古村治彦です。
ジミー・カーターと妻ロザリン
2021年1月6日の群衆によるアメリカ連邦議会議事堂への進入事件から1年が過ぎた。この事件に関連して、「史上最も偉大な“元”大統領」と呼ばれるジミー・カーター(Jimmy Carter、1924年―、97歳)が『ニューヨーク・タイムズ』紙に論考を寄せた。その中で、「アメリカ国内の分裂、アメリカ国民間の分裂は深刻さの度合いを増している」と述べている。
拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で私が詳しく紹介しているように、アメリカ国内の分裂はドナルド・トランプ前大統領が進めたということではなく、20世紀末から進んできた国内の分裂がトランプ大統領を誕生させたのである。
ジョー・バイデン大統領が誕生したからと言って、アメリカ国内の分裂がすぐに解消できるようなことはない。バイデン大統領の支持率が低迷しているのはその証拠だ。民主党内部には激しい分裂が起きている。このこともこのブログで何度もご紹介している通りだ。
口でいくら「分裂を解消しよう」と述べても意味はない。アメリカ国民は自身の生活、経済状態に大きな不安と不満を持っている。また、共同体のつながりも希薄となる中で、一人では抱えきれない問題に直面しているが、助けを求めることができない。そのために攻撃的になっている。これは日本でも同じような状況だ。東京の公共交通機関での殺伐とした雰囲気がそれを物語っている。アメリカも日本も衰退が進んでいる。残念なことだが、日本は既に先進国の立場から滑り落ちつつある。
社会不安を取り除くためには、格差は仕方がないにしても、過度な格差や生活不安は解消していかねばならない。アメリカでも日本でもその処方箋は同じで、所得の上昇と再分配の強化が必要ということになる。しかし、そのための具体的な特効薬は見つかっていない。
(貼り付けはじめ)
ジミー・カーターが政治的な分裂について発言:アメリカは「拡大し続けている奈落の淵に立っている」(Jimmy Carter on political division: US 'teeters on the brink of a
widening abyss')
モニク・ビールズ筆
2022年1月5日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/national-security/588451-jimmy-carter-says-he-fears-for-democracy-our-great-nation-now?rl=1
2021年1月6日に起きたアメリカ連邦議会議事堂襲撃事件から1周年を前にして、ジミー・カーター元大統領は、国内の政治的分裂が深まる中、「手遅れになる前に(before it is too late)」アメリカ国民が団結するよう促した。
カーター元大統領は、ニューヨーク・タイムズ紙に論稿を寄稿し、「私たちの偉大なる国は今、拡大し続ける奈落の淵に立っている」と述べた。加えて、「早急に行動を起こさなければ、国民の間で争いが起こり、貴重な民主政治体制が失われる危険性がある。手遅れになる前に、アメリカ人はお互いの違いを捨て、協力し合わなければならない」とも述べた。
カーター元大統領は1月6日の事件についての論説の中で、「我々4名のアメリカ大統領経験者は、暴動参加者たちの行動を非難し、2020年の選挙の正当性を肯定する」と述べた。
カーター元大統領は次のように語った。「2021年1月6日の暴動は、民主政治体制を脅かす有害な二極化に対処するために、国家に衝撃を与え、アメリカが正気に戻るだろうという希望が出てきたが、それも長くは続かなかった。1年経った今、選挙が盗まれたという嘘をつく人たちが一つの政党を支配し、選挙制度への不信を煽っている」。
暴動発生当時、トランプ前大統領は、2020年の大統領選挙が大規模な有権者による選挙不正によって損なわれたと、根拠もなく繰り返し主張していた。また、選挙は「盗まれた(stolen)」ものだと主張し、彼と彼の弁護団は、いくつかの接戦州で何十もの法的挑戦を行ったが、そのほとんど全ては失敗に終わった。
しかし、2020年11月の大統領選挙後、連邦政府と各州の選挙管理者(トランプ大統領のウィリアム・バー前司法長官を含む)は、大規模な有権者が行った選挙不正を示す実質的な証拠はないと断言した。
水曜日に発表した論稿の中で、カーター元大統領は更に、アメリカの民主主義の命は、「我々の指導者や候補者に対して、自由の理想を守り、高い行動基準を守ること」を要求することにかかっていると述べた。
カーター前大統領は、合衆国憲法の原則や公平性、法の尊重といった規範に合意し、正確で全有権者が参加できる選挙を実現するための改革を推進するよう、アメリカ国民に呼びけた。カーター元大統領はまた人々に対して、暴力や分極化を非難し、偽情報の拡散に対抗することなども呼びかけた。
2022年1月6日の木曜日は、2020年の選挙結果の認定を阻止しようと、親トランプ派の暴徒たちが連邦議事堂を襲撃し、連邦議事堂のセキュリティを破り、議員たちの事務所を物色した事件から1周年となる。
暴動参加者たちは最終的に連邦上下両院に侵入し、議員たちは非公開の場所に身を隠すことを余儀なくされた。この襲撃で数人が死亡した。
司法省は、暴動に関連して700人以上を起訴し、メリック・ガーランド司法長官は水曜日、「1月6日の全ての加害者を、いかなるレベルにおいても、法の下に責任を負わせることに引き続き尽力する」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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