古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ジョン・ボルトン

 古村治彦です。

 

 日本時間の昨日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長・朝鮮人民共和国国務委員長に書簡を送り、6月12日にシンガポールで開催予定だった米朝首脳会談を中止すると通告しました。私は最初、「延期なのかな」とのんきに考えていましたが、「postpone(延期)ではなく、cancel(中止)である」と分かり、驚きました。延期ならば、現在までの準備と枠組みで開催される可能性は残りますが、中止となると、これは米朝首脳会談開催の可能性はほぼなくなったということになります。

 

 以下にトランプ大統領が金委員長に宛てた書簡の文面と拙訳、関連記事を貼り付けます。

 

 今年3月に韓国の大統領補佐官が平壌を訪問し、金委員長と会談し、その直後に補佐官がホワイトハウスを訪問し、米朝首脳会談開催提案をトランプ大統領に伝え、トランプ大統領が承諾してから事態は大きく動き始めました。金委員長は指導者となって初めての外遊として中国の北京を訪問し、習近平国家主席と会談しました。また、4月には南北首脳会談が開催され、融和ムードが一気に高まりました。

 

 しかし、5月に入って金委員長が中国の大連を訪問し、習近平国家主席と再び会談を持ってから、状況は変化し始め、5月中旬には北朝鮮が予定されていた南北閣僚級会談の中止を発表し、合わせて韓米合同の空軍演習を軍事的挑発行為だと非難し、米朝首脳会談開催を再考しなければならないと発表しました。

 

 それ以降も、ジョン・ボルトン国家安全保障問題担当大統領補佐官の発言やマイク・ペンス副大統領の発言に北朝鮮が不快感を表明し、米朝首脳会談の開催を再考するということが続き、ついに米朝首脳会談は、延期ではなく中止ということになりました。

 

 北朝鮮はボルトン補佐官の「リビア型」という言葉に非常に神経を尖らせていました。リビア型とは2003年に当時のリビアの指導者ムアンマール・カダフィ氏とアメリカで合意したもので、全ての核兵器やミサイル兵器を廃棄する代わりに経済援助を行うということでした。実際にリビアは経済援助や海外、特にイタリアからの投資もあり、経済的に順調になりました。しかし、2011年のアラブの春で、民主化運動が発生し、カダフィ氏は権力の座から追われ、最終的に殺害されました。また、リビアは不安定な状況に陥るということになりました。

 

 北朝鮮としては、核兵器を放棄することで経済援助を得られてもそれは一時的なことで、最終的にはアメリカの支援を受けた民主化運動によって体制転覆が行われるという恐れを持っているようです。そうなれば、現在の北朝鮮の支配階級やエリート階級の人々は、人々の恨みによる復讐の対象になって、生命の危機にさえ晒されることになりますから、核兵器を手放すということはなかなか難しいことです。ミャンマーの軍事政権はここのところでうまく退いたと思います。恐らく中国の助言を受け入れてさっと後ろに引いたということだと思います。アウンサン・スー・チー女史は政治運営・国家運営の大変さを実感していることでしょう。

 

 アメリカとしては、北朝鮮が韓国と中国を巻き込んでブロックを形成し、アメリカと対等と交渉しようとしたことに不快感を持っていたことでしょう。今週、韓国の文在寅大統領がホワイトハウスを訪問し、米韓首脳会談が行われました。その直後に会談の場に記者たちが招き入れられ、懇談会形式になったところで、トランプ大統領は文大統領が隣にいるのに、「米朝首脳会談がうまくいかない可能性が大いにある」と述べました。これでは文大統領の面目は丸潰れ、融和ムードを演出してきた韓国側に冷水を浴びせかけることになりました。

 

 また、トランプ大統領は金委員長が中国を訪問してから態度が変わったとわざわざ述べて不快感を表明しました。こうして、中朝韓のブロックに痛撃を与えて、あくまで主導権はアメリカにあるのだということを示しました。

 

 アメリカにとっては北朝鮮や韓国は問題ではなく、中国こそが朝鮮半島の非核化の重要な相手ということになります。日本も韓国も北朝鮮も当事者にはなり得ません。しかし、朝鮮日報の記事にあるように、韓国も日本もアメリカが北朝鮮攻撃をする場合にはお金を出させられるということです。これが従属国の悲しい現実です。日本のネトウヨと呼ばれる人々は、喜んで出せ、何なら少し寄付しようか、くらいに思っているでしょうか、何ともおめでたい人々です。

 

 そして、今回のトランプ大統領から金委員長宛てに出された書簡は慇懃無礼の典型例であり、挑発的でもあります。しかし、そもそもは「米朝首脳会談がうまくいかない可能性」について言及したのは北朝鮮です。「そう、そんなにいろいろと言うなら止めましょう」とアメリカが言う余地を与えてしまいました。

 

 この手紙で言いたいことは、「いつの日かあなたに会えることを楽しみにしています。その時には私は勝者、あなたは敗者として命乞いをしているでしょう」「全面的に降伏して、無条件で降伏する(核兵器とミサイルをアメリカが検証し監視できる状態で完全廃棄すること)気になったら会っても良いですよ」ということです。

 

 これはいわゆる最後通牒であり、日本人にとってなじみ深いもので例えれば、太平洋戦争開戦直前に、アメリカのコーデル・ハル国務長官が日本に発した「ハルノート」です。

 

 北朝鮮はこの書簡を受けて、しばらくアメリカに再考の時間を与えると反応しています。そう述べるしかないでしょう。頼みの中国に相談しているかもしれません。中国がアメリカとの関係を致命的なまでに悪化させてまで北朝鮮を擁護するのかどうかということになりますが、これは難しいでしょう。ロシアも同じです。「あなたたちは少し調子に乗りすぎてしまったんじゃないですか、こちらに頼られても困るんですよ」というのが中露の対応になるでしょう。

 

 「米朝首脳会談による朝鮮半島の非核化」という枠組み、スキームが消え去りました。残ったのは、「アメリカの国家安全保障上の脅威となっている北朝鮮の核兵器とミサイルの除去をどう行うか」ということです。北朝鮮が追い求めていた「核兵器を持つ大国として承認されて、この核兵器を取引材料にして、自国に有利な交渉を行い、合意を達成する」ということは現時点ではうまくいかないことになりました。アメリカは既に軍事行動を示唆するような動きを見せています。アメリカの北朝鮮に対する軍事行動を制止できるとすれば中国だけです。

 

ここで中国が「アメリカの参加する形での北朝鮮の核兵器とミサイルの完全廃棄を私の責任でやります。もし北朝鮮がそれを裏切って核兵器を何とか秘匿しようなどとしたら私たちがアメリカも承認する形と内容で懲罰します」と言えれば、アメリカは軍事行動をはしないでしょうが、これでは北朝鮮の全面降伏と一緒です。そして、中国は嫌な仕事を押し付けられることになります。

 

 融和ムードの中で見えなかった北朝鮮は追い詰められているという現実が顕わになってきました。この融和ムードを作った人々に現状の大きな責任があると私は考えます。楽観主義は私たちを殺す(Optimism kills us all)ということを改めて学ぶ機会となりました。

 

(貼り付けはじめ)

 

朝鮮民主主義人民共和国国務委員長

金正恩閣下

ピョンヤン

 

親愛なる委員長

 

私たちは、私たちとあなた方の両者が長い時間をかけて実現を追い求めた首脳会談に関連する私たちとあなた方の間で最近まで行った交渉や議論に対するあなたのかけた時間、忍耐、努力に大いに感謝いたします。首脳会談は6月12日にシンガポールで開催される予定になっていました。私たちは首脳会談を北朝鮮が求めていると知らされた立場です。しかし、私たちにとって知らされた側であるということは全くもって重要なことではありません。私はあなたと共にその場に立つことをとても楽しみにしていました。悲しいことですが、あなた方のごく最近の声明の中で示された多くの怒りと敵意を基に考えて、私は、この長い時間をかけて計画されてきた首脳会談を現時点で開催するのは不適当だと考えます。従いまして、本書簡をもちまして、両当事者の利益となるでありましょうが、世界にとって害悪となるであろうシンガポールでの首脳会談を開催しないことを表明いたします。あなたは核兵器についてお話になっています。しかしながら、私たちの持つ核兵器は巨大で強力なものであり、それらを使わないで済むことを神に祈ります。

 

私は、私とあなたとの間で素晴らしい対話がなされる準備が出来つつあると感じていました。究極的には私とあなたの対話こそが重要でありました。いつの日か、あなたにお目にかかれることを楽しみにしております。一方、私は人質を解放してくださったことに感謝をしたいと思います。彼らは現在家に戻り、家族と暮らしています。人質解放は美しい行動でありました。私はそのことに深く感謝いたします。

 

もしあなたが今回の重要な首脳会談と関連のあることで考えを変えたら、いつでも私宛てに電話や手紙をいただきたく存じます。世界は、そして特に北朝鮮は、平和の継続と大きな繁栄や富を得るための絶好の機会を失いました。今回の機会が失われたことは歴史上、真に悲しい瞬間となります。

 

敬具(心を込めて)

 

アメリカ合衆国大統領

ドナルド・J・トランプ

 

=====

 

His Excellency

Kim Jong Un

Chairman of the State Affairs Commission

of the Democratic People's Republic of Korea

Pyongyang

 

Dear Mr. Chairman:

 

We greatly appreciate your time, patience, and effort with respect to our recent negotiations and discussions relative to a summit long sought by both parties, which was scheduled to take place on June 12 in Singapore. We were informed that the meeting was requested by North Korea, but that to us is totally irrelevant. I was very much looking forward to being there with you. Sadly, based on the tremendous anger and open hostility displayed in your most recent statement, I feel it is inappropriate, at this time, to have this long-planned meeting. Therefore, please let this letter serve to represent that the Singapore summit, for the good of both parties, but to the detriment of the world, will not take place. You talk about nuclear capabilities, but ours are so massive and powerful that I pray to God they will never have to be used.

 

I felt a wonderful dialogue was building up between you and me, and ultimately, it is only that dialogue that matters. Some day, I look very much forward to meeting you. In the meantime, I want to thank you for the release of the hostages who are now home with their families. That was a beautiful gesture and was very much appreciated.

 

If you change your mind having to do with this most important summit, please do not hesitate to call me or write. The world, and North Korea in particular, has lost a great opportunity for lasting peace and great prosperity and wealth. This missed opportunity is a truly sad moment in history.

 

Sincerely yours,

 

Donald J. Trump

President of the United States of America

 

=====

 

●「対北軍事行動の費用を韓日が負担、トランプ大統領が可能性を示唆」

 

2018/05/25 08:29 朝鮮日報

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/05/25/2018052500782.html

 

 トランプ米大統領は24日(現地時間)、ホワイトハウスで金融規制緩和関連法案に署名するのに先立ち、612日に予定されていた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談を中止したことについて語った。同大統領は「ジェームズ・マティス国防長官と合同参謀本部と話した」「必要ならば、全世界で最も強力で、最近さらに強化された我が軍が準備できている」と言った。

 

 さらに、トランプ大統領は「韓国と日本と話した」「北朝鮮が愚かで無謀な行動をするなら、韓国と日本が準備できているのはもちろん、不幸な状況が必然的に起こった場合は作戦中に米国に発生するコストや財政的コストのかなりの部分を喜んで引き受けるだろう」と、軍事作戦を展開する場合は韓国と日本が費用を分担するだろうと述べた。

 

キム・ナムヒ記者

チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版

 

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●「北朝鮮第1外務次官「予想外で非常に遺憾」米に再考促す」

 

ソウル=武田肇20185250842分 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASL5T2QVXL5TUHBI00H.html?iref=com_alist_8_03

 

 北朝鮮の金桂寛(キムゲグァン)・第1外務次官は25日、トランプ米大統領が6月12日の米朝首脳会談中止を明らかにしたことについて、「予想外であり、非常に遺憾だ」とする談話を発表した。「我々はいつでもどんな方法でも向き合って問題を解決する用意がある」と強調し、事実上、再考を促している。朝鮮中央通信が伝えた。

 

 金次官は談話で「我々はトランプ大統領が過去のどの大統領もできなかった英断を下し、首脳の出会いを作るために努力したことを内心、高く評価してきた」と言及。「我々の国務委員長(金正恩〈キムジョンウン〉朝鮮労働党委員長)も準備に向けてあらゆる努力を傾けてきた」と強調した。

 

 金次官は16日、米国側が求めた非核化の方式に不満を示し「一方的に核放棄だけを強要しようとすれば、来たる朝米首脳会談に応じるか再考するほかない」との談話を発表し、トランプ氏が会談に後ろ向きになる転機となった。(ソウル=武田肇)

 

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●「米朝首脳会談中止は「極めて遺憾」、北朝鮮」

 

5/25() 8:07配信 AFP=時事

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180525-00000004-jij_afp-int

 

AFP=時事】北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は25日、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が6月に予定されていた米朝首脳会談を中止すると発表したことは「極めて遺憾」だとする北朝鮮の金桂冠(キムゲグァン、Kim Kye Gwan)第1外務次官の声明を報じた。

 

 金第1外務次官は声明で、首脳会談中止が突然発表されたことは北朝鮮にとって予想外であり、極めて遺憾だと言わざるを得ないとした上で、北朝鮮としては問題解決のため、いつ、いかなる形ででも直接会談する意向があることを改めて米側に伝える、と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News

 

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●「トランプ氏、米朝会談を中止 北朝鮮の「愚かな」行動に警告」

 

5/25() 3:37配信 AFP=時事

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180525-00000000-jij_afp-int

 

AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は24日、6月に予定されていた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長との首脳会談を中止すると表明した。北朝鮮が「すさまじい怒り」と「敵意」を示したことが会談中止の理由としている。

 

 トランプ大統領は金委員長宛ての書簡で、シンガポールで612日に予定されていた史上初の米朝首脳会談の中止を通達。この前日には、北朝鮮がマイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領を「無知でばかげている」と非難し、態度を硬化させていた。

 

 トランプ大統領はその後、ホワイトハウス(White House)で会見し、北朝鮮が「愚かな、または無謀な行動」を取った場合、韓国と日本が米国と共に対応する準備ができていると述べた。

 

 トランプ大統領はまた、制裁を通して北朝鮮に「最大の圧力」をかけ続けると表明。一方で、金委員長との会談は依然として実現可能だとの考えを示し、自身は会談を待ち望んでいたと強調した。【翻訳編集】 AFPBB News

 

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●「米副大統領の発言「無知でばかげている」 北高官、会談再考を警告」

 

2018524 10:38 発信地:ソウル/韓国 AFP通信

http://www.afpbb.com/articles/-/3175763?utm_source=yahoo&utm_medium=news&cx_from=yahoo&cx_position=r1&cx_rss=afp&cx_id=3175906

 

524 AFP】(更新)北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ、Choe Son-hui)外務次官は24日、来月に予定される米朝首脳会談で米政府を手玉に取ろうとするのは「大きな過ち」だと北朝鮮側に警告したマイク・ペンス(Mike Pence)米副大統領の発言について、「無知でばかげている」と厳しく非難し、会談を中止する可能性に言及した。

 

 ペンス副大統領は21日、米FOXニュース(Fox News)とのインタビューで金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長に向け、来月シンガポールで開催予定の米朝首脳会談で「ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領を手玉に取れると考えるのは大きな過ちになる」と述べた。

 

 さらに、リビアの最高指導者だった故ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐が核開発計画の放棄に同意した数年後に反体制派の蜂起で殺害されたことに言及し、北朝鮮も同じ命運をたどる可能性があると指摘した。

 

 

 この発言について崔氏は、北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)を通じ、「米副大統領の口からそのような無知でばかげた発言が飛び出すとは、驚きを隠せない」との声明を発表。「抑制の利いていない、厚かましい発言だ」と激しく非難した上で、「米国が同じ席に着くことを望まないのなら、わが国は対話を懇願することも、わざわざ説得することもしない」と述べ、米朝首脳会談の再考を金委員長に進言する可能性に言及した。(c)AFP

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 北朝鮮の非核化に関して楽観主義を戒める少し古い記事をご紹介します。

 

 この記事はちょうど南北首脳会談が終わり、北朝鮮が核実験場を閉鎖すると発表した頃に書かれたもので、その当時の融和ムードを考えると、これだけ冷静に分析が出来ていることに敬意を表したいと思います。5月に入って既に3週間以上経過していますが、事態は融和ムードから変化しています。

 

 この記事でも指摘されていますが、検証可能な非核化というのは、きちんと専門家などによって「封印」がなされ、必要ならば封印が守られているのか監視作業が継続されることです。本日、北朝鮮は核実験場のトンネルを爆破したということですが、残念なことですが、それだけで実験場が使用不可能になってこれからも使用しないという保証にはなりません。これまでの北朝鮮の行動を考えると、この爆破で北朝鮮は核実験場を閉鎖したと考えるのは楽観的過ぎるということになります。

 

 また、核兵器の放棄について金正恩委員長は明言していないということも記事の筆者であるジェリー・ルイスは指摘しています。ですから、朝鮮半島の非核化と北朝鮮の核兵器の完全放棄は実はとても困難な作業の連続であり、かつ、そのことを条件にしてアメリカが北朝鮮と交渉することは、アメリカのこれまでの政策の敗北ということになります。

 

 このように考えると、明るい将来を思い描くことは良いにしても、現状を楽観主義で見てしまうのは危険が大きいということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

朝鮮半島を巡る楽観主義は私たちを失望させるだろう(Optimism About Korea Will Kill Us All

―平和に向けた第一歩は多くの人々の期待を下回るだろう

 

ジェリー・ルイス筆

2018年4月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/04/30/optimism-about-korea-will-kill-us-all/

 

先週の南北首脳会談、北朝鮮の指導者金正恩の核実験施設を5月までに「閉鎖」するという宣言は好感を持って広く受け入れられた。熱狂的な大騒ぎはあったが、アメリカ製人北朝鮮政府との間の関係は危険な瞬間を迎えている。私たちが持つ希望が私たちの生き残りを邪魔するかどうかの瀬戸際に私たちは立たされている。

 

北朝鮮の核実験施設が使用不可能の状態だ、もしくは核実験施設が置かれている山が崩壊したという広く受け入れられている見方について考えてみよう。こうした情報はある意図を持ったものだというのは相場が決まっている。この見方の根拠になったとされる2つの学術論文はインターネット上からダウンロードできる。しかし、読んでみると、これらの論文にはそのようなことは書かれていないのだ。論文の内容によると、2017年9月に北朝鮮が実施した大規模核実験の後に、核実験の爆発でできた空洞が自然に崩落したということだ。私たちはそのようなことが起きた可能性があることは既に知っている。もしそのようなことが起きたことを地震学の方法論で証明されるならばそれは素晴らしいことだ。

 

しかし、空洞の崩落と山の崩壊は山につながるトンネルが崩壊したことを意味しておらず、あくまで山が崩壊したことを示しているに過ぎない。この実験場の他に、同じ山の中に全く別の2つの地下実験施設があることは確認されている。金正恩自身がそのことを明らかにしている。「私たちが使用不能になった施設を破壊するに過ぎないのだと言う人々もいる。しかし、元々あったトンネルに加えて別の大きなトンネルが2本あり、これら2本のトンネルは良い状態にあることは訪問して実際に見てもらえれば分かることだ」と金正恩は発言している。しかし、西側の専門家たちは、北朝鮮の核開発プログラムの状態について自分たちが耳にしたい内容しか耳に入らない状態だ。それは政治的、もしくは彼らの理想に基づいた理由が彼らの中に存在するからだ。

 

ここまでの話で私たちは10年前に起きた状況を思い出すはずだ。この時、北朝鮮は寧辺の黒鉛原子炉の冷却塔を破壊することに同意した。冷却塔の破壊は大きな称賛の中で実現されたが、このことは当時のジョージ・W・ブッシュ(子)政権が北朝鮮と合意した内容にもともと入っていたものではなかった。しかし、ブッシュ政権は基本に立ち戻り、北朝鮮に対して冷却塔の破壊を求めた。その理由は、ブッシュ政権が「目に見えて、世界中に報道される形が必要であり、北朝鮮が核兵器保有の野望から退くことを確固とした証拠を示す必要がある」と考えたからだ。より簡潔に言えば、これはPRのためのポーズでしかなかった。そして、人々はこれに幻惑されてしまった。

 

ここに一つの問題が生じた。北朝鮮は冷却塔を再建することはなかったが、寧辺の原子炉を密かに再稼働させたのだ。このことを阻止できなかった。北朝鮮は原子炉を目立たないポンプ小屋につないだのだ。ポンプ小屋は人々の目の前で建設された。北朝鮮はシリアがアル=キバルで秘密裏に原子炉を建設することを支援したが、その時にも目立たないポンプ小屋が建設された。しかし、そこに冷却塔のような目立つ建造物が出現しなかったために、北朝鮮が原子炉を再稼働させていることに誰も気づけなかった。

 

金正恩が核実験施設の閉鎖を約束したが、現実的にはこれはあまり意味がないことだ。冷却塔の破壊の時と同じようなことになると考えられるからだ。核実験場に山の中に数棟の建物があり、山肌に水平に掘られた巨大なトンネルが複数存在する。核実験施設を閉鎖することだけでは、南アフリカが核実験施設を使用不能にしたことと同等の処置を行ったと言わざるを得ない。南アフリカは実験場の垂直換気シャフトにがれきを詰めた。カザフスタンのセミパラチンスクの核実験場におけるデレガン山地の閉鎖のようにすべきだ。この実験場の閉鎖に関して、ソ連がこの実験場を放棄した後にアメリカはその封鎖を支援した。廃品回収業者たちが実験場の封印を解き勝手に侵入するようになったため、アメリカは再び封印し、監視装置を設置しなければならなかった。北朝鮮は自国で核実験場を封印することができるが、封印を解くことも可能でもある。私たちは寧辺のポンプ小屋を監視し続けるべきだった。簡潔に言えば、北朝鮮は新しいトンネルを掘るための山や労働力に不足している訳ではない。

 

私は、北朝鮮が核爆発実験を終わらせ、核実験施設を閉鎖すると発表したことを喜んでいないと言うつもりはない。この発表は非常に素晴らしいものだ。しかし、何が起きているのか、そしてその意味することは何かを明確にすることが必要だ。北朝鮮は実験施設1渇所に関して山が崩壊したということを理由にしてそれを放棄してはいない。北朝鮮は金正恩が望むものを手に入れることを条件にして核実験の停止に合意した。3回目となった南北首脳会談でも金正恩からの核武装放棄提案はなされなかった。金正恩はこれまで一度も核兵器プログラムの放棄の確実な約束をしたことはない。南北共同宣言を注意深く読めば、韓国と北朝鮮が行ったのは核放棄を当然実行するものとして交渉のテーブルから外し、その代わりに核兵器は既に必要なものではないとする曖昧な願望を創出することであった。

 

 

南北首脳会談まで、金正恩はより穏健な段階を踏むことを同意している。それは、中距離、大陸間弾道ミサイル発射の一時停と核実験の停止である。これらもまた素晴らしいことだ。これらが実現すればアメリカの安全保障が純粋に改善したとして評価すべきだ。 しかし、北朝鮮がミサイルと核弾頭を完全に引き渡すまでは、アメリカが勝利するということにはならない。

 

金正恩は、いくつかの制限を受け入れることで尊敬されることの代わりに、北朝鮮が実質的に核保有した大国としての認知を求めて努力している。制限とは、ミサイル実験と核爆発実験の停止、核技術を他国へ提供しないことの合意、核兵器を使用しないという約束である。核武装している大国としての北朝鮮を受容して条件交渉を行うことは、数十年にわたるアメリカの政策からの完全な撤退ということになる。この撤退はやり過ぎであり、そのようなことをしても北朝鮮がICBMと核融合爆弾を開発してしまうことを防げないと私は確信している。私たちは北朝鮮をあるがままに受け入れることを学ぶ必要がある。私たちが学ぶべきあるがままの北朝鮮とは核武装している北朝鮮だ。

 

しかし、あるがままの北朝鮮を受容することは撤退であるため、私たちはそのことを素直に認めることが出来ないでいる。もしトランプがこのことを明確に述べたならば、私はこのお喋りな人種差別主義者であるトランプを支持することが出来る。しかし、トランプとその他の人々は、北朝鮮の核武装を認めることを北朝鮮の非核化に向けたルートのスタートと容認している。金正恩はこれまでの北朝鮮の指導者たちが述べてきた発言から全く逸脱していない。私たちの集合的な自己欺瞞の中で、私たちには驚くべき応援団が出現した。それは、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジョン・ボルトンだ。

 

ボルトンが多くのインタヴューに応じて、北朝鮮の核兵器が数か月の短期間で完全に廃絶できるという希望を振りまいているがその理由について質問することは価値があることだ。ボルトンは繰り返し「リビア型」合意を求めている。「リビア型」合意とは、アメリカが武器を集め廃棄し、インフラ整備を支援するということだ。そして、韓国政府高官たちは「トランプ大統領は、可及的速やかにかつトランプ大統領の任期が終わる2021年初頭までに“完全な非核化のための特定のタイムライン”を明確にしない限り、金正恩には会わないだろう」と述べている。

 

 

 

 

 

金正恩が期限を決めて核放棄をすると考えるのは狂った考えだと言える。金正恩がそのようなことに同意する意思を持っていると考える理由は存在しない。まず私たちは、金正恩が北朝鮮の「強力な宝刀」と呼ぶ核兵器を廃棄するとは提案していないという事実から始めねばならない。そして、ボルトンがこれまで北朝鮮に対して書き、発言した内容を考えると、ボルトンが、金正恩が核放棄をすると確信していると考えるだけの理由は存在しない。ボルトンが急に物分かりが良くなって妥協することなどない。ボルトンは何かを企んでいる。ボルトンの企みはトランプ大統領の期待を裏切るものだ。ボルトンは外交に反対して外交を失敗させようとはしないだろう。そうではなくて、ボルトンは外交を完璧に成功させようとして、外交を失敗させるだろう。リビア型の降伏の可能性を高めることで、金正恩が提示しているより穏健な解決は可能性が低くなるように思える。

 

ボルトンをはじめとする一握りの人々が行っているゲームは何とも皮肉でかつ危険なものだ。金正恩が核兵器を放棄しないことが明確になったら何が起きるだろうか?トランプはどう対処するのか? トランプの性格を考えると、彼は口汚く罵り、首脳会談の準備をした、自分が任命したマイク・ポンぺオ国務長官を非難し、ボルトンを重用するようになるだろう。トランプは既にその兆候を見せている。先日行われたある集会で、状況が悪化する前に、北朝鮮の核兵器を廃絶するための努力を続けていると声高に主張した。そして、次のように語った。「もし私が北朝鮮の核兵器を廃絶させられないならば、多くの国々や多くの人々にとって厳しい時期を迎えることになるだろう」。

 

このトランプの発言は、核戦争のリスクが高まり、韓国国民、日本国民、アメリカ国民の多くがそれに晒されるという状態を柔らかく表現したものだ。外交が失敗すれば、全ての人々、より正確には、ボルトンを除くすべての人々にとって厳しい時間を過ごすことになるだろう。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領がハーバート・R・マクマスターを解任し、ジョン・ボルトンを国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命して、1カ月ほどが経過しました。その間に、米英仏によるシリアへのミサイル攻撃がありました。北朝鮮情勢は対話路線が前面に押し出ている感じです。

 

 そうした中で、ホワイトハウスで国家安全保障問題担当大統領補佐官が主宰する国家安全保障会議(NSC)の構成がだいぶ変わっているようです。ジョン・ボルトン就任後に更迭や自発的な退任が続いていたようです。

 

 ボルトンはミラ・リカーデル(Mira Ricardel)は自分の下の次席補佐官に任命しました。リカーデルは、2017年3月に商務次官(輸出管理担当)となりました。そして、今回、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官に就任することになりました。

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ミラ・リカーデル 

 リカーデルはジョージタウン大学外交学部を卒業後、ボストン郊外にあるタフツ大学フレッチャー記念法・外交研究大学院で博士号を取得しました。ロナルド・レーガン政権で国務省の軍縮担当、ボブ・ドール連邦上院議員のスタッフ、ジョージ・W・ブッシュ政権で国防次官補代理、国防次官補臨時代理などを歴任しました。民間部門では、2006年から2015年にボーイング社の副会長(軍事部門、国際部門)を務めました。

 

 2016年、ドナルド・トランプの政権以降ティームに入り、国防政策部門を担当しました。トランプ政権内では商務次官を務めていました。今回、次席補佐官に就任しました。

 

 リカーデルは中央アジアやユーラシアを専門にしているようです。商務次官で輸出管理担当ということは、現在の貿易戦争の原因となっている関税政策にもかかわっているものと思われます。こうした点から反中国、反ロシア的な考えを持っているのだろうと推測されます。ネオコンのボルトンが選んだのですから、当然と言えるでしょう。

 

 私が気になったのはリカーデルが約10年にわたり、ボーイング社の副会長を務めていた点です。しかも軍事部門が長かったようですので、軍需産業の代表とも言える存在です。国家安全保障会議(NSC)を主宰するのは補佐官ですが、実際に準備を行うのは次席補佐官です。従って、これからアメリカの対外姿勢が強硬になっていくのだろうと思われます。

 

 北朝鮮問題は米朝首脳会談実現に向けて、マイク・ポンぺオCIA長官(次期国務長官)が訪朝したことで、かなり楽観的な雰囲気になっています。私は、トランプ大統領がポンぺオを訪朝させたのは、連邦議会での承認を得やすくするためもあり、また首脳会談の準備をしている、そのために強硬派であったポンぺオを行かせた、というジェスチャーを見せるものだったと思います。

 

 アメリカの対外政策を司る部門である国務省と国家安全保障会議の2つのラインで別々の方策、交渉と武力行使の準備をさせて、最終的にトランプ大統領がどちらかを選択するということになっているのだろうと思います。この2つの路線を競わせて最終的に自分で選ぶというのはトランプ大統領の常套手段です。ですから、交渉一辺倒になったと楽観視するのはまだ早いと思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

ジョン・ボルトンがミラ・リカーデルを次席補佐官に指名(John Bolton announces Mira Ricardel as deputy adviser

 

AP通信

2018年4月20日

http://uk.businessinsider.com/ap-john-bolton-announces-mira-ricardel-as-deputy-adviser-2018-4

 

フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチ発(AP通信)。ジョン・ボルトン国家安全保障門団体等大統領補佐官は現在、国家安全保障会議(NSC)の内部チェックと構成の変更を行っており、金曜日、ミラ・リカーデルが国家安全保障問題担当次席大統領補佐官に就任すると発表した。

 

リカーデルは3つの政権でそれぞれ国務省、国防省、商務省に勤務した。また、ボブ・ドール上院議員のスタッフを務めた経験を持つ。

 

ドナルド・トランプ大統領によってあ新たに国家安全保障問題担当大統領補佐官に任命されたボルトンはリカーデルを次席補佐官に選んだことについて、「アメリカと諸国の同盟関係、防衛態勢、技術に関する安全保障、外国に対する安全保障上の支援、国家安全保障問題幅広い基盤を持つ専門性、軍縮のような国家安全保障諸問題などの幅広い専門性」をその理由としている。

 

ボルトンはトランプ政権で3人目の国家安全保障問題担当大統領補佐官で、前任者はハーバート・R・マクマスターであった。

 

国土安全保障問題担当大統領補佐官であったトム・ボサートを含む国家安全保障問題担当の高官の多くがボルトンによって更迭、もしくはボルトンの補佐官就任を受けて自発的に退任している。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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今の巨大中国は日本が作った

※私の仲間である石井利明さんのデビュー作『福澤諭吉フリーメイソン論』が2018年4月16日に刊行されました。大変充実した内容になっています。よろしくお願いいたします。

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(仮)福澤諭吉 フリーメイソン論

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ米国大統領は次期大統領国家安全保障問題担当補佐官にジョン・ボルトンを指名しました。4月9日付で、ハーバート・R・マクマスター陸軍中将と交代します。マクマスターは補佐官辞任後に大将に昇進せずに退役するということになります。

 

 ボルトンの指名は外交関係者やアメリカ政治に詳しい人々を驚かせました。レックス・ティラーソン国務長官からCIA長官マイク・ポンぺオへの交代と併せて、トランプ政権の強硬姿勢を取ることを示すものです。

 

 ジョン・ボルトン(John Bolton、1948年―)は、歴代の共和党政権に参加しています。ドナルド・レーガン政権時代(1981―1989年)には米国国際開発庁と司法省に勤務しました。続く、ジョージ・HW・ブッシュ政権時代(1989-1993年)には国際連合担当国務次官補を務めました。ジョージ・W・ブッシュ政権時代(2001-2009年)には国務次官、2005年には米国国連大使を務めました。

 

 ボルトンはジョージ・W・ブッシュ政権の対外政策を牛耳ったネオコンの一人です。彼自身はネオコンと呼ばれることを嫌います。それは、ネオコンの第一世代が民主党員だった人たちが民主党に失望し共和党支持に転向した人たちであるのに対して、自分は一貫して共和党支持者であったということから、「転向者を源流とするグループに入れないで欲しい」という考えを持っているためです。しかし、外形的にはネオコンです。

 

 ネオコンはアメリカの価値観を世界各地に「輸出」し、世界中の国々を資本主義と民主政治体制の国々にすればアメリカに敵対する国はなくなるし、世界から戦争がなくなって平和になるという考えです。これは、共産主義を世界中に輸出しようとした旧ソ連の裏返し(ヨシフ・スターリンは一国社会主義建設を優先しましたが)ということが言えるでしょう。

 

 しかし、彼らはアメリカに友好的な非民主国家まで民主化しろとは言いません。ペルシア湾岸諸国や中央アジアには王政や独裁制の国々が多くありますが、それらの国々を攻撃して政権(体制)変更(転覆)しろとは言いません。あくまでアメリカに逆らう国々の政治体制を転覆させろということを主張します。

 

 2002年の一般教書演説で、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸(Axis of Evil)」と呼びました。そして、イラクには実際に侵攻し、サダム・フセイン政権を瓦解させました。フセインは最終的には死刑となりました。

 

 ブッシュ政権の後に成立したバラク・オバマ政権で起きたのがアラブの春です。アラブの春では偶発的な事件から反体制運動が北アフリカの国々で連鎖的に発生しました。この過程で、アメリカとヨーロッパに屈服し、大量破壊兵器とテロ活動を放棄していたリビアのムアンマール・カダフィが殺害されました。こうした動きを主導したのは、民主党内でネオコンのカウンターパートと言うべき、人道的介入主義派で、国務長官を務めていたヒラリー・クリントンでした。こうしたことは拙著『アメリカ政治の秘密』で明らかにしています。

 

 現在、悪の枢軸で残っているのはイランと北朝鮮です。北朝鮮に関しては急速な核開発を行い、アメリカにとって脅威となっています。それでも今年に入って、緊張緩和ムードになり、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長の首脳会談が開催されるということになりました。

 

 しかし、この開催の時期や場所がはっきりしない中で、国務長官がレックス・ティラーソンから現職のCIA長官だったマイク・ポンぺオに、大統領国家安全保障問題担当補佐官がハーバート・R・マクマスター陸軍中将からジョン・ボルトンに交代することになりました。ポンぺオもネオコンに近い人物であり、ネオコンによって対外関係の司令塔が独占されることになりました。トランプ大統領は常に2つの異なる考えを持つ人間たちをそれぞれ同様の力と権限を持つ役職に就けて、自分の考えを実行するときに2つの考えのうち、どちらかを選んで実行させるというやり方を取るということをやってきたと私は考えます。

 

 今回、国務省とホワイトハウスの対外関係部署をネオコンが抑えたということで、トランプ政権の対外姿勢は強硬になります。ボルトンは北朝鮮について強硬な主張をしていますので、緊張緩和ムードが大きく後退することになるでしょう。

 

 北朝鮮にしてみれば、ここで核兵器を手放すかどうかという決断を迫られますが、アメリカのこれまでの外交を考えると、核兵器を手放した時点で、金王朝は遅かれ早かれ崩壊させられるということを金正恩は考えるでしょう。手放してしまえば一時的な妥協が成立する(体制保障というアメリカの約束が反故にされる可能性が高い)、手放さなければまだアメリカがチキンゲームに負けて交渉に乗ってくる可能性がある(より良い条件で妥協が成立する可能性がある)となり、北朝鮮は核兵器を握りしめたままということになるでしょう。

 

 ボルトンは核兵器貯蔵施設や核開発関連施設に対する先制攻撃を主張しています。北朝鮮に対して先制攻撃であっても、先に攻撃をされてからの報復攻撃であっても、米軍が攻撃すれば、現在の北朝鮮の体制の転換というところまで進むことになるでしょう。

 

 ジョン・ボルトンの指名となってアメリカやヨーロッパでは、アメリカによるイランに対する攻撃があるのではないかという懸念の声が大きくなっています。イランに関しては、オバマ政権時代に核開発をめぐって合意が成立しました。しかし、ボルトンやポンぺオと言った人々はイランとの合意は失敗だったとしています。

 

 イランを怖がっているのはイスラエルで、核兵器を所有している両国間で戦争となれば核戦争まで行き着く可能性があります。イランがどれほどのミサイル能力を持っているのか分かりませんが、北朝鮮でもアメリカ本土に到達できるミサイルを開発できたとすると、イランも所有している可能性があると考えられます。北朝鮮もイランもロシアからの支援を受けているので、ある程度のミサイル開発技術をロシアからもらっているでしょう。

 

 中東での問題はより危険で複雑、ヨーロッパにも大きな影響を与えることから、トランプ大統領としては今の段階では関わりたくないでしょう。ですからボルトンとポンぺオの起用は対北朝鮮問題用のシフトということになります。

 

 私は北朝鮮問題が平和裡に解決できることを願っていますが、現実はその可能性が低くなっているのではないかと考えざるを得ない状況になっていると思います

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプは究極のタカ派(Uber-Hawk)のボルトンを大統領国家安全保障問題担当補佐官に指名(Bolton as National Security Adviser

―「爆撃、イランを爆撃」から北朝鮮に対する予防的先制攻撃まで、ブッシュ政権で高官だったボルトンはより好戦的な外交政策を主張している

 

コラム・リンチ、エリアス・グロール筆

2018年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/22/trump-taps-uber-hawk-bolton-as-national-security-adviser/

 

ボルトンは北朝鮮に対する予防的先制攻撃を明確に求め、イランの体制を変更させるために爆撃することを主張し、アフガニスタンにおける無制限の米軍駐留を求めている。ボルトンはまた台湾に米軍を駐留させるなど中国に対してより強硬な姿勢を取るように求めてきた。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権に参加したボルトンを含む共和党所属のネオコンサヴァティヴの人々は2003年にイラクの指導者サダム・フセインを追い落とすように主張した。しかし、他のネオコンの人々とは対照的に、ボルトンは民主政治体制と人権のようなアメリカの価値観を輸出することに関心を持ったことはこれまでほぼなかった。ボルトンはブッシュ政権において国務省高官と米国国連大使を務めた。

 

ボルトンはトランプ大統領と同様に国際的な取り決めを無視し、国際連合やヨーロッパ連合(EU)のような多極的な組織を見下し、政治的な敵を激しく非難している。ボルトンは回想録『ジョン・ボルトン:降伏は選択肢に非ず』の中で、EU官僚たちを「EUの病人たち」と繰り返し揶揄している。

 

ここ数週間、ボルトンが指名されるという噂が流れた。実際にボルトンの指名が発表されるとアメリカとヨーロッパの外交関係者たちは驚きと不安の声を発した。彼らはマクマスターの辞任とボルトンの就任によってアメリカは複数の争いに関与する道を進むことになるという懸念を持っている。

 

外交評議会(CFR)のマイカ・ゼンコは次のようにツイートしている。「ジョン・ボルトンはこれまでアメリカが戦ってきた全ての戦争を支持した。彼はアメリカが戦う際に何の制限もつけるべきではないと考え、イランと核武装した北朝鮮との体制転換のための戦争を支持している。恐ろしいことだ」。

 

4月初め、ボルトンは現在の大統領国家安全保障問題担当補佐官を務めるHR・マクマスター陸軍中将と交代する。マクマスターは辞任と引き換えに大将に昇進させてもらえるという噂が流れたが、実際位は中将のままで退役することになる。ホワイトハウスの関係者は今回の交代は「常に憶測を呼ぶティームではなく、実際に行動できる新しいティームを結成する」ためのものだと述べている。発足して1年ちょっとのトランプ政権で、ボルトンは3人目の大統領国家安全保障問題担当補佐官となる。

 

ボルトンの補佐官任命は連邦上院の承認を必要としない。ボルトンの指名によって、トランプ政権のタカ派的な姿勢が強まることになるだろう。トランプは大統領選挙期間中、アメリカの海外における冒険主義を制限するという公約を掲げた。しかし、トランプは大統領就任後、アメリカの外交政策に関してより軍事中心的なものとなっている。トランプと同じく、ボルトンはヴェトナムでの従軍を忌避するために進学をした。ボルトンはヴェトナム戦争を支持した。

 

これから世界各地の諸問題について見ていく。ボルトンの政策に関する主張はアメリカの外交政策を大きく変化させる危険性がある。

 

●イラン爆撃

 

ボルトンが大統領国家安全保障問題担当補佐官に指名された。ボルトンは長年にわたりイランに対する軍事行動を主張してきた人物で、そのような人物がトランプの側近となる。トランプは国務長官をレックス・ティラーソンからマイク・ポンぺオCIA長官に交代させた。このようにイランに対してタカ派的な態度を取る強硬派を運転席につけたのだ。

 

2015年のニューヨーク・タイムズ紙に掲載した論説のタイトルの中で、イランとの戦争を主張した。ボルトンは「イランの核爆弾を止めるために、イランを爆撃せよ(To Stop Iran’s Bomb, Bomb Iran)」と書いた。ボルトンはこれまでイスラエルが近隣諸国の原子力施設に対して予防的先制攻撃を行ってきたことを支持してきた。また、核兵器関連施設に対する軍事行動を主張してきた。更にはイランの政権を打倒するために反対派勢力を支援することも主張してきた。

 

ボルトンはイランの体制変更を強く主張してきた。ボルトンはイランの過激な反体制派グループであるムジャヒディン・ハルクを支持してきた。ムジャヒディン・ハルクはアメリカ政府からテロリスト組織として認定されている。それでもこの組織を支持している。ボルトンに2011年にブリュッセルで開催されたイヴェントに出席した。ボルトンはこのイヴェントでムジャヒディン・ハルクが掲げるイランの体制変更を「無条件に」支持すると語った。

 

2009年、ボルトンはイスラエルがイランに対して核兵器を使用することを支持した。ボルトンはシカゴ大学での演説中に次のように語った。「イスラエルがイランの核開発プログラムに対して核兵器を使用する準備をしていなければ、イランは近い将来、プログラムで開発した核兵器をイスラエルに対して使用することになるだろう」。

 

●北朝鮮

 

北朝鮮は核兵器とミサイル技術を急速に開発している。これを受けて、ボルトンは北朝鮮国内の核兵器を除去するために予防的先制攻撃を行うことを主張している。

 

先月、ボルトンは『ウォールストリート・ジャーナル』紙に寄稿した。その中で、ボルトンは北朝鮮への攻撃の時は今だと主張した。ボルトンは19世紀の砲艦外交を使いながら次のように書いている。「危機はすぐそこまで迫っている。北朝鮮に関するアメリカの諜報不足という点からも考えて、私たちは攻撃開始を引き延ばすべきではない。攻撃を引き延ばせば北朝鮮はアメリカ本土を確実に攻撃できる核兵器を開発してしまう危険がある。それは現在よりも更に危険な状態となる」。

 

このような攻撃は北朝鮮の韓国や東アジア地域の展開する米軍基地に対する報復攻撃を誘発することになるだろう。米軍関係者は北朝鮮の報復攻撃によって数千名規模のアメリカ人が死亡し、ここ数十年では見られなかった規模の戦争が起きるだろうと警告している。

 

ボルトンの予防的先制攻撃という強い主張がトランプ大統領と北朝鮮の指導者金正恩との朝鮮半島の非核化について話し合う最高首脳会談の開催計画とどれほど一致するのかについては明確にはなっていない。昨年、ボルトンは北朝鮮との直接交渉を「オバマ政権時代の政策の継続」だと批判した。

 

●中国

 

ボルトンに対しては中国政府から疑念の目で見られている。ボルトンは台湾の自己決定を強く主張しており、トランプ政権に対して、これまでアメリカ政府が堅持してきた「一つの中国」政策を見直すように主張してきた。ボルトンはまた台湾に対するアメリカらの武器売却を増加させるように求めている。更にはアメリカ軍の台湾駐留も主張している。これは、ダグラス・マッカーサー元帥の掲げた中国沿岸の「不沈空母」という考えを思い出させる。

 

対照的に、中国政府は国交を開封したニクソン政権以来、アメリカとの国交に関して「一つの中国」政策は交渉の余地のない要素だと考えている。

 

今週、中国の習近平国家主席は中国の領土を「1インチでも奪われないように」防衛するという印象的な演説を行った。彼の語った中国の領土には台湾も含まれている。

 

●イスラエル

 

ボルトンはイスラエルに対して全面的な支持を与えることが予期される。マクマスターは保守派の一部からイスラエルに対して十分に支持していないという激しい非難を受けていた。元イスラエル米国大使ダン・ジラーマンはある時、ボルトンを「イスラエルにとっての秘密兵器」と形容した。

 

●国際機関

 

ボルトンはアメリカにおいてマルタイカルチュアニズムに対して厳しい批判を行う人物の一人だ。また、アメリカの武器制限条約への参加やアメリカの軍事能力を制限することになるだろう国際的な協定について繰り返し疑問を呈している。ボルトンは西サハラ領有権・独立問題に関して国連から交渉担当として派遣されたことがある。彼は国連について発言し、その発言が有名になった。ニューヨークにある国連の書記局ビルは38階建てだ。もしその10階分が失われてもこれまで変わらずに業務は行われることだろう」。

 

回想録の中でボルトンは次のように書いている。「国際刑事裁判所を創設するためのローマ規定に“署名をしない”となった時が国務省時代で私が最も幸福な日であった。私はコリン・パウエルに子供の時のクリスマスの日のようにウキウキした気分だと言った」。

 

ボルトンの国際条約に関する姿勢はトランプ大統領とほぼ同じだ。ボルトンはかつ手口のように語った。「条約はアメリカの目的にかなうときにだけ法律と同様の効力を持つ。国際的な状況においては、条約は法的な強制力を持つものではなく、単純に“政治的な”ものとなる」。

 

ボルトンは国際秩序の擁護者たちに対して最大級に見下している。EUと国務省の官僚たちを特に見下している。ボルトンは彼らについて背骨がないふにゃふにゃしていると非難している。

 

ボルトンは回想録の中で次のように書いている。「病気のようなEUの外交官たちの間で広がっているのが道徳的な優位性など存在しないという考えだ。これは高学歴者が陥りがちな病気のようなものだ。感染力が強いもので、国務省の官僚たちが感染しつつある」。

 

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(終わり)


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 古村治彦です。

 

 2018年3月22日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が4月9日付で、大統領国家安全保障問題担当補佐官にジョン・ボルトンを任命すると発表しました。現在のハーバート・R・マクマスター補佐官は辞任となります。マクマスター補佐官は現役の陸軍中将ですが、辞任に伴い、陸軍からも退役するということです。

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ジョン・ボルトン
 
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ハーバート・R・マクマスター

 2018年3月6日、ゲイリー・コーン国家経済会議委員長が辞任を発表しました。この時にメディアでは同じ日に、ジョン・ボルトンがホワイトハウスの大統領執務室でトランプ大統領と会談したというニュースも流れました。この時に既に今回のことは決まっていた可能性があります。

 

 ジョン・ボルトンはジョージ・W・ブッシュ政権時代に政権内の外交と軍事を牛耳ったネオコン派の一人です。トランプ大統領はブッシュ時代のイラク攻撃を批判していましたが、マイク・ポンぺオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領国家安全保障問題担当補佐官という陣容を組みました。ポンぺオもまたネオコンに近い人物です。

 

 トランプ大統領はジェローム・パウエルFRB議長を起用し、アメリカ経済の引き締めを行おうとしています。その結果として過熱していた株価は調整され下がっていくことになるでしょう。実際にFFレートの利上げが発表され、NYダウは大幅に下げました。トランプ景気をひと段落させるにあたり、募る不満を対外関係に逸らせるということをトランプ大統領は考えているかもしれません。

 

 ポンぺオ国務長官、ボルトン大東両国家安全保障問題担当補佐官という布陣は北朝鮮に対して強硬な姿勢を取るということを鮮明に示しています。米軍による北朝鮮攻撃の可能性が高まりました。ジェイムズ・マティス国防長官は、北朝鮮攻撃と決まれば反対はしないでしょう。次はジョン・ケリー大統領首席補佐官の動向が注目されるところです。

 

(貼り付けはじめ)

 

諸問題についてのジョン・ボルトンの発言(John R. Bolton on the Issues

 

アシシュ・クマー・セン筆

2018年3月22日

「アトランティック・カウンシル」

 http://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/john-r-bolton-on-the-issues

 

ドナルド・J・トランプ米国大統領は2018年3月22日に、4月9日付でジョン・ボルトンが次期大統領国家安全穂所問題担当補佐官に就任すると発表した。ここ数年の重要な外交政策問題に関してのボルトンの立場を彼の発言から見てみよう。

 

●北朝鮮について(On North Korea

 

・「北朝鮮の核兵器開発によって現在生じている事態に対して、アメリカが先制攻撃を行うことで対応することは完全に正当なことなのである」(2018年2月28日付『ウォールストリート・ジャーナル』紙)

 

・「問題:北朝鮮の政権が現在嘘をついているとどのようにして知ることが出来るか? 答え:彼らの唇が動いていることで知ることが出来る。(訳者註:北朝鮮は嘘ばかりをついているという意味)」(2018年3月9日付フォックスニュース[テレビ番組]

 

●イランの核開発に関する合意について(On Iran nuclear deal

 

・「オバマ大統領が交渉して引き起こした外交上のワーテルローの戦いの結果(惨敗)はまだ癒されないだろう」

 

・「トランプ大統領はオバマ前大統領が結んだ合意を戦略的に大きな間違いだと正確に見破っている。しかし、トランプ大統領の周囲にいる補佐官たちはどうした訳だか、この合意から撤退しないように大統領を説得している」(2018年1月15日付『ウォールストリート・ジャーナル』紙)

 

・「残された時間は大変に短いが、(イランの核開発施設)への攻撃はまだ成功できる可能性を残している。このような攻撃はイランに敵対している国々や勢力に対するアメリカの巨大な援助と共に実行されるべきだ。そして、こうした動きの目的はイラン政府の政権転覆(体制変更、regime change)だ」(2015年3月26日付『ニューヨーク・タイムズ』紙)

 

●アフガニスタンとパキスタンについて(On Afghanistan/Pakistan

 

・「アフガニスタンに関してはパキスタン次第で勝利もできるし、敗北をしてしまうこともある」(2017年8月21日付フォックスニュース[テレビ番組]

 

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