古村治彦です。

 全世界で新型コロナウイルス感染拡大が深刻化している。日本でも東京都で深刻化の度合いが増し、東京都内の外出自粛要請、他県では東京への外出自粛要請が出された。こんな状況下では、今年アメリカで大統領選挙が実施されるということにはなかなか目が向けられない。現職のドナルド・トランプ大統領と現在の連邦議会は、新型コロナウイルス感染拡大に対して、後手後手に回ったという印象は否めない。しかし、一度やると決めたら、アメリカ流の大量の資金と資源を一気に投入するという形で対策を取る。

 日本では後手後手というのは一緒だが、資金や資源をちまちまと逐次的に投入し、失敗を重ねている。これは太平洋戦争の時と同じ手法であり、この「後手後手ちまちま」は日本の宿痾ということになるだろう。

 民主党予備選挙は4月になるまでない。既にいくつもの州で予備選挙実施費の延期を決定しているところも多い。選挙どころではない、ということだ。さすがに大統領選挙が延期されるということはないだろうが、投票方法は郵便やインターネット利用ということが検討されるだろう。しかし、その前に民主・共和両党の候補者を決める全国大会が予定されている。全国大会が通常通りに開催されるかどうか、もまだ不透明な状況だ。

 本ブログはここ最近の通常通り、民主党予備選挙について紹介する。少し古い記事になって申し訳ないのだが、民主党予備選挙で最有力候補となっているジョー・バイデン陣営の人事の変更が行われた。これまで、陣営を引っ張ってきた、アニタ・ダン、グレッグ・シュルツに代わり、ジェン・オマリー・ディロンという人物が選対の責任者となった。ダン、シュルツは陣営に引き続き残り、アドヴァイザーの仕事を行うということだ。

 ダン、シュルツ、オマリー・ディロンの共通点はバラク・オバマ前大統領の選対を経験し、ホワイトハウスで働いていた経験を持つ、更にはヒラリー・クリントンとの関係が薄いということだ。

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アニタ・ダン
  アニタ・ダン(Anita Dunn、1958年―、62歳)も若い時から民主党の政治家たちの選対本部に参加し、選挙の実務を学んだ。2008年のオバマ前大統領の初めての大統領選挙ではシニアアドヴァイザーを務めた。その後、ホワイトハウスの広報部長を務めた。グレッグ・シュルツ(Greg Schultz、1981年―、39歳)は2008年の大統領選挙では短期間ヒラリー・クリントン陣営で働いた。2012年の時には、オバマ陣営のオハイオ州責任者を務め、オバマ政権第2期には、バイデン副大統領の上級アドヴァイザーを務め、後にオバマ大統領の政治アドヴァイザーとなっている。

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グレッグ・シュルツ
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ジェン・オマリー・ディロン

ジェン・オマリー・ディロン(Jen O'Malley Dillon、1976年―、43歳)は選挙運動のプロである。2000年の大統領選挙で民主党候補だったアル・ゴア陣営で働き、その後も連邦上院議員選挙や大統領選挙で選対スタッフとして働き、経験を積んだ。2008年の大統領選挙ではオバマ陣営で激戦州担当の部長を務めた。その後は民主党全国委員会の上級部長を務め、2012年の大統領選挙では陣営の副責任者を務めた。今回の大統領選挙では、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)の陣営で責任者として働いていた。

 民主党内におけるアフリカ系アメリカ人の影響力に対抗するためにヒスパニック系がバイデンに対して働きかけを行っている。「自分たちヒスパニック系も入れなければ選挙に勝てない」という半分懇請のような脅しのような訴えである。自分たちの存在感が薄れることを懸念しているから起きる訴えだ。

 バイデン陣営がオマリー・ディロンを責任者に迎えたことは大きい。彼女がオバマ系の人材であることもそうだが、テキサス州内に人脈を広げ(その中には当然ヒスパニック系も多く含まれる)、知識を得たということが大きい。これはバイデン陣営が本選挙でトランプ大統領と対峙する際に、テキサス州とフロリダ州で戦い、このどちらかを奪い取ることでトランプを追い落とすという戦略に合致する動きだ。私は今年の大統領選挙本選挙では、中西部の一州、南部の一州でバイデンが勝利すれば、トランプは負けることになると考えている。そのための戦術として、オマリー・ディロンをバイデンは陣営に迎えた。

(貼り付けはじめ)

バイデンはオローク選対の幹部だった人物を新しい選対責任者に起用(Biden appoints former O'Rourke aide as new campaign manager

タル・アクセルロッド筆

2020年3月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/487254-biden-appoints-former-orourke-aide-as-new-campaign-manager

民主党予備選挙において先頭走者の位置を固めているジョー・バイデン前副大統領は、自身の選対本部の新しい責任者としてジェン・オマリー・ディロン(Jen O'Malley Dillon)を起用した。バイデンは厳しい戦いとなるであろうトランプ大統領との本選挙に向かって準備をし始めた。

オマリー・ディロンの起用は木曜日に『ワシントン・ポスト』紙が最初に報じ、その後にバイデン選対が事実だと認めた。オマリー・ディロンは民主党の選挙対策の分野では有名な人物である。オマリー・ディロンは2012年のオバマ前大統領の再選の選対で副責任者を務めた。また、オバマ政権第一期の4年間では、民主党全国委員会の執行役員を務めた。

最近では、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)の大統領選挙を手伝ったが、オロークは最終的に選挙戦から撤退した。また、バイデン選対に対しての非公式のアドヴァイザーをしていた。

バイデン選対によって発表された声明の中で、オマリー・ディロンは次のように語った。「バイデンの人格と指導力のもとにまとまっている他の民主党員の多くと同じく、私はこの重要な時期にティームに参加できることに興奮しています。」

オマリー・ディロンは続けて次のように述べている。「バイデン前副大統領は記録的なレヴェルの有権者を投票所に向かわせています。そして、ドナルド・トランプが二期目を迎えないことを確実にするために必要な幅広い連合を形成しています。バイデンを46代目の大統領にする手助けができることは光栄であり、私は仕事を始める準備ができています」。

オマリー・ディロンはアニタ・ダンとグレッグ・シュルツのティームに参加することになる。ダンとシュルツは責任者としてバイデン選対の舵取りをしてきた。

先月のアイオワ州での党員集会での惨敗の後、ダンは選対を立て直した。シュルツはバイデンの出馬の準備に参加し、選対の初期の人事を担当し、代議員獲得に関する戦略を策定した。バイデン選対によると、シュルツは組織に関する計画と献金者と支持者へのアウトリーチといった仕事をこれから行うということだ。

バイデンは次のように語った。「私は、グレッグに対して私たちの選対が今日ある形にしてくれるために指導力を発揮し、献身してくれたことに感謝の意を表します。そして、彼がこれからも私たちの選対と選挙運動に継続して貢献してくれるだろうと確信しています。私はジェンが私たちのティームに彼女の素晴らしい才能と洞察をもたらしてくれるだろうことを楽しみにしています。この秋にドナルド・トランプと戦うための準備するにあたり、ジェンは選対と選挙運動を拡大し、強化させるための財産となってくれるでしょう」。

バイデンは一連の勝利によって11月にトランプと対決する民主党候補者の最有力候補になった。バイデンはサウスカロライナ州で30ポイント近くの差をつけて圧勝し、先週のスーパーチューズデーでは14州のうち10州で勝利し、今週はじめのミシガン州で重要な勝利を収めた。バイデンが連勝を収めたことで、多額の献金が流れ込んできており、全国で選挙事務所を設置することができるようになっている。

トランプ大統領は、数百万ドルの寄付金を使って再選に向けた選対と選挙運動を加速させている。

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民主党内のヒスパニック系の人々は、サンダースのラティーノ支持獲得戦略はバイデンにとってのロードマップとなると考えている(Hispanic Democrats see Sanders's Latino strategy as road map for Biden

ラファエル・バーナル筆

2020年3月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/487137-hispanic-democrats-see-sanderss-latino-strategy-as-road-map-for-biden

連邦議会ヒスパニック系議員連盟(CHC)所属の議員たちはジョー・バイデン前副大統領に対してバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の成功したアウトリーチ戦略を見習うように主張している。

このような要求は、バイデンがアフリカ系アメリカ人と穏健派、高齢の有権者たちからの支持を受けて南部諸州と中西部諸州で決定的な勝利を収めて民主党予備選挙のトップ走者となった時から出ている。

対して、サンダースはラティーノ系の有権者からの力強い支持を集めている。その結果として、カリフォルニア州とネヴァダ州といった西部諸州で勝利した。

ラティーノ系の人々はサンダース陣営が効果的なアウトリーチ戦略を採用し、選対の最高幹部の中にヒスパニック系の人を置いていることを評価している。そして、こうしたことをバイデンにも真似てもらいたいと考えている。

バイデン支持を表明し、連邦議会ヒスパニック系議員連盟の選挙部門の責任者を務めるトニー・カルデナス連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は次のように述べている。「次のアメリカ大統領、その次、その次、その次を狙う人は誰であっても、投票する権利、どの候補者を支持するかを決めるために情報を知る権利を持つ全てのアメリカ国民を考慮に入れて選挙運動を実施する必要があります。」

カルデナス議員は、サンダース陣営のトップアドヴァイザーであるチャック・ロカに言及しつつ次のように語った。「バーニー・サンダースの選対は、能力の高いラティーノもしくはラティーナを選対の最高幹部に据えた初めての全国レヴェルの選挙組織ということになります。これは選挙運動にとって良い決断となりました。その結果として、バーニー・サンダースはいくつかの州でラティーノ系有権者の支持を受けて良い結果を得ました」。

選挙コンサルタントで、連邦議会ヒスパニック系議員連盟所属の議員たちのためにも働いた経験を持つロカは、サンダース陣営が早い時期から重点州においてラティーノ系有権者の支持獲得のために資源を投入していたことを評価し、そのために予備選挙の初期段階でヴァーモント州選出のサンダース議員が予備選挙でトップに立った事実を強調した。

ロカは本誌に対して次のように述べた。「カルデナス議員は私たちラティーノ系共同体に対して常に政治に関心を持ち、参加するように訴えてきました。私はサンダース陣営の選挙運動に誇りに思っていますが、それはカルデナス議員の訴えに沿ったものだからです。私はただテーブルに座っているだけではなく、人々に会って行動しています」。

ロカの戦略はこれまで長い間ヒスパニック系共同体の指導者たちから出ていた要求に基づいたもので、文化的に有効なヒスパニック系有権者へのメッセージを早い段階から強く打ち出すということだった。ヒスパニック系に関してはこれまでいろいろな選対で軽視されてきた人々であった。

ロカは次のように語っている。「11月にドナルド・トランプを倒すために、十分な資金を投入した、文化的にも有効なラティーノ系の得票獲得作戦を実行する必要があります。民主党が“外に出て投票に行きましょう(GOTV)”作戦を実行する前にラティーノ系への働きかけを始動する必要があるということを私たちは証明したのです。ラティーノは選挙戦で働きかけを待つだけの存在ではなく、自分たちで実際に選挙戦を実行する存在になっていくことでしょう」。

連邦議会ヒスパニック系議員連盟にはカルデナス議員のようなバイデンを支持する穏健派の議員たちがいるし、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)のようなサンダースを支持する進歩主義派の議員たちがいる。こうした人々は共にロカの発言内容に同意している。

オカシオ=コルテス議員は次のように語っている。「歴史的に見て、民主党と民主党関連の組織はラティーノ系の有権者たちへのアウトリーチについて苦闘してきましたが、正しくない方法を採用してきました。その結果として、ラティーノ系への政策も良いものを作り出すことに苦労しています。バイデン前副大統領は民主党内部の伝統的な組織に頼り切っています。そして、支持を勝ち取っています」。

オカシオ=コルテス議員は続けて次のように述べた。「しかしながら、このような伝統的な組織に頼っているのが現状です。これは民主党の強さと弱さの慣性ということです。民主党の弱さの一つはラティーノ系有権者へのアウトリーチです」。

バイデン陣営と緊密な関係を持っているカルデナスは、バイデン陣営は既にサンダース陣営と同様の対ラティーノ系有権者戦略を既に実行しているはずだと述べている。

バイデンは、フロリダ州、アリゾナ州、イリノイ州でのラティーノ系アウトリーチに新しい資源を投下している。バイデン陣営内部の議論に詳しいある人物によると、バイデン陣営はこれら各州内のラティーノ系有権者の間でサンダースと競り合えると考えているということだ。

カルデナスは、ヒスパニック系共同体の指導者たちが長年民主党に対して求めてきた、ヒスパニック系への関与戦略を初めて具体化した有力な大統領選挙候補者となったのがサンダースだと述べた。

カルデナスは次のように述べた。「ある有権者グループに働きかけを行わず、その人たちを後回しにし、選挙の投開票日当日前にこれらの人々にほとんど注意を向けなければ、得票率が低くなりますよね。その候補者グループの中で、そんな候補者もしくはその候補者の主張を受け入れる人の割合はおのずと低くなりますよね」。

カルデナスは続けて次のように語った。「私が今述べたことはこの予備選挙で全ての候補者の陣営が予備選挙開始前に行ったことです。そして、本当に働きかけを行って、ラティーノ系の有権者を動員したのは、バーニー・サンダースだけなんですよ」。

バイデンはラティーノ系に対して働きかけを全くやっていないということはない。

バイデン陣営のラティーノに関するアドヴァイザーであるクリストバル・アレックスは「ラティーノ・ヴィクトリー」から採用された。ラティーノ・ヴィクトリーはヒスパニック系の人々の声を吸い上げ主張する、良く知られた進歩主義的な政治組織である。

ラティーノ・ヴィクトリーは今年2月にバイデン支持を発表した。

バイデンはヴァージニア州とサウスカロライナ州でヒスパニック系有権者からの支持を獲得したが、南部諸州でサンダースがバイデンとの差を詰めることができないようになった。

バイデンは火曜日に予備選挙が実施されるフロリダ州で構造上の優位性を持っている。バイデンはフロリダ州でラティーノ系の重要な支持を集めている。フロリダ州は全米で第3位のヒスパニック系の人口を抱えている。

ダレン・ソト連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)は次のように語っている。ソト議員はプエルトリコ系としては初めてのフロリダ州選出の連邦議員である。「フロリダ州ではバイデンはラティーノ系の有権者の支持を掴んでいます。今朝発表された最新の各種世論調査の結果が物語っています。もちろん、フロリダ州には独自の状況があります。ヒスパニック系と言っても5つの異なったグループ分けができるほどですから、これらの動きでフロリダ州の選挙の結果は変わるんですよ」。

スーパーチューズデー後にバイデン支持を表明したソト議員は次のように語っている。「バイデンはヴァージニア州と東部のいくつかの州で良い結果を得ました。そしてヒスパニック系有権者からの投票に関してもそうです。サンダースは南西部諸州のヒスパニック系から多大な支持を得ました。これまでの選挙戦を見ていて、バイデンは東部諸州で勝利を収めることができる上昇気流に乗っています」。

カルデナスはバイデン陣営が予備選挙序盤の段階でヒスパニック系に働きかけを行うだけの資金を持っていなかったが、アフリカ系アメリカ人と郊外に住む白人の有権者たちの支持を得た。その結果として民主党予備選挙でトップに立つことができた。

カルデナスは次のように語った。「バイデン選対はサンダース陣営が行った規模での資源を投入しヒスパニック系有権者からの支援を得るということができませんでした。しかし、スーパーチューズデー後にすぐにバイデン陣営に連絡をしました。そして、選対がつかんでいる内容と知っておくべき内容を聞き、説明しました。全米のラティーノ系の有権者に主張を届けることの重要性とそのための資源を投入すべきだという話をしました」。

カルデナスは「もちろん、バイデン選対がラティーノ共同体、アメリカ全土のラティーノ系の有権者とのコミュニケーションに投資をしていないなどと信じる理由は存在しません」とも語っている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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