古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:サウスカロライナ州

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今年実施されるアメリカ大統領選挙についての分析も行いました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米大統領選挙共和党予備選挙は、ドナルド・トランプ前大統領が4連勝となった。既に有力なライヴァルたちは選挙戦から撤退し、ニッキー・ヘイリー元米国連大使・元サウスカロライナ州知事しか残っていない。先週末、サウスカロライナ州で共和党予備選挙が実施された。結果はトランプの圧勝となった。ヘイリーは地元サウスカロライナ州でも敗北を喫し、選挙戦からの撤退が話題に上がっている。トランプの共和党予備選挙の勝利と大統領選挙本選挙候補者指名が確実視されている。これで、大統領選挙本選挙は、民主党のジョー・バイデン大統領対共和党のドナルド・トランプ前大統領の戦いとなる。
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 共和党の反ポピュリズム勢力・反トランプ勢力の旗頭であるコーク一族は、ヘイリーに資金提供を行ってきたが、サウスカロライナ州共和党予備選挙でのヘイリーの敗北を受けて、資金提供を停止すると発表した。大統領選挙でトランプを止めることは不可能だということを敵であるコーク一族も認めたことになる。
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左がデイヴィッド・コーク(故人)、右がチャールズ・コーク(コーク系の総帥)

 コーク一族の資金ネットワークは、連邦下院共和党の議員たちで構成する、議員連盟であるフリーダム・コーカスの議員たちの当選と新しい議員たちの当選を目指すことになる。フリーダム・コーカスは日本では親トランプ派とされているが、実態は、コーク一族の資金が入っている反トランプ派である。それなのに、日本で親トランプ派とされているのは、共和党エスタブリッシュメントに反対する姿勢のために、親トランプ派の議員たちが入っているからである。フリーダム・コーカスは反トランプ派・反エスタブリッシュメントである。詳しく知りたい方は、私が翻訳した『アメリカの真の支配者 コーク一族』(講談社)と、拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をお読みいただきたい。

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大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙の5つのポイント(Five takeaways from the South Carolina GOP primary

ナイオール・スタンジ筆

2024年2月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/4487698-five-takeaways-from-the-south-carolina-gop-primary/

サウスカロライナ州チャールストン発。土曜日に行われた大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が対抗馬のニッキー・ヘイリーを打ち負かし、圧勝した。

アメリカ東部標準時の午後7時に投票が締め切られた瞬間、トランプの選挙戦での勝利が決まった。午後10時前に開票率が83%に達した時点で、トランプは、ヘイリーに21ポイントの差をつけて圧勝した。

大統領選挙ミシガン州共和党予備選挙は来週火曜日に行われる。そして、3月5日は10以上の州で投票が行われるスーパーチューズデーとなる。

サウスカロライナ州での予備選挙についてこれから5つのポイントを挙げていく。

(1)トランプは地滑り的な勝利によって、候補者指名への最終経路に入った(Trump’s landslide puts him on a glide path to nomination

よほどの重大な出来事が起きない限り、トランプが2024年大統領選挙の共和党の指名候補となるのは間違いのないところだ。

トランプ前大統領はこれまでのところ、予備選挙が4州で行われ、4連勝している。サウスカロライナ州では、ヘイリーが知事として2度当選した実績があったが、トランプはヘイリーを叩きのめした。

コロンビアで行われたトランプの勝利演説では、サウスカロライナ州の共和党エスタブリッシュメントがどの程度トランプの後ろ盾になっているかが明らかになった。ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、ヘンリー・マクマスター州知事(共和党)と一緒に壇上に立ち、トランプに代わって短いスピーチを行った。

チャールストンでは、ヘイリーがたった一人で壇上に立ち、少数の聴衆を前に演説した。

ヘイリーは、トランプは11月の大統領本選挙では当選不可能だと訴え続けている。しかし、彼女の主張が共和党の有権者の支持を得られると信じる根拠はない。

これは必ずしも前サウスカロライナ州知事ヘイリーの失敗ではなく、単に共和党の支持層が依然としてトランプに熱狂していることを反映している。

これまでのところ、どの州でもトランプ前大統領はライヴァルたちに得票率で二桁の差をつけて圧勝している。

候補者指名争いは、掛け声を除けば全て終わっている。

(2)ヘイリーは選挙戦から撤退しない(Haley isn’t quitting

数週間前、ヘイリーがサウスカロライナ州予備選挙を前に選挙戦から撤退するかどうか、疑問を持たれていた。

この当時、トランプの支持者たちは、ヘイリーが惨敗すれば、彼女は選挙戦を止めることになるだろうと予測していた。

しかし、この予測通りにはならなかった。

選挙後のサウスカロライナ州でのヘイリーの演説は、少なくともスーパーチューズデーまでは戦い続けるという断固とした宣言に等しかった。

彼女は、これまでに有権者たちに示してきた約束について言及し、「私は約束を守る女性」と述べた時、その夜最大の歓声を受けた。

彼女の主張の根拠は、多くのアメリカ人がバイデン大統領とトランプ氏の対決に興味を持てない状況にある中で、「この戦いをあきらめない(not going to give up this fight)」というものだ。

ヘイリーは語気と言葉を強め、このような激しい選挙戦は、「アメリカが分裂するだろう」結果をもたらすだろうと示唆した。

前知事ヘイリーは1月に、これまでで最高の献金額を記録したが、選挙戦を継続するための資金を持っている。そして、彼女には熱烈な支持者もいるが、その数はトランプ大統領の指名獲得への影響を与えるほどではない。

サウスカロライナ州での支持者の一人、ネル・パーカーは、ヘイリーは「明かりを灯し続ける資金がある限り選挙戦に留まるべきだ」と本誌の取材に語った。

(3)共和党は現在MAGAMake America Great Again)の政党になっている(The GOP is now the MAGA Party

トランプが共和党内を支配していることを示すのは、トランプのライヴァルたちにつけた票差だけではない。

サウスカロライナ州の共和党有権者のほとんどが、トランプの世界観全体を共有しているということだ。

AP通信の有権者調査「ヴォートキャスト」は、少なくとも初期の結果では、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に6人が、アメリカのウクライナに対する援助継続に反対していることを示した。これはヘイリーにとって悪いニューズであり、軍事的伝統の強い州においては印象的な結果となった。

この調査によると、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に7人が、トランプの行動に関する各種の捜査はトランプを弱体化させようとするものだというトランプの主張を受け入れている。

これらの数字を考慮すると、ここにいる共和党員の約10人中6人が自分たちを「アメリカを再び偉大に(MAGA)」 運動の支持者だと考えるのも不思議ではない。

共和党は良い意味でも悪い意味でも、今やトランプの党となっているのだ。

(4)トランプの暴言は本選挙への危険信号となる(Trump’s rhetoric still raises red flags for the general election

共和党のサウスカロライナ州予備選挙で大差をつけたにもかかわらず、11月の本選挙におけるトランプの当選可能性に関する疑問は消えない。

それは、トランプが直面している91件の刑事告発のせいだけではない。それはまた、彼が炎上させる性質(propensity to inflame)を持っているからでもある。

トランプはサウスカロライナ州での予備選挙前夜、金曜日に開催されたアフリカ系アメリカ人保守連合の年次総会で演説した際に、その傾向を再び示した。

トランプは、アフリカ系アメリカ人が自分の警察に捕まった際に撮影される顔写真(mugshot)を「受け入れてくれた」と述べた。これは、犯罪率の高いアフリカ系アメリカ人の有権者たちが、自分が起訴されたことについて共感を持ってくれるだろうということを、不器用に示唆しようとした発言だった。

トランプ前大統領は次のように述べた。「私は何の理由もなく、何でもないことで起訴された。そして多くの人が、だからこそアフリカ系アメリカ人の皆さんが私のことを好きなのだと言ってくれている。アフリカ系アメリカ人の皆さんはひどく傷つけられ、差別されてきたからこそ、私に共感してくれる。実際、アフリカ系アメリカ人の皆さんは私を差別されているように見ている。とても素晴らしいことだが、そこに何かがあるかもしれない」。

翌朝、ヘイリーはサウスカロライナ州キアワアイランドで予備選挙の投票を行った後、トランプによるこれらの発言を非難した。

ヘイリーは「これはドナルド・トランプがテレプロンプターを外したときに起こること、本当にうんざりしてしまう。これがドナルド・トランプが引き起こす混乱というものだ。これが、本選挙の日まで毎日やってくる不快感の原因だ」と述べた。

もちろん、更に別の論争が起きることになっても、トランプに固執している支持者が離れていくことはないだろう。しかし、彼の暴言(よく言えば無礼)は、説得されやすい有権者たちを獲得するチャンスを妨げている。

民主党がよく指摘するように、トランプは2016年と2020年の2度の本選挙で得票総数で敗れている。

(5)ヘイリーの攻撃は共和党支持層を超えてトランプの妨げになる可能性がある(Haley’s attacks could hinder Trump beyond the GOP base

ヘイリーの攻撃はトランプの共和党候補指名獲得への前進を妨げるものではないが、穏健派の共感を呼び、民主党が11月にトランプ前大統領に対して主張を展開して支持を集めるのに役立つ可能性がある。

土曜日の演説でヘイリーは、トランプが政敵たちを「人間のくず(vermin)」という言葉で表現することに異議を唱えた。

サウスカロライナ州での予備選挙までの数日間、ヘイリーはトランプが本選挙で勝つことはできないと述べ、最近のNATOに関する発言で彼がロシアのプーティン大統領に「味方(sided)」していると非難し、トランプをナルシストと評し、軍服を着たことがないと嘲笑した。

トランプ大統領の盟友たちは、ヘイリーがこの種の発言で、トランプに対して損害を与える可能性があるため、ヘイリーの選挙戦からの撤退を望んでいる。ナンシー・メイス下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、金曜日、サウスカロライナ州ロックヒルでのトランプの集会で本誌の取材に応じた際、この主張を展開した。

しかし、トランプ前大統領は、ヘイリーが自分よりも得票するという脅威の可能性を打ち砕いた。

しかし、民主党の攻撃広告の絶好の材料となるであろうヘイリーの言葉は、11月の大統領選挙本選挙に向けて、まだまだトランプを苦しめる可能性がある。

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●「米富豪コーク氏団体、ヘイリー氏の支援停止 米報道」

2024年2月26日 日経新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78750410W4A220C2EAF000/

【ワシントン=中村亮】米富豪チャールズ・コーク氏の政治団体は、11月の大統領選に向けた共和党の候補指名争いでニッキー・ヘイリー元国連大使の支援を停止する。米ポリティコが25日に報じた。ヘイリー氏への撤退圧力になる。

保守系政治団体「繁栄のための米国民アクション」の首脳が25日、スタッフに宛てたメールでヘイリー氏支援のために資金を使うのをやめると伝えた。

「外部グループが彼女の勝利に向けた道を広げるために大きな貢献をできると思わない」と記した。代わりに11月に大統領選と同時実施の上院選や下院選に資金を振り向けるという。コーク氏の政治団体による動きは、ヘイリー氏の選挙資金が細る予兆となる可能性がある。資金集めが行き詰まると、指名争いから撤退を余儀なくされる公算が大きい。ヘイリー氏は24日、地元である南部サウスカロライナ州の予備選でトランプ前大統領に敗れた。前大統領が1月の中西部アイオワ州の党員集会から5連勝を果たし、ヘイリー氏は反転攻勢の糸口をつかめていない。

米メディアによるとヘイリー氏の選挙陣営は25日、最近24時間で100万ドル(約15000万円)以上の資金を集めたと明らかにした。敗北が続いても、資金集めの勢いが衰えていないとアピールする狙いがある。

ヘイリー氏は25日、中西部ミシガン州で支持者集会を開く。同州では27日に予備選を予定する。16州・地域が予備選を一斉に開く35日のスーパーチューズデーが指名争いの大きな山場になる。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治、アメリカ大統領選挙に関して詳しく分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 1月の最終週に地元鹿児島に戻っておりました。家族の用事でバタバタしておりました。ブログの更新が滞りまして、申し訳ございません。今回からまた精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 アメリカ大統領選挙は今年11月に投開票が実施される。それに向けて、まず民主、共和両党の候補者を決める予備選挙が実施される。民主党は現職大統領であるジョー・バイデンが二期目を目指すと表明した時点で、事実上、候補者に内定している。共和党側では、ドナルド・トランプ前大統領が立候補を表明して以来、最有力候補となっており、複数名の政治家たちが出馬したが既に多くが撤退を余儀なくされている。現在でも選挙戦に踏みとどまっているのは、元サウスカロライナ州知事で米国連大使を務めたニッキー・ヘイリーだ。
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 アイオワ州に続いて、ニューハンプシャー州で予備選挙が実施された。選挙の形式は、アイオワ州の党員集会とは異なり、普通の選挙と同じで、予備選挙と呼ばれる形式だった。

 ヘイリーはニューハンプシャー州にお金と時間を投入し、トランプをかなり追い上げた。事前の世論調査で数ポイント差まで追い上げたが、結果としては敗戦となった。ヘイリーは、地元サウスカロライナ州での支持率は低迷しており、一応、地元のサウスカロライナ州での予備選挙まで選挙戦を続け、地元で撤退宣言を行うだろうと私は見ている。これで、共和党予備選挙は事実上の終戦となり、トランプが大統領選挙の候補者に内定する。
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 これで、共和党のトランプと民主党のバイデンという2020年と同じ構図での大統領選挙本選挙ということになる。現在のところ、各種世論調査では、トランプが1ポイント、2ポイントで、バイデンをリードしている展開だが、これからバイデン陣営がどのような奇手を繰り出してくるか分からない。既に「トランプには大統領選挙に立候補する資格はない」という訴えを起こしての法廷闘争が起きている。この他にもメディアを使ってのネガティヴキャンペーンも行われるだろう。バイデンは、現職大統領の強みで、外交上の大きな成果を挙げてアピールすることも考えられる。ウクライナ戦争やパレスティナ紛争での大きな動きがあれば、バイデンの支持率も上がるだろうから、それを狙ってくるだろう。

 今回の大統領選挙でトランプ、バイデンのどちらが勝者となっても、アメリカ国内の分断が深まり、アメリカの統一が危ぶまれる事態が発生することも十分に考えられる。

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トランプがニューハンプシャー州で勝利し、ヘイリーに打撃を与える(Trump wins New Hampshire in blow to Haley

キャロライン・ヴァキール筆

2024年1月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4424478-donald-trump-wins-new-hampshire-gop-primary-nikki-haley/

ディシジョンデスクHQによると、米大統領ニューハンプシャー州共和党予備選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が勝利を収めることが確実となった。主要なライヴァルであるニッキー・ヘイリーに対する大きな一撃となり、トランプが共和党の大統領選挙候補者指名を確実とすることにまた一歩近づいた。

ニューハンプシャー州でのトランプの勝利はヘイリーに特にダメージを与えることになる。それは、ヘイリーがニューハンプシャー州に彼女の持つ時間と資源のほとんどを投入してきて、更に同州で人気の高い知事クリス・スヌヌ(共和党)の支持を得ていたからだ。ある時点では、支持率において、ヘイリーはトランプに数ポイント差に迫っていた。

元米国連大使のヘイリーは、アイオワ州共和党党員集会において、彼女のライヴァルだったフロリダ州知事ロン・デサンティスの後塵を拝し、3位となった。予備選挙形式で最初に行われるニューハンプシャー州共和党予備選挙をわずか数日後に控えた時点で、デサンティスは選挙戦からの撤退を決めた。撤退を宣言する演説の中で、デサンティスはトランプ支持を表明した。そうした状況下、ヘイリーは結果として、最後まで残った、トランプに対する主要な挑戦者ということになった。

しかし、ここ数日の各種世論調査の結果を見ると、ヘイリーがトランプを追い落とすのはかなりの困難な道のりであることが明らかになっていた。ディシジョンデスクHQと本誌の集計した、ニューハンプシャー州での各種世論調査の平均では、トランプの支持率が51%に対して、ヘイリーは37%となっていた。

トランプはまた、かつてのライヴァルたちが彼の周りに結集したことで、上機嫌となった。アイオワ州党員集会の直前、ノースダコタ州知事ダグ・バーガム(共和党)はトランプを支持した。ティム・スコット連邦上院議員(共和党)とバイオテクノロジー起業家のヴィヴェック・ラマスワミも、ニューハンプシャー州共和党予備選の前にトランプ支持を表明した。

ヘイリーはウィル・ハード元連邦下院議員(テキサス州選出)やアサ・ハッチンソン元アーカンソー州知事(共和党)など、予備選挙から撤退した、数名の支持を得たのみだった。

ニューハンプシャー州でのトランプ氏の勝利は、ヘイリー氏が地元サウスカロライナ州に向けて予備選の戦いを続けるかどうかという問題を提起している。アイオワ州とニューハンプシャー州の両州での勝利は、共和党内におけるトランプの優位性を強調するものであり、次の予備選挙は、ヘイリーにとって逃げ道を提供するものだ。

しかし、ヘイリー選対は、ニューハンプシャー州予備選の前に、サウスカロライナ州で戦うことを示唆していた。アドインパクトは月曜日にヘイリー陣営がサウスカロライナ州で木曜日から始まる広告の予約を入れたと報じている。

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ニューハンプシャー州予備選挙の5つのポイント(5 takeaways from the New Hampshire primary

キャロライン・ヴァキール、ジュリア・ムラー筆

2024年1月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4425725-5-takeaways-from-the-new-hampshire-primary/

ドナルド・トランプ前大統領は、アイオワ州の重要な党員集会で勝利したわずか1週間後の火曜日、全国初の予備選挙形式のニューハンプシャー州予備選でニッキー・ヘイリーを破って勝利を収めた。

ヘイリーは、前回のアイオワ州での成績からニューハンプシャー州でのトランプとの差を縮めたが、それでも、この記事の発表時点で、ディシジョンデスクHQが発表したように、トランプが約10ポイント差で勝利した。

共和党予備選挙は現在、2人の有力候補の直接対決となっており、先行するトランプが共和党の大統領選挙候補者指名を獲得するのはほぼ確実だ。

一方、ジョー・バイデン大統領はニューハンプシャー州の民主党予備選で追加候補者として、自党の挑戦者を破って勝利を収めた。

これからニューハンプシャー州予備選挙の5つのポイントを挙げていく。

(1)トランプが共和党大統領選挙候補としてほぼ確実な地位を固める(Trump cements status as almost certain GOP nominee

ニューハンプシャー州でのトランプの勝利は、同州での最後の投票が終了した午後8時(米国東部標準時)に即座に予想されたもので、トランプが共和党大統領選挙候補になることがほぼ確実となった。

共和党員たちのほとんどは、このニューハンプシャー州でトランプが勝利すると予想しており、得票率で二桁の大差を予想する者さえいたが、ヘイリーが無党派層に強いことから、火曜日に向けて、この対決がどの程度の接戦になるのか注目されていた。

ディシジョンデスクHQとザ・ヒルがまとめたニューハンプシャー州の各種世論調査の平均では、トランプが51%、ヘイリーが37%だった。トランプは先週のアイオワ州党員集会で30ポイント差の圧勝を収め、フロリダ州知事ロン・デサンティスとバイオテクノロジー起業家のヴィヴェック・ラマスワミが選挙戦から脱落し、トランプ前大統領を支持することになった。

2023年11月に大統領選挙運動を断念したティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)も、ニューハンプシャー州予備選投開票日までの数日間、トランプを支持し活動した。

しかし、トランプ懐疑派や穏健派の共和党支持者たちがどの候補者を支持するのか疑問があったが、ニューハンプシャー州でトランプが勝利した後、これらの多くがトランプを支持すると明言した。

ミッチ・マコーネル連邦上院少数党院内総務率いる連邦上院共和党の幹部メンバーであるジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)はXに「もう十分だ。バイデンに勝つためには、共和党は1人の候補者を中心に据えて団結する必要があり、トランプ大統領が共和党有権者の選択であることは明らかだ」と書いた。

コーニン議員は更に「バイデンが引き起こした国境危機や記録的な高インフレのような失敗した国内政策や、敵対勢力を増長させ世界をより危険な場所にした失敗した外交政策を、あと4年も続くことがないように阻止しなければならない」と書いた。

(2)バイデンが予備選挑戦者たちを一蹴(Biden brushes off primary challengers

ジョー・バイデン大統領は火曜日にニューハンプシャー州予備選挙に出馬しなかったにもかかわらず(選挙の投票用紙に名前が掲載されない)、名前を書きこまねばならない候補(write-in candidate)となりながら、挑戦者たちを圧倒し、勝利すると草々に予想が出た。

ニューハンプシャー州民主党は、共和党の予備選と同じ火曜日に予備選を実施することで、ニューハンプシャー州を全米最初の予備選開催州の座から追い出そうとした民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の計画に反発し、バイデンの名前は投票用紙から外された。

バイデンは民主党全国委員会の規則に従う義務があり、民主党の予備選挙選挙戦への立候補をしないことを選択した。そして民主党は、火曜日のニューハンプシャー州での選挙戦は今年後半に実施予定の全国大会に出席する代議員には何の影響もないと述べた。

しかし、ニューハンプシャー州のバイデン支持者たちは、とにかく現職大統領であるバイデンを勝利に導こうとして、名前を書き込もうキャンペーンを開始し、予備選挙序盤の重要な州でバイデンを押し上げることの重要性を強調した。

ディシジョンデスクHQによると、共和党の予備選挙では共和党のトップランナーであるトランプが勝利した。バイデン大統領は民主党候補のマリアンヌ・ウィリアムソンとディーン・フィリップス連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)を打ち負かすと予測されていた。

バイデン大統領の書き込み作戦が功を奏しての予備選挙勝利は、バイデンの支持率が低迷する中で、民主党のライヴァルたちに対して、二期目を目指す戦いを続ける中で、党支持層の間でのバイデンの力強さを反映したものだ。

予備選挙での勝利予測が出た後、バイデン陣営は「2024年11月の大統領選挙投開票に向けて取り組んでいるが、今日ますます明らかになっていることが1つある。それはドナルド・トランプが大統領選挙本選挙での共和党候補となるだろうが、彼に真っ向から向かい、投票所でこれまでに自分に勝った唯一の人物である、ジョー・バイデンと対戦することになるということだ」と述べた。

(3)ヘイリーには一撃を加えられた(Haley dealt a blow

火曜日はトランプにとって良い夜になったが、ヘイリーにとっては、選挙戦に踏みとどまっている、最後の主要なトランプのライヴァル候補として、無党派層と共和党員の両方に働きかけようとしていたため、ニューハンプシャー州で打撃を受けた。

ニューハンプシャー州は、登録をしていない有権者が共和党予備選に投票できることから、ヘイリーが序盤の指名争いで好成績を収める絶好のチャンスを提供していた。しかし、ここ数週間の世論調査では、ヘイリーがトランプを数ポイントの差で引き離しているとの見方もあったが、結局、無党派と共和党支持者の両方を十分に納得させ、ヘイリーの選挙戦に結集させることはできなかった。

ヘイリーは、4期目を務めている、人気の高いニューハンプシャー州のクリス・スヌヌ知事(共和党)の支持を得たにもかかわらず、惨敗してしまった。

それでも、ヘイリー候補は、火曜日夕方の支持者向け演説で、予備選の全結果がまだ集計されていないにもかかわらず、「次は私の愛するサウスカロライナ州だ」と述べた。また、共和党大統領予備選から脱落するつもりはないだろうと予想されている。

しかし、ニューハンプシャー州での敗北は、トランプとヘイリーが来月のサウスカロライナ州での共和党予備選に備える中で、彼女の実行力に新たな疑問を投げかけている。世論調査では、元国連大使ヘイリーは地元でトランプから大きく引き離されている。

ディシジョンデスクHQと本誌がまとめたサウスカロライナ州における世論調査の支持率の平均では、トランプが61%、ヘイリーが27%となっている。

(4)トランプの勝利は共和党内部の分裂を浮き彫りに(Trump win highlights divide in GOP

ニューハンプシャー州でのトランプの勝利はかなり早く予想されたものの、トランプ前大統領は先週のアイオワ州のような地滑り勝利を楽しむことはできなかった。

記事掲載時点で74%の得票が報告されており、ディシジョンデスクHQは、トランプ54.8%に対し、ヘイリー44%と約10ポイントの差をつけている。

出口調査でも、トランプとヘイリーの支持層は大きく異なっていた。CNNの出口調査では、トランプ支持者の80%が、バイデン大統領が2020年の選挙で正当に当選していないと考えているのに対し、当選していると答えたのは17%だった。逆に、ヘイリー支持者の83%が、バイデン大統領は2020年の選挙に正当に勝利すると答えたのに対し、勝利しないと答えたのは15%だった。

また、CNNの出口調査では、前国連大使ヘイリーに投票した人の約40%が、彼女のライヴァルであるトランプに反対して投票したことが分かった。

トランプが共和党の大統領候補になった場合、最終的にはヘイリーの支持者の多くから支持を得る可能性が高いが、共和党予備選で示された分裂は、党がトランプを中心にまとまろうともがく中で、有権者間でグループがあることを示唆している。

(5)予備選の季節は短く、ドラマなど起きないだろう(Primary season looks short and drama-free

ヘイリーは敗北予想が出た後、「ニューハンプシャーにおいて全米で最初の予備選挙が実施された。全米で最後ではない。このレースはまだ終わっていない。まだ何十州も残っている」と発言し、予備選挙での選挙戦の継続を約束した。

しかし、党内では以前から、アイオワ州とニューハンプシャー州でトランプが連勝すれば、トランプ前大統領の共和党候補指名がほぼ確定するとの予測もあった。

トランプは2024年の選挙で事実上の現職として出馬しており、全米の世論調査では2桁のリードを誇っている。混戦模様の候補者たちは、トランプに代わる最有力候補となるべく何カ月も争ったが、トランプが発表した時点でレースは実質的に決まっていたと言う専門家たちもいる。

今月、共和党予備選挙の有力候補4人が立候補し、選挙戦を通じて、トランプとヘイリーの一騎打ちに移行した。

火曜日、ヘイリーは自身のキャンペーンが「半数近い票を獲得した」と宣伝したが、彼女のキャンペーンは今、それが指名候補としての競争力を証明し、サウスカロライナ州での2月の予備選挙とその後に向けたキャンペーンの燃料として十分かどうかという疑問に直面している。

そうでなければ、共和党の予備選シーズンは始まってわずか数週間で終わってしまうかもしれない。

アメリカ南部初のサウスカロライナ州での共和党予備選は2月24日に行われる。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2020年2月29日にサウスカロライナ州でのアメリカ大統領選挙民主党予備選挙が実施される。2月の予備選挙はこれで終わりだ。初めての南部での投開票、アフリカ系アメリカ人有権者が過半数を占めるという特徴がある中で、その結果が注目される。

 現在のところ、バイデンがリードを保っている。サンダースもかなり支持率を上げているが、バイデンはアメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領バラク・オバマに副大統領として8年間仕えた実績を繰り返し強調し、アフリカ系アメリカ人の支持を得てきている。
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 サンダースとしては、最初からサウスカロライナ州での勝利は期待しておらず、バイデンがどれほどの勝利を収めるかを高みの見物

 ネヴァダ州での討論会、サウスカロライナ州での討論会で、エリザベス・ウォーレンが舌鋒鋭くマイケル・ブルームバーグを攻め立てたことは、サンダースとバイデンにとってありがたいことであった。自分たちの手を汚さずに、目下の敵を引きずりおろしてくれるし、ウォーレンはそうした攻撃をしたところで人気が上がることはなく、自分たちの脅威にならないという、ある種の鉄砲玉を自分から買って出てやってくれたということになる。ウォーレンが本当に叩くべき存在はサンダースなのであるが、彼を攻撃する材料はない。

 ブティジェッジとクロウブシャーは共にアフリカ系アメリカ人有権者からの支持が弱く、ウォーレンと共に3位争いということになるが、ブティジェッジが一歩リードというところだろう。

 アメリカでも新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。3月3日には全米15州で予備選挙がスーパーチューズデーであるが、選挙自体には影響はないだろう。出入り口でのアルコール消毒の徹底ということくらいだろう。アメリカも高齢化は進んでおり、肥満率の高さから基礎疾患を持つ

 ウイルス感染拡大を受けて、サンダースの「メディケア・フォ・オール」に俄然注目が集まるだろう。アメリカでは国民皆保険になっておらず、保険がないために医療を受けられない人たちが多くいるということはずっと言われてきた。新型コロナウイルスのように感染力が強いウイルスは誰にでも感染のリスクがあり、かつ予防のワクチンや特効薬もないとなると、社会全体を守るためには、全員が医療を受けられるようにすることが、全員を守ることになる。現在のアメリカではそれができていない、ということであり、社会のためにはメディケア・フォ・オールが良いと考える人たちも多くなっている。社会主義だとか独裁者を擁護したとか、そう言う言葉遊びはどうでもよい、という危機感がサンダースへの期待を大きくすることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

民主党討論会での5つの特徴(Five takeaways from the Democratic debate

ジョナサン・イーズリー筆

2020年2月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/484660-five-takeaways-from-the-democratic-debate

大統領選挙民主党予備選挙の有力候補たちは、火曜日に開催された民主党全国委員会主催の10回目となる討論会で、何とか頑張りぬいた。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は土曜日のサウスカロライナ州での予備選挙を前にして、一斉攻撃を受けた。

サウスカロライナ州チャールストン市での白熱した討論会の5つの特徴について挙げる

(1)サンダースを阻止するためにライヴァルたちが必死になった(Rivals desperate to stop Sanders

サンダースは壇上の中心でスポットライトを占めた。ライヴァルたちが彼を止めるには後数日しか残されていないと考える中で先頭走者に攻撃が集中するのは明らかであった。

サンダースはネヴァダ州とニューハンプシャー州で勝利を収め、アイオワ州でも僅差の2位に入ったことで、サウスカロライナ州でもトップを狙っている。対抗馬たちは、次週のカリフォルニア州とテキサス州でもサンダースの世論調査での支持率の数字が良いことから、スーパーチューズデーが終わった段階で、サンダースは逆転することが難しい代議員を獲得するだろうと警戒感を強めている。

ニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグは火曜日の夜の討論会でサンダースに対する攻撃を始めた。討論会のスタートと同時に、ロシアはサンダースに民主党の指名候補になって欲しいと望んでいる、それはサンダースが民主党の候補者になれば、本選挙でトランプ大統領に敗れるからだ、と述べた。

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)はブルームバーグに続き、サンダースを攻撃した。ウォーレンは、サンダースがあまりにも分裂を招いてしまう人物であるために、たとえ大統領になれたとしても、彼の掲げる進歩主義的な政策は実行できないだろうと述べた。

ジョー・バイデン前副大統領は、これまでに数多く起きた銃による大量殺人を受けての銃規制法案に対してサンダースが反対票を投じたことを非難した。

インディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジは、サンダースが「1960年代に吹き荒れた革命志向の政治への郷愁」にとらわれているのだと発言した。これは、サンダースがキューバの共産党支配のフィデル・カストロ政権を称賛した発言を受けてのものだった。

サンダースは「今日はなんだか私の名前をいささか多く耳にしています。どうしてそんなことが起きているのか不思議ですが」と皮肉を述べた。

恐らくサンダースの対抗馬たちが最も訴えたかった、サンダースについての疑義は、彼の当選可能性についてでああろう。

民主党主流派の中には、民主社会主義者を自認する人物が民主党の代表になる見込みが大きくなっていることでパニックになっている。

サンダースの対抗馬たちは火曜日の夜にはっきりと明言した。無所属の進歩主義派の人物を民主党の大統領選挙候補者に指名することは、トランプ大統領に2期目を与えることであり、連邦下院での民主党の過半数を失わせる可能性もある、と対抗馬たちは述べた。

ブティジェッジは、「トランプ大統領に更に4年間をホワイトハウスで過ごさせることになりますし、ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)を連邦下院議長に据えることにもなるでしょう。また、連邦上院で民主党が過半数を取ることもできないでしょう」と述べた。

サンダースは反撃に出た。全国規模の世論調査で架空の一対一の戦いに関する質問(「トランプ大統領とサンダース議員で今日選挙があったらどちらに投票しますか」)で、自分が50%、トランプ大統領が47%とリードする結果が出たことを指摘し、民主党がホワイトハウスを奪還するために必ず勝利を得なければならない中西部の各州で自分が強いことを主張した。

(2)ウォーレンはブルームバーグを引きずりおろすことに必死だった(Warren is hellbent on sinking Bloomberg

2回続けて、ウォーレンはブルームバーグに対してノックアウトパンチを繰り出そうとした。選挙に送れて参加した元共和党員の超大富豪であるブルームバーグを進歩主義派のウォーレンは嫌っている。

ウォーレンはブルームバーグの過去の発言を取り上げて攻撃した。2008年の金融崩壊で人種的な少数派をブルームバーグが非難した。その発言を取り上げた。

ウォーレンはブルームバーグが資金面で支援してきた共和党の政治家たちのリストを取り上げた。その中にはウォーレンが2012年の連邦上院議員選挙で直接戦ったスコット・ブラウン元連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、共和党)も入っていた。

ウォーレンは秘密保持条項に関する問題を再び取り上げた。ブルームバーグが部下の女性に対して酷い処遇を行ったと批判し、秘密保持条項に署名した女性たちの情報をハ票するように求めた。

そして、ウォーレンは、トランプ大統領と結びつけながら、ブルームバーグが納税申告書を公開していないことを攻撃した。

ウォーレンは「私は彼がどのくらいのお金を持っているのか、興味はありません。民主党の熱心な支持者たちは彼を決して信頼しないでしょう。彼はこの壇上に立っている候補者の中で最もリスクの高い候補者です」と述べた。

ブルームバーグは、ラスヴェガスの時ほどには今回はそこまで弱点を突かれなかった。ブルームバーグは、黒人が多く住む地区への融資を手控える行為を支持したという批判に反論し、自分の部下の女性が妊娠した際に、「それを殺せ」と発言したことを否定した。

しかし、ウォーレンの攻撃は激しかった。ウォーレンはサンダースよりもブルームバーグに対してより激しい攻撃を行ったことは特筆されるべきだ。サンダースの方がウォーレンの党指名獲得野道のりの邪魔になっている。

(3)候補者たちはアフリカ系アメリカ人有権者からの支持を勝ち取ろうと戦った(Candidates are battling to win over black voters

サウスカロライナ州での民主党予備選挙の有権者の半数以上はアフリカ系アメリカ人だ。サウスカロライナ州での予備選挙で、民主党の背骨となる多様な人々の連合からの支持を得られる能力があるかどうか各候補者は試されることになる。

バイデンはサンダースからの挑戦を退けるために努力している。サンダースはアフリカ系アメリカ人の間での支持を急速に伸ばしている。そして、サウスカロライナ州でのバイデンの選挙運動の伸びを止めようとしている。

しかし、バイデンは討論会でこれまでにない力強いパフォーマンスを行い、土曜日のサウスカロライナ州での予備選挙には良い雰囲気で臨める。

バイデンは、アメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領であるオバマ大統領に仕えた実績を繰り返し強調してきた。バイデンは、アフリカ系アメリカ人社会の有力指導者であるジェイムズ・クライボーン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、民主党)の名前も仄めかした。クライボーンは水曜日にバイデンへの支持表明を行うと見られている。

一方、サンダースは、アメリカの麻薬関連法と刑法システムを改善しなければならないと力説している。

実業家トム・ステイヤーは、最近の世論調査を見ると、サウスカロライナ州でのアフリカ系アメリカ人有権者の支持を集めている。ステイヤーがアフリカ系アメリカ人有権者の支持をどれくらい得られるかは、バイデンの結果にも影響を与えることになる。

火曜日の討論会に参加した残りの候補者たちは、アフリカ系アメリカ人有権者にとって重要な諸問題を繰り返し取り上げた。しかし、アフリカ系アメリカ人有権者からの支持を得て、投票箱に投票してもらうためには討論会以前に努力をしておくべきであった。

候補者たちはスーパーチューズデーを前にして、時に半狂乱になって、人々の関心と支持を求め続けた。

土曜日のサウスカロライナ州での予備選挙とそれから72時間後のスーパーチューズデー、これまでの時間は候補者たちにとって絶望の時間となる。

今回の討論会は、壇上に登場した7名の候補者の1人もしくはもっと多い数の人物たちにとって、最後の討論会となる可能性がある。そして、最後になるかもしれないという絶望感は、チャールストンで2時間の間、党勢がない状態で続いた討論会で垣間見えた。

討論会の多くの時間が、候補者たちがお互いを大声で非難し合うことで使われた。

CBSの司会進行役の人々は、討論会の間、時に完全にコントロールできない時があった。飛び入り参加自由で自由に発言ができ、お互いが大声で叫び合うという事が起きた。

このような状況になり、中道派も進歩主義派も共に不満を貯めることになった。どちらも自分が支持する候補者が公平な取り扱いを受けていないと感じた。

(5)討論会によって、候補者たちの間に否定的な感情に関する恐怖感が起きることになるだろう(Debate will raise fears about negativity among the candidates

先週のラスヴェガスでの討論会は総力戦の様相を呈した。今回のチャールストンでの討論会は否定的な感情のレヴェルに関して総力戦の様相を呈したと言えるだろう。

候補者たちは勝利を得るためだけに戦ったのではなかった。候補者たちの中には敵意と憎悪を明らかにした人たちもいた。

クロウブシャーはブティジェッジを嫌っているように見えた。ウォーレンのブルームバーグ攻撃は露骨でかつ激しいものだった。進歩主義派の人々はサンダースとウォーレンがお互いを攻撃し合うことをこれから身もだえしながら見ることになる。中道派の民主党員たちは呆れながら、穏健派の候補者たちがサンダースにだけ攻撃目標を絞るのではなく、お互いを攻撃し合っているのか分からないと嘆くだろう。

クロウブシャーは火曜日の討論会で、「私たちがこれから数カ月を、党を分裂するために使うならば、私たちは次の4年間、ドナルド・トランプがこの国を分裂させることを見続けることになるでしょう」と懸念を表明した。

民主党がまとまるためにはまだ十分な時間が残っている。しかし、予備選挙が激しいやり合いのまま続いた後には、民主党の支持基盤が分裂し、憎悪が残る危険性は残っている。

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サウスカロライナ州での討論会での勝者と敗者(Winners and losers from the South Carolina debate

ナイオール・スタンジ筆

2020年2月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/the-memo/484661-winners-and-losers-from-the-south-carolina-debate

アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の候補者7名が火曜日の夜にサウスカロライナ州チャールストン市での討論会に登場した。土曜日に同州で予備選挙が実施されるのを前にして激しい討論が行われた。

サウスカロライナ州での討論会は予備選挙のスケジュールにおいて最大の戦いの日となる来週のスーパーチューズデーを前にして最後の討論会となった。

最新の討論会で誰が勝者となり、敗者となったか?

●勝者

(1)ジョー・バイデン前副大統領(Former Vice President Joe Biden

バイデンは討論会でもこれまで比べてより強力なパフォーマンスを見せて希望をつないだ。

彼はサウスカロライナ州で審判の時を迎える。

アイオワ州とニューハンプシャー州での失望を招いた惨敗とネヴァダ州でのサンダースに大差をつけられての2位を受けて、バイデンはサウスカロライナ州では必ず勝たねばならない。

バイデンは先頭走者であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を討論会スタート直後から攻撃した。バイデンはサンダースの2つの弱点である、銃規制の投票に関する記録と2012年の大統領選挙で再選を目指した当時のオバマ大統領に対抗するために予備選挙に出馬することを考慮したことである。

バイデンはアフリカ系アメリカ人有権者の支持をテコ入れしようとし、自分が人種的、経済的正義の問題について「長年にわたり」働いてきたことを繰り返し訴えた。

結局のところ、バイデンは自分自身を、ただ願望を語るだけの人物ではなく、物事を実際に実行するための政治的、戦略的な力を持っていると訴えた。

バイデンの華ストーンと態度は彼の発言内容よりも重要だった。

これまでの討論会に比べて、バイデンはより鋭く、熱意に満ちていた。

バイデンは素晴らしい討論のパフォーマンスを必要としていたが、最高のパフォーマンスを行うことができた。

(2)Sen. Elizabeth Warren (D-Mass.)

ウォーレンが現在予備選挙に残っている候補者の中で最も一貫した論旨を持つ話し手だ。

ウォーレンはニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグを今回の討論会でも標的に選んだ。前回のラスヴェガスでの討論会に比べて、ウォーレンはブルームバーグを完膚なきまでにやっつけることはしなかった。しかし、ウォーレンは職場での部下の女性たちの処遇についての疑問を投げかけた。

ウォーレンは、ブルームバーグの党指名獲得の可能性についてより幅広い主張を行った。

ウォーレンは「ブルームバーグ市長がどれほどのお金を持っているのかを私は気にしません。民主党の熱心な支持者たちは彼を決して信頼しません」と述べた。

ウォーレンはブルームバーグ程ではないがサンダースに対しても攻撃を加えたがそれはより微妙なものであった。彼女はサンダースに対して「メディケア・フォ・オール」を実現するための戦略を質問した。

ウォーレンは今回の予備選挙の期間で期待よりも低いパフォーマンスしかできていない。サウスカロライナ州で彼女が勢いを取り戻すことができると信じる理由はない。彼女はリアルクリアポリティックスの平均で遠く離された4位になっている。

それでも、ウォーレンは再び力強いパフォーマンスを行ったと言うことができる。

(3)Sen. Bernie Sanders (I-Vt.)

サンダースは火曜日の夜に明らかな敗北を喫しなかったことをもって勝利を収めた。

サンダースはこれまでのどの先頭走者よりも継続的な攻撃に直面した。

バイデンは、サンダースは何の実績も上げていないと述べた。ブルームバーグは、サンダースを党の指名候補にすることはトランプ大統領に再選をプレゼントすることと同義だと述べた。インディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジは、トランプ大統領対サンダースの戦いは「害悪」であり「人々を疲弊させる」ものだと批判した。

サンダースはこれらの批判全てに対して、自分の側は何もミスを犯すことなしに反論してみせた。キューバのフィデル・カストロは教育の面で成果を上げたという自身の発言が多くの民主党員、特にフロリダ州の民主党員に不快感を与えたことについて自己弁護を続けた。

より目の前にある現実は、サンダースはサウスカロライナ州で勝利を収める必要はないということだ。これによってサンダースはスーパーチューズデーに向けてより良い形で準備ができる。

ライヴァルたちはサンダースを手ひどくやっつけておく必要があった。チャールストンでの討論会では多くのパンチが浴びせられたが、誰もサンダースからノックダウンを奪えず、それほどのダメージすらも与えられなかった。

●どちらとも言えない

(1)エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)

クロウブシャーは再び手堅くまとめたが、出来が良かったというほどでもなかった。

クロウブシャーは自身の主張をうまく伝えることはできた。彼女は、自身の主要な主張である、「民主党はこの国の中間にいる人々を勝ち取る必要がある」ということを繰り返し訴えた。

しかし、クロウブシャーはアフリカ系アメリカ人有権者からの支持獲得に苦しんでいる。サウスカロライナ州での民主党予備選挙の有権者の50%以上がアフリカ系アメリカ人有権者で占められている。

そして、2020年2月11日のニューハンプシャー州での3位が彼女の最高到達点だったのではないかという疑義は残ったままだ。

チャールストンでクロウブシャーはゲームの様相を変えてしまう瞬間を作ることができなかった。彼女にはそれが必要だったのであるができなかった。

(2)インディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジ(民主党)

ブティジェッジの攻撃、特にサンダースに対しての攻撃は時間の経過と共に鋭くなっていった。

しかし、サンダースに対抗するための中道派の主要な候補者の立場をブルームバーグとバイデンと共に争うという圧力もブティジェッジにはかかっている。

ブティジェッジは火曜日の夜にはすっかりお馴染みとなった丁寧さと建設的な話をアピールできた。しかし、彼は討論会で人々の注目を集める瞬間を作ることはできず、彼が獲得したくてもできない有権者を振り向かせて支持を得ることまではできなかった。

●敗者たち

(1)ニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグ

酷すぎるということはなかった。しかし、良くもなかった。

先週のラスヴェガスでの討論会でのパフォーマンスがあまりにも酷すぎたと嘲笑を買い、それから多くの批判が寄せられてきた中でブルームバーグは討論会に参加した。

今回チャールストンで開催された討論会では少しは改善した。ニューヨーク市長時代の教育に関する成果など政策に重点を置いたテーマでは良いパフォーマンスを見せた。

しかし、ブルームバーグはやはり討論会には向いていない。一点を挙げれば、ラスヴェガスでの討論会の自分をパフォーマンスについての自虐的な冗談には誰からも反応がなかった。そして、ウォーレンからの攻撃に彼はまた苛立ってしまった。

ブルームバーグは討論会のスタートで、ロシアがサンダースの選挙運動を支援しようとしているという報道を使ってサンダースに攻撃を仕掛けた。これは先頭走者であるサンダースに対しての明らかにやり過ぎの攻撃であり、聴衆からは抗議の声が上がった。

ブルームバーグがテレビ広告に投下している膨大な資金量は彼を救ってくれているかもしれないが、彼の討論会でのスキルは全くもって何の役にも立たないものである。

(2)実業家トム・ステイヤー

ブルームバーグ同様、ステイヤーはテレビ広告に多額の資金を投入していることで何とか生き残っている状態だ。ブルームバーグと違う点は、彼はサウスカロライナ州での予備選挙で候補者登録をしている点だ。サウスカロライナ州での世論調査でステイヤーは3位につけている。

ステイヤーが直面している根源的な問題は、彼が立候補している理由を説明するということだ。彼はこれまで独自のセールスポイントを訴えるのに失敗してきたし、火曜日の夜もうまくいかなかった。

(3)CBSニュース

討論会の進行が時に酷いものとなった。進行役の人々に対してはSNS上でこれまで見たこともないほどの批判が寄せられた。

ある意味ではCBSニュースは板挟み状態に置かれたということになる。進行役が各候補者にお互いを攻撃し、やり合うことを許したが、ツイッター上では、討論会が混乱して内容が分からないという批判が多く出た。進行役が口を差し挟むと、過剰な介入だという批判の声が上がった。

CBSニュースが明らかに間違ったところがある。

ブルームバーグがニューヨーク市長時代に砂糖が入った清涼飲料水を禁止しようと試みたことについての質問が出た。そして、討論会の最後でそれぞれの候補者たちについての「誤解していたところ」を候補者たちに話させたのだが、ここでは気候変動について話すべきだった。結局、気候変動について今回の討論会ではテーマに出なかった。

討論会がほぼ終わりかけのところで、もう休憩も必要もないのにテレビ広告が流れたところにも混乱が見て取れた。結局のところ、CBSにとっては何事もうまくいかなかった夜となった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 今回はこれまでに行われたアイオワ州とニューハンプシャー州の選挙についての分析記事を紹介する。選挙はやはり地道な選挙運動の成果だということをサンダースとブティジェッジは示している。

 アイオワ州ではインディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジとバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)がデッドヒートを展開し、ブティジェッジが僅差で勝利を収めた。ニューハンプシャー州ではサンダースが勝利した。
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ニューハンプシャー州で勝利宣言をするサンダースとブティジェッジ

アイオワ州の党員集会では、集会の初めに参加者の支持する候補者を集計する。その後、集会でそれぞれの候補者を支持する説明役が候補者について説明をする。それを聞いた上でで、最終的にどの候補者を支持するか集計される。集会の初めの集計で15%以上の支持が得られない候補者を支持する人には、他の候補者に支持を変更するように促されるが強制ではないという方式が採られた。

 ブティジェッジは「2番目に支持する人」というカテゴリーに入ることで勝利を得たのではないかと思う。熱心に支持できない、一番に支持することはないけれども、2番目だったらまあ良い候補だよな、という考えの人が多かったのだと思う。もちろん有力候補なので熱心な支持者も多いのは前提で、二番目に選ばれる戦略というのがあったように思う。

 サンダースには、「バーニー・ブラザーズ(Bernie Bros)」と呼ばれる熱心な支持者がいて、活発な選挙運動を展開している。ブティジェッジはアイオワ州に注力し、頻繁に訪問するなどして勢いを得た。そして、その勢いをニューハンプシャー州にもつなげた。

前回のブログ記事で紹介した記事に出ていたが、ニューハンプシャー州では、サンダースは州内の大都市で勝利し、ブティジェッジは大学町と州東部(マサチューセッツ州に隣接する地域)のボストンのベッドタウンで勝利を収めた。ニューハンプシャー州自体は白人が多数を占める地域だが、大都市となればその中には非白人、アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系が多く居住している。サンダースはより広範な人種間で支持基盤を築いたと言える。一方、ブティジェッジは白人の教育水準の高い人々が住む地域で勝利を得たというのは、彼を多く支持している白人の大学学位保有者が多く住む地域であったという事が言える。これからはヒスパニック系が人口の3分の1を占めるネヴァダ州、アフリカ系アメリカ人が多いサウスカロライナ州と続くので、ブティジェッジには厳しい戦いが続く。

エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は投票直前の討論会で逆転ホームランを放ち、3位に入った。ニューハンプシャー州の判官びいきの気質に、挑戦者として一歩も引かない強気な姿勢が評価されたということになる。

 しかし、状況が深刻なのはジョー・バイデン前副大統領だ。「トランプ大統領に勝てる可能性が最も高い、当選可能性が高い」と自分で主張してきたが、有権者を納得させることができず、2回続けて惨敗を喫した。バイデンはニューハンプシャー州での低調ぶりが分かると、予定していた集会をキャンセルして、サウスカロライナ州に向かった。サウスカロライナ州は彼が頼みとするアフリカ系アメリカ人有権者が多く、これまでの世論調査では圧倒的なリードを保ってきた州だ。そこで、「まだまだこれからですよ」と強がって見せたが、状況は厳しいままだ。ネヴァダ州でもサウスカロライナ州でも支持率の数字を落としたままで改善される兆しは見えない。
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ネヴァダ州での世論調査の結果
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サウスカロライナ州での世論調査の結果

 エリザベス・ウォーレンはニューハンプシャー州の隣のマサチューセッツ州を地盤としており、ニューハンプシャー州の人々にもなじみ深い政治家であるはずが、4位に沈んだ。ボストンに通勤するベッドタウンに住む人々の支持はブティジェッジに奪われてしまった。左派に属する点が忌避されたものと思われる。ウォーレン選対は選挙戦を継続することを発表しているが、スーパーチューズデーを過ぎてからの状況を見て判断することになるだろう。ウォーレンが選挙戦から撤退し、仮にサンダース支持を表明すれば、サンダースにとっては追い風となる。

 サンダースの勝利が続いていると言っても過半数の得票を得ている訳ではない。恐らく宣誓済み代議員3979の過半数1991(民主党全国委員会のルールを読むと過半数プラス1と書いてあり、3979名の半分は1989.5であり、それに1を足すと1990.5となり、1991名ということになる)を得て7月の民主党全国大会を迎えることはないだろう。各種世論調査の結果を見ても、支持率50%を超える候補者はいないし、民主党の予備選挙は得票数に応じて宣誓済み代議員が配分される。

サンダースが最終的に1位になるだろうが、得票率を仮に4割と仮定しても1590名程度だ。1回目の投票で過半数の宣誓済み代議員を獲得できる候補者がいない場合を、ブローカード・コンヴェンション(brokered convention)、もしくはコンテスティッド・コンヴェンション(contested convention)と呼ぶ。この2つの言葉は混同して使用されやすい。ブローカード・コンヴェンションとは、党の幹部たちが非公開の場所で話し合いをして党の指名候補を最終的に決めるもので、現在ではこのようなことは行われていない。コンテスティッド・コンヴェンションの方がより現代的な言葉だ。投票で最終的に決着をつけるということで、繰り返し投票が行われるということだ。

今回の民主党全国大会では、1回目の投票は宣誓済み代議員しか参加できない。しかし、1回目で勝者が出ないとなると、特別代議員771名が投票に参加できるようになる。そして、4750名の過半数となる2376名を獲得する候補者が出るまで投票が続く。この場合、宣誓済み代議員たちも原則的には宣誓した内容に縛られなくなり(released)、自分の支持する候補者に投票することになる。中道派のブティジェッジ、クロウブシャー、バイデン、ブルームバーグを支持する宣誓済み代議員と特別代議員の数を足すと、おそらく過半数を超えることになる。バイデンかブルームバーグが勝者となる可能性がある。

 しかし、このように2度目の投票という事態になり、中道派が勝利となれば、サンダース支持者たちの怒りは頂点に達するだろう。「サンダースが投票で1位なのに、党の指名候補に選ばれないのはおかしい、間違っている、民主党は汚れ切っている(rigged)」と抗議して、全国大会は収集不可能な状態にまでなるかもしれない。そうなれば2016年の二の舞となってしまう。

 現在の獲得代議員数を見れば、予備選挙での投票で獲得する宣誓済み代議員数ではブティジェッジとサンダースが激しく争っており、バイデンはニューハンプシャー州で獲得数ゼロということが響き、全く振るわない。しかし、特別代議員を加えると、一気にトップに躍り出る。このような状況ではバイデンは選挙戦を止めるにやめられないし、特別代議員が投票に参加するような事態になることを期待して選挙戦を続けることになる。
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 民主党幹部、エスタブリッシュメントにとっては、バイデンが横綱相撲で予備選挙において勝利し民主党全国大会でスムーズに党の指名獲得ができることが最善のシナリオだった。しかし、このシナリオは実現しない可能性が高まった。

サンダースが予備選挙で宣誓済み代議員を過半数獲得して勝利するというシナリオも実現する可能性は低い。となれば、特別代議員も参加しての投票となる。そのようなことになれば、民主党の分裂を再びアピールすることになり、最悪の場合には党の分裂ということになりかねないし、何より大統領選挙での勝利など覚束ない。

民主党全体が厳しい状況に追い込まれている。

(貼り付けはじめ)

ニューハンプシャー州での予備選挙の5つの特徴(5 takeaways from the New Hampshire primary

ジョナサン・イーズリー筆

2020年2月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/482698-5-takeaways-from-the-new-hampshire-primary

ニューハンプシャー州マンチェスター発。木曜日夜に実施されたニューハンプシャー州でのアメリカ大統領選挙民主党予備選挙で、ヴァーモント州選出の連邦上院議員バーニー・サンダースがインディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジを僅差で破った。しかし、民主党の指名争いには全体としてまだまだ不確定なことが多く残っている。

エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は3位という予想外の結果で力強く台頭した。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とジョー・バイデン前副大統領は上位3名から大きく置いていかれた形でそれぞれ4位と5位になり、両者が進む方向について深刻な疑義が呈されている。

これから全米で最初に行われた投票による予備選挙の5つの特徴について書いていく。

(1)サンダースがトップ走者に

ヴァーモント州選出の進歩主義派の連邦上院議員サンダースは2位のブティジェッジに大差をつけて勝利することはなかったが、勝利は勝利である。

アイオワ州とニューハンプシャー州を合わせて、サンダースが最も多い有権者の支持を集めたことになる。彼はネヴァダ州へも支持率を上昇させることになるだろう。ブティジェッジとクロウブシャーにとってはこれからが挑戦ということになる。

サンダースはアイオワ州でブティジェッジに対して僅差で敗れた。ニューハンプシャー州でも大勝利とまではいかなかった。しかし、ウォーレンが存在感を薄め、中道派の候補者同士が支持を食い合う状況で、サンダースは前進するのに最も良い位置にいる。

しかし、これからの道には困難が待ち受けている。穏健派の民主党員や民主党支持者と反サンダースの有権者たちが戦いもしないでおとなしくなるということはない。

しかし、ニューハンプシャー州の予備選挙でトップを取ったことで、サンダースは選挙資金集めと世論調査の支持率で勢いを増しており、これがいろいろな方面に相乗効果をもたらす可能性が高い。

全米各州で、サンダースの支持基盤は若い人たちであり、こうした人々は大規模集会に参加する。そうすると他の候補者たちの集会がどうしても小規模に見えてしまう。サンダースの集会は人気があり、インディーズのロックバンドが出演するなどして、人々に活気を持たせ、それがサンダースの選挙運動にも反映されるようになっている。

(2)討論会が重要

数日前、クロウブシャーの躍進など誰のレーダーにも引っかかっていなかった。しかし、ニューハンプシャー州での予備選挙が終わった現在となっては大きな注目を浴びる存在になった。そして、彼女の躍進は、今回の結果を予測することが困難な民主党予備選挙では何が起きてもおかしくないということを示す証拠となった。

クロウブシャーの躍進の最大の理由は先週金曜日にマンチェスター市で開催された討論会での力強いパフォーマンスであった。これまで彼女にかけていたものを彼女自身が掴み利用したのだ。

クロウブシャーは自分がいかにして連邦上院で政策を作ってきたについて鋭い主張を行ったが、同時に中西部出身者特有のユーモアも見せた。彼女は中道派のブティジェッジ、左派のサンダースと対決した際に全く逃げる姿勢を見せなかった。

全国各地の民主党員や支持者たちの多くが、討論会の後、クロウブシャーへの献金を申し出た。そうやって彼女を称賛した。ニューハンプシャー州の有権者たちは彼女を驚きの3位の位置に押し上げた。そして、激しい競争が続く予備選挙の中心に彼女を送り込むことに成功した。

(3)中道派の候補者たちはお互いに票を食い合う

ニューハンプシャー州での予備選挙の結果は民主党支持の有権者たちが穏健派の候補者を求めていることを示している。唯一の問題は有権者たちがどの候補者を支持するかを決められないということだ。

木曜日の夜の投票結果を見ると、ブティジエッジ、クロウブシャー、バイデンの得票を合わせると全投票数の50%以上となった。サンダースとウォーレンの得票を合わせると約36%となった。サンダースとウォーレンは民主党左派との協力に成功した。

サンダースを阻止したいと強く望んでいる中道派の民主党員たちの直面している問題は、候補者の誰かが選挙から撤退しない限り、中道者の候補者グループを壊して中道派の有権者の支持を一人の候補者に集めることができていないというものだ。

ブティジェッジは選挙資金集めに長けており、アイオワ州とニューハンプシャー州でトップとなったことで彼が選挙から撤退することは考えられない。

クロウブシャー選対はニューハンプシャー州で台頭した後、勢いを増している。バイデンは少なくとも勝利が期待できるサウスカロライナ州の予備選挙まで選挙戦を続けるだろうし、おそらくスーパーチューズデーまで続けるだろう。スーパーチューズデーでは宣誓済み代議員の3分の1が決まる。

スーパーチューズデーから、ニューヨーク市元市長マイケル・ブルームバーグが予備選挙に本格的に参加し始める。彼は民主党内の中道派の代表になろうとしている。

中道派に所属する候補者たちが支持者たちを取り合い続ける限り、サンダースは民主党の指名獲得の道を進むために勝利を重ね続けることができるだろう。

(4)バイデンとウォーレンにとっては厳しい夜が続いた

バイデンとウォーレンはここ数週間の世論調査で支持率が下がっていることは分かっていただろうし、実際にニューハンプシャー州での予備選挙で得票率が10%に届かないという敗北を喫した。両者ともに代議員を獲得できず、両者の陣営ともにこれから選挙資金集めも難航して資金難に陥るのではないかという評俯瞰を持つようになるだろう。

バイデンにとっては、アイオワ州で4位、ニューハンプシャー州で5位に終わったことで、「自分は最も当選可能性がある候補者だ」という主張を損なうことになった。

バイデン選対はネヴァダ州とサウスカロライナ州での非白人系の有権者から幅広い支持を得ているという事を頼みにしている。前副大統領のバイデンはニューハンプシャー州での結果に固執せずに、山場となるであろうサウスカロライナ州を訪問した。

しかし、ブティジェッジとクロウブシャーの台頭、スーパーチューズデーではマイケル・ブルームバーグが控えているといった状況で、バイデンが宣誓済み代議員の過半数を獲得するための道筋を見通すことはさらに困難になっている。

ウォーレンは自身の地盤マサチューセッツ州に隣接するニューハンプシャー州で4位に終わった。11月までの世論調査ではトップに立っていたこもあったが敗北を喫したことで、ウォーレンは選対の引き締めを図ることになるだろう。

サンダースはアイオワ州とニューハンプシャー州でウォーレンを容易に上回った。彼は左派からの支持をがっちりと固めている。ウォーレン選対はスーパーチューズデーで予備選挙が実施される各州での世論調査の数字の高さを頼みにしている。しかし、彼女は有力候補であり続けるためには2月中に勢いを回復しなければならない。

(5)民主党は深夜まで続く予備選挙に備えた

ニューハンプシャー州での予備選挙が終わるまでは人々の間でささやかに話されていたことが今は全ての人々の関心の的になっている。それは、ミルウォーキーで開催される民主党全国大会がコンテスティッド・コンヴェンション、つまりどの候補者も党の指名獲得に必要な宣誓済み代議員の過半数1990名を獲得できずに全国大会が解されることになるのではないかということだ。

現在の混戦から抜け出し、宣誓済み代議員の過半数を獲得する候補者が出る可能性はまだ残っている。

しかし、最初の2つの州での予備選挙が終わった時点で、得票率30%を超えた候補者は誰もいなかった。

中道派の支持は候補者の乱立によって分裂している。サンダースは左派の支持を固めているが、それだけで選挙戦を勝ち抜くことはできない。2020年3月3日のスーパーチューズデーが終わるまではブルームバーグが投入した数百億円の資金がどれほどの影響力を持つものになるか誰にも分からない。

民主党予備選挙はこれから長く、浮き沈みが頻繁に起きるものとなるだろう。

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初期のアイオワ州での結果に見られる5つの特徴(5 takeaways from the early Iowa results

リード・ウイルソン筆

2020年2月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/481754-5-takeaways-from-the-early-iowa-results

民主党の候補者たちが月曜日の深夜にアイオワ州を後にした。候補者たちが後にしたアイオワ州は民主党の指名候補の行方を決める力を持つ州であるはずだった。しかし、アイオワ州の持つ力はアイオワ州民主党が正確な結果を報告することに苦闘している間でどんどんなくなっていった。

学校のカフェテリアや教会の地下室、そしてアイオワ州史上初めてのモスクなどで開催されたアイオワ州の民主党の党員集会に参加した人々が解散してから約48時間経っても、最終結果はまだ出ていない。これは政治上のカレンダーにおけるアイオワ州の称賛される地位が最終的に台無しにする致命的な失敗となる可能性がある。

しかし、全選挙区の約75%の結果が公表される中で党員集会の流れが見えてきている。アイオワ州で起きたことを指標である。そして、これからの予備選挙がどのように推移していくことも示されている。

私たちがアイオワ州の党員集会の結果から学んだ5つのことを書いていく。

(1)組織が功を奏する

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が初めてアイオワ州にやってきたのは2015年のことだった。そして彼はそれからアイオワ州をほぼ離れたことはなかった。

サンダースはアイオワ州で大規模な選挙運動ティームを作り上げ、このティームは支持者を組織化するためにいくつかの革新的な方法を編み出し実行した。選挙運動ティームは、ケイシーズ・ジェネラル・ストアの従業員たちとコンヴィニエンスストアのような小売店で働く人々に特に焦点を絞った。党員集会の夜、サンダースのティームはアイオワ州の全ての選挙区で責任者を1人、もしくは1人以上配置することができた。

インディアナ州サウスベンド市前市長ピート・ブティジェッジはアイオワ州で力強いパフォーマンスを見せた。これは彼が予備選挙でトップ集団に参加するために必要な基盤となるだろう。ブティジェッジの選挙運動ティームは州全体に34の事務所を開設したが、これはほかのどの候補者よりも多かった。そして、党員集会の当日にも1000名のヴォランティアを動員して最後の戸別訪問活動を行った。

党員集会の前の数カ月、各選対は印象的な地上戦を展開していた。今回の党員集会の結果は、こうした組織化がどうして大事かを示している。ブティジェッジは全選挙区の88%で15%以上の支持を得るという条件を満たすことで代議員獲得が可能となった。サンダースは78%の選挙区で15%以上の支持を得るという条件を満たした。その他の候補者たちもこの条件を満たすのは時間の問題であるが、党員集会においてよい結果を出すためには草の根の組織作りに投資をすることが重要であることを2人の結果が示している。

(2)サンダースは人種的に多様な連合を形成している。

大統領選挙の候補者たちにとってアイオワ州に入ることは最初のテストということになる。しかし、アイオワ州がアメリカ全体を代表している訳ではない。また、民主党の支持基盤を形成している連合を代表している訳でもない。しかし、アイオワ州の一部は人種的に多様な構成になっており、特に最大の都市デモインとその周辺はそうなっている。

その中でもデモイン市東部と北部にはヒスパニック系とアフリカ系の人々が固まって居住している。そして、これらの地区ではサンダースの党員集会の結果が素晴らしいものとなった。デモイン市内の人種的に多様な地区のほとんどで、サンダースは2位の候補者に比べて2倍の支持を集めた。アイオワ州の党員集会の参加者のうち、非白人は9%を占めているが、サンダースはこれらの有権者の43%からの投票を獲得した。これは2位の候補者の2倍以上の数字である。

ジョー・バイデン前副大統領はサウスカロライナ州とネヴァダ州でアフリカ系とヒスパニック系からの幅広い支持を得ていると主張してきた。しかし、今回の結果から、バイデンの主張は彼が願っているほどに深いものではなく、サンダースは非白人の各共同体で支持を集めるようになっている。

(3)しかし、サンダースのファンは怒っている

サンダースがヒラリー・クリントン元国務長官をあと一歩で倒すところまで追いつめた2016年のアイオワ州での党員集会の後、サンダースの支持者たちはアイオワ州の党員集会に対する複数の改革を行うように主張してきた。アイオワ州民主党はこれらの改革を実行した。党員集会での最初の投票と途中で変更を経ての最終投票の結果を公表するということになった。この発表は最終的な代議員獲得数の発表とは別で行われた。

アイオワ州民主党にとっての悪夢のシナリオは最終得票数と代議員の数が一致しないことであった。人口が多い都市部の地区で勝利を得た候補者に割り振られる代議員数が、人口の少ない地方の選挙区を席巻した候補者よりも少なくなる可能性があった。

そして、このシナリオ通りのことが実際に起きた。75の選挙区からの報告が集められた時点で、サンダースはブティジェッジに約1000票の差をつけてリードしていた。しかし、ブティジェッジは代議員獲得レースでは1.7ポイント差をつけてサンダースをリードしていた。サンダースの選挙運動ティームはルール上でこのようなことが起きることは理解していたが、サンダースのファンたちはこのようなことが起きるのは間違っている、馬鹿げていると声高に叫んだ。現在の結果がサンダースの支持者たちを怒らせたままであるならば、2016年の大統領選挙を繰り返すことになるだろう。サンダースの支持者の中には本選挙でヒラリー・クリントンに投票することを拒絶した。

(4)バイデンには当選可能性があるという主張の筋道が崩れつつある

月曜日の夜に党員集会の場所に有権者が入って最初に実施された支持する候補投票では、有権者たちは一つのことを重視していた。それはトランプ大統領を倒すことだ。予備選挙が開始されてから、当選可能性から最も利益を得ていたのはバイデンだったはずだ。アイオワ州での党員集会に向かう中でバイデンの世論調査での強さとトランプを倒せる能力に注目が集まった。バイデンはトランプを「太鼓を叩くように」して倒せると述べていた。しかし、党員集会のドアが開かれる時間になり、バイデンはそうした売りを人々にすることができなくなってしまった。党員集会に参加した有権者のうち61%が重要な問題について自分たちと考えが合う候補者よりもトランプを倒せる候補者を選ぶと答えた。そうした有権者のうち24%がブティジェッジに投票し、23%がバイデンに投票した。

バイデンは民主党支持の有権者たちの間で支持の泉を維持している。これまでの数日間本誌の取材に応じた50歳以上の有権者たちのほとんど全員がバイデンのオバマ政権下の副大統領としての業績を称賛した。バイデンの選挙集会に参加し本誌の取材に応じた人々は、バイデンの最も称賛されるアピールポイントは、選挙の当選可能性が高い候補者である点であった。しかし、今週になってバイデンの当選可能性に関しては深刻な疑義が提示されている。

(5)姿を見せることが奏功した

アイオワ州の人々はおもてなしを好む。本当に好きだ。ブティジェッジほど最後の1カ月でアイオワ州全体を回って時間を使った候補者はいなかった。ブティジェッジは党員集会の1カ月前に46のイヴェントに出席した。いわゆる重点地区を中心に回っていた。この重点地区は2008年と2012年の本選挙ではオバマが、2016年の本選挙ではトランプが勝利を収めた。

アイオワ州における31の重点地区はほぼ全てが地方の地区であり、アイオワ州東部に集中している。ブティジェッジは22の地区で勝利し、9の地区で1位を取れなかった。そのうちの7地区ではサンダース、2地区ではエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)が1位となった。

民主党の党員集会での成功は必ずしも本選挙での成功につながる訳ではない。本選挙では中間派の有権者や共和党員、共和党支持の有権者も投票に参加する。しかし、少なくとも重点地区に住む民主党の有権者たちはブティジェッジを好み、高く評価した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の情勢について改めてお伝えする。アメリカのテレビ局CBSの世論調査の結果などから見て、予備選挙は大接戦であるが、バーニー・サンダース連邦上院議員の動向次第でトップがジョー・バイデン前大統領になるか、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員になるかという情勢だ。民主党予備選挙はバイデン、ウォーレン、サンダース、そしてインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジの4名がトップ集団を形成し、他の候補者たちは大きく置いていかれている。CBSは世論調査の結果などを反映させて、民主党予備選挙を次のように計算している。

CBSpollsdelegatesestimates201911001

 トップはバイデンであるが、僅差でウォーレンが続き、サンダースが3位につけている。サンダースがウォーレンを応援するとなると単純計算ではバイデンを上回り、過半数を獲得する。しかし、事はそう単純ではない。サンダースの支持者たちはウォーレンを民主党主流派寄りだと見ており、もしサンダースが選挙戦から撤退し、ウォーレンを応援するとなっても全員が素直に応援するとはならない。ウォーレンはサンダースの公約のかなりの部分を引き継ぐと約束しなければならないが、そうなると、ウォーレン支持者の一部が脱落することになる。だが、ウォーレンとサンダースが共闘するとなるとバイデンにとっては大きな脅威となる。下に掲載する通り、有権者はサンダースとウォーレンは「リベラル過ぎてトランプを倒せない」と考えている。そうなるとやはりバイデンという流れにもなる。現在、ピート・ブティジェッジが勢いを取り戻しているのは中道派にすべきという流れに乗っているからであろう。しかし、ブティジェッジがここからトップまで駆け上がることは難しい。来年のスーパーチューズデーまで選挙戦で粘りを見せて、その後は撤退して、州知事か連邦上院議員選挙を目指すということになるだろう。ブティジェッジはユーモアがあり気取っていないし、現実的な人物という評価が定まってきており、これからの転進にはプラスだ。

cbspollstooliberaltobeattrump201911001

 早期に予備選挙が実施指される各州にはそれぞれ特徴があり、アイオワ州は全米で最初に予備選挙(党員集会)が実施されるということで、各候補が力を入れる。中西部に位置しており、東部に比べて保守的だ。ニューハンプシャー州は独立の気概が強く、東部のリベラルな気風もあり、判官贔屓という特徴もある。サウスカロライナ州は南部各州の特徴でもあるが、有権者に占めるアフリカ系アメリカ人の割合が高く、民主党主流派の金城湯池だ。ネヴァダ州はアメリカ西部に属し、過激なリベラルな面もあるが、総じて民主党主流派が強い。

cbspollsiniowa201911001
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cbspollsinsouthcarolina201911001
cbspollsinnevada201911001

 CBSの世論調査の結果では、アイオワ州は大接戦だが中西部出身のブティジエッジが支持を伸ばしている、ニューハンプシャー州ではウォーレンやサンダース(ともに東部が地盤でリベラル左派)が強く、サウスカロライナ州ではバイデンが圧倒的な支持を集めており、特徴の通りの結果が出ている。ネヴァダ州も同様だ。

 選挙情勢はバイデン有利ではあるが、優位ではない。サンダースの動き次第でウォーレン勝利の可能性がぐっと高まる。これから目を離せない展開になりそうだ。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンはサウスカロライナ州で20ポイントのリード(Poll: Biden holds 20-point lead in South Carolina

ジョン・バウデン筆

2019年11月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/470990-poll-biden-holds-20-point-lead-in-south-carolina

サウスカロライナ州での世論調査の最新結果が発表され、ジョー・バイデン前副大統領は彼と接戦を演じているエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)に対して大量リードしている。
democraticprimarysouthcarolinapoll20191118001

月曜日に発表されたキュニピアック大学の世論調査の結果で、バイデンの支持率は33%となり、ウォーレンは20ポイント差をつけられて13%、サンダースは11%となった。

上位3名以外に二桁の支持率を獲得した候補者はおらず、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは第4位につけたが支持率は6%だった。

ブティジエッジに肉薄したのは大富豪のトム・ステイヤーで支持率は5%だった。ステイヤーは遅れて出馬したのだが、著名な政治家たち、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)よりも高い支持率を記録した。

サウスカロライナ州の予備選挙ではバイデンは強力な支持を得ている。しかし、アイオワ州、ニューハンプシャー州、カリフォルニア州といった早期で予備選挙が実施される州や代議員数が多い州ではサンダースやウォーレンの後塵を拝している。

今回のキュニピアック大学の世論調査はサウスカロライナ州在住の民主党予備選挙参加予定者768名を対象に2019年11月13日から17日まで実施された。誤差は4.8ポイントだ。

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新しい世論調査の結果ではアイオワ州ではトップ4名が接戦を展開(New poll shows four top-tier 2020 candidates in Iowa

レベッカ・クレア筆

2019年11月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/470838-new-poll-shows-four-candidates-as-defined-top-tier-in-iowa

アイオワ州の有権者たちはアメリカ大統領選挙予備選挙で分裂している。最新の世論調査の結果では、トップ4名の候補者が誤差の範囲内の差でトップをめぐって大接戦を展開している。

CBSYouGov共同世論調査の最新の結果が日曜日に出て、ジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は予備選挙(党員集会)が全米で最初の実施されるアイオワ州で支持率22%を獲得し、トップタイとなった。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは僅差で追い21%、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は18%の支持率を獲得した。それぞれの差は世論調査の誤差4.1ポイント以内になっており、上位4名がアイオワ州でのトップをめぐって大接戦を演じていることを示している。

上位4名以外に二桁の支持率を獲得した候補者はいなかった。カマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は5%の支持率でタイだった。

CBSYouGovの共同世論調査での支持委率の推移を見ると、ブティジエッジは15ポイントも支持率を伸ばしたことが分かる。9月の調査の時の彼の支持率は6%だった。

サンダースの支持率は9月に比べて3ポイント上昇となり、ウォーレンの支持率は10ポイとの下落となった。バイデンの支持率は3ポイントの減少となった。

ブティジェッジの台頭は土曜日に発表されたCNNの世論調査の結果からも分かる。ブティジェッジの支持率は25%で、サンダースとバイデンに対して10ポイント、ウォーレンには9ポイントの差をつけて第1位となった。

今回のCBSYouGovの共同世論調査は有権者登録済の民主党支持有権者856名を対象に2019年11月6日から13日にかけて実施された。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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