古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:シェリル・ミルズ

 古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントンが共和党のドナルド・トランプをリードしています。現在のところ、ヒラリーが選挙人では360名(選挙人全体538名の3分の2)近くを獲得するという予測になっています。

 

 それではヒラリーが盤石かというと、そんなことはありません。ヒラリーにはベンガジ事件とEメール問題という2つの問題に加えて、クリントン家(ビル、ヒラリー、娘のチェルシー)が運営するクリントン財団と国務省との間の不適切な関係についての疑惑も出てきました。

 

 こうした疑惑に対して、連邦政府の捜査機関である連邦捜査局(FBI)と起訴を行う機関である司法省に対する共和党からの批判と圧力が強まっています。

 

 ヒラリー・クリントンは2014年12月に自分が使っていたEメールサーヴァーに残っていた30000通のEメールを国務省に提出しました。これらのEメールは機密扱いのものを除いて公開されています。

 

 現在は、FBIが捜査の過程で復元した、消去されたEメール30000通が焦点になっています。これらもまた国務省に提供されています。この復元された30000通のEメールに関しては、情報公開法に基づいて裁判が起こされており、そのために少しずつ公開されていくようですが、今は、国務省が1通1通調査し、分析しているということになっています。

 

これらのEメールの調査によって、ヒラリーが宣誓した後に議会証言で述べたことと齟齬があれば、それは偽証(perjury)となります。アメリカでは宣誓後の発言に事実と異なる内容があれば、嘘をついた、偽証をしたということになって、誰でも逮捕されます。

 

 連邦議会共和党はこの偽証罪による逮捕、もしくはそれをちらつかせてのゆさぶりを狙っているようです。

 

 ヒラリーにとっては投開票日まで息を抜くことの出来ない日々が続きます。

 

(貼り付けはじめ)

 

アサンジ:司法省がクリントンのために「新しい基準を設定した」と発言(Assange: DOJ set ‘new standard’ for Clinton

 

マーク・ヘンシュ筆

2016年8月15日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/291526-assange-doj-set-new-standard-for-clinton

 

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジは、司法省がヒラリー・クリントンに対する疑惑捜査について新しい基準を設けたと発言した。

 

月曜日のCNNの番組「ザ・リード」に出演したアサンジは次のように発言した。「私たちのワシントンにいる弁護士たちが明日、ロレッタ・リンチ司法長官宛てに手紙を送付します。その内容は、リンチ長官に対して、ウィキリークスに対して国家安全保障の面と刑事犯罪の面から6年にわたって捜査を行われ、いまだに打ち切られていない、その理由を質すものです。この捜査が継続されている理由、私が政治的な亡命を続けていることです」。

 

アサンジは続けて、「司法省はヒラリー・クリントンの件を打ち切るために新しい基準を設定したように見えます。ヒラリー・クリントンに対する捜査は1年で打ち切りとなりました」と語った。

 

「ヒラリー・クリントンに対する捜査は打ち切られ、ウィキリークスに対する捜査は続行中。ウィキリークスに対する“法執行手続きが未決定”なのはどうしてでしょうか?これは大きな問題です」。

 

アサンジは、司法省によるウィキリークスに対する捜査と民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンに対する捜査を比較してみせた。

アサンジは司法省のヒラリーに対する調査について「(FBI長官の)ジェイムズ・コミーはヒラリーたちが国家安全保障を損なう意図があったと証明することが出来ないと主張しました。その結果として司法省は起訴しなかったんです。"私たちに対する捜査では、私たちに対する犯罪を行った疑惑など存在しないのです。私たちは情報を人々に向かって公開したこと以外は何もしていないのですよ」と語った。

 

「アメリカ政府は2013年の宣誓証言の中で、私たちが行った情報公開によって誰も傷つけられていないことを認めています。誰かを害するという意図がないこと、誰も酷く傷つけられてはいないということは明らかです」。

 

アサンジは、ヒラリー選対が、アサンジにはアメリカ国籍がないことを強調してウィキリークスの信頼性を低下させようとしているとも述べた。

 

「彼らは何かに酷く怯えているんでしょう。私たちは世界各国で様々な活動を行っています。私たちにはアメリカ駐在のスタッフがいます。そして、どこの国にもスタッフはいるんです」。

 

「繰り返しになりますが、ヒラリー陣営は、民主党全国委員会の幹部4名、その中には委員長のデビー・ワッサーマン=シュルツも含まれますが、彼らが辞任するに至った情報公開から人々の関心を逸らさせようとしています。」

 

ウィキリークスは2016年7月後半に20000通の民主党全国委員会のEメール(2016年1月後半から5月後半まで)を公開した。

 

Eメールの中には、民主党全国委員会の幹部たちは民主党の予備選挙でヒラリーのライヴァルとなったバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)を妨害しようと計画するような内容のものが含まれていた。

 

アサンジは今月初め、ウィキリークスはEメールの公開はヒラリーの選挙運動を妨害する意図で行ったものではないと述べた。

 

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共和党がヒラリー・クリントンを偽証罪で告訴する準備をしている(GOP lays out case for charging Clinton with perjury

 

ジュリアン・ハッテム筆

2016年8月15日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/national-security/291494-gop-lays-out-case-for-charging-clinton-with-perjury

 

連邦下院共和党の幹部2人が月曜日、民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンを偽証罪で捜査をするために司法省に詳細な命令を行うための計画を持っている。

 

1月以上前に、共和党の下院議員たちは初めて、ヒラリー・クリントンが宣誓証言の中で事実ではないことを述べたという疑いがあるので調査をして欲しいと司法省に依頼した。連邦下院の司法委員会と監査委員会の委員長(それぞれ共和党所属)は、連邦検事に対して、ヒラリーが国務省で彼女のEエールをセットアップしたことに関して議会に対して虚偽の証言を行ったと確信していると伝えた。

 

連邦下院ベンガジ問題特別委員会での長時間にわたった証言の中で、4つの場面で、前国務長官ヒラリー・クリントンの発言が、FBIがヒラリーの私的なEメールサーヴァーについて発見した事実と合致しないと下院議員たちは主張している。

 

ボブ・グッドラテ連邦下院議員(ヴァージニア州選出、共和党)とジェイソン・チャフェッツ連邦下院議員(ユタ州選出、共和党)は、ワシントン・コロンビア特別区連邦検事チャニング・フィリップスに次のように語った。 グッドラテは司法委員会の委員長、チャフェッツは監査委員会の委員長をそれぞれ務めている。「FBIの発見した事実とヒラリー・クリントン前国務長官の宣誓証言で合致しない部分があるのではないかという疑いがある。その中でも4つの場面について、FBI長官ジェイムズ・コミーが提出した事実と証拠に基づいて、詳細に調査をする必要がある」。

 

月曜日に出された書簡は、司法省に対して、ヒラリーに対する起訴をするように圧力をかけようとしている徴候を示している。しかし、司法省はヒラリーの機密情報の取り扱いの不備では起訴しないという発表を既に行った。それでも共和党は何とか起訴させようとしている。

 

グッドラテとチャフェッツはまた、ヒラリー・クリントンに対する起訴を行わないという決定を司法省が行ったことについて批判を拡大させようと、ヒラリーに対する起訴に関する考え方を公表しようとしている。月曜日の書簡に加えて、連邦下院監査委員会は、ヒラリーの証言の中で明らかに事実と異なる部分を集めた2分半のヴィデオを発表した。

 

司法省がヒラリー・クリントンを起訴しないというニュースが流れて、複数の共和党員が、ヒラリーが公の場で発言した内容とFBIが発見した事実との間に矛盾があると指摘するようになった。

 

共和党の下院議員たちは、昨年10月にベンガジ委員会でヒラリー・クリントンが行った宣誓証言について指摘を行っている。

 

その1つが、ヒラリー・クリントンは繰り返し、自分の私的なEメールアカウントで機密情報のやり取りをしたことはなかったと述べた。FBIは後にヒラリーの私的なEメールサーヴァーに残っていた少なくとも3通のEメールで、機密情報を示す印が含まれていたが、それらは不完全であって、意図的ではないミスであったと結論付けた。

 

加えて、ヒラリーは、彼女の弁護士たちがEメールを一つ一つ調査したと主張した。また、業務に関わる全てのEメールは全て2014年に国務省に提出した、更には国務長官在任中にはEメールサーヴァーを1つしか使用しなかったとも主張した。共和党の下院議員たちはこれらのポイントがそれぞれ不正確であったと主張している。

 

下院議員たちは次のように書いている。「ヒラリー・クリントン前国務長官による宣誓証言の中の4つの部分がFBIの捜査で発見された事実と合致しない。私たちは、この情報が司法省の起訴に関する考慮に資することを願っている」。

 

今月初め、司法省は、グッドラテとチャフェッツに対して、司法省は情報を見直しており、「必要があれば適切な行動を取るだろう」と通告した。

 

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報告:クリントンの側近中の側近が国務省在職中にクリントン財団を助けた(Top Clinton aide at State Dept. helped Clinton Foundation: report

 

マーク・ヘンシュ筆

2016年8月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/291188-top-hillary-state-aide-helped-clinton-foundation

 

CNNは木曜日(2016年8月12日)、ヒラリー・クリントンの側近中の側近が国務省に在職中にクリントン財団のために働いていた、と報じた。

 

シェリル・ミルズは、国務省でヒラリー・クリントン長官の首席スタッフとして勤務しながら、クリントン財団への就職を希望する人物の面接を行った。

 

クリントン家の慈善活動財団は、2009年にヒラリーが国務長官に就任した時に、いくつかのルールを定めることに同意した。このガイドラインでは、財団の活動が「ヒラリー・クリントンが国務長官就任で、利益の衝突(相反)やその可能性が出てくるようなことが起きないように」すると定めてあった。ヒラリー・クリントンは現在、民主党の大統領選挙候補者だ。

 

CNNによると、2012年6月、ミルズはニューヨークに出向き、クリントン財団の幹部の地位に就くことを希望するビジネスの世界では著名なある人物2名を面接した。

 

ミルズの弁護士によると、国務省に在職中、ミルズがクリントン財団のために働く場合には、ヴォランティアとして行うことは厳しく守られていたし、報酬も受け取らず、政府のお金をかかった経費に充当することもしなかった、ということだ。

 

ヒラリー陣営の報道担当ブライアン・ファロンは木曜日、「シェリルは、他の慈善活動の時と同じく、個人の時間を慈善財団のために無償で提供した」と述べた。

 

ファロンは続けて次のように語った。「シェリルは、ニューヨークまでの旅費を個人で支払った。そして、彼女が行ったことは国務省での仕事とは全く関係ないものであったことは明らかだ。利益の衝突(相反)があったという考えは全くもって馬鹿げている」。

 

CNNは、「ミルズはファイザー社とウォルマート者からの転職希望者を面接した」と報じた。

 

ファイザー社もウォルマート社も共にクリントン財団の大口献金者である。また、クリントン・グローバル・イニシアティヴのパートナーでもある。

 

ミルズは現在、クリントン財団の理事であり、アフリカ各国でのビジネスに特化した開発組織を運営している。

 

批判者たちは、新たに公開されたヒラリーの側近の出したEメールは、国務省とクリントン財団がかかわる汚職事件の存在の兆候を示していると主張している。

 

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スクープ:クリントン財団についての徹底的な捜査を行うかどうか内部で議論が行われた(First on CNN: Inside the debate over probing the Clinton Foundation

 

ドリュー・グリフィン、パメラ・ブラウン、シモン・クロウペック筆

2016年8月11日

CNN

http://edition.cnn.com/2016/08/11/politics/hillary-clinton-state-department-clinton-foundation/

 

CNN発。FBIと司法省の幹部が数カ月前に集まって、クリントン財団に関する汚職事件を捜査するべきかどうかを議論した、とあるアメリカ政府高官が証言した。

 

当時、3名の捜査担当者は捜査を開始すべきだと主張した。クリントン財団に寄付を行っている外国人の怪しい動きをある銀行から通報を受けたため、彼らは捜査をしたいと述べたのだ、と前出の政府高官は証言した。

 

FBIの幹部たちは、ヒラリーの国務長官在任中に国務省とクリントン財団との間の利益の衝突(相反)に犯罪性があったかどうかを捜査したいと述べた。

 

司法省は、注目を集めた著作『クリントン・キャッシュ』が発売される1年前からクリントン算段に関する様々な疑いについて調査を行っていた。しかし、犯罪性が証明されないことがわかり、起訴に至るまでの証拠が不十分であることが分かった。

 

結果として、司法省幹部は今年初めの会議の中で事件化を行わないと決定した。また、捜査依頼が実質的なものと言うよりも政治的な意図があるように思われることに懸念を持つ人々もいた。国務省とクリントン財団との関係に関する捜査に入るタイミングが、ヒラリーの私的Eメールサーヴァーとヒラリーの大統領選挙戦と重なるということも懸念の材料になった。

 

ヴァージニア州知事テリー・マカリィフィと彼のクリントン財団への献金者との関係について、FBI側は捜査を行いたいと前出の会議で主張した。司法省側は捜査を継続しても良いが、クリントン財団に対する事件化を行わないようにと述べた。

 

クリントン財団、FBI、司法省の代表はそれぞれコメントを拒否した。

 

今週、クリントン財団に対する関心は高まった。ヒラリーの国務長官在任中のEメールが新たに公開され、その内容から、国務省とクリントン財団との関係について疑義が生じた。

 

新たに公開されたヒラリーのEメールは、国務省とクリントン財団との関係に光を当てるものであった。

 

CNNが調査した結果、ヒラリーの側近シェリル・ミルズは国務長官首席スタッフとして勤務していた当時、クリントン財団にもかかわっていたことが明らかになった。2012年にミルズはニューヨークを訪れ、クリントン財団の運営幹部の地位に就職希望の2名のビジネス界では有名な人物をそれぞれ面接した。国務省は、ミルズのニューヨーク訪問は彼女の個人的な時間の中で行われたとしている。ミルズの弁護士は「彼女はそうしたことを慈善財団へのヴォランティアで行った。報酬も受け取っていない」と述べている。

 

クリントン選対は声明を発表した。その中で「これらの活動全ては彼女の国務省での責務とは全く関係なことははっきりしている。利益の衝突(相反)があるなどという考えは馬鹿げている」と述べている。

 

先月、連邦議会で行われた公聴会において、FBIのジェイムズ・コミー長官は、クリントン財団が捜査中であるかどうかについて発言することを拒否した。コミー長官は、「捜査が行われているのか、行われていないのかについてコメントすることはない」と述べた。

 

利益の衝突(相反)が犯罪行為となるためには、政府職員(公務員)が、退職後の雇用やお金のような対価を受け取ったということを示す証拠がなければならない。

 

ジュディシャル・ウォッチが新たに公開した編集済みのEメールの中に、そのような汚職を示す内容はなかった。しかし、これらのEメールの内容から、国務省とクリントン財団との関係が近すぎるのではないか、特にヒラリーが国務長官就任時に、不適切な関係が出てくるのを防ぐために財団にはかかわらないと明言した後でも近すぎたのではないかという疑問が出てくる。

 

犯罪を構成するようなことがなくても、利益の衝突(相反)を生じさせる可能性がある場合には、国務省の首席監察官はそれを調査し、必要な場合には行政上の修正を加えなければならない。国務省首席監察官室は、今年に入ってからヒラリー在任中の国務省とクリントン家との間の関係を調査している。しかし、この問題については何も発表していない。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)











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 古村治彦です。

 

 現在、民主党全国大会がペンシルヴァニア州フィラデルフィアで開催されます。予備選で何とか勝利したヒラリー・クリントンがティム・ケインを副大統領候補に従えて、いよいよドナルド・トランプとの直接対決に臨みます。

 

 今回は、ヒラリーが抱えるスキャンダルについてまとめた記事をご紹介します。ヒラリーに対する攻撃はこれらのスキャンダルを基にして行われています。これから選挙戦が佳境に入っていきますが、攻撃もますます厳しくなっていきます。

 

 その時に、ヒラリーのスキャンダルがどのようなものであるかを知っておくと大変便利(ヒラリーにしてみれば大きなお世話ですが)と思います。

 ここでは詳しく書かれていませんが、ホワイトウォーター疑惑(事件)は、ビル・クリントンがアーカンソー州知事時代に友人と共同経営していた不動産会社で不正な取引を行っていたのではないかという疑惑が持ち上がり、追及されましたが証拠不十分に終わるということになりました。記事の最後に書かれている「フォスターの事件」とは、大統領の次席法律顧問のヴィンセント・フォスターが拳銃自殺をした事件です。フォスターはクリントン夫妻の親友で、右腕、側近でした(ヒラリーと法律事務所の元同僚で愛人関係にあったのではないかとさえ言われました)。フォスターはホワイトウォーター事件やビル・クリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルについて真相を知る人物と目されていました。自殺の原因はよく分からないままに事件は幕引きされました。

 こうして見ると、「政治に関わることは怖い」と改めて思います。私たちが普段見ている政治の世界は表側だけで、裏側ではどんなことが行われているのか、すこし考えてみるだけで、恐ろしくなります。外側で愚痴を言ったり、批判をしたりをしている分には良いのでしょうが、自分が当事者として巻き込まれてしまうと、最悪命を失うことだってある世界だと、考えすぎかもしれませんが、思ってしまいます。そうした世界に40年もいるクリントン夫妻は神経が図太いのでしょう。

 ドナルド・トランプが生きてきたビジネス、経営者の世界もまた、やるか、やられるか、油断のできない世界であって、失敗して自殺する人が出る世界です。この世界で40年以上生き延びてきたのですから、トランプは何があってもびくともしない神経を持つ人です。そういう人でなければ1年以上の選挙戦を戦って大統領選挙候補者になることはできません。

 これからヒラリーとトランプの直接対決です。たとえると、お互いが超巨大戦艦で、お互いに大砲や魚雷を打ち込んで 、どちらが先に沈むかという一対一の戦いです。私は各種世論調査や大統領選挙のこれまでの結果(主に2000年以降)を見て、ヒラリーが優勢と見ています。

 しかし、ナチスドイツが持っていた超巨大戦艦ビスマルクは、イギリス海軍によって沈められました。ヒラリーを戦艦に例えると、既にベンガジ事件とEメール問題で損傷部分が出ていますから、ここを集中的に攻撃されると火事が起きて、その火事が延焼して、火薬庫に引火して大爆発、なることがあるかもしれません。私が「8対2」でヒラリー優勢と言っているうちの「2」はこの部分です。トランプはこの数字を増やしていきたいでしょうし、ヒラリーは何とか延焼を食い止めたいのです。

  民主党大会でも民主党全国委員会の幹部や委員長のEメールがリークされて(ロシアがヒラリーをけん制するためにやらせているということもあるでしょう)、大荒れになりそうです。民主党全国委員会側がヒラリーを贔屓にしてバーニー・サンダースを何とか脱落させようとしたという事件ですから、ヒラリーに直接関係がないと言えばそうですが、サンダース支持者は怒り心頭です。

 トランプとしてはここで民主党の団結に亀裂を入れて、ついでにサンダース支持者を何割かでも取り込みたいところです。サンダース自身がどのように動くかが注目です。しかし、表立って共和党のトランプ に投票しようと言うことはできないですから、大人の態度で、「謝罪や責任者の更迭、処分は要求するが、予備選をやり直すわけにもいかないので、ヒラリーを支持する」ということで一応は収まるでしょう。それでも失望したサンダース支持者が何割か離れていくでしょう。

 これからの注目は一対一の討論会です。8月、9月、10月にそれぞれ開催されますが、ここはまさに大砲、魚雷の撃ちあいです。私もこの討論会を見て、かつその時々の世論調査の結果を見ながら、情勢分析をしていきたいと思います。そこで、トランプ優勢となることは十分に考えられます。

 私が前回のブログ記事を書いた後に、ある友人から「あんなことを書かなきゃよかったのに」と言われました。私も少し後悔してします。情けない話です。しかし、前回の記事を書いたのは、あくまで、「7月のこの段階での世論調査の結果とこれまでの大統領選挙の結果を見ての情勢分析」のために書きました。 私は日本人ですので、ヒラリー、トランプどちらがなっても、日本にはまた一段と厳しい要求をしてくるだろうと思っていますので、そう考えると気が重くなります。ですから、ヒラリーに勝って欲しいと思って、前回の記事を書いたのではありません。勇み足で書いてしまいましたが、「現在の情勢と過去の大統領選挙の結果から見ると、8対2でヒラリー優勢だけど、これから100日以上もあるから情勢は変わる」と書くべきでした。

 長文になって申し訳ありません。ここまでお読みいただきありがとうございます。 


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ホワイトウォーターからベンガジまで:クリントン家のスキャンダル入門編(From Whitewater to Benghazi: A Clinton-Scandal Primer

―司法省がヒラリー・クリントンに対する捜査を打ち切ったが、国務省は彼女のEメールに関する捜査を再開している。

 

デイヴィッド・グラハム筆

2016年7月7日

『ジ・アトランティック』誌

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/07/tracking-the-clinton-controversies-from-whitewater-to-benghazi/396182/

 

ヒラリー・クリントンはフライパンから飛び出して、火の中に入っている状況になっている。7月6日、ロレッタ・リンチ司法長官は司法省が民主党の大統領選挙候補者に内定しているヒラリー・クリントンが国務長官在任中に私的なEメールを使用していたことに関して、訴追しないと発表した。その翌日、AP通信は、刑事事件の捜査は終了したが、国務省は国務省で使われているEメールに関する調査を再開した、と報じた。

 

 国務省のジョン・カービー報道官はAP通信の取材に対して、国務省は、ヒラリー・クリントンとその当時の彼女の補佐官たちによって機密情報が適切に取り扱われていなかった可能性があると見ていると語った。ヒラリーと元補佐官たちは、秘密事項取扱の解除を含む行政処分を受ける可能性が高い。これは、ヒラリーの政治生命に傷をつけることになり、11月の本選挙勝利後に、彼女が国家安全保障政策ティームのメンバー選びを難しくすることになる。

 

 ジェームズ・コミーFBI長官は7月5日にヒラリー・クリントンの国務長官在任中の私的Eメール使用に関していかなる犯罪行為も見つからなかったので訴追には当たらないという声明を発表したが、ヒラリーが望んでいた完全な無罪放免とはならなかったことは記憶しておくべきだ。コミーはヒラリーのEメール使用に関して厳しく批判した。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報の取り扱いに関する法律に意図的に違反していたことを示す証拠を見つけることはできなかった。しかし、極めて機密性の高い、取扱注意の情報を取り扱う際に、極めて不注意であったことを示す証拠は存在する」とコミーは述べた。ヒラリーは、同時機密であった情報のやり取りはしていないと主張していたが、FBIは彼女がやりとしたEメールの中で、110通の中に機密情報が含まれていたことを発見した。コミー長官は、ヒラリーのEメールがハッキングされたことを示す直接的な証拠はないと述べたが、同時に「合理的な人間がクリントン国務長官の地位に就いたら、攻撃されやすいシステムを使うべきではないことは分かるであろう」とも述べた。

 

 これらの発言はヒラリー・クリントンに関する判断は間違っていて、彼女の説明の前提が大きな矛盾を抱えていることを示している。コミーFBI長官は訴追できるだけの証拠は存在しなかったと述べたが、共和党はこの発表を、怒りをもって迎えた。コミーとリンチは連邦下院の委員会に召喚されている。連邦下院議長ポール・ライアンは、ヒラリーに非公開の公聴会を開催することを提案したが拒否された。トランプ旋風が吹き荒れる中、Eメール問題はとても珍しい現象を引き起こしている。それは、共和党が1つの問題で団結して行動している。ヒラリーは、不人気度が高く、信頼度が低い。そのヒラリーにとって、これらの動きはトラブルを増幅させることになった。この出来事を、ウォーターゲート事件で有名になった言葉「犯罪ではないが、もみ消しだ」の具体例だと評する人たちも多い。彼女は機密情報を送らなかったと主張したが、この主張はスキャンダルの解消には役立たなかった。犯罪ではなかったにしても、Eメールサーヴァーを巡ってダメージは蓄積した。

 

 コミー長官の一連の発言はヒラリーにとって悪いものであったが、Eメール問題についてあまり言いすぎるのは止めよう。ヒラリーにとって最悪のケースは、FBIが起訴を求めることであった。しかし、ほとんどの専門家たちは起訴されるべきではないと考えていた。もしリンチ司法長官が起訴提案を拒絶しても、起訴が提案された時点で、ヒラリーの選挙戦にとっては致命的なものとなったであろう。ヒラリーにとってこの2週間で2回目の一息つける時間ができた。2012年9月11日に発生したリビアのベンガジにあるアメリカ公使館の4名のアメリカ人殺害事件が発生した。事件を調査していた連邦下院特別委員会は6月28日に報告書を発表した。報告書で、在外公館の安全対策が不十分であったと批判しているが、ヒラリーが、攻撃があった夜にこれを無視していたことを示す証拠は見つからなかったとしている。

 

 まとめると、Eメール事件とベンガジ事件の調査は、ヒラリー・クリントンにすぐに降りかかりそうな危険(訴追)を取り除くことになった。しかし、ベンガジ事件の調査と底から派生したEメールスキャンダルは、ヒラリーの選挙戦を危うくする可能性がある現在進行形のスキャンダルだ。アメリカ国民はこれまでの数十年間、スキャンダルを見せ続けられることでそれが慢性通のようになり、そのためにビル・クリントンとヒラリー・クリントンを信頼できないとアメリカ人は多く存在する。多くのスキャンダルが火ではなく、煙の段階のものであり、中には全く費など存在しないものもあるが、スキャンダルによるダメージはリアルなものだ。

 

 連邦下院のベンガジ特別委員会はベンガジのアメリカ領事館攻撃に関してヒラリー・クリントンが国務長官として間違った行動を取ったことを示す証拠を発見できなかった。しかし、委員会の調査の過程で、彼女の私的Eメール使用問題が明るみに出た。これはクリントン一家のパターンといえるものであった。クリントン一家は1974年にビル・クリントンが初めて選挙に出て以降、人々の注目を浴び続けてきた。何か潜在的にスキャンダルの種になりそうなものが出てくるが、それは何でもないことが証明される。しかし、調査が進むと他の疑問となる行動が出てくるというのがクリントン一家のパターンだ。この典型例がホワイトウォーター事件だ。これは1978年にビルとヒラリーが行った不動産投資の失敗を巡る事件だ。操作では何も間違った行動がとられたことを示す証拠は見つからなかったが、捜査の過程でクリントン大統領の偽証と捜査妨害が明るみに出で、弾劾されることになった。

 

 ヒラリー・クリントンは民主党の大統領選挙予備選挙の過程で、ホワイトウォーター事件から国務省のEメール問題まで、クリントン関連のスキャンダル全てが細かく調べられている。汚職にまみれたニクソンや党派的な憎悪の対象となったジョージ・W・ブッシュなど含むあらゆるアメリカの政治家の中で、ビル・クリントンとヒラリー・クリントンほど、常に攻撃に晒され、それが一大産業になるほどにまでした人物たちは他に存在しない。それぞれのスキャンダルを追跡し、その発生原因、深刻度を見ていくのは詰まらない試みではない。ここに入門編としてこの論稿を書いていく。私たちは新しい情報が出てきたら更新していく。

 

●ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァー問題(The Clintons’ Private Email Server

 

・内容:ベンガジ事件の調査が行われている最中に、『ニューヨーク・タイムズ』紙のマイケル・シュミット記者は、ヒラリー・クリントンが国務長官在任時に私的なEメールアカウントを使用していたと報じた。このスキャンダルは、ヒラリーのニューヨークにある邸宅内に設置された私的なEメールサーヴァー使用にまで話が大きくなった。ヒラリーとスタッフはどのEメールを公的な記録して国務省に提出し、どれを提出しないかを決定した。彼らは、自分たちが私的なEメールだと判断したものはすでに廃棄したと述べた。

 

・期間:2009年から2013年まで(ヒラリー・クリントンの国務長官在任時)。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、フーマ・アベディンを含むヒラリーの側近たち。

 

・深刻度:深刻だが、大変深刻というところまではない。国務省の独立調査官は、5月に公表した報告書の中で、ヒラリー・クリントンのEメール使用は深刻な誤りであったと述べた。しかし、ロレッタ・リンチ司法長官は7月6日、司法省は刑事事件として起訴しないと発表した。これによって起訴されないということになり、ヒラリーの選挙戦にとって大変重要な出来事になった。しかし、Eメール問題は、これからも彼女にずっとまとわりつくスキャンダルとなるであろう。ジェームズ・コミーFBI長官は、ヒラリーの行動について厳しい発言を行った。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報取り扱いに関する法律を意図的に破ろうとしたことを示す証拠を発見することはできなかったが、取扱に注意を要する極めて機密性の高い情報の取り扱いに関して極度に注意不足であったことを示す書庫は存在した」とコミー長官は述べた。この発言は、選挙期間中、ずっと繰り返されることになるだろう。ヒラリー・クリントンの使っていたサーヴァーがハッキングされたのかどうかという疑問にはまだ答えがない。コミー長官は、FBIはハッキングされたことを示す証拠を発見できなかったと述べたが、「“直接的な”証拠は発見できなかった」とも述べた。最近になって公表された宣誓証言書の中で、フーマ・アベディンはEメールの脆弱なセットアップについて不満を漏らしており、「このシステムは良くない」と言っていたということが明らかにされた。

 

●ヒラリー・クリントンの国務省Eメール問題(Clinton’s State Department Emails

 

・内容:ヒラリー・クリントンの私的なEメールサーヴァーの問題を別にして、ヒラリーが国務省に提出したEメールには何が書かれていたのかということも問題になっている。ベンガジ問題に関するEメールのいくつかが公表されたが、公的記録法によってその他のEメールは公表されていない。しかし、これらも公表に向けての過程の中にある。

 

・期間:2009年から2013年まで

 

・深刻度:深刻だが、そこまで深刻ではない。政治関係者たちはEメールの中からヒラリーにダメージを与えるような文言を見つけることを期待していたが、そのだいぶ部は退屈な内容であった。中にはシドニー・ブルーメンソールからのEメールのように興味深い内容のEメールが発見されることもあった。よりダメージが大きいのは、110通のEメールの中に、当時は機密指定された情報が書かれていてやり取りされたという事実だ。ヒラリーはずっと機密情報のやり取りはしなかったと主張していた。一方、いくつかのEメールは徐々に公開されつつある。国務省は、裁判所の命令を受けて、ヒラリーが提出したEメールを少しずつ公開している。しかし、彼女が提出しなかったEメールも存在するが、これらは裁判闘争の中で明らかにされつつある。特に、保守派のグループであるジュディシャル・ウォッチが行っている裁判で、ヒラリーが提出しなかった160通余りのEメールが公表されつつある。そして、どうしてこれらのEメールが国務省に提出されなかったのかという疑問が湧いて出てくる。 有る機会に、ヒラリーは、彼女の提出したEメールがどのように取り扱われるのか知らないと語った。「私は私の書類が国務省でどのように取り扱われているか知らなかったことに気付いた。誰が私の個人的なファイルと職務上のファイルを管理しているのだろうか?」と述べた。

 

●ベンガジ問題(Benghazi

 

・内容:2012年9月11日、リビアのベンガジにあるアメリカ領事館に攻撃が行われ、クリス・スティーヴンス大使と3名のアメリカ人が殺害された。事件発生以降、共和党は、ヒラリー・クリントンがアメリカの在外公館の安全対策を怠った、また、彼女はテロリストが攻撃を計画していたことを知りながら、攻撃が自然発生的なものだったと思わせようとした、として非難している。ヒラリーは2012年10月22日に最初の議会諸言を行った。

 

・期間:2012年9月11日から現在まで。

 

・深刻度:6月28日に連邦下院ベンガジ問題特別委員会は報告書を発表した。これ以降、ベンガジ事件に対する関心は低下している。報告書では、ベンガジのアメリカ領事館を含むアメリカの海外公館の防御態勢が準備不足であると批判している。しかし、確固とした証拠も攻撃があった夜にヒラリーが行うべきであったことについての失態も新たに発見できなかった。保守派の人々は彼女をベンガジ試験で攻撃し続けたいのであろうが、彼女にとっての最大のダメージはクリントン一家のパターンが繰り返されたことで起きた。連邦下院のベンガジ事件調査の過程で、ヒラリーにとって大きなダメージであるEメール問題が明らかにされたのだ。

 

●国務省における利益の衝突(Conflicts of Interest in Foggy Bottom

 

・内容:ヒラリー・クリントンの国務長官首席補佐官に就任する前、シェリル・ミルズはニューヨーク大学に勤務しながら、4カ月無給で国務省でも勤務をした。彼女はこの時、ニューヨーク大学がアブダビに進出し、キャンパスを建設するための交渉においてその地位を利用したとされている。2012年6月、当時の国務長官次席補佐官のフーマ・アベディンの地位が「特別公務員」に変更された。これによってアベディンは、ビル・クリントンの右腕と呼ばれた人物が経営しているコンサルタント会社「テネオ」に勤務することが出来た。アベディンはクリントン財団からも給与をもらい、同時にヒラリー・クリントンから直接お金をもらっていた。これらのケースとは別に、クリントン財団への最大の献金者であるラジフ・フェルナンドは国務省の国際安全保障顧問会議のメンバーに選ばれていた、とABCテレビが報じた。フェルナンドは他のメンバーに比べて委員会のメンバーにふさわしくないことは明らかであったが、国務長官オフィスの強い要請でメンバー入りとなった。内部のEメールのやり取りでは、国務省の職員は最初、ヒラリーのためにこのことを隠そうとしたことが明らかになった。ABCの報道から2日後、フェルナンドは会議のメンバーを辞任した。

 

・人物:シェリル・ミルズとフーマ・アベディンはヒラリーの長年の側近である。アベディンは現在、ヒラリーの大統領選挙ティームに参加している。また、アベディンはアンソニー・ウェイナーと結婚している。

 

・期間:2009年1月から2013年2月まで。

 

・深刻度:これは不思議な内容のスキャンダルだ。そこには利益の衝突に関する疑問が起きる。例えば、アベディンがテネオと国務省両方に勤務していた時、テネオの顧客は国務省から特別な取り扱いを受けたのかどうか、という疑問が出てくる。簡単に言うと、クリントン財団とビル・クリントンとヒラリー・クリントンの役割との間で利益の衝突があったということなのである。

 

●シドニー・ブルーメンソール(Sidney Blumenthal

 

・内容:ブルーメンソールは元ジャーナリストで、第2期ビル・クリントン政権で大統領補佐官を務めた。この時代に様々なスキャンダルに見舞われたクリントンを助けた。ブルーメンソールは2008年のヒラリー・クリントンの大統領選挙ティームの顧問を務めた。そして、ヒラリーが国務長官に就任した時、ブルーメンソールを国務省に迎えようとした。オバマの側近たちは、選挙期間中にオバマ候補に対する激しい攻撃を企図したのはブルーメンソールだったことを知っていたので、ヒラリーの要請を拒絶した。そこで、ヒラリーは、ブルーメンソールを非公式に顧問として迎えた。同時期、ブルーメンソールはクリントン財団から給与を貰っていた。

 

・期間:2009年から2013年まで。

 

・深刻度:中程度。ヒラリーは既にある程度のダメージを受けている。「ベンガジ領事館への攻撃は自然発生的なものだった」というシナリオのアイディアを出したのはブルーメンソールであった。しかし、このアイディアは間違いで、ヒラリーとオバマ大統領に対する政治的攻撃の道具となってしまった。ブルーメンソールはこの他にも様々な問題について国務長官であったヒラリーに助言を行った。北アイルランド問題や中国問題など様々な問題でもアドヴァイスを行った。また、ブルーメンソールは、息子のマックスを通じて自分の分析をヒラリーに届けていた。マックスはイスラエル政府を激しく批判している人物で、保守派からは嫌われている。しかし、公開されたEメールによると、ヒラリーの外交政策に関する首席アドヴァイザーのジェイク・サリヴァンは、ブルーメンソールの分析を否定し、ヒラリーがブルーメンソールの判断に信頼を置いていることに疑問を呈していたことが明らかになった。

 

●各種講演(The Speeches

 

・内容:ビル・クリントンが2001年に大統領職を退いてから、クリントン一家は講演を行って数千万ドルを稼ぎ出した。

 

・期間:2001年から現在まで。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、チェルシー・クリントン

 

・深刻度:一時的には危険だ。しかし、ぱっと燃え上って、鎮火するだろう。バーニー・サンダース連邦上院議員は、2016年初めに、ヒラリー・クリントンはゴールドマンサックスのような大銀行で講演を行っており、彼女はウォール街に妥協的だと批判したが、この攻撃は有効であった。ヒラリーは講演記録を公表すべきだという要求が今でもなされている。彼女はこの要求を拒否した。「他の全ての候補者がこれまでの講演の記録を公表するなら、私も従う」と述べた。クリントン一家は、スキャンダルにまみれ、司法の調査を受けながらホワイトハウスを後にした。そんなクリントン一家にとって、元大統領という肩書を使ってのお金儲けができる講演会は、富を再形成するためにはうってつけの方法であった。しかし、こうした講演会については様々な疑問が出てくる。ビル、ヒラリー、チェルシーはどこで講演を行ったのか?講演料の金額はどのように決まったのか?彼らは講演で何を語ったのか?彼らはどの講演がクリントン財団を通じた慈善事業のもので、どの講演が個人の収入となる公演となるかをどのように決定したのか?ビル・クリントンが以前に国務省とビジネスを行った顧客のために講演を行うというような、利益の衝突や利益供与のケースは存在するのだろうか?

 

●クリントン財団(The Clinton Foundation

 

・内容:ビル・クリントンは1997年に財団を創設した。しかし、実際には彼が大統領職を退いてから、クリントン財団が彼にとっての主要な活動組織となった。ビル・クリントンは財団を通じて様々な活動を行っている。人々の健康改善から象牙密猟、中小企業の支援、子供たちの成長まで様々なプロジェクトを行っている。クリントン財団は様々なプログラムを通じて、巨大な国際的慈善活動団体となっている。2013年にヒラリー・クリントンが国務長官を退任してから、財団の名前はビル・ヒラリー・チェルシー・クリントン財団に改められた。

 

・期間:1997年から現在まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン、チェルシー・クリントンなど。

 

・深刻度:クリントン財団の強みは、ビル・クリントン大統領の知的な雑食性にあるが、弱点は、飽きやすさと詳細に対する関心がないことである。慈善事業のレヴェルでは、クリントン財団は外部の評価団体からは高い評価を受けている。批判する人々は、クリントン財団が余りにも手を広げ過ぎで様々なプログラムに関わっているが、財団のお金は目的を達成するには足りないと批判している。クリントン財団は税務申告で間違いを犯し、それを訂正しなければならなかった。しかし、クリントン財団に関する根本的な問題は、2つの関連した問題に分けられる。一つ目の問題は、利益の衝突の問題だ。クリントン一家が行っている慈善事業が彼らの有料の講演にどれくらい関わっているのか?彼らの講演がヒラリー・クリントンの国務長官の仕事とどれくらい関わっていたのだろうか? アメリカの政策に絡んでお金を儲けたのだろうか?クリントン財団はクリントン家の友人たちの会社に不適切な形でお金を流していたのか?二つ目の問題は、情報開示に関わる問題だ。ヒラリーが国務長官に就任した時、ヒラリーはクリントン財団の情報をある程度開示することに同意した。しかし、そうした情報開示は行われていない。ヒラリーの国務長官時代の私的Eメール使用問題もあって、これらの諸問題に答えを出すことはより困難である。

 

●過去の悪夢の日々(The Bad Old Days

 

・内容:クリントン夫妻は長年にわたり批判の的になってきた。特に保守派のメディアで今でも取り上げられるスキャンダルが数多く存在する。ホワイトウォーター事件、トゥルーパーゲート事件、ポーラ・ジョーンズ、モニカ・ルインスキー、トラヴェルゲート事件、ヴィンス・フォスターの自殺、ジュアニタ・ブロードドリックなどが取り上げられている。

 

・期間:1975年から2001年まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリトン、脇役たち。

 

・深刻度:常識では、これらはそこまで危険ではない。フォスターの事件は不幸なものだ。その他のルインスキーとホワイトウォーター事件は既に調べ尽くされており、ヒラリーにこれ以上のダメージを与えることはできない。実際のところ、ルインスキースキャンダルは支持率を高める効果があった。しかし、2016年1月に再び浮上したジュアニタ・ブロードドリックに対する婦女暴行事件は、常識が本当に賢いのか、ただ常識的なのかどうかを試すケースとなる。5月23日、ドナルド・トランプはブロードドリックスの事件を強調するヴィデオを公表している。

 

(終わり)

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