古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:トム・コットン

 古村治彦です。

 

 2018年12月20日、ジェイムズ・マティス国防長官の辞任が前倒しとなり、在任は年内いっぱいまでとなりました。マティス長官の辞任は、ドナルド・トランプ大統領のシリア政策、具体的には米軍の撤退に反対したことが原因でした。トランプ大統領は正式の後任を置く前に、代行として、パトリック・シャナハン(1962年―)国防副長官を指名しました。このシャナハンもマティスの後任の有力候補として名前が挙がっています。

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パトリック・シャナハンとトランプ
 

シャナハンは1986年にボーイング社に入社し、最後は供給担当の上級副社長を務めました。政府での経験はないというところが不安を持たれているようですが、シャナハンはトランプ大統領が提唱した宇宙軍創設を推進しており、大統領からの信頼も厚いようです。彼自身もコンピューター技術者出身ということもあり、技術に関しては有能ということになるでしょう。

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アヨッテ
 
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トム・コットンとトランプ

 その他にケリー・アヨッテ、トム・コットン、デイヴィッド・マコーミック、ジム・タレントといった名前が挙がっています。アヨッテ、タレントは連邦上院議員の経験者、コットンは現役の連邦上院議員です。それぞれ軍事委員会に所属し、軍事知識が豊富なようです。トム・コットンはハーヴァード大学卒業後、法科大学院に進学し、弁護士資格を取得しました。その後、アメリカ陸軍に入隊し、幹部候補生学校に入学し、士官(最終階級は大尉)としてイラクとアフガニスタンに派遣されました。その後、ネオコンのウィリアム・クリストルに見出されました。そして、2014年の連邦上院議員選挙に当選しました。ネオコン派の議員として、タカ派的言動で知られています。

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デイヴィッド・マコーミックとトランプ
 

 デイヴィッド・マコーミックはヘッジファンドのブリッジウォーター社のCEOですが、ジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官を務めた経験を持っています。また、イヴァンカ・トランプ、ジャレッド・クシュナーと個人的に親しい関係にあるようです。

 
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ジム・タレント

 下に掲載した記事が書かれた頃にはシャナハンの代行はまだ発表される前でした。シャナハンが代行に任命されたことで、シャナハンがマティスの後任になる可能性が高まったように考えられます。アヨッテ、コットンといった人たちはトランプ大統領のシリアとアフガニスタンの米軍の縮小に反対を表明しています。主要な政策に反対する人を入れるのかどうかは分かりません。それぞれに一長一短があるので、誰と決め打ちすることは難しいですが、もしこの中から誰かが選ばれた場合に、トランプ大統領の思考法を理解するための手助けになると思われます。

 

(貼り付けはじめ)

 

マティスの後任の有力候補者5名(Five possible successors to Mattis

 

エレン・ミッチェル、レベッカ・キール筆

2018年12月23日

『ザ・ヒル』誌

 https://thehill.com/policy/defense/422560-five-possible-successors-to-mattis

 

トランプ大統領はジェイムズ・マティス国防長官の今週の辞任を受けて公認を決めるのに苦労するかもしれない。

 

マティスは木曜日(20日)に辞任した。最高司令官(大統領)との間で政策をめぐる大きな相違があったことを理由に挙げている。マティスは民主、共和両党から幅広い支持を受け、アメリカの同盟諸国から尊敬を集めていた。マティスの存在のおかげで発足してから2年間、無秩序な政権が何とかやっていくことが出来たが、現在、政権人事のこれまでにない大幅な異動が展開されている。

 

トランプ大統領は2月末までに退役した4つ星の将軍マティスの後任を決めることとなるが、有力候補者として数名の名前が挙がっている。

 

しかし、名前が挙がっている有力候補者たちで大統領と一対一であった人はほぼいない。また、連邦上院において大差で承認を得られるであろう人もほぼいない。現段階での名前が挙がっているのはトランプ大統領以外の人物の推測に基づいた人々である。

 

トランプ大統領によるシリアからのアメリカ軍の撤退という決定とアフガニスタン駐留の米軍の半減を考慮していることについて、連邦上院軍事委員長ジェイムズ・インホフェは次のように語った。「大統領は自分の考えを進んで実行してくれる人物を選ばなければならない。これは難しいと思う。多くの人間はシリアからの撤退決定、アフガニスタン駐留米軍の半減について憤慨していると思う」。

 

マティスの後任の候補者5名を紹介する。

 

●ケリー・アヨッテ(Kelly Ayotte)前連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、共和党)

 

政権に近い匿名の人々はアヨッテがマティスの後継者となると語っている。彼女は、マティスが国防長官に指名される前に、国防長官に指名されると考えられていた。

 

ニューハンプシャー州選出の前連邦上院議員アヨッテは国防に関して豊富なバックグラウンドを持っている。アヨッテは連邦上院議員時代に連邦上院軍事委員会即応小委員会の委員長を務めた。

 

2016年の選挙で彼女は敗れてしまった。2015年のイランとの核開発を巡る合意に関しては激しく反対する共和党議員の一人であった。彼女はイランと北朝鮮に対する経済制裁を強化することを主張した。

 

上院議員退任後すぐに、アヨッテはトランプが大統領になって初めて連邦最高裁判所判事に指名したニール・ゴーサッチのための連邦議会におけるシェルパ、先導役を務めた。アヨッテの名前は、2017年5月にトランプがジェイムズ・コミーFBI長官を解任した際を含む、複数の機会で取り沙汰された。

 

しかし、アヨッテの持つ考えの中にはトランプ大統領の考えと齟齬をきたすものがあるようだ。その中には中東からの米軍撤退に関する考えも含まれている。

 

アヨッテは2011年にオバマ前大統領がイラクから米軍を撤退させたことを激しく批判した。このことは、彼女が、トランプ大統領が望むシリアからの米軍撤退について同様に批判するのではないかということを示している。

 

連邦上院議員在任中、アヨッテは「スリー・アミーゴス」の一員として知られていた。他の二人はトランプを多くの場面で批判した故ジョン・マケイン前連邦上院議員(アリゾナ州選出、共和党)と、ここ数日シリアとアフガニスタンについてトランプ大統領と激しい応酬を展開しているが、基本的には大統領の味方であるリンゼー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)である。

 

●トム・コットン(Tom Cotton)連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)

 

ここ数カ月、連邦上院軍事委員会と情報委員会の委員を務めている、トム・コットン連邦上院議員が国防長官、もしくはCIA長官に指名されるのではないかという憶測が流れている。

 

コットンは金曜日に国防長官就任の可能性について質問しようと集まってきた記者たちに何も答えなかった。

 

コットンは陸軍士官としてイラクとアフガニスタンに従軍した経験を持つ。コットンは連邦上院の中で国防タカ派として名前を知られている。また、トランプ大統領による対イラク政策の変更を支持している。

 

現在41歳のコットンが国防長官になると、現代においては最年少の国防長官の一人ということになる。

 

コットンはいくつかの間違いを犯している。2017年2月にマイケル・フリンが国家安全保障問題担当大統領補佐官を辞職した後に、トランプ大統領にH・R・マクマスターを後任に推薦したと報じられている。

 

マクマスターの名前は、コットンによる推薦があるまで、トランプ大統領のレーダーには引っかかっていなかったと言われている。マクマスターはトランプと衝突を繰り返し、トランプの対ロシア、対イラン、対北朝鮮政策に反対し続け、2018年3月に解任された。

 

コットンは、トランプがシリアとアフガニスタンにおける米軍の規模を縮小すると発表したことに対して、激しい批判を行った。これらの問題はマティスの辞任を誘発した。

 

ロビー活動会社「ナヴィゲイター・グローバル」社長アンディ・カイザーは、トランプの政権移行ティームの国家安全保障部門に参加していた。カイザーは、コットンのシリアに対する姿勢が彼の国防長官に就任するチャンスにどのように影響するかどうかははっきりしない、と述べた。

 

カイザーは次のように述べている。「誰が国防長官になるかを推測するのは難しい。ニッキー・ヘイリーはトランプ大統領に批判的であった。それでもヘイリーは米国連大使に指名された。どのコメントが重要でどれが重要でないかを判断するのは難しい。公平に述べて、トム・コットンはトランプ政権に対して好意的であり、トランプ政権が発足してから帰還のうち99%の時期は政権を評価してきたと私は思う。従って、彼にも大いに可能性があると考えている」。

 

しかし、問題を複雑にしているのは、コットンが安泰な連邦上院議員の座を捨てて、国防長官になるかどうかということ、そして、トランプ大統領が、共和党が過半数を占めている連邦上院から議員を引き抜くかどうかということである。

 

●元財務省上級職員のデイヴィッド・マコーミック(David McCormick

 

今年9月、『ワシントン・ポスト』紙はマコーミックがマティスの後任になる可能性があると報じた。この時期、中間選挙(11月6日)後にマティスの辞任があるのではないかという話が出始めていた。

 

マコーミックは陸軍士官学校を卒業後、陸軍士官として湾岸戦争に従軍した。ジョージ・W・ブッシュ(子)政権で、国際問題担当財務次官を務めた。それ以前には産業・安全保障担当商務次官と国家安全保障問題担当次席大統領補佐官(国際経済政策担当)を務めた。

 

マコーミックは現在、世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーターの共同CEOを務めている。また、トランプ政権の酷寒安全保障問題担当次席大統領補佐官を務めたディナ・パウエルと婚約している。

 

マコーミックは大統領の娘と義理の息子であり、ホワイトハウスの上級顧問を務めるイヴァンカ・トランプとジャレッド・クシュナーとは社交グループを通じて個人的に大変に親しい関係にある。

 

2017年、マコーミックは国防副長官就任の申し入れを拒否した、その理由としてブリッジウォーターでの仕事に満足していること、国防副長官の仕事に自分は適していないことを挙げた、と報じられたことがある。

 

●パトリック・シャナハン(Patrick Shanahan)国防副長官

 

トランプ大統領はマティスの後任を見つけることが出来ない場合、国防副長官の中から選ぶこともある。その場合、ボーイング社の重役であったパトリック・シャナハンは有利な立場にある。

 

国防総省内で2番目の高位の文官は、企業の役員を務めた背景を持つ。1986年にボーイング社に入社し、2017年に国防副長官の指名を受けるまで、ボーイング社の供給チェーン担当上級副社長を務めていた。

 

更に言えば、シャナハンは、実際の戦争と戦闘に関してのアドヴァイスではなく、ビジネスと行政における経験に基づいて、国防総省の改革を主導する役割を担っている。

 

シャナハンは、宇宙軍新設というトランプの計画を支持しているだけでなく、実際に国防総省内で宇宙軍新設計画を推進している。そのために、ホワイトハウスを頻繁に訪問し、トランプ大統領とマイク・ペンス副大統領と会談を持っている。

 

シャナハンがマティスと緊密な関係にあるのかどうかは知られていない。

 

●ジム・タレント(Jim Talent)元連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)

 

2016年の米大統領選挙直後、トランプの政権移行ティームは国防総省トップにタレントを就けようとした。ミズーリ州選出の連邦上院議員だったタレントは、連邦上院軍事委員会印を務めた経験を持ち、今でも連邦議員たちと太いパイプを持っている。また、ニューヨークでトランプと会談を持った。2015年と2016年、トランプを批判した多くの共和党の政治家たちと異なり、選挙期間中、タレントはトランプを批判しなかった。

 

国防長官決定の過程の中で、タレントを強力に推したのはその当時の大統領首席補佐官レインス・プリーバスであった。しかし、プリーバスは2017年7月にホワイトハウスを去った。今回、タレントは大統領に対して影響を与えることが出来る大物支持者を得ているのかどうかははっきりしていない。

 

タレントは現在、米中経済・安全保障問題検討委員会の委員を務めている。タレントを2019年末までの2年の任期の委員に任命したのは、連邦上院多数党院内総務ミッチ・マコーネル(ケンタッキー州選出、共和党)であった。

 

トランプの政権以降ティームに参加したヘリテージ財産の国防政策担当アナリストであるジェイムズ・カラファノは誰がマティスの後任にふさわしいかと質問され、タレントとジョン・カイル連邦上院議員(アリゾナ州選出、共和党)の名前を挙げた。

 

カラファノは次のように述べている。「ジョン・カイルやジム・タレントのような人物は経験豊富、尊敬を集める連邦上院議員とその経験者で、国家安全保障問題に精通している。連邦議会の中で人々の尊敬を集めている。そのような人々は素晴らしく、国防長官に適格だろう」。

 

2012年の米大統領選挙で共和党候補者となったミット・ロムニーは、タレントを国防長官にすると明言していた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に2016年5月27日付で’All King Trump’s Men’(モーリー・オトゥール筆)というタイトルの記事が掲載されました。これは、映画『オール・キングス・メン(All King’s Men)』をもじったものです。この映画は、連邦上院議員とルイジアナ州知事を務め、当時のフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が最も恐れたヒューイ・ロングをモデルとしたものです。このタイトルは、共和党の大統領選挙候補者ドナルド・トランプをロングになぞらえたものです。ヒューイ・ロングの著書には"Every Men a King"(皆が王様)というタイトルのものがあります。「オール・キングス・メン」(皆が王様の家来)はこれとは反対の意味を指す言葉です。



 記事の内容は、トランプがこれまでに会談を持った人物たちの中で、トランプが政権を獲得した場合に、政権入りするのではないかと思われる人々の紹介です。そして、彼らはトランプと完全に考えが一致してはいないと著者のモーリー・オトゥールは書いています。今回はこの記事の内容をご紹介します。

 

具体的には、元連邦下院議長ニュート・ギングリッジ、連邦上院議員で連邦上院外交委員会委員長ボブ・コーカー(テネシー州選出)、連邦上院議員トム・コットン(アーカンソー州選出)と言った人々です。既に支持を表明しているニュージャージー州知事クリス・クリスティについて、トランプは当選した暁には政権移行ティーム(Transition Team)の委員長にしたいと述べました。政権移行ティームの委員長は、首席補佐官や閣僚のポストに選ばれることが確実なポストです。トランプは、クリスティについて、素晴らしい司法長官になるだろうとも述べています。

 

 トランプがワシントンを訪れて、ジェイムズ・ベイカー元国務長官と会ったということは既にこのブログでお伝えしました。その時に、トランプは共和党の政治家たちとも会談を持っています。その中にトム・コットンとボブ・コーカーが含まれていました。その翌週にトランプは、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官の自宅を訪問したということも既にお伝えしました。

 

 ニュート・ギングリッジは1990年代に連邦下院議長を務めた人物で、半世紀ぶりに共和党が連邦下院で過半数を取ることに貢献した人物です。1994年に「アメリカとの契約」という保守的な綱領を携えてワシントン政治に登場しました。ギングリッジはNAFTAを支持し、イラク戦争やリビアへの介入を支持したのですが、現在は、全く反対の立場のトランプを支持しています。「現在のアメリカの国家安全保障システムと外交政策システムは現実離れしている」「トランプが政権に入れる人の70%はワシントンの外から連れてくるべきだ」と発言しています。

 

 ボブ・コーカーについては、トランプの副大統領候補になるのではないかという憶測も流れていましたが、コーカーは今のところ否定しています。コーカーは、オバマ政権に対して批判的ですが、同時に、ホワイトハウスと連携して移民制度改革を行った人物で、「超党派(bipartisan)」という評価を受けている人物です。また、トランプについては、「大衆煽動者を勝利させてはならない」「イスラム教徒の一括入国禁止は我らが偉大な国の価値観と諸原理に反対するものだ」と発言していました。しかし、現在では、トランプが「より現実的な」外交政策の方向へ「進化している」と考えていると発言しています。そして、経験豊かなアドヴァイザーを迎え入れることでトランプはより大きな利益を得るだろうとも述べています。

 

 トム・コットンはアーカンソー州選出の連邦上院議員です。ハーヴァード大学法科大学院卒業のエリートで弁護士として働き始めたばかりの時に、2001年9月11日の同時多発テロに衝撃を受けて、アメリカ陸軍に入隊し、イラクやアフガニスタンに派遣されました。彼は軍在籍中にニューヨーク・タイムズ紙の記事に対して反論の文章を書き、それが注目され、ネオコンのウィリアム・クリストルに見出されました。そして、2014年の連邦上院議員選挙に当選しました。

 

 トム・コットンはトランプの発言に対して批判をしてきましたが、「ヒラリーよりもより多くの点で考えが一致する」とも述べています。また、「全世界に対する制限のない関与」の見直し、「軍の建て直し」という点では一致しているとも述べています。

 

 共和党の政治家たちは、不承不承トランプを支持するということになっています。もしくははっきりと「民主党、ヒラリーを勝たせたくないので、トランプに投票はするが支持はしない」ということを述べている人たちもいます。トランプは過激な発言をしていることはもうすでに知れ渡っているのですが、彼らは、その中のいくつかで自分と考えが合うものを選び出して、トランプのこうした考え(発言)は自分と同じだし、彼もだんだん現実的になっているから支持するという表現をしています。

 

 この記事の中で、トランプの時に矛盾する発言内容はアメリカの有権者たちの抱える矛盾を象徴するものだとしています。ピュー・リサーチ・センターの最新の世論調査によると、有権者の60%が「アメリカは自国の問題に対処して、他国の問題は他国に任せるべきだ」と考えているが、同時に、ここ10年で、より多くのアメリカ人、特に共和党支持者たちは「軍事支出は削減すべきではなく、増加させるべきだ」とも考えているということです。

 

 トランプの外交政策は、「アイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)」であり、「アメリカ・ファースト(アメリカの抱える国内問題をまず第一に解決しよう)」ということです。

 

 トランプの選対では、トランプは外交政策について、「専門性と現実性を高める(professionalizing)」最中にあるとしています。このprofessionalizingの過程は、同時に、「手なづける(tamig)」ものでもあって、トランプは少しずつ、取り込まれていっているように思われます。エスタブリッシュメントの人々はバカではないのでエスタブリッシュメントをやっていられる訳で、トランプを取り込もうとすることは当然です。また、トランプも本気で大統領になろうというのなら、「より現実的に」ならねばなりません。

 

ただ、トランプの出現はアメリカの大きな地殻変動(もしくは帝国の衰退)の象徴ではあると私は考えています。そして、外交関係でいえば、ヒラリーよりはずっとまし、ということになります。最悪よりはまし、ということになります。

 

(終わり)







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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカ連邦上院議員トム・コットンとイラン外相ジャヴァド・ザリフとの間で交わされた激しい言葉の応酬をご紹介します。トム・コットンの器の小ささにアメリカでも失望が広がっているようです。これで共和党の輝ける星というのは何とも情けない話です。

 

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イラン外相がアメリカの連邦上院議員の「個人的な中傷」を払いのけた(Iranian foreign minister dismisses US senator’s ‘personal smear’

 

デイヴィッド・マカビー筆

2015年4月30日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/240614-iranian-foreign-minister-dismisses-us-senators-personal-smear

 

 イラン外相は木曜日、連邦上院議員トム・コットン(アーカンソー州選出、共和党)の「イランの暴政、背信行為、テロの記録について議論」しようという挑発を払いのけた。

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ザリフ外相

 

 ムハマド・ジャヴァド・ザリフ外相は、トム・コットン上院議員の初めての子供の誕生を祝う投稿の前に、ツイッターに「マッチョな個人の中傷ではなく、真剣な外交こそを私たちが必要としているものだ」と投稿した。


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コットン議員

 その前日の水曜日、コットンはザリフを挑発し、「イラン・イラク戦争で農民と子供たちが死に向かって行進している間、アメリカで隠れている」決心をザリフがしたと嘲った。

 

 ザリフは、イラクの核開発プログラムについて合意に達したら、コットンが「気に入ろうがいるまいが」、イランに対する経済制裁が緩和されるだろうとコメントしたが、それに対して、コットンが反応したのだ。

 

 コットンはアメリカとイランとの間の合意に対して徹底的に反対している。コットンに対しては今年初めに批判が集まった。この時、彼はイランの指導者たちに対する「公開書簡」を主導し、アメリカの憲法システムについて説明しようとした。

 

(終わり)

 

==========

 

イランのジャヴァド・ザリフ外相が連邦上院議員トム・コットンに対してコットン議員の第一子の誕生の機会を捉えて挑発した(Iranian FM Javad Zarif Trolls Sen. Tom Cotton On the Occasion of His Child’s Birth

 

エリアス・グロール筆

2015年4月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2015/04/30/iranian-fm-javad-zarif-trolls-sen-tom-cotton-on-the-occasion-of-his-childs-birth/?utm_content=bufferb7539&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 イラン外相ジャヴァド・ザリフは連邦上院議員トム・コットンに初めての子供が誕生する機会を捉えて挑発を行った。今月初め、各国の交渉担当者たちが枠組み合意に達したと発表して以来、連邦上院の超タカ派議員トム・コットン(アーカンソー州選出)は合意を台無しにしようとキャンペーンを公然と展開している。しかしトム・コットンにとってマイナスなことも起きている。今週、イランのジャヴァド・ザリフ外相との間で激しい言葉の応酬があった。ザリフはかなり丁寧に、激しい言葉を投げかけた。

 

 47名の連邦上院議員たちが署名したイランの指導者たち宛ての公開書簡(いかなる経済制裁の緩和も連邦議会の承認が必要だとする内容)を主導した後、コットンはイランとの核開発を巡る合意に対して反対する強硬派として知られるようになった。しかし、木曜日、ザリフはニューヨークにおいて、コットンを脇にどかそうとして、「コットン上院議員が気に入ろうが気に入るまいが」、国連は経済制裁緩和に向けて中心的な役割を果たすだろうと述べた。

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 このコメントはコットンの神経をいたく刺激した。そして、コットンはザリフに対してワシントンにまで来てアメリカ合衆国憲法について議論しろと要求した。

 
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 『フォーリン・ポリシー』誌で私たちがこれまで書いてきたように、コットンのイランとの合意に対する反対運動にはいくつかの問題が存在する。彼はイランに指導者たちに向けた経済制裁緩和に関する書簡を発表した後、コットンは、アメリカ外交政策を実行するにあたりバラク・オバマ大統領の権威を傷つけたと激しい批判を浴びた。踏んだり蹴ったりだったのは、コットンが主導した公開書簡のペルシア語翻訳版は中学生が書いたような内容であったことだ。

 

 それだけでもコットンに同情を寄せるのには十分だ。しかし、アーカンソー州選出の上院議員には素晴らしいお子さんが誕生したのだ。それはとても素晴らしいことだ。

 

(終わり)











 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 

 古村治彦です。

 

 日本でも政治家の劣化は激しいですが、アメリカでも同じようです。その代表例がトム・コットンです。トム・コットンのアホさ加減については、記事の中でも言及されています。大変「東洋的」と言うか、罰則の親族連帯責任論を唱えているというのは、時代遅れです。そして、彼が恐らく誇りに思っている西洋文明とは全く相いれないものです。

 

 どうも世界は悲劇で満ち溢れているようです。

 

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トム・コットンの影響力(Tom Cotton’s Influence

 

エイミー・デイヴィッドソン筆

2015年3月13日

『ニューヨーカー』誌

http://www.newyorker.com/news/amy-davidson/tom-cotton-iran-letter?mbid=social_facebook

 

 テネシー州選出で共和党所属のボブ・コーカー連邦上院議員は、3月12日に『ザ・ヒル』誌の取材に対して、「今週末まで私はこのように勢いがつくとは思わなかった」と述べた。彼は、「イラン・イスラム共和国の指導者たち宛て」の書簡についての取材に対してこのように答えたのだ。この書簡には、47名の共和党所属の連邦上院議員たちが署名した。その中には、アーカンソー州選出のトム・コットン議員も含まれている。コットン議員がこの書簡を主導したのだ。この書簡は、オバマ政権が進めているイランとの核開発を巡る交渉を邪魔するために、イスラム聖職者ムッラーたちにアメリカ合衆国大統領だけが彼らにトラブルをもたらす存在ではないということを示唆する内容になっている。共和党所属の上院議員たちの中からさえも、公開書簡について少なからず懸念を持っている人たちが出ている。フォックス・ニュースのメギン・ケリーは、保守主義の立場から、コットンに対して、アヤトラであるアリ・ハメネイがどのポイントに反応すると思ってこの書簡を準備したのかと質問した。コットンは、「専門家たちは私に対してイラン国民はアメリカ憲法について理解していないと語ったのでこのような書簡の内容になった」と答えた。民主党所属の議員は誰もこの書簡に署名しなかった。コーカーは書簡に署名しなかった7名のうちの1人だ。

 

 共和党の議員で署名しなかったのは次の人々であった。スーザン・コリンズ(メイン州選出)、ラマー・アレキサンダー(テネシー州選出)、ダン・コーツ(インディアナ州選出)、リサ・マコースキー(アラスカ州選出)、ジェフ・フレイク(アリゾナ州選出)、サド・コクラン(ミシシッピー州選出)。彼らがどうして署名しなかったのかについて興味がある。「拝啓アヤトラ様」書簡は共和党所属の議員たちにとってはいたずらのような楽しい企みであったのに彼らはそれに参加しなかったのだ。コリンズ議員の答えは極めて理性的なものであった。「私はアヤトラが上院議員たちからの書簡で説得されるだろうとは考えていない」。他の人々はもっと慎重であった。「私は適切ではないと考えた」(フレイク議員)。「この問題については公の場で議論すべきではないと考えた」(コクラン議員)。恐らく、共和党の幹部たちに指導力が全くないわけではないのだ。私たちが考えるべき疑問は、どうして7名が署名しなかったのか、ではなく、失言や強烈な表現を使うことでよく知られている一年生議員コットンがどのようにして46名の同僚議員たちの署名を集めたのか、である。

 

 彼自身がよく強調するように、37歳のコットン議員は、アフガニスタンとイラクの戦争に従軍した元軍人であり、ハーヴァード大学法科大学院の卒業生である。2006年、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、アメリカ政府が、テロリズムとの戦いの名目で、テロとは何の関係もないアメリカ国民の財産情報を集めていたと報じた。当時、陸軍大尉としてバグダッドに駐留していたコットンは、ニューヨーク・タイムズ紙に手紙を送った。その中で、「貴紙の編集者の皆さんは投獄されるべきだ」と書いた。彼は続けて、「次回、私が同じような内容の記事を読むことになって、その酷さをまた感じることになるだろう。貴紙がテロリストたちに我が国政府の行う財産調査の内容を教えなくなるまでそこのことをは続いていくことだろう」と書いた。更に彼は「私はスパイ関連法に精通している」とし、ニューヨーク・タイムズ紙の人々はそれに基づいて訴追されるべきだと書いた。ニューヨーク・タイムズ紙はコットンの手紙を紙面に掲載しなかったが、保守派のウェブサイト「パワー・ライン」が掲載した。コットンはこれによって保守派の人々の賞賛を集め、軍を除隊し、アーカンソー州で家族が経営する肉牛牧場に戻った後、連邦議員選挙に出馬するチャンスを掴んだ。

 

 2012年、トム・コットンは連邦下院議員選挙に当選した。彼が連邦下院議員として最初に行ったのは、経済制裁に関する法律の修正で、法律を破った人間だけではなく、その親族にも罰を与えるようにすべきだというものであった。その範囲として「曾孫」や「三親等以内」を挙げていた。法律の修正は失敗した。『ワシントン・ポスト』紙が指摘したように、このような内容は深刻な憲法違反であった。しかし、コットン議員は全く懲りなかった。後悔している時間などなかった。彼はこの時既に連邦上院議員選挙に出馬することを決めていた。彼は連邦上院議員を二期務めていた民主党所属の現職マーク・プライアーに対抗して出馬した。 彼はティーパーティー・エクスプレス、クラブ・フォ・グロウス、彼の無限の未来を感じる共和党の有名人たちからの支援を受けた。昨年9月、『ジ・アトランティック』誌はコットンのプロフィールを紹介する記事を掲載した。記事のタイトルは「保守派のスーパースターを作る」であった。

 

 コットンは中絶の権利とオバマケアへの反対を掲げて選挙戦を戦った。そして、彼は元軍人たちと外交政策のタカ派にアピールした。AP通信は、「彼の選挙運動バスの前面には巨大なブーツの絵が描かれ、それをアーカンソー州旗で隠していた」と報じた。昨年の春、彼はテレビ番組の「モーニング・ジョー」に出演したのだが、その時、彼が「過激」だと言われていることについて質問された。コットンはプライアーの記録に言及しながら答えた。「プライアー氏が唯一過激であったのは、5年も前にオバマケアに反対票を投じた時だけのようですね」。コットンは得票率で17ポイントの大差をつけてプライアーを破った。イランとの交渉を失敗させようとして、ここ2カ月、コットンは連邦上院で、グアンタナモ収容所からこれ以上収容者を解放させないように動いてきた。グアンタナモ収容所に収容されている収容者の半数はアメリカに対して何の脅威にもならない存在であることが既に判明している。コットンがやろうとしてきたことは、収容者たちを「地獄で朽ち果てさせる」というものだ。

 

 政界の市場機能の不調のために出現したのが、トム・コットンだと言えるだろう。軍人としての経験を売りにした若い議員たちは連邦議会にはなかなかいないが、そんな議員たちがどのようにしてチャンスを掴み、選挙に通ったのか?彼らにどんな才能があって連邦議員になれるのだろうか?昨年の連邦上院議員選挙で、コットンは、「慎重さに欠ける」という批判に応えねばならなかった。彼の思慮のなさは魅力のようになっている。他のヴェテランの共和党所属の連邦議員たちには見られない過激さ、稚拙さ、怒りが同僚たちから受けて、彼らは力を得ることが出来た。何がそこまで魅力的なのか? もしくは何が彼らをそこまで恐れさせるのか?

 

 ジョン・マケイン議員は『ポリティコ』誌の取材に次のように答えた。「公開書簡を読んだのが、私には書簡には論理的に見えたので、署名をした。それだけのことだ。私はたくさんの手紙に署名する」。確かに彼は誰も実際には読まないような手紙には何の懸念も署名できるだろうが、今回の書簡には関しては全く違うはずだ。それでも署名した。マケインは、フォックス・ニュースのグレタ・ヴァン・サステレンに対して、アメリカ連邦議会は外交に関して重要な役割を果たすことをイランは知る必要があると答えたが、同時にやや後悔の念も見せて、「この書簡は最良の方法ではなかったかもしれない」とも述べた。ルイジアナ州知事ボビー・ジンダルは、「コットンの主導した書簡に署名したい、2016年の大統領選挙の候補者たちにも署名してもらいたい」と述べた。ランド・ポール議員、マルコ・ルビオ議員、テッド・クルーズ議員は既に署名している。

 

 コットンは同僚の上院議員たちに個人的にかつ精力的にロビー活動を行った。そして、恐らく誰も彼を止めることが出来なかったのだろう。連邦上院外交委員会委員長コーカー議員は書簡に署名することは拒否した。それは、彼がイランとの交渉をより品のある方法で台無しにするための法案を可決させようとしてきたからだ。彼はポリティコ誌の取材に対して、「私はこのような書簡が必要だとは考えていない。私の目標は交渉の結果に影響を与えるために法案の可決と大統領の拒否権の行使を覆すために必要な67名の賛成を集めることだ」と答えた。彼と同じくテネシー州選出の連邦上院議員であるラマー・アレキサンダーは、『ノックスヴィル・ニュース・センティネル』紙の取材に対して、自分は同僚コーカー議員の専門性についていくと述べた。 ムコースキー議員の広報担当は、彼女がコーカー議員提出の法案の共同提出者であると強調した。サド・コクランは伝統的な恭子は保守派議員であるが、昨年の選挙ではティーパーティー運動の標的とされ、厳しい選挙戦を余儀なくされた。同時期には妻の経営する老人ホームへの不法侵入事件が起き、妻は最終的に自殺してしまうという事件まで起きた。そのことが今回の書簡に署名しなかった理由ではないかと考えられる。繰り返しになるが、書簡に署名しなかった議員たちは、署名すると決める前に理性的な会話をして、その後署名しないと決定した。そう考えると、あれほど多くの議員たちが書簡に署名したことは何の驚きでもない。現在の連邦上院で合理性と論理性を持って物事に対処することはほとんどないのだから。

 

※エイミー・デイヴィッドソン:『ニューヨーカー』誌スタッフライター。ニューヨーカー誌のコメント欄のレギュラー寄稿者であり、電子版のコラムを担当している。戦争、スポーツ、その他ありとあらゆる話題を網羅している。

 

(終わり)











 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、先日ネオコンの危険な議員トム・コットンが主導した公開書簡に対する批判に関する記事を皆様にご初会します。

 

 公開書簡に関しては、どうもトム・コットンの売名行為だったように思われます。

 

==========

 

共和党のテヘラン宛ての公開書簡が批判に晒されている(GOP letter to Tehran backfires

 

ジョーデイン・カーニー、クリスティーナ・ウォン筆

2015年3月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/defense/235301-gop-letter-to-tehran-backfires

 

共和党所属の連邦上院議員たちからイランの指導者たちへ宛てた公開書簡は、共和党を分裂させ、共和党を守勢に立たせ、オバマ大統領とテヘランとの間の核開発をめぐる交渉を無効にすることになる新たな経済制裁の連邦上院での可決のチャンスを潰えさせる危険を孕んでいる。


 オバマ大統領によるイランとの対話は民主党を長年にわたり分裂させてきたが、先月、共和党が連邦上院で、新たな経済制裁に対するオバマ大統領の拒否権を覆すのに十分な議席を得ることで、再び姿を現した。

 

 しかし、状況は一変し、47名の共和党所属の議員たちが署名したテヘラン宛ての公開書簡に対して怒りが向けられている。連邦上院多数党院内総務(Senate Majority Leader)のミッチ・マコネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、オバマ大統領とイランとの交渉を台無しにすることになるであろう2つの法案の上院の可決の可能性が減少してしまったことに慌てている。

 

 火曜日、ホワイトハウスは公開書簡が発表された2日目に声明を発表し、共和党所属の議員たちが出した公開書簡を批判し、これを「無謀」で「間違った方向に導く」人気取りの行動と呼んだ。

 

『ニューヨーク・デイリー・ニュース』紙は、紙上にマコネル、2016年の大統領選挙の有力候補者であるテッド・クルーズ(テキサス州選出)とランド・ポール(ケンタッキー州選出)両上院議員と、一期目の連邦上院議員であるトム・コットン(アーカンソー州)の写真を掲載し、見出しには「売国奴(Traitors)」という単語を使った。トム・コットンは今回の書簡の主導者である。

 

 保守的な論調で知られる『ウォールストリート・ジャーナル』紙の編集局は公開書簡を批判し、オバマ大統領が逆襲に使うための「材料」にされると述べた。

 

 共和党内部でも公開書簡をめぐり争いが起きている。7名の共和党所属の上院議員が書簡に署名しなかった。彼らは同僚たちを公に批判している。

 

火曜日、スーザン・コリンズ連邦上院議員(メイン州選出、共和党)は記者団に対して次のように語った。「私たちにとって交渉が重要な局面に差しかかっているこの時にアヤトラに書簡を送るなど不適切だと考える。そして、より率直に言えば、私たちの憲法システムを説明したことでアヤトラが心を動かすことがあるとは思えないし、その点に疑念を持っている」。

 

 ジェフ・フレイク連邦上院議員は公開書簡について「有効」でもないし、「生産的」でもないと述べた。

 

 「現状においても交渉は厳しい状況にある。この種の書簡を送ることが有効ではないと私は考える」

 

 連邦上院外交委員会委員長のボブ・コーカー(テネシー州選出、共和党)は、公開書簡が「私たちが手に入れたいと望む通りの結果をもたらすのに有効ではない」と考えていると述べた。コーカーはまた、書簡に署名することは建設的ではないと考えたし、多くの共和党所属の議員たちが署名したことに驚いたと述べた。

 

 コーカーは「今週末まで私はこのように勢いがつくとは思わなかった」と述べた。

 

 ダン・コーツ連邦上院議員(インディアナ州選出)、ラマー・アレキサンダー連邦上院議員(テネシー州選出)、リサ・マコースキー連邦上院議員(アラスカ州選出)、サド・コクラン連邦上院議員(ミシシッピー州選出)の4名もまた公開書簡に署名しなかった。

 

コーツとマコースキーは2016年に再選を控えている。

 

 オバマ政権は今月末までの合意成立を目指している。これによってイランに対する経済制裁は解除されるが、その代わりにイランが核兵器を所有する能力の開発を阻止するという譲歩を得ることになる。

 

 アメリカはイランが活発な立ち入り調査を受け入れ、ウランの濃縮能力を制限するという約束を取り付けようとしている。現状で言えば、合意が達成されない場合、イランが核兵器を開発するのに十分な核燃料を手に入れるのに1年間ほどかかると言われている。

 

 オバマ大統領の対イラン外交についての懐疑は民主、共和党両党に存在している。そして、多くの民主党所属の連邦議員たちは先週行われたイスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフの議会演説に欠席した。ネタニヤフ首相は演説の中で、オバマ大統領は、イスラエルの安全を維持することが出来る良い内容の合意をイランとの間で結ぶことなど不可能だと主張した。

 

 ネタニヤフ首相の議会演説は論争を巻き起こした。これによって共和党側はいくらか勢いを得たように見えたが、連邦上院の民主党は、マコネル院内総務が今週中に行おうとしていたコーカー議員とロバート・メネンデス連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)が提出していた法案の採決に対して、早速難色を示した。この法案はイランとの合意を承認する前に、提案された合意内容を連邦議会で見直すというものだ。

 

コーカー=メネンデス法案自体は、マーク・カーク連邦上院議員(イリノイ州選出、共和党)とメネンデス議員が提出した法案の内容よりもソフトだと考えられている。その内容は、合意に達しない場合、もしくはイランが合意内容を破った場合に経済制裁を再開し、新たに科すというものである。経済制裁法案は、大統領が拒否権を行使してもそれを覆すだけの賛成票が得られるものと見られていた。

 

 しかし、現状では60票の賛成票を得られるかどうかはっきりしない。

 

 民主党側は議場でコットンが主導した公開書簡を非難した。書簡の内容は、2017年にオバマ大統領がホワイトハウスを去った後に、イランとの合意を反故にすると示唆している。

 

 バイデン副大統領は、連邦上院議員時代には外交委員会の委員長を務めていた。彼は公開書簡について、「これはオバマ大統領が他国と交渉する能力を著しく傷つける恐れがある」と発言した。

 

 バイデン副大統領は月曜日夜に発表した声明の中で次のように述べている。「議員たちによる公開書簡は、アメリカ憲法についての講義の体裁をとってはいるが、2世紀にわたるアメリカ合衆国の歴史を無視し、未来の合衆国大統領のアメリカを代表しての他国との交渉を行う能力を著しく損なうものとなっている。民主党だろうが共和党だろうが、大統領が外国との交渉をしにくくする内容なのである」。

 

 ヒラリー・クリントン前国務長官も自身の私的なEメール使用に関する記者会見の席上で共和党を厳しく批判した。彼女は書簡について、「アメリカの指導者たちが積み上げてきた最良の伝統から著しく逸脱するものだ」と述べた。

 

 コーツは声明の中で、共和党が政策をめぐる戦いで勝利を得るために党派による争いを止める必要があると指摘している。

 

コーツは声明の中で、「私たちは戦術の面で合意に達していなくても、オバマ大統領があらかじめ明言している拒否権の発動(veto)を覆すためには超党派の支援が必要であることを認識している」と述べている。

 

(終わり)










 
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