古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:サウジアラビア

 古村治彦です。
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 年末年始はイラン革命防衛隊のカシーム・スレイマニ殺害によってイラン、中東情勢がどうなるかということで大きな不安が起きたが、現在は小康状態となっている。スレイマニはこれまで様々なテロ事件や攻撃に関わったとして、スレイマニ殺害を評価する主張がある一方で、中東情勢を不安定化するような決断を下したドナルド・トランプ大統領の安易な姿勢に対する批判も存在する。
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 アメリカもイランも全面戦争に突入することを避けたいという思惑は一致しているので、即座に戦争ということにはならなかったが、それでも何が起きるか分からない、不測の事態で開戦まで突き進むということは考えられた。第一次世界大戦は一発の銃声から始まったということを考えると、「悪い奴だから殺して当然」というのは単純すぎる主張である。

 少し古い記事になるが、アメリカ国民はイランとの戦争を望んでいない、ということを示す記事をここで紹介したい。著者はメリーランド大学教授で、2019年9月にトランプ政権の対イラン政策についての世論調査を実施した。ここで示された数字はどれも、アメリカがイランとの緊張関係を深刻化させるべきではない、戦争にまで進むべきではないというアメリカ国民の考えを浮き彫りにするものだ。

 そもそもトランプ大統領はアメリカの対外戦争には反対、アメリカが世界中に展開している状況に反対ということで当選した大統領だ。「アイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)」「アメリカ・ファースト(America First、アメリカ国民の生活が第一)」という言葉は日本でも広く知られることになった。また、2020年は大統領選挙の年であり、トランプ大統領は再選を目指している。アメリカ国民の意向には特に敏感にならざるを得ない時期である。

そのような大統領の下で、戦争を起こすような出来事が起きるというのはおかしいということになる。「火遊び」にしてはその危険性はあまりにも大きい。ウクライナ疑惑から起きた弾劾から目を逸らさせるということも理由としてあっただろうが、連邦上院で否決される公算は高いので、そこまでする必要があるのかということになる。政権内のマイク・ペンス副大統領やマイク・ポンぺオ国務長官の差し金ということは大いに考えられる。危険な対外戦争を推進するというネオコン勢力がトランプ政権内にもかなり入っているのだろう。今回の件もこうした人々が絡んでのことだろう。
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 トランプ大統領が自身の発言と矛盾するようなことを決定したというのは、大統領職の厳しさを浮き彫りにするものだと私は考える。大統領の周りには自分よりも頭が切れて、弁も立つ人物たちが揃っている。こうした人々が話す内容を全て理解することはできない。そして、大統領を説得して自分たちの望む政策をやらせようとしてくる。そのためにあらゆる権謀術数を駆使し、手練手管を繰り出してくる。それにフラフラっと乗せられてしまうということはどんな大統領にも起きることだろう。トランプ大統領が特別に弱いと彼以外だということはない。

 話は逸れてしまったが、トランプ大統領が上京を何とかコントロールできる範囲に収め、イラン側も復讐を「予告して」行うという抑制的な行動に出た。しかし、両国の最高首脳たちが全面戦争を望まなくても、全面戦争を望む勢力がどちらの側にもいるということを考えると、不測の出来事でどうなるかは分からない。事態の推移を注視しなくてはいけない。

(貼り付けはじめ)

アメリカ国民は現在もイランとの戦争を望んでいない(The U.S. Public Still Doesn’t Want War With Iran

―最新の世論調査のデータによると、アメリカ国民の過半数は、イランとの緊張関係を高める対イラン政策を批判している、スレイマニ殺害が起きてもそれは変化しないだろう

シブレイ・テルハミ筆

2020年1月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/01/03/killing-suleimani-iran-tension-trump-fault/

中東地域での戦争を嫌悪していると明言しているある大統領がイランのカシーム・スレイマニ将軍の殺害を命じた。ドナルド・トランプ米大統領はイランとの争いが軍事衝突に突き進むように政策を進めているが、その坂道を更に転げ落ちていくかもしれない。確かなことは、トランプ大統領がアメリカ国民に対してスレイマニがアメリカ国民の流血の原因になっていたと説得することは容易なことだ。しかし、説得を受けたからと言って、アメリカ国民はアメリカが戦争に進むことがアメリカの国益に最も適うと考えるようになるとは意味しない。

2019年9月にメリーランド大学が全国規模で世論調査を実施した。調査対象者は3016名だった。この世論調査の結果が示しているのはイランとの危機がエスカレートする中でトランプ大統領がアメリカ国民の意見とは異なることをして苦境に直面しているということだ。世論調査の結果には3つの特徴が出ている。共和党員と共和党支持者の過半数を含むアメリカ国民の4分の3がイランとの戦争は正当性がないであろうと答えている。多くの人々はトランプ政権がイランとの緊張を高めていることを非難し、トランプ政権の対イラン政策を認めていない。アメリカ国民はトランプのイランに関する目的を評価することについて分裂している。

アメリカ国民の大部分は、アメリカの国益がイランとの戦争を正当化するとは考えてない。世論調査に答えた人々の5分の1だけがアメリカはイランに関する目的を達成するために「戦争の準備をすべきだ」と答えたのに対し、4分の3がアメリカの目的は戦争を正当化しないと答えた。共和党員と共和党支持者の内、34%だけがアメリカの国益を守るために戦争を選択肢に入れるべきだと答えた。

●この中であなたの考えにより近いのはどれですか?

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2019年9月まで

出典:メリーランド大学

トランプ大統領にとってさらに懸念材料となるのは、世論調査の約半分が2019年9月14日より前に実施されたということだ。この日、サウジアラビアの油田地帯へ軍事攻撃が実施された。この攻撃についてアメリカはイランが攻撃を実施したと非難した。世論調査の残り半分はこうした事態を受けての国民の反応を示す稀有な機会になるこの攻撃はアメリカの国民の姿勢に対して影響を与えることはなかった。アメリカ国民の4分の3が開戦という選択肢は正当化されないと言い続けている。最近起きたイラク国内のアメリカ大使館への攻撃とスレイマニ殺害もまた同じ結果を生み出すことになるだろう。

●この中であなたの考えに近いのはどれですか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

メリーランド大学が2019年10月に実施した世論調査は、イランとの危機について4つの説明ができることを示している。イランの現政権の性質、イエメンでの戦争、2015年のイランとの核開発をめぐる合意の放棄、石油輸出を含むイランに対する新たな経済制裁である。これらの要素について調査対象者にランク付けするように問われた後、それぞれの説明の重要性は個別に証明されている。最も支持が少ない要素はイエメンでの戦争は5%がこれを原因に挙げている。イランの現政権の性質を原因に挙げているのは22%が理由に挙げている。69%はトランプ政権の政策を支持していない。イランとの合意の廃棄と新たに経済制裁を科すことへの賛成はそれぞれ35%、34%だ。重要なことは、共和党員の60%が危機の原因はトランプ政権の行動だと答えている。

●ペルシア湾における緊張関係について最も良く説明しているのはどれだと思いますか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

サウジアラビアの油田への攻撃前、トランプ政権のイラン政策への反対は51%だったが、攻撃後は57%に上昇している。アメリカ国民の開戦に対しての忌避とトランプ大統領の政策がペルシア湾岸地域の緊張関係の深刻化の原因だと考えていることを考慮すると、最近の一連の出来事についても同様の結果が出るだろうと考えられる。

●アメリカ政府のイランへの対処の方法について支持しますか、不支持ですか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

トランプ政権の対イラン政策の目的について評価すると次のようになる。30%(共和党員の53%)がイランの核兵器開発の阻止を挙げている。28%(共和党員の45%)がバラク・オバマ前米大統領の政策に戻すことを挙げている。9%がトランプ大統領はアメリカ国内で「強い大統領だ」と見られたいと考えている。そして、7%が中東地域のアメリカ同盟諸国を喜ばせるもしくはイランの態度を変化させるということを挙げている。

共和党員たちがトランプの対イラン政策の目的として望んでいるのはイランの核兵器開発の阻止だ。これはトランプ大統領にとって頭の痛い問題となるだろう。それは、ここ数カ月でイランが核開発プログラムを促進し、スレイマニ殺害の後に更に急速に促進することになるだろうからである。

●現在のトランプ政権の対イラン政策において最も重要な目的にすべき選択肢は何だと考えますか?

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2019年9月現在

出典:メリーランド大学

この世論調査が示しているのは、スレイマニ殺害を受けてのアメリカとイランとの間の緊張関係の悪化は、トランプ大統領のアメリカ国民からの支持率を試すものとなるだろうということだ。もちろん、トランプ大統領は状況をコントロールする卓越した能力を持っていることを示している。特に彼の支持者たちの間ではそのように考えられている。トランプ大統領は自分の考えに同調する人たちを獲得することができるだろう。しかし、アメリカ国民の戦争に対する懸念は現実的なものだ。イランとの衝突によって流されるアメリカ国民の血というコストもまた現実的なものだ。トランプ大統領が政権前半で行ったイランとの合意の破棄と経済制裁の強化は結果として二国間の関係を断絶寸前に追い込む理由となったと民主党員も共和党員も考えている。トランプ大統領の政策がアメリカとイランとの対立を深刻化させると見られると、彼は国民からのより大きな反対に直面するようになるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。 

 2019年9月14日にサウジアラビアの東部、ペルシア湾岸沿いのアブケイクの石油生産施設が攻撃された。サウジアラビアの1日当たりの産油量が半減する被害が出ているが、死傷者は出なかった。

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サウジアラビア・アブケイクの地図

  アメリカのドナルド・トランプ大統領とマイク・ポンぺオ国務長官は今回の攻撃はイランが実行、もしくは関与しているとして非難している。トランプ大統領は米軍が臨戦態勢にあるとまで発言した。また、サウジアラビア外務省は、イラン製の武器が使われたという声明を発表した。これに対して、イランは関与を完全否定しており、また中国は安易な決めつけをしないように懸念を表明した。

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攻撃後の様子 

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攻撃による被害の様子

  今回の攻撃について、イエメンの反体制勢力ホーシー派(Houthis、フーシ派)が攻撃を実行したという声明を発表した。ホーシー派にはイランが支援を行っている。ホーシー派はイエメン内戦の当事者であり、もう一方の当事者である現政権を支援しているサウジアラビアに対して、これまで数度攻撃を行っている。しかし、これほど重大な被害を与える攻撃となったのは初めてのことだ。 

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ホーシー派

  今回の攻撃については明確になっていないことが多い。誰が攻撃を実行したのか、どのような兵器が使われたのか、イランが実行もしくは関与したというのは真実か、サウジアラビアの自作自演の可能性はどうか、など疑問が次々と出てくる。

 アメリカ政府はイランの実行もしくは関与と決めつけている。また、サウジアラビアもイランを非難する声明を発表した。他の大国は抑制的に対応している。トランプ大統領は米軍が臨戦態勢にあると述べた。しかし、アメリカ軍がイランと直接戦うことは今のところ考えられない。 

 トランプ大統領は米軍の中東とアフガニスタンからの撤退を公約にして当選したことを考えると、来年大統領選挙を控えており、アメリカが新たな戦争をする可能性は低い。アメリカの脅威、圧力が低下する中で、世界規模で不安定さが増している。日韓関係の悪化もアメリカの存在感の低下が原因だ。 

 サウジアラビアとイランはペルシア湾をはさんで対峙している。ペルシア湾岸をはさんで直接戦火を交えることは、お互いが石油輸出を命綱としている以上、ペルシア湾岸を戦場にしたくはないだろう。サウジアラビアが単独でイランと戦うというのもサウジアラビアにとっては貧乏くじを引くようなもので、戦争によって国内が不安定になれば、サウジ王家の存続にまで影響が出る可能性もある。 

 イランにしてみれば、アメリカのトランプ大統領が強硬派のジョン・ボルトン国家安全保障問題担当補佐官を解任してくれ、交渉に前向きな姿勢を見せているのに、わざわざアメリカとの対立を激化させる危険な冒険をするとは考えにくい。

 アメリカが構築した戦後世界体制の緩みがでてきて、世界各地が不安定な状況になっている。アメリカからの距離感の遠近で、「ポスト・覇権国アメリカ」時代への移行期に、どれくらい影響を受けるかが違ってくるだろう。 

(貼り付けはじめ)

 サウジアラビアの石油生産施設に対する複数の攻撃についてあなたが知っておくべきこと(What You Need to Know About the Attacks on Saudi Oil Facilities)

―イランに責任があるとされる攻撃によってもアメリカとの間で軍事衝突には今のところ至っていない。 

ロビー・グラマー、エリス・グロール、エイミー。マキノン筆

2019年9月16日

『フォリーン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/09/16/what-you-need-to-know-about-the-attacks-on-saudi-oil-facilities-yemen-houthis-iran-who-attacked/

 土曜日にサウジアラビアの石油生産施設に対して攻撃があった。この攻撃によって、国際石油市場にショックを与え、イランとアメリカとの間の緊張を高めた。ドナルド・トランプ大統領は、アメリカ軍は反撃のために「臨戦態勢にある(locked and loaded)」と警告を発した。

 しかし、攻撃自体にはっきりしない点がまだ多く残っているのが現状だ。誰が攻撃を実行したのか、サウジアラビアの1日の石油生産量の半減させることに成功した発射体もしくはドローンはどこから飛んできたのか、ということをはじめ疑問は多く残っている。アメリカ政府高官たちはイランを非難しているが、イランは関与責任を否定している。

 サウジアラビア外務省は月曜日に発表した声明の中で、「初期調査の結果、攻撃に使用された武器はイラン製の兵器であることが示唆される。攻撃に使用された兵器や物質に関する調査は現在も継続中だ」と述べた。

 イランの支援を受けているイエメンの反体制勢力ホーシー派が攻撃を実行したことを認めた。しかし、専門家たちは、ホーシー派がこのような複雑なそして大胆な攻撃を実行出来るのかどうか、疑問に思っている。

 月曜日、この攻撃をイランが実行したか、もしくは関与したのか、どう考えるかと質問され、トランプ大統領は残された証拠はイランの関与を示していると発言した。大統領は「そのように考えられる。現在調査が続けられている」と述べた。

 アメリカ政府高官は攻撃直後の様子を撮影した衛星写真を後悔した、しかし、イランの関与が疑われる中で、それ以外の諜報関係の資料公表は行っていない。ヨーロッパ連合や中国といった諸大国は状況が不明確な状況で非難を行うことに対して慎重さと懸念を表明した。

 イランとアメリカとの間の対立が続くという重要な状況の中で、不確定な要素が多いが、重要な疑問について考えていきたい。

 ●攻撃はどのようにして実行されたか?

 攻撃がどのように実行されたかということの正確な全容は依然不明瞭だ。しかし、残された証拠などから、ミサイル攻撃、もしくはドローンによる攻撃、もしくはそれら2つを組み合わせたものであろうということだ。複数の攻撃によってサウジアラビアのアブケイクにある油田と石油精製施設が破壊された。

 アメリカ政府高官たちは施設には17か所の着弾があったと述べた。また、攻撃直後の衛星写真が示すところでは、17か所の着弾点は規則的にかつ正確に並んでいた。衛星写真では攻撃がどの地点から行われたことは明確にはなっていない。

●誰が実行者だと考えられているか?

 イランの支援を受けているイエメンの反体制組織ホーシー派は土曜日の攻撃を実行したと発表した。10機のドローンを送り施設を攻撃したと述べた、月曜日、ホーシー派はサウジアラビアの他の石油生産施設に対する更なる攻撃を行うと警告を発した。ホーシー派は所有兵器でサウジアラビア全土を攻撃できると述べた。

しかし、アメリカ政府はホーシー派の主張について疑念を抱いている。今回のような手際のよい攻撃を1つの反体制グループが実行できるだろうか、彼らの能力を超えているとアメリカ政府高官たちは考えている。

 マイク・ポンぺオ米国務長官はすぐにイランを名指しした。ポンぺオは同曜日にツイッターで「私たちは全世界の国々がイランによる攻撃を公式にかつ高らかに非難することを求める」と書いた。更に、イエメンからの攻撃であったことを示す証拠は存在しないと付け加えた。ポンぺオは彼の声明内容の正確性を担保する証拠は出していない。

 シンクタンクであるファンデーション・フォ・ディフェンス・オブ・デモクラシーズのイラン専門家ベウナム・ベン・タレブルは、ホーシー派はこれまでにもサウジアラビア国内の攻撃目標に対してミサイル攻撃やドローン攻撃を行ってきたが、そうした兵器や技術はイランから供与されたものだ、と指摘している。しかし、ホーシー派はこれまでこのようなサウジアラビア領土内深くに存在する重要施設の攻撃に成功したことなどなかった。

 アメリカ政府高官は、衛星写真に写っている施設内部の着弾点から分かることは、攻撃は施設の北部もしくは北西部、イラン、イラク、もしくはペルシア湾から実施されたもので、イエメンからではないということだと述べている。しかし、日曜日に公表された複数の衛星写真にはオイルタンクの西側部分が損傷している様子が写っており、アメリカ政府高官の説明とは食い違っている。

 一つの説得力がありかつ好奇心をそそる可能性として、攻撃はサウジアラビア国内にいるホーシー派の協力者たちによって実行されたというものがある。ホーシー派は攻撃実行を認めた声明の中で、「サウジアラビア王国内の名誉ある人々との協力」に感謝すると述べた。サウジアラビア国内に協力者が存在したということになると、イエメンにいるホーシー派がどのようにして長距離攻撃を行ったのかという技術上の疑問や反対意見に対しての藩論ということになる。

 ●イラン国内の強硬派が独自に攻撃を実行した可能性があるのか?

 イスラム革命防衛隊のような改革派や強硬派のようなイラン国内の複数の派閥は長年にわたりイランの外交・安全保障政策に影響を与えようと張り合ってきた。特に2015年のアメリカとの核開発をめぐる合意において主導権を握ろうと張り合った。

 しかし、専門家たちはイラン国内の1つの派閥がこれらの攻撃を実行したのだろうかと疑問を抱いている。駐アラブ首長国連邦米国大使を務め、現在ワシントン近東政策研究所上級研究員バーバラ・リーフは次のように語っている。「この種の目標を攻撃する場合、イラン政府の指導者たちが承認した攻撃となるはずだと私は考える」。

 ブルッキング研究所の中東専門家スザンヌ・マロニーは、今回の攻撃にイランが関与していると述べるのは早計だと述べている。それでもマロニーは「攻撃の背後にイランがいたと仮定すると、確かに今回のような直接攻撃、しかも正確な攻撃がイランの最高指導者たちの賛意と認識がなければ起きなかったであろう」と述べている。

 ●攻撃はイラク国内から実行された可能性はあるのか?

 専門家やアメリカ政府関係者の中には、イランの代理勢力がイラクもしくはシリアから攻撃を実行した可能性を主張する人々も出てきている。アメリカ政府は5月にサウジアラビアに対して行われたドローンによる攻撃はイラクから発射されたものだと断定している。

 しかし、イラク政府は今回の攻撃がイラクの領土内から実行されたという報道の内容を強く否定している。月曜日、イラク政府は、ポンぺオ米国務長官がイラクのアデル・アブドゥル・マウディ首相と電話会談を行い、その中で、ポンぺオ長官がマウディ首相に対して、「イラクの領土は今回の攻撃に使用されていないこと」を示す情報を持っていると述べた、と発表した。米国務省はイラク政府からのこの発表についてまだコメントを発表していない。

 ●イランが自国領土内から攻撃を実行した可能性があるのか?

 イラン領土内からの攻撃だった可能性についてはアメリカ政府高官の中には可能性のあるシナリオだと述べている。そうだとすると、アメリカとイランの対立を激化させることになる。現役のアメリカ政府高官や元高官たちは、イランの通常のやり方はについて、他国にいる代理勢力を通じて攻撃を行い、自身の関与を見せかけでかつもっともらしく否定できるようにするものだと主張している。

 リーフは、「イランが攻撃に関与したとなると、これはイランの“グレーゾーン”を使う、もしくは後で否定が出来るような行動をとるというこれまでのやり方からは外れていることになる」と述べている。そして、もしそうだとすると、イラン対アメリカと中東地域の同盟諸国との間の対立の「激化のはしごを大きく上った」ことを示しているとしている。

 自国の領土内から軍事攻撃を行うと、イランは破滅的な反撃を受ける可能性に晒されてしまうことになる。イランは代理勢力に頼って自国の利益を守っているが、これは、イランが国防にあたり自国の通常の軍事力を使うことが出来ないためである。イラン領土内から対立国であるサウジアラビアにミサイルを発射することは、こうした代理戦略を放棄したことを意味する。

 シンクタンクであるインターナショナル・クライシス・グループでイラン・プロジェクトのリーダーを務めているアリ・ヴァエズは次のように述べている。「イランはこれまで非対称戦争の術に長けてきた。イランはこれまで自国が報復を受けないようにするために努力を重ねてきた」。

 ●アメリカはどのように対応するだろうか?

 トランプ政権下、アメリカとヨーロッパとアジアの同盟諸国との間で緊張が高まっている。しかし、どの国もペルシア湾岸諸国の石油生産施設に直接的な脅威を与えるようなあからさまな対立が起きることは望んでいない。それはイランも同じだ。ペルシア湾岸から算出される石油は国際エネルギー市場の基盤である。しかし、サウジアラビア外務省は声明の中で、サウジアラビア王国は、「国土と国民を防衛し、こうした侵略行為に対して武力で反応することが出来る能力を有している」と述べた。

トランプ大統領とイランとの間の対立は継続中だ。その中で、トランプ大統領はアメリカ人の人命が損なわれることはアメリカの軍事力を使った報復の最終ラインとなると明確に述べている。サウジアラビアの石油生産施設に対する攻撃への報復としてイランを攻撃することは、大統領選挙を約1年後に控えたトランプ大統領にとって政治的な計算において魅力的な答えとはならない。トランプ大統領は前回の大統領選挙で中東からの米軍の撤退を自身の公約の柱として当選したので、イランとの戦争という選択は賢明なものではないということになる。

 月曜日、トランプ大統領はイランとの戦争は「避けたいと望んでいる」と述べた。そして、ポンぺオ長官をはじめ政権幹部たちが間もなくサウジアラビアを訪問する予定となっている。ポンぺオ長官はイランとの外交は「決して行き詰って」はいないとし、「イラン側が合意を結びたいと考えているのは認識している。ある時点でうまくいくだろう」と発言した。

 元駐アラブ首長国連邦米国大使リーフは、アメリカは、中東地域に利害関係を持つヨーロッパの同盟諸国やそのほかの国々と外交関係を刷新し、それらを使ってイランとの緊張関係を緩和するようにすべきだと述べている。リーフは次のように述べている。「国際社会、特にイランとの強力な関係を誇っている国々からの一致した、そして強硬な反応がない限り、アメリカが同盟諸国との関係を刷新し、イランとの緊張関係を緩和することで、ペルシア湾岸の石油生産施設に関しては、緊張緩和によって各国が安全で自由な行動が出来るようになる」。リーフはイランとの強力な関係を誇っている国々として、日本、中国、ロシアを挙げている。

これまで数か月で、石油タンカーに対する複数回の攻撃とアメリカのドローン偵察機の撃墜といった出来事が起きた。これらの出来事だけではアメリカがイランと開戦するためには不十分だった。その代わりにアメリカは経済制裁とサイバー攻撃によって反撃することになった。ヴァエズは「過去が前兆だということになると、アメリカは直接的な軍事行動ではないがそれに限りなく近い報復行動を選ぶ可能性がある」と述べている。

 (貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 2019年9月10日にドナルド・トランプ大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンの退任(解任)を発表しました。「これ以上ホワイトハウスで働いてもらう必要はない」(トランプ大統領のツイッターから)ということで、相当に関係がこじれていたことが推察されます。これに対して、ボルトンはやはりツイッター上で、「自分から辞任を申し出て、トランプ大統領は明日話そうと言った」と書いています。自分から辞めてやったんだと言っています。自発的な辞任でも解任でも結果は変わらない訳ですが。

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ボルトン
 

 ネオコンの代表格であるジョン・ボルトンがトランプ政権入りというのは、2017年の政権発足前後にもそうした噂話があり、後には実際にその話が進んでいたということが明らかになったことは、このブログでもご紹介しました。「アメリカ・ファースト(アメリカ国内問題解決優先)」「アイソレーショニズム(自国優先主義)」のトランプ大統領が、ボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用するとなった時には、どうしてそんな人事なんだろうか、トランプ大統領のイスラエル重視姿勢のためだろうかと不思議でした。

 

 ボルトンは対イラン強硬姿勢ではトランプ大統領と合意して順調だったようですが、その後は衝突が多かったそうです。また、マイク・ポンぺオ国務長官とも多くの機会で衝突したそうで、そのことはポンぺオ長官も認めています。普通、記者会見という公の場で、国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官が衝突したなどということを国務長官が認めるということはないのですが、ポンぺオとしてはトランプの寵愛は俺の方にあった、という勝利宣言だったのでしょう。


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ポンぺオ
 

 ボルトンが属するネオコンは、世界の非民主国家に対して介入して、国家体制を転覆させ、民主政治体制にする、そして世界の全ての国家が民主国家になれば戦争はなくなるという、世界革命論的な主張をしています。この主張と姿勢は世界各国を共産主義国にするとした旧ソ連と同じです。民主政治体制を至高の存在と考えるという点では宗教的と言えるでしょう。しかし、ネオコンはアメリカにとって便利な存在である中東産油国や中央アジア諸国の王国や独裁国家を転覆させようとはしません。この点でダブルスタンダードであり、二枚舌なのです。

 

 ボルトン解任前、2019年9月7日にトランプ大統領はタリバンの代表者をアメリカに招き、キャンプ・デイヴィッドで会談を持つという計画の中止を発表しました。この中止の数日後の11日にはボルトン解任が起きました。そして、14日には、イエメンの反政府勢力ホーシー派(フーシ派)がサウジアラビアの石油製造施設2か所を10機のドローンで攻撃し、石油生産量が半減する事態となりました。ホーシー派はイランが支援しているということです。「イランの方向から飛んできた」という報道もありますが、サウジアラビアの東側から物体が飛んでくればイランのある方角から飛んできたということになりますから、これはイランが関連しているテロ攻撃だということを印象付けたいということなのでしょう。南側から飛んでくればイエメンからということになりますが、攻撃機はどこから飛んできたのかということもはっきりしません。

 

 中東の地図を見ると、イランとサウジアラビアはかなり離れており、イランからドローンが10期も出撃したとは考えられません。イエメンであれば紅海を超えるだけですから、攻撃は可能でしょう。しかし、今のところ、どこからドローンが出撃したかということは分かっていません。また、イランが絡んでいるということはアメリカやサウジの主張であって決定的な証拠がある訳ではありません。

 

 いくつかのシナリオが考えられます。ボルトン解任を軸に考えると、親イスラエル・サウジアラビアのボルトンが政権から去ることで、両国の存在感が低下し、アメリカの中東からの撤退が進むという懸念があり、そのために両国が自作自演をやったということが考えられます。また、トランプ大統領がボルトンを解任したということは、アメリカは世界で警察官をやるつもりはない、軍事行動をとる元気はないと判断して、イランがホーシー派に支援してやらせた、もしくはイランの背後にいる中国がやらせた、ということも考えられます。

 

 イエメンの対岸にあるアフリカの角、紅海とアデン湾をつなぐ位置にジブチがあり、昔から要衝となっています。ここには中国人民解放軍の海外基地があることもあって、いろいろなシナリオが考えられます(ここからホーシー派にドローン攻撃機が供給されたなど)。もちろん確たる証拠が出るまではシナリオを考えるだけにして、決めつけや自分勝手な思い込みは慎まねばなりませんが。

 

 話があちこちに飛んでしまって申し訳ありません。ボルトン解任は状況に対して影響を与えるということはあると考えているうちに、話が飛んでしまいました。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプによるジョン・ボルトン解任についての5つのポイント(Five takeaways on Trump's ouster of John Bolton

 

ブレット・サミュエルズ、オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2019年9月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/460815-five-takeaways-on-trumps-ouster-of-john-bolton

 

火曜日、トランプ大統領はジョン・ボルトンが国家安全保障問題担当大統領補佐官から退任すると発表した。外交政策分野における重要な諸問題にどのように対処すべきかについてトランプ大統領とボルトンとの間で不同意があったとトランプ大統領は述べた。

 

トランプ大統領はツイッター上でボルトンの退任を大々的に発表した。その後、衝撃がワシントン全体に広がった。

 

これからボルトンの退任についての5つのポイントについて述べる。

 

(1)トランプ政権内の混乱(カオス)状態は新たな展開を見せる(Trump chaos takes another turn

 

ボルトンが解任されたことにより、トランプは3年間で4人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官を探すことになった。これによって、トランプ大統領が重大な国家安全保障上の諸問題に対処する際に、大統領の上級顧問たちの間で不安定さが出てくるのではないかという懸念が再び大きくなっている。

 

ボルトンの退任は、トランプ大統領がキャンプ・デイヴィッドでタリバンと会談を持つ予定だったが中止にしたという衝撃的なニュースが報じられた後に起きた。タリバンはオサマ・ビン・ラディンを匿ったアフガニスタンのテログループだ。

 

トランプ大統領はアフガニスタンからの米軍撤退を行おうとし、タリバンの代表とアメリカ国内で会談を持つことにボルトンは反対したということは明確だ。ペンス副大統領は明確に大統領を支持しているが、ボルトンはそうではなかった。

 

トランプ政権の幹部たちは、タカ派のボルトンの退任は大きな出来事である、もしくは無秩序を増大させる、という考えを完全に否定した。

 

火曜日の記者会見で、スティーヴン・ミュニーシン財務長官は「そんなことは全くない。そんなバカな質問はこれまで聞いたことがない」と述べた。

 

しかし、ここ数か月の間、トランプ大統領は国土安全保障長官、国家情報長官、ボルトンを解任した。現在の国防長官は就任してからまだ数週間しか経っていない。

 

民主党は、政権内の人事の頻繁な交代と争いはこれからどうなるか分からないとし、トランプ大統領の政敵たちは大統領を攻撃するためにボルトン隊員のニュースを利用するだろうと強調している。

 

(2)ポンぺオの力が大きくなる(Pompeo's strength grows

 

ボルトンの退任はマイク・ポンぺオ国務長官のトランプ大統領に対する影響力を更に強めることになる。

 

ポンぺオとボルトンは数々の問題で衝突した。火曜日、国務長官は記者会見で記者たちに対して衝突があったことを認めた。

 

トランプ政権が発足してすぐからトランプ大統領に仕えた閣僚は数が少なくなっているが、ポンぺオはその中の一人だ(訳者註:CIA長官から国務長官へ横滑り)。ポンぺオはトランプ大統領に忠実な代理人で、イラン、北朝鮮、アフガニスタン、中央アメリカに関連した諸問題についての大統領のメッセージを伝えてきた。

 

ボルトンはイランと北朝鮮との交渉を複雑化させた。イラン外相ムハマンド・ジャヴァド・ザリフはボルトンをトランプ政権の「Bティーム」のメンバーだと揶揄し、北朝鮮政府幹部たちは数度の非核化交渉の中で彼を「好戦的な戦争屋」を非難した。

 

火曜日の午後の記者会見に同席する予定であったボルトンの退任に驚いたかと質問され、ポンぺオはニヤリとした。

 

ポンぺオ国務長官は「大変に驚いた。この問題だけのことではないが」と述べた。

 

(3)奇妙な結婚関係が終焉(Strange marriage ends

 

トランプ大統領は2018年3月にボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用した。前任のH・R・マクマスターよりもタカ派の人物としての起用となった。

 

ボルトンはテレビ出演時にトランプ大統領の考えを強力に擁護してきた。そして、大統領のイランとの核開発をめぐる合意からの離脱という希望に賛成していたようだ。

 

トランプ大統領とボルトンは重要ないくつかの問題、特にイラン問題について合意していたようだ。ボルトンを起用してから6週間後にトランプ大統領はオバマ政権下で結ばれた核開発をめぐる合意から離脱した。そして、トランプ政権は離脱直後からイランに対する経済制裁を科してイラン政府を攻撃した。

 

しかし、おかしくみえることもあった。トランプ大統領は元々ボルトンを起用することにためらっていた、それは彼が口ひげを生やしていたこと、そしてボルトンはジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ両政権下で働いたことが理由であった。トランプ大統領は自身の幹部となるアドヴァイザーを起用する際にそのような前歴があると怒りをぶちまけていた。

 

ここ数か月でボルトンのトランプ大統領に対する影響力は消えていた。そして、公の場での大統領からの叱責が続いた。

 

この数か月、トランプ大統領はボルトンのイランに対する強硬姿勢から少しずつ離れていった。トランプ大統領はイランの指導者たちと前提条件なしで直接話をしたいと述べ、イランと軍事上で関与することに躊躇している。

 

ボルトン退任の決定打となったのは恐らく、911事件の記念日の前にタリバンをキャンプ・デイヴィッドに招いて交渉を行うというトランプの考えに反対したと報じられたが、このことがきっかけであっただろう。

 

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官はフォックスニュースに出演し、「トランプ大統領は周囲の人々に自分の考えに反対してもらいたい、それで自分の前で議論をして欲しいと望んでいる。しかし、最終的に政策を決定するのは大統領だ」と述べた。

 

(4)共和党は再び説明を放棄した(GOP left explaining once again

 

トランプ大統領が人々を驚かせることをやる度に、連邦議会共和党はそれに対する反応を求められる。火曜日の発表もその例外ではない。

 

複数の共和党の連邦議員たちは、レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ各政権で働いたボルトンがトランプ政権から去ることを残念だと述べた。

 

連邦上院外交委員会の委員ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)は次のように述べた。「ボルトンは天邪鬼であることは事実だが、それは彼にとってプラスであっても、マイナスではない。彼が政権から去るという報に接し、大変残念だ。私は彼の退任は政権と国家にとって大きな損失である」。

 

しかし、他の人々はタカ派のボルトンの退任を歓迎した。こうした人々は、ボルトンがアメリカを更なる戦争に導くだろうという恐怖感を持っていた。

 

連邦下院の中でトランプ大統領の盟友となっているマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)は本誌の取材に対して次のように答えた。「私はボルトンの退任を歓迎したい。それは、ボルトンの世界観が反映されにくくなることで、世界における平和のチャンスが大きくなるだろうと考えるからだ」。

 

共和党の政治家のほとんどは当たらず触らずの態度で、トランプ大統領は自分自身で適切な人物を補佐官に選ぶべきだと述べるにとどまった。

 

(5)ボルトンは口を閉ざしたままではないだろう(Bolton may not go quietly

 

トランプ大統領がボルトン解任を発表してから数分後に、ボルトン自身が衝撃を与えた。彼はトランプ大統領の説明に対して反論を行い、人々を驚かせた。

 

トランプ大統領はツイッター上で、「私は昨晩、ジョン・ボルトンに対してホワイトハウスで働いてもらうことはこれ以上必要ではないと通知した。火曜日の朝にボルトンの辞任を受け入れた」と書いた。

 

ボルトンはトランプ大統領の発表から10分後にツイートをし、「私は昨晩辞任を申し出て、トランプ大統領は“そのことについては明日話そう”と言った」と書いた。

 

ボルトンは複数の記者たちに対して、退任はボルトン自身の決断だったと伝えている。

 

ホワイトハウスの幹部職員たちは記者たちに対して火曜日の朝にボルトンが辞任したことを認めるだろうが、ボルトン退任の詳細について記者たちと話すことはないだろう。

 

ボルトンは自分の主張を明らかにする場所と立場を維持している。彼は以前にはフォックスニュースでコメンテイターをしていた。彼は政界で信頼を得られるだけの経歴を持ち、自身の退任について自己弁護する連絡を記者たちに行ったことで明らかなように、ワシントンのメディアに幅広い人脈を持つ。

 

トランプ大統領がこれからの数日もしくは数週間の間に、ボルトンに対する批判を続けると、ボルトンはトランプ大統領の話と自分の話の食い違いについて批判や説明を行うことで反撃することになるだろう。ボルトンが自身の主張を続けることがホワイトハウスにとっては頭痛の種となるであろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 イランの大統領選挙は、強硬派が候補者を一本化したことでどうなるかと思っていましたが、ロウハニ大統領が再選されました。イランの大統領は二期までなので、ロウハニ氏はこれから4年間が最後の任期となります。

 

 ロウハニ大統領は、アメリカとの核開発をめぐる合意を前提にしての経済成長、そのための経済改革を主張しています。イランでは、諜報機関が経済部門にまで浸透しており、下に掲載した毎日新聞の記事では、「モンスター」とまで呼ばれているそうです。ロウハニは、そうした部分を改革していこうとしています。革命防衛隊、諜報機関はそれを防ぐために、最高指導者を引き込んで、ロウハニ氏を追い落とす、もしくは得票数を削ろうとしました。しかし、イランの人々はロウハニ大統領の路線を支持しました。

 

 アメリカでは、トランプ大統領がイランとの核開発合意に反対しているという報道がなされていますが、トランプ政権は核開発をめぐる合意を維持するということを既に表明しています。イランとの核開発をめぐる合意にアメリカ国内で反対しているのは、共和党ではネオコン、民主党では表立ってはいませんが(自党のバラク・オバマ前大統領が結んだ合意ですから)、人道的介入主義派です。

 

 トランプ大統領が初めての外遊で中東のサウジアラビアとイスラエルを訪問しますが、両国は宗教は違いますが、アメリカの同盟国という点では一緒です。サウジアラビアはアラブの盟主ですが、現状中東の和平と問題解決に何もしていません。オバマ政権時代は、イスラエルとアメリカの関係は悪化しました。トランプ政権ではトランプの義理の息子ジャレッド・クシュナーが上級顧問として力を持っていますから、イスラエルとの関係は改善すると思われますが、機密情報の取り扱いをめぐり、イスラエル側が激怒しているという報道もなされていますので、イスラエル側に、ネオコンや人道的介入主義派と気脈を通じている人々がいると思われます。

 

 トランプ政権とすれば、傲慢になりがちな中東の同盟諸国に活を入れるために、イランを利用するでしょう。イランを利用して中東の問題を解決しようとするでしょう。国益のためならば、敵と呼んだ相手とでも手を組むのがリアリズムですから、トランプは表だってイランを賞賛はしないでしょうが、一方的に敵視することはないでしょう。

 

 ロウハニ大統領が再選されたことで、アメリカとイランの関係が大きく変化することはないということになり、これは慶賀すべきことです。

 

(貼りつけはじめ)

 

<イラン>残る制裁、正念場 ロウハニ師再選、経済回復急務

 

毎日新聞 5/21() 8:15配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170521-00000007-mai-m_est

 

 【テヘラン篠田航一】イラン大統領選で対外融和の継続を掲げる保守穏健派のロウハニ大統領(68)が20日、再選を決めた。だがイランを敵視してきた米国はトランプ政権になり、より強硬な姿勢を示している。イランは経済回復を軌道に乗せて内政を安定させるためにも、米国などが今も科す制裁の軽減に向けた外交努力を続けると見られるが、事態の打開は容易ではない。

 

 「今後4年で全ての制裁解除に全力を挙げ、イランの威厳を取り戻す」。ロウハニ師が掲げた公約だ。イランは2015年に米欧などと核合意に達し、主要な経済制裁は解除された。だが、ミサイル開発や「テロ支援」を巡る制裁は残っている。

 

 トランプ米大統領は、イスラム教シーア派国家イランの覇権拡大を警戒するスンニ派の大国サウジアラビアを初の外遊先に選び、イラン大統領選の結果が固まった20日に現地に降り立った。湾岸のアラブ諸国と連携した包囲網の強化を目指している。米国とイランは、シリアやイエメンの内戦でも対立する勢力をそれぞれ支援しており、早期に歩み寄る可能性は低い。

 

 ただ、トランプ政権はシリアでは過激派組織「イスラム国」(IS)掃討作戦を優先している。イラン国連代表部で勤務経験を持つ元外交官の政治評論家ヘルミダス・ババンド氏は「シリア内戦が沈静化すれば、イランと米国の関係は改善に向かう」と分析。ロウハニ大統領が、米国と近いアラブの主要国エジプトへの働きかけを強めると見ている。

 

 内政では経済回復を進める上で、膨大な権益を持つ革命防衛隊との関係が焦点の一つになりそうだ。ロウハニ大統領は選挙戦で「経済発展を望むなら、(革命防衛隊などの)治安・政治組織を経済に関与させるべきではない」といら立ちを隠さなかった。

 

 約12万人の兵員を擁する革命防衛隊は、1979年のイスラム革命の理念防衛のため創設されたが、多くの系列企業を抱えて経済分野にも進出し、肥大ぶりは「モンスター」と称される。ロウハニ政権が今後、外資導入や経済開放を進めようとした場合、防衛隊関連企業の抵抗が予想される。

 

 内政の安定には、若年層の雇用創出も急務だ。失業率は若年層で3割近いと言われる。経済的不満から保守強硬派への傾倒を強めることを抑止するためにも経済成長の加速は不可欠だ。

 

=====

 

イランの大統領選挙で何が重要なのか?(What’s at Stake in Iran’s Elections?

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/19/whats-at-stake-in-irans-elections-rouhani-raisi/

 

イラン国民は金曜日、次期大統領を誰にするかを決める投票を行う。大統領選挙には複数の候補者が立候補しているが、主要な選択肢としては、中道改革派で2期目を目指す現職大統領ハサン・ロウハニと、保守派強硬路線のイブラヒム・ライシの2人に絞られている。最も人気があったモハンマド・バーゲル・ガリバフが選挙戦から撤退し、ライシ支持を表明したためにこのような状況になった。

 

誰が大統領になるだろうか?そして、選挙結果がイランの国際関係においてどのような意味を持つであろうか?

 

コロンビア大学教授リチャード・ネヒューは本誌の取材に対して、「ロウハニが当選すると考えます」と述べた。

 

読者の皆さんがご存知のように、最高指導者と諜報機関がライシを大統領にしたいと後押しをしているという疑いがあるし、人々の間には、国際関係を改善して好景気をもたらすというロウハニの公約が果たされていないという不満が高まっている。しかし、ネヒューは、投票率が期待通りに髙ければ、ロウハニが2期目に向けた当選に困難に直面することはないだろうと述べた。

 

ロウハニが勝てば、人々の信任を示す票差での勝利であれば、イランの対西側各国への政策は大きくはそのままであろう。イランはアメリカとの間で、イラン核開発合意として知られる包括的共同行動計画を堅持するだろう。ドナルド・トランプは自身の大統領選挙期間中、合意の破棄を主張したが、現在のところトランプは合意の維持を表明している。

 

ロウハニは、更なる経済改革を進めるだろう。ロウハニは、アメリカとの合意から経済的利益を得ることができるとロウハニは主張しているが、そのためには経済改革が必要となる。そして、ロウハニは経済分野における諜報機関の存在を排除しようとするだろう。ロウハニが地滑り的勝利をした場合に不都合なことがあるのだろうか?ロウハニが圧倒的な勝利を収めた場合、最高指導者とその周辺は、ロウハニの羽を縛ろうとするだろう。

 

それではライシが勝利した場合はどうなるだろうか?ライシは他の候補者と同様に、包括的共同行動計画の維持を主張しているが、この合意からイランが利益を得るために必要な経済改革を進めることはないだろう。そうなると、イラン国民は、経済が良くならないのに、合意を維持する必要はあるのかと考えるようになるだろう。

 

しかし、ライシの勝利は状況を悪化させるだろう。特にアメリカとの関係に悪影響を与える。ネヒューは、トランプ政権がライシ勝利をイラン国内における強硬派の台頭の徴候と捉え、イラン政府との協力は望めないと捉えるならば、「強硬派同士である、トランプとライシ同士の競争が起き、良くない状態になる」と述べている。

 

投票日の金曜日、トランプは大統領としての初めての外遊をサウジアラビアから始める。大統領選挙の結果によっては、中東の情勢は更に爆発しやすくなるだろう。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 昨年末から今年初めにかけて、世界的には何だか元気のない状況になっています。2016年に景気上昇するという予測は立ちづらく、更にはテロの危険が世界各国に拡散しているとして、みんなで盛り上がろう、という感じはありませんでした。

 

 日本では昨年末に、日中戦争、太平洋戦争中の韓国人女性の従軍慰安婦問題について、日韓両国で最終的な解決となる合意がなされました。安倍晋三総理大臣は、従軍慰安婦に関して様々な疑義を呈する立場を取っていましたが、最終的には謝罪の声明を、岸田文雄外務大臣を通じて発表しました。日韓両国で外交関係上は「これ以上、この問題を蒸し返さない」ということになりました。今回の合意について、日本の安倍政権を支える右翼や一部保守派、韓国国内の様々な勢力から批判が出されました。今回の合意に関しては、第三国であるアメリカの意向が強く働いて、ある意味で急転直下の合意ということになりました。安倍晋三政権の「リアリスト(現実主義的)」外交の勝利ということを言う人たちもいましたが、第三国、しかも宗主国の意向を受けて慌てて合意するような外交、自主的に自分たちの抱える問題を解決できないような外交はリアリスト外交とは言いません。

 

 中東では、イスラミック・ステイト(IS)に対するロシアの攻撃があり、ISの勢力が減退しつつあるようです。結局、アメリカ(とサウジアラビア、イスラエル)が直接、間接に育てたISの始末をつけるのに、他人であるロシアの手を借りねばならなくなったという大変情けない状況になりました。いい面の皮となったのがシリアで、シリアのバシャール・アサド大統領の政府軍と反政府軍の内戦だったものが、いつの間にか、中東を巻き込む「代理戦争」となって、シリアは悲惨な状況になってしまいました。

 

 そうした中で起きたのが、サウジアラビア、バーレーンとイランの断交(外交関係の断絶)です。サウジアラビアがイスラム教シーア派の聖職者を処刑したことで、イラン国民の一部が激怒し、テヘランのサウジアラビア大使館を襲撃したことがきっかけで、サウジアラビアがイランの外交団の国外追放を決めました。サウジアラビアとしては全て予定の範囲内の、シナリオ通りの行動と言えるでしょう。

 

 イランはアメリカとの間で核開発を巡り、核兵器を開発しないことで合意に達していました。ここからイランとの間で国交正常化まで進む可能性もあります。そうなると、中東世界におけるサウジアラビアの影響力は低下します。更には、ISの脅威もサウジアラビアにとっては深刻です。ここで、不安定な中東世界にさらに不安定な要素を加えることで、低落傾向が続く原油価格は上昇しますし、アメリカも改めて、サウジアラビアに対するご機嫌取りに動くという計算もあるでしょう。 

 

 中東が不安定さを増す中で、アジアでも不安定さを増す事件が起きました。本日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表しました。これによって、北朝鮮を取り巻く日中韓は難しい状況に置かれてしまいます。アジア地域は経済発展が著しい訳ですが、安全保障環境が不安定になれば経済にも悪影響を及ぼすことになります。

 

 新年早々から、世界は不安定な状況に置かれてしまいました。しかし、こうした状況を利用しようとするのが、アメリカのネオコン(共和党)・人道主義的介入派(民主党)です。考えてみれば、こうした状況ではアメリカの軍事介入が望まれるようになるのですから、アメリカの優越と軍事介入を主張している両グループにとっては、渡りに船の状況です。

 

 サウジアラビアとイランが直接、事を構える(ミサイルを撃ちあう)、それにイスラエルが絡むということになれば、中東で新たな戦争が起きるということもあるでしょう。アジア地域では、北朝鮮の存在のために中国が苦境に立たされることもあるでしょう。

(23:05に加筆します。)

 

 私はオバマ政権最後の1年となった2016年、アメリカと北朝鮮との間で、イランやキューバの場合と同じく、ホワイトハウス主導で緊張緩和があるのではないかと考えていました。しかし、今回、北朝鮮が水爆実験を行いました。北朝鮮内部に、アメリカとの緊張緩和を妨害したい勢力がいるのだろうと推測されます。彼らは北朝鮮の今の体制を維持したいのだろうと思います。そして、こうした勢力はアメリカ国内のネオコン・人道主義的介入派とつながっているのだろうと思います。彼らの使嗾もあって、何カ月も前から水爆実験の準備が進められ、今回行われたのではないかと私は考えます。

 
 年末年始にかけて起きたことを一つの線で見てみて、「誰が一番得をするのか」ということを考えると、ネオコン・人道主義的介入派ということになります。アメリカは今年、大統領選挙の年で、来年には新しい大統領が誕生します。昨年の段階で、既にヒラリーの勝利がほぼ確定的と言えるでしょう。彼女の介入主義にとって、世界が不安定であることは、「得」なことなのです。一連の事件の裏には、アメリカの両グループとそれらに結び付いた現地勢力がいることは間違いないと言ってよいでしょう。
 

 アメリカのネオコン・人道主義的介入派が喜ぶような状況になれば、安保法制を成立させている日本に寄せられる期待(命令)は大きなものとなります。2016年、そして新年早々来年のことを言うと鬼が笑うかもしれませんが、2017年は世界にとって何か大きなことが起きて、多くの人々が苦難に苦しむようなことになるのではないか、と私は危惧しています。

 

(終わり)








 
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