古村治彦です。

 

 ヒラリーのEメール問題に隠れてしまっていますが、ウィキリークスのEメール公表も小さなオクトーバー・サプライズが続いています。ヒラリー選対の委員長ジョン・ポデスタのハッキングされたEメールが次々と公表され、ヒラリー選対や民主党の不祥事や内部での争いが起きていることが明らかにされています。不祥事としては、先日このブログでもご紹介しましたが、ドナ・ブラジル民主党全国委員会暫定委員長が、民主党の予備選挙で、ヒラリーに対してなされる質問を事前に、選対委員長のポデスタに教えていたというものです。

 

 また、ウィキリークスが次々と公表しているEメールでは、クリントン財団だけでなく、クリントン家自体の資金集めのために暗躍している人物、ダグ・バンド(テネオというコンサルタント会社を経営し、ヒラリーの側近フーマ・アベディンもヒラリーが国務長官在任中に籍を置いていました)とポデスタとのやり取りも公開されています。バンドは、大企業とクリントン財団、クリントン家を結ぶ結節点的な存在です。

 

 クリントン夫妻の娘チェルシーはこのバンドを危険な人物だと見て、関係を絶つように両親に訴えましたが、そのことをバンドが知り、バンドはチェルシーを「尻軽女」と罵りました。チェルシーは両親よりは少しまともな神経というか、「お金のことが明らかになったらまずい」と考えることができるようですが、両親はもう麻痺しているのか、「毒を食らわば皿まで」となっているのかは分かりません。

 

 そのほかにも華麗な経歴を誇る(ほとんどがアイヴィーリーグの超一流大学を卒業して職歴も豪華絢爛)、上品そうな人々が罵り合い、バカにし合いの内部闘争をしていることが明らかになっています。

 

 なかなかに凄まじいものです。

 

(貼り付けはじめ)

 

ウィキリークスの最新リークの5つのポイント(Five takeaways from the latest WikiLeaks releases

 

ジョナサン・イースリー、ケイティ・ボー・ウィリアムズ筆

2016年10月30日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/303401-five-takeaways-from-the-latest-wikileaks-releases

 

ウィキリークスはハッキングした、ヒラリー・クリトン選対委員長ジョン・ポデスタのEメールが公開した。このために、ヒラリー選対は今週大揺れだった。

 

あるやり取りが特に精査されることになっている。

 

クリントン財団の資金集め担当だったダグ・バンドが書いたメモによって、クリントン家の慈善事業と利益事業との深い関係に関する新しい事実が明るみに出た。

 

これは、共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプにとって、選挙戦におけるヒラリーに対する新たな攻撃材料となっている。また、ヒラリーが大統領に当選しても、ずっと引きずることになるだろう。

 

これからウィキリークスの最新のEメールのリークに関連する5つのポイントを取り上げる。

 

●民主党は次に何が出るかに戦々恐々としている(Democrats are on edge about what will come next

 

FBIがヒラリーの国務長官在任中の私的Eメール問題の捜査を再開すると決定したと発表した。これに対して、民主党側は右往左往し、あまり明確ではない内容の情報を基にした爆弾に対して民主党側がいかに脆弱であるかを白日の下に晒した。

 

民主党側の多くは、新たなウィリークスのEメールのリークなどに懸念を持っていないと胸を張っている。それは、そうしたEメールの中に、重要な事件の証拠となるようなものは含まれていないし、そもそもスキャンダル合戦にアメリカ有権者は疲れ切っていると考えているからだ。

 

民主党側は、人々はヒラリーのEメール問題についてよく知っているし、それでも彼女がリードしているのだから大丈夫だと主張している。

 

しかし、金曜日に行われたFBIの驚くべき発表によって、投開票日まで2週間を切って時点でもう1つの爆弾の破裂について懸念を民主党側に与えることにもなった。

 

ウィキリークスの創設者ジュリアン・アサンジは、ポデスタのアカウントから5万通以上のEメールをハッキングしたと述べている。そして、彼は既に3万5000通を公表した。残りの1万5000通の中にはどんな驚くべき内容を含むEメールがあるのだろうか?

 

●クリントン財団の解散を求める新たな声が出ている(There are renewed calls to shutter the Clinton Foundation

 

政府の倫理を監視している諸グループは、クリントン財団は、ヒラリーが大統領になったら深刻な利益相反問題を起こすだろうと警告してきた。

 

ドナルド・トランプ率いる共和党は、クリントン一家が財団を利用して、影響力を行使し、私腹を肥やしてきたと非難してきた。

 

バンドのメモの詳細が出てきたことで、クリントン財団の解散を主張してきた人々は新たな武器を手にすることになった。

 

メモの中で、バンドは、ビル・クリントンの個人資産がクリントン財団の資金集めを行うコンサルタント会社の手助けを借りていかに増えて行っているかを書いている。また、クリントン財団に数百万ドルを寄付している大口献金者たちがビル・クリントンの個人資産形成に力を貸していることも書いている。

 

民主党のスロラティジストであるブラッド・バンノンは「ヒラリーが当選して財団を解散しない限り、問題はずっと続くと思う」と語っている。

 

こうした声はマスコミにもある。

 

NBCの「ミート・ザ・プレス」の司会者チャック・トッドは木曜日、シカゴのWGNラジオに出演し次のように語った。「私ははっきりと言っておきたい。全く持って基本的なことだ。ヒラリー・クリントンが大統領になって、クリントン財団が運営を続けることはできない。運営が許されるような状況にはならない。彼らが運営し続けられる方法を考えつくことはないと思う」。

 

●ビル・クリントンのコンサルタント会社はEメールが本物だと認めた(Bill Clinton's consulting firm confirmed email authenticity

 

ヒラリー選対はウィキリークスが公表した数千通にも及ぶEメールが本物であるということを認めていない。

 

ヒラリー選対は、Eメールが公表されるたびにその信憑性に疑義を呈し、Eメールはロシアのハッカー集団によって盗まれたもので、中身は改ざんされているに違いないと主張している。共和党員の中にもこの主張に同調する人たちが出ている。

 

しかし、バンド経営のコンサルタント会社「テネオ」はこれとは別のアプローチを採用した。水曜日、テネオは、メモの中身に直接言及することで、本物だと認めた。

 

テネオの広報担当は次のように語った。「メモが示しているように、テネオは顧客に対して、適切な方法でクリントン財団を支援するように働きかけた。その理由は、クリントン財団が世界中で素晴らしい仕事をしているからだ。テネオはクリントン財団や財団の活動から経済的利益を受け取ったことはないのは明白だ」。

 

この行動は、ヒラリー選対の動きとは劇的に異なるものとなった。このために、「Eメールの中身は改ざんされた可能性がある」という主張の正当性が損なわれることになった。

 

●ヒラリー選対の反撃はうまくいっていない(The Clinton campaign’s pushback hasn’t worked

 

ヒラリー選対は、公表されたEメールの内容は改ざんされたものだとほのめかしている。

 

ヒラリー選対は、Eメールの表面的なやり取りにばかり注目させようとして、マスコミをごまかそうとしている。また、Eメールの中身を詮索することは、危険な前例を作ることになると警告している。

 

しかし、Eメールが改ざんされているという主張の証拠はない。ヒラリー選対(もしかしたらヒラリー・クリントン政権になる)がウィキリークスのEメール公表を止めたり、その公的な利益について争ったりすることは難しい。

 

そうなると、ヒラリー選対は、ウィキリークスのEメール公表に対して全力を挙げて対処しなければならなくなっている。

 

ヒラリー選対の幹部やスタッフはソーシャル・メディアでウィキリークスと戦っている。ヒラリーの国家安全保障政策アドヴァイザーたちは記者たちを集めて、ハッキングされたEメールがいかに国家主権を危険に晒しているかについて警告を発している。

 

彼らは、Eメールがロシアやテロリストに関係する他の外国勢力によってハッキングされたもので、これは悪人たちの行為の「結果」となると主張している。

 

また、ヒラリー選対はEメールのハッキングについて、アメリカの選挙に対する前代未聞の干渉だと主張している。そして、Eメールのハッキングによって、外国からの選挙干渉が当たり前のことになってしまうだろうと警告を発している。

 

ヒラリー選対は、ドナルド・トランプとトランプ選対に対して、Eメールのハッキングと公表について、ロシアやその他の外国勢力と直接共謀していると非難している。

 

現在の状況で、ヒラリー選対がコントロールできることは、選対内部でのやり取りの方法を改めることだけだ。

 

ヒラリーに近いある人物は本誌に対して次のように語っている。「今回のことで、みんなのコミュニケーション方法が変わるでしょうね。そして、Eメールに書くこともだいぶ変わるでしょう」。

 

●恥ずべき内部の争いが公になっている(Embarrassing infighting has spilled into the open

 

公表されたEメールに関して出てきた最初の話は、スタッフ間の争いであった。時には汚い言葉で罵り、私的なやり取りの中でスタッフ同士をけなしあっているというものであった。

 

これはマスコミの格好のネタとなってすぐにそして安易に表に出てきたのは何も不思議なことではない。なぜなら、クリントン家のお金集めと個人の資産形成のための複雑怪奇なネットワークについて報道するには、丹念な証拠固めが必要であるが、この種の話はそれがいらないからだ。

 

そして、人々を惹きつける話には事欠かない。

 

チェルシー・クリントンはバンドとの関係を絶つように両親に求めた。バンドは、そのことを聞いて、チェルシーのことを「甘やかされた尻軽女」と呼んで罵った。

 

現在はシンクタンク「センター・フォ・アメリカン・プログレス」会長で、以前はオバマ大統領のアドヴァイザーをしていたニーラ・タンデンは、ヒラリーの私的Eメールサーヴァー使用とヒラリーの謝罪の拒絶、意思決定過程の複雑さに対する厳しい批判者となった。ヒラリーの意思決定過程は複雑なために政策を決定するのに数カ月もかかる。

 

タンデンは、ヒラリーは「恐るべき」本能を持っていると語った。そして、タンデンは、デイヴィッド・ブロックを「恥を知らないナルシスト」であると断じた。ブロックは現在、選対には参加していないが、外部でヒラリー支持のグループを運営している。

 

一方、ポデスタは、クリントンの側近シドニー・ブルーメンソールは、「自己認識」と「自尊心」に欠けていると考え、同僚に対して、もし自分がブルーメンソールのように行動したら撃ち殺してくれと言っていた。

 

ポデスタはまた、元ニューメキシコ州知事ビル・リチャードソンについては、「探偵みたいないやらしい奴」と考え、リベラルな金持ちの活動家は予備選挙の間にリチャードソンを「籠絡する」だろうと語っていた。

 

そして、長年のヒラリーの側近フィリップ・レインズは、彼がいくつもの話をマスコミにリークしたという疑いをかけられて、ヒラリー選対に参加することを拒絶された。ポデスタと他の人々は、レインズを選対に入れることは、能力のない難民を入れるのと同じだと陰口を言っていた。

 

「フィリップはレールから外れる」という文言が別のEメールのタイトルに書かれていた。

 

このような内輪もめの話はワシントンのインサイダーにとっての大好物なのだ。

 

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Eメール:クリントン選対は昨年の段階でワッサーマン=シュルツの解任を考慮していた(Email: Clinton campaign thought about dumping Wasserman Schultz last year

 

ジェシー・ヘルマン筆

2016年11月1日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/303773-wikileaks-clinton-campaign-thought-about-dumping

 

民主党大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンの選対は、デビー・ワッサーマン=シュルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)を民主党全国委員会委員長の座から追い落とそうと考えていたことが、新たに公開されたEメールによって明らかにされた。その時期は、ワッサーマン=シュルツが実際に委員長を辞任する数カ月前のことだった。

 

ヒラリーの側近たちはフロリダ州選出のワッサーマン=シュルツ下院議員との間の意思の疎通がうまくいかないことと、彼女が民主党全国委員会内の「比較的単純な問題」すらも解決できない能力不足にいらだちを募らせていた。火曜日にウィキリークスが公表したヒラリー選対のジョン・ポデスタ委員長のハッキングされたEメールの中にあったEメールでこのことが明らかになった。

 

ヒラリーのスタッフであるヘザー・ストーンは昨年12月にヒラリー選対に向けたメモを書いた。その中には次のように書かれていた。「私たちは民主党全国委員会との間で取り決めはできているが、民主党の指導部との間の合意形成にも苦労している。比較的単純な問題を解決するために、いくつも会合や電話でのやり取りをしなければならない」。

 

「私たちと委員長との間では連絡がうまくいっていない。また、全国委員会の内部で委員長と幹事長との間も険悪だ」とストーンは書いている。

 

メモの中で、ストーンは3つの選択肢を提案した。1つ目は、ワッサーマン=シュルツを委員長に留任させ、彼女の首席スタッフと協力する、2つ目は、ワッサーマン=シュルツを委員長に留任させながら、「選挙対策委員長」を設置し、ワッサーマン=シュルツと協力させる、3つ目は、7月の民主党全国委員会の後でワッサーマン=シュルツを退任させる、であった。

 

ストーンは次のように書いている。「民主党全国大会で、ワッサーマン=シュルツ委員長の指導力と党への貢献を賞賛しながら、選挙の終盤に向けて新しい委員長を迎えるようにするべきだ」。

 

ワッサーマン=シュルツは、ウィキリークスがEメールを公表した後、全国大会の直前に委員長職を退いた。公表されたEメールには、予備選挙でヒラリーを追い詰めていた、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州、無所属)に対して何とか勢いを削ごうという相談をしていたことが明らかになった。ドナ・ブラジルはワッサーマン=シュルツの後を受けて、暫定委員長に就任している。

 

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