古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:ハンター・バイデン

 古村治彦です。

 ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンには金銭スキャンダルが付きまとう。ウクライナや中国でのビジネスに関してのものだ。しかも父ジョーがアメリカ合衆国副大統領に在任していた時期だ。そもそも父ジョーは30年以上連邦上院議員を務めたのだが、その時期にワシントンでロビイストをしていたということもいまから考えれば、「親の七光り、親の威光を使って仕事をしていた」ということになる。アメリカにだって「忖度」はある。「忖度」という言葉の英訳についてはこのブログでも紹介している。

※「「忖度(そんたく、SONTAKU)」、英語にしにくい日本語(2017年3月24日)」↓

http://suinikki.blog.jp/archives/69823078.html

 さて、この息子ハンターの疑惑、スキャンダルについて大手メディアは「黙殺」だった。また、ツイッターなどSNSではこのスキャンダルについて貼り付けたり、記事を紹介したりすることを禁止した。これは、アメリカ国民の「知る権利」を大いに侵害する行為だった。大手メディアがトランプ大統領や彼の家族に関する記事は何でもかんでも掲載し放題だったにもかかわらずだ。

 ある世論調査の結果では、「ジョー・バイデンのバカ息子ハンターのスキャンダル、疑惑について知っていたらジョーには投票しなかった」という有権者が結構な数いるのではないかと推測できる数字が出た。バイデンに投票した有権者の4.6%が、スキャンダルを知らなかったし、知っていればジョーに入れなかったと答えているのだ。

 今回の選挙の結果は総得票数でも、激戦各州の得票数でも僅差だった。従って、バカ息子ハンターの疑惑が知れ渡っていれば、結果は全く違ったものとなっていただろう。ジョー・バイデンが大統領になっても、ハンターのことは父親ジョーにとってアキレス腱、弱点として残り続ける。民主党内で「早くハリスが昇格しないかな」と考えている幹部たちがハンターのことをメディアにリークして、大手メディアが選挙期間中とは異なり、大いに報じることになったら、ジョーは不名誉な辞任も考えられる。生殺与奪の権を他人に握られる。

 ジョー・バイデンにとっては前途多難なことだし、何よりも選挙結果に影響を与えたメディアとSNSの罪は万死に値するということになる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:ハンター・バイデンのスキャンダルをメディアが隠蔽したことはトランプの明確な勝利を盗んだ(Media's hiding of Hunter Biden scandal robbed Trump of clear win: Poll

ポール・ベダード筆

2020年11月13日

『ワシントン・イグザミナー』紙

https://www.washingtonexaminer.com/washington-secrets/medias-hiding-of-hunter-biden-scandal-robbed-trump-of-clear-win-poll

ジョー・バイデンに投票した有権者たちの中で十分な数の人々は彼の息子ハンターの金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンに投票しなかったし、それはトランプが明確な勝利を得るのに十分な数だった。

新しい調査によると、バイデンに投票した有権者のうち4.6%が、バイデンの息子の中国に関する金銭スキャンダルについて知っていれば、バイデンには投票しなかっただろうと答えた、ということだ。

「マクローリン・アンド・アソシエイツ」社がメディア・リサーチ・センター(MRC)のために行った世論調査の結果によると、バイデンに投票した有権者のうち36%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知らなかった。その内の13%がもしスキャンダルを知っていたらバイデンに投票しなかっただろうと答えた。

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MRCは「バイデンからのそのような有権者の移動は、トランプ大統領が選挙人289名を獲得して勝利していたということを意味する」と指摘している。MRCは2016年と2020年の大統領選挙においてトランプ選対のために働いた。

ハンター・バイデンのスキャンダルに関しては、保守的ではないメディアのほとんどが報じなかった。ツイッターとその他のSNSはスキャンダルに関しての報告の多くを禁止とした。

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リンゼー・グラハム連邦上院議員は、バイデンが副大統領在任中にハンター・バイデンが海外で締結したビジネスに関する合意についての新たな発見は選挙結果を左右するだろうと予見していた。

MRC社の会長ブレント・ボゼルは次のように述べている。「隠蔽の影響について私たちは今良く認識している。バイデンに投票した有権者のうち4.6%がハンター・バイデンのスキャンダルについて知っていればバイデンには投票しなかったと答えている。ハンター・バイデンのスキャンダルは選挙の結果を変える可能性があったのである。メディアとシリコンヴァレーはこのことをよく分かっていたのだ。だから、彼らはハンター・バイデンのスキャンダルがアメリカ国民に届かないようにと積極的に行動したのだ。アメリカ国民は真実を知る価値を持つ人々だった。しかし、もはや時遅し、となってしまった」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。 

 ドナルド・トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がっている。トランプ大統領が今年7月25日にウクライナ大統領と電話会談を行い、その中で、ジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター・バイデンについて捜査を行うように求めた。更には、これに合わせてウクライナ向けの援助を一時停止した。これは大統領選挙当選のため、つまり私的な利益のために権力を濫用したということになる。この疑惑は内部告発者からの告発で明らかになり、連邦下院で過半数を握る民主党は弾劾訴追のための調査を始めた。

 これまでこのブログでもご紹介してきたが、弾劾が成立する可能性は低い。弾劾を訴追するのは連邦下院であるが、弾劾が成立するかどうかの裁判を行うのは連邦上院で、しかも3分の2以上の賛成が必要だ。よほどの決定的な証拠が出なければ、弾劾は成立しない。

この疑惑が大統領選挙に与える影響はトランプ大統領側には限定的であり、民主党側に与える影響は大きいと考えられる。トランプ大統領の支持者はこれくらいのことで支持を止めるようなことはない。各種世論調査では共和党支持者で連邦下院による弾劾調査を支持しているのは多くても2割台にとどまる。民主党支持者の場合は9割に迫る勢いだ。

 下の記事にあるように、トランプ大統領弾劾の話ばかりになると、民主党予備選挙の話題は少なくなる。マスコミでも報じられなくなる。上位3名の候補者たちについてはまだ報じられるだろうが、詳細に報道する時間はない。他の候補者となると、報道されることがなくなる。そうなると、支持率や政治資金の面でますます苦しくなる。11月の討論会の参加基準が引き上げられたので、選挙戦から撤退する候補者も複数出てくるだろう。

 民主党側は、ロシア疑惑よりも「筋が良い話」として、ウクライナ疑惑に関して弾劾に乗り出した。しかし、ここに落とし穴がある。それは、このウクライナ疑惑にはジョー・バイデン前副大統領と次男ハンター・バイデンが出てくることだ。

 2014年にマイダン革命と呼ばれる政変によって、親露派のヴィクトール・ヤヌコヴィチ政権が打倒された。しかし、その後のペトロ・ポロシェンコ政権はどっちつかずの政権だった。当時のバラク・オバマ政権はウクライナ国内の汚職体質の改善を求めていた。これはロシアとの関係を切ろうとするものであったと考えられる。しかし、ポロシェンコ政権下でも汚職の一掃は進まなかった。そこで業を煮やしたオバマ政権は、ジョー・バイデン副大統領をウクライナに派遣し、汚職捜査の指揮を執る検事総長の更迭を求めた。これがなされない限りウクライナへの支援パッケージは実行しないとまで発言した。

 2014年の政変で失脚したヤヌコヴィッチ政権の高官だった人物にマイコラ・ズロチェフスキーがいた。ズロチェフスキーはウクライナの天然ガス会社ブリスマ社のオーナーであり、エネルギー関係の大臣を務めていた際に、子会社へ許認可を出していた。また、イギリス当局からは資金洗浄の疑いをかけられていた。

 ズロチェフスキーはロシアに逃亡したヤヌコヴィッチとは行動を共にしなかった。そして、ブリスマ社と自分を守るために、「ブリスマ社は西洋型の立派な会社です」という「飾り付け」を行うことにした。そのために利用されたのがハンター・バイデンだった。バイデンは、アメリカで投資会社を経営していたのだが、共同経営者がブリスマ社の取締役に就任し、その直後にハンターにも取締役就任の話が来た。周囲は、ウクライナは政情不安定であるし、止めておいたらと忠告したが、ハンターは周囲の忠告を無視して取締役に就任した。

 ハンターは年2回の取締役会出席だけで、月5万ドルの報酬を受け取ることになった。年間60万ドルとなる。日本円では6500万円だ。ブリスマ社とオーナーのズロチェフスキーは、ハンター・バイデンを取り込むことで、「ブリスマ社は西洋型の立派な会社です」というアピールに成功した。また、ウクライナ国内向けには、「ウクライナに圧力をかけているジョー・バイデン副大統領の息子が取締役だぞ、自分はアメリカ側と太いパイプがあるのだ」という無言の圧力、アピールをすることができ、結果として、汚職事件などの捜査を免れた。

 トランプ大統領の弾劾調査のためにウクライナ疑惑を調べるとなると、どうしてもバイデン家とウクライナとのかかわりを調べることになる。そうなれば、オバマ政権のウクライナへの内政干渉やハンターがほぼ勤務実態がないのに年60万ドルを受け取っていたということが民主党側によって明らかにされる。これは現在、大統領選挙民主党予備選挙で支持率トップを走っているバイデンにとっては痛手となる。

 バイデンの支持率が落ちて、2位のエリザベス・ウォーレン、3位のバーニー・サンダースが相対的に上昇ということになれば、民主党内部は混乱する。各候補の批判合戦はエスカレートする。そうなると、民主党内部の団結はほころびが出る、2016年の大統領選挙でも、ヒラリー・クリントンを応援する民主党主流派と、バーニー・サンダースを応援する反主流派の亀裂は修復できず、結局、トランプを勝利させることになった。

 もっと大きく見れば、今回の件はホワイトハウス側からの仕掛けではないかとすら思えてくる。トランプ大統領側にも不利益が出てくるが、それ以上に民主党側にとっては痛手となる。「肉を切らせて骨を断つ」ということになる。ジョー・バイデンが身内に甘いという批判に晒されれば、支持率が下がる可能性もある。民主党支持者は大統領選挙に勝つよりも弾劾成立の方を望んでいるという世論調査の結果が出ているが、これは、現在の状況では民主党の候補者ではトランプ大統領を倒すことはできないと民主党支持者でさえも考えているということを示している。

 ウクライナ疑惑は民主党側にとって藪蛇ということになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

弾劾は大統領選挙民主党予備選挙の状況を変化させる(Impeachment shakes up Democratic White House race

エイミー・パーンズ筆

2019年9月29日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/463447-impeachment-shakes-up-democratic-white-house-raceドナルド・トランプ大統領への弾劾調査は大統領選挙民主党予備選挙の状況を変化させている。

民主党系のコンサルタントと戦略家たちは、弾劾に関する調査がエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)をはじめ候補者たちを助けることになる。複数の候補者たちはウクライナ疑惑が出てからすぐに弾劾を求め、そうした人たちは世論調査の支持率を伸ばしている。 

弾劾手続きはジョー・バイデン前副大統領を勢いづかせる可能性が高い。バイデンはウクライナ疑惑の重要な登場人物となっている。ウクライナ疑惑から弾劾調査はスタートする。バイデンは、大統領選挙の本選挙においてトランプ候補が最も恐れる候補者は自分バイデンなので、トランプは自分をスキャンダルに巻き込んだのだと強調している。

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は火曜日のアイオワ州での記者会見で「政治的に見て複雑な問題だ」と述べた。サンダースはバイデンとウォーレンと民主党指名を争っている。

弾劾は、大統領選挙民主党予備選挙に影響を与えることになった。選挙戦が報道の中心的テーマから突然外れてしまうことになった。

疑惑と弾劾をめぐるニュースが駆け巡る中で、候補者たちは選挙運動に注意を払ってもらおうとして記者会見を開こうとする。このような状況は支持率中位の候補者たちにとっては絶好の機会であり同時に困難な状況となる。

選挙戦に残るか撤退するかの瀬戸際にいる候補者たちにとっては、弾劾調査開始のニュースは自分たちにとって都合の悪いものとなり、人々の注意関心を惹くことはほぼ不可能な事態になってしまう可能性が高い。

「2020年大統領選挙の候補者たちにとっての政治的な大地震について話そう」と言った。

子のストラティジストは次のように語った。「今週、弾劾をめぐる激論がメディアの酸素をほとんど消費してしまい、民主党予備選挙の候補者の中で報道されたのはほんの2、3名だった。ウクライナ疑惑をめぐりバイデンについても賛否両論があった。それはウクライナ疑惑の中心に彼がいるからだ。だから彼についての報道があった。しかし、ウォーレン、バーニー・サンダース、カマラ・ハリスについてはほとんど報道がなかった。これが全てだ」。

民主党系ストラティジストのダグ・ソーネルは弾劾手続きは報道を独占してしまっており、「民主党予備選挙をしばらくの間停滞させることになる」と語った。

ソーネルは「これはバイデンと恐らくウォーレンにとって良いことだ」と述べた。この2人は各種世論調査で支持率トップ2を占めている。

バイデンは今年の春に選挙戦に出馬して以降、支持率トップをひた走ってきた。しかし、今月アイオワ州とニューハンプシャー州で実施された世論調査でウォーレンがバイデンを初めて抜き去った。

しかし、報道の内容は完全に変わった。

ソーネルは次のように語っている。「マサチューセッツ州選出の連邦上院議員ウォーレンは支持率を上げている。しかし、ウクライナ疑惑と弾劾調査の開始によってウォーレンに関する報道はなくなる。メディアの関心を集めることが重要だということを考えると、これでウォーレンの勢いは減退するのではないかという疑問が出てくる」。

他のストラティジストたちは、ウォーレンはこの局面を自分に有利に利用できる、それは民主党が過半数を占める連邦下院が動き出す数か月前からウォーレンは弾劾を強く主張していたことを有権者に思い出させることが出来るからだ、と述べている。

民主党系ストラティジストであるエディー・ヴェイルは次のように語っている。「ウォーレンは弾劾を進めることに貢献したことをアピールできる。しかし、当時のエルヴィスのように、ウォーレンは弾劾について人々の関心を喚起させ続ける必要がある。

バイデンに関しては、今回のウクライナ疑惑と弾劾はトランプ大統領と対決する機会となる。トランプ大統領との対決という構図はバイデン選対の幹部たちが最初から描いているシナリオだ。

ニューヨーク州民主党の幹事長を務めた経験を持つバジル・スミクルは次のように述べている。「今回の事態がどれほどバイデンにとって有利に働くかはバイデン次第だ。バイデンは選挙を始めた時からトランプ大統領と一対一の戦いをしたいと望んでいて、それが実現している」。

スミクルは続けて次のように述べている。「バイデンは、民主党の候補者たちとやり合う際にこの一対一で戦ってやるという強さを見せつける必要がある。そのために候補者たちから投げかけられる批判の矢をかわし、時には自分から積極的に批判の矢を飛ばすべきだ」。

バイデン支持の有権者の間では、トランプ大統領と共和党が、前回の選挙でヒラリー・クリントンのEメール問題でやったように、物語を自分たちに都合よく作り上げて、それがバイデンの痛手になるのではないか、という懸念もある。

トランプ陣営は金曜日、バイデンを攻撃する新しいテレビコマーシャルの放映を始めた。

バイデンの側近の一人は次のように述べている。「これは考え過ぎの心配ではない。トランプ政権が成立して以来、いやそれ以前の選挙運動の時から、共和党はこの種の歪曲や捏造をうまく使ってきた。そのために私たちは現在のような状況に陥っているのであり、私たちはこのような状況が2020年以降も繰り返されないにしなければならない」。

ヴェイルは、「バイデン選対はトランプ大統領に仕掛けて、バイデンに対する攻撃に対する反撃を行っている。選対は素晴らしい仕事をしている。バイデン自身がより熱心さを出してくると、選対にとっては追い風となるだろう」と述べている。

サンダースはここ最近トランプ大統領に対する攻撃的言辞のレヴェルを上げている。サンダースは民主党予備選挙の上位候補者たちの中で「もっとも厳しい立場」に立つことになる、それは、サンダース選対は支持率下落を止めようとし、早期に予備選挙が実施される各州での支持拡大に努めているが、マスコミは現在、サンダースの動きを報道する時間がない、とヴェイルは発言している。

そして、他の候補者たちも同様の困難を抱えているが、サンダースはより「強くなっている」とヴェイルは結論付けている。

スティーヴ・イスラエル元連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は以前民主党連邦議会選挙委員会委員長を務めていた。イスラエルは弾劾調査からどの候補者が利益を得るかを予測することは難しいと述べている。

イスラエルは次のように述べている。「正確なことを言うには時期が早過ぎる。はっきりと言えることは、弾劾調査によって民主党支持の有権者たちはトランプ大統領を倒せるという意欲を高めるということだ。各種世論調査が示しているところでは、民主党支持の有権者たちは、自分たちのイデオロギーを共有していなくても、大統領を倒せる候補者を現実的に好むことを示している」。

アイオワ州での党員集会(訳者註:予備選挙の一種)開催まで100日以上残っている現段階で、弾劾調査が始まることは、ハリスのような候補者たちにとってのチャンスにもなり得る。ハリスは民主党支持の有権者たちにアピールするために自分の強さと厳しさを示すことが出来る。

ソーネルは次のように述べている。「ハリスは弾劾について司法に携わっていた背景を前面に押し出すことが出来る。トランプが大統領でいる限り、2020年の大統領選挙でトランプを追及するには最高の候補者と言える」。

しかし、バイデンの側近の一人は、弾劾調査がこれから大統領選挙本選挙までの14カ月で何が起こるかを示す前兆になっていると述べた。この人物は、「何が起きてもおかしくない」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領のウクライナ疑惑について、今回はバイデン家とウクライナとの関係についての記事をご紹介する。今回のウクライナ疑惑のうち、トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省を通さずにウクライナ政府、検察当局と会談を持ち、バイデン家(ジョー・バイデン前副大統領と次男のハンター・バイデン)についての疑惑を調査しようとしたというものがある。

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次男ハンター(左)とジョー・バイデン

 ジョー・バイデン(Joe Biden、1942年―、76歳)はオバマ政権(2009年1月―2017年1月)の副大統領時代に、ウクライナ国内の汚職根絶のために様々な働きかけを行っていた。ウクライナ国内のことにアメリカの副大統領が働きかけを行うということは内政干渉であるが、今回は置いておく。「バイデンは副大統領時代にウクライナ国内の汚職根絶のために働きかけを行った」という事実がある。
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ウクライナ訪問中のバイデン
 ジョー・バイデンの次男ハンター・バイデン(Hunter Biden、1970年―、49歳)は投資会社の共同経営者やワシントンでロビイストをしていた。父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、具体的には2014年にウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス社の取締役に就任し、2018年に退任した。ここでの事実は「アメリカ副大統領の次男ハンター・バイデンが2014年から2019年までウクライナの天然ガス会社ブリスマ社の取締役を務めた」ということだ。

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マイコラ・ズロチェフスキー

 ブリスマ社の創設者でありオーナーのマイコラ・ズロチェフスキー(Mykola Vladislavovich Zlochevsky、1966年―、53歳)は、ウクライナ政府でエネルギー担当の大臣(環境保護・天然資源担当大臣と称する)を2度務めた実力者だ。この大臣時代を含め、権力濫用や荒っぽい手段でブリスマ社を巨大企業に育て上げたために、すろちぇふスキーには常に捜査の手が伸びていた。2014年のウクライナの政変で、新露派のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ(Viktor Fedorovych Yanukovych、1950年ー、69歳)大統領が失脚し、側近たちとロシアに逃亡した。ヤヌコヴィッチ政権で環境保護・天然資源担当大臣を務めていたズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近ではなく、行動を共にしなかった。政変直後は、前政権に関わった高官たちへの激しい追及が起き、ズロチェフスキーも捜査対象となった。また、イギリス国内で資金洗浄の疑いが持ち上がり、ブリスマ社の口座が凍結処分となった(後に解除)。
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ヤヌコヴィッチ(左)とプーティン
 こうした中、捜査を回避し、欧米からの印象を良くするために、ズロチェフスキーとブリスマ社は、欧米の著名人や受けの良い人々を取締役に招聘し、「欧米基準の素晴らしい会社ですよ」というアピールをする作戦を取った。また、「ウクライナでの天然ガス増産に寄与するブリスマ社は、ウクライナのロシアからの経済的独立に大きく寄与する」というキャンペーンも行った。そうした中で、アメリカ副大統領ジョー・バイデン(当時)の次男ハンター・バイデンの名前は光り輝いていた。ブリスマ社はハンターの投資会社の共同経営者をまず取締役に迎え、それからバイデンを招聘した。また、元ポーランド大統領も取締役に迎え、対ロシア独立派を印象付けた。この元ポーランド大統領はハンターの招聘に一役買った。ハンターは2014年から2019年の間に、年に2回の取締役会に出席し、月に5万ドルの報酬を受け取った。

2014年の政変後に大統領になったペトロ・ポロシェンコ(Petro Poroshenko、1965年―、54歳)も親露派で、ウクライナ国内の改革は進まなかった。また、汚職に関する捜査も停止状態になった。せっかく政変で親露派政権を打倒したのにまた同じような政権が出来て、国内改革が進まない状況となったことに、欧米諸国は多額の援助を行う約束していたこともあり、不満を募らせた。
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ペトロ・ポロシェンコ

 アメリカのバラク・オバマ政権は副大統領であるジョー・バイデンをウクライナに派遣し、その不満を伝達させることにした。バイデンはウクライナを訪問し、ポロシェンコ大統領に対して国内改革、特にヴィクトール・ショーキン検事総長の更迭を求め、それが実現しない場合には支援を停止すると圧力をかけた。その後、ショーキンは解任された。

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ショーキン

 これでウクライナ国内の汚職事件に関する捜査が進むと見られていたが、ズロチェフスキーとブリスマ社に対する捜査はあまり進展しなかった。ウクライナ国内の改革派は、「ズロチェフスキーとブリスマ社には欧米諸国との強いコネがある、アメリカ副大統領の次男が取締役を務めているくらいだから」という「忖度」がウクライナ検察当局に働いている可能性があると指摘している。

また、「ショーキンの解任は、ショーキンがズロチェフスキーとブリスマ社の捜査を進める中で、ハンターにも追及の手が伸びることを恐れたジョー・バイデンが副大統領の地位を使ってウクライナ政府に圧力を使ってショーキンを解任させた」という話も出ている。当のショーキンがそのように話しているが、この話は馬鹿げているとウクライナ国内の改革派は切って捨てている。

 ハンター・バイデンのブリスマ社の取締役就任については、周囲の人物で懸念を持っていた人物も多く、ウクライナ国内の政局に巻き込まれる、名前を利用される、といったことを心配して止めるように忠告する人もいた。ここからは推測だが、年に2度の取締役会出席で月5万ドルの報酬は、ハンター・バイデンにとって魅力的だったのだろう。彼はそれまでにも薬物乱用問題や借金問題を抱えていた。逆に言えば、ハンターの苦境をブリスマ社は分かった上で利用したのだろう。

 ジョー・バイデンが副大統領としてウクライナ国内の改革を求める立場にあり、一方、次男ハンター・バイデンは、改革の影響を受けないようにしたいズロチェフスキーとブリスマ社に取締役として利利用されることに関しては、利益相反になるという主張は当時からあった。この点は、父ジョーと次男ハンターはウクライナについて具体的に話をしていない、と両者ともに述べている。トランプ政権側としてはここを弱点として突くということになる。

 ウクライナは親露派政権と親欧米派政権が政変で入れ替わる形で政情は不安定だ。また、政治家たちが大企業家としての顔を持ち、権力を濫用して自分がオーナーの会社に利益をもたらすということをやっている。欧米の基準から見れば大変に送れている。ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役就任の理由を「会社のそれまでのやり方を変革するため」と語っている。しかし、年に2度の取締役会出席だけで変革することなどできない。それで毎月5万ドルの報酬を受け取っていたということは、彼自身が「お飾り」であることを認識し、それを受け入れていたということだ。

 父親は改革を進めようとし、次男はその改革の影響を避けようとする勢力に利用された、ということになる。「アメリカ副大統領」「バイデン」という言葉の輝きと効力の前に、ウクライナ政府はひれ伏すと、ズロチェフスキーは考えたし、実際にそのような側面もあった。そうなると、これはまさに日本でもあった「忖度」ということである。

 大国の狭間で生きる小国というのは、常に神経を尖らせ、大国の意向を「先回りして理解し、それに沿う形でご機嫌を取る」ということをやり尽くしてきている。それが国内でも国外でも行動原理になっている。日本も全く同じだ。

(貼り付けはじめ) 

天然ガス産業の巨頭と副大統領の息子:ハンター・バイデンのウクライナへの(The gas tycoon and the vice president’s son: The story of Hunter Biden’s foray into Ukraine

ポール・ソンネ、マイケル・クラニシュ、マット・ヴァイサー筆

2019年9月28日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/the-gas-tycoon-and-the-vice-presidents-son-the-story-of-hunter-bidens-foray-in-ukraine/2019/09/28/1aadff70-dfd9-11e9-8fd3-d943b4ed57e0_story.html

5年前、当時のジョー・バイデン副大統領の息子がウクライナの無名の天然ガス会社の取締役に就任した。バイデン副大統領の息子が取締役になることは、この天然ガス会社のオーナーである元ウクライナの大臣にとっては大成功と言えるものだった。この当時、オーナーはマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いが捜査を受けており、会社のイメージを一新しようと苦労していた。

ハンター・バイデンにとって、取締役就任という決断にはリスクが伴った。ウクライナはその当時政治的な動乱が頻発し、莫大な利益をもたらす天然ガス産業から元政府高官たちが大きな利益を得ていることに対して調査が行われていた。バイデンの父親はオバマ政権によるウクライナ政府による汚職の処罰を求める努力の中心人物であった。

ウクライナがある地域はこの当時不安定を極めていた。そのため、ハンター・バイデンが経営する投資会社のパートナーはハンターが「ブリスマ・ホールディングス」社の取締役に就任することは間違っていると考え、バイデンともう一人のパートナーとのビジネス関係を解消した、とこの人物の報道担当は本紙の取材に答えた。この人物はジョン・ケリー元国務長官の義理の息子である。

それから5年が過ぎ、父ジョー・バイデンは大統領選挙に出馬している。ハンター・バイデンのウクライナの会社の取締役に就任するという決断は、重大なトランプ大統領に対する内部告発者の告発の背景となっている。この内部告発は2020年の米大統領選挙をめぐる状況を変えつつある。

トランプ大統領が個人弁護士であるルディ・W・ジュリアーニ元ニューヨーク市長と一緒になってウクライナ政府に圧力をかけて「ブリスマ」社を捜査させようとし、バイデン家の役割について調査させようとしたということが暴露された。これに対して、連邦下院では弾劾に向けた調査が開始されることになった。嫌疑はトランプ大統領がウクライナ向けの援助を停止して、来年の大統領選挙での強力なライヴァルとなるであろうバイデンについてウクライナ政府に捜査をさせようとした、というものだ。

バイデン家によって刑法上の罪を犯したことを示す証拠は出ていない。ジュリアーニが主に疑っている嫌疑は、ジョー・バイデンが副大統領として、元大臣でブリスマ社のオーナーであるマイコラ・ズロチェフスキーに対する捜査を止めせせるためにウクライナの検事総長を更迭させるために圧力をかけたというものだ。この嫌疑については証拠がでていない。この嫌疑については元アメリカ政府高官たちとウクライナの反汚職グループによっても提起されている。

ハンター・バイデンの取締役就任という決断によって、バイデン陣営は不愉快な質問に対して説明を迫られるということが起きている。ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナ国内の汚職の根絶のために努力した。一方、息子ハンター・バイデンは政府高官としての地位を濫用したとして捜査を受けていた天然ガス産業の巨頭の会社の取締役となった。ジョー・バイデンは利益相反と見られることを避けるために何らかの行動を取らなかったのはどうしてか?

イギリス人ジャーナリストでウクライナの反汚職非営利団体「反汚職行動センター」の理事を務めるオリバー・ブローは次のように語っている。「ジョー・バイデンはどうしてハンターに向かって“取締役から退きなさい、自分が何をやっているか分かっているのか?”と言わなかったのだろう?」

ウクライナ国民の中には、ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役になったことで、父バイデンのウクライナにおける汚職の根絶の訴えが台無しになったと見ている人たちがいる。

また、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーがアメリカの最高レヴェルとのつながりを持っていることを恐れて犯罪行為に対する捜査を避けたのではないかという疑惑もある。アメリカはこの当時のウクライナの政権と政府にとって最重要の支援者であった。

バイデン前副大統領の補佐官とスタッフだった人物たちは匿名を条件に証言したが、副大統領執務室の中で、ハンターが取締役であることが利益に相反にあたるかどうか議論が私的な会話という形ではあったが起きたと述べた。

ある元補佐官は利益相反である可能性が高いと副大統領に述べた、と語っている。しかし、この会話自体が短いもので、他の補佐官やスタッフたちはこれを問題視したくない、もしくはする必要はないと語っていたと述懐している。

バイデンと一緒に働いたアメリカ政府高官だった人物たちは口をそろえて、息子ハンターの行動がバイデンの副大統領としてのウクライナに対する行動に影響を与えたことは無かったと語っている。

元補佐官は次のように述べている。「何か明確な問題になっているだろうか?確かに問題にはなっている。しかし、実際に何か悪いことが起きただろうか?その答えはノーだ」。

この当時、ホワイトハウスは、ハンター・バイデンは民間人であり、副大統領はウクライナのどの会社にも支持を与えない、と発表していた。副大統領在任中、ジョー・バイデンはブリスマ社での息子の役割についてコメントしなかった。

ブリスマ社でのハンター・バイデンの責務については完全に分かっていない。ハンター・バイデンの顧問弁護士ジョージ・R・メシレスは、ブリスマ社がハンターに報酬をいくら支払っていたのか、ハンターが取締役になった時に会社のオーナーがウクライナ政界の実力者であり、疑惑の中心にいたことを知っていたのかという質問に対して回答を拒否した。

メシレスは声明の中で次のように述べている。「ハンター・バイデンのウクライナにおける行動についての疑問は、トランプ大統領とジュリアーニの犯罪行為から関心をそらすためのものだ。ハンターの行動について精査した人々全てが既に回答を得て満足している疑問を蒸し返している」。

メシレスは続けて次のように述べている。「簡潔に述べれば、ハンターによる犯罪行為はこれまでもなかったし、これから発見される可能性もない」。

バイデン選対は、「ジョー・バイデンはどうして、息子ハンターに対して、利益相反と見られるので、ブリスマ社の取締役から退くように言わなかったのはどうしてか?」という質問に回答することを拒絶している。

バイデン選対の報道担当アンドリュー・ベイツは声明の中で次のように語っている。「ジョー・バイデンはウクライナ国内の革命のために誇り高く戦った。アメリカ、EU、IMF、ウクライナの反汚職グループ全てが支持したゴールを彼は達成した。その結果、ウクライナ政府が素晴らしいものとなった」。

ベイツは続けて次のように語っている。「オバマ・バイデン政権はアメリカ史上、最も強力な倫理政策を作り、実行した政権である。ドナルド・トランプがウクライナ問題を選挙戦に入れ込もうとし、酷い言葉での中傷を行っているが、彼の発言と行動は全く信用されない」。

●変転し続ける政治潮流(Changing political tide

ハンター・バイデンがウクライナに関わるようになった当時、元ソ連を構成したウクライナの政治状況は混乱していた。2014年初め、キエフの独立広場で暴動が起きた。これはマイダンとして知られている。暴動によって、政変が起き、最終的に親露派の大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチ率いる政権は崩壊し、ヨーロッパとアメリカとの緊密な関係を志向するウクライナの政治家たちが権力を握った。

追い落とされたヤヌコヴィッチと「ファミリー」と呼ばれた側近グループは、キエフの新政権によって訴追されることを恐れてロシアに逃亡した。新政権は諸外国に対してヤヌコヴィッチの同盟者たちの財産を凍結するように通知を出した。ヤヌコヴィッチ政権の徴税担当の大臣と検事総長は熱狂の中の追及に恐れをなし、ロシアに逃亡する際に空港の金属探知機を押し倒して飛行機に殺到するほどであった。

この政変によってズロチェフスキーは問題に直面することになった。ズロチェフスキーは、親露派の政治家に長年属していたが、彼はヤヌコヴィッチの同盟者ではなかったが、同時にキエフで権力を掌握したばかりの親欧米の政治家という訳でもなかった。

ズロチェフスキーは2度にわたり、ウクライナ政府のエネルギー部門のトップを務めた。一度目はレオニード・クシュマ大統領時代、そして、二度目はヤヌコヴィッチ時代で環境保護担当大臣を務めた。ブリスマ社の子会社エスコ・2度の大臣を務めた時期、後にブリスマ社の一部門となる複数の石油会社と天然ガス会社に対して事業にとって重要な許可や免許が多く出されていた。ウクライナ政府の許認可担当部局の記録によると、ブリスマ社の子会社であるエスコ・ピヴニッチ社とパリ社には多くの許認可が出された。

その後、ズロチェフスキーはウクライナ最大の天然ガス生産会社のオーナーになり、ウクライナ屈指の大富豪となった。

ブリスマ社は、同社が獲得した許可は全て合法的に発せられたものだと主張している。ブリスマ社は2015年に『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対して、「ズロチェフスキーは公僕として法律の文字と精神に従っている。彼はいつでも公正さと政策決定において最高度の道徳と倫理の基準を守ってきた」と答えた。

2014年、ズロチェフスキーはヤヌコヴィッチの側近グループから脱落し、大臣から副大臣に降格された。

2014年3月、ヤヌコヴィッチがロシアに逃亡してから数週間後、キエフでは前政権の政府高官たちの汚職への追及が過熱していた。イギリスの裁判所の記録によると、この時期イギリスでは、イギリス当局がズロチェフスキーに対する資金洗浄疑惑で捜査を開始し、ブリスマ社のイギリス国内の銀行口座が凍結された。口座には数百万ドルが入っていた。イギリス当局による捜査は、BNPパリバ銀行から疑わしい行動の報告を受けてのことだった。

裁判所の記録によると、口座に入っていた資金のうち、2000万ドルがセルゲイ・クルチェンコに提供された。クルチェンコはヤヌコヴィッチに近い同盟者でウクライナ財界の大物であった。この取引の数週間前にヨーロッパ連合によって取引禁止処分を受けていた。ズロチェフスキーの代理人は、この資金は合法的な売買の代金として送金されたものだと主張した。

ズロチェフスキーにとって、資産凍結はそれから司法上のトラブルが続く年月の始まりを告げる出来事となった。これが後々にはウクライナの検事総長と反汚職部局による刑法上の犯罪捜査にまで拡大していった。イギリスでは、結局ズロチェフスキーの犯罪行為で訴追されることはなく、資産凍結は最終的に解除となった。

ズロチェフスキーとブリスマ社は本紙からの繰り返しのコメント依頼を拒絶した。

2017年、ブリスマ社は、同社とズロチェフスキーに対する全ての訴訟手続きは取り下げられたと発表した。2017年2月、同社のアメリカ人弁護士ジョン・ブレッタは、ズロチェフスキーは全ての捜査に真摯に協力し、ウクライナの検察当局は、ズロチェフスキーが自身の立場を濫用したことを示す「証拠はなかった」と発表したと述べた。

しかしながら、ウクライナ政府国家反汚職局は金曜日、ズロチェフスキーが環境保護担当大臣時代にブリスマ社に出された免許に関し捜査を行っていると発表した。ズロチェフスキーが大臣だった期間、ハンター・バイデンはブリスマ社と関係を持っていなかった。

●欧米の人物や組織を使った改造(A Western makeover

イギリス当局が資金洗浄についての捜査を開始してから2か月もしないうちに、ハンター・バイデンはブリスマ社の取締役になった。この当時ハンターが、イギリス当局がイギリスで捜査を進めていたことを知っていたかどうかは明確になっていない。当時、ズロチェフスキーがブリスマ社を所有していることはあまり知られていなかった。

2014年の政変が起きる前、アメリカ副大統領の息子を取締役に迎え入れることは、ブリスマ社にとって信頼性を高めるための努力であった。ブリスマ社はアメリカとヨーロッパで投資銀行家をしているアラン・アプターを取締役会長に迎え入れた。また、元ポーランド大統領が取締役に就任した。ブリスマ社は経営陣を刷新し、国際的に業務を行っている会計事務所を起用し、財政状態を監査させることにした。

キエフでの政変によって政権が変わって数週間も立たないうちに、著名なアメリカ人とヨーロッパ人を会社の取締役会に迎え入れることは、ウクライナ国内に対して「ズロチェフスキーには欧米の有力者との強力なコネがある」というメッセージを送ることになった、とイギリス人ジャーナリストのブローは述べている。ブローはタックスヘイヴンとペーパーカンパニーについて『マネーランド』という本を出版し、その中でズロチェフスキーについて書いている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは次のように述べている。「有名な家族に連なる人々を取締役会に迎えることで、ブリスマ社は西洋の、正当な企業のように見せることが出来るようになった。ブリスマ社はウクライナ国内での天然ガス採掘の許認可を大変に疑いの多い手段で得た」。カレニクは更にこのような「表面上の飾りつけ」は、疑いの多い方法で集めた原資を合法なものに見せようとする実力者たちや政府高官たちにとって、一般的な手段となっている。

現在でも取締役会長を務めているアプターにコメントを求めたが回答がなかった。ブリスマ社は、許認可は合法的に取得したものだと主張している。

ブリスマ社はまた同社の天然ガス生産はエネルギー面でのウクライナのロシア依存の度合いを低下させるものだと強調し始めた。この主張はワシントンにアピールした。ブリスマ社はワシントンにあるシンクタンクであるアトランティック・カウンシルに寄付をし始めた。

ハンター・バイデンがブリスマ社の取締役に就任する1か月前、父ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナを訪問し、ウクライナがエネルギー生産を増加させるための支援パッケージの提供を発表した。

バイデンは次のように述べた。「もし今日ここでロシアに対して“あなた方の天然ガスなどいらない”と言えたらどうだろうと想像して見て欲しい。現在とは全く違う世界になるだろう」。

ブリスマ社を立て直した時、ズロチェフスキーはウクライナ当局の捜査を受けている途中だった。2015年、検察当局は2つの嫌疑で元環境保護担当大臣について捜査した。この当時に『ウォールストリート・ジャーナル』紙が閲覧した検事総長事務局の発表した書類によると、1つは違法な手段での蓄財、もう1つは権力濫用、文書偽造、横領についてであった。ズロチェフスキーはこれらの嫌疑について犯罪行為を行ったことを否定した。

●父親たちと息子たち(Fathers and sons

ジョー・バイデンと長年一緒に働いた人々は異口同音に、ハンター・バイデンのビジネスについては長年にわたり、ジョー・バイデンと議論することは難しかったと述べている。ジョー・バイデンが連邦上院を務めていた当時、ハンターはワシントンのKストリートでロビイストを務めていたこともあった。

バイデンの家族は数々の悲劇に見舞われた。ハンター・バイデンは1972年に自動車事故に遭い、彼は生き残ったが母親と妹は亡くなってしまった。長兄のボウはこの時の自動車事故では生き残ったが、2015年に脳腫瘍のために亡くなった。2017年に離婚の際の書類によれば、ここ数年、ハンター・バイデンはアルコール中毒と借金に苦しんだということだ。

2014年のウクライナでの政変が起きた時期、イェール法科大学院の卒業生であるハンターは、「ワールド・フード・プログラム・USA」は無給の会長、投資会社「ローズモント・セネカ」社のパートナー(共同経営者)、ニューヨークの法律事務所「ボイス・シラー・フレクスナー」の顧問を務めいていた。

ハンターの投資会社のパートナーだったデヴォン・アーチャーはブリスマ社の取締役に就任した。それからすぐにハンター・バイデンにもブリスマ社から取締役就任以来の書簡が届いた。

別のパートナーたちは取締役就任に対して深刻な懸念を持っていた。

ジョン・ケリー元国務長官の義理の息子クリス・ハインツはアーチャーに対して、ブリスマ社の取締役に就任することは良くないと伝えた、とハインツの報道担当は語っている。ハインツはウクライナ国内の汚職事件多発の記事、地政学上のリスク、情勢についての疑問について懸念を持っていた。

ハインツの報道担当クリス・バスタルディは本紙の取材に対して次のように述べた。「ハインツ氏はアーチャー氏に対してブリスマ社と仕事をすることは受け入れられないと強く警告を発した。アーチャー氏は、自分とハンター・バイデンは、会社のパートナーとしてではなく個人として機会を掴みたいのだと述べた」。

投資会社は結局分裂した。

バスタルディは「この問題についての判断力の欠如は、ハインツ氏がアーチャー氏とバイデン氏とのビジネス関係を解消するための主要な理由となった」と述べた。バスタルディは更にハインツとハインツの投資会社はブリスマ社と関係していないと付け加えた。

アーチャーにコメントを求めるための連絡はできなかった。アーチャーの弁護士はコメント依頼に回答しなかった。

ハンター・バイデンの弁護士メシレスは、ハンター・バイデンがハインツの警告について知っていたかという質問に回答しなかった。

ハンター・バイデンは今年初めに本紙の取材に対して、ブリスマ社の取締役に就任したのは既にブリスマ社の取締役を務めていたアレクサンデル・クファシニェフスキ元ポーランド大統領の積極的な働きかけがあったからだと答えた。ハンター・バイデンは声明の中で、ウクライナのエネルギー面での独立はロシア大統領ウラジミール・プーティンからの狡猾な援助の申し出を断るために重要だという考えをクファシニェフスキと共有していたと述べている。

アレクサンデル・クファシニェフスキはインタヴューの中で、「ハンター・バイデンは国際政治に関する知識を取締役会にもたらした、取締役会は年に2度開催されていた」と述べている。クファシニェフスキはハンターに「この会社はウクライナの独立にとって大変重要な存在であると思う」と語ったと述べている。

投資銀行家で現在もブリスマ社の取締役会長を務めているアプターは、当時のアメリカ副大統領の息子を取締役に選任したことについて、「彼の父親ではなく、完全に実力に基づいて」行われたと述べている。

バイデン選対は、ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社の取締役就任を知ったのはマスコミの報道からであったと主張している。

今年初め、ハンター・バイデンは本紙に対して声明を出した。その中で次のように述べている。「私は父と会社のビジネスや取締役としての仕事について話したことはない」。ジョー・バイデンは最近、アイオワでの演説の中で同様のことを述べた。ジョー・バイデンは「私は息子の海外でのビジネス取引について話したことはない」と述べた。

ハンター・バイデンは『ニューヨーカー』誌の取材に対して、父ジョー・バイデンがハンターのブリスマ社での仕事について一度だけ言及したことがあることを示唆した。

ハンターは「父は、“お前が自分自身何をやっているか分かっていると思っているよ”と言ったので、“分かっているさ”と答えました」と述べている。

ハンターが取締役に就任した時、ブリスマ社幹部たちは、ハンターが法律問題を監督することになるだろうと述べた。しかし、ハンターの役割は法律関係にはとどまらなかった。本紙に対する声明の中で、ハンター・バイデンは「ブリスマ社の取締役に就任したのは、同社の透明性、コーポレイト・ガヴァナンス、責任に関するこれまでのやり方を改革することを助けるため」だったと述べている。同時に声明の中でハンター・バイデンは彼の仕事の具体的な中身については説明しなかった。 

「トランスペレンシー・インターナショナル」はウクライナを世界で最も汚職が蔓延している国の一つと認定している。ウクライナでは財界人たちが自分たちの経済的利益を増やすために、検察官を選任し、裁判所を利用する。ハンター・バイデンは結果的にそのような国に関わってしまい、いろいろなことに巻き込まれてしまうことになる決断をしてしまった。

●更迭された検察官(A fired prosecutor

2015年のキエフでは不満が高まっていた。親欧米の大統領ペトロ・ポロシェンコによる汚職根絶の試みは遅々として進んでいなかった。

ウクライナのジャーナリストたちはズロチェフスキーのような元政府高官たちが莫大な富を築いていることを次々と記事やテレビニュースとして発表していた。ある時には、ドローンを使って、キエフ郊外にある2つの並んでいる大豪邸を撮影することもあった。この2つの大豪邸はズロチェフスキーの家族と協力者の所有となっている。ズロチェフスキーの娘は、「ズロッチ」という名前の高級店を新たに開店させた。店名は苗字をもじったものだ。この高級店ではわに革やオーストリッチの靴が販売されていた。この当時、ウクライナは厳しい経済不況に苦しんでいた。

人々の汚職に対する怒りの矛先は検事総長ヴィクトール・ショーキンに向かった。アメリカ政府やEU諸国の政府の高官たちはショーキンが積極的に動いていないと見ていた。

2015年9月の演説で、この当時の駐ウクライナ米国大使ジョフリー・ピヤットは、政府高官関係の汚職事件を追及していないとして、ショーキンが率いる検察当局を表立って批判した。

ピヤットは「私たちは、検察当局が汚職に対する捜査を支持しないだけでなく、検察官たちが明確な汚職事件について捜査することも妨害していることをたびたび目にしてきた」と語っている。

ピヤットは特にウクライナの検察当局がイギリス当局に対して、ズロチェフスキーの資産凍結を正当化するための十分な情報を提供しなかったことを取り上げ批判した。十分な情報がなかったために、イギリスの裁判所はズロチェフスキーを自由にさせることになった。

ピヤットは次のように述べた。「ウクライナ検察当局はイギリス当局ではなく、ズロチェフスキーを弁護していた彼の弁護団に複数回にわたり書簡を通じて情報を提供した」。

ピヤットは、ズロチェフスキーの弁護団に書簡を通じて情報を提供した検察官や政府高官たちについて捜査し、ズロチェフスキーの嫌疑を「なかったことに」した責任がある者たちは更迭すべきだと訴えた。

このような批判はアメリカとEU諸国の政府高官たちは共通して持っているものだった。反汚職の動きが遅々として進まないのはショーキンが検事総長であるからだ、という考えが広く共有されていた。改革を進めることを条件にして欧米諸国から多額の援助がウクライナに提供されていた。

アメリカ政府は、オバマ政権のウクライナ政策の伝達者としてバイデン副大統領を選んだ。副大統領をウクライナに向かわせることで、アメリカがいかにウクライナに不満を持っているかを示すことになった。

ジョー・バイデンは2015年にウクライナ議会で演説を行った。その中でバイデンはウクライナに対して汚職の根絶を求めた。そして、「検事総長局には徹底的な改革が必要だ」と述べた。

バイデンは後に、ポロシェンコ大統領との会談の時にはより率直に、ショーキンに対する行動がなければアメリカは1億ドル規模の借款を停止すると述べたと述懐している。

バイデンは2018年に外交評議会で行った演説の中で次のように語った。「私はポロシェンコや高官たちを見ながら次のように言った。“私は6時間以内にこの国から出る。もし検事総長を更迭しないなら、あなたたちは金を手にすることはできない”と。“いいかな、ショーキンは更迭される、そしてしっかりした人物を後任に据えるんだ”とね」。

ショーキンはバイデンについての情報をジュリアーニに提供した。ショーキンは今年初めに本紙の取材に応じ、その中で、自分が2016年3月に検事総長を更迭されたのはこの当時ブリスマ社について捜査をしていたからだと語った。ショーキンは、検事総長を続けることが出来ていれば、ハンター・バイデンの取締役としての適格性について疑義を提示していただろうとも述べている。ショーキンは「ハンター・バイデンはウクライナでの仕事の経験もなく、またエネルギー部門での仕事もしたことがなかった」と指摘した。

しかし、元ウクライナ政府高官、元アメリカ政府高官たちは、この当時ズロチェフスキーへの捜査は停止状態だったと述べている。

反汚職行動センターの事務長ダリア・カレニクは、ウクライナ国内で反汚職活動をしている自分たちはショーキンが検事総長として汚職について捜査を進めていなかったことを批判し、汚職事件の捜査を進めるためにも彼の更迭がなされることを望んでいたと述懐している。

イギリス人ジャーナリストのブローは、ジュリアーニがバイデンに関して持ち出した嫌疑である「ズロチェフスキーとブリスマ社を守るためにショーキンを更迭させたというのは、意味不明で馬鹿げている」と述べた。ショーキンの検事総長時代、検察庁自体、幹部たちがダイアモンドや数千ドルの現金を賄賂として受け取っていたというスキャンダルに見舞われていたとブローは指摘している。 

ブローは「しかし、ショーキンの件とは別の事実については疑問が残る。それは、ジョー・バイデンは自分の息子がバイデンの名前を使ってお金を得ることを阻止すべきだったのでは、というものだ。その答えはそうすべきだっただろう、というものだ」と語っている。 

ショーキンの後任ユーリ・ルツェンコは本紙の取材に対して、ハンター・バイデンはウクライナの法律を破っていないと確信していると述べた。しかし、ある時点ではルツェンコの様々な発言によって、ジュリアーニはバイデンに対する捜査について疑義があると考えるようになったことも事実だ。

ルツェンコは「ウクライナの法律に照らして、ハンター・バイデンは法律を破るようなことはしていない」と語っている。

今年5月にジョー・バイデンは大統領選挙出馬を表明した。ハンター・バイデンはその前にブリスマ社の取締役として次の任期も務めないという決断を下した。

ハンター・バイデンは今年7月の『ニューヨーカー』誌の取材記事の中で、これまでの人生における苦難と薬物乱用について赤裸々に語った。その中で彼は次のように述べている。「ドナルド・トランプが、彼を大統領選挙で破ることが出来ると考えている人物に対する攻撃材料として私を選び出すことなど全く予想できないことでした」。
ハンターは記事の中で自分のために父ジョー・バイデンを騒動に巻き込んでしまったことについて父に謝罪したと語った。

ハンターは次のように語っている。「父は“私もまた残念に思っている人の一人だよ”と言い、それから2人でより悲しい思いをしている人について長い時間話しました。私たち2人はこのようなことを払しょくするための唯一の解決策は勝つことだという認識で一致しました。父は“いいかい、これからやらねばならないんだ”と言いました。より高い目的があり、そこに向かっていかねばなりません」。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 今回はウクライナ疑惑について、より短い記事をご紹介する。前回は長い記事を何本もご紹介したので読みにくいものとなってしまった。

  今回アメリカで大きな議論となっているウクライナ疑惑について、簡単に言うと、「今年の7月25日にトランプ大統領がウクライナ大統領に電話をして、自分の大統領選挙での再選にとって強敵となるジョー・バイデンと息子についての振りとなる情報を見つけるために捜査をして欲しいと述べた。そして、捜査をさせるための圧力として、アメリカがウクライナに与える国家安全保障援助を停止してみせた。これには大統領周辺の人物も絡んでおり、個人弁護士のルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長もウクライナに働きかけを行った。7月25日の通話記録は国家機密など含まれていなかったが、外に漏れることがないように、より厳しい管理をするようにホワイトハウス高官たちが働きかけた」というものだ。簡単に書いてもこのように長くなってしまう。

  ジョー・バイデンは副大統領としてウクライナに関わり、バイデンの次男ハンター・バイデンはウクライナの天然ガス会社ブリズマの取締役となった(2014―2018年)。これら「バイデン家」とウクライナとのかかわりの中で、ジョー・バイデンの選挙戦にとってマイナスの情報がないかをトランプ大統領がウクライナ政府に探させようとした、ということになる。これが事実ならば権力濫用であり、内政干渉であり、極めて重大な問題だ。

 内部告発者からの告発の書簡の公開をトランプ政権が拒否したことで、連邦下院民主党は弾劾に向けた調査を正式に開始すると発表した。その後、告発書と通話記録の要約が公開された。既に書いたように、弾劾が成立する可能性は今のところ低い。それでも民主党としては今回の話が筋の良いものであると考えているようだ。また、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っているバイデンを狙ったものということで、受けて立つということにもなったのだろう。

  トランプ大統領陣営がバイデンを大統領選挙で脅威に感じているということはあるだろうが、スキャンダル探しを外国政府に圧力をかけてまでやらせようとするだろうかということは前回も書いたが今でも疑問に思っている。

 バイデンの名前が出たことはバイデンにとっては痛手となる。日本のことわざで言えば「火のない所に煙は立たぬ」なのか「痛くもない腹を探られる」ということなのかは分からない。しかし、バイデンを支持しない人々(共和党支持者と民主党支持者で他の候補者を支持している人たち)には何かしらのイメージを与えることになる。

 バイデンのマイナスは民主党の他の候補者、特に三強を形成しているエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースにとってはプラスとなる。トランプ大統領にとって誰が与(くみ)しやすしとなるかと言えば、ウォーレンかサンダースとなる。全く根拠のない想像での話でしかないが、トランプ自身がこのスキャンダルを仕掛けたのではないかとさえ思えてしまう。

 そして、私は、バイデン家とウクライナの関係の具体的内容について関心を持っている。このことについては近いうちに調べたことをご紹介できればと思う。

(貼り付けはじめ)

バイデンの2020年大統領選挙に対する家族の問題(Biden's 2020 family problem

マイク・アレン、マーガレット・タレヴ、アレクセイ・マクカマンドアップ筆

2019年9月27日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/joe-biden-family-hunter-ukraine-donald-trump-2020-93dec9f4-cd1b-4235-b538-7d902a81ba89.html

ジョー・バイデンの出馬を押しとどめていたのはジョー・バイデンの家族だった。現在、バイデンの家族がバイデンの足を引っ張る可能性が出ている。

何が問題か:エリザベス・ウォーレンが各種世論調査の支持率で追いつている中で、ジョー・バイデン前副大統領は家族に関する疑惑と論争について答えている。

父ジョー・バイデンが副大統領を務めていた時期、次男ハンター・バイデンはウクライナのガス会社の有給の取締役を務めた(現在は退任)。

民主党最高幹部たちはウクライナをめぐるスキャンダルがバイデンにとっての大きな妨げになることを懸念している。なぜならばバイデンが人々の間で不人気な問題とプロセスに関係することになり、ハンター・バイデンに関する質問も避けることはできないからだ。

事実確認記事や「確かな話」を掲載する記事が出ても、巻き添えで負ってしまう損害(collateral damage)を避けることはできないだろう。

今回大統領選挙には関係していないある民主党系ストラティジストは、ハンター・バイデンをめぐる問題は、ウクライナでの彼のビジネス活動に限定されているだけではなく、彼の全ての個人的、ビジネス上の問題に及んでいる、としている。

ハンター・バイデンに関しては全て7月に発行された『ニューヨーカー』誌に掲載されたアダム・エントスの記事で詳述されている。エントスはハンター・バイデンとバイデン選対から多大な協力を得ていた。エントスは記事の中で次のように書いている。「ハンター・バイデンは父の選挙運動を危機に晒すことになるのか?ジョー・バイデンの息子ハンターのビジネス上の取引と騒がしい個人生活について様々な調査がなされている」。

民主党系のストラティジストたちは口を揃えて、「トランプは冷酷に、ハンターに関するスキャンダルを歪めながら利用するだろう」と指摘している。

トランプの計算は心理学上の効果を狙ってのものだ。トランプ大統領はバイデンが彼の息子に関して懸念していることを分かっている。

バイデンにとってプラス面となるのは、トランプ大統領がこのように挑発的な言動をしているのは、トランプ大統領にとってバイデンが最も強大な脅威となっていることを裏付けているというものだ。

ヒラリー側からの視点:ヒラリー・クリントンの長年の側近フィリップ・レインズは本誌に対して、この光景は以前にも見たことがあると述べた。

レインズは次のように述べた。「これは経験、人生、過去の現実とは何も関係していない。人々は自分たちが望む形でイメージを作るものだ。これは誇張などを超えたものだ」。

バイデン選対の思惑:バイデンは何も悪いことをしていない。

バイデンの顧問の一人は私に対して、ウクライナスキャンダルからの巻き添えによる損害は小さいものとなるだろうと述べた。この人物はその理由として、バイデンは副大統領だったので、何も悪いことをしていなくてもこのようなスキャンダルに巻き込まれやすいものだ、と人々は考えるからだとしている。

バイデン選対は資金集めに関して、選挙運動開始2週間目以来最高の資金を今週集めたと発表した。

バイデンはこれからも医療制度、気候変動、銃規制について主張し続ける予定だが、トランプ大統領について無視することはない。

結論:弾劾に関する調査から最大の政治的利益を得るのはエリザベス・ウォーレンということになる。

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内部告発者は、トランプ大統領が権力を濫用して、外国への介入を強要したと告発した(Whistleblower alleges Trump abused power to solicit foreign interference

ザカリー・バス筆

2019年9月26日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/trump-ukraine-whistleblower-complaint-released-e2524316-fb2f-

418e-ae57-51892e709a4c.html

トランプ大統領とウクライナに関する論争の中心には内部告発者からの告発がある。内部告発者はトランプ大統領が「2020年の大統領選挙について外国からの介入を誘うために大統領としての権力を利用」したとし、ルディ・ジュリアーニとビル・バー司法長官もこの行為に関与しているようだと指摘している。

何故問題なのか:トランプ政権は最初告発書を後悔することを拒否した。その結果、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は火曜日に正式に弾劾に向けての調査を開始するという決定を行うことになった。ペロシ議長の決定の発表からの圧力を受けて、トランプ政権は告発書とその前にトランプ大統領とウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーとの間の7月の通話記録の要約を公開した。

要点:内部告発者は告発した行動を分類している。この行動について、政府高官たちは、「アメリカの国家安全保障に関しリスクを高め、アメリカの国政選挙に対する外国からの介入を防ぐためのアメリカ政府の努力を台無しにする」ものだと考えていると内部告発者に述べた。内部告発者は行動を4つに分類している。

1. 7月25日の大統領による電話:複数のホワイトハウス高官が内部告発者に語ったところによると、彼らはウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとトランプ大統領との間の電話の内容を知り、「大いにショックを受けた」ということだ。通話の中で、トランプは「ウクライナ大統領が2020年の大統領選挙で再選を助けるような行動をとるように圧力をかけようと」した。

2.この通話の記録へのアクセスを制限する行動:内部告発者は次のように述べている。7月25日の電話の後、ホワイトハウス高官たちは「この通話に関する全記録、特に逐語的に文字起こしされたデータを“厳重に保管”するように介入した」。ホワイトハウスの弁護士たちは、ホワイトハウスのスタッフに対して電子データにした通話記録を、機密情報を含むデータを保管するために使われる別のシステムに移すように指示した。通話記録には国家安全保障に関連する内容は含まれていなかった。

告発書の脚注で言及されているところでは、「トランプ政権が“国家安全保障上微妙な情報を守るからではなく、政治的に微妙な情報を守ることを目的として”、別のシステムを利用しており、今回が初めてのことではない」ということであった。

3.継続される懸念:この通話がなされた後、駐ウクライナ米公使カート・ヴォルカーとEU駐在米大使ゴードン・ソンドランドはウクライナ政府高官たちと会談し、彼らに対してトランプ大統領からの要求にいかにして「対処」すべきかに関し助言を与えた。トランプ大統領の個人弁護士ルディ・ジュリアーニはマドリッドに飛びゼレンスキー大統領の補佐官と面会し、その他のウクライナ政府高官たちと接触し、7月25日の通話に関する「直接的な補足」を行った。

4.7月25日の大統領の通話に至るまでの状況:内部告発所の中で内部告発者が最も多く言及しているのは、ウクライナの検事総長ユーリー・ルツェンコ(2019年8月29日に退任)が2019年3月にジョー・バイデンを含むアメリカ政府高官たちに対する汚職事件の捜査をどのように遂行していたかの詳細だった。この告発が出た後に、ジュリアーニがルツェンコに2度面談し、2020年の大統領選挙でのトランプの再選に関連して捜査を求めるために5月にはウクライナを訪問する計画を立てていた、というニュースが出た。

複数のアメリカ政府高官たちは内部告発者に対して、ジュリアーニの国家安全保障政策決定プロセスを迂回していることに対して「深く憂慮」していると語ったと述べている。

複数のアメリカ政府高官たちはまた内部告発者に対して次のように語ったと述べている。「ウクライナ政府の高官たちは、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との間で電話か会談が行われるかどうかは、ルツェンコとジュリアーニによって話し合われた諸問題について“協力”姿勢を見せるかどうかにかかっているということを信じるようになっていった」。

7月中旬、内部告発者はトランプ大統領が行政管理予算局に対してウクライナ向けの国家安全保障援助を全て一時停止するように命令した。行政管理予算局の高官たちはその命令の根拠については分かっていなかった。

明記すべきこと:内部告発者は今回の告発内容について自分で直接目撃していない。しかし、内部告発者に語った政府高官たちの言葉は正確だ、「それは、ほぼ全てのケースで、複数の高官たちが個別で話す内容はそれぞれ一貫していた」からだとも述べている。

情報機関の監察官マイケル・アトキンソンもまた内部告発の内容は信頼性があると述べている。

内部告発から新しい詳細が出ることでこの話は更新されている。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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決定版 属国 日本論

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領にウクライナ疑惑が持ち上がった。アメリカ政府のある情報機関の内部告発者(whistle blower)が国家情報長官代行や連邦上下両院の情報・諜報委員会委員長に宛てた書簡の中で、トランプ大統領のウクライナ疑惑を告発した。この書簡の内容が機密指定解除され、公表された。その内容に批判が集まり、大統領擁護の主張もあり、議論が白熱している。民主党側はロシア疑惑では弾劾に対して腰が重かったが、今回、弾劾に向けて調査を始めるということになった。
donaldtrumpukranianscandal001
毎日新聞の記事から

 内部告発者の告発内容をまとめると、2019年7月25日にドナルド・トランプ大統領はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った。その中で、トランプ大統領は、ウクライナの石油関連企業の役員だった、ジョー・バイデン前副大統領の次男ハンター、更にはバイデン自身のウクライナとのかかわりを捜査してもらいたい、と発言したということだ。
 ゼレンスキー大統領が「協力する(play ball)」するかどうかでアメリカからの国家安全保障に対する援助4億ドルを停止するかどうか決めるという交換条件を持ちしたとも告発されている。これは不当な圧力をかけたということになる。内政干渉(intervention)ということにもなる。実際に議会で承認されたウクライナ向け援助の実行がトランプ政権によって遅延させられたことは事実で、トランプ大統領はこのことについて、他のウクライナの同盟諸国に援助を真剣に考慮、実行させようと望んでのことだったと釈明している。

  バイデンは現在、大統領選挙民主党予備選挙でトップを走っており、2020年大統領選挙本選挙でのトランプ大統領にとっての強力な競争相手となる可能性が高い。そのために、「大統領が大統領執務室で公務を行う中で、自分の私利私欲のために立場を利用した」という批判が出ている。

 アメリカ大統領が大統領執務室(オーヴァルオフィス)で使った電話の通話記録はその内容が一言一句記録される。それは文字情報となるが、現在はデータ化され、コンピューターシステムに保管される。国家機密が含まれる場合にはより安全度が高い別のシステムに保管される。7月25日のゼレンスキー大統領との会話には国家機密は含まれていなかったが、機密が含まれる通話記録と同じ扱いとなった。この通常とは異なる取り扱いを行ったのはトランプ大統領の周辺のホワイトハウス高官たちで、その理由として、「国家安全保障上の懸念ではなく、この通話記録が漏れると政治的に大きな打撃となるから」というものであった。また、その他の通話記録も同様の取り扱いをしているとも言われている。

 大統領の個人的な弁護士をしているルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が国務省抜きでウクライナとのやり取りを行っていたことも告発された。国務省を迂回して、ウクライナ政府高官とやり取りをし、大統領のメッセージを届けたという疑惑だ。ジュリアーニは圧力があったことを認めている。

 ロシア疑惑と同様、今回の疑惑も大きな柱は「アメリカ大統領選挙と外国のかかわり」ということになる。ロシア疑惑の際には、トランプ候補(当時)の陣営がロシア政府に対して、ヒラリー・クリントンにとって不利な情報の提供を求めたという疑惑であったが、これは嫌疑不十分となっている。今回の場合はウクライナ政府にバイデン家の情報の提供を求めたという形になっている。 

 私が疑問なのは、トランプ側がバイデンにとっての不利な情報が欲しいというのは理解できるが、トランプ大統領自らが記録に残る大統領執務室からの電話を使ってこのようなことを頼むだろうかということだ。こういう汚れ仕事は側近のうちのそれにふさわしい人物にやらせるはずだ。ばれてしまっては意味がない訳で、今回ばれてしまったのでは失敗ということになる。 

 大統領が大統領選挙について側近たちと話をして、バイデンが脅威だと感じたら、それ相応の対策をするようにと言えば、それで事足りるはずだ。トランプ大統領は何でも自分でやらねば気が済まないからだ、軽率な人物だからだという評価もある。しかし、そもそも今回の疑惑は、匿名の内部告発者による情報提供から端を発している。その信頼性について100%と言うことはできない。「トランプ大統領ならやりそうなことだ」ということだけでは弾劾(辞めさせること)まではいかない。

 大統領弾劾の手続きは連邦下院で審理して弾劾相当ということになれば過半数の賛成で訴追することになる。訴追先は連邦上院だ。連邦上院が弾劾裁判所となって審理される。ここで3分の2以上の賛成があれば弾劾が成立する。現状では民主党が連邦下院の過半数を握っており、訴追は可能だ。連邦上院は共和党が過半数を握っている。また、3分の2の賛成という条件も高いハードルになっている。音声録音が出るとか内部告発者が名乗り出て宣誓証言をする(証言だけでは難しいが)などのことがあれば弾劾まで進む可能性はあるが、今のところは厳しい。

 連邦議会民主党執行部としてはロシア疑惑よりは筋が良い話ということで弾劾に乗ったのかもしれないが、先行きは楽観視できない。 

(貼り付けはじめ)

 

●「米民主、もろ刃の弾劾攻勢 ウクライナ疑惑で」

トランプ政権 北米

2019/9/25 18:29

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50186700V20C19A9EA2000/

【ニューヨーク=永沢毅】トランプ米大統領がウクライナに野党・民主党のバイデン前副大統領に関する調査を要求したとされる疑惑は、トランプ氏と民主の全面対決に発展した。民主執行部はこれまでの慎重姿勢を転換し、トランプ氏の弾劾に向けてカジを切った。対立の先鋭化は、2020年大統領選で最有力候補の一人であるバイデン氏に跳ね返るリスクもはらむ。

「大統領職の宣誓や国家安全保障、選挙の清廉さへの裏切りだ」。民主のペロシ下院議長は24日の声明でトランプ氏の行動をこう断じた。

16年の大統領選でトランプ氏がロシアと共謀した疑惑では、民主は弾劾を見送った。国家の分断を懸念して慎重な姿勢を維持してきた民主だが、今回大きく転換した。「現職の大統領」の不正疑惑を追及しなければ、国民の不信の目が自らに向かうとの判断があったからとみられる。

民主が問題視しているのは主に2点ある。1点目はトランプ氏が725日のゼレンスキー・ウクライナ大統領との電話協議で、同国への軍事支援を実施する条件として、バイデン氏の息子が役員をしていたウクライナのガス企業に関する調査をするよう繰り返し圧力をかけた疑惑だ。

米憲法は大統領が「反逆罪、収賄罪またはその他の重犯罪や軽罪」を犯せば弾劾訴追されると定める。トランプ氏が再選をめざす20年大統領選でバイデン氏は最も警戒する相手だ。同氏を追い落とすため外交を政治利用したと議会が認定すれば、弾劾の要件にあてはまる可能性がある。米連邦法は選挙活動に「価値あるもの」を外国人に求めることを禁じており、民主はこうした法令に違反する疑いがあるとみる。

もう1つは、問題の表面化につながった内部告発の中身を政権側が議会に報告するのを阻んだ点だ。電話協議の内容を問題視した米情報当局者は、8月中旬に監察官に内部告発したとされる。

 米連邦法では監察官が告発を「緊急の懸念」などと判断した場合、7日以内に議会に報告する義務があるとされる。しかし、国家情報長官代行は内部告発の報告を拒否し、ペロシ氏は「報告阻止は法令違反だ」と非難した。

強硬策を繰り出した民主に対し、トランプ氏は徹底抗戦の構えをみせる。「大統領への嫌がらせだ!」。24日にはツイッターでこう訴えた。

25日にはゼレンスキー氏との電話協議の内容を公表する方針だ。複数の米メディアによると、ホワイトハウスは内部告発の議会報告も認める方向で調整しているという。いずれも潔白を証明する狙いがあるとみられる。

民主にとって悩ましいのは、今回の疑惑にバイデン氏が関わっている点だ。バイデン氏はオバマ前政権の副大統領だった2016年にウクライナの検事総長の解任を要求したことがある。バイデン氏は解任に応じなければウクライナへの10億ドルの債務保証を保留すると圧力をかけたとされる。

検事総長はバイデン氏の息子ハンター氏が役員を務めていたガス企業の捜査を統括する立場にあった。ハンター氏はこの企業から月5万ドル(約550万円)の報酬を受け取っていたという。民主がウクライナ疑惑への追及を強めれば、バイデン氏にも矛先が向かうのは避けられない。

「問題があるのはバイデンとその息子だ」。トランプ氏はかねてウクライナ問題の調査を訴えていた。20年大統領選の民主候補の指名争いで首位のバイデン氏が失速すれば、2位のウォーレン、3位のサンダース両上院議員には追い風になる。

弾劾には世論の支持や共和の協力が欠かせない。だが共和はトランプ氏擁護の意見が多く、現時点で世論の支持も見通せない。疑惑捜査の進展しだいでは政局優先との批判を浴びる恐れもある。

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●「ホワイトハウスはトランプ氏の通話内容を隠そうとした=内部告発者」
BBC

2019年9月27日

https://www.bbc.com/japanese/49848138

ドナルド・トランプ大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の電話会談について、ホワイトハウスの法務顧問たちは、内容に国家機密を含まないにもかかわらず、国家機密専用のデータベースに保存するという異例の対応をとっていた――。大統領の通話内容について情報当局者が書いた書簡には、こうした内容が含まれていたことが明らかになった。米連邦議会が26日、情報当局者が国家情報長官代行や上下両院の情報委員長に送った手紙を公表した。

トランプ氏が今年7月の電話会談でウクライナの大統領に話した内容について、情報機関の内部告発者が監察総監や国家情報長官代行などにあてた手紙には、トランプ氏が「大統領権限を利用し、2020年米大統領選で外国の介入を得ようとしている」ことを、複数の政府担当者が懸念していると書かれている。その上でこの内部告発者は、大統領の行動が「深刻もしくは甚だしい問題」で、「法律に抵触もしくは違反した」と指摘している。

機密扱いを解除して議会が公表したこの書簡によると、ホワイトハウスの法務顧問たちは、通話内容に国家機密が含まれていなかったにもかかわらず、特にデリケートな国家機密を保管するためにある通常とは異なる電子データベースに、この電話の通話記録を保存するよう、ホワイトハウス職員に指示した。また、こういう対応は過去にも何度か行われていたという。

さらに手紙を書いた情報当局者によると、トランプ氏がウクライナのゼレンスキー大統領と直接あるいは電話で会談するかどうかは、ウクライナ側に自分たちの要求に「協力するつもりがある」か、ウクライナ大統領が「どう行動するか」次第だと、複数の米政府関係者が認識していた。また、725日にウクライナの大統領と電話会談する以前に、ウクライナへの軍事援助を停止するよう、大統領が自ら行政管理予算局に指示したという。

26日には民主党が多数を占める下院の情報委員会で公聴会が開かれ、ジョーセフ・マグワイヤ国家情報長官代行が宣誓証言。その中で長官代行は、内部告発者は「誠実に行動」し、「正しいことをした」と述べた。今回のウクライナ疑惑が浮上して以来、トランプ氏をはじめホワイトハウスは、内部告発者は党利党略のために動く民主党支持者だと反論していた。

この電話会談を理由に、トランプ氏に対する正式な弾劾調査の開始を発表した民主党幹部のナンシー・ペロシ議長は、トランプ氏が2020年大統領選で戦うことになる可能性のある民主党のジョー・バイデン前副大統領の評判を汚そうとして外国の手助けを求め、その交渉材料として軍事援助を利用したと非難している。

トランプ氏は、確かにゼレンスキー大統領と電話で話す数日前に、4億ドル分の軍事援助を自ら停止したと認めたものの、バイデン親子への捜査をウクライナに働きかけるための圧力ではなかったと説明している。

内部告発者の手紙公表と下院情報委公聴会の後、ホワイトハウスで記者団を前にしたトランプ氏は、弾劾手続きは「またしてもでたらめな魔女狩り」で、「許されてはならない」と反発した。

「民主党がこの国にしていることはみっともない話で、許されてはならない(中略)裁判所で法的手段を使うなどして、阻止する方法があるべきだ」とトランプ氏は述べた。

トランプ氏が国連総会のため訪れているニューヨークのアメリカ代表部で25日に、内部告発者に情報提供した者は「ほとんどスパイに等しい」と職員に話す録音音声が、浮上している。

トランプ氏は「この国では以前は、みんな頭がよかったころには、どうしたか知ってるだろう? そうだろう? スパイとか国家反逆罪とか、昔は今とは違う対応をしたものだ」と述べている。この発言は、米政府が過去にスパイに対して死刑を適用したことへの言及とみられている。

内部告発者は手紙で何と

情報当局者は725日の電話会談について、複数の政府関係者から聞いた話として、逐語の通話記録をはじめとする内容の記録を一切外部に漏らさないよう、ホワイトハウス幹部が対応したと書いている。

「このことから、ホワイトハウス関係者は電話の内容がいかに深刻なものか理解していたと、私は強く感じた」と、告発した情報当局者は書いた。

ホワイトハウスの法律顧問たちは通話の記録を、「秘密作戦など暗号で保護されるレベルの重要機密を保管するためにある、他のネットワークにつながっていないコンピューター」に保存するという異例の措置を、職員に指示したという。

告発者によると、トランプ政権では国家安全保障に関わる機密ではない内容でも、政治的にデリケートな内容の記録を、こうして機密用のデータベースに保存することが、以前から行われていたという。

告発者は手紙の冒頭で、自分は一連の出来事を「直接目撃したわけではない」と明記しつつ、複数の政府職員が話す内容は「ほとんど常に一致していた」ため、自分が聞いた話は信頼できると判断したと書いている。

議会公聴会では何が

下院情報委員会のアダム・シフ委員長(民主党)は、この日の公聴会冒頭で、トランプ大統領がウクライナの大統領相手に「まさに組織犯罪に典型的な、ゆすりをかけた」と非難した。

これに対してトランプ氏を支持する共和党のデヴィン・ヌネス筆頭委員はこれに反発し、「大統領に対してまたしも情報戦争を仕掛けけて、またしても主要メディアの協力を獲得するに至った見事な才能について、民主党におめでとうと言いたい」と皮肉った。

公聴会に出席したマグワイヤ国家情報長官代行に対してシフ委員長は、内部告発者の手紙を公表する前になぜホワイトハウスの助言を求めたのか問いただした。

これに対してマグワイヤ氏は、告発内容に大統領特権で保護されるべき内容はあるか確認したかったのだと説明。さらに、「本件に関する何もかも、まったく前例がないことだと思う」と述べた。

バイデン氏については

告発者の手紙によると、就任間もないゼレンスキー大統領との電話でトランプ氏は、2016年にウクライナのヴィクトル・ショーキン検事総長が解任された件について話し合った。

トランプ氏は、バイデン前副大統領の息子でウクライナのガス会社ブリスマの取締役だった息子のハンター・バイデン氏について触れ、副大統領だったバイデン氏がショーキン氏の解任をウクライナに働きかけることで、ハンター氏の訴追を回避したのではないかと述べた。

トランプ氏はさらにゼレンスキー大統領に、ウィリアム・バー米司法長官や自分個人の顧問弁護士、ルディ・ジュリアーニ氏と連携しながら、この件を調べるよう働きかけた。

ウクライナのショーキン前検事総長は、ブリスマの所有者ミコラ・ズロチェフスキー氏による不正取引や資金洗浄の疑いを捜査していた。

バイデン氏は副大統領として、複数の欧州首脳と共に、ショーキン検事総長は汚職摘発に及び腰だと批判し、解任を求めていた。ショーキン氏の後任はその後、10カ月にわたりブリスマ社を調べたが、捜査はそこで終わった。

ハンター・バイデン氏のブリスマ役員としての任期は、今年4月に満了している。

バイデン氏側に不正行為があったという証拠は明らかになっていない。

米司法省は25日、トランプ氏はバー司法長官に対して、ウクライナ政府にバイデン親子を捜査させるという内容を話していないし、バー長官はウクライナ政府と接触していないとコメントした。

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内部告発者の告発における5つの重大な嫌疑(The five most serious charges in the whistleblower's complaint

ナイオール・ストレンジ筆

2019年9月26日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/463236-the-five-most-serious-charges-in-the-whistleblowers-complaint

トランプ大統領のトラブルは木曜日朝により深刻なそしてより暗いものとなった。それは内部告発者の告発が明らかになったからだ。

トランプ大統領はウクライナとウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーとの間のやり取りについて弾劾を受ける脅威に直面している。連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)はこれまで弾劾に消極的だったが姿勢を変えて、弾劾の先頭に立った。

トランプ大統領と彼の味方たちはこの嫌疑に対して反論をしている。トランプ大統領はこの問題全部が「でっち上げ(hoax)」であり、私は誤った行為を全くしていないと主張している。
ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は木曜日朝に発表した声明の中で、「出来事に関して間接的に又聞きの説明を集めたもので、報道の断片を切り貼りしたものに過ぎず、何も不適切なものを提示しているものではない」と述べた。

しかし、こうした声明が次々に出されても、現在までのところ、嵐は収まっていない。

これから重大な嫌疑についてまとめる。

●ホワイトハウスはトランプ大統領の電話の詳細を隠そうとした(The White House sought to hide details of Trump’s phone call

今回の論争の中心的なエピソードはトランプ大統領の7月25日のゼレンスキーとの電話で、その中で、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対して、実証されていない嫌疑でジョー・バイデン前副大統領とバイデンの次男ハンターについて捜査するように圧力をかけたということだ。

内部告発者の告発の中で暴露された重大な内容は、ホワイトハウスがこの電話の逐語記録を隠そうとしたというものだ。

ホワイトハウスの高官たちによって隠蔽がなされたのは、この電話の内容を知っている人々は「トランプ大統領が個人の利益のために自身の大統領執務室を濫用したことを目撃してしまった」という思いからだと内部告発者は述べている。

内部告発者は続けて「ホワイトハウスの高官たちは「ウクライナ大統領との電話記録の全ての記録を封鎖する」ために介入してきたと述べた。

この介入は コンピューターシステムから「電子データになっている逐語の通話記録」を削除するという形を取ったと内部告発者は述べている。電子データになった通話記録は通常はコンピューターシステムに保管される。しかし、ゼレンスキー大統領との通話記録は機密の内容は入っていないのに通常のシステムとは切り離された、より安全性が確保された、そしてアクセスが制限された別のシステムに移動された。

嫌疑の中心が何かは明らかだ。それは「ホワイトハウスが隠蔽に関与した」ということだ。

ニクソン元大統領が体験したように、このような告発は他の重大な攻撃と同じく政治的に危険をはらむものとなる。

●トランプの協力者たちはウクライナに「協力させる」ために影響力を行使した(Trump allies used leverage to get Ukraine to ‘play ball’

トランプの擁護者たちは、ゼレンスキー大統領に対して交換条件は提示されていないと主張している。

内部告発者はそれとは逆のことを述べている。もっとも、協力させるための交換条件を提案したのはトランプ大統領自身ではなく、大統領の周辺人物たちだとも示唆している。

内部告発者は、「複数のアメリカ政府高官たち」は内部告発者に対して、トランプ大統領とゼレンスキー大統領との電話や会談が行われるのは、「ゼレンスキー大統領が進んで“協力(play ball)”する姿勢を見せるかどうか」にかかっていると発言した、と述べている。

内部告発者は「協力する(play ball)」という言葉を2度使っている。2度目の「協力する」のところでは、次のようなことが述べられている。今年5月のゼレンスキー大統領の就任式にペンス副大統領が出席予定でウクライナを訪問することになっていたが、トランプ大統領がペンスに行かないように「指示」した後にキャンセルとなった。名代としてリック・ペリーエネルギー省長官が出席した。

内部告発者は、名前を明らかにしていないが複数のアメリカ政府高官たちが、ウクライナ政府高官たちに対して、トランプ大統領はゼレンスキー大統領が「大統領の権限を使ってどのような行動を取るかを選択する」ことを見せるまで、ゼレンスキー大統領に会いたいとは望まないということを「明確に」示した、と述べている。

内部告発者は、自分が「協力する」ということについてのより広範な疑問とこの行動が関連しているかは分からないとしている。しかし、「協力」と「交換条件」に付いての疑問は、トランプ大統領、そしてペンス副大統領にとって取り扱いにくい疑問である。

●ホワイトハウスはそれ以外の複数の電話の詳細を隠していた(The White House has hidden the details of other phone calls

内部告発者はトランプ大統領の他の通話記録は安全なシステムに入れられていると述べている。これは正当な国家安全保障の懸念からではなく、政治的な理由からである。

内部告発者は、ホワイトハウスの高官たちはトランプ大統領の通話記録がこの「符号レヴェル」システムに入れられたのは「初めてのことではない」と述べたと発言している。そして、こうしたことが行われたのは、「国家安全保障上神経質にならざるを得ない情報だからという理由ではなく、政治的に神経質とならざるを得ない情報だから」だとアメリカ政府高官たちが認めたと内部告発者と述べている。

こうしたことの詳細は不明確だ。しかし、民主党にしてみれば大統領弾劾の調査を継続するための更なる材料となる。

●政府高官たちはジュリアーニの様々な行動に対して「深い懸念」を持っていた(Officials were ‘deeply concerned’ by Giuliani’s activities

トランプ大統領の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニは、ウクライナに対してバイデン家について捜査をするように圧力をかけていることを認めた。

ここ数日、ジュリアーニは彼の役割に関する論争が激化する中で、数多くのメディアに出演しインタヴューを受けている。そこで激しく議論されているのは、ジュリアーニの行動が国務省の幹部たちの承認、もしくは少なくとも同意を得ていたのかどうかということだ。

内部告発者の告発内容はトランプ政権内部の分裂について更なる懸念を募らせるものである。内部告発者は「ジュリアーニ氏が国家安全保障決定政策プロセスを避けて、ウクライナ政府高官と関わろうとし、ウクライナ政府とトランプ大統領との間でメッセージをやり取りができるようにした。これを見て複数のアメリカ政府高官は大きな懸念を持った」と告発している。

ジュリアーニは木曜日CNNに出演し、内部告発の「クソみたいな内容について何も知らない」と述べた。

●ウクライナ政府高官たちはアメリカらの援助が停止される危険に晒されるだろうと分かっていた(Ukrainian officials knew U.S. aid could be in jeopardy

アメリカ連邦議会が提供を可決したウクライナ向けの援助4億ドルがトランプ政権によって援助提供が遅延させられていたことについてはその事実性について誰も反対していない。

疑問として残るのは、この遅延がトランプ大統領のウクライナによるバイデン家についての詳細な捜査を行って欲しいという希望と明確な形でつながっていのかどうかということだ。

内部告発者はこの疑問についてはっきりとは答えていない。

しかし、メディアの報道が出る前に、内部告発者はトランプ大統領がある時点でアメリカのウクライナに対する「国家安全保障援助」を一時停止するように命じたと認めた。

内部告発者は7月23日と7月26日という2つの日付を挙げた。この2日にアメリカ行政管理予算局の高官たちが「ウクライナ向けの援助の一時停止という命令はトランプ大統領から直接出されたものだと明確に述べたが、この命令の根拠について分かっていなかった」と述べた。

内部告発者は8月上旬に「アメリカ政府高官たち」が内部告発者に対して、ウクライナ政府高官はアメリカからの援助が停止される危機に瀕していることを認識していると述べたと語ったが、ウクライナに対する圧力の度合いという観点からこの告発内容は重要だ。

トランプ大統領は、援助供与を遅らせたのは、ウクライナの他の同盟諸国にも援助をさせたいと望んでいたからだと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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決定版 属国 日本論
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