古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:オーストラリア

 古村治彦です。

21世紀に入って、アメリカが国力を落とし、衰退する一方で、中国の台頭が続いている。経済力を示すGDPで言えば、アメリカは超大国になって以来、様々な挑戦者が出現したが、中国が最もアメリカの経済力に近づいている状態だ。これから20年ほどで中国がアメリカを追い抜いて、世界最大の経済大国になるという予想もなされている。

アメリカは独力では中国を抑制、封じ込めることは難しくなっている。そのために、アメリカは日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)という枠組みを作った。しかし、インドはアメリカの言う通りにはならない。インドはアメリカの言いなりになって、中国と直接対立することを避けている。そのために、クアッドは既に機能しないような状態になっている。
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クアッド

 同じような枠組みにオーカス(AUKUS)がある。これはオーストラリア(AUS)、イギリス(UK)、アメリカ(US)の枠組みが構築された。アメリカは、オーストラリアを引き込んで、対中最前線基地とするために、オーストラリアがフランスと結んでいた、ディーゼルエンジン型の潜水艦購入契約に横槍を入れて破棄させて、その代わりに原子力潜水艦を与えるということ主行った。オーカスは文化的にはアングロサクソン系の国々という同質性があるが、日本をオーカスに入れて「ジャーカス(JAKUS)」にすべきだという主張があることはこのブログでも既にご紹介した。
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オーカス

 そのオーカスであるが、困難な状況にあるのではないかという話が出ている。アメリカは、オーストラリアがフランスと結んでいたディーゼル型潜水艦の購入契約を破棄させて、その代わりにアメリカから原潜を買わせるということになったが、源泉を約束通りに提供できないということだ。それはアメリカにオーストラリアに提供する原潜を構築する余剰の能力がないということだ。オーストラリアに製造基地を建設するという話も出ているようだ。

 私たちは、アメリカのイメージをアップデイト、更新しなければならない。アメリカが世界最強で、全能の唯一の超大国で、何でもできるというイメージは修正しなければならない。アメリカについてのより現実に近いイメージを持ち、日本の安全保障を考えねばならない。それこそがリアリズムだ。

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オーカスは低迷しているのか?(Is AUKUS floundering?

マイケル・オハンロン筆

2022年12月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/3753627-is-aukus-floundering/

緊密な同盟関係にあるオーストラリア、イギリス、アメリカの間のいわゆるオーカス(AUKUS)協定は、その効力を失いつつあるのだろうか? もしそうであれば、中国の脅威に対して同盟国やパートナーと共に反撃するという、バイデン政権が得意とする2、3の構想の1つが失われることになりかねない。しかし、政権はこのリスクに気づいていないようだ。ペンタゴンのE止め輪リングからホワイトハウスに至るまで、そろそろこの問題に対する自己満足を捨て去る時期に来ている。

初期段階のオーカス構想は、いろいろな意味で直感に反していた。それは、既に同盟関係にある3カ国が、なぜ新たな協力の仕組みを必要とするのかが明確でなかったからだ。オーストラリアの軍事予算は350億ドル程度(アメリカの20分の1)と控えめで、この取引の中心となる潜水艦を購入する余裕があるとは思えなかった。このような中規模のパートナーと他の分野の軍事技術開発で協力することによって、アメリカが得られる他の大きな利益があるのかどうかも明確ではなかった。また、アメリカ政府の一部には、中国がこの10年のうちに台湾を攻撃する可能性があると予測しており、早ければ2030年代にオーストラリアに潜水艦を引き渡すだけのプログラムについても、どのような有用な変化をもたらすかは明らかでなかった。

更に悪いことに、オーカスの見苦しい2021年の展開は、ホワイトハウスに大人が戻ってきた、アメリカの同盟諸国は再びアメリカ政府から尊重されるだろうというバイデンの主張を少しばかり馬鹿にしたようなものとなった。ワシントン、キャンベラ、ロンドンの間で秘密裏に交渉されたその中心的なコンセプトは、オーストラリア軍にアメリカ設計の攻撃型原子力潜水艦8隻を売却するという提案であった。中国がインド太平洋地域で軍事力を増強し、自己主張の強い行動を続ける中、これらの潜水艦は50隻以上の攻撃型潜水艦を保有するアメリカの艦隊を補完し、インド太平洋海域をパトロールすることになる。また、この地域の安全保障のために同盟諸国が一丸となって取り組むという決意を象徴するものである。

しかし、この契約をオーストラリアにとって適切なものにするために、キャンベラはフランスの造船所との既存の通常動力型潜水艦の製造契約をキャンセルしなければならなかった。パリは大混乱に陥り、バイデン政権はつい最近アフガニスタンからの撤退に失敗し、国家安全保障面でも基本的な外交手腕でも失敗したように見えた。国家安全保障顧問の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンが辞任を申し出たが、バイデンはそれを受け入れなかったという報道が出ている。

当初の案件の是非や、そもそもこの案件を生み出した裏工作の不様さはさておき、オーカス協定は、アメリカのアジア太平洋に対する大戦略の中で広く尊重され、際立った要素になっている。日本、アメリカ、オーストラリア、インドが参加する非公式な安全保障パートナーシップである「クアッド(Quad)」を徐々に強化されている。クアッドは、冷え込んだ日韓関係を徐々に改善する努力に加え、南シナ海の軍事化、香港や新疆ウイグル地区に対する独裁的行動、台湾に対する脅威といった中国に対して積極的に反撃しようとするアメリカの取り組みの中心的な存在となっている。

オーカスは、中国の脅威に対するアメリカの見解を共有する、ワシントンと同盟2カ国との関係を強化することで、このような問題で過剰反応しがちなアメリカの傾向を和らげることができる、冷静で抑制的な態度をしばしば取る同盟諸国であり、大戦略(grand strategy)の良い要素となっている。このことは、オーカスのメンバーが披露しようとする技術や武器売却の一つひとつにとどまらず、あらゆる面で言えることである。

しかし、今、AUKUSは困難に陥っているように見える。アメリカは、潜水艦をめぐる合意をどのように実現させるかについて、考えがまとまらないようだ。官僚政治、そして戦略的・政治的緊急性の欠如が、この問題の原因となっているのだろう。潜水艦をできるだけ早くオーストラリアに届けるには、原子力潜水艦の技術がよく分かっているアメリカで建造する必要がある。しかし、アメリカの造船所には、オーストラリアのために潜水艦を建造する能力はなく、同時に、海軍が望むように、自国の攻撃型潜水艦を現在のSSN約55隻から60隻以上へと拡大しようとしても、その能力はない。これが現状だ。

1つのアイデアは、アメリカの造船基地拡張の資金をオーストラリアに求めることである。その価格が妥当であれば、そして、オーストラリアに一定の期日までに潜水艦の引渡しを保証されるのであれば、それは合理的な方法かもしれない。しかし、この2つの問題に関して、アメリカ海軍は難色を示し、誰もそれを覆すことはできないようだ。

その結果、オーカスは実質的に立ち消えてしまうかもしれない。2021年に外交政策全体がぐらついた後、2022年までロシアと中国の脅威への対処がそれなりに印象的だった時期に、バイデン陣営にとってそれは良い政治ではないということになっている。更に重要なことは、北京が既に、アメリカは地政学的な目的意識と決意を失っているのではないか、また、新しい戦略を1、2年以上継続する能力も失っているのではないかと考えている時期に、アメリカの新しい戦略にとって良いことではない。

※マイケル・オハンロン:ブルッキングス研究所フィリップ・H・ナイト記念防衛・戦略所長。複数の著書があり、近刊予定に『現代戦略家たちのための軍事史(Military History for the Modern Strategist)』がある。ツイッターアカウント:@MichaelEOHanlon.

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカはバラク・オバマ政権下でのヒラリー・クリントン国務長官(2009-2013年)下で策定した「アジアへ軸足を移す(Pivot to Asia)」を基にして「中国封じ込め(containment of China)」を進めている。この流れはドナルド・トランプ政権でも変わらず、ジョー・バイデン政権も推進している。その中で、構築されたのが「クアッド(Quad)」と呼ばれる日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)である。アメリカ、オーストラリア、インド、中国によるインド太平洋における安全保障の枠組みと言えば聞こえは良いが、簡単に言えば中国封じ込め、東南アジア諸国を取られないための枠組みである。しかし、インドは両天秤をかけている。
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 インド太平洋地域における枠組みにAUKUS(オーカス)がある。これはオーストラリア、イギリス、アメリカの枠組みである。アメリカが原子力潜水艦建造技術をオーストラリアに供与する、オーストラリアはフランスとの間で進めていたディーゼル潜水艦建造協力を破棄するということで、フランスが態度を硬化させたことで注目を集めた。オーストラリアは原潜を持ち、原潜の製造・修理工場を国内に持つことで、対中国の最前線ということになる。アメリカ軍と協力して中国海軍の源泉とにらみ合うことになる。オーストラリアにおけるアメリカの核兵器の配備、オーストラリアによる買い兵器開発と保有まで進む可能性もある。この「アングロサクソン軍事同盟」はクアッドに代わる枠組みになる可能性がある。
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 オーカスが結成された当初、日本政府は参加することはないと述べていたが、日本も参加して「JAUKUS(ジャーカス)」にすべきだという議論は出ている。日本がクアッドとオーカスに参加するということになると、対中国に備えた軍備増強を図るということになる。岸田文雄政権は「防衛費の対GDP比2%」という総額ありきの防衛予算増額を決め、そのために増税を国民に押し付けようとしている。国民から搾り取ってその金でアメリカから武器を買うということになる。アメリカから武器を買って済むことならまだ我慢もできるかもしれないが、問題は外国に対しての先制攻撃を可能にする安全保障戦略を発表している。先制攻撃と軍備拡張は「いつか来た道」である。国民に塗炭の苦しみを味わわせた先の大戦の反省はすっかり忘れられている。

 先の大戦の前も「日本は世界の五大国だ」「国際連盟の常任理事国だ」と浮かれ、大国意識だけが増長し、実態とはかけ離れた自己意識の肥大のために、最後は大きく進むべき道を誤ることになった。「日本は世界第3位の経済大国だ」「日米同盟は世界で最も重要な同盟だ」などというスローガンに踊らされて、調子になってバカ踊りをやって後で泣きを見ることがないようにするのが大人の態度であるが、今の日本の政治家にそのような期待をすることは難しい。

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日本がAUKUSに参加すべき理由(Why Japan Should Join AUKUS

-東京はインド太平洋において不可欠な安全保障上のアクターとなった。

マイケル・オースリン筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/japan-aukus-jaukus-security-defense-pact-alliance-china-containment-geopolitics-strategy-indo-pacific/?tpcc=recirc_latest062921

インド太平洋地域では、新たな四カ国同盟(quad)が形成されつつある。それはオーストラリア、インド、日本、アメリカが参加する日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)よりも大きな影響を与える可能性がある。中国の影響力とパワーの拡大に対抗して、オーストラリア、イギリス、日本、米国が安全保障上の利害を一致させるようになったことで、新たな連携が生まれつつある。2021年に締結された豪英米防衛協力協定(Australia-United Kingdom-United States defense cooperation pact、通称AUKUS)に日本が加わり、JAUKUSとなる見込みであり、これまでの同盟(alliance)や準同盟(quasi-alliance)にはなかったインド太平洋の自由主義的民主政体諸国(liberal democracies)間の安全保障協力

このようなパートナーシップはあらかじめ決まっていたものではない。実際、今年初め、日本がAUKUSへの加盟をひそかに検討しているという報道があったが、東京はすぐに否定し、当時のホワイトハウスのジェン・サキ報道官もこの報道内容を否定した。しかし、日本はこの3カ国と連携するようである。これは、日本の安全保障姿勢を一変させるだけでなく、インド太平洋においてますます重要な役割を果たすアクターに変貌させた戦略的革命の一部となる。7月に暗殺された安倍晋三首相(当時)の下、日本は共同兵器開発に関するほとんどの制限を撤廃し、軍事予算を着実に増やし、自衛隊がパートナー諸国の軍隊との集団的自衛権に関与することを認めるなどより積極的な防衛態勢を取るようになっている。

2021年10月の就任以来、岸田文雄首相は安倍元首相の外交・安全保障政策を基礎とするだけでなく、アジアや世界の主要自由主義的な諸国と日本の関係を拡大・強化した。岸田首相は、ロシアがウクライナに侵攻した後、直ちにワシントンやヨーロッパ各国とともにロシアへの制裁を行った。また、NATOとの関係を深め、6月には日本の指導者として初めてNATO首脳会議に出席した。国内では、岸田首相は日本の防衛予算を増やし続け、1000億ドル近くまで倍増させる可能性があり、近く新しい国家安全保障戦略(national security strategy)を発表する予定である。アジア専門家たちにとって重要なことは、日本の戦略的変革は政治家たちの個性がもたらしたのではなく、むしろ深刻化する中国と北朝鮮の脅威と結びついている。アジアの安全保障環境が不安定なままである限り、東京はその能力を高め、パートナーシップを拡大し続けるだろう。

岸田首相のアプローチの核となる要素は、AUKUSの3カ国との着実な連携だ。10月下旬、キャンベラと東京は安全保障協力に関する共同宣言に署名した。正式な相互防衛協定(formal mutual defense pact)ではないが、この協定は日本とオーストラリアの「特別な戦略的パートナーシップ(Special Strategic Partnership)」を強化するものであり、グローバルな規範と地域の開放性に対する両国の支持を繰り返し表明している。1月には既に、日豪両国は軍の相互アクセス協定(military reciprocal access agreement,)に調印しており、これにより、訪問部隊の手続きが容易になり、オーストラリアと日本の軍隊が合同演習(joint exercises)を実施し、アメリカを含めて災害救援に協力できるようになる。

実際のJAUKUSを作るには、次のステップとして、日本の参加を徐々に正式なものにする方法を検討する必要があるだろう。

新たな安全保障協力宣言により、日豪両国は、情報の共有、サイバー防御に関する協力、サプライチェーンの確保などの活動を行いながら、軍隊間の「実践的な協力を深め、相互運用性を更に強化する」ことに合意している。完全に実施されれば、提案された協力の範囲は、各国にとって最も重要なパートナーシップとなるだろう。

一方、英国と日本は12月に、日本が既にオーストラリアと結んでいる協定と同様の相互アクセス協定に署名し、互いの国への軍隊の入国を緩和し、合同軍事演習と兵站協力を強化する予定である。これは、東京とロンドンが次世代戦闘機の開発でイタリアと協力するという7月の発表に続くものだ。イギリス海軍と海上自衛隊は前月、英仏海峡で合同演習(joint exercises)を行ったが、これは新型空母HMSクイーン・エリザベスと打撃群が日本を訪れてからちょうど1年後のことであった。

イギリスにとって、日本とのアクセス協定は、ボリス・ジョンソン首相が最初に説明したインド太平洋地域へのロンドンの「傾斜(tilt)」の骨に、更に肉を付けることになる。日英の防衛関係の深化は、リシ・スナック新首相がロンドンの最も重要な公的戦略文書である「統合的レビュー(integrated review)」を中国の脅威により明確に焦点を当てるよう改訂する見込みであることと合わせて、日本とのアクセス協定は、インド太平洋地域におけるキャンベラ、東京、ワシントンとのより正式な協力関係を構築する舞台となるものである。

しかし、4カ国が正式な合意に達する前であっても、中国の前進に対してバランスを取ることを目的とした行動の調整のおかげで、非公式のJAUKUSが既に出現している。2021年10月には、4カ国の海軍がインド洋で共同訓練を行っている。 8月、AUKUSが極超音速技術と対極超音速技術の両方の開発に焦点を当てると述べた直後に、日本は極超音速ミサイルを研究すると発表した。同様に、日本は量子コンピューティングへの投資を増やしており、その投資の一部は、世界で2番目に高速なスーパーコンピューターを所有する富士通によって行われている。このイニシアティヴは、潜在的な軍事的影響を伴う量子および人工知能技術を共同開発するというAUKUSの関与と一致している。

同様に、4カ国は国内の安全保障問題でも連携を強めている。4カ国はいずれもファーウェイを国内の通信ネットワーク、特に6Gから締め出しているが、その実施状況はまちまちだ。更に言えば、イギリスの安全保障担当大臣トム・トゥゲンドハットが最近、イギリスに残る孔子学院を全て閉鎖すると発表したことは、世界中の大学に圧力をかけて中国批判を封じ込め、中国国家の利益につながる肯定的なシナリオを押し付けてきた北京系組織の存在と影響力を、4カ国それぞれが削ごうとして動いていることを意味する。

実際のJAUKUSを作るための次のステップは、日本の参加を徐々に正式なものにする方法を検討することだ。まず、量子コンピュータや極超音速機開発など、共通の関心を持つ分野について、AUKUSの17のワーキンググループのいくつかに日本の関係者を招き、見学させることから始めることができるだろう。次の段階として、日本のJAUKUSにおけるステータスを変更したり、共同運営グループの会合に定期的に出席したりすることを検討することも考えられる。共同運営グループは、AUKUSが重視している2つの主要テーマ、潜水艦(submarines)と最先端の技術を使った能力(advanced capabilities)について方針を決定し、長期的なメンバーシップを議論する。また、オーストラリアへの原子力潜水艦供給という AUKUS の中核的な取り組みに東京がどのように参画できるかを冷静に探れば、特に軍事利用のための原子力技術に反対する日本の国内政治において、潜在的な外交的・政治的地雷の可能性を排除することができるだろう。

その過程や最終的な地位が同盟であれ協定であれ、あるいはもっと非公式なものであれ、JAUKUSは、インド太平洋を戦略的に考える意思と能力を持つ4つの主要な自由主義的な諸国による安全保障上の懸念とイニシアティヴの収束の自然な展開である。政策や目標の共通性が明らかになるにつれ、JAUKUS諸国は、インド太平洋地域の安定を維持するために、それぞれの努力を更に調整し、結合することの利点を理解するであろう。

※マイケル・オースリン:スタンフォード大学フーヴァー研究所研究員。著書に『アジアの新しい地政学:再形成されるインド太平洋に関する諸論稿(Asia’s New Geopolitics: Essays on Reshaping the Indo-Pacific)』がある。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問し、それに中国が反発、軍事演習を行うなど緊張が高まった。しかし、アジア太平洋の国々は、少数のおっちょこちょいを除いて冷静に反応した。今回はそのことについての記事をご紹介する。

 台湾(中華民国)が国連での加盟資格を喪失して以降、台湾は多くの国々との正式な外交関係を喪失している。もちろん、そうした国々との非公式な関係、経済関係は持っているので、世界から完全に孤立している訳ではない。半導体の生産拠点として確固たる地位を築いている。しかし、公式的には外交上の関係はない国がほとんどだ。

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台湾と正式な外交関係を結んでいるのは十数カ国に過ぎない。それらの国々は中米と太平洋地域に多い。近年では中国の外交攻勢もあって、台湾との正式な外交関係を終了させる国々も出ている。これらについては以下の地図を見て欲しい。

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 今回、ナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問したことは中国を苛立たせた。しかし、それ以上の影響も効果もなかった。ペロシ議長が訪台したからと言って、台湾に対してより肩入れをする国は出現しなかった。インド太平洋地域において、台湾防衛を明言し、アメリカと一緒にやってやるぞと意気込む国は出てこなかった。アメリカと日本とオーストラリアがややそれに近い態度を示したが、クアッド4カ国の枠組みで重要な参加国であるはずのインドは日米豪の共同声明には加わらなかった。また、米韓同盟でアメリカとは緊密な関係を持つ韓国の場合には、ペロシが訪問しても大統領が直接会うことはなかった。アメリカの勢い込んだ態度に付き合わされて馬鹿を見るのは嫌だ、という考えが明らかだった。

 東南アジア諸国連合(ASEAN、アセアン)加盟の国々も静観の構えだった。フィリピンだけがややアメリカ寄りの姿勢を示したが、それ以上ではなかった。こうして見ると、台湾をめぐっては、「中国対アメリカ・日本・オーストラリア」という構図になっていることが分かる。日本とオーストラリアのおっちょこちょいぶりもなかなかなものだが、アメリカの属国である以上は仕方がない行動でもある。「台湾をめぐって戦争なんか起こすなよ。中国も手荒な真似をせずに徐々に吸収するようにしたら良いし(今もそうしているではないか)、台湾もアメリカを引き込んで大々的に中国と戦うなんて馬鹿なことを考えるなよ(そんなことになったら支持しないからな)」というのが大勢(たいせい)の考え方である。

 ウクライナ戦争勃発当時、「ウクライナの次は台湾だ」という標語を掲げて騒いでいる向きもあったが、「台湾を次のウクライナにしてはいけない」のである。そのために過激な手段を用いることになる機会を作らないようにするのが肝心だ。アメリカに火遊びをさせない、アメリカの軽挙妄動に付き合わない、という大人の態度が重要で、インド太平洋地域全体がそのことが分かっているようであるのは安心材料だ。日本も大きくは分かっているが、それだけでは済まない事情があり、そのこともまた地域全体で分かっているだろうから、それもまた別の意味で安心ということになる。

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ペロシの訪問後、インド太平洋地域の大半の国々が中国の側についている(After Pelosi’s Visit, Most of the Indo-Pacific Sides With Beijing

-地域のほぼ全体が中国を支持している。しかし、中国の行動はまた台湾への支持を純化させている。

デレク・グロスマン筆

2022年8月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/08/22/china-taiwan-pelosi-crisis-missiles-indo-pacific-allies-support/

ナンシー・ペロシ米連邦下院議長が台湾を訪問した。これをきっかけに、中国は台湾を四方から取り囲み、ミサイルを発射するなど、前例のない軍事訓練を実施し、極めて積極的な姿勢を示した。台湾海峡の緊張が高まったことで、インド太平洋地域の他の国々も予想通り、圧倒的に北京の「一つの中国(One China)」原則(台湾は中国本土の一部である)を支持する反応を示している。しかし、今回のペロシ訪問で、アメリカの主要な同盟諸国も台湾を強く支持していることが明らかになった。特に、台湾をめぐる戦争の可能性に直面した場合、北京の主張的な行動は、他の国々を確実に遠ざけていることが示唆された。

台湾支持の急先鋒は日本とオーストラリアである。東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian NationsASEAN、アセアン)外相会議で、アメリカとともに共同声明を発表し、「国際平和と安定に重大な影響を与える中国の最近の行動に懸念を表明」し、「軍事演習を直ちに中止するよう北京に要請」した。この声明は、オーストラリア、日本、米国が「それぞれの“一つの中国”政策に変更はない」とも述べているが、この点は明らかに焦点とはなっていない。

もう1つの重要な同盟国である韓国は、全く異なるカードを使っていた。ペロシは台北の次にソウルに向かったが、韓国の尹錫烈(ユン・スギョル)大統領は休暇中であると主張し、代わりにペロシとの電話会談を選んだが、これは一部の人々には「無視(sub)」だと解釈された。台湾に関する韓国側の公式声明はない。コメントを求められた大統領府の関係者は、中国や台湾に言及することなく「当事者間の緊密なコミュニケーション(close communication with relevant parties)」を促し、台北への支援を控えた北京に有利な発言であった。

同様に、韓国の朴振外相は、「台湾海峡の地政学的対立の激化は、地域の政治的・経済的安定を阻害し、朝鮮半島に負の波及効果をもたらす」と指摘し、無難な表現に終始している。ペロシが台湾と韓国を訪問した翌週、朴外相は初めて中国を訪問しており、この重要な台湾への中国への関与の直前に、ソウルが北京との間で揺れ動くことを避けたかったことが伺われる。

インド太平洋地域の大半は中国を支持しているが、北京の行動に危機感を募らせ、直接・間接的に台湾を支援している国もいくつかある。

ペロシ訪台はカンボジアで開催されたASEAN外相会議の期間中に行われたため、ASEAN外相会議は「ASEAN加盟諸国がそれぞれの“一つの中国”政策を支持することを改めて表明する」という声明をすぐに発表することができた。台湾については全く言及されなかった。

また、多くのASEAN加盟諸国が個別に声明を発表したが、いずれも台湾の状況を支持するものではなかった。例えば、インドネシアは「挑発的な行動を控えるよう(to refrain from provocative actions)」呼びかけ、「一つの中国」政策を引き続き尊重するとした。シンガポールは「米中両国が共存の道を歩み、自制し、緊張をさらに高めるような行動を慎む(U.S. and China can work out a modus vivendi, exercise self-restraint and refrain from actions that will further escalate tensions)」ことを望んだ。アメリカの重要なパートナーとして急成長しているヴェトナムは、過去の声明を踏襲し、「ヴェトナムは“一つの中国”原則の実施を堅持し、関係者が自制し、台湾海峡の状況をエスカレートさせず、平和と安定の維持に積極的に貢献することを期待する」と述べた。マレーシアとタイも同様の声明を出し、台湾への支持を控えている。

東南アジアのリスク回避の明らかな例外は、中国との条約上の同盟国であり、中国の海洋権益をめぐって公然と対立しているフィリピンの対応であった。ブリンケン米国務長官はASEAN会議後の8月上旬にマニラを訪れ、新大統領のフェルディナンド・マルコス・ジュニアと会談し、台湾危機について「アメリカとフィリピンの関係の重要性を示しているにすぎない。私たちは、私たちが見てきた全ての変化に直面して、その関係を進化させ続けることを願っている」と述べた。

一方、インドは非常に興味をそそられるケースであることが判明している。インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外務大臣は、ニューデリーはインドへの潜在的な影響について「評価し、監視する」と述べた。しかし、ニューデリーは「一つの中国」という言葉を口にすることを拒否し、その代わりに「インドの関連政策はよく知られており一貫している。改めて説明する必要はない」と述べるにとどまった。ニューデリーが言葉を濁すのは、おそらく、2020年5月に過去数十年で最も大きな衝突が発生した「実質支配線(Line of Actual Control)」として知られる係争中の陸上国境に沿って、インドが中国と独自の不満を抱えているためだろう。更に、近年、インドと台湾の非公式な関係は、特に経済面で拡大しており、ニューデリーが北京に対して強硬策を取ろうとしていることがうかがえる。しかし、中国への対抗を非公式な目的とする日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)に4カ国が参加しているにもかかわらず、日米豪3カ国声明に署名しなかったことは重要である。ニューデリーはまだ北京との友好関係を維持したいようだ。

他の南アジア諸国では、台湾を支持する動きは見られず、中国だけが支持されている。例えば、北京の「鉄の兄弟(iron brother)」であるパキスタンは、主権国家の「内政不干渉(non-interference in international affairs)」の重要性について、中国に台湾の計画を決定させるための慣用句を使った。バングラデシュ、モルディヴ、ネパール、スリランカも同様に、この危機状況における北京の権利を擁護している。

太平洋諸島の中では、不気味な沈黙が支配している。例外はバヌアツで、「バヌアツは台湾が中国の領土の不可侵の一部であることを再確認する」と発表している。心配なのは、台湾の4つの外交パートナーのうち、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルだけが、これまで台北への支持を表明してきたことである。マーシャル諸島は、台湾の「真の友人であり同盟国(a true friend and ally)」であり続けると述べ、中国を具体的に名指しすることなく「台湾海峡における最近の軍事行動(recent military actions in the Taiwan Strait)」を非難した。しかし、台湾の呉釗燮(ジョセフ・ウー)外相は、台湾に残る14の外交パートナー(うち4カ国は太平洋地域)の全てが、中国よりも台湾に固執していると主張した。台湾は2019年だけでソロモン諸島とキリバスという2つの太平洋島嶼国を中国に奪われており、さらなる外交上の変化が現実的な懸念材料となっている。

アメリカの太平洋地域における緊密なパートナーであり、時に中国に甘いと見られてきたニュージーランドも曖昧な表現に留まるものの、何らかの意見を表明した。ナナイタ・マフタ外相はASEAN会議の際に中国の王毅外相と会談し、「状況のエスカレート防止、外交、対話の重要性」を強調したが、「一つの中国」もしくは台湾への支持を改めて表明することはなかった。その数日前、危機の前にニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は中国に関する演説を行い、「より強硬な態度(more assertive)」の北京とでも協力関係を続けていくと述べた。アーダーン首相の今後の中国への訪問計画が、ウェリントンの寛容なメッセージに一役買っているのかもしれない。

最後に、インド太平洋諸国には、何の声明も出さないか、あるいは北京への支持を二転三転させている国がいくつかある。モンゴルは台湾をめぐる米中間の緊張が高まっていることにまだ触れていないが、北京は北の隣国が「一つの中国」を再度支持していると主張している。当然のことながら、北朝鮮とミャンマーの軍事政権は、ともに中国の強力な同盟国であり、中国を支持することを表明し、アメリカがこの地域で問題を起こしていることを非難している。

インド太平洋地域の大半の国々が中国を支持しているのは確かだが、オーストラリアと日本、それにインドなど、北京の振る舞いに危機感を募らせ、直接・間接的に台湾を支援している国もある。通常、北京はこのグループを忠誠の海の中の少数の反対勢力と見なすことができる。しかし、問題はこの3カ国がアメリカとともに日米豪印戦略対話を構成しているが、これらの国々は中国以外のこの地域の主要国であることだ。この3カ国を無視することはできず、北京は今後の戦略を見直すことを検討すべきかもしれない。どちらかといえば、北京は台湾を支持するあからさまな民主国家連合を設立することを避けたいだろう。むしろ、これらの強国の1つ、あるいは複数が台湾への支持を薄めることができれば大きな勝利であり、中国の言う統一への野望を否定できないことの証拠となる。幸いなことに、これらの国々の反対は根強く、その声は大きくなるばかりである。

デレク・グロスマン:ランド研究所上級防衛担当アナリスト、南カリフォルニア大学非常勤講師、米国防次官補(アジア・太平洋安全保障問題担当)の概況説明者(情報担当)を務めた経験を持つ。ツイッターアカウント:@DerekJGrossman

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 古村治彦です。

 クアッドという言葉が日本国内でも多く報道されるようになっている。このクアッド(Quad)は、正式名称は日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)であり、日本、アメリカ、インド、オーストラリアが参加している枠組みである。これら4カ国で地域における様々な問題解決に協力していこうという建前になっている。実際には対中封じ込めの枠組ということになる。このクアッドが対象とする地域はインド洋、東南アジア、太平洋となっている。中国が進める「一帯一路計画(One Belt, On Road)」に対抗する形になっているのは地図を見れば明らかだ。
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 地政学で言えばランドパワーとシーパワーの戦いということになるが、ユーラシア大陸という最重要の地域(ハートランド)を中国が獲得しつつある中で、アメリカ、オーストラリア、日本がそれに対抗するためにインドを引き込んで中国と対峙するという形になる。しかし、インドはしたたかだ。一帯一路計画にも参加している。どちらか一方に賭けるということではなく、両方で良い関係を保つということを行っている。ランドパワーとシーパワーのはざまにいる国としては極めて合理的な行動を取っている。

 クアッドによって、日本とオーストラリアはこれまで「隣接地域」と考えてこなかった地域で活動を行う、より具体的に言えば中国に対抗するということを行わねばならなくなった。これはアメリカの国力が減退し、一国のみで世界管理を行うことができなくなったことによるものだ。そして、アメリカが超大国として世界を管理し、繁栄を享受するという第二次世界大戦後の世界構造が大きく変化する前触れであることを示しいている。中国の台頭はアメリカにとって大きな懸念材料であるが、既にここまで大きくなってしまった存在をどのように扱うかについては、協調していくべきという考えと叩きのめすべきという考えが分立している。

 日本はインドをお手本にすべきだ。どちらともうまく付き合っていくということだ。日本もインドと同様に、中国とアメリカのはざまにいる存在だ。現状ではアメリカの意向に逆らうことはできないが、それでも裏のチャンネルなりあらゆる手段を講じて、中国とは意思疎通を図り、正面衝突するというような馬鹿げたことにならないようにしておくことが重要だ。

(貼り付けはじめ)

クアッドは西を目指す(The Quad Looks West

-東京で開催された首脳会議で、クアッドはインド洋地域を含むことで戦略的な焦点を当てる。

マイケル・クーグルマン筆

2022年5月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/26/quad-tokyo-south-asia-indian-ocean-region/

『フォーリン・ポリシー』誌の「南アジアブリーフ」にようこそ。

今週のハイライト:日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)イニシアティヴがインド洋地域に範囲を拡大、パキスタンのイムラン・カーン前首相がイスラマバードでデモ行進、スリランカの首相が緊縮財政を公約。

●クアッドはインド洋に焦点を拡大

「日米豪印戦略対話(Quad、クアッド)」に参加している国々(オーストラリア、インド、日本、アメリカ)の首脳たちが今週、東京で4回目の会合を開いた。共同声明では、新型コロナウイルスワクチン計画からサイバーセキュリティーの協力に至るまで、継続的な協力を約束した。このグループは近年、大きな勢いを見せているが、これはメンバー国が中国との関係をここ数十年で最低のレベルにまで悪化させていることが理由の一つである。
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自然災害から漁業の違法操業まで、海洋をめぐる諸問題を監視するプログラムには、インド洋、東南アジア、太平洋諸島の情報・資源共有センターが含まれる。これは、インド洋地域において中国の存在感を高めていることに懸念を抱いているインドにとって戦略的関心の高い地域に、クワッドの関心が拡大していることを示している。また、4つのメンバー国全てにとっての最重要分野において、クワッドがより多くの活動を行おうとしていることも示している。

共同声明ではインドにとって良い兆しとなる内容である新しいイニシアティヴについて言及されている。自然災害から漁業の違法操業まで海洋問題を監視するプログラムに言及されている。更に、このプログラムにはインド洋地域のみならず、東南アジアと太平洋島しょ地域における情報・資源共有センターも含まれる。これは、インド洋地域における中国の存在感の高まりに懸念を抱いているインドにとって、戦略的関心の高い地域にクアッドの地理的焦点が広がっていることを示している。また、4つのメンバー国全てにとって最も重要な分野で、クアッドがより多くの活動を行おうとしていることも示している。

クアッドは、2004年にインド洋で発生した地震と津波で大きな被害を受けたアジア諸国に人道支援を行うために発足した。しかし、東南アジア諸国連合(ASEAN)への支持を確認し、東シナ海と南シナ海における海洋問題への懸念を表明し、太平洋諸島への支援を約束するなど、最近のグループの戦略的焦点の多くは東アジアと東南アジアに当てられている。クアッドの代表的なプロジェクトであるワクチン・パートナーシップは、特に東南アジアと太平洋諸島を対象としている。しかし、新しい海洋イニシアティヴは、インド太平洋を地理的に一つの地域として定義し、それぞれの部分に同等の重点を置いている。

クアッド加盟諸国は、中国が東南アジア諸国との商業的関係を深め、南シナ海の領有権争いを軍事化することを懸念している。これは当然のことだ。海洋監視イニシアティヴは、インド洋地域における北京の存在感の増大に対する懸念も反映している。中国は、バングラデシュ、モルディヴ、スリランカでインフラ投資を活発化させている。インド洋のあちこちに中国の漁船が現れ、インドは昨年、領有するアンダマン諸島の近くで中国の調査船を発見したと発表した。

また、中国は軍事的な存在感も拡大している。東アフリカのジブチに軍事基地を設置した。インド海軍によれば、インド洋北部では常時6~8隻の中国海軍の軍艦が活動しているということだ。南アジアの安全保障研究者であるサミア・ラルワニは、「10 年以内に、中国はマラッカ海峡(Malacca Strait)からバブ・エル・マンデブ海峡(Bab-el-Mandeb strait)に広がる重要な空間における海軍の支配勢力として自らを位置づけることができるだろう」と最近書いている。
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これまでクアッド加盟国の一部は、インド洋地域を戦略的に重要視してこなかった。例えば、オーストラリアの戦略文書では、オーストラリアの隣接地域(immediate region)はインド洋の北東部までと定義されている。アメリカは正式なインド洋戦略を持っていない。しかし、この点については変化の兆しがある。アメリカ政府高官は最近、インド太平洋全体に関する議論の中で、インド洋地域を強調するようになっている。

クアッドの新しい海洋イニシアティヴは、クアッドの基本的な目標である安定の促進と公共財の提供の2つが、インド洋地域とそれにまたがる国々により深く浸透していく可能性を示している。

●私たちがフォローしている事柄

パキスタンで更なる政治ドラマが発生。経済的な問題が山積する中、パキスタンの政治的な温度は急上昇している。先月の不信任投票で失脚したイムラン・カーン前首相は、5月25日にイスラマバードへのデモ行進を行い、現政権が早期選挙に同意するまでそこに留まると発表していた。今週末、警察は複数の野党指導者たちの自宅を家宅捜索し、別の指導者を不明朗な容疑で逮捕した。火曜日には、政府はカーンのデモ行進を進めることはできないと宣言した。

カーンとパキスタン・テヘリク・エ・インサフ(PTI)党内の支持者たちは、水曜日にイスラマバードへ向かった。PTI支持者の一部は警察から催涙ガスを浴びせられ、2000人近くが逮捕された。また、PTI支持者による暴力行為も報告された。しかし、木曜日、カーンは突然、方針を転換した。イスラマバードを離れ、政府が早期投票に応じない場合は6日後に戻ると発表した。

この変化は、更なる暴力を避けるためかもしれないが、早期選挙につながるような交渉が政府との間で行われていることも示唆している。政府は早期投票実施の決定を既に行っていることを示唆している可能性がある。メディアの報道と複数の与党指導者によれば、ここ数日、選挙の可能性のある日程について話し合いが持たれている。そして木曜日、国民議会は、PTI支持者の多くを占める在外パキスタン人による投票の選択肢を制限する新法を可決した。

アフガニスタンのジャーナリストたちは抵抗している。タリバンは最近、女性ニュースキャスター全員が放送中に顔を覆わなければならないと発表し、女性の自由に対する他の強硬な制限に続いて、女性の自由を制限している。一部の男性ジャーナリストは今、テレビ出演の際にも顔面マスクを着用することで彼らとの連帯を表明することを選択し、タリバンがその命令を取り消すまでそうするつもりだと述べている。ハミド・カルザイ元大統領を含む他の著名なアフガニスタン人たちは、女性司会者たちにこの命令に逆らうよう呼びかけている。

昨年8月にタリバンが政権を掌握して以降、アフガニスタンのジャーナリストと女性たちは苦しんでいる。アフガニスタンの記者たちはタリバンに殴打されたり脅迫を受けたりしており、その多くが国外に逃亡している。タリバンによる国内のジャーナリストたちを弾圧をしているのは、タリバンが外国人ジャーナリストたちをより自由に扱ってきたのとは対照的だ。その結果として、タリバン政権のソフトな側面を世界に映し出すことになったようだ。例えば、先週、CNNのクリスティアン・アマンプールは、タリバン幹部のシラジュディン・ハッカニにインタヴューを行った。

スリランカ首相が予算削減を公約した。ロイター通信によると、スリランカの新らしい首相ラニル・ウィクレミンゲは、6週間後に発表予定の暫定予算で、大幅な削減を約束した。首相は、新たな救済措置のための資金をより多く確保するため、インフラプロジェクトの削減を含む削減を行うと述べた。スリランカは一周して元の場所に戻った形だ。現在の経済危機の根源は、2009年の内戦終結時にインフラプロジェクトを優先し、その資金調達のために巨額の融資を受けたことに遡る。

また、スリランカ政府は今週、巨額の債務を再構築するために国際的なアドヴァイザーを採用したことを発表した。スリランカが現在、国際通貨基金(IMF)と交渉している救済策を受けるためには、緊縮財政と債務再編の両方の動きが必要である。

火曜日、タリバンは、アフガニスタンのヘラート、カンダハル、カブールの各都市の空港の地上業務を管理するため、アラブ首長国連邦に拠点を置く航空会社GAACソリューションズと合意に達した。タリバンが以前、カタールやトルコと空港取引をめぐって交渉していたことを考えると、この動きはやや意外だ。しかし、昨年のタリバンによる制圧以来、GAACはカブール空港の地上業務を管理してきた。

タリバンがGAACとの取り決めを延長した理由の一つは、同社がアフガニスタンの空港でいかなる警備員も活動させないことに同意したからだろう。タリバンは長い間、アフガニスタンに外国の治安部隊は存在し得ないと主張してきた。

この新しい合意はタリバンにとって最良のシナリオであり、空港の運営能力を強化し、タリバン支配以降頻発している国際的な戦闘をより多く行う機会を増やすことができる。この取引はタリバンの広報活動にとっても好都合である。国際社会は、逆行する社会政策にもかかわらず、タリバン政権とビジネスをする意思があることを示している。

タリバン政権は今後も外国企業からの援助を求めるだろうが、これは新しい戦略ではない。1990年代、タリバンはアメリカのエネルギー企業ユノカルと数年にわたり、パイプラインプロジェクトの可能性について交渉していた。ユノカル社は、タリバンとアルカイダとの結びつきに対する米国の懸念が強まったため撤退した。

●各地域の声

建築家のアダム・ジラー・モーシェッドは、『デイリー・スター』紙上で、ダッカの悪名高い交通問題の解決には、信号機の改善といった技術的な解決策よりもはるかに多くのことが必要だと論じている。バングラデシュの首都ダッカの交通渋滞は、「社会文化的な要因、合理的な土地利用の欠如、誤った都市統治の複雑な組み合わせの結果である」と、彼は書いている。

環境保護運動活動家ネハ・パンチャミアは『プリント』誌で、インドでは適切な場所を見つけることは難しいが、絶滅危惧種を野生に戻すことが重要だと書いている。彼女は「飼育下で一生を過ごし、休息もなく既に崩壊しつつあるシステムに負担をかけるよりも、生存のためのセカンドチャンスを得る方がより良い」と書いている。

『パキスタン・トゥディ』紙コラムニストであるナジム・ウディンは、イムラン・カーン前首相を支持することはパキスタンの若者たちにとって良い行動ではないと警告している。ウディンは「若者たちは、自分たちを操ることができる人物の前に忠誠を誓うのではなく、合理性、証拠、現実に従うべき時だ」と主張した。

※マイケル・クーグルマン:『フォーリン・ポリシー』誌週刊「南アジアブリーフ」記者兼ワシントンにあるウィルソン・センターのアジア・プログラム副部長兼南アジア担当上級研究員。ツイッターアカウントは@michaelkugelman

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権成立前から、アメリカ、インド、オーストラリア、日本の戦略対話枠組である日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad、クアッド)が大きく報道されるようになった。バイデン政権の国家安全保障会議アジア・太平洋調整官(National Security Council Coordinator for the Indo-Pacific)であるカート・キャンベルが責任者の、対中封じ込め枠組である。日本の一部極右、単純なバカ右翼は「これでアメリカと一緒に中国征伐だ!」と喜んでいるようだが(自分たちだけで切り込むぞという考えがないところが奴隷根性そのものである)、事はそう単純ではない。

この枠組に入れられた、インドもオーストラリアも表面上は勇ましく、アメリカの意向に沿うように動いているように見せかけて、面従腹背、裏では「アメリカも中国も迷惑だなぁ」「勝手にやってろよ、馬鹿どもが」と言わんばかりの態度である。日本も、特に経済界は中国と全面的に衝突することは望んでいない。

アメリカは単独では中国を抑える力を持ってはいない。皮肉なことに中国をここまで成長させたのはアメリカの国内市場の旺盛な消費の結果であるが、今頃になって、インドとオーストラリア、日本を巻き込んでいざとなったら、けしかけさせようというところまで来ている。インドは中国と国境を接しているが、中国との全面的な衝突は望んでいない。オーストラリアは二面作戦である。アメリカにも中国にも両属という形を取る。これは非常に賢いやり方だ。以前にもご紹介したハーヴァード大学のスティーヴン・ウォルト教授の論稿では、ドイツが米中露の間をうまく泳いでいるとして高い評価であったが、オーストラリアは米中の間をうまく泳いでいくことになるだろう。

問題は日本だ。日本も面従腹背、二面作戦で行くしかない。どことも喧嘩せず、が基本だが、日本の場合にはアメリカの属国という「立場」がある。非常に利用されやすい。国内の単純な右翼、反中反韓の人々が焚きつけられて、中国と韓国へ吠えかかる役割を果たされるだろう。エマニュエル大使のSNSへの投稿は非常に危険だ。アメリカが前面に立たず、日本が代理で中国にけしかけられる、気づいたら一緒にやっていたはずのインドとオーストラリアがいない、屋根に上ったが良いがはしごを外されてどうしようもないという状況に陥ることが懸念される。のらりくらり、どことも喧嘩しない、というのが長生きの秘訣だ。

(貼り付けはじめ)

ティーム・バイデンは外交を「アジアへのピヴォット2.0」から始める(Team Biden Should Start With an Asia Pivot 2.0

-中国を封じ込めるというアメリカの政策には、バイデンの支援者たちが認めるであろう寄りもトランプ政権からの継続性がより必要となる。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2020年10月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/10/19/biden-trump-china-india-asia-pivot/

日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad、クアッド)の最新の会合が東京で開催された。この場で、アメリカが中国を封じ込めようとしている中で、多くのディレンマに直面していることが明らかになった。誰が今回の選挙でホワイトハウスへのレースに勝利するかは、このディレンマには関係がない。インドは伝統的に中国と対立することを避けようとしてきているが、そうした中でオーストラリア、インド、日本、そしてアメリカの外交担当大臣と長官が会合を持ったことが重要である。しかし、外相会談それ自体は4か国の新たな協力体制構築の明確な証拠を示すものではなかった。外相会談は、アジアにおける中国の台頭に対する懸念を共有する同盟国やパートナーとの間でさえ、ワシントンが行動を調整するのがいかに難しいかを浮き彫りにしている。

民主党大統領選挙候補のジョー・バイデンが勝利した場合、より伝統的な多国間外交政策を重視する彼にとって、この未熟なパートナーシップを更に発展させることは重要な課題となる。同時に、習近平国家主席がここ数カ月、より積極的な国際姿勢を取っている中国に対してより厳しいアプローチを約束した。このことは、アジア地域におけるアメリカの政策は、民主党所属連邦議員の多くが認めたがっている以上に、ドナルド・トランプ米大統領のアプローチとの連続性が必要であることを意味している。しかし、ワシントンのアジア政策の多くが混乱状態にあることは否定できない。より広範な見直しが必要だ。2011年に当時のバラク・オバマ大統領が発表した「ピヴォット(pivot)」戦略に類似した、より広範な見直しがが必要なのである。

中国の王毅外交部長は、4か国の戦略対話は少なくとも中国を苛立たせる能力は有していることを認めた。マレーシア訪問中、王毅は戦略対話のメンバー国が「インド太平洋版NATOan Indo-Pacific NATO)」を作ろうとしている、その目的は「地政学的な競争の火に油を注ぐ」ことだと非難した。この発言の内容は非現実的だ。アメリカは第二次世界大戦後にアジア地域にはNATOのような組織はふさわしくないと認識していた。アジア地域では、アメリカのパートナー諸国と同盟諸国は広く拡散し、個別の利益は多種多様である。新しい同盟のような関係を設立しようとした以前の失敗を経て、2017年に再生して以来、日米豪印戦略対話(Quad、クアッド)は、テロ対策、サイバーセキュリティ、沿岸警備サーヴィスといった、あまり攻撃的ではない分野を議論する低レベルの会合に限定されている。しかし、これは役に立たないという意味ではない。実際、サルヴァトーレ・バボネスが、『フォーリン・ポリシー』誌上で論じたように、戦略対話は廃止されるべきものでもない。実際、スタートは遅かったが、このグループは徐々に大きな意味を持つようになるだろう。

戦略対話の根底には、インドの考え方の変化がある。最近のヒマラヤ地域での中国との衝突を経て、ニューデリーは米中間のバランスを取る政策をほぼ放棄し、より強固に反中陣営に参加するようになっている。かつては中国への挑発的な行動を避けていたインドの政策担当者たちが、今では挑発的、積極的な行動を取るようになっている。地政学的緊張が高まっている時期に東京で日米豪印戦略対話会議を開催したのはその明らかな具体例だ。また、インド、日本、アメリカの3か国がこれまで参加し実施してきたマラバール海軍演習に、オーストラリアが参加することを発表したこともその一例である。アメリカとインドは、中国の軍事力の増強懸念し、対潜水艦戦などの分野でも軍事協力を深めている。

しかし、日米豪印戦略対話を強力に支持する人々でさえも、このグループの限界は認識している。最近の会議では、偽情報(disinformation)や新型コロナウイルスの管理など、中国に傾斜した幅広い議題が扱われたことが外交文書から読み取れる。しかし、4か国は正式な共同声明に合意することができなかった。おそらく、そうしようとさえしなかったのだろう。そう考えると、NATOのような組織を作る計画を進めるというのは、特にあり得ないことのように考えられる。北京から見ると、日米豪印戦略対話は中国を封じ込めるための攻撃的な計画のように見える。しかし、実際には慎重かつ消極的な姿勢にとどまっている。今のところ、中国の侵略という認識だけが、4か国を協力に向かわせている。今後とも、中国の行動が協力に拍車をかける可能性は高い。

ここから、アメリカの政策に関するディレンマが始まる。スティーヴン・ビーガン米国務副長官は2020年8月、日米豪印戦略対話の主な問題点を言い当てた。「中国の脅威に対応すること自体、あるいは中国からの潜在的な挑戦に対応すること自体、十分な推進力になるとは思えない。また、対話で話される内容はポジティブな議題でなければならない」とビーガンは述べた。しかし、ビーガンの上司であるマイク・ポンペオ国務長官は、北京に対してはるかに対決的な姿勢を取っている。これまでのところ、ポンペオは他の日米豪印戦略対話のパートナー諸国を怯えさせることなく、この姿勢を貫いている。しかし、他の3か国が何らかの形で中国との協力を求めていることを考えると、このアプローチには限界がある。

日米豪印戦略対話参加諸国は、中国とその行動に対して共通の懸念を抱いている。中国がインド太平洋地域の支配的な存在になるような事態は避けたいと考えている。しかし、何をすべきかについての処方箋を共有しているわけではない。ニューデリーの最近の変化を見ても、インドもオーストラリアも日本も、正当な理由なく中国を困らせたくはないのである。いずれも中国の強圧的な外交のリスクを懸念している。特にオーストラリアと日本には、維持すべき重要な経済的結びつきがある。東南アジアの国々の多くは、内心では中国の役割を懸念しているが、北京に対抗するための公的な行動を支持することには慎重で、こうした状況は各国の二枚腰の姿勢を生み出している。シンガポール出身の元外交官ビラハリ・カウシカン氏は最近、『ジ・オーストラリアン』紙とのインタビューで、「ポンペオのようなハードな封じ込めを口にすれば誰も参加しない。日本やオーストラリアであってもそうだ」と述べている。

これら全てにおいて、ワシントンにとって真の危険は、アジアへの取り組みが実際よりもうまくいっていると考えることだ。元アメリカ通商代表のロバート・ゼーリックは最近、トランプの中国政策が特に貿易面で「完全な失敗」だったと主張する、辛辣な論文を書いている。この先も、問題点のリストは長い。他のクアッド3か国との関係は改善しつつあるが、韓国やフィリピンといった伝統的なパートナー諸国との関係は破綻している。アメリカは、狭義の安全保障上の問題を超えて、より広範なアジア諸国とより深い関係を築くための経済的政策を欠いている。「中国を恐れるあまり、トランプ政権は北京の真似をし、アメリカの最大の強みである法の支配に基づく公正で革新的で競争力のある市場を破壊している」とゼーリックは『ワシントン・ポスト』紙上に書いている。

残るのは、軍事的な競争に頼った、バランスを失したアプローチである。2020年10月初旬、マーク・エスパー米国防長官は、アメリカは今世紀半ばまでに海軍の艦船を有人・無人合わせて500隻以上に拡大する計画であると述べた。国防総省の最近の調査によると、これは現在350隻の艦船を有する中国に対して海上での優位性を維持するための積極的な試みとなる。軍備拡張は、超党派のコンセンサスでもある。バイデンが勝利した場合のエスパーの後任として有力視されているミシェル・フロノイは最近、「南シナ海にいる中国の軍艦、潜水艦、商船を72間以内に全て沈める」ことができる能力をアメリカが開発すべきであると考えている。

次のアメリカ大統領が誰になるにせよ、アジアにおけるアメリカの軍事力を強化することが必要となる。中国の海軍の近代化は、アメリカの単独行動では追いつけないペースで進むと考えられる。しかし、これまで中東やヨーロッパからアジアへアメリカ軍をシフトさせる試みは、遅々として進まなかった。新型コロナウイルス感染拡大の後では、余分な資源を見つけるのは難しいだろう。どのような現実的なシナリオであっても、米国はパートナー諸国とこれまでと異なる種類の軍事関係を築かなければならないだろう。そうなるにしても、日米豪印戦略対話がこの強化された軍事協力の主要な手段になるとは考えにくい。

軍事力と反中国外交政策に傾くことで、アメリカの対アジア政策はバランスを欠くものとなっている。アメリカの元外交官エヴァン・フィーゲンバウムは、アメリカが「アジアにおけるヘッセン傭兵(Hessians of Asia)」になってしまうと警告を発している。ヘッセン傭兵とは、アメリカ独立戦争においてイギリス側が雇ったドイツ人傭兵部隊のことである。フィーゲンバウムの言葉が意味するところは、アメリカの同盟諸国とパートナー諸国はアメリカを中国に対する軍事上の釣り合いを取るための装置と考えるだろうが、アジア地域の政治上、経済上の諸問題を解決するための方策にはならないとも考えるだろう、というものだ。このようなアプローチは、ビーガンが述べた「前向きな課題」を追加しうる多くの差し迫った懸念を考慮すると、特に近視眼的であるといえるだろう。アメリカがアジアにおいて、ヨーロッパにおけるNATOのような効果的な集団安全保障システム(collective security system)を構築しようとするならば、非軍事的な関係、目標、価値の共有を反映したパートナーシップによってそれを実現しなければならない。

新型コロナウイルス感染拡大からの回復を加速させるための様々な方法は、各国の協調を進めることである。それによって各国間の関係が深化し団結する。国際貿易システムの修復はもう一つの方法である。国際貿易分野において、アメリカは環太平洋経済協力協定から脱退して以降、主導することに苦闘している。トランプ大統領の破壊的で一貫性のない政策に阻まれてきたのだ。サイバーセキュリティから人工知能と電気自動車のような出現しつつある部門を監督するルールまで、非軍事的な協調のための大きな根拠になる。しかし、繰り返しになるが、日米豪印戦略対話がそのための最適な場となるとは考えにくい。その代わり、アメリカはより広範なアプローチを必要としている。2011年のオバマ大統領のピヴォット(軸足転換)政策は、多くの批判を受けながらも、少なくとも、現在のアメリカの外交政策に欠けている目標の多くを達成しようとするものであった。それは、アジアにおけるアメリカの軍事力を強化する一方で、伝統的な同盟関係を修復し、より深い経済協力関係を構築することを目指したものである。その実行力は乏しかったかもしれないが、基本的な考え方は健全であった。バイデンが大統領になった場合、「アジア・ピヴォット2.0(Asia Pivot 2.0)」を構築することは、素晴らしい出発点となるだろう。

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