古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:トルコ

 古村治彦です。

 前回は「ウクライナ戦争勃発によって黒海の入り口を抑えるトルコの重要性が再認識されている」という論稿を投稿した。今回は、トルコがヨーロッパ政治においてもその存在感を増している。トルコはEU(ヨーロッパ連合)に関しては、加盟候補国となっている。これは、EUに加盟申請したものの、EUが定める様々な基準を満たしていない、満たす見通しが立っていないので正式加盟は認めないということである。NATO(北大西洋条約機構)に関しては、既にメンバー国となっている。NATOについては、新規加盟申請がある場合、加盟国が全会一致で賛成しなければ新規加盟はできないことになっている。

 ウクライナ戦争勃発後、フィンランドとスウェーデンがNATO加盟を希望することになった。その理由はロシアの脅威に対抗するためというものだ。ここで問題になったのがNATOの新規加盟には全会一致の賛成が必要という条件だ。EU加盟諸国は無条件に賛成するというのは当然だったが、ここでトルコが難色を示した。トルコが新規加盟に難色を示したのは「北欧諸国がクルド人テロ組織(トルコとアメリカがテロ組織認定)であるクルド労働者党への対処が徹底されていない」ということが理由だった。クルド人は国家を持たない民族としては最大規模の人口を持つ。イラクやトルコに多数在住して、独立運動を展開し、各国は独立運動に対して厳しく対処している。イラクではイラク戦争後にクルド人自治区が経済発展を続けているが独立はしていない。ある一国からの独立ということではなく、複数の国を巻き込んでの独立ということになると大変に難しい状況になる。

 クルド労働者党はイスラム国(IS)との戦いにおいて最前線で戦っていることもあり、テロ組織認定に関しては「揺らぎ」が生じていた。「クルド労働者党はイスラム国と戦っている。トルコはクルド人を抑圧しているのだから」という声も上がっている。トルコ政府にしてみればこうした理由で北欧諸国がクルド労働者党の取り締まりに手心を加えているのではないかという苛立ちを持っていた。欧米諸国とトルコの関係はぎくしゃくしていた。

 しかし、ウクライナ戦争勃発を受けて、トルコの存在感は高まった。それは黒海の入り口を抑えているという地理的な条件があるからだ。これは前回のブログ記事の通りだ。今回はNATOの全会一致の賛成という条件を使って、フィンランドとスウェーデンからクルド労働者党の取り締まりの強化の約束を取り付けることに成功した。加えてアメリカからF-16先頭の支援を取り付けることにも成功している。トルコは、ロシアから防衛システムを導入したり、対ロシア制裁に反対したりしている。こうした中、西側とそれ以外の世界の接点として、自国に有利な動きを展開している。日本もこうした土耳古の動きを見習う必要がある。

(貼り付けはじめ)

バイデンは、エルドアンがフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を許したことを称賛(Biden praises Erdoğan for allowing Finland, Sweden to join NATO

モーガン・チャルファント筆

2022年6月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3541492-biden-praises-erdogan-for-allowing-finland-sweden-to-join-nato/

アメリカのジョー・バイデン大統領は水曜日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、スウェーデンとフィンランドによるNATO加盟の提案への反対を取り下げたことを賞賛した。

バイデン大統領は、マドリードで開催されたNATO首脳会議に併せて行われた一対一の会談で、エルドアン大統領に対し、「フィンランドとスウェーデンの状況をまとめてくれたこと、そしてウクライナから穀物を取り出そうとする驚くべき仕事ぶりに特に感謝したい。あなたは素晴らしい仕事をしている」と述べた。

エルドアンは、首脳会談の後、両首脳が「両手いっぱいに成果を持ち、満足して自分の国に帰ることができるだろうと信じている」と述べた。また、バイデン大統領のリーダーシップについて、「将来のNATO強化の観点から極めて重要だ」と評価した。

両首脳の会談は、トルコがスウェーデンとフィンランドのNATO加盟への反対を取り下げ、同盟の大幅な拡大に道を開くことに同意した翌日に行われた。NATOは、フィンランドとスウェーデンがロシアのウクライナ侵攻の中で加盟に関心を示したことを受け、水曜日に正式に加盟を要請した。

トルコ、フィンランド、スウェーデンの3カ国は火曜日にテロ対策の協力を深める覚書に署名し、トルコやアメリカなどからテロ組織と認定されているクルド労働者党(PKK)の取り締まりに北欧の2カ国が十分でないというトルコの懸念に対処することに同意した。

また、スウェーデンとフィンランドの加盟を支持するようアンカラを説得する努力の一環として、アメリカがトルコに改良型F-16戦闘機を売却する契約を発表するのではないかとの憶測も広まっている。

複数のバイデン政権高官は水曜日に記者団に対して、アメリカは北欧の2カ国が同盟に参加することへの反対を取り下げるようトルコに譲歩を申し出ることはしなかったと述べた。

それでも、米国防総省のある高官は水曜日、アメリカはトルコにF-16を売却する意思があると示唆した。

国際安全保障問題担当のセレステ・ワランダー国防次官補は記者会見で、「アメリカはトルコの戦闘機部隊の近代化を支持する。それはNATOの安全保障、したがってアメリカの安全保障に貢献するものだからだ」と述べた。

バイデンとエルドアンの会談について、ホワイトハウスが発表した資料には、F-16戦闘機についての言及はない。

報告書には次のように書かれている。「両首脳は、ロシアの侵略に対するウクライナの防衛における継続的な支援と、ウクライナの穀物の輸出に対するロシアの障害を取り除くことの重要性について話し合った。また、エーゲ海とシリアの安定を維持することの重要性についても話し合われた。バイデン大統領は建設的な二国間関係を維持したいとの意向を改めて示し、両首脳は両政府間の緊密な協議を継続することの重要性に合意した」。

トルコがフィンランドとスウェーデンのNATO同盟参加を認めたことは、5月に北欧2カ国の首脳とホワイトハウスで行われたイヴェントでNATOの拡大を公然と声高に支持したバイデンにとって成功と見なされている。

複数のバイデン政権高官は、水面下でトルコ、スウェーデン、フィンランドと交渉してきた。バイデン大統領は火曜日にエルドアン大統領と電話会談を行い、数ヶ月ぶりにトルコ大統領と11で会談し、交渉が進展していることを示した。

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NATOは同盟加盟のためにフィンランドとスウェーデンを招待(NATO invites Finland, Sweden to join alliance

キャロライン・ヴァキル筆

2022年6月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3541158-nato-invites-finland-sweden-to-join-alliance/

NATOは水曜日、スウェーデンとフィンランドを正式にNATOに招待した。トルコが北欧諸国を防衛ブロックに参加させることに難色を示した翌日である。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、マドリードで開催中のNATO首脳会議の席上で次のように語った。「ウラジミール・プーティン大統領がNATOの扉を閉ざすことに成功していないことを示すものだ。プーティンは望んでいることの反対を手に入れている。彼はNATOの縮小を望んでいる。プーティン大統領は、フィンランドとスウェーデンが私たちの同盟に加わることで、より多くのNATOを手に入れようとしている」。

バイデン大統領は、「私たちは、NATOが強く、結束しており、この首脳会談で講じる措置は、私たちの集団的な力をさらに増強するものであるという紛れもないメッセージを送っている、と私は考えており、あなた方もそう考えている」と述べた。

CNBCによると、この招待はすぐにロシアから非難され、あるクレムリン当局者は「純粋に不安定化させる要因だ」と述べたという。

この展開は、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、スウェーデンとフィンランドのNATOへの加盟に対する考え方が変化していることを意味している。北欧の2カ国は先月、NATOへの加盟申請書を提出した。

NATO加盟諸国の多くは両国のNATOへの加盟に支持を表明したが、トルコは、フィンランドとスウェーデンが、トルコなどがテロ集団に指定している「クルディスタン労働者党(PKK)」に対して十分に積極的でないと非難し、異論を唱えた。

しかし、各国が国家安全保障上の脅威に対して互いに支援し、テロ対策協力を強化することを誓う3カ国間の覚書に署名したことで、トルコは火曜日にその疑念を撤回した。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とアメリカのジョー・バイデン大統領は、マドリードで開催中のNATO首脳会議で水曜日に一対一で会談すると見られている。

NATO加盟諸国が首脳会議後に発表宣言文を発表した。その中には次のように書かれている。「NATO同盟に加盟する場合、全ての同盟国の正当な安全保障上の懸念に適切に対処することが極めて重要である。私たちは、そのためのトルコ、フィンランド、スウェーデンの3カ国間の覚書締結を歓迎する」。

宣言文には続けて次のように書かれている。「フィンランドとスウェーデンの加盟は、両国の安全を高め、NATOを強化し、欧州・大西洋地域をより安全なものにする。フィンランドとスウェーデンの安全保障は、加盟プロセス中も含め、同盟にとって直接的な重要性を持っている」。

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複数の政府高官たち:トルコはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を支持(Turkey will support Finland, Sweden joining NATO: officials

モーガン・チャルファント筆

2022年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3540070-finnish-president-says-turkey-will-support-finland-sweden-joining-nato/

複数の政府高官たちは火曜日、北大西洋条約機構(NATO)へのフィンランドとスウェーデンの加盟申請に対し、トルコが反対を取り下げたことで、マドリードでの首脳会議で大きな進展があったと述べた。

フィンランドのサウリ・ニーニステ大統領は声明で、3カ国全てが「互いの安全保障に対する脅威に対して全面的に支援する」ことを約束する3カ国協定に署名した後、トルコが北欧2カ国の加盟申請を支持することに同意したことを発表した。

ニーニスト大統領は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟プロセスに関する「具体的な手順」は、首脳会日の残り日数で合意されるだろうと述べた。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、その直後の記者会見で、「フィンランドとスウェーデンのNATO加盟に道を開く合意ができたことを発表できることを嬉しく思う」と述べた。

ストルテンベルグ事務総長は、3カ国がトルコの懸念に対処し、テロ対策に関する協力を深め、トルコの国家安全保障への脅威と戦うために支援することを約束する覚書に署名したと述べた。

この発表は、スペインで開催されているNATO首脳会議の初日に行われた。トルコ政府は、テロ、特にクルド労働者党(PKK)の脅威と戦うために十分なことをしていないという懸念を表明し、両国の同盟への加盟に数週間にわたって抗議していた。

トルコ政府が発表した覚書のコピーによると、覚書への署名において、スウェーデンとフィンランドはPKKの活動を取り締まり、トルコのテロリスト容疑者の引き渡し要求に「迅速かつ徹底的に」対処することに合意した。

フィンランドとスウェーデンは先月、正式にNATOへの加盟を要請したが、これはロシアのウクライナでの戦争に対応するための決断だった。

NATO加盟国30カ国のうち過半数が加盟への支持を表明しており、各国政府がNATOへの新規加盟を批准した上で、全会一致の支持が必要だ。

アメリカは、両国の加盟を強力に推進し、民主党と共和党の議員も両国の加盟を支持している。ジョー・バイデン大統領は、首脳会議の傍らで水曜日のうちにトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と会談する予定である。

「私は、ストルテンベルグNATO事務総長、同盟諸国、そして連邦議会と協力して、彼らを同盟に速やかに迎え入れることができるようにすることを楽しみにしている。マドリードでの歴史的なNATO首脳会議を始めるにあたり、私たちの同盟はこれまで以上に強く、団結し、断固としている」とバイデンは述べた。

専門家の一部は、トルコ政府がスウェーデンとフィンランドの同盟加入への反対を撤回するために、アメリカがトルコに譲歩、おそらくアメリカ製戦闘機の形で提供するだろうと推測していた。

ストルテンベルグ事務総長によると、NATO加盟諸国はマドリードでのサミット2日目の水曜日に、スウェーデンとフィンランドをNATOに招待することを正式に決定するとのことだった。

その後、NATO加盟諸国の個々の議会と国会が2カ国の加盟を承認する投票を行う必要があり、このプロセスが完了するまでに数ヶ月かかる可能性がある。

しかし、このニューズは、ヨーロッパで激化するロシアの侵略に直面し、強さと結束を示そうとするNATOにとって好材料である。

マドリード首脳会議は、ロシアがウクライナで5カ月目の戦争に突入したときに開催された。ここ数日、ロシアはウクライナの首都キエフへの新たな攻撃を開始し、その軍事作戦はウクライナ東部に集中している。

NATO諸国はサミットの期間中、バルト三国とポーランドでの戦力強化について話し合うと見られる。

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アメリカは「問題のある」NATO同盟国トルコに苛立っている(US frustrated over ‘problematic’ NATO ally Turkey

ラウラ・ケリー、モーガン・チャルファント筆

2022年5月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3496164-us-frustrated-over-problematic-nato-ally-turkey/

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、スウェーデンとフィンランドによるNATO加盟に反対し、アメリカと同盟諸国を苛立たせている。

トルコの姿勢は、ジョー・バイデン政権がウクライナへの侵攻をめぐってモスクワに送りたい結束のメッセージを複雑にしている。

スウェーデンとフィンランドによる軍事同盟(NATO)への加盟は歴史的なことであり、両国の加盟を望まないロシアにとっては大きな敗北である。彼らの決断がロシアの戦争の結果であることは、複数のアメリカ政府高官も強調している。

しかし、北欧諸国がクルド人テロリスト集団を匿うという嫌疑をめぐるエルドアンの反対で、モスクワに対する外交的勝利は雲散霧消する。

NATO加盟諸国は全会一致で受け入れに同意しなければならない。

アンカラは祝福を与えるために何か、例えばアメリカの戦闘機を求めているのではないかと囁かれている。

エルドアンは土曜日にフィンランド政府高官たちと会談する予定で、記者団に対して、「外交を中断させないために、これらの議論をすべて継続する」と述べ、変化への扉を開いたままにしている。

トルコは、必要ではあるが問題のあるパートナーであると広く見られている。

エルドアンは長年、ロシアの兵器システムの導入、シリアでの軍事的冒険、国内の政治的抑圧、アメリカ連邦政府の警備員や首都のアメリカ人抗議者に対する暴力などで、ワシントンを怒らせている。

しかし、トルコが黒海におけるNATOの安全保障に重要な役割を果たし、ウクライナに武器を提供し、ロシア軍との戦いで決定的な役割を果たしたことは、バイデン政権や連邦議員たちも認めている。

アメリカは、エルドアン政権が対ロシア制裁に加わることに抵抗していることに苛立っているが、同時にアンカラはキエフとモスクワの間で行われるかもしれない和平協議を受け入れ実施するためには、独自の意義を持つ場所であると認めている。

連邦上院外交委員化で民主党側の序列第2位の委員であるベン・カーディン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は、「トルコはNATOにとって重要なパートナーだ。トルコには重要な軍事施設があり、トルコと良好な関係を保つことは私たちの利益になる」と本誌に述べた。

カーディンは「ウクライナに関しても、トルコは良いパートナーだ。だから、NATO内の安全保障上の必要性に反する可能性のあるロシアとの関係を持たせないことを明確にすることで、責任あるパートナーとして行動することを確認したい」と語った。

バイデン政権は、フィンランドとスウェーデンの受け入れを得るためにトルコに何を提供できるかについて何も発表していない。

ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は24日、エアフォース・ワンの機内で記者団に対し、アメリカはいかなる形でも支援する用意があると述べたが、意見の相違は主にトルコ、フィンランド、スウェーデンの間のものであると説明した。

サリヴァンやその他のバイデン政権高官たちは、北欧諸国のNATO加盟を認めることで同盟が全体で合意することに自信を示している。

サリヴァンはまた、バイデン大統領とエルドアン大統領が話す予定はないとしながらも、バイデンは求められれば「エルドアン大統領とは喜んで会談する」と指摘した。

バイデンは、フィンランドとスウェーデンの両首相を木曜日にホワイトハウスに招き、両国のNATO同盟参加に対するアメリカの強い支持を表明した。ローズガーデンでの会見で、フィンランドのサウリ・ニーニスト首相は次のようにトルコに直接訴えた。

ニーニシスト首相は次のように述べた。「NATOの同盟国として、トルコが私たちの安全保障に関与するのと同様、私たちはトルコの安全保障に関与する。私たちはテロを深刻に受け止めている。私たちは、あらゆる形態のテロを非難し、テロとの戦いに積極的に取り組んでいる。私たちは、トルコが私たちのNATO加盟に関して持ちうる懸念全てについて、オープンで建設的な方法で議論することに前向きである」。

NATOの元副事務総長であるローズ・ゴッテモラーは、フィンランドとスウェーデンの申請は最終的に成功すると予想しているが、トルコとは「非常に厳しい交渉」になるだろうと予測した。

ゴッテモラーは「これは難しい問題だ。それは、私が副事務総長だった頃から、この問題は常に重要な議題として挙がっていたからだ。トルコはこの問題を常にレヴァレッジとして使っていた」と述べた。

連邦上院外交委員会の幹部委員であるジェイムズ・リッシュ連邦上院議員(アイダホ州選出、共和党)は、トルコがフィンランドとスウェーデンの加盟に反対し続けることができるのか、と疑問を呈した。

リッシュは「もしあなたがある組織のメンバーで、あなた以外の29人のメンバーがやりたがっているのにあなたが反対するならば、これは困難な状況にあなたが入ることになる」と述べた。リッシュはまた、アメリカとトルコの関係について、「プラスとマイナス」があると形容した。

全ての議員がリッシュほど外交的というわけではない。連邦上院外交委員会委員長ロバート・メネンデス上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)は、トルコの行動に屈しないよう警告を発した。

メネンデスは次のように述べた。「端的に述べるならば、トルコの行動が報われるべきではないと私は考える。トルコはロシアにヨーロッパやアメリカの制裁を加えることに同意していない。その他にも多くの懸念材料がある中で、権威主義の人物に報い続けるというのは理解できない」と述べた。

メネンデスは、トルコがF-16戦闘機を更に購入したいという要望を出してきても、バイデン政権は受け入れるべきではないと警告している。

メネンデスは「私はトルコにF-16戦闘機を送ることに賛成しない。彼らはまだCAATSA制裁に違反している」と述べた。メネンデスは、トルコがアメリカ連邦法に違反するロシアのミサイル防衛システムS400を所有していることにも言及した。

米国務省は、トルコに既存のF-16戦闘機のアップグレードと軍需品の販売を提案しており、ワシントンとアンカラの協力関係の緊密化を強く示唆している。

連邦議員たちは、この提案を支持するかどうかについては口を閉ざしている。

連ポイ上院外交委員会のメンバーでもあるジェーン・シャヒーン連邦上院議員(ニューハンプシャー州選出、民主党)は、F-16のアップグレードを支持するかどうかという質問に対し、「トルコを強力なNATOの同盟国として維持することが重要だと思う」と本誌の取材に答えた。

民主党所属の連邦議員の一部は、トルコがギリシアの島々で挑発的な軍事飛行を行っているというギリシアの懸念に応え、アンカラへの軍事機器売却を厳しく監視することを検討している。

ギリシアのキリアコス・ミトタキス首相は、火曜日に行われたギリシア議会での演説で、トルコへの武器売却に対して警告を発したが、アンカラの名前は特に挙げなかった。

ミトタキス首相は「NATOは、ウクライナがロシアの侵略に打ち勝つのを助けることに集中している現在、NATOの南東部にもう一つ不安定な要因が出てくることを最も避けたいと考えている」とミトタキスは言った。

ミトタキス首相は「そして、東地中海に関する防衛調達の決定をする際に、このことを考慮されることを希望する」と続けて述べた。  

ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ミトタキスの発言は「完全に正しい」とし、同議員は2023年の国防権限法を用いて、東地中海におけるトルコの行動に対する懸念に対処する可能性があると本誌に述べたが、具体的な内容には踏み込まなかった。

ケインは「この問題については簡単に答えが出るものではない。アメリカとトルコの軍事的な関係はまだ強固だが、外交や選挙の分野では今本当に不安定だ」と述べた。

「こうしたことは現在、本当に問題になっている」とケインは語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ戦争によって存在感を高めているのがトルコである。トルコはEU(ヨーロッパ連合)の加盟候補国であり、NATO(北大西洋条約機構)の加盟国である。トルコは長年にわたりEUの加盟候補国の地位にとどめられている。ヨーロッパとトルコは一部友好的な、そしてところどころぎくしゃくした関係となっている。
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 トルコはヨーロッパと中東をつなぐ位置にあり、重要な国家である。地図を見てみればわかる通り、地中海と黒海をつなぐダーダネルス海峡とボスポラス海峡を抑えている。トルコの許可がなければこの2つの海峡を通って黒海に入ることはできない。今回のウクライナ戦争でトルコの重要性が再認識されることになった。
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 アメリカとトルコの関係はぎくしゃくしていた。トルコにおける人権弾圧やクルド人問題、民主政治体制の後退など、批判の対象となった。レジェップ・エルドアン大統領についてアメリカ国内で多くの批判の声が上がった。また、トルコとロシアの関係深化もアメリカを苛立たせていた。トルコはロシアから武器システムを導入している。ジョー・売電大統領時代になって、トルコとの関係はぎくしゃくしていた。これはアメリカだけのことではなくて、西側諸国全体でそうであった。

 しかし、ウクライナ戦争が勃発し、トルコの存在の重要性は増した。前述したように、黒海の入り口をトルコが抑えている、門番のような存在である。ウクライナ南部は黒海に面している。ウクライナの物流、海運に取って黒海は重要である。現在、ロシア黒海艦隊が黒海を抑えており、ウクライナの物流が滞っている状態だ。トルコは対ロシア制裁にも積極的に参加していない。こうした存在であるトルコが黒海の入り口を抑えているというのは、西側諸国にとってなんとも厄介なことである。

 アメリカにしてみれば、トルコ国内の人権状況や民主政治体制の後退よりも今は機嫌を取って、西側に引き付けておかねばならないということになる。これは次のブログの論稿に譲るが、トルコはアメリカからの支援とクルド人勢力(クルド労働者党)を支援しないことを条件にして、反対していたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に賛成した。トルコにとって有利な条件を西側が受け入れるのはその存在の重要性のためである。

(貼り付けはじめ)

西側がエルドアンと今和解すべき理由(Why the West Should Make Peace With Erdogan Now

-彼は西側諸国が緊急に関係を改善する必要がある不愉快な人物である。

マクシミリアン・ヘス筆

2022年6月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/06/22/turkey-erdogan-ukraine-russia-war-west-us-geopolitics-black-sea-europe-energy/

民主政治体制の西側諸国は、世界中の独裁者たちや絶対的政治指導者たちと便宜的な同盟を結んできたという長い歴史があり、物議をかもしてきた。倫理的に問題があると非難されているが、このようなスタンスは現実主義的であり、力の均衡を重視する政治の典型である。第二次世界大戦で世界が団結してアドルフ・ヒトラーを打ち負かし、西側諸国が冷戦に勝利することができたのも、このような姿勢によるものだ。

西側諸国が現在、緊急に関係を改善する必要がある不愉快な相手の筆頭は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領である。トルコの民主政治体制を積極的に損ない、数十年にわたる自由化を台無しにし、移民を武器にし、国内と隣国シリアの少数派であるクルド人を脅かし、イランのアメリカからの制裁違反を手助けしてきた。最近では、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を阻むと脅している。西側諸国が彼を純粋に信頼できるようになるには、長い時間がかかるだろう。

しかし、現実には、西側諸国はこれまで以上にエルドアンを必要としている。ロシアのウクライナに対する残忍な全面戦争は、地政学的なチェス盤におけるトルコの存在感を大きく高めた。アンカラはキエフへのドローンの重要な供給元として浮上し、幸いにもキエフはその出荷を止めるつもりはないようだ。トルコの武器輸出が拡大すれば、ウクライナの勝利のチャンスは大きく広がるだろう。トルコ海峡から黒海へのアクセスを支配するエルドアンは、2月下旬に軍艦の航路を閉ざした。

同時に、エルドアン大統領が好機と見ているウクライナに関しても、アンカラはモスクワとの協力に前向きである。トルコのメヴルット・カヴソグル外相は6月8日、アンカラでロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相とウクライナの穀物輸出ルート確保について話し合い、その一環としてトルコの穀物購入の25%割引を要求したと伝えられている。アンカラの協力がなければ、ロシアによるウクライナの港湾封鎖を打開するための西側の提案も水の泡となる。

西側諸国は、対ロシア経済戦争においてトルコを味方につける必要がある。アンカラの支援だけで、黒海に出入りする制裁対象のロシア製品の流れを制限することが可能だ。アンカラの支援は、ロシアの資金と独裁者のルートを断つ上で極めて重要である。トルコは制裁から逃れたロシアの資金(とオリガルヒのヨット)の主要な目的地となっており、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の自国経済を支える新しい役割を強めている。トルコは、ロシアからの支払いを自由に受け入れている数少ない主要国の一つであり、欧米の銀行制裁の影響を弱めることができる位置にいる。トルコが西側諸国の対ロシア経済制裁に参加すれば、対ロシア制裁体制の最大の穴の1つを塞ぐことができる。

しかし、より重要なことは、トルコがヨーロッパのエネルギー供給の再編成において重要な役割を果たすということである。例えば、ヨーロッパの南部ガス回廊戦略(Southern Gas Corridor strategy)の鍵は、トルコのアナトリア横断パイプラインとアドリア海横断パイプライン(それぞれ2018年と2020年に開通)を通じて供給されるアゼルバイジャンのガスで、バルカン半島とイタリアのヨーロッパ・ガス網に供給されるものである。

エルドアン大統領はまた、トルコ国内のガス資源の開発にも積極的で、イスラエルやキプロスの海底ガス田をヨーロッパのパイプライン網に接続する可能性もある。もちろん、こうした努力は、キプロスとその周辺海域をめぐるギリシャとトルコの紛争によって複雑化している。東地中海の豊かなエネルギー資源を十分に活用するためには、ヨーロッパとトルコのパートナーシップを復活させるしかないだろう。このようなパートナーシップは、2020年のタークストリーム・パイプライン(TurkStream pipeline)の開通がトルコ・ロシア関係の新たな高潮を示唆したロシアに対して、エルドアンを翻意させることにもつながるだろう。

最後に、エルドアンと協力することは、ウクライナ戦争を越えて、西側諸国がクレムリンに対して地政学的なレバレッジをかけることにつながる。トルコは、ロシアが関与する3つの紛争でも重要な役割を担っている。シリア、リビア、そしてナゴルノ・カラバフをめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争である。エルドアンは過去10年間、これらの紛争に対して温和な無視政策から積極的な介入に転じたが、その動機は、西側諸国から独立した地域大国としてのトルコの役割を高めたいというものであった。エルドアンとの協力関係の再開は、モスクワの世界的影響力を抑制するための更なる圧力となる。

エルドアンの西側諸国離れとモスクワとの関係緊密化を逆転させるためには、その動機を理解することが重要である。現在、西側諸国は彼の懸念に耳を傾けなかった代償を払っている。この流れは、「アラブの春」が北アフリカと中東を席巻した2011年に始まった。エルドアンは、「アラブの春」によって、自分と同じようなイスラム主義者がこの地域で権力を握ることができると意気揚々としていた。オバマ米大統領(当時)がシリアでの安全保障政策を守らず、エジプト軍がクーデターでモハメド・モルシ大統領を追放した際には、ムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)に属し、エルドアンが公然と支持していたモルシ大統領(当時)を見捨てたことに、エルドアンは裏切られたと感じている。アンカラ在住の国際関係専門家ムハメッ・ト・コカクは私に対して、「トルコは、アメリカがこの地域への投資に消極的であることを痛感している」と私に語った。同様に、トルコの安全保障政策を専門とするアムステルダム大学博士研究員エリザベッテ・アウニーナは「トルコの安全保障上の懸念は、NATOの課題において特に関連性の高い問題とは認識されていない」と述べている。

しかし、エルドアンの西側離れとモスクワへのシフトを加速させたのは、2016年のトルコのクーデター失敗後の裏切られたという感覚であり、アメリカがクーデターを助長したと公然と非難した。また、トルコが領空侵犯したロシアの戦闘機を撃墜した。この事件は、NATOとロシアやソ連の空軍が関わる事件としては60年ぶりのことであったが、NATOがほとんど反応しなかった。その結果として、エルドアンはNATOの同盟諸国から見捨てられたと感じたのであった。それ以来、エルドアンはモスクワの方がエルドアンの地域的・国内的な立場を向上させるのに有利だと感じている。

それ以来のトルコとロシアの協力には、タークストリーム・パイプライン、ロシアがトルコに200億ドルの原子力発電所を建設する計画、アンカラがモスクワのミサイル防衛システムS―400を購入すると2017年に発表したことなどがある。トルコとロシアは、シリアやリビアの内戦で異なる側を支持するなど、時折対立することもあるが、関係は概して温厚で管理しやすいものに保たれている。そのため、エルドアンの志向を覆すことができれば、西側諸国が得ることのできる戦略的な影響力はますます大きくなる。

西側諸国はモスクワを見捨てる代償にエルドアンにどんなニンジンを提供できるのだろうか? トルコの経済危機は、まさにそのチャンスかもしれない。2022年5月の年間インフレ率は73.5%に達し、外貨準備高は過去最低に近く、トルコリラは2021年の44%下落に続き、今年累計で対ドル30%下落しており、トルコのデフォルトリスクは急増している。外国人投資家はトルコ市場から逃げ出した。新らたな外国資本を必死に探すエルドアンは、地域の重要なライヴァルであるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子と関係修復まで行っている。西側諸国にとっては、モスクワを許すよりも、エルドアンに経済的な命綱を提供する方が良いだろう。例えば、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)とヨーロッパ中央銀行は、ここ数十年で大幅に拡大した安定化手段である通貨スワップラインをエルドアンに提供することを検討すべきだろう。ドルやユーロへのアクセスは、アンカラが抱える多くの経済的課題を軽減し、より協力的なパートナーシップを築くための舞台となるだろう。

エルドアンは、自分が強力な手段を持っていることを知っており、他の要求をする可能性が高い。彼は既に、スウェーデンとフィンランドが望むNATOへの加盟に対して影響力を行使し、イスラム国との戦いで西側の勇敢な同盟者であるシリアのクルド人に対してトルコがより自由に行動できるように結びつけている。今月初め、エルドアンはクルド人を標的とした新たな作戦の計画を発表した。エルドアンは地域の他の利益についても要求するかもしれないし、国内の統治に対する西側諸国の批判を鈍らせようとするのは間違いない。このような譲歩は、他の西側諸国の利益にとって高くつく可能性がある。

現時点では、エルドアンに関与することに明らかな躊躇がある。コカクによれば、西側諸国の戦略は「エルドアンが2023年6月の選挙に負ける可能性に期待する」ことのようだ。エルドアンが1年後に自由で公正な選挙と平和的な政権移譲を可能にすることを期待するのは、よく言えば理想主義的、悪く言えば絶望的にナイーブなことである。

エルドアンは不愉快な人物であり、今後もそうあり続けるだろう。しかし、プーティンを弱体化させ、ウクライナの生存を確保するためには、エルドアンがロシアの側ではなく、西側諸国の側にいることが得策である。プーティンを弱体化させ、ウクライナを存続させるためには、ロシア側ではなく、西側諸国が彼の味方になることが得策である。

※マクシミリアン・ヘス:外交政策研究所中央アジア担当研究員。

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アメリカとNATOは黒海でロシアの独占に対抗しなければならない(The US and NATO must counter Russia’s dominance in the Black Sea

ブライアン・ハリントン筆

2021年11月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/579525-the-us-and-nato-must-counter-russias-dominance-in-the-black-sea/

台湾海峡の緊張が高まり、中国を最優先事項とする包括的な国防指針が示される中、ロイド・オースティン国防長官の先週の旧ソ連圏諸国訪問は、中国と台湾の関係と、失地回復論者(revanchist)のウラジミール・プーティンや黒海の近隣諸国に対するロシアの威圧に十分に注意を払うことのバランスをとらなければならないことを思い起こさせた。2008年のグルジアでの地上戦と2014年のウクライナからのクリミア奪取は、西側が見える旧ソ連諸国が最小限の支援で危機を管理することになった。今春のロシアによるウクライナ東部国境沿いの大規模な動員は、同地域における将来の侵略を抑止するための選択肢が限られていることを示した。オースティン長官のウクライナ支援の確約、グルジアとの訓練協定、ルーマニアとの協議に続いて、黒海でロシアに対抗する具体的な取り組みが必要である。

ロシアのバスティオン型とカリブ型ミサイルは、高度な対艦巡航ミサイルと長距離陸上攻撃型があり、ロシアに恐るべき攻撃能力を提供している。このシステムをロシア占領下のクリミアに配備し、大規模な黒海艦隊に搭載すれば、中国が南シナ海で展開しているのと同様の対アクセス・領域拒否(AD2)戦術を黒海で展開することができる。さらに、ロシアの航空機は黒海におけるNATO軍の存在に常に挑戦している。最近では、10月19日にSU-30が国際空域でアメリカ軍の爆撃機を護衛したと報じられた。現在では、黒海にいるアメリカとNATOの軍艦は、ロシアの軍艦を追尾する形になり、攻撃機によってそれらの上空を通過するのが通例となっている。

アメリカ軍の司令官クラスの将官たちは、戦術的な誤算が戦略的な影響を及ぼしかねない危険な上空飛行の状況下で、正しく自制してきた。しかし、挑発的なロシアの行動は懸念に値する。ヨーロッパ戦域を担当するアメリカ海軍のロバート・バーク提督はこの夏、「指揮官に最初の一発をあごで受けるよう求めるつもりはない」と述べ、危機への対応をより良くするための措置が取られるようになった。ロタにある4隻の米駆逐艦(DDG)は、黒海での作戦に最も適したプラットフォームを提供するため、最新のイージス戦闘システムスイートを搭載した船体への入れ替えが進められている。6月には、英国海軍の軍艦「HMSディフェンダー」がロシアの航空機からブザーを受け、その進路上に物体を落とされた可能性があり、同盟諸国の団結を示した。

おそらく最も重要なことは、バイデン大統領が9月にウクライナのヴォロディミ0ル・ゼレンスキー大統領と会談し、更にオースティン国防長官がウクライナを訪問したことにより、この地域に対する関与の可視性が高まったことである。しかし、この立場を強化するために、もっとできることがある。

高度な戦争と相互運用性を示す作戦は、単なる存在感を信頼できる抑止力へと高める。モントルー条約は、黒海に常時配備できる軍艦のトン数を制限しているが、シーブリーズ演習で示されたように、同じ考えを持つ国々のグループがこの制限を克服するために相当な戦力を作り出すことができる。アメリカとウクライナが主導するこの多国籍演習は、この夏で21回目を迎え、水陸両用作戦や実弾砲撃演習を含むまでに拡大している。

同様に、NATO海上群(SNMG12は、同盟諸国全体から交代で参加し、リーダーシップを発揮することで、黒海の自由を支援するNATOの統一的なメッセージを発信することができる。しかし、このプレゼンスを実質化するためには、継続的な成長が必要となる。北ヨーロッパ戦域での多国間演習「フォーミダブル・シールド」は、オランダの発案により開始され、アメリカによる弾道弾迎撃でクライマックスを迎えた。黒海で同盟諸国やパートナーと共により高性能な能力を実証することは、クリミアから頻繁に試射を行うロシアに対抗するのに役立つことになる。

黒海の戦闘空間を形成するもっと抜本的な方法は、ロシアの支配を脅かす範囲と数量を持つ沿岸防衛巡航ミサイルCDCM)の存在である。ルーマニアはNATOの熱心な加盟国であり、防衛への最低限の貢献を超え、1000人以上のアメリカ軍をローテーションで受け入れ、ヨーロッパの弾道ミサイル防衛を担う唯一のイージス・アショア施設を保有している。このような同盟国の模範的な行動は、ルーマニアの権威主義的支配の記憶と、黒海におけるロシアの侵略が世界の海へのアクセスにもたらす直接的な脅威とが、そう遠くない時期に結びついていることは間違いない。

今年5月、ルーマニアが海上攻撃ミサイルの購入を約束し、その立場を強化した。この沿岸防衛システムは、2024年までに運用開始されれば、黒海におけるプーティンの計算を複雑にすることは間違いないだろう。しかし、それだけではクリミア半島への対抗策としては不十分だ。アメリカとNATOは、ルーマニア、ブルガリア、トルコが沿岸防衛巡航ミサイルCDCM)のカヴァー範囲を重複させて黒海艦隊を危険にさらす追加オプションを追求する必要がある。

ロシアが西方に拡大し、NATOの同盟諸国を脅かすことは、近い将来にはありえないかもしれないが、抑止力を短期間に増大させることはできない。黒海の戦闘空間はロシアがほぼ掌握している。このロシアによる支配はNATOの同盟諸国であるルーマニアとブルガリアに戦略的脅威を与え、西側に面するウクライナとグルジアにはすでに領土と人命を喪失させる結果になっている。ロシア艦隊を危険にさらすことができるハイエンドの戦争デモンストレーションと沿岸防衛巡航ミサイル(CDCM)を特徴とするアメリカとNATOの有意義なプレゼンスは、継続的な侵略を抑止し、黒海の国際水域の自由を維持する方法として追求されるべきものである。

※ブライアン・ハリントン:スタンフォード大学フーバー研究所国家安全保障問題研究員、米国海軍の水上戦担当中佐。ここで述べられた意見は著者のものであり、アメリカ海軍や国防総省を代表するものではない。

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アメリカ国務省はアメリカのトルコ政策を再考すべきだ(The State Department should rethink its Turkey policy

リチャード・ガザル筆

2021年8月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/565726-the-state-department-should-rethink-its-turkey-policy/

アメリカの対トルコ政策におけるアメリカ連邦議会とアメリカ国務省の不一致は、ワシントンの外交政策分野における最も知られざる秘密である。連邦議会は、地域的・国際的な紛争におけるトルコの役割に超党派で深い関心を示しているが、国務省は、NATO加盟の大国であるトルコの多くの悪行には目をつぶり続けているのである。

2021年7月21日、連邦上院外交委員会はトルコに関する公聴会を開き、ヴィクトリア・ヌーランド国務次官(政治問題担当)の証言を通じて国務省のトルコ政策について模索した。外交委員会の委員たちはヌーランドに対し、アメリカとNATOの利益を侵害する同盟国としてのトルコの敵対的役割の増大、国内の民主化戦争、人権状況の悪化などについて、手加減なく質問した。

確かに、今回の公聴会では、ジョー・バイデン政権のトルコ政策の賞賛すべき点が浮き彫りにされた。しかし、現地の現実とは相容れない、誤った見解の例も多く、懸念材料となっている。

ヌーランドは、アメリカとトルコの関係を「多面的で複雑(multifaceted and complex)」と表現し、隠された事実を掴もうとしたようだ。「多面的で複雑」というのは、表面上は関係を正確に評価しているが、その「複雑さ」は、トルコが同盟国と敵対国の二重性を持っていることに起因していると考えられる。

連邦上院外交委員長のボブ・メネンデス上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)と共和党側の幹部委員ジェームズ・リッシュ上院議員(アイダホ州選出、共和党)は、トルコが何度も「出口」を提示されているにもかかわらず、ロシアの対空ミサイルシステムS-400を躊躇なく取得していることを厳しく追及した。ヌーランドは、トルコに対する対敵対者制裁措置法(CAATSA)制裁を維持し、F-35統合戦闘機計画からの除外を継続することを約束した。また、トルコがロシアの兵器システムを追加で購入した場合、さらなる制裁を求めると述べた。

公聴会の前日、トルコのエルドアン大統領は1974年からトルコが不法占拠している北キプロスを訪問し、東側緩衝地帯にあるキプロスの象徴的なリゾート地であり、トルコ侵攻以来閉鎖されているヴァロシャを、国連安保理決議550号および789号を無視した形で再開発する計画を発表した。この計画は、アメリカと国際社会の決意を明らかに試すものとして、北キプロス島にトルコの独立国家を建設するというエルドアンの構想を強調するものである。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、トルコの発表を速やかに非難した。ヌーランドは、エルドアンが提案したキプロスの二国間解決策を拒否することを再確認し、唯一受け入れられる方法は、同島を二国間連邦として再統一することであると述べた。

しかしながら、メネンデスは、トルコが北キプロスに無人機基地を設置するとの報道に懸念を示したが、ヌーランドはコメントを避けた。トルコはシリア北部やイラク北部などでキリスト教徒に対してドローンを配備している。「デイヴィッド・シシリーン連邦下院議員(ロードアイランド州選出、民主党)とガス・ビリラキス連邦下院議員(フロリダ州、共和党)は、トルコの無人機の開発、展開、拡散を国際的な脅威として調査するよう国務省に要請している。

ヌーランドの最も問題のある発言は、「トルコ軍のシリア北部への駐留によってアサド政権による無差別標的からシリア人が守られている」というものであった。バシャール・アル・アサド政権は、数え切れないほどの人的被害に対して確かに責任を有しているが、トルコをシリア国民、特に北部のクルド人、シリア人、ヤシディ教徒の救世主とするのは、見当違いで危険なほどの見当違いである。2020年5月、ノーベル平和賞受賞者のナディア・ムラドは次のように述べている。「トルコの支援を受けた民兵たちが、シリアのアフリンでヤシディ教徒たちに対する民族浄化作戦を黙々と行っている。彼らは女性を誘拐し、民間人を殺害し、家や祠を破壊している。そして、シリア北部で誘拐されたヤジディ教徒の女性たちが、トルコ東部に続々と送られている」。

2016年以来、トルコとトルコが支援するイスラム主義民兵組織は、この地域で唯一成功した民族宗教の自由の実験である民主的なシリア北東部自治行政区(AANES)の破壊に執念を燃やしている。米外交問題評議会に寄稿したエイミー・オースティン・ホルムズは、アメリカが仲介したシリア北東部の停戦に対するトルコの違反を、動的なトルコ軍の攻撃を通じて、1年間で800件以上暴露している。

2019年10月以降、トルコと支援している民兵勢力は、イスラム国(ISIS)との戦いにおけるアメリカの重要な同盟者であるキリスト教シリア軍評議会兵士を含むシリア民主軍メンバー200人以上を誘拐したと伝えられている。捕虜たちは、ジュネーブ条約第4条違反でトルコに不法移送され、その後、拷問を受け、不法に裁判にかけられ、トルコの刑務所で終身刑を宣告されたと伝えられています。

メネンデスは、シリア北部で行われた数々の人権侵害におけるトルコの役割にどう対処しているのか、もっと明確に連邦議会に示すよう政権に要求した。

しかし、連邦上院外交委員たちは、レバノンにおけるトルコの挑発行為についてヌーランドに質問することができなかった。報道によると、トルコはレバノンに流入するシリア難民やパレスチナ難民を利用し、南部や東部のヒズボラへの対抗策として、レバノン北西部のスンニ派集中地域に武器や過激なイデオロギーを輸入しているとのことである。レバノンが外国の代理勢力によって荒廃させられた悲劇的な歴史に鑑みれば、トルコのレバノンへの関与は悲惨な結果を招きかねない。

トルコの国際的な挑発から一転して、メネンデスとヴァン・ホーレンは、トルコ国内の民主政治体制の後退に深い懸念を表明した。この加速する非自由化の傾向は、トルコの法制度がジャーナリストや思想家、政治的反対者、宗教的少数派に対して武器化していることを通して見ることができると、両者は指摘した。

ヴァン・ホーレンは次のように述べた。「エルドアンは私たちが何を言おうが気にしないと明言している。だから、声明を出すだけでは不十分なのだ。トルコは不誠実な同盟国であり、代償を払う時だけ反応するだろう。それでは、国際社会を馬鹿にするエルドアンに対して、私たちは何をするつもりなのか?」

ビル・ハガティ連邦上院議員(テネシー州選出、共和党)から再度質問を受けたヌーランドは、トルコとの戦略的対話について、「あらゆるレヴェルで関与、関与、関与ということになる。ただし、意見が異なる場合は率直に言う」と述べた。一見、良いアプローチに見えるが、重要な懸念はその詳細と定義にある。何をもって「率直な」対応とするのか、またトルコのどのような行動に対して政権が反対するのか?

今回の連邦上院公聴会では、バイデン政権がエルドアン政権の違反行為に対して、より冷静で曖昧でない、そして、そうなのだ、より厳しいアプローチを確立し実施する責任を連邦議会が持ち続ける必要性が明確に示された。もしトルコが危険な軌道に歯止めがかからないままであれば、アメリカの地域的利益は損なわれることになる。

※リチャード・ガザル:「イン・ディフェンス・オズ・クリスティアンズ」上級部長。アメリカ空軍犯罪捜査官、レヴァント地域とトルコを専門とする情報士官を務めた。

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ロシアがウクライナ国内で勢力を確立する中、アメリカは黒海に2隻の艦艇を派遣(US sending two warships to Black Sea as Russia builds up forces in Ukraine

エレン・ミッチェル筆

2021年4月9日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/547446-us-sending-two-warships-to-black-sea-as-russia-builds-up-forces-in-ukraine/

トルコ政府は金曜日、ウクライナとの国境沿いでロシアが軍事力を増強する中、アメリカは来週黒海に2隻の軍艦を派遣すると発表した。

NATOの同盟国であるトルコは、ワシントンが2週間前にアンカラに通知した後、2隻の米軍艦が水曜日から木曜日にかけて黒海に到達すると発表した。

ロイター通信が報じたところによると、トルコ外務省によれば、アンカラに海峡の支配権を与えた1936年の条約であるモントルー条約に沿って、2隻の米軍艦が黒海を通過するという通知が15日前に外交ルートで送られてきた、ということだ。ロイター通信は、「米軍の艦船は5月4日まで黒海に留まる予定だ」と報じた。

国防総省のジョン・カービー報道官は、金曜日に具体的な動きについて認めず、国防総省は日常的にこの地域に船を派遣していると記者団に語った。

カーバーは「何も新しいことではない」と述べた。

アメリカ海軍はしばしば黒海(ウクライナ南部のほぼ全ての国境に沿った海域)を航行するが、今回の動きは、ワシントンが最近のロシアの攻勢を認識していることをモスクワに示すものだ。

カービー報道官は金曜日、ウクライナ東部でのロシアの最近の行動について、モスクワが主張しているように訓練ではなく、軍の「増強(buildup)」であると複数回述べた。

先月、ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍との戦闘が再開され、両グループが昨年夏に結んだ停戦協定が破られた。この行為にNATO諸国は懸念を抱き、在ヨーロッパ米軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げている。

これに対してロシアは、黒海と海岸線を接していないNATO諸国がそれぞれの国の海軍の活動を活発化させていると非難している。

ホワイトハウスは今週、ロシアがウクライナからクリミアを併合した2014年以降、いつにも増してウクライナ東部国境に多くの軍隊を配置していると述べた。

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国防総省はウクライナ支援のために黒海に海軍艦艇を送る可能性(Pentagon may send warships to Black Sea in support of Ukraine

エレン・ミッチェル筆

2021年4月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/547247-pentagon-may-send-warships-to-black-sea-in-support-of-ukraine/

ロシアがアメリカの同盟国ウクライナの東部国境に将兵と軍事物資を集めていることを受け、アメリカはウクライナへの支援を示すために黒海にアメリカ海軍の艦艇を派遣することを考慮中だ。

アメリカ海軍は定期的に黒海において艦艇を航行させている。黒海はウクライナの南部国境線のほぼ全域に接している。しかし、アメリカが海軍艦艇を黒海に新たに派遣することは、モスクワに対して、「アメリカは事態の推移を監視している」ということを示すシグナルとなる、と木曜日、国防総省のある高官はCNNの取材に対して語った。

アメリカが艦艇の派遣を行うならば、黒海内に入る意図があることを14日前にトルコに通告することになる。これは1936年に結ばれた条約でトルコ政府が黒海につながる海峡のコントロールを行うという取り決めのために必要な手続きだ。

国防総省が艦艇派遣を検討しているのか、アメリカ軍艦艇の黒海に入る意志をトルコに既に通知したのか、という本誌の質問に対して、国防総省の報道官はこれら全ての質問をアメリカ海軍ヨーロッパ派遣軍に照会した。

CNNの取材に応じた国防総省のある高官によると、アメリカ海軍は今後も国際空域で黒海上空に偵察機を飛ばし、ロシアの船の動きや2014年にモスクワがウクライナから奪取したクリミアでの部隊の動きの可能性に目を光らせていくということだ。

情報・諜報機関の複数の報告によると、ロシアは訓練や演習を行っており、追加の軍事行動に関する命令は確認されていないが、前述の米国防総省高官によると、状況は急速に変化する可能性があるということだ。

バイデン政権は、先月ロシアが東ヨーロッパに対して武力を用いての威嚇のレヴェルを上げており(saber rattling)、ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍との戦闘が再開され、両者が昨年夏に行った停戦を終了させて以来、警戒を強めている。

バイデン大統領、ロイド・オースティン国防長官、マーク・ミリー米統合参謀本部議長、アントニー・ブリンケン国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はその後、ウクライナの担当者たちと連絡を取っている。

一方、米欧州派遣軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げている。

国防総省の報道官ジョン・カービーは火曜日に記者団に対して次のように述べた。「私たちはロシアに対し、国境沿いに集結させているロシア軍が何をしているのか、その意図をより明確にするよう求めるとともに、ミンスク合意で求められた停戦を引き続き求める」。

カービーは更に、「国境沿いの緊張を緩和すること」と「ウクライナの領土と主権がロシアによって尊重されること」が重要であると付け加えた。

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は今週、ドイツのアンゲラ・メルケル首相との電話会談の中で、ウクライナ政府のウクライナ東部地域での攻撃的な行動を非難した。プーティンは「東部地域における状況の悪化させているのはキエフだ」と主張した。

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国防総省はロシアがサーベルを鳴らし始めたので警戒している(Pentagon on alert as Russia steps up saber rattling

エレン・ミッチェル筆

2021年4月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/546346-pentagon-on-alert-as-russia-steps-up-saber-rattling-in-eastern-europe-and/

ロシアは、東ヨーロッパと北極圏でサーベルを鳴らし、バイデン政権を警戒させている。

この2週間、モスクワはウクライナ東部での軍備増強、アラスカ領空での軍事飛行、北極での潜水艦活動など、陸、空、海でワシントンとその同盟諸国を試そうと動いてきた。

国防総省報道官ジョン・カービーは水曜日、「ロシアがどのような脅威を抱いているか、私たちははっきりと認識している。私たちは非常に、非常に真剣に受け止めている」と述べた。

ウクライナ東部でモスクワが支援する分離主義勢力とウクライナ軍の戦闘が再開され、両グループが昨年夏に結んだ停戦協定が終了した後、国防総省は特にロシアの活動について監視を行っている。

2021年の開始以来、双方の小競り合いでのウクライナ兵20名が死亡している。

両者は、モスクワがウクライナからクリミアを奪取・併合した2014年から戦闘を続けており、キエフが主張する紛争は、開始以来1万4000人が死亡している。

ロシアのジェット機や爆撃機も頻繁に同盟諸国の領空近くを飛行しており、NATOのジェット機は月曜日だけで10回もスクランブル発進して対応することを余儀なくされた。

加えて3月下旬には、ロシアの核弾道ミサイル潜水艦3隻が北極圏で同時に数フィートの氷を割って軍事訓練を行い、クレムリンが北極圏の防衛力を強化する動きを見せている。

ロシアの積極的な行動により、在ヨーロッパ米軍司令部は警戒態勢を最高レヴェルに引き上げ、特にウクライナでの活動は、バイデン政権の国家安全保障部門のトップが、ウクライナのカウンターパートや地域の他の指導者に電話をかけるよう促している。

米統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将は水曜日、ウクライナのルスラン・ホムチャク参謀総長およびロシアの最高幹部であるヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長と電話で会談した。

その翌日、ロイド・オースティン国防長官はウクライナのアンドリー・タラン国防相に電話をかけ、「地域の安全保障状況について議論」し、「ウクライナ東部における最近のロシアの攻撃的で挑発的な行動のエスカレーション」を非難したと国防総省のカービー報道官は述べている。

先週、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官もウクライナ側と話した。アントニー・ブリンケン国務長官も、ドミトロ・クレバ外相と「安全保障協力強化の方法」について議論したと述べた。

全ての指導者たちは、ワシントンがキエフを支持することを約束した。

しかし、ロシアは金曜日、NATOにウクライナに軍隊を派遣しないよう警告し、そのような行動は緊張をエスカレートさせ、モスクワが対応せざるを得なくなると脅した。

クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は金曜日に記者団に対し、「このようなシナリオは、ロシアとの国境付近の緊張を更に高めることになるのは間違いない。もちろん、これはロシア側の安全を確保するための追加措置を求めるものだ」と述べた。

米軍北部司令部のトップ、グレン・ヴァンヘルク空軍大将は、米露両国が冷戦時代のような「大国間競争(great power competition)」に戻っていることが原因だと述べた。

ヴァンヘルクは水曜日に記者団に対して「明らかに、ロシアは世界的な舞台でその影響力と能力を再強化しようとしている」と述べた。

「昔と今の違いは、傍受がより複雑になっていることだ。複数アクセス、複数プラットフォームで、しばしば防空識別圏に入り込み、何時間も滞在することもある」とヴァンヘルクは付け加えた。

2020年、北アメリカ空域の防衛を担当する北アメリカ航空宇宙防衛司令部は、冷戦終結後のどの年よりも多くのロシア軍のアラスカ沖での飛行に対応した。

モスクワの好戦的な姿勢は2021年に入っても続いているようで、バイデン大統領に政権初期の外交政策上の課題を与えている。

先月、ロシアのプーティン大統領を「殺人者」だと思うかと問われたバイデンは「思う」と答え、ロシアの指導者は2020年の選挙を狙った影響力行使やその他のサイバー攻撃で「代償を払う」ことになるだろうと付け加えた。

強硬姿勢を裏付けるように、バイデンは2月下旬、ロシアから国境を守るため、ウクライナにさらに1億2500万ドル相当の安全保障支援を承認した。この資金は、クリミア併合以来、米国政府が同国に送った20億ドルを超える殺傷力の高い武器支援に追加される。

ウクライナ東部での戦闘が激化するかどうか、NATOがどう対応するかはまだ分からないが、国防総省は警戒態勢に入っていることを明らかにした。

国防総省のカービー報道官は木曜日、「私たちはウクライナ軍からの国境沿いにロシア軍を配置し、部隊を配置しているという報告に関して、状況を非常に注意深く監視している」と述べた。

カービー報道官は続けて「しかし、私たちは苦い歴史から、ロシアが主張する意図を額面通りに受け取ってはいけないことを学んできた」とも語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 日本時間の日曜日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領はアメリカ軍特殊部隊がシリア北部を急襲し、イスラミック・ステイト(ISIS)指導者アブー・バクール・アル=バグダディ(Abu Bakr al-Baghdadi、1971-2019年、48歳で死亡)を自爆に追い込み、死亡を確認したと発表した。
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バグダディ
ISISは2014年からシリアとイラクの一部を占領・実効支配し、イスラミック・ステイトの樹立を宣言した。その創設者にして指導者のバグダディが殺害されたということは大きなニュースとなった。

 バラク・オバマ政権下の2011年にはテロ組織アルカイーダの指導者オサマ・ビンラディンがパキスタンの潜伏先で同じく米軍特殊部隊の急襲を受け殺害された。今回も米軍特殊部隊の作戦によってテロ組織の指導者が殺害されるということになった。
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作戦の様子を見守るトランプ大統領

 アメリカをはじめ関係諸国が行方を追っていたバグダディであったが、シリア北部で米軍特殊部隊に追い詰められ、最後は洞窟の中で自分の子供3人と共に自爆をするに至った。バグダディに関しては身柄を拘束して裁判を受けさせる(国際法廷になるか、シリアやイラクの法廷になるかは分からない)ようにすべきであったが、バグダディは自爆したと発表されている。アメリカ軍特殊部隊の動きが降伏へと誘導するのではなく、自爆に誘い込むようなものであったとするならば問題である。また、バグダディに付き従った人間たちを「多数」殺害したというのも降伏や投降の意思を示した者までも殺害したとなるとこちらも問題だ。

 私はISISの肩を持たない。しかし、「正義をくだす」ためにはそれなりの手続きが重要であって、そこに瑕疵があれば正義とは言えなくなる危険性が高いということを言いたい。ただ殺害すれば済むという問題ではない。

 トランプ大統領の発表では作戦時の様子にも触れられていたが、非常に生々しい言葉遣いであった。また、バグダディと「犬」を結び付ける表演が複数回使われていた。バグダディは洞窟の中で犬に追い回された上に、「犬のように亡くなった(died like a dog)」「犬のようにクンクンと怯えて鳴いていた(whimpering)」とトランプ大統領は発言している。これは、トランプ大統領独特の言語感覚ということもあるが、バグダディは人間ではない、だから裁判なんてしちめんどくさい手続きなしで殺してもいいんだ、ということを聴衆に刷り込ませたいという意図があってのことだろう。

 トランプ大統領は、ロシア、シリア、トルコに対して作戦上の協力を感謝し、クルド人勢力からは軍事上の協力はなかったが有益な情報提供があったことを認めた。ここから考えられるのは、ロシア、シリア、トルコからら軍事上の支援と情報提供があったということだ。2つの協力があったから謝意が表され、クルド人勢力に関しては情報提供があったことを認めるということになったのだと思う。

 従って、今回の作戦はアメリカ軍単独ではなく、ロシア軍、シリア軍、トルコ軍の共同作戦で、アメリカ軍に華を持たせる形でバグダディの追跡が任されたということだと思う。アメリカ(トランプ大統領)は、ロシア、シリア、トルコに対して大きな恩義、借りを作ったということになるが、これはアメリカ軍がこの地域から撤退してももう大丈夫という正当化と、この地域なロシアに任せますよという意思表示であり、最後に華を持たせてもらって出ていきやすくなったということだと考えられる。アメリカは海外のことに関わらず、国内の問題解決を優先するという「アメリカ・ファースト」にかなっているということになる。

 今回の作戦がこの時期に実施されたのはアメリカ軍の撤退を正当化するためのものであり、かつロシアがこの地域の担任となることを認めることもあり、米露の利害が一致したために実行されたと考えられる。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲によってISIS指導者が死亡と発表(Trump announces death of ISIS leader in US raid

モーガン・チャルファント筆

2019年10月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/467620-trump-isis-leader

日曜日、トランプ大統領はイスラミック・ステイト(ISIS)の指導者アブー・バクール・アル=バグダディが北部シリアにおいてアメリカ軍の急襲によって殺害されたと発表した。

トランプ大統領はホワイトハウスのイーストルームにおいて声明を発表した。声明の中で大統領は「昨晩、アメリカ合衆国は世界ナンバーワンのテロリスト指導者に正義(の鉄槌)を下した。アブー・バクール・アル=バグダディは死亡した」と述べた。

アル=バグダディの死はテロリスト集団であるISISとの戦いにおける重要な象徴的な勝利を示すものであり、捕捉が難しいISIS指導者アル=バグダディを追跡するという数年間の努力が結実したことを意味する。アル=バグダディはこれまで何度か殺害されたと報じられたことがあった。

トランプ大統領は「危険かつ大胆な」作戦の詳細を説明した。バグダディはアメリカ軍特殊部隊によってトンネル内に追い詰められた。この時3人の子供を連れていた。そして、自爆用のヴェストを爆発させた。トランプ大統領は爆発後の残骸などを調査、テストし、バグダディが殺害されたことを示す証拠が出たと発言した。

トランプ大統領は「この極悪人は大変な恐怖の中で、完全なるパニックと恐怖の中で、最後の瞬間まで何とか他人になりすまそうともがいた。アメリカ軍が彼を完全に屈服させることに恐怖し続けた」と述べ、バグダディは「クンクンと情けない鳴き声を出しながら(whimpering)」死んでいったと発言した。

トランプ大統領はホワイトハウスのシチュエイション・ルームで作戦の「大部分」を見ていたと発言した。しかし、どこを見てどこを見なかったかの詳細については明らかにしなかった。ホワイトハウスは大統領の発表の後にその時の様子を撮影した写真を公開した。土曜日のシチュエイション・ルームの様子は、大統領の傍らにはマイク・ペンス副大統領、ロバート・オブライエン国家安全保障問題担当大統領補佐官、マーク・エスパー国防長官と軍部の最高幹部たちが座っていた。

トランプ大統領はアメリカ軍の急襲は2時間ほどで終了し、アメリカ軍はISISに関連する「非常に重要な情報を含む取り扱いに注意を要する文書や物資」を押収したと発表した。トランプ大統領は作戦中にアメリカ軍に死者は出ず、アル=バグダディの追随者たちの多くが殺害されたと発表した。

トランプ大統領は今回の作戦のことを3日前から知らされていたと述べ、連邦議会の指導者たちには、「リークされる」という恐れから伝えなかったとも発言した。

トランプ大統領は「リークによって作戦に参加した米軍の人員全てが殺害されることもあるだろうと考えた」と発言した。しかし、作戦終了後の日曜日にリンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリチャード・バー連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)と会談を持ったとも述べた。

今回の発表はトランプ大統領にとって追い風となるだろう。ここ数週間、トランプ大統領は北部シリアからの米軍の撤退という決断に対して様々な角度から検証されてきた。批判する人々は、米軍の撤退によって、アメリカが盟友関係を築いてきたクルド人勢力に対してトルコ軍の軍事作戦が推進されると主張している。アメリカ軍の撤退によってISISが勢力を回復するのではないかと多くの専門家が懸念を表明していた。

トランプ大統領は日曜日、「昨晩はアメリカ合衆国と世界にとって素晴らしい夜となった。多くの人々の困難や死の原因となった野蛮な殺人者は荒々しく消滅させられた。バグダディは犬のように死んだ。臆病者のようにして死んだ。世界はこれまでよりもより安全な場所になった。アメリカに神のご加護がありますように」と述べた。

アル=バグダディの死はISISに対して大きな一撃を与えた。ISISは既にアメリカが主導する連合諸国によって縮小させられている。しかし、バグダディの死がISISの完全なる消滅を意味するものではない。

トランプ大統領は、アル=バグダディの死は、アメリカの「各テロリスト集団の指導者に対する飽くなき追跡とISISやそのほかのテロリスト組織の完全な敗北を確かなものとするための努力」が証明されたものだと高らかに宣言した。

「アメリカ軍が北部シリアでアル=バグダディを標的にした急襲作戦を実行した、そして武装勢力の指導者は殺害されたものと考えられる」という内容の報道が出始めたのが土曜日の夜遅くだった。トランプ大統領は内容の発表をもったいぶり、ツイッター上に「何かとてつもなく大きなことが起きた!」とだけ書いた。

トランプ大統領は日曜日にアメリカ軍の人員が安全に帰還した後でツイッター上に書き込みを行ったが、それはニュースメディアを警戒してのことだったと述べた。

トランプ大統領はロシア、トルコ、シリア、そしてイラクに対して、作戦への協力を感謝した。また、クルド人勢力が有益な情報を提供したことを認識していると述べた。トランプ大統領は、クルド人勢力は作戦において軍事的な役割を果たすことはなかったと述べた。大統領は作戦に参加したアメリカ軍と情報・諜報機関の人員に謝意を表した。

トランプはまた北部シリアからの米軍の撤退という自身の決断を擁護し続けた。とることシリアの国境地帯に米軍を駐屯させ続けることはアメリカの利益にかなうものではないと主張した。

トランプ大統領は「私たちはこれから200年もシリアとトルコの間に米軍を駐屯させたいなどとは望まない。シリアとトルコはこれまで数百年もの間戦ってきた。(だから勝手にすれば良いが)私たちは出ていったのだ」と述べた。それでも油田がISISの武装勢力の手に落ちないようにするためその地域にアメリカ軍を残しているとも述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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 古村治彦です。

 

 今回は、2016年7月に発生したトルコのクーデター未遂事件についての記事をご紹介します。このクーデター未遂事件では、レセプ・エルドアン大統領は辛くも脱出し、クーデターは失敗に終わりました。エルドアンにクーデターの危険を知らせたのは、ロシアのウラジミール・プーティン大統領だと言われています。

 

 クーデター未遂事件以降、トルコのマスコミでは、アメリカがクーデターをやらせたという主張がなされ、クーデター未遂事件が起きた時に開催されていた学術会議を開催していた、アメリカのシンクタンクであるウッドロウ・ウィルソン・センターや出席者たちが、CIAのエージェントであったという論陣が張られています。

 

 クーデターに関して、トルコ政府は、アメリカに事実上亡命している、フェトフェラー・ギュレンというイスラム聖職者が首謀者だと非難しています。ギュレンは、1960年代から市民運動とも宗教運動ともつかない活動を始め、「ギュレン運動」という社会運動はトルコ国内でどんどん拡大していきました。ギュレン運動はエルドアンと良好な関係にあり、エルドアン政権成立には大きな役割を果たしたそうですが、2013年以降、関係は悪化しているそうです。

 

 トルコ国内で「クーデターを仕掛けたのはアメリカだ」という論調が出てくるのは仕方がない事です。これまでにも、アメリカで教育を受けた軍幹部がクーデターを起こして、アメリカの都合の悪い政権を転覆したというケースはいくつもあります。また、今回は、反エルドアンの大物がアメリカに亡命中であるということもあって、このような主張が出てきています。

 

 拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)でも書きましたが、学術団体や市民団体への支援という形でアメリカは影響力を行使していることは事実です。こうしたアメリカの戦略の尖兵として学者や市民運動活動家が活動していることも事実です。

 

 今回のトルコでのクーデター未遂事件の場合は、まだ決定的な証拠は出ていませんが、状況証拠から、アメリカの関与の可能性は高いと思われます。

 

(記事貼りつけはじめ)

 

黒幕か、エルドアン氏と確執=関与否定のギュレン運動-トルコクーデター

 

20160716 17:26 発信地:イスラエル

AFP通信・時事通信

http://www.afpbb.com/articles/-/3094244

 

716 時事通信社】トルコのエルドアン大統領が今回のクーデターを主導した黒幕と主張しているのがイスラム団体「ギュレン運動」だ。近年、エルドアン氏との確執があることで知られる。これまでも「政府転覆を図った」と疑いをかけられては、ギュレン運動支持者への締め付け、弾圧が続けられてきたが、政権は今後一層その動きを加速させるとみられる。

 

 アナトリア通信によると、トルコ当局は、クーデターの企てに関わったとしてギュレン運動支持者を次々拘束している。これに対し、ギュレン運動側は関与を否定。「トルコの内政へのいかなる軍事介入も非難する」と、むしろ反クーデターの立場を表明さえしている。

 

 米国で事実上の亡命生活を送るイスラム指導者、ギュレン師が率いるギュレン運動は、かつてエルドアン政権の支持母体だった。ところが、2013年末に同政権をめぐる大規模汚職疑惑が浮上すると、エルドアン氏は「ギュレン師が仕組んだ」と批判、両者の対立は決定的になった。(c)時事通信社

 

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トルコの米軍基地が閉鎖、空爆も中止 対ISIS作戦の拠点

 

2016.07.17 Sun posted at 12:19 JST

CNN

http://www.cnn.co.jp/world/35086007.html

 

(CNN) トルコで軍の一部がクーデターを企て首都アンカラや最大都市イスタンブールで軍同士の衝突が起きた件で、トルコ当局は、米軍がシリアやイラクでの対ISIS作戦の拠点とし、米兵約1500人を駐留させている南部のインジルリク空軍基地を閉鎖した。これを受け、米軍は空爆作戦を停止している。基地への電力供給が止められたとの情報もあるが、米軍施設は自家発電で対応しているという。

 

また、ギリシャ政府の報道官によると、クーデター勢力とみられる兵士8人がヘリコプターで同国へ逃れ、政治亡命を求めている。

 

トルコ外務省は兵士らの身柄引き渡しを求めているが、ギリシャ外相は16日、国内の規定と国際法に基づいて亡命申請を精査すると表明し、すぐには引き渡しに応じない姿勢を示した。

 

トルコで15日夜(日本時間16日未明)、軍の一部がクーデターを企てた件では、180人以上の死者が出ている。大統領府の情報筋によれば、軍の将官少なくとも2839人が拘束された。

 

エルドアン大統領は、クーデター勢力が米在住のギュレン師が率いる「ギュレン運動」とつながっていたとして、米国に対し、同師を拘束するか、またはトルコ側へ引き渡すよう強く求めている。

 

(記事貼りつけ終わり)

 

 

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エルドアンの支持者たちは、ワシントンの有名なシンクタンクがクーデターを計画したと非難している(Erdogan Allies Accuse Leading Washington Think Tank of Orchestrating Coup

 

ジョン・ハドソン筆

2016年8月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/08/08/erdogan-allies-accuse-leading-washington-think-tank-of-orchestrating-coup/

 

トルコ政府は、先月のクーデター未遂事件の後、数千名の兵士、警官、学者、ジャーナリストを逮捕したり、拘束したりしている。トルコのレセプ・エルドアン大統領の支持者の中には、新たな攻撃目標を設定している人たちがいる。その目標とは、ワシントンにある有名なシンクタンクだ。

 

ウッドロウ・ウィルソン・センターは1968年に創設された超党派のシンクタンクだ。ウィルソン・センターは、先月のクーデター未遂事件で、証明されてはいないが重要な役割を果たしたという激しい批判に晒されている。クーデター未遂事件では200名以上が死亡し、1000名以上が負傷した。エルドアンは権力を回復し、それ以降の数週間、トルコ社会全体のあらゆる機構や機関で追放を行っている。

 

 ウィルソン・センターに対する非難は、エルドアンとつながりがあるトルコの新聞各紙に掲載されている。このため、シンクタンクにとっては異例なことだが、研究者や学者たちに対する「報復」が行わる可能性について懸念を表明する声明を発表した。学者たちは、7月にウィルソン・センターが主催した会議に出席するためにトルコにいた。7月15日から17日まで学術会議が開催されていたのだが、これがクーデター未遂事件と重なったために、シンクタンクに対する権力者共同謀議説(陰謀論)が唱えられることになった。

 

先週金曜日に発表された無署名の声明の中で、ウィルソン・センターは次のように書いている。「イスタンブールのブユカダ島で開催された会議は、クーデター未遂事件の中心現場から遠く離れた場所で開催されており、事件とは何のつながりもない。会議では、経験豊かな外交政策専門家たちがイランについて、またイランと近隣諸国との関係について、公開の場で意見を交換した」。

 

しかし、ウィルソン・センターが声明を発表した後も、トルコ国内でウィルソン・センターの中東プログラムの責任者ヘンリー・バーケイとクーデター未遂事件との関係についての批判が弱まることはなかった。トルコの政府系の新聞アスカムは先週の土曜日、一面に7月の会議に出席したバーケイとその他の学者たちの写真を掲載した。そして、「彼らはCIAのエージェントであり、クーデターの計画と実行の手助けを行った」と非難した。

 

外交評議会のトルコ専門家であるスティーヴン・クックは本誌の取材に対して次のように語った。「ヘンリー・バーケイは親エルドアン派のマスコミに執念深く追い掛け回されている。トルコ政府関係者は権力者共同謀議説(陰謀論)を覆すために努力しなければならない。しかし、彼らは何もやらないだろう。トルコ政府がこうした主張を行い、それを覆すことはない。そんなことをしても彼らには何の得もないからだ」。

 

本誌はワシントンにあるトルコの駐米大使館にコメントを求めたが、返事はなかった。ウィルソン・センターにもコメントを求めたが返答はなかった。バーケイはコメントを拒否した。

 

学術会議の出席者たちは、トルコのマスコミと当局によるしつこい調査を受けていると言われている。ウィルソン・センターと一緒に会議を主催したグローバル・ポリティカル・トレンズ・センターの部長メンスール・アクガンは最近、トルコ当局によって取り調べを受けた。会議に出席した女性の学者アクガンは教授としての地位は保全されていると会議の出席者の一人は述べている。

 

トルコのマスコミでは、今回のクーデター未遂に関して、スコット・ピーターソンの写真を掲載した。ピーターソンは学術会議に招待され出席したジャーナリストで、クリスチャン・サイエンス・モニター紙に所属している。しかし、トルコのマスコミでは、ピーターソン本人の写真を掲載する代わりに、同姓同名の別人の写真を掲載してしまった。こちらのピーターソンは、2002年に妊娠中の妻レーシー・ピーターソン殺害犯人であって、彼は懲役20年の判決を受け、現在はカリフォルニア州の刑務所に服役している。

 

アトランティック・センターに所属するトルコ学者のアーロン・スタインは「今回の事件における唯一の喜劇的な要素は、スコット・ピーターソンを取り違えた部分で、彼らは、クリスチャン・サイエンス・モニター紙の記者であるスコット・ピーターソンとレーシー・ピーターソン殺害犯を取り違えたのだ」と述べた。

 

トルコ政府は公式には、クーデター未遂事件の首謀者としてフェトフェラー・ギュレンの名前を挙げて非難している。ギュレンはイスラム今日の聖職者で、現在はトルコから離れて事実上の亡命生活を送っており、現在はフィラデルフィア郊外に居住している。しかし、2016年7月15日に発生したクーデター未遂事件以降、トルコのマスコミでは、多くのアメリカ人が権力者共同謀議説(陰謀論)の対象になっている。政府系のイェニ・サファク紙は、CIAと元NATO司令官のジョン・キャンベル大将がエルドアンを追い落とそうとしたのだと非難の論陣を張っている。

 

金曜日に発表した声明の中で、ウィルソン・センターは、シンクタンクに所属する学者たちに対する非難が続くならば、トルコの国際的な評価が傷つけられることになると書いている。

 

声明は続けて次のように述べている。「トルコは学術会議にとって長年にわたって魅力的な場所であり続けてきた。トルコの学術社会と市民社会の質や規模が適していること、自然の美しさと便利な場所が理由である。今回のことで、トルコの国際的な評判に傷がつくこともある。また、世界規模の民主的な市民社会への貢献をトルコの素晴らしい学者たちが価値のある意見交換に参加することで行うことで、トルコ国内で排除されることになりかねないのは憂慮すべきことだ」。

 

(終わり)










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ダニエル・シュルマン
講談社
2015-10-28



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 トルコと中東をめぐる大きな問題になっているのはクルド人問題です。クルド人は国家を持たない最大の民族と呼ばれており、トルコやイラク、イランにそれぞれ居住しています。今回のご紹介する記事は、クルド人たちはセーヴル条約によって自分たちの国家が作られるはずだったのに、トルコ側についてヨーロッパ列強と戦ったではないかという内容になっています。

 

 しかし、もっと根源的に言うならば、中東、オスマントルコ帝国の地域に国境線を引いてしまったこと自体に問題があったのではないか、と私は考えます。セーヴル条約ではなく、サイクス・ピコ条約によって中東は切り刻まれたのですが、それによって起きた多くの問題は連関し、解決するには複雑な状況になっています。

turkeymap001
 

 

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サイクス=ピコ条約を忘れよう。セーヴル条約で現在の中東の状況を説明する(Forget Sykes-Picot. It’s the Treaty of Sèvres That Explain Modern Middle East

―95年前の今日、ヨーロッパ諸国はオスマントルコ帝国を分割した。セーヴル条約は1年も持たなかったが、その影響は現在も残っている。

 

ニック・ダンフォート筆

2015年8月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/08/10/sykes-picot-treaty-of-sevres-modern-turkey-middle-east-borders-turkey/

 

 95年前の今日、ヨーロッパ諸国の外交官たちは、パリ郊外のセーヴルの陶器工場に集まり、オスマントルコ帝国の灰から中東を作り直すための条約に調印した。この計画はすぐに崩壊し、私たちはこの条約についてほとんど記憶していない。しかし、長く続かなかったセーヴル条約は現在においてもその姿を垣間見ることが出来る。セーヴル条約は現在も議論が続いているサイクス・ピコ条約と同じくらいに重要である。この忘れ去られた条約の記念日が過ぎようとしている時、中東やトルコについて考えるべきだと思う。

 

 1915年、イギリス軍はガリポリ半島を通ってイスタンブールまで進軍した。この時、イギリス政府はオスマントルコ帝国の終焉を予期した。それはいささか時期尚早だった。ガリポリの戦いはオスマントルコ帝国が第一次世界大戦で得た数少ない勝利となった。しかし、1920年までに、イギリスの予測は正しいことが証明された。連合国軍の軍隊がオスマントルコの首都を制圧した。そして、戦争に勝利した列強の代表者たちは、オスマントルコ帝国の領土を分割し、それぞれが影響下に置くことになった。セーヴル条約によってイスタンブールとボスポラス海峡は国際管理とされた。一方、アナトリア半島の一部はそれぞれギリシア、クルド、アルメニア、フランス、イギリス、イタリアに割譲された。ヨーロッパ列強がどのようにして、そしてどうして中東の分割計画の実現に失敗したのかをみることで、私たちは、中東地域の現在の国境線について、そして今日のクルド人のナショナリズムと現在のトルコが直面している政治的な挑戦の間の矛盾についてより良く理解できる。

 

 セーヴル条約の締結から1年もしないうちに、ヨーロッパ列強はこの条約によって持たされたものは利益よりも苦痛を与えるものであったのではないかと疑いを持つようになった。外国による占領に抵抗する固い決心の下、オスマントルコ帝国陸軍の将校ムスタファ・ケマル・アタチュルクはオスマントルコ軍の再編に着手し、数年に及ぶ外国軍との厳しい戦闘を経て、セーヴル条約の条項遵守を矯正してきた外国軍を撤退に追い込んだ。その結果、現在のトルコが誕生した。新しい国境線は1923年のローザンヌ条約によって公式に決定された。

 

 セーヴル条約は西側ではその存在はほぼ忘れ去られている。しかし、トルコではその影響が今でも残っている。トルコで起きるナショナリズムに基づいた偏執的な主張が起きるたびにそれを増長させてしまうのがセーヴル条約の存在で、学者たちの中にはこれを「セーヴル症候群」と呼ぶ人たちもいる。セーヴル条約の存在によって、トルコはクルド人による分離独立主義に神経を尖らせることになる。そして、1920年のアナトリアに対する計画を正当化するためにヨーロッパ各国の外交官たちが使ったアルメニア人大虐殺は歴史的に事実かどうかよりも反トルコ共同謀議であるとトルコが考える理由になっている。トルコは植民地支配に対して激しい戦いを続けたが、これがトルコの反帝国主義的ナショナリズムの基礎となった。最初に対イギリス、冷戦期は対ロシア、現在は対アメリカが反帝国主義的ナショナリズムの標的となってきた。

 

 しかし、セーヴル条約の影響はトルコにだけ留まらない。これが中東史においてセーヴル条約をサイクル・ピコ条約に含むべき理由なのである。中東地域の諸問題は全てヨーロッパ列強が白紙の地図に国境線を引いたことから始まっているという広く受け入れられている考えに対して、もう一度考え直す時にセーヴル条約を見ていくことは重要なのだ。

 

 ヨーロッパの列強は彼らがいつでも中東から離れても国益を確保することが出来る国境を作り出したことに満足していたのは間違いない。しかし、セーヴル条約の失敗によって、彼らは満足いく結果を得ることが出来なかった。ヨーロッパ列強の政治家たちがアナトリア半島の分割で国境線を引き直そうとした時、彼らの試みは失敗した。対照的に、中東においては、ヨーロッパ列強は国境線を引くことに成功した。ヨーロッパ列強はその強大な武力を使って抵抗する勢力を排除することが出来た。オスマントルコ帝国陸軍の将校で口髭を生やした、シリア人のナショナリスト、ユセフ・アル・アズマは、アタチュルクの軍事的成功を真似て、マサラムの戦いでフランス軍を破ったが、ヨーロッパ列強によるレヴァント分割計画はセーヴル条約の内容通りに進められた。

 

 もし中東にまた違った国境線が引かれていたら、中東はより安定したか、より人々に対する攻撃は少なかっただろうか?必ずしもそうとは言えない。セーヴル条約のレンズを通して歴史を見てみると、ヨーロッパ列強の引いた国境線と中東の不安定さとの間には因果関係があるという以上の視点を得ることが出来る。ヨーロッパ列強によって強制された国境線を引かれた地域は、植民地支配に対して抵抗するには脆弱になったり、組織化できなくなったりする。トルコはシリアやイラクに比べてより豊かにもそして民主的にもなれなかった。それは、トルコが正しい国境線を得るという幸運に恵まれたからだ。トルコがヨーロッパ列強の計画の実施を阻止することに成功した諸要素、オスマントルコ帝国から継承した軍隊と経済的インフラは、トルコが強力で中央集権的なヨーロッパ様式の国民国家を建設するための要素ともなった。

 

 当然のことながら、クルド人のナショナリストたちのほぼ全員がトルコの現在の国境線は間違っていると主張するだろう。実際、クルド人が国家を持てなかったことはオスマントルコ帝国滅亡後の中東地域に引かれた国境線における致命的な失敗だと主張する人々もいる。しかし、ヨーロッパの帝国主義者たちはセーヴルでの会議でクルド人国家建設を試みたが、クルド人の多くはアタチュルクと一緒にセーヴル条約の履行阻止のために戦った。私たちが今日認識しているように、政治的な忠誠心は国家アインでティティを乗り越えることが出来るということは記憶されるべきだ。

 

 セーヴル条約で建国されるはずであったクルド国家はイギリスのコントロール下に置かれたことは間違いないところだ。クルド人のナショナリストの中には、これに魅力を感じた人々もいたが、他の人々は、イギリスの支配を受けながらの「独立」は問題だらけだと考えた。従って、彼らはトルコのナショナリズム運動と共に戦った。信仰心の厚いクルド人たちにとって、キリスト教国による植民地化よりも、トルコやオスマントルコ帝国の支配が続いた方がましだと考えた。その他のクルド人たちは、より現実的な理由から、イギリスが家と土地を奪われたアルメニア人たちの帰還を支援するのではないかと憂慮した。クルド人の中には、彼らが建国のために戦った国が期待に反してよりトルコ的で、より世俗的になると分かった時に後悔した人々もいた。一方、様々な圧力を受けて、新国家が提供するアイデンティティを受け入れることを選ぶ人たちもいた。

 

 トルコ人のナショナリストたちの多くは、セーヴル条約によってオスマントルコ帝国が解体された過程と同じ道筋で現在のトルコが解体されるのではないかという恐怖心を持っている。一方で、クルド人のナショナリストたちの多くは現在でも自分たちの国家を実現することを夢見ている。同時に、現在のトルコ政府は、オスマントルコ帝国が持っていた寛容と多文化主義を排除している。一方、クルド人の分離主義の指導者アブドラ・オカランは、獄中にある時に社会学者ベネディクト・アンダーソンの著書を読み、国家は全て社会的に構成されたものに過ぎないという考えに行きついたと述べている。トルコの与党である公正発展党(AKP)と親クルド派の国民民主主義政党(HDP)はそれぞれここ10年の間、クルド人有権者たちに対して「我が党への投票は平和のための投票になる」と訴えてきた。両党は、どちらの党がより安定したそして包括的な国家を作ることで長年にわたり続いた衝突を解決できるかを争っている。つまり、アメリカ人の多くが中東におけるヨーロッパが作った「人工的な」国家について議論している時、トルコは一世紀に渡って存在してきた「人工的な国家」が現実のものであることを証明しようという欲望を乗り越えようとしている。

 

 言うまでもないことだが、ここ数週間にトルコで起きた暴力は、ナショナリズム後の合意の壊れやすい要素の崩壊の危険をはらんでいる。公正発展党はクルド人政治指導者たちと警察官たちを銃撃したクルド人ゲリラの逮捕を要求している。興味深いのは、トルコ人ナショナリストとクルド人ナショナリスト双方は、よく似たしかし相容れない立場に立つようになっている。95年にわたり、トルコはセーヴル条約に対する勝利によって政治的、経済的利益を得た。しかし、この成功を続けるにはより柔軟な政治モデルを必要とする。この政治モデルは国境線と国家アイデンティティを巡る戦いをつまらないものにすることに貢献することが出来る。

 

(終わり)








 

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