの人々がキエフの独立広場での抗議活動に参加し、ヤヌコヴィッチ大統領の辞任を求めた。ヤヌコヴィッチは親露的な人物で、多くの公約違反を犯したが、EUとの政治・貿易協定への署名を見送った。

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ウクライナ反対派(ネオナチ勢力)と仲の良いヌーランドとマケイン

 

 アメリカ政府高官たちは、ヤヌコヴィッチに対してその当時の政権を放棄して、反対勢力の指導者たちを参加させるテクノクラート政府の樹立を行うように求めた。数週間の抵抗の後、ヤヌコヴィッチは態度を軟化させ、反対勢力に対して新政府で2つの地位を与えると提案した。これは外交上大きな転換点となった。ずる賢い政治家ヤヌコヴィッチにしてやられることを恐れた反対勢力は、話し合いに第三者、理想的にはEUが加わることを求めた。EUが話し合いへの参加を拒絶したことで、ヌーランドは怒り、そして後に後悔することになった激しい言葉遣いとなってしまったのだ。彼女はヨーロッパ諸国を遠ざけ、国連に肩代わりをさせるとことを考えたのだ。

 

 ヌーランドは次のように語った。「これは良いアイディアなのよ。状況を改善し、国連にその手助けをさせるというのは。ああそうそう、その点ではEUはダメね、クソ喰らえだわ」。

 

ドイツのアンゲラ・メルケル首相はヌーランドの電話での会話内容を「全く持って容認しがたい」ものだと述べた。ジョン・ケリー国務長官はEUの首脳たちに対してヌーランドの発言内容について謝罪した。

 

 人々の殆どは、電話の録音はロシアの諜報機関が漏洩させたもので、その目的はEUとアメリカとの間の溝を大きくすることだと考えている。

 

 しかし、ここまでのところ、この戦略はうまくいっていない。アメリカとヨーロッパは禁輸政策で多少混乱はしたが、一致した行動を取っている。2015年6月17日、EUは対ロシア禁輸を更に6カ月延長することに合意した。ロシア政府は延長をしないように激しく働きかけを行ったが失敗に終わった。しかし、ロシアの諜報機関は、ヌーランドとヨーロッパ諸国の交渉相手との関係は悪化しているという鵜沢を流し続けている。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 

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