古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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タグ:ニッキー・ヘイリー

 古村治彦です。

 2024年11月のアメリカ大統領選挙に向けて、ドナルド・トランプ前大統領が出馬表明し、ジョー・バイデン大統領も2期目に向けての出馬表明を行った。民主、共和党両党はそれぞれの大統領選挙候補者を決める予備選挙を行う。予備選挙は全米各州とワシントンDCで行われるが、それは来年(2024年)初めからスタートするが、選挙戦自体は既に開始されている。

民主党はバイデンが2期目を目指すが、これまで何度も大統領選挙に出馬し、エスタブリッシュメント派と闘ってきた進歩主義派のバーニー・サンダース連邦上院議員は出馬せず、進歩主義派で人気の高いアレクサンドリア・オカシオ・コルテス連邦下院議員も出馬しない。驚いたのは、ケネディ家のロバート・ケネディ・ジュニアが出馬表明を行ったことだ。ロバート・ケネディ・ジュニアの父は、ジョン・F・ケネディ大統領の弟で、こちらも暗殺されたロバート・ケネディ元司法長官だ。ケネディ家はアメリカ民主党の「王朝」であるが、最近は存在感が希薄になっているのを受けての出馬だろうが、バイデンを倒すことはできないだろう。民主党側はバイデンが順当に大統領選挙候補者になるだろう。
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共和党側も既に複数の人物が出馬表明を行っているが、トランプ以外では、ニッキー・ヘイリー元国連大使(トランプ政権)・元サウルカロライナ州知事が現時点では有力候補者と言えるだろう。共和党側では現職のフロリダ州知事ロン・デサンティスが有力候補者とみられているが、まだ出馬宣言をしていない。デサンティスは先月、日本を訪問し、その際に岸田文雄首相を首相観点に訪問している。これはデサンティス側からの依頼を首相官邸が受け入れてのことであった。アメリカの州知事程度が首相官邸に依頼をしたからと言って、首相に会えるということは、いくら属国と言っても通常であれば無理だ。日本の首相官邸は、デサンティスが共和党の大統領選挙候補になる可能性があると見ていて、念のため、万が一の可能性も考慮して、今回首相官邸訪問を許可したのだろう。
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 しかし、これまでの各種世論調査の結果では、トランプがデサンティスをはじめとする他の候補者たち(出馬宣言していない人物も含む)に大きくリードを保ち、首位を独走している。トランプに対しては刑事訴追が行われたが、その影響は全くないどころか、かえって支持を伸ばしている。

 その理由は「強さ」である。そして、トランプのライヴァルと目されるデサンティスがエスタブリッシュメント派の候補者であることが既に有権者に見破られているからだ。デサンティスの岸田首相との会談もデサンティスがエスタブリッシュメント派であることから実現したと言える。しかし、そのために、「デサンティスには強さはない。戦いを勝ち抜く力はない」と共和党支持の有権者は考えているようだ。

 2024年の大統領選挙もトランプ対バイデンの戦いという構図になりそうだ。バイデンと側近たちは「大統領の犯罪(具体的にはノルドストリーム爆破事件)」が白日の下に晒されることがないように、そして選挙に落ちて、そうした犯罪が明らかにされ、自分たちが逮捕されることないようにするため、あらゆる手段で選挙を勝ちに行く。不正な手段でもなんでもやるだろう。「毒を食らわば皿まで」だ。しかし、そのような選挙に、民主政治体制国家のモデル、お手本、世界最高の国の矜持はズタズタにされてしまう。アメリカ国民の中での断絶や不和が更に広がり、アノミー状態に陥って、国会時において大きなダメージとなるだろう。

(貼り付けはじめ)

共和党支持の有権者たちはどうしてそこまでトランプに忠実なのか(Why GOP voters are so loyal to Trump

-共和党の予備選挙の有権者たちでは、2024年の共和党大統領候補としてトランプ元大統領への支持を緩める気配はない。

キャロライン・ヴァキール筆

2023年4月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3978590-why-gop-voters-are-so-loyal-to-trump/

人々の注目を集めている法廷闘争に巻き込まれ、昨年の中間選挙で共和党が予想よりも振るわなかったことがありながら、トランプはほとどの世論調査において、共和党予備選挙に出馬を予想されている人物たちに対するリードを広げている。

大統領選挙の討論会や予備選はまだ数カ月先だが、世論調査担当者や一部の反トランプ共和党員たちは、トランプ前大統領が最近起訴されたことや、共和党内で彼のライヴァルと目される候補者たちに対する彼の率直なアプローチが、共和党の支持者の一部がまだ前大統領を支持している理由の1つだと指摘している。

反トランプの立場の団体であるリンカーン・プロジェクトの共同設立者リック・ウィルソンは次のように述べている。「ドナルド・トランプは、自分に対するあらゆる法律面からの批判、自分に対するあらゆる外部からの告発は無効であり、それらは『ディープ・ステート』が生み出したもの、あるいは共和党の有権者たちから自分を引き離すためのある種の陰謀の産物だと信じるように、共和党支持者たちの多くに訴え、それに成功している」。

ウィルソンは続けて次のように語った。「マーアラゴにFBIの捜査官たちが踏み込んだ後、トランプ支持の数字が上がったのはどうしてか? ニューヨークで起訴された後、なぜトランプ支持の数字が上がったのか? それは、そのベースが、つまり、人々は犯罪者を好まないという、事前に知られていた政治的行動の反対として受け取られているからだ。ドナルド・トランプを犯罪者だと非難すると、あらゆる証拠があっても、支持者たちの反応は、『いや、彼は犯罪者ではない。あなた方がやっていることこそが犯罪だ』と言うのだ」。

トランプは今年3月下旬、刑事告訴を受けることになった最初の大統領経験者となり、大きな話題となった。今回の起訴は、マンハッタン地区検事アルヴィン・ブラッグ(民主党)による、2016年の選挙運動中にポルノ女優に支払われた口止め料にトランプが関与した可能性を中心とする捜査を基にしている。

起訴されることは通常、大統領選挙候補にとって政治的に不利になると考えられるが、世論調査の結果では、トランプに害はなく、むしろ助けになっている可能性さえある。

NPRPBS 「ニューズアワー」、マリスト大学が今週発表した世論調査の結果では、共和党員の63%が、たとえトランプ氏が有罪になったとしても、再び大統領になることを望んでいると答えた。

共和党内の著名な人物や2024年大統領選挙の共和党の候補者になる可能性があると考えられている人物でさえ、トランプ氏を擁護しており、起訴によって最終的にトランプが倒れるという反対派の期待をしぼめさせている。マイク・ペンス元副大統領は起訴を「暴挙(outrage)」と表現し、ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は「茶番(travesty)」だと評した。ニッキー・ヘイリーは、この捜査が「正義ではなく復讐(more about revenge than it is about justice)」によるものであると示唆した。

しかし、一部の共和党関係者は、トランプが世論調査でリードを保っているのは、予備選挙のライヴァルと目されている、フロリダ州知事ロン・デサンティス氏(共和党)に対するトランプの強引なアプローチのおかげでもあると述べている。

ルイジアナ州を拠点とする世論調査専門家ジョン・クーヴィヨンは、通常、共和党と仕事をしているが、本誌の取材に対して、「トランプが反撃することこそが共和党の支持者たちを惹きつけているのだと分かった」と述べている。

2024年の選挙に立候補している人物はまだ少ないが、トランプは早い段階で候補者を確定させるための措置を講じている。トランプ前大統領の注目の多くは、まだ正式に参戦していないものの、一般にトランプの最大のライヴァルと目されているデサンティスに向けられている。

トランプ氏は、フロリダ州知事を「ロン・デサンティモニアス」などというニックネームで揶揄し、自身のトゥルース・ソーシャル・プラットフォームや広告を利用して、デサンティスを攻撃している。親トランプのスーパーPACは今月初め、デサンティスが指でプリンを食べる様子を描いた広告を展開した。これは、フロリダ州知事がかつて調理器具を使わずにプリンを食べたことがあると報じた『デイリー・ビースト』誌の記事から取ったものだ。

反トランプの共和党説明責任PACの政治ディレクターであるガナー・ラマーは、デサンティスに対するいくつかの攻撃について、「彼は共和党のエスタブリッシュメント側の候補というレッテルを貼られることになり、有権者たちが今現在、本当に関心のない他の共和党と差別化できない」と指摘した。

トランプは、クリス・クリスティ元ニュージャージー州知事やクリス・スヌヌ元ニューハンプシャー州知事など、他の共和党員へのジャブも辞さない姿勢を見せている。トランプは、木曜日にニューハンプシャー州で行われた熱狂的な聴衆を前にしたスピーチで、クリスティは「大きな口を開けている。それが彼の全てだ」と述べ、クリスティへジャブを浴びせた。

トランプはスヌヌについて、「彼は本当にインパクトを与えることができたはずだ。連邦上院議員に立候補することもできたはずだ。おそらく、その家柄のおかげで、簡単に当選できただろう。そして、それはとてつもないことだっただろう。その代わりに、彼は大統領選への出馬というバカげた遊びをしたいということでバカげた選択をする」と、トランプはサヌヌについて語った。

トランプのライヴァルたちは皆、程度の差こそあれ、トランプを攻撃しているが、そのほとんどはトランプほど攻撃的ではなかった。先月、フォックス・ニューズのピアーズ・モーガンとのインタビューで、デサンティスはトランプがつけた、自分を軽蔑するようなニックネームについて、「あなたは私を何と呼んでもいい、ただ、私を勝者と呼んでくれればいい。それがフロリダで私たちができたことだからだ。多くのポイントを積み重ね、この州を本当に次のレヴェルへと導いたのだ」と語った。

また、フロリダ州知事デサンティスは3月にブラッグの起訴を批判した際、「ある種の不倫疑惑について沈黙を守るためにポルノ女優に口止め料を支払うことにどのような効果があるのか分からない」とも発言している。これは、トランプがポルノ女優ストーミー・ダニエルズと関係を持ったという疑惑に関するものだ。

しかし、デサンティスはトランプに対して更に強く反撃するよう圧力を受けており、共和党内にはトランプ前大統領が知事を凌駕していると懸念する声もある。

世論調査専門家のクーヴィヨンは、トランプの猛攻撃が「彼に優位性を与えているのは、彼がこのようにタフな男であり、他の共和党候補は必要なものを持っていないと見せているからだ」と述べた。

共和党のメンバーたちは、最初の予備選挙までまだ十分な時間があると強調しているが、フロリダ州知事デサンティスにあまり感銘を受けていないように見える人もいる.

リンカーン・プロジェクトのウィルソンは、「結局のところ、候補者たちは一定のレヴェルでパフォーマンスを発揮しなければならないが、デサンティスは大舞台に立つ準備ができていない。彼はうまく話せない。彼はうまく話せず、人々とつながりを持てない。そして、ドナルド・トランプに対する私の批判は全て、ドナルド・トランプが見事なショーマンであるという事実から決して目を逸らすことがない中で行われている」と述べた。

デサンティス支持派のスーパーPAC「ネヴァー・バック・ダウンNever 」のコミュニケーション担当ディレクターであるエリン・ペリーヌは次のように述べている。「デサンティス知事は、2024年の大統領候補になるかどうか発表していないが、彼は紛れもなく戦士である。デサンティス知事は戦いに負けたことがないだけでなく、選挙にも負けたことがない。もしトランプが、ファウチ博士に盲従して全国的な封鎖を行い、ゲヴィン・ニューサムと仲良しで、フロリダ州を破壊し、彼の支持する2022年の候補者を敗北させたという彼の記録を守らなければならないなら、トランプが苦労するのは明らかだ」。

これらの動きは、世論調査によって、共和党の有権者のかなりの割合がトランプ氏の再選出馬を望まないという結果も出ているにもかかわらず、トランプがいかに2024年の大統領選挙予備選の候補者たちをうまく支配し続けているかを強調している。

トランプ陣営のスポークスマンであるスティーヴン・チャンは電子メールの中で次のように述べている。「トランプ大統領は、全国規模および各州の世論調査において、予備選挙と一般選挙の支持率において他を圧倒している。だからこそ、連邦議会議員、州議会議員、地域のリーダー、草の根活動家たちは、2024年に勝利できるのはトランプだけだと知っているからこそ、彼を支持しているのだ」。

チャンは続けて「トランプ前大統領が掲げる大胆で前向きな政策課題に迫る候補者は、今回の選挙では他にいない」と述べた。

トランプ陣営に参加した経験を持つブライアン・シーティックは「まだ多くの時間が残されている。私たちはディベートを複数回行うつもりだ」と述べた。

シーティックは次のように述べている。「確かに、デサンティス・ティームは、選挙戦というハード面でも、独立支出というソフト面でも、多大な資源を持っているはずだ。そのため、彼らは自分たちの主張をする機会を得ることになるだろう。しかし、デサンティスを取り巻く初期の話題性は薄れ、いよいよ本格的な選挙戦に突入することになる」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカ連邦議会は新しいセッション(第118期)が始まった。始まって早々、連邦下院では新議長選出を巡って大騒ぎとなったことは日本でも報道され、記憶に新しいところだ。前回のセッションまで連邦議会共和党の少数党(共和党)院内総務を務めてきたケヴィン・マッカーシーが新しい下院議長に選出されることは通常であれば当然のことであった。 

しかし、共和党内から造反議員が出て、何度も何度も否決され、15回目の投票でようやく過半数の得票となり、新議長に選出された。その過程で議場ではつかみ合いの喧嘩騒ぎも起きた。民主党側からは造反してマッカーシーの議長就任に賛成票を投じた議員は出なかったので、今回の騒動は共和党内部の争いということになった。

 マッカーシー議員は2014年から連邦下院共和党の最高幹部であり、2014年から2019年までは連邦下院多数党(共和党)院内総務、2019年から2023年まで少数党(共和党)院内総務を務めた。ドナルド・トランプ政権下では、連邦議会で過半数を失って少数党となった共和党を指揮し、トランプ大統領と協力して議会運営に当たった。トランプ派と目される人物の1人である。

 共和党内でマッカーシー議員の議長就任に抵抗したのは、フリーダム議連(Freedom Caucus)のメンバーたちである。フリーダム議連とはティーパーティー運動が源流の議員連盟であり、「保守系」もしくは「リバータリアン系」と評される議員たちの集まりだ。彼らの考えを簡単に述べれば「反福祉・反税金・反大きな政府」ということになる。彼らの資金源となっているのがコーク・インダストリーズという巨大企業を率いるチャールズ・コークだ。コーク一族の歴史と動きについては拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(講談社)を是非お読みいただきたい。

 簡単に言えば、フリーダム議連のパトロンであるチャールズ・コークは反ポピュリズム、反トランプの立場を取っている。トランプのポピュリズムは、彼から見れば「貧乏人にバラマキを約束している」ということになる。トランプ派と目されるマッカーシーの議長職就任を妨害したい、もしくはフリーダム議連が議会活動で有利になるような条件を受け入れさせたい、ということでフリーダム議連を使って妨害活動としい活動を行ったということになる。コークとフリーダム議連は共和党内部のエスタブリッシュメント派とも対立しており、フリーダム議連、エスタブリッシュメント派、トランプ派という形で共和党は分裂しているということになる。フリーダム議連とエスタブリッシュメント派が共同してトランプ派をけん制し、トランプの大統領選挙での復活を阻止したいという動きになっている。そのために、フロリダ州のロン・デサンティス知事やニッキー・ヘイリー元国連大使の名前を、2024年の大統領選挙の共和党側の有力候補として主流メディアは出している。

 2023年、2024年のアメリカは、2024年の大統領選挙に向けて政治の季節となる。共和党内部の争いはますます激化するだろう。

(貼り付けはじめ)

5つのポイント:マッカーシーは如何にして連邦下院議長職を勝ち取ったか(Five takeaways: How McCarthy won the Speakership

イアン・スワンソン筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/3803662-five-takeaways-how-mccarthy-won-the-speakership/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が新しい連邦下院議長に就任した。この1週間、議場では15回もの投票が行われ、党内分裂が誰の目にも明らかな異常事態となった。

しかし、この騒動は、マッカーシー議員が分裂した共和党をどのように統率していくのか、また、政府予算や国の債務上限(debt ceiling)引き上げの時期が来た時、国にとってどのような意味を持つのか、それらについて疑問が生じている。

ここでは、これまで誰も見たことのないような狂騒のうちに誕生した連邦下院議長選挙について5つのポイントを紹介する。

(1)マッカーシーは反対派をけん制する(McCarthy picks them off

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第118期連邦議会で連邦下院議長に選出されたケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)が人々の歓声に応える。2023年1月7日。

マッカーシーはこの1週間、民主、共和両党の有権者や批評家たちから、連邦下院で最も大きな丘を登る能力を疑問視され、次々と批判されてきた。

マッカーシーに対する反対派は動じる気配もなく、次々と票を失う中で、彼が必要な過半数を獲得できるのかどうか、多くの人が疑問に思った。

マッカーシーの戦術のいくつかは成功しなかったし、批判されるには理由があった。

2023年1月2日の非公開の会議で反対派に圧力をかけても誰も動かず、マッカーシー議員が批判派に対して議長の座を獲得するに決まっていると話すと、ローレン・ベイバート議員(コロラド州選出、共和党)が「くそ野郎!」と叫ぶなど激しい票読みの始まりとなった。

1回目の投票で19人の共和党所属の議員たちがマッカーシーに反対票を投じ、3回目の投票でバイロン・ドナルド連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)が反対者に加わり、その数は20人に膨れ上がった。

しかし、マッカーシーはこの間、実にたくましく対応しており、火曜日には「次から次へと投票がある中で戦うことを恐れていない」と発言していたが、その通りとなった。

マッカーシーは「戦う準備はできている」と公言し、週半ばには反対勢力との取引に向け、味方の議員たちとともに水面下で猛烈に働きかけた。その努力が実り、金曜日には、12回目の投票で反対派20人のうち13人が賛成に代わり、14回目の投票では更に1票が反対派から賛成に変わるという劇的な投票が行われた。 

その数時間後、連邦下院の議場で歴史的な前代未聞の瞬間が訪れた。

(2)マット・ゲーツが注目を集めた瞬間(Matt Gaetz gets his moment)

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2023年1月5日(木)、第118期議会の3日目に連邦下院民主党の議員たちと話すマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)

マッカーシーの政治的将来が、金曜深夜に近づくにつれ、マット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)の投票にかかるようになるとは、誰も予想しなかっただろう。

ゲーツ議員とマッカーシー議員との間の反目は、この1週間の投票の底流にあり、金曜日には、フロリダ州の共和党員であるゲーツは、マッカーシーを連邦下院議長職に就くために裏取引をしたと非難し、より個人的な反感が高まっているように見えた。

ゲーツはまた、「これは、計算し、集計し、絶対に回避できることをこの機関に課している人物の虚栄心の表れなのか?」と問いかけた。

しかし、マッカーシーは議長選挙で216票を確保し、あと1票で当選というところでゲーツの投票を待っていた。当時、マッカーシーが連邦下院で過半数を獲得するには217票が必要だった。

ゲーツは「賛否を示さない出席(present)」と発言した。結果として、マッカーシーが投票者の過半数を獲得するための基準を引き下がることになったが、ゲーツの投票では勝利するのに十分でなかった。

ゲーツと同席していたマッカーシーの信頼する盟友パトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)を含む議場の共和党所属議員たちは、マッカーシーのマジックナンバーをまだ確保していないことにすぐには気づかず、立ち上がって拍手喝采を送った。

ゲーツは考えを変えなかった。ゲーツの投票は「賛意を示さない出席」だった。

当初、マッカーシーにとって完全な災難に見えたが、その味方は月曜日まで議会を閉会させる投票に動いた。しかし、その閉会投票が行われると、別の切り替えが行われた。どうやら、共和党側のマッカーシーを非難する最終グループの6人全員が「賛否を示さない出席」票を投じるという取引が成立したようだ。

マッカーシーと他の共和党議員たちは閉会日に票を入れ替え、新たに議長選の投票が行われ、マッカーシーは再び216票を獲得したが、今度はそれで十分であった。ゲーツをはじめとする4人の共和党議員がベイバート議員に加わって「賛否を示さない出席」票を投じたことで、マッカーシーが過半数を確保した。

ゲーツは政治的なショーマンであり、カメラに映る時間を多く獲得し、その中心的存在となった

(3)この人たちはどうやって付き合っていくんだろうか?(How are these people going to get along?

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2023年1月6日(金)に連邦下院議長選挙の14回目の投票が実施された後、マイケル・D・ロジャース連邦下院議員(アラバマ州選出、共和党)は、ローレン・ベイバート連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)とマット・ゲーツ連邦下院議員(フロリダ州選出、共和党)から引き離されている。

1枚の絵は1000の言葉に匹敵する(百聞は一見に如かず、Sometimes a picture is worth a thousand words)ということがある。

リチャード・ハドソン連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)がマイク・ロジャース連邦議員(アラバマ州選出、共和党)の体をつかまえている写真(片手を肩に、片手を顎に置き、レスリングに近い動き)は、そうした写真の1つである。

この時のロジャースは、ゲーツと現在の自身の投票について話し合うか、彼の首を絞めるかのどちらかに興味があるように見えた。

この100年間、連邦下院議長の投票では見られなかった光景に、多くの共和党員たちが互いにどれほど不満と疲れと苛立ちを感じていたかを示す象徴となった。

今、連邦下院共和党は僅かな差で、この違いを埋めて、彼らがやりたいこと、監視、支出削減、国境警備強化のための戦い、これら全て行うために協力しなければならない。

1月15日の投票でマッカーシーが新議長に決まった後、団結をするようにと訴えられていた。

しかし、この連邦下院議長選出の戦いは、今後、法案や規則をめぐって共和党内で更なる争いが起こることを予感させるものでもある。

今週、マッカーシーが強いられた屈辱や、ゲーツなどの議員たちの行動に見られた大義名分に対して怨嗟の声が上がるだろう。

マッカーシーがこの騒動をどう処理するかは今後直面する厳しい試練の一つになるだろう。

(4)マッカーシーは勝利を収めるために多くのことを諦めた(McCarthy gave up a lot to win

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2023年1月6日(金)、連邦下院議長選挙の14回目の投票中のケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)。

連邦下院議長の座を勝ち取るために、マッカーシーは多くのルール変更と反対派への譲歩を提示しなければならなかった。特に、新議長の投票を強制することができる議長退任動議を1人の議員が出すことができるようにすることが重要だった。

マッカーシーと提携する委員会は、共和党の予備選挙における委員会の役割を制限すると述べ、保守派議員たちは、議場に提出される全ての法案を審議する連邦下院規則委員会を含む、より多くの委員会の割り当てを受けることになる。

マッカーシーはまた、歳出法案を公開規則で審議することに同意したが、これは実質的に基本的な予算措置の可決を得ることをかなり難しくするものである。

今週マッカーシーに反対していた共和党議員の多くは、政府支出(国内支出と国防総省の予算の両方)の削減を望んでいる。今回の規則改正は、理論的には彼らにそれを実行する力を与えることになる。

この譲歩はマッカーシーの力を弱めることになりそうだが、彼は公の場で、この譲歩によって連邦下院議長が弱体化するとの見方を否定した。

(5)債務上限をめぐる戦いが注目の戦いだ(The debt ceiling fight is the battle to watch

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2023年1月5日(木)、ワシントンの連邦下院議会で10回目の投票中に、ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)と話すアンディ・ビグス連邦下院議員(アリゾナ州選出、共和党)(右)。

連邦政府は歳入を上回る支出をしているため、連邦議会は長年にわたり、社会保障や医療保険から軍事費まであらゆる資金を調達するために、国の借入限度額を定期的に引き上げる必要がある。

債務上限を引き上げること自体は、新たな連邦政府支出の増加や承認にはならないが、連邦政府がより多く支出することを可能にする。

もし、債務上限が引き上げられなければ、連邦政府は支払いをすることができない。

2011年には、当時のバラク・オバマ大統領と共和党が過半数を握る連邦下院が何とか合意に至るまで、政府はデフォルト(default、債務不履行)に近い危険な状態に陥った。

次に債務上限を引き上げなければならないのは今年8月である。どのようになるかは誰にも分からないが、今後数カ月、ワシントンやウォール街では多くの神経がすり減ることになりそうだ。

今週、マッカーシーの議長選に反対していた共和党側議員の1人であるラルフ・ノーマン連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は水曜日、「マッカーシーは債務上限を引き上げるより、連邦政府を閉鎖することを望んでいるのだろうか?」と語った。ノーマンは更に「これは交渉の余地がない」とも述べた。

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マッカーシーの譲歩による連邦下院議長職獲得は驚きとなった(McCarthy concessions to win Speakership raise eyebrows

マイク・リリス、マイケル・シュニール、アル・ウィーヴァ―筆

2023年1月7日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/homenews/house/3803315-mccarthy-concessions-to-win-speakership-raise-eyebrows/

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)は、歴史的な投票失敗の週を経て、議長の当選に必要な支持を得るために、反対派からの一連の要求に屈することを余儀なくされた。

ほとんどの共和党連邦議員たちはマッカーシーの譲歩の重要性を軽視しているが、この変更はマッカーシー自身の指導力を犠牲にして一般議員に権限を与えるものであり、連邦下院の統治機能を麻痺させかねないという懸念も出てきている。

特に、1人の議員が下院議長を追放するプロセスを開始できるようにする今回の変更は、保守派の強硬派グループがマッカーシーに圧力をかけて重要な必須法案を維持するために繰り返し使用することを恐れている民主、共和両党の議員に胸焼けを与えている。

その結果、連邦政府が閉鎖され、債務不履行に陥り、連邦下院の事業が急停止するリスクが高まると彼らは言う。

ドン・ベーコン連邦下院議員(ネブラスカ州選出、共和党)は、「これは恐ろしい決断だ」と述べた。

ベーコン議員は「1人でも議場から退席の動きを推し進めればまたやることになる。毎週こんなことをするのはいかがなものか?」と、マッカーシーの下院議員当選を数日遅らせた内部抗争を引き合いに出してこのように語った。ベーコン議員は「こういう人が何人かいると将来的にそうなるのではないかと思う。連邦下院議長が弱体化し、最小会派が強化されることになるのだ」と語った。

マッカーシーの保守派の批判者たちの中には、国の債務上限(連邦政府が債務を支払うためにお金を借りることを認める)を引き上げるいかなる動きも、社会保障やメディケアなどの国の権利プログラムの削減を伴わなければならないと要求している者もいる。そして、新しい連邦下院規則パッケージの条項では、債務上限引き上げについて別途投票を行うことが義務付けられている。

チップ・ロイ議員(テキサス州選出)は、木曜日に連邦議会議事堂で記者団に対して、「債務上限引き上げには具体的な支出制限が必要だと考えている」と語った。

マッカーシーの反対派で、今回の譲歩で最終的に支持に回ったスコット・ペリー連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、共和党)も「何事もなく進められる債務上限引き上げはありえない、それは間違いない」と述べた。

この要求は、民主党側の議員たちからの反発を招いた。民主党議員たちは、国のセーフティネット・プログラムを守りたいが、マッカーシーが保守派の意向に従えば、連邦債務不履行のリスクが高まることを恐れているのだ。

民主党側のある議員は、「もし彼らが債務上限を設定したら私たちは終わりだ」と述べた。

今週の長丁場の交渉を通じて、中道派の共和党所属の議員たちにとってもう1つの大きな懸念は、保守派が小委員会の権限を自分たちのものにしようとすることで、この案は既に小委員会の席についている議員たちを激怒させた。

ベーコンはこれを「成功の見込みがない(non-starter)」だと形容した。特に小委員会の委員になるために努力してきた穏健派共和党員の間で怒りが広がっている。

ベーコンは次のように語った。「連邦下院議長職やそのようなものについて話すのであれば、彼らはまだそれを獲得しなければならない状況にあるのだ。私はそれを獲得していないにもかかわらず指導的役割を担わせるという、最も小さな議連に対するアファーマティブ・アクション同様だと考えている。私たちは共和党側の実力を基礎にしたシステム(merit-based system)を信じている」。

2013年から連邦下院議員を務めているアン・ワグナー議員(ミズーリ州選出、共和党)は、連邦下院議長職の「年功序列プロセス(seniority process)」だと強調した。

「誰もが年功序列のプロセスを経て、両委員会の役職や議長職などを獲得していかなければならないのだ」とワグナー議員は語った。

共和党が第118期連邦議会の開幕に際して採用したその他の変更点は、それほど議論の余地のないものである。その中には、全下院議員の任期制限を設けるための議場投票の保証、修正案の公開手続き、連邦政府機関に対する新たな権限を議会に与えるいわゆるホルマンルールの採用、議場に入る前に議員が法案を読むために丸3日間を必要とする72時間ルールなどが含まれる。

これらの変更は、全て過去の時点で採用されている。そして、ほとんどの共和党側議員たちは、マッカーシーが議員職の見返りに多くを捧げ過ぎたという説を否定している。

マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党は)「そのようには感がない」と語った。グリーンは下院議長選でマッカーシーの最も有力な支持者の1人となった。

キャシー・マクモリス・ロジャーズ連邦議員(ワシントン州選出、ワシントン州選出)は、「これらの譲歩は私たちの話し合いで合意されたものであり、最終的には、より国民主導の立法過程につながると信じている。これは、より多くの権力と意思決定を議員に取り戻すことだ」と述べた。

ダン・クレンショー連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)は、最初の規則パッケージの最小値である1人制と5人制の違いはほとんどないと述べ、1人制の空転動議についての懸念さえも軽視した。

クレンショー議員は「皆さん方はもう5人制で合意したのだろう。5人制と1人制で一体何が違うのか? 説明責任の問題だ。だから、みんなチームとして働こう、それが最善だ」と述べた。

マッカーシー自身も瀬戸際の交渉を擁護し、この重要な譲歩が彼を「弱い議長」にすることはないと断言している。

木曜日の夜、マッカーシー議員は記者団に対して、「これを恐れていたら、より弱い議長になるだけだ」と語った。「私は弱い議長になどならない」とも述べた。

マッカーシー議員は更に「前の議長を除いてはいつもそうだ。私はそれが結構なことだと思う」と付け加えて述べた。

しかし、民主党側は、カリフォルニア州選出の共和党議員であるマッカーシーが共和党右派対して提案したことは、彼の権威を低下させ、安定した統治を損なうと警鐘を鳴らしている。

前回と前々回の議会で下院議長として一人退席ルールを撤廃したナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、その復活を「馬鹿げたことだ」と評した。

前多数党(民主党)院内総務のステニー・ホイヤー議員(メリーランド州選出、民主党)は、この協定は共和党の極右勢力にあまりにも大きな力を与えるものだと述べた。

ホイヤ―議員は次のように述べた。「彼は私が予想した以上のものを与えたと思う。この協定は、共和党の小さな、意志を持った一派、共和党の否定的な一派、ほぼ一様に妨害的な一派に、彼らが持つべき以上の権威を与えることになると思う」。

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「クラブ・フォ・グロース」とコークはフリーダム議連に資金提供(Club for Growth and Koch nurtured Freedom Caucus

アイザック・アーンスドーフ筆

2015年10月22日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/story/2015/10/freedom-caucus-koch-club-growth-214973

最近、連邦下院をひっくり返した連邦下院保守派の反逆派の背後には、共和党の極右からおなじみの寄付者たちが何人か立っている。それが「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」 とコーク・インダストリーズ(Koch Industries)だ。

非営利団体「センター・フォ・レスポンシヴ・ポリティックス(Center for Responsive PoliticsCRP)」と共同で行った本誌の分析によると、これらの強力な外部勢力は、ジョン・ベイナー連邦下院議長を追い出し、ケヴィン・マッカーシーが後継になることを阻止した共和党内グループである「連邦下院フリーダム連盟(House Freedom Caucus)」のメンバー37人の政治キャリアを育むのに一役買ってきた。

この分析によると、フリーダム議連のメンバーは、銀行や自動車ディーラーなど、伝統的に共和党候補を支持している業界から強い支持を受けてきた。しかし、議連のメンバー数は、共和党の重要な勢力として台頭し、時には保守的な原則をめぐって指導部と衝突する外部団体の影響力を示すものでもある。

各議員が報告した選挙運動およびリーダーシップPACへの寄付の金額を基に分析したところ、10万人の会員を持つ自由企業体制擁護団体「クラブ・フォ・グロース(Club for Growth)」の寄付額は177万ドルで、各議員が集めた総額1億7500万ドルの約1%に相当することが分かった。このクラブは、11人の議連メンバーにとって最大の寄付者であり、他のどの寄付者よりも多くのメンバーが寄付を受けた。

クラブ・フォ・グロースの広報担当者ダグ・サクトルベンは、本紙の取材に対して、最近の連邦下院での共和党指導部の混乱について、フリーダム議連に責任はないと述べた。サクトルベン「私たちの問題は、フリーダム議連の問題ではない。彼らは、選挙で訴えたことや有権者が投票したことを守っている。問題なのは、エスタブリッシュメントと指導部だ」と発言した。

指導者争いの中で、クラブはベイナー議員傘下のPACから「自分たちの信じる原則を守るために」攻撃を受けている保守派議員たちへの支援を公に表明していた。

カンザス州ウィチタに本社がある石油・ガス複合企業のコーク・インダストリーズは、現在フリーダム議連と提携しているメンバーたちに長期にわたり、総額で59万9400ドルを献金してきた。同社のPACとコーク社の従業員からの個人献金を合わせると、カンザス州選出のティム・ヒュールスカンプ連邦下院議員にとっての第2位の献金者となった。しかし、今回の分析では、フリーダム議連メンバーへの全体では2番目に大きな寄付をするのに十分な資金をばらまいていることが分かった。今回の分析では、コーク兄弟が築き上げた政治団体の幅広いネットワークはカヴァー仕切れておらず、これらはまとめて共和党候補への主要な資金源として発展してきた。

コーク PACのスポークスマンであるケネス・P・スペインは、同団体はフリーダム議連だけでなく、たくさんの共和党所属の議員たちに寄付していると述べた。CRPがまとめたデータによると、2014年のサイクルで1080万ドルを寄付していた。

この1カ月間、宮廷内の陰謀(palace intrigue)の中で、メンバーの名前を秘密にしているフリーダム議連は、党のどの派閥、グループが連邦下院指導部を支配するかをめぐる争いで影響力のある勢力として浮上してきた。連邦下院議長候補と目されているポール・ライアン連邦下院議員は、フリーダム議連が賛同し、ベイナー議員に対して脅した手続き上の戦術を諦めることに同意する場合のみ、連邦下院議長の座を望むと述べた。

共和党内部のエスタブリッシュメント派は、フリーダム議連が共和党のビジネス界の同盟者を軽視し、ひいては党の資金調達と多数派拡大への努力を軽視していると見て、不満を募らせている。しかし、クラブ・フォ・グロースやコーク・インダストリーズのような反体制的な資金提供者たちとの結びつきは、この集団がそれなりの資金基盤を持っていることを示唆している。

アメリカ商工会議所(UCC)は、この強力な勢力を排除するため、予備選挙の挑戦者を支援すると宣言している。

ベイナーのスタッフからロビイストに転身したある人物は次のように述べている。「昔は、党組織や経済界がもっと大きな影響力を持っていた。今、フリーダム議連は、ワシントンのグループは自分たちに献金しないと言って、ワシントン以外からもっと金を集められる。経済界は、この人たちと話をして、関係を構築する方法を考えるべきだ。今、彼らは共和党の未来を担っているように見えるからだ」。

業種別では、フリーダム連邦の寄付者の7%が退職者、次いで医療従事者(5%)と分析されている。

『ポリティコ』誌とCRPの分析によると、このブロックで最も資金調達に成功したのはニューメキシコ州のスティーヴ・ピアース連邦下院議員で、キャリアを通じて1690万ドル(クラブ・フォ・グロースから34万7867ドル、コーク・インダストリーズから86000ドルを含む)を稼ぎ、現職下院議員の中で38位にランクされた。ニュージャージー州のスコット・ギャレット連邦下院議員は1360万ドル(コーク・インダストリーズから7万2500ドルを含む)で69位と続く。

この分析は、選挙運動へのハードマネーによる寄付のみを対象としており、これらのレースにおける候補者の賛否を問わない独立した支出は反映されていない。

フリーダム議連への献金者の上位5位は、アメリカ銀行協会、全米自動車販売店協会(連邦議会への寄付額ではトップクラス)、エヴリ・リパブリカン・イズ・クルーシャルPACEvery Republican is Crucial PACERICPAC)で、エリック・カンター連邦下院多数派(共和党)院内総務がヴァージニア州選出のデイヴ・ブラット連邦下院に失脚させられる前に協力していた諸団体である。

アメリカ銀行協会の連邦議会関係・政治問題担当のジェームズ・バレンティン執行副会長は次のように述べている。「アメリカ銀行協会は、新人議員から議会指導部、その間にいる全ての議員に至るまで、通路の両側の議員たち(民主、共和党両党)と協力してきた長い歴史がある。これらの議員の中には、偶然にも、全米の銀行にとって重要な数々の施策を支持している議員たちもいる」。

ケネス・P・ヴォーゲルはこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 先週木曜日に、アメリカは、シリアの空軍基地へミサイル攻撃を行いました。シリア国内で化学兵器を使った攻撃が行われ、子供を含む多数の民間人に死傷者が出たことに対しての報復攻撃と、これ以上の化学兵器使用と拡散を防ぐための予防的攻撃ということでした。世界のほとんどの国々の政府は今回の攻撃を承認しています。

 

 私は今回のシリア国内における化学兵器を使った攻撃から疑問を持っています。化学兵器が使用されて、子供たちを含む民間人が多数死傷したことは間違いありません。問題は誰が化学兵器を使用したのかということです。全体として、「バシャール・アサド大統領が命じてシリア軍が使用したのだ」ということになって、それでシリア軍の空軍基地にミサイル攻撃がなされました。私は、化学兵器使用の責任が誰にあるのかはっきりしていないではないかと思っています。

 

 米軍の攻撃についてですが、トマホークという有名なミサイルをシリア軍の空軍基地1か所に59発撃ちこんだということですが、その割に被害者がほとんどいない、報道されないというのは不思議です。空軍基地は広大な規模でしょうが、米軍が誇るトマホークが59発も撃ち込まれたら、一面火の海でしょうし、周囲にも甚大な被害が及ぼされるはずです。ただ鉄の塊を撃ち込んだだけなら、警告以上の意味を持たないものに高価なミサイルを59発も撃ち込んだことになります。アメリカが本気でアサド政権を倒そうとしていないことは明らかです。

 

 空軍基地には司令部、パイロット、整備部門で多くのシリア軍の将兵が勤務していたでしょうし、現在はロシア軍の支援を受けていますから、ロシア軍の将兵もいたでしょう。アメリカはロシア軍の将兵に被害が出ないように事前通告をしたということですが、それなら、現場でロシア軍将兵が退避するという動きが起きる訳で、ロシアが仮にシリア側に通報していなくても事態は察知できるでしょうし、ロシアはシリア側に通報していたでしょう。ですから、今回の攻撃はあらかじめ仕組んであった、ロシア、シリア、中国にあらかじめ話を通してあったものではないかと思います。

 

 米中首脳会談のタイミングでもあり、いろいろとシナリオが考えられています。対北朝鮮の危機を煽る報道も目立ってきています。アメリカのトランプ政権内の路線対立によって、政策がぶれる、もしくは行き当りばったりになるということも予想されています。

 

 アメリカと中国とロシアが関係を悪化させず、表向きは悪化させても裏できちんとつながって、話を通しておけば、深刻な事態になることは避けられるでしょう。今回のケースは米中露が「危機を演出」しているのではないか、と思います。戦争を本気でやりたい、やらせたいと考えている勢力に、「本当にやるのか、大変なことになるんだぞ、戦争とはそんなに甘いものじゃないんだぞ、甘く考えるな」という警告を与える効果があったと思います(日本政府には当然のことながら、アメリカから事前通告はありませんでした)。この効果が一番に効いたのは日本の安倍晋三政権ではないかと私は考えています。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプの対シリア政策における主要なプレイヤーたち(Key players in Trump's Syria policy

 

エレン・ミッチェル筆

2017年4月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/defense/327926-key-players-in-trumps-syria-policy

 

トランプ大統領は木曜日、シリアの空軍基地へのミサイル攻撃を命じた。これは、バシャール・アサド政権に対するアメリカ初の攻撃であった。

 

今回のミサイル攻撃は、子供を含む民間人数十人が殺害された化学兵器を使った攻撃に対する対応であった。トランプ政権は、アサド政権が将来化学兵器を使用することを止めることを意図として今回ミサイル攻撃を行った。

 

発足して間もないトランプ政権において、今回のミサイル攻撃は最大の軍事的な決定となった。

 

ここにトランプの決断を導いた人々とトランプの対シリア政策に置いて重要な役割をこれから果たすであろう人々を紹介する。

 

●国防長官レックス・ティラーソン(Secretary of State Rex Tillerson

 

ティラーソンは国務長官就任以降、スポットライトを避けてきた。木曜日のミサイル攻撃は、アメリカの外交官トップとして初めての重要な瞬間であった。

 

攻撃前の最後の会議で、ティラーソンはトランプと一緒に机を囲んでいた。ガスを使った攻撃が国際的なニュースとなって以降、ティラーソンのシリアに対する発言内容は大きく変わっている。

 

つい先日、ティラーソンはトルコを訪問した。この訪問中、ティラーソンは「アサド大統領の任期が長くなるかどうかはシリア国民によって決定されるだろう」と述べた。

 

しかし、シリア空爆実施直前の午後、ティラーソンは次のように語った。「将来のアサドの役割は不明確だ。明確なことは、彼がこれまで取ってきた行動から考えると、彼がシリア国民を統治するという役割を与えられることはないだろうと思われる」。

 

トランプがシャイラット空軍基地に59発のトマホークミサイルを発射する命令を下した直後、ティラーソンは、「今回の行動は、必要とあれば、大統領は決定的な行動を取ることを躊躇しないということを明確に示した」と語った。

 

ティラーソンはロシアに対する厳しい姿勢を取っている。ロシア政府がアサド政権の存続を支援し、シリアに対する軍事攻撃を避けるために、ロシアとオバマ政権との間で結んだ2013年の合意内容をアサドが破らせたと批判している。ロシアはアサドが貯蔵している化学兵器を全て廃棄させることを確約していた。

 

ティラーソンは次のように語った。「ロシアは2013年の約束を実行する責任を果たせなかったことは明らかだ。ロシアがシリアと共謀しているか、ロシアは合意内容の目的を達成する能力を持っていないかのどちらかだ」。

 

ティラーソンはエクソンモービル社でのキャリアを通じてウラジミール・プーティンとの関係を築いた。ティラーソンは来週、モスクワを訪問する予定だ。アメリカによるシリア攻撃によってティラーソンのモスクワ訪問の緊張は高まることだろう。

 

しかし、ティラーソンは、トランプが、アサドを権力の座から引きずりおろそうという目的で攻撃をエスカレートさせる可能性を否定した。木曜日、シリアにおけるアメリカの軍事行動についてのアメリカの政策全体には変化しないと述べた。

 

●大統領国家安全保障問題担当補佐官H・R・マクマスター陸軍中将(National Security Adviser Lt. Gen. H.R. McMaster

 

マクマスターは学者政治家として知られる。彼は過去と現在に関する世界各地での紛争に対する知識が豊富である。マクマスターは、シリアとロシアがどう反応するか、アメリカが物事を進めるために何をすべきかについて、彼独自の視点を提供できる。

 

マクマスターは更迭されたマイケル・フリンの後任となった。マクマスターの補佐官就任は防衛分野における人々の多くに安心感を持った。そして、政権内部で急速に影響力を確立している。

 

マーアラゴでのシリアへのミサイル攻撃直前の最終会議には、トランプ大統領、ジム・マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マクマスター補佐官が出席した。マクマスター補佐官は、「会議ではトランプと側近たちにシリアへの対応に関する3つのオプションについて議論した」と語った。

 

マクマスターは、ミサイル攻撃を行っても、アサド政権から化学兵器を使った攻撃を実行する能力を除去することはないだろうと語った。

 

マクマスターは、「アサド政権は化学兵器を使った大量殺人を行う能力をこれからも維持するだろうことは明らかだ。空軍基地を1カ所攻撃しても能力を削ぐことはないと考えている」と述べた。

 

マクマスターはしかしながら、アメリカによる空爆は「アサドの計算に大きな変化」をもたらすだろうとも述べた。

 

今回の攻撃の目的は、メッセージを送ることだったのか、それともアサド政権の軍事能力にダメージを与えることだったのかと問われ、マクマスターは次のように答えた。「今回の攻撃は、現アサド政権、そして彼の父親の政権時代を含めて、アメリカによる初めての直接的な軍事行動であった。今回の大規模な殺人に対応するという大統領の決断が行われたことは重要であるし、2013年に国連決議が発行して以降、起きた50以上の化学兵器を使った攻撃に対処することになるという点で重要である」。

 

マクマスターは続けて次のように語った。「従って、質問に対する答えは、その両方ということになる。攻撃目標は化学兵器を使った大量殺人を行える能力であった。しかし、そのような攻撃能力に関連する施設全体を攻撃する規模と広がりを持つものではなかった」。

 

●国防長官ジェイムズ・マティス(Defense Secretary James Mattis

 

マティスもまた、トランプの意思決定プロセスにおいて、重要な、しかし静かな役割を果たした。

 

アメリカ中央軍の元司令官として、マティスは中東地域に関しては豊かな知識と深い洞察を持っている。そして、攻撃が引き起こす結果についても十分な考察と予測を立てている。マティスは空軍基地に対する「集中攻撃(saturation strike)」のためのアメリカ中央軍の計画をトランプに説明した。

 

マティスはまた注意深くロシアに対応する方法を知っている。また、オバマ政権時代に中央軍司令官として経験したリスクの現実化ということも理解している。ロシア人に死傷者が出る危険性にマティスはこだわったと報じられている。また、中東地域にいるアメリカ軍や外交関係者が報復攻撃の標的になることを懸念していた。

 

木曜日の夜に国防総省は攻撃の詳細を発表した。ロシアとシリアの軍関係者と民間人へのリスクを最小限にするための用心深い計画が立てられていたことを国防総省は強調した。

 

マティスは、攻撃後の記者会見で、マクマスターとティラーソンと一緒に姿を現すことはなかった。また、攻撃以降、一切発言していない。

 

●米国連大使ニッキー・ヘイリー(U.S. Ambassador to the United Nations Nikki Haley

 

シリアでの化学兵器を使った攻撃に対するアメリカのミサイル攻撃に関して、ヘイリーは国連の場で徹底的に正当性を主張している。そして金曜日、アメリカはシリアに対して更なる軍事行動を取る準備をしているという警告を発した。

 

ミサイルによる空軍基地攻撃後、ヘイリーは国連安全保障理事会の席上、「アメリカは昨晩、入念に準備された行動を取った。私たちは更なる行動を取る準備をしている。しかし、そのような行動が必要とならないことを願っている」と述べた。

 

シリアにおける化学兵器を使った攻撃が起きた後、ヘイリーはホワイトハウスを代表して、もっとも多く発言してきた。ヘイリーは空軍基地攻撃についてトランプ政権の立場を主張し、攻撃は「完全に正当化できる」と述べた。

 

ヘイリーはティラーソンと同様に、アサドに対する姿勢を急速に変化させてきた。先週、ヘイリーは、アメリカの優先順位について、「ただ座っているということは終わり、アサドを追い落とすために注力することになる」と木曜日の記者団の取材に答えたとAFPが報じている。

 

ヘイリーは、化学兵器使用の停止は、アメリカにとっての「安全保障上の重要な国益」であると主張している。

 

ヘイリーは国連安保理理事会で苦しんでいる子供たちの写真を掲げた。ヘイリーは金曜日、ロシアがアサド政権を支援してきたと非難した。

 

ヘイリーは次のように語った。「アサドが化学兵器を使った攻撃を行ったのは、それによって報復攻撃を避けることができると考えたからであろう。彼が報復攻撃を避けることができると考えたのは、ロシアが後ろにいると考えたからであろう。彼の計算は昨晩で変化しただろう」。

 

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トランプが連邦議会にシリア攻撃を説明する書簡を送付(Trump sends Congress letter explaining Syria strike

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年4月8日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/327962-trump-sends-congress-letter-explaining-syria-strike

 

トランプ大統領は土曜日、今週行ったシリアへのミサイル攻撃を命じたことについて議会に説明と弁明のための書簡を送付した。書簡の中で、連邦議会の指導者たちに対して、アメリカ政府には必要であれば、更なる軍事行動を取る用意があると述べた。

 

トランプは書簡の中で、「安全保障と外交政策の分野におけるアメリカの重大な国益に基づいて私は行動した。合衆国憲法で大統領に認められた、外交を行う権威、アメリカ軍最高司令官、アメリカ連邦政府の最高責任者の職責に従った」と書いている。

 

彼は続けて、「アメリカ合衆国は、必要がありそれが適切であれば、重要な国益を更に追及するために、追加的な行動を行うだろう」と書いている。

 

トランプ大統領からの書簡は、アメリカ連邦下院議長ポール・ライアン(ウィスコンシン州選出、共和党)とアメリカ連邦上院仮議長(the Senate president pro tempore)オリン・ハッチ(ユタ州選出、共和党)連邦上院議員宛てに送付された。

 

戦争権限法では、大統領は軍事行動から48時間以内に武力使用に関する説明をしなければならないという規定がある。トランプ大統領の今回の行動に関しては、提出期限は土曜日夜までとなっていた。

 

トランプの書簡の内容は、木曜日の夜にミサイル攻撃から1時間後に行ったトランプの声明発表を繰り返したものだ。声明の中でトランプは、ミサイル攻撃をアメリカの「重大な安全保障上の国益」だと述べた。

 

トランプはフロリダ州マーアラゴにあるリゾートで中国の習近平国家主席を迎えていたが、トランプはミサイル発射後の声明発表で、「強力な化学兵器の拡散と使用を阻止することは、アメリカの安全保障にとって、致命的に重要な国益である」と発言した。

 

世界各国の指導者たちは金曜日になって、アメリカの攻撃を支持した。シリアのイドリ県で化学兵器が使用されたがその責任はシリアのバシャール・アサド大統領にあるという非難があり、化学兵器使用は、必要なそして適切な対応であったと各国の指導者たちは賞賛した。

 

シリア政府と、アサド政権を長年にわたり支持し軍事援助を与えてきたロシアは、ミサイル攻撃を非難した。ロシアのウラジミール・プーティン大統領の報道官は金曜日、ミサイル攻撃を「主権国家に対する侵略的攻撃」の行動と呼び、アメリカが国際法に違反したと非難した。

 

アメリカ連邦議会の議員たちは攻撃に対しておおむね支持を表明した。しかし、多くの議員はシリアに対する更なる軍事作戦を行う前には議会の承認を得るように求めている。

 

連邦上院共和党院内総務ミッチ・マコンネル上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、トランプ大統領は軍事行動に関して更なる承認を求める必要はないと主張した。

 

マコンネルは、2001年9月11日の同時多発テロ発生後に連邦議会で通過し、2002年にも認められ、イラク戦争が容認された基盤となった武力行使容認決議によって、トランプ大統領の今回の行動は正当化されると主張した。

 

マコンネルは金曜日、保守派のラジオ番組に出演し、司会者であるヒュー・ヒューイットに対して次のように語った。「私たちは2001年と2002年に決議を通した。オバマ前大統領は中東で私たちがやってきたことを自分もできるのだということを認識していたと思う。私はトランプ大統領も同じように考えるように期待している」。

 

トランプは、もし必要であれば、シリアに対して更なる攻撃を実行する用意があると主張した。金曜日、アメリカ国連大使のニッキー・ヘイリーも同様の主張を行った。ヘイリーは、ロシアからの非難に反論し、トランプ大統領の行動を正当化した。

 

ヘイリーは「アメリカは昨晩、周到に準備された行動を取った。私たちには更なる行動を取る用意があるが、そうした行動が必要ではなくなることを願っている」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22

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