古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:オバマ大統領

 古村治彦です。

 

 今回は後半部をご紹介します。

 

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オバマ大統領:最後の年と彼が残すものパート2

 

 国家安全保障会議を整理する、そして米軍から冷戦のままの時代遅れの考えを除去する。オバマ大統領には大統領在任最終年でやるべき重要な仕事がいくつか残っている。

 

ローザ・ブルックス筆

2016年2月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/02/25/obama-the-last-year-and-the-legacy-part-ii/

 

 私は前回のコラムで、バラク・オバマ大統領が彼の残すものをはっきりとさせ、それが続くようにするために、政権最後の1年でやるべきことについて書いた。私の関心は、シリアの平和や気候変動の解決などの短期的には実現不可能なことにはない。私は、大統領自身が持つ力で解決できるものに焦点を絞っている。それは、不明確な収容の停止と秘密の戦争と法律の廃止ということである。オバマ大統領は、このような改善点をそのままにして大統領の任期を終えれば、ヒラリー・クリントンは苦労することになるだろう。そして、オバマ大統領が敵だと見なした人間を秘密裏に収容したり、殺したりする力をドナルド・トランプに渡すことになったら、世界の為にはならないだろう。

 

 しかし、これでオバマ大統領のやるべきことリストが終わり、ということではない。彼がホワイトハウスを去る前、大統領として、破綻したアメリカの安全保障政策とアメリカ政府内部の破壊された構造と組織を改善する努力をすべきだ。特に、アメリカ軍、情報部門、ホワイトハウスの安全保障担当スタッフに関しては、改善すべき時期に来ている。

 

(1)破綻したアメリカの安全保障政策を改善する。

 

昨年12月に私が書いたように、平均的な1年でテロリストたちに殺害されるアメリカ人の数は、牛に殺害されるアメリカ人の数よりも少ない。しかし、世論調査と人々のヒステリーが示しているように、かつてのアドルフ・ヒトラーとヨシフ・スターリンの脅威を合わせたものよりも、現在のイスラム過激派グループのテロの脅威の方が大きくなっていると感じている人は多いだろう。この根拠のない脅威の認識によってアメリカ政治、政策、予算は捻じ曲げられている。そして、テロ攻撃よりも深刻な長期的な脅威に目を向けないようになっている。私たちは戦略的に一貫しない軍事介入を中東やその他の地域で行ってきている。それはまさにこのような馬鹿げたことの為なのだ。

 

 アメリカが優柔不断の国になったことはオバマ大統領の失政のせいではない。しかし、彼は優柔不断さを何とかしようとはしなかった。オバマ大統領はアメリカ人がイスラム教とテロリズムを同一視するという間違いを気付かせるために良い仕事をしている。彼はまた、シリアに対する全面的な介入を伴うイスラミック・ステイトへの対応を求める馬鹿げた要求を一貫して拒絶してきた。オバマ大統領はアメリカ人たちにいくつかの重要な事実を思い起こさせている。それは「911以降にテロリズムによって殺害されたアメリカ国民の数は100名以下だ。同時期に銃を使った暴力で亡くなったアメリカ国民の数は数万を下らない」というものだ。しかし、オバマ大統領もまた政治的な圧力に負けて、テロリズムを黙示録的なおどろおどろしい言葉を使って表現している。「憎しみに満ちた見方」対「全人類」というものであって、これは、現在続く「テロリストたちとの戦争」にとって利益となるものだ。

 

 オバマ大統領が「永続的に続く戦争」を真剣に望まないのなら、テロリズムを人類の進化にとっての深刻な脅威として扱うことを辞めるべきだ。テロリズムは数千年にわたり、数千もの組織によって採用されてきた戦術のひとつだ。テロリズムは野蛮で、不快で、違法な戦術だ。しかし、テロリズムによって西洋文明が崩壊させられる訳ではない。私たちは深刻なテロリストからの攻撃のリスクを最小限にすることが可能だし、そうすべきだ。しかし、アメリカのその他の重要な国益や課題を犠牲にしてまでそれをする必要はない。

 

(2)軍を立て直す

 

オバマ大統領は「私たちは歴史上最強の軍隊を持っている」と述べている。軍事力を他の国の軍隊よりもより速やかに人や建物や物を吹き飛ばす能力だけで測定するならば、オバマ大統領の発言は正しい。しかし、物を吹き飛ばすという行為において重要なことは、それが政治的な目的を実現するということである。そして、アメリカが破壊力を戦略的な成功に結びつけているかということは、どっちとも言えないのだ。

 

 多くの点で、アメリカ軍(と国防に携わるその他の機関)は、現在においても冷戦世界に対応するように構成されている。現在、私たちが直面している世界規模の複雑な問題に対応するようには出来ていない。軍隊の指令責任は地理上の線でいくつかに区分されている。その結果、いくつかの地域をまたがるような脅威に対処することが難しくなっている。アメリカ軍内部の陸海空海兵、そして安全保障に携わる諸機関の間にはライヴァル関係が存在する。そのために、必要のない非効率が生まれ、資源が無駄遣いされてしまう。一方、時代遅れの武器システムは、予算のかなりの部分を食いつぶしてしまう。

 

 募集、訓練、人材についての政策もまた時代遅れなままだ。装備と技術は20世紀中盤の戦争に対応するようになっており、インターネット上の諸問題、気候変動、伝染性の高い疾病、政治的な不安定から派生する脅威に対応することは難しい。軍の幹部は一人の例外もなく、アメリカ軍はより即応性と順応性を高める必要があると認めている。軍の構造に関するすべてが即応性とは真逆となっているのだ。

 

 良く考えられた、そして大胆な内容の改革案は既にたくさん発表されている。議会の協力を必要とするものもあるし、行政府内の対応だけで実現するものもある。こうした改革に関しては基本的に予算の増額は必要ではない。国防予算が大きくなったからと言って、そのお金のほとんどが組織の現状維持や更なる利権のために使われるなら、軍隊の効率性を高めることにはならない。逆に、国防予算が小さくなっても、正しい行動が最優先されるなら、軍隊の効率性を損なうことにはならない。

 

オバマ大統領が残された任期内で軍の改革と再構築を完成させることは不可能だ。しかし、彼は最後の1年で改革案を明確にすることはできる。そして、国防総省の官僚組織と連邦上下両院の軍事員会の議員たちに危機感を持たせることは可能だ。軍の改革は党派の絡む問題ではない。そして、オバマ大統領は連邦議員たちの中で味方を見つけることが出来るだろう。

 

(3)情報・諜報部門の改善

 

 「情報・諜報共同体(the intelligence community)」という言葉に私は違和感を持っている。共同体という言葉から、私はアメリカにある17の情報・諜報機関の職員たちが一緒になってお祭りをやったり、バーベキューをやったりしている、そんな姿を連想してしまうのだ。実際には、17の機関はそれぞれ別の方向性で仕事を行っている。911事件の後に国家情報局が創設された。しかし、各機関の協力と情報共有は進まず、官僚的なままとなっている。

 

 アメリカの情報・諜報機関は多額の予算を食いつぶしている。アメリカの情報・諜報部門の諸機関が持つ技術的な能力の卓越性は疑いようがない。世界の通信を傍受することができる。世界各地で行われる秘密のミサイル発射テストの種類を全て分類することが出来る。またその他様々な能力を持っている。こうした卓越性を持つので、アメリカ国民は、アメリカの情報・諜報部門にはこれもまた素晴らしい予測能力を持つはずだと考えている。しかし、情報・諜報部門は911事件、アラブの春の発生、イスラミック・ステイトの台頭を予測することが出来なかった。また、ロシアのウクライナ侵攻、パリでのテロ攻撃なども予測できなかった。彼らは居心地の悪さを感じているだろう。

 

ニューヨーク・ヤンキースの名捕手だったヨギ・ベラはかつて、「予測をすることは難しい、特に将来に関する予測は」と語った。それはその通りだ。しかし、情報・諜報部門の予測に関するこれまでの記録は失望するものだ。特に、多くのNGOとジャーナリストたちと比べるとその酷さは際立つ。

 

そんなことがどうして起きるのか?ひとつには、官僚制の中で見失ってしまう重要な証拠をNGOやジャーナリストたちが手に入れることは簡単なことなのだ。情報を収集するためのプログラムは存在するのだが、問題は改善されておらず、更にひどくなっている。データが多くなれば多くなるほど、より雑音が多くなる。分析をすればするほど、点と点を結び付けづらくなり、予測が難しくなる。

 

 一方、CIAが対テロリズムのための準軍事的な作戦実行を行うようになり、エネルギーと物理的な資源が分析と長期的な戦略立案・遂行から奪われてしまっている。また、冗長・諜報部門の人材に関して、必須の言語能力を備えている職員は払底している。2013年の報告によると、アメリカの情報・諜報部門全体で中国語を話せる人材はわずか903名であり、アラビア語を話せる人材は1191名に留まった。アメリカは国内に多様性を持つ数少ない国のひとつだ。国内には世界各国からの移民がやって来て、活動的な移民共同体を形成している。家ではアラビア語を話す人たちは100万人以上いるし、中国語を話す人々は300万人もいるのだ。しかし、情報・諜報部門に在籍する職員の大多数は白人男性のままだ。世界人口の約4分の3が非白人で、約半数は女性であるのに、そんなことで世界を理解することはできない。

 

 アメリカ軍の改革と同様、情報・諜報機関の中身のある改革には数十年という時間を要するだろう。それにもかかわらず、オバマ大統領は最低限、現在の諸問題に関する明確な分析結果と変革のための具体的な青写真を残しておくべきだ。青写真には、重複する部門の廃止が含まれるべきだ。具体的には、CIAの準軍事部門の廃止(軍部門がうまくやっているのにCIAがそれをやる理由はどこにある?)、テロリズム対策プログラムの再構成、優先順位の明確化(情報・諜報に関する優先順位を決定する際の政治的な影響を小さくする)、外部からの監視の改善、政策立案者へ少数派の考えを伝達する方策の改善と最新化、そして言語的、文化的に多様な人材の採用のための新しい試み、が挙げられる。

 

(4)ホワイトハウスの国家安全保障会議の改革。

 

 民主、共和両党の国家安全保障問題の専門家たちを団結させる問題があるとすれば、それは、オバマ政権の国家安全保障担当スタッフに対する不満の共有ということになる。国家安全保障会議は規模が大きくなりすぎており、政治家と経験不足の選挙スタッフばかりが入っており、低いレヴェルのマネイジメントばかりやっている。各政府機関から大統領への政策案を伝達するよりも、政策立案にばかり集中している。ロバート・ゲイツ元国防長官が回顧録の中で述べているように、「私、クリントン国務長官(当時)、パネッタCIA長官(当時)や他の人々は、オバマ大統領のホワイトハウスが国家安全保障問題に関する全ての政策とその実施を厳しくコントロールするという決心を思い知らされた。オバマ大統領は、国家安全保障に関してホワイトハウスに集中させ、コントロールした。これはリチャード・ニクソンとヘンリー・キッシンジャー以来のことであった」。当然のことだが、国家安全保障会議に関しては超党派で合意できる実質的な解決策がある。それは、国家安全保障会議をより小さく、風通しを良くし、硬直性と情報の集中を緩和させ、更に現場に近いレヴェルで効率的な問題解決を行うようにすべきだ。ホワイトハウスに何でも集中させるのではなく、行政府の各政府機関に任せるところは任せるべきだ。

 

 軍と情報機関の実効性のある改革には、議会による関与も必要となるであろうが、大統領自身でこの改革をしっかりと進めることが可能だ。確かに、こうした改革を次の大統領に押し付けてもよいだろうが(もちろん次の大統領もすぐに改革をしなくてはならないと気付くだろうが)、今からでもすぐに国家安全保障会議の改革をスタートさせ、次の大統領の負担を少しでも減らすべきではないか?

 

これまでに挙げた「やるべきことリスト」に載せるべきものの中で、派手なものはないし、オバマ大統領の支持率を上昇させるようなものもない。しかし、彼はこれからどんな公職にも立候補して選挙戦を戦うということはない。だから、大統領、残された仕事をどんどん片付けていきましょう。

 

 

※ローザ・ブルックス:ジョージタウン大学法科大学院教授、ニューアメリカ財団シュワーツ記念上級研究員。2009年から2011年にかけて政策担当米国防次官顧問を務めた。また、米国務省の上級顧問も歴任した。

 

(終わり)






 
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 古村治彦です。

 

 今回は、オバマ大統領の外交についてそれを評価し、改善点を明確にする記事をご紹介します。オバマ大統領の外交については、消極的(リビアやシリアにアメリカの地上軍を派遣しなかった)という評価で、評判が悪いですが、この記事の著者ローザ・ブルックスはオバマ大統領を評価しています。

 

 2つの記事がありますので、2回に分けてご紹介します。

 

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オバマ大統領:最後の年と彼の残すものパート1(Obama: The Last Year and the Legacy, Part 1

 

7年経って、オバマ大統領は今こそアメリカの外交政策を秘密の影から明るい場所に持ち出すべきだ

 

 

ローザ・ブルックス筆

2016年1月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/13/obama-the-last-year-legacy-guantanamo-drones/

 

 一般教主演説が終わった。しかし、オバマ大統領の人気は終わっていない。バラク・オバマ大統領の任期は1年残っている。この1年でまだ終わっていない仕事を済ませ、誤りを正し、2008年に彼をホワイトハウスに送り込んだ数千万のアメリカ国民の希望に従うことが出来る。専門家たちは、この1年はオバマ大統領が残せるものを確立するための時間であると述べている。彼らの主張は正しい。

 

 オバマ大統領の残り1年は厳しいものとなるだろう。イランとの核開発を巡る合意と気候変動に関するパリ合意のような成功があったにもかかわらず、アメリカ国民の過半数はオバマ大統領の仕事を支持しておらず、それよりも大きい割合のアメリカ国民はオバマ大統領の外交政策を支持していない。直接的な介入をしないで、中東に平和をもたらし、ロシアと中国にきちんとした民主政治体制をもたらすには1年では短い。

 

 しかし、数は少ないが彼にはできることがまだ残されている。彼がそれらに集中したらではあるが。オバマ大統領が2016年にやるべきことリストには4つの自公が書かれている。

 

①グアンタナモ基地の閉鎖。これは本当のことだ。オバマ大統領は大統領就任以来、グアンタナモ基地の収容施設を閉鎖したいとずっと望んできた。しかし、連邦議会がそれを許さなかった。これは悲劇的なことだ。連邦議会はグアンタナモ基地の収容者をアメリカ国内に移送する際に公的な予算を使うことを禁じる法案を通過させた。グレゴリー・クレイグとクリフ・スローンが昨年11月に『ワシントン・ポスト』紙に掲載した論説の中で指摘しているように、「この制限は憲法違反」なのである。

 

 移民制度改革や銃規制などの問題について、オバマ大統領は、連邦議会の妨害行動に直面する中で、大統領令で乗り切ってきた。彼がグアンタナモ基地を閉鎖したいと本気で臨むなら、彼は大統領令を発してそれを行うべきだ。現在のグアンタナモ基地の収容者数は少なくなっているが、その象徴的な効果は大きなものとなるだろう。グアンタナモ基地を閉鎖すると決め、収容者たちを軍用機に乗せてアメリカ国内に連れてくれば良い。それですべて終わりだ。

 

 連邦議会の共和党所属議員たちは大きな声で批判や非難をするだろうが、思い出して欲しい。彼らはジョージ・W・ブッシュ政権時代には、連邦議会は大統領の軍最高司令官としての力を制限すべきではないと主張した人々なのだ。

 

 ②根拠のない収容の停止。その象徴性は置いておいて、グアンタナモ基地の抱える真の問題は国外にあるという、地理の問題ではなく、収容されている人々のほとんどは14年も収容されているのに、彼らは裁判を受けておらず、判決も受けていないということだ。彼らの多くは犯罪容疑で起訴されてもいないのだ。オバマ政権の説明によると、収容者たちは法的な根拠に基づいて収容されていないのだが、彼らはアルカイーダとその周辺の勢力との戦闘においてアメリカ軍と戦った戦闘員だったので収容されたということである。しかし、収容者の多くにとってこのような収容の正当性の説明は法的な詭弁以上のものではない。同時多発テロ事件が起きてもう14年も過ぎて、アルカイーダの「中核」は除去されている。現在の状況下でこのような正当化の詭弁はもう通らない。将来の「危険性」のために人間を有無を言わさずに監禁すること、公開されない証拠に基づいて閉ざされた空間に収容することは、長い目で見て道徳的に受け入れられるものではない。

 

 グアンタナモ基地に収容されている収容者のうち、45名の人間はアメリカ軍からも国家安全保障上の脅威とは既に見なされていない。彼らは即座に開放され、生活再建の支援を受けられるようにすべきだ。また、それ以外の人々は裁判を受けられるようにすべきだ。そして、彼らが有罪であることを証明されなければ、彼らもまた釈放されるべきだ。連邦議会にこうしたことを止める憲法上の権限はない。そして、オバマ大統領にはこれを行う権限がある。だから、彼らは今すぐにこれをやるべきなのだ。

 

 オバマ大統領が今これをやらなければ、次の大統領に頭痛のタネを残すことになる。そして、アメリカの中核的な原理である法の支配と相反する前例を残すことになる。

 

 2001年の軍事力行使容認決議を巡るくだらない駆け引きを止めること。オバマ政権は2001年の軍事力行使容認決議を根拠にして、シリアのイスラミック・ステイトやその他の地域の悪者たちに対して軍事力を行使できると主張している。しかし、オバマ大統領はこれが決議内容を逸脱していることを分かっている。2001年の軍事力行使容認決議は911の同時多発テロ事件について責任を持っている人物や組織に対して軍事力の行使を認めている。こうした人物や組織が再び「アメリカに対して国際規模でのテロリズム攻撃を行うことを阻止する」ために軍事力行使を容認している。この決議は、永遠に変化し続ける悪者リストに掲載される人物や組織に対して永久に戦争を行うことを意図して作られたものではない。

 

 オバマ大統領は繰り返し、2001年の軍事力行使容認決議には欠陥があり、それを無効にしたいと述べてきた。もし彼がそれを真剣に望むなら、彼は政権内の法律家たちに対して2001年の軍事力行使容認決議を根拠とすることを止めるように求める必要がある。そして、連邦議会に対してアメリカ国民そして無数の外国人の命を危険に晒すことになる決定について責任を取るように求めるようにすべきだ。オバマ大統領はイスラミック・ステイトに対するアメリカ軍の空爆をすべて停止すべきである。そして、連邦議会が明確な内容の軍事力行使容認決議を行うまで、アメリカに対する窮迫な脅威を除いてアメリカの軍事力を行使しないと宣言すべきだ。そうすることで連邦議会も目を覚まして動き出すことだろう。

 

②秘密の戦争と秘密の法律を廃止すること。大統領に就任以来、オバマは「対象を絞った攻撃」を数百回にわたり許可した。そのほとんどはドローンと呼ばれる無人の飛行装置を使ったものだ。これらの攻撃によって6カ国で数千人の命が失われたと言われている。しかし、政権幹部たちは、これらの攻撃のほとんどが特定の個人を対象にしていたものであると公の場で説明すること、そして、死者の多くが巻き添えで殺害された無辜の人々であったことを認め責任を取ることを拒否している。こうした攻撃の基礎となる法的根拠ははっきりしていない。

 

 これがグアンタナモ基地の法的な手続きを経ない収用問題である。これをできるだけ簡潔に言えば、アメリカ政府は秘密のうちに多くの人間(数百の単位ではなく、数千の単位で)を殺害したということだ。アメリカ政府は、秘密の理由で、匿名の人間が秘密のプロセスで評価された秘密の証拠に基づいて、秘密のうちに人々を殺害してきたのだ。

 

これはアメリカ大統領ならば誰も残したいとは思わない遺産である。

 

 オバマ大統領も繰り返し監督機能の強化と透明性と説明責任の工場を実現したいと述べてきた。少なくとも、彼が真剣にそれを望むのならば、実現することは可能だ。アメリカがどれだけの地点で、どれだけの人々と組織を標的に攻撃して殺害したか、そしてどれだけの民間人を殺害したかを公表できない理由は存在しない。

 

 現在のアメリカ国内法と国際法の下で、テロリストを標的にして殺害することに関して、政権には法的な正統性があることを説明するための詳細な報告書を公表することが出来ない理由も存在しない。法の支配にとってこの報告書は最低限必要なことだ。人間を殺害する場合に、その殺害についての法的な理由を公にすることは最低限必要なことだ。このような対象を絞った攻撃の監視を改善するための道理にかなった、現実的な提案を行うことが不可能だとする理由は存在しない。連邦議会の協力があろうがなかろうが、オバマはこれらの改革を実行することが出来る。しかし、どちらにしても、改革は実行されねばならない。

 

 オバマ大統領が改革を実行しなければ、彼は次の大統領に対して頭痛の種を残すことになる。対象を絞った攻撃に対する規制がほぼない状況をそのままにすることになる。

 

 オバマ大統領が2016年にやるべきことリストはこれで終わりではない。次回のコラムでは、オバマ大統領の最後の1年で取り組むべき問題の残りについて書きたいと思う。残りの2つは、国家安全保障、リスク、脅威に関する論説を変えること、そして国家安全保障会議(NSC)と情報機関の改革、である。

 

(終わり)





 
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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回はオバマ政権の現実主義とイランとの核開発合意に関する記事をご紹介します。私は常々、外交においては現実主義と理想主義(左派と右派)が存在すると書いてきました。そして、オバマ大統領は現実主義的な外交政策を行っていると拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも明らかにしました。このことを裏付ける記事になっています。

 

 この記事の内容で言えば、今の安倍晋三政権と自民党は外交においては、非現実的な理想主義者ということになります。それも戦争をしたがって仕方がない、アメリカで言えばネオコンと同じ存在です。日本国民の多くが2000年代のアメリカ国民と同じくその危険性に気付き出していると私は感じています。

 

==========

 

イランは現実主義の良い具体例である(Iran and the case for realism

 

EJ・ディオンヌ筆

2015年8月30日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/iran-and-the-case-for-realism/2015/08/30/ba028102-4dc2-11e5-84df-923b3ef1a64b_story.html

 

外交政策を巡る議論はほとんどの場合、国内政治の争いを反映したものとなる。しかし、同時に語られない前提と認識されない諸理論に基づいてもいるものだ。

 

 これはイランとの核開発を巡る合意に関する論争にも当てはまる。もちろん生の現実政治は大変に大きな役割を果たしてはいる。共和党所属の連邦上院議員ジェフ・フレイク(アリゾナ州選出)とスーザン・コリンズ(メイン州選出)は条件さえ整えば、合意に賛成することにやぶさかではないようだ。しかし、党に対する忠誠心をテストすることになるこの問題で、同僚たちとは違う行動を取ることについて高い代償を支払うことになることもまた計算しなくてはならない。

 

 イスラエル首相ベンジャミン・ネタニヤフはアメリカ連邦議会で親イスラエルと反イスラエルの争いを激化させようとしたが、これは不幸なことだ。イスラエルの強力な支持者たちの多くは、イランの核開発を査察する制度について特に批判することになるだろう。しかし、彼らはイランの核開発プログラムに対する制限は現実的だとも信じている。連邦上院議員ベン・カーディン(メリーランド州選出、民主党所属)は、アメリカの交渉担当者たちは、「核開発の最前線に立っていた」と語った。これは「核開発の最前線は主要な点である」ということなのである。

 

 まだ態度を決めていないカーディンと他の民主党所属の連邦議員たちに対する、合意に対して反対票を投じるように求める圧力は大きなものとなっている。連邦上院外交委員会の幹部であるカーディンが賛成票を投じると、これは真に勇気のある行動ということになるだろう。そして、態度を決めかねている同僚たちにとって大きな影響を与えることになるだろう。

 

 オバマ大統領と関係諸国は、連邦議会によって合意が否決されてしまうことで生まれる危険性について語っている。これは正しい。この危険は、合意を有効なものとすることよりもリスクが高いものとなる。アメリカは合意を破棄して、より厳しい合意条件を実現するために再交渉すべきという考えも存在するがこれは全く非現実的なお笑い草でしかない。それはこの合意は単なるアメリカとイラン、2か国間のだけの合意ではないからだ。この合意には合意内容を強力に支持する関係諸国も含まれているのだ。これまで続けてきたイランに対する経済制裁を再び行うことを提案することもまた同じ理由で馬鹿げている。アメリカに協力した国々は、アメリカが一度結んだ合意を破棄しても、合意を破棄することはないであろう。

 

オバマ政権は反対している人々に対してこの質問を中心にして挑戦している。それは「それでは他の選択肢は何になりますか?」というものだ。これはただの言葉遊びの質問ではない。

 

 現在の連邦議会の情勢分析では、オバマ大統領は合意を有効とするための議員の賛成票を最低限確保できるだろうと言われている。オバマ大統領は合意を無効化するための試みを阻止するための41名の上院議員の支持を得るための秘密兵器を持っている。カーディンの投票はカギを握ることになるだろう。

 

 しかし、ひとたびこの話が落ち着いたら、オバマ大統領、議会における反対派、大統領選挙立候補者たちは世界におけるアメリカの役割についてどのように見るかについて大きな議論をすることになる。オバマ大統領は分かりにくい「オバマ・ドクトリン」について説明し、共和党の有力な大統領候補者であるスコット・ウォーカーとマルコ・ルビオが金曜日に行った批判に少なくとも間接的に反論することで利益を得ることが来出るだろう。

 

オバマ大統領が主として外交政策において現実主義者であると多くの人々がいる(私もその中の一人である)。特にアメリカがイラクで冒険主義的な愚かな行為を行った後、現実主義はこれまでよりもより良いものだと考えられるようになっている。私は、現実主義者は、「アメリカは民主的な価値観と人権のために戦わねばならないが、軍事面における過度の拡大は、アメリカの国益と長期的な強さにとって致命的な危険である」と考える人たちだと考える。オバマ大統領の外交を擁護する際によく使われる論法は、「確かにいくつかのミスを犯したが、軍事力で出来ることとできないことに関する彼の現実主義は、アメリカの外交アプローチを再定義し、アメリカを正しい方向に戻すことに成功した」というものだ。

 

 この議論を始めるのにより材料となるのが、『ナショナル・インタレスト』誌の創刊30周年記念号に掲載されたリチャード・K・ベッツの「現実主義による説得」という論文だ。ベッツは現実主義の立場に立つ高名な知識人だ。ベッツはコロンビア大学に属する学者でもある。ベッツは「現実主義者は動機よりも結果をより重視する。現実主義者は良い動機が如何にして悲惨な結果を生むのかという点に注目する」と主張している。理想主義的なリベラル派と保守派は共に「正しい考えを支持し、悪と戦う」と強硬に主張するが、現実主義者は、「私たちが直面している選択肢は“より大きな悪とより小さな悪の間に存在する”」と主張する、とベッツは述べている。

 

 ベッツは「敢えて過度な一般化の危険を冒すが、理想主義者は勇気について心配し、現実主義者は制約について心配をする。理想主義者は武力によって悪に対峙することの利益を重視するが、現実主義者はコストを重視する。全体として、現実主義者は思い上がりではなく、抑制を求める」と書いている。

 

 頭の中は現実主義になりつつありながら、精神は今でも理想主義である私たちのような人間にとっては、現実主義は冷たくて、道徳的に不十分だと思ってしまう。しかし、現実主義の道徳は、人々の生命、財産、実行不可能な試みのための力の浪費することが道徳に適っているかどうかということになる。現実主義を批判する人々はイランとの合意に反対している人々が受けているのと同じ質問に直面する。それは「それでは他の選択肢は何になりますか?」というものだ。

 

(終わり)







野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 



 古村治彦です。



 昨日、私は、オバマ大統領の自分撮り(selfie)について書きました。AFP通信が流した一枚の写真によれば、バラク・オバマ米大統領がデンマークのトーニング=シュミット首相とイギリスのデイヴィッド・キャメロン首相と並んで座り、スマートフォン(誰の所有物かは不明です)で、笑顔で自分たちを撮影していて、この時、ミシェル・オバマ夫人は憮然とした表情をしていました。



 これに対して批判が起こりました。それに対して、この写真を撮影した人物を登場させて、「ミシェルも周囲と笑顔で冗談を言っていた(笑顔は事実ですが、冗談を言っていたのかどうかは分かりません)」と発言させたのがワシントン・ポスト紙(Roberto Schmidt, POTUS selfie photographer, weighs in on reactions to Michelle Obama http://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/2013/12/11/e9a5adec-6289-11e3-aa81-e1dab1360323_story.html)です。「世界の指導者たちは人間らしく行動していた」と言わせています。



 私は何も笑うなとは言いません。冗談を言うなとも言いません。知り合いと会って、笑顔で挨拶をする、軽く冗談を言い合う、結構なことです。人間らしいことです。ホワイトハウスの写真には、エアフォースワンの中で、笑顔でジョージ・W・ブッシュ前大統領やヒラリー・クリントン前国務長官(元ファーストレディー)と笑顔で歓談している写真が掲載されていますが、それを悪いとは言いません。



 問題は、不適切な場所での自分撮りという行為だと思います。自分撮りという行為自体が悪い訳ではありません。しかし、それも適切な場所や時間での行為であるべきです。追悼式という場所であの行為が適切であったのかどうか。私は個人の考えとしてあれは間違っていると思います。一国を代表する指導者であるという自覚があれば、マスコミに一挙一投足を見られている公の場であのような行為をすることが適切でしょうか。いや、人間として適切でしょうか。「適切だ」とお考えになる方もたくさんおられるでしょう。そうお考えになることには反対しません。しかし、私個人はあれは適切ではなかったと思います。



 そして、上記のような見解がワシントン・ポスト紙に件の写真の撮影者の意見が掲載されましたが、私は考えたことを変えるつもりはありません。しかし、その人物の見解にある「人間らしさ」という点について、「人間は完璧ではなく、間違ったことをする」と言い換えるならば、それは全くその通りだと思います。オバマ大統領をはじめ、自分撮りに参加した指導者たちもまた人間であると言えるのであり、「人間らしさ」が出た一枚であると私は考えます。



(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 



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