古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ネオコン

 古村治彦です。
 このブログではどの記事が多く読まれているかを私がチェックできる機能がある。先月から今月にかけて、以前書いたヴィクトリア・ヌーランドに関する記事が閲覧者数で上位に来ている。このブログを読みに来ている皆さんは、アメリカ側の対ロシア政策、対ウクライナ政策についても興味を持っているということが分かる。
victorianulandinukraine001
 手前味噌で恐縮だが、私は昨年(2021年5月)に『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
』を発刊した。その中で、ヴィクトリア・ヌーランドについて取り上げている。本の原稿を書いていたのは2021年1月末から3月末までだったが(その後は校正作業などがあった)、その時期はアメリカでジョー・バイデン政権が発足する時期で、私の本『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
』は、ジョー・バイデン政権の外交政策の顔ぶれ分析となった。私はヴィクトリア・ヌーランドが米国務省序列第3位の政治問題担当国務次官に抜擢されたことに驚いた。中国関係は恐らくある程度穏健な方向になるだろうと考えていたところに、ジェイク・サリヴァンが国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したので、その方向は大きくは逸脱しないだろうとある程度の安心感はあった(クアッド路線のカート・キャンベルが国家安全保障会議アジア・太平洋調整官になったので、強硬路線と穏健路線を使い分けるのだろうと考えるようになった)。
akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

 しかし、ヌーランドの国務次官就任は驚いた。第2位の国務副長官のウェンディ・シャーマンはマデリーン・オルブライト元国務長官系の人材でアジア畑が長い人であったことを考えると、人道的介入主義派のアントニー・ブリンケン米国務長官(ヨーロッパの方が得意、フランス語が話せる)の下でネオコンのヌーランドが一緒に行動することになったら危険だと考えた。ヌーランドが対ロシア政策の最前線に出ることは、バイデン政権の対ロシア路線が強硬なものとなるということを私は書いている。是非お読みいただきたい。
 ヌーランドはウクライナで親露派が政権を取った2014年にそれを追い落とす工作を行ったことがバレている。駐ウクライナ大使との電話での会話が暴露されて、「Fuck the EU」という言葉が広く喧伝された。彼女は親露派を倒すために、ウクライナの極右勢力(反ロシア・反ユダヤのネオナチ)を利用してきた。ヌーランドについては以下にもいくつか記事をご紹介しているので是非お読みいただきたい。
 今回のロシアによるウクライナ侵攻は現象だけ見て感情的に対応するとなれば、「ウクライナ頑張れ、ロシアくたばれ」になる。しかし、その深層については冷静になってよくよく見ていかねばならない。アメリカが世界中で行ってきた介入によってどれだけの人々が不幸になったかということを今一度立ち止まってよく考えてみるタイミングでもある。
(貼り付けはじめ)
●「米ロ外相、今週にも協議か ウクライナ情勢めぐり」
時事通信 2022年01月31日08時38分
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022013100187&g=int
 【ワシントン時事】ヌーランド米国務次官は30日、米CBSテレビの番組に出演し、緊迫するウクライナ情勢をめぐり、ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相が週内にも協議する可能性があると語った。ロシア軍の国境付近への集結でウクライナ侵攻への懸念が強まる中、緊張緩和を模索するとみられる。
 ヌーランド氏は、米国が北大西洋条約機構(NATO)不拡大を拒否し、軍事演習やミサイル配備の制限を提案した書面回答について、「ロシア側が対話に関心を示している兆しがあると聞いている」と指摘。「ブリンケン長官とラブロフ外相が週内に話す見通しであるという事実も、その一つだ」と語った。
=====
●「米 ロシアがウクライナ侵攻すれば「厳しい制裁課す」改めて警告」
2022年1月28日 テレ朝ニュース
https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000243063.html
アメリカ国務省は、ウクライナ情勢の緊張緩和に向けてロシアに対話の継続を求める一方で、侵攻した場合は厳しい制裁を課すと改めて警告しました。
ヌーランド国務次官:「我々は、(ロシアに)外交を求める意見で一致しているが、仮にロシアが対話を拒否すれば、彼らに対し直ちに厳しい代償を払わせるという決意で一致している」
ヌーランド国務次官は27日、こう述べたうえで必要になった時に備え、あらゆるレベルで何十時間も協議し、ロシアにとって大きな痛みを伴う金融・経済制裁の準備を進めていると改めて警告しました。
ロシアが求めるNATO(北大西洋条約機構)の拡大停止を受け入れないとしたアメリカの回答については、「現在、プーチン大統領が回答内容を精査中だと聞いている」と述べました。
そのうえで、「プーチン氏がこれを戦争の遺産ではなく、安全保障や軍備管理の遺産を残すための機会だと捉えることを願っている」と対話を継続するよう呼び掛けました。
=====
ロシア政府、アメリカが対ロシア制裁を解除したので、ヌーランドのモスクワ訪問は可能となる(Russia, US lift targeted sanctions so Nuland can visit Moscow)
マイケル・シュニール筆
2021年10月10日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/russia/576149-russia-us-lift-targeted-sanctions-so-nuland-can-visit-moscow
ロシアとアメリカは、ヴィクトリア・ヌーランド政治問題担当国務次官が今週モスクワを訪問し、複数のロシア政府関係者と会談できるように、対ロシア制裁を解除した。
ロイター通信が日曜日に報じたところによると、ロシア外務省の報道官マリア・ザハロワは、ヌーランドは入国を禁止する制裁リストに載っていたが、アメリカがロシア国民の入国を禁止していた同様の制限を解除したため、その後削除されたと述べた。
ロイター通信はRIA通信の報道を引用し、「ヌーランドは実際に、国境を越えることができないという意味での制裁リストに載っていた」とザハロワは述べた。
ザハロワ報道官は更に「彼ら(米国)は複数のロシアの政治家や外交専門家を制裁リストに含めている。つまり、この場合、問題は同等に解決された。そう、彼女はロシアに滞在する」と述べた。
ロイター通信によると、ザハロワはその後、ゴボリット・モスクワ・ラジオ局に対し、あるロシア市民がアメリカの制裁リストから外れたと語ったが、その人物が誰であるかは明らかにしなかったという。
国務省内の序列第3位の高官であるヌーランドは、10月11日にモスクワに移動し複数のロシア高官や関係者と会談し、「二国間、地域、世界の多種多様な問題について話し合う」予定であると米国務省は発表している。
ヌーランド次官のモスクワ訪問は、米露関係が緊張状態にある中で実施される。
バイデンは大統領に就任して以降、ロシアの野党指導者アレクセイ・ナヴァルニーの毒殺事件、ソーラー・ウィンズ社のハッキング事件、2020年大統領選への影響工作などに関連して、ロシアに対して多くの制裁を科してきた。
しかしながら、バイデン大統領は2021年6月の首脳会談でロシアのウラジミール・プーティン大統領と一対一で会談し、外交政策の勝利について枠を設定した。
ロシアでの滞在を終えたヌーランドは、2021年10月14日にベイルートを訪れ、レバノンの市民社会グループの各代表や政府の指導者たちと会談し、経済改革や来年の選挙について話し合う予定だ。
2021年10月15日にはロンドンに向かい、「多種多様な世界規模の諸問題」について複数のイギリス政府高官と会談する予定だ。
=====
ヴィクトリア・ヌーランドとは何者か?バイデンの外交政策ティームに重要なプレイヤーとして参加することは本当に悪い考えだ(Who is Victoria Nuland? A really bad idea as a key player in Biden's foreign policy team)
―オバマ政権下の外交政策を妨害した冷戦の真の信奉者、ヌーランドは国務省にとって巨大なリスクとなってしまう。
By MEDEA BENJAMIN - NICOLAS J.S. DAVIES - MARCY WINOGRAD
2021年1月19日
『サロン』誌
https://www.salon.com/2021/01/19/who-is-victoria-nuland-a-really-bad-idea-as-a-key-player-in-bidens-foreign-policy-team/
ヴィクトリア・ヌーランドとは何者か? アメリカ人の大多数は彼女のことを聞いたことがない。なぜなら、アメリカの大企業メディアの外交政策報道は不毛の地となっているからだ。
ほとんどのアメリカ人は、バイデン次期大統領が政治問題担当の国務次官に選んだ人物が、1950年代の米露冷戦政治の流砂(quicksand)から抜け出せず、NATOの拡大(NATO expansion)、極端な軍拡競争(arms race on steroids)、ロシアに対する更なる包囲網(further encirclement of Russia)の継続を夢見ていることを知らない。 
また、ヌーランドが2003年から2005年まで、つまり敵対的なアメリカ軍によるイラク占領の期間中、ジョージ・W・ブッシュ(子)政権の「ダース・ヴェイダー」であったディック・チェイニー副大統領の外交政策担当補佐官だったことも、アメリカ国民は知らない。
しかし、ウクライナ国民がネオコンに属するヌーランドの名前を聞いたことがあるのは間違いないところだ。2014年2月、駐ウクライナ米国大使ジェフリー・パイアットとの電話会談でヌーランドが「EUなんてクソ食らえ(Fuck the EU)」と言った4分間の音声が流出したのを聞いたことがある人も多い。
悪名高い電話での会話録音の中で、ヌーランドとパイアットは、選挙で選ばれたウクライナ大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチを追い落として代わりの人物を大統領に据える、あるいはヤヌコヴィッチを弱体化させることを企んでいるようであった。アメリカにとって望ましい第一候補アルセニー・ヤツェニュクではなく、元ヘビー級ボクサーで緊縮財政の主唱者だったヴィタリ・クリチコを首相に推すEUに対して、ヌーランドは外交上の儀礼を欠いた表現で嫌悪感を示した。アルセニー・ヤツェニュクは約3週間後に実際にヤヌコヴィッチ追放後に首相の座についた。
「EUなんてクソ食らえ(Fuck the EU)」という言葉は大流行した。恥をかかされた米国務省は、電話の信憑性を否定することなく、ロシアが電話を盗聴していると非難した。アメリカ国家安全保障局(NSA)がヨーロッパの同盟諸国の電話を盗聴していることを棚に上げてそのような非難を行った。
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は怒り狂ったが、結局誰もヌーランド氏を解雇しなかった。しかし彼女の録音内での発言は、より深刻な話であるウクライナで選挙によって選ばれた政権を転覆させるアメリカの陰謀、そしてウクライナ内戦に対するアメリカの責任を明確に示すものとなった。ウクライナ内戦によって少なくとも1万3000人が死亡し、ウクライナはヨーロッパで最も貧しい国に転落してしまった。
その過程で、ヌーランドと彼女の夫で新世紀アメリカン・プロジェクトの共同創設者であるロバート・ケーガン、そしてネオコンの取り巻き連中は、米露関係を危険な下降スパイラルに陥れ、現在でもそこからまだ回復していない。
ヌーランドは、ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補という比較的軽い地位でこれを成し遂げた。バイデン政権下の国務省の序列第3位の高官として、どれだけの問題を引き起こすことができるだろうか。連邦上院がヌーランドの指名を承認すれば、すぐに明らかになるだろう。
ジョー・バイデンは、バラク・オバマの失敗から、人事が極めて重要であることを学んだはずだ。一期目でで、オバマはタカ派のヒラリー・クリントン国務長官、共和党出身のロバート・ゲイツ国防長官、ジョージ・W・ブッシュ政権から引き継いだアメリカ軍やCIAの指導者たちに、希望と変革というメッセージよりも終わりのない戦争を優先させるように任せてしまった。
ノーベル平和賞受賞者であるオバマは、グアンタナモ湾での告訴も裁判もない無期限拘留、無実の市民を殺害するドローン攻撃の拡大、アメリカのアフガニスタン占領の深化、テロとテロ対策の自己強化サイクル、リビアとシリアでの悲惨な新戦争を指揮することになった。
オバマ政権二期目では、クリントンが退任し、新しい人材がトップに立った。オバマは、自ら外交政策を担当するようになった。ロシアのウラジミール・プーティン大統領と直接会談し、シリアなどの危機を解決するように努めた。プーティンは2013年9月にシリアの化学兵器の撤去と破壊を交渉し、シリア戦争の激化を回避し、JCPOA核合意につながるイランとの中間合意の交渉に協力した。
しかし、ネオコンは、大規模な空爆作戦を命じ、シリアでの秘密裏の代理戦争をエスカレートさせるようオバマを説得できなかったことや、イランとの戦争の見通しが後退したことに、逆上していた。ネオコンは、アメリカの外交政策における自分たちの支配力が低下するのを恐れ、オバマに外交政策における「弱者(weak)」の烙印を押し、自分たちの力を思い知らせようとキャンペーンを始めた。
ヌーランドからの協力を得て、ケーガンは2014年に『ニュー・リパブリック』誌上に、「超大国は引退できない」と題する記事を書き、「この民主的超大国が挫折したからと言って、世界を救うために待機している別の超大国は存在しないのだ」と主張した。ケーガンは、もはや支配できなくなってしまっている多極化した世界に対するアメリカの恐怖を払拭するために、更なる積極的な外交政策を採用することを求めた。
オバマはケーガンをホワイトハウスでの私的なランチに招待した。ネオコンの筋金入りの圧力を受け、オバマは、イラン問題に関しては水面下で進めることができたが、対露外交の規模は縮小せざるを得なかった。
オバマ政権内のよりましな人物たちに対するネオコンの一撃は、ロシアとの国境にあるNATO加盟の戦略的候補であり、負債を抱えるウクライナでヌーランドが2014年に起こしたクーデターであった。
ウクライナのヤヌコヴィッチ大統領が、ロシアから150億ドルの救済を受けるため、アメリカが支援するヨーロッパ連合との貿易協定を拒否したとき、米国務省は怒りを募らせた。
侮蔑された大国の怒りは地獄の怒りのようなものだ。
EU貿易協定は、ウクライナの経済をヨーロッパの輸入品に開放するものだったが、EU市場のウクライナへの相互開放がなければ、ヤヌコヴィッチは受け入れることができない、不利な協定であった。この協定はクーデター後の政府によって承認され、ウクライナの経済的苦境に拍車をかけただけだった。
ヌーランドの50億ドルが投じられたウクライナ国内でのクーデターのための尖兵は、オレーフ・チャフニボーク率いるネオナチ「全ウクライナ連合「自由」(Svoboda)」と表舞台には出てこない、民兵組織「右翼セクター(Right Sector)」所属の民兵たちだった。リークされた電話の中で、ヌーランドはチャフニボークを、アメリカが支援するヤツェニュク首相を内部で助けることができる外部の野党指導者「ビッグ3」の一人と述べた。ヌーランドが称賛したチャフニボークは、かつて第二次世界大戦中にユダヤ人や「その他のカス」(Jews and "other scum")と戦ったウクライナ人を賞賛する演説を行ったチャフニボークともちろん同一人物である。
2014年2月にキエフのマイダン広場での抗議活動が警察との戦闘に発展した後、ヤヌコヴィ
ッチと西側が支援する野党は、フランス、ドイツ、ポーランドが仲介して、国民統一政府を作り、年内に新しい選挙を実施するという協定に署名した。
しかし、アメリカが解き放ったネオナチや極右勢力にとって、それは十分なものではなかった。民兵組織「右翼セクター」が率いる暴力的な暴徒が国会議事堂に進撃し、侵入した。議事堂襲撃に関してアメリカ人は想像できないということはなくなっている。ヤヌコヴィッチと国会議員たちは命からがら逃げ出した。
ロシアは、クリミアのセヴァストポリにある最重要な海軍基地を失うことになり、クリミアがウクライナから離れ、1783年から1954年まで属していたロシアに再び加わることを決めた住民投票の圧倒的な結果(83%の投票率で97%が賛成)を受け入れないといけない。
ウクライナ東部のドネツクとルハンスクというロシア語圏の多数派が一方的にウクライナからの独立を宣言し、アメリカが支援する勢力とロシアが支援する勢力の間で血生臭い内戦が起こり、2021年現在も続いている。
両国の核兵器が依然として私たち自身の存在に対する単一で最大の脅威となっているにもかかわらず、米露関係は一向に回復していない。ウクライナ内戦や2016年の米大統領選挙におけるロシアの選挙干渉疑惑についてアメリカ人が何を信じようと、ネオコンと彼らが仕える軍産複合体(military-industrial complex)が、バイデンがロシアとの重要な外交を行うのを阻止して、私たちを核戦争という自殺行為の道から導くことを許してはならない。
しかし、ヌーランドとネオコンは、好戦的な外交政策と記録的な額の国防総省予算を正当化するために、ロシアや中国とのますます衰弱し危険な冷戦に関与し続けるのだ。2020年7月の『フォーリン・アフェアーズ』誌に掲載された「プーティンを押さえつける(Pinning Down Putin)」という論文で、ヌーランドは、ロシアが「自由主義世界」に対して、かつての冷戦時代にソ連がもたらした以上の脅威を与えているという不条理な主張をしている。
ヌーランドは、ロシアの侵略(Russian aggression)とアメリカの善意(U.S. good intentions)という、全く神話的で非歴史的な物語の上に立っている。彼女は、アメリカの10分の1に過ぎないロシアの軍事予算が「ロシアの対決と軍事化(Russian confrontation and militarization)」の証拠であるかのように装い、アメリカとその同盟諸国に対して、「強固な防衛予算を維持し、アメリカと同盟諸国の核兵器システムの近代化を継続し、ロシアの新兵器システムから守るために新しい通常ミサイルとミサイル防衛を配備する」ことによってロシアに対抗するよう求めている。
ヌーランドはまた、攻撃的なNATOとロシアを対峙させたいと考えている。ブッシュ大統領二期目でのNATO大使時代から、彼女はロシアとの国境までNATOが拡大することを支持してきた。彼女は「NATOの東側国境に沿った恒久的な基地(permanent bases along NATO's eastern border)」の設置を要求してきた。ヨーロッパの地図を見ても、NATOと呼ばれる国には国境が全くない。ヌーランドは20世紀の西側諸国の侵略から自国を守ろうとするロシアの姿勢を、NATOの拡張主義的野心にとって耐え難い障害とみなしている。
ヌーランドの好戦的な世界観は、まさに1990年代以降、ネオコンと「リベラルな介入主義者たち(liberal interventionists)」の影響下で、アメリカが行ってきた愚行(folly)を象徴している。その結果、ロシア、中国、イランなどとの間で緊張を激化させる一方で、アメリカ国民に対する組織的な過小投資を招いたのである。
オバマ大統領は学ぶには遅すぎたのだ。その教訓とは、悪い時に悪い場所にいる間違った人物が、間違った方向に突き進むと、何年にもわたる難解な暴力、混乱、国際的な不和を引き起こしてしまうのだ。ヴィクトリア・ヌーランドは、バイデン政権下の国務省において時限爆弾(time-bomb)となり、オバマ政権二期目の外交を弱体化させたように、バイデンの優れた才能を妨害するために待ち構えているのだろう。
(貼り付け終わり)
(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
 ジョー・バイデンは国務長官に側近のアントニー・ブリンケンを指名した。ブリンケンはどんな人物か。
joebidenanthonyblinken101

アントニー・ブリンケン(右)とバイデン
 ブリンケンの父ドナルドは1944年に米陸軍に入隊し、その後、1948年にハーヴァード大学を卒業した。投資会社ウォーバーグ・ピンカス・カンパニーの創設者の一人だ。ブリンケンは民主党の大口献金者であり、1988年の大統領選挙では民主党候補のマイケル・デュカキスの資金集めを担当した(息子のアントニーも参加した)。そして、民主党のビル・クリントン政権下の1994年から97年にかけて駐ハンガリー米国大使を務めた。

 父ドナルドと母ジュディスが離婚し、ジュディスはパリで弁護士をしていたサミュエル・ピカールと再婚した。それでアントニーもパリに移り、高校時代を過ごした。そのために、アントニーはフランス語に堪能だ。その後、アントニー・ブリンケンはハーヴァード大学を卒業し、コロンビア大学法科大学院を卒業した。

 1993年からは国務省に勤務し、2002年からは上院外交委員会の民主党側スタッフとなった。この時に上院外交委員長を務めていたジョー・バイデンと知り合い、その後、側近となった。2009年からはジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。2013年から2015年までは国家安全保障担当大統領次席補佐官を務めた。更に2015年から2017年にかけては国務副長官も務めた。オバマ政権時代には「副」「次席」の立場で外交政策や国家安全保障政策を担った。

 ジョー・バイデン政権ができれば、ブリンケンは初めて「副」や「次席」という言葉が付かない形で外交政策の中心人物となる。

 ブリンケンは「人道的介入主義派(Humanitarian Interventionists)」の一員である。彼の経歴を見ても、連邦上院時代にバイデン委員長の下で、イラク戦争賛成の下準備を行った。また、オバマ政権下ではリリアやリビアへの介入を主導したと言われている。トランプ大統領の外交姿勢を徹底的に批判してきた。彼はヒラリー派の一員である。しかし、同時にバイデンの側近ということを考えると、バイデンが途中で辞任となれば一緒に辞める(辞めさせられる)ということもあるだろう。

 このバイデン政権=ヒラリー・チェイニー政権の外交政策を担うという点では、アントニー・ブリンケンは適任であろう。それが世界にとってどんな厄災をもたらすかは想像すらできないが。「グレイト・リセット」を行い、アメリカと世界はディストピアに陥る。その時に平然と人々を抑圧する側の人間ということになる。

(貼り付けはじめ)

バイデンが国務長官に選んだアントニー・ブリンケンについて知るべき5つのこと(Five things to know about Antony Blinken, Biden's pick for State

オリヴィア・ビーヴァーズ、ロウラ・ケリー筆

2020年11月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/national-security/527650-five-things-to-know-about-antony-blinken-bidens-pick-for-state

大統領選挙当選者バイデンは今週アントニー・ブリンケンを国務長官に起用すると発表した。ブリンケンはバイデンにとって長年の側近であり、バイデンに近い外交政策アドヴァイザーである。

ブリンケンは外交政策分野で広範な経験を持っている。そして、連邦議会で人事が承認されれば、ブリンケンは複数の発生中のそして永続的な諸問題に直面している。その中には危険な新型コロナウイルス感染拡大も含まれている。

ブリンケンについての5つの知るべきことを述べていく。

(1)バイデンは数十年に渡りバイデンと一緒に仕事をしてきた(Blinken has a years-long working relationship with Biden

ブリンケンとバイデンとの間の関係は数十年前までさかのぼることができる。

バイデンが連邦上院外交委員会の委員長と幹部委員を務めた時、ブリンケンは民主党側スタッフ部長を6年間にわたり務めた。バイデンが副大統領に選ばれた際、ブリンケンはバイデンの後を追ってホワイトハウスに入った。ブリンケンはバイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務めた。

ブリンケンは後にオバマ政権内で様々なポジションを経験した。その中にはバラク・オバマ大統領のアシスタントとオバマ大統領の国家安全保障問題担当筆頭次席大統領補佐官が含まれていた。

バイデンが選挙運動を始めた後、ブリンケンは再びバイデンの側近となった。ブリンケンはバイデン選対の外交政策アドヴァイザーに就任した。

ブリンケンは火曜日、国務長官就任を受諾すると述べ、その中で、大統領選挙当選者バイデンとの関係は自分の職業人としての人生の中のハイライトだと述べた。

「大統領選挙当選者であるバイデン氏のために働くこと、そして、あなたを師と友人として仰ぎ見ることができることは、私の職業人としての人生において最大の栄誉です」と述べた。

バイデンは、ブリンケンを国務長官に指名すると発表し、その中で、ブリンケンは「自分に最も近く、最も信頼できるアドヴァイザー」であると発言した。

(2)ブリンケンは中東に過集中している(Blinken has had hyperfocus on Middle East

ブリンケンは、911のテロリストによる攻撃とイラクへのアメリカ軍の侵攻の後に、対中東の外交政策に過剰に集中していることで知られている。

バイデンが連邦上院議員を務めていた機関、ブリンケンはイラクの分割計画を発表する手助けをした。ブリンケンは、イラクを人種や宗教的なアイデンティティを元にして3つのゾーンに分割することを強く主張した。そうすることで、それぞれのゾーンで自治が可能になると主張した。しかし、この考えは、多くの人々の反対に遭った。当時のイラクの主将からも強く反対された。

ブリンケンは対中東のアメリカの外交政策を形作った。

オバマ政権下、ブリンケンは、中東地域でISISに対抗するために十数カ国の連合形成を主導した。ブリンケンは政権内の外交政策の決定を主導した。特にアフガニスタン政策とイラクの核開発プログラムについて政策を主導した。

(3)ブリンケンは国務省の士気を上げたいと考えている(Blinken wants to raise State’s morale

ブリンケンはオバマ政権で国務副長官を務めた。ブリンケンの最後のそしてより記憶に残る瞬間としては、国務省のホリデーパーティーでの姿であった。ブリンケンはギターを手に取り、国務省職員で結成されているバンドに参加して、ボブ・ディランの曲を弾きながら、歌詞を国務省の職員に捧げるものに変えて歌った。

ブリンケン副長官の下、国務省に勤務したハイリー・ソイファーは「ブリンケンは政府において同僚たちと協力しながら仕事を進めました」と述べた。

ブリンケンと親しい人物として、トム・マリノウスキー連邦下院議員(ニュージャージー州選出、民主党)が挙げられる。マリノウスキーは民主政治体制・人権・労働担当国務次官補を務めた。

火曜日、ブリンケンはデラウエア州で国務長官就任を受諾した。その際、オバマ政権とクリントン政権、連邦上院、国務省で一緒に働いた「バンド仲間」に感謝の言葉を述べた。

ソイファーは次のように語っている。「これがまさにブリンケンを象徴しているものです。国務副長官時代、ブリンケンはただのリーダーではなかった。トップダウンでの判断をするのではなく、国務省全体を支援しながら仕事をするリーダーでした」。

ルー・ルーケンズは2018年まで、オバマ政権において、ロンドンの米国大使館で首席公使(deputy chief of mission to the U.S. embassy in London)を務めた。ルーケンズは「穏やかで謙虚」な人物だと評しているが、同時に、国務省に対する深い理解と評価をもたらすだろうとも述べた。更に、ブリンケンは「バイデンが優先政策ついて知識を持っており、深井考えを持っている」とも語った。

ルーケンズは次のように語った。「ブリンケン率いる外交ティームは、国際的な脅威に対処する同盟諸国とパートナー諸国の協力の重要性を認識するであろうことは明らかです。“アメリカ・ファースト、アメリカ・あローン”アプローチを推進する代わりに、志を同じくする諸国と協働することで、テロリズム、感染症拡大、気候変動などの脅威に対処することができるということを彼らは理解しています」。

(4)ブリンケンはホロコースト帰還者の継子だ(Blinken is stepson of a Holocaust survivor

ブリンケンは、自身のアメリカに対する考え方は、第二次世界大戦中に空軍兵士として従軍し、その後駐ハンガリー米国大使となった父親と、ホロコーストを生き抜いた継父の両者によって形成されたと認めている。彼の継父はアメリカを自由の烽火だと考えていた。

ブリンケンは、火曜日に国務長官受諾の演説の中で、父と継父の2つの物語を語った。ブリンケンは父ドナルド・ブリンケンこそが自分にとってロールモデルであり英雄だと述べた。

ブリンケンは更に、彼の継父サミュエル・ピサールの米国に来るまでの物語について語った。ピサールの親族はホロコーストでそのほとんどが殺害された。ピサールはバイエルン州の森の中で隠れ、第二次世界大戦末期の最後の死の行進から逃走した。その時、彼は白い5つの星がペイントされた戦車を目撃した。

ブリンケンは次のように述べた。「彼は戦車に駆け寄りました。戦車のハッチが開きました。アフリカ系アメリカ人兵士が彼を見下ろしました。私の父は膝をついて、彼の母親が教えてくれた3つの英単語を叫びました。それは、“God Bless America(神よ、アメリカに祝福を)”でした。兵士は彼を戦車に引き上げてくれて中に入れてくれました。父はアメリカに、そして自由に入ったのです」。

大使を務め、外交分野で長く勤務したダン・フライドは数十年にわたりブリンケンと新興を持ってきた。フライドは、ブリンケンの継父の物語はブリンケンの外交政策に関する考え方を表現していると考えていると述べた。

フライドは「アトランティック・カウンシル」とのインタヴューの中で次のように語っている。「外交政策についての基本的な考えについて、ブリンケンと話したことはないです。しかし、彼の外交政策についての基本的な考えは、価値観を持つ国としてのアメリカのアイデンティティから出ているということは感じられています。アメリカは、難民であった彼の継父をアメリカに招き入れてくれた国なのです。そして、アメリカは、自国の価値観と国益の増進はリンクしているということを分かっている国なのです」。

(5)ブリンケンには二人の幼い子供たちがいる(Blinken has two young children

ブリンケンは多忙を極める国防長官の職に就くが、彼と彼の妻は現在二人の幼い子供たちを育てている真っ最中だ。ブリンケンは20世紀以降の国務長官の中で、幼児を育てながら職責を果たすことになる最初の長官となる。

ブリンケンは、こちらもアメリカ政界で働いているエヴァン・モウリーン・ライアンと結婚した。二人はクリントン政権で働いている時に知り合った。

政府で仕事をしている間、ブリンケンは幼児教育に対しての関心を示した。2016年9月、ブリンケンは、有名な子供番組「セサミストリート」に出演した。彼は番組の中で、難民の流入と国連の役割について説明した。

オバマ政権で国連大使を務め、ブリンケンと同僚だったサマンサ・パワーは次のようにツイートした。「アメリカのトップ外交官が二人の幼児を育てながら職責を果たす姿を見せることは、働く親御さんたちにとって、元気をもらえることになるだろう。トニーと素晴らしいエヴァン・ライアンが家族を犠牲にして職責を果たしていることに感謝します」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2020年米大統領選挙は、現在のところ、民主党のジョー・バイデン前副大統領が優勢だと報じられている。恐らくこのまま「バイデン勝利」ということにするんだろう。選挙の結果をめぐっては、不満や疑念が存在し、それが暴力事件という形で噴出するだろう。市民ミリシア(civic militias)と州知事が派遣した州兵(national guards)の内戦状態にまで発展することも考えられる。市民ミリシアにはアメリカ軍を退役した元軍人たちも多く参加しており、ただ武器を持っていきがっているような人たちではない。あらゆるシチュエーションでの戦闘訓練を行っている組織もある。簡単に鎮圧されない。そうなれば、捕縛は無理となり、州兵たちに対して射殺命令が出るだろう。

 私は選挙前にそのことを示す論説をこのブログで紹介した。そのようなことが現実になると思っていた人たちは少ないだろうが、今日、私たちの目の前にある危機なのだ。

 私は非常に後悔し、自分を責めていることがある。それは、「この論文を読んでいながら、なぜ気づかなかったのか、大事だと思ったから読んだはずなのに、その内容を敷衍できなかった」という思いだ。それは、私も翻訳作業に参加した『イスラエル・ロビーⅠ・Ⅱ』(講談社)の著者であるハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトが2018年に発表した論稿だ。そのタイトルは「ディック・チェイニー政権にようこそ」というものだ。

※論稿へはこちらからどうぞ。 

2018年の段階で、トランプ政権は「ディック・チェイニー政権」になっていたのだ。マイク・ペンス、マイク・ポンぺオ、マーク・エスパー、ジーナ・ハスペル、更にジョン・ボルトンというチェイニーの息のかかった人間たち、凶暴なネオコンたちがトランプ政権を占拠していたのだ。トランプ政権が独自に外交をやろうと思えば、ホワイトハウスで、ジャレッド・クシュナーとイヴァンカ・トランプを通じてやらねばならなかった。その代表例が北朝鮮の金正恩委員長とのトップ会談だった。これは、バラク・オバマ政権でもそうだった。国務省を迂回して、キューバとの国交正常化やイランとの核開発に関する合意と言った、自分たちがやりたいことをやるためには、ホワイトハウスを強化するしかなかった。
hillaryclintondickcheney001

ヒラリー(左)とビル・クリントン(中)、チェイニー(右)
 ウォルト教授の指摘で大事なことは、「チェイニー主義(Cheneyism)」という言葉であって、このチェイニー主義には共和党のネオコンと民主党の人道的介入主義派が含まれている。アホ・ブッシュ政権が始めたイラク戦争には、連邦上院議員だったヒラリー・クリントンとジョー・バイデンが賛成していた。トランプ政権は前門の民主党(エスタブリッシュメント)、後門の共和党(エスタブリッシュメント)に挟まれていたのだ。トランプ主義、トランプ現象は、既成のワシントンに巣くう2つの勢力、ヒラリーが代表する人道的介入主義派とチェイニーが代表するネオコンによって包囲され、絞め殺された。そのことに私は早く気づいておくべきだったのだ。トランプ革命は「あらかじめ裏切られた革命」だったのだ。
dickcheneyjoebiden001

チェイニー(左)とバイデン(右)
 ディック・チェイニーの長女リズ・チェイニーはアメリカ国務省や悪名高きアメリカ国際開発庁(USAID)で勤務し、ブッシュ政権(父親のチェイニーは副大統領)では中近東担当国務次官補代理を務めた。2016年から地元ワイオミング州の連邦下院議員を務め、今回2020年の選挙では3回目の当選を果たした。アメリカ合衆国下院共和党会議議長を務めており、連邦下院共和党ではナンバー3の地位にある。このリズが共和党の保守勢力を代表する人物になるという主張も既に出ている。
lizcheneydickcheney001

リズ・チェイニー(左)とディック・チェイニー
 2016年の大統領圓居を思い返してみれば、民主党のヒラリー・クリントンを共和党支持であるはずの、ネオコンの論客ロバート・ケーガンが熱心に応援していた。これは一つの傍証に過ぎないが、人道的介入主義派とネオコンは同種同根なのだ。そのことは、手前味噌で恐縮だが、拙著『アメリカ政治の秘密』で明らかにしている。

 今回のバイデン勝利で、私はこの、大義名分を掲げて対外戦争をやりたがる人間たちの大復活があると見ている。バイデン政権は「ディック・チェイニー(ネオコン)・ヒラリー・クリントン(人道的介入主義派)連立政権」である。ネオコンは「世界中が民主政治体制の資本主義国になれば世界から戦争がなくなる」という理想主義を掲げ、人道的介入主義派は「独裁者たちの圧政に苦しむ人々を人道的な理由から助けねばならない」という「人道上、人類としてやるべき」ことを理由にしている。しかし、こうした人々も中東諸国や中央アジア諸国の王国や独裁国家を倒そうとは言わない。二枚舌なのだ。

 新型コロナウイルス感染拡大が落ち着けば、経済の復興に焦点が移る。その時に、手っ取り早いのは戦争だ。戦争経済(war-boost-economy)だ。戦費は心配いらない、ドル建て国債はいくらでも発行できるのだ。日本から貢がせても良い。対中、対露、対北朝鮮において、もっとも近距離にある場所はどこか、それは日本だ。大きな戦争が大好き、反中、反露、反北朝鮮のバイデン政権のために、日本はお金だけではなく、いろいろな負担もさせられることだろう。バイデンはトランプの「アメリカ第一(America First、アメリカ国内の諸問題の解決を最優先にするという考え)」と「アイソレーショニズム(Isolationism、国内問題解決優先主義)」を批判して当選してできるのだから、アホのビル・クリントンやジョージ・W・ブッシュの時と同じようなことになる。

 ジミー・カーターもジョージ・HW・ブッシュも何やらおかしげなマスコミの煽動やプロパガンダで再選はできなかった。しかし、彼らは「元大統領」として、最高に評価が高い人たちだ。田中角栄もそうだった。その時に評価されなくても、後々に評価されるのだ。トランプはその仲間入りを果たしたということはそれだけで誇り高いことだ。

 さぁ、これから厳しい時代になる。戦争の時代になる。影響を最小限とするための準備をしよう。「トランプなんて大嫌い、良かった、バイデンになって」と不幸の始まりに立って、能天気に喜んでいられるのは一面では羨ましい。「Ignorance is Bliss」という言葉がある。しかし、一緒になって、良かった良かった、の浮かれ騒ぎはできない。帝国アメリカの終わり、世界の構造の変化に備えなければならない。

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。
johnboltontheroomwhereithappened001
ジョン・ボルトン回顧録 (仮)

 大変古い記事であるが、重要な記事をご紹介する。これは2018年に『イスラエル・ロビー』の共著者であるハーヴァード大学のスティーヴン・M・ウォルト教授が書いた記事だ。アメリカ外交政策エスタブリッシュメントはネオコンと人道的介入主義派で占められており、ネオコンのジョン・ボルトンはその主流派の一人である。そして、これら主流派の人々は自分たちの主張が実現されてもたらされた悲惨な結果について反省をしない、そして再び政権に入ることで失敗を繰り返す。これがアメリカの構造的な欠陥だとウォルトは書いている。

 そして、ネオコンと人道的介入主義派をまとめて「チェイニー主義」と名付けている。そして、チェイニー主義がアメリカの構造的な欠陥だと喝破している。チェイニー主義をウォルト教授は次のように描写している。

(貼り付けはじめ)

チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

(貼り付け終わり)

 トランプ大統領は外交政策エスタブリッシュメント、主流派をこき下ろしていた。しかし、それでもそうした人物たちを起用しなければならない時もある。それでも行き過ぎれば、解任してきた。だから、北朝鮮との戦争は起きなかったし、中国とも決定的な決裂には至っていない。その点でドナルド・トランプ大統領は極めて優秀だ。ヒラリー・クリントンが大統領になっていたら世界は悲惨なことになっていただろう。本格的な戦争と新型コロナウイルス感染拡大が同時並行的に起きていたらアメリカはもたなかっただろう。

 問題はジョー・バイデンもヒラリーとあまり変わらないということだ。彼の政権も「チェイニー政権(チェイニー主義政権)」になってしまう可能性は大きい。下の記事にも名前が出てくるスーザン・ライスが副大統領になればそれは極めて危険なことだ。

(貼り付けはじめ)

ディック・チェイニー政権へようこそ(Welcome to the Dick Cheney Administration

―ジョン・ボルトンに関する問題は彼が少数派の過激な人物(extremist)だということではない、問題は彼が主流派(mainstream)であることだ。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2018年3月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/23/welcome-to-the-dick-cheney-administration/

もう片方の靴が落ちた。トランプ大統領はレックス・ティラーソン国務長官をツイッター上でのツイート一つで解任するという臆病な手段を取った。この時同時に、ドナルド・トランプは大統領国家安全保障問題担当補佐官のHR・マクマスターを解任し、後任にジョン・ボルトンを選んだ。ボルトンは元米国国連大使で強硬派として知られた人物だ。超タカ派(Uber-hawk)のマイク・ポンぺオはCIA長官であるが、国務長官に就任することになった。そして、CIAに忠誠を誓うジーナ・ハスペルがポンぺオの後任に決まった。ハスペルは、ジョージ・W・ブッシュ政権時に拷問施設を運営し、CIAが行っていたことを記録したヴィデオテープの破棄に同意した。こんな恐ろしいことが他にあるだろうか?

これらの出来事はトランプ政権内の混乱に対する2つの重要な反応だと考えられる。一つ目の解釈としては、今回の人事交代はトランプの政権内から「大人たち」を排除する動きというものだ。大人たちは過去1年間、ツイッター最高司令官(tweeter-in-chief)を何とか制御しようとしてきた。そうした人々を、トランプと同じように世界を見て、「トランプをトランプ」らしく行動させる人々に交代させたのである。こうした見方からすると、新しいティームは、トランプ大統領を制御しようとはせず、2016年の時のトランプに戻そうとするだろう。この時のトランプは、アメリカの外交政策は「完全に隅から隅まで厄災である」と主張し、「アメリカ・ファースト」の実現を訴えた。トランプ大統領自身は、自分で望ましい人物たちを集めてティームを作ると訴えることで、こうした考えを強調してきた。(これは一つの大きな疑問を生起させる。それは、誰が最初のティームの構成員を選んだのか?二番目のティームは?その答えは明白だ)

二つ目の解釈はより人々の警戒心を強め、皆さんの家の裏庭に防空壕を掘らせるようにさせるくらいのものだ。この解釈では、ティラーソンとマクマスターの更迭とボルトン、ポンぺオ、ハスペルの起用はタカ派が力を持つことになることを示す。この人々は、イランの核開発をめぐる合意を破棄し、拷問を復活させ、北朝鮮との戦争を始めるだろう。これはただの「強硬な姿勢」を超えたものだ。ホワイトハウスにボルトンが入ることで戦争を嫌なものだと考えたことがない人物からトランプ大統領は助言を受けることになる。(戦争を嫌なものだと考えないのはもちろん彼が安全な距離まで離れているからだ)

明確にしておきたい。ボルトンはこれまでトランプ大統領が行った選択肢のほとんどと同じもので、厄災となるであろうものだ。ボルトンの外交政策について考え方は原理主義的で、好戦的なものだ。政策の主導者、そして専門家としてのボルトンの経歴はどんなに良く言っても、信頼に足るものではない。ボルトンは自分の過去の誤りから学んでいるようには見えない。そして、マクマスターとティラーソンは、アメリカの国際的な評判と重要な同盟関係に対して、トランプ大統領が与えた損害を何とか限定的にしようと努力したが、ボルトンの外交官としての技能はアメリカの友人たちを攻撃するための新たな方法を見つけることになるだろうと思われる。

しかし、ボルトンの起用は2016年の大統領選挙の段階のトランプの考えに戻るということではないのだ。トランプは選挙期間中に外交政策に関する専門家たちやエスタブリッシュメント全体を攻撃した。トランプはこうした人々は無能で、無責任、アメリカを意味のない戦争に引きずり込むと主張した。しかし、大統領に就任して以来、トランプ大統領は国防予算を増額し、アフガニスタンの米軍を増強し、国防総省とわがままなアメリカの同盟諸国がより多くの場所でより強力な軍隊を使用することを許可し(その結果は失望)、外交政策により軍事偏重の姿勢を取ることでハイリスクな選択をした。これは、ビル・クリントン、ブッシュ(子)、バラク・オバマの各政権で失敗したやり方だ。ボルトンの起用(トランプの外の人事異動と同様)は、「アメリカ・ファースト」に向けた大胆な動きということではない。「アメリカ・ファースト」という言葉は、アメリカの海外での負担を削減し、アメリカの戦略的位置を改善し、アメリカ国民をより安全により豊かにするためのより堅実なそしてより抑制された外交政策を意味するはずだ。

その代り、トランプが知っていたかどうかは分からないが、ボルトン、ポンぺオ、ハスペルを最重要の地位に就けたのは、「チェイニー主義(Cheneyism)」への逆戻りなのである。チェイニー主義とは、「脅威を増幅し、真剣な外交を拒絶し、同盟諸国を負担だと考え、国際機関を軽蔑し、アメリカは強力であり、他国に最後通牒を突き付け、他国が従うことを期待しているものと私は定義している。より言えば、外交政策に関わるより多くの問題を何かを吹き飛ばすことで問題を解決することができると信じることを言うのだ。

いいですか皆さん、チェイニー主義は、アメリカがそれを採用した最後の機会できちんと機能しましたか?トランプ大統領のような洗練された外交政策の専門家は再びチェイニー主義を採用したいと望んでいるのは間違いないところだ。

従って、ボルトン起用の真のレッスンはボルトン自身のことではなく、アメリカの外交政策エスタブリッシュメントについてである。より微妙な地位に野蛮な急進派の人物を就けることの危険性についてこれから数週間、心のこもったそして怒りに満ちた評論を多く読むことになることは間違いない。しかし、単純な事実としては、アメリカの外交政策共同体の中で変わった人物ではないということだ。トランプが左派からメディア・ベンジャミンを、右派からランド・ポールを起用することとは違う。もしくは、チャールズ・W・フリーマン・ジュニアやアンドリュー・バセヴィッチのような経験豊富なそして知識豊富な逆張り主義者を起用することも違う。そうではなくて、ボルトンはタカ派の考えを持っているが、ワシントンにおいて「受け入れ可能な」コンセンサスの中に入っているのである。

ボルトンの考えや経歴を見てみよう。彼はイェール大学とイェール大学法科大学院の卒業生だ。彼はワシントンDCにある著名な法律事務所コンヴィントン・アンド。バーリングで働いた。この事務所ではディーン・アチソンも働いていたことがある。ボルンとは長年、保守系ではあるが主流のアメリカン・エンタープライズ研究所で上級研究員を務めている。彼は曖昧な、粗雑で野蛮な、「急進的な」文章を数多く発表している。その中には『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙、そして『フォーリン・ポリシー』誌も含まれている。ここまで見て、あなたが考える「おかしな」人物にボルトンは当てはまるだろうか?

確かに、ボルトンはイラク戦争を声高に支持していた。しかし、そのことで彼を狂人(weirdo)だと考える人はほとんどいない。確かにボルトンはイラク戦争を声高に支持した。しかし、しかし、だからと言って奇人変人という訳ではない。ボルトンも指摘しているように、そのほか多くの人々も同様であった。ヒラリー・クリントン、ジョー・バイデン、ジェイムズ・スタインバーグ、アン=マリー・スローター、スーザン・ライス、ロバート・ゲイツなどなど数多くの「尊敬すべき」人物たちがイラク戦争に賛成した。これらの人物たち以外にもイラク戦争という厄災を夢見て実現させた天才たちのことも忘れてはいけない。ウイリアム・クリストル、ジェイムズ・ウールジー、ロバート・ケイガン、ブレット・スティーヴンス、マックス・ブート、エリオット・コーエン、デイヴィッド・フラム、ポール・ウォルフォヴィッツなどは今でも外交政策エスタブリッシュメントの中では尊敬を集めている。しかし、こうした人々は、悲惨な戦争を始め、多くの人々を死に至らしめたことについて、自分たちの誤りを認めず、公の場で後悔の念を示したこともない。

トランプ大統領と同様、ボルトンはイランと北朝鮮に対して特に懸念を持っているように見える。しかし、連邦議員の多くとワシントンDCにあるシンクタンクの多くもまた同様である。実際のところ、現在のイランとの核開発をめぐる合意を強く支持している人々は多くいるが、こうした人々はアメリカ政府がイラン政府に対してより強硬な姿勢を取るべきだと考えている。北朝鮮に対して軍事行動を取ることを提案しているワシントンDCにいる人間はボルトンだけではない。結局のところ、ボルトンの前任者である、更迭されたマクマスターが北朝鮮に対する厳しい姿勢を取ることを主張していた。

ボルトンはイスラム教嫌いで知られており、かつ国際機関に対して極めて懐疑的だ。しかし、こうしたことはアメリカの外交政策分野において特殊という訳ではない。彼は軍事力の行使を特に好む傾向があるように見える。しかし、外交政策分野での高名な知識人たちの中で軍事力行使に反対し、それに反対する態度を取りそのように発言する人たちの数はどれほどいるだろうか?私はそのような人物は極めて少ないと言わざるを得ない。それは、ワシントン(アメリカ政府)でトップの仕事に就きたいと狙っているような人物で「ソフトだ」と見られることを望むような人は一人もいない。シリアのバシャール・アル・アサド政権に対して戦略的に見て全く無意味な巡航ミサイル攻撃をトランプ大統領が許可した時、どれだけの数の民主党所属の政治家と共和党所属の政治家が彼に向って拍手を送ったかを読者の皆さんは覚えておられるだろうか?この単純な事実によって次のことを説明することができる。アメリカは10か国以上の国々で様々な種類の戦争を行ってきているが、終わりを想定することなしにまた反対しにくい形で始めている。ボルトンは外交政策共同体のコンセンサスの内部にいる、声が大きいメンバーであるに過ぎない。

誤解しないでもらいたい。私は今回のボルトンの起用を「正常なこと」であると位置づけ、心配するなと述べているのではない。そうではなく、もしボルトンについて懸念を持っているならば、次の疑問を自分自身に問いかけてみるべきだ。それは「政府高官の地位にボルトンのような考えを持つ人物が就くことを許すような政治システムはどのようなものか?」というものだ。このシステムは、この人物を政府高官の地位に就けて、アメリカを悲惨な戦争に駆り立てながら、自身の失敗に対する後悔を示すこともなく、更に次の10年も同じことをより熱を持って主張する。同じ間違いを犯すために2回目のチャンスを得ることができる。

これはただただ最悪なのだ。しかし本当の問題はボルトンではない。本当の問題は、彼のような人物を何度も失敗させて、何度も引き上げてくれるシステムの存在だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
harvarddaigakunohimitsu001
ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。 

 2020年米大統領選挙に関しては、民主党のことばかりお伝えしています。今回は現職のドナルド・トランプ大統領が再選を目指しているので、共和党予備選挙はあまり意味がありません。下の記事にあるように、共和党全国委員会はトランプ大統領に一本化しようという動きに出ています。

donaldtrump077

 そうした中で、トランプ大統領に挑戦する候補者が出てきました。元マサチューセッツ州知事ウィリアム・ウェルドが大統領選挙共和党予備選挙に立候補を表明しました。ウェルドの勇気は素晴らしいですが、トランプ大統領に勝てるチャンスはありません。

 共和党内でトランプ大統領に反対する動きは「ネヴァー・トランプ(Never Trump)」がけん引しています。ネヴァー・トランプを引っ張っているのは、ネオコン派の重鎮ビル・クリストルだそうです。2016年の段階で、トランプ大統領誕生を阻止しようとしていたそうですが、失敗してしまったそうです。

billkristol151
ビル・クリストル

 一方、トランプ大統領が是認している、インフラ整備のガソリン税増税に対して、リバータリアンのチャールズ・コークが支援している運動団体が反対運動を展開しています。チャールズ・コークに関しては、拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(デイヴィッド・シュルマン著、講談社、2015年)をお読みください。弟のデイヴィッドと共に政治活動を行ってきましたが、デイヴィッドが健康問題もあり、政治活動から引退したので、チャールズだけが頑張っています。

charleskoch151
チャールズ・コーク

 トランプ大統領の融通無碍な動きに共和党内部は振り回され、結果として、思想的に堅固なネオコン派とリバータリアンが反対を堅持しているという構図になっているようです。

(貼り付けはじめ)

共和党員ウィリアム・ウェルドがトランプ大統領に挑戦するために予備選挙に出馬(Republican William Weld launches primary challenge against Trump)
ジョナサン・イーズリー筆
2019年4月15日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/438997-republican-william-weld-launches-primary-challenge-against-trump

 元マサチューセッツ州知事ウィリアム・ウェルド(共和党)は月曜日、トランプ大統領に対抗する長期にわたる共和党予備選挙に正式に出馬表明を行った。

 ウェルドは、2016年にはリバータリアン党の副大統領候補として立候補した。ウェルドは立候補声明の中でトランプ大統領の名前に言及しなかった。

 ウェルドは次のように語った。「政治的対立が激化している現在、民主、共和両党は“あらゆる犠牲を払っても勝利”という戦いにからめとられている。アメリカ国民の声は無視され、私たちの国は苦しみの中にいる」。

 ウェルドは続けて次のように語った。「アメリカを偉大な国となした大義以上のものは地上には存在しない。今こそ我らが偉大な国に住む愛国的な男性、女性は立ち上がり、旗を立てる時だ。今こそリンカーンの諸原理、全ての人々への平等、尊厳、機会に立ち戻る時だ」。  ウェルドが共和党の予備選挙でトランプ大統領を倒すことはほぼ不可能である。

 トランプ大統領の選対は2019年第一四半期で3000万ドル以上の資金を集め、現在4000万ドル以上を保有している。最新のギャロップ社によると、共和党支持者の89%がトランプ大統領に好意的な見方をしている。 共和党全国委員会は予備選挙で挑戦者が出現することを阻止し、大統領に対して「一丸となった支持」を表明しようと動いている。トランプ選対は共和党の職員や関係者をスタッフに迎え入れ、2020年の全国大会でサプライズが起きないように代議員に対する働きかけを準備している。

 共和党員による「ネヴァー・トランプ」グループを率いるのは『ウィークリー・スタンダード』誌の創始者ビル・クリストルだ。このグループはこれまで会合を複数回開き、トランプ大統領に挑戦する予備選挙立候補者をリクルートしてきた。彼らは誰を挑戦者にするか決めておらず、またウェルドを挑戦者の第一候補としては考えていなかった。

 共和党員の中にはメリーランド州知事ラリー・ホーガン(共和党)、もしくは元オハイオ州知事ジョン・ケーシック(共和党)がトランプ大統領に挑戦するために予備選挙に出馬するという期待を持っている人たちもいる。

 「ネヴァー・トランプ」の共和党員たちが自分たちの考える有力候補を擁立できたとしても、トランプ大統領の共和党の候補者指名を覆す努力は途方もないものとなるだろう。

 2016年の時もクリストルはトランプが共和党の候補指名を確実にしてから保守派から挑戦者をリクルートするという成功の見込みがない努力を行った。ある時点では、クリストルはアメリカ海兵隊中将だったジョン・ケリーを擁立できるという希望を持っていたが失敗に終わった。ケリーは後にトランプ大統領の首席補佐官を務めた(後に辞任)。

 この当時の「ネヴァー・トランプ」の共和党員たちは最終的に有力な候補者を擁立することに失敗し、弁護士で『ザ・ナショナル・レヴュー』誌の寄稿者デイヴィッド・フレンチに白羽の矢を立てた。フレンチは保守系メディア界隈以外での知名度がほとんどない人物であった。フレンチは最終的に出馬を辞退した。

 2016年の共和党全国大会では、少数のしかし発言力のある共和党員たちが候補者指名の手続きを妨害し、トランプの候補者指名を阻止しようとした。彼らの最後の努力も水泡に帰した。

 元CIA職員で現在は共和党系のコンサルタントのエヴァン・マクミランはトランプに抵抗を示すために予備選挙に立候補し地元のユタ州で得票の21%を獲得した。しかし、トランプ支持の牙城を崩すには至らなかった。トランプは共和党が圧倒的に強いユタ州での人気は低かったがそれでも楽勝できた。

=====

コーク・ネットワークはトランプ大統領が提案しているガソリン税に反対する広告攻勢を開始(Koch network launches ad campaign opposing Trump's proposed gas tax)

ジョナサン・イーズリー筆
2019年4月11日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/438367-koch-network-launches-ad-campaign-opposing-trumps-proposed-gas-tax 

 大富豪にして保守運動の活動家チャールズ・コークが支援する保守グループは、インフラ整備の財源のためにガソリン税を増税するという提案に反対するTVCMキャンペーンに10万ドル単位の資金を提供している。

 チャールズ・コークが支援するグループ「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ(AFP)」は木曜日から20州の30選挙区向けにインターネット広告を開始した。これは、ガソリン税増税に反対するために、連邦上院財政委員会、連邦上院環境・公共事業委員会、連邦下院歳入委員会、連邦下院運輸・社会資本委員会の委員たちに圧力をかけることを目的としている。

 AFPの会長トム・フィリップスはCMの中で次のように語りかけている。「ガソリンスタンドに立っているアメリカ国民により多くの支払いを求める前に、連邦議員たちは行き過ぎていることを解決すべきです。それは、ガソリン税で集めたお金が道路や橋とは関係のない計画に使われていることを止めることです」。

 ティム・フィリップスは続けて次のように述べた。「アメリカ国民は安全で近代的な連邦政府の所管する高速道路システムを使って、旅行をしたり、仕事・学校と家を往復したり、家族を訪問したりしています。そして、連邦議会に対しては、これらの大切な日常生活の一部にかかるコストを相応の値段に抑えておいて欲しいと願っています」。

 フィリップスは加えて次のように語った。「連邦議員たちは、ガソリン税を増税することが税制改革の成果を台無しにするという事実について考えるべきです。ガソリン税の増税で税制改革で手元にお金が残ることで一息ついている低所得、中所得のアメリカ国民から数十億ドルのお金を奪うことになるのです」。

 トランプ大統領は連邦議員たちとの非公式の会談で、インフラ整備予算案に関して民主党と認識を共有するために連邦ガソリン税の増税について否定はしないと述べた。

 1ガロン当たり25セントの増税は民主党の連邦議員たちとアメリカ最大のビジネス界のロビー団体全米商工会議所の支持を受けている。

 AFPはインフラ整備計画の財源を別に探すように求めている。パブリックプライベートパートナーシップ(PPP)、規制緩和、労働規制の一部の廃止を検討するように主張している。

 ホワイトハウスと分裂している連邦議会の議員たちは、全米の道路や橋の修理のための計画に関して超党派のコンセンサスに到達できると楽観的である。 今年初め、トランプ大統領は非公式、非公開の会談の場での発言で連邦議員たちを驚かせた。ロイター通信の報道によると、大統領は員すら整備計画の財源としてガソリン税の1ガロン当たり25セント増税を支持するだろうと述べた、ということだ。

 トム・カーパー連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)は取材に対して次のように語った。「驚くべきことに、トランプ大統領は今日の会合で、1ガロン当たり25セントのガソリン税とディーゼル税の増税し、その資金で我が国の道路、高速道路、橋梁の改善を行うという計画を支持しました。大統領はこの計画のために必要ならば自身の指導力を提供し、過去には困難であったことを実現すると述べた」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

価格:1,400円
(2018/3/9 10:43時点)
感想(0件)

ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側[本/雑誌] (単行本・ムック) / 古村治彦/著

価格:1,836円
(2018/4/13 10:12時点)
感想(0件)





このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ