古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:スーザン・ライス

 古村治彦です。

 旧聞に属する話で申し訳ないが、ジョー・バイデン大統領の首席補佐官ロン・クレインが退任し、後任にジェフ・ザイエンツが就任した。就任日は2月8日だ。ロン・クレインはバイデンとの関係が深かったが、ザイエンツはそこまでではない。クレインの後任には、ここは史上初の女性起用で行くべきだ、スーザン・ライス国内政策会議委員長やバラク・オバマ政権で大統領次席補佐官を務めたアリッサ・マストロモナコの名前が取り沙汰されていた。しかし、結局のところ、ジェフ・ザイエンツが大統領首席補佐官に就任した。
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クレインとバイデン
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バイデンとザイエンツ

 大統領首席補佐官は政権運営の要であり、最重要ポジションと言ってよいだろう。日本で言えば官房長官のようなものだ。大統領首席補佐官の事務室は大統領執務室のすぐ隣にあり、首席補佐官の前を通らなければ大統領執務室には入れない。政権課題の進め方とそれに関連して、連邦議会の民主、共和両党幹部との折衝など政治的手腕が問われるポジションだ。ロン・クレインは剛腕ぶりで知られてより、連邦議会共和党幹部からは「クレインが実質的に政権を動かしていてバイデン大統領はお飾りだ」と批判され、「総理大臣」と悪口を込めて呼ばれていたほどだ。

 前任者のロン・クレインと現職のジェフ・ザイエンツをつなぐ要素は、スーザン・ライスである。スーザン・ライスとロン・クレインの関係は拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)で書いている通り、バラク・オバマ政権時代に、アフリカでエボラ出血熱の大規模感染が広がり、アメリカ国内でも感染者が確認された時まで遡る。国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めていたスーザン・ライスは、エボラ出血熱担当調整官としてロン・クレインを起用するように、オバマ大統領に求め、二人三脚でエボラ出血熱対応に当たった。その時の経験もあり、クレインはバイデン政権で大統領首席補佐官に就任した。国内政策委員会委員長兼大統領補佐官であるライスとまた一緒に仕事をすることになったのだ。
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スーザン・ライスとバイデン

 ザイエンツについては期せずして、下の論稿に次のような記載がある。

「教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう」

 このように、ザイエンツもまたスーザン・ライスと親しいということになる。新型コロナ対策が一段落してクレインは退任し(家族との時間や介護を理由にしている)、選挙に向けてザイエンツが就任した形になっている。しかし、実質的にはスーザン・ライスが指揮を執っていると考えた方が自然だ。

 ここからは私の予想であるが、バイデン政権は二期目の当選をどうしても果たさねばならない。それは、単純に言って、「大統領の犯罪行為(ノルドストリーム・パイプライン破壊やウクライナへの関与)を隠し通さねばならない」からだ。そうしなければバイデンだけではなく、その手下たち(権力者共同謀議に参加できるレヴェル)が逮捕されてしまうからだ。バイデンは再選のためにはなりふり構わず様々な手段を取って当選するだろう。

アメリカ大統領は二期目で終わりとなるから、バイデンはさらに年齢を重ね、判断力も体力もなくなっていき、お飾り状態になるだろう。その時に実質的に国家を動かすのはライスではないかと考える。現在の国家安全保障問題担当大統領補佐官であるサリヴァンは、ライスにしてみれば格下の人物だ。また、サリヴァンはまだ若いので次の出番がある。

 ライスは連邦議会の承認が必要な地位に就くのは難しい。それはベンガジ事件の際にみそを付けたからだ。ホワイトハウスの人事は大統領が決められるので、ライスが国家安全保障問題担当大統領補佐官や大統領首席補佐官に横滑りし、サリヴァンが国務長官になるということも考えられる。

 ライスという人物が非常に重要であると私は考える。

(貼り付けはじめ)

ロン・クレインがホワイトハウスで学んだこと(What Ron Klain Learned in the White House

-退任を表明したジョー・バイデンの大統領首席補佐官はゆっくりとした専門知識の蓄積を示すケーススタディだ。

エヴァン・オスノス筆

2023年2月1日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/what-ron-klain-learned-in-the-white-house

ホワイトハウスの大統領首席補佐官(White House Chief of Staff)が果たしている役割について、ほとんどのアメリカ人はほぼ何も意識していないが、このポジションはワシントンで最も強力であり、最も脆弱なポジションの1つである。ロナルド・レーガン大統領とジョージ・HW・ブッシュ大統領の大統領首席補佐官を務めたジェームズ・A・ベーカー3世は、「政府の中でおそらく最悪の仕事」と呼んだが、彼は歴代の大統領首席補佐官の中で最も成功した1人だと考えられている。(最も成功しなかったのは、ドナルド・トランプの4人の悩める大統領首席補佐官の最後の1人で、その在任中にはトランプが2020年の選挙を覆そうとしたこともあり、1月6日の議事堂襲撃に関する証言を拒否したマーク・メドウズかもしれない)

バイデン政権の最初の2年間、大統領首席補佐官室(ウエストウィングの角部屋)の主はロン・クレインであった。クレインは弁護士で郊外に住む3人の子供の父であり、有名人ではないが、ワシントンでの権力の使い方を知り尽くしているロン・クレインのものであった。バイデンの長年の側近で、現在はホワイトハウスの上級顧問を務めるマイク・ドニロンは、クレインについて「私にはない、また他の何人も知らない、政府のレヴァーを動かす能力を持っている」と評した。バイデン大統領の任期中、連邦議会との格闘、トランプ主義、アフガニスタン、ロシアのウクライナ侵攻など、クレインの担当は広範囲に及び、共和党は彼を総理大臣(prime minister)と呼んだほどである。先週金曜日、クレインが2月8日に退任する準備をしているとの報道を政権が認めた。

クレインはバイデン政権と密接な関係にあり、彼の在任期間を評価することは、バイデン政権の文化、作戦、功績、敗北を評価することと切り離せない。『ニューヨーク・ポスト』紙の右寄りの編集部は、「ジョー・バイデン大統領の悲惨な記録を白紙に戻し、国民を欺くことにかけては、クレインに右に出る者はいない」という理由でクレインの退任を祝った。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官の在任期間は平均して1年半だが、難解な統計に精通しているクレインは2年の間そのポジションにとどまり、民主党から出ている大統領の初代大統領首席補佐官として最長の任期を務め、退任の発表直後にウェストウイングで会った私に、「大統領の人気の前半部を走り抜けた」ことを強調した。彼はまた「また、母が病気で、週6日ここで働き、毎週日曜日の朝にはインディアナへ帰るという生活を続けている。それが、ちょっと重荷になっていたのは事実だ」と述べた。

61歳のクレインは、濃い黒髪に終身在職権を手に入れた教授のような体格、そしてワシントンの不条理(absurdities)に対するユーモアのセンスを持っている。オフィスにある火のついていない暖炉を指さして、「マーク・メドウズが書類を燃やした場所だ」と言った。(メドウズの元側近キャシディ・ハッチンソンは、1月6日の議事堂襲撃事件検証委員会で、彼がそこで書類を燃やすのを「たぶん十数回」見たと証言した。)クレインは、「私は一度も火をつけたことはない」と付け加えた。政権によっては、大統領首席補佐官に対して陰口を叩かれることもある。クレインの退任の知らせに惜別と褒賞の声が上がったのは特筆すべきことだ。バイデンの国内政策会議の責任者であるスーザン・ライスは、「私はこれまで9人の大統領首席補佐官の下で働いてきた。そして、そのうちの1人が言ったように、ロンはその中で最高の大統領首席補佐官だった。一分一秒が甘美で明るいという訳ではないが、彼はとても優秀な人物だ」と述べた。

クレインは、鋭い人物であり、反対行動を取りたがる人物である。バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、「彼は、“お前はしくじった”と言ってくれる。しかし、決して意地悪でも小馬鹿にしたような言い方はせず、本当のことを言う」。最も重要なことは、他の人が臆病になるような場合でも、バイデンには大胆に対応することだ。バイデン大統領は、その公的な人格が反映するよりもスタッフに厳しい態度を取ることがある。クレインは、ホワイトハウス内で大統領と正面からぶつかっても首を切られない数少ない人物の1人だ。

米連邦議会では、民主党と共和党の間は僅差であり、民主党の間に深い溝がある。そうした中でクレインは何十年も前からの人脈を駆使してきた。クレインがチャック・シューマー連邦上院議員(連邦上院多数党[民主党]院内総務)と初めて会ったのは1980年代で、シューマーがニューヨークから連邦下院議員に当選したばかりの頃で、クレインは連邦上院のスタッフだった。シューマーが連邦上院多数党(民主党)院内総務に就任したこの2年間は、1日に3、4回話すこともあったということだ。クレインは直接的でかつ冷静ということでシューマーからの尊敬を勝ち取っている。シューマーは「彼(クレイン)は、誰かがバカなことをやっていると、すぐにそれについて厳しい言葉を述べた。しかし、時折、よく考えてみたが、私の言ったことは正しいとは思えないと言い直すこともあった」と語った。

クレインは、若手政治家たちを指導したことでも知られている。2017年、カリフォルニア州選出でプログレッシブ議連のメンバーであるロウ・カンナ連邦下院議員(民主党)がワシントンに来た際、クレインは彼をコーヒーに連れ出した。カンナはその時のことを次のように述べた。「私は“ワオ!"と思った。どれほど凄いことなんだと考えた。そして、彼が首席補佐官になった後、ロンが他の60人、70人と一緒にそれをやっていたことを知った」。カンナはそれを教訓にした。カンナは「議員になってから、良くも悪くもヴィジョンは重要だが、人間関係も非常に重要だということを認識した」と述べた。

アメリカ人は、「スミス都へ行く(Mr. Smith Goes to Washington)」という神話を好むが、実際には、現代のスミスはアメリカ内陸部ではなく、ゴールドマン・サックスの出身であることがほとんどだ。それとは対照的に、クレインは、専門知識をゆっくりと蓄積することのできるケーススタディだ。インディアナポリスで育ったクレインは、1968年初め、配管工事を営むクレイン家を訪れたボビー・ケネディとの出会いをきっかけに、政治の世界に引き込まれた。ジョージタウン大学を卒業後、ハーヴァード大学で法学を学び、バイロン・ホワイト最高裁判事の下で書記官を務めた後、ジョー・バイデン上院議員(当時)が委員長を務める連邦上院司法委員会にスタッフとして所属した。ビル・クリントン政権では、ホワイトハウスの顧問弁護士、司法省、アル・ゴア副大統領の不育大統領首席補佐官として働き、2000年にはフロリダ州での再集計の戦いに携わった。その後、ジョー・バイデン副大統領の副大統領首席補佐官として復興法の支出を監督した後、政権を離れ、3年後にバラク・オバマ大統領の下でエボラ出血熱への対応を指揮するためにホワイトハウスに戻った。

クリントン政権とオバマ政権の間には、オメルヴェニー・アンド・マイヤーズ法律事務所のパートナーや、AOLの共同創業者で億万長者のスティーブ・ケースが立ち上げた投資会社レヴォリューションLLCで、政府以外の民間の仕事にも携わった。長年にわたり、クレインは民主党の大統領選挙候補者討論会の準備を支援することを得意としてきた。2015年、バイデンが出馬しないことを確信した彼は、ヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペーンに参加するために契約した。バイデンの関係者の中には、この動きを不誠実と受け止める者もおり、後に流出した電子メールの中でクレインは「彼らにとって自分は死んだような存在だ」と嘆いたが両者の間にあった溝は埋められた。2016年にトランプに敗れたことも含め、クレインの様々な経験は貴重なものとなり、バイデンの2020年の選挙運動の成功のために助言を行った。

ホワイトハウスにおいてクレインは、バイデン政権の本質的な課題を、宇宙開発、経済、気候、世界における米国の地位といったいくつかの問題に絞り込み、立法と安全保障政策が連動するような方法を模索することに貢献した。在任中の最悪の日は、2021年8月26日、アフガニスタンからの撤退の際、カブール空港の外で起きた爆弾テロで13人の米軍将兵と100人以上のアフガン人が死亡したことだったとクレインは語っている。この撤退はバイデン大統領の転機となり、彼の世論調査での支持率は低下し、新型コロナウイルス感染拡大やインフレに対する不満がさらに重荷となり、完全に回復することはなかった。当時、バイデンとクレインは、国家安全保障のリーダーシップを揺るがす圧力に抵抗していた。サリヴァンは、クレインについて次のように述べた。「単によく思われたい、高い評価を得たいと思って仕事をしていいなかったのだろう。長い目で見ようと思っていたのだろう。彼は、私たちがしてきたことに確信を持っていた」。

アフガニスタンからの撤退からほんの数カ月の後、バイデン政権はさらに大きな危機に直面することになった。ロシアのウクライナ侵攻である。しかし、ウクライナはNATOの支援を受けて抵抗し、これが政権のぼろぼろになったプライドを支える要素となった。

一方、連邦議会では、民主党の内紛が激化していた。2021年秋、連邦上院の民主党穏健派が社会政策法案を成立させないのではないかという疑念から、連邦下院の民主党進歩派が超党派のインフラ法案への支持を留保したことが、その最たるものだった。バイデンの最初の2年間を描いた新刊『彼の人生における戦い(The Fight of His Life)』(クリス・ウィップル著)によると、ホワイトハウスは無様な姿になり、クレインは辞任を考えたということだ。その代わりに、彼はもう一度、古い人間関係に目を向けた。カンナは、クレインが「もう十分ではないか」と言い、自分に助けを求めてきたと述べた。

カンナもそう思った。私は、『ロン、私は、テレビ番組のフェイス・ザ・ネイションに出るつもりだ。私は進歩主義議連の主張から外れて、インフラ法案に賛成投票すると言うつもりだ。バイデンは、より多くのリベラル派に法案を支持するよう懇願し、その結果、2021年11月にホワイトハウス南庭で行われた式典で法案に署名した。その後、バイデン政権の野望を脅かすような緊迫した交渉が続いた。2021年12月、ウェストヴァージニア州選出のジョー・マンチン連邦上院議員(民主党)が、「ビルド・バック・ベター」法案は予算希望が大きすぎるとして、この法案に難色を示した。マンチン議員とクレインは、ジーナ・ライモンド商務長官の手料理を囲み、最終的に合意に達した。結局、連邦議会は一連の主要法案を可決し、2022年8月には、気候変動対策だけでなく、薬価引き下げを目的としたインフレ抑制法案で最高潮に達した。ドニロンはその法案について、「それまで世界の多くがバイデンは失敗だったと主張しようとしていたのに、成功の感覚を伝えてくれた」と述べている。昨秋の中間選挙では、バイデンは共和党の大勝利の予測を裏切り、民主党は連邦上院で過半数を維持し、中間選挙で失った議席数はジョン・F・ケネディ大統領以降のどの民主党大統領時代よりも少なかった。

こうした業績があるにもかかわらず、バイデンの人気が低いのは何故か、と私はクレインに質問してみた。クレインは次のように答えた。「国民がリーダーに対して非常に厳しくなっている時代だと考えている。ジョー・バイデンの支持率が43%か、その少し上か下の範囲に入っている。G7の中で、イタリアの新首相を除けば、どのリーダーよりも高い支持率だ。人々は二極化しており、反対の人々は、あなたが良い仕事をしているとは決して言わないし、真ん中の人々は、“えーと”と言う方が簡単だ。政治の成功の尺度は中間選挙の結果だ」。

クレインが大統領首席補佐官の仕事で学んだことは、「粘り強く、慌てない」ことだと述べている。クレインが担当した政権の中で、最初の2年間に閣僚が1人も辞めなかったのは、この政権が初めてだということだ。この日、政権の当面の問題は、バイデンの自宅と元事務所で機密文書が見つかった理由を調査する特別検察官であった。クレインをはじめとする補佐官たちは、発見から9週間以上、この文書について何も語らなかったが、その後、その沈黙は司法省の捜査の邪魔にならないようにするためだったと弁明している。この件に関して、何か違うことをしていたらどうだっただろうかと私が質問すると、クレインは「いや、私たちの弁護士、法務ティームが非常に責任を持って対処してくれたと思っている」と答えた。とはいえ、政権が直面しなければならない政治的な問題であることに変わりはない。

今後の2年間、バイデン政権の焦点は、署名済みの法案の実施に移る。連邦下院を共和党が支配し、バイデンは再選を目指す中で、新たな法案成立の見込みは大変に小さくなりつつある。クレインの後任には、オバマ政権で「HealthCare.gov」などの失敗していた政府プロジェクトに取り組み、「ミスター修理人」と呼ばれたジェフ・ザイエンツが就任する予定だ。ザイエンツは以前、教育とヘルスケアのコンサルティング会社アドヴァイザリー・ボード・カンパニーの会長兼CEOとしてビジネスで財を成した。それ以来、アメリカ政府への出入りを繰り返している。最近では、バイデンの新型コロナウイルス対応共同責任者としてワクチンの普及を担当していた。ザイエンツはクレインの政治経験には及ばないが、決してアウトサイダーではない。彼は、スーザン・ライスと同じようにワシントンD.C.で育ち、幼い頃からお互いを知っている。ザイエンツはバイデンの大統領首席補佐官として採用されるほどバイデンのことをよく知っているが、より大きな試練は、大統領が聞きたくないことを伝えられるだけの信頼を得られるかどうかであろう。

バイデンの次の2年間に立ちはだかるより大きな不安は、彼の年齢に関するものだ。先週発表された世論調査では、民主党と民主党寄りの無党派層は、バイデンが再出馬すべきかどうかに関して意見が真っ二つに割れている。しかし、クレインは、政府での仕事が長くなればなるほど、「経験が重要だ」と考えるようになったという。多くの人がバイデンは若手に道を譲るべきだと考えていることも知っている。「その年齢には、多くの経験が伴う。2022年2月には、ウラジミール・プーティンはウクライナを侵略する意図は持ってはいないと言っていた世界の指導者がたくさんいた。そうした中で、バイデンは「彼(プーティン)はウクライナに侵攻するつもりだ、私たちは備える必要がある、同盟を組み立てる必要がある」などと言っていた。これは、彼が時々言葉を間違えるかどうか、原稿を読む時に時々目を細めるかどうかよりも重要な洞察である。

更に言えば、クレインは、「ドナルド・トランプが2024年の共和党の大統領選挙候補者になると信じるだけの理由がある。ドナルド・トランプに勝ったのは1人しかいない、その名はジョー・バイデンだ」と述べた。そして、バイデンの立候補に疑問を持つ人々に対しては、「ジョー・バイデン以外に誰がドナルド・トランプに勝てるのか、ちゃんとした答えを出した方がいい」と述べた。

※エヴァン・オスノス:『ニューヨーカー』誌スタッフライター。最新刊『荒野:アメリカの怒りの進行』がある。

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ホワイトハウスは史上初の女性大統領首席補佐官を登用する機会を失う(White House Misses Opportunity For First Woman Chief Of Staff

エリン・スペンサー・サイラム筆

2023年2月8日

『フォーブス』誌

https://www.forbes.com/sites/erinspencer1/2023/02/08/white-house-misses-opportunity-for-first-woman-chief-of-staff/?sh=4f27faf142c5

任期半ばを迎えたジョー・バイデン大統領は、今週の一般教書演説で、これまでの政権の成果について強調し、更に重要なこととして、今後の展望について演説を行った。木曜日からは、この公約を実現するために、新しい大統領首席補佐官を登用する予定だ。

新型コロナウイルス感染拡大対策の責任者だったジェフ・ザイエンツ(Jeff Zients)がロン・クレインの職場だった場所に移り、ウエストウィングの運営責任が再び1人の男性に委ねられることになる。

ホワイトハウスの大統領首席補佐官という役職は、1946年に正式に創設されて以来、アメリカ政治の中心的な役割を担ってきた。その間に30人の大統領首席補佐官が誕生している。その中には「ジョン」が4人、「ジャック」が2人、「ドナルド」が2人いるが、女性は1人もいない。

政界関係者の間では、大統領首席補佐官の選択は極めて重要なものだと考えられている。大統領にとって最も重要な人事の決定であると考える人もいる。職務の詳細は政権によって異なるが、任命された大統領首席補佐官は大統領の右腕、門番、代理人、そして重要な政策決定過程の監督者として機能する。行政府の中で、ウエストウィングの動向を把握し、大統領に接近することができるのは、間違いなくこの人しかいない。結局のところ、大統領首席補佐官は選挙で選ばれたのではないが大きな力を持ち、誰がその力を持つかによって、ホワイトハウスで優先される課題が決まることが多い。

バイデン政権は「アメリカらしい」ホワイトハウスの重要性を何度も指摘し、そのために初の女性副大統領、初のジェンダーのバランスの取れた内閣、初のホワイトハウス・ジェンダー政策評議会を導入してきた。しかし、アメリカ国内の女性の収入が男性に比べて低く、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)に関する法律が全米で急速に変化する中、バイデン政権は大統領首席補佐官に女性を指名しなかった。

このポストに就いた女性はいないが、そのすぐ下の役職である実務担当の次席補佐官には、ごくわずかながら女性が就いてきた。このポストは主に舞台裏で活動するものだが、女性が副官を務めることによる直接的な影響は、よく知られている。

アリッサ・マストロモナコがバラク・オバマ政権の大統領次席補佐官だった際、ホワイトハウスの女性たちは「増幅」作戦を展開した。ある女性が会議で発言すると、別の女性がその発言を繰り返し、誰が最初に発言したかに言及して、その発言が確実に伝わり、正当な評価がなされるようにした。この作戦はすぐに評判となり、ウエストウィングの文化を超えて、アメリカ全土の会議へと広がっていった。

マストロモナコは、史上最年少の女性次席補佐官であり、ウエストウィングの女性用トイレに史上初めて生理用品処理箱を設置させたことでも有名である。「もし、もっと多くの女性を政治に参加させることを真剣に考えるなら、ウエストウィングには基本的な快適さが必要だ」と、マストロモナコは『ワシントニアン』誌に寄稿している。彼女は「私の提案に異論はなかったが、それまで誰も思いつかなかったようだ」と述べている。

マストロモナコの在任中は、複数の首席補佐官が交代で就任し、当時のオバマ大統領が、「政権がいかに女性登用に積極的であるかという話題提供のために」定期的に公の場に出ていたことを考えると、一見論理的に見える決断をなぜしなかったのかという疑問もある。

バイデン率いるホワイトハウスは、大統領首席補佐官のポジションに次席補佐官ポストにいる女性を選ぶこともできたはずだ。現在2人いる運営担当次席補佐官の1人であるジェン・オマリー・ディロンは、バイデンの選挙ティームを率いた経験があり、民主党の大統領選挙を成功させた最初の女性として歴史に名を残している。推測されるリストには、更に首席補佐官の女性候補として、大統領上級顧問のアニタ・ダンやホワイトハウスの国内政策補佐官であるスーザン・ライスの名前も挙がっていた。

しかし、結局のところ、ホワイトハウスの最高幹部は男性の手に渡り、大統領、最高裁長官、統合参謀本部議長など、連邦政府で女性が就任したことのないトップ職のリストにそのまま残ることになった。

エリン・スペンサー:ニューイングランド州を本拠とする作家。ジェンダー、政治、文化の国内議論に貢献している。2018年からフォーブス誌の寄稿者を務め、政治家、企業幹部、そして宇宙飛行士にもインタヴューを行っている。ツイッターアカウント:@erinspencer93

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカのジョー・バイデン政権は、学生ローン(student loan)返済免除計画を発表した。現在、学生ローンを抱えている人は全米で4300万人おり、その平均額は日本円で400万円程度である。1000万円、2000万円と借りている人たちもいる。この返済が若い世代に大きな負担となっている。これは日本でも全く同じ構図となっている。日本育英会の「奨学金(scholarship)」は「学生ローン」であり、無利子ならまだしも、有利子で返済しなければならない種類のものがある。昔は教職に就くと返済免除となったが今はそういう制度はないし、大学を出ても高給の仕事に就ける保証はなく、就職がうまくいかなければ返済は大変厳しいことになる。

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計画について記者会見するスーザン・ライス国内政策委員長

 今回の計画では一般的な学生ローンの借り手の場合は1万ドルを返済免除する、低所得世帯出身(ペル・グラントという連邦政府の奨学金を受けられた人たち)の場合には2万ドルを返済免除とするということだ。現在の所得が単身者の場合は12万5000ドル、夫婦の場合には25万ドル以上の場合にはこの恩恵を受けられない。対象者4300万のうち、90%以上が世帯所得7万5000ドル以下なので、ほとんど(約4000万人)が恩恵を受けることになる。

 今回の発表は中間選挙前のバラマキということになる。学生ローンの返還免除については2020年の米大大統領選挙の民主党予備選挙でもテーマとなった。アメリカ中西部インディアナ州出身のピート・ブティジェッジなどが反対姿勢だった。民主党内部にも学生ローン返済免除計画には反対の声がある。「大学卒業生という、国民の一部の、高所得の職に就いている恵まれた人たちの負債を和らげるために納税者のお金を使うのはおかしい」ということになる。より直接的に言えば、ブルーカラー労働者の税金をホワイトカラー高所得者のために使うのはおかしいということになる。また、前の世代でローンを完済した人たちからすれば、「自分たちだって大変な苦労をして返済したのに、現在ローンを返済している人たちだけというのはズルい」ということになる。

 現在、中間選挙の情勢は連邦上院では接戦、連邦下院では共和党有利となっている。そうした中で、選挙が近づき、民主党側としては何とか挽回したい。インフレイションが続き、人々の生活が苦しい中で、今回の学生ローン返済免除の話が出てきた。これをアメリカ国民がどのように判断するかである。日本でも返済しなければならない奨学金(学生ローン)の負担は若い世代で問題になっている。アメリカの動きを注視しながら日本について考え行く必要がある。

(貼り付けはじめ)

バイデンの学生ローン免除計画についての心に引っかかる5つの疑問(Five lingering questions on Biden’s student loan forgiveness plan

アレックス・ガンギターノ筆

2022年8月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3616040-five-lingering-questions-on-bidens-student-loan-forgiveness-plan/

ジョー・バイデン大統領は、ペル・グラント(Pell Grant、訳者註:連邦政府による返還不要の奨学金制度)受給者に対しては最大2万ドル(訳者註:ペル・グラント利用者[1人当たりの支給額が400ドルから4000ドルと幅がある]は世帯収入が年間2万ドル以下と低所得であるため、ペル・グラントだけではなく他に学生ローンを利用している場合がほとんどである)、その他の学生ローン利用者は1万ドルを免除するという計画を発表した。これは、民主党所属の連邦議員の多くからは喝采を浴び、共和党所属の議員たちからインフレイションを助長するだけだと嘲笑を浴びるという形で、物議を醸している。

アメリカ史上最大規模の学生ローン免除計画この取り組みの効果に関しては多くの疑問も残されている。

ここでは、その中から5つを紹介する。

(1)インフレイションを助長するか?(Will it raise inflation?

バイデン大統領の計画は、既に40年来の高いインフレイション率にマイナスの影響を与える可能性があるとして、直ちに非難を浴び、エコノミストの中には高いインフレイション率をもたらすと警告している人たちもいる。また、何らかの影響があっても、それはごくわずかなものであろうという意見もある。

共和党がインフレイションを理由にしてホワイトハウスを叩く一方で、この計画が実際にインフレイションを引き起こす可能性があるという批判は、少なくともバイデンの政治上の味方の中からも出ている。

ハーヴァード大学教授で、オバマ大統領のトップ経済顧問を務めたジェイソン・ファーマンは水曜日、「既に燃え上がっているインフレイションの火に、およそ5000億ドルのガソリンを注ぐなどは無謀なことだ」と述べた。

ホワイトハウスは、連邦学生ローンの数年にわたる支払い猶予を今年12月31日まで延長する一方で、猶予は2023年1月に終了するため、インフレイションのリスクは軽減されると主張している。政府関係者たちは、ローンの支払い再開と緩和措置の組み合わせにより、インフレイションの影響は基本的にゼロになると主張した。

学生ローン返済の一時停止は、インフレイションを助長するプログラムだと考えられてきたが、他の景気刺激策や新型コロナウイルス感染拡大時に消費者たちがお金を節約したことがより大きな要因であると考えられる。

超党派政策センターの高等教育政策担当副所長ケヴィン・ミラーは「学生ローンの返済が一時停止されたことで、おそらく少しはインフレイションになったことは明らかだ。経済から引き上げられるはずだったお金が人々のポケットに残った」と述べている。

(2)大学はこれに応じて授業料を上げるだろうか?(Will colleges raise tuition in response?

オブザーヴァーの多くは、大学がバイデンの動きに呼応して授業料を上げるかどうか、疑問を持っている。その根拠は免除がより増大するかもしれないというものだ。

ケイトー研究所政策アナリストのニール・マクロウスキーは次のように述べている。「一旦ローンを免除したり取り消したりすると、大々的に重要な前例を作ってしまうことになり、今後の人々に期待や妥当な議論が起きてしまう。人々が、自分のローンを返済する必要がない、あるいは全額返済する必要がないと思えば、もっとローンを組もうとする動機になる」。

また、授業料に直ちに大きな影響を与えるかどうかは疑問だ。 

カリフォルニア大学アーバイン校の学生ローン法担当部長ダリエ・ジメネズは、「ほとんどの学校は基本的に多層的な組織だ。授業料を設定する過程では、非常に多くの入力があるため、平均的あるいは全体的に何らかの即時効果があるかどうかは分からない」と述べた。 

米教育省は、悪質な業者に対して「警戒」し「特別に集中」し、学生負債危機を助長した大学の責任を追及する方法として、負債レヴェルが最悪の教育機関の「監視リスト」を毎年発表する予定であると当局者は述べている。

(3)法廷闘争に耐えられるか?(Will this stand up to court challenges?

バイデンの取り組みに対する法廷での異議申し立てが予想されるが、その正確な内容はまだ明らかになっていない。

ホワイトハウスのキャリーン・ジャン=ピエール報道官は木曜日、ホワイトハウスはその法的権限に自信を持っており、この措置は法廷でも持ちこたえられると述べた。

ホワイトハウスが指摘する法的権限は、2003年の「ヒーローズ法(HEROES Act)によるもので、新型コロナウイルス感染拡大のような国家的緊急事態により、借り手が経済的に悪い状況に置かれないようにするために必要と思われる一定の行動を取る権限を教育長に与えるものである。

ニール・マクロウスキーは、新型コロナウイルス感染拡大時に学生負債を抱える人々がより悪い状況に置かれたことは明確ではないと述べた。 

「大卒者は、仕事を続けることができたので、新型コロナウイルス感染拡大やそれに伴う経済問題、ロックダウンの悪影響から最も隔離されていたようなものだ」とマクロウスキーは語っている。

マクロウスキーは続けて「それは、彼らは仕事を続けることができたからだ。彼らは、ローンが凍結されたことで、より良い生活を送ることができている」と述べた。

また、マクラスキー氏は、バイデンが「基本的にお金を充当している(essentially appropriating money)」と問題提起し、これは連邦議会に属する権限であるとした。しかし、民主党が過半数を握っている連邦議会は、それに異議を唱えることはないだろうと指摘した。

「ローンというのは、返さなければならない政府からのお金のことを言う。今は返さなくてもいいということになると、ローンを補助金に変えてしまうことになる」と述べた。

民主党のクリス・パパス連邦下院議員(ニューハンプシャー州選出)は、この決定について、「連邦議会と私たちの監督・財政責任を回避している」と述べた。

(4)誰に資格があり、そしてないのか?(Who is in and out in terms of eligibility?

この政策は、ローンの借り手のごく少数、ローンを抱えている人たちの5%程度と推定されるが、この人たちを除外しているように見える。

この制度は、所得水準によって対象者に上限を設けており、単身者の場合は12万5000ドル、夫婦の場合は25万ドルとなっている。

ホワイトハウスによると、対象となる全員が救済を申請した場合、4300万人の連邦学生ローンの借り手が恩恵を受け、その90%近くが世帯所得7万5000ドル以下なので、それらの借り手に行き渡ることになるという。

(5)誰が支払うのか?(Who pays for it?

納税者がこのプログラムのツケを払うことになるが、その金額がいくらになるかは明らかではなく、ホワイトハウスはこの問題についての質問を避けている。

木曜日のホワイトハウスでの記者会見で、記者たちがジャン=ピエールに費用の見積もりを求めたが、彼女は、どれだけの借り手がこの申し出に応募するかは不明だと言ってはぐらかし、その場をしのいだ。

ホワイトハウスは、バイデンが赤字削減のために取ったとする他の政策で浮いたお金が、ローン免除の予算となって全額支払われると主張している。

共和党側は、消え去ることのない政治的問題を提起し、攻撃に転じている。

ベン・サッシー連邦上院議員(ネブラスカ州選出、共和党)は、この計画は「ブルーカラー労働者にホワイトカラーの大学院生を助成することを強いる計画(scheme” that “forces blue-collar workers to subsidize white-collar graduate students)」であると述べた。サッシー議員と他の共和党所属の連邦議員たちは、所得水準が12万5000ドルと25万ドルに制限されていることから、この計画は富裕層を助けることになるとも主張している。

連邦上院少数党(共和党)院内総務のミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、この決定について、高所得のアメリカ人に有利になる、富の「乱暴な不公平配分(wildly unfair distribution)」であり、借金返済のために犠牲を払った労働者たちに対する「平手打ち(slap in the face)」であると主張した。

民主党が中間選挙で共和党に負けるのではと心配すると考えられるグループであるブルーカラー労働者たちに、両者の主張がどう響くかは、今年11月の選挙で注視されるところだ。

バイデンは、特にマイノリティーのコミュニティで、共和党からの政治的打撃を回避するために、十分な数の人々が免除を支持するであろうことに賭けている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権は2021年1月に発足した。当初の大きな課題は新型コロナウイルス感染拡大対策と景気対策だった。新型コロナウイルス感染拡大対策に関してはアメリカ国民の評価が高かったが、景気対策については厳しい評価だった。それに現在はインフレ問題も加わり、バイデン大統領の支持率は低迷している。支持率が約40%、不支持が50%台中盤となっている。バイデン政権関係者の多くはドナルド・トランプ前大統領の支持率の低さを嘲笑していたが、現在バイデンの支持率がそれ以下になって恥をかいている。

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バイデン大統領の支持率の推移

 私は拙著『 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でスーザン・ライスの国内政策会議委員長兼国内政策担当大統領補佐官就任について取り上げた。ライスはビル・クリントン政権下でアフリカ担当国務次官補を務め、バラク・オバマ政権下で米国連大使と国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた。外交畑が長い人物だ。その人物を国内政策担当にするというのはどういうことかと考え、私なりの答えとして、「現在のカマラ・ハリス副大統領は能力がないのでどこかでつまずく、そのために次の副大統領候補としてライスに国内政策の経験を積ませておくのだろう」と考えた。 suranricejoebiden511

スーザン・ライス

 2022年に入ってからはアメリカの国内問題は前年から続く高いインフレであるが、やはりウクライナ戦争が大きな話題となっている。ジョー・バイデン大統領もウクライナ戦争対応が大きな仕事になっており、それに国内問題への対応ともなると大変だろう。移民問題については、政権発足当初の段階ではカマラ・ハリス副大統領が担当するということであったが、ハリス副大統領の存在感はどんどん薄れている。それに比例して、スーザン・ライスは国内政策担当大統領補佐官兼国内政策会議委員長として、国内政策全般を取り仕切っている。実質的な副大統領といったところだろう。

 移民の大量流入問題については、トランプ政権時代の強硬な阻止姿勢から転換することをバイデンは訴えて当選したが、実際はトランプ政権下での姿勢を大きく転換させるところまでは至っていない。ある意味で「現実的な」姿勢となっているが、この姿勢を進めているのがスーザン・ライスと国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンだということだ。こうした動きに対して、希望をもってバイデン政権に参加してきた人々が政権から離れるということも起きているようだ。

 スーザン・ライスは記者団の前で記者会見に応じることもなく、仕事に専念しているようだ。しかし、そのように静かに身をひそめながら政権の実権を握っている中で、下記のような記事が出るということは、現在57歳のライスがこの先に民主党内の有力な大統領候補となる可能性も示唆している。アメリカ初の女性大統領は能力のないカマラ・ハリスではなく、スーザン・ライスだということになるかもしれない。

(貼り付けはじめ)

スーザン・ライスは静かなままだがホワイトハウスで強力な地位にいる(Susan Rice holds quiet but powerful perch at White House

モーガン・チャルファント、エイミー・ハーネス筆

2022年6月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3519503-susan-rice-holds-quiet-but-powerful-perch-at-white-house/

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は、最近、銃暴力に取り組むための政権内担当部署設置を求める声についての質問に直面した際に彼女は次のように答えた。「スーザン・ライスが責任者だ。

ジャン=ピエール報道官は、ライスは既に国内政策会議委員長を務め、12人からなるティームを率いて、精神衛生や労働力開発なども含めた銃暴力削減のための政府全体の取り組みに従事していると述べた。

ジャン=ピエール報道官は「利害関係者を集めて進展を図るのに、これほど適した人物はいない」と記者団に語った。

今回の発表は、銃乱射事件から移民問題、刑事司法改革、学生ローンの債務免除、バイデン大統領お得意の国内法整備にまつわる膠着状態の協議まで、ライスが主要かつ論争の的となる政策論争と決定の中心にいることを改めて思い起こさせるものだった。

ブルッキングス研究所ガバナンス研究プログラム委員長で、ビル・クリントン大統領(当時)の国内政策補佐官を務めたビル・ガルストンは、「国内政策会議は最も幅広く、また最も拡散した議題を持っていると言えるだろう」と語る。

しかし、ライスはこれらの問題を静かにリードしている。彼女はホワイトハウスから人種的平等や立ち退き防止などの問題に関するラウンドテーブル会議を数回開いたが、記者会見にはバイデン大統領就任の6日後に一度だけ出席し、記者たちの質問に答えただけで、メディアのインタヴューにはほぼ応じなかった。

国家経済会議委員長のブライアン・デシーは8回のブリーフィングに出席している。バイデンの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは、エアフォース・ワンでの非公式な会合を除いて11回参加している。

ガルストンは次のように述べている。「ライスは脚光を浴びないようにしている。頭を低くして仕事をするというのは、かなり良い方法であり、彼女はその方法に従っているのだと思う」。

国内政策担当大統領補佐官という役職は、大統領府の他の役職に比べ、明らかに知名度が低い。外交政策に長け、オバマ大統領(当時)の下で国連大使と国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたライスにとっては大きな変化である。

それでも、たとえ従来の職務内容とは異なるとしても、政権はライスをもっと表に出すべきだという考える人々も存在する。

ある民主党系のストラティジストは「率直に言えば、ライスはもう少し表舞台に出てくるものと思っていた。彼女はとても高い能力を持っている。副大統領でも国務長官でも良かったのに、政権に最大限のインパクトを与えるような形で彼女を活用しているとは思えない」と述べた。

このストラティジストは続けて「それは彼女の役割ではないと言う人もいるかもしれないが、なぜそうしてはいけないのか」と述べた。

あるホワイトハウス高官は月曜日、ライスは数日おきに様々な団体と公の場で話していると反論し、「彼女は仕事そのものに集中しており、アメリカ国民にその仕事を説明する機会があればそれを受けている」と付け加えた。

この高官は「ライスはかなりの量の公の場に出ているが、それは必ずしも常に報道機関を通してではない」と述べた。

しかし、舞台裏では、ライスはその力を行使してきた。

ライスは、ジョージ・フロイドの殺害から2年目の先月、バイデン大統領が署名した待望の警察官職務執行命令の作成に深く関わっていた。

警察友愛会のジム・パスコ事務局長は、警察団体を憤慨させた大統領令の草案が流出してから間もなく、日曜日の夜、フットボール観戦中にライスから電話を受けたことを思い出した。

ライスはインタヴューで、バイデン政権が「リセット(reset)」を望んでいると語った。

パスコは「スーザン・ライスとホワイトハウス顧問のダナ・リーマスは、他の上級スタッフとともに、その時点から事態の真っただ中にいたのである」と述べた。

ホワイトハウスは、最終的に警察組織や公民権擁護団体に受け入れられるように、法執行団体と協力して最終命令の内容について交渉した。

パスコはスーザン・ライスについて、「彼女はタフな交渉人だ。バイデン政権の“レッドライン”がどこであるかを率直に述べた。彼女は公正な交渉人だった」と述べた。

ライスはまた、アメリカ南部国境で移民が急増する中、移民政策をめぐる論争でも中心的な存在となっている。

ライスとバイデン大統領の首席補佐官ロン・クレインは昨夏、アメリカ合衆国法典第42条の撤廃が南部国境への移民の流入を助長するのではないかと懸念したと4月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じた。 

ライスはまた、新型コロナウイルスワクチンを移民に投与する計画を、国境越えを助長することを懸念して阻止した当局者の一人であると報じられた。

ホワイトハウスに近いある民主党連邦議員は、「彼らは自分たちの手で新たな危機を作りたくなかった。ライスや他のホワイトハウス関係者が強調しようとしていたのはそのことだったと思う」と述べた 

昨年、バイデン氏のティームが、民主党の票だけで上院を通過させることができる「ビルド・バック・ベター」法案の妥協案に連邦上院議員を同意させようとしたが、失敗したため、ライスは頻繁に連邦議会を訪問するようになった。

バイデンのある側近は「彼女は、ある種の影響力と重厚さを持ち、それらは彼女と仕事を共にする人々にとって失われることはない。彼女は優秀で、勤勉で、思慮深い人だ。彼女は、“くそっ、なんて頭がいいんだ”と言って人々が立ち去るような人だ」と述べた。

このホワイトハウス政府は、ライスが国内政策会議に独自の足跡を残したのは、従来の局長、副局長、その下の専門家という組織ではなく、4人の副局長を4つの柱のトップに据えたことで、政権が全ての重点分野を一度に推し進められるようにしたためだと指摘する。

「これは、その時々の状況にもかかわらず、私たちや大統領がポイントを獲得し続けられるようにしたいという彼女の願望を物語っている」と、この関係者は語った。

この側近は、「これは、その時々の状況にもかかわらず、私たちや大統領がポイントを獲得し続けられるようにしたいという彼女の願望を物語っている」と語った。

スーザン・ライスは、バイデン政権に早くから参加したオバマ時代の幹部たちの一人である。彼女、クライン、ブルース・リード大統領次席補佐官、その他の高官たちは、週に数回、大統領執務室でバイデンにブリーフィングをしているということだ。

クラインは月曜日、本誌に対して声明を送り、その中で次のように述べている。「スーザンがアメリカの歴史上、ホワイトハウスの国家安全保障会議と国内政策会議の両方を率いた唯一の人物であることには理由がある。それは、彼女はユニークな才能と知性、そして結果を出すための決意をもっている。スーザンとバイデン政権の国内政策会議ティームのおかげで、500万人以上のアメリカ人に医療保険が提供され、130万人の学生ローン債務者たちを救済し、公平性と一般的な安全を向上させる歴史的な大統領命令を出すなど、歴史的な勝利を収めることができた。最も印象的なのは、ホワイトハウスの取り組みの先頭に立って、銃の本質的な改革についてアメリカ人の命を守るためにたゆまぬ努力を続けてきたことだ」。

ライスは当初国務長官候補と噂されていたが、ライスが連邦上院で人事承認されるには票が足りないという民主党内で懸念があり、最終的にバイデンは長年の側近であるアントニー・ブリンケンを国務長官に抜擢した。

ライスは、2012年のベンガジ事件への対応に関与したことから、以前から共和党の間で批判の的となっていた。

ベンガジ事件の対応中、ライス氏は日曜番組に出演し、リビアのアメリカ領事館への攻撃は計画的なテロ攻撃ではなく、抗議が暴動化した結果であると発言した。その後、オバマ政権はテロ攻撃であったと発表した。

ベンガジは、当時のヒラリー・クリントン国務長官、バラク・オバマ大統領、ライスに対する主要な論点となり、何年にもわたって議論された。民主党議員の多くは、ライスがバイデン大統領の副大統領候補として見送られた理由の一つがベンガジ事件だと言っている。

約10年前のベンガジ事件に関する連邦下院調査委員会を率いたダレル・アイサ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は5月下旬に次のようにツイートした。「ホワイトハウスは、銃規制のメッセージを伝えるのにスーザン・ライスの右に出る者はいないと言っている。ベンガジ事件の隠蔽工作の張本人なのに? これ以上悪い人物はいないのだが」。

しかし、銃規制推進派はライスの仕事に満足している。もっとも、国内政策会議が競合する優先事項を考慮し、この問題に専念するためのオフィスを設けるよう主張する者もいる。

ライスの指導の下、国内政策会議は「オバマ政権時代よりも確実に銃の安全性に取り組んでいる」と、銃規制推進団体「ギフォーズ」のピーター・アンブラー事務局長は語った。アンブラ―は「ライスは、暴力介入戦略や資金調達に対する政権の取り組みを拡大するなど、いくつかの重要な取り組みについて前進させたと思う」と述べた。

ホワイトハウスのある高官によると、ライスのオフィスは、精神衛生や医療など他の政策分野と結びつけて、銃暴力に対処する幅広いアプローチを取っているという。

この高官は、「私たちは、銃政策の課題が他の多くの重要な政策課題と結びついていると考え、それが比較優位だと見なしており、狭い視野で見ているわけではない」と述べた。

全米教職員連盟のランディ・ワインガーテン会長は、学生ローンや公民権教育などの問題でライスとズームを通じてして会談したと述べ、ライスを「隅々まで目を配り」ながら、バイデン政権が政策を決定する際に外部の人々を本当に巻き込む人物だと評した。

ワインガーテンは「スーザン・ライスとミーティングをする前に、下調べをしなければならない。なぜなら、たとえ事前に準備をしていても、彼女はあなたが答えを知らないような質問をするはずだからだ」と述べた。

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バイデン大統領の移民政策には混乱と信念の欠如がつきまとう(Confusion and lack of conviction plague Biden’s immigration policies

ノーラン・ラパポート筆

2022年4月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/immigration/3275462-confusion-and-lack-of-conviction-plague-bidens-immigration-policies/

大統領選挙の選挙運動中、バイデン大統領はトランプ政権の国境政策を速やかに覆すと約束した。しかし、彼はアメリカ南西部の国境で殺到するのを防ぐために、後にその約束を撤回した。移民を処理するシステムを再構築するには、おそらく半年は必要だろうと述べた。

バイデンは、前政権の政策を急速に変更すると200万人の移民を国境に抱えることになることを恐れていた。バイデンは「それは成し遂げられるだろうし、素早く成し遂げられるだろうが、大統領就任初日に成し遂げられることはないだろう」と述べた。

しかし、大統領就任第一日目にバイデンは諸点について次のように述べた。

・イスラム教徒の旅行禁止の取り消し。

・強制送還可能な移民を事実上全て移民法執行の対象としていたトランプ大統領の執行優先順位の取り消し。

・国外退去の100日間の一時停止を宣言。

・国境の壁建設を中止。

・「メキシコ残留プログラム(MPP)」の登録の一時停止。

なぜ、このようなことをしたのだろうか? バイデンは何が起こるか知っていた。

アメリカ南西部国境での不法入国者の逮捕数は2021年度に170万人に達し、これは過去60年以上で最高記録であり、2022年度の最初の6カ月間で更に100万人以上が逮捕された。

これらの統計には、不法入国を目撃されながら逮捕されなかった「逃亡者(gotaways)」は含まれていない。2022年度には、これまでに約30万人の逃亡があった。

バイデンの「メキシコ残留プログラム」への対応は、不可解な政策のもう一つの例である。

このプログラムへの新規登録の停止から4ヶ月後、バイデンはこのプログラムを終了させる覚書を出した。2021年8月、連邦地方裁判所は、テキサス州とミズーリ州の対バイデン裁判で、メキシコ残留プログラム終了は行政手続法(APA)の規定に準拠しておらず、INA1225条の強制収容規定に行政が違反する原因になっていると示した。

裁判所は全国的な差し止め命令を出し、行政に次のように命じた。「連邦政府が第1255条の強制収容の対象となる全ての外国人を収容するのに十分な収容能力を持つようになるまで、収容資源の不足を理由に外国人を釈放することなく、メキシコ残留プログラムを誠実に執行し実施すること」。

バイデンはメキシコ残留プログラムの放棄を望んでいるが、彼は国土安全保障省の収容能力を増やしていない。それどころか、バイデン政権の来年度の予算要求によれば、既存の施設のベッド収容能力を25%以上削減するつもりになっている。

バイデンは何故、メキシコ残留プログラムを終了させることができるように、差止命令の収容要件に従わないのだろうか?

最新の不可解な決定は、バイデンが今月初めに、アメリカ合衆国法典第8編の移民法の規定によって通常要求される処理なしに、アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)が不法入国者たちを追放することを許可する第42号命令を基にした命令を終了させたときに起こった。しかし、この解除は5月23日まで有効ではない。

バイデンの国内政策担当大統領補佐官であるスーザン・ライスや他の高官たちは、国境沿いのコミュニティを新型コロナウイルス感染拡大から守り、移民たちの大量解放を回避し、高レヴェルの国境逮捕による政治的圧力を軽減するために、第42号命令が必要だと主張している。

ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)はツイッターで、「国境政策に他の変更を加えずに第42号命令を削除すれば、移民と麻薬の津波が発生する」と述べた。

国土安全保障省の担当者たちは、命令が解除された場合、1日あたり1万8000人が国境で逮捕される可能性があると考え準備をしている。

また、連邦議会では第42号命令の解除を一時停止すべきだと主張する民主党所属の議員たちも増えている。

連邦上院国土安全保障委員会委員長を務めるゲーリー・ピーターズ連邦上院議員(ミシガン州選出、民主党)によると、5月23日までに国境政策を終了するというバイデン大統領の決定は、「よく考えられた計画」ができるまで「再検討されるべきで、おそらく延期」されるだろう、と述べた。

国土安全保障省は、移民が増加する可能性がある場合の準備についてファクトシートを発表しており、国土安全保障省は準備の全てを明らかにしている訳ではないと主張している。非公開の準備が何であるかは分かっていないが、バイデンの国境警備対策がこれまで著しく不十分であったことは知っている。

ファクトシートにある主要な条項は、新しい移民プロセスで、亡命申請を裁くために多くのアメリカ市民権・移民業務局の亡命担当者を追加で雇用し、訓練する必要があるというものだ。しかし、バイデン政権のある高官は記者団に対し、このプロセスは5月末か6月まで始まらない見込みであり、実施後数カ月は多くの移民をこのプログラムの対象にすることはないと予想していると述べた。

また、この計画では、違法な国境越えをした後に逮捕された家族専用の訴訟事件記録簿を作成することを求めている。これは、以前にも2つの政権で試みられたことがあるが、移民裁判所の業務停滞がはるかに少なかったのではあるが、2回とも失敗している。

●可能な説明

2021年11月、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、ホワイトハウス内の2つの陣営を紹介し、それぞれが移民法執行の主導権を握ろうとしていると主張した。

1つの陣営は、大統領首席補佐官ロン・クライン、国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァン、ホワイトハウス上級顧問セドリック・リッチモンド、そして国内政策担当大統領補佐官スーザン・ライスだ。彼らは、不法入国を抑止する戦略を提唱している。

もう1つの陣営には、バイデン大統領の選挙アドヴァイザーたち出身で、「現在、ホワイトハウス、国土安全保障省、国務省で移民政策のトップの地位にある人たち」が多く含まれている。彼らは、抑止力は機能しないと主張する。彼らは移民制度を見直し、亡命申請をより早く解決し、亡命希望者たちが自国から申請できるようにし、より法律に基づいた移民経路を作りたいと考えている。

多くのホワイトハウス高官たちが、こうした問題をめぐって大統領の補佐官たちと繰り返される喧嘩に不満を募らせ退職していった。

最近の争点は、第42号命令を撤回するかどうかだと言われている。

バイデンと側近たちはこの制限を解除すれば、アメリカ南西部の国境に更に多くの移民を呼び寄せることになるとの懸念から躊躇している。このことは、バイデンがトランプの政策を停止するのを助けるためにホワイトハウスにやってきた移民擁護者たちを困惑させる。

バラク・オバマ前大統領の移民問題担当大統領補佐官を務めたセシリア・ムニョスは、「一部の擁護者たちは、自分たちの立場と国境開放の立場との間に違いがあるとしても、それを把握していない。そして、国境開放の立場は、この国では忌み嫌われるものなっている」。

このような状況なので、バイデンは、彼の政策を実現する方法を見つけるべき人たちから、様々な方向に引っ張られるようになっている。これが、彼の移民対策が深刻な意図せぬ結果を招いている理由だと考えられる。

※ノーラン・ラパポート:行政府移民法専門家として連邦下院司法委員会に3年間勤務した。その後、連邦下院移民・国境警備・請求権小委員会の移民法顧問を4年間務めた。司法委員会に勤務する以前は、20年にわたり移民審判委員会の判決文を執筆した。

ブログのアドレス:https://nolanrappaport.blogspot.com

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報告:ホワイトハウスの移民対策ティームの重要人物が退任へ(Key member of White House immigration team retiring: report

オラミフィハン・オシン筆

2022年1月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/588663-key-member-of-white-house-immigration-team-retiring-report/

バイデン政権の国内政策会議(DPC)の移民担当副委員長であるエスター・オラヴァリアが退任することになった。

ホワイトハウスの報道官は、『ポリティコ』誌とCNNにオラヴァリアの退任を認めた。

国内政策会議委員長スーザン・ライスは、「バイデン・ハリス政権へのエスター・オラヴァリアの無数の貢献、特に前政権の残酷で無謀な政策を覆し、公正で秩序ある人道的な移民制度のためのバイデン大統領のヴィジョンを実現するための彼女の仕事には、これ以上ないほど感謝している」と、ポリティコ誌に送った声明で述べている。

ある関係者はポリティコ誌に対し、オラヴァリアはホワイトハウスでの最後の日がいつになるかは決めておらず、当面は政権と仕事を続けていくと語った。

今回の件は、バイデン政権で移民に関する上級アドヴァイザーをおよそ6カ月を務めたタイラー・モランが今月で退任することが決まっていることに続く発表となった。

本誌はホワイトハウスに本件についてコメントを求めている。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 古村治彦です。

 民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領が誰を副大統領候補(vice president candidaterunning mate[選挙を共に戦う相棒])に選ぶか、注目が集まっている。バイデンは既に女性を選ぶと明言しており、これまでに数十名の候補者の名前が挙がっている。

 その中でも、以下の記事にある6名、大統領選挙の民主党予備選挙で争ったカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)、タミー・ダックワース連邦上院議員(イリノイ州選出、民主党)、カレン・バス連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)、ミシガン州知事グレッチェン・ウィットマー(民主党)、元国連大使・元国家安全保障問題担当大統領補佐官スーザン・ライスが有力候補と見られている。

 バイデンは「自分と考えが共通している人物を選ぶ」とも述べている。考えが違うと、政権内での争いの理由となってしまう。下に挙げている女性たちとは仲が良いようである。ハリスはアメリカの鉄道公社アムトラックの電車で通勤するという縁で親しくなり、ライスとはオバマ政権の8年間を共にしている。

 大統領選挙のことを考えると、連邦議員たちはそれぞれブルー・ステイト(Blue States)、民主党優勢州を地盤にしているので、今更テコ入れの必要はないので、重要性は低い。ウィットマーは、2016年の大統領選挙で民主党が落としたミシガン州知事であり、ミシガン州を確保したいとなれば、バイデンはウィットマーを副大統領候補に選ぶ可能性がある。

 政府での経験、特に外交の経験で言えば、スーザン・ライスということになる。ライスを副大統領候補に推す意見の中には、「バイデンは高齢であり、にもしものことがある可能性も高い。そうなれば大統領に昇格することになるので、経験豊富な人物の方が良い」というものがある。ライスが副大統領、そして大統領ということになれば、民主党内の人道的介入主義派が外交を牛耳るようになり、対外強硬姿勢ということになり、対中、対北朝鮮で東アジア地域が不安定になる可能性が高い。

 タミー・ダックワースはタイ系アメリカ人であり、イラクでの従軍中の事故で両足を切断する大怪我を負い、名誉戦傷勲章であるパープル・ハート勲章を授与された。ダックワースは閣僚として政権入りする可能性が噂されている。退役軍人長官就任の可能性がある。

 民主党全国大会も近づき、副大統領候補をそろそろ発表しなければならない時期である。誰を選ぶかで、バイデンの政権構想や選挙戦略が見えてくる。

(貼り付けはじめ)

バイデンが副大統領候補選びの最終段階に:順位を上げている日立と下げている人たち(Biden edges closer to VP pick: Here's who's up and who's down

エイミー・パーネス筆

2020年8月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/511131-biden-edges-closer-to-vp-pick-heres-whos-up-and-whos-down

ジョー・バイデンは今週末にも副大統領候補を選ぶものと見られている。最初に数十人の候補者の名前が挙がり、数カ月にわたり取り沙汰されてきたが、複数の関係者によると、候補者は数名にまで絞られてきているということだ。

候補者全ては選考の中で株価を上げる次点というものを経験した。

ある候補者に近い人物は次のように述べている。「興味深い点はどうなるかは最後まで全く分からないということです。どの候補者も自分が何番手にいるのかを正確には分かっていないんです」。

これから副大統領候補として有力な人々について見ていく。

●カマラ・ハリス(Kamala Harris
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カリフォルニア州選出の民主党所属の連邦上院議員であるハリスは、副大統領候補レースで常に名前がトップに出てきている。多くの専門家たちは、その中にはバイデンに近い人々も含まれているが、ハリスが有力候補であり続けていると考えている。

しかし、ここ最近、ハリスは、バイデンとバイデン陣営との間で緊張関係にあるという報道がなされていることを不快に思っている。

複数の関係者は、複数の関係者に最後のお願いの電話をし、最後の最後での支持をお願いしている。

ハリスと話をしたある人物は「彼女は副大統領候補になりたいのは間違いないですよ」と述べた。

有力候補の位置にある現在でも、「彼女は本当に選ばれるか心配しています」とその人物は述べている。

●スーザン・ライス(Susan Rice
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バイデンの側近たちは、オバマ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたライスは候補者リストの上位につけている。その理由としてバイデンと緊密な関係を持っているということが挙げられている。

バイデン、ライス共に知っているある人物は「バイデンは、スーザンと協力できることは分かっている」と述べている。

ここ数週間、ライスはケーブルテレビの番組に多数出演し、バイデンの応援を行ってきたが、自身の副大統領候補となる見通しについては発言を控えていた。それでも副大統領候補となるために全力を尽くしている。

今週初めの「CBSディス・モーニング」でのインタヴューの中で、ライスは「行政府の最高クラスの地位での20年にわたる豊富な経験」を自分自身が持っていることを強調した。

ライスは数年前にネットフリックスの取締役となったが、株式のオプションを行使した。木曜日、『ハリウッド・レポーター』誌が報じたところでは、これは彼女が利益の相反を避けることを意図して行ったということだ。

●グレッチェン・ウィットマー(Gretchen Whitmer
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ウィットマーは、サプライズで、副大統領候補レースで順位を上げている。

複数の取材源が今週、本誌の取材に対して、ウィットマーは副大統領候補レースの最終段階で動きを続けているということだ。ある関係者は、ミシガン州知事ウィットマーは先週末デラウェア州を訪問し、バイデンと会い、一対一の最終面接を行った、と述べている。

民主党の幹部たちは秘密の世論調査の結果で、中西部北部地域がバイデンの弱点となることを懸念している。そのためにバイデン陣営はウィットマーを名簿から外すことができないでいると考えられている。

プラスして、ウィットマーとバイデンは気が合う。

バイデンに近いある人物は次のように述べている。「彼女が候補に残っているのは驚くことではないですよ。バイデンはウィットマーに好感を持っていますからね。これまでずっと」。

バイデンに近いある人物は、ウィットマーが早い段階でバイデン支持を表明したこと、民主党の新しい力を象徴していること、バイデンがどうしても勝ちたい州の出身であることを指摘している。

●カレン・バス(Karen Bass
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バスは民主党所属の連邦議員における有力候補である。しかし、彼女の株価は少し下がっている。先週複数のメディアが、バスのキューバとサイエントロジーに関する発言を報道した。

カリフォルニア州選出の民主党所属の連邦下院議員バスは、連邦議会アフリカ系アメリカ人議員連盟の委員長として多くの議員を従えて行動したが、それでメディアに多く報道されるようになった。彼女は現在も有力候補である。連邦議員としての立法経験と政府との関係の深さでバイデンを補佐することができると見られている。

バイデンに近いある人物は次のように述べている。「もしあなたがジョーのことをよく知っていたら、なぜ彼女が候補者の上位に来るか、その理由も分かると思いますよ。彼女はジョーにとって良いパートナーとなるでしょう」。

しかし、先週末のNBCの「ミート・ザ・プレス」での彼女のインタヴューが放送された後、民主党の内部には彼女を選ぶのはリスクが高いと考える人たちも出てきている。彼女を選ぶことで、重要な激戦州であるフロリダ州でバイデンへの票を減らしてしまう可能性がると考える人たちも出ている。フロリダ州にはキューバ系アメリカ人も多く住んでいる。

●エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren
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最近、ウォーレンは他の有力候補者たちに比べて静かである。

しかし、バイデンに近い人々は、ウォーレンが静かだからといって彼女が候補者から外されたと専門家たちが判断すべきではないと述べている。

副大統領選びの初期段階、ウォーレンとバイデンは頻繁に連絡を取り合っていたと関係者は取材に答えている。そして、バイデンが最近発表した経済に関する公約に関して、ウォーレン以上に影響を及ぼした人物は他にいない。

金曜日に『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載された記事の中で、ウォーレンは前のセカンドレディーのジル・バイデンと協力し、バイデンが発表した経済公約の子供たちの教育とケア分野の内容作成にかかわったと発言している。

ウォーレンはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、バイデンが「早い段階でこの問題に関心を持っていた」と述べている。

ウォーレンは更に、「このことから私は、バイデン政権ができたら子供たちの教育とケアが重要政策となるだろうという希望を持つようになっています」とも述べた。

●タミー・ダックワース(Tammy Duckworth
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バイデンに近い複数の民主党関係者は、バイデンがダックワースに好感を持っていると述べている。関係者は、イリノイ州選出の民主党所属の連邦上院議員であるダックワースが、イラク戦争に従軍し、パープル・ハート勲章を授与されているという経歴を持っており、この経歴が有権者の支持を集める上で極めて重要なことになるだろうと述べている。

それでも、関係者たちは、彼女が最終的に副大統領候補になれるかどうかについて懐疑的ではある。

バイデンに近いある人物は「ダックワースの名前は閣僚としてよくあがっているんですよ」と述べている。

ダックワースは水曜日、NPRのインタヴューの中で次のように述べている。「私はジョー・バイデンを当選させたいんです。私は彼のティームに協力してどんな仕事でもやりますよ。私たちが現在陥っている危機から脱出させることに役立つと彼が考えることを実現したいのです。それは世界規模での新型コロナウイルス感染拡大、我が国の経済状況、我が国への敵対国や敵対勢力といった問題なのです」。

ダックワースは次のように述べた。「私はただバイデンを当選させたいだけです。そうすることで私たちは道を逸れた私たちの国を元に戻すことができるのです」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ジョージ・フロイド事件からアメリカやヨーロッパではデモや暴動が起きている。人種差別をなくすという主張は、法の下で平等に扱ってくれという要求であり、そのことは当然のことだ。暴動や略奪は問題解決にはつながらない。

こうした状況で、アメリカ国内の南軍由来の米軍基地の名前を変更する、とか、映画『風と共に去りぬ』の配信をアメリカ国内で停止するといったことは、やり過ぎだし、そうしたことをしたからといって歴史は変えられないし、何より歴史を抹殺してなかったことにすることにつながり、かえって良くない。

 今年はアメリカ大統領選挙の年であり、共和党では現職のドナルド・トランプ大統領、民主党ではジョー・バイデン前副大統領が本選挙で戦う。バイデンは副大統領候補に「女性を選ぶ」と発表している。既に多くの名前が出ている。そうした中で、根強い人気があるのがミッシェル・オバマである。バラク・オバマ前大統領の夫人であり、前ファーストレディだ。以下にミシェル・オバマが副大統領候補になる可能性について古い記事をご紹介する。
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 バイデンはアフリカ系アメリカ人有権者からの支持で、民主党予備選挙で大客点を起こし、勝利することができた。2016年の大統領選挙では、民主党候補者(ヒラリー・クリントン)への投票率が下がったアフリカ系アメリカ人有権者を再び取り戻すためには、アフリカ系アメリカ人女性が良いということも一つの考えではある。しかし、バーニー・サンダースを支持する有権者が多かったヒスパニック系を惹きつけるためには、ヒスパニック系の女性だという声も大きい。

 ミシェルは夫バラクよりも頭脳明晰で、行動力があり、立派な人物だと言われている。しかし、頭が良すぎるために、普通の政治家のように振舞うことができないようだ。愛想を振りまくといったことができない。相手が馬鹿に見えてしまうと、それがそのまま露骨に態度に出てしまうというのは政治家としては欠点だ。

 やはりアフリカ系アメリカ人女性ということになると、スーザン・ライスということになるだろう。ミシェルはヒラリーと相いれないだろうし(お互いが自分の方が頭が良いと思って嫌い合う)、ミシェルにはやはり政治や行政の経験がない。それに比べれば、ライスの方が経験豊富だ。何よりバイデンが大統領に当選しても何か重大なことが起きれば、大統領になるとなれば、ライスということになるだろう。
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 大宅壮一が以前、藤山愛一郎が岸信介に唆されて政治の道に進むとなった際に、「絹のハンカチをぞうきんに使うな」と述べた。政治とは汚い世界であり、向かない人物は近づかない方が良い。藤山も利用されるだけされて、最後には捨てられ、「井戸塀政治家(政治をやって最後には井戸と塀しか残らなかった政治家)」の見本となった。ミシェルは政治には向かないだろう。そのことはミシェルもバラクもよく分かっているだろう。望まれているうちが花である。

(貼り付けはじめ)

バイデンが民主党の候補者となれば、ミシェル・オバマを副大統領候補として選ぶだろうか?(If Biden’s the Nominee, Might He Pick Michelle Obama as His Vice President?

ジョン・ファンド筆

2020年3月8日

『ナショナル・レヴュー』誌

https://www.nationalreview.com/2020/03/joe-biden-might-he-pick-michelle-obama-as-his-vice-president/

彼女は民主党の大統領選挙において有利な点を与えることになるが、彼女自身は選挙に出ることに関心をほぼ持っていない。

民主党にとって良いニュースは、バーニー・サンダースが今年の秋に大統領選挙候補者となる可能性はかなり低くなったことだ。悪いニュースはジョー・バイデンが大統領選挙候補者として強みがないということだ。結果として、彼が自分の立場を強くするために誰を副大統領候補に選ぶかについての議論の緊迫度が高まっている。民主党の指導者層はこの議題で激しい議論を展開している。

多くの人が考えるのは、バイデンの副大統領候補は、大胆な選択であると同時に、2016年にヒラリー・クリントンが失ったマイノリティの投票を強力に集めることができる人物であるべきということになる。連邦下院多数党(民主党)幹事長ジム・クライバーン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、民主党)は最終的にバイデン支持を表明し、サウスカロライナ州でのバイデンの圧勝をもたらした。クライバーンは明確な考えを持っている。

クライボーンは記者団に対して次のように見通しを話した。「今年の副大統領候補の候補者名簿に女性が入っていないということは考えられない。私はその人物が非白人であれば更に良いと思う」。

クライボーンと同様の趣旨の発言を行ったのはヴァレリー・ジャレットだ。彼女は8年間にわたりオバマ大統領の上級顧問を務めた。ジャレットはCBSニュースの取材に対して、「民主党の大統領選挙候補者は一般的な通年を打ち破り、非白人の女性を副大統領に選ぶべきでしょうし、そうするでしょう」と述べた。

この時、ジャレットの発言はそれだけにとどまった。結果、ジャレットは誰が副大統領候補にふさわしいかということまで言う機会はなかった。しかし、オバマ家に対してジャレットよりも近い人はいない。ジャレットが副大統領候補として非白人の女性の名前を上げる場合に、ジャレット自身が30年近くずっと親しくしている女性を候補者に入れないということは考えられないと誰しもが考える。その女性とは、ミシェル・オバマ、である。

ジャレットとミシェルは30年以上の知己である。1991年、当時のシカゴ市長リチャード・デイリーの次席補佐官だったジャレットは当時26歳のミシェル・ロビンソンの就職面接を行った。ハーヴァード大学法科大学院の卒業生ミシェル・ロビンソンはジャレットに強烈な印象を残した。ジャレットは自伝の中で「ミシェルからは有能さ、性格の良さ、誠実さが感じられた」と書いている。ジャレットはミシェルを採用した。そして、ジャレットはミシェルから婚約者のバラク・オバマを紹介された。ジャレットはカップルを庇護し、シカゴのエリートたちに紹介した。これこそは、オバマ家がホワイトハウスにまで上昇するスタートであった。第二弾の動きのために時期は今ではないか?

ミシェルが副大統領候補になれば民主党の支持基盤には人気となるだろう。そして、バイデンが民主党の大統領選挙になる場合に、今年の11月に多くの投票を必要としているのはこの支持基盤である。先月カリフォルニア州において、スタンフォード大学フォーヴァ―研究所、ビル・レーン・センター・フォ・ジ・アメリカン・ウエスト、YouGovが、登録済み有権者1507名を対象にした世論調査を協働に実施した。その中で、副大統領候補に誰が良いかという設問があった。

有権者たちは明確に女性を支持している。有権者のうち31%がミシェル・オバマの名前を挙げている。続くのはカリフォルニア州選出連邦上院議員カマラ・ハリスで19%、第三位にはミネソタ州選出連邦上院議員エイミー・クロウブッシャーが入り18%、元ジョージア州上院議員ステイシー・エイブラムスが13%で4位に入った。そして、カリフォルニアを地盤とするヴェンチャーキャピタリストであるトム・ステイヤーは10%の支持を集めた。

普通に考えれば、ミシェル・オバマを副大統領候補にするということは全く実現性のない、問題外のことであるということになる。ミシェル・オバマは、人々の見えない場所では、自信に満ちた態度であり強引であると知られている。強引な人物という評判を持つ人物がこれまで副大統領に選ばれたことはあまりなかった。現在82歳になるジョー・バイデンが大統領に当選しても再選を目指して出馬するだろうと考える人はあまりいない。そのため、ミシェルが副大統領となれば、バイデンの跡継ぎを狙っていると見られる危険性はある。ミシェルは有権者の多くの人気を集めてはいるが、彼女は共和党側と協力すること、自分が馬鹿だと考えている人たちを丁寧に扱うことには全く興味関心を持っていない。

しかし、バイデンはミシェルを副大統領候補にするという考えを受け入れ、支持することを公言している。今年2月にアイオワ州の選挙集会である有権者からの質問に対し、元ファーストレディを副大統領候補に「すぐにでも」選びたいとしながらも、オバマ家はホワイトハウスを出てからの生活が「少し解放された」ようなもので気に入っている、と述べた。昨年9月、スティーヴン・コルバートとのインタヴューの中で、バイデンは、ミシェルを副大統領にするという考えを支持していた。その前に、バイデンは「冗談だからね、ミシェル、冗談を言っているんだから」と述べた。

しかし、バイデンは冗談を述べたのだろうか?シカゴ時代からのある知人は次のように述べている。「オバマ家は人々の注目を集める生活から離れて3年を過ごしました。しかし、トランプ大統領が再選され、2期目を迎えることになると、彼はオバマ前大統領が行ったこと全てを破壊するという自身の公約を完結させることになるでしょう。ミシェルが副大統領候補になることで、そのようなことが阻止できるということあれば、出馬するという選択肢は全く問題外ということでもないでしょう」。

もしバイデンがアフリカ系アメリカ人を副大統領候補にしたいと望むならば、その他の選択肢は様々な問題を示している。バイデンは副大統領候補となる人物はメディケア・フォ・オールに反対しなければならないと述べた。これではニュージャージー州選出のコーリー・ブッカー連邦上院議員を副大統領候補に起用することはできない。2018年のジョージア州知事選挙で善戦したステイシー・エイブラムスに関しては、問題は複雑となる。エイブラムスは州議会以上の経験を持っていない。また、全国規模の選挙に出馬ということになれば彼女の過去は詳しくほじくり返されることになるだろう。

カリフォルニア州選出の連邦上院議員カマラ・ハリスは候補者の1人だ。ハリスに関してマイナス面は、昨年夏の討論会でハリスは、強制的なバス通学にバイデンが過去に反対したことは人種差別的だと昔のことをほじくり返して、バイデンを激しく攻撃したということだ。しかし、バイデンは政治上の恨みを長く引きずっている訳ではない。ハリスに関しては、いくつかの秘密裏の世論調査の結果が示しているのだが、ハリスがアフリカ系アメリカ人とインド系アメリカ人の両方の血を引いているということを知ったアフリカ系アメリカ人有権者たちの中に、彼女への支持を止める人たちが出ている。

バイデン大統領候補とオバマ副大統領候補実現の大きな障害は、当然のことながら、ミシェル・オバマは副大統領候補になるという考えに興味を持っていないと表明していることだ。2018年にテレビ番組『ジミー・キンメル・ライヴ』に出演した際、ミシェルは選挙に立候補しないと述べた。「選挙に出ることについて誰とも真剣に話したことはないんですよ。何故なら私は全く関心を持っていないし、選挙に出ることはないからです。絶対にやりません」。

ミシェルの配偶者も同意している。「いいですか、人生において確かなことが3つあります。死、租税、そしてミシェルが大統領選挙に立候補しないこと、です。私に言えるのはこれだけです」。

このオバマ前大統領の発言はオバマ側近の多くが合意できる内容である。彼らは、ミシェル・オバマは長年にわたり政治と資金集めの汚さを軽蔑していること、娘2人を守りたいという強い希望を持っていること、考えが合わない人々と親しげに交流することを好まないことを指摘している。MSNBCのコメンテイターを務めるマイケル・スティールは次のように語っている。「私がアフリカ系アメリカ人として初めて共和党全国委員会委員長に就任した際、オバマ一家と一緒に写真を撮ったことがありました。彼女は私に対する嫌な気持ちを隠せない人でした。純氷のような人ですよ。彼女はにこりともせず、私をにらみつけていました。そして、私は現像した写真をもらうことはありませんでした」。

しかし、これに対抗する主張も存在する。副大統領候補になれば、ミシェルは15週間だけ選挙運動をやればよいということになる。大統領候補となると選挙運動の期間は2年となる。ミシェルは強く望めば政治資金集めをしなくても済むだろう。娘2人は今大学生になっている。そして、主流派メディアは娘たちについての報道の制限を続けている。それでは、彼女は群衆と会うことを好んでいないことを報道しているだろうか? 民主党系の世論調査専門家であるある人物は次のように語った。「彼女はイヴェントなどに文字通り出席だけはするが、あまり話をすることはないんです。それでも群衆は彼女が大好きなんですよ」。

こうした主張全てを考慮しても、ミシェルが出馬するだろうかという質問の答えはノーということになるだろう。しかし、ミシェル・オバマにイエスと言わせるためのとっておきの手段が存在する。今年2月のアイオワ州での選挙集会において、バイデンはバラク・オバマを最高裁判事に起用する可能性があるかと質問された。歴史を振り返ってみると、元大統領で1人だけ、ウィリアム・ハワード・タフトが1920年代に大統領執務室から最高裁に進んだ。バイデンは、「そうですね、その可能性はありますが、彼がそれを受けないと思いますよ。彼は素晴らしい最高裁判事になることができるでしょうけれど」と答えた。

しかし、私はこのバイデンの考えが正確かどうか疑問を持っている。法科大学院教授を勤めたこともあるオバマは最高裁の知的な雰囲気にマッチすることができるだろう。そして、アメリカで最高の裁判所に彼より適している人物が他にいるだろうか?バラク・オバマは、最高裁判事のクラレンス・トーマスのアフリカ系アメリカ人の立場を強化する保守主義(black-empowerment conservatism)と交代できるだろうし、トランプ政権の遺産の多くを打ち倒すための必要な決定票を投じることができるだろう。

民主党内部には、ミッシェルを副大統領候補にしたいと奔走している人々がいる。そうした人々は、バイデンがバラク・オバマを副大統領候補に選ぶのではないかと疑いを持っている。しかし、2016年にも似たような考えがあった。夫ビル・クリントン元大統領を副大統領にするかどうか、ヒラリー・クリントンは質問されたことがあった。ヒラリーは、その考えが「頭をよぎった」ことは認めたが、それは非立憲的だと否定した。ヒラリーはテレビ番組「エクストラ」の司会者マリオ・ロペスに次のように語った。「ビルは素晴らしい副大統領になるでしょうが、現在の憲法では、彼には資格がないのです。ビルは大統領量を2期務めました。そして、彼が副大統領としてこの2期という制限を超えることはできないということになると思います。少なくとも私はそのように言われています」。

ミシェル・オバマが副大統領候補になる可能性について私が議論した人全ては、ミシェルを副大統領候補に選ぶことは他に何にも出来ないほど、短期的な刺激剤となり、民主党側を活性化させることになると述べている。多くのメディアは夢中になって、オバマ家に対してこびへつらうような報道をすることになるだろう。しかし、ミシェルが副大統領候補になることは、民主党にとって機会になると同時に問題にもなる。とにかく、民主党幹部たちは、バイデンの選挙運動における不安定な技術とパフォーマンスについて懸念を持っている。幹部たちはミシェルを副大統領候補に選ぶことは救命ボートのようなものだと考えている。

もちろん、私が話した政治の専門家たちの多くが、バイデンはオバマ夫人を選ぶことはないだろうと予測している。他方、専門家たちは、ジョージ・W・ブッシュがディック・チェイニーを副大統領に選ぶなどとは考えていなかったし、ジョン・F・ケネディがリンドン・ジョンソンを副大統領候補にするなど考えた人などはほとんどいなかった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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