古村治彦です。



 昨日、私は、オバマ大統領の自分撮り(selfie)について書きました。AFP通信が流した一枚の写真によれば、バラク・オバマ米大統領がデンマークのトーニング=シュミット首相とイギリスのデイヴィッド・キャメロン首相と並んで座り、スマートフォン(誰の所有物かは不明です)で、笑顔で自分たちを撮影していて、この時、ミシェル・オバマ夫人は憮然とした表情をしていました。



 これに対して批判が起こりました。それに対して、この写真を撮影した人物を登場させて、「ミシェルも周囲と笑顔で冗談を言っていた(笑顔は事実ですが、冗談を言っていたのかどうかは分かりません)」と発言させたのがワシントン・ポスト紙(Roberto Schmidt, POTUS selfie photographer, weighs in on reactions to Michelle Obama http://www.washingtonpost.com/lifestyle/style/2013/12/11/e9a5adec-6289-11e3-aa81-e1dab1360323_story.html)です。「世界の指導者たちは人間らしく行動していた」と言わせています。



 私は何も笑うなとは言いません。冗談を言うなとも言いません。知り合いと会って、笑顔で挨拶をする、軽く冗談を言い合う、結構なことです。人間らしいことです。ホワイトハウスの写真には、エアフォースワンの中で、笑顔でジョージ・W・ブッシュ前大統領やヒラリー・クリントン前国務長官(元ファーストレディー)と笑顔で歓談している写真が掲載されていますが、それを悪いとは言いません。



 問題は、不適切な場所での自分撮りという行為だと思います。自分撮りという行為自体が悪い訳ではありません。しかし、それも適切な場所や時間での行為であるべきです。追悼式という場所であの行為が適切であったのかどうか。私は個人の考えとしてあれは間違っていると思います。一国を代表する指導者であるという自覚があれば、マスコミに一挙一投足を見られている公の場であのような行為をすることが適切でしょうか。いや、人間として適切でしょうか。「適切だ」とお考えになる方もたくさんおられるでしょう。そうお考えになることには反対しません。しかし、私個人はあれは適切ではなかったと思います。



 そして、上記のような見解がワシントン・ポスト紙に件の写真の撮影者の意見が掲載されましたが、私は考えたことを変えるつもりはありません。しかし、その人物の見解にある「人間らしさ」という点について、「人間は完璧ではなく、間違ったことをする」と言い換えるならば、それは全くその通りだと思います。オバマ大統領をはじめ、自分撮りに参加した指導者たちもまた人間であると言えるのであり、「人間らしさ」が出た一枚であると私は考えます。



(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12