古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ウラジミール・プーティン

 古村治彦です。

 2022年5月9日はロシアでは対ナチス・ドイツ戦争(大祖国戦争)勝利記念日(ベルリン陥落)だった。ウラジミール・プーティン大統領の演説に注目が集まったが、激しい言葉遣いはなかった。ウクライナ戦争については、西側諸国からの高度な武器供与を批判しながらも、対ナチス・ドイツ戦争、第二次世界大戦で連合諸国だったアメリカ、イギリス、フランス、中国に対する感謝の言葉もあった。抑制的な内容だった。

 ウクライナ戦争によって秋からになったのは、世界における深刻な分断である。この分断は「西側諸国とそれ以外の世界」というものだ。日本は先進諸国(民主政治体制)で構成される西側諸国に含まれている。西側諸国、特にアメリカが世界を主導するという構図が冷戦終結後に続いてきた訳だが、今回のウクライナ戦争によってこの構図が崩れつつあるということが明らかになった。国連の場でこれまで3回にわたりロシアを非難する決議が出されたが、これらに対して反対、棄権する国々も多く出た。それらの国々は「BRICs(ブリックス)」を中心とする、アジア、南米、中東、アフリカ諸地域にある非西側諸国だ。

 これらの国々はロシアと経済的、軍事的に緊密な関係を結んでおり、今回の戦争でそうした関係を崩したくないという意向を持っている。更に言えば、アメリカに対する不信感、アメリカが主導する西側諸国に対する不信感を持っている。

 世界の構造は変化している。昔であれば西側先進諸国の言うことは全てが正しく、これらの国々のようになりたいというのが当たり前だった。日本人である私も戦後の日本に生まれたことは幸運だったなぁと思うことは多かった。特に外国に行けばそう感じた。
 しかし、それが変化しつつあるのだ。私たちはウクライナ戦争を通じて、そのことを目撃している。現在の世界一の富豪であるイーロン・マスクは日本が消滅するという発言を行った。世界の認識はこれである。戦後西側諸国の「優等生」であった日本の衰退・没落から消滅へという流れは世界の流れを象徴している、そのように感じられる。毛沢東の大戦略である「農村が都市を包囲する」という言葉を援用するならば「それ以外の世界が西側を包囲する」ということになり、西側諸国全体の衰退・没落が始まっていくのだろう。世界は大きく変化する。

(貼り付けはじめ)

西側vsそれ以外の世界(The West vs. the Rest
-21世紀版冷戦の時代にようこそ

アンジェラ・スタント筆

2022年5月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/02/ukraine-russia-war-un-vote-condemn-global-response/

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナへの侵攻を開始する前に4つの大きな誤算をしている。ロシアの軍事的な能力と効果を過大評価し、ウクライナ人の抵抗の意志と反撃の決意を過小評価した。また、ロシアの攻撃に直面して混乱した西側諸国が政治的に団結することは不可能であり、ヨーロッパやアメリカのアジアの同盟諸国がロシアに対する広範囲な金融、貿易、エネルギー制裁を支持することは決してないと考えたことも間違いであった。

しかし、プーティンは1つだけ間違っていなかった。それは、私が「それ以外(the Rest)」と呼ぶ非西側世界がロシアを非難したり、制裁を科したりしないだろうということをプーティンは正しく予測していた。戦争が始まった日、ジョー・バイデン米大統領は、西側諸国はプーティンが「国際舞台から排除される人物(pariah on the international state)」とするだろうと言ったが、世界の多くの人々にとって、プーティンは排除される人物とはなっていない。

ロシアはこの10年間、1991年のソ連崩壊後に撤退した中東、アジア、中南米、アフリカの国々との関係を深めてきた。そして、2014年のクリミア併合以降、クレムリンは中国に積極的にアプローチしている。欧米諸国がロシアを孤立させようとすると、北京は「パワー・オブ・シベリア」という大規模なガスパイプラインの契約に署名するなど、モスクワを支援するために歩み寄った。

国連は開戦以来、ロシアの侵攻を非難する決議を2回、人権理事会のメンバーシップ停止決議を1回、計3回行っている。これらの決議は可決された。しかし、棄権や反対票を投じた国々の人口規模を集計すると、世界人口の半分以上にもなる。

簡潔に述べるならば、世界はロシアの侵略を不当とする見解で一致していないし、世界のかなりの国々がロシアの行為を罰することを望んでいないのである。実際、ロシアの現状を利用して利益を得ようとする国々もある。プーティン率いるロシアとの関係を危うくしたくないという意向があり、それによって今だけでなく戦争が終わった後も、同盟諸国などとの関係を管理する欧米諸国の能力を複雑にしていくだろう。

ロシアを非難しないことで非西側諸国を率いているのは中国である。中国が何をするにしてもロシアを支援するという理解がなければ、プーティンはウクライナに侵攻することはなかっただろう。プーティンが冬季オリンピック開催中の北京を訪れた際に署名した2月4日の露中共同声明は、「無制限」のパートナーシップと欧米の覇権主義を押し返すという約束を謳ったものである。駐アメリカ中国大使によると、習近平国家主席は北京での会談でプーティンのウクライナ侵攻計画を知らされていなかったということだ。プーティンが習近平に何を言ったか、それが何らかの示唆であったのか、それとももっと明確なものであったのか、それはおそらく誰にも分からない。

しかし、この主張をどう解釈しようとも、中国がロシアによるウクライナ侵略開始以来、ロシアを支持してきたことは否定できない。国連でのロシア非難決議の際には棄権し、人権理事会のロシアのメンバーシップ停止決議には反対票を投じた。中国メディアは、ウクライナの「非ナチ化(denazifying)」と「非軍事化(demilitarizing)」に関するロシアのプロパガンダを忠実に再現し、戦争の責任をアメリカとNATOに押し付けている。ブチャの虐殺がロシア軍によって行われたかどうかを疑問視し、独立した調査を要求している。

しかし、中国の立場にはいささかの迷いがある。また、敵対行為の停止を求め、ウクライナを含む全ての国家の領土保全と主権を信じると繰り返している。中国はウクライナにとって最大の貿易相手国であり、ウクライナは「一帯一路」プロジェクトの一部であるため、ウクライナが経験する経済的荒廃を歓迎することはできない。

しかし、習近平は同じ独裁者であるプーティンと同盟を結び、アメリカ主導の世界秩序に大きな不満を持ち、自分たちの利益をないがしろにしてきたと考える。彼らはポスト欧米の世界秩序を構築することを決意しているが、その秩序がどのようなものであるべきかについては考えが異なっている。

中国にとって、それはルールに基づく秩序であり、中国が現在よりもはるかに大きな役割を果たすことになるだろう。一方、プーティンが考えているのは、ルールの少ない破壊的な世界秩序であろう。中露両国とも、自国の国内制度や人権記録に対する欧米諸国からの批判にアレルギーがある。中国とロシアは、独裁国家にとって安全な世界を実現するために、互いを必要としている。習近平はプーティンが敗北するのを見たくないのだろう。それゆえ、中国はウクライナにおける暴力と残虐行為の規模や、より大規模な戦争へのエスカレーションの危険性に不快感を抱いているにもかかわらず、ロシアに対して発言することを躊躇している。

しかし、中国の大手金融機関はこれまで欧米諸国による制裁に従順だった。欧米諸国との関係における中国の経済的利害はロシアよりはるかに大きいのである。また、欧米諸国によるロシアへの制裁が広範囲に及んでいることから、仮に台湾に侵攻した場合、欧米諸国がどのような反応を示すか、北京は考えているはずである。中国側はこの制裁を慎重に検討しているに違いない。

もう一つ、世界最大の民主政治体制国家であり、アメリカ、日本、オーストラリアとともに「四極安全保障対話(Quadrilateral Security Dialogue)」のパートナーであるインドが、ロシア批判に消極的だ。インドは3つの国連決議に棄権し、ロシアへの制裁を拒否している。インドのナレンドラ・モディ首相は、ウクライナのブチャで起きた民間人に対する残虐行為の報告を「非常に憂慮する」とし、インドの国連大使は「これらの殺害を明確に非難し、独立調査の要請を支持する」と述べたが、モディも国連大使もロシアを非難していない。

インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、ロシアは「様々な分野で非常に重要なパートナー」であり、インドはロシアの武器と石油を購入し続けていると述べた。実際、インドは兵器の3分の2をロシアから調達しており、モスクワの最大の武器取引先である。冷戦時代、非同盟諸国のリーダーであったインドにこれ以上武器を供給したくないという意向がアメリカにあり、そのことはヴィクトリア・ヌーランド米国務次官も認めている。アメリカは現在、インドとの防衛協力の強化を考慮中だ。

モディ首相がロシアを非難しないのには複数の理由がある。中国がカギとなる。インドはロシアを中国に対する重要なバランサーと見ており、ロシアは2020年のインドと中国の国境衝突の後、インドと中国の緊張を和らげるために行動した。さらに、冷戦時代のインドの伝統である中立性とアメリカに対する懐疑心が、インド国内におけるロシアに対するインド国民のかなりの共感を生んでいる。今後、インドはロシアとの伝統的な安全保障関係とクワッドにおける米国との新たな戦略的パートナーシップのバランスを取る必要がある。

プーティンのこの10年間の外交政策の大きな成功の一つは、ロシアが中東に戻り、ソ連崩壊後に撤退した国々と再び関係を結び、それまでソ連と関係のなかった国々と新たな関係を構築したことである。

現在、ロシアは、サウジアラビアなどのイスラム教スンニ派が率いる国々、イランやシリアなどのイスラム教シーア派が率いる国々、イスラエルなど、この地域の全ての国と対話し、あらゆる紛争の全ての側のグループと関係を持っている唯一の大国である。このような中東諸国との関係の構築の成果は、ロシア・ウクライナ戦争が勃発した時から顕著になった。

国連での最初の決議投票では、アラブ諸国のほとんどがロシアの侵攻を非難する票を投じたが、その後、22カ国からなるアラブ連盟は非難を行わなかった。また、人権理事会におけるロシア非難の投票では、多くのアラブ諸国が棄権した。サウジアラビア、アラブ首長国連邦、エジプト、イスラエルなどアメリカの強固な同盟諸国は、ロシアに制裁を科していない。実際、プーティンとサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子はウクライナ戦争開戦後、2度にわたって会談を持っている。

イスラエルの立場は、ロシアとイランの両軍が存在するシリアで、アサド政権を支持するロシアによって大きく左右される。イスラエルはロシアと軍事衝突回避(deconfliction、デコンフリクション)協定を結び、シリアにいるイラン軍の攻撃目標を攻撃できるようにした。イスラエルは、ロシアと敵対することで、北部の国境を守る能力が損なわれることを恐れている。イスラエルはウクライナに野戦病院やその他の人道支援を送っているが、武器は送っていない。イスラエルのベネット首相は一時、ロシアとウクライナの仲介役を務めたが、失敗に終わった。

多くの中東諸国にとって、アメリカは信頼できないパートナーであり、これらの国々はアメリカに対して懐疑的だ。自分たちの国の人権を批判するアメリカへの苛立ちも対露姿勢を形成に影響を与えている。唯一、真に親露なのはシリアで、ロシアの軍事支援がなければ、アサド大統領はとっくに失脚していただろう。

近年、ロシアがアフリカに戻り、傭兵のワグネル・グループがアフリカで失脚した指導者たちを支援していることから、アフリカ大陸はロシアへの非難や制裁をほとんど拒否してきた。アフリカ諸国のほとんどは、ロシアの侵略を非難する投票に棄権し、人権理事会からロシアのメンバーシップを停止することに反対票を投じた。新興経済国グループであるブリックス(BRICS)の民主政体国家のメンバーである南アフリカは、ロシアを批判していない。

アフリカ諸国の多くにとって、ロシアは、反植民地闘争の際に支援したソ連の後継者とみなされている。ソ連はアパルトヘイト時代のアフリカ民族会議を支援し、現南アフリカ指導部はロシアに感謝の念を抱いている。中東と同様、アメリカに対する敵意もアフリカのロシアによるウクライナ侵略に対する考えに影響を及ぼしている。

アメリカの裏庭においてさえも、ロシアは応援団を抱えている。キューバ、ヴェネズエラ、ニカラグアは予想通りモスクワを支持したが、他の国々もウクライナ侵攻を非難することを拒否した。ブリックス(BRICS)の一員であるブラジルは「公平」な立場を表明し、ジャイル・ボルソナロ大統領は侵攻直前にモスクワを訪問しプーティンと会談を持ち、「ロシアと連帯する」ことを宣言した。ブラジルは依然としてロシアからの肥料の輸入に大きく依存している。

更に問題なのは、メキシコがアメリカ、カナダと北米共同戦線を張り、ウクライナ侵略を非難しようとしないことである。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領の率いるモレナ党は、2022年3月に下院でメキシコ・ロシア友好議員連盟を発足させ、ロシア大使を招いて演説会を開いたほどである。1970年代の伝統的な左翼の反米主義が、このようなロシアの受け入れの大きな理由であり、ロシアに西側諸国との不和をもたらす新たな機会を与えているのであろう。

非西側諸国は世界人口の半分以上を占めるが、その半分は貧しい国であり、多くが後進国で構成されている。欧米諸国のGDP、経済力、地政学的な力を合わせると、侵略を非難せず、ロシアに制裁を加えることを拒否した国々の影響力をはるかに凌駕している。

それにもかかわらず、戦争終結後の世界秩序を形成するのは、現在の「西側」と「それ以外」の分断である。その鍵を握るのが中国とインドであり、プーティンが紛争終結後も国際的に孤立することがないようにするためである。実際、11月に開催されるG20サミットのホスト国であるインドネシアは、プーティンの出席を歓迎するとしている。しかし、その一方で、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領も招待している。

この残酷な戦争の後、アメリカはヨーロッパでの軍事的プレゼンスを高め、NATOの東側にある1つ以上の国に軍隊を恒久的に駐留させることになるであろう。プーティンの長年の目標の一つがNATOの弱体化であるとすれば、彼のウクライナとの戦争は目的の正反対を達成した。NATOという同盟を再活性化させただけでなく、アフガニスタン後に新たな目的を与え、スウェーデンやフィンランドが加盟すると見られることから、その拡大も期待できる。NATOは、プーティンが政権を維持している限り、そしておそらくその後も、次のロシアの指導者が誰であるかによって、ロシアに対する封じ込め強化政策に戻るだろう。

しかし、この21世紀版の冷戦では、非西側諸国は、前の冷戦で多くの人々がしたように、どちらかの側につくことを拒否するだろう。冷戦時代の非同盟運動(nonaligned movement)は、新たな形で再登場する。今回は、アメリカと同盟諸国がプーティンを排除しても、非西側諸国はロシアとの関係を維持するだろう。

ロシアは経済的に衰退するだろうが、「主権的インターネット」の構築に成功すれば、脱近代化し、中国への依存度はますます高まっていくだろう。しかし、ロシアは、多くの国家がビジネスに満足し、モスクワと敵対しないように細心の注意を払う国であることに変わりはない。

※アンジェラ・ステント:ブルッキングス研究所非常勤研究員。著書に『プーティンの世界:それ以外の世界と共に西側に対抗するロシア』。ツイッターアカウントは@AngelaStent
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は終わりの見えない状況になっている。2月24日に始まってすぐに、停戦交渉が行われた。停戦交渉が断続的に行われてやがて停戦に至るものと私は考えていた。これは非常に甘い見通しだったと反省している。3月末になって停戦交渉という言葉が報道から消え始めた。「ウクライナ軍が善戦してロシア軍が首都キエフを掌握することを阻止できた、西側諸国が支援しているウクライナ軍は強い、ウクライナ軍がロシア軍を追い出すまで戦う」という流れになった。いくらウクライナ軍が強いと言っても無傷では済まない。ウクライナ軍にもウクライナ国民にも犠牲者が数多く出ている。しかし、そのようなことは顧みられない。日本のいつもはリベラルな仮面をかぶった好戦主義者たち(日本版ネオコン)の人々はここを先途と「どんどんやれやれ」「自由と人権と民主政治体制を守るために犠牲になれ(自分は安全な場所にいるけど)」という最低な存在になり果てている。

 アメリカやヨーロッパ諸国がより攻撃能力の高い武器をウクライナに供与するという転換を行ったことはこのブログでも既にご紹介した。下の論稿にあるように、ウクライナ戦争は停戦交渉ということではなく、「やるかやられるか」の段階に進んだということになる。プーティンを打ち倒すか、プーティンの目的を達成させるか、ということである。更に言えば、「ロシアを弱体化させる」という究極の目的が設定されている。

 「ロシアの弱体化」というアメリカとNATO諸国へのプーティンの対応は「核攻撃」ということになる。下の記事にあるウように、これをただの脅しの言葉と楽観的に捉えているNATO幹部が多くいるようだが、なんと馬鹿な人間たちなのだろう。何かに対処するにあたり、悲観的に考慮し一度決めたら楽観的に行動するということが原則だが、楽観論で考えてしまえば痛い目に遭うということは歴史が示している。人間は学ばない生き物である。

 ジョー・バイデン大統領による新たなアプローチによって、ウクライナ戦争の終わりは見えなくなり、更に戦争がエスカレートし、核戦争に至る可能性も高まっているということが下に紹介した記事の趣旨である。これまでの状況を冷静に判断すればこのような結論に至るのが当然である。停戦交渉を双方が行って一刻も早く停戦を実現することが最良であるが、その可能性は低くなっている。何と馬鹿げた状況であろう。

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バイデンの危険な新たなウクライナ戦略:終わりのない戦い(Biden’s Dangerous New Ukraine Endgame: No Endgame

-ロシアを「弱体化」させる戦略で、バイデン米大統領はウクライナ戦争を世界規模の戦争に変えようとしているのかもしれない。

マイケル・ハーシュ筆

2022年4月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/29/russia-ukraine-war-biden-endgame/

今週一連の劇的な変化が起きた。ジョー・バイデン米大統領とNATOの同盟諸国は、ロシアの侵攻からウクライナを守るための政策を、ロシアのパワーと影響力を弱めるための政策へとエスカレートさせている。そうすることで、降伏するか、ロシア軍を更に派遣し攻撃を強化するか、ウクライナを越えて戦争を拡大させる可能性を高めるか、といった選択肢しかロシアのウラジミール・プーティン大統領に残さないことになるのではないかと専門家の中には懸念を持っている人々がいる。

木曜日、バイデンは連邦議会に対し、ウクライナに対して330億ドル(従来の2倍以上)の軍事、経済、人道支援を追加するよう要請した。そして、プーティンに対して「ウクライナを支配することにあなたは決して成功しない」という明確なメッセージを送ると述べた。バイデンはホワイトハウスでの発言で、この新しい政策は「ロシアの侵略に懲罰を与え、将来の紛争のリスクを軽減する」ことを意図していると述べた。

バイデン大統領のこうした言動はロイド・オースティン米国防長官が今週行った明確な宣言に追随し、その中身は全く同じものとなった。オースティン国防長官は、キエフでウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と会談した後、アメリカの目的は長期にわたってロシアの力を削ぐことであり、ウクライナへの軍事攻撃を「再現する能力」を持たせないことだと発言した。ポーランドに一時滞在中、オースティンは「ロシアがウクライナへの侵攻のようなことをできない程度に弱体化することを望んでいる」とも語った。

この変化によって、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相に、アメリカや西側諸国がロシアとの「代理戦争」に突入し、核戦争に発展する可能性のある世界大戦を再び引き起こす危険があると宣言させたのかもしれない。「危険は深刻であり、そして現実でもある。そして、私たちはそれを過小評価してはならない」とラヴロフは語った。プーティンはまた今週、2月24日の侵攻開始以来続けてきたように、NATOに対して核兵器を使用するオプションがまだ存在することを再び示唆し、「そして、必要であれば、それらを使用する」と述べた。

アメリカによる新たな攻撃的アプローチに多くの賛意が寄せられている。特に現役や元のNATO幹部たちから賛辞が送られている。こうした人々はロシアからの核兵器による反撃という脅威は空虚な脅しの言葉に過ぎないと主張している。

NATO事務総長のアンデルス・フォグ・ラスムセンはインタヴューの中で、「アメリカによる攻撃的アプローチは前進する唯一の方法だ」と述べた。ラスムセンは更に次のように述べた。「プーティンの考えでは、西側の政策はとにかくロシアを弱体化させるものということになるので、これまでのアプローチと新たなアプローチには何の違いもない。それなのに、なぜ公然と話さないのか。過去に犯した過ちは、プーティンの野心、彼の残忍性を過小評価したことである。同時に、ロシア軍の強さを過大評価したことだ」。

アメリカとNATOの新たな戦略は、プーティンがウクライナの完全征服から東部と南部での新たな攻撃へとその野望を縮小せざるを得なくなったこと、つまりウクライナが戦場で成功を収め続けていることも一因となっている。ドイツを含むNATOの同盟諸国は、今週まではウクライナにより効果の高い重攻撃用武器を送ることを躊躇していたが、現状を受けて支援を強化した。ドイツのオラフ・ショルツ首相は、国内外からの政治的圧力を受け、今週初め、ウクライナに対空戦車50台を提供すると発表した。

しかし、他のロシア専門家は、アメリカと西側同盟諸国は事実上、これまで避けてきたレッドラインを踏み越えていると懸念を持っている。バイデンは、2カ月に及ぶ紛争の大半で、大規模な攻撃兵器や飛行禁止区域など、アメリカやNATO軍をロシアと直接対立させると思われるような軍事支援を承認することを拒否してきた。しかし今、追加支援と経済制裁の強化によって、バイデン大統領はプーティンを、戦い続けるか降伏するかのどちらかしかない状況に追い込んでいる、と懸念する人々もいる。降伏することは、プーティンが長年の目標としている、西側諸国に対してロシアの立場を強化するということの放棄を意味する。しかし、プーティンは長い間、欧米諸国の目的はロシアの弱体化や封じ込めだと言ってきたが、ウクライナやジョージア(グルジア)を中心とする周辺諸国に対して10年半にわたって攻撃的な動きを続けてきた中で、降伏したことは一度もない。

戦略国際問題研究所(CSIS)のヨーロッパ専門家ショーン・モナハンは「クレムリンの目には、西側がロシアを追いかけて捕まえようとしているように映っている。これは以前であれば暗黙の了解というところだったが今や現実となっている」と述べている。モナハンは更に次のように述べた。「バイデンが先月ポーランドで行った首脳会談で、“この男(プーティン)は権力の座に留まることはできない”と発言したことと合わせて考えると、領土戦争をより広い範囲の対立に変え、ウクライナ戦争を終わらせるための和平交渉をはるかに困難にし、あるいは現時点で不可能にさえするかもしれない」。バイデン政権幹部たちは後に、大統領はロシアの政権交代を求めている訳ではないと述べて火消しに努めた。

CIAでロシア担当主任分析官を務めたジョージ・ビーブは、バイデン政権は「アメリカにとっての最重要な国益とはロシアとの核衝突を回避すること」であることを忘れている可能性があると指摘している。ビーブは更に「ロシアは、自分たちも負けるのであれば、他の誰をも敗北させる能力(訳者註:核攻撃能力)を持っている。そしてそれは、私たちが向かっている場所かもしれない。今回の転換は危険な方向への転換だ」と述べた。

おそらく最も懸念されるのは、プーティンがロシア訪問をしたアントニオ・グテーレス国連事務総長に対して、交渉による解決の可能性をまだ希望していると述べたにもかかわらず、もはや交渉による解決の可能性がないように見えることである。

あるヨーロッパにある国の上級外交官は匿名を条件にして次のように述べた。「プーティンを弱体化させる政策と、それを口に出して言うことは全く別のことだ。プーティンにとって政治的解決に至る道を探さなければならないのだから、このような発言をするのは賢明ではないということになるだろう」。

アメリカ政府元高官で、現在はジョージタウン大学で国際関係の研究をしているチャールズ・カプチャンは「より危険になっている。ジャベリンや対戦車ミサイルを越えて、政治的に大詰め(endgame)、どのように戦争を終結させるかについて話し始める必要がある」と述べている。前述のビーブは次のように述べている。「国際的な解決という文脈で制裁を緩和する意思があることを、何らかの形でロシア側に控えめに伝える方法を見つける必要がある。ウクライナへの軍事支援もテコとして使えるだろう」。

しかし、そのような交渉の実現はこれまで以上に可能性が低くなりそうだ。両者とも長い戦いに身を投じているように見える。火曜日にプーティン、そしてラヴロフと会談した後、グテーレスは近々に停戦が実現する可能性はなく、戦争は「会談で終わることはない」と認めた。

ほんの1ヶ月前まで、ゼレンスキーはNATOに加盟しない中立のウクライナという考えを持ち、ウクライナ東部の分離主義勢力を認めると提案していた。しかし、ゼレンスキーはその後、ヨーロッパ連合理事会のシャルル・ミシェル議長に対し、ロシアの残虐行為に鑑み、ウクライナの世論は交渉に反対し、戦争継続に賛成していると述べた。

一方、フィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟に関心を示しており、長年の非同盟政策を転換し、ロシア北部国境に新たな一触即発(ヘアトリガー、hair-trigger)の環境が出現する可能性がある。NATOの東方拡大をウクライナ侵攻の理由にしてきたプーティンにとってこれは大きな痛手となる。

そして、こうした緊張がすぐに緩和される見込みはほとんどない。オースティン米国防長官は今週、40カ国からなる「ウクライナ・コンタクト・グループ(Ukraine Contact Group)」を招集した。マーク・ミリー米統合参謀本部議長は「少なくとも年単位になるであろう」と述べた「長引く紛争(protracted conflict)」に備える準備をアメリカは進めている。

バイデンは、プーティンが戦術核や戦略核を配備した場合、アメリカがどのような対応を取る可能性があるかについては言及していない。更に、冷戦後の環境において、米露両国は核兵器の配備について明確なルールを設定していない。特に、中距離核戦力条約のような冷戦時代の軍備協定が棚上げされ、核兵器の運搬システムがより高速化し、自動デジタル化システムによって支配的に運営されるようになったためだ。「脱エスカレートするためにエスカレートする」と呼ばれるクレムリンの政策(西側が彼を止めようとすれば核武装すると脅す)の下、プーティンは年々、通常戦争の計算に核兵器を再導入している。政権を担ってきた20年の間に、彼はヨーロッパ大陸で、原子力巡航ミサイル、大洋上核武装魚雷、極超音速滑空機、さらに低収量の核兵器の建設を許可してきた。

しかし、プーティンはこれまで核兵器を使用すると脅したことはなく、また、使用する可能性があるかどうか、どのように使用するかを明らかにしたこともない。ウクライナ危機が起きるまで、アメリカの戦略家たちはプーティンによる核兵器の配備が脅威となるとは考えていなかった。プーティンはまずサイバー攻撃など非核兵器でエスカレートしてくるというのが大方の見方だった。

また、専門家の多くは、ロシア大統領がウクライナ国内で戦術核兵器を使用することで大きな利益を得るとは思えないと主張している。プーティンは十分に理性的な人物であり、核武装した大陸間弾道ミサイルをアメリカに発射することは考えないと見ている。しかし、プーティンは以前にも、独立したウクライナがロシアの支配から離れることは受け入れられないと示唆しており、2021年7月に発表した論稿で、そのような事態は「私たちに対する大量破壊兵器の使用に匹敵する結果になる」と書いている。

アメリカ政府の核軍備交渉官を務めたロバート・ガルーチは、ロシアの核による威嚇は新しい戦術であり、「ウクライナ周辺、つまりロシアとの国境を越えてロシア軍と直接衝突することになれば、真剣に受け止めるべきだろう」と述べた。

現在クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトで大戦略部門の部長を務めるビーブは、ウクライナ戦争は不安定な膠着状態に陥る可能性が高いが、それは冷戦時代の多くよりも不安定で危険なものになる可能性があると語った。ビーブは「ウクライナとヨーロッパを分断し、ゲームのルールがないような、ある種の長期的で不安定な対立に終わる可能性が高い。“新たな冷戦”というより、欧州の傷の化けの皮が剥がれる」と述べた。

イギリスのリズ・トラス外相が今週の講演で示唆したように、新たに強化された欧米諸国とNATOがその範囲を欧州、中央アジア、中東を越えてインド太平洋にまで拡大すれば、事態は更に複雑になる可能性がある。トラス英外相は次のように述べた。「NATOはグローバルな展望を持ち、世界的な脅威に対処する用意がなければならない。インド太平洋における脅威を先取りし、日本やオーストラリアなどの同盟国と協力して、太平洋を確実に守る必要がある。そして、台湾のような民主政体国家が自らを守れるようにしなければならない」。

このことは、ロシアだけでなく、中国とも世界的な冷戦が長引くという見通しを示している。アメリカとその同盟諸国は、「資源に恵まれたロシアと、技術的にも経済的にも強力な中国との同盟」に直面し、容易に熱が高くなる可能性があるとビーブは言う。

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌上級記者。ツイッターアカウントは@michaelphirsh

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は1カ月前にご紹介しようと考えていたがその後、忙しさなどに取り紛れて忘れていた記事をご紹介する。ウクライナ戦争が始まって1カ月後の3月末にロシアはウクライナの首都キエフの掌握を断念し、ウクライナ東部のドンバス地方の確保に注力するという決定を行った。その際にどのようなことが言われていたのかという観点で記事をお読みいただきたい。

 2022年4月のウクライナ戦争の状況はウクライナ東部のドンバス地方での激戦が展開されてきた。ロシア軍の苦戦が伝えられているが、戦争は膠着状態に陥っていると言える。アゾフ大隊の本拠地マリウポリはロシア軍の攻勢に晒されているが、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はマリウポリが陥落すればロシアとの停戦交渉には応じないという姿勢を示し、マリウポリ死守の姿勢を示している。
 3月までは停戦交渉による停戦ということに対して期待が持たれていたが、4月に入ってから停戦交渉による停戦ということへの関心は低くなっている。ウクライナ軍が善戦しているのでこのままいけばロシア軍をやっつけることができる、という楽観論が広がっている。そのためには欧米諸国はロシアを撃破するためにより高度な武器を供与すべきだという戦争のエスカレートを支持する声が高まっている。これは非常に危険だ。

 ロシアはヨーロッパ諸国のエネルギーの供給源であり、エネルギー分野に関しては対ロシア制裁も例外とされている。ロシアが戦争のエスカレートに合わせて、ヨーロッパへのエネルギー供給を制限するということになれば、ヨーロッパ各国の人々の生活に直撃する。更に言えば、エネルギー価格は高騰し、物価高は日本に暮らす私たちにも影響を与える。

 繰り返しになるが停戦交渉による停戦の実現を望む。しかし、それを許さない状況である。戦争は続き、私たちの生活に大きな影響を与える。世界は第三次世界大戦の戦時下と言えるかもしれない。

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ロシアはウクライナ国内で何を望んでいるのか?(What Does Russia Want in Ukraine?

-ロシア政府高官たちは、キエフから手を引くと述べた。しかし、それは侵攻が終わったことを意味しない。

ジャック・デッチ、ロビー・グラマー筆

2022年3月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/29/russia-withdrawal-kyiv-ukraine-war-not-over/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカは、ロシアがウクライナの首都キエフ近郊に展開していた戦闘部隊を撤退させ、他の地域に移動する可能性があると見ている。ヨーロッパ駐留のアメリカ軍司令官の将軍は火曜日、連邦議会に出席し、戦争が始まって1カ月が経過し戦線は膠着しており、クレムリンが大きな戦略転換を示す可能性があることを認めた。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官でNATOの最高連合司令官であるトッド・ウォルターズ大将は連邦上院の公聴会に出席し、ロシアの決定の存在を認めた。ロシアによる重要な意思変更を示すものである。欧米の各国政府高官たちはこれまで、モスクワがウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を打倒し、親ロシア派の傀儡政権を樹立するために、200万人以上が住むウクライナの首都キエフを奪取しようと考えていると見ていた。

ここ数週間、ウクライナ軍は首都近郊のブカ、イルピン、ホストメルなどの都市において、断固とした反撃でロシア軍を追い返した。ロシア国防省は2日、キエフとチェルニヒフ方面での「敵対行為の大幅な削減」を選択したと発表した。CNNは、アメリカがすでにロシアの大隊戦術群の東方への移動を確認し始めたと最初に報じた。

アメリカ政府の国防関係の高官は月曜日、記者団に対し、ロシアは親クレムリン派の2つの独立を宣言した国家を含むドンバス地方に軍事作戦を再集中させ、東部のウクライナ軍部隊を孤立させ、この地域に占領体制を確立することでウクライナに対する交渉力を取り戻そうとしていると述べた。この政府高官は、最近機密解除された戦場の最新情報を提供するために匿名を条件に取材に応じ、「ロシアが戦略目標を再評価しているのは今かもしれない」と述べた。

ロシアの突然の撤退の背景には何があるのか? 政府関係者や専門家たちは、ロシアがウクライナの首都から圧力を取り除く動機となり得るいくつかのシナリオについて概説した。

●ウクライナ東部への全力を傾注する攻撃(All-Out Assault on the East

ロシア軍は、いわゆる特別軍事作戦(ウクライナ侵攻に対するクレムリンが使用する呼称)の第1段階は終わったと主張している。金曜日に行われた軍事に関するブリーフィングで、ロシア軍幹部たちはウクライナ東部に焦点を当て、おそらく以前よりも広範囲に離脱地域を切り開く試みを開始することを示唆した。

ロシア国防省のある高官は、部隊の撤退は和平交渉の土台を築くためのものだと述べた。ロシアとウクライナの交渉担当者は火曜日、イスタンブールで2週間ぶりに会談した。

ロシア国防省のアレクサンドル・フォミン副大臣は火曜日、「相互信頼を高め、更なる交渉と最終目標である合意への到達、協定の調印に必要な条件を整えるため、キエフとチェルニヒフ方面での軍事活動を大幅に縮小する決定を下した」とロシアの国営メディアのテレビ番組の中で発言した。

戦争が始まって1カ月が経過し、ロシアはすでに数千人の兵力を失ったと推定される。火曜日の会談では、キエフとその他の地域を武力で制圧するというロシアの当初の取り組みがやや鈍化していることが示された。

火曜日午前のウォルターズ大将のコメントに加え、イギリス国防情報局は今週初め、ロシアがドンバスに外国人戦闘員を補強しており、民間軍事請負業者ワグナー・グループの戦闘員数千人をシリアやアフリカから移動させて戦闘に参加させていると判断を下している。

アメリカ国防総省のジョン・カービー報道官はブリーフィングで、「これは再配置であって、本当の撤退ではないと考える。ウクライナの他の地域に対する大規模な攻勢を監視する準備をすべきだ」と述べた。イギリス国防情報局は24日の声明で、ウクライナ全域でロシア軍は軍事的リセットを試みながら、「阻止態勢」を維持していると述べた。

●外交交渉のためのテコ入れ(Leverage for Diplomatic Talks

ロシアの外交官たちは火曜日、キエフへの攻勢を中止する動きがウクライナ政府に対して戦闘を終わらせるためのオリーブの枝(訳者註:平和や勝利の象徴)となる可能性があることを示唆した。

プーティン大統領の最側近で、ロシアのベラルーシ外交団を率いているウラジミール・メディンスキーは国営放送RTの取材に対し、クレムリンはウクライナの首都キエフを更なる軍事的リスクに晒したくないと考えていると語った。なぜなら外交交渉について「決定を下す」人たちがそこに居住しているからと指摘した。

しかし、西側諸国の首都では、ロシアが首都キエフにミサイルを発射し、何度もロシア連邦保安局のヒットマンを送り込んでゼレンスキー暗殺を試みたと報じられていることから、クレムリンのオリーブの枝には大きな懐疑的な見方が示されている。その代わりに、先週ウクライナの反撃で大きく後退したロシア軍は、クレムリンの外交官たちが交渉の席で譲歩を引き出すために仕事をする一方で、キエフに砲撃を続ける可能性がある。

西側のヴェテラン外交官たちも、ロシアの和平交渉の申し出に懐疑的な声を上げており、クレムリンは2014年のクリミア併合以来、ウクライナ東部の離脱地域への権益を強固にするための政治的隠れ蓑として和平交渉を使ったことがあると主張している。

イギリス国防情報局は火曜日に発表した声明の中で、ロシアは依然としてキエフに攻撃能力を持つ「重大な脅威」を与えていると評価した。ちょうど1週間前、3月20日にロシアがキエフを空爆し、都心のショッピングモールを破壊し、住宅を直撃、8人が死亡した。キエフは、ロシア語を話す地域の中心地であるハリコフやマリウポリなど、戦争で最も大きな被害を受けた都市の惨状を免れているが、クレムリンの攻撃で吹き飛ばされた窓は、1ヶ月の戦争で歓迎されない特徴となっている。

ジョー・バイデン米大統領やヨーロッパ各国の指導者たちとの電話会談で、ボリス・ジョンソン英首相は、ロシアの外交的駆け引きが策略である可能性を警告した。ジョンソン首相は「プーティンは、ウクライナとその同盟国に降伏を強いるために、ウクライナの開いた傷口にナイフをねじ込んでいる」と他の首脳に語ったとイギリス政府の通話記録は伝えている。

●ヨーロッパ諸国を説得する(Getting Europe to Back Down

ロシアのウクライナ戦争によってガソリン価格が世界的に高騰している。既に世界全体が深刻な経済的打撃を受けている。東ヨーロッパ諸国は、ウクライナが戦場で優位に立っているように見えるにもかかわらず、西ヨーロッパ諸国がロシアによる経済的圧力に屈して早々に自分たちの退路を断ってしまうのではないかという懸念が出てきている。

しかし、プーティンがドンバス地域のロシア語を話す人々に対するウクライナ人からの迫害というでっち上げの主張を使ってウクライナ侵攻のための理由を数週間かけて作り上げたように、ロシアの指導者プーティンは、不安に駆られたヨーロッパ諸国を不快な平和協定に誘導するために目的を絞ろうとしている可能性がある。

バラク・オバマ政権下でヨーロッパとNATOを担当した元国防次官補のジム・タウンゼントは「プーティンがやっているのは目的を達したと説明するための土台作りだ。ドンバス周辺での自分たちの立場を改善して、本格的な交渉が始まったときに優位に立てるようにする意図を持っているのだ」と分析している。

それは、ウクライナ人への武器供与を制限するようなロシアの圧力にも現れるかもしれない。週末に行われたNATO諸国への演説で、ゼレンスキーは、ウクライナに戦車やミサイル防衛、対艦兵器などを送る西側の行動があまりにも遅すぎると非難した。実際、アメリカはソ連時代のポーランド製戦闘機ミグ29をウクライナに直接譲渡することも控えている。ロシアがこの動きをエスカレートとみなし、NATO同盟に報復することを恐れている。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官ウォルターズ大将は、ロシア軍戦車を無力化するのに有効な無人偵察機「スイッチブレード」を米国はまだウクライナに供与していないと述べた。

在ウクライナ・エストニア大使のカイモ・クースクは本誌にテキスト・メッセージを送りその中で「ウクライナでの成功を恐れるべきではない」と述べた。クークスは続けて「私たちは、ロシアの侵略が成功することを恐れている。しかし、ウクライナが成功すれば、負けたプーティンがエスカレートすることを恐れているようだ。私たちはそれを恐れるべきではない」と述べた。

●ロシアのおとり商法(Russian Bait-and-Switch

ロシア軍は1カ月以上にわたるウクライナでの継続的な戦闘で疲弊しており、モスクワはロシア軍の基幹部隊である大隊戦術群の75%までを紛争に投入したと西側諸国の政府当局者たちは一様に指摘している。そして、キエフ近郊で激しい戦闘が行われている中でウクライナ政府に圧力をかけることで、ロシア軍はその傷を癒し、さらに努力を重ねることができる。そしておそらく、ウクライナ軍を首都キエフから遠ざけ、東方へと誘うことができるだろう。

元国防次官補のタウンゼントは「まるで手品師のようだ。手品師は、もう片方の手で何かをしているときに、こちらを見ているように仕向けるのだ」と述べた。

アメリカとヨーロッパの各政府当局者たちは、ロシアが首都キエフへの電光石火の攻撃で必要以上の後方支援を行った後、より多くの物資を持ち込もうとしている兆候が見られると数週間前から述べている。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官のウォルターズ大将は、「ロシアはまた戦車部隊を強化する努力を行っている」と発言した。戦車は、アメリカが提供したジャベリン対戦車ミサイルやイギリスがウクライナに提供した同様の武器による攻撃を受けやすくなっているのだと述べている。戦略的な変化にもかかわらず、ロシアはまだ一部の軍をキエフ近郊に残しており、後に首都に対してさらなる攻撃を行うオプションを残していると当局者たちは述べた。

前述のタウンゼントは「ロシアにやって欲しくないのは、キエフからドンバスに軍を移動させることだ。そうすれば、ロシアはより弱い立場に置かれてしまうので、ロシアは再びキエフを奪還しようとするだろう。ウクライナ政府がウクライナ軍を移動させてくるかどうか、ドンバスの上に餌をぶら下げている可能性もある」と述べた。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウントは@JackDetsch

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウントは@RobbieGramer
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はウクライナ東部にロシア軍が注力する中、ウクライナ軍の抵抗も激化している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は重要拠点マリウポリが陥落すれば、ロシア側とは交渉しないと発言している。マリウポリ死守命令であり、ゼレンスキー大統領は戦争を停止することはないと宣言したようなものだ。そうした中で、ウクライナは国家を挙げて西側諸国により効果の高い武器の供与を求めている。NATO加盟の国々の中には、戦車や重火器支援を行おうとしている国も出ている。こうした支援はただ武器そのものを与えるのではなく、交換用のパーツや整備員(メカニック)も支援することであり、その輸送運搬、資金まで提供することである。
 こうした支援の程度を引き上げることで、ロシアから見れば実質的にこれらの国々はウクライナの共闘者(co-combatant)ということになる。具体的にはヨーロッパ諸国ということになるが、これらの国々は非常に危険な火遊びをしているということになる。「ロシアが攻撃してくるなんてありえない」と甘く考えて後で痛い目に遭うということはあり得る。また、こうした支援をいつまで続けられるのかということもある。武器商人たちは武器が売れて結構なことだが、売り買いということは現金が必要となる。その現金はどうやって調達するのかということになる。ウクライナに支払わせるということは無理だろうから、自国民の血税ということになる。日本でもそうだが戦争によって、一般国民の生活は苦しくなっている。エネルギー価格の高騰によって、新型コロナウイルス感染拡大で傷んだ経済に更なる打撃が加えられている。そこに戦争に巻き込まれる(自分たちが攻撃される、家族に死傷者が出る、自分の親族が所属する軍隊が派遣されるなど)ことまで加わってくる。

 日本は安全で、口先で「どんどんやれ」「いいぞいいぞ」と勇ましく述べるのは簡単だが卑怯だ。そして現実が見えていない。日本はロシアと国境を接している。日本も気を付けて対応しなければどんな事態に巻き込まれるかもわからない。ロシアも「日本はアメリカの属国で色々と大変だ、独自の行動は難しいんだろう」と忖度してくれることもあるだろうが、それは最大限善意で解釈すればの話だ。現状で日本にまで戦争を仕掛けるということはロシアの国力から考えて無理だし、アジアの平和と安定を望む中国(それによって経済成長という利益を得ている)が許さないだろう。しかし、戦争以外の方策で日本にダメージを与えようとしてくるだろう。だから日本は気を付けて行動しなければならない。

 ヨーロッパ諸国はハイエンドな(高度な)武器をウクライナに供与しようとしている。そうなれば戦争はより大規模に、より深刻に、より泥沼になっていく。ヨーロッパ諸国がウクライナ戦争のエスカレーションに踏み切れば、それはもう第三次世界大戦ということになる。

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西側諸国は最終的にウクライナにとっての重要な武器を本格展開し始める(The West Finally Starts Rolling Out the Big Guns for Ukraine

-ウクライナ人の中には、これはあまりにも小さ過ぎ、かつ遅過ぎるのではないかと懸念する人もいる。

ロビー・グラマー、ジャック・デッチ、アイミー・マキノン筆

2022年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/15/tanks-heavy-weapons-ukraine-russia-nato-putin-offensive/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカとNATOの同盟諸国は、ウクライナ軍がウクライナ東部のドンバス地方でロシア軍との大規模な戦闘に備えるため、戦車、ヘリコプター、重火器の提供を強化した。

この新しい武器供与は、戦争初期における西側のウクライナ支援からの著しい転換を意味する。当時、欧米諸国の当局者たちは、ウクライナがロシアの大規模な侵攻に対してどの程度持ちこたえられるかを確信できず、ロシアの手に落ちる可能性のある重火器を提供することに慎重になっていた。また、今回の武器供与は、対戦車ロケットなどの防御的なシステムから、戦争の重要な局面でウクライナが必要としているより攻撃的な兵器へのシフトを意味している。

チェコ共和国は今月初め思い切って水門を解放した。2月24日にロシアが侵攻を開始して以来、NATO諸国としては初めて戦車をウクライナに提供した。チェコ共和国はその他にも、ウクライナに装甲戦闘車輛と大砲システムも送った。

NATOの他の国々も、NATOの国境を越えてウクライナに高度な軍用機器を送り、チェコの動きに追随している。スロヴァキアはウクライナにS-300防空システムを送り、アメリカは水曜日に、ウクライナに8億ドル相当の軍需品を追加で供給すると発表した。その中には、MI-17ヘリコプター11機、M113装甲兵員輸送車200台、四輪駆動車ハンヴィー100台、スイッチブレード「カミカゼ」ドローン300機、重榴弾砲、数千発の砲弾、その他の軍需品が含まれている。

戦争の最初の段階では、西側諸国の政府関係者の多くが、キエフは数日のうちにロシア軍の攻撃によって陥落すると考え、生き残れるかどうか分からない政府に重火器を送ることに躊躇していた。

しかし、欧米諸国からの対戦車兵器や小火器に支えられたウクライナの強固な抵抗と、装備の不十分なロシア軍の不手際により、ウクライナ北部でのロシアの大規模な攻勢が停滞したことで状況が大きく変化した。

ウクライナへの重火器の移送は単純な話ではない。重車両や武器そのものの提供以外にも、ウクライナへの重火器の移送は、紛争地域で車両を稼働させ続けるための訓練、交換用部品、整備士など、バックアップのための大規模な物流が必要になる可能性がある。ロシアは、アメリカやNATO諸国の兵器がウクライナに輸送されるのを攻撃すると脅している。

元在ヨーロッパ米軍司令官ベン・ホッジスは次のように述べている。「戦車はただのレンタカーではない。機械化された車両や装甲車の譲渡について話すときはいつでも、交換用部品、メンテナンスパッケージ、訓練、燃料、弾薬など、彼らが作戦を継続できるようにすることも考えなければならない」。

それでも、あるアメリカ国防省高官は月曜日、複数の同盟諸国がウクライナに戦車を提供することをまだ検討中だと語った。提供する戦車のほとんどは、キエフの部隊がすでに訓練を受けているソヴィエト時代のものである。ホッジスは、「これはおそらくウクライナ人が既に慣れ親しんでいる装備なので、訓練にかかる時間は比較的短くてすむだろう」と述べた。

ウクライナの高官は、兵力も人員も不足している軍隊への更なる支援を求めている。しかし、物流の複雑さから、西側諸国の政府の中には、ウクライナへの大型重車両の移送を差し控える動きもある。

また、特にドイツの一部の政治家たちは、ウクライナ軍を重火器で強化することで、西側諸国がロシアの更なる侵略の標的になるのではないかと懸念している。この議論は、ドイツの連立与党内に亀裂を生じさせたとも報じられている。

ドイツの大手兵器メーカーであるラインメタル社は今週初め、中古のレオパード1戦車を最大50台、ウクライナに供給する用意があると語ったが、ドイツ政府はまだこの兵器移送を承認していない。ドイツ政府関係者の中には、東ヨーロッパで一般的なソヴィエト連邦後の兵器システムに精通しているウクライナ人に、西洋製の戦車を訓練するには時間がかかり過ぎると考えて、この案に難色を示す者もいる。ラインメタル社の最高経営責任者であるアルミン・パッパーガー氏は、この議論に反論し、数日で訓練が可能であると述べた。

ウクライナ側からすれば、西側諸国による新たな武器供与は歓迎すべき変化であるが、まだ十分ではないと映る。ウクライナの新旧の政府関係者たちは、戦争の決定的な新段階になると予想される事態を目前に控える状況下で、西側諸国はウクライナをより武装させるためにもっとできることがまだあると口を揃えて訴えている。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は水曜日、「武器を追加しなければ、この戦争は終わりのない血の海になり、悲惨さと苦しみと破壊を広げるだろう」とツィートし、ロシア軍が軍事攻撃中に民間人に残虐行為を行った都市を列挙した。ゼレンスキーは「マリウポリ、ブチャ、クラマトルスク・・・、リストは続くだろう。ウクライナの重火器以外、誰もロシアを止めることはできない」とツィートした。

ウクライナ政府関係者や政府アカウントは、重火器のさらなる提供を訴えて、ソーシャルメディア上でハッシュタグ「#ArmUkraineNow」を使い始めている。

ウクライナの独立反腐敗防衛委員会の委員長であるオレナ・トレグブは、今回実施される西側からの新たな重火器提供は、数的に優勢なロシア軍との戦いでウクライナを優位に立たせるのに十分ではないと述べた。トレグブは「ウクライナは点滴を打たれて、ゆっくりと死んでいくようなものだ」と述べた。

しかし、米欧の当局者は、今回の新たな重火器提供は、ワシントンと他のヨーロッパの同盟諸国が、ウクライナがロシアの猛攻を生き残るだけでなく、攻勢に転じるのを支援する準備を始めたことを意味する、と述べている。たとえウクライナが不十分だと考えていても、重火器の供与はウクライナの軍事的成功に不可欠であることが証明されるだろうというのがその主張だ。

リトアニアのアルビダス・アヌサウスカス国防相は、「西ヨーロッパ諸国は、この戦争に勝つためにウクライナを支援するためにできる限りのことをしており、この支援は量的にも質的にも増大する一方だ」と、本紙『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。

ウクライナからは戦車に対する欲求が高まっており、そして西側諸国が戦車をもっと送るよう圧力をかけている。それは、ウクライナ東部のドンバス地方が平坦な戦場で、戦車の操縦がしやすいことも要因となっている。

ロンドンにあるシンクタンク、国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は次のように語っている。「ウクライナ東部の大部分は、いわゆる“戦車の国”で、機械化戦争に理想的な平らなオープングラウンドだ。そのため、ウクライナはこの戦いにとどまり、ロシア軍を足止めし、最終的に機会を捉えて反撃するために、主力戦車、歩兵戦闘車、中距離防空システム、徘徊型兵器(訳者註:攻撃型無人航空機)などを必要としている。ウクライナ軍の重要な課題は、優れたロシア軍の火力を前にして、いかに大規模な複合武器作戦を行うかである」。

アメリカは、ウクライナへの最新の武器提供について、ウクライナの広範な希望リストのいくつかのボックスにチェックをつけ始めている。米国防総省の高官は、国防総省が定めた基本規則に基づき匿名を条件に取材に応じ、ウクライナの訓練生たちが東ヨーロッパのNATO加盟諸国で榴弾砲や対砲台レーダーなどの新システムの使い方の訓練を受ける計画が進行中であると述べた。

また、ヨーロッパのNATO諸国がウクライナに軍備を移転する際にも、アメリカは重要な後ろ盾となっている。スロヴァキアがS-300防空システムをウクライナに送った後、アメリカはスロヴァキアにパトリオットミサイル防衛システムの1つを配備し、空白を埋めた。また、アメリカは今月初めにポーランドと大規模な武器取引に調印し、ポーランド軍に250台のエイブラムス戦車を供給することになった。

専門家の中には、米国はさらに踏み込んで、ポーランドなどのNATO加盟諸国がウクライナにミグ戦闘機を譲渡する際に、旧式のF16戦闘機の空軍への補充を提案することで支援すべきだと主張する者もいる。一部の同盟諸国はこの旧式のミグ戦闘機の譲渡に難色を示しており、訓練や兵站を考慮すると複雑化する可能性がある。スロヴァキアはミグ戦闘機のウクライナへの移送を検討していると言われている。

前述の元在ヨーロッパ米軍司令官ホッジスは、こうした軍事支援がロシアとNATO諸国との間の紛争の引き金になるという西側諸国の懸念は誇張されすぎており、ワシントンはウクライナへの武器供与をさらに強化する必要があると主張した。

ホッジスは「私たちはリスクを誇張してきたし、ロシアもそれを知っている。世界史上最も強力な同盟が命がけで戦っている国に25年前の旧式の航空機を提供することにロシア派怯えているのである」と述べている。

ホッジスは更に「もし我々が民主政治体制にとっての兵器庫(the arsenal of democracy)であるならば、民主政治体制にとっての兵器庫として、ドアを開け、ウクライナ人が必要とするものをすべて持ち出そう」と述べた。

この議論は、ロシアがキエフ郊外から撤退した後に再編成し、ウクライナ軍がウクライナ東部の支配をめぐる新たな戦いに直面するためにできる限りの火力を結集している、戦争の重大な局面で行われている。米国防総省当局によると、ロシアはウクライナ東部のドネツク市の南に大砲部隊を配置している。今週初めに公開されたイギリスの国防情報報告書は、クレムリンがドンバスの主要人口拠点に対する空爆を強化すると予測しており、主要鉄道拠点であり、先週のロシアの弾道ミサイル攻撃で59人が亡くなったクラマトスクなどにも空爆を行うと分析している。

セントアンドリュース大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究専攻)は、「ウクライナはドンバス地方においてロシア軍の重火砲に対してより脆弱となる可能性がある。ウクライナ軍がロシア軍に対して町や都市での戦いを強いるのではなく、より広い場所で争おうとすればロシア軍の重火砲の攻撃に晒されることになる」と指摘した。オブライエンは更に「個人的には、ウクライナに航空戦力を与えるために、防空システムとUAV‘(訳者註:ドローン)から始めるのが良いと考える。長距離砲も非常に有効となるだろう」と述べた。

西側諸国からの武器提供が増大すれば、ロシアがウクライナ東部で攻勢を維持することが難しくなる可能性がある。西側諸国は、クレムリンが5月9日のナチス・ドイツに対するロシアの第二次世界大戦の勝利を記念する祝日に向け、自軍に大きな戦果を挙げることを切望していると考えている。専門家たちは、ロシアは戦争開始後1カ月で大きな損失を被った後、支援歩兵の不足とドンバスでの前進の鈍化によってロシアは困難に直面するだろうと見ている。

前述の国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は、「確かに、攻勢が永遠に続くことはない。私の推測では、ロシアにはこの戦いを6月まで続ける力はないだろう。だから、ウクライナに対してそれまでに何かを与えなければならないということになる」と述べた。

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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻が開始されたもうすぐ2カ月が経過しようとしている。西側諸国はロシアに対する経済制裁を実施しているが、その効果について疑問が出ている。そもそもヨーロッパ諸国、特にドイツはロシアからのエネルギーに依存しており、輸入代金を支払っている。季節が春になり、暖房用のエネルギー需要は少なくなっていくだろうが、ヨーロッパ諸国はロシア以外の輸入エネルギー元を手当てしなければならない。

 しかし、BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)をはじめとして、対ロシア制裁に参加していない国々も多い。ロシアとしてはこうした国々に割引でエネルギーを供給していけば(価格上昇前の水準の金額でもこれらの国々にはありがたいことになる)、経済に対する致命的なダメージは避けられることになる。実物資源を持っていることはやはり大きなことだ。

 ロシアのルーブルは侵攻前の住準に戻りつつあり、2022年のエネルギー収入は約40兆円が見込まれている。その多くはヨーロッパのロシアからのエネルギー輸入代金ということになる。ロシアからエネルギーを輸入しておいて代金は制裁だから支払わないという厚顔無恥は、歴史的これ以上の狡猾なことをやってのけてきたヨーロッパ諸国でもいくらなんでもできない。

ヨーロッパ諸国がロシアからのエネルギー輸入を完全に遮断しない限り、「ヨーロッパからの資金がロシアの戦費となる」という事実は変わらない。ヨーロッパ諸国はウクライナを応援しながら、ロシアにも戦費を提供するという何ともふざけた状況になっている。正義の為ならエネルギー輸入を完全に遮断したらよい。ロシアに経済戦争を仕掛けてロシア経済を破壊すると述べたおっちょこちょいのヨーロッパの政治家もいたが、自分たちがどのような状況に置かれているのか分からなかったようだ。

 日本もアメリカの属国、西側諸国という立場から対ロシア制裁という正義にお付き合いしなければならない。ウクライナ戦争によって物価が上昇しており、さらに追い打ちをかけて今年の4月から値上げラッシュだ。日本で上がらないのは人間の労働に対する対価だけだ。戦争は早く止めてもらいたい。しかし、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は妥協をする意図を持たず、戦争の更なるエスカレーションを求めている。これでは戦争はこれからも続いていくという悲観的な先行きしか持つことができない。新型コロナウイルス感染拡大に何とか対処しつつあり、世界的に良い方向に進んでいたのに、という何ともやりきれない状況だ。

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●「ロシア、制裁の迂回に成功か-エネルギー輸出で経済下支え」

Alan CrawfordJulian Lee

202248 3:46 JST

ルーブルは戦争前の水準回復、「制裁は経済をまひさせるに至らず」

ロシア産ソコル原油の来月分は完売、今年のエネルギー輸出3割増も

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-07/R9Z8M0T1UM1001

-ルーブルは戦争前の水準回復、「制裁は経済をまひさせるに至らず」

-ロシア産ソコル原油の来月分は完売、今年のエネルギー輸出3割増も

ロシアのウクライナ侵攻を巡り、欧州は米国と歩調を合わせて追加制裁を打ち出す構えだ。だが、ロシアが経済を支える方法を見いだしつつある兆しが多く表れている。

 ロシア極東産ソコル原油の来月出荷分は完売。中国の数社は3月にロシア産石炭を人民元で購入した。ロシアから欧州に輸出されるガスの量は、侵攻以降に増加した。このいずれもが、制裁の対象とはなっていない。

 ブルームバーグ・エコノミクスはロシアがエネルギー輸出で今年上げる収入を約3200億ドル(約40兆円)と予想、前年から3割強増加すると見込む。ロシア・ルーブルはドルに対して戦争前の水準をすでに回復している。

ロシアの原油生産は今月減少しているが、エネルギー輸出で稼ぎ続け通貨を支えている状況は、西側の首脳をいら立たせている。ロシアの孤立は深まり、ロシア軍がウクライナの一部地域から撤退しているとしても、ロシア経済の底堅さはプーチン大統領にとって国内向けに勝利をアピールできる材料になる。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローで、欧州中央銀行(ECB)の政策委員だったパトリック・ホノハン氏は6日、「金融などの制裁がロシア経済を弱体化させているのは疑いない」としつつ、「ロシアの輸出から得る収入を断たない限り、制裁がロシア経済をまひさせるには至らない」とブログでの投稿に記した。

Foreign Exchange Reserves(外貨準備)

Russia estimates that half of its reserves are frozen by sanctions(ロシアは外貨準備高の約半分が制裁によって凍結されていると推定)
foreignexchangereservesbloomberg511

欧州連合(EU)加盟国は7日、ロシア産石炭の段階的な輸入禁止を盛り込んだ第5次の制裁パッケージで合意する見通し。EUがエネルギー輸入に関連した制裁を打ち出すのはこれが初めてになる。EUの行政執行機関、欧州委員会はロシアのトラックと船舶について、農産物やエネルギーなどの例外を除き大半のEU入域を禁止することを目指している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は定例となっている夜の演説で、新たな対ロシア制裁は見た目こそ「華々しい」が、十分ではないと主張。「世界がブチャで目にした悪事に釣り合うとは、ほとんど言えない」と語った。

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●「バイデン米大統領が「がれき」とやゆしたルーブル、盛り返し鮮明」

Sydney Maki

202247 13:18 JST

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-07/R9XYG9T0AFH601

-対ロ制裁でもルーブルはウクライナ侵攻前の水準まで戻す

-ロシア産原油・天然ガス購入で外国勢がプーチン大統領に命綱

ウクライナ侵攻開始からの数日間に、通貨ルーブルはロシアの新たな金融孤立を浮き彫りにする有力な象徴となった。

 プーチン政権に対する米欧などの制裁を受け、ルーブルは一時1ドル=121.5ルーブルと過去最安値に沈み、1998年のロシア金融危機時の暴落を想起させた。厳しい様相となる中で、バイデン米大統領は「ルーブル(ruble)が瞬く間にほぼrubble(がれき)と化した」とやゆした。

しかし現状は異なることは明らかだ。6日のモスクワ市場のルーブル終値は79.7ルーブルで、ウクライナ侵攻前の水準を回復している。

ロシア政府や新興財閥(オリガルヒ)にさまざまな制裁が科され、外国企業の撤退も相次いでいるが、外国勢がロシア産原油・天然ガスの大量購入継続でプーチン大統領の財源を満たしルーブルが下支えされる限り、こうした措置がほぼ骨抜きであることは明らかだ。

それ以外の面でロシアが世界経済からほぼ遮断されたままであっても、同国の今年のエネルギー輸出収入は約3210億ドル(約397000億円)と、前年を3割余り上回るとブルームバーグ・エコノミクスは推計する。

Russia's onshore currency recovers to pre-invasion levels(ロシアのオンショア通貨はウクライナ侵攻の前のレヴェルに回復)

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米欧などの制裁に対応し、ロシアが実施した資本規制もルーブルを支えているものと見受けられる。海外に住む投資家の資産凍結やロシア企業に保有外貨の8割売却を義務付ける措置などが含まれる。

こうした事情を背景に、ルーブルが侵攻前の水準を回復したことの意義に疑念を抱く見方もある。しかも相場持ち直しは約10年ぶりの薄商いの中で起きている。「当局が講じたあらゆる措置を踏まえると、ルーブルは変動相場制ではない」と、ゼネラリ・インシュアランス・アセット・マネジメントの新興国市場シニアストラテジスト、ギヨーム・トレスカ氏は語る。

一方、ロシア産原油・天然ガス購入で外国勢がプーチン大統領に実質的に命綱を差し伸べている状況は見過ごし難い。これはロシアに対し、通貨高につながる傾向のある経常黒字をもたらし、制裁で同国に打撃を与える取り組みに水を差している。

ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのストラテジスト、ブレンダン・マッケナ氏は「経常黒字は実際ルーブルを安定させるもう一つの材料だろう」とし、「エネルギー高が続きロシア産エネルギー・商品の主要輸入国が購入を継続すれば、経常収支は黒字のままだろう」と指摘した。制裁へのロシア側の対抗措置もあってルーブルは対ドルで78ルーブルに上昇する可能性があると同氏は話した。

Dollar Lifeline(ドルの生命線)

Russia is set for another year of higher energy earnings(ロシアは今年もエネルギー収入の増加が見込まれる)

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Source: Bloomberg Economics

Note: * Revenue calculated for 2022 based on current prices

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(終わり)


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