古村治彦です。

 

 ここのところ、アメリカ大統領選挙に特化して文章をお届けしています。これも選挙の投開票日が終わればひと段落かなと思っていますが、「いや、選挙の後の方が大変じゃないか」という思いもあります。

 

 選挙戦は大接戦でややヒラリーが有利となっています。このままでいけば、ヒラリーが鼻の差で勝利(競馬風に言うと)となるかもしれません。しかし、彼女が勝ったら勝ったで、色々と丸く収まって、大統領就任式が楽しく迎えられるなんてことはないでしょう。

 

 ヒラリーが当選してからの2カ月余り、ヒラリーの抱える問題がワンワン報道されるでしょう。その中には、クリントン財団を巡る問題もあります。ヒラリーが大統領に当選したら、利益の相反になるから解散しろ、という声がありますが、もう手遅れです。国務長官時代に既に利益の相反があったのに、厚かましく財団の運営は続けられ、ヒラリーの側近たちがあっせんや口利きをしていたようですから。

 

 この問題についてはFBIも捜査をしているようなので、ヒラリーが大統領に当選してから問題化してくるでしょう。大統領の任期は4年間ありますが、彼女が当選して、それを全うすることはとても難しいのではないかと思います。

 

 4年後の今頃は、「マイク・ペンス、頑張ったよな」などと話しているのでしょうか。まぁ4年後の話をしたら鬼が笑うというか、呆れるということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

FBIのクリントン財団の捜査は起訴の「可能性が高い」(Report: Indictment 'likely' in FBI's Clinton Foundation probe

 

ニキータ・ヴラディミロフ筆

2016年11月2日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/304105-report-indictment-likely-in-fbis-clinton-foundation-probe

 

FBI内部の取材源2人は水曜日、フォックス・ニュースに対して、クリントン財団に対する捜査は起訴にまで至るであろうと語った。

 

フォックス・ニュースのブレット・バイアーは水曜日、ヒラリー・クリントンとクリントン財団との間のあっせん利得を巡るFBIの捜査は1年以上続いていると語った。

 

取材源の1人はフォックス・ニュースに対して、FBIの知能犯罪対策課が主導するクリントン財団の捜査は「最優先」で行われていると語っている。

 

もう1人の取材源は、FBIが証拠を「多く」を集めており、「毎日新たな情報が洪水のように流れ込んでいる」と語った。

 

バイアーは、クリントン財団に対する捜査は捜査が始まる前に考えられていたよりも、広範囲にわたるものとなっている。捜査の過程で多くの人たちが複数回事情聴取されている。

 

取材源2人は「FBIはクリントン財団に対する捜査を積極的にかつ攻撃的に行って」おり、捜査は継続されるだろうと語った。

 

バイアーは、ヒラリーに対する捜査とクリントン財団に対する捜査に関する詳細を話してくれるように強く求めたところ、取材源2人は起訴まで行くだろうと答えた。

 

加えて、バイアーは、フォックス・ニュースの取材源によると、ヒラリーの私的Eメールサーヴァーには少なくとも5種類の外国からの侵入を受けているとうことであったと語った。ジェイムズ・コミーは7月、ヒラリーの私的Eメールサーヴァーが侵入されたかどうかについて何も発言しなかった。

 

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クリントン財団と献金者について知るべき5つのこと(Five things to know about the Clinton Foundation and its donors

 

ジョナサン・スワン筆

2016年8月24日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/292570-five-things-to-know-about-the-clinton-foundation-and-its-donors

 

クリントン家が運営する民間慈善団体は2016年大統領選挙の最新の争点になっている。

 

クリントン財団は、国内、国外の諸問題に関わる非営利活動を行う団体である。クリントン・グローバル・イニシアティヴは10年以上前に始まり、献金者たちと素晴らしい意義を結び付けている。

 

批判者たちは、問題は献金者たちが慈善活動を通じてクリントン家とのつながりを買おうとしているのではないかということだ、と主張している。

 

共和党大統領選挙候補者ドナルド・トランプは、クリントン財団を自身の選挙運動における新たな攻撃ポイントにしている。トランプは、クリントン財団を、お金と引き換えにヒラリー率いる国務省へのアクセスのための「口利きやあっせんでお金を得る」組織だと批判している。

 

トランプはクリントン財団の活動や契約を捜査するための特別捜査官を任命すべきだと訴えている。

 

クリントン選対と支持者たちは反撃している。彼らは、クリントン財団はAIDSとの戦いのために巨額の資金を集め、経済開発を促進し、地球温暖化に対処している、と反論している。

 

ヒラリー側は、「口利きやあっせんでお金を得る」モデルが存在したことを示す証拠はないと主張している。そして、クリントン選対はAP通信の記事を厳しく批判した。AP通信は、「ヒラリーが国務長官在任中に面談した民間の人々の半数以上がクリントン財団の大口献金者であった」と報じた。

 

クリントン選対は、AP通信の記事は、ヒラリーが面談した連邦政府の職員や外国政府の代表の数を数えておらず、都合の良い数字をフレームアップしたものだと指摘した。

 

同時に、ビル・クリントン元大統領は、ヒラリーが大統領に当選したら、外国や企業からの献金受け入れを止めると決定したと発表した。この発表は、クリントン家の名前が冠されている組織に献金をしている巨大な外国の利益とヒラリーの大統領就任が利益の衝突(相反)を起こす可能性があることを認めたことを意味する。

 

ここからはクリントン財団について知るべき5つのことを見ていく。

 

(1)ビル・クリントンは国際的な諸問題に取り組むためにクリントン財団を創設した。(Bill Clinton established the foundation to tackle global challenges

 

ビル・クリントンがクリントン財団の理事を辞任すると発表した時、彼はクリントン財団を誇りに思っている理由を説明した。

 

ビル・クリントンは月曜日、クリントン財団のウェブサイトにあるブログに投稿して、次のように書いた。「私が2001年にホワイトハウスを離れ、民間人の生活に戻った時、私は長年にわたり取り組んできた分野に関わっていきたいと思いました。これらの分野で私は影響力を与えることが出来ると考えました」。

 

ビル・クリントンはクリントン財団が達成した業績の一部をリストにして掲載した。

 

ビル・クリントンは、クリントン財団とパートナーたちの活動によって、70を超える国々の1150万以上の人々が9割も安いコストでHIVAIDS患者用の命を救う薬を提供することが出来たと書いている。

 

他に業績を示す統計数字を挙げていくと、ハイチには500万本の木を植え、10万5000のアフリカの農民たちの収穫と収入の増加を手助けし、アメリカ国内で温室効果ガスの削減に取り組み、毎年3万3500トン以上の削減に貢献している。

 

ビル・クリントンは次のように語った。「ヒラリーが大統領に選ばれたら、クリントン財団の業務、資金集め、世界への働きかけ、そして私の財団内での役割に疑念が出てくるでしょう。それは解決されねばならない。財団には業績を上げてもらいながら、同時に利益の衝突(相反)の可能性に関する正当な懸念を解消していかねばなりません」。

 

(2)クリントン財団の大口献金者たちは国務省とビジネスを行った(Clinton Foundation donors had business with the State Department

 

クリントン財団への大口献金者たちは特別な配慮を受け、時には国務長官であるヒラリーに直接アクセスできたという受け取られ方は、保守系の監視団体ジュディシャル・ウォッチによる情報公開請求の裁判の後に公開されたヒラリーの側近中の側近であるフーマ・アベディンが送ったEメールによって、確かなものとなり、批判が集まっている。

 

クリントン財団の大口献金者たちがヒラリーにコンタクトを取ったのだが、その中には、バーレーンの皇太子、ハリウッドの映画会社の重役ケイシー・ワッサーマンからのヴィザに関する依頼、スリムファスト社の経営者S・ダニエル・エイブラハムとの面会、クリントン財団のトップ献金者でレバノン系ナイジェリア人の不動産開発業者ギルバート・チャゴウリーの国務省幹部への紹介などが含まれていた。

 

これらのコンタクトは、ビル・クリントンの長年の側近でクリントン財団の幹部だったダグ・バンドとアベディンの間で調整が行われた。

 

ヒラリーが行った会談のうちのどれがクリントン財団の大口献金者コネクションと関係があったのかは明確になっていない。

 

ヒラリー選対は不適切なことは何も起きなかったと否定した。

 

ヒラリーとバーレーンの皇太子との会談の場合について、あるヒラリーの側近は、「外国の指導者と会談することは、国務長官にとって重要なそして当然の責務だ」と述べた。

 

この側近は、ワッサーマンの場合については、ヴィザを出すと保証していないし、ダニエル・エイブラハムの会談の場合には、財団の行っている業務とは関係なかったうえに、エイブラムスがセンター・フォ・ミドル・イースト・ピースの所長という立場であったのだから適切であったと述べた。

 

チャゴウリーもまた不適切なことはなかったと主張した。広報担当を通じて、会談は行われなかったし、自分は「当時のレバノンの政治状況についての観察と考察を伝えただけのことだ」と語った。

 

クリントン財団の大口献金者とヒラリーもしくは国務省の幹部たちとの間の接触は多く存在した。しかし、クリントン財団への献金の見返りとしてヒラリー率いる国務省が何か行動を起こしたということを示す証拠は見つかっていない。

 

クリントン選対の報道担当ジョン・シュワーリンは、ジュディシャル・ウォッチを批判した。ジュディシャル・ウォッチは情報公開法に基づいた訴訟を駆使して、国務省によって機密扱いとなった多数のEメールを公開させた。シュワーリンは、ジュディシャル・ウォッチを「1990年代からクリントン一家をつけまわしてきた右翼団体」と呼んだ。

 

シュワーリンは「どれほどこのグループがこれらの文書を誤って解釈してそれを拡散しようとも、ヒラリー・クリントンがクリントン財団の献金者を理由にして国務長官として何かを行ったことはないという事実は変わりません」と語った。

 

(3)ヒラリー・クリントンと財団は透明性を約束した(Clinton and the Foundation promised transparency

 

2009年にヒラリー・クリントンが国務長官に就任する前に、ヒラリーは、オバマ政権に対して、外国の献金者に依存しているクリントン財団と国務長官としてアメリカの外交政策に関する業務との間で、利益衝突(相反)だと思われること、実際にそうなることを回避すると約束していた。

 

倫理に関する約束の半分はヒラリー・クリントン自身が行った約束であった。彼女は国務省の倫理担当職員に対して手紙を送り、その中で約束をしている。

 

ヒラリーは手紙の中で、「私は個人的、実質的に、特定の組織や団体に関わるいかなる問題にも関与しない。この中にはウィリアム・J・クリントン財団(もしくはクリントン・グローバル・イニシアティヴ)自体やこれが代表する団体や組織も含まれる」と書いている。

 

倫理協定に関するもう半分の約束は、クリントン財団と大統領に当選したがまだ就任していなかったオバマのオフィスとの間で結ばれた了解覚書であった。

 

了解覚書における主要な妥協点としては、ヒラリーの国務長官在任中、クリントン財団は年に一度最新の献金者たちの名簿を作成することと、その名簿を国務省に提出して、外交からの献金者や外国政府の所有する企業の増加を国務省の倫理担当部局に評価してもらうこと、というものであった。新たに献金者となった国々は評価の対象となった。

 

ヒラリーの支持者の多くはこうした倫理上の取り決めは厳格に守られたと主張している。

 

しかし、非営利団体「ポリティファクト」は、そのような主張は、少なくとも合意の精神に関する限り、「ほぼ間違っている」と判断した。

 

ヒラリーはクリントン財団との連絡を避けた。しかし、国務省にヒラリーと一緒に着任した側近たちは、クリントン財団のビジネスや財団の献金者たちの個人的な利益をめぐって、クリントン財団との間で連絡を持った。

 

報告書では、クリントン財団が情報公開の約束をいかに守れなかったかが書かれている。その中には、国務省とのビジネスを求めるあるアメリカ企業と関係を持つカナダの財団から235万ドルが寄付されたことやアルジェリアから50万ドルの寄付をされたことが公開されていなかったことが書かれている。

 

共和党は、これらの倫理違反を攻撃している。

 

共和党全国委員会幹部のマイケル・ショートは水曜日、本誌に宛てた声明の中で次のように述べている。「クリントン財団と次期政権との間の倫理協定は、利益の相反を避けることができずに、無視されていたことは明白である」。

 

ショートは更に「書簡と合意の精神の両方は明らかに侵害されていた」と述べた。

 

(4)重なり合いのために、フーマ・アベディンをはじめとするヒラリーの側近たちの問題を生み出した(The overlap created problems for Huma Abedin and other Clinton aides

 

ヒラリーの国務長官在任中、彼女の個人的な補佐役だったフーマ・アベディンは、クリントン周辺と国務省の内部で様々な立場に同時に立っていた。

 

『ワシントン・ポスト』紙が報じたように、2012年末の時点で、アベディンは「4人の別々の雇用主に雇われて4つの仕事をやっていた。彼女が政府外の仕事をするにあたっては、政府の特別許可を受けていた」ということだ。

 

アベディンは国務省に勤務していた。同時に、民間コンサルティング会社テネオの職員で、クリントン個人からサラリーを受け取り、クリントン財団と契約を結んでいた。

 

共和党所属の連邦議会議員の中で、連邦上院司法委員会委員長チャック・グラスリー(アイオワ州選出、共和党所属)は、アベディンの雇用状況の複雑さを追いかけている。そして、保守系監視団体ジュディシャル・ウォッチによって公開されたEメールによって、アベディンに対して注目が集まった。

 

クリントン財団幹部ダグ・バンドとアベディンとの間のEメールのやり取りを見て、多くの人々は、「アベディンはヒラリーとクリントン財団の大口献金者とをつなぐ存在だ」という印象を持った。クリントン選対は不適切なことは何も起きていないし、バンドは、財団の代表としてではなく、ビル・クリントンの補佐役として行動していたと主張した。

 

人々の関心を集めているEメールのやり取りがある。それは、ヒラリーが、イギリスのサッカーティームであるウォルヴァーハンプトンの選手たちのヴィザ取得に介入できないかとアベディンに送ったものだ。このティームのあるメンバーが「犯罪記録」のためにヴィザを取ることが難しい状況にあった。

 

バンドは、ハリウッドの映画関係者ワッサーマンのために行動していた。ワッサーマンの一族が運営している財団は、これまでにクリントン財団に対して500万から1000万ドルを献金している。

 

アベディンは、「私たちはそのことについては何もできないと思う。ただ、面接を行うことに関しては何とかできると思う。担当者に聞いてみる」と答えている。

 

アベディンはその後、バンドに連絡し、自分が依頼されたことを行う場合の懸念を伝えた。そして、「依頼の内容は分かったが、それを実行することに関しては多少の心配がある。それでもやってはみるが」と述べた。

 

バンドは「それならやらなくてよい」と答えた。

 

この事件について、ヒラリーの選対幹部のある人物は、ヴィザは結局発給されなかったと指摘し、「Eメールでやり取りされた内容は実行されなかった」と語った。

 

(5)クリントン財団の大口献金者の中には疑惑をもたれる人たちもいる(Some of the Clinton Foundation donors are controversial

 

共和党は、クリントン財団が女性を抑圧する体制にあるサウジアラビアから数百万ドルもの献金を受けていながら、ヒラリーが女性の権利を選挙運動の柱に据えていることに対して偽善だと批判している。

 

サウジアラビアからの献金はクリントン財団に流れ込む外国からの献金のほんの一部に過ぎない。人権についてあまり進歩的ではない他の国々もまた献金をしている。それらの国々は、アラブ首長国連邦、アルジェリア、カタール、オマーン、ブルネイが含まれる。

 

クリントン財団と献金者をめぐるもう一つの疑惑は、ウラニウム・ワンという企業とのつながりである。ウクライナはかなり有利な条件でロシア人たちが買収した企業だ。そして、この買収に関しては、アメリカの多く政府機関が承認を与えており、その中にはヒラリーが率いていた当時の国務省も含まれている。

 

保守系のジャーナリストであるピーター・シュバイツァーの調査を基にした長文の記事が2015年4月にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。シュバイツァーの反ヒラリーの調査活動の一部は、トランプに対する大口献金者でヘッジファンド経営を通じて巨万の富を得たロバート・マーサーである。この記事では、ウラニウム・ワンの会長と関係のあるある財団からクリントン財団に235万ドルの資金が流れてそのことが秘密にされてきたと報じられた。

 

ニューヨーク・タイムズ紙の記事に対する声明の中で、ヒラリーの報道担当ブライアン・ファロンは、クリントン財団は大口献金者を助けるために介入したという話を否定し、カナダ政府やアメリカの多くの政府機関もウラニウム・ワンに承認を与えていると強調した。

 

ファロンは、「ヒラリー・クリントンが国務長官としてクリントン財団の献金者の利益を守るために行動したという主張を証明する証拠を作り出す」ことは誰にもできないと述べた。

 

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