古村治彦です。
マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長がアメリカ大統領選挙民主党予備選挙にこれから出馬するのではないかという憶測が出ている。ブルームバーグがアラバマ州の予備選挙の候補者リストに入っているということで、これから選挙運動を展開するのではないかということで、現在立候補して選挙運動を展開している候補者たちも懸念を持っている。
ブルームバーグは、金融情報を報道するメディア会社「ブルームバーグ」を創設し、大富豪となった人物だ。資産は500億ドル(約5兆円)を超える。2001年に民主党から共和党に党籍を変更し、2002年から2013年までニューヨーク市長を務めた。2018年に民主党に党籍を再変更したことから民主党からの大統領選挙出馬が取り沙汰されていた。しかし、各種世論調査での数字が伸びずに出馬は見送られた。
ブルームバーグは年齢が77歳と高齢であり、民主党予備選挙支持率トップ3のジョー・バイデン、エリザベス・ウォーレン、バーニー・サンダースもまた70代、現職のドナルド・トランプ大統領も70代であり、高齢者ばかりが選挙戦を引っ張るということになる。
ブルームバーグが出馬を考えているのは民主党が左傾化しており、誰が党の指名候補になってもトランプに勝てないという危機感を募らせてのことだと側近が述べている。ブルームバーグの出馬に対して、進歩主義派のウォーレン選対は「私が大統領になることに、金持ちたちが恐怖感を持っているためにブルームバーグを出馬させようとしているのだ」と述べている。しかし、ブルームバーグの出馬で大きな影響を受けるのは、同じ中道穏健派のジョー・バイデンだ。中道穏健派の支持を食い合うということになる。ニューヨークの金持ちたちがブルームバーグを出馬させるとすれば、ブルームバーグを出馬させてバイデンに勝ち、民主党の指名候補にしてトランプに勝たせるというシナリオが出来ている場合だろうが、ブルームバーグがバイデンに勝ち、本選挙でトランプに勝つというのは難しい。民主党内部の分裂を深め、トランプの勝利の可能性を高めるということならば、ニューヨークの金持ちたちがブルームバーグを出馬させる意味はある。
現在の状況でニューヨークの金持ちたちがウォーレンの勝利をそこまで心配する必要はない。それは2020年の大統領選挙で重要な意味を持つ中西部や南部でウォーレンとサンダースは弱いからだ。トランプが後1年株価をふかし続けることが出来れば再選はできる。ブルームバーグがこれから選挙を勝ち抜くことが出来るとするならば、アメリカが景気後退し、人々の不安が高まる中で、「自分は金融と経済の専門家だ」とアピールすることに成功できた時だ。ここが選挙戦の焦点となる。
ブルームバーグの出馬はまだ正式のものではないが、選挙戦をピリッと引き締める効果はあり、これからアイオワ州とニューハンプシャー州で各陣営は選挙戦を激化させる。
(貼り付けはじめ)
ブルームバーグが2020年大統領選挙民主党予備選挙の様相を変化させる恐れあり(Bloomberg
threatens to shake up 2020 primary)
マックス・グリーンウッド筆
2019年11月8日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/469639-bloomberg-threatens-to-shake-up-2020-primary
マイケル・ブルームバーグが大統領選挙に参加する可能性が出てきた。今週、民主党予備選挙の候補者たちに衝撃を与えることになった。ライヴァルの数が増え、しかもそのライヴァルは知名度が高く個人資産も多いとなると、予備選挙の様相を大きく変化させる可能性もある。
元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグの出馬計画のニュースに対して、民主党員の中には大きな驚きと怒りをもって迎えられた。ブルームバーグの動きは後出しでありかつ党の分裂を誘うものだと考えられている。予備選挙が実際に開始されるまで3か月を切っている。
同時に、ブルームバーグの中道派としての主張と個人の財産は予備選挙で中道派を代表しているジョー・バイデン前副大統領とインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジと直接対決を可能にしている。
ブルームバーグに近いある人物は、77歳になるブルームバーグは民主党の指名候補を目指すかどうか、最終決定はしていないと述べている。
しかし、金曜日、ブルームバーグはアラバマ州の民主党大統領選挙予備選挙に立候補者として登録した。これはホワイトハウスを目指す選挙の第一歩となった。
民主党予備選挙において、民主党内部の進歩主義派が台頭している中で、ブルームバーグがこうした状況を変化させられるのかという疑問について色々と議論されている。
エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)は予備選挙をリードしているリベラル派の候補者たちである。2人は大富豪たちがアメリカの政治システムに既に大きすぎるほどの影響力を既に行使していると選挙戦を通じて主張している。
ブルームバーグの出馬計画のニュースは木曜日に流れ、ウォーレン、サンダース各選対は驚きに包まれた。そして、ブルームバーグ元市長の出馬は、自分たちの進歩主義的な提案に対する反撃の形なのだと発表した。
ウォーレン選対は支持者に向けたEメールメッセージの中で次のように書いている。「富裕層で人脈が豊富な人々は恐れているのだ。こうした人々はウォーレン大統領の統治を恐れている。ウォーレンが大統領になればこうした人々の要求を全て実現する政府は存在しなくなるからだ。従って、富裕層の人々はエリザベスと私たちの運動が2020年に勝利を収め、2021年に大きな構造的変化をもたらすことを阻止するためにできることは何でもやってきているのだ」。
しかし、民主党員や民主党支持の有権者たちが2020年の大統領選挙で中道穏健派の人物を党の指名候補にしようとしていることを示す兆候がいくつか存在する。そして、民主党員から共和党員になり、その後無所属になり、2018年に再び民主党員となったブルームバーグは中道穏健派にぴったりとあてはまる人物だ。
『ニューヨーク・タイムズ』紙とシエナ・カレッジの共同世論調査の結果が金曜日に発表された。アリゾナ州、フロリダ州、ミシガン州、ノースカロライナ州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州という6つの激戦州の民主党員の過半数は共和党側とも共通認識を見つけ出すことを約束する中道的な心情を持つ候補者をより好むという結果が出ている。ブルームバーグが出馬するとなると、彼に対しては多くの挑戦がなされることは確実だ。
民主党予備選挙で彼のライヴァルとなる人物たちは既にこの数カ月間、早期に予備背選挙が実施される各州で選挙運動を展開しており、組織化を進めている。これは選挙戦を進める上で重要なことである。選挙戦は既に上位4名の候補者に絞られている。その4名とはバイデン、ウォーレン、サンダース、ブティジエッジだ。
ブルームバーグの選挙戦で資金は問題にはならない。彼が金融データとメディアで築いた資産は500億ドルを超える。ブルームバーグが民主党予備選挙に参加する希望を持っているのなら、多くの支持者が集まって献金はすぐに集まるだろう。
ブルームバーグは早期に予備選挙で行われる各州での選挙運動を諦めて3月のスーパーチューズデーで選挙が実施される各州で上位に食い込もうと考えているのではないかという懸念も存在している。
ニューハンプシャー州民主党委員長レイ・バックリーとアイオワ州民主党委員長トロイ・プライスは金曜日に共同声明を発表し、ブルームバーグに対して両州で立候補者登録をする場合には早期に両州を訪問するように求めた。共同声明が出されるのは異例なことだ。
バックリートプライスは声明の中で次のように述べている。「私たちは民主党指名候補争いにこれほど多くの資格と資質を持った候補者たちが立候補していることを嬉しく思っている。候補者たちは全員、経済成長、質の高い医療の利用、大学学費の値下げについての計画を発表している。私たちは、ニューハンプシャー州とアイオワ州、早期に予備選挙が実施される各州の有権者はマイケル・ブルームバーグに対して、各州と和多田氏たちの国をいかにして前に進めるかについての計画を聞きたいと熱望している。私たちは有権者がそのような機会を持つことを希望している」。
ブルームバーグは以前大統領選挙出馬に色気を見せていた。しかし、彼は今年初めに選挙戦に参加することをためらった。それはバイデンを倒すことは難しいと考えたからだった。
ブルームバーグの長年の側近ハワード・ウォルフソンは木曜日、ブルームバーグ元市長は考えを変えた、と述べている。ウォルフソンは「ブルームバーグは現在の予備選挙の候補者たちでは2020年の選挙でトランプ大統領を倒せないという懸念を徐々に募らせていった」と述べている。
ウォルフソンは声明の中で次のように述べている。「マイクが出馬するとなると、民主党員や民主党支持者たちに新たな選択肢を提供することになる。彼はアメリカ最大の都市を運営したという彼独自の業績を築いてきた。またビジネスをゼロから築き上げ、大きな影響を与える社会事業家としてアメリカ国内の深刻な諸問題に対処してきた」。
ウォルフソンは続けて「彼の達成してきた業績、指導力、変化をもたらすために人々をまとめる能力から考えると、マイクはトランプと戦い、勝利を収めることが可能だ」と述べている。
もしブルームバーグが予備選挙に出馬ということになるとバイデンにとって最も深刻な脅威となるだろう。バイデンはブルームバーグ同様に中道穏健派であり、ここ数週間、ウォーレンとサンダースという進歩主義派に対する批判を強めている。
マンモス大学世論調査研究所所長パトリック。マレーは、ブルームバーグのように遅れて選挙戦に参加することで予備選挙参加予定の有権者たちに大きなアピールをし、支持を集めることはほぼない、バイデンの支持率を引き下げるだけだと述べている。
「ミッシェル・オバマ以外では、遅れて選挙戦に参加する人は誰も先行している候補者たちを引きずり下ろすことはできないと考える。ブルームバーグはバイデンの支持率を引き下げることが出来るだけで、サンダースかウォーレンが党の指名を得ることを助けるだけになるだろう」。
今年3月に発表されたマンモス大学の世論調査の結果では、ブルームバーグの支持率は2%にとどまった。
この時の世論調査では調査に答えた人々のうち、27%がブルームバーグに対して好意的な意見を持ち、26%が否定的な意見を持っていると答えた。約半数は彼のことを聞いたことがない、もしくはよく知らないので、意見を持つほどではないと答えた。
ブルームバーグの大統領になる可能性については予備選挙の候補者の中には苛立ちを見せている人物がいる。エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)はその一人だ。クロウブッシャーは、ブルームバーグが現在の予備選挙の候補者たちでは2020年の選挙でトランプ大統領を倒せないと考えて出馬を検討していることに対して批判を加えている。
クロウブッシャーは次のように語っている。「後から入ってきて、これまで国家のために働いてきた人々に対してお前たちの仕事は全くもって十分ではないと言うような人物を私たちは必要としない。私はそんな人を評価しないし、皆さんもそうだと思う」。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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