古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ジェイク・サリヴァン

 古村治彦です。

 

 今回は前回に引き続き、ジェイク・サリヴァンについての記事をご紹介します。今回は後半部についてご紹介します。

 

 サリヴァンは、それでもやはりアメリカの偉大さは、海外に介入することである、とい信念を変えていません。アメリカが世界に介入することで、世界を良くするという考えを捨てていません。また、エスタブリッシュメント、エリートとしての態度も崩していません。

 

 しかし、自分は故郷のミネソタ州に帰って、政治家をやるか、地区検事をやるべきではないか、そうすることで人々の声を聞き、生活を目にすることができる、とも考えているようです。彼は新たなエリート像を模索しているようです。

 

 それでも彼はワシントンの重力から逃れることはできず、また、ヒラリーとの関係も着ることができないでいるようです。

 

 サリヴァンは、人道的介入主義派のプリンスとして、これから温存されて、いつか民主党が政権に近づく時には大物となって出てくることになるでしょう。

 

 

(貼り付け終わり)

 

ケンタッキー州の田舎の町で生まれ育ったというある学生がサリヴァンの話に入り、「人口の少ない、飛行機や高速道路で通過するだけの田舎の州の出身ですが、私が一緒に育った人々と同じ考え方をすることは難しいのです」と語った。これを受けて、サリヴァンはアメリカの「拡大しつつある」、「恐ろしい」分裂について話すことになった。

 

この学生の話を受けて、サリヴァンは自分が生まれ育ったミネソタ州のことを思い出した。1989年にベルリンの壁が崩壊した時、サリヴァンは13歳だった。それから数か月後、ソヴィエト連邦の指導者ミハイル・ゴルバチョフは一般的なアメリカ人たちと会いたいと熱望し、サリヴァンの住んでいた、ミネアポリスの近所にやってきた。ソ連首相の車列に対して、ラトヴィア系とエストニア系のアメリカ人たちがバルト三国の独立のために抗議活動をしていた。サリヴァンはこの様子を見て、世界にとってアメリカの存在が重要なのだということを感じ取った。

 

候補者としてのトランプは、アメリカ例外主義という考えを不必要な負担であるとして拒絶した。トランプはテキサス州で開催されたティーパーティーの集会で次のように語った。「アメリカ例外主義は素晴らしい言葉だなどと思わない。私たちは例外で、お前たちはそうではないということだ。私はアメリカがこれまで世界に与えてきたものを取り返したい。私たちはこれまで世界にあまりにも多くを与えてきた」。

 

サリヴァンはトランプ主義に対する対抗手段として、彼がミネソタで感じていた種類のアメリカ例外主義を徹底的に主張することだと考えるようになっている。サリヴァンは次のように語っている。「私たちの国家として持つDNAに基礎を持つ何かしら傲慢な考えが必要となります。DNAは、私たちがアメリカ人としてのアイデンティティを規定するものです。このDNAは人々を奮起させるための武器となります」。

 

しかし、サリヴァンは自分の考えを詳しく語ることに困難を感じた。彼の考えを深めるために、サリヴァンは1890年に軍事戦略家アルフレッド・セイヤー・マハンが発表した難解な論文を読んだ。マハンはアメリカを国際的な海軍強国と形容した。サリヴァンは、歴史家スティーヴン・カインズナーの著書『ザ・トルゥー・フラッグ』を研究した。この著書は、セオドア・ルーズヴェルト、マーク・トウェイン、アメリカ帝国の誕生に関する内容だ。

 

サリヴァンはミネソタやケンタッキーの人々の考えと共鳴すべきという考えを軽視した。サリヴァンは次のように述べた。「アメリカの例外主義は、アメリカは新しいものを生み出し、気候変動、流行病、核拡散といった厳しい諸問題を解決する力を持っているという考えを基礎にしています」。これから数週間後、サリヴァンは、アメリカの例外的な使命は、強力で成長を続ける中間層への関与をしていくということになる、とも述べた。

 

しかし、こうした主張は、何も大きなことではなく、傲慢でもなく、人々を鼓舞するものではない。

 

サリヴァンは、彼が世界における考えを「ミネアポリスの公立高校」で培ったと常に述べている。しかし、サリヴァンは同時にワシントンの排他的な外交政策エリートが作り上げたということも明確だ。

 

アメリカでは党派同士の憎しみ合いが存在しているが、共和党と民主党の国際主義者たちは、彼らは憎しみ合いなどないと訴えてきた。彼らは最大の諸問題について合意していた。:アメリカは世界の中でも特異な道徳的権威を持っており、世界の指導者として特別な責任を担っている、と彼らは考えている。共和党内の外交政策エスタブリッシュメントのほぼ全員はトランプが大統領選挙候補者になることに反対する公開書簡に署名した。

 

サリヴァンはこうしたエリートの最も奥ゆかしい特性を体現した人物と言えるかもしれない。彼は反対者をシャットアウトしないし、ツイートで悪口を言わない。共和党関係者の多くはサリヴァンを称賛している。イランとの合意を激しく批判しているマーク・ダボウィッツは次のように語っている。「サリヴァンは誠実そのものの人物だ。批判すべき点は見当たらないし、彼がどんな問題を持っているかを指摘することもない」。

 

大統領選挙期間中、そして大統領に就任してからも、トランプは外交政策の常識のほぼすべてに挑戦してきた。トランプはアメリカの同盟諸国を口汚く罵り、核不拡散の試みに疑問を呈し、民主的な諸価値、人権、自己利益を基盤として構築されてきたアメリカの外交政策の理想を拒絶した。

 

ワシントン内部からのトランプへの対応は、ワシントン外に広がることはない。ワシントンの外交政策専門たちがティームを組んで、ブルッキングス研究所から発表したレポートの中に次のような一節がある。このティームにサリヴァンも参加した。「私たちは、国際秩序に対してアメリカが行ってきた支援を放棄することは深刻な戦略的間違いであり、これがアメリカをより脆弱により貧しくし、世界をより危険な場所にするだろう、と確信している」。

 

最近まで、サリヴァンはこうした努力の価値と学識について考え込んでしまっていた。長年にわたり、外交政策分野のエスタブリッシュメントは、アメリカ主導の、ルールに基づいた国際秩序の維持の重要性を訴えてきた。この訴えはアメリカ国民のほとんどにとってはよくて意味のないものである。悪くとると、こうした訴えは魂のこもっていないグローバリズムにつながるものである。

 

サリヴァンにとって、エスタブリッシュメントの知的な消耗の衝撃的な具体例は12か国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が今年の初めにトランプ大統領が公式に廃棄すると発表したことだ。共和党と民主党の国家安全保障問題アナリストたちは長年にわたりTPPをアメリカの国家安全保障と中国封じ込めにとって必要不可欠であると主張してきた。サリヴァンもまたTPPを支持していた。

 

サリヴァンは次のように語った。「こうした専門家のほとんどはTPPの詳細やアメリカ労働者に対するマイナスの影響が出る可能性について関心を払わなかった。エリートたちは、TPPは南シナ海の領海争いのような他の問題にとってプラスの効果があると主張した」。TPPの交渉過程の中で、エリートたちは、彼らが仕え、守ることになっている人々のことを忘れてしまったのだ。

 

サリヴァンは、エリートと一般の人々との間の懸隔は、より大きな問題の前兆だと主張している。

 

サリヴァンは次のような質問をした。「私たちの社会において広がりつつある基礎の部分での分裂が生み出している尊厳、孤立、アイデンティティに関する諸問題を私たちはどのように解決できるだろうか?」。彼は自分のすぐ近くに座っているケンタッキー州出身の学生を見つめた。サリヴァンは続けて次のような質問をした。「私たちが今話題にしている、人々とは切り離された、謙虚な姿勢を持っているエリートになることなしに、この質問をすることは可能なのか、可能ならそれはどのようにしてか?」。

 

この質問は部屋の雰囲気を暗くした。

 

サリヴァンは最近になって、ワシントン、ハーヴァード、イェールといった場所から離れたら、こうした疑問に対してより容易に答えられるだろうと考え始めている。

 

サリヴァンはあるインタヴューで次のように語った。「TPPが南シナ海の紛争を解決するなどという主張は、善良なアメリカ国民にとって価値のある主張ではないのです。ミネソタ、ニューハンプシャー、タルサといった場所にこれから行って住んでみても、これまで手に入れられなかった知恵を急に手にできるなんて思いませんよ。しかし、考え方を身に着けることはできます。自分がしてきた考え方とは異なる考え方をする、これが重要だと思います」。

 

サリヴァンが2005年に連邦最高裁判所事務官の仕事を終えて最初に行ったことは、地元に帰ることであった。この時、ワシントンの大きな法律事務所からは契約金25万ドルでの契約を提示されたが、これを断り、ミネアポリスの法律事務所に入った。この事務所の顧客のほとんどは農業関係や食品産業であった。

 

この当時のことについて、サリヴァンは、ワシントンで政府関係の仕事をするか、ミネアポリスで平凡な生活をするかの分かれ道であったと語っている。「ワシントンでは、仕事が全ての中心です。それはワシントンでの仕事はその人の全てを投入させるハードな内容のものだからです。ミネアポリスでは、仕事は人生の一部に過ぎません」。

 

ヒラリーが国務長官を辞任した2013年、サリヴァンは地元に帰る予定にしていた。彼は、連邦議会の選挙に出馬するか、連邦検事になろうかと考えていた。しかし、オバマ大統領(当時)は、サリヴァンにホワイトハウスで働くようにと説得した。当時、オバマ大統領の首席外交政策補佐官であったベン・ローズは次のように述懐している。「オバマ大統領は、帰るならいつでも帰ることができるじゃないか、と言いました。地元がなくなりはしないだろう、だけど、ホワイトハウスの最高レヴェルで働く機会がそこにあるんだし、その機会が次いつ来るかは分からないじゃないか、ともね」。

 

ホワイトハウスでの仕事を終えても、サリヴァンはワシントンとのつながりを保つことができた、それは、ヒラリー選対を通じて、また彼の妻を通じてであった。サリヴァンの妻は、連邦最高裁判事スティーヴン・G・ブライヤーの秘書官となる予定で、そのため、夫妻は少なくとも来年はワシントンに留まることになるだろう。

 

翌年以降にワシントンを去って、どこか基盤を置ける場所に移り住むというのが次の計画だ。サリヴァンは、結果がより現実的で、即座に出て、手に取ることができる、地域プロジェクトの様なものに関わることを考えている。ミネソタは一つの選択肢であり、妻が育ったニューハンプシャーがもう一つの選択肢だ。

 

もう一つの可能性はワシントンに留まることだ。サリヴァンは「私は人々と実際に会って、過去10年の経験を基にして、これからアメリカがどこに向かうかということを話したいという希望を諦めている状態です」とも語った。

 

サリヴァンのレヴェルの人物で、ワシントンを去るとか地元に帰るという選択をすることはほぼないことだ。問題はより複雑なものだ。お金の面は心配ないのだ。アジアのある国は、最近、サリヴァンの2日間の訪問に2万5000ドルを提示した。

 

彼はこの提示を断る前に、「よく分からないが、そんなものなのかな?」と考えたことを覚えている。

 

イェールの学生たちの心配は、サリヴァンの考えとは全く反対の方向に向かっていた。彼らは、トランプ大統領のいるワシントンで彼らにとって魅力的な機会が今でも残っているのかということを懸念していた。

 

ある学生は、最近発表され、評判を呼んだ『フォーリン・ポリシー』誌の記事を要約しながら、「これは、テクノクラシーとエリートに対する不吉な鐘の音ということになるのでしょうか?」と質問した。

 

サリヴァンが答える前に、別の学生が次のように言った、「東海岸のエリート2.0となるか、私たちは全員終わりとなるか、ということだね」。

 

ワシントンや学界の一部に蔓延している滅亡するという予言にサリヴァンは与しない。サリヴァンは学生たちに、トランプは彼が選び出したワシントンのエリートに依存しているのだ、と語った。トランプ大統領は外交政策を実行するのに将軍たちに頼り切っているし、政権内部は大富豪たちに掌握されていると語った。サリヴァンは、「ゴールドマンサックスが我が国の経済政策を遂行している。専門性と言うのは常に求められるものだよ」。

 

サリヴァンと学生たちの集まりも終わりに近づいた。夜は深まった。彼の皿の上に置かれたピザは冷たくなっていた。

 

サリヴァンは「ワシントン郊外に家を探したいと本当に考えているんですよ」と述べた。

 

学生が「ヴァージニアですか?それともメリーランドですか?」とジョークを言った。

 

サリヴァンは「おそらくそのどちらかだね。現在私ができる最高の仕事はワシントンの外側にいることなんだ」と語った。

 

サリヴァンはドアに向かった。翌日はニューヨークでヒラリーに会って、回顧録の校正を行う予定になっていた。校正が時間通りに終わり、疲れていなければ、フランス大使と夕食を共にすることにもなっていた。その後にワシントンに戻る予定であった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12








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 古村治彦です。

 

 今回から2回にわたり、ジェイク・サリヴァンに関する記事をご紹介します。ジェイク・サリヴァンは、拙著『アメリカ政治の秘密』でご紹介しました、民主党の若手外交政策専門家です。サリヴァンはヒラリー・クリントンが国務長官を務めていた時期に、国務省政策企画本部長を務め、その後、ジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務め、2016年の米大統領選挙では、ヒラリー・クリントン陣営の外交政策立案責任者となりました。もしヒラリーが大統領になっていたら、史上最年少の大統領国家安全保障問題担当補佐官になっていたと言われる人物です。

 

 サリヴァンは、現在、イェール大学で週1回教えており、夫人が連邦最高裁判事の秘書官となる予定で、ワシントン周辺にこれからも居住する予定となっています。本ブログでもご紹介しましたが、ネオコンと人道的介入主義派が合同して創設した「アライアンス・フォ・セキュアリング・デモクラシー」というプログラムにも参加しています。

 

 これから2回にわたってご紹介する記事では、サリヴァンの現在について、更に2016年の大統領選挙後の心境について書かれています。記者がイェール大学まで行き、サリヴァンが法科大学院の学生たちと交流する場面を取材しつつ、そこにこれまでの彼の発言を織り込むという形で記事は構成されています。

 

 サリヴァンは、2016年の大統領選挙でヒラリー陣営に参加し、有利と言われながら敗北したことを大いに恥じ、責任を感じており、どうして敗北してしまったのかを分析しています。

 

サリヴァンは、ヒラリーが政策に偏った選挙演説ばかりで、人々の痛みを掬い上げ、語りかけるような演説をしていないことに不安を持っていた、ということです。そして、人々まとめあげることができなかった、それについて、選挙期間中にもっと強く助言すべきだったと述べています。

 

 ヒラリーはワシントンのエスタブリッシュメントが自分の華麗な経歴と頭の良さのために嵌ってしまう陥穽に落ちてしまったということになります。人々の怒りが充満していることに気付かなかった、ということになります。

 

 現在、アメリカでは深い亀裂が社会に存在しています。それはアメリカの衰退を示しています。そのような亀裂を生み出したのは、何も人種差別主義者や白人優越主義者たちだけの責任ではありません。人々の日常的な怒りや不満に気付かないで、きれいごとばかりを述べてきたエスタブリッシュメントたちにもまた責任があります。ヒラリーはその代表格です。

 

 サリヴァンは選挙期間中からそのことに気付いていたと述べていますが、彼の発言しか掲載されていないので、このことが本当なのかどうかは分かりませんが、選挙に敗北したのは、人々の不満を掬い上げ、まとめることができなかったからだ、という彼の分析は正しいし、彼自身が真剣にそのように考えているということが分かります。

 

(貼り付けはじめ)

 

大失敗から学んだこと:ヒラリー・クリントンのトップアドヴァイザーは衝撃的な敗北の意味を探す(Lessons in disaster: A top Clinton adviser searches for meaning in a shocking loss

 

グレッグ・ジャッフェ筆

2017年7月14日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/lessons-in-disaster-a-top-clinton-adviser-searches-for-meaning-in-a-shocking-loss/2017/06/30/6ca81022-5453-11e7-b38e-35fd8e0c288f_story.html?utm_term=.8f524f6b56f3

 

コネティカット州ニューヘイヴン発。すべての計画がうまくいっていたならば、ワシントンにいる人々のほとんどが期待していたように、ジェイク・サリヴァンは今頃、大統領執務室からごく近い部屋で仕事にいそしんでいたことだろう。

 

サリヴァンはワシントンのエリートの中でも屈指のエリートであった。ローズ奨学金を得てのイギリス留学、イェール大学法科大学院卒業、最高裁判事の秘書、ヒラリー・クリントンの国務長官時代の側近という華麗な経歴を誇っている。バラク・オバマ大統領時代にシチュエーションルームに入ることができる人物であった。

 

ヒラリー・クリントンが大統領になっていれば、サリヴァンが国家安全保障分野の中心人物であっただろうというのがワシントンの常識になっている。サリヴァンは現在40歳だ。クリントン政権ができていれば、サリヴァンはアメリカ史上最年少の安全保障問題担当補佐官になったはずだ。

 

現実には、クリントンではなく、ドナルド・トランプが大統領に当選した。サリヴァンは友人たちに対して、ワシントンのエスタブリッシュメントに数十年来の中で最も衝撃を与えた選挙結果を受けて、「さらし者」にされた気分であったと語った。

 

最近のある日の夜、サリヴァンはオレンジ色のドアを押し開け、絨毯が敷かれた階段を上り、落ち着いた照明のついたアパートの部屋に入った。そこには10名ほどのイェール大学法科大学院の学生たちが待っていた。学生の多くは、サリヴァンがワシントンでやってきた仕事に関心を持ち、自分たちもそうした仕事がしたいという希望を持っている。

 

しかし、サリヴァンは自分とアメリカがこれからどのようになっていくのかを確定的に言えないと感じている。 彼は自分の時間をワシントンにあるシンクタンクとイェール大学とに分けている。サリヴァンは1週間に1日、イェール大学で法と外交政策について講義を行っている。彼のキャリアはほぼすべて、移動性が高く、不確かで、落ち着かないものだった。

 

ヒラリー敗北の直後、サリヴァンは友人たちに対して、「この結果について大きな責任を感じるよ」と語った。それから数か月経っても、この責任感は拭い去れなかった。

 

ヒラリーと彼女の側近たちは、選挙戦は盗まれたのだと今でも語っている。彼らは、ロシアによる介入に怒り、投票日直前に当時のFBI長官ジェイムズ・B・コミーが情報を公開したことに不満を表明し、オバマ大統領がロシア大統領ウラジミール・プーティンに強硬な姿勢を取らなかったことを批判している。

 

ヒラリー・クリントンは最近のインタヴューで次のように述べている。「忘れていただきたくないのは、私は相手よりも300万票以上多く獲得したのです」。

 

サリヴァンはヒラリーの側近中の側近として、彼女の敗北は自分の力不足の結果で、自分に責任があると感じている。彼は自分がやった間違いを理解し、それをどのように修正できるかのを知りたいと考えている。

 

彼は口癖のように「私は敗北について恥ずかしく思っています」と語る。

 

私が訪問した夜、サリヴァンは、学生のアパートで古ぼけた椅子に座り、優秀で野心的な若者たちでいっぱいになった部屋を見渡した。膝の上に器用にピザの皿を乗せた。学生の一人がビールを手渡した。

 

2年生になる学生が出席者たちに「みんなジェイク・サリヴァンのことを知っているよね?」と語りかけ、続けて次のように言った。「サリヴァンさん、もう立ち直りましたか?」

 

ワシントンの政策立案に関与している人すべてはジェイク・サリヴァンをよく知っている。少なくとも名前は知っている。

 

長年にわたり、サリヴァンは、第二次世界大戦以降のワシントンの灰色のスーツを着た賢人たちに連なる人物であると言われてきた。高名な外交官であった故リチャード・ホルブルックは、サリヴァンは国務長官にふさわしい長所を全て備えていると述べたことがある。また、ヒラリー・クリントンは友人たちに、サリヴァンは大統領になれると語ったという。

 

サリヴァンは窓の外のヒルハウス通りを眺めた。マーク・トウェインはこの通りを「アメリカで最も美しい通り」と呼んだ。この日の夜に皆で集まったアパートからヒルハウス通りを3ブロック行った先に、サリヴァンは2000年代初めに法科大学院の学生の時に住んでいたアパートがある。学生たちはジーンズにTシャツ姿であった。サリヴァンはワシントンにいないときに好むいつもの格好をしていた。スーツのズボン、ボタンダウンのシャツでネクタイをしていなかった。髪は直毛を伸ばしている。

 

サリヴァンがワシントンでのキャリアをスタートさせる手助けをしてくれた師匠にあたる人々が数人いる。外交評議会元会長レスリー・ゲルブがまず挙げられる。サリヴァンは夏のインターンとして、外交評議会で働くことになり、その時に偶然、ゲルブのオフィスに配属された。

 

次にブルッキングス研究所所長ストローブ・タルボットが挙げられる。2000年、サリヴァンは法科大学院に入学した。タルボットは、この年に新設されたイェール大学グローバライゼーション研究センターの所長に選ばれた。サリヴァンは「当時は、グローバライゼーションは社会を前進させる力だという考えが習流の外交政策のコンセンサスになっていた」と述懐している。サリヴァンはタルボットに、自分もローズ奨学金を受けてイギリスに留学したこと、学内紙『イェール・デイリー・ニュース』の編集をしていることを伝えた。

 

ホルブルックも師匠にあたる。ホルブルックはゲルブの推薦を受けて、サリヴァンに対して、ヒラリーの1回目の大統領選挙出馬で選対に入るように提案した。最後に、ヒラリー・クリントンを挙げねばならない。ヒラリーはサリヴァンを称賛し、信頼した。そして、自分の側近の中に加えた。

 

サリヴァンは自身のキャリアとヒラリーの共に失敗に終わった2度の大統領選挙への出馬について、「機会をつかもうと思って、“はい、分かりました”と答えたんだ」と語った。そして、サリヴァンは動きを止めてしかめ面をし、次のように語った。「そのような選択をしたので、2度の選挙の失敗と悲劇を経験してしまったのだけれど」。

 

ヒラリーがサリヴァンに接触したのは2012年だった。ヒラリーはサリヴァンに、イランとの核開発プログラムに関する秘密交渉の開始を手助けしてくれるように依頼してきた。ヒラリーが国務長官を辞めた後、オバマ大統領はサリヴァンをホワイトハウスに入れ、毎朝大統領に対して行われる情報・諜報に関するブリーフィングに出席できる少人数のグループの一員となった。

 

学生たちは、イランとの核開発に関する合意についてのサリヴァンに次々と質問を浴びせた。これらの質問は学生たちが本当に聞きたい話の前奏曲でしかなかった。彼らのききたい話、それは選挙、選挙の後、そして、学生たちのようなワシントンで働きたい人々にとって長期的見通しであった。

 

3年の学生は「私たちは選挙結果に失望しました。あなたは立ち直りましたか?」と質問した。

 

サリヴァンは「通常の共和党が勝利をしたのなら、自分にとって今よりも良い気分であっただろうね」と答えた。

 

週末が休みになるのは10年ぶりのことだ。サリヴァンは教えることが好きだ。彼は新婚でもある。「それでもトランプの勝利は受け入れがたいものです。今でも眠れないことがよくあります。もっとこうしたらよかった、こうできたということを考えているのです」とサリヴァンは語った。

 

別の学生がもっと傷をえぐるような質問をした。「あなたは何が起きたかを分析する理論を持っていますか?」。

 

サリヴァンは「分からないな」と答えた。彼はその後、彼はじっとして天井を眺めた。

 

この学生はサリヴァンの態度に嫌なことを聞きすぎたと心配になって、「そんなに真剣に考えていただかなくても」と言った。サリヴァンはそれでも更にしばらく答えを出そうとして考えた。

 

「せっかくのピザがおいしくなるような会話だね」とサリヴァンは答えた。

 

この学生がした質問は、それまでの複数回のフォーラムと夕食会でも質問され、サリヴァンが取り組もうしてきたものだ。数週間前のハーヴァード大学教員クラブでの会合に、2015年の選挙で、20歳のスコットランド国民党の候補者に選挙で敗れたイギリスの元国会議員が出席した。彼は、この問題は既に自分たちが経験していると述べた。

 

この人物は「答えを持っている政治家と怒りを持っている政治家との間の戦いなのです」と語った。

 

「それを聞いて、PTSDが起きてしまいます」とサリヴァンは答えた。

 

サリヴァンがその晩に感じた心的外傷後ストレス障害によって、彼は選挙戦の移動の飛行機の中でヒラリーと交わした議論を思い出した。サリヴァンは政策に関する上級顧問で、選挙戦でヒラリーが政策に比重を置いた演説をしていることについて、選挙では有効ではないのではないかと心配していた。

 

ヴァーモント州選出連邦上院議員バーニー・サンダースと民主党予備選挙期間中、サリヴァンはヒラリーに次のように助言したと述懐している。「人々の痛みに関連する問題の診断に集中するべきなのでしょうか?」。

 

ヒラリーは次のように答えた。「いいえ。これは就職の面接試験なの。人々は私がどのように修正をするのかを知りたがっているのよ」。

 

サリヴァンはこの問題についてヒラリーにもっと強く助言すべきだったと後悔している、と述べている。本選挙では政策で結果が決まるものではないということが明らかになればなるほど、彼の後悔は深くなっている。

 

選挙戦の最終盤、サリヴァンは選挙の投票日が近付くほど、選対のほとんどの人たちよりも心配し、イライラするようになった。同僚たちはサリヴァンのイライラを彼の心配性と常に反省ばかりする性格のせいにしていた。サリヴァンの元同僚は次のように述べた。「彼はいつも悲観的で反省ばかりの人だ」。

 

サリヴァンは、ヒラリーに対して、政策の診断よりも人々の共感や怒りに重点を置くべきだと強く進言すべきだったのかどうか、今でも考えている。彼は「“壁を建設する”なんて政策的な解決でも何でもないですよ。しかし、移民とアイデンティティについて懸念を持っている人々の心に訴える言葉ではあったんです」と語った。

 

しかし、サリヴァンはそれ以上批判をしなかった。ヒラリーと自身の役割を弁護した。彼は次のように語った。「結局は人々に対して何を手にできるかということを語るということなんです。ヒラリーはそれができる人でしたし、実際にそれができて、人々を熱狂させるときもありました」。 彼は飛行機でヒラリーと交わした会話の重要性を軽視した。

 

サリヴァンは「これは選挙戦術の問題以上のことではない」と述べた。

 

サリヴァンは答えを求めて考えている。この時思い出すのは、民主党全国大会の大4日目の夜のことだ。息子をイラクで亡くしたキザル・カーンがスーツのポケットから、ポケット版のアメリカ合衆国憲法を取り出し、トランプがアメリカ最高の理想を汚していると叫んだ夜だ。

 

サリヴァンは学生たちに語り掛けた。「私たちは答えを知っているよね。国旗は私たちの国が偉大な国家、許容する国家、寛大な国家であることを示している」。

 

しかし、ヒラリー選対はこの瞬間を、人々を一つにまとめるメッセージにまで昇華させることができなかった。大統領選挙での討論会では、人種、移民、格差、中絶、性差のないお手洗い、といった分裂を誘発する問題に戻ってしまったとサリヴァンは述べた。

 

サリヴァンは次のように語った。「私はこの夜のことを、選挙運動を通じて全国に広げねばならないと考えていた。しかし、そんなことをしても現実の問題の解決にはならないのだ。なぜなら、私たちは現実に存在する、人々が苦しんでいる様々な問題に対処しなければならなかったからだ。アメリカの政策に関しては今でも様々な議論や主張がなされている」。

 

(貼り付け終わり)

 

(続く)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


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 古村治彦です。

 

 アメリカでは反トランプの動きが活発化しています。ヒラリーの選挙運動を支援した、民主党内のヒラリー派(人道的介入主義派)とネオコンが合同して、ロシア問題を突破口にして、トランプ政権に反撃を加えようとしています。


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 今年の8月に、「民主政治体制を守るための同盟(Alliance for Securing DemocracyASD)」は、ロシアのアメリカ政治やヨーロッパ各国の政治への介入について徹底的に調査し、それを公表することで、ロシアからの攻撃から民主政治体制を守るのだと高らかに宣言しています。

 

  ASDには、ネオコンの大物ビル・クリストル(雑誌『ザ・ウィークリー・スタンダード』誌編集長)とジェイク・サリヴァン(ヒラリー・クリントンの側近、ヒラリー選対の外交政策責任者を務めた)が顧問として名前を連ねています。ネオコンについて、そしてジェイク・サリヴァンという人物の重要性については、2012年の拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で詳しく述べました。あわせてお読みください。

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ジェイク・サリヴァン

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ビル・クリストル

この新しいグループの母体となっているのは、ジャーマン・マーシャル・ファンド(German Marshall FundGMF)です。GMFは1972年にヨーロッパでマーシャル・プランが発動されて25周年を記念して当時の西ドイツ政府によって創設されたシンクタンクです。ヨーロッパとアメリカの相互理解と協力の促進を活動目的にしています。ジャーマン・マーシャル・ファンドには、若手の日本とトルコの専門家であり、ヒラリーの側近とも言われるジョシュア・ウォーカー(プリンストン大学で博士号、幼少期を日本で過ごし、日本が堪能)が研究員として在籍しています。

 

 ASDのウェブサイトを見ますと、ロシアがツイッターなどで流す嘘情報の出どころなどを示すダッシュボードという機能があり、これに「HAMILTON 68」という名前が付けられています。名前の由来の説明はないようですが、これは、ジョージ・ワシントン初代アメリカ大統領時代に国務長官を務めたアレクサンダー・ハミルトンにちなんでいることは明白です。現在、全米でミュージカル「ハミルトン」が大人気です。これはアレクサンダー・ハミルトンの生涯をミュージカル化したもので、ラップを使い、白人である登場人物たちを黒人など少数派が演じることで話題になっています。ハミルトンの外交姿勢は、積極的な関与ということで、ネオコンや人道的介入主義派の源流と言えます。そうしたことに目をつぶって、ハミルトンのミュージカルに熱狂しているアメリカ人や、一部の、感覚が鋭いと思われたい日本人はアホとしか言いようがありません。まあアメリカ人は良いとしても、日本人で訳も分からずにアメリカで人気だからということで飛びつくような人間は浅はかだと言うしかありません。


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 ネオコンと人道的介入主義派の合同は、世界にとって危険な兆候です。

 

現在、北朝鮮によるミサイル発射など挑発的な行為が続いています。挑発がエスカレートするようだと、交渉以上の、軍事的な行動が必要だという主張が勢いを増すことになります。アメリカが北朝鮮を見る場合に、北朝鮮単独でみることはありません。地理的にも、政治経済的にも近い、中国とロシアも念頭に置いています。ですから、北朝鮮に対する攻撃ということは、中国やロシアにもダメージを与えるということになります。これは、ネオコンや人道的介入主義派にとって最良のシナリオということになります。

 

 トランプ政権がこのシナリオに乗っていくのかどうか、ですが、現在の日本や韓国に対する態度や、今回紹介した動きを見ていると、問題は攻撃があるのかどうか、ではなく、どの程度の攻撃になるかということになっているように思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

国家安全保障問題専門家たちはロシアの悪影響に対応するためのプロジェクトを始動させる(National security figures launch project to counter Russian mischief

 

ジョシュ・ロジン筆

2017年7月11日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/news/josh-rogin/wp/2017/07/11/national-security-figures-launch-project-to-counter-russian-mischief/?utm_term=.47a48556bae4

 

アメリカとヨーロッパにおけるロシアによるハッキング、介入、プロパガンダに関して様々な議論がなされている。そうした中で、国家安全保障問題分野の専門家たちの間で、ロシアの活動を阻止するための対応が十分になされていないという懸念が広がっている。こうした懸念から、民主、共和両党に属する専門家たちが、ロシアによる政治介入、インターネット上における破壊行為、フェイクニュースの拡散を追跡し、徹底的に対処するための新しい試みが開始されることになった。

 

「民主政治体制を守るための同盟(Alliance for Securing DemocracyASD)」という名前の新プロジェクトに参加する署名をしたのは、民主、共和両党に所属する国家安全保障問題の専門家たちだ。顧問会議に名前を連ねたのは次の人々だ。元国土安全保障長官(ジョージ・W・ブッシュ政権)マイケル・チャートフ、元CIA長官代理(バラク・オバマ政権)マイケル・モレル、元連邦下院諜報特別委員会委員長マイク・ロジャース(共和党)、元欧州連合軍最高司令官ジェームス・スタヴリディス海軍大将(退役)、ジョー・バイデン前副大統領国家安全保障問題担当補佐官ジェイク・サリヴァン、前エストニア大統領トーマス・イルヴェス。

 

今回のプロジェクトの母体となるのは、ジャーマン・マーシャル・ファンド(German Marshall FundGMF)だ。そして、日常業務はローラ・ローゼンバーガーとジェイミー・フライが率いるスタッフが行う。ローゼンバーガーはオバマ政権で国務省高官を務めた。フライはマルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

 

ローゼンバーガーは次のように語っている。「私たちの民主政治体制が現在直面している脅威は国家安全保障に関する問題となっています。ロシアは私たちに対して戦争を仕掛けてきているのです。彼らは通常の戦争で使われる武器とは異なる様々な武器で私たちを攻撃しています。私たちはロシアが使用している武器についてより深く理解する必要があります。彼らが使っている武器は将来、ロシア以外の国々が民主的な機構を害することに使うでしょう。ロシアからの脅威に晒されているヨーロッパの同盟諸国とも協力しなければなりません」。

 

アメリカとヨーロッパにおけるロシアによる政治に影響を与えるための諸活動についての討論の場と情報収集・蓄積の場を作るという考えは、協力の基礎となるものだ。そして、アメリカとヨーロッパ双方の専門家のための分析材料も提供されることになり、これでロシアによる介入を押し返すことができる。

 

「民主政治体制を守るための同盟」の目的は、SNSにおけるロシアの偽情報提供、インターネット上の動き、資金の流れ、国家レヴェルでの協力、そして、ヨーロッパ諸国の極左、極右に対するロシアの支援といったことを明確にあぶりだすことである。

 

モレルは筆者の取材に対して次のように答えた。「もし完全な社会があるなら、何が起きているか、ロシア人たちが何をしたのか、これから国家として自分たちを守るために何をすべきか、プーティンがこのようなことを繰り返さないようにするために何をすべきか、といったことを把握するための国家レヴェルの委員会が存在することでしょう。しかし、こんなことが実際には起きないことはわかっています。ジャーマン・マーシャル・ファンドの試みのようなことは、理想と現実のギャップを小さくするうえで極めて重要なことと言えるでしょう」。

 

「民主政治体制を守るための同盟」は、ロシアからの偽情報がフェイクニュースに紛れ込む、ロシアのSNSによって拡散されているストーリーが拡散されている様子を視覚化するデジタルダッシュボードをインターネット上に発表することになる。「民主政治体制を守るための同盟」は、ロシア政府が拡散している情報がどのようにしてアメリカとヨーロッパのメディアの中でどのように拡散しているかを明確にする試みを行うことになる。

 

モレルは更に次のように語った。「ロシア人たちは選挙以外の様々な問題において幅広く活動しています。ロシア人たちが同性愛結婚や人種問題で私たちを分裂させようとしているということが分かっても私は全く驚きません」。

 

このプロジェクトの目的は2016年のアメリカ大統領選挙についてほじくり返すことではない。また、トランプ選対がロシア政府と共謀したのかどうか、もしくはロシアのアメリカへの介入政策の一部としてロシアに利用されたのかどうかを調査することでもない。ロシアの介入は継続しているし、ロシアの介入を理解し、徹底的に対処するための方策が不十分だということが前提となっている。

 

チャートフは次のように語った。「ロシア問題について懸念を持っている人々は党派の違いを乗り越えて、私たちのプロジェクトの下に結集する時がやってきたということです。2018年(中間選挙[アメリカ連邦議会の選挙]がある年)が近づいてくる中で、ロシアへの対処が十分に行われていない状況です。このままだと恐ろしいことが起きますよ」。

 

「民主政治体制を守るための同盟」は、FBIや連邦議会の諸委員会によって現在行われている操作や調査と重複することを望んでいない。しかし、「民主政治体制を守るための同盟」が調査を行うことで、ロシアの活動についてアメリカ政府とアメリカ連邦議会の関心、その阻止と反撃を促すことになるだろうと考えられている。

 

フライは次のように語った。「問題なのは、トランプ政権がロシア問題についていかに対処すべきかについていくつも勧告が出ているのに、それを取り上げていないことです。トランプ政権がアメリカとヨーロッパの民主政治体制を守るために必要なことを進んでやるのかどうかの結論はまだ出ていません」。

 

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民主党タカ派とネオコンサヴァティヴスとの間の邪悪な同盟が出現中(The emerging unholy alliance between hawkish Democrats and neoconservatives

 

カトリナ・ヴァンデン・ハウヴェル筆

2017年8月8日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/the-emerging-unholy-alliance-between-hawkish-democrats-and-neoconservatives/2017/08/08/3c1c7676-7bb5-11e7-9d08-b79f191668ed_story.html?utm_term=.b9c6a8248199

 

外交政策分野のエスタブリッシュメントの失敗に対してトランプ大統領は愚弄している。また、トランプ大統領は粗雑な「アメリカ・ファースト」政策を推進しようとしている。これに対して、タカ派の共和党ネオコンサヴァティヴスと「アメリカは掛け替えのない国(indispensable-nation)」を標榜する民主党員たちと緊密に協力することになった。考えを変えないエスタブリッシュメントは抵抗し始めた。アメリカが妄想的か、破滅的かの二者択一を避けようとするならば、外交政策に関する新たな進歩的立場が必要である。

 

ビル・クリストル、マックス・ブート、ディック・チェイニーのようなネオコンたちは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領によるイラク侵攻を推進したイデオロギー上の原動力となった。イラク侵攻はヴェトナム戦争以来最悪の外交政策上の失敗だ。ヒラリー・クリントン、マデリーン・オルブライト、ミッシェル・フロノイのような「アメリカは掛け替えのない国」を主張する人々は当初、イラク戦争を支持していた。また、バラク・オバマ大統領のアフガニスタンへの「増派」を擁護し、リビアにおける破滅的な体制転換を組織化する支援を行った。ネオコンにしても、「アメリカは掛け替えのない国」を主張する人々は失敗から学ぶこともなく、怯むこともなかった。

 

グレン・グリーンワルドは、新たな同盟関係の出現を、単なるワシントンの外交政策専門家たちの集合では済まないと書いている。その同盟関係こそが、 「民主政治体制を守るための同盟(the Alliance for Securing DemocracyASD)」である。ASDは、ロシアを集中的に取り上げる「超党派、環大西洋的な試み」であるとグリーンワルドは述べている。ASDの目的は「ロシアやそのほかの国家やグループによる関与から防衛し、関与を防止し、関与のコストを上げるための総合的な戦略を立案し、アメリカとヨーロッパの民主政治体制転覆を狙ったウラジミール・プーティンの現在も進行している試みを白日の下に晒す」というものだ。ASDは、イラク侵攻を強く主張した、1997年に発足したプロジェクト「ニュー・アメリカン・センチュリー(New American CenturyNAC)」の最新版である。NACを創設したのは、ネオコンに属する言論人クリストルとロバート・ケーガンであった。ASDの顧問会議のメンバーは、ヒラリー・クリントン選対の外交政策責任者でアドヴァイザーだったジェイク・サリヴァン、オバマ政権でCIA長官代理を務めたマイク・モレル、クリストル、ジョージ・W・ブッシュ政権の国土安全保障長官だったマイク・チャートフ、元連邦下院議員で共和党内タカ派として知られるマイク・ロジャースである。外交政策の悲劇的な大失敗をしたエスタブリッシュメントたちが同盟を組んで反撃に出ようとしている。

 

トランプ政権の無策やエスタブリッシュメントの失敗よりもうまくやれるはずなのだ。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)に率いられている進歩派は、国内政策についての激しい議論を主導している。これに対して、チャールズ・E・シューマー連邦上院民主党院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)とナンシー・ペロシ連邦下院民主党院内総務(カリフォルニア州選出、民主党)は経済政策に特化した新しい提案を発表した。民主党指導部は、過去に民主党が明確で大胆な経済政策を打ち出すことに失敗したことを認め、そのような過ちは繰り返さないと宣言している。

 

しかし、外交政策に関しては、民主党は現在も漂流中だ。2016年の大統領選挙においてトランプ選対がロシアのハッキングを共謀したという疑いの追及は、ロシアからの脅威についての懸念を増大させている。ネオコンは今でも熱狂的な冷戦の戦士である。ネオコンはこのロシアに対する懸念を利用して、民主党の国家安全保障の専門家たちに近づいたのだ。

 

進歩派の人々の声は必要だ。ロー・カンナ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、アメリカの外交政策における抑制とリアリズムを主張している。タルシ・ガバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)は外国の体制転換にアメリカが関与することに反対している数少ない政治家だ。クリス・マーフィー連邦上院議員(コネチカット州選出、民主党)はサウジアラビアによるイエメンの爆撃という恥ずべき行為をアメリカが支持したことに勇気を持って反対を表明した。そして、「軍事的介入か、孤立か」の間の「二つの選択」という選択肢を主張している。「戦場についての再考」という報告書の中で、マーフィー議員は、スマート・パワー、外交、海外援助、開発援助の分野において中国、ロシア、ISと対抗する21世紀版のマーシャル・プランといった新しい「道具立て」を強く主張している。

 

マーフィーが主張する「道具立て」の多くは説得力を持っている。マーフィーが「アメリカの軍事覇権の大規模軍事力」と呼ぶものについての懐疑もまた説得力を持っている。しかし、マーフィーは、アメリカは世界の警察官であるべきだと主張している。彼は「世界各地のアメリカ軍の存在を強化する」ことを求めている。マーフィーは、「アメリカがコストのかかる軍事介入をする前に、内戦や争いを阻止する」ことが必要だとも述べている。 アメリカにとっての重要な安全保障上の課題と世界中をパトロールして回ることを分離して考えることが重要だという主張に耳を傾ける人の数は少ない。

 

ニック・タースが『ザ・ネイション』誌で書いたように、今年の前半でアメリカの特殊部隊が作戦実行したのは137か国で、全世界の70%に達した。特殊部隊作戦は国家を防衛するための政策ではない。特殊部隊の利用は機構上の、そして帝国主義的な思い上がりでしかない。共和党のネオコンと民主党の「掛け替えのない国」派は両派ともに、オバマ大統領に対して、「弱い態度に終始した、シリアに対して十分な空爆をしなかった、ロシアに対して十分に強硬な態度を取らなかった」として、激しく非難した。しかし、オバマ大統領が退任する時点で、アフガニスタン、イラク、シリアに米軍の人員を派遣したままで、7か国でドローンを使って空爆し、南シナ海で中国と対立し、ロシアとの間で新しい冷戦を始めようとするような状況となっていた。オバマ政権最後の予算では、既に巨額に達している国防予算の更なる増加を求めた。これは実質価値に換算すると、冷戦の終結の年に匹敵する規模となった。外交政策の専門家にとってみれば、これでもオバマ大統領はアイソレーショニズムに傾倒している、ということになる。

 

トランプは、これまでの外交政策の失敗を厳しく批判しているが、現実的な代替案を提示してはいない。 エスタブリッシュメントが反撃に出たのは自然の成り行きだ。しかし、トランプもエスタブリッシュメントも現代世界におけるアメリカに適した、現実的なかつ考え抜かれた戦略を提示できていない。アメリカには国家安全保障に関して新しい戦略が必要になっているのだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






 古村治彦です。

 

 現在、民主党全国大会がペンシルヴァニア州フィラデルフィアで開催されます。予備選で何とか勝利したヒラリー・クリントンがティム・ケインを副大統領候補に従えて、いよいよドナルド・トランプとの直接対決に臨みます。

 

 今回は、ヒラリーが抱えるスキャンダルについてまとめた記事をご紹介します。ヒラリーに対する攻撃はこれらのスキャンダルを基にして行われています。これから選挙戦が佳境に入っていきますが、攻撃もますます厳しくなっていきます。

 

 その時に、ヒラリーのスキャンダルがどのようなものであるかを知っておくと大変便利(ヒラリーにしてみれば大きなお世話ですが)と思います。

 ここでは詳しく書かれていませんが、ホワイトウォーター疑惑(事件)は、ビル・クリントンがアーカンソー州知事時代に友人と共同経営していた不動産会社で不正な取引を行っていたのではないかという疑惑が持ち上がり、追及されましたが証拠不十分に終わるということになりました。記事の最後に書かれている「フォスターの事件」とは、大統領の次席法律顧問のヴィンセント・フォスターが拳銃自殺をした事件です。フォスターはクリントン夫妻の親友で、右腕、側近でした(ヒラリーと法律事務所の元同僚で愛人関係にあったのではないかとさえ言われました)。フォスターはホワイトウォーター事件やビル・クリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルについて真相を知る人物と目されていました。自殺の原因はよく分からないままに事件は幕引きされました。

 こうして見ると、「政治に関わることは怖い」と改めて思います。私たちが普段見ている政治の世界は表側だけで、裏側ではどんなことが行われているのか、すこし考えてみるだけで、恐ろしくなります。外側で愚痴を言ったり、批判をしたりをしている分には良いのでしょうが、自分が当事者として巻き込まれてしまうと、最悪命を失うことだってある世界だと、考えすぎかもしれませんが、思ってしまいます。そうした世界に40年もいるクリントン夫妻は神経が図太いのでしょう。

 ドナルド・トランプが生きてきたビジネス、経営者の世界もまた、やるか、やられるか、油断のできない世界であって、失敗して自殺する人が出る世界です。この世界で40年以上生き延びてきたのですから、トランプは何があってもびくともしない神経を持つ人です。そういう人でなければ1年以上の選挙戦を戦って大統領選挙候補者になることはできません。

 これからヒラリーとトランプの直接対決です。たとえると、お互いが超巨大戦艦で、お互いに大砲や魚雷を打ち込んで 、どちらが先に沈むかという一対一の戦いです。私は各種世論調査や大統領選挙のこれまでの結果(主に2000年以降)を見て、ヒラリーが優勢と見ています。

 しかし、ナチスドイツが持っていた超巨大戦艦ビスマルクは、イギリス海軍によって沈められました。ヒラリーを戦艦に例えると、既にベンガジ事件とEメール問題で損傷部分が出ていますから、ここを集中的に攻撃されると火事が起きて、その火事が延焼して、火薬庫に引火して大爆発、なることがあるかもしれません。私が「8対2」でヒラリー優勢と言っているうちの「2」はこの部分です。トランプはこの数字を増やしていきたいでしょうし、ヒラリーは何とか延焼を食い止めたいのです。

  民主党大会でも民主党全国委員会の幹部や委員長のEメールがリークされて(ロシアがヒラリーをけん制するためにやらせているということもあるでしょう)、大荒れになりそうです。民主党全国委員会側がヒラリーを贔屓にしてバーニー・サンダースを何とか脱落させようとしたという事件ですから、ヒラリーに直接関係がないと言えばそうですが、サンダース支持者は怒り心頭です。

 トランプとしてはここで民主党の団結に亀裂を入れて、ついでにサンダース支持者を何割かでも取り込みたいところです。サンダース自身がどのように動くかが注目です。しかし、表立って共和党のトランプ に投票しようと言うことはできないですから、大人の態度で、「謝罪や責任者の更迭、処分は要求するが、予備選をやり直すわけにもいかないので、ヒラリーを支持する」ということで一応は収まるでしょう。それでも失望したサンダース支持者が何割か離れていくでしょう。

 これからの注目は一対一の討論会です。8月、9月、10月にそれぞれ開催されますが、ここはまさに大砲、魚雷の撃ちあいです。私もこの討論会を見て、かつその時々の世論調査の結果を見ながら、情勢分析をしていきたいと思います。そこで、トランプ優勢となることは十分に考えられます。

 私が前回のブログ記事を書いた後に、ある友人から「あんなことを書かなきゃよかったのに」と言われました。私も少し後悔してします。情けない話です。しかし、前回の記事を書いたのは、あくまで、「7月のこの段階での世論調査の結果とこれまでの大統領選挙の結果を見ての情勢分析」のために書きました。 私は日本人ですので、ヒラリー、トランプどちらがなっても、日本にはまた一段と厳しい要求をしてくるだろうと思っていますので、そう考えると気が重くなります。ですから、ヒラリーに勝って欲しいと思って、前回の記事を書いたのではありません。勇み足で書いてしまいましたが、「現在の情勢と過去の大統領選挙の結果から見ると、8対2でヒラリー優勢だけど、これから100日以上もあるから情勢は変わる」と書くべきでした。

 長文になって申し訳ありません。ここまでお読みいただきありがとうございます。 


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ホワイトウォーターからベンガジまで:クリントン家のスキャンダル入門編(From Whitewater to Benghazi: A Clinton-Scandal Primer

―司法省がヒラリー・クリントンに対する捜査を打ち切ったが、国務省は彼女のEメールに関する捜査を再開している。

 

デイヴィッド・グラハム筆

2016年7月7日

『ジ・アトランティック』誌

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/07/tracking-the-clinton-controversies-from-whitewater-to-benghazi/396182/

 

ヒラリー・クリントンはフライパンから飛び出して、火の中に入っている状況になっている。7月6日、ロレッタ・リンチ司法長官は司法省が民主党の大統領選挙候補者に内定しているヒラリー・クリントンが国務長官在任中に私的なEメールを使用していたことに関して、訴追しないと発表した。その翌日、AP通信は、刑事事件の捜査は終了したが、国務省は国務省で使われているEメールに関する調査を再開した、と報じた。

 

 国務省のジョン・カービー報道官はAP通信の取材に対して、国務省は、ヒラリー・クリントンとその当時の彼女の補佐官たちによって機密情報が適切に取り扱われていなかった可能性があると見ていると語った。ヒラリーと元補佐官たちは、秘密事項取扱の解除を含む行政処分を受ける可能性が高い。これは、ヒラリーの政治生命に傷をつけることになり、11月の本選挙勝利後に、彼女が国家安全保障政策ティームのメンバー選びを難しくすることになる。

 

 ジェームズ・コミーFBI長官は7月5日にヒラリー・クリントンの国務長官在任中の私的Eメール使用に関していかなる犯罪行為も見つからなかったので訴追には当たらないという声明を発表したが、ヒラリーが望んでいた完全な無罪放免とはならなかったことは記憶しておくべきだ。コミーはヒラリーのEメール使用に関して厳しく批判した。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報の取り扱いに関する法律に意図的に違反していたことを示す証拠を見つけることはできなかった。しかし、極めて機密性の高い、取扱注意の情報を取り扱う際に、極めて不注意であったことを示す証拠は存在する」とコミーは述べた。ヒラリーは、同時機密であった情報のやり取りはしていないと主張していたが、FBIは彼女がやりとしたEメールの中で、110通の中に機密情報が含まれていたことを発見した。コミー長官は、ヒラリーのEメールがハッキングされたことを示す直接的な証拠はないと述べたが、同時に「合理的な人間がクリントン国務長官の地位に就いたら、攻撃されやすいシステムを使うべきではないことは分かるであろう」とも述べた。

 

 これらの発言はヒラリー・クリントンに関する判断は間違っていて、彼女の説明の前提が大きな矛盾を抱えていることを示している。コミーFBI長官は訴追できるだけの証拠は存在しなかったと述べたが、共和党はこの発表を、怒りをもって迎えた。コミーとリンチは連邦下院の委員会に召喚されている。連邦下院議長ポール・ライアンは、ヒラリーに非公開の公聴会を開催することを提案したが拒否された。トランプ旋風が吹き荒れる中、Eメール問題はとても珍しい現象を引き起こしている。それは、共和党が1つの問題で団結して行動している。ヒラリーは、不人気度が高く、信頼度が低い。そのヒラリーにとって、これらの動きはトラブルを増幅させることになった。この出来事を、ウォーターゲート事件で有名になった言葉「犯罪ではないが、もみ消しだ」の具体例だと評する人たちも多い。彼女は機密情報を送らなかったと主張したが、この主張はスキャンダルの解消には役立たなかった。犯罪ではなかったにしても、Eメールサーヴァーを巡ってダメージは蓄積した。

 

 コミー長官の一連の発言はヒラリーにとって悪いものであったが、Eメール問題についてあまり言いすぎるのは止めよう。ヒラリーにとって最悪のケースは、FBIが起訴を求めることであった。しかし、ほとんどの専門家たちは起訴されるべきではないと考えていた。もしリンチ司法長官が起訴提案を拒絶しても、起訴が提案された時点で、ヒラリーの選挙戦にとっては致命的なものとなったであろう。ヒラリーにとってこの2週間で2回目の一息つける時間ができた。2012年9月11日に発生したリビアのベンガジにあるアメリカ公使館の4名のアメリカ人殺害事件が発生した。事件を調査していた連邦下院特別委員会は6月28日に報告書を発表した。報告書で、在外公館の安全対策が不十分であったと批判しているが、ヒラリーが、攻撃があった夜にこれを無視していたことを示す証拠は見つからなかったとしている。

 

 まとめると、Eメール事件とベンガジ事件の調査は、ヒラリー・クリントンにすぐに降りかかりそうな危険(訴追)を取り除くことになった。しかし、ベンガジ事件の調査と底から派生したEメールスキャンダルは、ヒラリーの選挙戦を危うくする可能性がある現在進行形のスキャンダルだ。アメリカ国民はこれまでの数十年間、スキャンダルを見せ続けられることでそれが慢性通のようになり、そのためにビル・クリントンとヒラリー・クリントンを信頼できないとアメリカ人は多く存在する。多くのスキャンダルが火ではなく、煙の段階のものであり、中には全く費など存在しないものもあるが、スキャンダルによるダメージはリアルなものだ。

 

 連邦下院のベンガジ特別委員会はベンガジのアメリカ領事館攻撃に関してヒラリー・クリントンが国務長官として間違った行動を取ったことを示す証拠を発見できなかった。しかし、委員会の調査の過程で、彼女の私的Eメール使用問題が明るみに出た。これはクリントン一家のパターンといえるものであった。クリントン一家は1974年にビル・クリントンが初めて選挙に出て以降、人々の注目を浴び続けてきた。何か潜在的にスキャンダルの種になりそうなものが出てくるが、それは何でもないことが証明される。しかし、調査が進むと他の疑問となる行動が出てくるというのがクリントン一家のパターンだ。この典型例がホワイトウォーター事件だ。これは1978年にビルとヒラリーが行った不動産投資の失敗を巡る事件だ。操作では何も間違った行動がとられたことを示す証拠は見つからなかったが、捜査の過程でクリントン大統領の偽証と捜査妨害が明るみに出で、弾劾されることになった。

 

 ヒラリー・クリントンは民主党の大統領選挙予備選挙の過程で、ホワイトウォーター事件から国務省のEメール問題まで、クリントン関連のスキャンダル全てが細かく調べられている。汚職にまみれたニクソンや党派的な憎悪の対象となったジョージ・W・ブッシュなど含むあらゆるアメリカの政治家の中で、ビル・クリントンとヒラリー・クリントンほど、常に攻撃に晒され、それが一大産業になるほどにまでした人物たちは他に存在しない。それぞれのスキャンダルを追跡し、その発生原因、深刻度を見ていくのは詰まらない試みではない。ここに入門編としてこの論稿を書いていく。私たちは新しい情報が出てきたら更新していく。

 

●ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァー問題(The Clintons’ Private Email Server

 

・内容:ベンガジ事件の調査が行われている最中に、『ニューヨーク・タイムズ』紙のマイケル・シュミット記者は、ヒラリー・クリントンが国務長官在任時に私的なEメールアカウントを使用していたと報じた。このスキャンダルは、ヒラリーのニューヨークにある邸宅内に設置された私的なEメールサーヴァー使用にまで話が大きくなった。ヒラリーとスタッフはどのEメールを公的な記録して国務省に提出し、どれを提出しないかを決定した。彼らは、自分たちが私的なEメールだと判断したものはすでに廃棄したと述べた。

 

・期間:2009年から2013年まで(ヒラリー・クリントンの国務長官在任時)。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、フーマ・アベディンを含むヒラリーの側近たち。

 

・深刻度:深刻だが、大変深刻というところまではない。国務省の独立調査官は、5月に公表した報告書の中で、ヒラリー・クリントンのEメール使用は深刻な誤りであったと述べた。しかし、ロレッタ・リンチ司法長官は7月6日、司法省は刑事事件として起訴しないと発表した。これによって起訴されないということになり、ヒラリーの選挙戦にとって大変重要な出来事になった。しかし、Eメール問題は、これからも彼女にずっとまとわりつくスキャンダルとなるであろう。ジェームズ・コミーFBI長官は、ヒラリーの行動について厳しい発言を行った。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報取り扱いに関する法律を意図的に破ろうとしたことを示す証拠を発見することはできなかったが、取扱に注意を要する極めて機密性の高い情報の取り扱いに関して極度に注意不足であったことを示す書庫は存在した」とコミー長官は述べた。この発言は、選挙期間中、ずっと繰り返されることになるだろう。ヒラリー・クリントンの使っていたサーヴァーがハッキングされたのかどうかという疑問にはまだ答えがない。コミー長官は、FBIはハッキングされたことを示す証拠を発見できなかったと述べたが、「“直接的な”証拠は発見できなかった」とも述べた。最近になって公表された宣誓証言書の中で、フーマ・アベディンはEメールの脆弱なセットアップについて不満を漏らしており、「このシステムは良くない」と言っていたということが明らかにされた。

 

●ヒラリー・クリントンの国務省Eメール問題(Clinton’s State Department Emails

 

・内容:ヒラリー・クリントンの私的なEメールサーヴァーの問題を別にして、ヒラリーが国務省に提出したEメールには何が書かれていたのかということも問題になっている。ベンガジ問題に関するEメールのいくつかが公表されたが、公的記録法によってその他のEメールは公表されていない。しかし、これらも公表に向けての過程の中にある。

 

・期間:2009年から2013年まで

 

・深刻度:深刻だが、そこまで深刻ではない。政治関係者たちはEメールの中からヒラリーにダメージを与えるような文言を見つけることを期待していたが、そのだいぶ部は退屈な内容であった。中にはシドニー・ブルーメンソールからのEメールのように興味深い内容のEメールが発見されることもあった。よりダメージが大きいのは、110通のEメールの中に、当時は機密指定された情報が書かれていてやり取りされたという事実だ。ヒラリーはずっと機密情報のやり取りはしなかったと主張していた。一方、いくつかのEメールは徐々に公開されつつある。国務省は、裁判所の命令を受けて、ヒラリーが提出したEメールを少しずつ公開している。しかし、彼女が提出しなかったEメールも存在するが、これらは裁判闘争の中で明らかにされつつある。特に、保守派のグループであるジュディシャル・ウォッチが行っている裁判で、ヒラリーが提出しなかった160通余りのEメールが公表されつつある。そして、どうしてこれらのEメールが国務省に提出されなかったのかという疑問が湧いて出てくる。 有る機会に、ヒラリーは、彼女の提出したEメールがどのように取り扱われるのか知らないと語った。「私は私の書類が国務省でどのように取り扱われているか知らなかったことに気付いた。誰が私の個人的なファイルと職務上のファイルを管理しているのだろうか?」と述べた。

 

●ベンガジ問題(Benghazi

 

・内容:2012年9月11日、リビアのベンガジにあるアメリカ領事館に攻撃が行われ、クリス・スティーヴンス大使と3名のアメリカ人が殺害された。事件発生以降、共和党は、ヒラリー・クリントンがアメリカの在外公館の安全対策を怠った、また、彼女はテロリストが攻撃を計画していたことを知りながら、攻撃が自然発生的なものだったと思わせようとした、として非難している。ヒラリーは2012年10月22日に最初の議会諸言を行った。

 

・期間:2012年9月11日から現在まで。

 

・深刻度:6月28日に連邦下院ベンガジ問題特別委員会は報告書を発表した。これ以降、ベンガジ事件に対する関心は低下している。報告書では、ベンガジのアメリカ領事館を含むアメリカの海外公館の防御態勢が準備不足であると批判している。しかし、確固とした証拠も攻撃があった夜にヒラリーが行うべきであったことについての失態も新たに発見できなかった。保守派の人々は彼女をベンガジ試験で攻撃し続けたいのであろうが、彼女にとっての最大のダメージはクリントン一家のパターンが繰り返されたことで起きた。連邦下院のベンガジ事件調査の過程で、ヒラリーにとって大きなダメージであるEメール問題が明らかにされたのだ。

 

●国務省における利益の衝突(Conflicts of Interest in Foggy Bottom

 

・内容:ヒラリー・クリントンの国務長官首席補佐官に就任する前、シェリル・ミルズはニューヨーク大学に勤務しながら、4カ月無給で国務省でも勤務をした。彼女はこの時、ニューヨーク大学がアブダビに進出し、キャンパスを建設するための交渉においてその地位を利用したとされている。2012年6月、当時の国務長官次席補佐官のフーマ・アベディンの地位が「特別公務員」に変更された。これによってアベディンは、ビル・クリントンの右腕と呼ばれた人物が経営しているコンサルタント会社「テネオ」に勤務することが出来た。アベディンはクリントン財団からも給与をもらい、同時にヒラリー・クリントンから直接お金をもらっていた。これらのケースとは別に、クリントン財団への最大の献金者であるラジフ・フェルナンドは国務省の国際安全保障顧問会議のメンバーに選ばれていた、とABCテレビが報じた。フェルナンドは他のメンバーに比べて委員会のメンバーにふさわしくないことは明らかであったが、国務長官オフィスの強い要請でメンバー入りとなった。内部のEメールのやり取りでは、国務省の職員は最初、ヒラリーのためにこのことを隠そうとしたことが明らかになった。ABCの報道から2日後、フェルナンドは会議のメンバーを辞任した。

 

・人物:シェリル・ミルズとフーマ・アベディンはヒラリーの長年の側近である。アベディンは現在、ヒラリーの大統領選挙ティームに参加している。また、アベディンはアンソニー・ウェイナーと結婚している。

 

・期間:2009年1月から2013年2月まで。

 

・深刻度:これは不思議な内容のスキャンダルだ。そこには利益の衝突に関する疑問が起きる。例えば、アベディンがテネオと国務省両方に勤務していた時、テネオの顧客は国務省から特別な取り扱いを受けたのかどうか、という疑問が出てくる。簡単に言うと、クリントン財団とビル・クリントンとヒラリー・クリントンの役割との間で利益の衝突があったということなのである。

 

●シドニー・ブルーメンソール(Sidney Blumenthal

 

・内容:ブルーメンソールは元ジャーナリストで、第2期ビル・クリントン政権で大統領補佐官を務めた。この時代に様々なスキャンダルに見舞われたクリントンを助けた。ブルーメンソールは2008年のヒラリー・クリントンの大統領選挙ティームの顧問を務めた。そして、ヒラリーが国務長官に就任した時、ブルーメンソールを国務省に迎えようとした。オバマの側近たちは、選挙期間中にオバマ候補に対する激しい攻撃を企図したのはブルーメンソールだったことを知っていたので、ヒラリーの要請を拒絶した。そこで、ヒラリーは、ブルーメンソールを非公式に顧問として迎えた。同時期、ブルーメンソールはクリントン財団から給与を貰っていた。

 

・期間:2009年から2013年まで。

 

・深刻度:中程度。ヒラリーは既にある程度のダメージを受けている。「ベンガジ領事館への攻撃は自然発生的なものだった」というシナリオのアイディアを出したのはブルーメンソールであった。しかし、このアイディアは間違いで、ヒラリーとオバマ大統領に対する政治的攻撃の道具となってしまった。ブルーメンソールはこの他にも様々な問題について国務長官であったヒラリーに助言を行った。北アイルランド問題や中国問題など様々な問題でもアドヴァイスを行った。また、ブルーメンソールは、息子のマックスを通じて自分の分析をヒラリーに届けていた。マックスはイスラエル政府を激しく批判している人物で、保守派からは嫌われている。しかし、公開されたEメールによると、ヒラリーの外交政策に関する首席アドヴァイザーのジェイク・サリヴァンは、ブルーメンソールの分析を否定し、ヒラリーがブルーメンソールの判断に信頼を置いていることに疑問を呈していたことが明らかになった。

 

●各種講演(The Speeches

 

・内容:ビル・クリントンが2001年に大統領職を退いてから、クリントン一家は講演を行って数千万ドルを稼ぎ出した。

 

・期間:2001年から現在まで。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、チェルシー・クリントン

 

・深刻度:一時的には危険だ。しかし、ぱっと燃え上って、鎮火するだろう。バーニー・サンダース連邦上院議員は、2016年初めに、ヒラリー・クリントンはゴールドマンサックスのような大銀行で講演を行っており、彼女はウォール街に妥協的だと批判したが、この攻撃は有効であった。ヒラリーは講演記録を公表すべきだという要求が今でもなされている。彼女はこの要求を拒否した。「他の全ての候補者がこれまでの講演の記録を公表するなら、私も従う」と述べた。クリントン一家は、スキャンダルにまみれ、司法の調査を受けながらホワイトハウスを後にした。そんなクリントン一家にとって、元大統領という肩書を使ってのお金儲けができる講演会は、富を再形成するためにはうってつけの方法であった。しかし、こうした講演会については様々な疑問が出てくる。ビル、ヒラリー、チェルシーはどこで講演を行ったのか?講演料の金額はどのように決まったのか?彼らは講演で何を語ったのか?彼らはどの講演がクリントン財団を通じた慈善事業のもので、どの講演が個人の収入となる公演となるかをどのように決定したのか?ビル・クリントンが以前に国務省とビジネスを行った顧客のために講演を行うというような、利益の衝突や利益供与のケースは存在するのだろうか?

 

●クリントン財団(The Clinton Foundation

 

・内容:ビル・クリントンは1997年に財団を創設した。しかし、実際には彼が大統領職を退いてから、クリントン財団が彼にとっての主要な活動組織となった。ビル・クリントンは財団を通じて様々な活動を行っている。人々の健康改善から象牙密猟、中小企業の支援、子供たちの成長まで様々なプロジェクトを行っている。クリントン財団は様々なプログラムを通じて、巨大な国際的慈善活動団体となっている。2013年にヒラリー・クリントンが国務長官を退任してから、財団の名前はビル・ヒラリー・チェルシー・クリントン財団に改められた。

 

・期間:1997年から現在まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン、チェルシー・クリントンなど。

 

・深刻度:クリントン財団の強みは、ビル・クリントン大統領の知的な雑食性にあるが、弱点は、飽きやすさと詳細に対する関心がないことである。慈善事業のレヴェルでは、クリントン財団は外部の評価団体からは高い評価を受けている。批判する人々は、クリントン財団が余りにも手を広げ過ぎで様々なプログラムに関わっているが、財団のお金は目的を達成するには足りないと批判している。クリントン財団は税務申告で間違いを犯し、それを訂正しなければならなかった。しかし、クリントン財団に関する根本的な問題は、2つの関連した問題に分けられる。一つ目の問題は、利益の衝突の問題だ。クリントン一家が行っている慈善事業が彼らの有料の講演にどれくらい関わっているのか?彼らの講演がヒラリー・クリントンの国務長官の仕事とどれくらい関わっていたのだろうか? アメリカの政策に絡んでお金を儲けたのだろうか?クリントン財団はクリントン家の友人たちの会社に不適切な形でお金を流していたのか?二つ目の問題は、情報開示に関わる問題だ。ヒラリーが国務長官に就任した時、ヒラリーはクリントン財団の情報をある程度開示することに同意した。しかし、そうした情報開示は行われていない。ヒラリーの国務長官時代の私的Eメール使用問題もあって、これらの諸問題に答えを出すことはより困難である。

 

●過去の悪夢の日々(The Bad Old Days

 

・内容:クリントン夫妻は長年にわたり批判の的になってきた。特に保守派のメディアで今でも取り上げられるスキャンダルが数多く存在する。ホワイトウォーター事件、トゥルーパーゲート事件、ポーラ・ジョーンズ、モニカ・ルインスキー、トラヴェルゲート事件、ヴィンス・フォスターの自殺、ジュアニタ・ブロードドリックなどが取り上げられている。

 

・期間:1975年から2001年まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリトン、脇役たち。

 

・深刻度:常識では、これらはそこまで危険ではない。フォスターの事件は不幸なものだ。その他のルインスキーとホワイトウォーター事件は既に調べ尽くされており、ヒラリーにこれ以上のダメージを与えることはできない。実際のところ、ルインスキースキャンダルは支持率を高める効果があった。しかし、2016年1月に再び浮上したジュアニタ・ブロードドリックに対する婦女暴行事件は、常識が本当に賢いのか、ただ常識的なのかどうかを試すケースとなる。5月23日、ドナルド・トランプはブロードドリックスの事件を強調するヴィデオを公表している。

 

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。


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 ヒラリー・クリントン元国務長官が大統領選挙への出馬を正式に発表しました。ヒラリー陣営では5月末に政策の発表を行う予定で、そのための政策ティームの発足を発表しました。外交政策分野では、ジェイク・サリヴァンが参加することになりました。ジェイク・サリヴァンについては、2012年に出版した拙著『アメリカ政治の秘密』でも取り上げましたが、ヒラリーが大統領に当選した場合には、大統領国家安全保障問題担当補佐官への起用が噂されています。私は彼の野望にはもっと先があると見ていますが、民主・共和両党とも30代のライジングスターが出てきました。

 

==========

 

ヒラリー・クリントンは3名の専門家を陣営に加える(Hillary Clinton names top 3 wonks for campaign

 

デイヴィッド・ネイサー筆

2015年4月14日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/story/2015/04/clinton-names-top-three-wonks-for-campaign-116975.html

 

 ヒラリー・クリントンは自身の選挙運動における公約をより精緻なものとするために3名の専門家を陣営に迎えた。ヒラリーの有権者とのふれあいの旅が終わる来月末に主要な公約を発表するための準備を行う予定となっている。

 

 3名の専門家として、シンクタンク「センター・フォ・アメリカン・プログレス」の元上席研究員マヤ・ハリス(Maya Harris)、ヒラリーの上院議員時代の立法担当アン・オリーリー(Ann O’Leary)、そしてヒラリーの国務長官時代の側近でジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めたジェイク・サリヴァン(Jake Sullivan)が政策ティームを率いることになった。

 

 発表された政策ティームの面々を見ると、専門は外交政策、子供と家族、そして世界規模の人権となっており、これはヒラリーが選挙戦で強調するであろう分野を示している。これら全ての分野はヒラリーが最近の演説や自著『ハード・チョイシズ』で特に言及しているものばかりだ。

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マヤ・ハリス 


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アン・オリーリー
 

 ハリスは人権を専門としている。彼女はフォード財団の民主政治体制・人権・正義担当の副会長を務めていた。彼女は世界各国の統治、民主政体、人権状況を改善するために活動するティームを率いていた。オリーリーは幼児教育の専門家であり、トム・スティーヴァーが資金援助をしている運動組織ネクスト・ジェネレーションの子供と家族に関するプログラムの責任者をしていた。


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ジェイク・サリヴァン

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2015年1月に日本再建プログラムの招聘で来日。右は船橋洋一氏
 

 一方、サリヴァンはイランの核開発プログラムを巡る一時的な合意にまで至った交渉の下準備において重要な役割を果たした。しかし、彼自身はイランに対して懐疑を抱いていると言われている。そして、サリヴァンの陣営参加によって、ヒラリー陣営はオバマ政権よりもイランに対して強硬な姿勢を取る可能性が出てきている。

 

 ヒラリー・クリントンが出馬を表明し、選挙戦を始めるのに合わせて政策ティームの発表が行われ、これにより個別の政策の詳細な検討もスタートした。ヒラリーは有権者とのふれあいの旅を通じて幅広い問題について言及することになるだろう。しかし、全国の有権者向けにはヴィデオでの出馬発表以上のことは発言しない。彼女はヴィデオ映像の中で、「普通のアメリカ人たち」のために性質がある必要があることを訴えた。これは、ヒラリーの過去の選挙運動の失敗を受けて、エリザベス・ウォーレン式のポピュリズムに訴える選挙戦を展開することを示唆している。

 

幅広い公約の発表については既に計画されている。主要な公約の発表は、ヒラリーが選挙陣営を強化し、有権者のとのふれあいの旅を終えた後に発表されることになるだろう。ヒラリー陣営の関係者によると、それは5月末になる予定ということだ。

 

 ヒラリーは既に政策テーマについて打ち合わせを行っている。選挙陣営の関係者によると、昨年秋に大統領選挙への出馬を決心してからアドヴァイザーたちと政策について話し合いを行ってきたということだ。

 

 ハリス、オリーリー、サリヴァンの3名が政策ティームを率いることになるが、彼以外にも各政策分野を専門とする人々がティームに参加している。センター・フォ・アメリカン・プログレスの創設者でオバマ大統領の特別補佐官を今年初めまで務めたジョン・ポデスタ(John Podesta)が選挙陣営の委員長となる。ヒラリーはまた、センター・フォ・アメリカン・プログレスの所長で長年顧問をしてきたニーラ・タンデン(Neera Tanden)を非公式の顧問に迎えている。

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ジョン・ポデスタ 


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二―ラ・タンデン

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トニー・カーク
 

 選挙運動の調査部門の責任者トニー・カーク(Tony Carrk)は健康福祉政策の専門家であり、オバマケアの立案に参画した。彼はセンター・フォ・アメリカン・プログレスのアクション財団の「健康福祉司令部」の責任者を務めた。

 

(終わり)









 
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