古村治彦です。
2024年アメリカ大統領選挙の共和党候補として、フロリダ州知事ロン・デサンティス(Ron DeSantis、1978年-、43歳)の名前が挙がっている。今年7月に『ザ・ヒル』誌とハリスX社が行った共同世論調査の結果では、ドナルド・トランプ前大統領、マイク・ペンス前副大統領に続く3位につけた。私が現在翻訳作業を進めている、『ビッグ・テックを解体せよ』の著者ジョシュ・ホーリー連邦上院議員も7位に入っている。デサンティスは43歳、ホーリーは41歳であり、40代の若手が共和党界隈で存在感を増している。
ケイシー夫人とロン・デサンティス
デサンティスはイタリア系の名前で、フロリダ州生まれ。2001年にイェール大学を卒業し(学生時代は野球ティームのキャプテン)、ハーヴァード大学法科大学院に進学し、法務博士号を取得した。法科大学院在学中に海軍法務部(Judge Advocate General's Corps、JAG)に入った。法務士官となったデサンティスは海軍特殊部隊の司令官付法務士官としてイラクに派遣された。2010年に海軍少佐で予備役となった。
2012年の連邦下院議員選選挙に立候補して当選し、3期目の9月に辞職して、フロリダ州知事選挙に出馬して、当選して現在もフロリダ州知事の任期中だ。途中の2016年には連邦上院議員選挙の共和党予備選挙に出馬する構えを見せた。現職のマルコ・ルビオが大統領選挙に出馬し、当選すれば議席が空くという可能性もあったが、ルビオが大統領選挙から撤退し、上院議員選挙に立候補したために、デサンティスは下院議員選挙での再選を目指し、当選した。
デサンティスは連邦下院議員時代にはタカ派の議員として知られ、また、ドナルド・トランプ前大統領の支持者でもあった。連邦下院議員から州知事への転身は、大統領選挙出馬を意図しているということが大いに考えられる。現在のバイデン、オバマは連邦上院議員出身だったが、その前のジョージ・W・ブッシュ(息子)とビル・クリントンはそれぞれテキサス州知事、アーカンソー州知事を務めた。古くはロナルド・レーガンも州知事出身であり、州知事で行政経験を積み、成果を出すことが大統領選挙でのアピールにつながる。
下の論稿はデサンティスについて取り上げたものであるが、奇妙なことに、副大統領候補として、民主党の大統領選挙にも出馬した、トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard、1981年-、40歳)前連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)の名前を挙げている点だ。ギャバ―ドについてはこのブログでも何度も紹介しているが、民主党のエスタブリッシュメント、ヒラリー・クリントンを強烈に批判してきた人物である。
トゥルシー・ギャバ―ド
ギャバードは、アメリカ軍の世界各地からの撤退ということを主張しているが、彼女自身は安全な場所からそのことを発言しているのではなく、ハワイ州兵としてイラクやクウェートに派遣された経験を持つ。現在は中佐の階級を持っている。
下院議員から退いた後は言論活動を展開している。民主党は相容れないはずのフォックス・ニュースの番組に出演し、特に連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)やアダム・シフ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)を舌鋒鋭く批判している。
この2人がコンビを組んで大統領選挙に出馬し当選するという可能性はほぼないと思う。
(貼り付けはじめ)
デサントスにとって完璧な民主党副大統領?(The perfect Democratic running mate for DeSantis?)
ダグラス・マッキノン筆
2021年10月9日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/white-house/575868-the-perfect-democratic-running-mate-for-desantis
私たちは全員が知っているように、運命の気まぐれは人生や政治を一瞬にして変えてしまう。今週、フロリダ州知事夫人ケイシー・デサンティスは乳がんの診断を受けたということが全米に報道された。ロン・デサンティス知事がより高位の職務のために選挙に出馬するのではないかという考えが、デサンティス家を襲った悲しみの霧に包まれてしまった。
デサンティス夫人の診断結果を受けて、党派争いをしている民主党員であっても、優しさと思いやりを示すことを期待したい。
しかし、悲しいことに、やさしさと思いやりを示されることはなかった。ツイッターで荒らし行為をしている利用者たちは、このニュースを基にして知事とその家族を攻撃した。
2022年の州知事選挙でデサンティスに対抗して立候補する予定の民主党所属の、フロリダ州農業ニッキー・フリード農業局長の名誉のために、彼女の次のツイートを掲載しておく。「私の心は、ケイシー・デサンティス・フロリダ州知事夫人とご家族と共にあります。私たちは皆、あなた方のために祈りを捧げます!」。彼女の温かい内容のツイートを読むだろう人々に対して、フリードは次のようにツイートした。「このツイートに変死することを選択するならば、どうぞ幾分かでも共感を示してしていただきたい。ケイシーは3人のお子さんのお母さんであり、この困難な戦いにおいて、私たちの支援を受ける価値のある人だ」。
フリード同様、私たちもまた、ケイシー・デサンティスの完全な回復のために数百万のアメリカ人が祈っていることは確かだと私は思う。最終的なプラスの結果が起きると信じているならば、何が起きるだろうか?
人生と政治はこれからも続いていく。
このような信念に基づくと、ロン・デサンティスは2024年の大統領選挙の共和党候補者の有力候補の2名のうちの1名だ。もう一人は、別の「ニッキー」だ。こちらは、サウスカロライナ州元知事のニッキー・ヘイリーだ。
「しかし、トランプ前大統領はどうだ?」「共和党支持者たちを対象にした世論調査の結果ではトランプがリードしているんじゃないのか?」と疑義を呈する人たちもいるだろう。
実際のところ、その通りだ。そうではあるが、トランプ前大統領が2024年の大統領選挙に出馬することはないと私は確信している。
私の希望は、トランプの巨大なエゴが、「彼の名前が何千万人ものアメリカ人にとって有害であり、彼の指名が大規模な市民運動を扇動するかもしれない」ということを、彼自身が熟考するだけの余裕を与えてくれないかということだ。もし、トランプが自分で言うように、アメリカを信じているのであれば、選挙に立候補せずに、自分の影響力を使って共和党の候補者を助ける方がはるかに良いことを分かっているはずだ。
ここでロン・デサンティスとニッキー・ヘイリーに話を戻す。どちらかが大統領選挙候補者に指名されれば、もう一方が副大統領候補として選挙戦に参加するだろうか?その可能性はあるが、可能性はそこまで高くない。カマラ・ハリス副大統領はその流れを現実化した。このような理由、また別の理由から、私はヘイリーが大統領候補に指名されなければ、副大統領候補になることはないだろうと私は確信している。
間違ってはいけない。ヘイリーは有力な大統領選挙候補者となるだろう。ヘイリーは大統領にふさわしい資格や属性を持つとともに、インド系移民の娘という有色人種でもある。ヘイリーは、偏見や差別の醜さについて、身をもって知っている。彼女の物語は数百万のアメリカ人の共感を得ている。
ここで、これらの条件や属性を更に多く持つ別の女性を紹介したい。それは、トゥルシー・ギャバード前連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)だ。
ギャバードは、サモア系アメリカ人・ヒンズー教徒系アメリカ人で初めての連邦議員となって、ガラスの天井を打ち破った。彼女は陸軍将校としてアメリカに奉仕し、イラクとクウェートに派遣された。彼女は外交政策の専門家であり、政権中枢にいた人々を「ネオコンの戦争好きなタカ派」と罵倒することを恐れない。また、ユーチューブで何十万回も再生されたヴィデオの中で、アフガニスタンでのアメリカの失敗の責任者である「エリート」を罵倒することもまた恐れない。
アメリカは、特にトランプ政権下のアメリカでは、「アメリカ“政治問題化した”合衆国(Polarized States of America)」に変貌した。政治的な立場に関して、右派と左派のヘイトスピーチを行う人々の過激な煽動的な言葉は、これまでにない時代を生き抜くために戦っている多くのアメリカ人の士気を低下させている。
党派的な愚かさや安易な議論を捨て去って、国民のためになるような大統領候補を、アメリカ人は温かく迎え入れてくれることだろう。2024年にデサンティスが大統領選挙に出馬する際に常に頭の中に入れておかねばならないのはこのことだ。
アメリカ史上最高齢の大統領ジョー・バイデンの後に、軍人としてアメリカに奉仕し、政治的に正反対の立場を超えて一緒に協力しようと望む40代の人物2人、デサンティスとギャバ―ドが大統領選挙に出馬することになる可能性がある。この予測不可能な時代に、絶対に、などとは絶対に言ってはいけない。
※ダグラス・マキノン:政治・コミュニケイションコンサルタント。ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)両政権でスピーチライターを務めた。ブッシュ(父)政権での3年間は国防総省の政策・コミュニケイション担当特別補佐官を務めた。
(貼り付け終わり)
(終わり)