古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:チャック・ヘーゲル




アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 今回は、チャック・ヘーゲル国防長官の辞任についての論稿をご紹介します。日本時間の2014年11月24日夜にヘーゲル辞任のニュースが出ました。ニューヨーク・タイムズ紙などを読むと、「オバマ大統領から圧力をかけられた末の辞任」であるとあります。これはつまり「更迭」ということになります。

 

 以下の論稿は、ヘーゲルの辞任についてホワイトハウスとヘーゲルの関係悪化があったことを原因として挙げています。

 

 私は、今回のヘーゲルの辞任劇に関しては、ヒラリー派の巻き返しの結果であると考えています。拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたように、ヒラリー系は人道的介入主義を掲げ、アメリカが世界各地で起きている紛争や危機にどんどん介入することを目指しています。

 


 現在のオバマ政権の外交・国家安全保障担当ティームには、ヒラリー系からスーザン・ライス国家安全保障担当大統領補佐官とサマンサ・パワー米国連大使(閣僚級)の2人の女性が入っています。ヘーゲルの次の国防長官の有力候補として女性初の国防長官となるかもしれないミッシェル・フロノイの名前が挙がっていますが(レオン・パネッタ辞任の時にも名前が挙がりました)、彼女はヒラリー系です。

 オバマ大統領は現在の脅威や危機(エボラ出血熱やイスラム国など)の対応が不十分であったということで、ヘーゲル国務長官を「更迭した」ということになっています。しかし、実際は、大統領自身が圧力に負けて「更迭させられた」ということであって、ヒラリー派の巻き返しと外交・安全保障分野で主導権を握ったと見るべきです。 

 

 こうして見ると、ミッシェル・フロノイが国防長官に就任し、ヒラリー派が力を増すことで、2015年の世界は少しきな臭いことになるのではないかと私は考えています。

 

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晩秋に災難に遭って政から去る人物について(The Fall Guy

 

ヘーゲルを政権から除くことはオバマ政権の国家安全保障担当ティームが患っている病気の治療にはならない。これこそが病気の症状そのものなのだ

 

デイヴィッド・ロスコフ(David Rothkopf)筆

2014年11月24日

フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌

http://www.foreignpolicy.com/articles/2014/11/24/the_fall_guy_chuck_hagel_resignation_obama_administration_national_security_team

 

 チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)が国防長官に任命されると同時に彼を取り除くためのナイフが既にようにされていたのだ。しかしながら、最初のうち、彼を切り裂くためのナイフを持っていたのは、彼を国防長官に押し上げた、疑い深いマスコミであった。ワシントンの事情通たちは、ヘーゲルは上院議員として活躍し、ビジネス界と軍隊時代に大きな業績を上げたのだが、国防長官としては仕事ができなかったと述べている。しかし、本日、ヘーゲルはオバマ政権の閣僚の座から追われることが発表された。彼の国防長官としての資質や仕事ぶりに疑念を持っていた人々の多くは、彼が失敗したのだと感じた。

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チャック・ヘーゲル(左)とオバマ大統領

 

 オバマ政権第二期の最初の2年、国家安全保障分野の最前線においては様々な問題が起きた。私を含め多くの人々は、オバマ大統領はブッシュ前大統領が書いた本を読んでそれから教訓を学び、自分のためにうまく働かない政権のメンバーを交替させるべきだと主張してきた。

 

 約2カ月前、政権内部の事情通は、ヘーゲルはスケープゴートにされるかもしれないと言っていた。彼とホワイトハウスとの関係は悪かった。彼は力のある国防長官だとは考えられなかった。オバマ政権のアドヴァイザーを務めたある人物は、ヘーゲルについて、「オバマ政権に最初からいたかのように演じていた」と述べている。国防総省の幹部たちは、イラクとシリアの混乱状況を拡大させているイスラム国に対する大統領とホワイトハウスの国家安全保障担当ティームの首尾一貫しない対応に対して不満を募らせていった。ヘーゲルはこれを大統領とホワイトハウスに伝える役割を果たした。

 

 ヘーゲルを国防長官にしたことは、オバマ大統領と彼の側近のアドヴァイザーたちの判断ミスであると言えるだろう。ヘーゲルは国家安全保障を担当する国防総省の官僚たちをうまく動かすノウハウを持っておらず、オバマ政権第一期に国防長官を務めたロバート・ゲイツ(Robert Gates)とレオン・パネッタ(Leon Panetta)が示したほどの指導力を持っていなかった。ヘーゲルは、大統領が信頼して国防分野を任せることができる側近が少なかったということを示すシンボルであった。オバマ大統領は大統領になる前、ワシントンでは4年間の経験しかなく、そこで知り合った数少ない人物であるヘーゲルを国防長官に任命したのである。彼の数少ないワシントン経験が連邦上院議員であった。ヘーゲルは有名人ではあったが、国防長官に適した人物ではなかった。しかし、ヘーゲルは、オバマ、ジョー・バイデン(Joe Biden)、ジョン・ケリー(John Kerry)といった連邦上院外交委員会時代の同僚たちと仕事をすることを楽しんでいた。

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左側にスーザン・ライスとヘーゲル、右側にバイデンとケリー

 

 ヘーゲルに問題があったのではない。確かに彼は孤立してきたし、ワシントンDC以外で時間を使ってきた。しかし、オバマ政権は政権の閣僚たちをこれまでの政権に比べ、孤立させてきた。このことを知るためには、『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたマーク・ランドラーの記事を読むだけで良い。この記事は国務長官ジョン・ケリーについてのもので、ケリーはホワイトハウスとのつながりが絶たれており、彼は映画『グラヴィティ』で女優サンドラ・ブロックが演じた、宇宙でロープが切れてしまい漂流することになった宇宙飛行士と似ているというものであった。拙著『国家安全保障の問題』は、現在の諸問題を生み出した機能不全について書いたものである。そして、ホワイトハウスと閣僚の関係の抱える問題についても書いている。これは、パネッタ、ゲイツ、ヴァリ・ナシャール、そしてヒラリー・クリントンがそれぞれの著書の中で指摘していることである。

 

 いや、ヘーゲルの孤立、ヘーゲルとホワイトハウスとの間の緊張関係、アメリカ軍のトップであるヘーゲルが国防長官に就任してから不満を募らせていたこと、中途半端さ、イラクとシリアにおける戦いに関するオバマ政権の対応のまずさが示しているのは、オバマ大統領自身の政権運営もまずさであり、政策決定過程を見てみると、国家安全保障会議のやり方に問題があったと言えるのだ。

 

 二期目を無事に迎えた大統領の多くは選挙担当スタッフたちを政権から退かせ、政権運営により集中するものである。オバマ大統領は、しっかりとした政策を立案できる国家安全保障担当ティームを作るよりも、側近たちで固めて安心感を求めるようになっている。国家安全保障担当大統領補佐官 スーザン・ライス(Susan Rice)は、オバマ大統領の選挙対策ティームにおける国家安全保障政策担当の最高責任者であった。彼女は、現在の大統領首席補佐官であるデニス・マクダナウ(Denis McDonough)と一緒に選挙の当選のために働いた。彼らは、オバマ政権内部において同僚たちと「私たち対彼ら」という環境を生み出している。ヒラリー・クリントン選挙対策ティームにいた人々がそうしたことをしているのである。彼らは選挙対策ティームの戦術をそのまま使い、国際社会におけるアメリカの行動を国内政治の観点から考えるばかりで、これがオバマ政権の国家安全保障担当ティームが犯している間違いの原因を生み出しているのである。ホワイトハウスと国防総省・上院との分裂と対立、昨年のシリア攻撃を行うそぶりだけを見せたこと、国家安全保障局のスキャンダル、ウラジミール・プーティン(Vladimir Putin)ロシア大統領のクリミア侵攻に対する対応のまずさ、イラクの現在の状況といった失敗が起きているのである。

 
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肩を組むオバマ大統領、スーザン・ライス、サマンサ・パワー

オバマ大統領は国防総省のトップを考慮するにあたり、多くの素晴らしい選択肢を持っている。元国防次官ミッシェル・フロノイ(Michèle Flournoy)は最有力候補である。フロノイはヘーゲルが任命された時にも有力候補であり、それは今でも変わらない。元国防副長官アッシュ・カーター(Ash Carter)、元国防次官、元国防副長官で戦略国際問題研究所(CSIS)所長ジョン・ハムレ(John Hamre)も有力は候補者たちである。

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ミッシェル・フロノイとアッシュ・カーター

 

 これらの候補者から1人を選び出して国防長官にしても、オバマ政権内部にあるより深刻な諸問題を解決することはできないだろう。率直に言えば、国防長官の職を提示された人は、ホワイトハウスが国防総省のトップになる彼もしくは彼女に対して職務を遂行し、使命を果たすために必要な力を与えてくれるという確信がなければ、提示を受け入れるかどうか苦悩することになるだろう。そして、もっと率直に言うと、任命される人は国家安全保障会議の政策決定過程に変更を加えてくれるように頼むべきだ。そして、ホワイトハウスのスタッフたちに集中し過ぎた権力を分割するように依頼すべきだ。そして、オバマ政権に対して「政府全体で解決する」ことについて話試合をするように求めるべきだ。

 

 繰り返すと、より重大な挑戦と懸念がこの問題について付きまとう。

 

 ここで言う挑戦とは、国家安全保障会議と国家安全保障ティームはオバマ大統領が何を望んでいるかを常に反映しているということである。オバマ大統領が過去2年間に犯した間違いをこれからの2年間で避けるためにはどう変化すればよいのかということを自分に問いかけたくないと考えるなら、閣僚がどれだけ変わっても意味はない。チャック・ヘーゲルが激しい綱引きの後に政権から去ることはそれが示しているように、オバマ政権の抱える諸問題に真剣に向き合うことを避けるジェスチャーなのである。それは空虚さよりも性質の悪いことなのである。ヘーゲルの辞任はオバマ大統領が自身の政権を強化することに抵抗し、アメリカ合衆国の国家安全保障上の利益を有効に追求することに抵抗していることのシンボルなのである。

 

(終わり)








 


 

 古村治彦です。


 今回は、米国防総省(U.S. Department of Defense)の発表した声明をご紹介します。年末にチャック・ヘーゲル米国防長官と小野寺五典防衛大臣との間での電話会談がキャンセルになりました。しかし、年が明けてさっそく会談が行われたようです。


 国防総省としては、「沖縄駐留アメリカ軍の再編」が重要な問題であり、そのことで、一歩「前進」となる辺野古沖埋め立てをまず歓迎しているのは当然のことです。それでも、近隣諸国との関係を改善することを求めることでバランスを取っています。


 アメリカとしては、「日米で共通の目的であるアジア(東アジア)地域の平和と安定」のために、日本が更なる努力をすることを期待し、日米同盟の強化、日米防衛ガイドラインの見直しを続けるとこの声明の中で表明しています。


 この日米同盟の強化、そして防衛ガイドラインの見直しというところが重要です。アメリカが求める「アジア地域の平和と安定」のために、日本に更なる「貢献」を求めるというのは字面だけなら結構なことです。


 しかし、そのために、日本がいかなる「前進」や「変革」を求められるのか、ということが問題です。その究極的な目標は憲法改正であり、日米共同運用性(interoperability)の強化という名の自衛隊の米軍下請化であると私は考えます。


 アメリカとしては、現在の段階で日中韓の間で直接的な大規模衝突は望んでいないでしょう。しかし、この多国間関係を管理することは難しいし、「想定外」のことが起これば、直接的な衝突にまで発展することもあります。


このたとえが適切かどうかは分かりませんが、国際関係は、原子炉内の温度管理に似ていると私は考えます。平常時であれば、温度管理はうまくでき、うまく操作し電気を作ることができますで。しかし、一朝「想定外」のことが起きた場合、原子炉内の温度管理は難しく、溶解(メルトダウン)にまで事態が悪化してしまうことは、これまでの原発の事故で起きたことです。


 大きく見れば、2014年に国際関係において大きなシフトが起きることは考えにくいし、現在のままで状況はだらだら続いていくと思います。日本にはフラストレーションがたまることばかりであると思います。ここで事態を急激に変えたいとして、「短気」や「驕り」、「自暴自棄」を起こしてしまうのは得策ではありません。事態をうまく管理するためには、そして忍耐力が必要な「自重」と「対話」が得策であると思います。迂遠ではありますが、これが一番の方法であると私は考えています。


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http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=121431


ニュース


アメリカ軍報道サービス


ヘーゲル国防長官は、普天間基地移設を巡る努力に対して、日本の防衛大臣に謝意を示す

Secretary Thanks Japan's Defense Minister for Futenma Efforts


2014年1月4日付ワシントン発。チャック・ヘーゲル米国防長官は本日、日本の小野寺五典防衛大臣に対して、日本の沖縄にある海兵隊の普天間飛行場の移設のために、キャンプ・シュワブー辺野古の埋め立て許可申請に認可を与えるにあたり、日本政府が行った努力に謝意を示した。


両国の防衛分野の指導者2人の間で電話会談が行われた。会談の内容は要約され、国防総省の報道官であるジョン・カービー米海軍少将が声明として発表した。この声明の中で、カービー少将は、新しい施設(辺野古)について、「沖縄駐留アメリカ軍の再編において重要な、必要不可欠な要素である」と呼んだ。


カービー少将は、ヘーゲル長官が日米両国で日米地位協定に環境関連問題を追加することで交渉を進めていくことで合意に達したことの重要性を指摘した、と述べた。


加えて、カービー少将は、ヘーゲル長官と小野寺大臣は、2013年10月に発表されたイニシアティヴの実行について議論したと述べた。そのイニシアティヴには、TPY-2ミサイル防衛レーダーの日本に対する第二機配備と日米防衛ガイドラインの将来に向けての見直しが含まれていた。日米防衛ガイドラインの見直しにおいて、二国間が透明性を確保しながら交渉を行う重要性を確認した。


ヘーゲル長官は、「近隣諸国との関係を改善し、地域の平和と安定という日米共通の目的を達成するために手段を取ることが重要だと力説した。ヘーゲル長官は、21世紀における安全保障問題に対処するために日米同盟を強化するために二国間で議論を続けていくことを楽しみにしていると語った」と述べた。


(終わり)




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