古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ジョン・ボルトン

 古村治彦です。
johnboltontheroomwhereithappened001
ジョン・ボルトン回顧録 (仮)

 大変古い記事であるが、重要な記事をご紹介する。これは2018年に『イスラエル・ロビー』の共著者であるハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授が書いた記事だ。アメリカ外交政策エスタブリッシュメントはネオコンと人道的介入主義派で占められており、ネオコンのジョン・ボルトンはその主流派の一人である。そして、これら主流派の人々は自分たちの主張が実現されてもたらされた悲惨な結果について反省をしない、そして再び政権に入ることで失敗を繰り返す。これがアメリカの構造的な欠陥だとウォルトは書いている。

 そして、ネオコンと人道的介入主義派をまとめて「チェイニー主義」と名付けている。そして、チェイニー主義がアメリカの構造的な欠陥だと喝破している。チェイニー主義をウォルト教授は次のように描写している。

(貼り付けはじめ)

チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

(貼り付け終わり)

 トランプ大統領は外交政策エスタブリッシュメント、主流派をこき下ろしていた。しかし、それでもそうした人物たちを起用しなければならない時もある。それでも行き過ぎれば、解任してきた。だから、北朝鮮との戦争は起きなかったし、中国とも決定的な決裂には至っていない。その点でドナルド・トランプ大統領は極めて優秀だ。ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら世界は悲惨なことになっていただろう。本格的な戦争と新型コロナウイルス感染拡大が同時並行的に起きていたらアメリカはもたなかっただろう。

 問題はジョー・バイデンもヒラリーとあまり変わらないということだ。彼の政権も「チェイニー政権(チェイニー主義政権)」になってしまう可能性は大きい。下の記事にも名前が出てくるスーザン・ライスが副大統領になればそれは極めて危険なことだ。

(貼り付けはじめ)

ディック・チェイニー政権へようこそ(Welcome to the Dick Cheney Administration

―ジョン・ボルトンに関する問題は彼が少数派の過激な人物(extremist)だということではない、問題は彼が主流派(mainstream)であることだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2018年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/23/welcome-to-the-dick-cheney-administration/

もう片方の靴が落ちた。トランプ大統領はレックス・ティラーソン国務長官をツイッター上でのツイート一つで解任するという臆病な手段を取った。この時同時に、ドナルド・トランプは大統領国家安全保障問題担当補佐官のHR・マクマスターを解任し、後任にジョン・ボルトンを選んだ。ボルトンは元米国国連大使で強硬派として知られた人物だ。超タカ派(Uber-hawk)のマイク・ポンぺオはCIA長官であるが、国務長官に就任することになった。そして、CIAに忠誠を誓うジーナ・ハスペルがポンぺオの後任に決まった。ハスペルは、ジョージ・W・ブッシュ政権時に拷問施設を運営し、CIAが行っていたことを記録したヴィデオテープの破棄に同意した。こんな恐ろしいことが他にあるだろうか?

これらの出来事はトランプ政権内の混乱に対する2つの重要な反応だと考えられる。一つ目の解釈としては、今回の人事交代はトランプの政権内から「大人たち」を排除する動きというものだ。大人たちは過去1年間、ツイッター最高司令官(tweeter-in-chief)を何とか制御しようとしてきた。そうした人々を、トランプと同じように世界を見て、「トランプをトランプ」らしく行動させる人々に交代させたのである。こうした見方からすると、新しいティームは、トランプ大統領を制御しようとはせず、2016年の時のトランプに戻そうとするだろう。この時のトランプは、アメリカの外交政策は「完全に隅から隅まで厄災である」と主張し、「アメリカ・ファースト」の実現を訴えた。トランプ大統領自身は、自分で望ましい人物たちを集めてティームを作ると訴えることで、こうした考えを強調してきた。(これは一つの大きな疑問を生起させる。それは、誰が最初のティームの構成員を選んだのか?二番目のティームは?その答えは明白だ)

二つ目の解釈はより人々の警戒心を強め、皆さんの家の裏庭に防空壕を掘らせるようにさせるくらいのものだ。この解釈では、ティラーソンとマクマスターの更迭とボルトン、ポンぺオ、ハスペルの起用はタカ派が力を持つことになることを示す。この人々は、イランの核開発をめぐる合意を破棄し、拷問を復活させ、北朝鮮との戦争を始めるだろう。これはただの「強硬な姿勢」を超えたものだ。ホワイトハウスにボルトンが入ることで戦争を嫌なものだと考えたことがない人物からトランプ大統領は助言を受けることになる。(戦争を嫌なものだと考えないのはもちろん彼が安全な距離まで離れているからだ)

明確にしておきたい。ボルトンはこれまでトランプ大統領が行った選択肢のほとんどと同じもので、厄災となるであろうものだ。ボルトンの外交政策について考え方は原理主義的で、好戦的なものだ。政策の主導者、そして専門家としてのボルトンの経歴はどんなに良く言っても、信頼に足るものではない。ボルトンは自分の過去の誤りから学んでいるようには見えない。そして、マクマスターとティラーソンは、アメリカの国際的な評判と重要な同盟関係に対して、トランプ大統領が与えた損害を何とか限定的にしようと努力したが、ボルトンの外交官としての技能はアメリカの友人たちを攻撃するための新たな方法を見つけることになるだろうと思われる。

しかし、ボルトンの起用は2016年の大統領選挙の段階のトランプの考えに戻るということではないのだ。トランプは選挙期間中に外交政策に関する専門家たちやエスタブリッシュメント全体を攻撃した。トランプはこうした人々は無能で、無責任、アメリカを意味のない戦争に引きずり込むと主張した。しかし、大統領に就任して以来、トランプ大統領は国防予算を増額し、アフガニスタンの米軍を増強し、国防総省とわがままなアメリカの同盟諸国がより多くの場所でより強力な軍隊を使用することを許可し(その結果は失望)、外交政策により軍事偏重の姿勢を取ることでハイリスクな選択をした。これは、ビル・クリントン、ブッシュ(子)、バラク・オバマの各政権で失敗したやり方だ。ボルトンの起用(トランプの外の人事異動と同様)は、「アメリカ・ファースト」に向けた大胆な動きということではない。「アメリカ・ファースト」という言葉は、アメリカの海外での負担を削減し、アメリカの戦略的位置を改善し、アメリカ国民をより安全により豊かにするためのより堅実なそしてより抑制された外交政策を意味するはずだ。

その代り、トランプが知っていたかどうかは分からないが、ボルトン、ポンぺオ、ハスペルを最重要の地位に就けたのは、「チェイニー主義(Cheneyism)」への逆戻りなのである。チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

いいですか皆さん、チェイニー主義は、アメリカがそれを採用した最後の機会できちんと機能しましたか?トランプ大統領のような洗練された外交政策の専門家は再びチェイニー主義を採用したいと望んでいるのは間違いないところだ。

従って、ボルトン起用の真のレッスンはボルトン自身のことではなく、アメリカの外交政策エスタブリッシュメントについてである。より微妙な地位に野蛮な急進派の人物を就けることの危険性についてこれから数週間、心のこもったそして怒りに満ちた評論を多く読むことになることは間違いない。しかし、単純な事実としては、アメリカの外交政策共同体の中で変わった人物ではないということだ。トランプが左派からメディア・ベンジャミンを、右派からランド・ポールを起用することとは違う。もしくは、チャールズ・W・フリーマン・ジュニアやアンドリュー・バセヴィッチのような経験豊富なそして知識豊富な逆張り主義者を起用することも違う。そうではなくて、ボルトンはタカ派の考えを持っているが、ワシントンにおいて「受け入れ可能な」コンセンサスの中に入っているのである。

ボルトンの考えや経歴を見てみよう。彼はイェール大学とイェール大学法科大学院の卒業生だ。彼はワシントンDCにある著名な法律事務所コンヴィントン・アンド。バーリングで働いた。この事務所ではディーン・アチソンも働いていたことがある。ボルンとは長年、保守系ではあるが主流のアメリカン・エンタープライズ研究所で上級研究員を務めている。彼は曖昧な、粗雑で野蛮な、「急進的な」文章を数多く発表している。その中には『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙、そして『フォーリン・ポリシー』誌も含まれている。ここまで見て、あなたが考える「おかしな」人物にボルトンは当てはまるだろうか?

確かに、ボルトンはイラク戦争を声高に支持していた。しかし、そのことで彼を狂人(weirdo)だと考える人はほとんどいない。確かにボルトンはイラク戦争を声高に支持した。しかし、しかし、だからと言って奇人変人という訳ではない。ボルトンも指摘しているように、そのほか多くの人々も同様であった。ヒラリー・クリントン、ジョー・バイデン、ジェイムズ・スタインバーグ、アン=マリー・スローター、スーザン・ライス、ロバート・ゲイツなどなど数多くの「尊敬すべき」人物たちがイラク戦争に賛成した。これらの人物たち以外にもイラク戦争という厄災を夢見て実現させた天才たちのことも忘れてはいけない。ウイリアム・クリストル、ジェイムズ・ウールジー、ロバート・ケイガン、ブレット・スティーヴンス、マックス・ブート、エリオット・コーエン、デイヴィッド・フラム、ポール・ウォルフォヴィッツなどは今でも外交政策エスタブリッシュメントの中では尊敬を集めている。しかし、こうした人々は、悲惨な戦争を始め、多くの人々を死に至らしめたことについて、自分たちの誤りを認めず、公の場で後悔の念を示したこともない。

トランプ大統領と同様、ボルトンはイランと北朝鮮に対して特に懸念を持っているように見える。しかし、連邦議員の多くとワシントンDCにあるシンクタンクの多くもまた同様である。実際のところ、現在のイランとの核開発をめぐる合意を強く支持している人々は多くいるが、こうした人々はアメリカ政府がイラン政府に対してより強硬な姿勢を取るべきだと考えている。北朝鮮に対して軍事行動を取ることを提案しているワシントンDCにいる人間はボルトンだけではない。結局のところ、ボルトンの前任者である、更迭されたマクマスターが北朝鮮に対する厳しい姿勢を取ることを主張していた。

ボルトンはイスラム教嫌いで知られており、かつ国際機関に対して極めて懐疑的だ。しかし、こうしたことはアメリカの外交政策分野において特殊という訳ではない。彼は軍事力の行使を特に好む傾向があるように見える。しかし、外交政策分野での高名な知識人たちの中で軍事力行使に反対し、それに反対する態度を取りそのように発言する人たちの数はどれほどいるだろうか?私はそのような人物は極めて少ないと言わざるを得ない。それは、ワシントン(アメリカ政府)でトップの仕事に就きたいと狙っているような人物で「ソフトだ」と見られることを望むような人は一人もいない。シリアのバシャール・アル・アサド政権に対して戦略的に見て全く無意味な巡航ミサイル攻撃をトランプ大統領が許可した時、どれだけの数の民主党所属の政治家と共和党所属の政治家が彼に向って拍手を送ったかを読者の皆さんは覚えておられるだろうか?この単純な事実によって次のことを説明することができる。アメリカは10か国以上の国々で様々な種類の戦争を行ってきているが、終わりを想定することなしにまた反対しにくい形で始めている。ボルトンは外交政策共同体のコンセンサスの内部にいる、声が大きいメンバーであるに過ぎない。

誤解しないでもらいたい。私は今回のボルトンの起用を「正常なこと」であると位置づけ、心配するなと述べているのではない。そうではなく、もしボルトンについて懸念を持っているならば、次の疑問を自分自身に問いかけてみるべきだ。それは「政府高官の地位にボルトンのような考えを持つ人物が就くことを許すような政治システムはどのようなものか?」というものだ。このシステムは、この人物を政府高官の地位に就けて、アメリカを悲惨な戦争に駆り立てながら、自身の失敗に対する後悔を示すこともなく、更に次の10年も同じことをより熱を持って主張する。同じ間違いを犯すために2回目のチャンスを得ることができる。

これはただただ最悪なのだ。しかし本当の問題はボルトンではない。本当の問題は、彼のような人物を何度も失敗させて、何度も引き上げてくれるシステムの存在だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
johnboltontheroomwhereithappened001
ジョン・ボルトン回顧録 (仮)
 ドナルド・トランプ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたジョン・ボルトンの回顧録“
The Room Where It Happened”の日本語版は9月に発売される。アメリカでは既に中身の一部が報道され、議論を呼んでいる。トランプ政権側は「国家安全保障上の機密をばらすもの」として批判しているし、トランプ政権を批判する側は「これらの内容は本来は大統領弾劾手続きの時に議会で証言すべきものだったのに、金儲けのために証言を拒んだ」と批判している。

 内容はトランプ大統領が「危なっかしいど素人」で「無能」な人間で、汚い言葉である「頭の先までクソが詰まっている」人物であるということが事細かに書かれている。

ボルトンは、自身のカウンターパートである、谷内正太郎(やちしょうたろう、1944年-)国家安全保障局長・内閣特別顧問とよく会っている。それらのことを正確に記述しているので、本書は2016年以降の安倍政権下での日米関係史の資料ということになる。

特に北朝鮮との非核化をめぐる首脳会談の時期ということもあり、谷内は日本側の懸念をボルトンに伝えている。また、在日米軍の駐留コストの負担増額についても話をしている。また、安倍晋三首相のイラン訪問の前後、谷内はボルトンに対して、安倍首相のイランでの会談で話すべきポイントについても伝えている。ボルトンは、日本は同じ非核化という問題について、北朝鮮に対しては強硬姿勢(現実的な脅威として)、イランに対しては柔軟姿勢(石油のことがあるから)を取っているとしている。

 訳書は脚注や索引を入れれば700ページ近くになるのではないかと思う。それでも何があったのかを知るには興味深い一冊となるだろう。

(貼り付けはじめ)

ボルトンの暴露によってトランプは嘲りの対象に(Bolton exposé makes Trump figure of mockery

ナイオール・スタンジ筆

2020年6月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/503287-the-memo-bolton-expose-makes-trump-figure-of-mockery

ジョン・ボルトンにとって、トランプ大統領に対する最も効果的な武器は単純だが、荒々しいものである。それは嘲りだ。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は水曜日午後、前国家安全保障問題担当大統領補佐官の最新刊の内容に詳しく報じた。その他のメディアもすぐにそれに続いた。最新刊の内容に関する詳細な紹介によってすぐに論争が起きた。

ボルトンの説明によると、ある時、トランプ大統領はフィンランドがロシアの一部なのかどうかを質問したことあったそうだ。トランプ大統領はイギリスが核兵器を保有していることを知らなかった。トランプ大統領は、エルトン・ジョンのCD「ロケットマン」にエルトン・ジョンのサインをつけたものを北朝鮮の指導者金正恩に送りつけたいと熱望していた。

トランプ大統領はあまりにも無謀で向こう見ずなので、国務長官だったレックス・ティラーソンと国防長官を務めたジェイムズ・マティスの後見が必要なほどだった、とボルトンは述べている。ボルトンはティラーソンとマティスについて、「大人の枢軸(the axis of adults)」と呼んだとされている。

ボルトンはトランプ大統領を馬鹿者と評したが、これは政治的に言えば、より鋭利なダーツの矢ということになるだろう。この言葉は、ウクライナをめぐる対応をはじめとする弾劾に値するトランプ大統領のその他の行動に対する深刻な批判よりも、政治的に見れば厳しいものとなるだろう。

多くの人々の注意を引きそうなエピソードとして、レックス・ティラーソンの次の国務長官となったマイク・ポンぺオと会談を持った際、ポンぺオはボルトンにある走り書きをしたメモを渡した。そこにはトランプ大統領について、「彼は頭の先まで糞が詰まった奴だ(He is so full of shit)」と書かれていた。

この発言は、かつてのトランプ政権内部にいた人々によって使われ、もしくは暴露される嘲りの山に新しい要素を一つ加えるだけに過ぎない。

ティラーソンはトランプ大統領を「くそったれの馬鹿野郎」と呼んだと言われている。ボブ・ウッドワードの著書『恐怖』では、法律家のジョン・ダウドはトランプ大統領を「くそったれの嘘つき野郎」と考えていたとし、元大統領首席補佐官ジョン・ケリーはトランプ大統領を「愚か者」だと見なしていた、と書かれている。ダウドとケリーはこのような描写を事実ではないと否定している。

トランプ政権内部や外部の支持者たちは、ボルトンの本の信憑性を貶めようと大変な努力をしている。これは、こうした人々がボルトンの本がもたらす危険性について認識していることを示すサインである。

ボルトンの本の出版前審査は論争を巻き起こしている。国家安全保障会議は内容のいくつかの変更を求めている。それは表向き国家安全保障を理由にしている。

ボルトンの弁護士チャック・クーパーは先週、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に論説を掲載した。その中でクーパーは、「こうした動きは国家安全保障を口実にしてボルトン市を検閲しようという明白な試み」だと主張した。

火曜日、司法省は著作についてボルトンに対して民事訴訟を提起した。本のタイトルは『それが起きたその部屋』だ。訴訟提起過程で、司法省は本に対して大いなる宣伝をすることになってしまった。6月23日に発売されることになっているが、水曜日午後の時点で、アマゾンでベストセラーランキング第1位にランク付けされている。

勿論のことだが、ボルトンは反トランプ「ルネサンス」にとっての英雄ではない。タカ派の外交政策専門家であるボルトンが最初に全国的な注目を集めたのは、ジョージ・W・ブッシュ元大統領政権の時代だ。ボルトンはイラク戦争を主導した。

2005年、ブッシュ大統領(当時)がボルトンを米国国連大使に指名した時、連邦上院から人事承認を得られなかった。そこで連邦議会休会中に任命するということになった。

ボルトンがトランプ政権に参加したのは2018年4月からだったが、北朝鮮、イラン。アフガニスタンといった諸問題について、とランプ大統領よりも、より強硬なアプローチを好んだ。

2人の姿勢の違いは、9月になって決定的な争いへとつながった。ボルトンは、自分は辞任したのだと述べたが、トランプ大統領は、ボルトンを更迭したと述べた。

トランプの後援者たちはボルトンが本を書いた同期について疑義を呈することで、ボルトンの重要性を低めようとしている。「アメリカを再び偉大に(MAGA)」陣営とリベラル派が合意している点というのは大変に珍しいケースである。

民主党員の多くとその他のトランプへの批判者たちはボルトンを攻撃している。批判者たちは、ボルトンが今年初めの大統領弾劾の時期に証言を抵抗したが、それは本で金儲けをするためだった。一説にはボルトンは本の出版契約の段階で200万ドル(約2億①000万円)を手にしたと言われている。

ジム・ジョーダン連邦下院議員(オハイオ州選出、共和党)は連邦議員の中でも特にトランプを強力に支持している人物だ。ジョーダン議員は水曜日、ボルトンには「嫌らしい下心」を持っていると嘲った、とCNNの記者はツイートで報じた。

2016年大統領選挙でトランプ陣営に参加したジェイソン・ミラーは、2020年の選挙でも上級顧問として参加している。ミラーはハッシュタグ「#BookDealBolton」を使おうと呼びかけ、ボルトンは「アメリカの国家安全保障よりも本を売ることにしか関心を持っていない」と述べた。

ワシントンの共和党関係者たちも嫌悪感を示している。

過去の共和党の政権に参加したある人物は、ボルトンの本の詳細が表に出始めた先週本紙の取材に対して、元国家安全保障問題担当大統領補佐官ボルトンは「復讐」と「政権内部のゴシップ晴らし」をしたいだけだと述べた。

こうした見方への支持は、連邦下院情報・諜報委員会委員長アダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)からも出ている。シフ議員は大統領弾劾手続きを進めた人物だ。

シフは、ボルトンが議会での証言に抵抗したことと、ボルトンのスタッフたちが証言に応じた「勇気」と対照させた。

シフは「ボルトンは作家ではあるかもしれないが、愛国者では断じてない」と批判した。

いずれにせよ、ボルトンに対する批判のいくつかはトランプ大統領への弾劾の時期に生まれた疑問をまた抱かせる。

大統領に対する弾劾はウクライナ問題に集中した。トランプ大統領は東ヨーロッパに対する米連邦議会が決めた援助についてそれを行うためにはジョーバイデンに対する捜査を行うように求めたのは明らかだ。しかし、ボルトンは同様の試みが中国に対して行われていたと主張している。

ボルトンは2019年6月のG20サミットについて書いている。この会議の席上、トランプは中国国家主席習近平に対して、2020年の大統領選挙で勝利できるように助けて欲しいと依頼した、としている。

『ワシントン・ポスト』紙によると、ボルトンは次のように書いている。「トランプ大統領は、選挙の結果において、農民の重要性と中国が大豆と小麦の購入量を増加することの重要性を強調した。私はトランプ大統領の発した言葉を正確に転載しようとしたが、政府による出版前の審査プロセスはそれを許可しなかった」。

多くのメディアはこの問題を中心に報道することになるだろう。

しかし、こうした描写への関心が高まっている中で、ボルトンの「トランプ大統領はど素人であり、無能力」という描写が人々の記憶に最も刻まれる点となるだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 先日、ドナルド・トランプ大統領によって解任されたジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官の後任にロバート・オブライエン(Robert O'Brien、1966年―)が決まった。ロバート・オブライエンは弁護士で、アメリカ政府高官として外交分野での経験も長い人物だ。また、アメリカ軍の法務関係で神奈川県の座間にある在日米陸軍司令部に勤務したこともある。民間で弁護士をしている時代も、共和党系の半官半民の組織である国際共和研究所(IRI)の代表として、2013年には中央アジアの国ジョージアの大統領選挙、2014年にはウクライナの議会選挙の監視団に参加した。

roberto'brien001

 2005年には当時のジョージ・W・ブッシュ大統領によって、国連総会の米国代表に任命され、総会に参加した。その頃、国連大使を務めていたのは、オブライエンの前任者となるジョン・ボルトンだった。その後はブッシュ政権からオバマ政権にかけてアフガニスタンの司法制度の構築に参加した。2018年からは人質問題担当の特使を務めていた。

 下の『ワシントン・ポスト』紙の記事では、ロバート・オブライエンの古くからの友人が、彼はネオコンとは違う、古いタイプの保守派で、トランプ大統領の「アイソレーショニスト(アメリカ国内優先主義)」に沿った助言や説得をできると絶賛している。現在、アメリカ外交は、イランとの緊張の高まり、北朝鮮との交渉が先行き不透明、ヴェネズエラ問題に対する対処の失敗などの問題を抱えている。また、アメリカの力と存在感の減退によって世界各地域が不安定となっている。現在の日韓関係の悪化もその流れにある。

 ロバート・オブライエンはロナルド・レーガン元大統領の「強さを通じた平和」という考えを一貫して持っているようだ。これは軍事力増強に多額の予算を投入しつつ、軍事力の行使には消極的ということである。アメリカ軍の強大さと巨大さを誇示することで、反抗する意図を挫くということだ。これだとトランプ大統領の意向に沿う形になる。

 トランプ大統領はアメリカ海軍の増強を主張していて、オブライエンもその同調者(navalist、海軍増強主義者)だそうだ。これはアメリカの貿易ルートを守るためということもあるだろう。現在、太平洋や東シナ海、南シナ海をめぐっては米中の間で綱引きが行われている。中国は西太平洋までを実質的に自分たちのコントロールする海にしたい。アメリカ海軍はハワイまで引け、ということになる。アメリカはそうさせじとなり、日本をますます強く握りしめる。東南アジア諸国や太平洋島しょ諸国はその間をうまく立ち回ろうとしている。 

日本に近いところでは、「第一列島線(First Island Chain)」と「第二列島線(Second Island Chain)」をめぐる綱引きが起きている。この2つの線は中国封じ込めの線となっているが、中国はこの2つの線の内側を自分がコントロールする海にしたいと考え、アメリカはそれを阻止しようとしている。日本はその間で絶妙な位置にいる。

pacificoceansouthchinaseaeastchinasea001

 ロバート・オブライエンはネオコンであった前任者の失敗を繰り返すことはしないだろう。戦争に結びつくような動きはしないだろう。トランプ大統領とオブライエン新補佐官の認識は、米軍の再建が必要だということだ。これは現在の米軍は弱体化しており、世界の諸問題に対処するにあたり、米軍の弱体化はアメリカの力と存在感の減退を招いているので、まずは米軍の再建だということになる。米軍の増強には公共事業の拡大という側面もある。

 (貼り付けはじめ)

 

トランプが次の国家安全保障問題担当大統領補佐官にロバート・オブライエンを指名(Trump names Robert O'Brien as next national security adviser

 ブレット・サミュエルズ筆

2019年9月18日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/461910-trump-names-robert-obrien-as-next-national-security-adviser

ロサンゼルス発。トランプ大統領は水曜日、現在トランプ政権の人質問題担当特使を務めているロバート・オブライエン(Robert O'Brien)を国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命する意向だと発表した。

トランプ大統領は「私は長い間、ロバートと共に懸命に仕事をしてきた。彼は素晴らしい仕事をしてくれるだろう」とツイッター上に書き込んだ。

トランプ大統領は先週、ジョン・ボルトンを解任した。ボルトンの後任にオブライエンが就くことになった。ボルトンは北朝鮮問題とヴェネズエラ問題に対する政権の姿勢に同調することが出来なかった、とトランプ大統領は批判した。

 国家安全保障問題担当大統領補佐官に関しては連邦上院の人事承認を必要としない。

オブライエンはトランプ政権発足後の3年弱で4人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官となる。彼の前任者たちは、マイケル・フリン、HR・マクマスター、ボルトンだ。
オブライエンはトランプ大統領が直面している様々な困難に対処するという難しい役割を担うことになった。イランと緊張関係の深刻化、北朝鮮の非核化について交渉が頓挫している状況、ヴェネズエラの状況の悪化など他の様々な国際問題に対処しなければならない。

 オブライエンは自分の考えに固執していきすぎることなく、トランプ大統領に助言を行うことが出来るに違いない。これはオブライエンよりもタカ派のボルトンには全くできなかったことだ。

 トランプ大統領は水曜日の午後にサンディエゴで開催される資金集めイヴェントに出席するために大統領専用機エアフォース・ワンに搭乗した。途中立ち寄ったロサンゼルスで、トランプ大統領はオブライエンを伴って姿を現した。その後、再びエアフォース・ワンに搭乗してサンディエゴに向かった。トランプ大統領は途中で立ち寄ったロサンゼルスで、記者団に対して、おぶらいえんを「素晴らしい人物」と称賛し、トランプ政権下で、本国に戻ることが出来たアメリカ国民の人質の記録を示し、業績を強調した。

トランプ大統領は記者団に対して次のように語った。「オブライエンとはしばらくの間一緒に働いたが、私たちは大きな成果を上げた。私たちは多くのアメリカ人を故郷に連れ帰ったが、身代金は全く支払っていない」。

オブライエンは国家安全保障問題担当大統領補佐官という新たな役割を果たすことを楽しみにしていると述べ、トランプ政権はこれまで多くの外交上の勝利を収めてきたが、これから多くの困難も待ち受けていることは認識しているとも語った。

オブライエンは次のように述べている。「トランプ大統領に仕えることは光栄なことで、強さを通じての平和が、大統領の残りの任期である1年半続くことを望む。トランプ大東慮の指導力の下、アメリカは多くの外交政策上の成功を収めてきた。私はこれがこれ化も続くことを期待している」。

オブライエンは続けて次のように語った。「私たちは多くの困難に直面してきた。しかし、ポンぺオ国務長官、エスパー国防長官、ミュニーシン財務長官といった人々が構成する素晴らしいティームで対処してきた。私はこのティームと一緒に働けることを楽しみにしている。そして、大統領と共にアメリカを安全にするために努力する。また、軍を再建し、強硬な姿勢を通じての平和を私たちに取り戻す(get us back to a peace through strength posture)」。

オブライエンは2018年に国務省の人質担当の首席交渉者となった。彼は海外で拘束されているアメリカ国民の解放のために働いた。オブライエンはラッパーのA$APロッキー がスウェーデンで拘束され、その釈放手続き期間中にスウェーデンまで赴いた。トランプ大統領はスウェーデン政府に対して暴行事件で逮捕されたA$APロッキーの解放を求めた。

オブライエンは長年にわたり外交分野で働いてきた。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は2005年の国連総会の米国代表にオブライエンを指名した。また、ブッシュ(子)政権とオバマ政権で、アフガニスタンの司法システム構築のために、米国人の裁判官、検察官、弁護士を訓練するための国務省プロジェクトの共同委員長を務めた。

火曜日、トランプ大統領はカリフォルニア州での資金集めイヴェントへと向かう大統領専用機エアフォース・ワンの中で記者団に、国家安全保障問題担当大統領補佐官の候補者として考えている人物たちのリストを伝えた。

オブライエンの名前は、前任の国家安全保障問題担当大統領副補佐官(国家安全保障問題担当大統領補佐官はHR・マクマスター)リッキー・ワデル、エネルギー省高官リサ・ゴードン=ハガティ、元CIA分析官フレッド・フライツ、マイケル・フリン国家安全保障問題担当大統領補佐官辞任を受けて代理を務めたキース・ケロッグ陸軍中将が掲載されたリストの中に入っていた。

=====

トランプ大統領は、彼自身と国家が必要とする国家安全保障問題担当大統領補佐官を正確に選択した(Trump chose exactly the national security adviser he and the country need

 ヒュー・ヒューイット筆

2019年9月19日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/2019/09/19/trump-chose-exactly-national-security-adviser-he-country-need/

トランプ大統領は水曜日に新しい国家安全保障問題担当大統領補佐官について素晴らしい選択を行った。ロバート・C・オブライエンは2018年5月以来、トランプ政権の人質問題担当特使を務めてきた。彼はトランプ大統領就任以降に20名以上のアメリカ国民を祖国に連れ帰ることに貢献してきた。

オブライエンの有能さはトランプ大統領の関心と重点政策に合致してきた。しかし、それだけで彼が国家安全保障問題担当大統領補佐官に選ばれた理由ではない。マイク・ポンぺオ国務長官はオブライエンの重要な役職への昇進を支持した。国家安全保障問題分野で活躍してきたヴェテランたちは「レーガン流の強さを通しての平和」を目指す保守派(“Reagan peace through strength” conservatives)」に属してきた。このグループは、ロナルド・レーガン政権のキャスパー・W・ワインバーガー国防長官とジョージ・P・シュルツ国務長官にまで連なる。こうしたネオコンとは違う保守派は、国家安全保障問題担当大統領補佐官の仕事をよく理解している。彼らはリチャード・M・ニクソン大統領時代のヘンリー・キッシンジャーが国家安全保障問題担当大統領補佐官の仕事の内容を激変させたことを知っている。

私とオブライエンは親密な友人同士であることはここで書いておかねばならない。2つの法律事務所でパートナーを務めた仲だ。また、10年以上前から私が司会を務めるラジオ番組のゲストとして何度も来てくれた。また、私が国家安全保障分野に関するエッセイやコラムを書く際にも協力してくれた。私は昨年の夏に法律の実務から引退したが、チャップマン大学ファウラー記念法科大学院で教えることは続けている。私は2016年にオブライエンが出版した書籍『アメリカが眠っていた間に:危機に直面する世界に対してアメリカの指導力を再構築する』の推薦文を書いた。私以外にも多くの人々が今回の決定を称賛しているが、皆似たような内容の話をしている。これまでに、オブライエンは、ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)、前ウィスコンシン州知事スコット・ウォーカー、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)に助言をしてきた。連邦下院少数党院内総務ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)とは長年の友人であり、マッカーシー以外にもカリフォルニア政界や国家安全保障分野に多くの友人を持つ。

今回のオブライエンの抜擢という選択を行うにあたり、トランプ大統領は、オブライエンの大統領自身とポンぺオ国務長官とうまく仕事をやっていく確立された能力だけでなく、海外や国内の法廷で複雑な訴訟で様々な依頼人の代理人を務めてきた技術を注目した。トランプ大統領が選択を行うにあたり、素晴らしい能力と誠実さを持つ人物を選ぶ必要があった。様々な事実と選択肢をまとめて大統領に説明し、大統領執務室にいない同盟諸国とアメリカ政府の高官たちを代弁して大統領を説得できる人物が必要であった。その人物こそがオブライエンだ。彼は複数の法律事務所を運営した経験を持つ。大規模な法律事務所では経営陣はエゴの塊で、野心と仕事が絡み合い、競い合う場所である。

オブライエンは様々な分野の書籍を読み、ウィンストン・チャーチルを尊敬している。オブライエンは「海軍増強主義者(navalist)」として知られている。トランプ大統領が提唱する「355隻」体制の海軍の賛同者たちは、ホワイトハウス中枢ウエストウィングに新たに友人を持つことになる。オブライエンは、トランプ大統領は艦隊の拡大を志向していることを人々に思い出させることが期待されている。私はオブライエンと一緒に船舶のエンジン・ドライブの製造工場を訪問したことがあった。私はオブライエンが工業レヴェルの現実と海軍のトップの意向をよく分かっている。

オブライエンは危機の真っただ中にある国々、アフガニスタン、ウクライナ。ジョージアを選挙監視団や外交官として訪問してきた。ジョージ・W・ブッシュ政権下、国連の米国代表部でジョン・ボルトンと一緒に仕事をした経験も持つ。最近では、外国の政府や組織に誤って拘束されたアメリカ国民の解放のためにトランプ大統領の代理として世界中を飛び回った。トランプ大統領はアメリカ国民を祖国に連れ帰るということに重点を置いており、それがオブライエンの情熱の源になった。拘束されたアメリカ国民の家族は新しい国家安全保障問題担当大統領補佐官はトランプ大統領とポンぺオ国務長官の人質奪還の強力な意向を共有していることを分かっている。最近のアメリカの外交史において、人質奪還がこれほど熱心に行われたことはなかった。オブライエンはアメリカ国民を海外で拘束しても何の得もしないと示しながら人質を解放することに成功した。

トランプ大統領はアメリカ軍の再建と現場の陸軍兵、海軍兵、空軍兵、海兵隊員の装備を最高で最強の兵器にすると主張している。オブライエンがこれまでに発表した著作や記事を概観すると、彼がこれまで長い間同じことを訴えてきたことが分かる。オブライエンはロナルド・レーガン大統領の前に立った。レーガン大統領と同様、トランプ大統領は外国の揉め事にすぐに介入することはない。トランプ大統領は国家安全保障問題について「ネオコンサヴァティヴ」ではなく、古いタイプの保守だ。自分が仕える人物の意向を受けて、オブライエンは、真剣で経験豊富なこれまでの国家安全保障専門家たちのラインに連なり、古典的な補佐官となる。

オブライエンは前任者たちとは違ってこれまで有名ではなく、国家安全保障分野では若手の間では知られている。彼はこれまでの20年間、国家安全保障分野の若手たちを教えてきた。国家安全保障分野、そして軍事分野には次世代にも受け継がれる一つの伝統が存在する。

トランプ大統領は政権の政策を実行するために有能で、公正な、そして知性のある補佐官を選択した。世界各地で緊張が高まる中で、これはアメリカに対する信頼を構築する選択となる。

(貼り付け終わり)

 (終わり)

ketteibanzokkokunihonron001
決定版 属国 日本論
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 2019年9月10日にドナルド・トランプ大統領は国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンの退任(解任)を発表しました。「これ以上ホワイトハウスで働いてもらう必要はない」(トランプ大統領のツイッターから)ということで、相当に関係がこじれていたことが推察されます。これに対して、ボルトンはやはりツイッター上で、「自分から辞任を申し出て、トランプ大統領は明日話そうと言った」と書いています。自分から辞めてやったんだと言っています。自発的な辞任でも解任でも結果は変わらない訳ですが。

johnbolton002

ボルトン
 

 ネオコンの代表格であるジョン・ボルトンがトランプ政権入りというのは、2017年の政権発足前後にもそうした噂話があり、後には実際にその話が進んでいたということが明らかになったことは、このブログでもご紹介しました。「アメリカ・ファースト(アメリカ国内問題解決優先)」「アイソレーショニズム(自国優先主義)」のトランプ大統領が、ボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用するとなった時には、どうしてそんな人事なんだろうか、トランプ大統領のイスラエル重視姿勢のためだろうかと不思議でした。

 

 ボルトンは対イラン強硬姿勢ではトランプ大統領と合意して順調だったようですが、その後は衝突が多かったそうです。また、マイク・ポンぺオ国務長官とも多くの機会で衝突したそうで、そのことはポンぺオ長官も認めています。普通、記者会見という公の場で、国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官が衝突したなどということを国務長官が認めるということはないのですが、ポンぺオとしてはトランプの寵愛は俺の方にあった、という勝利宣言だったのでしょう。


mikepompeo001
ポンぺオ
 

 ボルトンが属するネオコンは、世界の非民主国家に対して介入して、国家体制を転覆させ、民主政治体制にする、そして世界の全ての国家が民主国家になれば戦争はなくなるという、世界革命論的な主張をしています。この主張と姿勢は世界各国を共産主義国にするとした旧ソ連と同じです。民主政治体制を至高の存在と考えるという点では宗教的と言えるでしょう。しかし、ネオコンはアメリカにとって便利な存在である中東産油国や中央アジア諸国の王国や独裁国家を転覆させようとはしません。この点でダブルスタンダードであり、二枚舌なのです。

 

 ボルトン解任前、2019年9月7日にトランプ大統領はタリバンの代表者をアメリカに招き、キャンプ・デイヴィッドで会談を持つという計画の中止を発表しました。この中止の数日後の11日にはボルトン解任が起きました。そして、14日には、イエメンの反政府勢力ホーシー派(フーシ派)がサウジアラビアの石油製造施設2か所を10機のドローンで攻撃し、石油生産量が半減する事態となりました。ホーシー派はイランが支援しているということです。「イランの方向から飛んできた」という報道もありますが、サウジアラビアの東側から物体が飛んでくればイランのある方角から飛んできたということになりますから、これはイランが関連しているテロ攻撃だということを印象付けたいということなのでしょう。南側から飛んでくればイエメンからということになりますが、攻撃機はどこから飛んできたのかということもはっきりしません。

 

 中東の地図を見ると、イランとサウジアラビアはかなり離れており、イランからドローンが10期も出撃したとは考えられません。イエメンであれば紅海を超えるだけですから、攻撃は可能でしょう。しかし、今のところ、どこからドローンが出撃したかということは分かっていません。また、イランが絡んでいるということはアメリカやサウジの主張であって決定的な証拠がある訳ではありません。

 

 いくつかのシナリオが考えられます。ボルトン解任を軸に考えると、親イスラエル・サウジアラビアのボルトンが政権から去ることで、両国の存在感が低下し、アメリカの中東からの撤退が進むという懸念があり、そのために両国が自作自演をやったということが考えられます。また、トランプ大統領がボルトンを解任したということは、アメリカは世界で警察官をやるつもりはない、軍事行動をとる元気はないと判断して、イランがホーシー派に支援してやらせた、もしくはイランの背後にいる中国がやらせた、ということも考えられます。

 

 イエメンの対岸にあるアフリカの角、紅海とアデン湾をつなぐ位置にジブチがあり、昔から要衝となっています。ここには中国人民解放軍の海外基地があることもあって、いろいろなシナリオが考えられます(ここからホーシー派にドローン攻撃機が供給されたなど)。もちろん確たる証拠が出るまではシナリオを考えるだけにして、決めつけや自分勝手な思い込みは慎まねばなりませんが。

 

 話があちこちに飛んでしまって申し訳ありません。ボルトン解任は状況に対して影響を与えるということはあると考えているうちに、話が飛んでしまいました。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプによるジョン・ボルトン解任についての5つのポイント(Five takeaways on Trump's ouster of John Bolton

 

ブレット・サミュエルズ、オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2019年9月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/460815-five-takeaways-on-trumps-ouster-of-john-bolton

 

火曜日、トランプ大統領はジョン・ボルトンが国家安全保障問題担当大統領補佐官から退任すると発表した。外交政策分野における重要な諸問題にどのように対処すべきかについてトランプ大統領とボルトンとの間で不同意があったとトランプ大統領は述べた。

 

トランプ大統領はツイッター上でボルトンの退任を大々的に発表した。その後、衝撃がワシントン全体に広がった。

 

これからボルトンの退任についての5つのポイントについて述べる。

 

(1)トランプ政権内の混乱(カオス)状態は新たな展開を見せる(Trump chaos takes another turn

 

ボルトンが解任されたことにより、トランプは3年間で4人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官を探すことになった。これによって、トランプ大統領が重大な国家安全保障上の諸問題に対処する際に、大統領の上級顧問たちの間で不安定さが出てくるのではないかという懸念が再び大きくなっている。

 

ボルトンの退任は、トランプ大統領がキャンプ・デイヴィッドでタリバンと会談を持つ予定だったが中止にしたという衝撃的なニュースが報じられた後に起きた。タリバンはオサマ・ビン・ラディンを匿ったアフガニスタンのテログループだ。

 

トランプ大統領はアフガニスタンからの米軍撤退を行おうとし、タリバンの代表とアメリカ国内で会談を持つことにボルトンは反対したということは明確だ。ペンス副大統領は明確に大統領を支持しているが、ボルトンはそうではなかった。

 

トランプ政権の幹部たちは、タカ派のボルトンの退任は大きな出来事である、もしくは無秩序を増大させる、という考えを完全に否定した。

 

火曜日の記者会見で、スティーヴン・ミュニーシン財務長官は「そんなことは全くない。そんなバカな質問はこれまで聞いたことがない」と述べた。

 

しかし、ここ数か月の間、トランプ大統領は国土安全保障長官、国家情報長官、ボルトンを解任した。現在の国防長官は就任してからまだ数週間しか経っていない。

 

民主党は、政権内の人事の頻繁な交代と争いはこれからどうなるか分からないとし、トランプ大統領の政敵たちは大統領を攻撃するためにボルトン隊員のニュースを利用するだろうと強調している。

 

(2)ポンぺオの力が大きくなる(Pompeo's strength grows

 

ボルトンの退任はマイク・ポンぺオ国務長官のトランプ大統領に対する影響力を更に強めることになる。

 

ポンぺオとボルトンは数々の問題で衝突した。火曜日、国務長官は記者会見で記者たちに対して衝突があったことを認めた。

 

トランプ政権が発足してすぐからトランプ大統領に仕えた閣僚は数が少なくなっているが、ポンぺオはその中の一人だ(訳者註:CIA長官から国務長官へ横滑り)。ポンぺオはトランプ大統領に忠実な代理人で、イラン、北朝鮮、アフガニスタン、中央アメリカに関連した諸問題についての大統領のメッセージを伝えてきた。

 

ボルトンはイランと北朝鮮との交渉を複雑化させた。イラン外相ムハマンド・ジャヴァド・ザリフはボルトンをトランプ政権の「Bティーム」のメンバーだと揶揄し、北朝鮮政府幹部たちは数度の非核化交渉の中で彼を「好戦的な戦争屋」を非難した。

 

火曜日の午後の記者会見に同席する予定であったボルトンの退任に驚いたかと質問され、ポンぺオはニヤリとした。

 

ポンぺオ国務長官は「大変に驚いた。この問題だけのことではないが」と述べた。

 

(3)奇妙な結婚関係が終焉(Strange marriage ends

 

トランプ大統領は2018年3月にボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に起用した。前任のH・R・マクマスターよりもタカ派の人物としての起用となった。

 

ボルトンはテレビ出演時にトランプ大統領の考えを強力に擁護してきた。そして、大統領のイランとの核開発をめぐる合意からの離脱という希望に賛成していたようだ。

 

トランプ大統領とボルトンは重要ないくつかの問題、特にイラン問題について合意していたようだ。ボルトンを起用してから6週間後にトランプ大統領はオバマ政権下で結ばれた核開発をめぐる合意から離脱した。そして、トランプ政権は離脱直後からイランに対する経済制裁を科してイラン政府を攻撃した。

 

しかし、おかしくみえることもあった。トランプ大統領は元々ボルトンを起用することにためらっていた、それは彼が口ひげを生やしていたこと、そしてボルトンはジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ両政権下で働いたことが理由であった。トランプ大統領は自身の幹部となるアドヴァイザーを起用する際にそのような前歴があると怒りをぶちまけていた。

 

ここ数か月でボルトンのトランプ大統領に対する影響力は消えていた。そして、公の場での大統領からの叱責が続いた。

 

この数か月、トランプ大統領はボルトンのイランに対する強硬姿勢から少しずつ離れていった。トランプ大統領はイランの指導者たちと前提条件なしで直接話をしたいと述べ、イランと軍事上で関与することに躊躇している。

 

ボルトン退任の決定打となったのは恐らく、911事件の記念日の前にタリバンをキャンプ・デイヴィッドに招いて交渉を行うというトランプの考えに反対したと報じられたが、このことがきっかけであっただろう。

 

ホワイトハウスのホーガン・ギドリー副報道官はフォックスニュースに出演し、「トランプ大統領は周囲の人々に自分の考えに反対してもらいたい、それで自分の前で議論をして欲しいと望んでいる。しかし、最終的に政策を決定するのは大統領だ」と述べた。

 

(4)共和党は再び説明を放棄した(GOP left explaining once again

 

トランプ大統領が人々を驚かせることをやる度に、連邦議会共和党はそれに対する反応を求められる。火曜日の発表もその例外ではない。

 

複数の共和党の連邦議員たちは、レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ジョージ・W・ブッシュ各政権で働いたボルトンがトランプ政権から去ることを残念だと述べた。

 

連邦上院外交委員会の委員ミット・ロムニー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)は次のように述べた。「ボルトンは天邪鬼であることは事実だが、それは彼にとってプラスであっても、マイナスではない。彼が政権から去るという報に接し、大変残念だ。私は彼の退任は政権と国家にとって大きな損失である」。

 

しかし、他の人々はタカ派のボルトンの退任を歓迎した。こうした人々は、ボルトンがアメリカを更なる戦争に導くだろうという恐怖感を持っていた。

 

連邦下院の中でトランプ大統領の盟友となっているマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)は本誌の取材に対して次のように答えた。「私はボルトンの退任を歓迎したい。それは、ボルトンの世界観が反映されにくくなることで、世界における平和のチャンスが大きくなるだろうと考えるからだ」。

 

共和党の政治家のほとんどは当たらず触らずの態度で、トランプ大統領は自分自身で適切な人物を補佐官に選ぶべきだと述べるにとどまった。

 

(5)ボルトンは口を閉ざしたままではないだろう(Bolton may not go quietly

 

トランプ大統領がボルトン解任を発表してから数分後に、ボルトン自身が衝撃を与えた。彼はトランプ大統領の説明に対して反論を行い、人々を驚かせた。

 

トランプ大統領はツイッター上で、「私は昨晩、ジョン・ボルトンに対してホワイトハウスで働いてもらうことはこれ以上必要ではないと通知した。火曜日の朝にボルトンの辞任を受け入れた」と書いた。

 

ボルトンはトランプ大統領の発表から10分後にツイートをし、「私は昨晩辞任を申し出て、トランプ大統領は“そのことについては明日話そう”と言った」と書いた。

 

ボルトンは複数の記者たちに対して、退任はボルトン自身の決断だったと伝えている。

 

ホワイトハウスの幹部職員たちは記者たちに対して火曜日の朝にボルトンが辞任したことを認めるだろうが、ボルトン退任の詳細について記者たちと話すことはないだろう。

 

ボルトンは自分の主張を明らかにする場所と立場を維持している。彼は以前にはフォックスニュースでコメンテイターをしていた。彼は政界で信頼を得られるだけの経歴を持ち、自身の退任について自己弁護する連絡を記者たちに行ったことで明らかなように、ワシントンのメディアに幅広い人脈を持つ。

 

トランプ大統領がこれからの数日もしくは数週間の間に、ボルトンに対する批判を続けると、ボルトンはトランプ大統領の話と自分の話の食い違いについて批判や説明を行うことで反撃することになるだろう。ボルトンが自身の主張を続けることがホワイトハウスにとっては頭痛の種となるであろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領がジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官を解任しました。ボルトンは自分から辞任したと述べていますが、実質的には更迭、馘首です。

 

 現在、ホワイトハウスの国家安全保障担当ティームで、国家安全保障問題担当大統領補佐官と国家情報長官が空席になっています。国家情報長官はアメリカ政府の各情報機関を統括します。ダン・コーツ国家情報長官は2019年8月15日に辞任しました。国家安全保障問題担当大統領補佐官はトランプ政権発足3年間で3名が辞任しました。

 

 国家安全保障問題担当大統領補佐官と国家情報長官の後任についての予測記事をご紹介します。国家安全保障問題担当大統領補佐官の候補者としてリチャード・グレネル(Richard Grenell、1966年―、52歳)です。現在は駐ドイツ米国大使を務めています。


richardgrenelldonaldtrump001
グレネルとトランプ大統領

 

 グレネルはハーヴァード大学行政学大学院修了後に、複数の共和党の連邦議員のスタッフを務めました。そして、ジョージ・W・ブッシュ政権下の2001年から2008年にかけて、国連の米国代表部の報道官を務めました。この時に2005年から国連大使を務めたジョン・ボルトンの知己を得ました。その後はメディア関係のコンサルタントを務めながら、保守系メディアに出演してきました。2017年にトランプ大統領はグレネルを駐ドイツ米国大使に任命しました。

 

 記事にある通り、グレネルは強硬姿勢でドイツに対してアメリカの要望を次々と押し付けることに成功しており、その剛腕ぶりが評価されて国家安全保障問題担当大統領補佐官起用があるのではないかと言われています。アメリカの利益をイデオロギーよりも優先させることが出来る人物でもあるということも起用の理由となるということです。

 

 マイク・ポンぺオ国務長官はブライアン・フック(Brian Hook、1968年―、51歳)を推すだろうということです。フックは現在イラン担当特使を務めています。フックはコンサルタントを務めた後、ジョージ・W・ブッシュ政権下で国務次官補を務めました。2012年の大統領選挙で共和党候補となったミット・ロムニーの外交顧問を務めました。2017年から1年ほどは国務省政策企画本部長(Director of Policy Planning)を務めました。政策企画本部長は重要ポストであり、これを務めた人物は後により重要な職位に就くことが多いです。フックは介入主義的な考えを持っており、そのために2016年の段階でトランプ大統領を批判したということで、国家安全保障問題担当大統領補佐官起用の可能性は低いのではないかと言われています。


brianhook001
 
フック

 

国家情報長官の候補者としてピート・ホークストラ(Pete Hoekstra、1953年―、65歳)の名前が挙がっています。ホークストラはミシガン州第2選挙区で9期連続当選(1993―2011年)しました。連邦下院議員時代には情報・諜報分野の専門家で、連邦下院情報・諜報委員下院の委員長を務め、民主、共和両党から尊敬を集めていたということです。連邦下院議員引退後は、ヘリテージ財団の研究員を務めました。そして、自身のルーツもオランダということもあり、トランプ大統領からオランダ大使に任命されました。オランダ大使となった後に、反イスラム発言で謝罪に追い込まれました。


petehoekstradonaldtrump001
ホークストラとトランプ大統領

 

 こうした人物たちが国家安全保障ティームに参加することになっても、これまでと何か大きく変わるのだろうかということがはなはだ疑問です。ボルトンと基本的な考えがあまり変わらない人たちのようですから、大きく変わらないだろうと思います。ただ、アジアよりもヨーロッパや中東に強い人たちのようですから、アジア、特に中国に対しての敵対的姿勢は弱まるのではないかと思います。トランプ大統領は中国を宥めるためにボルトンを切ったということになるでしょうが、後任の人たちを見ると、イランには引き続き強硬姿勢ということになるでしょう。

 

 それではイランとアメリカが直接戦うかというとそうでもなくて、イスラエルとサウジラビアが呉越同舟の形でイランと戦うということになるのではないかと思います。サウジアラビアの石油製造施設がドローン攻撃で破壊されたということですが、イランのバックにはドローン技術を急速に発達させている中国がおり、支援するということになります。お互いにドローンを飛ばし合い、ミサイルを飛ばし合うということになるでしょう。

 

 アメリカにはそれを止める力があるとは思えません。こうして世界の秩序の再編成が始まっていくのではないかと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

ボルトン退任後のトランプ政権の安全保障担当ティームに入るであろう2人の人物の名前(Two names who would give Trump an all-star security team after Bolton

 

ジョン・ソロモン筆

2019年9月11日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/460829-two-names-who-would-give-trump-an-all-star-security-team-after-bolton

 

トランプ大統領が好きであっても嫌いであってもどちらでもよい。ドナルド・トランプ大統領は外交政策に関して、自分自身が何を望んでいるのかを正確に分かっている。トランプ大統領は世界におけるアメリカの戦略的利益とは何かについての明確な定義と「戦争は常に最終手段なのだ」という主張を欲している。

 

トランプ大統領のこれら2つの目的に対する頑固なまでの信奉は時に、彼を批判する人々からはナショナリスティックでありまた非介入主義的だと嘲りを受けている。

 

しかし、一定年齢以上の人々であれば覚えているだろうが、これらの諸原理は長い間アメリカの外交政策の基盤となっていた。しかし、ビル・クリントンとバラク・オバマがイランに対する融和策の誘惑に負け、ジョージ・W・ブッシュがアメリカを容赦のない好戦的な世界の警察官としてしまったことで、これらの諸原理がアメリカ外交の基盤であった時代は終わった。

 

これまでの20年間のアメリカの外交政策は暗いものであった。そして、それぞれの国際的な問題におけるアメリカの国益の定義づけを行うことから、より人気取りな、好戦的なアプローチを採用することへと変化していった。これによってブッシュ大統領のイラクの大量破壊兵器に関して誤った主張やシリア国内の内戦に対して無責任な対応のような失敗が起きた。

 

火曜日、ジョン・ボルトンが国家安全保障問題担当大統領補佐官から退くことが発表された。トランプ大統領は外交政策におけるアメリカの戦略的な利益を再構築し、これから国際社会をリードしていくための明確な国際的なドクトリンを構成することが出来る、稀有な機会に恵まれることになった。

 

しかし、そのためには彼がこれまであまり成功してこなかったことをやらねばならない。それは適切な人物を選ぶことだ。

 

ネオコンのボルトンのような、メディアが注目する人物が適材ではない。また、ケリー、マクマスター、マティスのような制服組も適当ではない。また、ダン・コーツのようなエスタブリッシュメントとの妥協が政権内で最もうまく働くことになった。

 

大統領の政策ヴィジョンを共有し、少なくとも個人的なエゴを抑えて大統領の計画を実行することが出来る、決意、明快さ、能力を持つ人物を抜擢するべきだ。

 

新しく司法長官に任命されたウィリアム・バーは、ロシアの「通謀」事件の大失敗の後、一貫性のない司法省を掌握するにあたり、これまでとは異なるアプローチで成功した。マイク・ポンぺオ国務長官もまた前任のレックス・ティラーソンの外交上の失敗、ティラーソンの前歴をかけて言えば石油流出にうまく対処することができた。

 

トランプには2人の候補者がいる。両者ともに連邦上院で他の職位に既に承認されている。両者とも空席になった国家安全保障問題担当大統領補佐官と国家情報長官に就任してその重要な役割を果たし、バーとポンぺオが行ったような立て直しを行うことが出来る。

 

1人目の候補者はリチャード・グレネルだ。グレネルは現在駐ドイツ米国大使を務めている。彼はヨーロッパ連合を率いている女傑アンジェラ・メルケルの世界における影響力を削ぐこと、アメリカの戦略上の勝利を次々とドイツから引き出すことに能力を発揮してきた。

 

ベルリンに赴任してすぐに、グレネルは重量級のボクサーのような破壊力のあるパンチを繰り出した。ニューヨークで長年にわたり暮らしていたナチスの強制労働収容所の看守を務めた95歳の男性の引き渡し問題で、ドイツ政府は腰が引けた姿勢を取っていたが、グレネルの強烈な働きかけで最終的にアメリカ側に対して引き渡しを要求させた。

 

これまでのアメリカの各政権は自分たちの仕事を成し遂げてきたと主張してきた。トランプとグレネルは成功を収めてきた。

 

グレネルは更に次のようなことを行った。

 

・無気力なNATOへの支出について条件をつけることでヨーロッパ各国の指導者たちを苛立たせたが、これはトランプ大統領の重要な戦略的な目的であった。

 

・ドイツ政府を説得し、アメリカからの液化天然ガス輸入のための新しい施設を建設させた。

 

・ドイツ政府に容赦なく圧力をかけノードストリーム2として知られるロシアからの新しい天然ガスパイプライン建設に抵抗させた。

 

・ドイツ政府に対して圧力をかけてドイツ国内にイラン航空の就航を差し止めさせることに成功した。

 

そして今週になってグレネルはトランプ大統領の権威を使って、ドイツ国内でヒズボラが活動することを禁止することに抵抗しているドイツに圧力をかけて、抵抗を軟化させた。

 

グレネルの業績リストを見ると、グレネルはトランプ大統領が望むものを達成することが出来ると証明されている。グレネルはそれを相手に条件を付けさせないで、豪腕で勝利を手にする。グレネルはトランプ大統領と同じくらいにツイッターを愛用しているが、これによって人々との自然で密接な関係を作り上げている。

 

ボルトンの弟子であるグレネルは師匠であるボルトンがある時にはまったく見せることがなかったある特性を持っている。それはイデオロギーよりも実践的な戦略的利益を優先する能力である。ボルトンも多くの機会にこの素晴らしい能力を見せたが、全くダメな時もあった。

 

私の取材源によれば、ボルトンは、ヴェネズエラの争乱が起きている時でもアメリカの石油・エネルギー企業は同地に留まるべきだという考えに強く反対した、ということだ。ボルトンにとってこれは譲れない線だった。しかし、トランプ政権内の国家安全保障担当ティームの構成員のほとんどにとっては、マドゥロ政権が崩壊するまでアメリカのビジネス利益を確保し続けることの重要性の方が優先されるべきであった。それはロシアと中国にヴェネズエラにおける戦略的な既得利益を横取りされないようにするためだった。

 

このような機会を見分ける能力が国家安全保障問題担当大統領補佐官にとって重要だ。

 

ポンぺオはトランプ大統領に対して自分と考えの近い仲間を国家安全保障問題担当大統領補佐官に就けて欲しいと強く要望する可能性がある。その代表格がイラン危機に関する特使を務めるブライアン・フックだ。ポンぺオの発言は常に重要視されるが、フックを補佐官に任命することは、トランプ大統領を批判してきた人物を信頼が必要な職位につけることになるが、これでは大統領がこれまで犯してきた複数の失敗をまた繰り返すことになるだろう。

 

フックはジョン・ヘイ・イニシアティヴ創設に貢献した。このグループは2012年の大統領選挙の候補者だったミット・ロムニー陣営の外交政策アドヴァイザーたちで結成された。ジョン・ヘイ・イニシアティヴは2016年、121名の保守陣営の指導者たちが署名をした重要な書簡を発表する際に、組織化に貢献した。書簡の中には、トランプ大統領はアメリカの安全を損なうことになるだろうと書かれていた。フック自身は書簡に署名しなかったが、彼はトランプ大統領に対しての批判を隠さなかった。

 

フックはイラン問題において素晴らしい仕事をしている。しかし、国家安全保障問題担当大統領補佐官よりも現在の職位に留まる方がより良い仕事が出来るだろう。なぜなら、フックは過去にトランプ大統領を批判しており、そのために国家安全保障問題担当大統領補佐官になっても人々を指揮するための権威を持てない可能性が高い。

 

グレネル同様、ヨーロッパの国の大使を務めている人物で空席となっている国家情報長官に就任すると言われている人物がいる。それは元連邦下院議員で現在は駐オランダ米国大使を務めているピーター・ホークストラである。

 

ダン・コーツはトランプ大統領と意思疎通が出来ていなかった。そして重要な透明性を確保する機会をことごとく逸した。そのためにロシア疑惑の捜査の際に問題が噴出した。その中には連邦議会による重要な事情聴取の機密解除という不手際も含まれている。

 

ホークストラは連邦下院議員時代に、連邦下院情報委員会の委員長として民主、共和党双方から尊敬を集めていた。彼は情報関連コミュニティに理解があり、トランプ大統領の信頼も大きい。ホークストラは物事を実行する際に常識を重視する中西部出身者特有の特徴を持っている。中西部出身者は個人的な栄光を求めない特性を持っている。

 

イラン、ヴェネズエラ、北朝鮮、ロシア、シリアやその他の国際問題に関して、トランプ大統領には、一つの方向に向かって進む、まとまった、能力の高い国家安全保障担当ティームが必要である。

 

トランプ大統領が2人の人物を適材適所で抜擢できると、問題となっている国に対するアメリカの利益を定義するためのトランプ・ドクトリンを固め、アメリカの軍事力を問題解決のための最終手段として取っておくことが出来るようになる。そうすることで、トランプ大統領は大統領選挙候補者時代の別の公約を実現することが出来るだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ