古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:デイヴィッド・コーク

 古村治彦です。

 

 今回は今年2018年にアメリカで行われる中間選挙に関する記事をご紹介します。私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社)の主人公チャールズ・コークとデイヴィッド・コークのコーク兄弟が主宰する献金ネットワークが400億円を中間選挙に投入するということです。

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デイヴィッド(弟)とチャールズ 

 中間選挙とは大統領選挙と大統領選挙の間に行われるもので、連邦下院の全議席と連邦上院の3分の1の議席が選挙となります。連邦下院の任期は2年で、連邦下院議員や候補者たちは常に選挙をやっているようなものです。大統領を握っている党にとっては中間テストのような意味合いを持ちます。

 

 現在のところ、民主党がリードしているという状況です。ただリードが少し縮まっているという印象があります。詳しくは以下のアドレスをご覧ください。

 

https://www.realclearpolitics.com/epolls/other/2018_generic_congressional_vote-6185.html

 

 コーク兄弟が率いるいくつかのグループが既に共和党とトランプ大統領が進めた税制改革について積極的に宣伝活動を行っているようです。

 

 民主党としてはここで共和党に大差で勝って次の大統領選挙につなげたいというところだと思いますし、それができるチャンスだと思われますが、勝利をしても大差での勝利でない限りは、共和党とトランプ政権が主流派マスコミで言われるほどに不人気ではないということが明らかになります。

 

 今年の秋の中間選挙までに政治や経済において様々なことが起きるでしょうそれを注視していくことが重要です。


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アメリカの真の支配者 コーク一族


 

(貼り付けはじめ)

 

コーク率いるネットワークは2018年の中間選挙で4億ドルを投入(Koch network to spend $400 million during 2018 midterm election cycle

 

ジョナサン・イースリー筆

2018年1月27日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/371069-koch-network-to-spend-400-million-during-2018-midterm-election-cycle

 

カリフォルニア州インディアン・ウェルズ発。大富豪のチャールズ・コークとデイヴィッド・コークと関係の深い諸団体のネットワークは2018年の中間選挙において保守派の主張する政策と候補者たちのために4億ドル(約430億円)を使う見込みだ。

 

「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ」会長ティム・フィリップスは土曜日、投入する金額はこれまでの選挙の時に比べて最大のものとなる、と述べた。2016年の選挙の時よりも60%増となる見込みだ。2016年の連邦議会選挙では逆風が吹く中で、共和党は連邦上下両院で過半数を守った。

 

ネットワークは、トランプ大統領と民主党候補者ヒラリー・クリントンとの間で戦われた2016年の大統領選挙には関与しなかった。しかし、連邦議会選挙の共和党の候補者たちと保守派の主張する政策のために資金の多くを投入した。

 

2018年の中間選挙のために使われる4億ドルの一部は共和党の候補者の勝利のために使われることになる。また、ネットワークは、共和党がコントロールしている政府によって達成された税制改革やその他の業績、復員兵事業に関する改革とトランプによる保守的な人物の最高裁判事登用を重点的に宣伝し、人々の支持を集めようという考えだ。

 

フィリップスは次のように述べた。「私たちは全てを投入する。2018年の政治状況は厳しい。はっきり言って今年は厳しい年となるだろう。

 

歴史的に見て、共和党は大統領を出している時の中間選挙では敗北している。

 

世論調査の結果では、下院議員選挙に関しては民主党が2桁以上リードしている。また、トランプ大統領は、1期目の大統領としては歴史的に見ても低い支持率を記録している。こうした状況では共和党にとってマイナスの結果となるだろう。

 

共和党が下院で過半数を維持できるか不透明な状況だ、現職議員たちの引退が相次ぎ、リベラル派が積極的に活動して共和党が議席を減らすのではないかという懸念が存在する。

 

それでも、共和党にとって資金集めは明るい材料となる。ポール・ライアン連邦下院議長(ウィスコンシン州選出、共和党)と共和党の候補者たちの当選を支援する外部団体は2017年に連邦下院での共和党の過半数確保するために巨額の資金を集めた。

 

コーク・ネットワークに参加している保守派の大口献金者たちは今週末、カリフォルニア州の砂漠地帯にある会員制のインディアン・ウェルズ・リゾートに集合し、2018年の中間選挙に向けた戦略作りを行った。

 

ウィンター・セミナーの共同議長ブライアン・フックスは次のように述べている。「私たちは、人々の生活を向上させることに貢献できる候補者と政策立案者を探している」。

 

フックスは、「コーク率いるネットワークは共和党の税制改革法支援のために2000万ドルを使った。そして、更に2000万ドルを改革法による利益を宣伝のために使う」と述べた。

 

前出のフィリップスは次のように述べた。「私たちは希望を持っている。税制改革についての人々の受け止め方が報道されているが、給料が上がっていくだろうから、それにつれて人々の支持を高まるだろう」。

 

コーク率いるネットワークは、今回のウィンター・ミーティングにこれまでにない数の人々を集めた。全米各地から550名の保守運動活動家たちが終結した。そのうちの150名は初参加の人々だった。彼らもまた2018年の中間選挙に向けた戦略作りを行った。

 

ウィンター・セミナーの共同議長を務めたフックスは次のように述べた。「チャールズ・コークは私たちや他の参加者たちに対して、更に10倍の熱意を込めて活動するように求めた。そして、更に勢いをつけるようにと述べた。それこそ私たちがこれから取り組んでいくことだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 日本でも出版(紙媒体)の売り上げが年々減少、特に雑誌は厳しいということは報じられています。インターネットに記事や情報があふれ、しかもそれらが無料で手に入り、紙媒体自体の売り上げが減少、こうなると、雑誌などに広告を出している企業も広告を中止するということになり、雑誌が続けていけなくなり、廃刊ということになります。テレビ局もまた雑誌と同じで、広告や宣伝で食べているようなものですから、こちらも厳しい状況になっています。

 

 アメリカでも新聞が紙での発行を止めて電子版のみにするとか、記者が大量に解雇されるとか、そういうことが起きています。

 

こうした中で、老舗雑誌社であるタイム社がメレディス・コーポレイションに買収されることになりました。タイム社は世界的な雑誌ブランドである『タイム』(「今年の100人」といった企画で有名)や、日本のスポーツ雑誌『ナンバー』がそのままパクった『スポーツ・イラストレイティッド』といった雑誌を発行しています。しかし、これらの雑誌も当然のことながら売り上げが減少し、厳しい状況にあったようです。

 

 メレディス・コーポレイションは主婦向けの雑誌を発行している会社ですが、同時にアメリカ各州の地方テレビ局15社を所有している会社です。私が驚いたのは、今回のメレディス・コーポレイションのCEOの声明文の中にある、「地方テレビ局は記録的な売り上げを記録している」「広告宣伝の媒体としてこれまでにない機会を与えている」という言葉です。

 

 アメリカではケーブルテレビが発達し、いわゆる地上波のローカルテレビ局は厳しいのかと単純に思っていましたが、どうもそうではないようです。視聴者が多く、それが広告や宣伝収入につながっているようです。今回の買収で、コンテンツ創造力を手に入れたとメレディス・コーポレイションのCEOは述べていますから、雑誌のコンテンツ想像力とテレビの発信力を結び付けようとしているということになります。

 

 メレディス・コーポレイションにコーク兄弟が資金提供をしたという点も重要です。コーク兄弟については拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン、講談社、2015年)や『世界権力者図鑑2018』(副島隆彦、中田安彦著、ビジネス社、2018年)をお読みいただきたいと思います。

 

 これは雑誌業界の再編というだけではなく、ディジタルとアナログの融合によって新たな何かが生まれる動きなのではないかと考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

タイム社はコーク兄弟が支援する企業によって買収される(Time Inc. to be acquired by company backed by Koch brothers

 

ブレット・サミュエルズ筆

2017年11月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/media/361880-time-inc-near-sale-to-company-backed-by-koch-brothers-report

 

メレディス・コーポレイションは日曜日、タイム社を18億ドルで買収すると発表した、と複数のメディアが報じている。メレディス・コーポレイションは共和党の大口献金者であるチャールズ・コーク、デイヴィッド・コーク兄弟が支援している出版社である。

 

ロイター通信によると、メレディス・コーポレイションはタイム社の株式の大部分を一株当たり18ドル50セントで購入すると発表した。

 

両社のそれぞれの取締役会で買収は全会一致で同意され、来年早々にも調印されるとAP通信が報じた。

 

ロイター通信は次のように報じている。メレディス・コーポレイションのスティーヴン・レイシーCEOは声明の中で、「私たちは、メディア産業界内で最強のブランドの持つ豊かなコンテンツ創造力を、力強い地方テレビ局ネットワークビジネスに加えることになりました。地方テレビ局ネットワークは現在、記録的な売り上げを記録しています。地方テレビ局はアメリカの成人視聴者に対しての浸透力と波及力で群を抜いた存在になっており、広告業界やマーケティング業界にこれまでにない機会を与えています」と語った。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は日曜日の早朝、買収の合意は月曜日までに発表されるだろうと報じた。同紙によると、コーク兄弟は、コーク・エクイティ・ディヴェロップメント社を通じて6億ドルをメレディス・コーポレイションに投入することになるということだ。

 

タイム社は、『タイム』『スポーツ・イラストレイティッド』『ピープル』の各誌を発行している。一方、メレディス・コーポレイションは『ファミリーサークル』『マーサ・スチュワート・リヴィング』『ベター・ホーム・アンド・ガーデンズ』の各誌を発行している。

 

メレディス・コーポレイションとタイム社は今年の初めから買収に関する交渉を行っていると報じられたが、4月の段階で合意はできない見込みだと言われていた。

 

コーク兄弟は大統領選挙期間中、トランプ大統領を支持することを拒絶したが、2017年になってコーク兄弟とトランプ政権の関係は改善しつつある。コーク兄弟はペンス副大統領をはじめとする政権の最高幹部たちと相次いで会談を行っている。

 

コーク・インダストリーズ社は非上場企業で、アメリカ国内の非上場企業では第2位の規模を誇る。年間売り上げは1150億ドルで、主力部門はエネルギーと化学である。

 

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米出版社タイムが身売り合意-メレディスに3100億円で

 

11/27() 9:29配信 Bloomberg

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171127-42594747-bloom_st-bus_all

 

米メディア企業のメレディスは、米出版社タイムを28億ドル(約3100億円)で買収することで合意した。金額には債務の継承分が含まれる。「フォーチュン」「スポーツイラストレイテッド」などの雑誌で知られるタイムは、インターネット時代到来による打撃を回避できなかった。

 

メレディスの26日付の発表資料によると、1株当たりの買収額は18.50ドルで、全額現金となる。同社は「ベターホームズ・アンド・ガーデンズ」などを出版する。タイム買収が実現すれば、広告の獲得でフェイスブックやグーグルなどと競争する上で必要な規模の拡大が可能になる。

 

チャールズ・コーク氏とデービッド・コーク氏の投資会社コーク・エクイティ・デベロップメント(KED)が6億5000万ドル相当の株式取得を通じて、メレディスによる買収を支援することに同意。KEDはメレディスに取締役を送らず、同社の編集や経営に対し影響力は行使しないという。

 

原題:Meredith Agrees to Buy Time Inc. With Koch Brothers Backing(抜粋)

 

Gerry Smith

 

(貼り付け終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12







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 古村治彦です。

 

 拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年)の主人公であるコーク兄弟について、日本でも少しは知られてきていますが、知名度はまだまだです。コーク兄弟は、今でも共和党にとって重要な資金源であり、トランプ政権になっても存在感は大きいのです。チャールズ・コーク(資産3兆円以上)は、2016年のアメリカ大統領選挙で、ドナルド・トランプを批判し、応援しないと明言しました。一方で、ヒラリー・クリントンについても応援しないということで、静観の構えということになりました。

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アメリカの真の支配者 コーク一族

 

 コーク兄弟の最近の動きについては、本ブログの以下の記事でもご紹介しています。オバマケアと呼ばれるアメリカの現行の健康保険制度について、トランプ大統領と共和党は撤回と代替法案を連邦議会で可決させようとしています。まず下院で議論され、採決が行われることになったのですが、3月の時点で、下院で賛成票が足りないということで採決が見送られることになりました。後に、ぎりぎりで可決することができました。


 

これは、連邦下院共和党所属議員の中に「フリーダム・コーカス」という議員グループがあり、このグループが下院に提出されていた法案に反対したからです。「同じ共和党が提出した法案にどうして共和党の議員が反対するのか?日本だったら大変なことになる」と不思議に思われるところですが、フリーダム・コーカスは、法案が「改革内容が不十分」ということで反対しました。アメリカでは日本と違い、党議拘束はなく、議員は個人の考えで採決に参加します。

 

 このフリーダム・コーカスの議員たちに支援を約束していたのがコーク兄弟です。コーク兄弟が「改革が不徹底だ」として議員たちに反対させたということになります。最後は妥協して可決しましたが、コーク兄弟の力を思い知らされることになりました。

 

2017年4月2日付「トランプ大統領vsコーク兄弟」

http://suinikki.blog.jp/tag/%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%82%B9

 

 今週末、コーク兄弟は、自分たちが率いる大口献金者ネットワークの会合のために、コロラド州を訪れていました。そして、同じくコロラド州訪問中であった、マイク・ペンス副大統領と会談を持ちました。ホワイトハウスは公式にはこの会談予定を発表していませんでした。ペンスはコーク兄弟とも親しい関係にあり、トランプ政権とコーク兄弟を繋ぐ存在になっています。また、トランプ政権にはコーク兄弟と関係を持つ人々が多く入っていたり、影響を与えたりしています。

 

 ペンス副大統領との会談後、コーク兄弟が資金援助をしているアメリカンズ・フォ・プロスペリティという団体の責任者が来年の中間選挙には4億ドルの資金を投入するという発表を行いました。これは、共和党、特に急進的な改革派に資金を提供する、そして、民主党の議席増を抑えるということです。

 

 コーク兄弟はトランプ大統領の発言などを批判していますが、彼が行おうとしている税制改革、健康保険改革、気候変動枠組からの離脱といったことは、コーク兄弟も主張していることで、方向性は同じです。ですから、共和党政権と連邦上下両院で共和党が過半数を握っている状態が存続すること、それから共和党を自分たちの思う方向に進めるということがコーク兄弟にとって大事になってきます。

 

 共和党としては、資金を提供してくれる大口献金者のネットワークを構築し、率いているコーク兄弟を無視することはできません。中間選挙に向けて存在感は大きくなっていくでしょう。

 

(貼りつけはじめ)

 

ペンスがコーク兄弟とコロラド州で会談(Pence meets with Koch brother in Colorado

 

リード・ウィルソン筆

2017年6月23日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/news/339283-pence-stops-by-koch-brothers-conference-in-colorado

 

金曜日、ペンス副大統領は保守派の政治活動家チャールズ・コークと会談を持った。この会談については公式に発表されなかった。会談は、コロラドスプリングスで開催されるコーク兄弟率いるネットワークの大口寄付者会議の前に行われた。

 

ペンスは、コーク・インダストリーズの会長であり、最高経営責任者であるチャールズ・コークと、コーク・ネットワークの主要なメンバーと会談を持った。ペンスはコロラドスプリングスでのキリスト教保守派グループ「フォーカス・オン・ザ・ファミリー」の40周年記念式典に出席することになっていた。

 

ホワイトハウスが木曜日夜に発表した副大統領の行動予定表に、コークとの会談は掲載されていなかった。

 

金曜日朝、副大統領の報道官は、本誌からの「ペンス副大統領はコーク兄弟が利いるネットワークの人々と会談を持つのか?」という質問に対して回答を拒否した。金曜日夜に報道官にコメントを求めたが返事はなかった。

 

コーク兄弟が率いるネットワークの報道担当ジェイムズ・デイヴィスは、ペンスとチャールズ・コークは税制改革や退役軍人省の改革などについて議論したと述べた。退役軍人省の改革については金曜日にトランプ大統領が署名した。デイヴィスは、会談は50分間にわたって行われたと述べた。

 

会談にはマーク・ショートとマーティー・オブストが同席した。ショートはホワイトハウス法律問題担当部長を務めており、ペンスが下院議員時代に首席スタッフを務めていた。オブストは長年にわたりペンスのアドヴァイザーを務め、大統領選挙においてペンスの政治行動員会の責任者を務めた。

 

コーク兄弟側の出席者は以下の通りだ。コーク・インダストリーズの上級顧問マーク・ホールデン、コーク兄弟が支援している団体「アメリカン・プロスペリティ」会長ティム・フィリップス、チャールズ・コーク財団とチャールズ・コーク研究所の会長ブライアン・フックス、そして、前述のデイヴィスだ。

 

トランプ大統領は、リバータリアニズム信奉者の大富豪コーク兄弟とほぼ関係を持っていないが、ペンスはチャールズ・コーク、デイヴィッド・コークとの間で長年にわたり関係を持っている。

 

アメリカンズ・フォ・プロスペリティはインディアナ州知事時代のペンスを支援した。ペンスの世論調査担当者だったケリアン・コンウェイはコーク兄弟率いるネットワークで働いた経験を持っている。コンウェイは現在、ホワイトハウスでトランプ大統領の上級顧問を務めている。ショートは現在のホワイトハウスの法律問題担当であり、ペンスの首席スタッフを務めた経験を持つ。ショートはコーク兄弟率いるネットワークの主要な構成団体であるフリーダム・パートナーズ商工会議所の運営責任者を務めていた。

 

ホワイトハウスが発表したスケジュールによると、コロラドスプリングス滞在中、ペンスはシュライヴァー空軍基地勤務の軍人たちと昼食を共にし、アメリカ宇宙防衛センターとシェイン・マウンテン空軍基地を訪問することになっている。

 

ペンスは、コロラドスプリングスのブロードモアホテルで開催される連邦上院議員コーリー・ガードナーの政治資金パーティーに出席する予定になっている。ガードナーは全国共和党所属連邦上院議員委員会の委員長を務めている。コーク兄弟率いるネットワークもまたブロードモアホテルで会議を開く予定になっている。ブロードモアホテルは豪華ホテルで、保守派の大富豪フィリップ・アンシュッツが所有している。

 

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2018年中間選挙でコーク兄弟は4億ドルを投じる(Koch brothers to spend $400 million in 2018 elections

 

オリヴィア・ビーヴァーズ筆

2017年6月25日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/339399-koch-brothers-to-spend-400-million-on-republican-candidates-in

 

今週土曜日、「チャールズ・コーク、デイヴィッド・コーク率いる富豪たちの寄付ネットワークは2018年の中間選挙において、保守的な政策の実現のために4億ドル(約440億円)の資金を投じることになるだろう」、とネットワークの責任者がフォックスニュースに対して語った。

 

保守派の大富豪コーク兄弟から資金を受けている団体「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ」の責任者ティム・フィリップスは、「中間選挙では、私たちの政治信条や政策について、3億から4億ドルを投じることになる。金額の大きい方に近い額を出すことになるだろうと思う」と述べた。

 

「連邦上下両院の共和党所属議員たちに言いたいことは、大胆に、強く主張して行動して欲しいということだ」とフィリップは述べ、健康保険改革と税制改革を強調した。

 

フィリップは「そうすることで、2018年になった時に、共和党所属の議員たちが実績を誇る機会を与えることになる」と述べた。

 

政治と政策について資金を投入するという発表は、連邦上院の共和党が木曜日に、彼ら自身のオバマケア撤廃と新しい法案を木曜日に発表した。

 

保守派の多くはメディケイドの縮小や削減を望んでいる。メディケイドは、低所得の人々の多く、高齢者の一部と身体障碍者のための健康保険プログラムである。

 

チャールズ・コークと側近たちはコロラドスプリングスで大口寄付者たちと会合を持った。

 

彼らはメディアに対して、ホワイトハウスは、連邦上院の健康保険法案に対する彼らの情報や資金の投入を歓迎していると語った。今年の春に法案が可決される前に連邦下院で健康保険法案について議論がなされていた時期とは全く異なる対応だ。

 

コーク怯懦からの資源の投入という話では、コーク兄弟は、2018年に選挙を迎える下院議員で、連邦下院に提出された健康保険法案に反対する人々を支援していると報道された。

 

フィリップは続けて次のように述べている。「私たちが議員たちに覚えておいてもらいたいのは、これから行われる4回の選挙(2年おき)の間にオバマケアを撤廃するという約束をしたのだということだ。示威的な行動以上のことを行うことが重要だ」。

 

コーク兄弟と側近たちはオバマケアの撤廃と新しい法律可決よりも、見直しを望んでいる。同時に、彼らは健康保険法案についてトランプ政権と協力していると述べている。

 

連邦上院では共和党が過半数を占めている。そして、早ければ来週にも新しい健康保険法案について採決を行うことになる。

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 以下の日経新聞は現在のドナルド・トランプ政権が置かれている状況が良くまとめられています。トランプ政権の政策実行を邪魔する存在が同じ共和党内にいるという話です。それが、連邦議会の自由議連(フリーダム・コーカス、Freedom Caucus)です。そして、彼らを資金面でサポートしよう(言うことを聞かせよう)としているのが、コーク兄弟です。コーク兄弟については、拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)で詳しく書かれていますので、是非お読みください。

アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

  

 コーク兄弟はリバータリアン(Libertarians)として、共和党主流派とは距離を置きながら、共和党を支援してきました。トランプも共和党主流派から嫌われながらも大統領になりました。お互いに共和党主流派を嫌っているトランプとコーク兄弟ですが、コーク兄弟はトランプの言動やポピュリスト的な政策には反対しています。コーク兄弟は個人の自由を徹底的に擁護するリバータリアンであり、リバータリアンは政治的には保守派に分類されますが、社会的にはリベラルとなります。コーク兄弟は、麻薬の使用、同性愛や妊娠中絶に対しては個人の自由だとして容認しています。

 

 現在、民主党はトランプ・ショックのために、党内を見直し、エスタブリッシュメントの党になっていたことを反省し、かつ強大な敵であるトランプと対決するために、まとまっています。複雑なのは、元々、民主党はコーク兄弟の政治的な影響力について批判的で(「共和党はコーク中毒(コークは清涼飲料水のコーラと麻薬の両方の意味とコーク兄弟をかけている)に陥っている」と民主党の大物議員だったハリー・リードが批判した)、バーニー・サンダース連邦上院議員は、コーク兄弟を厳しく批判する一方で、トランプ大統領には是々非々で臨むという態度を採っています。

 

 味方である共和党内に敵がいるということになると、トランプ政権の政策遂行は厳しくなります。一部政策に関しては、民主党と連携した方がうまくいくのではないかとも思いますが、減税などでは共和党の一部まで反対してしまうと、これもうまくいかないでしょう。トランプ政権の先行きは厳しいですが、どれだけ交渉と妥協ができるかにかかっています。

 

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●「トランプ政権阻む保守強硬派 看板公約滞る」

 

日本経済新聞

2017/3/31 23:26

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM30H1Y_Q7A330C1EA5000/

 

 発足から2カ月余りのトランプ米政権に、与党・共和党の保守強硬派が立ちはだかってきた。看板公約の医療保険制度改革法(オバマケア)代替案を撤回に追い込んだほか、政府債務増につながるような大型税制改革やインフラ投資にも否定的。大きな政府に反対する草の根の「茶会(ティーパーティー)運動」に連なる保守強硬派が、米議会の主導権を握る。トランプ大統領には政権運営の足かせとなりそうだ。

 

 「2018年には彼らと民主党とも戦う」。トランプ氏は3月30日、18年の中間選挙で身内の与党内勢力に敵対することも辞さないと語った。

 

 トランプ氏が「彼ら」と名指ししたのは下院の「フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」。3040人に上る党内の保守強硬派だ。国家の干渉に対して個人の権利を擁護する古典的な自由主義者らでつくる。

 

 下院共和党(237人)の中で2割にも満たない集団だが、投票は一致結束して動く。下院の法案通過は216票が必要で自由議連が法案通過を実質的に阻止できる。オバマケア代替法案はトランプ氏が真っ先に取り組んだ本格的な法案だが、自由議連が反対の姿勢を崩さず、下院で採決すらできなかった。

 

 「今回はコーク兄弟にしてやられた。税制改革も簡単ではない」。トランプ氏に近い党関係者は弱音を吐く。コーク兄弟とは米エネルギー複合企業、コーク・インダストリーズを経営するチャールズ・コーク氏、デビッド・コーク氏を指す。共和党の大口献金者として知られ、資産総額はともに約4兆6千億円とされる。米国の長者番付はそろって7位。大統領選でトランプ氏を支持せずに、様子見に徹した。

 

 自由議連を強力に支援し続けたのがコーク兄弟ら富裕層の献金ネットワークだ。その一つ、政治団体「繁栄のための米国人(AFP)」は、ライアン下院議長ら党主流派がオバマケアの代替法案を発表すると「改革が不十分」と反対。自由議連も足並みをそろえた。

 

 AFPは緊縮財政を唱える茶会運動を先導し、自由議連はその流れを継ぐ。15年秋には政府債務上限の引き上げに反対。政府機関の閉鎖すら辞さない姿勢で党内のベイナー下院議長(当時)を辞任に追い込んだ。

 

 オバマケア代替法案が頓挫した直後の3月28日、トランプ氏はオバマ前政権の地球温暖化対策を見直す大統領令をぶちあげた。「保守強硬派の懐柔が狙いだ」と関係者。保守系政治団体は規制色の強い温暖化対策を毛嫌いする。そもそもコーク兄弟の事業は石油精製が中核だ。

 

 それでもトランプ氏による30年ぶりの税制改革は前途が険しい。主導するライアン氏は、連邦法人税率を35%から20%へと大幅に下げ、輸出は免税して輸入は課税強化する「税の国境調整」を導入する意向だ。

 

 保守強硬派は党主流派と同じく減税に大賛成。ただ、AFPは「法人税の国境調整は輸入品の値上がりを招き、米国人に破壊的な影響を与える」と反対の構え。ライアン氏らは輸入品の課税強化を減税の財源に見込む。税制改革が頓挫すれば、保守派の悲願である減税も遠のく。それでもオバマケア改廃や税制改革に反対姿勢を貫くのは「トランプ政権の転覆が狙いではないか」との見方すらある。

 

 4月末には暫定予算が切れ、新予算を組まなければ政府機関は閉鎖に追い込まれる。自由議連は緊縮財政をトランプ政権に迫る。看板政策であるメキシコ国境の壁建設は、今年度予算への計上をひとまず断念した。

 

 トランプ政権は、側近で過激な排外主義や孤立主義を唱えるバノン首席戦略官・上級顧問が主導権を握る。上院議長で政権の議会対策を担うペンス副大統領は日米経済対話など負担が重い。党主流派は政府閉鎖の回避や公約実現で野党・民主党との連携も模索し始めたが、反トランプへ攻勢を強める民主党との協議は難しい。政権は議会対策で袋小路に入りかけているようだ。

 

 (ワシントン=河浪武史)

 

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領と連邦議会共和党が目指していた、オバマケア代替法案(American Health Care Act、AHCA、アメリカン・ヘルス・ケア・アクト)が連邦下院での採決の直前に撤回されました。これで、しばらくの間、オバマケアが健康保険制度として存続することになりました。まず、今回の撤回に関する記事を下に掲載します。お読みください。

 

(貼りつけはじめ)

 

●「オバマケア代替法案、トランプ大統領が採決直前に撤回 公約の目玉で大敗北、何が起きたのか」

 

The Huffington Post  |  執筆者: Jonathan Cohn , Jeffrey Young

投稿日: 20170325 1334 JST 更新: 1時間前

http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/24/obamacare_n_15596294.html?ncid=fcbklnkjphpmg00000001

 

 

アメリカ下院の共和党首脳は324日、ドナルド・トランプ政権が成立を目指していた下医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案「アメリカン・ヘルス・ケア・アクト」(AHCA)を撤回した。トランプ大統領は、公約の目玉としてきた医療保険制度改革で敗北を喫したことになる。

 

このニュースを最初に報じたのは、ワシントンポストのロバート・コスタ記者だった。コスタ記者はポール・ライアン下院議長との会談を終えたトランプ氏に直接取材した。

 

トランプ氏は、ライアン氏から法案通過のための賛成票が足りないのは確実だと説明を受け、撤回に合意したと話した。

 

続けて、トランプ氏とライアン氏の両名は、医療保険制度からほかの政策へ、軸足を移す準備はすでに整っているとコメントした。

 

別名「トランプケア」とも呼ばれた代替法案の可決に失敗し、トランプ大統領とライアン下院議長にとって大きな痛手となった。これにより、7年以上にわたって共和党が掲げた公約の中核だった医療保険制度改革の先行きは不透明となる。

 

ライアン氏は記者会見で「非常にわずかな差だったが、必要な賛成票の数に届かなかった」と述べた。「今日は我々にとって失望の日だ」

 

法案を取り下げたことで、議会とホワイトハウスで1週間続いた騒動が収束することとなった。トランプ氏、ライアン氏、さらにAHCAに賛成する議員たちが必死になって、発表から3週間に満たない法案への支持票を取りまとめようと動いていた。トランプ氏たちは猛スピードで法案を可決させようとしていた。

 

トランプ氏が下院に対し最後通告を出してから、24時間もたたないうちに廃案となった。トランプ氏と共和党首脳はそろって、最重要政策と位置づけたAHCAへの賛成を求めていた。さらに、可決を拒否すればAHCAが成立しないまま、他の政策課題に取り組まざるを得なくなると脅しをかけていた。

 

トランプ氏の要求は、政治取引として大胆で瀬戸際的なものだった。反対派の共和党議員に揺さぶりをかけ、取り込む狙いがあった。

 

しかしその作戦は、見るも無残な失敗に終わった。

 

オバマケアが導入されて、およそ2000万人が健康保険に加入した。今回の法案撤回で、オバマケアが存続する見込みはトランプ氏の当選以来最も高くなった。トランプ氏の当選時点では、撤廃は避けられないと見られていた。

 

「アメリカは当分の間、オバマケアの下でやっていくことになりそうだ」と、ライアン氏も認めた。

 

 

共和党案が可決されたとしたら、どうなっていたか

 

「アメリカン・ヘルスケア・アクト」とは「アフォーダブル・ケア・アクト」に対する共和党の代替案だ。成立したらほぼ間違いなく、アメリカ史上類を見ない社会福祉制度の後退につながっていただろう。

 

オバマケアの下で実施されたメディケイドの受給要件緩和がストップし、メディケイドプログラムのさらなる拡充を図るための財源も削減されることになっていた。保険の適用範囲を広げるよう定めた規制も緩和されていた。さらに、低所得で高額の保険料に悩む人々に対する補助金を減らし、それなのに比較的裕福な層が、かなりの額の補助金を新しく受給できる仕組みになっていた。

 

法案が可決されていたとすると、さらに大きな変化も起こっただろう。たとえば、評判の悪い、健康保険に加入しない人に対して罰金を科す「個人強制保険」は廃止するとされていた。さらに政府が法の下、保険適用範囲を拡大するために使う富裕層や医療関連企業に課していた新税も、オバアケア以前に逆戻りする内容だ。

 

トランプ大統領は、2016年の選挙期間中から大統領就任当初まで、オバマケアを廃止するだけでなく、「素晴らしい医療制度」と「国民全員のための保険」を代わりに作ると約束していた。しかし議会予算局(CBO)が共和党の草案を分析したところ、今後10年にわたって無保険者が2400万人に増え、2018年だけでも1400万人にのぼることが分かった。

 

議会予算局は報告書の中で、財政支出を削減すれば連邦政府の赤字が減り、個人で保険に加入する人たちの平均保険料は他の方法よりも安くなると予測した。しかし、この安い保険料は高齢者や病気の人がいることで成り立つものだ。なぜなら、保険会社はこうした人たちから高額な保険料を取っているにもかかわらず、市場に出回るプランの保障金額は非常に少ないケースが多くなるからだ。

 

 

共和党指導部が賛成票を集めきれなかった理由

 

議会予算局が先週初めに調査結果を公表すると、委員会採決を難なく通過させた時のような、代替法案を支持する動きが止まった。トランプ政権の高官と下院共和党が、下院本会議での審議の準備作業を始めるとすぐに、法案通過に十分な賛成が得られないことに気づいた。

 

共和党首脳は繰り返し、今回の代替法案は、共和党がオバマケアを撤廃する絶好のチャンスになると説得した。しかし共和党議員を取り込む作戦は失敗に終わった。理由はさまざまだが、共和党首脳は、利害関係が大きく異なる2つの共和党内グループと交渉したことも要因の1つに挙げられる。

 

「下院自由議員連盟」に代表される保守派グループたちはオバマケアの完全撤廃を求めており、代替法案にオバマケアの条項が一部そのまま残ることに不満を示した。保守派は、規制を撤廃しなければ保険料が下がることはないと譲らなかった。ただし、オバマケアによる規制と実際の保険料の高騰との間の関連性ははっきりしていない。

 

支持層が民主党寄りの州や、オバマケアの資金をメディケイド拡大に利用してきた州から選出された議員が中核となっている穏健派グループ「チューズデー・グループ」は、AHCAで大量の無保険者が生まれることを恐れた。そして、AHCAによって実際に保険料が下がったとしても、それが保険加入者の自己負担増で賄われるのではないかと懸念した。

 

端的に言えば、AHCAに関して、保守派はオバマケアの撤廃が不十分になることを恐れ、穏健派は影響が極端に大きくなることを恐れた。共和党内のあるグループから合意を得ようと共和党首脳が努力すればするほど、もう別のグループの反発を招く結果となった。

 

事態をさらに悪化させたのは、共和党が今回の議会手続きを「財政調整法」の規定で可決させようとしたことだ。これは、審議のスピードを速めるため単純過半数で法案を可決できるよう、民主党からフィリバスター(長時間演説)などの議事妨害を受けることなく共和党が上院で法案を通すことのできる緊急プロセスだ。

 

財政調整法の規定によると、このプロセスで調整できるのは、連邦予算に直接的な影響のある条項に限られている。そのため、共和党保守派が求めていた保険の補償対象に関する規則の撤廃など、規制変更の多くは除外される可能性がある。こうした規則には、予算支出を削減するための立法措置が改めて必要になる。

 

そして何よりも、共和党は日に日に高まる一般世論からの懸念に直面していた。複数の世論調査によると、AHCAに対する支持率は極めて低く、共和党が刷新を望み、保守派の間では軽蔑の対象となっていたオバマケアの人気が高まっていた。

 

採決直前になって、トランプ大統領と共和党首脳は、メンタルヘルスや産科での治療などあらゆる医療保険プランに保険適用を義務付ける「エッセンシャル・ヘルス・ベネフィット」(基本的医療給付)を除外し、こうした医療費のみを対象とする特別な基金を設ける形で法案を修正することで合意した。専門家からは、こうした変更によって健康保険市場が劇的に変化してしまう可能性があると警告した。保険会社が適用範囲を狭めた保険を提供するようになると、広範囲の医療サービスに適用される保険を見つけるのは困難になるからだ。

 

保険の補償範囲と連邦予算に関する変更の詳細は明らかにされていない。なぜなら、採決を急いだ共和党首脳が、議会予算局にこの変更による影響を分析する時間的余裕を与えなかったからだ。実際、323日の夕方まで、共和党首脳がこの変更内容を公表しなかった。

 

しかし、最終的には法案成立に向けた共和党首脳の努力は水泡に帰した。共和党首脳は、AHCA反対で一致した民主党を抑え込むために、「下院自由議員連盟」と「チューズデー・グループ」という2つのグループから十分な賛成票を引き出すための法案を提示できなかった。

 

「この法案は提案当初から間違いだらけだった」と、ジャスティン・アマシュ下院議員(共和党)は24日、ハフィントンポストUS版に語った。「責任ある行動とは、法律成立に向けて努力し続けることなんです。失敗したときに私はどうすればいいのかというと、やりつづけることなんです」

 

 

なぜ医療問題に関する論争は決着しないのか

 

今起こっていることに関係なく、医療保険制度は今後も論争の的となる可能性が高い。

 

オバマケアは歴史的な進歩だ。保険に加入していないアメリカ人の数を著しく減らし、医療サービスの利用が改善され、経済的な負担軽減を支えている。しかし、保険サービスに不満を持つ人も非常に多く、また、新たに規制を受けた保険市場が苦戦を強いられている州もある。ますます高騰する保険料、そして財務上の損失を受けて掛け金を引き上げている保険会社の影響だ。

 

オバマ政権は初期段階で、新制度を作って普及させることに莫大な労力を費やし、また問題が発生する度に改善に力を尽くした。現在、この市場を管理する責任はトランプ政権にあるが、政権の意図ははっきりしない。

 

トランプ氏はかつて、「政治的に言えば、共和党がとれる一番簡単な手段は、手を引いて、そのままシステムを運用させることだ」と繰り返し語っていた。「そうすれば制度は完全に崩壊する」と、トランプ氏は予測している。

 

(貼りつけ終わり)

 

 今回の法案では加入義務や罰則を廃止し、加入促進のための補助金を止めるという内容になっていました。共和党強硬派が「アメリカン・ヘルス・ケア・アクトは中途半端だ、生ぬるい、オバマケアの完全な撤廃ではない」と主張し、強硬に反対しました。また、共和党穏健派は「無保険者の数が増える」「選挙区の事情(自分の選挙区ではヒラリーが勝った)があるので、この法案では過激すぎて有権者から嫌われる」として反対者が出ました。また、民主党は、強大な敵に立ち向かうという心情もあり、一糸乱れず、反対となりました。

 

 取りまとめに奔走した連邦下院のポール・ライアン議長(ウィスコンシン州選出、共和党)には大きなダメージとなりました。そして、トランプ大統領の政策を共和党が止める力を持っていることが明らかになりました。

 

 今回、最後の場面で、連邦下院共和党の強硬派で作るグループであるフリーダム・コーカスのメンバーとトランプ大統領が会談を持ちながら、決裂という結果になりました。私はこうした交渉ごとは、共和党全国委員長をしていたレインス・プリーバス大統領首席補佐官や連邦下院議員を長く務め、元同僚も多いマイク・ペンス副大統領がするものと思っていましたが、彼らの存在は全くありませんでした。

 

 プリーバスはライアンと同じウィスコンシン州選出でまだ若く、連邦議員出馬という噂(ライアンをけん制するためにトランプ周辺から出されているかもしれません)もあります。また、ペンスはその手堅さや実直なイメージが受けて、次の2020年米大統領選挙の共和党候補でまず名前が挙がる人物となっています。彼らは、ダメージになりそうなことを巧妙に避けたということが考えられます。

 

 今回のオバマケア撤回法案で低所得者層を中心に無保険者が2000万人以上出るという研究結果も出ていました。この低所得者層が昨年の米大統領選挙でトランプに投票した訳ですが、トランプはこの人たちを裏切るような法案を提出したことになります。しかし、結局、議会共和党一部の反対にあったためにオバマケア存続ということになりました。私は、トランプはこのことを狙っていたのではないかと思います。トランプは土壇場で「早く採決して欲しい、ダメでもオバマケアがある」という発言をし、ライアン議長をせかしているようでした。これは、本当はオバマケアが良いのだけど、まさかそんなことも言えないから、反対させて、そのまま存続させようということなのではないかと対深読みをしたくなりました。

 

 今回、連邦議会共和党が大変に強硬であったのは、「おカネにつられた」ためです。私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)の主人公であるチャールズ・コーク、デイヴィッド・コークのコーク兄弟がトランプにダメージを与えようとして、「撤回法案に反対した政治家の選挙資金の面倒を見る」と発表していました。以下の記事をご覧ください。

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