古村治彦です。

 本日、安倍晋三総理大臣が総理就任一周年ということで靖国神社に参拝しました。これに対してのアジア地域に通じたアメリカ知識人の見解をご紹介します。

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自分のソフトパワーに自ら損失を与えるという分野に出現した新しいチャンピン:日本(Our New Champion in Self-Defeating Soft Power: Japan)


「日本、中国、韓国との関係を悪化させ、その影響をアメリカにまで及ぼすたった一歩の行動。今日、日本の総理大臣がその一歩を刻んだ」


ジェームズ・ファローズ(James Fallows)筆
2013年12月25日 アトランティック・マンスリー誌
http://www.theatlantic.com/international/archive/2013/12/our-new-champion-in-self-defeating-soft-power-japan/282654/


 今夜、私は飛び込んできたニュースが本当とは思えなかった。日本の安倍晋三総理大臣が東京にある靖国神社を公式参拝したのだ。私はこのニュースが信じられなかった。それは、そのような行動を取れば現在の東アジアの微妙な状況をもっと悪化させることは分かり切ったことであったからだ。だから安倍首相はそのようなことはしないだろうと私は考えていた。               


 しかし、私の予想に反して安倍首相は靖国神社に参拝した。中国のとの緊張が続く中で、日本の指導者が靖国神社に参拝することは、ドイツの首相がイスラエルとの間で懸案や意見の相違がある時期にアウシュビッツやブーヘンヴァルトを訪問するのとは全く違うものだ。また、NAACPが見ている中で、アメリカの白人の政治家が黒人がリンチを受けた場所を訪問するのとも違う。しかし、そこまでかけ離れたものでもない。


 靖国神社はその構造はシンプルで、大変に美しい場所である。そして厳かな気持ちを起こさせる場所である。靖国神社は多くの戦死者たちの安息の場所だ。不幸なことに、戦死者たちに第二次世界大戦後に戦争犯罪人と公式に認定された人々が含まれている。中国の政府指導者と世論形成に影響力を持つ人々、そして韓国のそういった人々は靖国神社を帝国主義時代の日本の残酷さの象徴として見ている。加えて、靖国神社にある「歴史」博物館を訪れたアメリカ人(私も訪問したことがある)は、そこで、日本がアメリカの経済制裁と軍事圧力によって第二次世界大戦に「嫌々ながら強制的に」参加することになったという説明を目にすることになる。


 簡潔に述べるならば、日本の総理大臣による靖国神社訪問は、日本・中国・韓国・アメリカの関係に緊張をもたらすのにこれ以上の行動はないというものなのである。しかし、安倍首相は靖国神社に参拝した。先月、私は、中国が全く必要がないのに「防空識別圏」を設定し、近隣諸国に脅威を与えた行動に対して、「自分のソフトパワーに自ら損失を与えた」賞を与えると述べた。しかし、私は間違っていたようだ。この賞は日本にお返しすることにする。


(終わり)

※ご指摘がありました(2013年12月30日)。筆者のファローズは上記論文の中で、「ドイツの首相がイスラエルとの間で懸案や意見の相違がある時期にアウシュビッツやブーヘンヴァルトを訪問するのとは全く違うものだ。また、NAACPが見ている中で、アメリカの白人の政治家が黒人がリンチを受けた場所を訪問するのとも違う。しかし、そこまでかけ離れたものでもない」と書いた部分を、次の論文(2013年12月26日付「靖国神社はアウシュビッツとはどう違うのか」)の中で「誤っていた」として訂正し撤回し、誤りを指摘するコメントをいくつも紹介してします。(2013年12月31日)
http://www.theatlantic.com/international/archive/2013/12/why-yasukuni-is-different-from-auschwitz/282667/