古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ジブチ

 古村治彦です。

 11月下旬、クリストファー・ミラー国防長官代理はジブチ、バーレーン、カタール、ソマリアを訪問し、駐屯する米軍将官たちと会談を行った。ソマリア訪問については事前発表がなされず、突然の訪問となった。米国防長官のソマリア訪問は初めてのことだった。

 ドナルド・トランプ大統領はイラクとアフガニスタンに駐留する米軍将兵の削減を命令し、更にソマリアに派遣されている約700名の米軍将兵の再配置も命令した。ソマリアではアルカイーダやISISの関連組織が活動を行っており、米軍はソマリアの軍隊ウや警察の支援を10年以上行っている。その中には空爆も含まれている。

 トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」と「アイソレーショニズム(Isolationism)」は、海外に展開する米軍の削減も含まれていた。これらのことを簡単に言うと、「海外の問題に構っている場合か、自分たちの国の中が大変なのに」ということだ。トランプや実はバーニー・サンダースを若い人たちが応援するのは、「自分たちには職がない、良い仕事に就ける学歴もない、結局軍隊に入って使い捨ての兵士をやるしかない」という中で、無駄に死にたくないという気持ちがあるからだ。

 死の危険が少ない、前線に出ることが少ない将官たちは出世のことしか考えないから、何か大規模作戦があったり、海外駐在が長かったりすれば、昇進スピードも上がるということで、兵士たちとは異なった考えをするだろう。もちろん、将官たちも下級将校で自分たちが兵士を率いて前線に出ている時は、兵士たちと同じ境遇であっただろうが、偉くなって、勲章の数が増えていくと官僚的になっていくものだ。

 ミラー国防長官代理は米軍の東アフリカからの撤退ということを進めようとしている。これは、以前に紹介した、中国の「真珠の首飾り計画」にも関連することだ。簡単に言えば、「もうアメリカは東アフリカになんて関与したくない、中国はやりたいらしいね、それならあんたたちが代わりにやんなさいよ」ということだ。衰退するアメリカ帝国の縮小と新興の(以前のことを考えると復活の)中華帝国の拡大が交差している。

 しかし、バイデンが大統領になって政権を掌握すれば、このような米軍撤退計画はご破算になるだろう。そして、何の成果も出ない米軍の駐留がずっと続き、金が垂れ流され続けるだろう。衰退のアメリカ帝国がいつまで耐えられるか、見ものだ。

(貼り付けはじめ)

トランプはソマリアから将兵のほぼ全員を撤退させるように国防総省に命令を出した(Trump orders Pentagon to pull nearly all troops from Somalia

エレン・ミッチェル筆

2020年12月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/528842-trump-orders-pentagon-to-pull-nearly-all-troops-from-somalia

トランプ大統領は国防総省に対して、来年早々までにソマリア駐留の米軍将兵700名のほぼ全員を撤退させるよう命令を出した、と国防総省は金曜日発表した。

トランプ大統領は「国防総省と米アフリカ中央軍司令部に対して、2021年初旬までに米軍将兵の大多数と物資のほとんどを再配置し直し、ソマリア国外に出す」ことを命じたと、国防総省は声明の中で述べている。

現在、約700名の米軍将兵がソマリアに派遣されている。ソマリアでは10年以上にわたり、アメリカ軍が、ソマリア国内のアルカイーダ関連組織アル・シャバブと、そして最近ではISISの地方組織との戦いを支援している。アメリカ軍はソマリアの安全保障部隊が武装組織と闘うために訓練を行い、支援を行っている。また、空爆も実施している。

今回の国防総省の発表は、クリストファー・ミラー国防長官代理の突然のソマリア訪問の後になされた。ミラーのソマリア訪問は感謝祭の後に実施された。米軍の撤退が実施されるのではないかという噂が持ちきりの中で、ミラーはソマリアを訪問し、その中で、アメリカ軍のパートナーはテロリスト組織との戦いに貢献していると述べた。

国防総省は金曜日、アメリカは「アフリカらから撤退もせず、関与を止めることもしない」と強調した。また、「幹部職員はアフリカのパートナー諸国との関係を維持し、政府のあらゆるレヴェルでの支援を継続する」とも述べた。

国防総省はソマリアから撤退する将兵の数やどこに駐屯している将兵が撤退するのかについて発表してはいない。しかし、「将兵の一部は東部アフリカ外に派遣し直されるだろう」と発表している。「残りの将兵はソマリアから出て、ソマリアの近隣諸国に配置し直される。これは、アメリカとパートナー諸国がソマリアの国境を越えて作戦を実行するためだ。その目的はソマリア国内で活動している暴力的過激主義集団に圧力をかけるためだ」としている。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、ソマリア国内の米軍はケニアとジブチの基地に移動させられ、ソマリア国内の対テロリズムの目的が達成されないことになるだろうと報じた。

今回の発表は、トランプ大統領が来年1月に大統領の座から退く前に海外の戦闘から米軍の将兵を撤退させようという動きを反映している。

2020年11月、トランプ大統領は来年1月中旬までにアフガニスタンから2000名、イラクから500名の米軍将兵を撤退させるように命じた。彼の命令は米軍と安全保障関係の指導者たちからの助言に反するものである。

ソマリアからの米軍の撤退は、最近解任されたマーク・エスパー国防長官の計画に反するものである。エスパーはサヘル地域のアフリカ北部の国々からの将兵を撤退させつつ、アフリカにおいてより少ない将兵を駐屯させるべきだと主張していた。

国防総省監察官総監室、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁は、ソマリアからの米軍の撤退という決断に反対する助言を行ってきた。先月、これらの省庁は、ソマリアの軍隊と警察は、アメリカ軍の支援なしに、ソマリア国内でテロリストの脅威に抵抗することはできないと発表している。

国防総省、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁は共同報告書の中で、「ソマリア軍と警察には大規模な国際的支援なしに、アル・シャバブとISISソマリアからの脅威を封じ込めることは不可能だ。ISISソマリアはアル・シャバブに比べて規模は小さいが脅威となる可能性を秘めている」と書いている。

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国防長官代理がソマリアへ驚きの訪問(Acting Defense secretary makes surprise trip to Somalia

セリーヌ・カストロヌヴォオ筆

2020年11月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/527741-acting-defense-secretary-makes-unannounced-trip-to-somalia

クリストファー・ミラー国防長官代理は金曜日、ソマリアを突然訪問した。米国防長官として初の東部アフリカにある国ソマリアへの訪問となった。

金曜日に国防総省によって記者発表がなされた。今回のソマリアはミラー国防著感代理による4カ国訪問の最後の訪問地となった。ソマリアの前に、ミラー国防長官代理は事前に発表を行わずに、ソマリアの近隣諸国であるジブチ、バーレーン、カタールにある米軍基地を訪問した。

CNNの報道によると、ミラーはソマリアの首都モガディシュに数時間滞在した。ジブチにあるアメリカ軍のレモニエール基地を訪問後に、ミラーはモガディシュに到着し、アメリカ軍関係者と会談を行った。

ミラー国防長官代理の外国訪問中の記者発表で、国防総省は、「ミラー国防長官代理が、アメリカの国益、アフリカにおけるパートナー諸国と同盟諸国、国際社会の対テロ活動の継続的な活動の重要性に脅威を与えている各暴力的過激主義組織の縮小に向かうアメリカの努力を再確認した」と述べている。

今回のミラーのソマリア訪問は、トランプ大統領がソマリアに派遣されている米軍将兵から約700名を撤退させる命令を出す計画を持っているという報道が出ている中で、実行された。現在、米軍は、アルカイーダの関連団体で最大のアル・シャバブとISIS組織と対抗するための対テロリズム活動のために将兵を派遣している。

国防総省は現在までソマリアからの米軍撤退を正式に発表していないが、国防総省の幹部職員がCNNの取材に応じ、ソマリアからの撤退は数日中に実行される見込みだと述べた、と報じられている。

ミラーは国防長官代理に就任して初めての海外訪問を行った。今月、トランプ大統領は今月初めにマーク・エスパー国防長官を解任し、ミラーは国防長官代理に就任した。

ミラーが国防長官代理となって以降、国防総省は、トランプ大統領からの命令により、2021年1月15日までに、アフガニスタンの駐留米軍将兵の数を4500名から2500名に、イラク駐留の米軍将兵の数を3000名から2500名にそれぞれ削減すると発表している。1月15日はトランプが大統領の座から退く直前の日時である。

アフガニスタンからの米軍の撤退に対しては、専門家、連邦議員、米政府の幹部職員だった人々から反対の声が挙がっている。アフガニスタンでは、アメリカが駐留米軍の規模を縮小することで、タリバンとの和平交渉におけるアメリカ側の立場羽弱くなると指摘する人々が多く出ている。

連邦上院多数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は今月、アフガニスタン駐留の米軍の急激な削減を支持するのは連邦議会内でも「ごく少数」になるだろうと発言した。マコーネルは「米軍の削減は私たちの同盟諸国に損害を与え、私たちが損害を被ることを願っている人々を大変に喜ばせることになるだろう」と述べた。

国防総省監察官総監室、国務省、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)が水曜日に発表した共同報告書は、ソマリア軍と警察はアメリカ軍の支援なしにはソマリア国内におけるテロリストの脅威に抵抗することは不可能だとしている。

報告書には次のように書かれている。「長年にわたり、ソマリア政府、アメリカ政府、そして国際社会からの反テロリズムの圧力を受けながらも、東部アフリカにおけるテロリストの脅威は減少していない。アル・シャバブは南部ソマリアの多くの地域で行動の自由を保持している。そして、アメリカの国益を含むソマリア国外での攻撃の能力と意図を示している」。

「ソマリア軍と警察には大規模な国際的支援なしに、アル・シャバブとISISソマリアからの脅威を封じ込めることは不可能だ。ISISソマリアはアル・シャバブに比べて規模は小さいが脅威となる可能性を秘めている」。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 中国が発表した「一帯一路」計画については、日本ではあまり報道がなされないようです。話が大きすぎて日本人には理解しづらい面があると思われます。私が子供の頃にNHKで放送された「シルクロード」という番組がありましたが、現代のシルクロードを作るということかな、だけどそれは時代遅れなんじゃないのかという考えもあると思います。


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 一帯一路計画は中国の東岸からヨーロッパ西岸をつなぐ、ユーラシア大陸を横断するためのインフラ建設や整備の一大プロジェクトです。そして、中国はこれを海上輸送、海運、シーレーンにまで拡大しようとしています。具体的には、海上輸送ルートでヨーロッパと中国をつなぐということになります。

 

 中国政府はそのために海運企業コスコとチャイナ・マーチャンツ・ポーツに多額の融資を行い、シーレーンの整備と世界各地の港湾施設の管理運営権を積極的に取得(買収)させています。ヨーロッパの港湾施設の10%は中国の管理下にあるという数字が出ています。

 

 一帯一路計画が進められる中で、日本はどのような立ち位置を取るか、で将来の展望も変わってくるでしょう。太平洋でアメリカとつながり、中国とは至近距離にある日本ですが、アメリカ偏重ばかりでは、世界の半分での活躍の機会を失いかねません。「中国を敵とする」という単純極まりない思考では日本はますます縮小の道を進むことになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

なぜ中国はヨーロッパ各地の港湾施設を買い続けているのか?(Why Is China Buying Up Europe’s Ports?

-中国国有の港湾管理大企業が中国政府の推進する「一帯一路」プロジェクトの最前線で激しく活動している

 

キース・ジョンソン筆

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『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/02/why-is-china-buying-up-europes-ports/?utm_content=buffer5fefe&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

「一帯一路」計画は中国が何兆ドルもの資金を投入する外交政策の目玉プロジェクトだ。しかし、この計画は実際には何も進んでいない、目に見えない曖昧なものだと揶揄されることが多い。

 

シンガポールから北海までの各港湾は活発に活動している。これらの港で、中国の国有企業が一帯一路計画を現実のものにしている。これらの企業は積極的にこれらの港湾施設を買収している。中国企業による買収によって、世界貿易と政治的な影響力の姿が現実的に書き換えられようとしている。

 

「コスコ・シッピング・ポーツ(中国遠洋運輸集団)」と「チャイナ・マーチャンツ・ポート・ホールディングス(招商局港口控股有限公司)」は資金豊富な中国の巨大企業だ。両社は先を争うようにして、インド洋、地中海、大西洋沿岸の各港湾施設を購入している。先月もコスコはベルギー第二の規模を誇るゼーブルージュの港湾施設の買収の最終合意にこぎつけた。ゼ―ブルージュは北東ヨーロッパにおける中国の最初の橋頭堡となった。

 

これまでも数年間にわたり、スペイン、イタリア、ギリシアといった国々の港湾施設の買収が進んでいた。中国の国有企業は国内市場に縛り付けられていたが、今やヨーロッパの全港湾の10%をコントロールするまでになっている。

 

港湾施設の買収契約は、中国政府の野心的な計画を明確に表すものだ。中国政府は、中国とヨーロッパを海路、道路、鉄道、パイプラインで物理的につなげる計画を持っている。港湾は一帯一路計画における海の半分の基礎をなすものだ。中国がコントロールする港湾は南シナ海からインド洋、スエズ運河を通ってヨーロッパの南半分にまで達している。

 

海事コンサルタント会社ドロウリー社で港湾施設担当上級アナリストを務めるニール・デイヴィッドソンは次のように語っている。「コスコのような企業にとって、港湾施設購入契約は財政的に無理のないものである。そして、中国政府の幹部たちを喜ばせるものだ。それは、中国政府の掲げる一帯一路計画に沿ったものであるからだ。こうした動きの下にあるのは地政学的な思惑だ」。

 

現代の商業の力を手に入れることは、中国が通常の状態だと考える状態に戻るための方法なのだ。西洋諸国によって与えられた中国の屈辱の世紀、それは中国の各港をヨーロッパ諸国の戦艦によって強引に開港させられたことで始まった。この状態から脱却するためには商業的な力を手に入れることが必要だと中国は考えている。

 

オランダ国際関係研究所の中国専門家フランス=ポール・ヴァンダー・パッテンは「究極的な目的は中国の外国依存を低下させ、世界に対する中国の影響力を強めることだ」と述べている。

 

中国の影響力が増していることはヨーロッパでは驚きをもって迎えられている。中国からの投資は天井知らずの状態になっている。ヨーロッパ各国の指導者たちは、中国の習近平国家主席が中国の経済力を政治的な影響力に転換するのではないかという不安を募らせている。コスコは10億ドルを投じて、ギリシアのさびれた港ピレウスの港湾施設を買収した。これについて、中国政府はギリシアを利用して、ヨーロッパ連合による中国の人権状況と南シナ海の行動への非難を弱めさせようとするのではないかという懸念が出ている。

 

現在、中国の国有企業は地中海を進撃している。そして、同時に中央ヨーロッパと東ヨーロッパへの投資も加速させている。こうした動きに対して、懸念が募っている。

 

HISマークイットで酒井各国の港湾を担当しているターロック・ムーニーは次のように語っている。「一帯一路計画に沿った主要な社会インフラへの投資の規模は、ヨーロッパ諸国における中国の政治的な影響が増大している。これは確かなことだ」。

 

中国の海運と港湾企業は海運分野では小規模であった。海運事業分野はAP・モーラー・マースクやハチソン・ポーツのような大企業によって支配されていた。しかし、2016年、中国政府はチャイナ・オーシャン・シッピング(中国遠洋運輸集団総公司)とチャイナ・シッピング・カンパニー(中国海運集団総公司)を合併させ、コスコを発足させた。コスコは海運、港湾管理、その他の輸送事業を手広く行う巨大企業となった。

 

コスコの進撃は止まらなかった。昨年、コスコは昨年60億ドル以上を投じてライヴァル企業であるオリエント・オーヴァーシーズ・インターナショナルを買収した。これによって海運ビジネスにおける地位を固めることに成功した。現在、コスコは、世界最大級の海運企業(ヨーロッパ以外では最大)と世界で最も忙しい港湾管理企業をコントロールしている。

 

港湾に関して言うと、コスコは最大の中国国営企業という訳ではない。チャイナ・マーチャンツ・ポート・ホールディングスの方がより多くの貨物を取り扱い、海外で活発な動きを見せている。ヨーロッパでの港湾施設の買収に加えて、スリランカ、ジブチ、ブラジルでの拠点づくりを進めている。

コスコとチャイナ・マーチャンツはヨーロッパの競合企業に対して有利な点を持っている。中国企業は低利の資金をふんだんに利用して世界中の魅力的な資産を積極的に買収することができる。コスコとチャイナ・マーチャンツは、中国国有銀行から低利の融資を受けることができる。コスコは、中国開発銀行が提供する一帯一路関連融資で数十億ドル規模の融資を受けることが出来る。

 

「貿易と商業の観点からすると、安い金利の貸付金が利用できることと外交上の支援を受けられることで、中国の港湾管理企業はライヴァルとなる投資家たちに競り勝ち、自分たちが選んだ港湾施設を手に入れることが出来るようになるということを意味する」とムーニーは語った。

 

ある港湾が商業的な価値よりも中国政府にとって戦略的な価値がある場合には、財政的な自由度が増す。中国政府が資金を積極的に融資するようになるのだ。ジブチにおけるチャイナ・マーチャンツ担当部分のカーゴ取り扱い量は、昨年前半、世界的な好景気にもかかわらず、減少した。しかし、ジブチは中国政府にとって死命を決するほどに重要な港である。それは、中国国外唯一の中国人民解放軍の基地が置かれ、中国にとって重要なインド洋のシーレーンにとっての拠点となるからだ。


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ジブチの中国人民解放軍基地
 

ムーニーは次のように語っている。「中国政府にとって戦略的な価値がある場合には、中国の企業は商業的な価値がほとんどない、もしくは全くない資産も買収し、投資し続けることが可能だ」。

 

中国の企業による積極的な買収は地政学的な熱狂だけが理由ではない。

 

2016年に世界の貿易取引量が減少し、海運企業も打撃を受けた。コスコは2016年に売り上げを14億ドルも減少させた。しかし、港湾は利益を出している。ドリューイー・デイヴィッドソンは「港湾と流通基地は利益が出る。しかし、海運ビジネスは飛行機会社のようなもので、利幅が薄いのである」と語った。

 

コスコのような企業は投資を行って、さびれていた港湾を巨大な流通基地に変貌させ、利益が出るようにしたいと考えている。コスコはギリシアのピレウスをさびれた港から、ヨーロッパ、中東、アジアをつなぐ流通基地に変貌させた。コスコは、スペインの港湾ヴァレンシアを西地中海、ゼ―ブルージュを北東ヨーロッパの流通基地に変貌させようとしている。

 

中国の拡大のペースはヨーロッパ経済にとって重要な要素となっている。港湾だけではなく、エネルギー産業とハイテク産業の分野でも重要になっている。ヨーロッパ各国の指導者たちはイライラを隠せないでいる。

 

欧州委員会委員長ジャン=クロード・ユンケルは、中国という名前は出していないが、港湾のような資産の外国による買収について懸念を表明している。欧州委員会は、国家の安全にかかわるような微妙な分野における外国からの投資を精査するための新しい方策の導入を検討中である。

 

フランス大統領エマニュエル・マクロンは、先月の中国の公式訪問の中で更なる表現を使った。マクロンは中国政府によるヨーロッパ各国の重要なインフラの買収について特に言及し、ヨーロッパ各国の団結によって対処することを呼びかけた。ロイター通信は、マクロンが「中国は、ヨーロッパ諸国の中で中国に門戸を開いている国がある場合に、ヨーロッパ大陸と力に敬意を払うつもりはないだろう。」と発言したと報じている。

 

中国はヨーロッパ各国の成長が期待できる各企業を買収しているが、これには反発もある。2016年に中国はドイツのロボットメイカー・クカを買収した。これは、ヨーロッパ経済が成長するために必要な最新技術を中国が横取りするのではないかという懸念を引き起こした。

 

オランダ国際関係研究所のヴァンダー・パッテンは、中央ヨーロッパと東ヨーロッパにおける一帯一路計画に沿った港湾契約やその他のインフラ計画は、既にガタガタになっているヨーロッパ連合から政治的に弱い加盟諸国が離脱する危険を伴うものだ、と述べている。

 

ヴァンダー・パッテンは次のように語る。「現在、中国からの投資によって政治的な影響を受けるのかどうかということがより議論されるようになっている。大きな違いは、地中海沿岸諸国は中央ヨーロッパ諸国に対する中国の投資が、これらの国々の中国に対する姿勢に影響を与えるであろうということがすでに議論の前提になっているということだ」。

 

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