古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:クーデター

 古村治彦です。

 来週に第20回中国共産党大会が予定されている。ここで新しい人事が行われ、習近平国家主席の続投、第7世代(1970年代生まれ)が指導部層に多く入ってくると見られている。今回の共産党大会は非常に重要な大会ということになる。

 中国人民解放軍(People’s Liberation Army)は1927年8月1日の南昌蜂起が健軍の日とされており、軍の徽章には「八一」の文字が入っている。人民解放軍を統括(領導)するのは中華人民共和国中央軍事委員会(Central Military Commission of the People’s Republic of China)だ。中央軍事委員会には中華人民共和国中央軍事委員会と中国共産党中央軍事委員会(Central Military Commission of the Communist Party of China)の2種類が存在するが、メンバーと役職は全く一緒なので、実質的には中国共産党中央軍事委員会が中国人民解放軍を統括する。中央軍事委員会主席は国家主席である習近平が務め、副主席2名と委員は中国人民解放軍の将官から出ている。中国人民解放軍は中国共産党に従属している形となっている。

 私たちは報道で「中国の習近平国家主席」という言葉を耳にする。「中国で一番偉いのは習近平なのだ」ということは分かっている。しかし、どれくらい偉いかということは分かっていない。習近平は中国国家主席(アメリカの大統領に相当する国家元首)、中国共産党中央委員会総書記(中国共産党の最高幹部、党首に相当)、中華人民共和国中央軍事委員会主席(これはそのまま中国共産党中央軍事委員会主席)を務めている。習近平は中国全体を領導する中国共産党のトップであり、中国人民解放軍のトップであり、中国という国家のトップ(行政府の国務院を従えている)ということになる。

 最近になって、中国人民解放軍がクーデターを仕掛けて習近平国家主席を追い落とそうとしたという噂が流れた。法輪功という中国で禁止されている宗教に関連するメディアが出所で、それをインドのメディアが報じたことで話が大きくなったようだ。しかし、以下の記事にあるように、これは「中国の政治について知識がないために流れた噂話で、それが大きくなった」ということのようだ。

 中国人民解放軍がクーデターを起こそうと思えば、これまででもいくらでも機会があった。しかし、中国人民解放軍はクーデターを起こしたことはなく、中国共産党に従ってきた。大躍進運動や文化大革命といった国家的な動乱状態にあっても、動きを自重してきた。それは、国共内戦を指導した鄧小平以来の我慢強さであり、「軍が軽挙妄動すれば国家が乱れて外患を誘致することになる」ということが分かっているからだ。

 人間は自分の希望に沿うような形で将来を予測してしまうことが多い。また、ベクトルのかかった情報を流して自分たちに有利なように状況を作ろうとする。どのようなベクトルがかかっているのか、誰が利益を得るのか、ということを考えながら情報報に接するだけで、根拠のないうわさ話に振り回されることはだいぶ少なくなる。

(貼り付けはじめ)

誤ったクーデターの噂が中国政治について明らかにすること(What a False Coup Rumor Reveals About Chinese Politics

-根拠のない物語がすぐに拡散したが、これは北京の内部での動きについて、どれほど多くの世界の人々が誤解しているかを示している。

ジェイムズ・パーマー筆

2022年9月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/09/28/china-false-coup-rumor-viral-politics/

今週のハイライト:クーデターについての根拠のない噂は北京政治に関する誤解を荒木かにしている。ウクライナの対ロシア侵攻についての成功が台湾でいくつかの疑問を生じさせている。中国の国連大使が領土の一体性について曖昧な声明を発した。

●クーデターに関する誤った噂話が拡散(False Rumor About Coup Goes Viral

先週末、李橋銘上将が習近平国家主席に対してクーデターを起こしたという、まったく裏付けのない中国に関する主張が、中国の亡命者たちの間で、そしてインドのメディアにも大々的に流布された。習近平は火曜日、公の場に姿を現し、噂を一掃した。もちろんクーデターの話は嘘だったが、一時的に多くの人に伝わり、著名人までもが噂を繰り返した。

習近平国家主席が中国共産党内でクーデターに直面する可能性は全くないとは言えない。いつか遭遇するかもしれない。中国の経済や政策の失敗は拡大し、中国のエリートたちの不満も高まっている。しかし、先週末のような根拠のない主張は、中国国外でも頻繁に見受けられる。このような噂がどのように広まり、なぜ広まったのかを考えると、中国政治の中枢についていかに知られていないか、そしていかに酷い誤解を受けているかが分かる。

今回のクーデターの噂はよくあるパターンに沿ったものだった。中国の亡命者たちの反中国共産党的な部分は、北京の内部での陰謀の噂話でしばしば騒がれるが、そのほとんどは何も根拠がない。ソーシャルメディアは、かつてはマイナーな亡命新聞やゴシップサークルの間でしか共有されなかった話を増幅させる。今回のケースでは、中国で飛行機が欠航という反体制派ジャーナリストの主張が噂の発端となった。クーデターの前兆は中国の宣伝機関の掌握ということになるだろう。

1999年に中国で禁止された、国際的な新宗教運動である法輪功(Falun Gong)は陰謀論的な話を共有する傾向があり、通常、こうした噂を広める重要な役割を担っている。法輪功系のジャーナリストは9月23日、この噂を取り上げ、何度もツイートした。そこから、インドのメディア、特に国粋主義的なチャンネルであるインドTVと一部の政治家がこの話を増幅させた。しかし、中国に詳しい学者たちが繰り返し反論したため、やがてこの噂は沈静化した。

それでは、今回の噂は中国の政治について何を示しているのだろうか?

第一に中国共産党の厳しい情報統制が噂を呼び起こす。先週末のクーデターの証拠とされたのは、習近平が9月22日に中央アジアから帰国して以来、公の場に姿を現していないことだ。習近平も人間であり、インフルエンザにかかったり、休んだりする。しかし、中国共産党は指導部層を非常に大切にしているため、病気や休暇を公式に認める訳にはいかない。もしそのようなことを認めると、指導者たちは弱者ではなく、努力し、英雄的であるというイメージが崩れてしまう。

このような警戒心の強さは、中国共産党の地下運動としての歴史の名残であり、中国の官民の機関に共通する特徴である。中国共産党の指導部は部外者と情報を共有しないので、彼らの私生活を調査することは、中国で深刻な問題を引き起こす近道となる。習近平とその側近は、海外で過ごした後、単に隔離されていた可能性もある。しかし、政府がそのようなことを発表する訳にはいかない。

世界の大多数の人々は中国の日常的な現実を知らない。飛行機が欠航になったというニューズについても、新型コロナウイルス・ゼロ体制で中国の飛行機が頻繁に欠航になっていることは、中国の人々がよく知っていることなので怪しく思えたかもしれない。一方、全長80キロ(ほぼ50マイル)の車列が北京を取り囲んだという主張は、首都に住む数千万人の住民が誰もその写真を投稿しないことでそれが本当ではないと信じる必要があった。中国の検閲は厳しいが、全てを包含している訳ではない。

中国以外の世界における中国での生活に関する知識と実際の生活との差は新型コロナウイルス感染拡大期間の孤立によって大きくなっている。注目すべきは、中国に特派員を置いているインドのメディアが、噂を増幅させるのではなく、むしろ弱めたことである。

最後に、軍隊は中国を救うことはないだろう。中国におけるクーデターに関する噂は、ほとんどの場合、軍部が権力を掌握することに焦点が当てられている。しかし、それはレーニン主義国家における権力の正統性と中国共産党が軍を強く支配していることについて根本的に誤解している。旧ソ連でも中華人民共和国でも、軍隊が国家の重要な部分であるにしても権力闘争を主導したことはない。反習近平運動を想定した場合、軍隊は宮廷の護衛はしていても、クーデターを主導するのは中国共産党のメンバー自身であろう。

しかし、部外者が軍に注目するのは、トルコからタイに至るまで、独裁国家の多くは軍が権力を握り、自らを国家の救世主と見せかけてきた歴史があるからだ。習近平と中国共産党はまた、中国において真の野党権力の源泉となりうる他のあらゆる組織を効果的に破壊してきた。軍事クーデターはあり得ないが、中国共産党の崩壊を願う人々には、それしか残されていないのかもしれない。

●私たちが追いかけているもの(What We’re Following

台湾は戦えるのか? ウクライナがロシアとの闘いで防衛に成功した一方で、台湾の人々は自分たちの軍隊が任務に耐えられないのではないか、中国の侵略によって、台湾は2022年よりも2014年のウクライナのようになるのではないかと懸念している。台湾は重武装だが、2020年にジャーナリストのポール・ファンが『フォーリン・ポリシー』誌がに寄稿した記事の中にあるように、徴兵制をわずか4カ月に短縮したことで軍隊を弱体化した。

しかし、韓国やイスラエルのように、敵対的な隣国を前にして採用している軍事国家(garrison state)という考えに、台湾の人々のほとんどは熱狂していない。しかし、台湾は、島国(island state status)でない国々とは事情が異なる。台湾の自由は、おそらく海岸や海上で勝ち負けが決まるため、防衛側に有利となる。

中国の曖昧な国連安保理声明。ウクライナ占領地でのロシアによる虚偽の住民投票を受け、中国の張軍国連大使は国連安保理で声明を発表した。「ウクライナ問題をどのように把握し、どのように処理するかについて私たちの立場と提案は一貫しており明確である。それは全ての国家の主権と領土の一体性が尊重されるべきであるということである」。ここで疑問が生じる。中国が言っているのは、誰のための領土の一体性なのか?

張大使の発言は、国民投票の正当性を前提にすれば、親ウクライナ的とも親ロシア的とも解釈されかねない。この発言は、戦争中、中国がしばしば平和や国際秩序に言及し、どちらかを非難したり支持したりすることはなかった典型的なものである。一方、中国の国営メディアや検閲機関は、親ロシア的に傾いている。

●テクノロジーとビジネス(Tech and Business

スパイの告発。中国は、アメリカ国家安全保障局(U.S. National Security Agency)が政府出資の重要な大学の機密人事情報にアクセスしたと非難している。確かにその可能性はあるが、攻撃者がアメリカ英語のキーボードを使用していたなど、いくつかの証拠は決定的なものではないようだ。

興味深いことに、ハッカーはアメリカ東部標準時の午後4時に退社し、週末は仕事をしていないという証拠がある。これは、中国政府のハッカーを特定する際によく使われる方法(例えば、最近行われたフェイスブックの影響力工作に関する調査)で、中国政府の職員が享受している2時間の昼休みを思い起こさせるものだ。

不動産業の資金難。カイシン(Caixin)の調査によると、地方政府は不動産市場の崩壊によって生じた資金調達の穴をあらゆる手段で埋めようと必死になっている。地方債を販売する地方政府の資金調達機関が、自ら事業に乗り出し、政府から土地を購入するよう圧力をかけられている。地方財政収入に占める不動産売買の割合は、税金を除いて計算すると、2000年にはわずか5.9%だったが、2021年には42%を占めるようになった。

しかし、このギャップを地方自治体の資金調達手段が埋められるものではない。国が値下がりを容認するのを待っている買い手の需要がないのだ。2020年以前にも、地方政府の資金調達車は債務危機の発生に寄与した。

弱い人民元(人民元安)、弱気な予測。中国人民銀行による下支え努力にもかかわらず、人民元は下落を続け、月曜日には対ドルで28ヶ月ぶりの安値をつけた。来月開催される中国共産党第20回全国代表大会を前に、強い人民元(人民元高)はアメリカとの経済力の均衡を意味すると一般的に考えられているため、弱い減(人民元安)は恥ずべき事態となりかねない。

更に悪いことに、来年の中国経済の見通しが暗澹たるものになりそうだ。世界銀行は4月に発表したGDP成長率の予測を5%からわずか2.8%に引き下げ、他の金融機関もこの動きに追随している。中国のような発展途上の経済では、これは国民にとって景気後退のように感じられる。政府が設定した5.5%の成長目標に達しないということは失敗ということになる。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発売しました。最初から孤軍奮闘、自力で皆さんに本の存在を知っていただくしかない状況です。不貞腐れている時間はありません。矢尽き刀折れるまで続ける所存です。

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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 大統領選挙終了後からバイデンの大統領就任式の間、そして、現在までトランプ支持者の中でささやかれているのは、「米軍の出動」「米軍の蹶起」である。簡単に言えば、クーデターである。クーデターのためには、兵士だけでは駄目だし、将官だけでも成功しない。縦(階級)と横(部隊数や人数)の広がりが必要である。そして、クーデターを起こすには、大義名分、自分たちの行動を正当化するための理由付けが最重要だ。

 アメリカ軍の内部にどれだけのトランプ支持者がおり、その人々がネットワーク化されて、その階層も上は大将中将から下は二等兵まで幅広くなっているのか、そうしたことは分からない。しかし、「クーデターが必要だ」と考えている人からそれは必要ないとと考える人まで、トランプ支持者が米軍内にいるのは確かだ。軍関係者は共和党支持者が多いと言われている。これまでもこのブログでご紹介してきたが、共和党支持者内のトランプ支持者の割合は高い。そこから敷衍すれば、米軍内のトランプ支持者の数は多いということが推測される。

 米軍幹部や民主党は、米軍内のトランプ支持者を追い出そうとしている。そのために調査をするとしている。米軍の軍人や関係者がどのような思想を持とうがそれは自由だ。それを表面に出さないで、上官の命令に従って粛々と責任を果たしていれば何の問題もない。この表面上は問題のない軍人(トランプ支持の考えを持つ)たちが、スリーパーのように思えるのだろう。ひとたび、何か起これば、この人たちが立ち上がるということを恐れているのだろう。

 調査の範囲が退役軍人にも広がっているというのは、トランプ支持の集会を企画したり、参加したりしている人たちの多くに退役軍人たちがいることを示している。この人たちは、全く軍務や軍の訓練を経験していない一般の人々とは、組織力、行動力、武器使用能力において雲泥の差がある。この人たちの動きを縛りたいということも軍の意向としてあるのだろう。しかし、軍関係のトランプ支持者の全貌を完全に掌握することは不可能だ。そうなれば、軍の最高幹部や民主党は常にスリーパーの影に怯えねばならないことになる。

(貼り付けはじめ)

退役准将が、軍隊内にいる狂信的なトランプ支持者たちを根絶やしにする必要があると発言(Retired brigadier general says Trump loyalists in military need rooting out

ジョフ・コルヴィン筆

2021年1月8日

https://fortune.com/2021/01/08/trump-support-military-capitol-coup-attempt/

連邦議事堂進入事件によって、政権移行に伴って起こると考えられる暴力事件において米軍の将兵の関与があるのではないという疑問が出て来ている。今回の暴動に対してトランプ大統領は現役の将兵を派遣しなかった。州兵はワシントン市長ムリエル・バウザーの要請によって、マイク・ペンス副大統領が命令を出して、それで派遣されたものだ。トランプ大統領は2020年12月の段階で、大統領執務室において、選挙結果を覆すために米軍を使用する可能性について話し合いを持ったと報道されている。この会議に出席したのは、トランプ大統領の初代の国家安全保障問題担当大統領補佐官だったマイケル・フリン退役陸軍中将だった。フリンはテレビ番組に出演し、「トランプ大統領は米軍の能力を利用し、選挙結果が接戦となっている各州に派遣し、選挙をやり直させることができる」と発言した。連邦議事堂進入事件の3日前、存命中の国防長官経験者10名は連名で、『ワシントン・ポスト』紙に論説を発表し、「選挙をめぐる争いを解決するために米軍を関与させること」に反対すると表明した。

これから何が起きるかについて、本誌はトーマス・コルディッツとインタヴューを行う。コルディッツは退役陸軍准将である。コルディッツは陸軍士官学校とイェール大学経営学部で教鞭を執っている。また、ライス大学ドアー記念ニューリーダーズ研究所の運営責任者も務めている。

トランプと軍部との間の関係についての現在のあなたの考えをお聞かせください。

私が大変懸念しているのは、軍隊の中に強力なトランプ支持が長年にわたり存在してきたということです。軍隊に属する人々が保守的、もしくは極めて保守的になる権利は認められています。しかし、軍隊内のトランプ支持者たちは、1月6日の事件について、本来は米軍が可及的速やかに行うべきものであった壮挙だと考えています。トランプ支持者たちが軍隊から排除されている限りはそのようなことは起きません。ですから、彼らの排除は必要なことなのです。私たちは本の数名の人たちの話をしているのではありません。私たちは国防総省全体に数千名は存在する人たちの話をしているのです。これらの人々の多くは自分たちの主張を隠そうともせずに発信し続けるでしょう。特にSNSで発信するでしょう。これは反乱であり、国家に対する犯罪です。米軍の最高幹部たちには、反乱は素晴らしい、もしくは合法だと考える人間たちや秘かにそうした考えを持つ人間たちをいかなる理由があろうとも、排除しなければならない責務があります。

■議事堂進入事件のような状況に関連する軍の原理とは何ですか?

米軍は、民警団法(Posse Comitatus Act・訳者註:1878年の連邦法で、国内の治安維持に陸軍、空軍、州兵を動員することを禁じたもの)によって統制されています。米軍は、アメリカ市民やアメリカの国土に対峙するような使い方はできないのです。法執行目的のために使用することができないのです。米軍統合参謀本部議長マーク・ミリー大将が、とランプ大統領や周辺が望んだ、米軍の選挙執行活動やその他の活動は不可能だと公式に発表した理由はここにあります。

政権移行に関しては、米軍将兵は誰が大統領になるにしてもその過程に介入しない義務を有しています。米軍の将兵はアメリカ合衆国憲法を支持し、擁護するという宣誓を行っています。アイゼンハワー大統領時代には、米軍の将官が投票を行うことさえ良くないことだと考えられていたほどです。米軍の将官が私的な空間で政治的な発言ができるようになったのはつい最近のことです。将官たちはもちろん投票に行きます。しかし、将官として、政治的に中立であることを保つ責任があり、自分たちの責務を果たす際には政治的中立であることが求められます。その中にはSNSで部下や他の人たちに対して政治的な発言をしないことも含まれます。将官として、自身の好き嫌いを発言することは命令を下すことに等しい行為となるからです。

陸軍在職中に投票はしましたか?

私はキャリアを通じて投票に参加しました。そのほとんど全てが不在者投票でした。私の部下たちは、私が誰に投票したか、私の政治的な考えはどのようなものかを知ることはなかったと思います。軍務に就いている期間、私たちには個人の信条を表明する自由はありません。そして、私たちのために働いている人たちもそのようなことをしないように求められています。これが軍隊にいる人間がいかにして政治的な動きに近づくかということの内容なのです。

士官たちにはリベラルな考え、保守的な考え、それ以外の考えを持つ自由があります。しかし、現在軍隊の内部にあるのは、カルトに近いものです。反乱にはいくつかの段階があり、それは国内で起きるテロリズムです。連邦議事堂の窓を登っていて銃撃された女性は空軍に12年間在職した退役軍人でした。私は彼女がこのような馬鹿げた行為を行うに至った時間は短いものではない、一夕一朝に形成されたものではないと考えます。ですから、今回の事件は重要なのです。

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連邦議事堂進入事件発生後、数千名の将兵がワシントンDCに派遣されている中、国防総省はアメリカ軍内の過激主義について捜査する(Pentagon probes extremism in U.S. military as thousands of troops guard D.C. after Capitol riot

ケヴィン・ブリューインガー、アマンダ・マシアス筆

2021年114

CNBC

https://www.cnbc.com/2021/01/14/pentagon-probing-extremism-in-us-military-after-capitol-riot.html

主要なポイント

・10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちが国防総省に対して、米軍内の白人優越主義(white supremacy)の拡大について調査すべきだと主張した。

・ドナルド・トランプ大統領の支持者たちがアメリカ連邦議事堂に進入する事件を起こした時、数千名の州兵がワシントンを防衛していた。

・エミリー・レイニー陸軍大尉は心理作戦に参加していた。ブラッグ基地の司令部が、レイニー大尉の暴動への関与について調査していることを認めた後、レイニーは陸軍から退職した。

木曜日、国防総省の内部調査部門は、先週のアメリカ連邦議事堂に対する進入事件の後、米軍内の過激主義者たちと白人優越主義者たちを排除するために、当局は十分な対策を行っていないと発表した。

数千名の州兵、そのうちには武装した者たちもいたが、彼らがトランプ大統領の支持者たちによる1月6日の議会進入事件の前に、ワシントンの防衛のために派遣されていた。今回の捜査はこの派遣を受けて、今月になって開始された。

国防総省は将官クラスの間での過激主義を排除するために可能な方策は全て実施していると主張したが、今回の内部調査部門の発表はその後になされたものだ。

司法当局は水曜日のジョー・バイデン大統領の就任式で更なる暴力行為がなされる可能性を認めその対処を準備している。司法当局の幹部たちは、過激主義者たちが全国の各州議事堂を攻撃目標にしていることについて懸念を持っている。また、インターネット上では、人々がトランプ支持の集会を組織しようとしている。

プログラムの観察と評価を担当する、アメリカ軍副監察官キャロライン・ハンツは書簡の中で次のように述べている。「今回の捜査の目的は、「国防総省と米軍部隊が、現役の職員や将兵が白人優越主義、過激主義、犯罪ギャングのイデオロギーや原理に参加したり、主張を展開したりすることを禁止している政策と手続きを、どれほど実行しているのかを見極めるものである」。

ハンツは、監察官局は「監督と評価が進めば、目的を見直し、範囲を拡大する可能性がある。そして、私たちは更なる目的の追加や見直しについて国防総省最高幹部たちからの提案を受け考慮することになるだろう」。

民主、共和両党の連邦議員たちは、連邦議事堂進入事件についての捜査を実施し、司法当局による対応を行うように求めている。

木曜日の午後、コネチカット州選出のリチャード・ブルーメンソール連邦上院議員が率いる10名以上の民主党所属の連邦上院議員たちは、米軍内の白人優越主義の拡大を調査するように求めた。

議員たちが米軍監察官代理シーン・オドネルに宛てた書簡の中で次のように述べられている。「米軍上層部内の白人優越主義と過激なイデオロギーの問題は新しいものではない。しかし、連邦議事堂進入事件は、即座に警戒を強めねばならないということを示している」。

書簡では、進入に参加した、もしくは暴力事件が起きる前に近くで開かれていたトランプ支持の集会に参加した、そのような人々の中に、退役軍人、もしくは現役の軍人たちが多数確認された、と記載されている。

議員たちは次のように書いている。「白人優越主義イデオロギーの拡散は米軍にとって危険であり、アメリカの民主政治体制が必要としている安全な軍と市民社会との関係に亀裂が入っている」。

国防総省の諜報部門責任者ゲイリー・リードは水曜日に次のような文章を発表している。「国防総省に在職する我々は、国防総省から過激主義を排除するためにあらゆる手段を採っている。国防総省は米軍関係者全員に対して、優越主義、過激主義、犯罪に関わるギャングやそれらのイデオロギーに積極的に関与することを厳しく戒めている」。

月曜日、タミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)は国防長官代理クリス・ミラーに対して、現役のもしくは退役した軍関係者たちが暴動事件に参加したかどうかを調査するように求めた。

ダックワースは、捜査当局によって軍関係者が特定された場合、ミラーは「これらの人々について、統一軍事裁判法(Uniform Code of Military Justice)に基づいて、責任を果たさせるために適切な行動を取らねばならない」と発言した。

ダックワースは州兵の陸軍中佐で退役したが、現役中はイラクに派遣された経験を持つ。ダックワースは「素晴らしい軍律を守るためには、アメリカ軍内に入り込み、我が国の安全保障を脅かしている過激主義者たちを排除することが必要なのである」と述べた。

アメリカ陸軍の心理作戦に関与していたエミリー・レイニー陸軍大尉は月曜日、ブラッグ基地の司令部が彼女の暴動への関与について調査していることを認めた後の月曜日、辞表を提出した。

火曜日に出された声明の中で、陸軍は、FBIと協力して、先週の暴動の参加者の中に陸軍と何らかの関係を持つ人間がいるかどうかを特定するとしている。

陸軍報道官はEメールでの声明の中で、「暴力、市民的不服従、平和への反抗といった活動は、統一軍事裁判法、もしくは州法、連邦法によって罰せられることになるだろう」と書いている。

ワシントンに2万人規模の州兵が派遣されている中、国防総省監察部による調査が行われるということが明らかにされた。この数は現在、イラク、シリア、アフガニスタンに派遣されている米軍将兵の合計数よりも多くなっている。

派遣された軍隊の一部は連邦議事堂警備部とバイデンの就任式を支援する目的を持っている。これらの将兵は武装している。

安全保障上の理由から、州兵部隊と国防総省の幹部たちはどの程度の数の将兵が武装するかどうか、大統領就任式の後に将兵が武装するかどうかを明らかにしていない。

国防総省のある幹部は火曜日、記者団に対して、ワシントンの各行事を支援するために派遣されている州兵の更なる背景調査を行う予定だと発言した。

軍隊が連邦議事堂に多数派遣されている中、ホワイトハウスはトランプ大統領からの声明を発表した。その内容は一期目で終わる大統領の任期期間中に海外に派遣されている米軍章への数を削減するというものだった。

トランプは2016年の大統領選挙で「中東における馬鹿げた終わりのない戦争を止める」と訴えていた。トランプは声明の中で「アメリカ軍はアフガニスタンに19年間も駐屯している」と述べた。

トランプは更に「同様に、イラクとシリアにおける危険度はこれまでで最低となっている。私は終わりのない戦いを終えるためにこれからも努力を続けていく」と述べた。

トランプは加えて、「我が国の軍隊を再建し、軍務に就いている勇敢な男性と女性を支援することは私の無上の光栄だ」と述べた。

ホワイトハウスから米軍の撤退のプレスリリースが出された後すぐにトランプ大統領の声明が出された。トランプ大統領は声明と同じくらいの長さのメッセージを頻繁にツイッターに投稿してきた。トランプ大統領は暴動に対する最初の反応に続き、声明という形で自身の主張を発表している。

連邦議事堂を人々が包囲する直前にホワイトハウスの外で開かれていた集会で、トランプ大統領は、大統領選挙は「盗まれた」と謝った主張を展開していた。連邦下院において民主党と共和党の一部が投票して、トランプ大統領が反乱を使嗾したとして、弾劾を可決した後、トランプ大統領はヴィデオメッセージで暴動参加者たちを非難した。

トランプは水曜日夜に発表したヴィデオメッセージにおいて、「私の真の支持者の中に、政治に関連する暴力を支持する人など一人もいない」と述べた。トランプ支持者たちがトランプ支持の集会からやがて連邦議事堂に移動し、暴動に参加したことについて、自分の発言は適切だったとトランプ派主張している。

民主党側はトランプの有罪に向けて動いており、連邦上院における選挙で大統領の座から引きずり降ろしたいとしている。連邦上院多数党(共和党)院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、弾劾裁判はトランプがホワイトハウスを去る前までに結審することは不可能だと述べた。これが意味するところは、裁判はバイデン政権成立直後までかかる、ということである。

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)が発売になりました。アマゾンのページでブックレヴューが掲載されています。是非お読みください。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げたリズ・チェイニー連邦下院議員は、連邦下院共和党指導部から追い出された。共和党所属の連邦下院議員たちの秘密投票によって、ナンバー3の共和党所属連邦下院議員会会長から更迭された。その後、チェイニーは反トランプ姿勢を強めている。

 トランプ支持者たちの中で、「米軍が立ち上がって、現在のバイデン政権に対してくデーターを起こすべきだ」という考えが広がっている。「米軍内に多くのトランプ支持者が、兵士や将官クラスに多くいるのでそれは可能だ」ということになる。これは日本で言えば、戦前の「2・26事件」のような出来事が起きることを願っているということになる。軍隊を動かすには、最高司令官の命令がなければならない。

戦前の日本で言えば、形式上は天皇ということになる。アメリカでは大統領ということになる。最高司令官からの命令なしに軍隊を勝手に動かせば、軍法会議にかけられ、重罪ということになる。トランプ支持者たちからすれば、バイデンは正当な選挙で選ばれた大統領ではないので、彼の言うことを聞く必要はない、とランプこそが今でも正統な大統領なので、米軍はトランプの命令を聞くべきだということになる。

 トランプ支持者たちからの尊敬を集めているマイケル・フリン元大統領国家安全保障問題担当補佐官は、「ミャンマーで起きたようなクーデターがアメリカでも起きるべきだ」という発言を行った。選挙の結果は覆されず、バイデン政権が発足して100日を超えてきた。支持率が高くはないと言え、バイデン政権の基盤は固まりつつある。そうした中で、一発逆転のためには、米軍が中央政府を掌握する、議会の機能を停止させるということになる。
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マイケル・フリン
 米軍によるクーデターが起きるためには、米軍内に広範なトランプ支持者たちのネットワークが必要となる。縦(階級)と横(駐屯地や基地、職場)に大きなネットワークが必要となる。「常識的」な見方をすれば、そのようなネットワークは存在しづらいし、クーデターを起こすことも困難ということになる。

 しかし、米軍という巨大組織内には様々な人たちがいるというのも確かだ。トランプ支持者たちにとっては「米軍内に自分たちと同様にトランプ支持者が多数おり、いつでもクーデターを起こすことができる」というのは荒唐無稽な考えということにはならない。しかしながら現実は、米軍は米軍内の規律維持と内部調査を進めて、クーデターを阻止するだろう。

(貼り付けはじめ)

チェイニーはクーデターについてのフリンの発言を攻撃(Cheney fires back at Flynn over coup remark

マイケル・シュネル筆

2021年5月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/556212-cheney-fires-back-at-flynn-over-coup-remark

リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)は月曜日、マイケル・フリンがテキサス州でのある会合で述べた、「ミャンマーでのようなクーデターがアメリカでも起きるべきだ」というコメントについて攻撃した。

チェイニーはフリンについてツイッター上で「アメリカ国民の中でアメリカの暴力的な転覆を主張したり、支持したりする人などいるはずがない」と書いた。マイケル・フリンはトランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた人物だ。

フリンはダラスで開かれた会議に出席していた。この会議にはQアノンの陰謀論の支持者も多く出席していた。こうした人々が不倫に対して、ミャンマーで起きたようなクーデターがアメリカでも起きる可能性があるかどうかについて質問した。

ある出席者はフリンに対して、「ミャンマーで起きたようなことがどうしてアメリカで起きないのか、その理由を知りたいのです」と質問した。この会議は「フォ・ゴッド・アンド・カントリー・パトリオット・ラウンドアップ」と題されたもので、この様子はヴィデオに撮影され、インターネット上で見られるようになっていた。

出席者たちはこの質問を聞き歓声を上げた。

出席者たちが静まると、フリンは「その理由はありません。アメリカでも起きるでしょうね」と答えた。

ミャンマーの軍部は今年2月、権力を掌握し、民主的に選ばれた政府を転覆させた。クーデター発生以降、ミャンマーの治安部隊は数百人の個人を殺害し、民主制度擁護のデモ参加者たち数千名を検挙した、と政治犯支援協会は発表している。

フリンはトランプ前大統領の初代の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたが、2017年に更迭された。フリンは2017年に、ロシアとのコミュニケーションについてFBIに虚偽を報告したことで有罪を認めた。2020年1月、フリンは裁判所に対して自身の有罪申告を取り下げることを求めた。それは彼が判決を受ける期日の2週間前のことだった。

最終的にトランプは2020年11月にフリンに対して完全な免責を与えた。

それから1か月後、フリンは、トランプが軍隊を派遣して2020年の選挙を「再び実施」するだろうと述べた。加えて、今週末のテキサスでのイヴェントにおいて、フリンは、トランプが一般投票においても、選挙人獲得数においても勝利を収めたと誤って主張した、とCNNは報じている。

チェイニーは5月初めに連邦下院共和党議員会会長の座から引きずり降ろされた。それは、チェイニーがトランプの不正選挙についての誤った主張に対して繰り返し反論を行っていたからだ。フリンの発言に対するチェイニーの攻撃は、チェイニーが共和党内部で自身の派閥の形成を試みているこの時期に行われた。彼女自身の派閥にはトランプは当然含まれない。

チェイニーの後任にはニューヨーク州選出のエリーズ・ステファニク連邦下院議員が就任した。

連邦下院共和党指導部から更迭された直後、チェイニーは、トランプがこれからもホワイトハウスに近づけないようにジン食すると述べた。

チェイニーは「トランプ前大統領が大統領執務室に再び近づけないようにするためにできることは何でもする」と発言した。

=====

マイケル・フリンがミャンマーのようなクーデターが「アメリカでも起きる」と発言(Michael Flynn says Myanmar-like coup 'should happen' in US

ジョセフ・チョイ筆

2021年5月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/media/556209-michael-flynn-says-myanmar-like-coup-should-happen-in-the-us

トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官をつとめたマイケル・フリンは、Qアノン陰謀論の支持者たちが多く出席していたテキサス州での集会の席上、ミャンマーのようなクーデターがアメリカでも起きるべきだと発言した。

『マーケット・ウォッチ』誌は、ダラスで開催された会議「フォ・ゴッド・アンド・カントリー・パトリオット・ラウンドアップ」でフリンは一連の発言を行った。インターネット上で公開されたヴィデオでは、参加者の一部からフリンに対して「ミャンマーで起きたことがアメリカで起きない理由を知りたいのですが」という質問が出た。

この質問には歓声が上がった。

感性が静まると、フリンは「その理由はありません。アメリカでも起きるでしょう」と答えた。

今年2月、ミャンマーの軍部は権力を掌握し、ミャンマーの民主的に選ばれた政府を転覆させた。政治犯支援協会(Assistance Association for Political Prisoners)によると、クーデター発生後、ミャンマーの治安部隊によって数百名が殺害され、数千名規模の民主政治体制支持のデモ参加者たちは収容されている。

フリンはトランプ前大統領の初代の国家安全保障問題担当大統領補佐官であり、更迭された。フリンはロバート・ムラー特別検察官によるロシアの選挙介入についての捜査において嘘を述べたことで有罪を認めていたが、2020年11月、トランプはフリンに完全な免責を与えた。

2020年12月、バイデンが大統領選挙での勝利を宣言した後、フリンは、トランプが軍隊を派遣して2020年の大統領選挙を「再び実施」するだろうと示唆した。保守系のニュースネットワークである「ニュースマックス」に出演した際、フリンは、トランプがアメリカ国内の投票機械を確保し、バイデンが勝利した激戦州に軍隊を派遣するだろうとも主張した。

CNNは、Qアノンの信奉者たちは、トランプが軍隊を使って権力を再掌握するだろうという考えに魅了されている。Qアノンの信奉者の多くは、バイデンが大統領に就任することを阻止するため、バイデンの就任式当日にトランプが戒厳令を布告すると確信していた。

CNNによると、フリンはダラスでの会議において、「トランプは勝利した、トランプは得票数でバイデンに勝ったのだ、そして、彼は選挙人獲得数で勝利したのだ」と謝った主張を行ったということだ。トランプ政権を離れて以来、フリンは、Qアノン運動において重要な人物となった。フリンはSNSに陰謀論に関連する内容を投稿してきた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 私がウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「重たい掲示板」に投稿した、「[2823]トランプを「反逆者」に仕立て上げて、押し込め、解職を行う。ワシントン・インサイダーズによるクーデターである 投稿者:古村治彦(学問道場)投稿日:2021-01-07 15:38:28」に加筆したものを掲載する。

=====

2021年1月6日(現地時間)、アメリカ連邦議会(Congress)の上院(Senate)と下院(House of Representatives)が共同会議(joint session)を開き、2020年11月3日に実施された、大統領選挙の結果を承認することになっていた。共和党所属の議員たちの中には、選挙結果、特に激戦州の選挙結果に異議を唱える人々がおり、そのために、通常であれば、1時間もかからないで終わる儀式が長引くと見られていた。

 共和党内部では、上下両院の共和党のトップである院内総務(Leader)とナンバー2である院内幹事長(Whip)は共に、「選挙結果に反対する動きを支持しないように(選挙結果を受け入れるように)」と呼びかけていた。トランプ支持の議員たちは、「反対の動きを支持しないなら、次の選挙の予備選挙(共和党の候補者を選ぶ選挙)で対抗馬を出して、お前たちを落としてやる」と対抗していた。大統領選挙の結果をめぐり、共和党内部は分裂をしていた。

※共和党内部の分裂についてはこのブログで紹介した↓

<a href="http://suinikki.blog.jp/archives/83787986.html">http://suinikki.blog.jp/archives/83787986.html</a>

 いよいよ共同会議が開かれるという時に、「連邦議事堂(Capitol Hill)にトランプ支持の暴徒(mobs)が侵入して、会議が開けなくなった」という報道がなされた。連邦議事堂に周囲に、トランプ大統領支持の議員たちを激励するために集まっていた人々が、窓ガラスを壊して侵入するという出来事が起きた。
trumpsupportersstromcapitolbuilding001

 今回の議事堂占拠という出来事で、思い起こされるのは、日本の60年安保の際の、デモ隊による国会議事堂への突入である。これは、暴れ者の学生たちが興奮して、建物に向かって突撃したなどという単純な話ではない。

 この国会突入は仕組まれたものだ。このことは副島隆彦著『日本の秘密』でも詳しく検証されている。デモ隊の中に、権力側と通じていた人間、スパイが潜り込んでおり、煽動して、最前線にいるデモ隊がいつの間にか国会に突入、飛び込むことになってしまった。この国会突入と東大生・樺美智子の死によって、盛り上がった60年安保運動はぺしゃんこになって、落ち着いてしまった。

 今回のトランプ支持者たちによる議事堂占拠も仕組まれたものであると私は見ている。こう考える理由はいくつかある。まず、トランプ支持の集会が開かれ、多くの支持者が集まることはあらかじめ分かっていた。前日のワシントンからの中継を見たが、議事堂につながる道路には大きなトラックが何台も並べられ、バリケードのようになっていた。警察側はトランプ支持者たちが近づけないようにしていた。

 警察は準備をしていたはずなのに、丸腰の人々に議事堂に入られてしまった。この点も不可解である。議事堂前に集まった人々は殺傷能力の高い武器を所持しているようには見えなかった。警察は暴動鎮圧用の装備を整えているはずだ。それなのに、簡単に侵入を許した。こんなことでもし再びテロ攻撃があったら大丈夫なのか、と皮肉の一つも言いたくなる。あんな丸腰の人間たちを「テロリスト」呼ばわりは何とも情けなくなる。

 更には、議事堂占拠などと聞くと、数時間も続いている、占拠した側が立てこもって、武器を使って激しく抵抗しているとも思われがちだが、議事堂に入った人々の退去は既に済んで、議場での会議が再開されている。大きな破壊もなく、長時間の選挙や立て籠もりもなかったということだ。もちろん銃撃戦とか派手な殴り合いも起きていない。

 これは、わざと人々を議事堂の中に入れて、引き入れておいて、一網打尽に捕まえたということだ。後から簡単に逮捕できるくらいの人々の侵入をなぜ許したのか、と考えなければならない。

耄碌し果てたジョー・バイデンとアホのジョージ・W・ブッシュ元大統領は、今回の議事堂選挙について、「反乱(insurrection)」という言葉を使った。この言葉遣いが重要だ。普通の家宅侵入は「trespassing」という言葉を使う。それを大げさすぎるほどの言葉である「反乱」を使った。
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今回のたいしたことのない出来事を、「アメリカ史上最悪の反乱、国家への反逆行為」「デモクラシーを破壊する行為」とすることで、とランプ大統領とトランプ支持者を「国家の敵」に認定し、葬り去るシナリオができていた、仕組まれていたということだ。

この点では、ワシントンのインサイダーたちやエスタブリッシュメントは、党派や立場の違いは関係なく、「トランプと民衆をワシントンから追い出す、政治に関わらせない、自分たちの既得権益や秘密を守る」ということで一致していた。トランプは最後まで、「ドレイン・ザ・スワンプ(Drain the swamp)」を実行した、ワシントンの部外者、アウトサイダーだった。民衆・大衆の支持を唯一の武器として戦ったポピュリスト(Populist)だ。

 アメリカ連邦議会では早速、トランプ大統領に対する「弾劾(impeachment)」をやれという声が出ている。弾劾は、まず、連邦下院が弾劾訴追をするかどうかを決める。これは連邦下院の過半数の賛成があればできる。そして、連邦上院は弾劾裁判所となって、審議をし、3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立し、大統領は失職となる。アメリカ大統領の任期は4年ごとの1月20日までだ。残り2週間で弾劾作業をやろうというのは無理がある。

しかし、民主党進歩主義派でアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員の仲間である、イルハン・オマル下院議員が「既に弾劾決議案条文の準備をしている、起草している」とツイートしている。あまりにも手回しが良すぎる。アメリカ合衆国憲法の弾劾に関する条項には、「国家反逆(treason)」という言葉が入っている。大統領が国家反逆行為をしたら弾劾の対象になる、ということだ。今回の議事堂占拠が仕組まれていた、トランプ断崖まで進めようとして計画されていたことを示す証拠だ。
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今回の議事堂占拠を行った人々を「反乱(insurrection)罪」で検察官が訴追する、そして、この反乱を主導したとランプ大統領を「国家反逆(treason)」で弾劾訴追する、という形で、「トランプとトランプを支持する人々は、アメリカを攻撃した反逆者」というレッテルを貼って葬り去ろうというワシントンのインサイダー、エスタブリッシュメントたちの動きだ。デモクラシーの総本山と世界に対して威張りながら、最後はデモクラシーを守るということで、抑圧をする、そのような設計になっている。

 ワシントンの住人である共和党の政治家たちも、トランプが「国家反逆者認定」されるならば、トランプ追い落としに進んで加担することができる。「トランプ大統領が国家反逆者になってしまった以上、これ以上は擁護できない」と言いながら、進んで弾劾に賛成する者たちが続出するだろう。

更に恐ろしいのは、「アメリカ合衆国憲法修正25条第4項を適用して、即座にトランプ大統領を解職しろ」という主張も出ている。この条項は、「第4 副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする」となっている。

簡単に言えば、副大統領と閣僚の過半数が連邦議会に対して、「大統領は職務不能状態です」という文書を送れば、副大統領は大統領代理になる、ということだ。今回のことで言えば、とランプ大統領の権限が取り上げられ、ペンス副大統領が大統領代理になるということだ。

トランプは「国家に対する反乱行為を促した国家反逆者なのだから、職務不能者として権限を取り上げろ」ということだ。

 トランプ大統領は「議事堂の中に突入しなさい」という明確な命令も奨励も出していない。その疑いがあるならば、きちんと裁判を提起して証拠を集めて、裁判所が判断を下すということがそもそも手続きだ。それを乱暴に、憲法の条文を自分たちに都合の良いように解釈して、適用して、「トランプを押し込めて、職務不能ですと副大統領と閣僚たちが声をそろえて宣言して解職に追い込む」ということこそが、クーデターである。アメリカが州国憲法の条文を悪用したクーデターであり、国家反逆行為そのものだ。

 ナンシー・ペロシ連邦下院議長の動きは錯乱し、舞い上がっている。トランプを「国家の敵」に認定し、即時罷免を求めている。更には、「トランプに核攻撃をさせない」という訳の分からない理由で、核兵器が使えないようにしようとしている。トランプが錯乱し、狂っているというのならば、言葉は悪いが、それは就任直後からだ。彼は自分の考えや姿勢を変えていない。そんな人物をほぼ4年間野放しにしておいて、最後の最後で、一気に「最終処分」しようとしているのは、滑稽というよりも、恐ろしいものを感じる。

大統領の権限を取り上げようというのはまさにクーデターだ。それを、マイク・ミリー統合参謀本部議長も協力しようとしているのは、米軍もこのクーデターに参加しているということになる。

(貼り付けはじめ)

トランプ氏の核攻撃阻止を軍トップと協議 ペロシ氏が表明

202119 5:27 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]

トランプ氏の核攻撃阻止を軍トップと協議 ペロシ氏が表明‹

https://www.afpbb.com/articles/-/3325340

19 AFP】米民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は8日、「錯乱」した状態にあるドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が残りわずかとなった任期中に核ミサイルを発射する事態を避けるため、米国防総省のマーク・ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長と協議を行ったと明らかにした。

 合衆国憲法で定められている大統領権限の制限について米軍制服組トップと協議を行ったと公に認めるのは異例。トランプ氏の任期終了までの期間をめぐり米政界で緊張が高まっていることを示している。

 ペロシ氏は民主党議員への書簡で、「この錯乱した大統領の状況は危険極まりなく、わが国と民主主義に対する彼の情緒不安定な攻撃から米国民を守るため、われわれはあらゆる手段を講じなければならない」と説明。

 さらに、トランプ氏が辞任せず、マイク・ペンス(Mike Pence)副大統領と閣僚が合衆国憲法修正25条で定められた大統領罷免の手続きを開始しないならば、弾劾手続きを開始する準備があるとも言明した。

 米首都ワシントンでは6日、ジョー・バイデン氏の次期大統領への当選確定を阻止しようとしたトランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂に乱入する事件が発生。警察官1人を含む5人が死亡した。民主・共和両党の議員はこの事件を反乱だと非難。トランプ氏が暴力を扇動したとの批判も高まっている。(c)AFP

(貼り付け終わり)

 

 議事堂選挙という事件を利用して、連邦議員たちやワシントンのインサイダーたちが、一気に「悪者たち」「国家の敵」との戦いを行おうとして、恐ろしいまでに急速にかつ、これまででは考えられない範囲での攻撃をトランプ側に加えている。この人々は、「デモクラシーが攻撃された」「私たちの(逸脱した)行為に反対する者は、悪者たち、国家の敵と同じだ」という論理で、反対の声を封じて、逸脱行為を行っている。これは「ショック・ドクトリン」と呼ばれる手法そのものだ。

 デモクラシーは迂遠とも思われる手続き論を大事にするのではないか、更には疑わしきは罰せずということもあるのではないか。トランプ側を攻撃する、ワシントンのインサイダーやエスタブリッシュメントたちは、自分たちにかかっている制限や縛りを取っ払うために出来事を利用して、クーデター、国家反逆を行っている。

(終わり)

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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 アメリカのCIAが冷戦期、世界各国でスパイ活動をしていたことはよく知られています。小説や映画に題材として数多く取り上げられてきました。また、反米的(と目されるばあいも含めて)、もしくは共産主義的な国家指導者や国家体制を転覆させるために、その国の軍部やゲリラなどに資金や武器を渡して、暗殺やクーデターを起こさせていたということはよく知られていました。しかし、アメリカ政府は、公式には、そうした暗殺事件やクーデターへの関与を否定していました。

 

 1953年、イランでは民主的に選ばれたムハマンド・モサデグ首相に対するクーデターが発生しました。そして、親米的なシャーによる王政が1979年のイラン革命まで続きました。1979年、有名なホメイニ師が主導するイラン革命によって、イランの王政は倒され、イスラム共和国が誕生しました。イラン革命の際、テヘランのアメリカ大使館に大学生たちが乱入し、大使館員などを人質にして占拠する、イラン人質事件が起こりました。人質事件はカーター政権内部に解決方法を巡って亀裂を生み(ヴァンス国務長官とブレジンスキー大統領国家安全保障問題担当補佐官の対立とヴァンスの辞任)、大きなダメージを与え、カーターは次の大統領選挙でロナルド・レーガンに敗れました。イラン革命以降、アメリカとイランは国交を断絶し、アメリカはイランの隣国イラクの独裁者サダム・フセインをけしかけてイラン・イラク戦争を起こさせました。

 

 イランの歴史に置いて大きな出来事であるモサデク首相に対するクーデター事件ですが、CIAの関与はほぼ間違いないと言われながら、アメリカ政府は公式に否定してきました。しかし、バラク・オバマ大統領がCIAの関与を認め謝罪し、また、最近、機密解除文書の公開によって、残された電報などから、CIAが関与していたということが明らかになりました。

 

 CIA本部はクーデターの試みが失敗したこともあって、クーデターに参加するなとイラン支局に電報を送っていましたが、現地では命令を無視し、結局、クーデターが成功してしまいました。現地の命令無視・独断専行があったということで、このことまでは推定されていましたが、それを示す証拠が出てきたということが重要です。

 

 また、1950年代に聖職者であり、政治家でもあったカシャニ師がモサデク追い落としに関与し、また、アメリカからの資金援助を要請していたということが明らかにされました。カシャニは現在でもイラン国内で尊敬を集めている人物ですが、そのような人物がアメリカからの援助を求めていたということはイランにとっては隠しておきたい事実だろうと思います。

 

 このように何十年経っても公文書が残されていれば、いつかは事実は明らかにされます。最近の日本の政治状況を見ていると、公文書を残しておくということの重要性を軽視しているように思います。この点はアメリカを見習うべきであろうと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

64年経過して、CIAはついにイランでのクーデターに関する詳細を公開(64 Years Later, CIA Finally Releases Details of Iranian Coup

―新たに公開された文書によって、CIAが如何にして失敗に終わりかけていたクーデターへの参加を取り消そうとしていたか、そして、最後の最後である従順ではない一人のスパイによってクーデターが成功に導かれたが明らかにされた。

 

ベンサニー・アレン=エイブラヒミアン筆

2017年6月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/06/20/64-years-later-cia-finally-releases-details-of-iranian-coup-iran-tehran-oil/

 

機密解除された文書が先週公開された。これによって、1953年に発生したイラン首相ムハンマド・モサデクを追い落としたクーデターにおいて、中央情報局(CIA)が中心的な役割を果たしたことが明らかになった。このクーデターは、イランのナショナリズムの火に油を注ぎ、1979年のイラン革命を生み出し、21世紀になってもアメリカ・イラン関係を損ない続けている。

 

約1000ページの文書によって初めて、CIAが如何にして失敗に終わりそうであったクーデターへの参加を取り消そうとし、イラン国内にいる従順ではない一人のスパイによって最後の最後で成功に導かれたということが明らかにされた。

 

CIAの計画はエイジャックス作戦として知られている。CIAの計画は究極的に石油確保を目的とするものであった。西側の企業は長年にわたり、中東地域の石油生産と底からの富をコントロールしていた。サウジアラビアのアラビアン・アメリカン石油会社、イランのアングロ・イラニアン石油会社(イギリス)といった石油企業がコントロールしていた。1950年末、サウジアラビアのアラビアン・アメリカ石油会社は圧力に屈し、石油からの富をサウジアラビア政府と折半することになった。この時、イラン国内のイギリスの持つ石油利権もサウジアラビアでの先例にならうようにという厳しい圧力に晒されていた。しかし、イギリス政府は断固として拒否した。

 

1951年初め、人々の熱狂的な支持の中、モサデクはイランの石油産業を国有化した。激怒したイギリス政府は、モサデクの排除とシャーによる王政の復活のために、アメリカの情報機関と共謀し、計画を練り始めた。しかし、新たに公開された電報が示すところでは、アメリカ国務省の一部には、対立に対するイギリスの非妥協的な態度を非難し、モサデクとの協力を模索する人々がいた。

 

クーデターの試みは4月15日に開始されたが、迅速に鎮圧された。モサデクは関係者を逮捕した。共謀の首謀者であるファズラウ・ザヒィーディー将軍は身を隠し、シャーは国外に逃亡した。

 

CIAはクーデターの試みは失敗すると確信しており、クーデターへの参加を取り消すことに決定した。

 

新たに公開された文書によると、1953年8月18日にCIA本部はイラン支局長に次のような内容の電報を送った。「作戦は試され、そして失敗した。私たちはモサデクに敵対するいかなる作戦にも参加すべきではない。モサデクに敵対する作戦は継続されるべきではない」。

 

ジョージ・ワシントン大学のアメリカ安全保障アーカイヴでアメリカ・イラン関係プロジェクトの責任者を務めるマルコム・バーンは、「CIAのイラン支局長カーミット・ルーズヴェルトは、この電報を無視した」と述べている。

 

バーンは本誌に次のように語った。「カーミット・ルーズヴェルトが電報を受け取った時、部屋にはもう一人の人物がいた。この時、ルーズヴェルトは、“ダメだ、俺たちはここで何もやっていない”と述べた」。ルーズヴェルトはCIA本部からのクーデターの試みを中止するようにという命令を実行しなかったことは既に知られていた。しかし、電報自体とその内容については知られていなかった。

 

ルーズヴェルトの決断の結果は重大であった。電報を受け取った翌日の1953年8月19日、クーデターは成功した。CIAの援助によって準備されたと考えられてきた、「金を支払われていた」群衆の助けがあった。イランの民族主義の英雄モサデクは投獄され、西側に友好的なシャーの下での王政が復活した。アングロ・イラニアン石油(後にブリティッシュ・ペトロレアムに改名)は油田を回復しようと努めた。しかし、この努力は実を結ばなかった。クーデターは成功したが、外国の石油のコントロールの回復に対するナショナリストからの反撃は過激となった。ブリティッシュ・ペトロレアムやその他の石油メジャーはイラン政府と石油からの利益を分け合うことになった。

 

エイジャックス作戦はイランの保守派にとっては亡霊であった。しかし、これはリベラル派にとっても同様であった。クーデターは反西洋感情の炎に風を送った。ナショナリズムの最高潮が1979年に発生したアメリカ大使館人質事件、シャーの廃位、「大悪魔」に対するイスラム共和国の創設となった。

 

クーデターによってイラン国内のリベラル派も排除された。モサデクはイラン史上、民主的な指導者というものに最も近付いた人物であった。モサデクは民主的な諸価値を明確に称揚し、イラン国内に民主政治体制を確立したいという希望を持っていた。選挙を経て構成された議会がモサデクを首相に選出した。首相という職を利用して、モサデクはシャーの力を削いだ。その結果、この時期のイランは、ヨーロッパで発展した政治的伝統に最も近付いた。しかし、更なる民主的な発展は8月19日に窮地に陥った。

 

アメリカ政府は長年にわたり、クーデターへの関与を否定してきた。国務省は1989年にクーデターに関連した文書を初めて公開した。しかし、CIAの関与を示す部分は編集していた。人々の怒りを受けて、政府はより完全な文書を公開することを約束した。そして、2013年に文書が公開された。2年後、機密解除された文書の最終的な公開の予定が発表された。バーンズは、「しかし、イランとの核開発を巡る交渉のために準備が中断され、公開予定は遅れることになった」と述べている。文書は先週、最終的に公開された。CIAの電報の原本は紛失、もしくは廃棄されたものと考えられていた。

 

バーンは、公開が大幅に遅れたのはいくつかの要素のためだと述べた。バーンは、 情報機関は常に「材料と方法」を防御することに懸念を持つものだ、と語る。「材料と方法」とは、最前線で作戦実行を可能にする秘密のスパイ技術を意味する。CIAはイギリスの情報機関との関係を守る必要にも迫られていた。イギリスの情報機関は諜報に必要な人材などを守りたいと考えていたはずだ。

 

 

スタンフォード大学のイラン学教授アッバス・ミラニは、新たに公開された文書によって、CIAの関与以上に興味深い事実が明らかにされた、と述べている。聖職者のアボル=ガセム・カシャニ師の政治における指導的役割の詳細が明らかにされた。カシャニは1950年代に聖職者であり、指導的な政治家として活動した。

 

イスラム共和国では、聖職者は常に善玉である。カシャニはこの時期におけるナショナリズムの英雄であった。今年1月、イランの最高指導者は石油の国有化におけるカシャニの役割を賞賛した。

 

カシャニが最終的にモサデクと分裂したことは広く知られている。イラン国内の宗教指導者たちは共産主義のドゥデー党の台頭に恐怖感を持っていた。そして、モサデクは社会主義勢力の脅威から国を守るには弱すぎると確信していた。

 

新たに公開された文書によると、カシャニはモサデクに反対していただけではなく、クーデターまでの時期、アメリカ側と緊密に連絡を取り合っていたことが明らかになった。カシャニはアメリカからの財政的な援助を求めていた。しかし、彼が実際に資金を得ていたことを示す記録は残っていない。カシャニの要求はこれまで知られてこなかった。

 

ミラニは次のように語っている。「クーデターの成功を左右する日となった8月19日、カシャニの存在は重要であった。カシャニの武装勢力は完全武装してモサデク打倒のために出動した」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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