古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ジェイク・サリヴァン

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領の側近であるジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、中国側のカンターパートである楊潔篪中国共産党中央政治局委員・中国共産党中央外事工領導弁公室主任とローマで7時間にわたって会談を行った。この会談はロシアによるウクライナ侵攻の前から予定された会談であったが、図らずも今回、米中の外交関係のトップ高官による話し合いでウクライナ情勢が取り上げられることになった。
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楊潔篪とジェイク・サリヴァン

今回アメリカ側の代表者となったジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官については拙著『アメリカ政治の秘密』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げているので、ここで詳しい人物紹介はしない。中国側の代表者である中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪(ようけっち、Yang Jiechi)は最年少で駐米中国大使を務めて、英語に関して全く問題ない中国にとっての対米人材のトップの人物である。娘はアメリカの名門校からイェール大学を卒業している。反米的な発言を刷ることでも知られているが、冷静な知米派外交官だ。

 両者の会談は7時間も続いたということで、ウクライナ情勢だけが議題ではなかったということになるが、やはり最重要の議題はウクライナ情勢だろう。アメリカ側は、中国がロシアを支援することをけん制し、中国は原則論を述べ、速やかな停戦を求めたということになる。ロシアは中国に対して支援を求めるということはこれまでの関係上、まあ自然なことだ。中国としては軍事物資の支援はさすがに慎重になるだろう。ウクライナへの人道支援を行っていることから、ロシアの一般国民への人道支援という名目で、民生用の食料や医薬品の提供に留めるのではないかと思う。

 重要なことは、ジェイク・サリヴァンがバイデン政権の中で、対中チャンネルのトップの位置にいるという点だ。サリヴァンは対中共存派であり、直接対決をせずに、うまく付き合っていくべきだという考えを持っている。米中間が外交チャンネルをオープンにして、話し合うということが、これからの世界の動きを決めていくということで、新しい形になっていくだろう。ヘンリー・キッシンジャーが敷いた「G2」路線ということになる。中国としてもロシアに対してはある程度のところで矛を収めるようにと諭しているだろう。ロシアとしても後ろに中国がいるのといないのとではこれからの動きが変わってくるので、中国の意向を無視することはできない。世界は米中二極(bilateral)体制の確立へと進んでいる。

(貼り付けはじめ)

●「楊潔篪氏、ウクライナ情勢に対する立場述べる 米大統領補佐官と会談」

2022315 12:34 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]

新華社

https://www.afpbb.com/articles/-/3395053

315 Xinhua News】楊潔篪(Yang Jiechi)中国共産党中央政治局委員・中央外事工作委員会弁公室主任は14日、イタリアの首都ローマで米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談し、その中でウクライナ情勢について中国の立場を詳しく述べた。

https://www.afpbb.com/articles/-/3395053

 楊潔篪氏は次のように指摘した。ウクライナ情勢の今日の事態は中国が願わないものだ。中国は一貫して各国の主権と領土保全を尊重し、国連憲章の趣旨と原則を順守することを主張している。中国は和平交渉の推進に尽力しており、国際社会はロシアとウクライナの和平交渉が早期に実質的成果を収めることを共同で支持し、情勢の迅速な鎮静化を図るべきだ。各国は最大限の自制を保ち、一般市民を保護し、大規模な人道危機を防がなければならない。中国はすでにウクライナに緊急人道援助を行っており、今後も引き続き努力する。

 楊潔篪氏は次のように表明した。ウクライナ問題の歴史的経緯、原因と結果、根源を整理し、各国の合理的懸念に対応すべきだ。将来を見据え、共同・総合・協力・持続可能な安全保障観を積極的に提唱し、関係各方面の対等な対話を奨励し、安全保障の不可分性の原則に従って、均衡、有効、持続可能な欧州安全保障の枠組み構築を探り、欧州と世界の平和を守ることを呼び掛ける。

 楊潔篪氏は、事実でない情報を流し、中国の立場をねじ曲げ、中傷するいかなる言動にも断固反対すると強調した。(c)Xinhua News/AFPBB News

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報告:ロシアがウクライナとの戦争を戦いながら、中国に軍用食品支援を求めた(Russia requested military food aid from China amid war with Ukraine: report

モニク・ビールズ筆

2022年3月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598200-russia-requested-military-food-aid-from-china-amid-war-with-ukraine

今回の問題について取材源2名がCNNの取材に対して、「ロシアは、アメリカで“ミールズ、レディ・トゥ・イート”として知られている食料を含む、包装された非生鮮性の軍用食品の提供を中国に要求した」と述べた。

情報筋の1人はCNNに対し、中国がこの要求に応じる可能性があるのは、それが致命的ではない支援であり、西側を刺激するような状況であるためだと語った。

ある西側政府の関係者とアメリカ外交官もCNNに対し、中国がロシアに軍事・財政支援を行う意向を示したという情報を持っていると述べた。

しかし、CNNは、中国が実際にその援助を行うかどうかはまだ不明である、と報じている。

ロシアから中国への要請は、ロシアの侵攻に対する全体的な準備態勢と、専門家が言うロシアの攻撃の進展を妨げている後方ロジスティックス問題をめぐる疑問を提起している。

CNNは、公開されている報告書や報道では、ロシア軍では特定の物資が不足しているため、ロシア軍が食料品店に押し入って食料を調達している様子が示されていると報じた。

一方、ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はローマで、中国がロシアを支援した場合の「潜在的な影響と結果(potential implications and consequences)」について中国側に警告を発した。

バイデン政権のある幹部は、サリヴァンと中国側との会談後のブリーフィングで記者団に対し、「私たちは現時点で中国のロシアとの連携に深い懸念を持っており、サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はそうした懸念と、ある行動がもたらす潜在的な影響や結果について率直に述べた」と述べた。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はまた、サリヴァンが、中国がロシアに「制裁違反や戦争努力の支援(violates sanctions or supports the war effort)」となる軍事支援やその他の支援を行った場合、「重大な結果(significant consequences)」に直面すると示唆したと述べている。

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報告:ロシアが中国からの軍事装備を求めている(Russia seeking military equipment from China: report

オラフィミハン・オシン筆

2022年313

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/europe/598041-russia-seeking-military-equipment-from-china-report

複数の報道によると、モスクワのウクライナ侵攻が続く中、ロシア政府の複数の高官たちが中国政府の高官たちに対して、軍事装備の入手について接触したということだ。

アメリカ政府関係者は『ワシントン・ポスト』紙と『ニューヨーク・タイムズ』紙に武器取引の可能性を伝えたが、ロシアがどのような兵器を要求したか、詳細は明らかにしなかった。

ニューヨーク・タイムズは、世界の多くがロシアを孤立させようとしている中、ロシアにとって重要な同盟国となっている北京からの追加的な経済支援についても、モスクワが要求していると報じた。

ロイター通信によると、ワシントンの中国大使館の広報担当者は、モスクワからの支援要請について「聞いていない」と述べたということだ。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は今週、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪と会談する予定だが、日曜日、中国はロシアが世界的な制裁に対処するための物質的支援を提供しないよう警告した。

サリヴァンはCNNの取材に対して、「私たちは北京に対し、大規模な制裁逃れやロシアへの裏付け支援には絶対に結果が伴うと、直接そして内々に伝えている」と語った。

サリヴァンは更に「私たちはそのようなことを許さないし、世界のどの国からも、どの場所からも、この経済制裁からロシアへの命綱が投げられることを許さない」とも述べた。

『ワシントン・ポスト』紙によると、ロシアのアントン・シルアノフ財務相は日曜日のテレビインタヴューで、ロシアの金と外貨準備の一部が中国通貨であることを打ち明けたということだ。

シルアノフ財務相はインタヴューの中で「西側諸国が中国に対して、相互の貿易を制限するためにどのような圧力をかけているかを注視しいている」と述べた。

シルアノフは続けて「しかし、中国とのパートナーシップは、西側市場が閉鎖される環境下でも、これまで達成した協力関係を維持するだけでなく、拡大することも可能だと思う」とも述べた。

ウクライナへの侵攻を開始して以来、ロシアは西側諸国から制裁を受けており、制裁の程度がエスカレートしている。アメリカとイギリスの両国政府は最近、ロシアの石油、天然ガス、石炭の輸入を段階的に停止すると述べている。

アメリカ政府関係者の中には、危機的状況が続く中、ロシアは一部の死類の弾薬が不足していると話す関係者もいるとワシントン・ポストは報じている。

元米国インド・太平洋軍顧問のエリック・セイヤーズはワシントン・ポストの取材に対して、「北京がウクライナでのモスクワの戦争を支援するために何らかの軍事的援助を提供しているとすれば、米中政策への波及効果は甚大なものになるだろう」と述べた。

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サリヴァンは中国政府高官たちとの会談の中でロシアに関する懸念を表明(Sullivan raises Russia concerns in meeting with Chinese official

モーガン・チャルファント筆

2022年3月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/598140-sullivan-raises-russia-concerns-in-meeting-with-chinese-official

ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、月曜日に行われた米中当局者の長時間の会談で、中国のロシアとの連携について懸念を示したと、あるバイデン政権幹部が語った。

米中当局者はローマで7時間会談し、ロシアのウクライナ侵攻を一部取り上げたと同高官は述べた。サリヴァンは、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪に対し、中国がロシアを支持した場合、重大な結果に直面する可能性があると警告したということだ。

バイデン政権関係者によると、この会談は激しく率直なものとなり、ウクライナ侵攻の中でロシアが中国に軍事・経済支援を求めたとの報道を受けたものとなった。この高官は、これらの報道について直接言及することを避けた。 

この政権高官は「私たちは現時点で中国がロシアと連携することに深い懸念を抱いており、サリヴァン大統領補佐官はそうした懸念と、ある行動がもたらす潜在的な影響や結果について率直に語った」と会談後のブリーフィングで記者団に語った。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、サリヴァンが中国側に対して、中国がロシアに「制裁違反や戦争努力の支援」となる軍事的またはその他の支援を提供した場合、「重大な結果(significant consequences)」に直面することになると伝えたと述べた。しかし、崎報道官はそれらの「結果」について具体的な情報を提供することを避け、アメリカの同盟諸国と調整されるだろうと述べた。

サキ報道官は月曜日、サリヴァンと楊潔篪の会談の日程は、ロシアが約3週間前にウクライナに侵攻する前から計画されていたと語った。それにもかかわらず、今回の会談はウクライナを攻撃したロシアに対して、アメリカが国際的な圧力をかけ続けようとしている、タイムリーで差し迫った瞬間に行われた。

ホワイトハウスの発表によると、この会談では「様々な問題」が取り上げられ、ロシアのウクライナ侵攻について「実質的な議論(substantial discussion)」が行われたということだ。

また、サリヴァンと楊潔篪は、「米中間の開かれたコミュニケイション・ラインを維持することの重要性を強調した」という。

複数のバイデン政権関係者は、ロシアとそのウクライナ侵攻に関連する中国の行動を注視していくと述べた。

今回の会談は、バイデン大統領が2021年11月に中国の習近平国家主席と行った会談のフォローアップとして計画され、北朝鮮や台湾付近での中国の挑発的な行動についても取り上げられた。 

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アメリカ、中国の政府高官たちがロシア・ウクライナ戦争について会談を持つ予定(US, Chinese officials to meet in Rome over Russia-Ukraine war

ジョセフ・チョイ筆

2022年313

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598028-us-chinese-officials-to-meet-in-rome-on-monday-to-discuss-impact-of

中国とアメリカの政府高官たちが月曜日にローマで会談を持つ予定になっている。両者はロシアのウクライナ侵攻とその世界規模での安全保障に与える衝撃について議論を行うことになる。

国家安全保障会議のエミリー・ホーン報道官は声明の中で次のように述べた。「月曜日、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官と国家安全保障会議の高官たちがローマに向かう。サリヴァンは、アメリカと中華人民共和国との間のコミュニケイションのラインを維持する継続的な試みの一環として、中国共産党政治局員であり、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪と会談を持つ予定だ」。

ホーン報道官は続けて「「両者は、両国の競争を管理するための進行中の取り組みについて話し合い、ロシアのウクライナに対する戦争が地域および世界の安全保障に与える影響について議論する」と述べた。

ローマ滞在中、サリヴァンはイタリアのマリオ・ドラギ首相の外交顧問であるルイジ・マッティオーロとも会談し、「プーティン大統領の選択戦争に対する強力で統一された国際的対応の調整」について話し合う予定だ。

ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、中国に対して、欧米とモスクワ(北京の最も近い同盟国)の仲介役を務めるように求める声が高まっている。中国はこれまでロシアの行動を非難することはせず、紛争当事者双方に自制を呼びかけてきた。

欧米諸国によるロシアへの厳しい制裁措置を受けて、中国がロシア経済への支援に乗り出すのではないかという見方もある。ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題対東大雨量補佐官は日曜日、経済制裁の影響を打ち消すためにロシアを支援しようとする国には影響が及ぶと警告した。

サリヴァンはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、「私たちは北京だけでなく、世界中の全ての国に対して次のように明言したい。もし彼らが基本的にロシアを救済することができる、我々が科した制裁を回避する方法をロシアに与えることができると考えるなら、彼らは全く別の結果を得ることになるだろう。私たちは中国であろうと他の国であろうと、ロシアの被る損失をロシアが挽回できるようにはさせないからだ」と語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン米大統領が現地時間の日曜日(日本では月曜日)に国家安全保障会議を開催すると発表した。今回の会議はウクライナ情勢をめぐるものとなると既にはっきりと述べている。

 ホワイトハウスでの国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)は、国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が主宰する会議で、主要な出席者は大統領、副大統領、国務長官、国防長官、エネルギー長官、財務長官、国家情報長官、統合参謀本部議長、国土安全保障長官、ホワイトハウス法律顧問、国家経済会議委員長、国連大使、行政管理予算局長、気候変動問題担当大統領特使であり、外交、国際関係、情報、安全保障を網羅する、高度な閣議ということになる。国家安全保障会議には多くのスタッフもおり、アメリカの対外政策決定の重要な機関ということになる。

 通常は毎週平日に開催しており(国連大使はニューヨークとワシントンDCを行き来している)、日曜日に開催、しかもそれを公式に発表するというのは、会議の開催自体で事態に影響を与えよう、事態を動かそうという意図が透けて見える。緊急性をフレームアップして、事態をより深刻に見せようという演出ということが考えられる。

 カマラ・ハリス副大統領とアントニー・ブリンケン国務長官をミュンヘンまで行かせて、各国を焚きつけようとしたが、どうも火の勢いが弱いということで、油を注ごうということなのだろうと考えられる。

(貼り付けはじめ)

バイデンがウクライナ情勢をめぐり国家安全保障会議を招集(Biden to convene National Security Council meeting on Ukraine

キャロライン・ヴァキル筆

2022年2月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/595063-biden-to-convene-national-security-council-meeting-on-ukraine

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は土曜日に声明を発表し、ジョー・バイデン大統領が日曜日にウクライナに関する国家安全保障会議を招集すると述べた。

サキ報道官は次のように述べた。「バイデン大統領は、ウクライナ情勢の推移引き続き注意深く目配りをしており、国家安全保障ティームから現場の最新の出来事について定期的に報告を受けている。国家安全保障ティームは、ロシアがウクライナに対していつでも攻撃を開始できる準備が整っていることを再確認している」と述べた。

サキ報道官はまた、カマラ・ハリス副大統領がミュンヘン安全保障会議に出席し、各国の首脳と会合を持ったがその内容について、バイデン大統領は最新情報を含む報告を受けているとも述べた。

一方、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は土曜日午前、フランスのエマニュエル・マクロン大統領と「緊急の対話」を行ったとツイートした。

「最前線における状況の悪化、我々の損失、政治家や国際ジャーナリストへの砲撃についてマクロン大統領に知らせた。事態の深刻化の緊急的な阻止と政治的・外交的な解決の必要性とそれらの実現可能性について議論した」とゼレンスキーはツイートした。

今回の事態は、ウクライナ国境付近に最大19万人のロシア軍が集結していると当局が推定していることを受けたものだ。今週初め、ロシアは部隊の一部を撤退させたと主張したが、NATOとアメリカの当局者は、ロシアが逆のことをしているように見えると述べた。

土曜日に開催されたミュンヘン安全保障会議では、複数のアメリカ政府高官たちが、ロシアがウクライナに侵攻した場合には、厳しい結果を招くことになるだろうと繰り返し述べた。

ハリスは準備してきた演説の中で「明確にしておきたい。もしロシアがウクライナに更に侵攻すれば、アメリカは同盟諸国やパートナー諸国と協力して、重大なそして前例のない経済的コストをロシアに科すことになるだろう」と述べた。

ナンシー・ペロシ連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)は記者会見で、「支払うべき犠牲が存在する。もし彼(プーティン)が侵略を決断したら、プーティン大統領が下した危険な決断の結果として、制裁の影響をロシア国民が感じるのに、そう時間はかからないだろう。何とも悲しいことだ」と発言した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 昨年の大統領選挙前、「アジア諸国はバイデンの対アジア外交に疑念を持っている」という内容の論稿が発表された。ここでは備忘録の意味もあって、それを紹介する。

 内容はいたって簡単で、「オバマ大統領は中国に対して融和的で関与しよう、させようとしてきたために中国を強化させた。一方、トランプ大統領は中国には対決的な姿勢で臨んだ。バイデンが大統領になったら、融和的で関与政策に戻ってしまう。こうしたことをアジア諸国は憂慮している」というものだ。

 バイデン政権のアジア政策に関しては、中国に対して対決姿勢(クアッド)を取る派のカート・キャンベルNSCインド・太平洋調整官(「アジア政策のツァーリ」と呼ばれている)と「中国とは破滅的な結果にならないに様に競争する」派のジェイク・サリヴァン大統領国家安全保障担当補佐官がいる。この2つの流れの中で、後者の流れを主にしながら、前者の対決的な姿勢があることも意識させるという構図になっている。しかし、大きな流れとしてアメリカはアジアから少しずつ引いていく。

 昨日以下のような記事が出た。

(貼り付けはじめ)

●「キャロライン・ケネディ氏、駐豪大使に…岸田氏とも交流」

2021/12/16 10:16

https://www.yomiuri.co.jp/world/20211216-OYT1T50126/

 【ワシントン=田島大志】バイデン米大統領は15日、駐オーストラリア大使にキャロライン・ケネディ元駐日大使(64)を指名すると発表した。

 ケネディ氏はジョン・F・ケネディ元大統領の長女で、オバマ政権下の2013~17年、女性初の駐日大使を務めた。オバマ大統領の広島訪問や安倍首相の米ハワイ・真珠湾訪問の実現に貢献し、当時外相だった岸田首相とも交流を重ねた。

 バイデン政権は中国への対抗を念頭に、米英豪の安全保障協力の枠組み「オーカス」を創設するなど、豪州を重視しており、ケネディ氏にさらなる関係強化を託すとみられる。

 バイデン氏は、フィギュアスケート元世界女王のミシェル・クワン氏(41)を駐ベリーズ大使に充てることも明らかにした。

(貼り付け終わり)

 キャロライン・ケネディは民主党の超名門であるボストン・ケネディ王朝のプリンセスであり、「使い勝手」の良い人物だ。キャロラインの駐豪大使指名は、「オーストラリアをしっかりアメリカ側で確保する」という意思表示であるが、ここに重要な手駒であるキャロラインを持ってこなければならないというのは、その確保が最重要でありながら、とても難しいということを意味している。そして、アメリカはオーストラリアまで「引く」ということを示している。

 上の記事にあるが、民主党のフィギアスケートの元人気選手で世界女王にもなった中国系のミッシェル・クワンは大統領選挙でバイデンを熱心に応援しており、その論功行賞ということもあるが、現在中国が影響力を増しているアフリカに対する攻めの一手の手駒ということになるだろう。政治的な動きができるかは未知数だが、クワンの将来の政界転身に向けた箔つけのための準備ということもあるのかもしれない。

 アジア諸国の意向としては「米中が本格的に対決して、自分たちに迷惑が掛かるのはごめんだ。アメリカが衰退するなら自分たちに迷惑が掛からない形で、引いていって欲しい。中国との関係は自分たちで折り合いをつけるから」ということになる。「中国怖い、アメリカがいなくなるのは嫌だよー」というのはあまりに小児病的で単純過ぎる考えだが、日本はそれが主流になっているというのが、日本外交の弱点ということになる。しかし、その裏では「中国ともきちんとつながらなくては」という「本音」も存在し、それが機能している。

(貼り付けはじめ)

アジア地域においてバイデンは信頼に対して疑問を持たれている(Biden Has a Serious Credibility Problem in Asia

-アメリカの同盟諸国はトランプ大統領とうまくやっており、彼の中国に対する強硬な姿勢に好感を持っている。そして、バイデンの勝利について懸念を持っている。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2020年9月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/09/10/trump-biden-asia-credibility-problem/

ビラヒリ・カウシカンはシンガポールの幹部クラスの外交官を務めた。彼は物事をはっきり述べることで知られている。しかし、オバマ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスーザン・ライスに対するカウシカンが最近発したコメントは通常よりもかなりきついものとなった。今年8月、カウシカンはフェイスブックに「ライスが災いの種になるだろう」と書き込んだ。この時に民主党の大統領選挙候補者ジョー・バイデンがスーザン・ライスを副大統領候補者に選ぶことを考慮しているという報道が出ていた。カウシカンは、バイデンが当選して政権を担う場合に国務長官と国防長官に就任する可能性があるライスについて、中国に対して弱腰になるだろうと述べている。カウシカンは「アメリカは、気候変動における中国との協力を得るために競争を強調すべきではない、と考える人々の中に、ライスは含まれている。このような考えは国際関係の本質についての根本的な誤解である」と書いている。カウシカンはバイデンの勝利後の予測を次のように述べている。「私たちはトランプ時代について郷愁をもって振り返ることになるだろう」。

カウシカンの厳しい見方はアジア地域において知的な人々の間では例外だと考えられるだろうが、バイデン政権の外交に関しては例外ではない。アメリカのアジア地域における友人たちは、バイデンの勝利を静かに心配しており、日本やインドなどの重要な同盟諸国にとってはなおさらだ、という事実はワシントンにいる多くの人々を驚かせている。米国では、左派と右派からトランプ大統領を不快に思い、彼の政治に絶望している人々が出ている。そうした人々は、心ある外国人なら誰でもそのように考えるはずだと確信している。ヨーロッパの多くの地域ではそうかもしれない。しかし、アジアの多くの地域ではそうではない。東京、台北、ニューデリー、シンガポールなどの各国の首都の政府高官たちは、トランプ大統領の中国に対する厳しいアプローチに比較的慣れている。一方、バイデン大統領誕生の可能性が高まる中、アジアの有力者の多くは、北京に対して焦点が合わず、甘い態度をとっていたオバマ時代の不快な記憶を思い出していることだろう。その記憶が正しいかどうかはひとまず置いておいて、バイデンにはアジア地域における信用にかかわる問題があり、それを解決するのは難しいかもしれない。

民主党全国大会における演説の中で、バイデンは自身の政権の重要課題を4点挙げている。それらには新型コロナウイルス感染拡大対策や人種間の正義の促進が含まれている。中国への対処はアジア諸国の外交政策関連エリートたちの重大な懸念となっている。しかし、中国への対処はバイデンの挙げた重要課題の中に入っていなかった。今回バイデンが中国について言及しなかったことについては、東京でも注目されている。例えば4月の『アメリカン・インタレスト』誌の論説記事では、トランプに対する日本の見解がうまくまとめられていた。論説記事のタイトルは「対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy)」であり、日本外務省の官僚が匿名で書いたものだ。論説の中で著者の外務官僚は、オバマ時代の中国政策について、「優先的な使命は常に中国との競争ではなく、中国との関わり合いを持つことだった」と痛烈に批判している。トランプの諸政策は不完全だが、北京に対するより強硬なアプローチは歓迎されると著者は主張している。この官僚は「もし可能だとしても、トランプ大統領出現以前の世界に戻りたいと私は望むだろうか?」と問いかけている。この人物は次のように続けている。「東京にいる意思決定者の多くにとって、その答えはおそらく“ノー”だろう。なぜなら、トランプ政権下で実行が不十分でも基本的には正しい戦略を採用されている方が、オバマ政権下で実行は十分でも曖昧な戦略を採っていたことよりも良いからだ」。

公平に見て、この匿名の著者による論稿記事は日本政府の考えの一つを示している。しかし、論稿の発表には外務省の正式な承認が必要だったことは間違いなく、多くの高官の意見が反映されていると考えられる。また、2019年末に日本を訪問した際に私が聞いた話では、政府高官や外交アナリストたちは、トランプが再選されることについて、驚くほど楽観的な見方をしていた。対照的に、バイデンが当選すると、中国のパワーを管理し、抑制するための政治的意志が欠如していると多くの人が指摘するアプローチが復活するリスクがあると考えていた。

同様の思考はインド政府でも表面化している。インド外相で知性の高さで知られるスブラマニヤム・ジャイシャンカルは昨年、トランプ大統領が米印関係を損なったと考えておる人たちに反撃している。彼は「この23年の間にトランプに見られたのは、伝統的なアメリカのシステムとはまったく違うものだった。実際に、多くの分野で大胆な断固たる措置が実行された」と述べている。急速に悪化する中印関係の中で、インド政府は、トランプ大統領の混沌とした、しかし強引な反中政策を評価するようになっている。少なくとも、バイデンの登場は、インドの戦略的立場を複雑にする可能性がある。外交問題のコメンテーターであるラジャ・モハンは最近、バイデンは中国との対立を減らす一方で、トランプ大統領のロシアへの甘いアプローチを終わらせるだろうと予測している。モハンは「米露関係の新たな緊張とバイデン政権下での米中和解は、インドの諸大国との関係を確実に複雑にする」と書いている。

同様の懸念は台湾にもある。台湾の外交関係の高官たちはアメリカの対中政策の変化に敏感になっているのは当然のことだ。アメリカ合衆国保健福祉省長官アレックス・アザールが最近台湾を訪問したことはアメリカ政府との関係を深化させることになる。ワシントンに本拠を置く政策グループであるグローバル・タイワン・インスティテュートの副所長チィティン・イエは「台湾はトランプ政権第一期で利益を得た」と述べている。彼は台湾の多くの人々は「未検証の選挙公約よりも現在のコース」を支持するだろうとも述べている。

バイデン選対は、トランプの再選に安心感を持っているように見えるアジアの人々と意見が合わないだろう。多くの意味でそうするのが正しいことだ。二期目のトランプ政権は、既存の米国との同盟関係を無視した取引的なアプローチから、小さいながらも中国との軍事衝突のリスクの高まりまで、アジア地域に大きな損害を与える可能性が高い。また、バイデンへの疑念が普遍的なものではないことも事実だ。アジア地域の多くの人々は、米国の外交が対決的でなくなることを歓迎し、新たに融和(accommodation)の時代が到来することを期待している。シンガポールのリー・シェンロン首相は最近、トランプ政権ではなくバイデン政権の下で起きる可能性について次のように書いている。「米中2つの大国は、ある分野では競争をしながら、他の分野では対立が協力を妨げることのないような、共存の道を探らなければならない」と書いている。

更に言えば、バイデンは現在までのところ、オバマに比べてより強硬な対中国政策を主張してきている。今年初めの民主党予備選挙の討論会の席上、バイデンは中国の習近平国家主席を「犯罪者(thug)」と呼んだ。別の討論会では、中国を「権威主義的独裁政治(authoritarian dictatorship)」と形容した。アメリカの政治指導者たちの大多数と同様、バイデンは「中国は改革可能だ」という考えを放棄し、アメリカは、アジアに出現した競争相手である中国を打ち負かさねばならないと主張している。バイデン選対はより微かなシグナルをアジア各国に送っている。バイデンは、東南アジア諸国連合(ASEAN)への働きかけや、トランプが欠席しがちだったアジア地域の会合にバイデンが積極的に出席することを示唆している。バイデンの上級顧問の一人アンソニー・ブリンケンはツイッターに次のように投稿した。「東南アジア諸国連合は、気候変動と世界の医療レヴェルのような重要な諸問題に対処するためには必要不可欠な要素である。バイデン大統領は、重要は諸問題について、東南アジア諸国連合に出席し、関与することになるだろう」。

しかし、バイデンと彼のティームがよりタカ派的な対中国姿勢を推進する一方で、ジレンマに直面している。一つ目は人権に関してである。バイデンは、新疆ウイグル自治区に住む数百万人のイスラム教徒のウイグル族の窮状をしばしば取り上げ、この問題を北京に対する厳しいアプローチの中心に据えている。今月、チベットにも焦点を当てた厳しい言葉で、「私はアメリカの外交政策の中心に価値観を戻すことになる」と述べた。これは米国の進歩主義者にとっては魅力的なことかもしれない。アジア地域では、米国が友人に説教をしたり、民主的な改革を求めたりするという、オバマ時代の幸運とは程遠い色合いを帯びている。

さらに、気候変動問題に代表されるような第二の問題もある。バイデンは最近次のように書いている。「アメリカは中国に対して厳しい姿勢を取る必要がある。この課題に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナー諸国が一丸となって、中国の虐待や人権侵害に立ち向かうことである。それでも、気候変動など利害が一致する問題では、中国政府との協力を模索する」。トランプが気候問題に関心を持たないことを考えると、この緊張感がトランプを悩ませることはなかった。バイデンは気候変動問題の中国との協力を望んでおらず、民主党内からも進展を求める大きな圧力を受けています。しかし、それを実現するためには、世界最大の炭素排出国である中国への関与が必要だ。カウシカンのような批判者たちにとって、しかし、このような諸問題のリバランスがあるからこそ、バイデンは、オバマ大統領のように優先順位がバラバラになってしまうのではないかということになる。

究極的には、アジア諸国はどちらの候補者がホワイトハウスに入ろうがそれに適応するだろう。バイデンが勝利すれば、バイデンに疑問を持つ人々の懸念をすぐに和らげることができるだろう。トランプ時代の予測不可能性に郷愁を持つことはほぼないだろう。しかしながら、現在のところ、アジア諸国がバイデンに抱いている疑念は本物である。バイデンにとって最も大事なことはアメリカの有権者たちからの支持を得ることである。しかし、バイデンが今後の外交政策の中心にアジアの米国との同盟諸国との協力を据えていることを考えると、もう少し安心感を与えるべきではないか。

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対決的な対中国戦略の諸価値(The Virtues of a Confrontational China Strategy

YA

2020年4月10日

『ジ・アメリカン・インタレスト』誌

https://www.the-american-interest.com/2020/04/10/the-virtues-of-a-confrontational-china-strategy/

ある日本の外交官僚は、トランプ政権の中国に対する対決的な(confrontational)アプローチの一部を批判しているが、バランス的に見て、オバマ大統領の関与と融和(engagement and accommodation)に比べて、ほぼ全ての面で好ましいと考えている。

日本の政策立案と実行に関わるエリートたちの間にある、ドナルド・トランプ大統領に対する見方は複雑だ。外交政策の専門家たちに現在のホワイトハウスの主ジョー・バイデンについて質問すれば、批判すべき多くの点を見つけるだろう。しかし、「オバマ大統領時代が懐かしいか」と質問すれば、同じ人たちのほとんどが否定的な回答をするだろう。いや、それ以上かもしれない。

日本の政策担当者たちは、オバマ大統領のいわゆる「21世紀型アプローチ」と比較して、19世紀型の、中国の「生のパワーで地域の全ての国々を威嚇し、自分たちの勢力範囲を拡大する」というやり方と対比して、絶望した。オバマ大統領が、ライバルではなく責任あるステークホルダー(共通の利害を持つ者)として、国際問題で中国と協力する可能性について話している間、中国政府は尖閣諸島に軍艦を派遣し、スカボロー礁からフィリピンを追い出し、南シナ海に人工島を作ることに邁進した。冷戦終結後、日本はアメリカに対して中国に対する警告を発し続けてきた。トランプ大統領には様々な欠点があるが、日本はついにホワイトハウスに、この課題を正しく認識し、評価してくれる人を得たようになった。

日本はこれまでアメリカの楽観的な中国に対する関与政策に公然と反対したことはないが(最初に関与政策が始まったのはクリントン政権下だった)、日本の中国研究者たちは、それによって中国が自由主義的な民主政治体制国家になるなどとは考えていなかった。日本の中国専門家の多くは、2000年の経験に基づいて、「中国はその文化や性質を変えることはない」と主張している。中国は昔も今も将来も中国なのだ。紀元前5世紀の孔子(Confucius)の時代から、中国人にとって世界には一つの天(heaven)と一つの支配者(ruler)、すなわち中国の皇帝(Emperor of China)しかいない。中国人以外の「野蛮人(barbarians)」は、中国の優位性を認めなければならない。

日本はこのような考え方に従ったことはない。日本のインド太平洋に対する歴史的なアプローチは、自国の主権を維持しつつ、近隣諸国との経済的、文化的、そして政治的な交流を維持することであった。近年の中国の台頭に直面しても、日本は主権と繁栄を維持する決意を変えていない。それを可能にしているのは、日米同盟を中心とした現在の国際秩序と地域のバランス・オブ・パワー(力の均衡)関係だ。日本はこの現状を維持したいと考えている。

中国は、少なくとも1992年に領土法(Territorial Legislation)を制定し、尖閣諸島や南シナ海の島々を「中華人民共和国の陸上の国土」とすることを一方的に宣言して以来、一貫して現状に異議を唱えてきた。クリントン政権下での融和の試みが実施された後、ブッシュは中国からの挑戦を真剣に受け止める覚悟を持って大統領に就任した。2001年9月に発表されたブッシュ政権初の「四年ごとの国防計画見直し(Quadrennial Defense Review)」では、初めて中国の挑戦に言及し、「アジア地域に強大な資源基盤を持つ軍事的競争相手が出現する可能性がある」と述べている。911同時多発テロ事件が発生した2001年9月、日本とアメリカは、国連総会期間中に毎年行われている両国の外相・国務長官と防衛相・国防長官の会談で中国について議論する計画を立てていた。中国はすぐにアメリカの国際規模の反テロリズム活動を支援することに同意し、アメリカが他の場所に集中している間、北京は少なくとも10年間は近代化(modernization)の努力を続けることができた。中国は、老朽化した軍隊の更新と近代的なパワープロジェクション能力の開発に多額の投資を始め、近代の中国では初めてとなる大規模なブルーウォーター・ネイビーを構築した。中国は、時代遅れの軍隊の刷新と近代的な戦力投射(power projection、戦力の準備、輸送、展開)能力の開発に多額の投資を始めた。近代の中国では初めてとなる大規模な外洋海軍(blue water navy、世界的に展開できる海軍)を構築した。そして、中国はその新しい能力を活用することに躊躇しなかった。南シナ海の前哨基地は徐々に建設され、機能が高められ、2008年からは尖閣諸島周辺の日本の領海に巡視船(patrol vessels)を送り込むようになった。

政権の座に就いたオバマ大統領は、ブッシュ大統領と異なり、より強硬な姿勢を取ることはなかった。オバマ政権は、リベラル派の知識人たちが主張していたことをそのまま実行していた。それは、世界規模の諸問題での協力を重視し、中国のいわゆる核心的利益[core interests](台湾、チベットや新疆での人権侵害など)には配慮するというもので、中国をよりリベラルなアクターに育て、既存の国際秩序を支えるアメリカの負担を分かち合うことを期待した。政権最後の日まで、オバマ政権は中国が「変更可能(shapeable)」であると信じていた。

オバマ政権期、政策のコンセンサスは一枚岩ではなかった。ワシントンの中国専門家たちの中には、関与の有効性に警告を発する人たちもいた。例えば、ジェイムズ・マンの2007年の著作『中国ファンタジー:資本主義が中国に民主政治体制をもたらさない理由』では、「関与」の概念から導き出される中心的な問題は次のような疑問だ。「誰が誰に関与するのか?」というものだ。我々は本当に中国と関わっているのか、それとも中国が自らの利益のために国際システムと関わっているのか?また、誰が誰を変えているのか?私たちが中国を変えているのか、それとも中国の行動に合わせて国際システムが変わっているのか?アメリカは、中国が立ち直ることに賭けて、かなりの「防御(ヘッジ、hedge)」を行ったと言える。オバマ政権は、日米同盟を強化し、オーストラリアやフィリピンとの軍事協力を強化し、インドやベトナムを緊密なパートナーとして迎え入れた。これらの取り組みは、東京をはじめとするアジアの首都では歓迎された。

しかし、優先されたのは常に中国への関与だった。2016年のオバマ大統領の中国訪問がその具体例だ。2016年7月、中国政府は、南シナ海におけるフィリピンの主張を圧倒的に支持したハーグの国際法廷の判決を、"単なる紙切れ(just a piece of paper "と述べて無視した。その1カ月後の8月には、中国は尖閣諸島に200300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、グローバルヘルスなど、米国が北京との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国の強圧的で不安定な行動を検閲することについては言及されなかった。その1カ月後の2021年8月には、中国は尖閣諸島に200から300隻の漁船を派遣していた。その直後に杭州を訪れたオバマ大統領は、平和維持、難民、海洋リスクの軽減と協力、イラク、宇宙協力、アフガニスタン、核の安全と責任、野生生物の密輸対策、海洋協力、開発協力の強化、アフリカ、国際的な医療など、アメリカが中国との間で優先する事項を反映したファクトシートを発表した。中国が強圧的で不安定な行動についての文言を検閲していることについては言及されなかった。

これが、トランプ大統領当選の地域戦略上の背景となった。日本はもちろん、トランプ当選という結果に誰よりも驚いた。しかし、日本政府はすぐに行動を起こした。安倍晋三首相はすぐにニューヨークに飛び、トランプタワーのオフィスでトランプ次期大統領に会った。これは前例のないリスクの高い行動だった。安倍首相は国際問題についてトランプへの対策を講じ、将来のカウンターパートとの関係を構築し、地域の重要性と中国がもたらす課題について明確なメッセージを伝えることができ、日本にとってこの賭けは成功した。2017年2月、大統領就任直後のトランプと会った安倍首相は、その範囲と野心において前例のない共同宣言(joint declaration)に合意しました。そのインパクトは2点あった。

第一に、この共同宣言は中国に対して強力な警告シグナルを発した。両首脳は、日本政府が考えていた、アジア地域の平和と安定の基盤となる基本原則全てを確認した。米国は、インド太平洋地域への新たな深い関与、領土侵略に対する核抑止力(nuclear deterrence)、そして朝鮮半島の非核化(denuclearization of the Korean Peninsula)の追求に再び取り組むことを表明した。両首脳が発表したコミュニケ(communiqué)の中には、「アメリカはアジア地域でのアメリカ軍の存在を強化し、日本は日米同盟におけるより大きな役割と責任を担うことになる」と書かれており、さらに両国の外務大臣・国務長官、防衛大臣。国防長官に「両国のそれぞれの役割、任務、能力を見直す」よう指示した。大きな構図では、トランプ自身が合意し、それ以外の「詳細」はすべて上級閣僚が担当することになった。この最初の宣言は、日本だけでなく、アジア地域全体の同盟国やパートナーを安心させた。

第二に、二国間同盟の運営に関する意思決定を変えたことだ。宣言は共同で作成されたが、その内容は日本側が同等かそれ以上に貢献した。北朝鮮への最大限の圧力、自由で開かれたインド太平洋、東南アジアの重要性など、これらの概念は全て、ある程度日本側からの提案であった。アメリカ人の中には、日本にとってのこの転換期の意義を見落としがちな人もいるかもしれない。第二次世界大戦終結以降、日本の外交政策は多かれ少なかれ米国の意向と影響力に左右されてきた。日本の官僚や政治家たちは、日本の意思決定に国際的な圧力を利用することに慣れており、「外圧(Gai-atsu)」という言葉が存在する。今回の転換は心理的にも重要な突破口となった。日本の政府関係者は、これまでのように意見を求めたり批判したりするのではなく、インド太平洋における地政学的課題に対する戦略的方向性やアプローチを、アメリカの政府関係者たちと共同で策定するという初めての試みを行ったということになる。

それ以来、トランプは、習近平との会談の前後や、北朝鮮への対話を開くことを計画する際など、重要な場面で安倍に電話をかけている。メディアの報道によると、2019年5月時点で、安倍首相とトランプ大統領は、10回会談を持ち、30回電話で話し、4回ゴルフをしているということだ。電話での会話を基に測定した、両者の関係の量は、安倍首相がオバマ大統領との関係の数の4倍になっている。これは、トランプ大統領が外国の指導者の間で築いた最も親密な関係であることは間違いない。

しかし、トランプ政権による対中対決政策の実施は、多くのアメリカ人の中で大きな混乱を引き起こしている。ジョー・バイデン元副大統領が最近の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載した論稿の中で主張したように、「その課題(中国)に対処する最も効果的な方法は、アメリカの同盟諸国とパートナーと共に団結して統一戦線(united front)を構築して、中国の人権を無視し、攻撃的な行動に対峙することだ」ということになる。トランプ大統領は、中国に対してだけでなく、同盟諸国やパートナーに対しても経済的な影響力を行使したことで、アメリカの安全保障の保証や約束の信頼性について、アジア地域全体の多くの人々の間で疑念が生じた。日本も例外ではない。2020年1月に実施された日本経済新聞の最新の世論調査では、日本人の72%が、まさにこの不確実性のために、トランプ大統領の再選を望んでいないことが明らかになった。

それでは、可能ならば、トランプ出現以前の世界に私たちは戻りたいのか?東京の多くの政府関係者にとって、その答えはおそらく「ノー」だろう。その理由は、実行されていないが基本的に正しい戦略は、実行されているが曖昧な戦略よりも優れているからだ。私たちは、アメリカが再び融和政策に戻ることを望んでいない。アメリカの融和政策は疑いなく、日本や他のアジア諸国の犠牲の上に成り立つものだ。

私たちは、日米同盟が取引の上に成り立っているものだとは考えていない。つまり、私たちは、日米の国益によりよく応えると同時に、米国のより広い利益にも資するような同盟関係を望んでいる。より平易な言葉を使えば、中国に明確に焦点を当てた同盟は、曖昧で焦点の定まらない同盟よりも、あるいは最悪の場合、最大の課題に立ち向かうことを恐れている同盟よりも、優れている。その負担をどう分担するかは、同目に関するマネジメントの問題だ。言い換えれば、プロセスの問題ということになる。同盟は、共通の国益を実現するための手段であり、目的ではないことを再確認することが重要だ。

特に西ヨーロッパ諸国は、このような計算に戸惑うかもしれないが、これはヨーロッパが中国との関係において、経済的な取引を優先させ、中国が近隣に力を行使しても指導者が見て見ぬふりをしてきた結果に過ぎない。中国の威圧を受ける側の国にとって、アメリカの対中強硬路線は、米国の政策のどの側面よりも重要だ。台北、マニラ、ハノイ、ニューデリーなどにいるアジア各国のエリートたちは、トランプ大統領の予測不可能な取引を重視する方法は、米国が「責任あるステークホルダー(responsible stakeholder)」になるように中国をおだてることに戻る危険性に比べれば、より小さな悪であると計算している。ある高名な研究者は、「アジア各国のエリートたちは、奇妙なことに、トランプの2期目について悲観的になっている(トランプが当選できないと考えて残念がっている)」と主張している。

実際には、中国からの継続的な圧力に直面しているアジア諸国は、この地域における米国の深い関与とアメリカ軍の存在の継続を切望しており、日米同盟はその重要な構成要素となっている。トランプ大統領が同盟国からどれだけ搾り取れるかを自慢することについては、静かな憤りを感じつつも、ほとんどの国は、米国の深い関与が堅固であることを条件に、負担の分担の見直しを検討する用意があるとしている。ここには、何世代にもわたって安定性を保証できるような、アジア地域の健全な新しい活力を生み出すための真のチャンスが存在している。

もちろん、中国に対してバランスを取りながら対峙する戦略のより洗練された実行は大いに歓迎されるべきだ。それは日本のような考えを同じくする同盟諸国それぞれの強みと支援を活用することだ。2021年1月に誰がホワイトハウスの主になろうとも、日本政府はアメリカと対等な立場で二国間の戦略的議論を継続し、インド太平洋における米国の優位性とアメリカ軍の存在を維持し、我々全員が大きな恩恵を受けている既存のルールを基盤とする国際システムを支持するという現在の戦略目標を賢明に実行することに、共通の努力を傾けることができるように期待している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 昨日2021年9月29日に、自民党総裁選挙の投開票が実施され、岸田文雄衆議院議員が総裁に選出された。現在、地味党と公明党で連立与党を組んでおり、岸田氏が菅義偉首相の次の首相ということになる。

 選挙は9月17日に告示され、立候補者の受付が行われ、河野太郎ワクチン担当大臣、岸田文雄元外相・元総務会長、高市早苗元総務相、野田聖子幹事長代行が立候補した。野田氏は推薦人20名を集めるのに苦労していると報道されていたが

 菅首相が9月3日に総裁選不出馬を表明して以来、総裁選挙の状況は一気に流動化した。岸田氏は菅首相府出馬表明前から、いち早く総裁選挙立候補を表明し、高市氏は、安倍晋三前首相の再登板を求めたが断られたことを受け、「私が出たるわ(関西の出身)」と啖呵を切り、安倍氏の支援も受けて、立候補となった。河野氏は、菅政権を支える現職閣僚、ワクチン担当ということもあり、すぐに出馬を決断という訳にはいかなかったが、若手の議員たちや、小泉進次郎環境相や石破茂元幹事長の支援を受け、「小石河連合」と呼ばれる協力体制を確立し、立候補となった。野田氏はこれまでも何度か総裁選挙立候補を模索したが、推薦人集めができずに断念してきた。今回は二階幹事長率いる二階派から推薦人を「借りる」ことができたという報道もあるが、立候補にこぎつけることができた。

 今回は各派閥が対応に苦慮し、自主投票、ただし決選投票の際にはまとまって行動を同じ候補者に投票するという対応になったところが多かった。自民党の派閥は、「8個師団」時代から、三角大福中時代、ニューリーダー時代を経て、小選挙区制度導入もあり、構造を変化させつつも残っている。現在は、細田派(96名)、麻生派(55名)、竹下派(51名)、二階派(47名)、岸田派(46名)、石破派(16名)、石原派(10名)、無派閥63名という状況だ。派閥とはトップ(領袖)を総裁にするためのものとして始まったが(中間派と呼ばれた小派閥もあったが)、現在はトップが総裁を目指すということも少なくなった。今回も岸田氏のみが派閥を率いる領袖だった。

 河野氏は麻生派のプリンス(次に領袖になると見られている人)だったが、今回の総裁選挙では麻生は全体を率いて戦うということではなく、現在の領袖である麻生氏から立候補の了承は得たが、麻生は全体で河野氏を支えるという雰囲気はなかった。高市氏は、元々は細田派に属していたが既に退会しており、無派閥であり、細田は全体からの支援ということも難しかったが、実質的なオーナーである安倍晋三前首相が高市氏を全面支援した。野田氏は独自の戦いを展開した訳だが、自民党にとっては良い効果もあったと思う。

 総裁選挙の結果は次のようなものとなった。簡単にまとめたので見ていただきたい。

(貼り付けはじめ)

■党員算定票(382票、有効投票数:760075票)は

・河野太郎(335046票、44.08%):地元神奈川県を含む37都道府県で1位

・岸田文雄(219338票、28.86%):地元広島県を含む8県で1位

・高市早苗(147764票、19.44%):地元奈良県で1位(2位は河野)

・野田聖子(57927票、7.62%):地元岐阜県で1位(2位は河野)

↓ドント方式で計算して

・河野太郎:169票、岸田文雄:110票、高市早苗:74票、野田聖子:29票

■国会議員票(380票:本来は382票だが病欠などがあった)は

・河野太郎:86票、岸田文雄:146票、高市早苗:114票、野田聖子:34票

■1回目の投票では

・河野太郎:255票、岸田文雄:256票、高市早苗:188票、野田聖子:63票

■岸田文雄、河野太郎の上位2名による決選投票

・河野太郎:131票(議員票)+39票(党員算定票)=170票

・岸田文雄:249票(議員票)+8票(党員算定表)=257票

(貼り付け終わり)

 全体の印象としては、メディアで騒がれたほどには、河野氏は党員党友票が取れていなかったこと、高市氏は議員票も党員党友票が取れていなかったことだ。インターネットで調査をすれば、支持率で言えば河野氏が断然トップだったし、高市氏を応援するインターネット世論も大きく、「高市氏が2位になるのではないか」という勢いもあった。しかし、インターネットとは曲者だ。私は2000年の「加藤の乱」を思い出す。加藤紘一氏は、自身に寄せられたEメールの束を手にして、小渕恵三首相に戦いを挑み、一敗地にまみれた。インターネットは実像をより大きく見せる効果があるように思う。

 党員党友票の大幅リードで河野氏が1回目の投票で1位になると見られていて、岸田氏、高市氏が2位と3位になると見られ、決選投票になったら「2・3位連合」という話も出ていたが、接戦で岸田氏が1位、河野氏が2位となった。河野氏の敗北が決定的となった。

 河野氏の敗因は、国会議員票の獲得数の少なさに尽きる。また、党員党友票がもっと獲得できるのではないかとも陣営は考えていたのではないか。空中戦の失敗だ。小泉純一郎出現の時のような熱狂がなければ、河野氏の当選は困難だった。そして、人々は、あの時の熱狂を苦々しい記憶として持っている。河野氏のあのドライな、冷たい態度は政治家としては致命的な欠点ということになる。それでこれまで8回も当選してきたのだから、直すことはできないだろうからそのままで進むしかない。

 今回の総裁選挙で私が考えるキーワードは「通産省」と「産業政策」だ。この2つの言葉が並ぶと、チャルマーズ・ジョンソン著『通産省と日本の奇跡: 産業政策の発展1925-1975 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)』(1982年)を思い出す方も多くおられると思う。私がどうしてそのように考えるに至ったかについて書いていきたい。まず以下の記事をお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

●「「ガッカリ河野を見切って高市に乗り換え」議員たちの驚きの打算」

9/28() 10:32配信 FRIDAY

https://news.yahoo.co.jp/articles/e5b643d655ed9193bb1c197206c5f7131bf26261

 

予想外の大混戦となった自民党総裁選は、いよいよ929日に「決戦」を迎える。一挙手一投足を追うメディアの世論調査では、発信力の高さに定評がある河野太郎ワクチン担当相のトップは不動だが、「決選投票になれば河野氏ピンチ」というのもコンセンサスである。熾烈さを増す権力闘争の中で、勝敗を分けるとされる態度未定の議員たちの心理は複雑なようで

【画像】今井絵理子議員が「期待の美人秘書」と国会でツーショット!

◆着信に「安倍前総理」

「本人からの電話に驚いた。ここまで力を入れているなんて…」

携帯電話の着信履歴を見返しながら自民党の若手議員が首をひねるのも無理はない。「本人」とは、総裁選の立候補者ではない。河野氏を猛追する高市早苗前総務相を全面支援する安倍晋三前首相からの応援依頼だったからだ。議員間ではしきりに情報交換がされ、態度を決めかねているとされる約2割の議員の元には各方面からの電話が続いている。

情報戦もヒートアップする一方だ。

「もしも裏切り行為があれば、安倍さんが許すことはない」

「岸田文雄前政調会長が決戦投票で勝つのは明白。いま力を貸しておけば、新政権で活用してくれるはず」

前首相から直で電話が来る時代。この時ばかりは若手議員たちは通信手段の発達を恨んだことだろう。

いまも態度を決めかねている議員らの頭の中にあるのは、11月に予定される総選挙だ。安倍前首相からの揺さぶりも効果はあるが、その一方で、

「河野さんが首相になるのを後押しすれば、石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相が選挙の時に必ず応援にくる」

「逆に保守色の強い高市氏では、公明党がついていけなくなるから、選挙では不利ではないか」

との算段が頭の中をメリーゴーランドのように駆け巡っているのだ。国民の人気が高い「小石河連合」に加えて、河野氏を支持する菅義偉首相からのにらみは、選挙に弱い態度未定の議員心理を揺さぶる。

だが、当選ムードを漂わせる河野陣営を横目に「ガッカリした」と距離を置き始めたのは自民党中堅議員の1人だ。その理由は、河野氏が総裁選への出馬表明を2日後に控えた98日に経団連を訪れていたことにある。「脱原発」を唱えていた河野氏は、十倉雅和会長と会談し「安全と認められた必要な原発は再稼働させていく」などと、自らの主張を修正したと受け止められたからだ。10日の記者会見でも「安全が確認された原発を当面は再稼働させるのが現実的だ」と明言した。

◆河野包囲網

歯に衣着せぬ発言や突破力が最大のアピールポイントだったはずの河野氏は牙を抜かれつつあるようにも映る。「一部の政治家からは『すべてを電気自動車にすれば良いんだ』とか、『製造業は時代遅れだ』という声を聞くこともあるが、それは違うと思う」。日本自動車工業会の豊田章男会長は9日、踏み込んだ発言で周囲を驚かせたが、河野氏やその周辺が念頭にあるというのがもっぱらの見方だ。

さらに日本貿易会の小林健会長(三菱商事会長)も15日、原発に関して「検討もしないで『イエス・オア・ノー』ということはありえない」として、新増設の検討が必要との見解を示した。対立陣営からは「河野氏が新しい首相になれば、企業とうまくいかないのではないか」との声が伝わる。

河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ。「『職域』がどんどん剥がされているようだ」と河野氏のブレーンに不安はつきない。

今回の総裁選は、議員票382と党員票382の計764票で争われる。約110万人に上る党員が「国民感覚」に近いのは間違いないが、その内訳を考えれば、総裁選での投票行動は必ずしも「国民感覚に近い」とは言い切れない。

その理由は、業界団体に属している「職域党員」が党員票全体の4割近くに上るためだ。「職域」は全国単位で動くことが可能で、安倍氏の総裁選で党員票の積み増しに大きく貢献したとされる。さらに、この支持団体からの支援を受ける議員たちも、その動向を気にしないわけにはいかなくなる。

世論調査の数字からは「最も総理大臣に近い男」であることは間違いない河野氏だが、総裁選終盤では焦りも見え始めている。26日のフジテレビ番組で「河野氏の陣営が1回目の投票で一部の票を高市氏に回す動きもある」との解説に対して、「ひどいフェイクニュースですよ」「するわけないですよ!冗談はよしてください」と激高する一幕も。

加えて、ジャーナリストの田原総一朗氏からは「河野太郎が出馬会見で『脱原発』も、『女系天皇』も外して、どうしようもなかった。河野に言ったのよ、ガッカリしたと。なんであんなことを言ったのかといえば、そういわなければ麻生さんが出馬を認めなかったんだと」などと、ウッカリ“暴露”されてしまう始末である。

権力闘争よりも新型コロナウイルス対策の方をシッカリしてほしいというのが国民の願いであるが、自民党の若手議員からは、総選挙での応援だけは「シッカリきてくださいよ」との声が漏れる。なんとも空しいものである。

取材・文:小倉健一

イトモス研究所所長

(貼り付け終わり)

 私はこの記事を読みながら、次の文章に目が留まった。引用する。「河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ」。今回の総裁選挙で岸田氏の陣営の指南役として入り、経済界における「河野包囲網」を作り上げたのが、「今井尚哉(いまいたかや、1958年-、63歳)」氏だったというのだ。今井氏は第二次安倍政権時代に政策担当秘書官・内閣総理大臣補佐官(秘書官と兼任)を務めた人物だ。その今井氏が今回、岸田陣営の指南役となったということは違和感があった。これまでの関係で言えば、安倍氏の許で、高市氏の応援に回るのが自然ではないかと私は考えた。それなのに、今井氏が岸田氏支援に回ったのはどうしてか、ということを私は不思議に思った。そこで出てくるキーワードが「通産省(通商産業省、現在の経済産業省、戦前は商工省)」だ。岸田氏と今井氏の周辺は通産省だらけなのだ。

 まず、岸田氏の父親である岸田文武氏(きしだふみたけ、1926-1992年、65歳で没)は1978年(1949年入省)に退官するまで、通産官僚だった。貿易局長、中小企業庁長官を務めた。1963年からはニューヨークに在勤し、息子である文雄は小学校時代の3年間をニューヨークで過ごした。

 今井尚哉氏の叔父には、通産事務次官(1937年商工省入省)を務め、城山三郎の小説『官僚たちの夏(新潮文庫)』(1980年刊行、数年前に渡辺謙主演でドラマ化された)の主人公今井善衛(いまいぜんえい、1913-1996年、83歳で没)、新日鉄社長・経団連会長を務めた今井敬(いまいたかし、1929年-、92歳)がいる。安倍晋三前首相の祖父・岸信介(1896-1987年、90歳で没)元首相は1920年に農商務省に入省し、1925年の分割の際に商工省に所属した。1939年に商工省次官となった。その間には満州国に赴任した。

 上記のように、岸田氏は通産官僚の息子であり、今井氏は叔父が通産官僚で最高位の事務次官を務め、自身も通産省に入省したという経歴を持つ。岸田氏は、東京大学の入学試験で不合格となり、2年の浪人を経て、早稲田大学法学部に入学し、卒業後は日本長期信用銀行に入行した。その頃には父親が既に政治家であったが、政治家を目指してはいなかったそうだ。確かに、これまで歴代の早稲田大学出身の総理大臣は雄弁会出身者が殆どだ。雄弁会は政治家を目指す学生の登竜門であるが(最近はそうでもないようだが)、岸田氏は参加しなかったようだ。早稲田大学にはどうしても早稲田に行きたいという学生ばかりではなく、東大や京大などに不合格になって仕方なく入学してきた学生も多く、雰囲気が違う。愛校心(周囲の迷惑を考えずに早稲田の校歌を歌いまくるのはそうとは言い難いが、これが愛校心溢れる行動とされる)は早稲田大学には薄いようだ。岸田氏のよりどころは、東京の名門・開成高校にある。以下の記事を貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

●「岸田新総裁は開成高、早稲田大卒 総裁選を争った4人の出身校と華麗なる同窓生たち 〈dot.〉」

9/29() 15:05配信 AERA dot.

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=3

 929日、第27代自民党総裁に岸田文雄議員が決定した。

 これで事実上、岸田首相が誕生することになる。9月上旬、菅義偉首相が不出馬を表明してから自民党総裁選挙がはじまり、岸田文雄、河野太郎、野田聖子、高市早苗の4人が立候補。自民党国会議員と党員・党友によって投票が行われ、新しい日本のリーダーが誕生したわけだ。総裁選を争った4人について、出身校とその特徴、同窓生をみてみよう。

【ランキング】国会議員の出身大学ランキング<政党別/女性議員/238ページ>

■岸田文雄氏

 岸田文雄は1957年生まれ。開成高校を卒業して東京大を目指したがかなわず、早稲田大に進んだ。

 開成には永田町・霞が関開成会(永霞会)という同窓会組織がある。同校OBの国会議員、省庁職員が集まる親睦会だ。現在、議員は9人、国家公務員は112省庁で約600人にのぼり、事務次官クラスが10人近くいるといわれている。

 開成OBの国会議員には東京大、官僚経由が多い(カッコ内は出身省庁)。

 上野宏史(経済産業省)

 小林鷹之(財務省)

 鈴木馨祐(財務省)

 城内実(外務省)

 鈴木憲和(農林水産省)

 永霞会事務局長の井上信治議員に「永霞会が開成OBを総理に、と盛り上がることはありますか」とたずねたところ、こう答えてくれた。

「開成から総理が生まれるのはうれしいけど、そのために永霞会を発足させたわけではありません。OBの政治家と官僚が国のために折に触れて協力し合えばいいと考えています」(「週刊朝日」202142日号)

 昨年の総裁選では菅義偉と岸田が争ったが、永霞会の開成OB議員は菅に投票しているという。これは同校OB議員が所属する派閥の事情によるものだった。

■河野太郎氏

 河野太郎は1963年生まれ。慶應義塾中等部、慶應高校から慶應義塾大経済学部に進む。総裁選でタッグを組んだ石破茂は高校から慶應に進み、慶應義塾大法学部というコースをたどった。

 慶應高校出身の国会議員はおよそ30人いるが、2世、3世が多い。父や祖父が大臣経験のある大物議員が並ぶ。(*は首相経験者)

 竹下亘 異母兄は竹下登*(17日に死去)

 福田達夫 祖父は福田赳夫*、父は福田康夫*

 岸信夫 父は安倍晋太郎、祖父は岸信介*で、岸家と養子縁組。兄は安倍晋三*

 石原伸晃、石原宏高 父は石原慎太郎 

 奥野信亮 父は奥野誠亮

 高村正大 父は高村正彦

 中曽根康隆 父は中曽根弘文、祖父は中曽根康弘*

 慶應高校出身の国会議員は「華麗なる一族」を持つ。このうち中曽根康隆の祖父、福田達夫の父と祖父、岸信夫の祖父と兄、竹下の異母兄は首相となった。逆に言えば、首相は親族を慶應高校に入れたがる傾向にあるということか。河野太郎の父、河野洋平、そして祖父・河野一郎も派閥、小グループの領袖であり、首相候補だった。

 だが、不思議なことに慶應高校出身の首相は生まれていない。慶應義塾大からは橋本龍太郎、小泉純一郎などの宰相が輩出したのだが、塾高出身は縁がない。

■野田聖子氏

 野田聖子は1960年生まれ。田園調布雙葉高校を中退してアメリカのハイスクールで学ぶ。田園調布雙葉の3学年下には雅子皇后がいた。同校には各界著名人の子女が通っていることでも知られる。長嶋茂雄の次女でスポーツキャスターの長島三奈、佐田啓二の長女で俳優の中井貴惠などだ。

 野田は帰国して上智大学外国語学部比較文化学科に入学する。現在の国際教養学部である。もともと上智大国際部と称していた。同学科は芸能人を多く送り出している。范文雀、ジュディ・オング、南沙織、アグネス・チャン、早見優、西田ひかる、リサ・ステッグマイヤー、クリスタル・ケイ、青山テルマ、はな、川平慈英、デーブ・スペクターなど。キャスターには安藤優子、山口美江、小牧ユカなどもいた。

 なお上智大出身の国会議員には平井卓也、西銘恒三郎、小林史明(以上、自民)、玄葉光一郎、山崎誠、松平浩一、今井雅人(以上、立憲民主)などがいる。同大学からは細川護熙元首相が輩出した。

 野田は1993年に初当選し、1998年には当時、戦後最年少の3710カ月で郵政大臣に就任する。このとき近い将来、初の女性首相誕生かと注目された。それから20年以上経ったが、今回も国のトップにはなれなかった。

■高市早苗氏

 高市早苗は1961年生まれ。野田と学年は一緒である。奈良県立畝傍高校の出身。うねびと読む。その由来について、学校史にこう記載されている。

「『畝傍』(うねび)という校名については、創立以来今日にまで続き、幾多の卒業生にとって無限の郷愁もたらす名称であるが、その由来を示す確かな記録は見当たらない」(畝高七十年史、1967年)

 そっけない。近くに畝傍山、畝傍御陵という古くからの地名があり、ここからとられたのではないかといわれている。

 同校卒業生はなかなかおもしろい。日本郵政初代社長で、三井住友フィナンシャルグループ社長をつとめた西川善文、舞踏家で大森南朋の父である麿赤兒、『試験にでる英単語』で受験界を一世風靡した元日比谷高校教諭の森一郎、中央公論社の社長だった嶋中雄作、元文部科学事務次官の前川喜平の祖父で和敬塾創始者の前川喜作など。多士済々だ。

 高市は大学入試で早稲田大、慶應義塾大に合格したが、親のすすめで神戸大経営学部に入学した。同大学出身の国会議員には山田賢司、繁本護(以上、自民)、吉川元(立憲民主)がいる。

 なお、神戸大経営学部の前身である神戸商業大出身には、宇野宗佑元首相がいた。

 198963日の宇野内閣発足後まもなく参議院選挙が行われるが、リクルート事件、消費税導入、宇野の女性問題報道で支持が得られず、自民党は大敗し、投票日翌日の724日に退陣を表明した。宇野の首相在任期間は69日、日本政治史上4番目の短さだった。

 このころ、高市は松下政経塾を卒塾したばかりで、国政選挙に出る準備をしていた1992年、参議院選挙で落選、1993年、衆議院選挙で初当選した。

 出身高校、大学のカラーと政治家は直接関係ない。だが、高校、大学をどのように過ごしたか、そこで、どのようなことを考え、何を目指したかは、その政治家の国家観を知るうえでヒントになる。そこで受けた教育、出会った恩師や先輩、築き上げた友人の力は大きいからだ。高校や大学で社会と向き合うようになったときのこと、やがて政治家になろうと思ったときのことなど、自身を振り返って語ってもらいたい。

<文中敬称略>(教育ジャーナリスト・小林哲夫)

(貼り付け終わり)

上記の記事にあるように、開成高校出身者たちで、政治家や官僚になっている人たちは、「永田町・霞が関開成会(永霞会)」を結成しているそうだ。岸田氏は東大出身でもなく、官僚出身でもないが、霞が関には強力な人脈を持っていると言えるだろうし、経歴は「党人派」であるが、「官僚派」に近い肌合いを持っているようだ。こうして見ると、今回、今井氏が指南役となって、岸田氏当選に尽力したということもうなずける。

 岸田氏の考えているであろう日本の姿とは、戦後高度経済成長期の「日本型」資本主義での成功例であろう。1960年代から70年代にかけて、日本は毎年10パーセント程度の経済成長率を維持した。このような経済成長が続くと、国内での経済格差が生じ、社会不安が起きるが、それを起こさず、「一億総中流社会」を実現した。英語では、「economic miracle without inequality」ということになる。以下の記事を読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

●「ポストコロナ政策で岸田氏が議連、安倍・麻生・甘利氏ら参加」

ワールド

2021611日 ロイター編集

https://jp.reuters.com/article/japan-kishida-idJPKCN2DN0GM

 6月11日、自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が、設立された。写真は東京都で2020年9月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato

[東京 11日 ロイター] - 自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が11日、設立された。安倍晋三前首相と麻生太郎財務相、甘利明党税調会長らも参加した。

安倍前政権発足時に政権の中枢を担った「3A」と称される安倍・麻生・甘利氏は、半導体議連など多数の議連を立ち上げている。

あいさつした麻生氏は、会場を見渡し、「政策を勉強している経済記者でなく、政局記者の顔が見える」と述べた上で、3Aによる議連設立が政局的に受け止められていることに触れ、「そういった話があるから人が集まるんだろうが、いま資本主義について議論するのは良いこと」と指摘した。

岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と強調した。安倍氏は「ウォール街の強欲な資本主義でない、資本主義を考えていきたい」と語った。

初回の今回は、渋沢栄一氏の玄孫にあたる渋沢健氏(コモンズ投信会長)が講演した。

(貼り付け終わり)

 安倍晋三や麻生太郎、甘利明の三悪人の「3A」が岸田氏の議連に参加したという内容だが、岸田氏は2021年6月に立ちあげたこの議連の名前は、「新たな資本主義を創る議員連盟」だ。そして、岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と発言している。しかし、分配するにも何をするにも必要なのはお金だ。その「お金の稼ぎ方」として、出てくるのが、「産業政策」だ。

 2021年6月4日、岸田氏が議連を立ち上げる1週間前、経産省は、「経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦~」という資料を発表した。資料の内容は、いかのPDFを参照していただきたい。新時代の産業政策を打ち上げたものだ。

※資料は以下のアドレスからどうぞ↓

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sokai/pdf/028_02_00.pdf

 

●「コロナ禍の今、経済産業省が「大きな政府」に大転換した“切実な理由”」

室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント

2021.6.19 4:05 ダイアモンド誌

https://diamond.jp/articles/-/274042

https://diamond.jp/articles/-/274042?page=2

https://diamond.jp/articles/-/274042?page=3

経済産業省の産業構造審議会が、「経済産業政策の新機軸」という画期的な方針を打ち出した。新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受け、日本が採用すべき「経済産業政策の新規軸」をまとめたものだ。主要国がすでに転換し始めたように、「小さな政府」から「大きな政府」に転換する必要性を訴えている。特に注目されるのが、産業政策における「大規模・長期・計画的」な財政出動を求めていることだ。この「新規軸」が実現しなければ、日本の貧国化は免れないだろう。(室伏政策研究室代表・政策コンサルタント 室伏謙一)

●ウィズコロナ時代において、「政府の役割」は根本的に変わった

 64日、第28回産業構造審議会総会が開催された。

 産業構造審議会は、経済産業省設置法第6条第1項に基づき設置され、第7条第1項各号に掲げる事務をつかさどり、とりわけ「経済産業大臣の諮問に応じて産業構造の改善に関する重要事項その他の民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展に関する重要事項」を調査審議する、経済産業省の重要な審議会の一つである。

 同審議会の総会は、これまでの実績ベースで、概ね年に12回開催され、各年度の経済産業政策の重点事項や今後の経済産業政策の新たな方向性について議論・検討が行われてきており、いわば我が国の経済産業政策の重要な方向性や方向転換がここで決まっていると言ってもいい。

 さて、その重要審議会で今回の議論の対象となったのは、新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受けた、今後の経済産業政策の在り方、「経済産業政策の新機軸」である。

 まず、基本的な問題意識として、新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大したこの1年間を「ウィズコロナ」と位置付け、ワクチンが行き渡り始めたが、変異株の発生などにより、ウィルスへの対応は継続中であること等から、その後の十数年間をその延長線上とし、昨年1年間の変化も踏まえた、いわゆる「アフターコロナ」ではない目指したい「日常」と、それに向けた経済産業政策の望ましい在り方について議論することとしている。

 同審議会提出資料においては、「ウィズコロナ」の1年の変化や、それ以前からの構造的変化についての多角的な視点からの分析が行われているが、とりわけ重要なのが、政府の役割の変化であろう。その役割とは、経済産業政策と財政政策という二つの点における役割である。

 新型コロナへの対応の中で、世界中で政府の役割が増大し、これまでで最大規模の財政支出をするにまで至っており、米国を筆頭に各国は大規模な財政支出を続けているし、EU諸国も債務残高の対GDPという財政規律を一時停止しているが、そもそもこの十数年における国家と企業の関係を見ていくと、補完関係が強まっているのではないかとしている。

「重要産業」や「戦略産業」を国が守り育てる時代へ

 しかも、持続可能な社会を志向し、安全保障、環境、健康、雇用、人権等の社会的課題の解決を重視した投資(財政支出)へ変化するとともに、重要産業や戦略産業を国が守り育てる方向にシフトしてきているとしている。

 具体的には、再エネや充電インフラ等のグリーンインフラや関連研究開発への大規模投資であるが、それのみならず、特に米中の技術覇権対立を背景として、半導体については国産化や輸出管理等の強化へとシフトしている。

また、そうした覇権対立と呼応するかのように、企業の事業活動に関し、人権・奴隷労働の有無、環境への影響等について明らかにすることを法的に義務付ける、人権デュー・デリジェンスの導入が進んできていることにも言及している。

 その趣旨は、一義的には人権侵害や奴隷労働等を行っている事業者と取引をしないようにし、そうしたものを根絶させることであるが、グローバル企業は人権侵害、奴隷同然の労働、環境破壊を公然と行う事業によってコストを大幅に圧縮して莫大な利益を上げているところ、そうしたビジネスモデルを改めさせよう、それによって社会的公正を取り戻し、格差問題の解決にも繋げていこうということであろう。

 つまり、規制の強化によって公正な社会を実現しようということであり、市場重視、民間の自由な経済活動尊重の政策的思考とは隔世の感がある。

 また、同趣旨の事項として、G7蔵相・中央銀行総裁会議の共同声明にも盛り込まれ、議長国のイギリスのスナク蔵相が誇らしげに語っていた、「グローバル企業に対する国際課税の公正性の確保」についても触れられている。

 加えて、「自由貿易のアップグレード」として、これまでのグローバル企業のための、放埒な自由貿易の是正により、公正性や持続可能性、格差是正の確保を目指すことについても言及されている。

●市場原理を克服する「政策の新規軸」が不可欠である

 そして、今後に向けて、政策は何がどう変わるべきかについて次のように提言している。

「既存の市場原理だけでは社会課題解決を実現する産業はなかなか成立しない中で、『価値』を巡る国家間の競争や正統性の再定義があることも鑑み、野心的で共感を呼ぶ『目標』を設定したうえで、緩和だけでなく強化も視野に入れた規制改革や、国内外の情勢変化を踏まえた、大規模・長期・計画的な財政政策を実行し、デジタルを前提に、全く新しい行政手法のあり方を模索しながら取り組み、有志国と連携しつつ、内外一体での産業政策の展開を図る」

 そのうえで、今後に向けた大きな方向性の三本柱として、

1)「経済」×「環境」の好循環~グリーン成長戦略~

2)「経済」×「安保」の同時実現~経済安全保障/レジリエンス~重要技術・産業・インフラを「知る」・「守る」・「育てる」政策

3)「経済」×「分配」=包摂的成長~「人」への投資・「地域」の持続発展~

を掲げている。

 少々総花的であり、大風呂敷を広げた感は否めないが、こうしたことを踏まえて、「『経済産業政策の新機軸』~新たな産業政策への挑戦」と題する資料が提示された。

 その中では、まず、中国や欧米において「大規模な財政支出を伴う強力な産業政策」が展開されていることや、かつては政府が主導的な役割を果たす産業政策が強く批判されていた米国においても、産業政策を支持する「産業政策論」が台頭してきていることを挙げている。

 そして、そうした産業政策を次のように総括した。

「伝統的な産業振興・保護とも、相対的に政府の関与を狭める構造改革アプローチとも異なり、気候変動対策、経済安保、格差是正など、将来の社会・経済課題解決に向けて鍵となる技術分野、戦略的な重要物資、規制・制度などに着目し(ミッション志向)、ガバメントリーチを拡張するというもの」

 そのうえで、日本においても、これまでの産業政策を検証したうえで、「産業政策の新機軸」を確立・実行していくことが求められているのではないか、経産省のみならず、政府全体として、政府の人的資源・政策資源を質と量の両面から精査した上で、速やかに実行に移していくべきなのではないか、としている。

●ようやく日の目を見たスティグリッツの提言

 こうした変化のあり方が、同資料に体系的に一覧表でまとめられている(図1参照)。

 ここで特に注目したいのは、「新機軸」における政策のフレームワークとして、「ミクロ経済政策とマクロ経済政策の一体化(需要と供給の両サイド)」が記載され、これまでの「構造改革アプローチ」においては、供給サイド、サプライサイド向けの政策が中心だったが、その転換を図るべしとしていることだ。

 実はこうした指摘は、平成28年に、伊勢サミットを前に官邸で開かれた国際金融経済分析会合において、経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏が具体的かつ簡潔に行っていた。

それは、およそ次のような内容だった。

「有効需要が欠如している状況でのサプライサイドの改革は失業を増大させる等、有害であるのみならず成長にはつながらないし、供給はそれ自身の需要を創出するわけではないのであるし、実際、需要を弱め、GDPを減らすことになる。サプララサイドの政策は需要と一体で機能するのであり、例えば、技術開発投資、人材育成投資、働きやすい環境の整備(公共交通の充実、育児休暇や傷病休暇等)」

 といった政策が有効といったものである。

 その際には、安倍官邸にはまともに受け入れられなかったようであるが(そもそも理解出来なかったのではないかとの疑いもあるが)、やっとそうした主張・考え方が日の目をみるようになったということであろう。

「大規模・長期・計画的」な財政出動が不可欠

 そして、ここが最も重要であるが、「新機軸」における財政出動を、「大規模・長期・計画的」としている。

 その背景・根拠として、同資料の「マクロ経済政策の新たな見方」において、次の3点を指摘している。

1)低インフレ、低金利においては、財政政策の役割も重要

2)コロナ禍による総需要の急減は、低成長を恒久化する恐れがある(履歴効果)。財政政策によって総需要不足を解消し、マイルドなインフレ(高圧経済)を実現することは、民間投資を促し、長期の成長を実現するためにも必要

3)コロナ対策やマイルドなインフレを実現するための財政支出の拡大は、財政収支を悪化させるが、超低金利下では、そのコストは小さい

 実際、10年ものの日本国債の利回りはずっと低下してきており、近年ではほぼ横ばい状態であり、緊縮財政派がさんざん脅かしてきた「金利の急騰」などは起きていないし、起こる兆しもない。

 つまり、「民間任せ」「市場任せ」ではなく、政府が主体的かつ大きな役割を果たすべく、長期的な視点に立って、大規模な財政支出によって経済産業政策を運営していくべきであるということであり、これまでの「小さな政府」的な発想に基づく政策の否定であり、そこからの大転換である。

 もちろん、この経産省の打ち出した「新規軸」には、強い抵抗も予想される。例えば、直近で閣議決定されることが予定されている「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」では、昨年は記載されなかったプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標が、年限は示されないものの、記載される方向であり、「経済産業政策の新機軸」において示された方向性とは相反することになりそうである。

●日本が「成長するか、貧国化するか」の瀬戸際

 しかし、世界的な潮流を見ても、また新型コロナショックという危機への対応という観点に立っても、大規模な財政出動と国の役割の増大・強化への転換は当然のことである。そもそもプライマリーバランスの黒字化などという財政規律や目標を掲げている主要国は日本だけである。

 主要各国が大規模な財政支出と、国が前面に出た経済産業政策を着々と進めていく中で、日本だけがそうしたものに背を向けていれば、日本は成長しないどころか、貧国化への道を着実に進むことになるだけである。

 先にも示したとおり、財政拡大を続けても我が国は何ら問題がないのであるから、日本が先進国だったという話が遠い昔の話として語られることがないよう、政治家を筆頭に、官僚、地方公務員、専門家、事業者、そして国民全体が、財政政策と経済産業政策の両面における国の役割の重要性と拡大について、それを是とし、それを当然とする方向へ早急に転換していくことが求められよう。

 今後の議論のさらなる進展に期待するとともに、「緊縮財政」や「小さな政府」といった、ある種時代遅れな考え方に囚われて、それを狂信的に固守する勢力に足を引っ張られたりすることがないよう、関係各位の尽力を強く希望したい。

(貼り付け終わり)

 日本は政治改革と経済改革で大きく傷ついた。日本国民は、市場原理主義を持ち込めばななんでも解決という単純な議論に熱狂させられ、馬鹿を見た。小泉・竹中路線は誤りだったということだ。「アメリカみたいな国になればよい」で実際になってみたが、悲惨な状況になっている。

 経産省の資料の中に、重要な名前が掲載されている。それは、アメリカのジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの名前だ。ジェイク・サリヴァンについては、拙著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で詳しく取り上げてきた。サリヴァンは補佐官就任前に、産業政策の重要性を主張する論文を書いている。アメリカにおいても、産業政策の重要性が増している。

 加えて、現在、世界で最も経済的に成功している中国が採用しているのが産業政策なのである。その源流をたどれば、日本に行きつく訳だが、世界で産業政策の重要性が増している。本家の日本でもそこに戻ろうという動きが出ている。1990年代には、産業政策なんて効果はない、そもそもなかったのだ、という議論があった。日本にそうしたことを紹介し、日本国内で主導したのは竹中平蔵だ。例えば、1993年に出版された、ローラ・タイソン著『誰が誰を叩いているのか―戦略的管理貿易は、アメリカの正しい選択?』の監訳者は竹中平蔵だ。

 「アメリカは中国を模倣して産業政策をやるべきだ」という主張もアメリカも区内で出ているような中で、「日本型」資本主義に戻ろうという岸田氏の当選はその流れに沿ったものであると言える。

 ここまで長々と書いてきたが、岸田氏当選のキーワードは「通産省」と「産業政策」であり、「日本型」資本主義へ返るという動きなのだろうということが私の結論だ。

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2021年5月29日に最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 先週のG7会合はイギリス南部のコーンウォール半島で開催された。対中政策、インド太平洋地域における中国の動きを以下にけん制するか、ということが話されたが、拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で書いている通り、中国は着々と準備を進めている。この対中強硬路線を推進しているのは、「バイデン政権のアジア政策のツァーリ(Asia Tsar)」と評されるカート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋調整官である。そして、バイデン政権の対中強硬姿勢の中心にいるのは、アントニー・ブリンケン国務長官である。

 しかしながら、バイデン政権は対中強硬一辺倒ではない、というのが私の見立てだ。それは、対中強硬ではない、ジェイク・サリヴァンが国家安全保障問題担当大統領補佐官として政権内に入っているからだ。サリヴァンは中国との競争は破滅に向かわない方向で行うべきという論文も書いている。

 そして、重要なのは、サリヴァンが「産業政策(industrial policy)」に注目している点だ。日本では経済産業省が2021年6月4日「経済産業政策の新機軸」という構想を発表したが、その中にサリヴァンの発言も引用されている。今回のG7会合で、「コーンウォール・コンセンサス」メモという文書が配布されたそうだが、この肝いりはサリヴァンであり、日本の経産省からの人員もメモ作成にかかわったと考えられる。国家とビジネスの関わるの部分はそのまま産業政策のことを示唆している。

 産業政策研究と言えば、古典的業績であるチャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson、1931-2010年、79歳で没)の『通産省と日本の奇跡-産業政策の発展 1925-1975(MITI And the Japanese Miracle: The Growth of Industrial Policy, 1925-1975)』(1982年)だ。新自由主義が隆盛となったここ30年ほど、産業政策について顧みられることはなかった。しかし、時代は産業政策の時代となりつつあるようだ。

 チャルマーズ・ジョンソンについては拙著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造 (四六判上製)』(2012年)で詳しく取り上げたが、チャルマーズ・ジョンソンに再びスポットライトが当たる日が来るのかもしれない。

(貼り付けはじめ)

「コーンウォール・コンセンサス」はこちらです(The ‘Cornwall consensus’ is here

G7で集まっている世界の首脳たちはグローバライゼーションが効率性と同時に脆弱性も生み出しているという主張を受け入れている。

ジリアン・テット筆

『フィナンシャル・タイムズ』紙

2021年6月11日

https://www.ft.com/content/aa45eccb-5e0e-477a-8278-db7df959e594

 

30年前、イギリス人の経済学者ジョン・ウィリアムソンは「ワシントン・コンセンサス(Washington consensus)」という言葉を作り出した。この言葉は、自由市場、グローバライゼーション推進に基づく様々な考えの集合体である。これらの考えをアメリカの指導者たちをはじめ世界各国の指導者たちは世界中で促進していた。

しかし、現在、新しい言葉が出てきている。それは「コーンウォール・コンセンサス(Cornwall consensus)」だ。

笑わないで聞いて欲しい。この言葉は、金曜日のコーンウォールでのG7各国の指導者たちによる会合に先立ち、アドヴァイザリーメモとして配布された文書のタイトルなのである。これは本当だ。7か国の学者と政策担当者たちが集まってつくられた委員会によって書かれた文書で、「新型コロナウイルス感染拡大からより良い未来を構築するための野心的な政策集」とされている。

このメモの内容はいささか曖昧で、大袈裟な考えを含んでいる。「世界規模の衛生上の問題についての対応におけるより広範な平等と団結」といった大仰な言葉が使われている。しかし、より詳細な提案も同時になされている。例えば、「金融安定理事会(Financial Stability Board)」と同様の「データとテクノロジー理事会(Data and Technology Board)」を創設し、世界規模でインターネットを監視すること、気候関連テクノロジーに関連する「ヨーロッパ原子力研究組織(CERNEuropean Organization for Nuclear Research)」の創設などが提案されている。

どちらにしても、このメモが示しているのは、「G7諸国は企業法人税を巡り一致協力して動く」という細心の動向が、新しいイデオロギーに沿って、西洋諸国が協力するという新しい段階に入ったということである。

投資家たちはどのように結論付けるだろうか?投資家の多くは冷ややかな笑いを送るだろう。結局のところ、G7での様々な会合は儀式の枠から出るものではなく、そこで出されるメモも儀式的な省庁の意味しか持たない。そして、「コーンウォール・コンセンサス」提案は、何かしら意味があるように思われるが、これからすぐに採用されるということもない。

しかし、この儀式的な表現を無視するのは、いかなるビジネスや投資家にとっても馬鹿げたこととなるだろう。多くの人類学者が指摘しているように、象徴は重要なのだ。それが「空っぽ(empty)」であったり、現実離れしたりしていても、象徴は、あるグループがどのように機能するかについての前提を反映し、補強しているものなのだ。そのため、今回の「コーンウォール・コンセンサス」メモは、前提がどのように変化しつつあるかを示す、示唆に富むスナップ写真ということになる。

このメモは極めて重要だ。投資家や企業の経営陣の多くが時代精神の絶え間ない大きな変化への対応に苦闘している。こうした人々はワシントン・コンセンサスが隆盛を極めた時代にキャリアをスタートさせた。私たち人類は、常に自分たちを取り巻く文化的環境に影響される生物であり、自分たちの信条を、思考のための「自然な」方法だとして取り扱っている。

ここに5つの取り上げるべき重要な点がある。第一に、今日の指導者たちは、政治上の、予想外の出来事の発生を恐れている。30年前、マーガレット・サッチャーやロナルド・レーガンといった政治上の最重要人物たちは、自由市場に基づいたグローバライゼーションは全ての人間に利益をもたらすと当たり前のように考えていた。今日の指導者たちは、自由市場の果実は人々の間に均等に行きわたらず、そのために人々からの反撃を誘発している(これがポピュリズムだ)。「包摂(Inclusion)」は新しく人々の間で頻繁に使われる言葉になっている。

第二に、G7各国の指導者たちは、グローバライゼーションと自由市場に基づいた競争は公立を生み出すと同時に脆弱性を生み出すということに気付いている。以前であれば、個別の各企業のインセンティヴによって、最適化された国境を越えた供給チェインを作ることができるだろうと指導者たちも考えた。現在では、世界規模のサプライ・チェインは、集合行為問題によって脅威に晒されているということを指導者たちは認識している。ビジネスにおいては、各企業が個別で利益が最大になるようにするため、ある中心点に集中する行動を取る傾向がある。しかし、そうした中心点とシステムが壊れると、大混乱に陥ってしまう。結果として、「回復力(Resilience)」という言葉もまたよく聞かれるようになっている。

第三に、G7での議論は中国の脅威によって活発化させられている。「コーンウォール・コンセンサス」メモの中に中国の名前は直接出ていない。しかし、先進的なテクノロジーのためだけではなく、医療資源と天然資源のためでもある世界規模でのサプライ・チェインの多角化を求める内容がメモには書かれている。遅ればせながら、西洋諸国の各政府は、世界規模でのチップの生産を台湾を中心としたハブに集中させたことが深刻な間違いであったことを認めるようになっている。西洋諸国の各政府はこの間違いを繰り返したくないと考えている。

第四に、微妙だが、根深いものとして、ビジネスと政府との相互関係がリセットされている真っ最中ということがある。ワシントン・コンセンサス隆盛時代、各企業はお互いに競争し合う独立したアクターと見られていた。そこに政府の関与はないとされた。現在は、政府とビジネスの間の「パートナーシップ」について語られている。

政府からの鑑賞が最小限の自由企業体制(Free enterprise)は現在でも重要視されている。しかし、「パートナーシップ」は、現在の社会的に重大な諸問題に対応するための枠組みとなっている。ワクチンの獲得、気候変動対応、中国とのテクノロジー上の競争といったものが現在の重大な問題となっている。

最後に、経済学は、バイデンのホワイトハウスやその他あらゆる場所で、現在再定義の中にある。経済学は狭い範囲の数理モデルに集中してきたが、現在は、「外部性(externalities)」として片づけられてきた諸問題に関心が集まっている。環境、医療衛生、社会的な諸要素がそれらにあたる。

皮肉屋たち(もしくは熱心な自由市場信奉者たち)は、これら全てはアメリカ政治における一時的な左傾化、もしくは新型コロナウイルス感染拡大に対する短期的な反応を反映しているに過ぎないと述べるだろう。

その可能性は否定しない。しかし、私はそうではないと考えている。結局のところ、このイデオロギー上の移行を引き起こしているのは、新型コロナウイルスだけではなく、中国の台頭、気候変動の脅威、そして、ソヴィエト連邦崩壊以降に西洋で蔓延した自由市場に関連する思い上がりの消滅、といった要因である。そして、この新しいシステム構築を目指す人々は政治上のあらゆる立場の人々の中で見ることができる。「コーンウォール・コンセンサス」メモを生み出した諮問グループを組織したのは、保守党が率いるイギリス政府だったのだ。

新しい時代精神(zeitgeist)を好ましいと思うか、よくないと思うか、それはどちらも起きるだろうが、これを無視することは誰にもできない。歴史が示しているのは、知的な前提が変化する場合、それは緩慢に進む。楕円型の振り子は長期間にわたって揺れ続ける。儀式的な人工産物は時に重要性を持つ。「コーンウォール・コンセンサス」メモはそうしたものの一つとなるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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