古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ナンシー・ペロシ

 古村治彦です。

nancypelosivisittotaiwan512

 アメリカ連邦下院議長(the Speaker of the U.S. House of Representatives)ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の台湾訪問はアジア歴訪の一つであった。アメリカ政治における最重要人物の一人の台湾訪問は中国を苛立たせた。ペロシには「前科」があったようだ。1989年の天安門事件の後、1991年にアメリカ連邦議会の代表団の一人として北京を訪問したペロシは、公式のルートから抜け出して天安門事件で喧嘩をし、横断幕を掲げるというパフォーマンスを行い、その様子をマスコミに取材させていた。そのことで、中国当局は激怒し、ペロシたちを咎めることができずに、取材したマスコミの人間を拘束したそうだ。ペロシは重責を担う政治家としては不適格な、軽々しい人物である。下に当時の様子を写した写真があるが、漢字が繁字体であることから、ペロシはもともと台湾系、チャイナ・ロビー系と関係が深いということが分かる。

nancypelosivisittobeijing511 

 ペロシの今回の台湾訪問は日本の小中高生が行く修学旅行よりも何の成果もない、夏休み(連邦議会休会中)の旅行で会った。修学旅行で何かいたずらやルール違反をしても、それはそれで当事者たちにとっては大変なことで、先生が見回りで寝られなかったり、生徒たちが正座をさせられたり、くらいのことだが、ペロシの軽はずみな行動は数億人規模で人々の生命や財産、穏やかな日常を危険にさらす。経済活動に対する悪影響も考えられる。

 米中両国政府が自制的であるので、火遊び程度で住んでいるが、火遊びから思いがけない大火事になることもある。

 そもそも今回のペロシの台湾訪問の目的がはっきりしなかった。アメリカ政府全体はペロシの台湾訪問に懸念を持っていた。アメリカによる台湾防衛の確約ということも改めて発表された訳ではない。また、台湾を独立国として扱うということもできない。アメリカ政府は「一つの中国」政策(One China Policy)を堅持する姿勢を崩していない。ペロシの台湾訪問は、「アメリカの防衛産業が製造する武器をもっとたくさん買ってね」ということだろうと私は思う。連邦下院議員たちは2年おきに選挙がある。選挙に追いまくられていると言ってよい。そうした中で、地元への利益誘導に動く。

 今回のウクライナ戦争におけるアメリカの援助が巨額になっているのは、連邦下院で、地元に防衛産業がある議員たちが「その金額では足りないのではないか」「国防総省の要求には入っていないがこの武器も必要ではないか」とこれでもかとばかりにお手盛りでどんどんと付け加えたからだ。

 ペロシの軽率な夏休みの海外旅行、武器はいらんかねとの太平洋をまたいだ行商はアジア地域に危険をもたらした。そして結局何の成果もなかった。挑発行為は迷惑行為そのものだ。

(貼り付けはじめ)

ペロシの台湾訪問は台湾に勝算のない状況を設定する(Pelosi Visit Sets Up No-Win Situation on Taiwan

-行けば呪われ、行かなければ呪われる。

ジャック・デッチ筆

2022年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/29/pelosi-visit-taiwan-no-win-pentagon/

ナンシー・ペロシ米連邦下院議長は慌ただしいアジア歴訪に出発する予定であり、彼女が台湾に立ち寄る可能性が高く、物議をかもすことになる。この地域の米中間の緊張は既に煮えたぎっているが、この動きはそれを更に燃え上がらせている。

大統領に次ぐ地位にある連邦下院議長が台湾を訪れるのは初めてではなく、ニュート・ギングリッチが四半世紀以上前に訪れたことがある。しかし、中国はペロシが台湾を訪問する可能性に対して、通常、中国大使館から厳しい言葉で書かれた書簡が届くような一回限りの連邦議員の台湾訪問のように扱うのではなく、アメリカの当局者たちを繰り返し非難し、ジョー・バイデン政権に、北京が本気でペロシ議長の到着を理由に台湾海峡の危機を再び引き起こすつもりなのかと疑わせるような反応を示している。

そして、複数の専門家と議会スタッフは『フォーリン・ポリシー』誌に語ったところでは、8月1日の中国人民解放軍の95回目の創設記念日の前夜に、ペロシが訪問する可能性があり、深刻な危機を引き起こさないとしても、ジョー・バイデン米大統領ティームは勝ち目のない状況に置かれていると懸念している。

トランプ政権時代に東アジア担当国防次官補を務めたハイノ・クリンクは次のように述べている。「習近平国家主席は、ペロシ議長の台湾訪問は自分に対する侮辱だと見なすだろう。新型コロナウイルス封じ込め、住宅ローン危機、人々が街頭に立って抗議活動を行っているという事実など、彼が既に戦っている全ての国内問題に加えて、実はこれは常に中国共産党の注目を集めるもので、火に油を注ぐことになり、彼はこれを意図的な戦略の一部と解釈するだろう」。

『ブルームバーグ』誌が最初に報じたところによると、ペロシは金曜日に出発し、日本、インドネシア、シンガポールに立ち寄り、その後、台湾を訪問する可能性があるが、出発が決まった時点では未確認であった。また、連邦下院外交委員会のトップ2である民主党のグレゴリー・ミークス連邦下院議員、共和党のマイケル・マコール連邦下院議員も招待されている。ミークス議員は安全保障上の理由から、マッコール議員は日程の都合から、それぞれ同行を辞退した。国防総省の職員たちは、アジア歴訪の計画中に、ペロシのスタッフたちに訪米の影響を懸念していることを伝えた。そして、その批判の一部は連邦議会でも共有されている。

ある民主党議員のスタッフは、匿名を条件に、『フォーリン・ポリシー』誌に「何を達成するのか、それが私の疑問だ。より大きな懸念は、常に右派を利するタカ派的なアプローチに私たちを閉じ込め、将来の外交のための政治的空間を縮小してしまうことだ」と述べた。

連邦議員たちによる台湾訪問について言えば、1997年のギングリッチ議長の訪問の際、中国からほとんど反発を受けなかったという歴史的経緯がある。しかし、連邦議会では、ペロシ議長が北京からの反発の可能性について間違った計算をしていると考える人々もいる。

大きな問題はそのタイミングだ。習近平が率いる中国共産党の第20回党大会(トップリーダーの承認)を前に、バイデンは長年にわたるアメリカの戦略的曖昧さの政策に反して、台湾を軍事侵攻から守ることを短絡的に繰り返し公言した。中国が縮小しつつある経済成長目標を達成できない可能性もあり、ペロシの台湾訪問のタイミングで中国が特に強気に出ているのではないかという懸念もある。

「私の感覚では、このタイミングについては議長のオフィスに誤算があったように思う」と匿名を条件に共和党のある議会補佐官は語った。この人物は続けて「中国国内で起きているいくつかのことを考えれば、この特別なタイミングが特に挑発的なものになることは明らかだった。今すぐ危機を引き起こすことがアメリカの利益になるわけではないという程度のことがうまく選択されなかったということになるだろう」。

アメリカの高い地位の人物による台湾訪問に対して中国が拒否権を得るべきだと思っている人物は民主、共和両党に穂ほとんど存在しない。しかし、専門家や議会補佐官たちは、中国の軍事演習が活発化し、北京が2年以上続けている台湾の防空識別圏を侵犯したり、自国の防空圏を拡大しようとしたりすることを懸念していると述べた。国防総省は、中国軍は海峡両岸への侵攻(水陸両岸での上陸作戦が必要)に十分対応できていないと考えているが、専門家や議会関係者たちは、今回の訪問がこの地域の温度をさらに上昇させる可能性があると警告している。数週間前から、米政府関係者は中国軍との安全でない戦闘の危険性が増大していると警告を発している。

台湾は、1972年にニクソン政権が毛沢東と合意した外交関係再開に端を発する「一つの中国」政策の一部として、アメリカに公式に独立国として認められていないが、トランプ政権の末期、当時のアレックス・アザー米保健福祉長官が現職閣僚レベルとして初めて台湾を訪問してから、水面下で訪問のペースを上げてきている。国防総省の元職員であるクリンクは、訪問を計画する人々はリークの可能性にもっと気を配るべきだとし、議会関係者は典通常移動手段として軍用機を利用するが、今回のペロシの台湾訪問では軍用機の使用を行わずに、米政権の黙認と見られるようなことをすべきだったと述べている。

米国防総省は軍事的緊張を考慮して、通常は日本に駐留する空母ロナルド・レーガンとその関連打撃部隊を南シナ海に派遣している。

もしペロシが中国の間接的な圧力に屈して台湾に行かなかった場合、日本、オーストラリア、韓国がこの地域でより強固な軍事態勢を取ろうとしている時に、地域的に有害な影響を与えかねないと懸念を持つ人々がいる。今月初めに暗殺される前、日本の安倍晋三元首相は、自民党をよりあからさまな台湾支援政策に向かわせようとしていた。

トランプ政権時代の国家安全保障会議の主要スタッフを務め、現在は米外交政策評議会(American Foreign Policy Council)の上級フェローであるアレキサンダー・グレイは次のように述べている。「ペロシが台北に現れれば、それは素晴らしいことだ。そうすれば、ボールが前進することになるだろう。米台関係を前進させることができるだろう。抑止力を高めることができるだろう。今、政権は自らの思惑か偶然か、身動きができない状態になってしまった」。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障分野特派員。ツイッターアカウントは@JackDetsch

=====

ナンシー・ペロシは台湾で一体何をしようと考えているのだろうか?(What Does Nancy Pelosi Think She’s Doing in Taiwan?

-リスクの高い訪問は実際の支援というよりも劇的なジェスチャーに見える。

マイク・チョニー筆

2022年7月26日

『ザ・ヒル』誌

https://foreignpolicy.com/2022/07/26/nancy-pelosi-taiwan-china-relations/

1991年9月、私はCNNの中国総支局長だった。当時、一階の連邦下院議員だったナンシー・ペロシに私の関心は集まった。米連邦議会代表団として北京を訪れた際、ペロシと他の議員2名が公式エスコートから離れて、天安門広場に行く計画を立てている、と彼女の同僚議員が私に教えてくれたのだ。しかし私は、彼女の計画が、報道カメラが回る中、2年前に中国人民解放軍が民主化デモ隊を鎮圧した際に亡くなった学生たちを追悼する横断幕を掲げ、花を供えることだったとは知らなかった。

ペロシと2名の議員は、このジェスチャーを行った後、車で去っていった。訪問中の外国要人をターゲットにできない中国警察は、私と他の記者を数時間にわたって手荒く拘束した。私は、ペロシが中国の共産主義者を狙い撃ちするために、結果がどうなるかは関係なく、注目を集めるようなジェスチャーをする傾向があることを初めて経験した。

今、ペロシは、より危険な瞬間に、手荒に扱われた記者ということよりもはるかに多くの問題を抱えながら、今年の8月にもっと挑発的な行動、つまり台湾訪問を行おうとしているようだ。中国が台湾を武力で奪おうとするのではないかという懸念が高まる中、米中関係はここ数十年で最低の状態にある。激怒した中国政府は既に、ペロシが台湾訪問を行えば強硬に対応すると警告を発しており、今でも緊張状態にある状況を危険なまでにエスカレートさせる恐れが出てきている。

しかし、ワシントンでは、ペロシの台湾訪問をめぐる状況は極めて混沌としている。台湾訪問の情報は、『フィナンシャル・タイムズ』紙が匿名の情報源6名から得たもので、誰が何のためにこの計画を公表したのかは疑問だ。最初のリークは、ペロシのスタッフが宣伝効果を狙ったのか? それとも、政府内の誰かがこの旅を台無しにしようとしたのか? それとも単なる不手際か? ジョー・バイデン米大統領は記者団の取材に対し、「米軍部が今は良くないと考えている(military thinks it’s not a good idea right now)」と述べただけだったが、ペロシは台湾への支持を示すことの重要性を強調しながらも、自らの意思を明確にすることを拒んだ。

しかし、この情報が流れた今、アメリカはジレンマに直面している。もしペロシが行かないのであれば、アメリカは中国政府がアメリカの台湾への関与のあり方について制限を設けることを容認しているように見えるだろう。そうなれば、アメリカは衰退しつつあり、中国の国際的な主張の強い行動が功を奏しているという、強い信念が北京の中で強まることになりかねない。確かに、中国の国際的なイメージは崩壊し、投資家は逃げ出しているが、その政策を決定する指導者に対して、不快な事実を指摘する意欲は、中国共産党内にはほとんどない。さらに、バイデンに対する共和党の批判者たちが、バイデンが中国に甘いということを非難する材料にもなる。

しかし、もしペロシが北京の警告を無視すれば、台湾をめぐる危険な新たな危機の引き金になりかねない。中国人民解放軍は、過去1年間に台湾の防空識別圏(ADIZair defense identification zone)への大胆な侵入を繰り返しており、ペロシが搭乗するアメリカ軍機の着陸を阻止しようとするかもしれない、あるいは台湾に独自のADIZを宣言するかもしれないという憶測が広まっている。ある中国研究者は、北京は「前例のない対抗措置、それは台湾海峡危機以来、最も強力な措置」で対応するだろうと警告している。

確かに、中国の台湾に関するレトリックは、実現性の極めて低い大仰な脅しばかりだ。しかし、米中関係がより険悪になった今、互いにエスカレートする危険性は否定できない。しかし、ペロシの台湾訪問の見通しが立った中で、アメリカの対中・対台湾政策への戸惑いは増すばかりだ。バイデンはここ数ヶ月の間に3度、台湾が攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛すると宣言し、ホワイトハウスの側近がその発言を撤回したこともある。多くの問題で緊密に協力しているバイデンとペロシが、なぜこのように考えが一致していないように見えるのか、想像するのは難しい。また、国防総省がペロシに訪問の潜在的リスクについて、事前に慎重な計画プロセスの一環としてではなく、フィナンシャル・タイムズによるリーク後にしか説明しなかったのはなぜだろうか?

更に言えば、このタイミングは挑発的に見える。また、戦略的な計画というよりも、8月の連邦議会休会と連動しているようにも考えられる。北京にはアメリカの政治家にどのように振舞うかを指示する権利はない。習近平は前任者2名の前例にとらわれず、3期目の政権を獲得し、党国家に対する支配力を強化することになる。このような政治的に敏感な時期にペロシの台湾訪問を阻止できなかったことで、習近平の面目がつぶれる可能性があるため、中国が強い反応を示す可能性は高いが、この問題に関して中国がますます攻撃的 なレトリックを使用しているので、この訪問に対して これ以上融和的になるとは考え難い。

ここで不快な質問が浮かんでくる。ペロシは一体何を目指しているのだろうか? 台湾への支持を示したいという意図は明らかだ。しなしながら、中国の脅威に対処するために、アジア地域のアメリカの同盟諸国をより緊密に連携させる、ロシアのウクライナ侵攻を教訓に台湾の防衛力を向上させる、などのより幅広いアメリカの戦略とは全く関係がないように見えるのだ。ホワイトハウスからのメッセージの乱れが示すように、ここでのコミュニケーションや調整はほとんど行われていないと考えられる。

むしろ、8月に予定されている台湾訪問は、実質よりも象徴的なものであり、ペロシが過去に行ったように、北京を苛立たせるための写真撮影に過ぎないように見える。しかし、1991年の天安門訪問では、数人の記者が暴行を受け、拘束された。今、事態がエスカレートすれば、台湾の人々、そして、彼女の訪問のために動いているアメリカ軍将兵がその結果に直面することになる。

マイク・チョニー:台湾を拠点に活動。南カリフォルニア大学米中研究所非常勤上級研究員。『中国への取り組み:中華人民共和国で活動するアメリカ人ジャーナリストたちのオーラルヒストリー(Assignment China: An Oral History of American Journalists in the People’s Republic)』が間もなく発刊。

(貼り付け終わり)

(終わり)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 先週末にドイツのミュンヘンで開催された安全保障会議に、アメリカからカマラ・ハリス副大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ナンシー・ペロシ連邦下院議長が出席した。バイデン大統領を別にすれば、アメリカ政府の行政府と立法府の最高幹部たちが集結したということになる。安全保障会議とは別で、様々な首脳外交が展開された。

 カマラ・ハリス副大統領はウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領やバルト三国(ラトヴィア、エストニア、リトアニア)の各首脳と会談を行った。それぞれが旧ソヴィエト連邦加盟国(併合国)で、ロシアに対して概して否定的な感情を持っている。

 会談でハリス米副大統領はアメリカがヨーロッパの同盟諸国と協力してウクライナを支援することを改めて強調し、また、ロシアが侵攻した場合には、これまでにない規模の経済制裁を科すと述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカと同盟諸国の支援に感謝を表明し、ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」と発言した。

 ハリス副大統領は軍事的な方法ではなく、経済面での厳しい制裁をロシアに科すと述べた。これはアメリカとしては全面戦争にまで自体がエスカレートすることを望んでいないということを示している。ヨーロッパのNATO加盟諸国もウクライナに対して経済支援や医療支援、武器支援(ここまで踏み込めるところは少ないだろう)までは行うが、実際に自国の軍隊を出してウクライナを助けるかどうか(ロシアが全面的な攻勢に出て、ウクライナが軍事支援を求めたとしても)は不透明だ。ほぼ不可能だと言えるだろう。

 NATOはグルジアとウクライナの加盟申請を受け付けながら、正式に加盟させていない。もし正式に加盟させた後で、ロシアが侵攻となれば、NATOはその存立の大義から言って、ロシアと戦わねばならない。ウクライナを守ることの利益とコストを両天秤にかけて見れば、それならばウクライナを軍事的に助ける義務を負うNATO加盟を認めないということになる。これはEU加盟でも同じことが言える。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ヨーロッパ側に対して、ウクライナのEUNATO加盟を認めるのかどうか、その回答を迫っている。

 ウクライナはヨーロッパとロシアの間にあり、どちらか一方に偏ると、もう一方から非難や干渉を受けるということになる。親露派の政権になれば、西側諸国、特にアメリカが支援する反政府運動とカラー革命が起き、親欧・親米政権ができれば、ロシアが圧力をかけてくる。そうなれば、ウクライナ情勢が安定するためには、どちらの肩も持たない、どちらにもつかない、どちらとも仲良くする、それで経済的繁栄を目指すということが必要ではないかと私は考える。ヨーロッパもアメリカも今ところ軍隊を出してまで助ける気はないのだ。

(貼り付けはじめ)

ゼレンスキーがハリスと会談:ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」(Zelensky meets with Harris: Ukraine army 'defending all of Europe'

サラクシ・ライ筆

2022年2月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/595034-zelensky-meets-with-harris-ukraine-army-defending-all-of-europe?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

カマラ・ハリス副大統領は土曜日、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議の機会を利用して、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と会談し、ロシアとの緊張が高まる中、「ウクライナをアメリカは支援する」とハリスは改めて表明した。

ハリスとゼレンスキーはそれぞれに補佐官や側近を伴い、ウクライナ情勢を話し合う非公開の会談の前に、報道陣の前で短い会話を行った。

ハリス副大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に対して、「あなたの懸念の内容」を直接お聞きしたいと述べ、改めてウクライナへのアメリカの支援を表明した。

ホワイトハウスは土曜日、両者はロシアのウクライナ国境沿いの軍事力の大規模な増強についての最新の進展と評価について話し合った。

ホワイトハウスの崎報道官は更に声明で次のように述べた。「副大統領は、ウクライナの主権(sovereignty)と領土(territory)の完全性(integrity)に対するアメリカの関与を強調した。また、ロシアがウクライナに更に侵攻した場合の大西洋の両岸(アメリカとヨーロッパ)での統一的なアプローチについて話し合い、副大統領は同盟諸国やパートナー国とともに準備しつつある、迅速かつ厳しい経済措置について説明した」。

ホワイトハウスは、ハリス副大統領とゼレンスキー大統領は「外交と事態の非深刻化」の重要性で一致したと述べた。

ゼレンスキーは通訳を通じて、ハリスに対して「私たちが望む唯一のものは平和だ」と述べた。

キエフに拠点を置くインタファクス・ウクライナ通信社の報道によると、ゼレンスキー大統領は、「ここは私たちの土地であり、何が起きているのか理解している。私たちが望む唯一のことは、私たちの国に平和を取り戻すことだ。このような状況において、私たちは同盟国でありパートナーである米国に心から感謝し、バイデン大統領にも感謝している」と述べた。

ゼレンスキー大統領はさらに、アメリカ国内におけるウクライナに対する超党派の支援に対して、「私たちはアメリカ合衆国、副大統領、そしてバイデン大統領に心から感謝している」と述べた。

しかし、ゼレンスキー大統領は、「個別具体的なステップ」を必要としているとも述べ、アメリカに対して追加支援を求める可能性を示唆した。また、ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」とも述べた。

会談には、ウクライナのドミトロ・クレバ外務大臣、オレクシイ・レズニコフ国防大臣をはじめ、アメリカとクライナ両国の政府関係者が多く出席した。

今回の会談は、ハリス副大統領がアメリカを出発する前に予定されていたもので、副大統領が土曜日の朝にミュンヘン安全保障会議で演説し、アメリカとその同盟諸国の間の完全な結束を伝えた後に会談が行われた。ハリス副大統領は、ロシアがウクライナへの侵攻を選択した場合、米国とその同盟諸国はロシアに厳しいコストを科すことになるだろうと述べた。

ハリス副大統領は、NATOに対するアメリカの支持は「他国から批判や干渉を受けるようなものではない(sacrosanct)」であるとし、ロシアが侵攻した場合、ロシアは「前例のない」経済的罰則に直面することになると公言した。

土曜日、ハリス副大統領は更に、アメリカとヨーロッパの同盟諸国は、外交による危機の解決に前向きである一方、ロシアが侵攻した場合には罰則を科す用意があると発言した。 

アメリカは、ロシアがウクライナ周辺に16万9000名からから19万名のロシア軍を集結させていると推定しており、バイデンは金曜日、プーティンが旧ソ連邦加盟国ウクライナへの侵攻を決めたと「確信(convinced)」していると述べた。

=====

ゼレンスキー:ウクライナはNATO加盟のための「明確な」時期の明示を望んでいる(Zelensky: Ukraine wants 'clear' time frame for NATO membership

サラクシ・ライ筆

2022年2月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/europe/595040-zelensky-ukraine-wants-clear-timeframe-for-nato-membership?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は土曜日、ミュンヘン安全保障会議に出席し、NATOとヨーロッパ連合(European UnionEU)に対し、ウクライナの同盟加盟の見通しについて、明確なそして「率直な」回答を出すように要求した。

土曜日午後に行った演説の中で、ウクライナ大統領ゼレンスキーは、EUがどうしてウクライナの加入に関する質問を避けるのか、その理由について疑問を呈した。ゼレンスキーは「ウクライナは直接的で率直な回答を得る価値がないのだろうか?」と発言した。

キエフに拠点を置くインタファクス・ウクライナ通信社は、ゼレンスキー大統領はが「これはNATOにも当てはまることだ。ドアは開いていると言われている。しかし、今のところ、部外者は入れない」と、ミュンヘン安全保障会議で世界各国の指導者たちに向けて演説したと報じた。

NATOの加盟国の一部もしくは全加盟国がウクライナの加入を望まないのならば、「それらの国々は我が国に対して率直に答えるべきだ」とゼレンスキーは述べた。

ロシアはNATOに対してこれ以上東側に加盟国を増やすことはないと保証するように求めている。ロシアは、「NATOがロシア国境に近づくことは、ロシアの安全保障を脅かす」と主張している。ロシアは更にNATOに対して、ウクライナが加入することを認めないように求めている。

ゼレンスキーは続けて「ドアが開かれているというのは良い。しかし、私たちに必要なのは開かれた回答だ。何年も回答されていない質問ではない。真実を知る権利は、私たちの機会拡大に含まれているのではないのか?」と述べた。

ゼレンスキーは土曜日次のように述べた。「8年前、ウクライナ国民は自ら選択し、多くの人がそのために命を捧げた。あれから8年、ウクライナは常にヨーロッパへの仲間入りを認めるよう求めることが本当に可能だろうか? 2014年以降、ロシア連邦は、ウクライナが間違った道を選んだのだ、ヨーロッパでは誰もウクライナなど待っていない、と確信している」。

ゼレンスキーは、当時のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ大統領の政権を崩壊させた2014年のユーロマイダン(Euromaidan、訳者註:キエフにある独立広場)での抗議デモに言及したが、その背景には、ヤヌコヴィッチ政権がロシアに近いと認識されていたこともある。ヤヌコヴィッチ政権は、EU・ウクライナ連合協定の調印も中断させた。

ロシアが支援するドンバス地域の分離主義勢力は、その直後にキエフの新政府に反抗し、ウクライナの継続的な紛争の火種となった。

このニュースは、西側諸国がロシアによる同国への侵攻を恐れている中で発表された。ロシア軍は旧ソ連邦加盟国ウクライナとの国境に数十万人の兵力を徐々に増強している。

ロシアはこれまでウクライナへの侵攻計画を否定してきたが、土曜日、プーティン大統領は、専門家が言うところの軍事力の誇示である核兵器演習を実施した。

また、ウクライナ東部では分離主義勢力支配地域の指導部が健康な男性たちに戦闘を呼びかけるなど、情勢が不安定になっていることも現在のウクライナ情勢の背景にある。 

ゼレンスキーは演説の中で、バイデン大統領をはじめ、アメリカがロシアのウクライナ侵攻が差し迫っていることを警告し続けていることを引用した。ゼレンスキーは「ウクライナを本当に助けるためには、西側諸国は常に侵略の可能性がある日付についてだけ話す必要はない」と述べた。

「私たちは、2月16日、3月1日、そして12月31日であっても私たちの土地を守る。それ以外の日程の方がずっと必要だ。そして、どの日にちに実際に侵略が起きるのか、誰もが完全に理解している」と強調した。

ゼレンスキーは、ミュンヘン安全保障会議と同時に予定されていたハリス副大統領との会談を終えた直後、演説を行った。

ハリスとゼレンスキーは補佐官や側近を伴って向かい合わせに座り、報道陣の前で短い対話を行った。ゼレンスキーは通訳を介してハリスに、「我々が望む唯一のことは平和を手に入れることだ」と語った。

先月(2022年1月)、ロシアのセルゲイ・ラヴコフ外務大臣は、NATOがウクライナを軍事同盟に「引き入れ」酔うと画策していると非難し、NATOの組織が持つ目的について疑義を呈した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 私がウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「重たい掲示板」に投稿した、「[2823]トランプを「反逆者」に仕立て上げて、押し込め、解職を行う。ワシントン・インサイダーズによるクーデターである 投稿者:古村治彦(学問道場)投稿日:2021-01-07 15:38:28」に加筆したものを掲載する。

=====

2021年1月6日(現地時間)、アメリカ連邦議会(Congress)の上院(Senate)と下院(House of Representatives)が共同会議(joint session)を開き、2020年11月3日に実施された、大統領選挙の結果を承認することになっていた。共和党所属の議員たちの中には、選挙結果、特に激戦州の選挙結果に異議を唱える人々がおり、そのために、通常であれば、1時間もかからないで終わる儀式が長引くと見られていた。

 共和党内部では、上下両院の共和党のトップである院内総務(Leader)とナンバー2である院内幹事長(Whip)は共に、「選挙結果に反対する動きを支持しないように(選挙結果を受け入れるように)」と呼びかけていた。トランプ支持の議員たちは、「反対の動きを支持しないなら、次の選挙の予備選挙(共和党の候補者を選ぶ選挙)で対抗馬を出して、お前たちを落としてやる」と対抗していた。大統領選挙の結果をめぐり、共和党内部は分裂をしていた。

※共和党内部の分裂についてはこのブログで紹介した↓

<a href="http://suinikki.blog.jp/archives/83787986.html">http://suinikki.blog.jp/archives/83787986.html</a>

 いよいよ共同会議が開かれるという時に、「連邦議事堂(Capitol Hill)にトランプ支持の暴徒(mobs)が侵入して、会議が開けなくなった」という報道がなされた。連邦議事堂に周囲に、トランプ大統領支持の議員たちを激励するために集まっていた人々が、窓ガラスを壊して侵入するという出来事が起きた。
trumpsupportersstromcapitolbuilding001

 今回の議事堂占拠という出来事で、思い起こされるのは、日本の60年安保の際の、デモ隊による国会議事堂への突入である。これは、暴れ者の学生たちが興奮して、建物に向かって突撃したなどという単純な話ではない。

 この国会突入は仕組まれたものだ。このことは副島隆彦著『日本の秘密』でも詳しく検証されている。デモ隊の中に、権力側と通じていた人間、スパイが潜り込んでおり、煽動して、最前線にいるデモ隊がいつの間にか国会に突入、飛び込むことになってしまった。この国会突入と東大生・樺美智子の死によって、盛り上がった60年安保運動はぺしゃんこになって、落ち着いてしまった。

 今回のトランプ支持者たちによる議事堂占拠も仕組まれたものであると私は見ている。こう考える理由はいくつかある。まず、トランプ支持の集会が開かれ、多くの支持者が集まることはあらかじめ分かっていた。前日のワシントンからの中継を見たが、議事堂につながる道路には大きなトラックが何台も並べられ、バリケードのようになっていた。警察側はトランプ支持者たちが近づけないようにしていた。

 警察は準備をしていたはずなのに、丸腰の人々に議事堂に入られてしまった。この点も不可解である。議事堂前に集まった人々は殺傷能力の高い武器を所持しているようには見えなかった。警察は暴動鎮圧用の装備を整えているはずだ。それなのに、簡単に侵入を許した。こんなことでもし再びテロ攻撃があったら大丈夫なのか、と皮肉の一つも言いたくなる。あんな丸腰の人間たちを「テロリスト」呼ばわりは何とも情けなくなる。

 更には、議事堂占拠などと聞くと、数時間も続いている、占拠した側が立てこもって、武器を使って激しく抵抗しているとも思われがちだが、議事堂に入った人々の退去は既に済んで、議場での会議が再開されている。大きな破壊もなく、長時間の選挙や立て籠もりもなかったということだ。もちろん銃撃戦とか派手な殴り合いも起きていない。

 これは、わざと人々を議事堂の中に入れて、引き入れておいて、一網打尽に捕まえたということだ。後から簡単に逮捕できるくらいの人々の侵入をなぜ許したのか、と考えなければならない。

耄碌し果てたジョー・バイデンとアホのジョージ・W・ブッシュ元大統領は、今回の議事堂選挙について、「反乱(insurrection)」という言葉を使った。この言葉遣いが重要だ。普通の家宅侵入は「trespassing」という言葉を使う。それを大げさすぎるほどの言葉である「反乱」を使った。
usatodayinsurrection001

今回のたいしたことのない出来事を、「アメリカ史上最悪の反乱、国家への反逆行為」「デモクラシーを破壊する行為」とすることで、とランプ大統領とトランプ支持者を「国家の敵」に認定し、葬り去るシナリオができていた、仕組まれていたということだ。

この点では、ワシントンのインサイダーたちやエスタブリッシュメントは、党派や立場の違いは関係なく、「トランプと民衆をワシントンから追い出す、政治に関わらせない、自分たちの既得権益や秘密を守る」ということで一致していた。トランプは最後まで、「ドレイン・ザ・スワンプ(Drain the swamp)」を実行した、ワシントンの部外者、アウトサイダーだった。民衆・大衆の支持を唯一の武器として戦ったポピュリスト(Populist)だ。

 アメリカ連邦議会では早速、トランプ大統領に対する「弾劾(impeachment)」をやれという声が出ている。弾劾は、まず、連邦下院が弾劾訴追をするかどうかを決める。これは連邦下院の過半数の賛成があればできる。そして、連邦上院は弾劾裁判所となって、審議をし、3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立し、大統領は失職となる。アメリカ大統領の任期は4年ごとの1月20日までだ。残り2週間で弾劾作業をやろうというのは無理がある。

しかし、民主党進歩主義派でアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員の仲間である、イルハン・オマル下院議員が「既に弾劾決議案条文の準備をしている、起草している」とツイートしている。あまりにも手回しが良すぎる。アメリカ合衆国憲法の弾劾に関する条項には、「国家反逆(treason)」という言葉が入っている。大統領が国家反逆行為をしたら弾劾の対象になる、ということだ。今回の議事堂占拠が仕組まれていた、トランプ断崖まで進めようとして計画されていたことを示す証拠だ。
ilhanomarimpeachmenttweet001

今回の議事堂占拠を行った人々を「反乱(insurrection)罪」で検察官が訴追する、そして、この反乱を主導したとランプ大統領を「国家反逆(treason)」で弾劾訴追する、という形で、「トランプとトランプを支持する人々は、アメリカを攻撃した反逆者」というレッテルを貼って葬り去ろうというワシントンのインサイダー、エスタブリッシュメントたちの動きだ。デモクラシーの総本山と世界に対して威張りながら、最後はデモクラシーを守るということで、抑圧をする、そのような設計になっている。

 ワシントンの住人である共和党の政治家たちも、トランプが「国家反逆者認定」されるならば、トランプ追い落としに進んで加担することができる。「トランプ大統領が国家反逆者になってしまった以上、これ以上は擁護できない」と言いながら、進んで弾劾に賛成する者たちが続出するだろう。

更に恐ろしいのは、「アメリカ合衆国憲法修正25条第4項を適用して、即座にトランプ大統領を解職しろ」という主張も出ている。この条項は、「第4 副大統領および行政各部の長官の過半数または連邦議会が法律で定める他の機関の長の過半数が、上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代理として、大統領職の権限と義務を遂行するものとする」となっている。

簡単に言えば、副大統領と閣僚の過半数が連邦議会に対して、「大統領は職務不能状態です」という文書を送れば、副大統領は大統領代理になる、ということだ。今回のことで言えば、とランプ大統領の権限が取り上げられ、ペンス副大統領が大統領代理になるということだ。

トランプは「国家に対する反乱行為を促した国家反逆者なのだから、職務不能者として権限を取り上げろ」ということだ。

 トランプ大統領は「議事堂の中に突入しなさい」という明確な命令も奨励も出していない。その疑いがあるならば、きちんと裁判を提起して証拠を集めて、裁判所が判断を下すということがそもそも手続きだ。それを乱暴に、憲法の条文を自分たちに都合の良いように解釈して、適用して、「トランプを押し込めて、職務不能ですと副大統領と閣僚たちが声をそろえて宣言して解職に追い込む」ということこそが、クーデターである。アメリカが州国憲法の条文を悪用したクーデターであり、国家反逆行為そのものだ。

 ナンシー・ペロシ連邦下院議長の動きは錯乱し、舞い上がっている。トランプを「国家の敵」に認定し、即時罷免を求めている。更には、「トランプに核攻撃をさせない」という訳の分からない理由で、核兵器が使えないようにしようとしている。トランプが錯乱し、狂っているというのならば、言葉は悪いが、それは就任直後からだ。彼は自分の考えや姿勢を変えていない。そんな人物をほぼ4年間野放しにしておいて、最後の最後で、一気に「最終処分」しようとしているのは、滑稽というよりも、恐ろしいものを感じる。

大統領の権限を取り上げようというのはまさにクーデターだ。それを、マイク・ミリー統合参謀本部議長も協力しようとしているのは、米軍もこのクーデターに参加しているということになる。

(貼り付けはじめ)

トランプ氏の核攻撃阻止を軍トップと協議 ペロシ氏が表明

202119 5:27 発信地:ワシントンD.C./米国 [ 米国 北米 ]

トランプ氏の核攻撃阻止を軍トップと協議 ペロシ氏が表明‹

https://www.afpbb.com/articles/-/3325340

19 AFP】米民主党のナンシー・ペロシ(Nancy Pelosi)下院議長は8日、「錯乱」した状態にあるドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が残りわずかとなった任期中に核ミサイルを発射する事態を避けるため、米国防総省のマーク・ミリー(Mark Milley)統合参謀本部議長と協議を行ったと明らかにした。

 合衆国憲法で定められている大統領権限の制限について米軍制服組トップと協議を行ったと公に認めるのは異例。トランプ氏の任期終了までの期間をめぐり米政界で緊張が高まっていることを示している。

 ペロシ氏は民主党議員への書簡で、「この錯乱した大統領の状況は危険極まりなく、わが国と民主主義に対する彼の情緒不安定な攻撃から米国民を守るため、われわれはあらゆる手段を講じなければならない」と説明。

 さらに、トランプ氏が辞任せず、マイク・ペンス(Mike Pence)副大統領と閣僚が合衆国憲法修正25条で定められた大統領罷免の手続きを開始しないならば、弾劾手続きを開始する準備があるとも言明した。

 米首都ワシントンでは6日、ジョー・バイデン氏の次期大統領への当選確定を阻止しようとしたトランプ氏の支持者らが連邦議会議事堂に乱入する事件が発生。警察官1人を含む5人が死亡した。民主・共和両党の議員はこの事件を反乱だと非難。トランプ氏が暴力を扇動したとの批判も高まっている。(c)AFP

(貼り付け終わり)

 

 議事堂選挙という事件を利用して、連邦議員たちやワシントンのインサイダーたちが、一気に「悪者たち」「国家の敵」との戦いを行おうとして、恐ろしいまでに急速にかつ、これまででは考えられない範囲での攻撃をトランプ側に加えている。この人々は、「デモクラシーが攻撃された」「私たちの(逸脱した)行為に反対する者は、悪者たち、国家の敵と同じだ」という論理で、反対の声を封じて、逸脱行為を行っている。これは「ショック・ドクトリン」と呼ばれる手法そのものだ。

 デモクラシーは迂遠とも思われる手続き論を大事にするのではないか、更には疑わしきは罰せずということもあるのではないか。トランプ側を攻撃する、ワシントンのインサイダーやエスタブリッシュメントたちは、自分たちにかかっている制限や縛りを取っ払うために出来事を利用して、クーデター、国家反逆を行っている。

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2020年の一般教書演説(State of the Union Address)はないような大したものは何もなかったが演説外では大変見どころの多いものとなった。ドナルド・トランプ大統領は翌日に連邦上院で弾劾についての評決が行われ、無罪評決となる可能性が高い中で、一般教書演説を行った。演説の中で弾劾について触れるか注目されたが、触れなかった。
2020stateoftheunionaddressdonaldtrump

 トランプ大統領は、昨年弾劾の調査を開始した連邦下院議会の議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)に対しては徹頭徹尾無視する態度に出た。大統領は演壇に進み、後ろの議長席に座るマイク・ペンス副大統領とペロシ下院議長に演説原稿を渡した。ペロシ議長はその際に手を差し伸べて握手しようとしたが、トランプ大統領は完全に無視した。ペロシ議長は笑顔ではあったが目を丸くし、驚愕の態度であった。

 その後も演説でトランプ大統領が自身の業績を誇り、議場で共和党側から大きな拍手を受ける時も首を振り、不同意の態度を示した。

 そして、演説が終わり、トランプ大統領がペロシ議長を無視して演壇から降りる際、笑顔で演説原稿を真っ二つに引き裂いた。演説中も民主党側からの抗議の声が出されることもあった。

 「State of the Union」の「Union」はアメリカという各州が集まって作っている国、まとまりの意味で、その状況を行政府の長である大統領が立法府である議会に説明する、ということだ。三権分立で等しく権力を持つ司法部からは連邦最高裁判所判事たちが出席する。この「Union」という言葉が虚しく響く一般教書演説となった。トランプ大統領は自身の選挙戦のためのサプライズをいくつも用意し、全米中継の中で得放映された。テレビ番組で何回も紹介されることになる。これで大統領を強固に支持する有権者を固めることができた。民主党予備選挙で集計に不手際があったこともあり、これもうまく利用できる形となった。

しかし、まとまりや団結を強調すればするほど、虚しく響くだけのこととなってしまった。連邦上院で弾劾に関する無罪評決が出た後の演説でもトランプ節が炸裂するだろう。これでアメリカの分裂を益々印象付けることになる。

 

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領による緊張を高めた一般教書演説の5つの特徴(Five takeaways from Trump's tense State of the Union address

ブレット・サミュエルズ、モーガン・チャルファント筆

2020年2月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/481555-five-takeaways-from-trumps-tense-state-of-the-union-address?__twitter_impression=true

党派間の激しい争いの中で一般教書演説が行われた。また、共和党が過半数を占める連邦上院における弾劾裁判でトランプ大統領に無罪評決を行われるであろうという時刻の24時間以内に演説が行われたことになる。

一般教書演説は、弾劾訴追に関する共和党が過半数を占める連邦上院で無罪判決が出る可能性が高い日の前日に行われた。

ここで5つの特徴を書いていく。

(1)トランプ・ペロシの緊張関係再び激化(Trump-Pelosi tensions boil over again

今回の一般教書演説は、昨年の10月に不調に終わったホワイトハウスでの会談以来、初めてトランプ大統領とペロシ連邦下院議長が同じ部屋にいる機会となった。10月の会談の後、ペロシ議長がそそくさと外に出て、トランプ大統領はペロシ議長を「三流」の政治家だとこき下ろした。

火曜日の夜、物事は改善しなかった。

トランプ大統領が登壇し、演説原稿をペロシ議長に渡した際、議長は大統領に手を差し伸べ握手をしようとした。しかし、大統領はペロシ議長の行為を無視したように見えた。演説が続く中、ペロシ議長は大統領に目を向けることはなかった。また、大統領が演説の中で健康保険制度と社会保障について話した際には、「ノー」を示すように頭を振った。

トランプ大統領が演説を終えた後、ペロシ議長は演説原稿を真っ二つに引き裂き、注目を集める瞬間を作った。

ペロシ議長は演説の後、記者団に対して、「選択肢を検討した上で行った礼儀にかなった行動です」と述べた。

トランプ大統領がペロシ議長の握手を無視したこと、ペロシ議長が演説原稿を破ったことという2つの場面は、水曜日にトランプへの無罪評決が連邦上院で行われようとしている中でケーブルテレビのニュースで繰り返されることになるだろう。

これら2つの場面は2020年が酷い年になるであろうという雰囲気を作り出すものだった。

(2)連邦議場は党派対立に包まれた―トランプ時代になっても(The chamber was polarized — even for the Trump era

連邦議場において演説の中で共和党側によるスタンディング・オヴェイションが何度も起きた。しかし、民主党側はトランプ大統領の演説時間のほとんどで嫌悪を示した。

そのような行動は一般教書演説ではそこまで珍しいことではない。しかし、この火曜日の一般教書演説では、民主党側はトランプ大統領に対しての否定的な感情を強く示したのは今回の演説が特異であった。

トランプ大統領は演説の中で低い失業率とアフリカ系アメリカ人の間での歴史的に見て低い失業率を自画自賛した。この時でも民主党側は椅子に座ったままだった。

大統領が数百万のアメリカ国民がフードスタンプを必要としなくなったと述べた時には民主党側からはブーイングが出た。大統領が処方薬の薬価を引き下げる法律の必要性を訴えた時、民主党側からは処方薬の薬価に関してペロシ議長が署名した法案である「HR3」を叫ぶ声が上がった。

トランプ大統領は、「急進左派」と「社会主義的」医療制度政策を批判し、不法移民を守る聖域都市(sanctuary cities)の拡大を非難することで厳しい雰囲気を議場にもたらした。

火曜日の夜を特徴づけることになった党派対立から、議場のギャラリー、招待者席も免れることはできなかった。2018年に学校内の銃撃事件で娘を亡くしたフレッド・ガッテンバーグはペロシ議長からの招待を受けてギャラリーにいた。ガッテンバーグは、トランプ大統領が銃保有の権利を守ると公言した際に抗議のために叫び声を上げたために議場から連れ出された。

(3)本領を発揮したトランプ大統領(Trump in his element

トランプ大統領は連邦議会に対する90分間の演説の間でメッセージを発信した。トランプ大統領は自身の政権下での経済、安全保障、移民政策を強調し、自分自身をアメリカの労働者と家族の擁護者だと定義した。

トランプ大統領は様々な方法で選挙戦での集会での発言内容を演説の中で繰り返した。民主党側からの批判はそこまで大きなものではなかった。トランプ大統領はまともだった演説の最初の部分で経済成長と低失業率、特にアフリカ系アメリカ人共同体の低失業率を強調した。

トランプ大統領は演説の最初で次のように述べた。「アメリカの敵は逃亡している。アメリカの幸運は上り調子であり、アメリカの将来は光り輝いている。経済後退の年月は終わった。私が決めていることは、労働者優先、家族優先、成長優先、何よりもアメリカ優先だ」。

トランプの発言は議場で共和党側の座る部分から賞賛され、演説中に弾劾について触れることは避けるようにと主張した共和党側はトランプ大統領の演説に満足した。トランプ大統領の一般教書演説は、2020年という選挙の年に入るにあたり共和党に勢いをつけるものとなった。

(4)トランプの「リアリティショー」だった一般教書演説(Trump’s reality show State of the Union

トランプ大統領はかつてリアリティーテレビ番組の司会者だったことがある。火曜日夜の演説の中で、大統領は彼らしさと司会者らしさを十分に示した。トランプ大統領はテレビが取り上げやすい場面をいくつも作った。

トランプ大統領は保守派のラジオ番組司会者ラッシュ・リンボウの業績を讃えた。リンボウは進行した肺癌と診断され、ホワイトハウスの招待客リストに遅れて加えられた。トランプ大統領は演説の中で、リンボウに大統領自由勲章を授与すると発表し、メラニア・トランプ大統領夫人が勲章をリンボウの首にかけた。

トランプ大統領は演説の中でタウンゼント・ウィリアムズ軍曹の家族に触れた。ウィリアム軍曹はアフガニスタンに派遣されて11か月が経過していた。トランプ大統領はウィリアムズ軍曹の妻と子供たちにサプライズをプレゼントした。大統領は軍曹が帰国し、家族に会うために議場に来ていると発表した。家族は再会を果たし、議場は「USA!」コールに包まれた。

学校選択法制について進めると強調する中で、トランプ大統領はフィラデルフィアに住む小学4年生ジャニア・デイヴィスに「オポチュニティ・スカラシップ」を与えると発表した。これによってジャニアは自分が選ぶ公立学校か私立学校に通えるようになる。

派手な身振りはトランプ大統領特有のもので、マスコミがトップで報じるようなものを作り出すものであった。しかし、同時に刺刺しい雰囲気を和らげるものでもあった。

(5)トランプ大統領は弾劾については別の日に取っておくことにした(Trump leaves impeachment for another day

トランプ大統領の長かった演説では事前にもそしてアドリブ的にも最大の関心事について触れられることはなかった。関心事とは弾劾と共和党が過半数を握る連邦上院で無罪評決が出る見通しについてであった。

ペロシ下院議長が弾劾に関する調査を行うと発表してからの4カ月、トランプ大統領はこれまで選挙集会や公式行事の場において、頻繁に連邦下院民主党が弾劾の調査を行ったことについて非難してきた。そのトランプ大統領が演説の中で弾劾について触れなかったのは驚きであった。

共和党内部には、トランプ大統領が連邦上院で無罪評決を受ける前に、事前の勝利宣言として一般教書演説を使うのではないかと懸念を持つ人々もいた。

共和党所属の連邦議員たちの多くは一般教書演説が近づく数日間は弾劾に集中すべきではないと主張していた。また、大統領に対して演説においては自身の業績を強調するように求めていた。

トランプ大統領は水曜日の午後に連邦上院で弾劾に関する判決の投票がなされた後で演説を行うと見られている。どのような判決になりどのような演説になるかはは明確ではない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 私が以前ご紹介しましたように、民主党内部は今、分裂状態にあります。内部闘争と言ってよいでしょう。それが激化しています。その理由は来年の選挙です。来年はアメリカ大統領選挙が実施され、そちらに注目が集まっていますが、同時に連邦上院議員の一部、州知事の一部、そして連邦下院議員全員の選挙が実施されます。

 

 連邦上院議員は6年に1度、州知事は4年に1度、選挙が実施されます。連邦下院議員は2年に1度選挙が実施されます。現在連邦下院議員を務めている人々は2018年11月3日の選挙(中間選挙)で当選し、2019年1月から任期が始まった人々です。新人で当選した人々は連邦下院議員になって7カ月ほど経過しただけのことですが、もう次の選挙について心配をしなくてはならない、ということになります。これはヴェテランでもそうですが、連邦下院議員は選挙がすぐにやってくるので、資金的、精神的、肉体的にかなりの消耗を強いられます。まず自分の所属する党の予備選挙で勝ち、本選挙で勝たねばなりません。

 

 また2年に1度選挙があるということで、挑戦者がどんどん出てくるということになります。現職が共和党議員だった場合、共和党内から予備選挙で挑戦する人が出てきますし、本選挙では民主党の候補者と戦うことになります。長期間に連続で当選しているような人には挑戦者は出にくいですが、それでも、多選批判が選挙区内であるような場合には、盤石だと思われていた人もあっさり予備選挙で負けたり、本選挙で負けてしまったりということが起きます。

 

 連邦下院の議長(Speaker)や多数党(Majority)、少数党(Minority)の院内総務(Leader)や幹事(Whip)になる、連邦下院の党指導部を形成するような議員は長年当選を重ねて、選挙に強い議員たちということになります。そこまでいかない連邦下院議員は4期か5期(8年から10年)務めたら引退して別の仕事(議会関係のロビイストなど)に就く場合があります。また、連邦上院議員や州知事を目指すこともあります。


berniesandersalexandriaocasiocortez005

 このブログでもご紹介しているアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio=CortezAOC、1989年―、在任:2019年―)は、2016年のアメリカ大統領選挙で、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の選挙運動に参加し、それが機縁となって、2018年の中間選挙で、連邦下院議員ニューヨーク第14選挙区で選挙に挑戦することになりました。そして、2018年6月の民主党の予備選挙で、10期連続当選、次はいよいよ連邦下院議長だと言われていたジョセフ・クローリーを大差で破り、民主党の候補者となり、11月の本選挙でも大差をつけて当選、という大番狂わせを演じました。選挙資金は数百万円、クローリーはウォール街の金融機関などからの献金数億円でしたが、かえってこのことが選挙区の有権者の怒りを買ってしまったという結果になりました。

 

 AOCの選挙戦を支えたのは、ジャスティス・デモクラッツ(Justice Democrats)という組織です。この組織は2016年の米大統領選挙に出馬したサンダースの考えを拡大しようという目的で同年に設立された組織で、自分たちの考えに賛成している人々を選挙に立候補させて当選を目指すという活動を行っています。


justicedemocratsbanner001
 

2018年の中間選挙では、AOCの他、アリゾナ州第3選挙区のラウル・グリジャルヴァ(Raúl Grijalva、1948年―、在任:2013年―)、カリフォルニア州第17選挙区のロウ・カンナ(Ro Khanna、1976年―、在任:2019年)、マサチューセッツ州第7選挙区のアイアナ・プレスリー(Ayanna Pressley、1974年―、在任:2019年―)、ミシガン州第13選挙区のラシーダ・トレイブ(Rashida Tlaib、1976年―、在任:2019年―)、ミネソタ州第5選挙区のイルハン・オマル(Ilhan Omar、1982年―、在任:2019年―)、ワシントン州第7選挙区のプラミラ・ジャヤパル(Pramila Jayapal、1965年―、在任:2017年―)といった人々がジャスティス・デモクラッツの支援を受けて連邦下院議員に当選しました。


justicedemocratscongresslawmakers001

この連邦下院議員たちは「進歩派(Progressives)」と呼ばれていますが、日本風に言えば「バーニー・サンダース派」ということになります。この議員たちはジャスティス・デモクラッツの考え、もっと言えばバーニー・サンダースの考えである国民皆保険「メディケア・フォ・オール(Medicare for All)」や最低時給15ドル、学費ローンの帳消し、公立大学の無償化、グリーン・ニューディールの実現のために活動を行っています。

 

 このジャスティス・デモクラッツ、進歩主義派の議員たちと争っているのが民主党内部の主流派です。そして、現職の連邦下院議員たちです。この文章の前の方でも書きましたが、連邦下院議員は選挙ばかりで議席を守ることは大変なことです。お金集めも大変、いつも挑戦者の影におびえ、有権者の風向き一つで今までの努力が水の泡ということになります。それに対して、ジャスティス・デモクラッツは各選挙区で自分たちの考えに賛成する人たちを民主党の予備選挙に立候補させてきます。現職議員たちは、いつ自分が無名の新人AOCに敗れたジョセフ・クローリーみたいになるか、次の連邦下院議長と呼ばれるところまで10期連続当選という実績を積み重ねたクローリーがあっさり負けてしまった様子を見ていますから、ジャスティス・デモクラッツと進歩主義派に警戒感を持っています。

 

 現職議員たちは、民主党連邦議会活動・選挙運動委員会(Democratic Congressional Campaign CommitteeDCCC)という組織を結成しています。この組織は現職の議員たちの再選を進めるための組織で、ジャスティス・デモクラッツと争いになるのは当然のことです。

 

 こうした動きに対して、今年5月、バラク・オバマ前大統領がヨーロッパで行った講演会で、「銃殺隊(firing squads)を動き回らせるな」という言葉を使って、進歩主義派とジャスティス・デモクラッツをけん制しました。民主党の現職議員の落選運動のようなことをするなと批判しました。オバマ大統領は今でも民主党内で隠然たる力を持っており、今回の大統領選挙ではジョー・バイデン前副大統領を支援するものと見られています(まだ正式に発表していません)。これに対して、AOCをはじめとする進歩主義派とジャスティス・デモクラッツはバイデン攻撃、その裏にあるオバマ攻撃を激化させています。「オバマ時代が良かったなんて幻想だ」という論法で攻撃を仕掛けています。


barackobama107
 

 進歩主義派は連邦下院民主党執行部とも対立しています。国境の不法移民問題について、民主党が過半数を握る連邦下院は収容所の不法移民の子供たちの処遇を改善するための予算案を可決しましたが、共和党が過半数を握る連邦上ンではこの予算案が否決されました。上下両院は妥協し、国境警備に関する予算を増額することで合意しましたが、子供たちの処遇には予算は使われないということになりました。

 

この妥協に、AOC、アイアナ・プレスリー、ラシーダ・トレイブ、イルハン・オマルの新人女性議員たちが反対を表明しました。この4名は「分隊(Squads)」と呼ばれています。この4名が連邦下院のナンシー・ペロシ議長と対立しています。ペロシや民主党多数派からすると、進歩主義派の政策は過激すぎて実行不可能、もし実行すると行き詰って有権者の支持を失い、選挙に負けてしまうということになります。


democratssquad001

 この状況の中、トランプ大統領が4名の議員を名指しはしていないものの、「自分たちの出身国の政府は危機的状況にあるのだから、それらの国々に帰れ」という趣旨のツイートを投稿しました。AOCは母親がプエルトリコからの移民、トレイブはパレスティナ系、プレスリーはアフリカ系ですが、全員アメリカで生まれています。ということは、生まれながらにアメリカ市民ということになります。オマルはソマリア難民としてアメリカに入国し、後にアメリカ市民となっています。

 

 この「それぞれの国に帰れ」という言葉は極めて短絡的で、思考停止を伴う言葉です。それをアメリカ大統領が簡単に使う時代になったのか、という嘆息が出てしまいますが、これによって、民主党は一致団結して、トランプ大統領に対峙するということになりそうです。共和党の一部からも批判の声が出ていますが、はっきりと「人種差別的だ」という声もありますが、「そんなことを言うべきではなかった」というはっきりしない批判の声が多いです。

 

 共和党は自由貿易を標榜している政党ですが、トランプ大統領は関税の引き上げや相手国に管理貿易を求めるなど、自由貿易に反する政策を実施しています。加えて、共和党の金城湯池となっている地方の農業州は、米中貿易戦争の結果、中国への農産物輸出が減少していることに不満を持っています。トランプ大統領の米中貿易戦争に声援を送っていたのが民主党の連邦議員たちということを考えると、ここに大きな捻じれが起きているということになります。しかし、共和党側にはトランプ大統領を大っぴらに批判できないという忸怩たる思いがあります。

 

 ここにポピュリズム(一般有権者がワシントンの政治に怒りを表明して自分たちの代表を送り込む)を入れて考えると、民主共和両党で、ポピュリズムによる大きな捻じれが起きていると言うことが出来ます。人々の怒りがそれぞれ民主共和両党に及び、どちらの主流派にも相容れない過激な考えが党内で大きな勢力となりつつあるということになります。このポピュリズムに対する警戒感はアメリカでも日本でも根強く、特に反体制を気取ったエリートたちに多く見られる特徴があるように思います。

 

 トランプ大統領の4名の議員たちに対する言葉は、ポピュリズムに内包される差別主義、排外主義を示す言葉ですが、それをかけられたのがやはりポピュリズムを体現する議員たちであるということが興味深い点です。私から見れば、どちらも同根ということになります。

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ