古村治彦です。
2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今年実施されるアメリカ大統領選挙についての分析も行いました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
米大統領選挙共和党予備選挙は、ドナルド・トランプ前大統領が4連勝となった。既に有力なライヴァルたちは選挙戦から撤退し、ニッキー・ヘイリー元米国連大使・元サウスカロライナ州知事しか残っていない。先週末、サウスカロライナ州で共和党予備選挙が実施された。結果はトランプの圧勝となった。ヘイリーは地元サウスカロライナ州でも敗北を喫し、選挙戦からの撤退が話題に上がっている。トランプの共和党予備選挙の勝利と大統領選挙本選挙候補者指名が確実視されている。これで、大統領選挙本選挙は、民主党のジョー・バイデン大統領対共和党のドナルド・トランプ前大統領の戦いとなる。
共和党の反ポピュリズム勢力・反トランプ勢力の旗頭であるコーク一族は、ヘイリーに資金提供を行ってきたが、サウスカロライナ州共和党予備選挙でのヘイリーの敗北を受けて、資金提供を停止すると発表した。大統領選挙でトランプを止めることは不可能だということを敵であるコーク一族も認めたことになる。
左がデイヴィッド・コーク(故人)、右がチャールズ・コーク(コーク系の総帥)
コーク一族の資金ネットワークは、連邦下院共和党の議員たちで構成する、議員連盟であるフリーダム・コーカスの議員たちの当選と新しい議員たちの当選を目指すことになる。フリーダム・コーカスは日本では親トランプ派とされているが、実態は、コーク一族の資金が入っている反トランプ派である。それなのに、日本で親トランプ派とされているのは、共和党エスタブリッシュメントに反対する姿勢のために、親トランプ派の議員たちが入っているからである。フリーダム・コーカスは反トランプ派・反エスタブリッシュメントである。詳しく知りたい方は、私が翻訳した『アメリカの真の支配者
コーク一族』(講談社)と、拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をお読みいただきたい。
(貼り付けはじめ)
大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙の5つのポイント(Five
takeaways from the South Carolina GOP primary)
ナイオール・スタンジ筆
2024年2月24日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/4487698-five-takeaways-from-the-south-carolina-gop-primary/
サウスカロライナ州チャールストン発。土曜日に行われた大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が対抗馬のニッキー・ヘイリーを打ち負かし、圧勝した。
アメリカ東部標準時の午後7時に投票が締め切られた瞬間、トランプの選挙戦での勝利が決まった。午後10時前に開票率が83%に達した時点で、トランプは、ヘイリーに21ポイントの差をつけて圧勝した。
大統領選挙ミシガン州共和党予備選挙は来週火曜日に行われる。そして、3月5日は10以上の州で投票が行われるスーパーチューズデーとなる。
サウスカロライナ州での予備選挙についてこれから5つのポイントを挙げていく。
(1)トランプは地滑り的な勝利によって、候補者指名への最終経路に入った(Trump’s
landslide puts him on a glide path to nomination)
よほどの重大な出来事が起きない限り、トランプが2024年大統領選挙の共和党の指名候補となるのは間違いのないところだ。
トランプ前大統領はこれまでのところ、予備選挙が4州で行われ、4連勝している。サウスカロライナ州では、ヘイリーが知事として2度当選した実績があったが、トランプはヘイリーを叩きのめした。
コロンビアで行われたトランプの勝利演説では、サウスカロライナ州の共和党エスタブリッシュメントがどの程度トランプの後ろ盾になっているかが明らかになった。ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、ヘンリー・マクマスター州知事(共和党)と一緒に壇上に立ち、トランプに代わって短いスピーチを行った。
チャールストンでは、ヘイリーがたった一人で壇上に立ち、少数の聴衆を前に演説した。
ヘイリーは、トランプは11月の大統領本選挙では当選不可能だと訴え続けている。しかし、彼女の主張が共和党の有権者の支持を得られると信じる根拠はない。
これは必ずしも前サウスカロライナ州知事ヘイリーの失敗ではなく、単に共和党の支持層が依然としてトランプに熱狂していることを反映している。
これまでのところ、どの州でもトランプ前大統領はライヴァルたちに得票率で二桁の差をつけて圧勝している。
候補者指名争いは、掛け声を除けば全て終わっている。
(2)ヘイリーは選挙戦から撤退しない(Haley isn’t quitting)
数週間前、ヘイリーがサウスカロライナ州予備選挙を前に選挙戦から撤退するかどうか、疑問を持たれていた。
この当時、トランプの支持者たちは、ヘイリーが惨敗すれば、彼女は選挙戦を止めることになるだろうと予測していた。
しかし、この予測通りにはならなかった。
選挙後のサウスカロライナ州でのヘイリーの演説は、少なくともスーパーチューズデーまでは戦い続けるという断固とした宣言に等しかった。
彼女は、これまでに有権者たちに示してきた約束について言及し、「私は約束を守る女性」と述べた時、その夜最大の歓声を受けた。
彼女の主張の根拠は、多くのアメリカ人がバイデン大統領とトランプ氏の対決に興味を持てない状況にある中で、「この戦いをあきらめない(not going to give up this fight)」というものだ。
ヘイリーは語気と言葉を強め、このような激しい選挙戦は、「アメリカが分裂するだろう」結果をもたらすだろうと示唆した。
前知事ヘイリーは1月に、これまでで最高の献金額を記録したが、選挙戦を継続するための資金を持っている。そして、彼女には熱烈な支持者もいるが、その数はトランプ大統領の指名獲得への影響を与えるほどではない。
サウスカロライナ州での支持者の一人、ネル・パーカーは、ヘイリーは「明かりを灯し続ける資金がある限り選挙戦に留まるべきだ」と本誌の取材に語った。
(3)共和党は現在MAGA(Make
America Great Again)の政党になっている(The GOP is now the MAGA
Party)
トランプが共和党内を支配していることを示すのは、トランプのライヴァルたちにつけた票差だけではない。
サウスカロライナ州の共和党有権者のほとんどが、トランプの世界観全体を共有しているということだ。
AP通信の有権者調査「ヴォートキャスト」は、少なくとも初期の結果では、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に6人が、アメリカのウクライナに対する援助継続に反対していることを示した。これはヘイリーにとって悪いニューズであり、軍事的伝統の強い州においては印象的な結果となった。
この調査によると、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に7人が、トランプの行動に関する各種の捜査はトランプを弱体化させようとするものだというトランプの主張を受け入れている。
これらの数字を考慮すると、ここにいる共和党員の約10人中6人が自分たちを「アメリカを再び偉大に(MAGA)」 運動の支持者だと考えるのも不思議ではない。
共和党は良い意味でも悪い意味でも、今やトランプの党となっているのだ。
(4)トランプの暴言は本選挙への危険信号となる(Trump’s rhetoric
still raises red flags for the general election)
共和党のサウスカロライナ州予備選挙で大差をつけたにもかかわらず、11月の本選挙におけるトランプの当選可能性に関する疑問は消えない。
それは、トランプが直面している91件の刑事告発のせいだけではない。それはまた、彼が炎上させる性質(propensity to inflame)を持っているからでもある。
トランプはサウスカロライナ州での予備選挙前夜、金曜日に開催されたアフリカ系アメリカ人保守連合の年次総会で演説した際に、その傾向を再び示した。
トランプは、アフリカ系アメリカ人が自分の警察に捕まった際に撮影される顔写真(mugshot)を「受け入れてくれた」と述べた。これは、犯罪率の高いアフリカ系アメリカ人の有権者たちが、自分が起訴されたことについて共感を持ってくれるだろうということを、不器用に示唆しようとした発言だった。
トランプ前大統領は次のように述べた。「私は何の理由もなく、何でもないことで起訴された。そして多くの人が、だからこそアフリカ系アメリカ人の皆さんが私のことを好きなのだと言ってくれている。アフリカ系アメリカ人の皆さんはひどく傷つけられ、差別されてきたからこそ、私に共感してくれる。実際、アフリカ系アメリカ人の皆さんは私を差別されているように見ている。とても素晴らしいことだが、そこに何かがあるかもしれない」。
翌朝、ヘイリーはサウスカロライナ州キアワアイランドで予備選挙の投票を行った後、トランプによるこれらの発言を非難した。
ヘイリーは「これはドナルド・トランプがテレプロンプターを外したときに起こること、本当にうんざりしてしまう。これがドナルド・トランプが引き起こす混乱というものだ。これが、本選挙の日まで毎日やってくる不快感の原因だ」と述べた。
もちろん、更に別の論争が起きることになっても、トランプに固執している支持者が離れていくことはないだろう。しかし、彼の暴言(よく言えば無礼)は、説得されやすい有権者たちを獲得するチャンスを妨げている。
民主党がよく指摘するように、トランプは2016年と2020年の2度の本選挙で得票総数で敗れている。
(5)ヘイリーの攻撃は共和党支持層を超えてトランプの妨げになる可能性がある(Haley’s
attacks could hinder Trump beyond the GOP base)
ヘイリーの攻撃はトランプの共和党候補指名獲得への前進を妨げるものではないが、穏健派の共感を呼び、民主党が11月にトランプ前大統領に対して主張を展開して支持を集めるのに役立つ可能性がある。
土曜日の演説でヘイリーは、トランプが政敵たちを「人間のくず(vermin)」という言葉で表現することに異議を唱えた。
サウスカロライナ州での予備選挙までの数日間、ヘイリーはトランプが本選挙で勝つことはできないと述べ、最近のNATOに関する発言で彼がロシアのプーティン大統領に「味方(sided)」していると非難し、トランプをナルシストと評し、軍服を着たことがないと嘲笑した。
トランプ大統領の盟友たちは、ヘイリーがこの種の発言で、トランプに対して損害を与える可能性があるため、ヘイリーの選挙戦からの撤退を望んでいる。ナンシー・メイス下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、金曜日、サウスカロライナ州ロックヒルでのトランプの集会で本誌の取材に応じた際、この主張を展開した。
しかし、トランプ前大統領は、ヘイリーが自分よりも得票するという脅威の可能性を打ち砕いた。
しかし、民主党の攻撃広告の絶好の材料となるであろうヘイリーの言葉は、11月の大統領選挙本選挙に向けて、まだまだトランプを苦しめる可能性がある。
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●「米富豪コーク氏団体、ヘイリー氏の支援停止 米報道」
2024年2月26日 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78750410W4A220C2EAF000/
【ワシントン=中村亮】米富豪チャールズ・コーク氏の政治団体は、11月の大統領選に向けた共和党の候補指名争いでニッキー・ヘイリー元国連大使の支援を停止する。米ポリティコが25日に報じた。ヘイリー氏への撤退圧力になる。
保守系政治団体「繁栄のための米国民アクション」の首脳が25日、スタッフに宛てたメールでヘイリー氏支援のために資金を使うのをやめると伝えた。
「外部グループが彼女の勝利に向けた道を広げるために大きな貢献をできると思わない」と記した。代わりに11月に大統領選と同時実施の上院選や下院選に資金を振り向けるという。コーク氏の政治団体による動きは、ヘイリー氏の選挙資金が細る予兆となる可能性がある。資金集めが行き詰まると、指名争いから撤退を余儀なくされる公算が大きい。ヘイリー氏は24日、地元である南部サウスカロライナ州の予備選でトランプ前大統領に敗れた。前大統領が1月の中西部アイオワ州の党員集会から5連勝を果たし、ヘイリー氏は反転攻勢の糸口をつかめていない。
米メディアによるとヘイリー氏の選挙陣営は25日、最近24時間で100万ドル(約1億5000万円)以上の資金を集めたと明らかにした。敗北が続いても、資金集めの勢いが衰えていないとアピールする狙いがある。
ヘイリー氏は25日、中西部ミシガン州で支持者集会を開く。同州では27日に予備選を予定する。16州・地域が予備選を一斉に開く3月5日のスーパーチューズデーが指名争いの大きな山場になる。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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