古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ニューヨーク・タイムズ

 古村治彦です。

 

 リベラル派メディアの代表格『ニューヨーク・タイムズ』紙と『ワシントン・ポスト』紙で、それぞれ、ドナルド・トランプ大統領とトランプ大統領の長女で補佐官を務めているイヴァンカ・トランプについてスキャンダルが報じられました。

 

 トランプ大統領に関しては、2016年の大統領選挙で民主党候補者としてトランプ大統領と争ったヒラリー・クリントン元国務長官とジェイムズ・コミー前FBI長官を訴追して欲しいという希望を表明し、それに対して、大統領の法律顧問だったドン・マガーンが反対したという内容です。アメリカの各省のトップは、「Secretary」で、日本語では長官となります。国務長官は、Secretary of Stateとなります。それでは、司法長官はSecretary of Justiceになるかと言うと、そうではなくて、United States Attorney Generalとなります。連邦政府の法律家トップであり、司法省のトップを務めるのが職務となります。法律問題に対して、アメリカ連邦政府を代表して意見を述べたり、大統領に助言をしたりするということになります。また、Attorney General という言葉は、日本語では「検事総長」という訳語も当てられますが、検事のような役割を果たすこともあります。

 

 トランプ大統領がヒラリー・クリントンを訴追したいと望んだのは、ヒラリーが抱えている私的Eメールアカウントを国務長官の業務内容、機密事項を含むやり取りで使用した問題のためだと思います。ヒラリーのこの問題が出てから、FBIの捜査が行われ、訴追が行われるのかどうかが大統領選挙でも焦点となりました。その時のFBI長官がジェイムズ・コミーで、コミーの差配で一度は訴追なしになったのに、選挙の投票日直前に再び捜査を始めるということになって、ヒラリー側には大きな痛手となりました。

 

 国家機密を含む内容のEメールを公開することはできないでしょうが、トランプとしては、ヒラリーは国家を危険に晒したとして、ヒラリーの再起の芽を摘みたいと思っていたのでしょう。しかし、中間選挙も終わり、民主党では既にヒラリー以外の名前が大統領選挙の候補者として名前が出ており、かつそこにヒラリーが出るという話も出て、民主党が分裂状態になるようであれば、ヒラリーも出てくれたら、楽だな、民主党は自滅するだけだしなと考えていることでしょう。ですから、ヒラリーに再出馬をさせて、民主党を混乱させて、その上で、ヒラリーのスキャンダルを出して、当選の芽を摘むということを考えているでしょう。

 

 ジェイムズ・コミーに関しては、FBI長官を退任後にトランプ大統領を非難していることもあって、カッと来て訴追したいと述べたものと思われますが、その他に、コミーの怪しい動きの裏に誰がいたのかということを知りたいということもあったのでしょう。FBI長官は、エドガー・J・フーヴァーのように、あらゆる情報を集め、政治家たちを脅しあげて、言うことを聞かせることも可能なほどに力があり、かつ危険なポジションです。それに対して、牽制を加えたいということは歴代の大統領が望んだことでしょう。トランプ大統領もその例外ではないということになります。

 

 トランプ大統領の記事が出た翌日、長女で補佐官を務めるイヴァンカ・トランプのスキャンダルが『ワシントン・ポスト』紙によって報じられました。イヴァンカが政府の業務内容を私的なEメールでやり取りしていたという内容です。これは、外見上は、前述のヒラリーのスキャンダルとよく似た内容で、「ヒラリーを訴追したいと言ったあなたは、娘もまた訴追したいと言うのか」というトランプ大統領に対して喧嘩を売る内容です。

 

 リベラル派のメディアであるニューヨーク・タイムズ紙とワシントン・ポスト紙が協力して、トランプ大統領をおちょくる、喧嘩を売る内容を報道したという感じを受けます。「ヒラリーのEメール問題で訴追すると言っていたあなたの娘さんで補佐官が同じことをしていましたがどうするんですか」というような感じのおちょくりです。トランプは、ヒラリーの場合とは異なる、とイヴァンカのことを擁護しましたが、ここまで計算に入っての報道でしょう。

 

 来年の1月から連邦議会も新しい議員を迎えて始まります。連邦下院民主党は過半数を奪取したということで鼻息荒く、トランプ大統領を攻撃するとしています。今回のその材料を与えたということになります。「トランプ包囲網」を形成しているつもりでしょうが、ヒラリーの話が蒸し返されると、民主党にとっては大きな弱点となります。ヒラリーが表に出ない、引退するということであればこの弱点は大きなものとはなりませんが、まだ野心があるということになると、この弱点を突かれてしまうことになるでしょう。「諸刃の剣」ということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ大統領は、司法省がヒラリー・クリントンとコミーを訴追することを希望した(Trump wanted DOJ to prosecute Clinton, Comey: report

 

ミーガン・ケラー筆

2018年11月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/417729-trump-wanted-doj-to-prosecute-clinton-comey-report

 

トランプ大統領は司法省に対して、2016年の大統領選挙候補者ヒラリー・クリントンとFBI前長官ジェイムズ・コミーを訴追するように希望した、と『ニューヨーク・タイムズ』紙は報じた。

 

トランプ大統領は今年春、当時の法律顧問ドン・マガーンに対して、ヒラリーとコミーを訴追したいという希望を述べ、これに驚いたマガーンはトランプを翻意させようとして、大統領にはそのような権限はないと発言した。

 

マガーンは後に、大統領はそのような権限を持ってはいるが、そのような依頼をすれば権力の乱用という非難を受けるだろうとトランプ大統領に対して述べた、とニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

 

この時、マガーンは、ホワイトハウスの法律家たちが作成した、大統領の権限についてまとめたメモを後で送ることを大統領に約束した。メモの中で、法律家たちは、訴追を要求することで、トランプ大統領自身への弾劾やその他のマイナスの反応を引き出す可能背が高いと警告を発した。

 

ホワイトハウスに対してコメントを求めたが返答はなかった。

 

マガーンは、就任から21か月後の今年10月にホワイトハウスの法律顧問を辞任した。トランプ大統領はマガーンの後任に商務が専門の弁護士パット・シポローンを起用した。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領が私的にヒラリー・クリントンとジェイムズ・コミーの訴追の可能性についてこれまで話し合いを行ってきたという、この問題について実際にトランプ大統領と話した2人の人物の証言を掲載している。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ大統領がどのような容疑で訴追を行うように望んでいるのかは具体的にはなっていないとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。

 

訴追の希望についてトランプ大統領と話したある人物は、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、トランプ大統領はクリストファー・レイFBI長官が積極的にヒラリー・クリントンについて調査を行わないことにいつも失望を表明していると語った。

 

ニューヨーク・タイムズ紙は更に、オバマ政権がロシアの原子力省によるウラニウム採掘企業の買収に対してオバマ政権が許可を出すにあたってヒラリー・クリントンが果たした役割についてレイが調査しないことについて、トランプは不満を募らせているとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。

 

昨年、トランプの弁護団は秘密裏に、司法省に対してコミーに関して政府の秘密情報を不適切に扱ったこととヒラリー・クリントンのEメール問題の調査について調査を行うように依頼したとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。この依頼は拒絶されたということだ。

 

マガーンの法律顧問ウィリアム・バークは、ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、マガーンは「彼が大統領に対して行った法律に関する助言について以下なることもコメントしない」と述べた。

 

バークは次のように述べた。「他のいかなる依頼人と同様に、大統領に対しても秘密が守られる権利が保障されている。マガーン氏はおそらく、彼の知っている限りにおいて、大統領が誰かに対してヒラリー・クリントンもしくはジェイムズ・コミーを訴追するように命じたことはないと述べるはずだ」。

 

=====

 

イヴァンカ・トランプは個人Eメールアカウントから政府の業務に関するEメールを数百通送った(Ivanka Trump sent hundreds of emails about government business on personal account: report

 

ジャスティン・ワイズ筆

2018年11月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/417532-ivanka-trump-sent-hundreds-of-emails-about-government-business-on

 

イヴァンカは連邦政府の記録に関する規則に違反し、自身の個人アカウントから政府高官たちにEメールを送っていた、と『ワシントン・ポスト』紙が報じた。

 

大統領補佐官であり、大統領の長女でもあるイヴァンカ・トランプは、ホワイトハウスに関わる作業と彼女自身のスケジュールを政権の職員、高官、彼女自身のアシスタントたちに数百通のEメールを送っていたと報じている。

 

ホワイトハウスの倫理担当職員が5つの行政機関が昨年秋に収集したEメールを精査した際に、このことを発見した。5つの行政機関は公的な記録を巡る訴訟に対処するために準備を行う一環として、Eメールを収集した。

 

ホワイトハウスの倫理担当職員は精査の過程で、イヴァンカ・トランプがホワイトハウスにおける業務に関する議論を私的なEメールアカウントを使って行っていた、とワシントン・ポスト紙が報じた。

 

本誌はホワイトハウスにコメントを求めたが返答はいまだにない。

 

今回のスクープは、ヒラリー・クリントンの国務長官在任中に私的Eメールサーヴァー使用を思い出させるものだ。

 

ヒラリーが私的なサーヴァーを使用したことは、2016年のアメリカ大統領選挙における重要な問題となり、ジェイムズ・コミー前FBI長官は投票日のわずか1週間前に、この問題についての捜査を再開することを決定した。この決定はトランプとの選挙戦におけるターニングポイントとなった。

 

トランプ大統領はヒラリー・クリントンの私的Eメール使用を非難の材料として多用した。トランプ支持の集会に集まった群衆は、私的なEメールサーヴァー使用問題に対して、「彼女を逮捕せよ」と叫び続けた。

 

ワシントン・ポスト紙は、イヴァンカ・トランプが今回の問題発覚に対して政府の記録に関するルールの詳細な点について知らなかったと答えた、とこの問題について知っているある人物の証言を掲載している。

 

イヴァンカ・トランプの弁護士兼倫理担当補佐官アビー・ローウェルの報道担当ピーター・ミリジャニアンは、ワシントン・ポスト紙に対して、イヴァンカ・トランプはルールについての教えられる前に、私的なEメールを使って政府の業務を議論したと語った。

 

ミリジャニアンは声明の中で次のように述べた。「政権以降期において、公的なEメールアカウントが与えられたが、他の人々に対して与えられた使用ガイダンスを、業務開始前までに与えられなかった。トランプ氏は時に私的なEメールアカウントを使用したが、そのほとんどは家事のことやスケジュールについての連絡だった」。

 

ミリジャニアンは更に、イヴァンカ・トランプは数カ月前に政府の業務に関するEメールを公的なEメールに引き継いだと述べた。ミリジャニアンは、イヴァンカ・トランプの私的Eメール使用はクリントンの場合とは異なるとも語った。

 

ミリジャニアンは次のように語った。「トランプ氏は自宅や事務所に私的なサーヴァーを設置していない。機密情報はやり取りしたEメールには含まれていない。Eメールアカウントはトランプ・オーガナイゼーションから移されていないし、どのEメールも削除されていない」。

 

イヴァンカの反応は、ワシントン・ポスト紙は、ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァーの使用が暴露された時と似た反応だと論評している。しかし、ヒラリーの私的Eメール使用とイヴァンカの場合が違うのは、ヒラリー・クリントンがオバマ政権の国務長官在任中に、業務に関する公的なEメールを私的Eメールシステムだけを使ってやり取りしていた点だ。

 

ワシントン・ポスト紙は、イヴァンカ・トランプは私的なサーヴァーを使って政府の業務に関してやり取りしたのは100通以下であった、その他のEメールでは彼女のアシスタントとの旅行計画とホワイト蓮のスケジュールをやり取りしたものであった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 

 舛添要一東京都知事が、2015年6月15日に、東京都議会に対して、「2016年6月21日付で辞任したい」と申し出ました。ここ数カ月の舛添氏の政治資金の使い道に対する批判から、与党的立場である自民党と公明党を含む都議会の各会派は都知事に対する不信任案提出を決めていました。不信任案が可決されると、都知事は辞職するか、都議会を解散するかを選択し、決定しなくてはなりません。

 

 舛添氏に対するマスコミの報道と都議会における都議会議員の攻撃に対しては、「やり過ぎだ」「虐めだ」「法律に違反していないのにここまで攻撃するのは前近代的で、部族社会的だ(ここには一種の非西洋的な社会に対する蔑視が含まれていますが)」といった批判が行われています。

 

 今回の舛添氏の辞任騒動について、『ニューヨーク・タイムズ』紙が報道しました。それは以下のような記事です。

 

Tokyo Governor, Yoichi Masuzoe, Resigns Over Spending Scandal

By JONATHAN SOBLE

JUNE 15, 2016

http://www.nytimes.com/2016/06/16/world/asia/tokyo-governor-yoichi-masuzoe-resigns.html?ref=asia&_r=0

 

 記事のタイトルは「舛添要一東京都知事が政治資金支出スキャンダルで辞任」というものです。内容な今回の騒動の内容を客観的に報道しているものです。

 

 その内容を簡単に箇条書きでまとめます。

 

=====

 

・東京都知事舛添要一氏が水曜日(2016年6月15日)に辞意表明。政治活動のための資金を個人的な旅行や楽しみのために使ったことを認めた。これで人々の興奮と怒り(furor)を掻き立てた。

 

・ここ2年半で2人目の金銭を巡るスキャンダルで辞任する都知事となった。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催地東京にとっては痛手。

・ここ数カ月、舛添都知事の支出に関しては人々の怒りが醸成されてきた。都知事は今年のリオデジャネイロのオリンピックに出席できるまで都知事を続けさせてほしいと都議会に頼んだ。東京は次回の開催地として注目させるためだ。

 

・「私の懸念はオリンピックなのです」と語った。

 

・支持率の急落と政治的な同盟者の変心と離脱(defection)が辞任の最終的な決め手となった。

 

・舛添氏が自身と家族のために支出した金額は、現代の政治とカネを巡るスキャンダルの基準に照らし合わせてみると、巨額と言うには程遠い。レストランでの食事に数百ドル、ホテル滞在に数千ドルを支出した。

 

・舛添氏が雇った弁護士たちが支出を調査し、そこで、ここ数年の支出のうち、440万円(約4万1000ドル)が「不適切だが、違法ではない(inappropriate, but not illegal)」支出であることが分かった。舛添氏は謝罪し、支出に関して「いくつかの公私混同(some mixing of public and personal)」があったが、意図的にルールを破ったのではないと述べた。

 

・支出が少額であったことが彼の助けにならなかった。

 

・人々の怒りは深まった。今回のエピソードを象徴する言葉が「せこい」だ。せこいは「安い、小さい」を意味する。舛添氏が、少額の税金を納めている納税者と政治資金を寄付した人々のお金を温泉旅行に使ったことで、より人々の神経を逆なでしたと言えるだろう。それは、彼がそれらのお金を全てだまし取ったよりも怒りを掻き立てたと思われる。

 

 右寄りの政党である自由民主党所属の都議会議員である神林茂氏は、弁護士たちによる報告書が出た後、「私は怒っています。せこい、あまりにせこい」と述べた。自民党は舛添氏が政治家のキャリアの大部分を過ごした正当であり、都知事選挙で彼を応援した政党である。「せこい」という言葉は、今回のスキャンダルに言及する際に新聞やSNSで頻繁に使われた。

 

 弁護士たちが不適切な支出だと認めたものの中には、わずか数ドルの漫画本、上海の土産屋で買った絹の書道家用のローブが含まれていた。舛添氏は、政治活動にのみ支出されることを認められた彼の選挙組織にこれらの代金を付けていた。しかし、この法律の政治活動の定義は曖昧で、政治家たちは日常的に政治資金を自身の私的な支出に当てていると専門家たちは述べている。

 

 舛添氏の公務での出張のコストも批判の対象となった。彼はロンドン、ニューヨーク、パリに大規模な職員グループを連れて出張した。飛行機はファーストクラス、滞在先のホテルは高級だった。彼は都庁のリムジンを使って昨年4月までに東京南西にある温泉に48回行ったことが報道された。

 

・ある時、「世界の主要都市のリーダーが二流のビジネスホテルに滞在できますか?」と述べた。オリンピック開催を控え、東京のブランドを高める必要があると彼は述べた。批判が高まるにつれ、舛添氏は悔悟の念を表明するようになったが、ダメージは大きかった。

 

・舛添氏は政治学者、テレビのコメンテイたーの後、政治の世界に入り、2000年代には厚生労働大臣を務めた。2014年には、政治資金スキャンダルで辞任した猪瀬直樹氏の後任の都知事に当選した。

 

 猪瀬氏は2013年12月に、選挙期間中に病院経営者から50万ドル以上のお金を借りたことを認めた。猪瀬氏は、このお金は政治に使う意図のないものであったと否定したが、批判者たちは、これは秘密の政治資金の寄付だと主張した。

 

・自由民主党を含む7会派は水曜日(6月15日)に舛添氏に対する不信任案を提出する準備をしていた。これが彼の辞任の後押しとなった。最近の各新聞の世論調査では、約75%の人々が舛添氏の辞任を望むという結果が出ていた。

 

・舛添氏の後任を決める選挙は7月31日か8月7日に行われると予想される。7月10日には参議院議員選挙もあり、政治的に忙しい日程となる。

 

・猪瀬氏と同じく、舛添氏はオリピックを支持しているが、膨れ上がるコストに歯止めをかけようとした。彼は、デザインのために予算を大幅に上回る建設費を必要とするメイン会場の予算支出の肩代わりを拒絶した。デザインはより安く済むものに変更された。

 

・彼は繰り返し納税者のお金を無駄に使わないと述べたが、これが彼に跳ね返ってくることになった。

 

=====

 

 このNYTの記事では、今回の騒動の経過と内容が良くまとまって紹介されています。NYT東京支局のジョナサン・ソーブル記者が執筆した記事ですが、彼の眼には、「せこい」という言葉が印象的だったようです。「せこい」という言葉は、私たち日本人は日常で使う言葉で、あまりいい意味では使いません。「けち」よりももっとお金に執着し、使い方がせせこましいという感じで使いますが、ソーブル記者は、「安い、小さい」という意味だと紹介しています。ちょっと翻訳しにくい言葉です。

 

 この記事の柱は、2本あって、1本目は、「せこい(=安い、小さい)」で表現されるものです。舛添氏の騒動では、約440万円が「不適切だが、違法ではない」支出という調査結果が出ました。この額が政治とおかけのスキャンダルではかなりの少額であるということ、その支出が数百円の漫画本やお土産のローブであったことを書いています。

 

そして、この金額の小ささがと支出内容の小ささが、少ない所得から必死になって税金を支払っている納税者をかえって怒らせたとあります。

 

 ここで読み取れるのは、前任者だった猪瀬直樹氏、その前の都知事であった石原慎太郎氏との対比です。「額の小ささ」「日常感あふれる使い道」に人々は怒りを募らせながら、石原慎太郎氏の尖閣諸島の途による購入で集めた寄付金や新銀行東京につぎ込んだお金などには怒りの矛先は向かわなかったということです。石原氏は「せこく」なかったがゆえに無駄遣いを許されたということができます。「人は小さな嘘は見破るが、大きな嘘は信じてしまう」ということの具体例です。

 

 記事では、政治資金規正法における政治活動の定義が曖昧なために、政治家たちは日常的に私的な支出も政治資金につけ回している、という専門家の主張を紹介しながら、政治資金規正法の不備を紹介しています。政治家にとっては便利な法律かもしれませんが、政治資金収支報告書を精査されてしまえば、何かしら不備やら私的な支出が見つかるようになっている現在の法律は、いつでも、政治家のスキャンダルを作り上げることが出来るようにしているとも言えます。

 

 この記事ではっきりと書かれているのは、舛添氏が東京オリンピックの膨れ上がるコストを肩代わりすることを拒否したという点です。2016年3月末に、森喜朗、遠藤俊明・オリンピック担当大臣、舛添都知事の間で、東京都が国立競技場建設費のうち500億円を支出することに合意したというニュースはありました。しかし、基本的に「納税者のお金は無駄に使わない」というのが舛添氏の姿勢ならば、これからどこまで膨れ上がるか分からないオリピックの経費の大いなる無駄遣いにとっては邪魔な存在であって、その存在を政治資金スキャンダルで葬ってしまおうという動きがあってもおかしくはありません。

 

(終わり)






このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ