古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:シリア

 古村治彦です。

 

 明日にも北朝鮮からミサイルが飛んでくる、サリンを弾頭に付けたミサイルが飛んでくるという、安倍政権の意図を「忖度」したマスコミの煽情的な報道がなされたり、一部有名人による、北朝鮮のミサイルが飛んでくる、飛んできて自分の家族に被害が出たら、テロ組織を結成して日本国内の売国政治家や売国文化人を潰すというアホ丸出しのツイートがなされたりしています。

 

 アメリカがシリアの空軍基地1か所にトマホークミサイルを撃ち込んで以来、「大変だ、大変だ、戦争になる」という不安が煽られています。しかし、冷静になって状況を考えてみましょう。シリアへの攻撃に関しては、空軍基地1か所にトマホークミサイルを撃ち込んだだけのことで、甚大な被害が出たという話は出ていません。攻撃前にシリアにいるロシア軍に被害が出ないように、ロシアとフランスの外相には事前通告がしてあったのですから(日本には事前通告があったのかなかったのか、岸田文雄外相は答えていません)、シリアにも当然その話が伝えられていた、もしくはシリアはロシア軍の動きでその動きを察知していたということは考えられる訳ですから、戦闘機や武器の避難、人員の退避は可能であったということになります。そうなると、あのトマホークミサイル59発は、数百億、数千億の花火大会であったというくらいにしか効果はないものです。地上軍の派遣もない訳ですから、シリアのバシャール・アサド政権の転覆もしばらくはないということになります。

 

 トランプ政権は、「化学兵器を使った攻撃をしないように」ということで、今回のミサイル攻撃を行った訳ですが、これはアサド政権が化学兵器を使ったという断定のもとに行われた攻撃です。アサド政権が使ったという証拠を示すレポートを国防総省は発表しましたが、アメリカの情報機関の能力の低下は2001年の同時多発テロ事件前後から今まで、明らかになっています。

 

 シリアに関しては、化学兵器使用を「誰に対しても許さない」という姿勢をアメリカが示すということで、シリア軍の基地が選ばれて、ミサイルが撃ち込まれた(花火が打ち上げられた)ということになります。政権転覆(regime change、レジーム・チェンジ)を意図したものではないということが明らかです。

 

 北朝鮮に関しても「核開発を進めるための実験をするな」という要求をトランプ大統領は出していますが、政権転覆を意図していないということは下に貼った記事から明らかです。

 

 トランプ大統領は、政権転覆を意図しているのではなく、とりあえずの危険を除去、もしくは起こってしまったことの再発の防止を求めています。これが彼の目的です。そして、その目的を達成するために、硬軟取り混ぜた方法で相手から譲歩や合意を引き出そうとしています。ディールをやろうとしている訳です。トランプは介入しようとしないという点で、バラク・オバマ前大統領の路線の継承者であると言えます。

 

 また、トランプ大統領は、アメリカがシリアと北朝鮮に直接介入・対処して国力を費消してしまうことを避けるために、それぞれロシアと中国のお尻を叩いています。というよりも、責任転嫁をしています。問題の原因はアメリカにあるのに、その尻拭いを中露に刺せようとしています。厚顔無恥はアメリカのお家芸ですからしょうがありません。

 

 シリアで化学兵器を使わせず、北朝鮮に核実験をさせないという目的を達成するために、強硬な構えを見せながら、裏では交渉しているのがアメリカのトランプ政権だと思います。中国やロシアとのパイプが切れかけているようにも見えますが、ヘンリー・キッシンジャーがお膳立てをして、ジャレッド・クシュナーが交渉役になっているのは明らかです。ジャレッド・クシュナーは親族だから切れない、とトランプが発言したという話もありますが、クシュナーがトランプとキッシンジャーとの会談(2016年ン5月)をお膳立てしたことを考えると、クシュナーはトランプ政権の外交におけるキーパーソンです。トランプ政権は交渉を行っているでしょう。

 

 日本ではシリアのことはどうしても遠い中東での出来事ということで関心が高まらず、北朝鮮はお隣の国のことですから過剰に反応してしまいます。北朝鮮はアメリカが核攻撃をしてきたら核攻撃で報復すると述べています。これは、自分から核兵器を使った攻撃をしないと述べていることになります。また、アメリカ本土まで届くミサイルに核弾頭をつけて届かせる技術が北朝鮮にあるのかというと疑問です。

 

 そうなると、北朝鮮が報復するということになると、標的は日韓ということになります。日韓はアメリカと同盟関係を結び、核の傘の下で、守ってもらっているということになっています。しかし、北朝鮮とアメリカとの間で戦争が起きた場合に真っ先に被害を蒙るのは日韓ということになります。また、中国やロシアも無傷ではすみません。日韓中露で世界のGDPの約25%を占めています。いわば世界経済のエンジンであるこれらの国々に迷惑をかける選択をアメリカがするでしょうか。

 

アメリカ国債を日中で100兆円以上ずつ、合計すれば発行額の10%以上も購入しています。アメリカが北朝鮮と戦争になって、北朝鮮が破れかぶれでミサイルを司法に飛ばしたら、日韓中露に大変な被害が出て、世界経済は崩壊の危機に瀕しますし、アメリカ国債も暴落、そして、アメリカが築き上げてきた戦後の世界秩序は崩壊します。

 

 ですから、北朝鮮には強硬な姿勢を見せながら、裏で中国を使って、もしくは中国を通して交渉して、核開発プログラムの停止を交渉していると私は見ています。アメリカが先制攻撃をして、北朝鮮がこの世から完全になくなってしまわない限り、少しでも反撃能力が残っていたら、ミサイルを数発でも残していて、それを破れかぶれで発射したら、それでアメリカは相当なダメージを受けますし、近隣の日韓中露は物理的に大きな被害を蒙ることになります。

 

 ですから過度に恐れる必要はありません。だいたい、安倍首相はこんな緊迫した中で、観桜会を開き(2012年の野田内閣は北朝鮮のミサイル発射があって中止)、鉄鋼ビルヂングの重役などオトモダチや昭恵夫人と3時間も会食を楽しみ、ホテルのジムで運動しているのですから。安倍首相がのんびり休日を楽しんでいます。ですから煽動に載って過剰に不安を持つ必要はないと思います。また、アメリカのマイク・ペンス副大統領も韓国や日本を歴訪します。次の大統領選挙で有力な共和党候補者になり得るペンス副大統領が危険に晒されるという可能性は極めて低いでしょう。
 

(貼り付けはじめ)

 

北朝鮮に「最大限の圧力」=トランプ政権、体制転換求めず―米紙

 

時事通信 4/15() 7:47配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170415-00000012-jij-n_ame

 

 【ワシントン時事】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は14日、トランプ政権が北朝鮮政策について、体制転換を目指すのではなく、核・ミサイル開発を放棄させるために「最大限の圧力」をかける方針を決めたと報じた。

 

 2カ月にわたる包括的な政策見直しを終え、国家安全保障会議(NSC)で今月承認されたという。

 

 新政策は、北朝鮮を核計画放棄の交渉に復帰させるために制裁や外交的手段を用いるという。核実験や違法な行動の停止だけでなく、朝鮮半島の「非核化」を目標にする。また、北朝鮮と取引のある中国企業を標的にした制裁も準備するが、「まず中国が自発的に北朝鮮に影響力を行使する機会を与える」という。 

 

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朝鮮半島、取り返しのつかない事態に陥るのを防ぐ必要=中国外相

 

ロイター 4/14() 17:18配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170414-00000065-reut-kr

 

[北京 14日 ロイター] - 中国の王毅外相は14日、朝鮮半島情勢が取り返しのつかない事態に陥るのを防ぐ必要があるとの見解を示した。中国を訪問中のフランスのエロー外相との共同会見で語った。

 

北朝鮮を巡っては、国連の制裁にもかかわらず6回目の核実験やさらなるミサイル発射実験を間もなく行うのではないかとの懸念が高まっている。

 

ティラーソン米国務長官は先月、北朝鮮に対する戦略的忍耐の政策は終わったと発言し、北朝鮮の脅威が高まれば軍事行動も選択肢になるとの見解を明らかにしている。

 

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北朝鮮ナンバー2、「核攻撃には核攻撃で反撃」

 

AFP=時事 4/15() 12:28配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170415-00000011-jij_afp-int

 

AFP=時事】北朝鮮のナンバー2、崔竜海(チェ・リョンヘ、Choe Ryong-Hae)朝鮮労働党副委員長は15日、米国から核攻撃を受けた場合、北朝鮮も核攻撃で反撃する用意があると述べた。

 

 崔副委員長は、朝鮮中央テレビ(KCTV)で放映された大規模軍事パレードの開会式で「わが国には全面戦争には全面戦争で応じる用意があり、核攻撃を受けた場合、わが国流の核攻撃で反撃する用意がある」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News

 

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北朝鮮が軍事パレード 金正恩氏も出席、アメリカに自重を促す主張も

 

朝日新聞デジタル  |  執筆者:     朝日新聞社提供

投稿日: 20170415 1323 JST 更新: 20170415 1323 JST

http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/15/north-korea-parade_n_16024326.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

 

 北朝鮮の平壌で15日午前、故金日成(キムイルソン)国家主席の生誕105周年を祝う軍事パレードが行われた。金正恩(キムジョンウン)委員長も背広姿で出席した。朝鮮中央テレビは午前9時35分(日本時間同10時5分)からパレードを生中継した。北朝鮮はトランプ米政権を激しく非難する一方、米国に自重を促すなど、緊張を避ける動きも出始めた。

 

 軍事パレードの開催は、2015年10月、朝鮮労働党創建70周年の際に実施して以来となる。北朝鮮関係筋によれば、北朝鮮は当初、25日の軍創建85周年に合わせて開催するとしていた。米原子力空母カールビンソンの朝鮮半島近海への接近に対抗し、この日に繰り上げたとみられる。

 

 崔竜海(チェリョンヘ)党副委員長は演説で「米国が挑発に出れば、直ちに壊滅的な打撃を与える。全面戦には全面戦で、核戦争には我々式の核打撃で対応する」と主張した。

 

(朝日新聞デジタル 20170415 1146)

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







 古村治彦です。

 

 先週のトランプ大統領のシリアに対するミサイル攻撃から、世界は緊張状態に入りました。日本関連で言えば、アメリカが北朝鮮に対して軍事行動を起こすのではないかという懸念が広がっています。アメリカが瞬時に北朝鮮を屈服させることが出来なければ、反撃はアメリカではなく、中国や韓国、日本に対してなされますが、そうなれば世界経済は立ち直れないほどの大ダメージを負うでしょうし、アメリカは日韓に関しては「防衛する」という幻想を持たせていた訳ですから、アメリカへの信頼は失墜し、アメリカは世界で唯一の超大国である地位を失うでしょう。北朝鮮問題は対応を誤ると、アメリカも道連れで世界秩序が変化することになるので、アメリカとしては、先制攻撃はできません。

 

 先週のシリア攻撃に関しては、化学兵器を使った攻撃を行った戦闘機が離発着した空軍基地に59発のトマホークが撃ち込まれたものですが、これは花火大会に毛の生えた程度の効果しかないものです。もちろん、警告であって、次はもっと大規模にやるぞ、というメッセージを伝えたということになるのですが、シリア軍を屈服させるには数日を要しますが、シリア軍を捨て鉢の状態に追い込んだ場合に、何をやるのか、戦闘訓練を積んだ正規軍をゲリラ化させる可能性も高く、すぐに事態が収拾されることは考えにくく、イラクと同じ無秩序と混乱を引き起こし、アメリカが掲げているIS打倒も遠のくことになります。アメリカはロシアが責任を果たしていないと非難していますが、元々、問題を作り出したのはアメリカですから、アメリカの身勝手さばかりが浮き彫りにされてしまう形になっています。

 

 ただ、ヤクザも含む、交渉の上手なやり方というのは、脅したりすかしたりを両面でうまく使うということです。表では派手に喧嘩をしながら、裏で落としどころを探るということは交渉がうまくいくやり方です。今回のシリア攻撃も中国の習近平国家主席の訪米に合わせて行われた訳ですが、ロシアとフランスに事前通告済みで、そうなると、シリアと中国にも事前に分かっていたということになります。ですから、表ではワーワー、ニッキー・ヘイリー国連大使が女優気取りで国連で三文芝居をやっている間(彼女は真剣にやっているでしょう、ネオコンですから)、裏で取引がなされているでしょう。

 

 トランプ大統領はシリアへの地上軍派遣を否定しましたし、国務省のナンバー2である副長官にネオコンのエリオット・エイブラムスの登用を拒否しました。この点で、トランプ大統領はまだ「レッドライン(超えてはならない最後の一線)」を越えないという姿勢が明示されていると思います。

 

 ネオコン系、人道的介入主義派に外交政策と軍事政策で悪さをされるとあっさりとレッドラインを越えさせられてしまいます。ですから、トランプ政権でこれらの勢力が増大しないことを願うばかりです。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプは国務省ナンバー2のポストにジョン・サリヴァンを指名(Trump to nominate John Sullivan as No. 2 at State Dept.

 

ジェシー・バイルネス筆

2017年4月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/328406-white-house-announces-pick-for-no-2-at-state-dept

 

トランプ大統領は、弁護士のジョン・サリヴァンを国務省ナンバー2のポストに指名する予定であると木曜日夜にホワイトハウスが発表した。

 

ホワイトハウスの発表によると、サリヴァンは、国務副長官と国務副長官(運営管理・資源担当)の両方を兼任することになる。サリヴァンの俸給は1つのポスト分だけ支払われることになる。

 

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、トランプ大統領とレックス・ティラーソン国務長官の間でサリヴァンをナンバー2のポストに就けることで合意ができたと報じた。同紙は、サリヴァンはもともとトランプ政権では国防総省の法律顧問に起用される予定であったとも報じている。

 

サリヴァンはワシントンDCにあるメイヤー・ブラウン法律事務所の共同経営者で、この法律事務所の国家安全保障問題担当部門の共同委員長を務めている。

 

サリヴァンは、政府の諮問委員会である「アメリカ・イラクビジネス対話」の委員長を務めた。また、司法省、国防総省、商務省に勤務した経験を持つ。ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領時代には商務副長官を務めた。

 

ティラーソンは、レーガン政権、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権に勤務した経験を持つヴェテランのエリオット・エイブラムスを副長官に指名したいと考えていた。しかし、トランプ大統領は、昨年の選挙期間中にエイブラムスが自身を批判していたことを知り、難色を示した。

 

火曜日、ホワイトハウスは、財務次官補(テロ資金対策担当)にマーシャル・ビリングスリー、商務次官(国際貿易担当)にギルバート・カプラン、国土安全保障省法律顧問にジョン・マーシャル・ミトニックを指名すると発表した。

 

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トランプ:「私たちはシリアに地上軍を送らない」(Trump: 'We're not going into Syria'

 

ジョーダン・ファビアン筆

2017年4月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/328383-trump-were-not-going-into-syria

 

トランプ大統領は火曜日、アメリカはシリアにおいて全面的な戦争をすることはないだろうと述べた。先週のミサイル攻撃によってシリア内戦にアメリカが関与する可能性が高まったという懸念を和らげようとしての発言であった。

 

「フォックス・ビジネス・ネットワーク」とのインタヴューの中で、トランプは「私たちはシリアには行かない」と述べた。

 

トランプは、サリンガス攻撃を行ったシリア国内の航空基地に対して59発の巡航ミサイルを撃ち込んだ。この決定について、シリアの指導者バシャール・アサドが自国民に対して再び化学兵器を使用しないようにするためのものであったとその意図を示唆した。

 

「しかし、私は人々が憎むべき、凄惨な化学兵器を使用するのを目撃した。オバマ政権下で、化学兵器を使用しないという合意を結んだのに、彼らはこの合意を破ったのだ」とトランプ大統領は述べた。

 

トランプは次のように発言した。「私がやるずっと前に、オバマ政権が今回の行動をやるべきだったのだ。そうしておけば、現在の状況はずっと良いものであったことだろう。シリアのこれまでの状況はずっとましなものとなっていただろう」

 

トランプ大統領は民間人であった時に、オバマ大統領はシリアに軍事介入しないように繰り返し求めていたという事実には言及しなかった。トランプ大統領は、最近のシリア国内でのガス攻撃による死傷者の姿を見て気持ちが変わったと述べた。

 

トランプの発言は、シリアに対するトランプの戦略の方向性についての疑問が渦巻く中で出された。

 

米国連大使ニッキー・ヘイリーを含む政権幹部たちは、アサドを大統領の座から追い落とすためにアメリカは武力を含む様々な試みを行うと主張している。

 

レックス・ティラーソン国務長官をはじめとする政府高官たちはもともと、シリア国民がアサド大統領の運命を決めるだろうと述べた。彼らはシリア国内で優先されるべきは、イラク・シリアイスラム国(ISIS)の武装勢力の打倒にあると強調していた。

 

ホワイトハウスは、ロシアに対してアサド大統領に対する支援を打ち切るように圧力をかけ始めている。

 

アメリカ政府高官たちはロシア政府が、化学兵器を使った攻撃へのシリア政府の関与を「隠蔽」しようとしていると非難した。アメリカ政府は、4ページの情報レポートを公開した。その中で、アメリカ政府は、化学兵器攻撃の裏にアサド政権の存在があったことに「確信」を持っていると述べている。

 

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、アメリカが証拠もなく、偽りの化学兵器攻撃情報に基づいて、シリアに対して更なる軍事行動を行うのではないかと示唆した。この直後に、上記の発言は行われた。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

 古村治彦です。

 

 先週、アメリカがシリアの空軍基地に59発のトマホーク・ミサイルを撃ち込みました。これは、シリア国内で起きた化学兵器を使用した攻撃で、子供を含む民間人に多数の死傷者が出た事件を受けての報復攻撃でした。アメリカ政府は化学兵器使用をシリアのバシャール・アサド政権の責任だとしています。しかし、私は、化学兵器使用は事実だと認めますが、誰が使ったのかについて、シリア軍だと断定するのは間違っていると思います。また、シリア軍が使ったとしても、そこにアサド大統領の命令があった、もしくは許可があったということにも疑問を持たざるを得ません。

 

 今回のアメリカによるミサイル攻撃に合わせて、トランプ政権の高官たちは、一斉に、ロシアを非難しています。非難の内容は、簡単に言うと、「ロシアは2013年にアサド政権に化学兵器をすべて廃棄させるとアメリカに約束した。しかし、今回のようなことが起きた。これはロシアが責任を果たしていないからだ」という非難です。

 

 アメリカはロシアがシリアや中東の情勢が安定するように支援してきたことに対して、失敗だと非難しています。大変身勝手な主張であると言えます。アメリカは世界の警察官を自認しながら、シリア情勢を改善するための動きは何もしていませんし、中東の情勢やテロ攻撃に関しては、アメリカ自体が「問題」であり「原因」です。

 

 2011年の「アラブの春」からリビアのムアンマール・カダフィ大佐殺害からベンガジ事件まで、アメリカの火遊びのせいで中東情勢は混沌化し、ISが出現しました。そもそも論を言えば、アメリカの失敗をロシアが何とかしようとしていることに対して、アメリカは厚顔無恥にも文句を垂れ流すという状況になっています。呆れてしまってものも言えません。

 

 下に掲載した記事では、ニッキー・ヘイリー国連大使、レックス・ティラーソン国務長官、H・R・マクマスター大統領国家安全保障問題担当補佐官がテレビに出て、ロシアを非難している様子を伝えています。また、米国防総省でも、ロシアの責任を追及する構えであることが伝えられていますが、最高責任者であるジェイムズ・マティス国防長官は直接的には何も発言していません。

 

 ここまで身勝手なことをロシアに対して言うというのは、少し芝居じみているとも思いますが、表に出てきている閣僚たちの発言を見ていると、トランプ政権の行動に関しては失望してしまうというのが感想です。国家安全保障会議の再編も含めて、もうしばらく様子を見て、何が起きており、何が意図されているかを見極めねばなりません。

 

(貼りつけはじめ)

 

トランプ政権の最高幹部たちがロシアに対しての批判を激化させる(Top Trump officials turn up heat on Russia

 

レベッカ・サヴランスキー筆

2017年4月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/328019-top-trump-officials-turn-up-heat-on-russia

 

トランプ政権の最高幹部たちは日曜日、先週シリアで起きた化学兵器を使った攻撃で多くの死傷者が出た事件を受けて、ロシアに対する批判を激化させた。

 

トランプ政権の幹部たちは過去に結ばれた化学兵器に関する合意履行に関するロシアの責任について疑義を呈し、アメリカはロシアがシリアのバシャール・アサド政権を庇うことは許さないと強調した。

 

アメリカは先週、シリアの空軍基地1か所にミサイル攻撃を行った。これは、シリア北部で起きた化学兵器を使った攻撃で民間人に死傷者が出た事件に対する報復であった。この事件では、アメリカはアサド率いるシリア軍に責任があると断じ、非難していた。

 

日曜日、トランプ政権の幹部たちは、批判の矛先をロシア政府に向けた。ロシア政府は、シリアで内戦が勃発して以降、アサド政権の支援者となってきた。

 

米国連大使ニッキー・ヘイリーは、あるインタヴューの中で、アメリカのミサイル攻撃はロシアに対してメッセージを送ること目的に遂行されたと述べた。

 

ヘイリーはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、「トランプ政権は全員一致で何かをやらねばならないと考えていました。アサドに対してメッセージを送る必要があると考えていました」と語った。

 

ヘイリーは続けて次のように語った。「よろしいでしょうか、それに加えて、ロシアについても知らせねばならないことがあるとも考えていました。それは、あなた方はこれ以上、アサド政権を庇うことはできないだろうということを伝えねばならないと考えていました。私たちは、無辜の人々に対してこのような出来事が起きることは許しません」。

 

ヘイリーは、アメリカは「穏健なアプローチ」を取ったが、更なる手段を取ることができると述べた。彼女はロシアを批判し、化学兵器攻撃に対するロシアの反応はシリア政府の擁護になっていると述べた。

 

ヘイリーは「ロシアはどうしてそんなに早くシリア政府を擁護したのでしょうか?」と疑問を呈し、「死傷者への気遣いは後回しになっていました」と述べた。

 

ヘイリーは、アメリカは「ロシアがこれ以上アサド政権を支援すること」を許さないと述べた。

 

「私たちが言いたいのは、“化学兵器使用問題で違反があり、国連安保理決議を何度も破り、この戦争犯罪人であるアサド大統領を守るために7回も拒否権を発動しましたね、そんなあなた方を私たちは糾弾しますよ”ということです」とヘイリーは述べた。

 

「私たちは、化学兵器使用という事実とそれを隠蔽しようとしているあなた方を糾弾します」とヘイリーは語った。

 

国務長官レックス・ティラーソンもヘイリーと同じくロシアを批判し、ロシアは責任を果たしていないと述べた。

 

2013年、ロシアはアメリカと交渉し、シリアが貯蔵していた化学兵器をすべて破壊するという合意を結んだ。ティラーソンは、ロシア政府がこの合意内容の遂行に失敗している、もしくは無視していると非難した。

 

ティラーソンは日曜日、ロシアが「安定したシリアを実現するプロセスを支持する」ことを希望すると述べた。

 

ティラーソンは、ABCの「ディス・ウィーク」に出演し、「シリアにおける本当の失敗は、2013年の化学兵器を巡る合意内容をロシアが守ることができなかったことにあると考えており、私はこのことについて失望しています」と述べた。

 

ティラーソンは、「シリア国内の化学兵器の管理、破壊、監視の継続という役割はシリア政府とロシア政府が行うべきものです」と述べた。

 

ティラーソンは、シリア国内での化学兵器を使った攻撃は「大きな部分で、ロシアが国際社会に対する責任を果たさなかったこと」に原因があると断じた。

 

ティラーソンは、「私は、ロシアがバシャール・アサドとの同盟関係の継続について注意深く考慮することを願っています。このような恐ろしい攻撃が起きるたびに、ロシアの責任はどんどん重くなっていくのです」と述べた。

 

このティラーソンの主張は、大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスターも繰り返している。マクマスターはロシア政府に対して、アサド大統領に対する支援について再考するように求め、「問題解決」にはロシアが参加すべきだと主張している。

 

マクマスターは日曜日、フォックス・ニュースに出演し、「ロシア政府は“自分たちはここで何をしているんだろう”と自問自動すべきです」と述べた。

 

マクマスターはまた次のように語った。「自国民を大量に殺害し、最も憎むべき武器を使用する殺人者が率いる政権を私たちはどうして支援しているのだろう、と考えてみるべきです」。

 

マクマスターは、アメリカのシリアに対する姿勢の見直しは、ロシアにとって行動の見直しのための良い機会になるとも述べた。

 

「ロシアは問題解決に参加できます。現在のところ、世界のほぼすべての国々はロシアが問題の大きな部分を占めていると考えています」とマクマスターは述べた。

 

マクマスターは、ロシア政府がどのような形の米ロ関係を望んでいるのか、という疑問を発した。

 

マクマスターは「彼らは競争と将来は衝突が起きるかもしれない形の関係を望んでいるのでしょうか?私はそれがロシアの利益になるとは思いません。それとも、相互利益となる協力できる分野を見つけることができる関係を望んでいるのでしょうか?」と述べた。

 

マクマスターは更に「今回のシリアでの内戦や中東全体の破滅的な状況が続くことが一体だれの利益になるのでしょうか?」と発言した。

 

シリアのイドリブ県で化学兵器を使った攻撃が発生した、これはアサド政権が実行したものだと批判の声が上がった。これを受けて、トランプ大統領は先週、シリアのシャイラット空軍基地にミサイル攻撃を行うように命令を下した。化学兵器攻撃によって子供を含む民間人の多くが死亡し、また負傷した。

 

国防総省(ペンタゴン)によると、59発のトマホーク・ミサイルが発射され、基地内の戦闘機、戦闘機格納庫、燃料貯蔵庫、武器貯蔵庫、レーダー、防空詩システムが標的となった。

 

トランプは今回の決定について土曜日に連邦議会に送付した書簡の中で説明している。彼は書簡の中で、攻撃実行の決断は、アメリカの「国家安全保障上、外交政策上の重大な国益」に基づいて行われたと述べた。彼はまた、必要とあれば、アメリカ政府には更なる軍事行動を取る用意があるとも述べた。

 

米軍幹部は金曜日、国防総省が、シリア国内の化学兵器攻撃について、また、病院に対する攻撃について、ロシアが参加、もしくは支援していたのかどうかを調査していると述べた。

 

ある米軍幹部は国防総省での取材に応じ、記者団に対して、「私たちは今回の化学兵器攻撃にロシアが関与しているのかどうか分かりません。しかし、私たちが調査を行うことで、その証拠が見つかるかもしれません」と述べた。

 

 

国防総省は、2013年にシリアで化学兵器を使った攻撃が発生したことについて、ロシアがアサド政権をコントロールすることに失敗したので起きたと主張した。

 

ある幹部は次のように語った。「当時、ロシアはシリアに既に介入していました。この時、ロシアはシリア政府の化学兵器能力を除去し、完全に消去することを保証すると述べました。その当時、ロシア政府は、シリア政府が所有する全ての化学兵器を集め廃棄したと報告してきました」。

 

この幹部は更に「ロシア政府は彼らを頼っているシリア政府をコントロールすることに失敗したのです」と語った。

 

もしロシアが化学兵器を使った攻撃に参加したことを示す証拠や合理的な告発が出てきたら、「私たちはそれらに基づいて、私たちの持つ能力を最大限に発揮することになるでしょう」とこの幹部は述べた。

 

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(終わり)






 古村治彦です。

 

 先週木曜日に、アメリカは、シリアの空軍基地へミサイル攻撃を行いました。シリア国内で化学兵器を使った攻撃が行われ、子供を含む多数の民間人に死傷者が出たことに対しての報復攻撃と、これ以上の化学兵器使用と拡散を防ぐための予防的攻撃ということでした。世界のほとんどの国々の政府は今回の攻撃を承認しています。

 

 私は今回のシリア国内における化学兵器を使った攻撃から疑問を持っています。化学兵器が使用されて、子供たちを含む民間人が多数死傷したことは間違いありません。問題は誰が化学兵器を使用したのかということです。全体として、「バシャール・アサド大統領が命じてシリア軍が使用したのだ」ということになって、それでシリア軍の空軍基地にミサイル攻撃がなされました。私は、化学兵器使用の責任が誰にあるのかはっきりしていないではないかと思っています。

 

 米軍の攻撃についてですが、トマホークという有名なミサイルをシリア軍の空軍基地1か所に59発撃ちこんだということですが、その割に被害者がほとんどいない、報道されないというのは不思議です。空軍基地は広大な規模でしょうが、米軍が誇るトマホークが59発も撃ち込まれたら、一面火の海でしょうし、周囲にも甚大な被害が及ぼされるはずです。ただ鉄の塊を撃ち込んだだけなら、警告以上の意味を持たないものに高価なミサイルを59発も撃ち込んだことになります。アメリカが本気でアサド政権を倒そうとしていないことは明らかです。

 

 空軍基地には司令部、パイロット、整備部門で多くのシリア軍の将兵が勤務していたでしょうし、現在はロシア軍の支援を受けていますから、ロシア軍の将兵もいたでしょう。アメリカはロシア軍の将兵に被害が出ないように事前通告をしたということですが、それなら、現場でロシア軍将兵が退避するという動きが起きる訳で、ロシアが仮にシリア側に通報していなくても事態は察知できるでしょうし、ロシアはシリア側に通報していたでしょう。ですから、今回の攻撃はあらかじめ仕組んであった、ロシア、シリア、中国にあらかじめ話を通してあったものではないかと思います。

 

 米中首脳会談のタイミングでもあり、いろいろとシナリオが考えられています。対北朝鮮の危機を煽る報道も目立ってきています。アメリカのトランプ政権内の路線対立によって、政策がぶれる、もしくは行き当りばったりになるということも予想されています。

 

 アメリカと中国とロシアが関係を悪化させず、表向きは悪化させても裏できちんとつながって、話を通しておけば、深刻な事態になることは避けられるでしょう。今回のケースは米中露が「危機を演出」しているのではないか、と思います。戦争を本気でやりたい、やらせたいと考えている勢力に、「本当にやるのか、大変なことになるんだぞ、戦争とはそんなに甘いものじゃないんだぞ、甘く考えるな」という警告を与える効果があったと思います(日本政府には当然のことながら、アメリカから事前通告はありませんでした)。この効果が一番に効いたのは日本の安倍晋三政権ではないかと私は考えています。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの対シリア政策における主要なプレイヤーたち(Key players in Trump's Syria policy

 

エレン・ミッチェル筆

2017年4月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/defense/327926-key-players-in-trumps-syria-policy

 

トランプ大統領は木曜日、シリアの空軍基地へのミサイル攻撃を命じた。これは、バシャール・アサド政権に対するアメリカ初の攻撃であった。

 

今回のミサイル攻撃は、子供を含む民間人数十人が殺害された化学兵器を使った攻撃に対する対応であった。トランプ政権は、アサド政権が将来化学兵器を使用することを止めることを意図として今回ミサイル攻撃を行った。

 

発足して間もないトランプ政権において、今回のミサイル攻撃は最大の軍事的な決定となった。

 

ここにトランプの決断を導いた人々とトランプの対シリア政策に置いて重要な役割をこれから果たすであろう人々を紹介する。

 

●国防長官レックス・ティラーソン(Secretary of State Rex Tillerson

 

ティラーソンは国務長官就任以降、スポットライトを避けてきた。木曜日のミサイル攻撃は、アメリカの外交官トップとして初めての重要な瞬間であった。

 

攻撃前の最後の会議で、ティラーソンはトランプと一緒に机を囲んでいた。ガスを使った攻撃が国際的なニュースとなって以降、ティラーソンのシリアに対する発言内容は大きく変わっている。

 

つい先日、ティラーソンはトルコを訪問した。この訪問中、ティラーソンは「アサド大統領の任期が長くなるかどうかはシリア国民によって決定されるだろう」と述べた。

 

しかし、シリア空爆実施直前の午後、ティラーソンは次のように語った。「将来のアサドの役割は不明確だ。明確なことは、彼がこれまで取ってきた行動から考えると、彼がシリア国民を統治するという役割を与えられることはないだろうと思われる」。

 

トランプがシャイラット空軍基地に59発のトマホークミサイルを発射する命令を下した直後、ティラーソンは、「今回の行動は、必要とあれば、大統領は決定的な行動を取ることを躊躇しないということを明確に示した」と語った。

 

ティラーソンはロシアに対する厳しい姿勢を取っている。ロシア政府がアサド政権の存続を支援し、シリアに対する軍事攻撃を避けるために、ロシアとオバマ政権との間で結んだ2013年の合意内容をアサドが破らせたと批判している。ロシアはアサドが貯蔵している化学兵器を全て廃棄させることを確約していた。

 

ティラーソンは次のように語った。「ロシアは2013年の約束を実行する責任を果たせなかったことは明らかだ。ロシアがシリアと共謀しているか、ロシアは合意内容の目的を達成する能力を持っていないかのどちらかだ」。

 

ティラーソンはエクソンモービル社でのキャリアを通じてウラジミール・プーティンとの関係を築いた。ティラーソンは来週、モスクワを訪問する予定だ。アメリカによるシリア攻撃によってティラーソンのモスクワ訪問の緊張は高まることだろう。

 

しかし、ティラーソンは、トランプが、アサドを権力の座から引きずりおろそうという目的で攻撃をエスカレートさせる可能性を否定した。木曜日、シリアにおけるアメリカの軍事行動についてのアメリカの政策全体には変化しないと述べた。

 

●大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスター陸軍中将(National Security Adviser Lt. Gen. H.R. McMaster

 

マクマスターは学者政治家として知られる。彼は過去と現在に関する世界各地での紛争に対する知識が豊富である。マクマスターは、シリアとロシアがどう反応するか、アメリカが物事を進めるために何をすべきかについて、彼独自の視点を提供できる。

 

マクマスターは更迭されたマイケル・フリンの後任となった。マクマスターの補佐官就任は防衛分野における人々の多くに安心感を持った。そして、政権内部で急速に影響力を確立している。

 

マーアラゴでのシリアへのミサイル攻撃直前の最終会議には、トランプ大統領、ジム・マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マクマスター補佐官が出席した。マクマスター補佐官は、「会議ではトランプと側近たちにシリアへの対応に関する3つのオプションについて議論した」と語った。

 

マクマスターは、ミサイル攻撃を行っても、アサド政権から化学兵器を使った攻撃を実行する能力を除去することはないだろうと語った。

 

マクマスターは、「アサド政権は化学兵器を使った大量殺人を行う能力をこれからも維持するだろうことは明らかだ。空軍基地を1カ所攻撃しても能力を削ぐことはないと考えている」と述べた。

 

マクマスターはしかしながら、アメリカによる空爆は「アサドの計算に大きな変化」をもたらすだろうとも述べた。

 

今回の攻撃の目的は、メッセージを送ることだったのか、それともアサド政権の軍事能力にダメージを与えることだったのかと問われ、マクマスターは次のように答えた。「今回の攻撃は、現アサド政権、そして彼の父親の政権時代を含めて、アメリカによる初めての直接的な軍事行動であった。今回の大規模な殺人に対応するという大統領の決断が行われたことは重要であるし、2013年に国連決議が発行して以降、起きた50以上の化学兵器を使った攻撃に対処することになるという点で重要である」。

 

マクマスターは続けて次のように語った。「従って、質問に対する答えは、その両方ということになる。攻撃目標は化学兵器を使った大量殺人を行える能力であった。しかし、そのような攻撃能力に関連する施設全体を攻撃する規模と広がりを持つものではなかった」。

 

●国防長官ジェイムズ・マティス(Defense Secretary James Mattis

 

マティスもまた、トランプの意思決定プロセスにおいて、重要な、しかし静かな役割を果たした。

 

アメリカ中央軍の元司令官として、マティスは中東地域に関しては豊かな知識と深い洞察を持っている。そして、攻撃が引き起こす結果についても十分な考察と予測を立てている。マティスは空軍基地に対する「集中攻撃(saturation strike)」のためのアメリカ中央軍の計画をトランプに説明した。

 

マティスはまた注意深くロシアに対応する方法を知っている。また、オバマ政権時代に中央軍司令官として経験したリスクの現実化ということも理解している。ロシア人に死傷者が出る危険性にマティスはこだわったと報じられている。また、中東地域にいるアメリカ軍や外交関係者が報復攻撃の標的になることを懸念していた。

 

木曜日の夜に国防総省は攻撃の詳細を発表した。ロシアとシリアの軍関係者と民間人へのリスクを最小限にするための用心深い計画が立てられていたことを国防総省は強調した。

 

マティスは、攻撃後の記者会見で、マクマスターとティラーソンと一緒に姿を現すことはなかった。また、攻撃以降、一切発言していない。

 

●米国連大使ニッキー・ヘイリー(U.S. Ambassador to the United Nations Nikki Haley

 

シリアでの化学兵器を使った攻撃に対するアメリカのミサイル攻撃に関して、ヘイリーは国連の場で徹底的に正当性を主張している。そして金曜日、アメリカはシリアに対して更なる軍事行動を取る準備をしているという警告を発した。

 

ミサイルによる空軍基地攻撃後、ヘイリーは国連安全保障理事会の席上、「アメリカは昨晩、入念に準備された行動を取った。私たちは更なる行動を取る準備をしている。しかし、そのような行動が必要とならないことを願っている」と述べた。

 

シリアにおける化学兵器を使った攻撃が起きた後、ヘイリーはホワイトハウスを代表して、もっとも多く発言してきた。ヘイリーは空軍基地攻撃についてトランプ政権の立場を主張し、攻撃は「完全に正当化できる」と述べた。

 

ヘイリーはティラーソンと同様に、アサドに対する姿勢を急速に変化させてきた。先週、ヘイリーは、アメリカの優先順位について、「ただ座っているということは終わり、アサドを追い落とすために注力することになる」と木曜日の記者団の取材に答えたとAFPが報じている。

 

ヘイリーは、化学兵器使用の停止は、アメリカにとっての「安全保障上の重要な国益」であると主張している。

 

ヘイリーは国連安保理理事会で苦しんでいる子供たちの写真を掲げた。ヘイリーは金曜日、ロシアがアサド政権を支援してきたと非難した。

 

ヘイリーは次のように語った。「アサドが化学兵器を使った攻撃を行ったのは、それによって報復攻撃を避けることができると考えたからであろう。彼が報復攻撃を避けることができると考えたのは、ロシアが後ろにいると考えたからであろう。彼の計算は昨晩で変化しただろう」。

 

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トランプが連邦議会にシリア攻撃を説明する書簡を送付(Trump sends Congress letter explaining Syria strike

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年4月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327962-trump-sends-congress-letter-explaining-syria-strike

 

トランプ大統領は土曜日、今週行ったシリアへのミサイル攻撃を命じたことについて議会に説明と弁明のための書簡を送付した。書簡の中で、連邦議会の指導者たちに対して、アメリカ政府には必要であれば、更なる軍事行動を取る用意があると述べた。

 

トランプは書簡の中で、「安全保障と外交政策の分野におけるアメリカの重大な国益に基づいて私は行動した。合衆国憲法で大統領に認められた、外交を行う権威、アメリカ軍最高司令官、アメリカ連邦政府の最高責任者の職責に従った」と書いている。

 

彼は続けて、「アメリカ合衆国は、必要がありそれが適切であれば、重要な国益を更に追及するために、追加的な行動を行うだろう」と書いている。

 

トランプ大統領からの書簡は、アメリカ連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)とアメリカ連邦上院仮議長(the Senate president pro tempore)オリン・ハッチ(ユタ州選出、共和党)連邦上院議員宛てに送付された。

 

戦争権限法では、大統領は軍事行動から48時間以内に武力使用に関する説明をしなければならないという規定がある。トランプ大統領の今回の行動に関しては、提出期限は土曜日夜までとなっていた。

 

トランプの書簡の内容は、木曜日の夜にミサイル攻撃から1時間後に行ったトランプの声明発表を繰り返したものだ。声明の中でトランプは、ミサイル攻撃をアメリカの「重大な安全保障上の国益」だと述べた。

 

トランプはフロリダ州マーアラゴにあるリゾートで中国の習近平国家主席を迎えていたが、トランプはミサイル発射後の声明発表で、「強力な化学兵器の拡散と使用を阻止することは、アメリカの安全保障にとって、致命的に重要な国益である」と発言した。

 

世界各国の指導者たちは金曜日になって、アメリカの攻撃を支持した。シリアのイドリ県で化学兵器が使用されたがその責任はシリアのバシャール・アサド大統領にあるという非難があり、化学兵器使用は、必要なそして適切な対応であったと各国の指導者たちは賞賛した。

 

シリア政府と、アサド政権を長年にわたり支持し軍事援助を与えてきたロシアは、ミサイル攻撃を非難した。ロシアのウラジミール・プーティン大統領の報道官は金曜日、ミサイル攻撃を「主権国家に対する侵略的攻撃」の行動と呼び、アメリカが国際法に違反したと非難した。

 

アメリカ連邦議会の議員たちは攻撃に対しておおむね支持を表明した。しかし、多くの議員はシリアに対する更なる軍事作戦を行う前には議会の承認を得るように求めている。

 

連邦上院共和党院内総務ミッチ・マコンネル上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、トランプ大統領は軍事行動に関して更なる承認を求める必要はないと主張した。

 

マコンネルは、2001年9月11日の同時多発テロ発生後に連邦議会で通過し、2002年にも認められ、イラク戦争が容認された基盤となった武力行使容認決議によって、トランプ大統領の今回の行動は正当化されると主張した。

 

マコンネルは金曜日、保守派のラジオ番組に出演し、司会者であるヒュー・ヒューイットに対して次のように語った。「私たちは2001年と2002年に決議を通した。オバマ前大統領は中東で私たちがやってきたことを自分もできるのだということを認識していたと思う。私はトランプ大統領も同じように考えるように期待している」。

 

トランプは、もし必要であれば、シリアに対して更なる攻撃を実行する用意があると主張した。金曜日、アメリカ国連大使のニッキー・ヘイリーも同様の主張を行った。ヘイリーは、ロシアからの非難に反論し、トランプ大統領の行動を正当化した。

 

ヘイリーは「アメリカは昨晩、周到に準備された行動を取った。私たちには更なる行動を取る用意があるが、そうした行動が必要ではなくなることを願っている」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今朝、イスラム国に捕らわれていたジャーナリストの後藤健二さんを殺害した様子を撮影したと見られる映像がインターネット上に公開されました。これによって、先日、殺害されたとみられる会社経営の湯川遥菜さんと合わせて、2名の日本人がイスラム国によって殺害されました。

 

 最悪の結果となってしまいました。湯川さん、後藤さんのご冥福をお祈りするとともに、ご家族、ご友人の皆様に心からお悔やみを申し上げます。イスラム国の蛮行については、憤りを感じます。無力な一国民でありますが、湯川さんと後藤さんを生還させられなかったことに悔悟の念を禁じ得ません。

 

 今回の人質事件の概略を時系列順に簡単に書きます。湯川さんは民間軍事会社の経営を目指して、危険なシリアに入国し、そこでイスラム国に拘束されてしまいました。この事件が起きたのが2014年8月16日のことでした。在日本シリア大使館(現在はヨルダンに設置)は現地対策本部を立ち上げました。その後、解放に向けた交渉が行われたようですが、うまくいかなかったようです。

 

 後藤さんが湯川さん救出も含めて情報を求めるために、シリアに入国したのが2014年10月25日頃のことで、そのすぐ後から連絡が取れない状況になっていました。2014年12月の段階で、後藤さんの留守家族の許に、身代金として約20億円の支払いを求める連絡があり、日本政府は非公開の形で対策本部を立ち上げました。しかし、湯川さん、後藤さんの解放に向けた動きに進展がありませんでした。

 

 事態が急変したのは、2015年1月20日です。安倍晋三首相が2015年1月16日から17日までエジプト、17日から18日までヨルダン、18日から20日までイスラエルを訪問しました。その際に、イスラエルで、中東諸国に対して2億ドル(約240億円)の援助を行うと表明しました。その中で「イスラム国と戦う周辺諸国」という発言をイスラエル国旗と日本国旗の前でしてしまったことがイスラム国を刺激したのではないかと指摘されています。

 

 2015年1月20日にイスラム国の関係者と見られる、イギリス訛りの流暢な英語を話す人物が、後藤さんと湯川さんを跪かせながら、「2億ドルを身代金として支払え」と要求する動画をインターネット上に公開され、大騒ぎとなりました。日本はヨルダンに対策本部設置しました。しかし、「テロには屈しない」という態度は崩さないことを決めていたために、解放交渉は困難を極めた(ほぼ何もできなかった)ようです。1月24日に後藤さんが殺害された湯川さんの写真を手にしている映像が公開されました。そして、後藤さんの解放条件が変更になり、自爆テロを起こし、イラクのアルカイーダの創設メンバーである、ヨルダンで死刑判決を受け拘留中のサジダ・アル・リシャウィの解放を条件としてきました。ヨルダン側はイスラム国への空爆に参加した際に撃墜された、ヨルダン軍パイロットのモアズ・カサスベ中尉の解放を求め、交渉が続けられてきました。しかし、本日未明に最悪の結果がもたらされました。

 

 今回の事件は奇妙な感じを受ける事件でした。イスラム国は無理無体な要求(2億ドル)と交渉をもっと複雑化させる条件(日本の主権が及ばないヨルダンに拘束されている死刑囚の解放)という、ある意味で荒唐無稽な条件を出してきました。また、日本側はイスラム国と何のパイプもなく、イスラム国とパイプがある人材を日本から動けないようにするなど、両方ともに解決に向けて動きが鈍い、まるで最初から殺害ありきのような動きばかりであったと私は感じています。

 

 また、「副島隆彦の学問道場」や同僚の中田安彦氏のブログなどを参照していただけると分かりますが、今回の件はイスラエル右派(ネタニヤフ首相)とアメリカのネオコン(ジョン・マケイン上院議員など)に日本が巻き込まれたという側面もあります。日本がアメリカ主導の「テロとの戦い(War on Terror)」に引きずり込まれたということです。

 

 今回の人質事件に関しては、安倍首相と自民党政権を擁護するための自己責任論(安倍首相には責任がない)とする主張もインターネット上で数多くなされてきました。自衛隊派遣(派兵)の条件を緩和せよという主張もありました。

 

 しかし、武力によって国際門は解決できません。特に非国家主体を相手にする場合には際限のない泥沼に陥ることになります。戦争は国際紛争を解決する一手段ですが(日本は日本国憲法によって戦争を放棄しています)、国家間同士の戦争であれば、始まりから終わりまで、ルールに則り行われます(実態はそういう例の方が少ないのですが、建前上はそうなっています)。しかし、国家と非国家主体との間の「戦争」となると、ルールはないのですから、始まりが何かも(宣戦布告[declaration of war]する相手がそもそもいません)分かりませんし、終わりが何かも(講和条約[peace treaty]を結ぶ相手がそもそもいません)分かりません。また、捕虜の取り扱いなどもルールがないのですから、残虐なものとなります。その象徴がグアンタナモ基地です。「相手はテロリストなのだから何をしても良い」ということになり、拷問が加えられています。そうなると憎悪の連鎖は留まるところを知らず、もっとエスカレートしていきます。にほんはそうした憎悪の負の連鎖に巻き込まれ、泥沼に引きずり込まれようとしています。

 

 安倍総理大臣は事件の一報を受け、「湯川さんに続いて、後藤さんを殺害したとみられる動画が公開された。ご家族のご心痛を思うとことばもない。政府として全力で対応してきたが、誠に痛恨の極みだ。非道、卑劣極まりないテロ行為に強い怒りを覚える。テロリストたちを決して許さない。その罪を償わさせるために国際社会と連携していく。日本がテロに屈することは決してない。食糧支援、医療支援などの人道支援をさらに拡充していく。テロと戦う国際社会において、日本としての責任をき然として果たしていく」と発言しました。

 

私は前半部は当然の発言であると思いますが、後半の「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わさせるために国際社会と連携していく。日本がテロに屈することは決してない。食糧支援、医療支援などの人道支援をさらに拡充していく。テロと戦う国際社会において、日本としての責任をき然として果たしていく」と言う部分は大変危険であり、憎悪の連鎖に自ら飛び込んでいく発言であると思います。テロリストたちに「罪を償わせる」と言いますが、日本の主権が及ばない土地で(テロリストたちを逮捕することもできない)、具体的にはどのように行うのでしょうか。

 

 これは簡単に言えば、「イスラム国と戦っている軍隊に対して支援を行うことで、代わりに仇を討ってもらう」という発想であり、そのためにお金を出すということですし、必要なれば自衛隊も、中東地域でなくても派遣(派兵)するということだと思います。

 

 こうした憎悪を利用した対外問題に対する姿勢は、戦前とそっくりです。自ら泥沼にはまりに行った日中間の15年にも及ぶ戦争と同じです。安倍首相の発言は、「暴戻支那ヲ膺懲ス(ぼうれいしなをようちょうす)」「鬼畜米英、暴支膺懲(きちくべいえい、ぼうしようちょう)」と言った戦前のスローガンと同じです。沸点の低さとすぐに挑発に乗って相手よりも激烈な調子の挑発をしてしまうのは、安倍首相の「幼児性」も原因でありますが、日本全体の「程度」が下がっていると言えると思います。

 

 世界の紛争地域での取材を重ねた後藤さんはもちろんのこと、田母神俊雄氏を応援していた湯川さんもまた現地の悲惨な状況を見て、人道的支援をしたいとお父上に話をしていたそうです。戦場の悲惨さを知る人ほど、勇ましいことなど言わないものです。私たちは冷静になって、お二人のご冥福をお祈りしつつ、憎悪の連鎖を断ち切ることが出来るような武力行使以外の解決策を模索する方向に進むべきだと思います。

 

(終わり)








 
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