古村治彦です。
私は、ウクライナ戦争は一刻も早く停戦すべきだという考えを持っている。しかし、それに対して「間違っている」「ロシアの味方だ」「ウクライナの人々のことを考えないのか」という非難は当然出てくるものとして受け止めている。アメリカをはじめとする欧米諸国が「火遊び」でNATOの拡大(東進)を行い、ロシアを刺激し、不安感を増大させ、戦争が起きた。そして、戦争が起きれば、欧米諸国はロシアと正式な戦闘状態に入り、最悪の場合には核攻撃を受けるという懸念から、ウクライナに武器を送って(それも致命的なダメージを与える種類は送らない)、ウクライナ人に戦わせるだけのことだ。
ウクライナを戦争前にNATOの正式メンバーにしていれば、NATO諸国は正式にロシアと干戈を交えることになっていたはずだ。ウクライナにどんどんと軍事援助を与え、「実質的にはNATOの一員ですよ」と宣伝しておきながら、いざという事態になれば、欧米諸国はウクライナと共に戦うことはしない。これではウクライナもそしてロシアも馬鹿にされているようなものだ。
私はこのように考えている。しかし、こうした考えに対しては上記のように非難もあるだろう。それは受け止める。しかし、それならばどうしようと言うのだろうか。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は停戦を拒絶している。ウクライナの全国土を奪還するまで戦いは止めないとしている。それは2014年の段階でロシアが併合したクリミア半島が入るし、親露勢力の多い東部各州も入る。そのための戦いはどれくらい続くことになるだろうか。クリミア半島までとなると、ロシアにとっては「国土防衛線」ということになる。そうなればこれまで以上に戦争のレヴェルを上げることになる。つまり、核兵器使用の可能性が高まるということになる。
現在の世界規模での食糧価格の高騰やエネルギー価格の高騰はやはり戦争の影響を受けている。世界規模で、そしてウクライナとロシアの人々のためにも一刻も早い停戦を願っている。そのためにはゼレンスキー大統領の退陣も必要なのではないかとも考えている。太平洋戦争における五本の敗戦直前のことを思えば、指導者の交代で停戦を実現するということもあり得るのではないかと考えている。
このようなことを書けば「ロシアの手先」と言われてしまうだろう。私としては「そのような時代なのだろう」とそれを淡々と受け止めるしかない。
(貼り付けはじめ)
「平和運動活動家」にとって、戦争はアメリカのことであって、ロシアのことではない(For
‘Peace Activists,’ War Is About America, Never Russia)
-彼ら自身の強硬な左翼的世界観は、反西側陣営の侵略者の側につくほど吸収されている。
アレクセイ・コヴァレフ筆
2022年12月22日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/12/22/russia-ukraine-war-left-progressives-peace-activists-chomsky-negotiations-diplomatic-solution/
ウクライナ戦争が1年に近づくにつれ、いずれ何らかの交渉で終結することを期待するのは当然のことではある。重要なのは、開戦と終戦の責任をどこに置くかだ。欧米諸国の進歩的な左派の一部にとって、「外交を通じての平和(peace through diplomacy)」とは、滅多に表立っては言わないにせよ、1つの意味を持っている。それは、「ウクライナはロシアの条件に従って降伏する(Ukraine’s surrender on Russia’s terms)」というものだ。
将来、どこかの時点で、交渉が行われるに違いない。ロシアが戦場で目的を達成するための窓はとっくに開いている。しかし、ウクライナが西側諸国から攻撃用兵器の種類を増やしてもらわない限り、ウクライナ軍がハリコフ州やケルソン州で見事に成し遂げたような大規模な反撃を行って残りの国土を解放することは非常に困難だろう。従って、ある時点で、どちらか一方または双方が戦争するための資源を失い、両国が停戦の条件を話し合うテーブルに着くことになる。しかし、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナが主権国家(sovereign state)として、また独立した国民として存在する権利そのものをまだ認めていない。そうした中で、誠実に交渉し、いかなる合意も守るというロシアの約束は、議論の余地があるという評価以上のことはない。
西側諸国の多くにおいて、国民の大多数はウクライナ支援に賛成している。ウクライナにとって最大かつ最も信頼できるパートナーであるアメリカも同様で、12月21日に行われた米連邦議会合同会議でのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の歴史的演説では、通路を越えてスタンディングオベイションが起こるなど、ウクライナの主権擁護は超党派の強固な支持を得ている。
しかし、欧米諸国によるウクライナ支援は、政治スペクトルの両端から敵意を呼び寄せている。「アメリカの覇権(U.S. hegemony)」や「アメリカの軍国主義(U.S. militarism)」に反対する西側諸国の強硬左派にとって、彼ら自身の反米・反西西洋的世界観は、反西側陣営のいかなる侵略者の側にも容易に味方するほど吸収されている。同様に、アメリカが支援する国に対しても熱心に反対する。ロシアやイランのような抑圧的な政権に左派の一部が根強く同調するのはこのためだ。抑圧(repression)そのものを肯定しているわけではないが、反米陣営と手を組むことへ傾倒が不支持よりも強いのである。
ウクライナのケースは、以前植民地化された主権国家が、大量殺戮の意図に全く隠さない帝国主義的侵略者から自らを守るという、明確な闘いであることは気にする必要がない。こうした進歩的な極左派は、しばしば平和活動家(peace activists)と自称しているが、ウクライナの社会主義者たちのような、自分たちのイデオロギー的同志から出た証拠であっても無視する。
その代わり、ウクライナに関する極左派の主張は、ウクライナ支援からの撤退を求める西側極右派の主張と見分けがつかないことが多い。進歩的左派の象徴であるジェレミー・コービン元英国労働党党首やフォックス・ニューズの司会者タッカー・カールソンは、クレムリンのお気に入りの論点を自由に繰り返している。たとえば、ウクライナを支援すれば不必要にウクライナ人の苦痛が長引くという皮肉な主張である。
明らかな結果という点では、強硬左派が「ウクライナでの戦争を止めろ(stop the
war in Ukraine)」と要求する本当の意味は、「ウクライナの自衛を助けるのを止めろ(stop
helping Ukraine defend itself)」ということだ。文書で十分に立証されたロシアの残虐行為、プーティンが宣言したウクライナにおける目標、そして侵略の露骨な植民地主義的性質を無視するように、彼らの自称反戦姿勢には道徳的要請が決して存在しないのだ。このため、論理的な結論は1つしかない。左翼が反対するのは戦争ではなく、一方がアメリカの支援を受ける戦争が存在するという事実である。
ウクライナ人には主体性(agency)がなく、ロシアは代理戦争(proxy wars)の犠牲者であるというこのねじれた世界観は、先月のマンハッタン文化センターでのイヴェントで存分に発揮された。そこでは、このサブカルチャーの最も著名な人物たちが、イヴェントのタイトルの通りに、「ウクライナ和平への真の道(Real Path to Peace in Ukraine)」について議論した。言語学者ノーム・チョムスキー、元アメリカ緑の党大統領候補ジル・スタイン、著名な自称平和活動家メデア・ベンジャミンなど、進歩的左派の象徴的人物が名を連ねていた。
3時間以上にわたる討論は、インターネット上のごく少数の視聴者に向けて配信されたが、ウクライナの平和への第一歩らしきものを提案した発言者は1人としていなかった。このイヴェントの副題は「交渉には賛成!エスカレーションには反対!」だったにもかかわらず、ウクライナ和平への第一歩らしき提案は一人もなかった。「エスカレーションには反対!」という副題がついていたにもかかわらず、誰が交渉するのか、その交渉の立場はどうなるのか、永続的な和平を実現するために誰が何をあきらめるのか、について言及しようとする講演者は1人もいなかった。ウクライナ人の姿はなく、ある講演者は「平和を訴えるのにウクライナ人である必要もロシア人である必要もない」と陳腐な弁明をした。
こうした活動家たちがウクライナの「平和(peace)」や「外交的解決(diplomatic solution)」を訴える際には、必ずと言っていいほど、その詳細は曖昧だ。スタインは、停戦は「ペンのクリックひとつ」で可能だというが、他の講演者と同様、すぐに他の話題に移ってしまった。もちろん、今後の交渉の内容は現時点では机上の空論に過ぎないが、少なくとも他の交渉推進派からは、思惑があるにせよ、具体的な提案が出ている。例えば、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、2月24日以前の現状に戻すことを要求している。
しかし、強硬な左派にとって、外交的解決への要求は常に、「ウクライナへの援助を止め、ロシアに好きなようにさせる」ということに尽きるようだ。例えば、イギリスの「Stop the War Coalition」が2022年11月に出した嘆願書について考えてみよう。ウクライナでの戦争による多大な人的犠牲を認めながら、イギリス政府に「武器の送付を止める」ことを求め、その上で「当事者全てが即時停戦と和平交渉の要求の高まりに耳を傾ける」よう促しているのだ。「ウクライナに平和を」とは、ウクライナの費用で、ロシアの条件での平和を意味するのだ。
「平和推進(pro-peace)」の活動家に長時間マイクを持たせると、親ロシア的な傾向が表れてしまう。「アメリカは悪であり、反米の独裁者は善である」という教義に従ったブログ「グレイゾーン」の共同設立者マックス・ブルメンタールが、ゼレンスキーが到着した日にワシントンでロシア当局者を罵倒せず、戦争を止めるためにできることをするように要求したのは偶然ではないだろう。その代わりに、ブルメンタールと彼の同志たちは、ロシアの残虐行為を否定するか軽視する一方で、ゼレンスキー個人を誹謗中傷することに力を注いでいるのだ。
他の多くの西側「反戦(anti-war)」活動家たちは、親クレムリン的な偏見(pro-Kremlin bias)を隠そうともしない。様々な極左活動家の傘下団体であるANSWER連合のスポークスマンであるブライアン・ベッカーは、プーティンの修正主義論文であり戦争正当化文書である『ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について』を彼のインスピレーション源の1つと考えていると述べた。
西側の「反戦」の声が、ロシアの残虐行為を認め、自宅で爆撃されたウクライナの市民に同情を示したとしても、それは必ず、残虐行為がロシアの侵略以外の何かのせいにされる、別の反アメリカ的言辞に押し込められている。この道徳的盲点の典型的な例が、「反軍国主義(anti-militarist)」左派の守護聖人(patron saint)であるチョムスキーである。彼は何度も何度もインタヴューやスピーチの冒頭でロシアの「犯罪的侵略(criminal invasion )」を非難しているが、すぐに戦争の原因を軍産複合体がウクライナに武器を押し付けているとされるアメリカのせいにすることに重点を置いている。彼の世界観は、ウクライナだけでなく、ロシアにも主体性を認めない。ロシアは、邪魔をしないことで回避できる自然災害のような存在として描かれている。この現実的な敗北主義者(pragmatically defeatist)の反戦思想では、ウクライナは何があってもダメなのだ。チョムスキーに言わせれば、ロシアは世界を破壊する力を持っているのだから、ロシアの要求にすべて応じるしかないということになる。それを拒否することで、西側諸国は「恐ろしい賭け(ghastly gamble)」(ニューヨークのイヴェントでチョムスキーがそう呼んだ)に従事していると彼は発言した。
ウクライナをはじめ、大きな隣国に侵略されたり、いじめられたりしている国々にとって幸いなことに、西側の自称反戦左派は、1970年代や80年代のような影響力をもはや持っていない。ニッチなイヴェントでも数百人以上の参加者を集めることはほとんどない。少なくともアメリカでは、ウクライナに対する西側の支持に影響を与えるほど大きな聴衆を動員することはない。しかし、影響力を求めるあまり、少数の人々の心を傷つけることはできるだろう。
※アレクセイ・コヴァレフ:『メドューサ』誌調査担当編集者。ツイッターアカウント:@Alexey__Kovalev
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