古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:サウジアラビア

 古村治彦です。

サウジアラビアがアメリカ偏重から脱し、中国重視へとシフトしようとしている。現在、

サウジアラビアの実権を握るムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との間がしっくりいっていない、はっきり言えば険悪になっていることは複数回にわたって報じられている。バイデン大統領が2022年7月にサウジアラビアを訪問した。バイデンは石油価格高騰対策のために、サウジアラビアによる石油増産を求めた。しかし、サルマン王太子の答えは「ノー」だった。それどころか、ロシアと歩調を合わせて、石油の減産を決定した。サウジアラビアの石油減産は、ウクライナ戦争において、ロシアを支持する、ロシアを支援する行為だと西側諸国では受け取られた。アメリカと蜜月関係にあったサウジアラビアがアメリカから離れた、裏切ったということになった。

 サウジアラビアからすれば、裏切り者呼ばわりは片腹痛いということになる。サウジアラビアを敵扱いして、見捨てたのはアメリカではないかということになる。バラク・オバマ政権時代に、サウジアラビアの宿敵イランと核開発をめぐる合意を結んだが、サウジアラビアからすれば中途半端な内容で、イランの核開発を止めることができず、イランの脅威を増大させるだけのことだということになった。また、アメリカ国内でシェールガス生産を行うことで、天然資源輸出でアメリカはサウジアラビアのライヴァルとなった。

 サウジアラビアはアメリカのライヴァルである中国にシフトした。サウジアラビアに捨てみれば、最大の石油輸出先である中国と親密になるのは当然のことだ。中国に近づくことで、アメリカから軽視されることのリスクを軽減しようという行動に出ている。これは、サウジアラビアの国益という点から見れば、きわめて合理的な行動ということになる。中国からすれば人民元結成を認めてもらえるようになれば、資源確保において大いに利益となる。そして、人民元が世界の基軸通貨に近づくことになる。これはドルの地位の凋落を招くことになる。

 私はサウジアラビアの行動は日本の参考になると考える。もちろん、サウジアラビアはアメリカにとっての同盟国であるが、日本は従属国である。従って、サウジアラビアと同じ行動を取ることはできない。しかし、アメリカに対して「バランスを取る」ということはできる。それにはアメリカ一辺倒では無理である。アメリカに依存するだけでは、アメリカの意向に振り回される。そこに中国という要素を入れて初めてバランスが取れるようになる。このように「ただ従うだけ」の状態から脱して、「あんまり理不尽なことをすれば離れますよ」という素振りを見せることで、アメリカとの交渉を少しは有利に進めることができるだろう。そのためにはアメリカの「対中強硬姿勢」に巻き込まれるべきではないのだ。日本が中国にぶつけられるようになるのは愚の骨頂だ。

 日本は西側の一員に留まらねばならないのは仕方がないが、少しでも国益のためになるように行動する必要がある。そのためには中国とロシアに対して喧嘩腰で臨むべきではない。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビアが中国に向きを変えることを望まない理由(Why Saudis Don’t Want to Pivot to China

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。

ムハンマド・アリヤアナ

2022年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/16/saudi-arabia-china-xi-bin-salman-biden-oil-opec-geopolitics-security-middle-east/

中国の習近平国家主席は、リヤドで3日間にわたって行われたサウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子、湾岸協力会議の指導者たち、さらに大きなアラブ政府グループとの一連の首脳会談から帰国したばかりだ。首脳会談マラソンの結果、エネルギー、貿易、投資、技術協力、その他の様々な分野で、公的、非公的に数多くの合意がなされた。このサミットは、経済と安全保障の関係がますます緊密になっていることを証明するものだった。サウジアラビアは中国にエネルギー需要の18%を供給し、石油化学、工業、軍事設備の受注を拡大しているが、その多くはこれまでアメリカから調達していたものだ。

一方、ホワイトハウスは、習近平がペルシア湾地域で中国の影響力を拡大しようとしていることは、「国際秩序の維持に資するものではない(not conducive to maintaining international order)」と指摘した。コメンテーターたちは、習近平のサウジアラビア訪問は、リヤドが従来のワシントンとの関係を捨て、北京に軸足を移そうとしていることの表れであると主張している。

中国の政策は単純明快だ。北京はリヤドに取引を持ち掛けている。石油を売って世界のエネルギー市場の安定化に貢献し、軍事装備はカタログから好きなものを選び、防衛、航空宇宙、自動車産業、医療、技術などの協力で好きなだけ利益を得ようということだ。つまり、中国はサウジアラビアに対して、70年にわたり中東を安定させてきたアメリカとサウジアラビアの取引をモデルにしたような交渉を持ちかけているのだ。

サウジアラビアは、自国の基本的な利益に対して公然と敵対するようになったワシントンに裏切られたと感じている。それに対して中国の宣伝は響く。多くの若いサウジアラビア国民が、アメリカを中国に置き換えるという考えを素朴に口にするようになっているのは、驚くには当たらない。アメリカの大学を卒業し、アメリカのポップカルチャーや消費技術の貪欲な消費者として、教育を受けたサウジアラビアの人々の多くはアメリカを身近に感じている。アメリカのメディアや政策立案者たちが、私たちや私たちの国、指導者、文化に対して不当な攻撃をしていると見なし、いじめられていると感じている。多くの人にとっての選択肢は、中国語を学び、中国の産業と貿易を促進する将来のキャリアを想像することである。

アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、アメリカ自身以外のいかなる国内的なアクターによっても破壊することはできない。

私のようなサウジアラビア人にとって、アメリカとの別離ほど心細いものはないだろう。1960年代以降、サウジアラビアの人々はアメリカとの強い関係なしに世界を見たことがない。私も、アメリカの文化や偉大さに深い敬意を抱いている若いサウジアラビア国民の1人だ。しかし、この10年、サウジアラビアの人々の多くは、アメリカへの親近感と賞賛が、アメリカの政治家、政策立案者、ジャーナリストから報われていないと感じ、その信頼を失っている。アメリカは、2020年の選挙戦でジョー・バイデン米大統領が約束したように、サウジアラビアを「除け者(pariah)」にしようと決意しているようだ。

この不信感は、バラク・オバマ前米大統領の政権時代にまでさかのぼる。2015年に彼がイランとの核合意を交渉した時、私たちサウジアラビア国民は、彼が両国の安定と強さの源となっていた関係を否定していると理解した。この合意は、テヘランに核爆弾製造の道を開き、イランのイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)の軍資金を満たし、既存の秩序を破壊するためにアラブ世界各地で民兵を貪欲に武装させることにつながった。攻撃的で修正主義的な国との取引を正当化するためにオバマ大統領が提唱したバランス感覚を装うことは、決して合理的な意味を持たない。結局のところ、もし友人があなたのニーズとあなたの最悪の敵のニーズのバランスを取ると約束したら、その人はもはやあなたの友人ではないと結論付けるのが公正ではないだろうか。

バラク・オバマ、ジョー・バイデン両政権は共に、イエメンにおけるテロリストの代理人を介したイランの攻撃に対し、アメリカは縮小を求め、求めてもいない紛争をサウジアラビアになすりつけることが頻繁にあった。シリアでは、アメリカは、イラン軍とロシアの爆撃機が支配する隣国という、恐ろしく悲惨な光景を私たちに見せつけた。イランとの核取引の一環として、オバマ政権は数百億ドルをイランに流した。その資金は、イラクの解体、シリアの崩壊、レバノンの混乱、サウジ領に対するフーシ派の攻撃支援に使われた。ロシアのプーティン大統領に地中海東部の戦略的拠点を与えることを決定したのもオバマ政権だ。この戦略は、シリアでの内戦を緩和する方法としてアメリカ国民に盛んに喧伝された。昨年、イエメンからサウジアラビアのインフラにミサイルが殺到したことを受け、バイデン政権はサウジアラビア領内からアメリカのミサイル防衛砲台を撤収させた。

しかし、ワシントンが私たちの裏庭に火をつけても、サウジアラビアは地域の平和構築者として、また私たちが賞賛し続ける国として、サウジアラビアの防衛におけるアメリカの役割に敬意を表そうとした。だからこそ、バイデン政権が2021年に「サウジアラビアとの関係を再調整する」と約束して誕生し、2019年に行った「サウジアラビアに代償を払わせ、事実上の除け者とする」という公約を継続した時、とても痛快で心配になった。

かつての大切なパートナーを切り捨てたことに加え、バイデン政権は、エネルギー転換をどのように管理すべきかについてほとんど現実的な考えを持たずに、炭素ベースのエネルギー源に戦争を仕掛けることを選択したのだ。地球を救うという大げさなレトリックは、OPEC+に対抗する買い手のカルテルを作ること、サウジアラビアの外交政策の最重要部分、国内開発計画という3つの方面からの努力を伴っている。第一に、バイデンはアメリカの戦略石油備蓄から数百万バレルの石油を放出した。その目的は、供給ショックを緩和することであり、市場を操作することではない。第二に、アメリカ、ヨーロッパの同盟諸国、カナダ、オーストラリアは先週、ロシアの石油輸出に価格上限を設けるための市場メカニズムを構築した。第三に、バイデン政権はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートに対し、自国の財政・金融政策によるインフレなどアメリカの国内政治目標達成のために増産を迫っている。このようなバイデン政権の戦略は、OPEC+から原油価格の決定権を奪おうとしているようにサウジアラビアには映る。もしこれが成功すれば、サウジアラビアは自国の開発目標を達成するための収入を得ることができなくなる。

このような背景から、サウジアラビアの人々の多くが東方へ視線を移し始めている理由は明らかだろう。しかし、中国がアメリカに代わってサウジアラビアのパートナーとなることを期待するのは、甘い考えだと私は言いたい。

私は、大学と大学院をアメリカで学び、幸運にも幼少期の一時期をワシントン郊外のヴァージニア州で過ごした。そこで私は、野球をしたり、感謝祭に七面鳥を食べたり、12月になると『クリスマス・キャロル』を見たりと、アメリカの娯楽に触れることができた。最近では、サウジアラビアとアメリカの関係を表現するメタファーとして、このチャールズ・ディケンズの物語を使っている。

アメリカの技術、技術革新、防衛協力、安全保障関係が存在しない地域を、「まだ来ぬクリスマスの亡霊(訳者註:『クリスマス・キャロル』に出てくる第三の幽霊)」が見せてくれると想像して欲しい。個人の自由の利点と限界が、サウジアラビア国民が自国の改革に伴ってますます行っているように、国民とその支配者が議論すべきテーマではなく、神を敵とみなす一党独裁の中央集権国家によって決定されるような地域を想像してみるといい。

アメリカの誤算と無能力を混同するのは愚かなことである。アメリカが作り上げ、長く維持してきた世界秩序は、中国を含むいかなる国際的なアクターによっても破壊することはできない。アメリカ自身によってのみ破壊することができるのだ。善かれ悪しかれ、アメリカとサウジアラビアの両国の運命は不可避的に絡み合っている。アメリカが創り出そうとしている未来に目を向けることで、中東に取り憑いている亡霊を追い払うことができるのではないかと私は考える。

※ムハンマド・アリヤアナ:ベルファー・センター中東部門研究員、ハドソン研究所中東平和・安全保障担当上級研究員。『アル・アラビア・イングリッシュ』紙元編集長。ツイッターアカウント:@7yhy

=====

習近平のサウジアラビア訪問はリヤドにおけるワシントンとの一夫一婦制の結婚関係終焉を示している(Xi’s Saudi Visit Shows Riyadh’s Monogamous Marriage to Washington Is Over

-現在の冷戦2.0では、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、北京やモスクワに接近する可能性もある。

アーロン・デイヴィッド・ミラー筆

2022年12月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/07/xi-jinping-saudi-arabia-trip-mbs-biden/?tpcc=recirc_trending062921

2004年のインタヴューで、当時のサウジアラビア外相サウド・アルファイサルは、アメリカとサウジの関係は、妻が1人しか許されない「カトリックの結婚(Catholic marriage)」ではなく、妻が4人許される「イスラムの結婚(Muslim marriage)」だと元『ワシントン・ポスト』紙記者デイヴィッド・オッタウェイに語っていることが極めて先見的だった。オッタウェイは「サウジアラビアはアメリカとの離婚を求めていたのではなく、他国との結婚を求めていただけだ」と書いている。

それが今、現実のものとなった。このことがより明確に反映されているのが、中国の習近平国家主席が今週、2016年以来初めてサウジアラビアを訪問することである。習近平の訪問は、「仲直りしよう(let’s mend the fences)」と握手を交わすような気まずい瞬間にはならないだろう。サウジアラビアにとって最大の貿易相手国と中国にとって最大の輸入石油源である中国との、華やかで温かい抱擁の祭典となるのである。

北京は、サウジアラビアにとって最重要の問題、すなわち不安定になっている近隣諸国における安全保障について、ワシントンに取って代わることはできない。しかし、リヤドがワシントンと一夫一婦制で結婚していた時代は時代遅れになっている(going the way of the dodo.)ようだ。冷戦2.0、つまりアメリカと中国・ロシアとの緊張と競争が高まっている現在、サウジアラビアはどちらにつくかを選ぶことを拒否するだけでなく、自国の利益のために北京やモスクワに接近する可能性がある。つまり、サウジアラビアはもはやアメリカ一国だけの妻ではない。

中国との関係改善に対するサウジの関心は、アメリカがサウジの利益にもっと注意を払い、「リヤドは当然自分たちの味方だ」と単純に考えないようにさせるための一時的な戦術と見なしたくなるものだ。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との個人的な関係は、決して友好的とは言えない。サルマン王太子はバイデンが自分をどう思っているか気にしないと述べ、バイデンはサウジアラビアの指導者たちについてあまり考えていないことを明らかにした。バイデンはサウジアラビアを非難する際に控え目に振舞う(wallflower)ことはない。サウジアラビアを呼び出すことになると萎縮する壁の花ではなく、

しかし、アメリカとサウジアラビアの関係を苦しめているのは、バイデン大統領とサルマン王太子の相性の悪さよりもずっと深いところに原因がある。ワシントンはサウジアラビアの石油を必要とし、リヤドはアメリカの安全保障を必要とするという、数十年にわたる関係を支えてきた基本的な相殺取引(トレイドオフ)が、長年にわたるストレスやひずみの積み重ねによって、擦り切れてしまっている。19人のハイジャック犯のうち15人がサウジアラビア人であり、サウジアラビア政府はこの計画をどの程度知っていたのかという疑問が残る911テロ事件、バグダッドにイランの影響を受けやすいシーア派支配の政権をもたらした2003年のアメリカによるイラク侵攻、アメリカの「アラブの春」への対応などでが両国関係を傷つけてきた。アメリカは「アラブの春」に対して、当時のエジプト大統領ホスニー・ムバラクに退陣を迫り、中東や北アフリカの他の地域で民主的な改革を促したが、サウジアラビア王政はこの動きを世界中の権威主義者への脅威、そして自らの権力保持への脅威と考えた。アメリカを石油輸出の競争相手とすることになった、フラッキング技術とシェールガス革命、サウジアラビアの宿敵イランとのオバマ政権の核合意、2019年9月のイランの無人機・巡航ミサイルによるサウジアラビアの主要産油施設2か所への攻撃に対するアメリカの弱腰反応によるリヤド側の懸念拡大、アメリカによるサウジアラビアの安全保障への関与などもあった。 そして最後に、冷酷で無謀なムハンマド・ビン・サルマンが台頭し、サウジアラビアの反体制派でアメリカ在住のジャマル・カショギの殺害を指示したこともあった。

関係を修復しようとする努力は、かえって関係を悪化させるようだ。バイデン大統領訪問の際、バイデンと王太子が兄弟のように握手を交えた場面もあったが、サウジアラビアが優位に立ち、与えた以上のものを得て、バイデン政権と共にウクライナでのロシアや台頭する中国に対抗しようとは考えていないように感じられたのである。両首脳会談で発表された広範な声明やコミュニケの中に、ワシントンの敵対諸国のいずれかを批判する言葉を見つけるのは困難である。10月のOPEC+では、サウジアラビアとロシアが日量200万バレルの減産を決定し、ワシントンではこの決定について、ウラジミール・プーティン大統領のウクライナでの戦争マシーンへの資金提供を直接支援する行為と見なされた。

2022年7月の中東歴訪を前にして、バイデン大統領は『ワシントン・ポスト』紙に寄稿した。その中で、中国に対抗するためにはアメリカ・サウジアラビア関係の改善が必要だと指摘したのは興味深い。もちろん、ムハンマド・ビン・サルマンはまったくそのようには考えていない。彼にとっては、中国カードをいかにサウジアラビアのために使うか、北京とワシントンのどちらかを永久に疎外することなく、両方から得られるものをいかに引き出すかが今のゲームとなっているのだ。

サウジアラビアは何年も前から中国との関係を深めてきた。しかし、これは、より小さくて脆弱な大国が超大国と行う非常に古いゲームに、新しい、そしておそらく戦略的なひねりを加えたものである。超大国(この場合はアメリカ)がある小さな国(あるいはその地域)を優先しないようになると、この小さな国もまたバランスを取る動きに出て、超大国の動きに対して、自国のマイナスを補うために他の大国と手を結ぼうとする。しかし、サウジアラビアが自信を深めていること、サウジアラビアの利益を守るために独自に行動する意志があること、そしてサウジアラビアの計算において超大国としての中国の重要性が増していることように変化したのである。

中国はサウジアラビアに何を提供するのか? ムハンマド・ビン・サルマンにとって、中国は単にアメリカに対抗するためのレヴァーではない。中国自体に真の価値がある。中国は現在、サウジアラビアにとって最大の貿易相手国であり、近年はアメリカとサウジアラビアの二国間貿易を上回っている。『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「中国企業はサウジアラビアに深く入り込み、巨大プロジェクトの建設、5Gインフラの整備、軍事用ドローンの開発などを行っている」と報じている。中国が関与しているのは、インフラだけではない。カーネギー国際平和財団の研究担当副会長エヴァン・A・ファイゲンバウムは、北京はテクノロジーや通信を含む多次元的なアプローチを追求していると『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。先月、中国の通信会社「チャイナ・モバイル・インターナショナル」はリヤドと「サウジアラビアのデジタルメディア・エコシステムを推進する」覚書に調印した。

中国はまた、サウジアラビアに対して、人権に関するあらゆる懸念を含め、国内政治への干渉を排除した無条件の関係を提案している。これは両国にとってメリットがある。習近平は新型コロナウイルスの流行が始まって以来、ほとんど中国国外には出ていない。習近平が最初の数回の海外出張にサウジアラビアを選んだのは偶然ではない。同じ権威主義者が統治する国で、ウイグルや香港、新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウンに対する最近の中国のデモに対する抗議などに関して、中国に恥をかかせるような報道はないだろう。習近平とビン・サルマンは権威主義者クラブの正真正銘のメンバーとして、改革、民主化、人権促進を求める外圧に対して団結する共通の絆を持っている。

つまり、バイデンのサウジアラビア訪問とは異なり、習近平の訪問は不快感や摩擦を伴わない、相互の温かさに満ちたものになる可能性が高いのである。習近平とサウジアラビア国王、ムハンマド・ビン・サルマン王太子、習近平とペルシア湾岸諸国、習近平とアラブ連盟諸国との3つの首脳会談が予定されているというから、ムハンマド・ビン・サルマンと習近平はともにこの地域における中心的存在としての存在感を発揮することができそうだ。サウジアラビア国営通信によると、30人以上の国家元首や国際機関の指導者たちが出席する予定だという。

アメリカとサウジアラビアの関係は崩壊しそうにない。ワシントンは安全保障と情報協力においてリヤドの重要なパートナーであり続けるだろうし、イランという国外の脅威は、多少傷つきながらも、この特別な関係の少なくとも一面を存続させることを保証しているようだ。中国は、アメリカの兵器の精巧さと有効性に取って代わることはできないし、ペルシア湾の航行の自由(freedom of navigation)を保証する役割を果たすこともできない。実際、ペルシア湾で中国のエネルギー供給を保護し、その確保に貢献しているのはアメリカ海軍である。しかし、バイデン政権は、北京がサウジアラビアの手元にある中国のミサイルをどのように改良し、どのような核協力が行われようとしているのか、注意深く見守る必要がある。

しかしながら、一つだけ確かなことがある。それは、あなたの祖父や祖母の時代のようなアメリカとサウジアラビアの関係ではないのだ。リスクを避け、コンセンサスを重視するサウジアラビアの国王の時代は終わった。その代わりに、リスクを恐れず、自信を持ち、傲慢でさえあるサウジアラビア国王が、グリーン革命があろうとなかろうと、世界が今後何年にもわたってサウジアラビアの算出する炭化水素に依存することを認識している。アメリカは現在でも非常に重要な存在だが、おそらくムハンマド・ビン・サルマンの計算の中心ではないだろう。バイデンは7月の中東歴訪で、サウジや湾岸アラブ諸国の指導者たちに、アメリカは「どこにも行かない」し、この地域にとどまるのだと述べた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマンは彼独自の道を進む。中国とそしてロシアもまた、どこにも行かないだろう。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和基金上級研究員。共和党、民主党の各政権で米国務省中東担当アナリストと交渉担当官を歴任。著書に『偉大さの終焉:アメリカはどうしてもう一人の偉大な大統領を持つことができず、持ちたいと望まないのか(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want) Another Great President)』がある。ツイッターアカウント:Twitter: @aarondmiller2
(貼り付け終わり)
(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今年の冬はエネルギー価格の高騰があり、世界各国で厳しい冬になりそうだ。光熱費の高騰により生活が苦しくなる。ウクライナ戦争によって、ロシアに対しては経済生成が発動され、ロシアからの天然ガス輸入ができなくなった。ロシアは天然資源輸出ができなくなれば、経済的に行き詰って戦争を継続できなくなるだろうと考えられていた。しかし、そのような目算は崩れてしまった。非西側諸国によるロシアの天然資源輸入が大きかった。

アメリカや日本をはじめとする先進諸国は産油諸国に石油の増産を求めているが、これはこれまでのところうまくいっていない。サウジアラビアは増産を拒否している。ここにも西洋諸国(the West)対それ以外の世界(the Rest)の対立構造が明らかになっている。ロシアは非西洋諸国、具体的には中国やインドに石油を割安で輸出している。これでお互いにウィン・ウィンの関係を築いている。

ヨーロッパはロシアからの天然資源輸入がなくなり、アメリカからの高い天然ガスを買わねばならず、通常であれば安い夏の時期に買っておいて冬に備える備蓄も全くできなかったことから、厳しい冬になる。偶然見たテレビニューズの取材に対して、「薪を備蓄して冬に備える」と答えていたドイツ国民の声が印象的だった。

 日本でも東京都の小池百合子知事がタートルネックのセーターやスカーフの着用を推奨して話題になった。首元を温めれば暖房の設定温度は低くできるということのようだ。暖房や建物の建材などのエネルギー効率を高めれば、エネルギー消費を減らすことができる。気候変動のためにそうすべきということは長年言われてきたが、今回のウクライナ戦争とそれに影響を受けてのエネルギー価格高騰もあるので、こうした動きを促進しようという主張は出てきている。

 しかし、「言うは易く行うは難し」である。これから建物を全面的に改修するなり建て替えるなりするには多額の資金がかかる。更に言えば、こうした建材の材料費も高騰している。そことの兼ね合いが難しい。エネルギー効率を高めておけば、戦争が終わってエネルギー価格が下がればこれまでよりもエネルギー関連支出が下がるということになるから良いではないかということであるが、戦争でそのような対策が進むというのは何とも皮肉なものだ。

(貼り付けはじめ)

そうだ、私たちはエネルギー需要の削減について話す必要がある(Yes, We Need to Talk About Cutting Energy Demand

-エネルギー供給のみに集中することで、世界は危機に立ち向かうための最も安価で迅速な方法のいくつかを無視している。

ジェイソン・ボードフ、メーガン・L・オサリヴァン筆

2022年6月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/06/29/energy-demand-supply-efficiency-conservation-oil-gas-crisis-russia-europe-prices-inflation/

ドイツは先週、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を更に制限することで、エネルギー不足が差し迫ることを警告し、エネルギー部門を戦時体制(war footing)に移行させた。冬が到来した時に必要となる在庫を満たすヨーロッパの能力を低下させることによって、ロシアは、ウクライナを征服し、西側諸国の抵抗を断ち切るためのキャンペーンの一環として、エネルギー輸出を武器化するためのレバレッジを高めている。ドイツのロベルト・ハーベック・エネルギー経済大臣は、ガスシステムを政府によるエネルギー配給の一歩手前の「警報」段階までエスカレートさせ、ドイツ国民に対し、消費行動を自発的に変えてエネルギーを節約することで「変化を起こす」よう呼びかけた。

ハーベックは、今日のエネルギー危機に対する解決策として、極めて重要かつ過小評価されていることを指摘した。現在採用されている多くのアプローチとは異なり、効率性を高めることで、ロシアのレバレッジを減らし、エネルギー価格の高騰に対処し、気候変動に対処するための炭素排出を抑制することを同時に実現することが可能となる。実際、サーモスタットの調節や運転時間の短縮から、スマートなデジタル制御や建物の断熱に至るまで、効率と節約の向上は、これらの課題全てに対処する最も迅速、安価、かつ簡単な方法の1つである。エネルギー危機がまだまだ続く中、世界中の政策立案者たちは短期・中期・長期のエネルギー消費の削減をあらゆる戦略の中心に据えるべきだ。残念ながら、ドイツが市民や企業に節電を呼びかけるのは、迫り来るエネルギー不足に対処するために多くの国がとっているアプローチの例外である。

ロシアがヨーロッパ大陸へのガス供給を削減するのではないかというヨーロッパ各国の懸念はここ数週間で現実のものとなった。ヨーロッパの数カ国への選択的な供給削減の後、ロシアはドイツへの主要ガスパイプラインの能力を60%も削減し、他の多くの国への輸出を削減した。ヨーロッパの天然ガス価格は50%以上上昇し、電力価格は2021年12月以来の高水準に上昇した。これを受けて、欧州連合(EU)加盟国10カ国が様々な段階のガス緊急事態を宣言している。

一方、原油価格は、世界的な供給不足、ロシアの輸出抑制、精製能力の限界などを背景に、ほぼ過去最高値の水準で推移している。ガソリンや軽油の価格高騰は、インフレを引き起こし、人々の生活を圧迫し、世界各国政府にとって政治的な頭痛の種となっている。例えば、ジョー・バイデン米大統領は最近、連邦ガソリン税の一時停止を議会に要求した。

石油、ガス、石炭の使用量を削減するには、効率性への投資と需要の節約が最も安価で迅速な方法であることが多い。

今回の危機に対して、各国は石油やガスの代替資源を求め、石炭の利用を増やすことで対応している。最近、液化天然ガス(LNG)を船で供給する米独の長期契約と並んで、ヨーロッパ各国はカタールと同様の契約を結ぼうとしている。ドイツ、オランダ、フィンランド、フランスなどがLNG輸入設備の新設を発表している。LNG輸入基地を1つも持たず、ロシアのパイプラインガスへの依存度を高めているドイツは、現在3基の基地を計画しており、ドイツ政府は最近、基地を建設する間、より迅速にガスを輸入できるようにするため、浮体式貯蔵・再ガス化装置4隻をチャーターしている。オランダは、ガス採掘に起因すると思われる地震によって停止した、最大の陸上ガス田の再開を検討している。ドイツ、オーストリア、イタリア、オランダは、古い石炭発電所を復活させる計画を発表した(ただし、ドイツは不可解にも今年末に最後の石炭発電所2基を停止させる計画で原子力発電所は復活させない)。そして先週、バイデンは石油業界の幹部を招集し、アメリカの石油生産と精製を促進する方法を探ろうとした。

これらの措置は全て戦争によって起きているので嘆かわしいことではあるが、現在の危機への対応としては適切なものだ。本誌にも書いたように、ロシアからのエネルギー供給の多くを喪失しても、消費者に安全で安価な燃料を確保するためには、少なくとも短期的、中期的には、他の化石燃料供給源の活用と更なるインフラへの投資が必要だということは厳然たる事実である。より多くのエネルギー供給を求める動きは、もちろんクリーンエネルギーにも及び、ヨーロッパではゼロ炭素エネルギーへの投資を増やし、その目標を前倒しで達成しようとしている。

しかし、掘削と圧送、製油所の限界への挑戦、数十億ドル規模のLNG施設の建設、ヨーロッパにおけるクリーンエネルギー供給の促進といった努力は、エネルギー使用量を削減するためのより重要なプログラムと対をなす必要がある。再生可能エネルギーの拡大と化石燃料との戦いに注目が集まる中、世界は悲しいことに、エネルギーの最も重要な事実の1つを見失っている。石油、ガス、石炭の使用量を削減し、ロシアのエネルギー資源の輸入の必要性を減らすには、効率的な投資と需要の節約が最も安価で迅速な方法だ(言うまでもなく、二酸化炭素排出量も削減できる)。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ヨーロッパの建物で暖房のサーモスタットを摂氏1度(華氏1.8度)調節するだけで、年間100億立方メートルのガス使用を抑えることができるという。ちなみに、バイデンは3月、今年中にヨーロッパに150億立方メートルのガスを供給すると公約している。また、IEAのネットゼロエミッション達成のためのロードマップでは、建物の改修、消費電力の少ない家電製品への切り替え、自動車の燃費基準の引き上げ、産業廃熱回収の改善などの対策を通じて、エネルギー効率が今後10年間で2番目に大きな貢献を果たすとされている。効率化が進むと、その反動でエネルギー使用量が増えることがあるが、これは「リバウンド効果」と呼ばれるもので、効率化と節約による正味の効果は非常に大きく、すぐに利用可能でしかも低コストで利用できる。

確かに、EUのエネルギー安全保障計画(REPowerEU)には、2030年までにEUの2020年の基準シナリオと比較して、効率化のためのエネルギー節約を9~13%に引き上げるという目標が含まれている。例えば、フランスでは、2018年に初めて採用されたアパートの改修と、ガスを使用する効率の悪いボイラーに代わる電気暖房の設置に対する補助金を増やすと発表している。古い建物が多いフランスの建物の改修は、エネルギー使用量削減の可能性が最も高いと専門家は指摘しています。このような努力は、効率性を確保するためのスタート地点に過ぎないにもかかわらず、この危機の中で、ヨーロッパ各国政府は、エネルギー需要よりもエネルギー供給に大きな関心を寄せている。

世界的なエネルギー危機に対する供給中心の対応は、ヨーロッパ以外では更に顕著である。IEAによれば、エネルギー効率化投資の成長率は2022年に鈍化するとされており、2050年までに排出量を正味ゼロにするという気候変動目標を達成するために必要な要素には及んでいない。IEAによれば、「最もクリーンで、最も安価で、最も信頼できるエネルギー源は、各国が使用を避けることができ、一方で市民に十分なエネルギーサービスを提供できるものである」ということだ。世界的な効率化の推進は、気候変動に関する目標を達成するために必要なだけでなく、短期的には、全ての消費国、特にヨーロッパの各消費国がロシアの石油とガスの損失による不足に対処するために、必要なエネルギー供給を解放することができ、また、価格の抑制にもつながる。

現在のように石油採掘とインフラ整備に偏って力を注ぐことは、環境的に悪いだけでなく、半世紀前にエネルギー分野の象徴的存在であるエイモリー・ロヴィンズが警告したように、困難でコスト高になる。1973年の石油危機をきっかけに発表された論稿の中で、ロヴィンズは、世界のエネルギー需要を満たすために、採掘、抽出、産業施設などの大規模プロジェクトという「ハード・パス(hard path)」ではなく、保全、効率、再生可能エネルギーという「ソフト・パス(soft path)」をとるよう、エネルギー分野のリーダーたちに強く求めた。

今日、彼の論稿を読み返すと、ロヴィンズの警告がいかに的確であったか、そしてその警告に耳を傾けていれば、私たちはどれほど幸福になれたか、ということに気づかされる。半世紀前に彼が書いたように、今日、「節約は、通常、政策というより価格によって誘導され、必要であることは認められているが、現実よりも修辞的な優先順位が与えられている」のである。加えて、「優先順位は圧倒的に短期的である」と嘆き、目先の政治的・経済的な不安に応えるために、「積極的な補助金や規制によってエネルギー価格が経済水準や国際水準を大きく下回り、成長が深刻に阻害されないように抑制されている」と指摘した。実際、今日の高値に対応して、政府はエネルギー価格の補助金を出し、燃料税を停止している。市場価格が必要なレヴェルまで上昇しているときに、需要を抑制する努力を怠っているのだ。

また、ロヴィンズは、1976年に気候変動の危険性をいち早く指摘し、「石炭へのシフトは、その時あるいはその後すぐに、地球気候に大きな、そしておそらく取り返しのつかない変化をもたらす」と警告し。彼は「205年のエネルギー収入型経済への橋渡しをするために、化石燃料を短期間かつ控えめに使用する過渡的技術」の利用を提唱しており、これは最近本誌で我々が主張したことである。確かに、原子力発電に断固として反対するなど、ヴィビンズのヴィジョンには問題点も多い。しかし、過去半世紀にわたってエネルギーのリーダーたちが困難な道を選んでこなかったならば、今日のヨーロッパと世界の他の地域は、ロシアのエネルギー供給喪失に対処するためにどれほど良い状態にあっただろうかと考えると反省しなければならない。

エネルギー効率と省エネルギーが、エネルギー使用量と排出量に大きな影響を与えるにもかかわらず、社会や政治の注目を浴びてこなかったのには、多くの理由がある。家主は断熱や改修の費用を負担しなければならないが、借主は光熱費の節約によって利益を得ることが多い。これは経済学者に「プリンシパル・エージェント問題(principal-agent problem)」と呼ばれるものだ。消費者たちは、将来的な総電力コストよりも、家電製品の購入価格に注目する傾向がある。これは、「近視眼的(myopia)」として知られる行動現象である。また、節電の呼びかけは政治的な意味合いが強く、1970年代のエネルギー危機の際、ジミー・カーター米大統領(当時)がカーディガンのセーターを着て犠牲を求めた苦い思い出を呼び起こされる。

「ソフト・パス」を歩むのに最適な時期が数十年前であったとすれば、二番目に最適な時期は今である。効率や節約というと、個人的な犠牲や窮乏を連想する人もいるかもしれないが、より効率的な経済は市民の生活の質を下げる必要はなく、同じかそれ以上の生産高を上げるために、より少ないエネルギーの使用を要求するだけのことなのだ。

サーモスタットの調整など、ささやかな行動の変化が必要な節約もあるが、一人当たりのエネルギー消費量が最も多い国の消費者に、ウクライナ人が命がけで究極の犠牲を払っている時に、消費をもう少しだけ減らすように求めるのは、過大な要求にはならない。今年の冬のヨーロッパのガス危機への対応、燃料費高騰による家計への打撃、ロシアのエネルギー供給停止による経済的打撃など、世界のエネルギー政策指導者は、エネルギー効率の価値を早く再認識し、省エネルギーをロシアの侵略に対抗する強力な武器とすべきであろう。

ジェイソン・ボードフ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学気候専門大学院創設学部長、コロンビア大学国際公共問題大学院国際エネルギー政策センター創設部長。国際公共問題担当職業実行教授。米国家安全保障会議上級部長、バラク・オバマ元大統領上級顧問を務めた。ツイッターアカウント:@JasonBordoff

※メーガン・L・オサリヴァン:ハーヴァード大学ケネディ記念大学院国際問題実行部門ジーン・カークパトリック記念教授。著書に『僥倖: 新しいエネルギーの豊富さが世界の政治を覆し、アメリカの力を強化する方法』がある。ジョージ・W・ブッシュ大統領イラク・アフガニスタン担当国家安全保障問題担当大統領次席補佐官、大統領特別補佐官を務めた。ツイッターアカウント: @OSullivanMeghan

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は「ウクライナ対ロシア」という枠組みを超えて、「西側対それ以外」という構図にもなっている。戦費や武器の支援から見れば、この戦いは「ウクライナ・アメリカ対ロシア」の戦いということになる。アメリカが約6兆円をつぎ込んでいる。

 西側諸国は対ロシア制裁で結束し、ロシアに大打撃を与えようとした。しかし、その効果は限定的だ。ロシア産の石油を西側諸国は禁輸としたが(イギリスは今年いっぱい輸入するとし、ドイツは全面禁輸には踏み切らない)、西側諸国に代わって、中国とインドがロシア産石油を少し安い値段で買い入れを行っており、石油の代金収入が戦費を上回るということが起きている。ロシアは石油の購入をルーブルで行うように要請し、一度大幅に下落したルーブルの価値も上昇した。

 このように、西側諸国の方策は効果を発揮していない。それは、西側以外の、それ以外の国々がロシアに対して積極的に支援をしている訳ではないが、西側の対ロシア制裁に同調しないからだ。その代表格がインド、中国、サウジアラビアといった国々だ。これらの国々が西側に同調しなければ、西側の制裁は効果を持たない。それではこれらの国々を西側の味方に引き入れられるかというと、それは難しい。それぞれの国が自国の国益を守るために行動している。これらの国々にとって西側に同調しないように行動すること、バランスを取ることが国益になるので、そのように行動する。それに対して何からの矯正をすることは難しい。

 下記の論稿にあるドイツとハンガリーはEUNATOの加盟国であり、本来であれば、アメリカとイギリスに同調すべき立場にある。しかし、両国はやはり自国の国益に沿った行動を取っている。ドイツもハンガリーもロシアからのエネルギー資源に依存している。ロシアとは決定的な断絶を避けたいということは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が長期化し、「戦争疲れ」「ゼレンスキー疲れ」がたまっていく中で、西側諸国の結束は揺らいでいくことになるだろう。その結果、現在の世界体制の大きな転換、アメリカの終わりの始まりを印象付けることになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカがロシアに関して味方にしようと試みている5カ国(Five countries US is trying to sway on Russia

ブレット・サミュエルズ、ロウラ・ケリー筆

2022年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3264413-five-countries-us-is-trying-to-sway-on-russia/

ジョー・バイデン政権は、ロシアに対する圧力キャンペーンを支援するために多くの西側同盟国を集めることに成功したが、モスクワのウクライナ侵攻に反対するために他の多くの同盟諸国や主要な競争相手を味方につけることはより困難であることが判明した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「世界の国内総生産50%以上の国々を世界的な同盟に構築したが、失敗とは言えないだろう。誰もそれを失敗とは言わないと思う」と述べた。

それでも米政府関係者は、紛争にほぼ中立の立場を維持しているか、ロシアにさらに圧力をかけるという申し出を断っている世界中の国々と関わってきた。

Still, U.S. officials have engaged with nations around the world that have largely remained neutral in the conflict or declined overtures to further pressure Russia.

これから、ロシアに圧力をかけ、ロシアの侵略による世界的な経済的波及効果を鈍らせるためにバイデン政権が説得を試みている5カ国を紹介する。

(1)インド

バイデン大統領は月曜日、インターネットを通じてインドのナレンドラ・モディ首相と歓談を持った。ダリープ・シン国家安全保障問題担当大統領次席補佐官がインド当局者との会談のためにニューデリーに出張したのは2週間前のことだった。

バイデンは、ロシアの侵攻に反対する民主政治体制諸国の結束をしばしば宣伝してきた。しかし、世界最大の民主政治体制国家であるインドは、ロシアの石油を輸入し続け、ウクライナで行われた人権侵害に関する国連の決議投票では中立を保っている。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「バイデン大統領はモディ首相との会談で、アメリカと同盟諸国が課す制裁の効果を明らかにしようと努め、アメリカはインドのエネルギー輸入の多様化を喜んで支援すると強調した」と記者団に語った。

サキ報道官は「バイデン大統領はまた、ロシアのエネルギーや他の商品の輸入を加速したり増やしたりすることがインドの利益になるとは考えていないと明言した」と述べた。

インドは、ウクライナのブチャで起きた民間人殺害事件を非難し、戦争犯罪の可能性について独立機関による調査を求め、人道的な救援活動を行ったことを強調した。

サキ報道官は続けて「私たちの目的の一つは、それを基礎にして、さらに多くのことを行うよう奨励することだ。だからこそ、指導者同士の対話が重要なのだ」と述べた。

(2)サウジアラビア・アラブ首長国連邦

石油輸出国機構(OPEC+)の中核メンバーで石油資源の豊富な湾岸諸国は、ロシアの石油・ガス輸出を制裁・抑制する取り組みの中で、上昇した価格を引き下げることを目的としてアメリカが世界市場での石油供給を増やすよう要求していることに抵抗している。

特にサウジアラビアは、OPEC+を通じてロシアと結んだ原油生産と価格に関する協定に大きく依存しており、リヤドはエネルギー依存から脱却した経済の多角化の一環として、将来の国内経済計画にそれを織り込んでいる。

ロシアの戦争はまた、『ワシントン・ポスト』紙の記者ジャマル・カショギの殺害におけるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の役割に対するアメリカの非難をめぐり、リヤドとワシントンとの関係全般が冷え込む中で起こったものである。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、ムハンマド王太子が、アメリカがロシアの石油輸入を禁止することについてバイデン大統領と話すのを拒否したと報じた。ホワイトハウスはこの報道を不正確だと述べた。

ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員フセイン・イビッシュは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦のロシアに対する姿勢が失敗であるという考え方に反論し、代わりに「部分的成功」と表現した。

イビッシュは「アラブ首長国連邦とサウジアラビアは曖昧な態度を取っているが、湾岸諸国は、ワシントンや国際社会から突きつけられる厳しい選択に立ち向かう準備を整えている佐中なのだろう」と述べた。

イビッシュは続けて「ウクライナ侵攻はヨーロッパの危機であり、世界の危機ではない、というのが彼らの誤算だったのだろう。彼らは、このような出来事に対して、自分たちはかなり周辺にいると考えていたがそれは間違いだ」と述べた。

イビッシュは、リヤドとアブダビは、バイデン政権からのイランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力からの攻撃に対抗するための安全保障の強化を求めており、アメリカとのそうした取引は、ロシアへのコストを高める行動に彼らを動かす可能性がある、と付け加えた。

イビッシュは次のように述べた。「サウジアラビアが原油を増産し、ロシアとのOPEC+合意を破棄しなければならないかもしれない。それは彼らにとって苦痛で不快なことだろうが、もしそうするならば、少なくとも彼らはワシントンとの前向きなリセットのためにそうしていると確信できるだろう」。

(3)中国

バイデン政権は、中国がロシアに軍事装備や資金援助を行うことを阻止するために、多大な時間とエネルギーを費やしてきた。

バイデン大統領は中国の習近平国家主席と直接会談し、アントニー・ブリンケン国務長官は中国の王毅外相と会談し、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は中国のトップ外交官である楊潔篪とそれぞれ会談した。いずれの場合も、米政府要人たちは北京に対し、ロシアが有利となるような介入をしないよう警告を発した。

バイデン政権高官たちは、中国がロシアとウクライナの紛争に関与しないことを明確に決めているかどうかはまだ不明だと述べている。しかし、これまでのところ、北京はモスクワが要求したとされる軍事援助をまだ送っていない。

ロイター通信は、中国はロシアとの石油契約を尊重しているが、新たな契約にはまだサインしていないと報じている。これは北京が、経済的に関係を持っている西側諸国からの反発の可能性を認識していることの表れである。

バイデン政権のある幹部は、侵攻が始まった直後に記者団に対し、北京がロシアを助けに来ることはないだろうと楽観視していると述べ、「中国はアメリカの制裁の効力を尊重する傾向にある」と指摘した。

(4)ドイツ

ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、キエフへの重要な軍事支援と、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を計画していたガスパイプライン「ノルドストリーム2」の閉鎖によって、ベルリンの歴史的平和主義姿勢を厳しい行動に転じたとして称賛された。

しかし、戦争が7週目に入るとその勢いは弱まり、ドイツは、アメリカやヨーロッパの他の国々が、1日約10億ドル分入ってくるロシアの石油とガスの世界的な輸入を断ち、ロシアの戦費をさらに圧迫するという要求に加わることに反対を表明している。

ドイツは「ノルドストリーム1」パイプラインを通じてロシアの天然ガス供給に依存し続けており、ドイツ政府高官たちは、ヨーロッパで最も人口の多い国にとって蛇口を止めるという選択肢はないと明言している。

連邦下院多数党(民主党)院内総務捨てに―・ホイヤー連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)を団長とする連邦下院議員訪問団は、今週ベルリンに移動し、ヨーロッパへの複数国訪問の一環としてショルツ氏と会談する予定である。

同盟諸国は、ヨーロッパ、特にドイツをロシアのエネルギーから直ちに切り離すことが困難であることを認識している。

イギリスの対ヨーロッパ・北米外交のトップを務めるジェイムズ・クレヴァリーはあるインタヴューの中で、ドイツがこれまで進んできたステップを称賛し、次のように述べた。「ドイツ政府がこれまでの数十年間に行われたあらゆる決定によって作り出された状況の下で生きていることを批判するのは公正かつ合理的ではないと考える」。

クレバリーは「ショルツ首相は、ウクライナ侵攻の直接的な結果として、この1カ月でドイツの外交政策を再定義した」と述べた。

(5)ハンガリー

ハンガリーはNATO加盟国だが、ロシアの侵攻には慎重に対応しており、現在進行中の紛争において、複雑な国家であることが証明されている。

ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は2010年から政権を担っている権威主義的指導者で、ロシアの侵攻を非難しているが、ロシアのウラジミール・プーティン大統領個人に対して発言することは避けている。

ヨーロッパ連合(EU)の一員として、ハンガリーは対ロシア制裁措置の発動に協力した国の一部だが、ハンガリー自身はロシア経済を下支えするための措置をとっている。

オルバン大統領は先週、ロシアのガスをルーブルで購入する用意があると述べた。多くの西側諸国がロシアからのエネルギー購入を制限または完全に断ち、ロシアの通貨を孤立させようとしている時に、この発言はロシアの通貨を安定させる一助となるであろう。

先週、対ロシア制裁に関してアメリカはハンガリーと協力するのかと質問され、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「ハンガリーはNATO加盟国であり、今後もそうあり続ける。私たちは、NATOの防衛や人道支援を含む、様々な二国間および共通の世界的利益について協力を続けている」と答えた。

サキ報道官は続けて「ハンガリーは現在、NATOの戦闘部隊である、アーミー・ストライカー歩兵部隊を駐留させておる。私たちは彼らと定期的に合同訓練を行っており、今後もハンガリーとのパートナーシップを強化するために努力していく」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今回はアメリカとサウジアラビアの関係、更にウクライナ戦争開始以降の両国関係に関する記事を紹介する。長くなってしまって読みにくくなってしまっていることをお詫び申し上げる。ご紹介したい関連記事が複数あってこのように長くなってしまった。
 現在、世界の石油価格は高騰している。新型コロナウイルス感染拡大で石油価格が下落していたが、その騒ぎも収まりつつある中で石油価格が上昇していった。それに加えて2月末からのウクライナ戦争で対ロシア経済制裁と先行き不安のために石油価格は高騰している。

oilpricesgraph202111202204511
石油価格の推移(2021年11月から) 

 アメリカはロシアからの石油が輸入の7%を占めていたがそれが入らなくなったために、これまでさんざん虐めてきたヴェネズエラとの関係修復を試みている。しかし、世界全体では増産まで時間がかかる上に、何より最大の産油国であるサウジアラビアがアメリカに非協力的であるために、石油価格が上昇している。

 サウジアラビアのアメリカに対する非協力的な態度はサウジアラビアの実質的な支配者であるサルマン王太子のバイデン政権に対する怒りが源泉となっている。ジョー・バイデン米大統領は大統領選挙期間中からサウジアラビアとサルマン王太子に対して批判的であり、『ワシントン・ポスト』紙記者だったジャマル・カショギ殺害にサルマン王太子が関与しているというインテリジェンスレポートを公表するということを約束しており、就任後に実際に公表した。また、バイデン政権は、ドナルド・トランプ前政権との違いを強調するためもあり、サウジアラビアの人権状況に批判的となっている。更には、サウジアラビアが関与しているイエメンの内戦でサウジアラビアの立場を支持してこなかった。こうしたことはサルマン王太子とサウジアラビア政府を苛立たせてきた。そして、サルマン王太子の中国とロシアへの接近ということになった。

vladimirputincrownprincealsalman511
プーティンとサルマン王太子
 今回のウクライナ戦争で、アメリカは慌ててサウジアラビアとの関係を改善しようとしている。サルマン王太子とジョー・バイデン米大統領との直接の電話会談を実現させようとしたが、サウジアラビア側から拒否された。バイデン政権はサウジアラビアからしっぺ返しをされている。また、イエメン内戦でイランから支援を受けているフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設に攻撃を加えていることで、「石油の増産したいのだが、フーシ派が邪魔をしてうまくいかない」という大義名分も手に入れた。
 アメリカは理想主義的な建前外交をやって、アメリカ国民と世界の人々の生活を苦境に陥れている。実物を握っている国々はいざとなったら強い。だから、理想主義でどちらか一方に偏っていざとなったらしっぺ返しを食ってしまうという外交は結果としてよくない。汚い、裏がある、両天秤をかけて卑怯だ、そんな人々から嫌われるような外交がいざとなったら強い。「敵とも裏でつながっておく」ことが基本だ。

 

(貼り付けはじめ)

フーシ派からの攻撃の後、サウジアラビアは石油不足について「責任を持たない」と発表(Saudi Arabia says it 'won't bear any responsibility' for oil shortages after Houthi attack

クロエ・フォルマー筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/599014-saudi-arabia-says-it-wont-bear-any

サウジアラビアは、イランに支援されたフーシ派の反政府勢力が国営石油施設を最近攻撃したことによる流通への影響について、イエメンの内戦に対処するアメリカを明らかに非難し、石油増産に対して責任を取らないことを明らかにした。

国営サウジアラビア通信は、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、「石油施設へ攻撃を受けたこともあり、世界市場への石油供給が不足しても、いかなる責任も負わないことを宣言する」と報じている。

サウジアラビア外務省は、「イランに支援されたテロリストのフーシ派民兵から我が国の石油施設が攻撃されたこと」を受けて声明を発表した。

サウジアラビアの指導者たちは、エネルギー市場を安定させ、禁輸されているロシアの石油を相殺するために供給を増やして欲しいというアメリカらの要請に抵抗しているため、ロシアのウクライナ侵攻でアメリカ・サウジ間の緊張は既に高まっている。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日、国営石油大手アラムコが所有する石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、製油所などがドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省は、この攻撃により「製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と述べた。

サウジアラビア外務省は、西側諸国がサウジアラビアと共にイランとフーシを非難し、「世界のエネルギー市場が目撃している、この極めて微妙な状況において、石油供給の安全に対する直接的な脅威となる彼らの悪意ある攻撃を抑止する」よう呼びかけた。

2018年にイスタンブールのサウジアラビア領事館に誘い込まれて殺害された『ワシントン・ポスト』紙のジャーナリスト、ジャマル・カショギの殺害以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めている。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会において超党派の議員たちからの批判を招き、それがまた両国間の争いに拍車をかけている。

しかし、アメリカのジョー・バイデン政権は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領に最大限の圧力をかけるために外交政策を立て直し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子との関係を再構築しようとしていると複数のメディアが報じている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は日曜日、ここ数週間にわたり、アメリカはサウジアラビアに「相当数」のパトリオット迎撃ミサイルを送り込んだと報じた。サウジアラビア政府はアメリカ政府に対してフーシ派からの攻撃に対処するための防衛的な武器を送るように求めていた。

=====

フーシ派勢力がサウジアラビアのエネルギー施設に複数のミサイルを発射(Houthi's fire missiles at Saudi energy facility

オラミフィハーン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/middle-east-north-africa/598959-houthis-fire-missiles-at-saudi-energy-facility?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ロイター通信は、サウジアラビア政府は、イエメンのイランから支援を受けているフーシ派が土曜日の夜から日曜日の朝にかけて、様々なエネルギー施設や淡水化施設に向けて複数のミサイルを発射したと発表したと報じた。

サウジアラビアのエネルギー省は日曜日に発表した声明で、ジザン地方の石油製品流通ターミナル、天然ガスプラント、紅海のヤンブ港にあるヤスレフ製油所がドローンとミサイルによる攻撃を受けたと発表した。

サウジアラビアのエネルギー省からの声明には、「ヤスレフ製油所への攻撃により、製油所の生産が一時的に減少したが、これは在庫から補填される」と書かれている。

サウジアラビアのエネルギー省はまた、多くの石油物流工場が攻撃され、ある工場で火災が発生したと付け加えた。サウジアラビア政府のある高官によると、火災は制御され、死傷者は報告されていないということだ。

フーシ派のスポークスマンであるヤシャ・サレアは、過激派グループがサウジアラビアで多くの施設を攻撃したことを認めた。

サウジアラビア主導の軍事連合によると、武装勢力フーシ派はこの他、アル・シャキークの海水淡水化プラント、ダーラン・アル・ジャヌブの発電所、カミス・ムシャイトのガス施設などを攻撃対象として攻撃を加えてきた。ロイター通信によると、サウジアラビア国防軍は弾道ミサイル1発とドローン9機を迎撃したと報じている。

ハンス・グルンドベルグ国連特使は、数万人が死亡し、数百万人が飢餓に直面している7年間の戦闘を終わらせるための条約の可能性について、双方が協議したと述べたとロイター通信は報じている。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は日曜日の声明の中で、フーシ派からの攻撃を非難した。

サリヴァン補佐官は声明の中で、「アメリカは内戦終結に向けた取り組みを全面的に支持し、フーシ派の攻撃から自国の領土を守るパートナーを今後も全面的に支援していく。国際社会にも同じことをするよう求める」と述べた。

=====

ムハンマド・ビン・サルマンはバイデンに対して影響力を持ち、それを利用している(Mohammed bin Salman Has Leverage on Biden—and Is Using It

-サウジアラビアの原油価格引き下げへの協力は欧米諸国の価値観の犠牲の上に成り立つ。

アンチャル・ヴォウラ筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/24/mohammed-bin-salman-saudi-ukraine-oil-biden-opec/?tpcc=recirc_trending062921

ウクライナ侵攻後にロシアへ科された制裁によって、世界のエネルギー市場には大混乱がもたらされた。西側諸国は、1バレル140ドル近くまで高騰した原油価格をどう抑制するか、ロシアのエネルギー供給への依存からどのように脱するかでパニックに陥った。アメリカとイギリスはロシアの石油購入の禁止を発表し、伝統的な同盟国であるサウジアラビアに対して石油の供給を開始し、世界の石油価格を下げるように説得することに躍起となっている。

しかし、最大の産油国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦は、この危機を自分たちの好機と捉えて、それに応じようとはしなかった。アメリカと欧米諸国へのメッセージは明白である。サウジアラビアは、人権侵害で批判され続ける対象として扱われるには、あまりにも大きな影響力を地政学的に持っている、ということである。

サウジアラビアはアラブ首長国連邦以上に油田の鍵を握っており、油田を開放し、親ロシアの石油政策を転換する前に、アメリカから大きな譲歩を得ることを期待している。エネルギー安全保障のために人権が再び犠牲になることを、活動家たちは恐れている。アメリカもイギリスも、サウジアラビアが3月中旬に行った81人の大量処刑を公然と批判していない。欧米諸国の対サウジアラビア政策は、消費者の財布への圧力を緩和するためのおだてが中心となっている。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は日量300万バレル以上の余力を持ち、その一部を放出することで原油価格を下げることができる。さらに、ロシアは日量約500万バレル、その8割近くを欧州に輸出しているため、リヤドとアブダビが支援を確約すれば、欧州諸国の懸念を払拭し、ロシアへの依存を減らすよう促すことができる。

しかし、湾岸諸国は、ロシアを含む石油カルテルの拡大版である「OPEC+1」への参加を理由に、これを控えている。その理由は、ウクライナ戦争は今のところ石油の供給に大きな支障をきたしていないため、生産量を増やす必要がないためだとしている。しかし、専門家たちは、これは世界政治の大きな変化を反映した政治的決断であると見ている。ロシアの戦争マシーンをも利する価格を維持する選択は、湾岸諸国の独裁者たちがもはやアメリカの緊密な同盟諸国の地位にいる必要性を感じず、同じような権威主義者たちとの新たな同盟を受け入れていることを示すものである。過去に何度か、サウジアラビアの支配者はアメリカの同盟諸国を喜ばせるために増産や減産を行ったことがある。

しかし今回、サウジアラビアの事実上の支配者であるムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ジョー・バイデン米大統領に復讐をするチャンスが到来したと見ているようだ。サルマンはこれまでバイデンから数々の侮辱を受け、優遇されてこなかったと考えているようだ。バイデンはまだ大統領選挙の候補者だった時期に、サウジアラビアをパーリア国家(pariah state 訳者註:国際社会から疎外される国家)と評し、大統領就任後にサウジアラビアの反体制派でワシントン・ポスト紙の記者ジャマル・カショギの暗殺に王太子が関与したとする情報報告書を公開した。さらに、サウジアラビアもアラブ首長国連邦も、イラン核合意の再開の可能性についての懸念を持っているがこれは無視され、イエメンのフーシ派が自国の船や都市を攻撃したことに対してアメリカが行動を起こさないことには、軍事同盟国としての義務を果たさなかったと感じたという。最近では、フーシ派を指定テロリストのリストに入れ続けて欲しいという嘆願さえもワシントンによって無視された。

ロシアのプーティン大統領の戦争をきっかけに燃料価格が上昇したため、ホワイトハウスはバイデンと不貞腐れた王太子の電話会談を実現しようと奔走したが拒否された。しかし、サウジアラビアの後継者サルマンはカショギ殺害を命じたという疑惑を通してプーティンの側に立ち、女性人権活動家が逮捕され囚人が大量に処刑されても非難を囁くこともなかった。サルマンはプーティンの緊密な同盟者と見られることに全く不安を感じていないのである。

サウジアラビアが同じ権威主義者プーティンに近づいたのは、当時のバラク・オバマ米大統領との関係が悪化した2015年に遡る。その1年後、ロシアがOPECに加盟した。リヤドはその後、モスクワとの関係を強化する一方、アメリカとの関係は、オバマ時代のイランとの核合意から離脱したドナルド・トランプ米大統領の在任中に改善し、バイデンが指揮を執って合意復活のための協議を再開すると再び悪化するなど、一進一退を繰り返している。トランプ政権時代、ムハンマド・ビン・サルマンは改革者として描かれていたが、バイデン政権下では、サウジアラビアのイエメン攻撃で民間人が死亡したことや、自国内の人権侵害で再び厳しく批判されるようになった。

クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの共同設立者であり上級副会長を務めるトリタ・パルシは、サウジアラビアがロシアを支持している理由は、サルマン王太子がロシア大統領の地位をプーティンが継続し、アメリカで政権交代が起きることを確信しているからだと述べている。

パルシは次のように発言している。「サウジアラビアの王太子サルマンはプーティンに賭けている。サルマンはプーティンを信じているだけでなく、共和党が中間選挙で勝利し、バイデンがレイムダックになることを望んでいる。2025年までに、バイデンと民主党は政権を失い、プーティンはロシアの大統領に留まるとモハメド・ビン・サルマン王太子は信じているようだ」。

今回の危機は、アメリカが主張するエネルギーの独立性を改めて認識し評価することを余儀なくさせた。新型コロナウイルス感染拡大によって大きな損失を被った国内のエネルギー産業をよりよく管理するために、より首尾一貫した長期計画を打ち出すか、口を閉じて権威主義者たちを容認するかのどちらかでなければならない。

エネルギー分野の専門家たちによれば、いずれにせよ、米国のフラッキング企業(訳者註:シェールガス採掘を行う企業)が新たな井戸を掘るには数カ月かかるという。イランやヴェネズエラに対する制裁が解除されたとしても、その石油を世界市場に供給できるようになるにはまだ時間がかかるだろう。先週末、ドイツはカタールと液化天然ガス(LNG)輸入の長期契約に調印した。カタールはロシア、イランに次いで3番目に大きなガス埋蔵量を持つ国であり、この契約によりドイツは液化天然ガスを迅速に輸入することができる。この協定により、ドイツはカタールのガスを輸入できるように2つの液化天然ガス基地の建設を急ぐが、それでもそのガスがドイツの家庭に供給されるまでには何年もかかるだろう。これまでドイツは、パイプラインで輸送される安価なロシアのガスに頼っていた。

現在世界最大の産油企業であるサウジアラムコは、2021年に過去最高益となる1100億ドルを稼ぎ出し、前年の490億ドルから124%増の純利益を記録した。サウジアラムコは石油の増産に向けた一般的な投資を発表したが、短期的に供給を増やすことは何もしていない。サウジアラムコのアミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は、「私たちは、エネルギー安全保障が世界中の何十億人もの人々にとって最も重要であると認識しており、そのために原油生産能力の増強に引き続き取り組んでいる」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)は、今年末までにロシアから少なくとも日量150万バレルの原油が失われる可能性があると発表している。それが更なる価格高騰につながることは間違いない。OPEC+は次回今月末に会合を開き、状況を把握して原油の生産量を決めると見られている。しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の要求についてアメリカに耳を傾けてもらえたとどれだけ感じられるかに大きく左右される。

彼らは、アメリカが核取引に関する立場を変えないことを確信しているが、イエメンのフーシ派との戦いにおいて湾岸諸国を支援し、人権侵害に対する批判を減らすことができるだろうか? 厳しい国益の世界で最も低い位置にあるのは、個人の自由である。サウジアラビアの活動家たちは、世界の石油の安定と価格の引き下げのために、再び代償を払うことになるかもしれない。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、バイデンからそれ以上のものを求めるかもしれない。

=====

バイデンはロシアを支持するサウジアラビアを罰するべきだ(Biden Should Punish Saudi Arabia for Backing Russia

-リヤドは石油市場に変化をもたらすことができたが、アメリカではなく、権威主義者の仲間に味方することを選択した。

ハリド・アル・ジャブリ、アニール・シーライン筆

2022年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/22/biden-mbs-oil-saudi-arabia-russia-ukraine/

アメリカとその同盟諸国が一致団結してロシアのウクライナ侵攻に反対している中、サウジアラビアはロシアに味方している。侵略を公に非難せず、OPEC+協定へのコミットメントを繰り返したことで、サウジアラビア政府はアメリカとの長年のパートナーシップに亀裂が入っていることを露呈した。

原油増産の懇願にもかかわらず、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子は、ロシアのプーティン大統領と会談した1週間後に、ジョー・バイデン米大統領との会談を拒否したとされる。ロシアの石油の補償を拒否することで、王太子は国際社会が科す制裁に直面してエネルギーを武器として、エネルギーに依存するヨーロッパ諸国をロシアの石油とガスの人質にすることを許可し、プーティンの侵略を助長している。

月曜日になっても、サウジアラビア政府はロシアの行動を非難することを拒否している。その代わりに、サウジアラビアの外務大臣はロシア側と会談し、両国の二国間関係とそれを「強化・統合する方策」を確認した。

サウジアラビアの強硬姿勢にもかかわらず、バイデン政権は最近、フーシ派がサウジアラビアの水とエネルギー施設を攻撃したため、パトリオット対ミサイルシステムをサウジアラビアに追加配置した。サウジアラビアは、アメリカの保護が必要であることを表明し、これらの攻撃による石油供給不足の責任を否定する声明を出した。米国は、アラムコによる投資拡大の約束にもかかわらず、リヤドによる増産の保証を報告することなく防衛策を送ったのである。

バイデン米大統領から要求を受けてもサウジアラビアが石油の増産に消極的なのは、忠誠心が変化していることを示す最新の兆候である。70年にわたるパートナーシップを通じて、ワシントンはリヤドの主要な安全保障の保証人として機能し、その見返りとして、サウジアラビアの歴代国王はエネルギー問題でアメリカと緊密に協調してきた。しかし、ムハンマド・ビン・サルマン王太子が権力を掌握して以降、二国間関係は、7年間続くイエメン戦争などサウジアラビアの無謀な外交政策の決定や、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害で最も顕著に表れた人権状況の悪化によってますます緊迫してきた。

複雑な関係にもかかわらず、バイデン政権関係者の多くは、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカのコミットメントを繰り返し表明し続けた。このような発言は、フーシの越境ミサイルやドローンによる攻撃からサウジを防衛するために最近6億5000万ドルの武器売却を行うなど、サウジアラビア主導のイエメン戦争に対するアメリカの継続的支援に裏打ちされたものである。

更に言えば、アメリカは最近、カタールを重要な非NATO加盟国に指定し、1月にアブダビで起きたフーシ派の無人機攻撃を受けてアラブ首長国連邦に追加の軍事資産を動員するなど、他の湾岸諸国のパートナーの安全確保に献身的であることを示している。このような安心感を持ちながらも、サウジアラビアは石油の増産と引き換えにイエメンでの戦争に対するアメリカの支持をもっと強要しようとしている。

現実には、サウジアラビアはアメリカの安全保障に関する保証を疑っていない。王太子が望んでいるのは、自らの支配を確実にすることである。アメリカは、湾岸諸国のパートナー諸国の物理的な安全を支援するために行動することはあっても、権威主義的なアラブの指導者が行うように、自分たちの好む体制を守るために民間人を攻撃することはないことを示してきた。湾岸諸国の支配者たちは、「アラブの春」におけるアメリカの中立的な姿勢が、エジプトにおけるワシントンの長年にわたるパートナー、ホスニー・ムバラクの失脚を許したと考えている

サウジアラビアの王室は、2011年にサウジアラビアが直接軍事介入したことでバーレーンのアル・ハリファ王家を救うことができた、マナーマの港に米海軍の第5艦隊がいたにもかかわらず、アメリカは役に立たなかったと考えている。それ以来、サウジアラビアの対米不信と国内の異論に対するパラノイア(被害者意識)は高まる一方である。サウジアラビアはサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン王太子の統治下で、ロシアや中国との密接な関係の育成を加速させている。

アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史も、湾岸における意味のある軍事的プレゼンスもない。

プーティンや中国の習近平のように、サウジアラビアの歴代の支配者たちは資本主義における独裁的モデルを好み、権威主義体制の生存と国家間関係からの人権の排除に基づいた代替的な世界秩序を構築しているのである。

中国やロシアが両国内のイスラム系少数民族を虐待していることに対してサウジアラビアや他の主要イスラム国家が無関心であることは、これらの政府が人権に反対していることの相性の良さを示している。中国とロシアがイスラム主義運動を政権の不安定要因と考えて偏執狂的に恐れているが、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はこうした考えを共有している。

サウジアラビアの国王と王太子は、イスラム教の重要性をサウジアラビアの国家戦略から切り離し、王室の役割を中心に据えることで、イスラム教徒を積極的に疎外しようとしてきた。例えば、2022年2月22日、サウジアラビアは初めて建国記念日を祝った。この新しい祝日は、サウジアラビアがワッハーブ派の創始者であるムハンマド・イブン・アル・ワッハーブと提携し、それによってサウジアラビアの宗教的正当性を高め、領土拡大を開始した1744年ではなく、ムハンマド・ビン・サウドが支配権を得た1727年を起源とするものであった。

西側諸国の多くは、サウジアラビア政府が宗教警察のようなアクターを無力化し、厳しい男女分離を若干緩和する決定を歓迎したが、これらの変化はまた、前例のないレヴェルの内部抑圧に対応している。人権活動家の投獄、海外での反体制派に対する弾圧、そして最近の81名の囚人の大量処刑は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子の意図の本質を明らかにしている。それは、かつて国家権力を握っていた聖職者や保守派エリートを含む全ての反対意見を、より西側の社会規範の皮をかぶって黙らせることだ。

カショギの殺害をめぐる長引く憤慨と政治的疎外は、王太子に、欧米諸国から見たサウジアラビアのブランドを再構築する努力は失敗したと確信させたのかもしれない。その代わりに、中国とロシアは、ジャーナリストを殺害した皇太子を決して非難しないパートナーである。ロシアの場合、最近の歴史では、その行為すらも支持する可能性さえある。

しかし、中国とロシアに安全保障の保証に賭けるのはギャンブルである。アメリカと異なり、ロシアと中国にはサウジアラビアを保護した歴史もなければ、湾岸地域における軍事的なプレゼンスもない。仮にサウジアラビアが米国製の軍備から移行する場合、そのプロセスには数十年と数千億ドルを要するだろう。

更に言えば、中国とロシアはイランと緊密な互恵関係にあり、サウジアラビアの顔色をうかがってこの関係を犠牲にすることはないだろう。サウジアラビアは、アメリカと対話する際、イランやイランが支援する集団に対するアメリカの保護をこれまで以上に保証するよう主張してきた。リヤドが北京やモスクワとの提携のためにそうした懸念を払拭したいと望んでいるとすれば、こうした姿勢はテヘランに対するアメリカの不信感を煽ることが主な目的であることが明らかになるであろう。

サルマン王太子のイランへの不安は本物だとしても、それ以上に国内状況への不安もまた大きい。そのためには、民間人に多大な犠牲を強いてでもシリアのアサド政権を維持しようとする姿勢を示したプーティンのようなパートナーが望ましい。今のうちにロシアと手を組んでおけば、サウジアラビア市民の大規模な抗議行動など、いざというときにクレムリンが助けてくれるだろうと期待しているのだ。

現在の米国のサウジアラビア宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているという王太子の認識を強めているだけのことだ。

ムハンマド・ビン・サルマン王太子は、任期付きで選出された欧米諸国の政府高官たちのためにプーティンと敵対するリスクを冒すよりも、むしろプーティン支持という長期的なギャンブルに出るだろう。ボリス・ジョンソン英首相やジェイク・サリヴァン米国家安全保障問題担当大統領補佐官、ブレット・マクガーク米国家安全保障会議中東担当調整官らアメリカ政府高官たちによる最近の直接の懇請の失敗や、アントニー・ブリンケン米国務長官との面会を拒否したことは、サウジアラビア王太子が心を決めていることの証拠である。プーティンのエネルギー力を弱め、ロシアの石油ダラーの生命線を断つような石油政策を採用することはないだろう。彼は、ワシントンよりモスクワを選んだのだ。

同様に、バイデン政権がヨーロッパの同盟諸国にロシアの化石燃料を手放すよう圧力をかけているこの時期に、アメリカ政府がサウジアラビアに石油を懇願するのは止めるべきだ。アメリカの民主政治体制とサウジアラビアの権威主義体制は相容れず、長い間その関係を緊張させてきた。アメリカがサウジアラビアに石油をねだるのを止めるのは、もう過去のことだ。もう一つの残忍な炭化水素を基盤としている独裁国家に力を与えている場合ではないのだ。

ロシアの石油をサウジアラビア、イラン、ヴェネズエラの石油に置き換えるという不愉快な見通しに直面したとき、イラン核取引に再び参加し、イランの化石燃料を世界市場に戻すことは、最近の価格上昇に対処するためという理由はあるにしても、最悪の選択だ。イラン産原油の購入は、再交渉された核取引の条件によって制約されたままである。一方、サウジアラビア(またはヴェネズエラ)の要求に応じれば、アメリカが懸念する分野に対処するための追加の安全措置はないことになる。長期的には、バイデンは化石燃料への依存を減らし、それによって避けることができない石油価格ショックからアメリカ経済を守るよう努力しなければならない。そうしてこそ、アメリカ政府は石油を保有する権威主義者たちとの偽善的な取引を止めることができる。

リヤドは、最近の関係の冷え込みにもかかわらず、依然としてワシントンの保護を当然と考えているようだ。その理由の一つは、カショギの殺害とイエメンの荒廃についてサルマン王太子の責任を追及するというバイデン大統領の約束が守られなかったことが挙げられる。

現在のアメリカのサウジアラビアに対する宥和政策は、リヤドがワシントンを必要としている以上にバイデンが自分を必要としているというムハンマド・ビン・サルマン王太子の認識を強めるだけであり、この見解は、アメリカ政府が自分を支援し続ける以外に選択肢がないと考えて、ロシアや中国とより緊密に提携することを促すだろう。

その代わり、バイデンはこの機会に、全ての武器売却を中止し、サウジアラビア軍への保守(メンテナンス)契約を停止するなど、アメリカとサウジアラビア王国の関係を根本的に見直すべきだ。そうすることで、リヤドに対して唯一の安定した安全保障上のパートナーを失う危険性があることを示すことができる。

もし、サルマン王太子が独裁者たちへの支援を強化するならば、アメリカにとって大きな損失にはならないだろう。

※ハリド・アル・ジャブリは、医療技術の起業家であり、心臓専門医でもある。サウジアラビアから追放され、兄弟2人が政治犯となっている。ツイッターアカウント:@JabriMD

※アニール・シーラインはクインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフト研究員である。ツイッターアカウント:@AnnelleSheline

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻に伴う経済制裁として、欧米諸国を中心にロシアからの石油輸入を禁止する措置を取る国が多く出ている。一方で、中国、インド、メキシコ、中東諸国、イスラエル、南アフリカ、ブラジルといった国々は慎重な態度を保っている。結果として、石油価格が高騰し、物価高(インフレーション)に拍車をかけている。エネルギーや物流コストを押し上げることで、私たちの生活に大打撃を与えることになる。ロシアへの厳しい制裁に乗り出していない国々に対してはロシアも様々な方法で石油や天然資源を現在よりも安い価格で提供するということを行うだろう。欧米諸国はそうした動きを批判するだろうが、そうした国々にまで経済制裁を科すということになれば、世界経済の混沌はますます深刻化する。

 アメリカのジョー・バイデン政権は中東諸国に石油の増産を求めているが、アメリカとサウジアラビアとの関係は緊張関係にあり、この試みもうまくいっていない。民主党の一部議員は中東諸国における人権状況を批判しており、そうした国々にいざとなったら膝を屈して石油の増産をお願いしなければならないということに不満を高めているようだ。また、サウジアラビア出身のジャーナリストだったジャマル・カショギが殺害された事件もアメリカとサウジアラビアとの関係を悪化させる原因となっている。

 サウジアラビアは高みの見物を決め込んでいる。石油価格が高騰すれば利益は勝手に転がり込んでくる。何もわざわざ石油の増産によって石油価格を安くする必要などない。特にアメリカの今の政権は自分たちを批判してきた民主党だ。何を協力してやる必要があるのかということになる。

 国際関係は複雑であり、学級会的な正義感や単純な感情論では動かない。このことを私たちはよく理解しておく必要がある。

(貼り付けはじめ)

アメリカ・サウジアラビア間の緊張関係は石油増産への動きを複雑化させている(US-Saudi tensions complicate push for more oil

ロウラ・ケリー、レイチェル・フラジン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598828-us-saudi-tensions-complicate-push-for-more-oil

サウジアラビアとアメリカとの緊張関係は、バイデン政権がリヤドに石油生産の強化を説得する努力を複雑にしている。サウジアラビアが石油増産をすれば、ウクライナでのロシアの戦争によって悪化した物価高騰の中で、消費者にある程度の救済を与える可能性がある。

2018年に『ワシントン・ポスト』紙所属のジャーナリスト、ジャマル・カショギがイスタンブールのサウジ領事館に誘い込まれて殺害されて以来、アメリカ政府はサウジアラビアへの批判を強めてきた。

サウジアラビアの人権記録やイエメン内戦をめぐる緊張が、アメリカ連邦議会から超党派で批判され、アメリカとサウジアラビアの間での争いに拍車をかけている。

ジョー・バイデン政権はサウジアラビアとアラブ首長国連邦に増産を求めているが、アメリカとサウジアラビアとの間の緊張関係のために、苦境に追い込まれている。

バラク・オバマ政権で人権問題の最高責任者を務めたトム・マリノウスキー下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は今週、記者団に「サウジアラビアに石油の増産を求めなければならないのは嫌なことだ」と述べた。

マリノウスキー議員はまた「バイデン政権が、私の選挙区の有権者たちが給油所で搾取されないように、サウジアラビアとの関係をどう利用するかを考えなければならないのが嫌だ」とも述べた。

サウジアラビアが戦略的石油備蓄(strategic oil reserves)を支配しているため、中間選挙を前に、インフレーションとガソリン価格の高騰の中で消費者を少しでも救済するよう圧力を受けているバイデン政権は、リヤドに対する戦略を見直す必要に迫られるかもしれない。

バイデン大統領は、リヤドの人権記録に対する懸念を表明する一方で、安全保障上の利益とエネルギー需要の共有に焦点を当てた現実的な関係を再構築しようとしている。

これは、トランプ政権がリヤドに対して過度に友好的で個人的な取引を行い、イエメンの壊滅的な内戦でサウジアラビア主導の攻撃を無条件で支持したこと(carte blanche support)からの急反転を意味する。

しかし、バイデンの戦略は今、世界的に必要な時期に彼自身の政権を不利な立場に追い込んでいるように見える。

王国の実質的な支配者であり、後継者候補でもあるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ロシアのウクライナ侵攻の初期に、ロシアへの支援活動の一環としてバイデンからの電話を拒否したと報じられた。

ホワイトハウスはこの『ウォールストリート・ジャーナル』紙の報道に対して反論し、ジェン・サキ報道官は「不正確」と述べた。

サキ報道官は「大統領の関心は、今後、私たちの関係を前進させること、つまり、私たちがどこで協力できるのか、経済や国内の安全保障でどう協力できるかということにある。大統領は、この関係が続くことを期待している」と先週のブリーフィングで記者団に語った。

ロシアによるウクライナ衣侵略によって悪化したガソリン価格の高騰は、産油国の主要グループであるOPEC+のメンバーであるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を戦略的な立場に立たせることになった。

サウジアラビアとアラブ首長国連邦は「余剰生産能力(spare capacity)」を持っているため、原油を市場に対して即座に追加供給し、それを一時期維持することができる。

しかし、ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員のフセイン・イビッシュによれば、リヤドとアブダビは両国それぞれの経済を強化するためにロシアと交わした合意の一環として、供給量の増加を求める声に抵抗してきたという。

イビッシュは最新の論文の中で「サウジアラビアとUAEは、国家発展と経済移行計画の基礎として、ロシアと締結したOPEC+の石油生産協定に依存している」と書いている。

サウジとアラブ首長国連邦は、ロシアの侵攻を非難する露骨な声明を出すことにも抵抗している。その代わり、両国のトップはアメリカを批判している。

カショギを「捕獲または殺害」する計画を承認したとアメリカの情報機関が発表したムハンマド皇太子は、今月出版された『アトランティック』誌の長時間におよぶインタヴューで、バイデン大統領が自分をどう思っているかについて、「単純に」気にしないと述べ、アメリカがサウジ王政を遠ざけることがバイデン大統領を傷つけることになると示唆した。

「アメリカの国益を考えるのは彼次第だ」と同誌は彼の言葉を引用したが、ムハンマド皇太子は肩をすくめながら「まぁ頑張ってみれば」と述べた

アメリカ政府の高官たちは2月17日に最後にリヤドを訪問し、ロシアの侵攻を前にサウジアラビアに石油の増産を求めようとした。国務省のネッド・プライス報道官は今週、「私たちは日常的にサウジアラビアのパートナーと連絡を取り合っている」と述べた。

しかし、サウジアラビアとアラブ首長国連邦はアメリカへの不満を解消することに熱心なように思われる。

ユセフ・アル・オタイバ駐米アラブ首長国連邦大使は今月、ワシントンとアブダビが「ストレス耐性テスト」を受けていると述べたと報じられている。

「しかし、私たちはそこから抜け出し、より良い場所にたどり着くと確信している」とアブダビで開催された防衛会議で述べたとも報じられた。

アラブ首長国連邦は、アラブ首長国連邦へのF-35戦闘機の納入を承認するようバイデン政権に求めている。また、バイデン大統領が取り消したイエメンのフーシ派分離主義勢力を外国テロ組織として再指定するようバイデンに迫っている。

バイデン大統領はテロリストリストの再指定を検討していると述べたが、人権団体や民主党議員の一部は人道支援の提供を妨げることになると警告している。

ワシントン近東政策研究所の研究員で、財務省でイスラエルと湾岸諸国を担当の高官を務めたキャサリン・バウアーは、アメリカと湾岸諸国の間の特定の緊張は、この地域からのアメリカの後退という、より大きな感情の一部であると指摘する。

バウアーは「アメリカが十分な注意を払っていないという感覚がそうだ。アメリカが十分な注意を払っていないという感覚は、アメリカが過去に最も信頼できるパートナーでなかったという感覚に拍車をかけると思う」と述べた。

しかし、湾岸諸国との関係を改善し、石油の生産量を増やすことは、ロシアのエネルギー輸出を受け入れることに等しい、それは両者が重大な人権侵害に責任があるからだと考える人たちもいる。

複数の人権団体は、サウジアラビア主導の空爆によって何千人もの民間人が犠牲になっており、この戦禍の国が世界最悪の人道危機と分類されていることに加え、無差別暴力が形成されているということを記録している。バイデン大統領は就任1カ月でイエメンにおけるサウジアラビアの攻撃作戦に対するアメリカからの軍事支援を終了した。

「クインシー・インスティテュート・フォ・レスポンシブル・ステイトクラフトの上級研究員であるウィリアム・ハートゥングは、「サウジアラビアがイエメンで行ってきたことは、実際にはもっと悪いことだと考えているが、あまり注目されていないのだ」と述べた。

ハートゥングは続けて「ロシアが感じている圧力のほんの一部でもサウジアラビアにかければ、イエメンでの殺害を食い止めるチャンスは十分にあると思う」と述べた。

一方で、共和党側は、ガソリン価格の高騰をバイデンの責任として非難することを重要な攻撃戦略としている。

バイデンの政策よりもむしろ、複数の国際的な要因が価格高騰の主な原因である。

共和党員も一部の政権関係者も、米国での掘削をもっと進めるよう求めている。

エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は、今月の業界会議で、「私たちは戦争状態にあり、緊急事態であり、責任を持って短期的な供給を増やさなければならない」と述べている。

これはギリシャを含むヨーロッパの一部のアメリカの同盟諸国から支持されている主張である。

ギリシャのバルヴィシオティス・ミルティアディス外務副大臣は今週ワシントンで行った、本誌とのインタヴューの中で、「石油の輸入をロシアやペルシア湾岸諸国に依存すべきではないと思う」と述べた。

ミルティアディスは更に、「私たちは、システムをより安定させるために、目に見える、身近なエネルギー資源を開発しなければならない」とも語った。

しかし、アメリカ企業がより多くの石油を増産化するには時間がかかるため、バイデン政権は最も即効性のある解決策を模索している。

NATO大使のカート・ヴォルカーは、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー不足の代替を湾岸諸国に求めるというバイデン政権の戦略は正しいと指摘する。彼は、ヨーロッパ連合とイギリスもバイデンに倣ってロシアの石油と天然ガスの輸入を禁止すべきだと主張した。

ヴォルカーは「私はそれが正しいことだと考える。石油と天然ガスの市場について全員と話し合うべきだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ